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特許7396317認証装置、車両、認証方法及び認証プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-04
(45)【発行日】2023-12-12
(54)【発明の名称】認証装置、車両、認証方法及び認証プログラム
(51)【国際特許分類】
   E05B 49/00 20060101AFI20231205BHJP
   B60R 25/24 20130101ALI20231205BHJP
   H04Q 9/00 20060101ALI20231205BHJP
   G01S 3/46 20060101ALI20231205BHJP
   G01S 5/02 20100101ALI20231205BHJP
   G01S 13/42 20060101ALI20231205BHJP
【FI】
E05B49/00 K
B60R25/24
H04Q9/00 301B
G01S3/46
G01S5/02 Z
G01S13/42
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021037732
(22)【出願日】2021-03-09
(65)【公開番号】P2022137978
(43)【公開日】2022-09-22
【審査請求日】2023-02-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】丁子 浩明
(72)【発明者】
【氏名】西山 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】高田 直幸
【審査官】河本 明彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-71190(JP,A)
【文献】特開2012-87515(JP,A)
【文献】特開2018-199971(JP,A)
【文献】特開2006-105723(JP,A)
【文献】特表2019-518640(JP,A)
【文献】国際公開第2010/038359(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0291127(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 49/00
B60R 25/24
H03J 9/00-9/06
H04Q 9/00-9/16
G01S 3/46,5/02,13/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され、端末と第一の無線通信を行う第一通信部と、
前記車両に複数搭載され、前記端末と第二の無線通信を行う第二通信部と、
前記第一通信部における前記端末との第一の無線通信に基づいて、前記端末が前記第一通信部に対して位置する距離及び角度を算出する算出部と、
複数の前記第二通信部のうち前記算出部が算出した角度に対応する前記第二通信部において、前記端末との前記第二の無線通信を実行させる実行部と、
実行される前記第二の無線通信及び算出された距離に基づいて、前記第二の無線通信が実行される前記第二通信部に対応するエリアに前記端末が存在するかを判定する判定部と、
を備える認証装置。
【請求項2】
前記判定部は、
前記算出部により算出された角度に基づいて閾値となる判定距離を設定し、前記第二の無線通信により前記端末との通信が成立し、かつ前記算出部により算出された距離が前記判定距離以下である場合、前記エリアに前記端末が存在すると判定する請求項1に記載の認証装置。
【請求項3】
前記第二通信部は、前記車両の運転席ドア、助手席ドア及び後部ドアのそれぞれに対応する場所に設けられ、
前記実行部は、前記算出部により算出された角度にある前記第二通信部による前記第二の無線通信を実行させる請求項1又は2に記載の認証装置。
【請求項4】
前記実行部は、前記算出部により算出された角度が前記運転席ドア及び前記助手席ドアに対応しない場合、前記後部ドアに対応する前記第二通信部による前記第二の無線通信を実行させる請求項3に記載の認証装置。
【請求項5】
請求項1~4の何れか1項に記載の認証装置と、
前記認証装置により施錠及び開錠を可能とする運転席ドア、助手席ドア及び後部ドアと、
を備える車両。
【請求項6】
前記第一通信部は、前記車両における電波の見通しのよい場所に設置されている請求項5に記載の車両。
【請求項7】
車両に搭載され、端末と第一の無線通信を行う第一通信部及び前記端末と第二の無線通信を行う第二通信部を含む認証装置における認証方法であって、
前記第一通信部における前記端末との第一の無線通信に基づいて、前記端末が前記第一通信部に対して位置する距離及び角度を算出し、
複数の前記第二通信部のうち算出された角度に対応する前記第二通信部において、前記端末との前記第二の無線通信を実行し、
