(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-04
(45)【発行日】2023-12-12
(54)【発明の名称】圧延設備およびスピンドル移動装置
(51)【国際特許分類】
B21B 35/14 20060101AFI20231205BHJP
B21B 31/06 20060101ALI20231205BHJP
【FI】
B21B35/14 B
B21B31/06
(21)【出願番号】P 2021013190
(22)【出願日】2021-01-29
【審査請求日】2022-08-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001542
【氏名又は名称】弁理士法人銀座マロニエ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】丸門 直登
(72)【発明者】
【氏名】畠中 淳
【審査官】長谷部 智寿
(56)【参考文献】
【文献】実開昭59-089603(JP,U)
【文献】特開昭50-154151(JP,A)
【文献】実開平01-100605(JP,U)
【文献】米国特許第04155240(US,A)
【文献】韓国公開特許第10-2013-0023883(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21B 35/00-35/14
B21B 31/00-31/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定位置に設置されて複数の圧延ロールを有する圧延機と、
前記複数の圧延ロールの夫々に駆動力を伝達する複数のスピンドルと、
前記複数のスピンドルを支持するスピンドル支持装置と、
前記スピンドル支持装置を前記圧延機に対して離間或いは近接させることが可能なシフト装置と、を備え、
前記シフト装置による前記スピンドル支持装置の移動に追従して、前記複数のスピンドルが移動するように構成されており、
前記圧延機が、圧延対象材に応じて変更可能に構成され、
前記シフト装置が、位置検出機能を持ち、前記所定位置に設置された圧延機の種別に応じて自動的に位置合わせして前記スピンドル支持装置の移動距離を制御可能に構成されていることを特徴とする圧延設備。
【請求項2】
前記複数のスピンドルが外筒とスプライン軸とを有して構成され、
前記シフト装置による前記スピンドル支持装置の移動距離と、前記スピンドル支持装置に追従した前記外筒の移動距離が等しいことを特徴とする請求項1に記載の圧延設備。
【請求項3】
前記圧延機が設置された設置部のフロアレベルより上方に、前記シフト装置が設置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の圧延設備。
【請求項4】
さらに、前記複数のスピンドルを昇降させることが可能な昇降装置を備え、
前記昇降装置は、前記所定位置に設置された圧延機の種別に応じて前記複数のスピンドルを昇降制御可能に構成されていることを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載の圧延設備。
【請求項5】
圧延機に駆動力を伝達するスピンドルを支持するスピンドル支持装置と、
前記スピンドル支持装置を前記圧延機に対して離間或いは近接させることが可能なシフト装置と、を備え、
前記シフト装置が、位置検出機能を持ち、所定位置に設置された圧延機の種別に応じて自動的に位置合わせして前記スピンドル支持装置の移動距離を制御可能に構成されていることを特徴とするスピンドル移動装置。
【請求項6】
前記圧延機が設置された設置部のフロアレベルより上方に、前記シフト装置が設置されていることを特徴とする請求項5に記載のスピンドル移動装置。
【請求項7】
さらに、前
記スピンドルを昇降させることが可能な昇降装置を備え、
前記昇降装置は、所定位置に設置された圧延機の種別に応じて前
記スピンドルを昇降制御可能に構成されていることを特徴とする請求項5または6に記載のスピンドル移動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧延機に駆動装置(例えば主機モータ)の駆動力を伝達するスピンドルを移動させるスピンドル移動装置及びこれを備える圧延設備に関する。
【背景技術】
【0002】
