(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-04
(45)【発行日】2023-12-12
(54)【発明の名称】回転電機用ロータ
(51)【国際特許分類】
H02K 1/276 20220101AFI20231205BHJP
【FI】
H02K1/276
(21)【出願番号】P 2021019339
(22)【出願日】2021-02-09
【審査請求日】2023-02-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085361
【氏名又は名称】池田 治幸
(74)【代理人】
【識別番号】100147669
【氏名又は名称】池田 光治郎
(72)【発明者】
【氏名】大河内 利典
(72)【発明者】
【氏名】近藤 啓次
(72)【発明者】
【氏名】北原 佳純
【審査官】谿花 正由輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-137139(JP,A)
【文献】特開2007-159196(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/276
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数の積層鋼板から成る円筒形状のロータコアを有するとともに、前記ロータコアにはq軸を挟んで周方向の両側に磁石が配設されているとともに、前記q軸上に前記積層鋼板を位置決めするかしめ部が設けられている回転電機用ロータにおいて、
前記ロータコアには、前記磁石として第1磁石および第2磁石がそれぞれ前記q軸を挟んで対称的に一対ずつ設けられており、前記第2磁石は前記第1磁石よりも前記ロータコアの外周側へ離間して配置されているとともに、
前記一対の第1磁石および前記一対の第2磁石は、何れも前記ロータコアの回転中心線と直角な断面が長方形断面で、それぞれ前記ロータコアの内周側へ向かうに従って拡開する逆V字形状を成す姿勢で配置されており、
前記一対の第1磁石の前記長方形断面の前記q軸側の長辺をそれぞれ延長した交点である前記逆V字形状の頂点S1の角度は、前記一対の第2磁石の前記長方形断面の前記q軸側の長辺をそれぞれ延長した交点である前記逆V字形状の頂点S2の角度よりも大きく、
前記一対の第1磁石の相互間に第1磁束通路が形成され、前記一対の第2磁石の相互間に第2磁束通路が形成される一方、
前記第1磁石の前記長方形断面の前記q軸側の長辺における前記ロータコアの外周側の角部、または磁石取付孔との間にコーナー間隙が設けられている場合は前記長辺上であって前記外周側の角部から該コーナー間隙部分を除いた位置に、前記第1磁束通路の外周側境界点を設定して、前記頂点S2を中心として前記一対の第1磁石の前記外周側境界点を通る円弧を第1境界仮想線とし、
前記第2磁石の前記長方形断面の前記q軸側の長辺における前記ロータコアの内周側の角部、または磁石取付孔との間にコーナー間隙が設けられている場合は前記長辺上であって前記内周側の角部から該コーナー間隙部分を除いた位置に、前記第2磁束通路の内周側境界点を設定して、前記頂点S2を中心として前記一対の第2磁石の前記内周側境界点を通る円弧を第2境界仮想線とした場合、
前記q軸上であって前記第1境界仮想線と前記第2境界仮想線との間の領域に前記かしめ部が設けられている
ことを特徴とする回転電機用ロータ。
【請求項2】
前記ロータコアの外周側へ向かうに従って拡開するV字形状乃至はU字形状を成すように、前記ロータコアの回転中心線を通るd軸を対称軸として前記磁石が対称的に、且つ該ロータコアの径方向に離間して複数対設けられることにより1つの磁極が構成されており、
前記ロータコアには、前記磁極が前記回転中心線まわりに等角度間隔で複数設けられており、
前記複数の磁極のうち周方向に隣接する2つの磁極の中間線が前記q軸であり、該q軸を挟んで周方向の両側に対称的に且つ前記ロータコアの径方向に離間して位置する2対の磁石のうち、内周側の一対の磁石が前記第1磁石で、外周側の一対の磁石が前記第2磁石である
ことを特徴とする請求項1に記載の回転電機用ロータ。
【請求項3】
前記磁極は、前記一対の第1磁石および前記一対の第2磁石を含む計4つ以上の磁石が前記V字形状乃至はU字形状を成すように配置された第1層と、該第1層よりも前記ロータコアの外周側に前記V字形状乃至はU字形状を成すように複数の磁石が配置された第2層と、を有する複数層構造を成している
ことを特徴とする請求項2に記載の回転電機用ロータ。
【請求項4】
前記頂点S1の角度は前記頂点S2の角度の3倍以上である
ことを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載の回転電機用ロータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は回転電機用ロータに係り、特に、かしめ部の位置を適切に定めることができる技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
