(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-04
(45)【発行日】2023-12-12
(54)【発明の名称】内燃機関の制御装置
(51)【国際特許分類】
F02D 17/00 20060101AFI20231205BHJP
F01N 3/023 20060101ALI20231205BHJP
F02D 17/02 20060101ALI20231205BHJP
F02D 17/04 20060101ALI20231205BHJP
F02D 41/18 20060101ALI20231205BHJP
【FI】
F02D17/00 B
F01N3/023 A
F02D17/02 P
F02D17/04 M
F02D41/18
(21)【出願番号】P 2021070951
(22)【出願日】2021-04-20
【審査請求日】2023-03-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】野瀬 勇喜
(72)【発明者】
【氏名】池田 悠人
(72)【発明者】
【氏名】後藤 嵩允
【審査官】小関 峰夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-269223(JP,A)
【文献】特開2005-220880(JP,A)
【文献】特開2019-190358(JP,A)
【文献】特開2019-190375(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 17/00
F02D 41/18
F01N 3/023
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料を燃焼させるための気筒と、前記気筒内に燃料を供給するための燃料噴射弁と、前記気筒に接続される排気通路と、前記排気通路内に位置して排気に含まれる粒子状物質を捕集するフィルタと、を備える内燃機関に適用される制御装置であって、
予め定められた燃料カット条件が成立する場合に、前記燃料噴射弁から前記気筒への燃料の供給を停止する燃料カット処理と、
前記燃料カット処理の実行中の吸気の積算量が大きくなるほど大きな値となる第1指標値を取得する第1取得処理と、
前記燃料カット処理の実行中に、前記第1指標値が予め定められた第1所定値以上になる場合に前記燃料カット処理を中止する中止処理と、
前記燃料カット処理が終了してから、次に前記燃料カット処理が開始されるまでの経過時間が大きくなるほど大きな値となる第2指標値を取得する第2取得処理と、
前記燃料カット処理を開始するときに前記第2指標値が小さい場合には、前記第2指標値が大きい場合よりも、前記第1所定値を小さくする変更処理と、を実行する
内燃機関の制御装置。
【請求項2】
前記変更処理では、前記燃料カット処理を終了したときに取得した前記第1指標値が大きい場合、前記第1指標値が小さい場合に比べて、次の前記燃料カット処理において、前記第1所定値を小さくする
請求項1に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項3】
前記変更処理では、
前記燃料カット処理を開始する場合に前記第2指標値が予め定められた第2所定値未満であるか否かを判定し、前記第2指標値が前記第2所定値未満であると判定した場合に、前記第2指標値が前記第2所定値以上である場合よりも前記第1所定値を小さくし、
前記燃料カット処理を終了したときに取得した前記第1指標値が大きい場合、前記第1指標値が小さい場合に比べて、次の前記燃料カット処理において、前記第2所定値を大きくする
請求項1又は請求項2に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項4】
前記内燃機関は、複数の前記気筒と、複数の前記気筒毎に設けられる前記燃料噴射弁とを、備え、
前記燃料カット処理は、
複数の前記気筒のうち、一部の前記気筒への燃料の供給を停止する一方で、残りの前記気筒へは燃料を供給する特定気筒燃料カット処理と、
複数の前記気筒のうち、全ての前記気筒への燃料の供給を停止する全気筒燃料カット処理と、を含み、
前記変更処理では、前回の前記燃料カット処理が前記全気筒燃料カット処理である場合、前回の前記燃料カット処理が前記特定気筒燃料カット処理である場合に比べて前記第1所定値を小さくする
請求項1~請求項3の何れか一項に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項5】
前記内燃機関は、複数の前記気筒と、複数の前記気筒毎に設けられる前記燃料噴射弁とを、備え、
前記燃料カット処理は、
複数の前記気筒のうち、一部の前記気筒への燃料の供給を停止する一方で、残りの前記気筒へは燃料を供給する特定気筒燃料カット処理と、
複数の前記気筒のうち、全ての前記気筒への燃料の供給を停止する全気筒燃料カット処理と、を含み、
前記変更処理では、
前記燃料カット処理を開始する場合に前記第2指標値が予め定められた第2所定値未満であるか否かを判定し、前記第2指標値が前記第2所定値未満であると判定した場合に、前記第2指標値が前記第2所定値以上である場合よりも前記第1所定値を小さくし、
前回の前記燃料カット処理が前記全気筒燃料カット処理である場合、前回の前記燃料カット処理が前記特定気筒燃料カット処理である場合に比べて前記第2所定値を大きくする
請求項1~請求項4の何れか一項に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項6】
前記第2指標値は、前記燃料カット処理が終了してから、次に前記燃料カット処理が開始されるまでの吸気の積算値である
請求項1~請求項5の何れか一項に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項7】
前記変更処理では、前記燃料カット条件の不成立により前回の前記燃料カット処理が終了された場合、前記第2指標値に拘わらず、同一の前記第1所定値を用いる
請求項1~請求項6の何れか一項に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項8】
燃料を燃焼させるための気筒と、前記気筒内に燃料を供給するための燃料噴射弁と、前記気筒に接続される排気通路と、前記排気通路内に位置して排気に含まれる粒子状物質を捕集するフィルタと、を備える内燃機関に適用される制御装置であって、
予め定められた燃料カット条件が成立する場合に、前記燃料噴射弁から前記気筒への燃料の供給を停止する燃料カット処理と、
前記燃料カット処理の実行中の吸気の積算量が大きくなるほど大きな値となる第1指標値を取得する第1取得処理と、
前記燃料カット処理の実行中に、前記第1指標値が予め定められた第1所定値以上になる場合に前記燃料カット処理を中止する中止処理と、
前記燃料カット処理が終了してから、次に前記燃料カット処理が開始されるまでの経過時間が大きくなるほど大きな値となる第2指標値を取得する第2取得処理と、
前記第1取得処理では、前記燃料カット処理を開始するときに前記第2指標値が小さい場合には、前記第2指標値が大きい場合よりも、前記吸気の積算量に対する前記第1指標値の増加速度を大きくする
内燃機関の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の内燃機関は、気筒と、燃料噴射弁と、排気通路と、フィルタとを備えている。気筒は、燃料を燃焼させるための空間である。燃料噴射弁は、燃料を気筒内に噴射する。排気通路は、気筒に接続している。フィルタは、排気通路内に位置している。フィルタは、排気に含まれる粒子状物質を捕集する。
【0003】
