(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-04
(45)【発行日】2023-12-12
(54)【発明の名称】発泡性接着シートおよび物品の製造方法
(51)【国際特許分類】
C09J 7/30 20180101AFI20231205BHJP
C09J 201/00 20060101ALI20231205BHJP
C09J 5/08 20060101ALI20231205BHJP
【FI】
C09J7/30
C09J201/00
C09J5/08
(21)【出願番号】P 2021143023
(22)【出願日】2021-09-02
【審査請求日】2023-05-01
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101203
【氏名又は名称】山下 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【氏名又は名称】岸本 達人
(72)【発明者】
【氏名】島田 信哉
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 泉
(72)【発明者】
【氏名】星 健太郎
【審査官】本多 仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-155495(JP,A)
【文献】特開2013-104044(JP,A)
【文献】国際公開第2016/163514(WO,A1)
【文献】特開2022-113240(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一接着層と、前記第一接着層の一方の面側に配置された第二接着層と、を有する発泡性接着シートであって、
前記第一接着層および前記第二接着層が、硬化性の接着剤を含有し、
前記第一接着層および前記第二接着層の少なくとも一方が、発泡剤をさらに含有し、
前記第一接着層のタックが、0gf以上、10gf未満であり、
前記第二接着層のタックが、10gf以上、400gf以下であり、
前記第二接着層の損失正接(tanδ)のピーク値が、100℃以上、180℃以下である、発泡性接着シート。
【請求項2】
前記第一接着層が前記発泡剤を含有する、請求項1に記載の発泡性接着シート。
【請求項3】
前記第一接着層および前記第二接着層が前記発泡剤を含有する、請求項1に記載の発泡性接着シート。
【請求項4】
前記第一接着層および前記第二接着層の間に基材を有する、請求項1から請求項3までのいずれかの請求項に記載の発泡性接着シート。
【請求項5】
前記第一接着層の前記第二接着層とは反対の面の算術平均粗さ(Ra)が、0.3μm以上、1.5μm以下であり、
前記第一接着層の前記第二接着層とは反対の面の静摩擦係数が、0.33以下である、請求項1から請求項4までのいずれかの請求項に記載の発泡性接着シート。
【請求項6】
第一部材および第二部材の間に、請求項1から請求項5までのいずれかの請求項に記載の発泡性接着シートを配置する配置工程と、
前記発泡性接着シートを発泡硬化させ、前記第一部材および前記第二部材を接着する接着工程と、
を有する、物品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、発泡性接着シートおよびそれを用いた物品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
部材同士を接着する接着剤は、様々な分野で広く用いられている。例えば、一方の部材の穴や溝等に他方の部材を固定する場合に接着剤が使用される。具体的には、埋込磁石型モータにおいて、コアの穴に永久磁石を固定する場合に接着剤が使用されている。
【0003】
モータに使用される接着剤としては、液状接着剤が主流である。しかしながら、液状接着剤の場合、塗布ムラや、はみ出し、液垂れ等が生じ、接着工程を煩雑化させるという問題がある。
【0004】
一方、近年では、液状接着剤に代えて、発泡剤を含有する接着シート(発泡性接着シート)を使用することが提案されている。
【0005】
例えば特許文献1には、被着体(C1)を構成する部位(c1-1)と、前記被着体(C1)を構成する他の部位(c1-2)または他の被着体(C2)とが、接着テープで接着された物品の製造方法であって、上記接着テープが、接着剤層(A)の片面に、直接または他の層を介して、接着剤層(B)を有する接着テープであって、上記接着テープを130℃の環境下に1時間放置した後の、上記接着剤層(A)の厚さ方向の膨張率〔前記放置後の接着剤層(A)の厚さ/上記放置前の接着剤層(A)の厚さ〕×100が200%以上であり、かつ、上記接着剤層(B)の厚さ方向の膨張率〔上記放置後の接着剤層(B)の厚さ/上記放置前の接着剤層(B)の厚さ〕×100が120%以下であり、上記接着剤層(A)が、熱硬化性樹脂及び熱膨張性カプセルを含有する組成物を用いて形成された層であり、上記接着剤層(B)が熱硬化性接着剤層または感圧接着剤層であって、上記接着テープを構成する上記接着剤層(A)と、被着体(C1)を構成する部位(c1-1)とを予め接着させる工程[1]、ならびに、少なくとも上記接着剤層(A)を刺激し膨張させることによって、上記接着テープを構成する上記接着剤層(B)と、上記被着体(C1)を構成する部位(c1-2)または上記被着体(C2)とを接着させる工程[2]を有する、物品の製造方法が開示されている。
【0006】
また、例えば特許文献2には、被着体(C1)と被着体(C2)との間の空隙が接着テープの膨張物を介して接着された物品の製造方法であって、上記接着テープが熱膨張性接着剤層(A)を有し、上記熱膨張性接着剤層(A)が、接着剤組成物(a)及び熱膨張性カプセルを含有し、上記熱膨張性カプセルの含有量が上記接着剤組成物(a)の全固形成分100質量部に対し3~100質量部であり、上記接着剤組成物(a)が熱可塑性樹脂を含有し、上記熱可塑性樹脂の70℃~120℃の範囲における1Hzでの動的粘弾性スペクトルで測定される貯蔵弾性率が1.0×102Pa~1.0×107Paの範囲であり、上記熱膨張性接着剤層(A)が0.5N/20mm以上の接着力を有するものであって、被着体(C1)を構成する部位(c1-1)に、上記接着テープの熱膨張性接着剤層(A)を貼付する工程[1]、上記熱膨張性接着剤層(A)を50℃~120℃の温度で加熱する工程[2]、上記加熱によって上記熱膨張性接着剤層(A)が膨張し、熱膨張性接着剤層(A1)が形成される工程[3]、及び、上記接着テープを構成する熱膨張性接着剤層(A1)または接着剤層(B)が、上記被着体(C1)を構成する他の部位(c1-2)または他の被着体(C2)に貼付される工程[4]を有する、物品の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特許第6274540号
【文献】特開2018-203863号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
例えば、一方の部材の穴や溝等に他方の部材を固定する場合、特許文献1や特許文献2に記載されるように、他方の部材に発泡性接着シートを貼り付けて仮固定し、一方の部材の穴や溝等に、発泡性接着シートが貼り付けられた一方の部材を配置し、その後、発泡性接着シートを発泡硬化させることで、2つの部材を接着固定することができる。
【0009】
上記のような接着固定方法においては、発泡性接着シートの粘着性(タック)を利用して、他方の部材に発泡性接着シートを貼り付けて仮固定する。しかしながら、発泡性接着シートの粘着性が高いと、一方の部材の穴や溝等に、発泡性接着シートが貼り付けられた一方の部材を挿入する際の挿入性が低下するという問題がある。
【0010】
また、発泡性接着シートにおいて、発泡剤を含有する接着層は、例えば、発泡剤を含有する接着剤組成物を塗布し、乾燥することで形成することができる。この際、乾燥温度が高くなると、接着剤組成物に含まれる樹脂成分の溶融粘度が低くなる傾向がある。樹脂成分の溶融粘度が大幅に低下すると、膜形成が困難になるおそれがある。そのため、接着層の形成時には、樹脂成分の溶融粘度の著しい低下を抑制し、膜形成が可能なように、低温で長時間乾燥させている。しかしながら、乾燥温度が低いと、残留溶剤が多くなり、乾燥時間が長いと、発泡性接着シートの生産効率が低下するという問題がある。
【0011】
本開示は、上記実情に鑑みてなされたものであり、部材との密着および挿入性に優れ、生産効率が良好な発泡性接着シートを提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本開示の一実施形態は、第一接着層と、上記第一接着層の一方の面側に配置された第二接着層と、を有する発泡性接着シートであって、上記第一接着層および上記第二接着層が、硬化性の接着剤を含有し、上記第一接着層および上記第二接着層の少なくとも一方が、発泡剤をさらに含有し、上記第一接着層のタックが、0gf以上、10gf未満であり、上記第二接着層のタックが、10gf以上、400gf以下であり、上記第二接着層の損失正接(tanδ)のピーク値が、100℃以上、180℃以下である、発泡性接着シートを提供する。
【0013】
本開示の他の実施形態は、第一部材および第二部材の間に、上述の発泡性接着シートを配置する配置工程と、上記発泡性接着シートを発泡硬化させ、上記第一部材および上記第二部材を接着する接着工程と、を有する物品の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本開示における発泡性接着シートは、部材との密着および挿入性に優れ、生産効率が良好であるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本開示における発泡性接着シートを例示する概略断面図である。