圧延設備ラインにおいて、圧延対象材のサイズ変更などに対応させるため、圧延機が交換される。その際、圧延ロールと駆動装置を繋ぐスピンドルを圧延機から離間させ、圧延機の交換後にスピンドルを圧延機に再度連結する必要がある。
【0003】
特許文献1には、ミルスタンドをその移動方向に駆動するシフトシリンダのロッドとスピンドル保持装置との間に、これらを選択的に連接及び非連接とする係合機構を備え、この係合機構の操作によって連接時にはミルスタンドとスピンドル保持装置とを同時に一体にシフトさせ、非連接時にはミルスタンドのみをシフト操作可能とする圧延ミル設備におけるシフト装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の技術には、未だ解決すべき以下のような問題があった。
特許文献1には、スピンドルを保持するスピンドル保持装置とミルスタンドとを一体的に移動させることが可能なシフトシリンダが開示されているが、スピンドルを圧延機と独立して単独で移動させることができるものではない。
【0006】
本発明は上述した問題を有利に解決すべくなされたもので、メンテナンス性に優れ、スピンドルを単独で移動させることができる圧延設備及びスピンドル移動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決し、上記の目的を実現するため開発した本発明にかかる圧延設備は、所定位置に設置されて複数の圧延ロールを有する圧延機と、前記複数の圧延ロールの夫々に駆動力を伝達する複数のスピンドルと、前記複数のスピンドルを支持するスピンドル支持装置と、前記スピンドル支持装置を前記圧延機に対して離間或いは近接させることが可能なシフト装置と、を備え、前記シフト装置による前記スピンドル支持装置の移動に追従して、前記複数のスピンドルが移動するように構成されていることを特徴とする。
【0008】
なお、本発明にかかる圧延設備については、
(a)各スピンドルが外筒とスプライン軸とを有して構成され、前記シフト装置による前記スピンドル支持装置の移動距離と、前記スピンドル支持装置に追従した前記外筒の移動距離が等しいこと、
(b)前記圧延機が設置された設置部のフロアレベルより上方に、前記シフト装置が設置されていること、
(c)前記圧延機が、圧延対象材に応じて変更可能に構成され、前記シフト装置が、前記所定位置に設置された圧延機の種別に応じて前記スピンドル支持装置の移動距離を制御可能に構成されていること、
(d)さらに、前記複数のスピンドルを昇降させることが可能な昇降装置を備え、前記昇降装置は、前記所定位置に設置された圧延機の種別に応じて前記複数のスピンドルを昇降制御可能に構成されていること、
などがより好ましい解決手段になり得るものと考えられる。
【0009】
上記課題を解決し、上記の目的を実現するため開発した本発明にかかるスピンドル移動装置は、圧延機に駆動力を伝達するスピンドルを支持するスピンドル支持装置と、前記スピンドル支持装置を前記圧延機に対して離間或いは近接させることが可能なシフト装置と、を備えることを特徴とする。
【0010】
なお、本発明にかかるスピンドル移動装置については、
(e)前記圧延機が設置された設置部のフロアレベルより上方に、前記シフト装置が設置されていること、
(f)前記シフト装置が、前記所定位置に設置された圧延機の種別に応じて前記スピンドル支持装置の移動距離を制御可能に構成されていること、
(g)さらに、前記複数のスピンドルを昇降させることが可能な昇降装置を備え、前記昇降装置は、前記所定位置に設置された圧延機の種別に応じて前記複数のスピンドルを昇降制御可能に構成されていること、
などがより好ましい解決手段になり得るものと考えられる。
【発明の効果】
【0011】
本発明にかかる圧延設備やスピンドル移動装置によれば、スピンドルを単独で移動させることができるとともに、メンテナンス性に優れているので、産業上有用である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態にかかる圧延設備ラインの斜視図である。
【
図2】上記実施形態で用いられる移動後のスピンドルおよびスピンドルキャリアの概略図であって、(a)は左側面図を示し、(b)は正面図を示し、(c)は右側面図を示す。
【
図3】上記実施形態で用いられる、圧延機に連結状態のスピンドルおよびスピンドルキャリアを拡大した概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について具体的に説明する。なお、各図面は模式的なものであって、現実のものとは異なる場合がある。また、以下の実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであり、構成を下記のものに特定するものでない。すなわち、本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0014】