特許文献1の内燃機関を制御する制御装置は、予め定められた燃料カット条件が成立する場合に燃料噴射弁からの燃料の噴射を停止する燃料カット処理を実行する。この燃料カット処理により、燃焼に供されていない吸気、すなわち酸素を含む空気が気筒からフィルタへと供給される。こうしてフィルタに酸素が供給されると、フィルタに堆積した粒子状物質が燃焼することによりフィルタが再生される。また、特許文献1の制御装置は、燃料カット処理の実行中に、吸気の積算量が、予め定められた所定値以上になる場合に燃料カット処理を中止する。このように燃料カット処理を中止することで、多量の粒子状物質が燃焼してフィルタが過熱することが抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の制御装置は、中止処理により燃料カット処理を中止しても、その直後に燃料カット条件が成立すれば、燃料カット処理を再び実行する。このとき、前回の燃料カット処理によって供給された酸素がフィルタ内に残っていると、再度の燃料カット処理において、吸気の積算量が所定値未満の場合でもフィルタが過熱するおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための内燃機関の制御装置は、燃料を燃焼させるための気筒と、前記気筒内に燃料を供給するための燃料噴射弁と、前記気筒に接続される排気通路と、前記排気通路内に位置して排気に含まれる粒子状物質を捕集するフィルタと、を備える内燃機関に適用される制御装置であって、予め定められた燃料カット条件が成立する場合に、前記燃料噴射弁から前記気筒への燃料の供給を停止する燃料カット処理と、前記燃料カット処理の実行中の吸気の積算量が大きくなるほど大きな値となる第1指標値を取得する第1取得処理と、前記燃料カット処理の実行中に、前記第1指標値が予め定められた第1所定値以上になる場合に前記燃料カット処理を中止する中止処理と、前記燃料カット処理が終了してから、次に前記燃料カット処理が開始されるまでの経過時間が大きくなるほど大きな値となる第2指標値を取得する第2取得処理と、前記燃料カット処理を開始するときに前記第2指標値が小さい場合には、前記第2指標値が大きい場合よりも、前記第1所定値を小さくする変更処理と、を実行する。
【0007】
上記構成において、第2指標値が小さい場合には、フィルタ内に、前回の燃料カット処理によって供給された酸素が残存している可能性が高い。上記構成によれば、このような場合には、第1所定値が小さくなることにより今回の燃料カット処理が早期に中止される。したがって、前回の燃料カット処理が終了してから、十分な時間を経ずに燃料カット処理が開始された場合であっても、フィルタが過熱されることは抑制できる。
【0008】
上記構成において、前記変更処理では、前記燃料カット処理を終了したときに取得した前記第1指標値が大きい場合、前記第1指標値が小さい場合に比べて、次の前記燃料カット処理において、前記第1所定値を小さくしてもよい。
【0009】
上記構成において、前回の燃料カット処理が終了したときの第1指標値が大きいほど、フィルタ内に、前回の燃料カット処理によって供給された酸素が残存している可能性が高い。上記構成によれば、前回の燃料カット処理が終了したときの第1指標値に応じて、今回の燃料カット処理における第1所定値を調整できる。これにより、より適切なタイミングで燃料カット処理を中止できる。
【0010】
上記構成において、前記変更処理では、前記燃料カット処理を開始する場合に前記第2指標値が予め定められた第2所定値未満であるか否かを判定し、前記第2指標値が前記第2所定値未満であると判定した場合に、前記第2指標値が前記第2所定値以上である場合よりも前記第1所定値を小さくし、前記燃料カット処理を終了したときに取得した前記第1指標値が大きい場合、前記第1指標値が小さい場合に比べて、次の前記燃料カット処理において、前記第2所定値を大きくしてもよい。
【0011】
上記構成によれば、前回の燃料カット処理が終了したときの第1指標値に応じて、今回の燃料カット処理における第2所定値を調整できる。これにより、前回の燃料カット処理で残留している酸素の量に応じて、第1所定値を小さくするかどうかを判定できる。
【0012】
上記構成において、前記内燃機関は、複数の前記気筒と、複数の前記気筒毎に設けられる前記燃料噴射弁とを、備え、前記燃料カット処理は、複数の前記気筒のうち、一部の前記気筒への燃料の供給を停止する一方で、残りの前記気筒へは燃料を供給する特定気筒燃料カット処理と、複数の前記気筒のうち、全ての前記気筒への燃料の供給を停止する全気筒燃料カット処理と、を含み、前記変更処理では、前回の前記燃料カット処理が前記全気筒燃料カット処理である場合、前回の前記燃料カット処理が前記特定気筒燃料カット処理である場合に比べて前記第1所定値を小さくしてもよい。
【0013】
上記構成において、全気筒燃料カット処理の場合には、特定気筒燃料カット処理の場合に比較して、多量の酸素をフィルタに供給できる。したがって、燃料カット処理の終了後にフィルタ内に残存する酸素の量も、全気筒燃料カット処理の場合の方が多い可能性が高い。上記構成によれば、全気筒燃料カット処理の終了後にフィルタ内に残存する酸素が多くなることを加味して、第1所定値が調整される。これにより、燃料カット処理を中止するタイミングを適切に調整できる。
【0014】
上記構成において、前記内燃機関は、複数の前記気筒と、複数の前記気筒毎に設けられる前記燃料噴射弁とを、備え、前記燃料カット処理は、複数の前記気筒のうち、一部の前記気筒への燃料の供給を停止する一方で、残りの前記気筒へは燃料を供給する特定気筒燃料カット処理と、複数の前記気筒のうち、全ての前記気筒への燃料の供給を停止する全気筒燃料カット処理と、を含み、前記変更処理では、前記燃料カット処理を開始する場合に前記第2指標値が予め定められた第2所定値未満であるか否かを判定し、前記第2指標値が前記第2所定値未満であると判定した場合に、前記第2指標値が前記第2所定値以上である場合よりも前記第1所定値を小さくし、前回の前記燃料カット処理が前記全気筒燃料カット処理である場合、前回の前記燃料カット処理が前記特定気筒燃料カット処理である場合に比べて前記第2所定値を大きくしてもよい。
【0015】
上記構成において、全気筒燃料カット処理の場合には、特定気筒燃料カット処理の場合に比較して、多量の酸素をフィルタに供給できる。したがって、燃料カット処理の終了後にフィルタ内に残存する酸素の量も、全気筒燃料カット処理の場合の方が多い可能性が高い。上記構成によれば、全気筒燃料カット処理の終了後にフィルタ内に残存する酸素が多くなることを加味して、第2所定値が調整される。これにより、第1所定値を小さくするという処理を実行するべき期間を適切に調整できる。
【0016】
上記構成において、前記第2指標値は、前記燃料カット処理が終了してから、次に前記燃料カット処理が開始されるまでの吸気の積算値であってもよい。
内燃機関では、前回の燃料カット処理が終了してから次に燃料カット処理が再び開始されるまでの時間が同じであっても、内燃機関の運転状態に応じて、フィルタに残存する酸素の量が変化する。具体的には、例えば、燃料カット処理の後に排気通路内を流通する排気の量が多いほど、フィルタに残存する酸素の量が少なくなる傾向がある。上記構成によれば、内燃機関の運転状態に応じた第2指標値を用いることにより、今回の燃料カット処理が実行されるときにフィルタに存在する酸素の量をより適切に反映できる。
【0017】
上記構成において、前記変更処理では、前記燃料カット条件の不成立により前回の前記燃料カット処理が終了された場合、前記第2指標値に拘わらず、同一の前記第1所定値を用いてもよい。
【0018】
上記構成においては、燃料カット条件の不成立により前回の燃料カット処理が中止された場合、前回の燃料カット処理の終了後にフィルタ内に残存する酸素の量が少ない可能性が高い。上記構成によれば、このようにフィルタ内に残存する酸素の量が少ない可能性が高い場合には、第1所定値を小さくすることは行わない。したがって、フィルタ内に残存する酸素の量が少ないにも拘らず、燃料カット処理が早期に中止されるといった事態は生じにくい。
【0019】
上記課題を解決するための内燃機関の制御装置は、燃料を燃焼させるための気筒と、前記気筒内に燃料を供給するための燃料噴射弁と、前記気筒に接続される排気通路と、前記排気通路内に位置して排気に含まれる粒子状物質を捕集するフィルタと、を備える内燃機関に適用される制御装置であって、予め定められた燃料カット条件が成立する場合に、前記燃料噴射弁から前記気筒への燃料の供給を停止する燃料カット処理と、前記燃料カット処理の実行中の吸気の積算量が大きくなるほど大きな値となる第1指標値を取得する第1取得処理と、前記燃料カット処理の実行中に、前記第1指標値が予め定められた第1所定値以上になる場合に前記燃料カット処理を中止する中止処理と、前記燃料カット処理が終了してから、次に前記燃料カット処理が開始されるまでの経過時間が大きくなるほど大きな値となる第2指標値を取得する第2取得処理と、前記第1取得処理では、前記燃料カット処理を開始するときに前記第2指標値が小さい場合には、前記第2指標値が大きい場合よりも、前記吸気の積算量に対する前記第1指標値の増加速度を大きくする。