【
図2】本開示における発泡性接着シートを例示する概略断面図である。
【
図3】本開示における発泡性接着シートを例示する概略断面図である。
【
図4】本開示における発泡性接着シートの製造方法を例示する工程図である。
【
図5】本開示における発泡性接着シートの製造方法を例示する工程図である。
【
図6】本開示における発泡性接着シートの製造方法を例示する工程図である。
【
図7】本開示における物品の製造方法を例示する工程図である。
【
図8】本開示における物品の製造方法を例示する工程図である。
【
図9】発泡性接着シートの発泡硬化後の接着性の試験方法を説明する概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
下記に、図面等を参照しながら本開示の実施の形態を説明する。ただし、本開示は多くの異なる態様で実施することが可能であり、下記に例示する実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。また、図面は説明をより明確にするため、実際の形態に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表わされる場合があるが、あくまで一例であって、本開示の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。
【0017】
本明細書において、ある部材の上に他の部材を配置する態様を表現するにあたり、単に「上に」あるいは「下に」と表記する場合、特に断りの無い限りは、ある部材に接するように、直上あるいは直下に他の部材を配置する場合と、ある部材の上方あるいは下方に、さらに別の部材を介して他の部材を配置する場合との両方を含むものとする。また、本明細書において、ある部材の面に他の部材を配置する態様を表現するにあたり、単に「面側に」または「面に」と表記する場合、特に断りの無い限りは、ある部材に接するように、直上あるいは直下に他の部材を配置する場合と、ある部材の上方あるいは下方に、さらに別の部材を介して他の部材を配置する場合との両方を含むものとする。
【0018】
また、本明細書において、「シート」には、「フィルム」と呼ばれる部材も含まれる。また、「フィルム」には、「シート」と呼ばれる部材も含まれる。また、本明細書における数値範囲は、平均的な値の範囲である。
【0019】
以下、本開示における発泡性接着シートおよびそれを用いた物品の製造方法について、詳細に説明する。
【0020】
A.発泡性接着シート
本開示における発泡性接着シートは、第一接着層と、上記第一接着層の一方の面側に配置された第二接着層と、を有する発泡性接着シートであって、上記第一接着層および上記第二接着層が、硬化性の接着剤を含有し、上記第一接着層および上記第二接着層の少なくとも一方が、発泡剤をさらに含有し、上記第一接着層のタックが、0gf以上、10gf未満であり、上記第二接着層のタックが、10gf以上、400gf以下であり、上記第二接着層の損失正接(tanδ)のピーク値が、100℃以上、180℃以下である。
【0021】
図1および
図2は、本開示における発泡性接着シートを例示する概略断面図である。
図1における発泡性接着シート10は、第一接着層1と、第一接着層1の一方の面側に配置された第二接着層2とを有する。
図2における発泡性接着シート10は、第一接着層1と、第一接着層1の一方の面側に配置された第二接着層2とを有し、第一接着層1および第二接着層2の間に基材3をさらに有する。第一接着層1および第二接着層2は硬化性の接着剤を含有しており、第一接着層1および第二接着層2の少なくとも一方は発泡剤をさらに含有する。また、第一接着層1のタックおよび第二接着層2のタックがそれぞれ所定の範囲内であり、第二接着層2の損失正接(tanδ)のピーク値が所定の範囲内である。
【0022】
本開示においては、第二接着層のタックが所定の範囲内であることにより、部材との密着性が良好な第二接着層とすることができる。具体的には、一方の部材の穴や溝等に他方の部材を接着固定する場合であって、他方の部材に発泡性接着シートの第二接着層の面を貼り付け、一方の部材の穴や溝等に、発泡性接着シートが貼り付けられた他方の部材を挿入し、その後、発泡性接着シートを発泡硬化させて、一方の部材および他方の部材を接着する場合において、第二接着層のタックが所定の範囲内であることにより、第二接着層のタックを利用して他方の部材に発泡性接着シートの第二接着層の面を貼り付けることができ、部材に対する第二接着層の密着性を高めることができる。これにより、一方の部材の穴や溝等に、発泡性接着シートが貼り付けられた他方の部材を挿入する際に、発泡性接着シートの剥がれや位置ずれを抑制することができる。
【0023】
また、本開示においては、第二接着層のタックが所定の範囲内であることにより、リワーク性を良好な第二接着層とすることができる。そのため、例えば、上記の接着固定方法において、第二接着層のタックを利用して一方の部材に発泡性接着シートの第二接着層の面を貼り付ける際に、発泡性接着シートの位置ずれを修正することができる。
【0024】
また、本開示においては、第一接着層のタックが所定の値以下であるため、第一接着層を実質的に非粘着性(タックフリー)とすることができ、滑り性が良好な第一接着層とすることができる。そのため、例えば、上記の接着固定方法において、一方の部材の穴や溝等に、発泡性接着シートが貼り付けられた他方の部材を挿入する際に、発泡性接着シートが貼り付けられた他方の部材をスムーズに挿入することができ、挿入性を向上させることができる。これにより、発泡性接着シートの剥がれや位置ずれを抑制することができる。また、上記の接着固定方法において、一方の部材に対して他方の部材を動かして部材同士の位置合わせを行う際には、一方の部材の穴や溝等に他方の部材を挿入した状態で一方の部材に対して他方の部材をスムーズに動かすことができ、位置合わせを容易に行うことができる。
【0025】
さらに、本開示においては、第一接着層のタックが所定の値以下であり、第一接着層が実質的に非粘着性(タックフリー)であるため、滑り性が良好であるとともに、耐ブロッキング性も良好な第一接着層とすることができる。よって、発泡性接着シートの取扱性も良くすることができる。
【0026】
また、本開示においては、上述したように、第二接着層が部材との密着性に優れており、第一接着層が滑り性に優れていることから、発泡性接着シートの剥がれや位置ずれを抑制することができる。そのため、発泡性接着シートの剥がれや位置ずれによる発泡性接着シートの発泡硬化後の接着性の低下を抑制するとともに、発泡性接着シートの剥がれや位置ずれによる発泡性接着シートの発泡硬化後の接着強度のばらつきを小さくすることができる。よって、本開示の発泡性接着シートを用いることにより、接着強度が高く、高信頼性、高品質の接着を実現することができる。
【0027】
また、本開示においては、第二接着層のtanδのピーク値が所定の値以上であることにより、第二接着層の形成時に高温で乾燥させても膜形成が可能であり、残留溶剤を低減するとともに、効率良く第二接着層を形成することができる。よって、発泡性接着シートの生産効率を向上させることができる。また、第二接着層のtanδのピーク値が所定の値以下であることにより、発泡性接着シートの加熱時の第二接着層の流動性を確保することができ、部材の接着面への追従性を確保することができる。よって、発泡性接着シートの発泡硬化後の接着性を向上させることができる。
【0028】
なお、一般に、接着層のtanδのピーク値が高くなると、接着層のタックは低くなる傾向にある。本開示においては、第二接着層のtanδのピーク値を所定の範囲内とすることにより、成膜性、タック、および加熱時の流動性をバランスさせることができる。
【0029】
また、本開示においては、第二接着層のタックが所定の範囲内であることにより、例えば、第二接着層を転写法により形成する場合には、第二接着層の浮きを抑制することができる。さらに、後述するように、第二接着層の第一接着層とは反対の面側に第二セパレータが配置されている場合には、第二接着層のタックが所定の範囲内であることにより、第二セパレータを容易に剥離することができ、作業性を向上させることができる。
【0030】
ここで、「粘着」とは「接着」に含まれる概念である。粘着は一時的な接着現象の意味として用いられるのに対し、接着は実質的に永久的な接着現象の意味として用いられる点で区別されることがある(岩波書店 理化学辞典第5版)。「粘着性」および「粘着力」とは、感圧により接着する性質およびそのときの接着力を指す。
【0031】
なお、本明細書において、「接着層の粘着性」および「接着層の粘着力」とは、特段の事情が無い限り、硬化前の接着層が有する粘着性および粘着力をいう。また、本明細書において、「接着層の接着性」および「接着層の接着力」とは、特段の事情が無い限り、硬化後の接着層が有する接着性および接着力をいう。
【0032】
以下、本開示における発泡性接着シートの各構成について説明する。
【0033】
1.第一接着層
(1)第一接着層の特性
本開示において、第一接着層のタックは、0gf以上、10gf未満であり、5gf以下であってもよく、2gf以下であってもよい。第一接着層のタックが上記範囲内であることにより、第一接着層を実質的に非粘着性(タックフリー)とすることができ、滑り性および耐ブロッキング性の良好な第一接着層とすることができる。