多数の積層鋼板から成る円筒形状のロータコアを有するとともに、前記ロータコアにはq軸を挟んで周方向の両側に磁石が配設されているとともに、前記q軸上に前記積層鋼板を位置決めするかしめ部が設けられている回転電機用ロータが知られている(特許文献1の
図8参照)。
【0003】
特許文献2には、(a) ロータコアの外周側へ向かうに従って拡開するV字形状乃至はU字形状を成すように、前記ロータコアの回転中心線を通るd軸を対称軸として複数の磁石が対称的に、且つそのロータコアの径方向に離間して複数対設けられることにより1つの磁極が構成されており、(b) 前記ロータコアには、前記磁極が前記回転中心線まわりに等角度間隔で複数設けられている、回転電機用ロータが提案されている。この場合、周方向に隣接する2つの磁極の中間線が前記q軸となり、そのq軸を挟んで周方向の両側に対称的に且つロータコアの径方向に離間して複数対の磁石が配置されることになり、その複数対の磁石の相互間に磁束通路が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-89291号公報
【文献】特開2019-54659号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前記かしめ部は、積層鋼板に曲げ部を形成したり張出し加工乃至は絞り加工によって凹所を形成したりバーリング穴を形成したりするなどして設けられるため、そのかしめ部では磁気抵抗が大きくなって磁束の通過が阻害され、磁束量が減少してモータトルクが低下したり、周辺の磁束変動で渦電流による鉄損が増加してモータ効率が低下したりする恐れがある。すなわち、q軸を挟んで一対の磁石が設けられ、その一対の磁石の相互間に磁束通路が形成される場合、磁束の通過を妨げないように磁束通路を避けてかしめ部を設けることが望ましいが、特許文献2に記載のようにq軸を挟んでロータコアの径方向に離間して複数対の磁石が配置される場合、かしめ部をどこに設けるかが問題になる。かしめ部を磁石から遠く離れたロータコアの外周縁部や内周縁部に設ければ磁束の通過を阻害する可能性は低いが、積層鋼板の位置決め性能などの条件によりロータコアの径方向の中間部分にかしめ部を設けたい場合がある。
【0006】
本発明は以上の事情を背景として為されたもので、その目的とするところは、磁石の磁束の通過を阻害することを抑制しつつロータコアの径方向の中間部分にかしめ部が設けられるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的を達成するために、第1発明は、(a) 多数の積層鋼板から成る円筒形状のロータコアを有するとともに、前記ロータコアにはq軸を挟んで周方向の両側に磁石が配設されているとともに、前記q軸上に前記積層鋼板を位置決めするかしめ部が設けられている回転電機用ロータにおいて、(b) 前記ロータコアには、前記磁石として第1磁石および第2磁石がそれぞれ前記q軸を挟んで対称的に一対ずつ設けられており、前記第2磁石は前記第1磁石よりも前記ロータコアの外周側へ離間して配置されているとともに、(c) 前記一対の第1磁石および前記一対の第2磁石は、何れも前記ロータコアの回転中心線と直角な断面が長方形断面で、それぞれ前記ロータコアの内周側へ向かうに従って拡開する逆V字形状を成す姿勢で配置されており、(d) 前記一対の第1磁石の前記長方形断面の前記q軸側の長辺をそれぞれ延長した交点である前記逆V字形状の頂点S1の角度(逆V字形状の開き角度)は、前記一対の第2磁石の前記長方形断面の前記q軸側の長辺をそれぞれ延長した交点である前記逆V字形状の頂点S2の角度(逆V字形状の開き角度)よりも大きく、(e) 前記一対の第1磁石の相互間に第1磁束通路が形成され、前記一対の第2磁石の相互間に第2磁束通路が形成される一方、(f) 前記第1磁石の前記長方形断面の前記q軸側の長辺における前記ロータコアの外周側の角部、または磁石取付孔との間にコーナー間隙が設けられている場合は前記長辺上であって前記外周側の角部からそのコーナー間隙部分を除いた位置に、前記第1磁束通路の外周側境界点を設定して、前記頂点S2を中心として前記一対の第1磁石の前記外周側境界点を通る円弧を第1境界仮想線とし、(g) 前記第2磁石の前記長方形断面の前記q軸側の長辺における前記ロータコアの内周側の角部、または磁石取付孔との間にコーナー間隙が設けられている場合は前記長辺上であって前記内周側の角部からそのコーナー間隙部分を除いた位置に、前記第2磁束通路の内周側境界点を設定して、前記頂点S2を中心として前記一対の第2磁石の前記内周側境界点を通る円弧を第2境界仮想線とした場合、(h) 前記q軸上であって前記第1境界仮想線と前記第2境界仮想線との間の領域に前記かしめ部が設けられていることを特徴とする。