【0020】
上記構成において、第2指標値が小さい場合には、フィルタ内に、前回の燃料カット処理によって供給された酸素が残存している可能性が高い。上記構成によれば、このような場合には、第1指標値の増加速度が大きくなることにより、今回の燃料カット処理が早期に中止される。したがって、前回の燃料カット処理が終了してから、十分な時間を経ずに燃料カット処理が開始された場合であっても、フィルタが過熱されることは抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図4】(a)は、全気筒燃料カット処理の前提条件の成立状態の変化を示すタイムチャート。(b)は、全気筒燃料カット処理の実行状態の変化を示すタイムチャート。(c)は、禁止フラグの状態の変化を示すタイムチャート。(d)は、第1指標値の変化を示すタイムチャート。(e)は、1気筒燃料カット処理の実行状態の変化を示すタイムチャート。(f)は、全気筒燃料カット処理の短縮要求の変化を示すタイムチャート。(g)は、第2指標値の変化を示すタイムチャート。
【
図5】変更例における切り替え制御を示すフローチャート。
【
図6】変更例における中止制御を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0022】
<車両の概略構成>
以下、本発明の一実施形態を
図1~
図4にしたがって説明する。先ず、車両100の概略構成について説明する。
【0023】
図1に示すように、車両100は、火花点火式の内燃機関10を備えている。車両100は、電動機及び発電機の双方の機能を兼ね備える第1モータジェネレータ71及び第2モータジェネレータ72を備えている。したがって、車両100は、いわゆるハイブリッド車両である。
【0024】
内燃機関10は、複数の気筒11、クランクシャフト12、吸気通路21、スロットルバルブ22、複数の燃料噴射弁23、複数の点火装置24、排気通路26、三元触媒27、及びフィルタ28を備えている。
【0025】
気筒11では、燃料と吸気との混合気が燃焼する。内燃機関10は、4つの気筒11を備えている。吸気通路21は、気筒11に接続している。吸気通路21における下流端を含む一部分は、4つに分岐している。分岐した各通路は、各気筒11に接続している。吸気通路21は、内燃機関10の外部から各気筒11に吸気を導入する。スロットルバルブ22は、吸気通路21のうち、分岐している部分から視て上流側に位置している。スロットルバルブ22は、吸気通路21を流通する吸気の量を調整する。
【0026】
燃料噴射弁23は、吸気通路21の下流端近傍に位置している。内燃機関10は、気筒11毎に燃料噴射弁23を備えている。すなわち、内燃機関10は、4つの気筒11に対応して4つの燃料噴射弁23を備えている。燃料噴射弁23は、図示しない燃料タンクから供給される燃料を吸気通路21に噴射する。点火装置24は、気筒11に位置している。内燃機関10は、4つの気筒11に対応して4つの点火装置24を備えている。点火装置24は、燃料と吸気との混合気を火花放電により点火する。
【0027】
排気通路26は、気筒11に接続している。排気通路26における上流端を含む一部分は、4つに分岐している。分岐した各通路は、各気筒11に接続している。排気通路26は、各気筒11から内燃機関10の外部に排気を排出する。
【0028】
三元触媒27は、排気通路26のうち、分岐している部分から視て下流側に位置している。三元触媒27は、排気通路26を流通する排気を浄化する。フィルタ28は、排気通路26における三元触媒27から視て下流側に位置している。フィルタ28は、排気通路26を流通する排気に含まれる粒子状物質を捕集する。
【0029】
クランクシャフト12は、各気筒11内に位置する図示しないピストンに連結している。クランクシャフト12は、気筒11における燃料と吸気との混合気の燃焼により回転する。
【0030】
車両100は、第1遊星ギア機構40、リングギア軸45、第2遊星ギア機構50、減速機構62、差動機構63、及び複数の駆動輪64を備えている。
第1遊星ギア機構40は、サンギア41、リングギア42、複数のピニオンギア43、及びキャリア44を備えている。サンギア41は、外歯歯車である。サンギア41は、第1モータジェネレータ71に接続している。リングギア42は、内歯歯車であり、サンギア41と同軸上に位置している。各ピニオンギア43は、サンギア41とリングギア42との間に位置している。各ピニオンギア43は、サンギア41及びリングギア42の双方に噛み合っている。キャリア44は、ピニオンギア43を支持している。ピニオンギア43は、自転可能になっており、且つキャリア44と共に回転することにより公転可能になっている。キャリア44は、クランクシャフト12に接続している。
【0031】
リングギア軸45は、リングギア42に接続している。また、リングギア軸45は、減速機構62及び差動機構63を介して駆動輪64に接続している。減速機構62は、リングギア軸45の回転速度を減速して出力する。差動機構63は、左右の駆動輪64に回転速度の差が生じることを許容する。
【0032】
第2遊星ギア機構50は、サンギア51、リングギア52、複数のピニオンギア53、キャリア54、及びケース55を備えている。サンギア51は、外歯歯車である。サンギア51は、第2モータジェネレータ72に接続している。リングギア52は、内歯歯車であり、サンギア51と同軸上に位置している。リングギア52は、リングギア軸45に接続している。各ピニオンギア53は、サンギア51とリングギア52との間に位置している。各ピニオンギア53は、サンギア51及びリングギア52の双方に噛み合っている。キャリア54は、ピニオンギア53を支持している。ピニオンギア53は、自転可能になっている。キャリア54は、ケース55に固定されている。したがって、ピニオンギア53は、公転不可能な状態になっている。
【0033】
車両100は、バッテリ75、第1インバータ76、及び第2インバータ77を備えている。
第1インバータ76は、第1モータジェネレータ71とバッテリ75との間で、交流・直流の電力変換を行う。また、第1インバータ76は、第1モータジェネレータ71とバッテリ75との間の電力の授受量を調整する。第2インバータ77は、第2モータジェネレータ72とバッテリ75との間で、交流・直流の電力変換を行う。第2インバータ77は、第2モータジェネレータ72とバッテリ75との間の電力の授受量を調整する。
【0034】
車両100は、エアフローメータ81、水温センサ82、吸気温センサ83、クランク角センサ84、アクセル操作量センサ85、及び車速センサ86を備えている。
エアフローメータ81は、吸気通路21におけるスロットルバルブ22から視て上流側に位置する。エアフローメータ81は、吸気通路21内を単位時間当たりに流通する吸気の量である吸入空気量GAを検出する。水温センサ82は、内燃機関10の各部を流通する冷却水の温度である冷却水温THWを検出する。吸気温センサ83は、吸気通路21を流通する吸気の温度である吸気温THAを検出する。クランク角センサ84は、クランクシャフト12の回転角であるクランク角SCを検出する。アクセル操作量センサ85は、運転者が操作するアクセルペダルの操作量であるアクセル操作量ACCを検出する。車速センサ86は、車両100の速度である車速SPを検出する。
【0035】
車両100は、制御装置90を備えている。制御装置90は、吸入空気量GAを示す信号をエアフローメータ81から取得する。制御装置90は、冷却水温THWを示す信号を水温センサ82から取得する。制御装置90は、吸気温THAを示す信号を吸気温センサ83から取得する。制御装置90は、クランク角SCを示す信号をクランク角センサ84から取得する。制御装置90は、アクセル操作量ACCを示す信号をアクセル操作量センサ85から取得する。制御装置90は、車速SPを示す信号を車速センサ86から取得する。
【0036】