【0034】
ここで、第一接着層のタックは、プローブタック試験により測定することができる。プローブタック試験機としては、例えば、RHESCA社製のタッキング試験機「TAC-II」を用いることができる。なお、第一接着層のタックの測定方法の詳細については、後述の実施例の項に記載する。
【0035】
本開示において、第一接着層のタックは、例えば、第一接着層の組成を調整することにより、所定の範囲内とすることができる。具体的には、エポキシ樹脂および硬化剤を含有する第一接着層において、常温で固体のエポキシ樹脂を用いたり、常温で固体の硬化剤を用いたりすることにより、第一接着層の粘着性を低下させることができる。また、エポキシ樹脂および硬化剤を含有する第一接着層において、軟化温度の高いエポキシ樹脂を含有させる、あるいは重量平均分子量の大きいエポキシ樹脂を含有させることにより、第一接着層の粘着性を低下させることができる。例えば、第一接着層に軟化温度の異なる複数種のエポキシ樹脂を含有させる、すなわち、第一接着層が、一のエポキシ樹脂と、軟化温度が25℃以上であり、かつ、上記一のエポキシ樹脂の軟化温度よりも10℃以上高い、他のエポキシ樹脂とを含有することにより、第一接着層の粘着性を低下させることができる。また、例えば、第一接着層に重量平均分子量の異なる複数種のエポキシ樹脂を含有させる、すなわち、第一接着層が、一のエポキシ樹脂と、重量平均分子量が370以上であり、かつ、上記一のエポキシ樹脂の重量平均分子量よりも300以上大きい、他のエポキシ樹脂とを含有することにより、第一接着層の粘着性を低下させることができる。より具体的には、エポキシ樹脂および硬化剤を含有する第一接着層において、後述するように、エポキシ樹脂として、軟化温度が低く、低分子量の第一エポキシ樹脂と、軟化温度が高く、高分子量の第二エポキシ樹脂とを含有させることにより、第一接着層の粘着性を低下させることができる。また、エポキシ樹脂および硬化剤を含有する第一接着層において、後述するように、エポキシ樹脂と相溶するアクリル樹脂を含有させることにより、第一接着層の粘着性を低下させることができる。
【0036】
本開示において、第一接着層の第二接着層とは反対の面の静摩擦係数は、例えば、0.33以下であることが好ましく、0.30以下であってもよく、0.26以下であってもよい。第一接着層の表面の静摩擦係数が上記範囲であることにより、滑り性の良好な第一接着層とすることができる。また、上記静摩擦係数は、例えば、0.16以上であってもよい。
【0037】
ここで、第一接着層の表面の静摩擦係数は、ISO 8295に対応するJIS K7125に準拠して求めることができる。なお、第一接着層の表面の静摩擦係数の測定方法の詳細については、後述の実施例の項に記載する。
【0038】
本開示において、第一接着層の表面の静摩擦係数は、例えば、第一接着層の組成を調整することにより、制御することができる。具体的には、第一接着層が発泡剤をさらに含有する場合には、第一接着層の表面の静摩擦係数は、第一接着層に含まれる発泡剤の平均粒径や含有量等により制御することができる。より具体的には、発泡剤の平均粒径が大きくなると、第一接着層の表面の静摩擦係数が小さくなる傾向がある。また、発泡剤の含有量が多くなると、第一接着層の表面の静摩擦係数が小さくなる傾向がある。
【0039】
本開示において、第一接着層の第二接着層とは反対の面の算術平均粗さ(Ra)は、例えば、0.3μm以上であることが好ましく、0.5μm以上であってもよく、0.7μm以上であってもよい。第一接着層のRaが上記範囲であることにより、滑り性の良好な第一接着層とすることができる。また、第一接着層のRaは、例えば、1.5μm以下であってもよく、1.3μm以下であってもよく、1.1μm以下であってもよい。
【0040】
ここで、第一接着層のRaは、白色干渉計を用いて測定することができる。なお、第一接着層のRaの測定方法の詳細については、後述の実施例の項に記載する。
【0041】
本開示において、第一接着層のRaは、例えば、第一接着層の組成を調整することにより、制御することができる。具体的には、第一接着層が発泡剤をさらに含有する場合には、第一接着層のRaは、第一接着層に含まれる発泡剤の平均粒径や含有量等により制御することができる。より具体的には、発泡剤の平均粒径が大きくなると、第一接着層のRaが大きくなる傾向がある。また、発泡剤の含有量が多くなると、第一接着層のRaが大きくなる傾向がある。
【0042】
(2)第一接着層の材料
本開示における第一接着層は、硬化性の接着剤を含有する。
【0043】
(a)硬化性の接着剤
本開示における第一接着層に含まれる硬化性の接着剤としては、一般に発泡性接着シートの接着層に使用される硬化性の接着剤を用いることができる。硬化性の接着剤としては、例えば、加熱硬化型接着剤および光硬化型接着剤等が挙げられる。中でも、加熱硬化型接着剤が好ましい。加熱硬化型接着剤は、例えば金属製の部材のように部材が透明性を有さない場合でも適用可能である。
【0044】
また、硬化性の接着剤としては、例えば、エポキシ樹脂系接着剤、アクリル樹脂系接着剤、フェノール樹脂系接着剤、不飽和ポリエステル樹脂系接着剤、アルキド樹脂系接着剤、ウレタン樹脂系接着剤、熱硬化性ポリイミド樹脂系接着剤等が挙げられる。
【0045】
中でも、硬化性の接着剤は、エポキシ樹脂系接着剤であることが好ましい。すなわち、硬化性の接着剤は、エポキシ樹脂と、硬化剤とを含有することが好ましい。一般に、エポキシ樹脂系接着剤は、機械的強度、耐熱性、絶縁性、耐薬品性等に優れており、硬化収縮が小さく、幅広い用途に用いることができる。
【0046】
以下、硬化性の接着剤がエポキシ樹脂系接着剤である場合について例を挙げて説明する。
【0047】
(i)エポキシ樹脂
本開示におけるエポキシ樹脂は、少なくとも1つ以上のエポキシ基またはグリシジル基を有し、硬化剤との併用により架橋重合反応を起こして硬化する化合物である。エポキシ樹脂には、少なくとも1つ以上のエポキシ基またはグリシジル基を有する単量体も含まれる。
【0048】
エポキシ樹脂としては、一般に発泡性接着シートの接着層に使用されるエポキシ樹脂を用いることができる。中でも、硬化性の接着剤は、エポキシ樹脂として、軟化温度が50℃以上であり、かつ、エポキシ当量が5000g/eq以下である第一エポキシ樹脂と、軟化温度が上記第一エポキシ樹脂より高く、かつ、重量平均分子量が20,000以上である第二エポキシ樹脂とを含有することが好ましい。第一エポキシ樹脂および第二エポキシ樹脂を組み合せて用いることで、第一接着層の粘着性(タック性)を低下させることができ、滑り性が良好な発泡性接着シートを得ることができる。さらには、耐ブロッキング性および発泡硬化後の接着性が良好な第一接着層を得ることができる。
【0049】
例えば、発泡硬化後の接着性の向上のみを図る場合、高分子量(高エポキシ当量)のエポキシ樹脂よりも低分子量(低エポキシ当量)のエポキシ樹脂を用いることが有効である。しかしながら、低分子量(低エポキシ当量)のエポキシ樹脂を用いた場合、例えば発泡性接着シートをロール状に巻き取った際に、低分子量(低エポキシ当量)のエポキシ樹脂同士が同化し、ブロッキングが生じやすくなる。
【0050】
これに対して、軟化温度が相対的に低く(結晶性が相対的に高く)、かつ、低分子量(低エポキシ当量)な第一エポキシ樹脂を用いる場合、第一エポキシ樹脂は、軟化温度以上の温度になると、急速に融解して低粘度の液状に変化する。そのため、発泡硬化後の接着性を向上させやすい。一方、第一エポキシ樹脂は、結晶性が相対的に高いため、結晶性が相対的に低いエポキシ樹脂または結晶性を有しないエポキシ樹脂と比較すると、ブロッキングの発生を抑制できる。しかしながら、第一エポキシ樹脂のみを用いた場合、ブロッキングの発生抑制効果が不十分である可能性や、第一接着層の粘着性(タック性)が高くなりすぎる可能性がある。そのため、軟化温度が相対的に高く(結晶性が相対的に低く)、かつ、高分子量な第二エポキシ樹脂をさらに用いることにより、ブロッキングの発生抑制効果を向上させることや、第一接着層の粘着性(タック性)を低く抑えることができる。
【0051】
(i-1)第一エポキシ樹脂
第一エポキシ樹脂は、軟化温度が50℃以上であり、かつ、エポキシ当量が5000g/eq以下である。第一エポキシ樹脂は、後述する第二エポキシ樹脂と比較して、軟化温度が相対的に低い(結晶性が相対的に高い)。第一エポキシ樹脂は、結晶性が相対的に高く、分子量が低いことから、発泡硬化後の接着性および耐ブロッキング性を向上させやすい。また、第一エポキシ樹脂は、分子量が低いため、架橋密度を高くでき、機械的強度、耐薬品性、硬化性が良好な第一接着層が得られる。また、第一エポキシ樹脂は、常温(23℃)で固体のエポキシ樹脂であることが好ましい。
【0052】
第一エポキシ樹脂の軟化温度は、通常、50℃以上であり、55℃以上であってもよく、60℃以上であってもよい。一方、第一エポキシ樹脂の軟化温度は、例えば150℃以下である。軟化温度は、JIS K7234に準拠し、環球法により測定できる。
【0053】
第一エポキシ樹脂のエポキシ当量は、例えば5000g/eq以下であり、3000g/eq以下であってもよく、1000g/eq以下であってもよく、600g/eq以下であってもよい。一方、第一エポキシ樹脂のエポキシ当量は、例えば90g/eq以上であり、100g/eq以上であってもよく、110g/eq以上であってもよい。エポキシ当量は、ISO 3001(Plastics Epoxy compounds-Determination of epoxy equivalent)に対応するJIS K7236に準拠した方法により測定することができ、1グラム当量のエポキシ基を含む樹脂のグラム数である。