【0008】
第2発明は、第1発明の回転電機用ロータにおいて、(a) 前記ロータコアの外周側へ向かうに従って拡開するV字形状乃至はU字形状を成すように、前記ロータコアの回転中心線を通るd軸を対称軸として前記磁石が対称的に、且つそのロータコアの径方向に離間して複数対設けられることにより1つの磁極が構成されており、(b) 前記ロータコアには、前記磁極が前記回転中心線まわりに等角度間隔で複数設けられており、(c) 前記複数の磁極のうち周方向に隣接する2つの磁極の中間線が前記q軸であり、そのq軸を挟んで周方向の両側に対称的に且つ前記ロータコアの径方向に離間して位置する2対の磁石のうち、内周側の一対の磁石が前記第1磁石で、外周側の一対の磁石が前記第2磁石であることを特徴とする。
【0009】
第3発明は、第2発明の回転電機用ロータにおいて、前記磁極は、前記一対の第1磁石および前記一対の第2磁石を含む計4つ以上の磁石が前記V字形状乃至はU字形状を成すように配置された第1層と、その第1層よりも前記ロータコアの外周側に前記V字形状乃至はU字形状を成すように複数の磁石が配置された第2層と、を有する複数層構造を成していることを特徴とする。
【0010】
第4発明は、第1発明~第3発明の何れかの回転電機用ロータにおいて、前記頂点S1の角度は前記頂点S2の角度の3倍以上であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
このような回転電機用ロータにおいては、一対の第1磁石の長方形断面のq軸側の長辺におけるロータコアの外周側の角部、またはコーナー間隙部分を除いた位置に、第1磁束通路の外周側境界点を設定して、頂点S2を中心としてその外周側境界点を通る円弧を第1境界仮想線とし、一対の第2磁石の長方形断面のq軸側の長辺におけるロータコアの内周側の角部、またはコーナー間隙部分を除いた位置に、第2磁束通路の内周側境界点を設定して、頂点S2を中心としてその内周側境界点を通る円弧を第2境界仮想線とする。そして、q軸上であって第1境界仮想線と第2境界仮想線との間の領域、言い換えればロータコアの径方向の中間部分に、かしめ部が設けられている。
【0012】
一方、第1磁石よりもロータコアの外周側に第1磁石の頂点S1の角度よりも小さい角度となる逆V字形状の姿勢で第2磁石が配置されており、その第2磁石の頂点S2を中心として、第1磁石の外周側境界点を通る円弧が第1境界仮想線とされているが、その第1境界仮想線は第1磁束通路におけるロータコアの外周側の境界線に近似している。また、頂点S2を中心として第2磁石の内周側境界点を通る円弧が第2境界仮想線とされているが、その第2境界仮想線は第2磁束通路におけるロータコアの内周側の境界線に近似している。このため、その第1境界仮想線と第2境界仮想線との間の領域にかしめ部が設けられることにより、第1磁束通路および第2磁束通路を阻害することが適切に抑制され、かしめ部に起因するモータトルクやモータ効率の低下が抑制される。
【0013】
第2発明は、複数の磁石がd軸を対称軸としてV字形状乃至はU字形状を成すように対称的に複数対設けられた磁極が、ロータコアの回転中心線まわりに複数設けられており、周方向に隣接する2つの磁極の中間線がq軸で、そのq軸を挟んで周方向の両側に位置する2対の磁石が前記第1磁石、第2磁石である場合であり、第1磁束通路および第2磁束通路を阻害することを抑制しつつロータコアの径方向の中間部分にかしめ部が設けられるようにするための本発明が好適に適用される。
【0014】
第3発明は、上記磁極が、一対の第1磁石および一対の第2磁石を含む計4つ以上の磁石が配置された第1層と、その第1層よりもロータコアの外周側にV字形状乃至はU字形状を成すように複数の磁石が配置された第2層と、を有する複数層構造を成している場合で、この場合にも頂点S2に基づいて第1境界仮想線および第2境界仮想線を定めてかしめ部の位置を設定することにより、第1磁束通路および第2磁束通路を阻害することを抑制しつつロータコアの径方向の中間部分にかしめ部が設けられるようにする、という本発明の効果が適切に得られる。
【0015】
第4発明は、頂点S1の角度が頂点S2の角度の3倍以上の場合で、一対の第1磁石の逆V字形状の開き角度(頂点S1の角度)が比較的大きく、その第1磁石に関する第1境界仮想線をどのように設定するかが問題になるが、頂点S2を中心として第1磁石の外周側境界点を通る円弧を第1境界仮想線としてかしめ部の位置を設定することにより、第1磁束通路を阻害することを抑制しつつロータコアの径方向の中間部分にかしめ部を設けることができる。すなわち、頂点S1を中心として一対の第1磁石の外周側境界点を通る円弧を第1境界仮想線とすることが考えられるが、その場合、頂点S1の角度が大きいことから第1境界仮想線はロータコアの内周側へ大きく膨らみ、第1境界仮想線よりもロータコアの外周側すなわちかしめ部が設けられる側にも第1磁束通路が形成されて、かしめ部により磁束の通過が阻害される可能性がある。また、一対の第1磁石の外周側境界点を直線で結んで第1境界仮想線とすることが考えられるが、かしめ部を設けることができる領域が狭くなり、かしめ部を適切に設けることができなくなる可能性がある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施例である回転電機用ロータを備えている回転電機を説明する概略断面図である。