制御装置90は、アクセル操作量ACC及び車速SPに基づいて、車両100が走行するために必要な出力の要求値である車両要求出力を算出する。制御装置90は、車両要求出力に基づいて、内燃機関10、第1モータジェネレータ71、及び第2モータジェネレータ72のトルク配分を決定する。制御装置90は、内燃機関10、第1モータジェネレータ71、及び第2モータジェネレータ72のトルク配分に基づいて、内燃機関10の出力と、第1モータジェネレータ71及び第2モータジェネレータ72の力行及び回生とを制御する。具体的には、制御装置90は、内燃機関10に制御信号を出力することにより、スロットルバルブ22の開度、燃料噴射弁23からの燃料噴射量、点火装置24の点火タイミング等を制御する。また、制御装置90は、第1インバータ76に制御信号を出力することにより、第1インバータ76を介して第1モータジェネレータ71を制御する。さらに、制御装置90は、第2インバータ77に制御信号を出力することにより、第2インバータ77を介して第2モータジェネレータ72を制御する。
【0037】
制御装置90は、クランク角SCに基づいて、クランクシャフト12の単位時間当たりの回転数である機関回転速度NEを算出する。制御装置90は、機関回転速度NE及び吸入空気量GAに基づいて、機関負荷率KLを算出する。ここで、機関負荷率KLとは、現在の機関回転速度NEにおいてスロットルバルブ22を全開とした状態で内燃機関10を定常運転したときの気筒流入空気量に対する、現在の気筒流入空気量の比率を表している。なお、気筒流入空気量とは、吸気行程において各気筒11に流入する吸気の量である。
【0038】
制御装置90は、吸気の充填効率や機関回転速度NEなどの内燃機関10の運転状態に基づいて、三元触媒27の温度である触媒温度TSCを算出する。なお、吸気の充填効率とは、吸気通路21から気筒11に実際に導入される吸気の質量を、標準大気の状態で気筒11に導入できる吸気の質量で除算した値である。また、制御装置90は、吸気の充填効率や機関回転速度NEなどの内燃機関10の運転状態に基づいて、フィルタ28の温度であるフィルタ温TFを算出する。制御装置90は、機関回転速度NE、機関負荷率KL、及びフィルタ温TFに基づいて、フィルタ28における粒子状物質の堆積量であるPM堆積量PSを算出する。
【0039】
制御装置90は、粒子状物質によるフィルタ28の詰まりを抑制するために、燃料噴射弁23から気筒11への燃料の供給を停止する燃料カット処理を実行する。この燃料カット処理が実行されると、酸素を含む空気が気筒11からフィルタ28へと供給される。その結果、フィルタ28に堆積した粒子状物質が燃焼することによりフィルタ28が再生される。
【0040】
本実施形態では、燃料カット処理として、2つの燃料カット処理が存在する。1つ目の燃料カット処理は、4つの気筒11のうち、全ての気筒11への燃料の供給を停止する全気筒燃料カット処理である。なお、後述するように、全気筒燃料カット処理は、制限付きの全気筒燃料カット処理と、制限がない全気筒燃料カット処理とに細分できる。
【0041】
2つ目の燃料カット処理は、4つの気筒11のうち、1つの気筒11への燃料の供給を停止する一方で、残りの3つの気筒11へは燃料を供給する1気筒燃料カット処理である。なお、1気筒燃料カット処理では、燃料を供給する3つの気筒11で、混合気の空燃比が理論空燃比よりもリッチになるように燃料噴射弁23から燃料が供給される。なお、1気筒燃料カット処理は、特定気筒燃料カット処理の一例である。
【0042】
なお、制御装置90は、コンピュータプログラム(ソフトウェア)に従って各種処理を実行する1つ以上のプロセッサを含む回路(circuitry)として構成し得る。なお、制御装置90は、各種処理のうち少なくとも一部の処理を実行する、特定用途向け集積回路(ASIC)等の1つ以上の専用のハードウェア回路、又はそれらの組み合わせを含む回路として構成してもよい。プロセッサは、CPU及び、RAM並びにROM等のメモリを含む。メモリは、処理をCPUに実行させるように構成されたプログラムコード又は指令を格納している。メモリすなわちコンピュータ可読媒体は、汎用又は専用のコンピュータでアクセスできるあらゆる媒体を含む。
【0043】
<切り替え制御>
次に、制御装置90が行う切り替え制御について説明する。制御装置90は、この切り替え制御によって、燃料カット処理の実行の有無、及び実行する燃料カット処理の種類を切り替える。制御装置90は、当該制御装置90が動作を開始してから停止するまで、切り替え制御を繰り返し実行する。なお、制御装置90が動作を開始した時点では、全気筒燃料カット処理の実行を禁止するための禁止フラグがOFFになっている。
【0044】
図2に示すように、制御装置90は、切り替え制御を開始すると、ステップS11の処理を進める。ステップS11において、制御装置90は、全気筒燃料カット処理を実行するための条件として予め定められている前提条件、すなわち燃料カット条件が成立しているか否かを判定する。ここで、全気筒燃料カット処理の前提条件とは、例えば、アクセル操作量ACCが「0」という条件、及び機関回転速度NEが予め定められた所定回転速度以上であるという条件の全てを満たすことである。すなわち、制御装置90は、上記の条件を全て満たす場合、全気筒燃料カット処理の前提条件が成立していると判定する。ステップS11において、全気筒燃料カット処理の前提条件が成立していないと判定した場合(S11:NO)、制御装置90は、処理をステップS16に進める。なお、制御装置90は、ステップS11の処理で否定判定した場合に禁止フラグがONになっているとき、禁止フラグをOFFに設定する。また、制御装置90は、ステップS11の処理で否定判定した場合に禁止フラグがOFFになっているとき、禁止フラグをOFFに維持する。一方、ステップS11において、制御装置90は、全気筒燃料カット処理の前提条件が成立していると判定した場合(S11:YES)、処理をステップS12に進める。
【0045】
ステップS12において、制御装置90は、禁止フラグがOFFになっているか否かを判定する。ステップS12において、制御装置90は、禁止フラグがONになっていると判定した場合(S12:NO)、処理をステップS16に進める。一方、ステップS12において、制御装置90は、禁止フラグがOFFになっていると判定した場合(S12:YES)、処理をステップS13に進める。
【0046】
ステップS13において、制御装置90は、全気筒燃料カット処理を制限すべき制限領域であるか否かを判定する。ここで、制限領域とは、例えば、PM堆積量PSが予め定められた所定堆積量以上であるという条件、フィルタ温TFが予め定められた所定温度以上であるという条件の何れかを満たすことである。すなわち、制御装置90は、上記の複数の条件のうち少なくとも1つ以上を満たす場合、制限領域であると判定する。
【0047】
なお、上記の所定堆積量は、以下のように定められている。PM堆積量PSが多いほどフィルタ28で燃焼する粒子状物質が多くなりやすいため、全気筒燃料カット処理においてフィルタ温TFが高くなる傾向がある。そこで、上記の所定堆積量は、全気筒燃料カット処理を実行しても、フィルタ温TFが一定の温度以上になることがないような堆積量として、実験等により予め定められている。また、上記の所定温度は、以下のように定められている。ステップS13の実行時点のフィルタ温TFが高いほど、全気筒燃料カット処理においてフィルタ温TFが高くなる傾向がある。そこで、上記の所定温度は、当該所定温度を初期温度としてその後の全気筒燃料カット処理を行っても、フィルタ温TFが一定の温度以上になることがないような温度として、実験等により予め定められている。
【0048】
ステップS13において、制御装置90は、全気筒燃料カット処理を制限すべき制限領域であると判定した場合(S13:YES)、処理をステップS21に進める。ステップS21において、制御装置90は、制限付きの全気筒燃料カット処理を実行することを選択する。なお、制限付きの全気筒燃料カット処理とは、全気筒燃料カット処理の前提条件が成立している状況であっても、他の条件に応じて、全気筒燃料カット処理を途中で中止できる処理である。なお、制限付きの全気筒燃料カット処理の詳細については詳述する。その後、制御装置90は、今回の切り替え制御を終了し、処理をステップS11に進める。
【0049】