図1は、本発明の一実施形態にかかる圧延設備ライン100の斜視図である。圧延設備ラインには圧延対象材に応じた所定位置に複数の圧延ロール102を有する圧延機(ミル)本体101が設置される。圧延機本体101の圧延ロール102と主機モータとがスピンドル6を介して連結され、主機モータの駆動力が圧延ロール102に伝達される。
【0015】
圧延対象材が変更される場合には、圧延機本体101の圧延ロール102とスピンドル6との連結を解除したうえで、圧延機本体101を組み換えレールリフト103上のライン外へ移動させる。そして、圧延機本体101を他の圧延機本体101と交換する。交換した他の圧延機本体101を組み換えレールリフト103上で移動させ、圧延のための所定位置に設置する。
【0016】
そして、スピンドル6を他の圧延機本体101の圧延ロール102に再度連結する。そこで、改めて主機モータの駆動力が他の圧延機本体101の圧延ロール102に伝達可能な状態となる。
【0017】
つまり、スピンドル6は圧延機本体101の交換時に、圧延機本体101から離間させ、或いは、接近させる必要がある。そのために、スピンドル6を支持するスピンドル支持装置(いわゆるスピンドルキャリア10)および、そのスピンドル支持装置10を並進移動させるシフト装置(たとえば、スピンドルキャリアシフトシリンダ7)が必要になる。
【0018】
図2は、圧延機から切り離した状態のスピンドル6およびスピンドルキャリア10の概略図である。
図2(a)に左側面図を示し、
図2(b)に圧延方向下流側から見た正面図を示し、
図2(c)に右側面図を示す。
図3は圧延機に連結している状態のスピンドル6およびスピンドルキャリア10の概略正面拡大図である。スピンドル6は圧延機本体101の下ロールに連結される下スピンドル6Aと、上ロールに連結される上スピンドル6Bと、を有する。
【0019】
各スピンドル6A、6Bは、スプライン軸5を有するスピンドルモータ側スピンドルヘッド(カップリング)1と、スプライン軸5の軸方向に並進移動可能に構成されるスピンドル外筒(アウタースピンドル)4を有するロール側スピンドルヘッドとを有して構成される。
【0020】
スピンドル外筒4は、夫々スピンドルキャリア10に保持されている。ロール側スピンドルヘッドをミルカップリングから連結解除し、スピンドルモータ側スピンドルヘッド1とモータカップリング3を固定ピン2で締結させた状態で、スピンドルキャリア10を移動させる。そうすると、スピンドル外筒4がスプライン軸5の軸方向に水平に並進移動し、スピンドル6は、圧延機本体101から離間(
図2(b))し、或いは、接近(
図3)することになる。ここで、スピンドル外筒4の水平方向の移動距離は、スピンドルキャリア10の移動距離に等しい。
【0021】
スピンドルキャリア10は2本のスピンドルキャリアシフトシリンダ7によって移動される構成となっている。スピンドルキャリアシフトシリンダ7は、圧延機本体101やスピンドルキャリア10が設置、載置されるフロアレベルFLより上に設けられている。そうすることで、ホースの脱着が不要で、取替もしやすい位置に配置されている。
【0022】
また、スピンドルキャリア10は上下のミルカップリングに対して、各スプリングヘッドの高さを合わせるための昇降シリンダ9を有している。
【0023】
スピンドルキャリア10を移動させるシフト装置7(たとえば、シリンダ)やスピンドルを昇降させるシリンダ9に位置検出機能を持たせることで自動的に圧延機本体101に対する位置合わせが可能となる。そのため、圧延機の他の部分との衝突なくスピンドル6と圧延機本体101の圧延ロール102とをスムーズに連結することができる。
【符号の説明】
【0024】
1 スピンドルモータ側カップリング
2 固定ピン
3 モータカップリング
4 スピンドル外筒
5 スプライン軸
6 スピンドル
6A 下スピンドル
6B 上スピンドル
7 スピンドルキャリアシフトシリンダ(シフト装置)
8 圧延機シフト装置(シリンダ)
9 昇降シリンダ
10 スピンドルキャリア(スピンドル支持装置)
100 圧延設備ライン
101 圧延機本体
102 圧延ロール
103 組み換えレールリフト
FL フロアレベル