【
図2】回転中心線Oと直角なロータの断面図で、回転中心線Oまわりの1/4部分を拡大して示した図である。
【
図3】
図2のq軸上に設けられたかしめ部の拡大断面図である。
【
図4】
図2のロータのq軸近傍部分を更に拡大して示した図である。
【
図5】本発明の他の実施例を説明する図で、
図4に対応するq軸近傍部分の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
回転電機は回転電気機械のことで、回転機と言われることもあり、電動モータや発電機、或いはその両方で用いられるモータジェネレータで、例えば永久磁石型同期モータなどである。磁石は、希土類磁石が好適に用いられるが、他の永久磁石が用いられても良い。ロータコアの外周側へ向かうに従って拡開するV字形状乃至はU字形状を成すように複数対の磁石が設けられることにより1つの磁極が構成され、ロータコアの回転中心線まわりに等角度間隔で複数の磁極が設けられる場合、周方向に隣接する2つの磁極の中間線がq軸で、そのq軸の両側の2対の磁石が第1磁石、第2磁石であるが、磁石の配置パターンは、少なくともq軸を挟んで対称的に且つロータコアの径方向に離間して2対の磁石が配置されるように適宜定められる。上記磁極は、一対の第1磁石および一対の第2磁石を含む計4つ以上の磁石がV字形状乃至はU字形状を成すように配置された第1層と、第1層よりもロータコアの外周側にV字形状乃至はU字形状を成すように複数の磁石が配置された第2層と、を有する複数層構造が望ましいが、第1層のみから成る単層構造の磁極であっても良い。
【0018】
磁石は、フラックスバリア等の磁石取付孔に挿入されて固定され、磁石取付孔のコーナーには、例えば磁石の角部との間に間隙(コーナー間隙)が設けられるようになっているが、間隙が殆ど無い状態で磁石が挿入されても良い。コーナー間隙が無い場合、第1磁石については、長方形断面のq軸側の長辺におけるロータコアの外周側の角部を外周側境界点とし、第2磁石については、長方形断面のq軸側の長辺におけるロータコアの内周側の角部を内周側境界点とすれば良い。コーナー間隙がある場合、第1磁石については、長方形断面のq軸側の長辺上であって外周側の角部からコーナー間隙部分を除いた位置を外周側境界点とし、第2磁石については、長方形断面のq軸側の長辺上であって内周側の角部からコーナー間隙部分を除いた位置を内周側境界点とすれば良い。第1磁石および第2磁石は、第1磁石の長方形断面のq軸側の長辺におけるロータコアの外周側の角部に対して、第2磁石の長方形断面のq軸側の長辺におけるロータコアの内周側の角部が、ロータコアの径方向の外周側に離間して位置するように配置される。
【0019】
かしめ部は、例えば積層鋼板に張出し加工乃至は絞り加工によって凹所を設けたり、両側部にスリットが設けられた部分をV字状に曲げ加工したり、バーリング穴を形成したりするなどして設けられる。このかしめ部は、例えばq軸に沿って通過するステータ磁束を阻害しないように、q軸に沿って長い長方形や長円形等の長手形状を成すように設けられるが、円形や正方形、或いはq軸に対して直角方向に長い長方形等のかしめ部が設けられても良い。
【0020】
一対の第1磁石の逆V字形状の頂点S1の角度は、例えば一対の第2磁石の逆V字形状の頂点S2の角度の3倍以上とされ、4倍以上であっても良いが、少なくとも頂点S1の角度が頂点S2の角度よりも大きければ3倍未満でも本発明は適用され得る。
【実施例】
【0021】
以下、本発明の実施例を、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の実施例において、図は説明のために適宜簡略化或いは変形されており、各部の寸法比や角度、形状等は必ずしも正確に描かれていない。
【0022】
図1は、本発明の一実施例である回転電機用ロータ12(以下、単にロータ12という)を備えている回転電機10を説明する図で、回転中心線Oに沿って切断した概略断面図である。