一方、ステップS13において、制御装置90は、全気筒燃料カット処理を制限すべき制限領域でないと判定した場合(S13:NO)、処理をステップS22に進める。ステップS22において、制御装置90は、制限がない全気筒燃料カット処理を実行することを選択する。制限がない全気筒燃料カット処理が実行された場合には、一連の切り替え制御が繰り返されることにより、全気筒燃料カット処理が実行され続ける。具体的には、全気筒燃料カット処理の前提条件が成立している(ステップS11:YES)、且つ全気筒燃料カット処理の制限領域でない(ステップS13:NO)という条件が満たされていれば、他の条件の制限なく、全気筒燃料カット処理が実行され続ける。その後、制御装置90は、今回の切り替え制御を終了し、処理をステップS11に進める。
【0050】
一方、上述したように、制御装置90は、全気筒燃料カット処理の前提条件が成立していないと判定した場合(S11:NO)、又は禁止フラグがONになっていると判定した場合(S12:NO)、処理をステップS16に進める。
【0051】
ステップS16において、制御装置90は、予め定められた1気筒燃料カット処理の前提条件が成立しているか否かを判定する。ここで、1気筒燃料カット処理の前提条件とは、例えば、アクセル操作量ACCが「0」よりも大きいという条件、内燃機関10の要求出力が予め定められた所定出力以下であるという条件の全てを満たすことである。すなわち、制御装置90は、上記の条件を全て満たす場合、1気筒燃料カット処理の前提条件が成立していると判定する。
【0052】
ステップS16において、制御装置90は、1気筒燃料カット処理の前提条件が成立していると判定した場合(S16:YES)、処理をステップS23に進める。ステップS23において、制御装置90は、1気筒燃料カット処理を実行することを選択する。その後、制御装置90は、今回の切り替え制御を終了し、処理をステップS11に進める。
【0053】
ステップS16において、制御装置90は、1気筒燃料カット処理の前提条件が成立していないと判定した場合(S16:NO)、処理をステップS24に進める。ステップS24において、制御装置90は、通常の燃焼処理を実行することを選択する。なお、通常の燃焼処理とは、4つの気筒11の全てに燃料を供給することにより、4つの気筒11の全てで混合気を燃焼させる処理である。その後、制御装置90は、今回の切り替え制御を終了し、処理をステップS11に進める。
【0054】
<中止制御>
次に、制御装置90が行う中止制御について説明する。制御装置90は、上記の制限付きの全気筒燃料カット処理を開始すると、全気筒燃料カット処理を中止するための中止制御を実行する。また、制御装置90は、上記の制限付きの全気筒燃料カット処理を終了すると、中止制御を終了する。なお、制御装置90は、中止制御の実行中においても、中止制御と並行して切り替え制御を繰り返し実行する。
【0055】
図3に示すように、制御装置90は、中止制御を開始すると、ステップS71の処理を進める。ステップS71において、制御装置90は、前回の燃料カット処理が全気筒燃料カット処理であるか否かを判定する。ステップS71において、制御装置90は、前回の燃料カット処理が全気筒燃料カット処理であると判定した場合(S71:YES)、処理をステップS76に進める。一方、ステップS71において、制御装置90は、前回の燃料カット処理が全気筒燃料カット処理でない、すなわち前回の燃料カット処理が1気筒燃料カット処理であると判定した場合(S71:NO)、処理をステップS77に進める。
【0056】
ステップS77において、制御装置90は、予め定められた第2所定値B2の初期値を、今回の第2所定値B2として設定する。ここで、第2所定値B2の初期値は、以下のように定められている。前回の燃料カット処理として1気筒燃料カット処理が実行された後に通常の燃焼処理を実行すると、気筒11からフィルタ28へと排気が流通する。こうしてフィルタ28に流入すると、前回の燃料カット処理に起因してフィルタ28に残存していた酸素が少なくなる。そして、フィルタ28に流入する排気の量の積算値が一定値以上になると、フィルタ28に残存する酸素の量が略ゼロになる。そこで、第2所定値B2の初期値としては、排気の量が上記の一定値となるような吸気の量を設定している。その後、制御装置90は、処理をステップS81に進める。
【0057】
一方、上述したように、制御装置90は、前回の燃料カット処理が全気筒燃料カット処理であると判定した場合(S71:YES)、処理をステップS76に進める。ステップS76において、制御装置90は、第2所定値B2の初期値を補正した値を、今回の第2所定値B2として設定する。具体的には、制御装置90は、第2所定値B2の初期値に予め定められた係数を乗算することにより補正後の第2所定値B2を算出する。なお、ステップS76における係数は、1より大きな値である。したがって、補正後の第2所定値B2は、第2所定値B2の初期値よりも大きくなる。その後、制御装置90は、処理をステップS81に進める。
【0058】
ステップS81において、制御装置90は、前回の燃料カット処理が終了してから、今回の燃料カット処理が開始されるまでの吸気の量の積算値である第2指標値A2を取得する。例えば、制御装置90は、前回の燃料カット処理が終了してから、今回の燃料カット処理が開始されるまでに検出した吸入空気量GAの積算値を、第2指標値A2として取得する。なお、吸入空気量GAの積算値は、内燃機関10が運転していれば、増加し続ける。したがって、第2指標値A2は、前回の燃料カット処理が終了してから、今回の燃料カット処理が開始されるまでの経過時間が大きくなるほど大きな値に変化する。本実施形態において、ステップS81の処理は、第2取得処理の一例である。その後、制御装置90は、処理をステップS82に進める。
【0059】
ステップS82において、制御装置90は、第2指標値A2が第2所定値B2未満であるか否かを判定する。ステップS82において、制御装置90は、第2指標値A2が第2所定値B2未満であると判定した場合(S82:YES)、処理をステップS86に進める。一方、ステップS82において、制御装置90は、第2指標値A2が第2所定値B2以上であると判定した場合(S82:NO)、処理をステップS87に進める。
【0060】
ステップS87において、制御装置90は、予め定められた第1所定値B1の初期値を、今回の第1所定値B1として設定する。ここで、第1所定値B1の初期値は、以下のように定められている。燃料カット処理として全気筒燃料カット処理を実行すると、燃焼に供されていない吸気、すなわち酸素を含む空気が気筒11からフィルタ28へと供給される。こうしてフィルタ28に酸素が供給されると、供給される酸素の量の積算値が多くなるほど、フィルタ28で燃焼する粒子状物質が多くなるため、フィルタ温TFが高くなる。フィルタ温TFが過度に高くなった場合、フィルタ28の機能が低下する可能性がある。したがって、全気筒燃料カット処理の開始時点におけるフィルタ28の酸素の量をゼロとしたとき、全気筒燃料カット処理において、フィルタ28の機能低下等を生じさせることなくフィルタ28に供給できる酸素の量の上限値を、予め実験等により求めている。そして、第1所定値B1の初期値としては、上記の上限値を設定している。その後、制御装置90は、処理をステップS91に進める。
【0061】
一方、上述したように、ステップS82において、制御装置90は、第2指標値A2が第2所定値B2未満であると判定した場合(S82:YES)、処理をステップS86に進める。
【0062】
ステップS86において、制御装置90は、第1所定値B1の初期値を補正した値を、今回の第1所定値B1として設定する。具体的には、制御装置90は、第1所定値B1の初期値に予め定められた第1係数又は第2係数を乗算することにより、補正後の第1所定値B1を算出する。そして、前回の燃料カット処理が全気筒燃料カット処理である場合には、第1所定値B1の初期値に第1係数を乗算することにより、補正後の第1所定値B1を算出する。一方、前回の燃料カット処理が1気筒燃料カット処理である場合には、第1所定値B1の初期値に第2係数を乗算することにより、補正後の第1所定値B1を算出する。第1係数及び第2係数は、いずれも1より小さい値である。したがって、補正後の第1所定値B1は、第1所定値B1の初期値よりも小さくなる。さらに、第1係数は、第2係数よりも小さい値である。したがって、前回の燃料カット処理が全気筒燃料カット処理である場合、前回の燃料カット処理が1気筒燃料カット処理である場合に比べて、補正後の第1所定値B1は小さくなる。なお、このように第1所定値B1が第1所定値B1の初期値に比べて小さな値に補正されている状況は、全気筒燃料カット処理の短縮要求をしている状況である。本実施形態において、ステップS71、ステップS76、ステップS77、ステップS82、ステップS86、及びステップS87の処理は、変更処理の一例である。その後、制御装置90は、処理をステップS91に進める。