実行される前記第二の無線通信及び算出された距離に基づいて、前記第二の無線通信が実行される前記第二通信部に対応するエリアに前記端末が存在するかを判定する、
処理をコンピュータが実行する認証方法。
【請求項8】
車両に搭載され、端末と第一の無線通信を行う第一通信部及び前記端末と第二の無線通信を行う第二通信部を含む認証装置における処理を実行する認証プログラムであって、
前記第一通信部における前記端末との第一の無線通信に基づいて、前記端末が前記第一通信部に対して位置する距離及び角度を算出し、
複数の前記第二通信部のうち算出された角度に対応する前記第二通信部において、前記端末との前記第二の無線通信を実行し、
実行される前記第二の無線通信及び算出された距離に基づいて、前記第二の無線通信が実行される前記第二通信部に対応するエリアに前記端末が存在するかを判定する、
処理をコンピュータに実行させる認証プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は認証装置、車両、認証方法及び認証プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、中継器を介した通信の不正成立、所謂、リレーアタックを生じ難くすることができる電子キーシステムが開示されている。当該電子キーシステムでは、複数のドアのそれぞれに設置されるLF(Low Frequency)アンテナが発生する複数の通信エリアのうち、電子キーが存在する通信エリアに対応するLFアンテナの位置が含まれるようにUWB(Ultra Wide Band)の測距判定閾値を設定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-071190号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の電子キーシステムでは、複数の通信エリアにおけるLF通信部を全て動作させる必要があり、電力を消費する。
【0005】
本発明は、リレーアタックを抑制すると共に、電子キーとの通信時における電力の消費を抑制する認証装置、車両、認証方法及び認証プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
車両に搭載され、端末と第一の無線通信を行う第一通信部と、前記車両に複数搭載され、前記端末と第二の無線通信を行う第二通信部と、前記第一通信部における前記端末との第一の無線通信に基づいて、前記端末が前記第一通信部に対して位置する距離及び角度を算出する算出部と、複数の前記第二通信部のうち前記算出部が算出した角度に対応する前記第二通信部において、前記端末との前記第二の無線通信を実行させる実行部と、実行される前記第二の無線通信及び算出された距離に基づいて、前記第二の無線通信が実行される前記第二通信部に対応するエリアに前記端末が存在するかを判定する判定部と、を備えている。
【0007】
請求項1に記載の認証装置は、端末と通信を行う第一通信部及び第二通信部を備えている。第一通信部は端末との間で第一の無線通信を行う。第二通信部は複数設けられており、端末との間で第二の無線通信を行う。当該認証装置では、算出部が、端末との第一の無線通信に基づいて、当該端末が第一通信部に対して位置する距離及び角度を算出し、実行部が算出された角度に対応する第二通信部において、端末との第二の無線通信を実行させる。そして、判定部が、実行される第二の無線通信及び算出された距離に基づいて、第二の無線通信が実行される第二通信部に対応するエリアに端末が存在するかを判定する。当該認証装置によれば、端末の角度に基づいて、複数ある第二通信部のうちの一の第二通信部に無線通信を実行させることで、端末との通信時における電力の消費を抑制することができる。また、第二通信部に対応するエリアに端末が存在する場合に開錠を行うことができるため、中継器を利用したリレーアタックが抑制される。
【0008】
請求項2に記載の認証装置は、請求項1に記載の認証装置において、前記判定部は、前記算出部により算出された角度に基づいて閾値となる判定距離を設定し、前記第二の無線通信により前記端末との通信が成立し、かつ前記算出部により算出された距離が前記判定距離以下である場合、前記エリアに前記端末が存在すると判定する。
【0009】
請求項2に記載の認証装置では、算出された端末の角度に基づいて判定部が判定する場合の判定距離を動的に変更することにより、リレーアタックに対するセキュリティ性能を確保することができる。
【0010】
請求項3に記載の認証装置は、請求項1又は2に記載の認証装置において、前記第二通信部は、前記車両の運転席ドア、助手席ドア及び後部ドアのそれぞれに対応する場所に設けられ、前記実行部は、前記算出部により算出された角度にある前記第二通信部による前記第二の無線通信を実行させる。
【0011】
請求項3に記載の認証装置によれば、車両のドア毎にリレーアタックへの対策を施すことができる。