図2は、回転中心線Oと直角なロータ12の断面図で、1/4部分(90°の角度範囲)を拡大して示した図である。この回転電機10は永久磁石埋込型同期モータで、電動モータおよび発電機として択一的に用いることができるモータジェネレータであり、例えばハイブリッド車両を含む電気自動車の駆動力源として好適に用いられる。回転電機10は、回転中心線Oと同心に設けられたロータ12およびステータ14を備えている。本実施例の説明では回転電機10の回転中心線Oを、ロータ12やステータ14、ロータ軸20の中心線としても使用する。ステータ14は、ロータ12の外周側に配設された円筒形状のステータコア16と、そのステータコア16に巻回された複数のステータコイル18とを備えている。ステータコア16は、多数の円環形状の鋼板17を回転中心線Oに対して垂直な姿勢で軸方向、すなわち回転中心線Oと平行な方向に積層したもので、圧入或いは取付ボルト等を介して図示しないケースに固定されている。
【0023】
ロータ12は、ロータ軸20の外周面に取り付けられた円筒形状のロータコア22と、そのロータコア22に埋設された多数の磁石24とを備えている。ロータコア22は、多数の円環形状の鋼板23を回転中心線Oに対して垂直な姿勢で軸方向、すなわち回転中心線Oと平行な方向に積層したもので、その両端部に一対のエンドプレート30、30が設けられてロータ軸20に固定されている。鋼板23は積層鋼板に相当し、以下、積層鋼板23とも言う。ロータ軸20には鍔部32が設けられているとともにナット34が螺合されるようになっており、多数の積層鋼板23から成るロータコア22は、鍔部32とナット34との間で挟圧されてロータ軸20に固定される。磁石24は希土類磁石で、必要に応じて絶縁被膜によって被覆される。
【0024】
図2に示されているように、ロータコア22には4種類のフラックスバリア40a、40b、40c、40d(以下、特に区別しない場合は単にフラックスバリア40という。)がそれぞれ軸方向に貫通して設けられており、そのフラックスバリア40の磁石取付部にそれぞれ磁石24が挿入されて接着剤等により一定の姿勢で固定されている。
図2では、磁石24を6種類の磁石A、a、B、b、C、cで区別して表しており、以下の説明では必要に応じて磁石24を磁石A、a、B、b、C、cという。磁石A、a、B、b、C、cは、何れも回転中心線Oと直角な断面が長方形断面で、ロータコア22と略同じ長さ寸法を有する直方体形状を成している。フラックスバリア40aには2個の磁石A、Bが取り付けられ、フラックスバリア40bには2個の磁石a、bが取り付けられ、フラックスバリア40cには磁石Cが取り付けられ、フラックスバリア40dには磁石cが取り付けられている。フラックスバリア40a、40bは、それぞれ途中で折れ曲がった長手形状を成しており、折れ曲がり部分の両側にそれぞれ磁石A、B、a、bが固定されている。また、各フラックスバリア40には、磁石24の両側に空洞部分が残っており、磁石24を冷却する冷却流体の通路として利用できる。フラックスバリア40は磁石取付孔に相当する。
【0025】
4種類のフラックスバリア40a~40dは、ロータコア22の外周側へ向かうに従って拡開するV字形状乃至はU字形状を成すV字配置パターンで設けられており、その1つのV字配置パターンに配置された6つの磁石24によって1つの磁極Mvが構成されている。そして、ロータコア22には、磁極Mvが回転中心線Oまわりに等角度間隔で複数(本実施例では8つ)設けられている。磁極MvのV字配置パターンは、回転中心線Oを通るd軸を中心線として対称形状を成している。すなわち、一対のフラックスバリア40aおよび40bはd軸を挟んで対称形状で、フラックスバリア40aに設けられた磁石A、Bと、フラックスバリア40bに設けられた磁石a、bとは、d軸を挟んで対称的に配置され、全体としてV字形状乃至はU字形状を成している。また、フラックスバリア40cおよび40dはd軸を挟んで対称形状で、フラックスバリア40cに設けられた磁石Cと、フラックスバリア40dに設けられた磁石cとは、d軸を挟んで対称的に配置され、両方でV字形状乃至はU字形状を成している。本実施例の磁極Mvは、V字形状乃至はU字形状を成すように4つの磁石A、a、B、bが配置された第1層Mv1と、その第1層Mv1よりもロータコア22の外周側にV字形状乃至はU字形状を成すように一対の磁石C、cが配置された第2層Mv2と、を有する2層構造を成している。なお、第2層Mv2を省略することも可能である。
【0026】
このようなロータ12においては、周方向に隣接する2つの磁極Mvの境界の中間線がq軸となり、回転電機10として使用される際にステータ14によって形成される回転磁界の磁束(ステータ磁束)は、そのq軸に沿ってロータ12内を通過する。この場合、q軸の両側に最も近接して位置する一対のフラックスバリア40a、40bは、ロータコア22の内周側へ向かうに従って拡開する逆V字形状を成すように、q軸を挟んで周方向の両側に対称的に配置される。また、フラックスバリア40a、40bに固定された長方形断面の磁石Aおよびa、Bおよびbは、それぞれ長方形断面の長辺が逆V字形状を形成する姿勢となり、q軸を挟んで周方向の両側に対称的に配置される。ロータコア22の内周側に配置された一対の磁石Aおよびaは第1磁石で、外周側に配置された一対の磁石Bおよびbは第2磁石であり、以下の説明では必要に応じて第1磁石A、a、第2磁石B、bともいう。第2磁石B、bは、ロータコア22の径方向において第1磁石A、aよりも外周側に離間して配置されている。詳細には、第1磁石A、aの長方形断面のq軸側の長辺As、as(