【0054】
第一エポキシ樹脂は、1官能のエポキシ樹脂であってもよく、2官能のエポキシ樹脂であってもよく、3官能のエポキシ樹脂であってもよく、4官能以上のエポキシ樹脂であってもよい。
【0055】
また、第一エポキシ樹脂の重量平均分子量(Mw)は、通常、後述する第二エポキシ樹脂の重量平均分子量(Mw)よりも小さい。第一エポキシ樹脂のMwは、例えば6,000以下であり、4,000以下であってもよく、3,000以下であってもよい。一方、第一エポキシ樹脂のMwは、例えば400以上である。Mwは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定した際のポリスチレン換算の値である。
【0056】
第一エポキシ樹脂は、150℃における溶融粘度が、例えば0.005Pa・s以上であり、0.015Pa・s以上であってもよく、0.03Pa・s以上であってもよく、0.05Pa・s以上であってもよく、0.1Pa・s以上であってもよい。溶融粘度が低すぎると、良好な発泡性が得られない可能性がある。また、第一エポキシ樹脂の溶融粘度が低すぎると(第一エポキシ樹脂の結晶性が高すぎると)、得られる第一接着層の粘着性(タック性)が高くなる可能性がある。その理由は、第一エポキシ樹脂の溶融粘度が低すぎると(第一エポキシ樹脂の結晶性が高すぎると)、第二エポキシ樹脂またはアクリル樹脂と相溶した際に、その結晶性が大きく低下し、第一接着層のTgが低下するためであると推測される。一方、第一エポキシ樹脂は、150℃における溶融粘度が、例えば10Pa・s以下であり、5Pa・s以下であってもよく、2Pa・s以下であってもよい。溶融粘度が高すぎると、得られる第一接着層の均一性が低下する可能性がある。溶融粘度は、ISO 2555(Resins in the liquid state or as emulsions or dispersions Determination of Brookfield RV viscosity)に対応するJIS K6862に準拠し、ブルックフィールド形単一円筒回転粘度計、および、溶液を加温するためのサーモセルを用いて測定することにより求めることができる。
【0057】
次に、第一エポキシ樹脂の構成について説明する。第一エポキシ樹脂としては、例えば、芳香族系エポキシ樹脂、脂肪族系エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、複素環系エポキシ樹脂が挙げられる。第一エポキシ樹脂の具体例としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂、ウレタン変性エポキシ樹脂やゴム変性エポキシ樹脂等の変性エポキシ樹脂が挙げられる。また、他の具体例としては、ビフェニル型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、アルキル変性トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、トリアジン核含有エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、グリコール型エポキシ樹脂、ペンタエリスリトール型エポキシ樹脂が挙げられる。第一エポキシ樹脂は、1種であってもよく、2種以上であってもよい。
【0058】
ビスフェノールA型エポキシ樹脂は、ビスフェノール骨格の繰り返し単位の数によって、常温で液体の状態、または常温で固体の状態で存在することができる。主鎖のビスフェノール骨格が、例えば2以上10以下であるビスフェノールA型エポキシ樹脂は、常温で固体である。特に、ビスフェノールA型エポキシ樹脂は、耐熱性向上を図ることができる点で好ましい。
【0059】
特に、第一エポキシ樹脂は、下記一般式(1)で表されるビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂であることが好ましい。
【0060】
【0061】
一般式(1)において、R1は、CmH2m(mは1以上3以下である)で表される基であり、R2およびR3は、それぞれ独立に、CpH2p+1(pは1以上3以下である)で表される基であり、nは、0以上10以下である。
【0062】
一般式(1)において、R1におけるmは1であること、すなわち、R1は-CH2-であることが好ましい。同様に、R2およびR3におけるpは1であること、すなわち、R2およびR3は-CH3であることが好ましい。また、一般式(1)のベンゼン環に結合する水素は、他の元素または他の基で置換されていてもよい。
【0063】
第一エポキシ樹脂の含有量は、第一接着層に含まれる樹脂成分を100質量部とした場合に、例えば、1質量部以上であり、3質量部以上であってもよく、5質量部以上であってもよく、10質量部以上であってもよく、15質量部以上であってもよく、25質量部以上であってもよい。第一エポキシ樹脂の含有量が少なすぎると、発泡硬化後の接着性および耐ブロッキング性が低下する可能性がある。一方、第一エポキシ樹脂の含有量は、第一接着層に含まれる樹脂成分を100質量部とした場合に、例えば、90質量部以下であり、80質量部以下であってもよく、70質量部以下であってもよく、60質量部以下であってもよく、50質量部以下であってもよく、40質量部以下であってもよい。第一エポキシ樹脂の含有量が多すぎると、第二エポキシ樹脂およびアクリル樹脂の含有量が相対的に少なくなり、非粘着性、耐ブロッキング性、発泡硬化後の基材に対する密着性、発泡硬化後の耐割れ性、および発泡硬化後の接着性をバランスさせることができない可能性がある。
【0064】
(i-2)第二エポキシ樹脂
第二エポキシ樹脂は、軟化温度が第一エポキシ樹脂より高く、かつ、重量平均分子量が20,000以上である。第二エポキシ樹脂は、上述した第一エポキシ樹脂と比較して、軟化温度が相対的に高い(結晶性が相対的に低い)。第二エポキシ樹脂は、結晶性が相対的に低く、分子量が高いことから、耐ブロッキング性を向上させやすい。さらに、第二エポキシ樹脂は、結晶性が相対的に低く、分子量が高いことから、第一エポキシ樹脂による粘着性(タック性)の増加を抑制できる。また、第二エポキシ樹脂は、常温(23℃)で固体のエポキシ樹脂であることが好ましい。
【0065】
第二エポキシ樹脂の重量平均分子量(Mw)は、通常、第一エポキシ樹脂の重量平均分子量(Mw)よりも大きい。第二エポキシ樹脂のMwは、通常、20,000以上であり、30,000以上であってもよく、35,000以上であってもよい。一方、第二エポキシ樹脂のMwは、例えば100,000以下である。
【0066】
第二エポキシ樹脂のエポキシ当量は、第一エポキシ樹脂のエポキシ当量に比べて、大きくてもよく、小さくてもよく、同じであってもよい。第二エポキシ樹脂のエポキシ当量は、例えば4000g/eq以上であり、5000g/eq以上であってもよく、6000g/eq以上であってもよい。一方、第二エポキシ樹脂のエポキシ当量は、例えば20000g/eq以下である。
【0067】
第二エポキシ樹脂は、1官能のエポキシ樹脂であってもよく、2官能のエポキシ樹脂であってもよく、3官能のエポキシ樹脂であってもよく、4官能以上のエポキシ樹脂であってもよい。
【0068】
第二エポキシ樹脂の軟化温度は、通常、第一エポキシ樹脂の軟化温度よりも高い。両者の差は、例えば10℃以上であり、20℃以上であってもよく、30℃以上であってもよい。第二エポキシ樹脂の軟化温度は、例えば80℃以上であり、90℃以上であってもよい。一方、第二エポキシ樹脂の軟化温度は、例えば180℃以下である。
【0069】
第二エポキシ樹脂の構成については、上述した第一エポキシ樹脂の構成と同様であるので、ここでの記載は省略する。
【0070】
第二エポキシ樹脂の含有量は、第一接着層に含まれる樹脂成分を100質量部とした場合に、例えば、10質量部以上であり、15質量部以上であってもよく、20質量部以上であってもよく、25質量部以上であってもよく、30質量部以上であってもよく、35質量部以上であってもよく、40質量部以上であってもよく、45質量部以上であってもよい。第二エポキシ樹脂の含有量が少なすぎると、粘着性が高くなり、耐ブロッキング性が低下する可能性がある。一方、第二エポキシ樹脂の含有量は、第一接着層に含まれる樹脂成分を100質量部とした場合に、例えば、90質量部以下であり、85質量部以下であってもよく、80質量部以下であってもよく、75質量部以下であってもよい。第二エポキシ樹脂の含有量が多すぎると、第一エポキシ樹脂およびアクリル樹脂の含有量が相対的に少なくなり、非粘着性、耐ブロッキング性、発泡硬化後の基材に対する密着性、発泡硬化後の耐割れ性、および発泡硬化後の接着性をバランスさせることができない可能性がある。
【0071】
第一エポキシ樹脂および第二エポキシ樹脂の合計に対する、第一エポキシ樹脂の割合は、例えば5質量%以上であり、10質量%以上であってもよく、15質量%以上であってもよく、20質量%以上であってもよい。一方、第一エポキシ樹脂の上記割合は、例えば80質量%以下であり、75質量%以下であってもよく、60質量%以下であってもよい。
【0072】
また、第一接着層に含まれる全てのエポキシ樹脂に対する、第一エポキシ樹脂および第二エポキシ樹脂の合計の割合は、例えば50質量%以上であり、70質量%以上であってもよく、90質量%以上であってもよく、100質量%であってもよい。