【0012】
請求項4に記載の認証装置は、請求項3に記載の認証装置において、前記実行部は、前記算出部により算出された角度が前記運転席ドア及び前記助手席ドアに対応しない場合、前記後部ドアに対応する前記第二通信部による前記第二の無線通信を実行させる。
【0013】
請求項4に記載の認証装置によれば、後部ドアの判定に係る処理を簡素化することができる。
【0014】
請求項5に記載の車両は、請求項1~4の何れか1項に記載の認証装置と、前記認証装置により施錠及び開錠を可能とする運転席ドア、助手席ドア及び後部ドアと、を備えている。
【0015】
請求項5に記載の車両によれば、リレーアタックを抑制すると共に、電子キーとの通信時における電力の消費を抑制することができる。
【0016】
請求項6に記載の車両は、請求項5に記載の車両において、前記第一通信部は、前記車両における電波の見通しのよい場所に設置されている。
【0017】
請求項6に記載の車両によれば、第一通信部を必ずしも車両の中央に設置する必要がないため、第一通信部の設置場所の自由度を確保することができる。
【0018】
請求項7に記載の認証方法は、車両に搭載され、端末と第一の無線通信を行う第一通信部及び前記端末と第二の無線通信を行う第二通信部を含む認証装置における認証方法であって、前記第一通信部における前記端末との第一の無線通信に基づいて、前記端末が前記第一通信部に対して位置する距離及び角度を算出し、複数の前記第二通信部のうち算出された角度に対応する前記第二通信部において、前記端末との前記第二の無線通信を実行し、実行される前記第二の無線通信及び算出された距離に基づいて、前記第二の無線通信が実行される前記第二通信部に対応するエリアに前記端末が存在するかを判定する、処理をコンピュータが実行する。
【0019】
請求項7に記載の認証方法は、端末と通信を行う第一通信部及び第二通信部を備えた認証装置に適用される方法である。ここで、第一通信部及び第二通信部は上述のとおりである。当該認証方法では、コンピュータが、端末との第一の無線通信に基づいて、当該端末が第一通信部に対して位置する距離及び角度を算出し、算出された角度に対応する第二通信部において、端末との第二の無線通信を実行させる。そして、コンピュータが、実行される第二の無線通信及び算出された距離に基づいて、第二の無線通信が実行される第二通信部に対応するエリアに端末が存在するかを判定する。当該認証方法によれば、端末の角度に基づいて、複数ある第二通信部のうちの一の第二通信部に無線通信を実行させることで、端末との通信時における電力の消費を抑制することができる。また、第二通信部に対応するエリアに端末が存在する場合に開錠を行うことができるため、中継器を利用したリレーアタックが抑制される。
【0020】
請求項8に記載の認証プログラムは、車両に搭載され、端末と第一の無線通信を行う第一通信部及び前記端末と第二の無線通信を行う第二通信部を含む認証装置における処理を実行する認証プログラムであって、前記第一通信部における前記端末との第一の無線通信に基づいて、前記端末が前記第一通信部に対して位置する距離及び角度を算出し、複数の前記第二通信部のうち算出された角度に対応する前記第二通信部において、前記端末との前記第二の無線通信を実行し、実行される前記第二の無線通信及び算出された距離に基づいて、前記第二の無線通信が実行される前記第二通信部に対応するエリアに前記端末が存在するかを判定する、処理をコンピュータに実行させる。
【0021】
請求項8に記載の認証プログラムは、端末と通信を行う第一通信部及び第二通信部を備えた認証装置においてコンピュータに次の処理を実行させる。ここで、第一通信部及び第二通信部は上述のとおりである。当該認証プログラムでは、コンピュータが、端末との第一の無線通信に基づいて、当該端末が第一通信部に対して位置する距離及び角度を算出し、算出された角度に対応する第二通信部において、端末との第二の無線通信を実行させる。そして、コンピュータが、実行される第二の無線通信及び算出された距離に基づいて、第二の無線通信が実行される第二通信部に対応するエリアに端末が存在するかを判定する。当該認証プログラムによれば、端末の角度に基づいて、複数ある第二通信部のうちの一の第二通信部に無線通信を実行させることで、端末との通信時における電力の消費を抑制することができる。また、第二通信部に対応するエリアに端末が存在する場合に開錠を行うことができるため、中継器を利用したリレーアタックが抑制される。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、リレーアタックを抑制すると共に、電子キーとの通信時における電力の消費を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】実施形態に係る電子キーシステムの概略構成図である。
図2】実施形態に係る電子キーシステムの構成を示すブロック図である。