図4、
図5参照)におけるロータコア22の外周側の角部(
図5における外周側境界点PA2、Pa2)に対して、第2磁石B、bの長方形断面のq軸側の長辺Bs、bs(
図4、
図5参照)におけるロータコア22の内周側の角部(
図5における内周側境界点PB2、Pb2)が、ロータコア22の径方向の外周側(
図4、
図5における上方側)に離間して位置するように、第1磁石A、aおよび第2磁石B、bが配置される。
【0027】
図2の実線の矢印fsは、q軸に沿って通過するステータ磁束の磁力線の一例であり、q軸の両側に設けられたフラックスバリア40a、40bの内側をステータ磁束が通過させられる。ステータ磁束の磁力線fsの方向は逆向きでも良い。また、q軸上であって、フラックスバリア40a、40bよりもロータコア22の内周側部分には、ロータコア22を軸方向に貫通するように空洞部42が設けられている。空洞部42は、例えば磁石24の中の特にロータコア22の最も内周側に配設された一対の第1磁石A、aを冷却するために内部を冷却流体が流通させられる冷却孔、或いは磁束の流れを規制する磁束迂回孔として用いられるもので、その両方として機能するものでも良い。空洞部42は、q軸を対称軸として周方向の両側に対称的に延び出すように設けられており、ロータコア22の外周側に向かって凸となる湾曲形状を成している。
【0028】
第1磁石Aとa、第2磁石Bとbは、それぞれNSの極性が反対で、第1磁石Aとaの対面部分の間、第2磁石Bとbの対面部分の間には、それぞれ磁束通路が形成される。
図2の破線の矢印fr1~fr4は、第1磁石Aとaとの間、第2磁石Bとbとの間、の磁石磁束の磁力線を例示したもので、第1磁石Aおよびaのq軸を挟んで互いに対面する側の長辺As、asの相互間を結ぶ磁力線fr1、fr2の間の領域が、第1磁石Aとaとの間の磁石磁束の通過領域で、第1磁束通路αである。また、第2磁石Bおよびbのq軸を挟んで互いに対面する側の長辺Bs、bsの相互間を結ぶ磁力線fr3、fr4との間の領域が、第2磁石Bとbとの間の磁石磁束の通過領域で、第2磁束通路βである。磁束通路α、βの磁力線fr1~fr4の方向は逆向きでも良く、磁力線fr1~fr4の経路は、磁石A、a、B、bの姿勢や磁気量(磁気モーメント)、ロータコア22の透磁率等によって相違する。また、フラックスバリア40の磁石取付部には、磁石24の角部との間に間隙(コーナー間隙)が設けられるが、このコーナー間隙は磁気抵抗になるため、
図2の磁力線fr1~fr4は、磁石24の角部からコーナー間隙部分を除いた内側位置を結ぶように形成される。
【0029】
ロータコア22には、q軸上であって空洞部42と異なる位置に、多数の積層鋼板23を位置決めするかしめ部50が設けられている。
図3は、かしめ部50の一例を説明する断面図で、ロータコア22を構成する多数の積層鋼板23を重ね合わせた状態で、両端の積層鋼板23に設けられた貫通穴52の一方にパンチを挿入して押圧することにより、張出し加工乃至は絞り加工が施されて凹所54が形成され、この凹所54が互いに嵌合されることによって多数の積層鋼板23が位置決めされ、回転中心線Oと直角な平面内(
図2の紙面と平行な平面内)において相対変位不能に結合される。ロータコア22を構成する多数の積層鋼板23を、所定枚数ずつに分けて凹所54を形成しても良い。
【0030】
上記かしめ部50では磁気抵抗が大きくなって磁束の通過が阻害され、磁束量が減少してモータトルクが低下したり、周辺の磁束変動で渦電流による鉄損が増加してモータ効率が低下したりする可能性がある。このため、かしめ部50は、
図2の実線の矢印fsで示されるようにq軸に沿って通過するステータ磁束を阻害しないように、q軸に沿って長い長方形状を成している。かしめ部50はまた、第1磁石Aとaとの間に形成される第1磁束通路α、および第2磁石Bとbとの間に形成される第2磁束通路βを阻害しないように設ける必要がある一方、多数の積層鋼板23の位置決め性能などの条件によりロータコア22の径方向の中間部分に設ける必要がある場合があり、q軸上であって第1磁束通路αと第2磁束通路βとの間の領域にかしめ部50を設けることが望まれる。その場合に、第1磁束通路αおよび第2磁束通路βをどのように想定するか、言い換えれば第1磁束通路αと第2磁束通路βとの間の領域をどのように定めるかが問題になる。すなわち、磁束通路α、βを定めた前記磁力線fr1~fr4は、第1磁石Aおよびa、第2磁石Bおよびbの姿勢等から概念的に例示したもので、磁束通路α、βを阻害しないようにかしめ部50を設けるためには、磁束通路α、βの境界を具体的に定める必要がある。
【0031】
図4を参照して、上記かしめ部50の位置を具体的に説明する。
図4は、q軸の両側の一対のフラックスバリア40a、40bの近傍部分を、