【0073】
(ii)アクリル樹脂
硬化性の接着剤がエポキシ樹脂系接着剤である場合、第一接着層は、エポキシ樹脂と相溶するアクリル樹脂をさらに含有していてもよい。アクリル樹脂は、エポキシ樹脂と相溶した樹脂である。アクリル樹脂は、エポキシ樹脂と相溶することから、第一接着層の靭性を向上させやすい。その結果、発泡硬化後の接着性を向上させることができる。さらに、アクリル樹脂が、発泡剤(例えば、シェル部がアクリロニトリルコポリマーの樹脂である発泡剤)の相溶化剤として働き、均一に分散、発泡することで、発泡硬化後の接着性が向上すると考えられる。また、アクリル樹脂による柔軟性が発揮され、発泡硬化後の基材に対する密着性や発泡硬化後の耐割れ性の向上を図ることができる。また、アクリル樹脂がエポキシ樹脂と相溶することで、第一接着層表面の硬度を高く保つことができる。一方、アクリル樹脂がエポキシ樹脂と非相溶であると、第一接着層表面に柔軟な部位が形成されるため、被着体との界面が滑りにくくなり、作業性が低下することがある。
【0074】
本開示におけるアクリル樹脂は、エポキシ樹脂と相溶している。ここで、アクリル樹脂がエポキシ樹脂と相溶していることは、例えば、発泡性接着シートの第一接着層の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)または透過型電子顕微鏡(TEM)で観察したときに、ミクロンサイズの島が発生していないことから確認することができる。より具体的には、島の平均粒径が1μm以下であることが好ましい。中でも、島の平均粒径は、0.5μm以下であってもよく、0.3μm以下であってもよい。サンプル数は多いことが好ましく、例えば100以上である。観察するエリア面積は、100μm×100μmの範囲、もしくは、第一接着層の平均厚さが100μm以下の場合は、平均厚さ×100μmの範囲で行う。
【0075】
アクリル樹脂の重量平均分子量(Mw)は、例えば50,000以上であり、70,000以上であってもよく、100,000以上であってもよい。第一エポキシ樹脂は結晶性が相対的に高く、加熱時の溶融粘度(もしくは動的粘弾性)が低くなりすぎてしまい、発泡後の硬化時(発泡剤の発泡が終了してから第一接着層が硬化するまでの間)に収縮が起きてしまう可能性があるが、ある程度の分子量を有するアクリル樹脂を用いることで、溶融粘度を低くなりすぎることを抑制でき、発泡後の硬化時に収縮が起きにくくなる。一方、アクリル樹脂のMwは、例えば1,500,000以下である。アクリル樹脂の重量平均分子量は、GPC(溶離液:THF、標準物質:PS、試料:20μL、流量:1mL/min、カラム温度:40℃)により測定することができる。
【0076】
アクリル樹脂のガラス転移温度(Tg)は、例えば90℃以上であり、100℃以上であってもよい。一方、アクリル樹脂のTgは、例えば180℃以下である。Tgは、ISO 3146に対応するJIS K7121に準拠し、示差走査熱量計(DSC)等の熱分析により測定できる。
【0077】
アクリル樹脂は、発泡開始温度で貯蔵弾性率(E’)が1×106Pa以下であってもよい。発泡開始時におけるE’が低いことで、流動性が向上し、良好な発泡性を得ることができる。一方、発泡開始温度におけるE’は、例えば1×105Pa以上である。なお、発泡開始温度は、発泡剤の種類に応じて異なる温度である。また、発泡剤として、二種以上の発泡剤を用いる場合は、主たる発泡反応の開始温度を発泡開始温度とする。
【0078】
アクリル樹脂は、硬化開始温度で貯蔵弾性率(E’)が1×105Pa以上であってもよい。上述したように、発泡後の硬化時(発泡剤の発泡が終了してから第一接着層が硬化するまでの間)に収縮が起きる場合があるが、硬化開始温度におけるE’が大きいことで、収縮を抑えることができ、良好な形状保持性を得ることができる。なお、硬化開始温度は、硬化剤の種類に応じて異なる温度である。また、硬化剤として、二種以上の硬化剤を用いる場合は、主たる硬化反応の開始温度を硬化開始温度とする。
【0079】
また、アクリル樹脂は、0℃以上100℃以下における貯蔵弾性率(E’)の平均値が、1×106Pa以上であってもよい。発泡前におけるE’の平均値が高いことで、良好な非粘着性、耐ブロッキング性を得ることができる。一方、0℃以上100℃以下の貯蔵弾性率(E’)の平均値は、例えば1×108Pa以下である。
【0080】
アクリル樹脂は、極性基を有していてもよい。極性基としては、例えば、エポキシ基、水酸基、カルボキシル基、ニトリル基、アミド基が挙げられる。
【0081】
アクリル樹脂は、アクリル酸エステル単量体の単独重合体であり、上記単独重合体を2種以上含む混合成分であってもよく、2種以上のアクリル酸エステル単量体の共重合体であり、共重合体を1以上含む成分であってもよい。また、アクリル樹脂は、上記単独重合体と上記共重合体との混合成分であってもよい。アクリル酸エステル単量体の「アクリル酸」には、メタクリル酸の概念も含まれる。具体的には、アクリル樹脂は、メタクリレートの重合体とアクリレートの重合体との混合物であってもよく、アクリレート-アクリレート、メタクリレート-メタクリレート、メタクリレート-アクリレート等のアクリル酸エステル重合体であってもよい。中でも、アクリル樹脂は、2種以上のアクリル酸エステル単量体の共重合体((メタ)アクリル酸エステル共重合体)を含むことが好ましい。
【0082】
(メタ)アクリル酸エステル共重合体を構成する単量体成分としては、例えば、特開2014-065889号公報に記載の単量体成分が挙げられる。上記単量体成分は、上述した極性基を有していてもよい。上記(メタ)アクリル酸エステル共重合体としては、例えば、エチルアクリレート-ブチルアクリレート-アクリロニトリル共重合体、エチルアクリレート-アクリロニトリル共重合体、ブチルアクリレート-アクリロニトリル共重合体が挙げられる。なお、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル等の「アクリル酸」には、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル等の「メタクリル酸」も含まれる。
【0083】
上記(メタ)アクリル酸エステル共重合体としては、ブロック共重合体が好ましく、さらにメタクリレート-アクリレート共重合体等のアクリル系ブロック共重合体が好ましい。アクリル系ブロック共重合体を構成する(メタ)アクリレートとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ベンジジルが挙げられる。これらの「アクリル酸」には、「メタクリル酸」も含まれる。
【0084】
メタクリレート-アクリレート共重合体の具体例としては、メチルメタクリレート-ブチルアクリレート-メチルメタクリレート(MMA-BA-MMA)共重合体等のアクリル系共重合体が挙げられる。MMA-BA-MMA共重合体には、ポリメチルメタクリレート-ポリブチルアクリレート-ポリメチルメタクリレート(PMMA-PBA-PMMA)のブロック共重合体も含まれる。
【0085】
アクリル系共重合体は、極性基を有していなくてもよく、また一部に上述した極性基を導入した変性物であってもよい。上記変性物は、エポキシ樹脂と相溶しやすいため、接着性がより向上する。
【0086】
中でも、アクリル樹脂は、ガラス転移温度(Tg)が10℃以下である第一重合体部分と、ガラス転移温度(Tg)が20℃以上である第二重合体部分とを有する(メタ)アクリル酸エステル共重合体であることが好ましい。このような(メタ)アクリル酸エステル共重合体は、柔らかいセグメントとなる第一重合体部分と、硬いセグメントとなる第二重合体部分とを有する。
【0087】
上記の効果の発現は、以下のように推定できる。上記(メタ)アクリル酸エステル共重合体のような、柔らかいセグメントと、硬いセグメントとを併せ持つアクリル樹脂を用いることで、硬いセグメントが耐熱性に寄与し、柔らかいセグメントが靱性ないし柔軟性に寄与するため、耐熱性、靱性、柔軟性が良好な第一接着層が得られる。
【0088】
上記(メタ)アクリル酸エステル共重合体に含まれる第一重合体部分および第二重合体部分の少なくとも一方は、エポキシ樹脂に対して相溶性を有する。第一重合体部分がエポキシ樹脂に対して相溶性を有する場合には、柔軟性を高めることができる。また、第二重合体部分がエポキシ樹脂に対して相溶性を有する場合には、凝集性や靱性を高めることができる。
【0089】
第一重合体部分または第二重合体部分の一方がエポキシ樹脂に対して相溶性を有しない場合、(メタ)アクリル酸エステル共重合体は、エポキシ樹脂に対して相溶性を有する重合体部分である相溶部位と、エポキシ樹脂に対して相溶性を有しない重合体部分である非相溶部位とを有することになる。この場合、上記(メタ)アクリル酸エステル共重合体を添加すると、相溶部位がエポキシ樹脂と相溶し、非相溶部位がエポキシ樹脂と相溶しないため、微細な相分離が起こる。その結果、微細な海島構造が発現する。海島構造としては、(メタ)アクリル酸エステル共重合体の種類、(メタ)アクリル酸エステル共重合体に含まれる第一重合体部分および第二重合体部分の相溶性、極性基導入による変性の有無によって異なり、例えば、エポキシ樹脂の硬化物および(メタ)アクリル酸エステル共重合体の相溶部位が海、(メタ)アクリル酸エステル共重合体の非相溶部位が島であるような海島構造や、(メタ)アクリル酸エステル共重合体の非相溶部位が海、エポキシ樹脂の硬化物および(メタ)アクリル酸エステル共重合体の相溶部位が島であるような海島構造、(メタ)アクリル酸エステル共重合体が海、エポキシ樹脂の硬化物が島であるような海島構造が挙げられる。このような海島構造を有することで、応力を分散させやすくすることができるので、界面破壊を避けることができ、発泡硬化後に優れた接着性が得られる。