図3】実施形態のECUにおけるCPUの機能構成を示すブロック図である。
図4】実施形態における開錠処理の流れを示すフローチャートである。
図5】実施形態におけるエリア照合処理の流れを示すフローチャート。
図6】実施形態における作用を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して本発明の実施形態の一例を詳細に説明する。
【0025】
(構成)
図1及び図2に示されるように、本実施形態の電子キーシステム10は、車載器11と、複数のドアロック装置28と、端末としての電子キー14とを含んで構成されている。車載器11及びドアロック装置28は車両12に搭載されている。この車両12は、運転席側の運転席ドア13Aと、助手席側の助手席ドア13Bと、車両後部の後部ドア13Cと、を有している。ドアロック装置28は、運転席ドア13Aの施錠及び開錠を行う運転席ドアロック28Aと、助手席ドア13Bの施錠及び開錠を行う助手席ドアロック28Bと、後部ドア13Cの施錠及び開錠を行う後部ドアロック28Cと、を含む。
【0026】
図2に示されるように、車両12に搭載される車載器11は、ECU(Electronic Control Unit)20、複数のLF(Low Frequency)送信部22、UHF(Ultra High Frequency)受信部24及び測距ユニット25を含む。ECU20、UHF受信部24及び測距ユニット25は、車両12における電波の見通しのよい場所であって、例えば、車両12の最後部のピラーに設けられている。ECU20の構成については後述する。
【0027】
LF送信部22は、LF帯の無線通信を行う通信ユニットであって、後述するLF受信部42に向けて要求信号を送信する。LF送信部22は第二通信部の一例である。本実施形態のLF送信部22は、運転席ドア13Aに対して設置されたLF送信部22Aと、助手席ドア13Bに対して設置されたLF送信部22Bと、後部ドア13Cに対して設置されたLF送信部22Cと、を含む。
【0028】
UHF受信部24は、UHF帯の無線通信を行う通信ユニットであって、後述するUHF送信部44から応答信号を受信する。
【0029】
測距ユニット25は、UWB通信部26を含んで構成されている。UWB通信部26は、UWB(超広帯域)の無線通信を行う通信ユニットであって、後述するUWB通信部46との間で通信を行う。UWB通信部26は少なくとも2つ以上のアンテナを備えており、後述するECU20は、各アンテナにおける電波の位相情報を基に電波の到来方向を算出することができる。UWB通信部26は第一通信部の一例である。
【0030】
ECU20は、CPU(Central Processing Unit)20A、ROM(Read Only Memory)20B、RAM(Random Access Memory)20C、及び入出力I/F(Inter Face)20Dを含んで構成されている。CPU20A、ROM20B、RAM20C及び入出力I/F20Dは、図示しない内部バスを介して相互に通信可能に接続されている。
【0031】
CPU20Aは、中央演算処理ユニットであり、各種プログラムを実行したり、各部を制御したりする。すなわち、CPU20Aは、ROM20Bからプログラムを読み出し、RAM20Cを作業領域としてプログラムを実行する。
【0032】
ROM20Bは、各種プログラム及び各種データを記憶している。本実施形態のROM20Bには、認証プログラム100及びID(Identification)情報110が記憶されている。
【0033】
認証プログラム100は、ECU20を制御するためのプログラムである。ID情報110は、車両12に固有のIDの情報が記憶されている。
【0034】
RAM20Cは、作業領域として一時的にプログラム又はデータを記憶する。
入出力I/F20Dは、LF送信部22、UHF受信部24、UWB通信部26及び各ドアロック装置28のそれぞれと通信するためのインタフェースである。
【0035】
なお、ECU20は、ROM20Bに加えて又はROM20Bに代えて記憶部としてのストレージを含んでいてもよい。このストレージは、例えば、HDD(Hard Disk Drive)又はSSD(Solid State Drive)により構成される。
【0036】
図3に示されるように、本実施形態のECU20では、CPU20Aが、認証プログラム100を実行することで、算出部200、実行部210、判定部220及び認証部230として機能する。
【0037】
算出部200は、UWB通信部26における電子キー14とのUWB(超広帯域)の無線通信に基づいて、電子キー14が測距ユニット25に対して位置する距離及び角度を算出する機能を有している。
【0038】
実行部210は、複数のLF送信部22のうち算出部200が算出した角度に対応するLF送信部22において、電子キー14とのLF帯の無線通信を実行させる機能を有している。