図2よりも更に拡大して示した図である。この
図4において、頂点S1は、ロータコア22の内周側の一対の第1磁石Aおよびaの長方形断面のq軸側の長辺As、asをそれぞれ延長した交点で、長方形断面の第1磁石A、aの逆V字形状の頂点である。また、頂点S2は、ロータコア22の外周側の一対の第2磁石Bおよびbの長方形断面のq軸側の長辺Bs、bsをそれぞれ延長した交点で、長方形断面の第2磁石B、bの逆V字形状の頂点である。そして、頂点S1の角度(逆V字形状の開き角度)は、頂点S2の角度(逆V字形状の開き角度)よりも大きく、本実施例では3倍以上である。具体的には、頂点S1の角度は100°~140°の範囲内で、実施例では約120°であり、頂点S2の角度は20°~40°の範囲内で、実施例では約25°であり、頂点S1の角度は頂点S2の角度の4倍以上である。
【0032】
そして、本実施例では、第1磁石A、aの長方形断面のq軸側の長辺As、as上であって、ロータコア22の外周側に位置する角部からコーナー間隙部分を除いた位置に、第1磁束通路αの外周側境界点PA1、Pa1を設定し、前記頂点S2を中心として一対の第1磁石A、aの外周側境界点PA1、Pa1を通る円弧を、第1磁束通路αの外周側の境界仮想線である第1境界仮想線La1とする。また、第2磁石B、bの長方形断面のq軸側の長辺Bs、bs上であって、ロータコア22の内周側に位置する角部からコーナー間隙部分を除いた位置に、第2磁束通路βの内周側境界点PB1、Pb1を設定し、前記頂点S2を中心として一対の第2磁石B、bの内周側境界点PB1、Pb1を通る円弧を、第2磁束通路βの内周側の境界仮想線である第2境界仮想線Lb1とする。かしめ部50は、q軸上であって第1境界仮想線La1と第2境界仮想線Lb1との間の領域に設けられている。これにより、かしめ部50が磁束通路αおよびβを阻害することが抑制され、かしめ部50に起因するモータトルクやモータ効率の低下が抑制される。境界仮想線La1、Lb1は、それぞれ
図2の磁力線fr2、fr3と近似しており、かしめ部50が第1境界仮想線La1と第2境界仮想線Lb1との間の領域に設けられることにより、かしめ部50が第1磁石A、a間および第2磁石B、b間の磁石磁束の通過を阻害することが適切に抑制される。
【0033】
ここで、頂点S1の角度が頂点S2の角度の3倍以上で、一対の第1磁石A、aの逆V字形状の開き角度(頂点S1の角度)が比較的大きく、その第1磁石A、aに関する第1境界仮想線La1をどのように設定するかが問題になる。本実施例では、頂点S2を中心として第1磁石A、aの外周側境界点PA1、Pa1を通る円弧を第1境界仮想線La1としてかしめ部50の位置を定めるため、第1磁束通路αを阻害することを抑制しつつロータコア22の径方向の中間部分にかしめ部50を設けることができる。すなわち、頂点S1を中心として一対の第1磁石A、aの外周側境界点PA1、Pa1を通る円弧を第1境界仮想線La1とすることが考えられるが、その場合、頂点S1の角度が大きいことから第1境界仮想線La1はロータコア22の内周側へ大きく膨らみ、第1境界仮想線La1よりもロータコア22の外周側すなわちかしめ部50が設けられる側にも第1磁束通路αが形成されて、かしめ部50により磁束の通過が阻害される可能性がある。また、一対の第1磁石A、aの外周側境界点PA1、Pa1を直線で結んで第1境界仮想線La1とすることが考えられるが、かしめ部50を設けることができる領域が狭くなり、かしめ部50を適切に設けることができなくなる可能性がある。
【0034】
このように本実施例の回転電機10のロータ12によれば、一対の第1磁石A、aの長方形断面のq軸側の長辺As、as上であってコーナー間隙部分を除いた位置に、第1磁束通路αの外周側境界点PA1、Pa1を設定して、頂点S2を中心としてその外周側境界点PA1、Pa1を通る円弧を第1境界仮想線La1とし、一対の第2磁石B、bの長方形断面のq軸側の長辺Bs、bs上であってコーナー間隙部分を除いた位置に、第2磁束通路βの内周側境界点PB1、Pb1を設定して、頂点S2を中心としてその内周側境界点PB1、Pb1を通る円弧を第2境界仮想線Lb1とする。そして、q軸上であって第1境界仮想線La1と第2境界仮想線Lb1との間の領域、言い換えればロータコア22の径方向の中間部分に、かしめ部50が設けられている。これにより、例えば積層鋼板23の位置決め性能等の条件を満たすことができる。
【0035】