【0090】
上記(メタ)アクリル酸エステル共重合体は、中でもブロック共重合体であることが好ましく、特に、相溶部位を重合体ブロックA、非相溶部位を重合体ブロックBとするA-B-Aブロック共重合体であることが好ましい。さらには、第一重合体部分が非相溶部位、第二重合体部分が相溶部位であり、第一重合体部分を重合体ブロックB、第二重合体部分を重合体ブロックAとするA-B-Aブロック共重合体であることが好ましい。アクリル樹脂としてこのようなA-B-Aブロック共重合体を用いることにより、エポキシ樹脂の硬化物および(メタ)アクリル酸エステル共重合体の相溶部位が海、(メタ)アクリル酸エステル共重合体の非相溶部位が島であるような海島構造の場合には、島部分を小さくすることができる。また、(メタ)アクリル酸エステル共重合体の非相溶部位が海、エポキシ樹脂の硬化物および(メタ)アクリル酸エステル共重合体の相溶部位が島であるような海島構造の場合や、(メタ)アクリル酸エステル共重合体が海、エポキシ樹脂の硬化物が島であるような海島構造の場合には、海部分を小さくすることができる。
【0091】
また、上記(メタ)アクリル酸エステル共重合体は、第一重合体部分または第二重合体部分の一部に上述の極性基を導入した変性物であってもよい。
【0092】
上記(メタ)アクリル酸エステル共重合体に含まれる第一重合体部分のTgは、10℃以下であり、-150℃以上、10℃以下の範囲内、中でも-130℃以上、0℃以下の範囲内、特に-110℃以上、-10℃以下の範囲内とすることができる。
【0093】
なお、第一重合体部分のTgは、「POLYMERHANDBOOK第三版」(John Wiley & Sons,Ink.発行)に記載された各単独重合体のTg(K)を基にして、下記式で計算により求めることができる。
1/Tg(K)=W1/Tg1+W2/Tg2+・・・・+Wn/Tgn
Wn;各単量体の質量分率
Tgn;各単量体の単独重合体のTg(K)であり、ポリマーハンドブック(3rd Ed.,J.Brandrup and E.H.Immergut,WILEY INTERSCIENCE)中の値など、一般に公開されている掲載値を用いればよい。後述の第二重合体部分のTgも同様である。
【0094】
上記(メタ)アクリル酸エステル共重合体に含まれる第一重合体部分は、単独重合体であってもよく、共重合体であってもよいが、中でも単独重合体であることが好ましい。第一重合体部分を構成する単量体成分および重合体成分は、Tgが所定の範囲である第一重合体部分を得ることができる単量体成分および重合体成分であればよく、例えばアクリル酸ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸イソノニル、アクリル酸メチル等のアクリル酸エステル単量体や、酢酸ビニル、アセタール、ウレタン等の他の単量体、上述の極性基を含む極性基含有単量体、EVA等の共重合体が挙げられる。
【0095】
上記(メタ)アクリル酸エステル共重合体に含まれる第二重合体部分のTgは、20℃以上であり、20℃以上、150℃以下の範囲内、中でも30℃以上、150℃以下の範囲内、特に40℃以上、150℃以下の範囲内とすることができる。
【0096】
また、上記(メタ)アクリル酸エステル共重合体に含まれる第二重合体部分は、単独重合体であってもよく、共重合体であってもよいが、中でも単独重合体であることが好ましい。第二重合体部分を構成する単量体成分は、Tgが所定の範囲である第二重合体部分を得ることができる単量体成分であればよく、例えばメタクリル酸メチル等のアクリル酸エステル単量体や、アクリルアミド、スチレン、塩化ビニル、アミド、アクリロニトリル、酢酸セルロース、フェノール、ウレタン、塩化ビニリデン、塩化メチレン、メタクリロニトリル等の他の単量体、上述の極性基を含む極性基含有単量体が挙げられる。
【0097】
上記の第一重合体部分および第二重合体部分を有する(メタ)アクリル酸エステル共重合体の具体例としては、上記のMMA-BA-MMA共重合体が挙げられる。
【0098】
アクリル樹脂の含有量は、第一接着層に含まれる樹脂成分を100質量部とした場合に、例えば、1質量部以上であり、3質量部以上であってもよく、5質量部以上であってもよく、7質量部以上であってもよく、10質量部以上であってもよい。アクリル樹脂の含有量が少なすぎると、発泡硬化後の基材に対する密着性、発泡硬化後の耐割れ性、および発泡硬化後の接着性が低下する可能性がある。一方、アクリル樹脂の含有量は、第一接着層に含まれる樹脂成分を100質量部とした場合に、例えば、60質量部以下であり、50質量部以下であってもよく、40質量部以下であってもよく、35質量部以下であってもよく、30質量部以下であってもよい。アクリル樹脂の含有量が多すぎると、第一エポキシ樹脂および第二エポキシ樹脂の含有量が相対的に少なくなり、非粘着性、耐ブロッキング性、発泡硬化後の基材に対する密着性、発泡硬化後の耐割れ性、および発泡硬化後の接着性をバランスさせることができない可能性がある。また、アクリル樹脂の含有量が多すぎると、膜強度が低下する可能性がある。
【0099】
(iii)硬化剤
本開示における硬化剤としては、一般にエポキシ樹脂系接着剤に使用される硬化剤を用いることができる。硬化剤は、常温(23℃)で固体であることが好ましい。常温で固体である硬化剤は、常温で液体である硬化剤と比較して、保存安定性(ポットライフ)を長くすることができる。また、硬化剤は、潜在性硬化剤であってもよい。また、硬化剤は、熱により硬化反応が生じる硬化剤であってもよく、光により硬化反応が生じる硬化剤であってもよい。また、本開示においては、硬化剤を単独で用いてもよく、2種以上用いてもよい。
【0100】
硬化剤の反応開始温度は、例えば110℃以上であり、130℃以上であってもよい。反応開始温度が低すぎると、反応が早期に開始され、樹脂成分の柔軟性や流動性が低い状態で硬化が生じ、均一な硬化が生じにくい可能性がある。一方、硬化剤の反応開始温度は、例えば、200℃以下である。反応開始温度が高すぎると、樹脂成分が劣化する可能性がある。なお、エポキシ樹脂の他に、例えばフェノール樹脂等の耐熱性が高い樹脂を使用する場合には、樹脂成分の劣化が少ないため、硬化剤の反応開始温度は、例えば300℃以下であってもよい。硬化剤の反応開始温度は、示差走査熱量測定(DSC)により求めることができる。
【0101】
硬化剤の具体例としては、イミダゾール系硬化剤、フェノール系硬化剤、アミン系硬化剤、酸無水物系硬化剤、イソシアネート系硬化剤、チオール系硬化剤が挙げられる。
【0102】
イミダゾール系硬化剤としては、例えば、イミダゾール、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-イソプロピルイミダゾール、2-フェニルイミダゾールや、イミダゾール化合物のカルボン酸塩、エポキシ化合物との付加物が挙げられる。また、イミダゾール系硬化剤は、ヒドロキシル基を有することが好ましい。ヒドロキシ基同士の水素結合で結晶化するため、反応開始温度が高くなる傾向にある。
【0103】
フェノール系硬化剤としては、例えば、フェノール樹脂が挙げられる。さらに、フェノール樹脂としては、例えば、レゾール型フェノール樹脂、ノボラック型フェノール樹脂が挙げられる。発泡硬化後の基材に対する密着性や発泡硬化後の耐割れ性等の観点から、Tgが110℃以下のフェノール型ノボラック樹脂が特に好ましい。また、フェノール系硬化剤およびイミダゾール系硬化剤を併用してもよい。その場合、イミダゾール系硬化剤を硬化触媒として用いることが好ましい。
【0104】
アミン系硬化剤としては、例えば、ジエチレントリアミン(DETA)、トリエチレンテトラミン(TETA)、メタキシレリレンジアミン(MXDA)等の脂肪族アミン;ジアミノジフェニルメタン(DDM)、m-フェニレンジアミン(MPDA)、ジアミノジフェニルスルホン(DDS)等の芳香族アミン;脂環式アミン;ポリアミドアミンが挙げられる。また、アミン系硬化剤として、ジシアンジアミド(DICY)等のジシアンジアミド系硬化剤、有機酸ジヒドラジド系硬化剤、アミンアダクト系硬化剤、ケチミン系硬化剤を用いることができる。
【0105】
酸無水物系硬化剤としては、例えば、ヘキサヒドロ無水フタル酸(HHPA)、メチルテトラヒドロ無水フタル酸(MTHPA)等の脂環族酸無水物(液状酸無水物);無水トリメリット酸(TMA)、無水ピロメリット酸(PMDA)、ベンゾフェノンテトラカルボン酸(BTDA)等の芳香族酸無水物が挙げられる。
【0106】
イソシアネート系硬化剤としては、例えば、ブロックイソシアネートが挙げられる。
【0107】
チオール系硬化剤としては、例えば、エステル結合型チオール化合物、脂肪族エーテル結合型チオール化合物、芳香族エーテル結合型チオール化合物が挙げられる。
【0108】
硬化剤の含有量は、第一接着層に含まれる樹脂成分を100質量部とした場合に、例えば、1質量部以上、40質量部以下である。例えば、硬化剤としてイミダゾール系硬化剤を主成分として用いる場合、硬化剤の含有量は、第一接着層に含まれる樹脂成分を100質量部とした場合に、例えば、1質量部以上、15質量部以下であることが好ましい。一方、硬化剤としてフェノール系硬化剤を主成分として用いる場合、硬化剤の含有量は、第一接着層に含まれる樹脂成分を100質量部とした場合に、例えば、5質量部以上、40質量部以下であることが好ましい。なお、硬化剤としてイミダゾール系硬化剤またはフェノール系硬化剤を主成分として用いるとは、硬化剤において、イミダゾール系硬化剤またはフェノール系硬化剤の質量割合が最も多いことをいう。