【0063】
ステップS91において、制御装置90は、今回の全気筒燃料カット処理の実行中に、フィルタ28へと流れる吸気の量の積算値である第1指標値A1を取得する。例えば、制御装置90は、今回の全気筒燃料カット処理の実行中に検出した吸入空気量GAの積算値を、第1指標値A1として取得する。本実施形態において、ステップS91の処理は、第1取得処理の一例である。その後、制御装置90は、処理をステップS92に進める。
【0064】
ステップS92において、制御装置90は、第1指標値A1が第1所定値B1以上であるか否かを判定する。ステップS92において、制御装置90は、第1指標値A1が第1所定値B1未満であると判定した場合(S92:NO)、処理をステップS91に戻す。一方、ステップS92において、制御装置90は、第1指標値A1が第1所定値B1以上であると判定した場合(S92:YES)、処理をステップS96に進める。
【0065】
ステップS96において、制御装置90は、禁止フラグをONに設定する。なお、この場合、並行して実行される切り替え制御において、全気筒燃料カット処理が禁止される。その結果、実行中の全気筒燃料カット処理が中止される。その後、制御装置90は、今回の中止制御を終了する。なお、本実施形態において、ステップS92、及びステップS96の処理は、中止処理の一例である。
【0066】
<本実施形態の作用>
先ず、
図4(b)及び
図4(e)に示すように、時刻t11よりも前においては、全気筒燃料カット処理及び1気筒燃料カット処理が実行されていないものとする。また、時刻t11以降において実行される全気筒燃料カット処理は、制限付きの全気筒燃料カット処理であるものとする。
【0067】
図4(a)に示すように、時刻t11~時刻t13において、全気筒燃料カット処理の前提条件が成立するものとする。この場合、
図4(b)に示すように、時刻t11において、全気筒燃料カット処理が開始される。このとき、気筒11からフィルタ28に吸気が流れるため、
図4(d)に示すように、時刻t11以降においては、第1指標値A1である吸入空気量GAの積算値が徐々に大きくなっていく。そして、時刻t12において、第1指標値A1が第1所定値B1以上になることにより、
図4(c)に示すように、禁止フラグがONに設定されて全気筒燃料カット処理が中止される。その結果、時刻t12~時刻t13においては、
図4(a)に示すように、全気筒燃料カット処理の前提条件が成立しているものの、
図4(b)に示すように、全気筒燃料カット処理は実行されない。
【0068】
また、時刻t12~時刻t21において、通常の燃焼処理が実行されるものとする。このとき、内燃機関10の運転に伴い吸気されるので、
図4(g)に示すように、時刻t12以降においては、第2指標値A2である吸入空気量GAの積算値が徐々に大きくなっていく。なお、時刻t12~時刻t14においては、第2指標値A2が第2所定値B2未満であり、気筒11からフィルタ28に流れた排気の量が少ない。そのため、
図4(f)に示すように、全気筒燃料カット処理の短縮要求が生じる状況、すなわち、ステップS86の処理が実行され、第1所定値B1が初期値よりも小さくなる状況である。ただし、この例では、時刻t12~時刻t14の期間は全気筒燃料カット処理が実行されていないので、実際には、全気筒燃料カット処理が中止されない。一方、時刻t14以降においては、第2指標値A2が第2所定値B2以上であり、気筒11からフィルタ28に流れた排気の量が多いため、
図4(f)に示すように、全気筒燃料カット処理の短縮要求が生じない状況である。なお、
図4(g)では、第2指標値A2が第2所定値B2に達したときに、第2指標値A2をゼロにクリアしている。
【0069】
図4(e)に示すように、時刻t21~時刻t22においては、1気筒燃料カット処理が実行されるものとする。その結果、時刻t21~時刻t22においては、1気筒燃料カット処理によって吸気がフィルタ28に供給されることにより、フィルタ28内に存在する酸素が多くなっていく。また、その後の時刻t22以降においては、通常の燃焼処理が実行されるものとする。このとき、内燃機関10の運転に伴い吸気されるので、
図4(g)に示すように、時刻t22以降においては、第2指標値A2が徐々に大きくなっていく。そして、第2指標値A2が第2所定値B2以上になる時刻t32までは、全気筒燃料カット処理の短縮要求が生じる状況である。
【0070】
ここで、
図4(a)に示すように、時刻t32よりも前の時刻t31において、全気筒燃料カット処理の前提条件が成立するものとする。すると、
図4(b)に示すように、時刻t31以降において、全気筒燃料カット処理が実行される。そして、
図4(d)に示すように、時刻t31以降においては、第1指標値A1が徐々に大きくなっていく。ここで、
図4(g)に示すように、時刻t31においては、第2指標値A2が第2所定値B2未満であるため、
図4(d)に示すように、時刻t31以降の全気筒燃料カット処理における第1所定値B1は、第1所定値B1の初期値よりも小さくなる。そのため、時刻t31以降の全気筒燃料カット処理では、例えば、時刻t11以降の全気筒燃料カット処理と同様に第1指標値A1が大きくなっていったとしても、第1指標値A1が第1所定値B1以上であると判定される時刻t33が早くなる。したがって、禁止フラグがONになるタイミングが早い。この例では、時刻t11~時刻t12までの期間よりも、時刻t31~時刻t33までの期間が短くなっている。すなわち、全気筒燃料カット処理が早期に中止される。
【0071】
なお、時刻t33において全気筒燃料カット処理が中止されると、通常の燃焼処理が実行されることにより第2指標値A2が徐々に大きくなっていく。そして、第2指標値A2が第2所定値B2以上になるまでは、全気筒燃料カット処理の短縮要求がある状況である。この時刻t33以降の期間では、前回の燃料カット処理が、全気筒燃料カット処理である。したがって、
図4(g)に示すように、時刻t33以降においては、前回の燃料カット処理として1気筒燃料カット処理が行われていた後の時刻t22~時刻t32の期間に比べて、第2所定値B2が大きくなっている。
【0072】
<本実施形態の効果>
(1)
図4(g)に示すように、時刻t31の時点では、第2指標値A2が第2所定値B2未満である。したがって、他の条件が同じであれば、時刻t31で開始される全気筒燃料カット処理は、時刻t11で開始される全気筒燃料カット処理よりも早期に中止される。したがって、時刻t31で開始される全気筒燃料カット処理では、気筒11からフィルタ28に供給される酸素の量が比較的に少なくなる。そのため、時刻t22~時刻t31までの期間が短い。すなわち、前回の燃料カット処理が終了してから、十分な時間を経ずに今回の燃料カット処理が介された場合であっても、時刻t31で開始される全気筒燃料カット処理において、フィルタ28が過熱されることは抑制できる。
【0073】
(2)本実施形態では、全気筒燃料カット処理が実行される場合には、4つの気筒11の全てへの燃料の供給が停止されるため、1気筒燃料カット処理が実行される場合に比べて、多量の酸素をフィルタ28に供給できる。そのため、全気筒燃料カット処理の終了後にフィルタ28内に残存する酸素量は、1気筒燃料カット処理の終了後に比べて多い可能性が高い。
【0074】
この点、本実施形態では、前回の燃料カット処理が全気筒燃料カット処理である場合、前回の燃料カット処理が1気筒燃料カット処理である場合に比べて、第1所定値B1が小さくなる。したがって、本実施形態では、全気筒燃料カット処理の終了後にフィルタ28内に残存する酸素量が多いことを加味して、第1所定値B1が調整される。これにより、前回の燃料カット処理が全気筒燃料カット処理である場合、前回の燃料カット処理が1気筒燃料カット処理である場合に比べて、今回の全気筒燃料カット処理が早期に中止される。その結果、今回の全気筒燃料カット処理を中止するタイミングを適切に調整できる。
【0075】
(3)本実施形態では、前回の燃料カット処理が全気筒燃料カット処理である場合、前回の燃料カット処理が1気筒燃料カット処理である場合に比べて、第2所定値B2が大きくなる。そのため、例えば、