【0039】
判定部220は、実行されるLF帯の無線通信、及び算出された距離に基づいて、無線通信が実行されるLF送信部22に対応するエリアに電子キー14が存在するかを判定する機能を有している。本実施形態の判定部220は、算出部200により算出された角度に基づいて閾値となる判定距離を設定する。そして、判定部220は、LF送信部22による無線通信により電子キー14との通信が成立し、かつ算出部200により算出された距離が判定距離以下である場合、エリアに電子キー14が存在すると判定する。
【0040】
認証部230は、電子キー14が車両12に対応する端末であることを認証する機能を有している。本実施形態の認証部230は、電子キー14のID情報150に記憶されているIDがECU20におけるID情報110に記憶されているIDと一致した場合に電子キー14を認証する。
【0041】
図2に示されるように電子キー14は、車両12のユーザが携帯可能な電子デバイスである。電子キー14は、マイコン40と、LF受信部42と、UHF送信部44と、UWB通信部46と、を含む。マイコン40は、少なくとも不揮発性のメモリ40Bを含んで構成されている。メモリ40Bには、電子キー14に固有の情報であるID情報150が記憶されている。
【0042】
LF受信部42は、LF帯の無線通信を行う通信ユニットであって、LF送信部22から要求信号を受信する。UHF送信部44は、UHF帯の無線通信を行う送信ユニットであって、UHF受信部24へ応答信号を送信する。
【0043】
UWB通信部46は、UWB(超広帯域)の無線通信を行う通信ユニットであって、UWB通信部26との間で通信を行う。
【0044】
(制御の流れ)
本実施形態のECU20において実行される処理の流れについて、図4及び図5のフローチャートを用いて説明する。ECU20における処理は、CPU20Aが、上述した算出部200、実行部210、判定部220及び認証部230として機能することにより実現される。
【0045】
まず、図4の開錠処理について説明する。
図4のステップS100において、CPU20Aはエリア照合処理を実行する。エリア照合処理の詳細については後述する。
【0046】
ステップS101において、CPU20AはID認証処理を実行する。ここで、エリア照合処理においては、車載器11から電子キー14に向けて要求信号が送信され、電子キー14は受信した要求信号に応答して応答信号を車載器11に向けて送信している。ID認証処理において、CPU20Aは応答信号に含まれるIDが車載器11側のIDと一致するかの照合、つまり認証を行う。
【0047】
ステップS102において、CPU20AはステップS101における認証により、応答信号に含まれるIDが車載器11側のIDと一致して認証が成功しているか否かの判定を行う。CPU20Aは認証が成功している判定した場合(ステップS102でYESの場合)、ステップS103に進む。一方、CPU20Aは認証に成功してないと判定した場合(ステップS102でNOの場合)、ステップS100に戻る。
【0048】
ステップS103において、CPU20Aはエリア照合処理において照合されているエリアのドアロックを開錠する。そして、開錠処理は終了する。
【0049】
次に、図5のエリア照合処理の詳細について、図6の例を参照しつつ説明する。
図5のステップS200において、CPU20Aは電子キー14とUWBの無線通信を行う。これにより、UWB通信部26は、電子キー14からUWBの無線通信による電波を受信する。
【0050】
ステップS201において、CPU20Aは測距ユニット25から電子キー14までの距離と電子キー14の測距ユニット25に対する角度を算出する。
【0051】
ステップS202において、CPU20Aは電子キー14が運転席方向、換言すると運転席ドア13Aの方向として規定したθ1(図6参照)にあるか否かの判定を行う。CPU20Aは電子キー14が運転席方向にあると判定した場合(ステップS202でYESの場合)、ステップS203に進む。一方、CPU20Aは電子キー14が運転席方向にはないと判定した場合(ステップS202でNOの場合)、ステップS207に進む。
【0052】
ステップS203において、CPU20Aはリレーアタックに対するRA対策エリアを運転席用に設定し、運転席エリアDAをエントリ準備状態とする。具体的には、図6に示されるように、CPU20Aは判定距離を、運転席エリアDAを含む距離L1に設定すると共に、LF送信部22Aをアクティブにする。
【0053】
図5のステップS204において、CPU20Aは運転席用のLF送信部22Aにより、電子キー14のエリアを測定する。具体的には、CPU20AはLF送信部22Aから電子キー14に向けてLF帯の電波を送信すると共に、同電波を受信した電子キー14から受信強度をUHF受信部24を通じて取得する。そして、CPU20Aは受信強度を基に電子キー14が運転席エリアDAに存在するか否かを判定する。