【0109】
(b)発泡剤
本開示における第一接着層は、発泡剤を含有していてもよく、含有していなくてもよいが、中でも、発泡剤を含有することが好ましい。発泡剤が含有されることで、表面粗さが大きく、摩擦係数が小さくなり、滑り性がさらに良好となる。そのため、第一接着層および第二接着層のうち、タックが低い第一接着層が発泡剤を含有することが好ましい。
【0110】
発泡剤としては、一般に発泡性接着シートの接着層に使用される発泡剤を用いることができる。また、発泡剤は、熱により発泡反応が生じる発泡剤であってもよく、光により発泡反応が生じる発泡剤であってもよい。
【0111】
発泡剤の発泡開始温度は、エポキシ樹脂等の硬化性の接着剤の主剤の軟化温度以上であり、かつ、エポキシ樹脂等の硬化性の接着剤の主剤の硬化反応の活性化温度以下であることが好ましい。発泡剤の発泡開始温度は、例えば、70℃以上であり、100℃以上であってもよい。反応開始温度が低すぎると、反応が早期に開始され、樹脂成分の柔軟性や流動性が低い状態で発泡が生じ、均一な発泡が生じにくい可能性がある。一方、発泡剤の反応開始温度は、例えば、210℃以下である。反応開始温度が高すぎると、樹脂成分が劣化する可能性がある。
【0112】
なお、エポキシ樹脂等の硬化性の接着剤の主剤の軟化温度は、JIS K7234に規定される環球式軟化温度試験法を用いて測定できる。
【0113】
発泡剤としては、例えば、マイクロカプセル型発泡剤が挙げられる。マイクロカプセル型発泡剤は、炭化水素等の熱膨張剤をコアとし、アクリロニトリルコポリマー等の樹脂をシェルとすることが好ましい。
【0114】
また、発泡剤として、例えば、有機系発泡剤や無機系発泡剤を用いてもよい。有機系発泡剤としては、例えば、アゾジカルボンアミド(ADCA)、アゾビスホルムアミド、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ発泡剤、トリクロロモノフルオロメタン等のフッ化アルカン系発泡剤、パラトルエンスルホニルヒドラジド等のヒドラジン系発泡剤、p-トルエンスルホニルセミカルバジド等のセミカルバジド系発泡剤、5-モルホリル-1,2,3,4-チアトリアゾール等のトリアゾール系発泡剤、N,N-ジニトロソテレフタルアミド等のN-ニトロソ系発泡剤が挙げられる。一方、無機系発泡剤としては、例えば、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、亜硝酸アンモニウム、水素化ホウ素アンモニウム、アジド類が挙げられる。
【0115】
発泡剤の平均粒径は、例えば、10μm以上であってもよく、13μm以上であってもよく、17μm以上であってもよい。発泡剤の平均粒径が上記範囲であることにより、第一接着層の表面の静摩擦係数を小さくすることができ、滑り性が良好な第一接着層とすることができる。また、発泡剤の平均粒径は、第一接着層の平均厚さ以下であることが好ましく、例えば、44μm以下であってもよく、30μm以下であってもよく、24μm以下であってもよい。
【0116】
なお、発泡剤の平均粒径は、レーザー回折散乱法によって求めた粒度分布における積算値50%での粒径である。また、発泡剤の平均粒径を測定するに際しては、第一接着層を溶剤に溶解させて発泡剤を分離する。溶剤としては、第一接着層に含まれる発泡剤以外の成分を溶解することが可能な溶剤であれば特に限定されず、第一接着層に含まれる硬化性の接着剤の種類等に応じて適宜選択され、例えば、第一接着層の形成に用いられる接着剤組成物に使用される溶剤を用いることができる。具体的には、メチルエチルケトン、酢酸エチル、トルエン等を用いることができる。
【0117】
発泡剤の含有量は、第一接着層に含まれる樹脂成分を100質量部とした場合に、例えば、0.5質量部以上であり、2質量部以上であってもよく、3質量部以上であってもよく、4質量部以上であってもよく、5質量部以上であってもよい。一方、発泡剤の含有量は、第一接着層に含まれる樹脂成分100質量部に対して、例えば25質量部以下であり、20質量部以下であってもよく、15質量部以下であってもよい。発泡剤の含有量が少なすぎると、第一接着層の表面の静摩擦係数が大きくなる可能性がある。また、発泡剤の含有量が多すぎると、硬化性の接着剤の含有量が相対的に少なくなるため、発泡硬化後の接着性が低下する可能性がある。
【0118】
(c)その他の成分
本開示における第一接着層は、例えば硬化性の接着剤がエポキシ樹脂系接着剤である場合、樹脂成分として、エポキシ樹脂およびアクリル樹脂のみを含有していてもよく、他の樹脂をさらに含有していてもよい。他の樹脂としては、例えばウレタン樹脂が挙げられる。
【0119】
第一接着層に含まれる樹脂成分に対する、第一エポキシ樹脂、第二エポキシ樹脂およびアクリル樹脂の合計の割合は、例えば70質量%以上であり、80質量%以上であってもよく、90質量%以上であってもよく、100質量%であってもよい。
【0120】
第一接着層に含まれる樹脂成分の含有量は、例えば60質量%以上であり、70質量%以上であってもよく、80質量%以上であってもよく、90質量%以上であってもよい。
【0121】
第一接着層は、必要に応じて、例えばシランカップリング剤、充填剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、可塑剤、帯電防止剤、架橋剤、着色剤等の添加剤を含有していてもよい。シランカップリング剤としては、例えば、エポキシ系シランカップリング剤が挙げられる。充填剤としては、例えば、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、三酸化アンチモン、ホウ酸亜鉛、モリブデン化合物、二酸化チタン等の無機充填剤が挙げられる。酸化防止剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤が挙げられる。
【0122】
(3)第一接着層の構成
第一接着層が発泡剤をさらに含有する場合、第一接着層は、例えば、4倍以上、15倍以下の発泡倍率で発泡可能である。例えば、第一接着層および第二接着層のうち、第一接着層のみが発泡剤を含有する場合、上記発泡倍率は、例えば、5倍以上であってもよく、7倍以上であってもよく、9倍以上であってもよい。また、上記の場合、上記発泡倍率は、例えば、14倍以下であってもよく、13倍以下であってもよく、12倍以下であってもよい。一方、例えば、第一接着層および第二接着層のうち、第一接着層および第二接着層の両方が発泡剤を含有する場合、上記発泡倍率は、例えば、5倍以上であってもよく、6倍以上であってもよく、7倍以上であってもよい。また、上記の場合、上記発泡倍率は、例えば、14倍以下であってもよく、12倍以下であってもよく、10倍以下であってもよい。上記発泡倍率が小さすぎても大きすぎても、発泡硬化後の接着性が低下する可能性がある。
【0123】
ここで、発泡倍率は、下記式により求めることができる。
発泡倍率(倍)=発泡硬化後の第一接着層の厚さ/発泡硬化前の第一接着層の厚さ
【0124】
第一接着層の平均厚さは、特に限定されないが、第一接着層が発泡剤を含有する場合には、発泡剤の平均粒径以上であることが好ましく、例えば10μm以上であり、15μm以上であってもよく、20μm以上であってもよい。第一接着層が薄すぎると、基材との密着性および発泡硬化後の接着性を十分に得ることができない可能性がある。一方、第一接着層の平均厚さは、例えば200μm以下であり、150μm以下であってもよく、100μm以下であってもよい。第一接着層が厚すぎると、面質が悪化する可能性がある。
【0125】
ここで、第一接着層の平均厚さは、透過型電子顕微鏡(TEM)、走査型電子顕微鏡(SEM)又は走査透過型電子顕微鏡(STEM)により観察される発泡性接着シートの厚さ方向の断面から測定した値であり、無作為に選んだ10箇所の厚さの平均値とすることができる。なお、発泡性接着シートが有する他の層の平均厚さの測定方法についても同様とすることができる。
【0126】
第一接着層は、連続層であってもよく、不連続層であってもよい。不連続層としては、例えば、ストライプ、ドット等のパターンが挙げられる。また、第一接着層の表面が、エンボス等の凹凸形状を有していてもよい。
【0127】
第一接着層は、例えば、上記の硬化性の接着剤および発泡剤等を含む接着剤組成物を塗布し、溶剤を除去することで形成することができる。塗布方法としては、例えば、ロールコート、リバースロールコート、トランスファーロールコート、グラビアコート、グラビアリバースコート、コンマコート、ロッドコ-ト、ブレードコート、バーコート、ワイヤーバーコート、ダイコート、リップコート、ディップコート等が挙げられる。
【0128】
接着剤組成物は、溶媒を含有していてもよく、溶媒を含有していなくてもよい。なお、本明細書における溶媒は、厳密な溶媒(溶質を溶解させる溶媒)のみならず、分散媒も含む広義の意味である。また、接着剤組成物に含まれる溶媒は、接着剤組成物を塗布乾燥して接着層を形成する際に揮発して除去される。
【0129】
接着剤組成物は、上述した各成分を混合し、必要に応じて混練、分散することにより、得ることができる。混合および分散方法としては、一般的な混練分散機、例えば、二本ロールミル、三本ロールミル、ペブルミル、トロンミル、ツェグバリ(Szegvari)アトライター、高速インペラー分散機、高速ストーンミル、高速度衝撃ミル、デスパー、高速ミキサー、リボンブレンダー、コニーダー、インテンシブミキサー、タンブラー、ブレンダー、デスパーザー、ホモジナイザー、超音波分散機が適用できる。