図4(b)に示すように、時刻t31~時刻t33において全気筒燃料カット処理が実行されることにより、
図4(g)に示すように、時刻t33以降における第2所定値B2は、第2所定値B2の初期値に比べて大きくなる。これにより、時刻t33以降においては、例えば、時刻t22以降と同様に第2指標値A2が大きくなったとしても、第2指標値A2が第2所定値B2未満であると判定されやすくなる。その結果、
図4(f)に示すように、時刻t33以降において全気筒燃料カット処理の短縮要求が生じる期間は、時刻t22以降に比べて長くなる。すなわち、本実施形態では、全気筒燃料カット処理の終了後にフィルタ28内に残存する酸素量が多いことを加味して、第2所定値B2が調整されるため、第1所定値B1を小さくする処理を行う期間を適切に調整できる。
【0076】
(4)内燃機関10では、前回の燃料カット処理が終了してから次に燃料カット処理が再び開始されるまでの時間が同じであっても、内燃機関10の運転状態に応じて、フィルタ28内に残存する酸素の量が変化する。具体的には、前回の燃料カット処理の後に、気筒11からフィルタ28に流通する排気の量が多いほど、今回の燃料カット処理の開始時点にフィルタ28内に残存する酸素の量が少なくなる傾向がある。
【0077】
この点、本実施形態において、制御装置90は、前回の燃料カット処理が終了してから、今回の燃料カット処理が開始されるまでの吸気の量の積算値である第2指標値A2を取得する。この第2指標値A2は、気筒11からフィルタ28に流通する排気の量を示す値である。したがって、内燃機関10の運転状態に応じた第2指標値A2を用いることにより、今回の全気筒燃料カット処理が実行されるときにフィルタ28内に残存する酸素の量を適切に反映して、第2指標値A2が第2所定値B2以上であるか否かを判定できる。
【0078】
(5)仮に、第1指標値A1として、全気筒燃料カット処理の実行中に、実際にフィルタ28に供給された吸気の量の積算値を用いているものとする。ここで、
図4に示すように、時刻t33において、第1指標値A1が第1所定値B1以上であると判定されることにより、全気筒燃料カット処理が中止されて通常の燃焼処理が実行されたものとする。この場合、全気筒燃料カット処理が中止されて通常の燃焼処理が実行されても、時刻t33において気筒11からフィルタ28までの間に存在する吸気は、その後にフィルタ28に流れる。その結果、第1所定値B1よりも多い吸気がフィルタ28に供給されることに起因して、フィルタ28が過熱する可能性がある。
【0079】
この点、本実施形態において、制御装置90は、今回の全気筒燃料カット処理の実行中に検出した吸入空気量GAの積算値を、第1指標値A1として取得する。すなわち、第1指標値A1としては、フィルタ28よりも上流に位置するエアフローメータ81により検出された値を用いる。そのため、第1指標値A1が第1所定値B1以上であると判定された時刻t33においては、フィルタ28に実際に供給された吸気の量は、第1所定値B1よりも少ない傾向がある。したがって、時刻t33において気筒11からフィルタ28までの間に存在する吸気がフィルタ28に流れたとしても、フィルタ28が過熱することを抑制できる。
【0080】
<変更例>
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0081】
・上記実施形態では、変更処理において第1所定値B1を調整する条件は変更できる。例えば、制御装置90は、第2指標値A2が小さくなるにつれて、第1所定値B1を段階的に小さくしてもよいし無段階で小さくしてもよい。このように、第1所定値B1が段階的に小さくなろうとも無段階で小さくなろうとも、第2指標値A2が小さいほど第1所定値B1を小さくなる範囲があればよい。なお、第1所定値B1が無段階で小さくなる場合、ステップS82における判定の処理を省略し、第2指標値A2を予め定められた関数等に代入して、第1所定値B1を求めることができる。
【0082】
・上記実施形態では、変更処理において第1所定値B1を調整することに代えて、又は加えて、第1指標値A1の増加速度を変更してもよい。具体例としては、制御装置90は、第2指標値A2が第2所定値B2未満であると判定した場合、第1指標値A1に、1よりも大きい係数を乗算することにより、第1指標値A1を補正する。そして、制御装置90は、補正後の第1指標値A1をその後の処理で用いればよい。このように、制御装置90は、第1取得処理において、燃料カット処理を開始するときの第2指標値A2が小さい場合には、第2指標値A2が大きい場合よりも、吸気の積算量に対する第1指標値A1の増加速度を大きくしてもよい。なお、上記係数は、第2指標値A2が小さいほど、大きな値になってもよい。
【0083】
・上記実施形態において、第1指標値A1は、変更してもよい。例えば、第1指標値A1としては、今回の全気筒燃料カット処理が実行されている継続時間を用いてもよい。
・上記実施形態において、第2指標値A2は、変更してもよい。例えば、第2指標値A2としては、前回の燃料カット処理が終了してから、今回の燃料カット処理が開始されるまでの経過時間を用いてもよい。また、例えば、第2指標値A2としては、前回の燃料カット処理が終了してから、今回の燃料カット処理が開始されるまでに、気筒11からフィルタ28に供給される排気の量を用いてもよい。なお、排気の量は、吸入空気量GA及び燃料噴射量などから一義的に算出できる。
【0084】
・上記実施形態において、前回の燃料カット処理の種類に応じて、第1所定値B1を設定する構成は変更してもよい。例えば、ステップS86を実行するにあたって、制御装置90は、第1所定値B1の初期値よりも小さい第1の値と、第1所定値B1の初期値よりも小さく、且つ、第1の値よりも大きい第2の値と、を記憶しておく。そして、ステップS86において、制御装置90は、前回の燃料カット処理が全気筒燃料カット処理である場合、上記の第1の値を、今回の第1所定値B1として設定してもよい。また、ステップS86において、制御装置90は、前回の燃料カット処理が1気筒燃料カット処理である場合、上記の第2の値を、今回の第1所定値B1として設定してもよい。すなわち、ステップS86において、制御装置90は、第1所定値B1の初期値を補正することなく、今回の第1所定値B1を設定してもよい。
【0085】
・上記実施形態において、前回の燃料カット処理の状況に応じて、設定する第1所定値B1を変更してもよい。例えば、制御装置90は、前回の燃料カット処理が終了したときに取得した第1指標値A1を記憶しておく。そして、制御装置90は、記憶していた上記の第1指標値A1が大きいほど、次の燃料カット処理において、設定する第1所定値B1を小さくしてもよい。車両100では、前回の燃料カット処理が終了したときの第1指標値A1が大きいほど、フィルタ28内に、前回の燃料カット処理によって供給された酸素が残存している可能性が高い。この点、上記構成によれば、前回の燃料カット処理が終了したときの第1指標値A1に応じて、今回の燃料カット処理における第1所定値B1が調整される。これにより、より適切なタイミングで燃料カット処理を中止できる。
【0086】
・上記実施形態において、前回の燃料カット処理の種類に応じて第1所定値B1を変更しなくてもよい。すなわち、前回の燃料カット処理の種類に拘わらず、同一の第1所定値B1を用いてもよい。具体例としては、ステップS86において、第1係数及び第2係数に分けるのではなく同一の係数を用いることにより、前回の燃料カット処理の種類に拘わらず、同一の第1所定値B1を用いてもよい。
【0087】
・上記実施形態において、前回の燃料カット処理の種類に応じて、第2所定値B2を設定する構成は変更してもよい。例えば、ステップS76を実行するにあたって、制御装置90は、第2所定値B2の初期値よりも大きい値を記憶しておく。そして、ステップS76において、制御装置90は、第2所定値B2の初期値よりも大きい値を、今回の第2所定値B2として設定してもよい。すなわち、ステップS76において、制御装置90は、第2所定値B2の初期値を補正することなく、今回の第2所定値B2を設定してもよい。
【0088】