【0054】
ステップS205において、CPU20Aは電子キー14が運転席エリアDAに存在するか否かの判定を行う。CPU20Aは電子キー14が運転席エリアDAに存在すると判定した場合(ステップS205でYESの場合)、ステップS206に進む。一方、CPU20Aは電子キー14が運転席エリアDAに存在しないと判定した場合(ステップS205でNOの場合)、ステップS200に戻る。
【0055】
ステップS206において、CPU20Aは運転席エリアDAの照合を完了する。そして、CPU20Aは、エリア照合処理を終了させて開錠処理に戻る。
【0056】
ステップS207において、CPU20Aは電子キー14が助手席方向、換言すると助手席ドア13Bの方向として規定したθ2(図6参照)にあるか否かの判定を行う。CPU20Aは電子キー14が助手席方向にあると判定した場合(ステップS207でYESの場合)、ステップS208に進む。一方、CPU20Aは電子キー14が助手席方向にはないと判定した場合(ステップS207でNOの場合)、ステップS212に進む。
【0057】
ステップS208において、CPU20Aはリレーアタックに対するRA対策エリアを助手席用に設定し、助手席エリアPAをエントリ準備状態とする。具体的には、図6に示されるように、CPU20Aは判定距離を、助手席エリアPAを含む距離L2に設定すると共に、LF送信部22Bをアクティブにする。
【0058】
図5のステップS209において、CPU20Aは助手席用のLF送信部22Bにより、電子キー14のエリアを測定する。具体的には、CPU20AはLF送信部22Bから電子キー14に向けてLF帯の電波を送信すると共に、同電波を受信した電子キー14から受信強度をUHF受信部24を通じて取得する。そして、CPU20Aは受信強度を基に電子キー14が助手席エリアPAに存在するか否かを判定する。
【0059】
ステップS210において、CPU20Aは電子キー14が助手席エリアPAに存在するか否かの判定を行う。CPU20Aは電子キー14が助手席エリアPAに存在すると判定した場合(ステップS210でYESの場合)、ステップS211に進む。一方、CPU20Aは電子キー14が助手席エリアPAに存在しないと判定した場合(ステップS210でNOの場合)、ステップS200に戻る。
【0060】
ステップS211において、CPU20Aは助手席エリアPAの照合を完了する。そして、CPU20Aは、エリア照合処理を終了させて開錠処理に戻る。
【0061】
ステップS212において、CPU20Aはリレーアタックに対するRA対策エリアを後部ドア用に設定し、後部ドアエリアBAをエントリ準備状態とする。具体的には、図6に示されるように、CPU20Aは判定距離を、後部ドアエリアBAを含む距離L3に設定すると共に、LF送信部22Cをアクティブにする。
【0062】
なお、本実施形態では、電子キー14が運転席方向でも助手席方向でもない場合にRA対策エリアを後部ドア用に設定し、後部ドアエリアBAをエントリ準備状態としたがこの限りではない。例えば、CPU20Aは電子キー14が後部ドア13Cの方向として規定したθ3にある場合に、ステップS212の処理を実行してもよい。
【0063】
図5のステップS213において、CPU20Aは後部ドア用のLF送信部22Cにより、電子キー14のエリアを測定する。具体的には、CPU20AはLF送信部22Cから電子キー14に向けてLF帯の電波を送信すると共に、同電波を受信した電子キー14から受信強度をUHF受信部24を通じて取得する。そして、CPU20Aは受信強度を基に電子キー14が後部ドアエリアBAに存在するか否かを判定する。
【0064】
ステップS214において、CPU20Aは電子キー14が後部ドアエリアBAに存在するか否かの判定を行う。CPU20Aは電子キー14が後部ドアエリアBAに存在すると判定した場合(ステップS214でYESの場合)、ステップS215に進む。一方、CPU20Aは電子キー14が後部ドアエリアBAに存在しないと判定した場合(ステップS214でNOの場合)、ステップS200に戻る。
【0065】
ステップS215において、CPU20Aは後部ドアエリアBAの照合を完了する。そして、CPU20Aは、エリア照合処理を終了させて開錠処理に戻る。
【0066】
(実施形態のまとめ)
本実施形態のECU20では、算出部200が、電子キー14とのUWBの無線通信に基づいて、電子キー14が測距ユニット25に対して位置する距離及び角度を算出する。そして、実行部210が算出された角度に対応するLF送信部22において、電子キー14とのLF帯の無線通信を実行させる。さらに、判定部220が、実行されるLF帯の無線通信及び算出された距離に基づいて、実行されたLF送信部22に対応するエリアに電子キー14が存在するかを判定する。LF送信部22に対応するエリアは、運転席エリアDA、助手席エリアPA及び後部ドアエリアBAを含んでいる。
【0067】