一方、第1磁石A、aよりもロータコア22の外周側に、第1磁石A、aの頂点S1の角度よりも小さい角度となる逆V字形状の姿勢で第2磁石B、bが配置されており、その第2磁石B、bの頂点S2を中心として第1磁石A、aの外周側境界点PA1、Pa1を通る円弧が第1境界仮想線La1とされているが、その第1境界仮想線La1は第1磁石A、a間の第1磁束通路αにおけるロータコア22の外周側の境界線(磁力線fr2)に近似している。また、頂点S2を中心として第2磁石B、bの内周側境界点PB1、Pb1を通る円弧が第2境界仮想線Lb1とされているが、その第2境界仮想線Lb1は第2磁石B、b間の第2磁束通路βにおけるロータコア22の内周側の境界線(磁力線fr3)に近似している。このため、その第1境界仮想線La1と第2境界仮想線Lb1との間の領域にかしめ部50が設けられることにより、第1磁束通路αおよび第2磁束通路βを阻害することが適切に抑制され、かしめ部50に起因するモータトルクやモータ効率の低下が抑制される。
【0036】
また、本実施例のロータ12は、複数の磁石24がd軸を対称軸としてV字形状乃至はU字形状を成すように対称的に複数対設けられた磁極Mvが、ロータコアの回転中心線Oまわりに複数設けられており、周方向に隣接する2つの磁極Mvの中間線がq軸で、そのq軸を挟んで周方向の両側に位置する2対の磁石24が第1磁石Aおよびa、第2磁石Bおよびbの場合であり、第1磁石A、a間の第1磁束通路αおよび第2磁石B、b間の第2磁束通路βを阻害することを抑制しつつロータコア22の径方向の中間部分にかしめ部50が設けられるようにするための本発明が好適に適用される。
【0037】
また、上記磁極Mvは、一対の第1磁石A、aおよび一対の第2磁石B、bの計4つの磁石24が配置された第1層Mv1と、その第1層Mv1よりもロータコア22の外周側にV字形状乃至はU字形状を成すように一対の磁石C、cが配置された第2層Mv2と、を有する2層構造を成しているが、頂点S2に基づいて第1境界仮想線La1および第2境界仮想線Lb1を定めてかしめ部50の位置を設定することにより、第1磁束通路αおよび第2磁束通路βを阻害することを抑制しつつロータコア22の径方向の中間部分にかしめ部50が設けられるようにする、という本発明の効果が適切に得られる。
【0038】
また、頂点S1の角度が頂点S2の角度の3倍以上で、一対の第1磁石A、aの逆V字形状の開き角度(頂点S1の角度)が比較的大きく、その第1磁石A、aに関する第1境界仮想線La1をどのように設定するかが問題になるが、頂点S2を中心として第1磁石A、aの外周側境界点PA1、Pa1を通る円弧を第1境界仮想線La1としてかしめ部50の位置を設定することにより、第1磁石A、a間の第1磁束通路αを阻害することを抑制しつつロータコア22の径方向の中間部分にかしめ部50を設けることができる。
【0039】
なお、上記実施例では、フラックスバリア40a、40bの磁石取付部にコーナー間隙が設けられており、第1磁石A、aの外周側境界点PA1、Pa1および第2磁石B、bの内周側境界点PB1、Pb1が、コーナー間隙部分を除いた位置に定められていたが、
図5に示すようにフラックスバリア40a、40bの磁石取付部にコーナー間隙が無いか無視できる場合は、第1磁石A、aの角部を外周側境界点PA2、Pa2とし、第2磁石B、bの角部を内周側境界点PB2、Pb2とすれば良い。具体的には、第1磁石A、aの長方形断面のq軸側の長辺As、asにおけるロータコア22の外周側の角部を、第1磁束通路αの外周側境界点PA2、Pa2に設定し、頂点S2を中心として一対の外周側境界点PA2、Pa2を通る円弧を、第1磁束通路αの外周側の境界仮想線である第1境界仮想線La2とする。また、第2磁石B、bの長方形断面のq軸側の長辺Bs、bsにおけるロータコア22の内周側の角部を、第2磁束通路βの内周側境界点PB2、Pb2に設定し、頂点S2を中心として一対の内周側境界点PB2、Pb2を通る円弧を、第2磁束通路βの内周側の境界仮想線である第2境界仮想線Lb2とする。そして、q軸上であって第1境界仮想線La2と第2境界仮想線Lb2との間の領域にかしめ部60が設けられる。これにより、磁束通路αおよびβを阻害することを抑制しつつロータコア22の径方向の中間部分にかしめ部60を設けることができるなど、実質的に前記実施例と同様の作用効果が得られる。
【0040】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、これ等はあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
【符号の説明】
【0041】
10:回転電機 12:回転電機用ロータ 22:ロータコア 23:積層鋼板 24、A、a、B、b、C、c:磁石 A、a:磁石(第1磁石) B、b:磁石(第2磁石) 40a、40b、40c、40d:フラックスバリア(磁石取付孔) 50、60:かしめ部 O:回転中心線 d:d軸 q:q軸 Mv:磁極 Mv1:第1層 Mv2:第2層 α:第1磁束通路 β:第2磁束通路 S1:第1磁石の逆V字形状の頂点 S2:第2磁石の逆V字形状の頂点 As、as:第1磁石の長辺 Bs、bs:第2磁石の長辺 PA1、Pa1、PA2、Pa2:外周側境界点 PB1、Pb1、PB2、Pb2:内周側境界点 La1、La2:第1境界仮想線 Lb1、Lb2:第2境界仮想線