・上記実施形態において、前回の燃料カット処理の状況に応じて、設定する第2所定値B2を変更してもよい。例えば、制御装置90は、前回の燃料カット処理が終了したときに取得した第1指標値A1を記憶しておく。そして、制御装置90は、記憶していた上記の第1指標値A1が大きいほど、次の燃料カット処理において、設定する第2所定値B2を大きくしてもよい。上記構成によれば、前回の燃料カット処理が終了したときの第1指標値A1に応じて、今回の燃料カット処理における第2所定値B2を調整できる。これにより、前回の燃料カット処理で残留している酸素の量に応じて、第1所定値B1を小さくするかどうかを判定できる。
【0089】
・上記実施形態において、前回の燃料カット処理の種類に応じて第2所定値B2を変更しなくてもよい。すなわち、前回の燃料カット処理の種類に拘わらず、同一の第2所定値B2を用いてもよい。具体例としては、ステップS71の処理を省略し、制御装置90は、中止制御を開始したとき、ステップS77の処理を進めてもよい。
【0090】
・上記実施形態において、前回の全気筒燃料カット処理が中止された状況によっては、第2指標値A2に拘わらず、同一の第1所定値B1を用いてもよい。例えば、前回の全気筒燃料カット処理が、全気筒燃料カット処理の前提条件の不成立により中止された場合には、前回の全気筒燃料カット処理の終了後にフィルタ28に残存する酸素の量が少ない可能性が高い。そこで、前回の全気筒燃料カット処理が、全気筒燃料カット処理の前提条件の不成立により中止された場合、第2指標値A2が第2所定値B2未満であるか否かに拘わらず、同一の第1所定値B1を用いてもよい。これにより、フィルタ28に残存する酸素の量が少ないにも拘らず、全気筒燃料カット処理が早期に中止されるといった事態は生じにくい。
【0091】
・上記実施形態において、全気筒燃料カット処理を早期に中止するために適用した技術は、1気筒燃料カット処理を早期に中止するための技術として適用してもよい。例えば、1気筒燃料カット処理を実行することにより、気筒11からフィルタ28に酸素が供給される。そして、1気筒燃料カット処理によってフィルタ28に供給される酸素が多くなると、フィルタ28が過熱することがある。したがって、1気筒燃料カット処理を実行する場合には、1気筒燃料カット処理の実行中の吸気の積算量が大きくなるほど大きな値となる第1指標値を取得する第1取得処理を実行することがある。また、1気筒燃料カット処理の実行中に、第1指標値が予め定められた第1所定値以上になる場合に1気筒燃料カット処理を中止する中止処理を実行することがある。この構成においては、全気筒燃料カット処理を早期に中止するために適用した技術を、1気筒燃料カット処理を早期に中止するための技術として適用してもよい。
【0092】
以下では、
図5を参照して、1気筒燃料カット処理を早期に中止するための切り替え制御の一例を説明する。なお、切り替え制御におけるステップS11~ステップS13、ステップS21及びステップS22の処理は、上記実施形態と同様である。
【0093】
図5に示すように、ステップS16において、制御装置90は、1気筒燃料カット処理の前提条件が成立していると判定した場合(S16:YES)、処理をステップS17に進める。ステップS17において、制御装置90は、1気筒燃料カット処理の実行を禁止するための禁止フラグがOFFになっているか否かを判定する。以下では、1気筒燃料カット処理の実行を禁止するための禁止フラグを、1FC禁止フラグと呼称する。なお、制御装置90が動作を開始した時点では、1FC禁止フラグがOFFになっている。ステップS17において、制御装置90は、1FC禁止フラグがONになっていると判定した場合(S17:NO)、処理をステップS24に進める。一方、ステップS17において、制御装置90は、1FC禁止フラグがOFFになっていると判定した場合(S17:YES)、処理をステップS18に進める。
【0094】
ステップS18において、制御装置90は、1気筒燃料カット処理を制限すべき制限領域であるか否かを判定する。ここで、制限領域とは、例えば、PM堆積量PSが予め定められた所定堆積量以上であるという条件、フィルタ温TFが予め定められた所定温度以上であるという条件の何れかを満たすことである。すなわち、制御装置90は、上記の複数の条件のうち少なくとも1つ以上を満たす場合、制限領域であると判定する。
【0095】
ステップS18において、制御装置90は、1気筒燃料カット処理を制限すべき制限領域であると判定した場合(S18:YES)、処理をステップS23Aに進める。ステップS23Aにおいて、制御装置90は、制限付きの1気筒燃料カット処理を実行することを選択する。なお、制限付きの1気筒燃料カット処理とは、1気筒燃料カット処理の前提条件が成立している状況であっても、他の条件に応じて、1気筒燃料カット処理を途中で中止できる処理である。なお、制限付きの1気筒燃料カット処理の詳細については詳述する。その後、制御装置90は、今回の切り替え制御を終了し、処理をステップS11に進める。
【0096】
一方、ステップS18において、制御装置90は、1気筒燃料カット処理を制限すべき制限領域でないと判定した場合(S18:NO)、処理をステップS23Bに進める。ステップS23Bにおいて、制御装置90は、制限がない1気筒燃料カット処理を実行することを選択する。その後、制御装置90は、今回の切り替え制御を終了し、処理をステップS11に進める。なお、一連の切り替え制御において、制限がない1気筒燃料カット処理が繰り返し実行されることにより、1気筒燃料カット処理が実行され続ける。
【0097】
さらに、以下では、1気筒燃料カット処理を早期に中止するための中止制御の一例を説明する。具体的には、制御装置90は、上記の制限付きの1気筒燃料カット処理を開始すると、
図6に示す中止制御を実行する。
【0098】
図6に示すように、制御装置90は、中止制御を開始すると、ステップS71~ステップS82の処理を実行する。これらの処理は、
図3に示す上記実施形態の各処理と同様である。一方、
図6に示す1気筒燃料カット処理を中止するための中止制御におけるステップS186~ステップS196の処理は、
図3に示す全気筒燃料カット処理を中止するための中止制御におけるステップS86~ステップS96の処理と異なる。具体的には、ステップS186及びステップS187において、制御装置90は、今回の1気筒燃料カット処理を中止するための値として、第1所定値D1を設定する。また、ステップS191において、制御装置90は、今回の1気筒燃料カット処理の実行中に、フィルタ28へと流れる吸気の量の積算値である第1指標値C1を取得する。
【0099】
さらに、ステップS192において、制御装置90は、第1指標値C1が第1所定値D1以上であるか否かを判定する。ステップS192において、制御装置90は、第1指標値C1が第1所定値D1未満であると判定した場合(S192:NO)、処理をステップS191に戻す。一方、ステップS192において、制御装置90は、第1指標値C1が第1所定値D1以上であると判定した場合(S192:YES)、処理をステップS196に進める。そして、ステップS196において、制御装置90は、1FC禁止フラグをONに設定する。なお、この場合、並行して実行される切り替え制御において、1気筒燃料カット処理が禁止される。その結果、実行中の1気筒燃料カット処理が中止される。
【0100】
・上記実施形態において、燃料カット処理としては、全気筒燃料カット処理、及び1気筒燃料カット処理の2つを実行しなくてもよく、2つのうち一方を実行してもよい。この場合、実行する燃料カット処理について、本件技術を適用すればよい。
【0101】
・上記実施形態において、特定気筒燃料カット処理は、1気筒燃料カット処理に限らない。具体的には、複数の気筒11のうち、1つ以上の気筒11への燃料の供給を停止する一方で、残りの1つ以上の気筒11へは燃料を供給する処理であれば、特定気筒燃料カット処理に相当する。
【符号の説明】
【0102】
A1…第1指標値
A2…第2指標値
B1…第1所定値
B2…第2所定値
GA…吸入空気量
PS…PM堆積量
SP…車速
10…内燃機関
11…気筒
12…クランクシャフト
21…吸気通路
23…燃料噴射弁
26…排気通路
27…三元触媒
28…フィルタ
40…第1遊星ギア機構
50…第2遊星ギア機構
62…減速機構
63…差動機構
64…駆動輪
71…第1モータジェネレータ
72…第2モータジェネレータ
75…バッテリ
76…第1インバータ
77…第2インバータ
81…エアフローメータ
90…制御装置
100…車両