以上のように構成されている本実施形態によれば、電子キー14の角度に基づいて、複数あるLF送信部22のうちの一のLF送信部22に無線通信を実行させることで、電子キー14との通信時における電力の消費を抑制することができる。また、動作させるLF送信部22を特定することで、システム全体の応答性を改善することができる。さらに、LF送信部22に対応するエリアに電子キー14が存在する場合に開錠を行うことができるため、中継器を利用したリレーアタックが抑制される。
【0068】
また本実施形態では、算出された電子キー14の角度に基づいて判定部220が判定する場合の判定距離を動的に変更することにより、リレーアタックに対するセキュリティ性能を確保することができる。特に本実施形態によれば、車両12において開錠を行う各ドア毎に判定距離を設定できるため、ドア毎にリレーアタックへの対策を施すことができる。
【0069】
UWBを使った電子キーの測距によりリレーアタックに対する対策を施す場合、従来技術においては、車両の中心にUWBのアンテナモジュールを設置することができれば、車両から均等の距離の範囲に対してセキュリティエリアを設定することができていた。しかし、実際の車両では、様々な制約から車両中心にアンテナモジュールを設置することが困難であって、車両から均等の距離の範囲にセキュリティエリアを設定すべく、例えば車両の前後に1つずつアンテナモジュールを設置すればコストが増加してしまう。これに対し、本実施形態の車両12によれば、測距用の測距ユニット25を必ずしも車両12の中央に設置する必要がないため、測距ユニット25の設置場所の自由度を確保することができる。本実施形態では、車両後部のピラーに測距ユニット25を設置していが、電波の見通しのよい場所であればこの限りではなく、例えば、フロントウィンドウ付近、リアウィンドウ付近及びルーフ等に設置してもよい。これにより、測距ユニット25の設置コストの増大を抑制することができる。
【0070】
[備考]
なお、本実施形態では、電子キー14の距離及び角度を得るためにUWB通信部26を設置し、応答信号の受信のためにUHF受信部24を設置したが、Bluetooth(登録商標)の通信装置を利用すれば、車載器11において、UWB通信部26及びUHF受信部24を一体化することができる。同様に、電子キー14において、UWB通信部46及びUHF送信部44を一体化することができる。
【0071】
上記実施形態でCPU20Aがソフトウェア(プログラム)を読み込んで実行した各種処理を、CPU以外の各種のプロセッサが実行してもよい。この場合のプロセッサとしては、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等の製造後に回路構成を変更可能なPLD(Programmable Logic Device)、及びASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路等が例示される。また、上述した各処理を、これらの各種のプロセッサのうちの1つで実行してもよいし、同種又は異種の2つ以上のプロセッサの組み合わせ(例えば、複数のFPGA、及びCPUとFPGAとの組み合わせ等)で実行してもよい。また、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造は、より具体的には、半導体素子等の回路素子を組み合わせた電気回路である。
【0072】
また、上記実施形態において、各プログラムはコンピュータが読み取り可能な非一時的記録媒体に予め記憶(インストール)されている態様で説明した。例えば、ECU20における認証プログラム100は、ROM20Bに予め記憶されている。しかしこれに限らず、各プログラムは、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、DVD-ROM(Digital Versatile Disc Read Only Memory)、及びUSB(Universal Serial Bus)メモリ等の非一時的記録媒体に記録された形態で提供されてもよい。また、プログラムは、ネットワークを介して外部装置からダウンロードされる形態としてもよい。
【0073】
上記実施形態で説明した処理の流れも、一例であり、主旨を逸脱しない範囲内において不要なステップを削除したり、新たなステップを追加したり、処理順序を入れ替えたりしてもよい。
【符号の説明】
【0074】
12 車両
13A 運転席ドア
13B 助手席ドア
13C 後部ドア
14 電子キー(端末)
20 ECU(認証装置)
22 LF送信部(第二通信部)
26 UWB通信部(第一通信部)
100 認証プログラム
200 算出部
210 実行部
220 判定部
BA 後部ドアエリア(第二通信部に対応するエリア)
DA 運転席エリア(第二通信部に対応するエリア)
PA 助手席エリア(第二通信部に対応するエリア)
図1
図2
図3
図4
図5
図6