【0130】
2.第二接着層
(1)第二接着層の特性
本開示において、第二接着層のタックは、10gf以上であり、30gf以上であってもよく、50gf以上であってもよい。第二接着層のタックが低すぎると、例えば上述の接着固定方法において、第二接着層のタックを利用して他方の部材に発泡性接着シートの第二接着層の面を貼り付ける際に、第二接着層および他方の部材の密着性が低下する可能性や、他方の部材の穴や溝等に発泡性接着シートが貼り付けられた他方の部材を挿入する際に、第二接着層および他方の部材の密着不良により発泡性接着シートが剥がれたり発泡性接着シートの位置がずれたりすること等によって、発泡硬化後の第一接着層および第二接着層の接着性が低下したり、接着強度にばらつきが生じたりする可能性がある。また、第二接着層のタックは、400gf以下であり、300gf以下であってもよく、200gf以下であってもよい。第二接着層のタックが高すぎると、リワーク性が低下し、例えば上述の接着固定方法において、第二接着層のタックを利用して他方の部材に発泡性接着シートの第二接着層の面を貼り付ける際に、発泡性接着シートの位置ずれの修正が困難になる可能性がある。
【0131】
ここで、第二接着層のタックの測定方法は、上記第一接着層のタックの測定方法と同様とすることができる。
【0132】
本開示において、第二接着層のタックは、例えば、第二接着層の組成を調整することにより、制御することができる。具体的には、エポキシ樹脂および硬化剤を含有する第二接着層において、常温で液体のエポキシ樹脂を用いたり、常温で液体の硬化剤を用いたりすると、第二接着層の粘着性が高くなる傾向がある。また、エポキシ樹脂および硬化剤を含有する第二接着層において、軟化温度の低いエポキシ樹脂を含有させる、あるいは重量平均分子量の小さいエポキシ樹脂を含有させると、第二接着層の粘着性が高くなる傾向がある。また、第二接着層に粘着付与樹脂(タッキファイヤ)を添加することにより、第二接着層の粘着性が高くなる傾向がある。なお、常温で液体の硬化剤を用いると、粘着性が高くなる傾向にあるものの、保存安定性が低下する可能性があるため、硬化剤以外の成分、例えばエポキシ樹脂等の特性や種類等を調整することで、第二接着層のタックを調整することが好ましい。
【0133】
本開示において、第二接着層の損失正接(tanδ)のピーク値は、100℃以上であり、110℃以上であってもよく、120℃以上であってもよい。第二接着層のtanδのピーク値が上記範囲であることにより、第二接着層の形成時に高温で乾燥させても膜形成が可能であり、残留溶剤を低減するとともに、効率良く第二接着層を形成することができる。また、第二接着層のtanδのピーク値は、180℃以下であり、170℃以下であってもよく、160℃以下であってもよい。第二接着層のtanδのピーク値が上記範囲であることにより、発泡性接着シートの加熱時の第二接着層の流動性を確保することができ、部材の接着面への追従性を確保することができる。よって、発泡性接着シートの発泡硬化後の接着性を向上させることができる。
【0134】
ここで、第二接着層のtanδは、動的粘弾性測定によって測定することができ、下記式から求められる。
損失正接(tanδ)=損失弾性率(E’’)/貯蔵弾性率(E’)
なお、第二接着層のtanδの測定方法の詳細については、後述の実施例の項に記載する。また、tanδのピークが複数存在する場合は、高い温度の方をtanδのピーク値とした。
【0135】
本開示において、第二接着層のtanδのピーク値は、例えば、第二接着層の組成を調整することにより、制御することができる。具体的には、エポキシ樹脂および硬化剤を含有する第二接着層において、軟化温度の高いエポキシ樹脂を含有させる、あるいは重量平均分子量の大きいエポキシ樹脂を含有させることにより、第二接着層のtanδのピーク値が高くなる傾向がある。
【0136】
(2)第二接着層の材料
本開示における第二接着層は、硬化性の接着剤を含有する。
【0137】
(a)硬化性の接着剤
本開示における第二接着層に含まれる硬化性の接着剤としては、上記第一接着層に用いられる硬化性の接着剤と同様とすることができる。中でも、硬化性の接着剤は、エポキシ樹脂系接着剤であることが好ましい。
【0138】
以下、硬化性の接着剤がエポキシ樹脂系接着剤である場合について例を挙げて説明する。
【0139】
(i)エポキシ樹脂
本開示におけるエポキシ樹脂としては、上記第一接着層に用いられるエポキシ樹脂と同様とすることができる。
【0140】
エポキシ樹脂としては、一般に発泡性接着シートの接着層に使用されるエポキシ樹脂を用いることができる。
【0141】
第エポキシ樹脂としては、例えば、芳香族系エポキシ樹脂、脂肪族系エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、複素環系エポキシ樹脂が挙げられる。第エポキシ樹脂の具体例としては、上記第一接着層に用いられる第一エポキシ樹脂の具体例と同様とすることができる。
【0142】
エポキシ樹脂は、1官能のエポキシ樹脂であってもよく、2官能のエポキシ樹脂であってもよく、3官能のエポキシ樹脂であってもよく、4官能以上のエポキシ樹脂であってもよい。
【0143】
中でも、エポキシ樹脂として、ビスフェノールA型エポキシ樹脂やビスフェノールF型エポキシ樹脂等の常温で液体エポキシ樹脂、および、軟化点の低いエポキシ樹脂を用いることが好ましい。これらのエポキシ樹脂を用いることで、第二接着層のタックを所定の範囲内に調整しやすいからである。
【0144】
(ii)アクリル樹脂
硬化性の接着剤がエポキシ樹脂系接着剤である場合、第二接着層は、エポキシ樹脂と相溶するアクリル樹脂をさらに含有していてもよい。成膜性を高めることができる。
【0145】
アクリル樹脂については、上記第一接着層に用いられるアクリル樹脂と同様とすることができる。
【0146】
(iii)硬化剤
本開示における硬化剤としては、上記第一接着層に用いられる硬化剤と同様とすることができる。また、硬化剤としては、常温で固体の硬化剤も、常温で液体の硬化剤も用いることができるが、保存安定性の観点から、常温で固体の硬化剤を用いることが好ましい。
【0147】
(b)発泡剤
本開示における第二接着層は、発泡剤を含有していてもよく、含有していなくてもよいが、中でも、発泡剤を含有することが好ましい。第一接着層および第二接着層の両方が発泡剤を含有することにより、発泡硬化後の第一接着層および第二接着層の接着性を高めることができる。
【0148】
発泡剤としては、上記第一接着層に用いられる発泡剤と同様とすることができる。
【0149】
(c)その他の成分
本開示における第二接着層は、例えば硬化性の接着剤がエポキシ樹脂系接着剤である場合、樹脂成分として、エポキシ樹脂およびアクリル樹脂のみを含有していてもよく、他の樹脂をさらに含有していてもよい。他の樹脂としては、例えばウレタン樹脂が挙げられる。
【0150】
第二接着層に含まれる樹脂成分に対する、エポキシ樹脂およびアクリル樹脂の合計の割合は、例えば70質量%以上であり、80質量%以上であってもよく、90質量%以上であってもよく、100質量%であってもよい。
【0151】
第二接着層に含まれる樹脂成分の含有量は、例えば60質量%以上であり、70質量%以上であってもよく、80質量%以上であってもよく、90質量%以上であってもよい。
【0152】
第二接着層は、必要に応じて、添加剤を含有していてもよい。添加剤については、上記第一接着層に用いられる添加剤と同様とすることができる。
【0153】
(3)第二接着層の構成
第二接着層が発泡剤をさらに含有する場合、第二接着層は、例えば、1.5倍以上、12倍以下の発泡倍率で発泡可能である。例えば、第一接着層および第二接着層のうち、第一接着層および第二接着層の両方が発泡剤を含有する場合、上記発泡倍率は、例えば、2倍以上であってもよく、3倍以上であってもよく、4倍以上であってもよい。また、上記の場合、上記発泡倍率は、例えば、10倍以下であってもよく、9倍以下であってもよく、8倍以下であってもよい。上記発泡倍率が小さすぎても大きすぎても、発泡硬化後の接着性が低下する可能性がある。
【0154】
第二接着層の平均厚さは、上記第一接着層の平均厚さと同様とすることができる。
【0155】
第二接着層は、連続層であってもよく、不連続層であってもよい。また、第二接着層の表面が、エンボス等の凹凸形状を有していてもよい。
【0156】
第二接着層の形成方法としては、上記第一接着層の形成方法と同様とすることができる。
【0157】
3.基材
本開示における発泡性接着シートは、上記の第一接着層および第二接着層の間に基材を有していてもよい。上記の第一接着層および第二接着層の間に基材が配置されている場合には、発泡性接着シートの取扱性および作業性を良くすることができる。一方、上記の第一接着層および第二接着層の間に基材が配置されていない場合には、発泡性接着シート全体の厚さを薄くすることができ、狭い隙間にも発泡性接着シートを挿入可能である。
【0158】
基材は、絶縁性を有することが好ましい。また、基材は、シート状であることが好ましい。基材は、単層構造を有していてもよく、複層構造を有していてもよい。また、基材は、内部に多孔構造を有していてもよく、有していなくてもよい。
【0159】
基材としては、例えば、樹脂基材、不織布が挙げられる。
【0160】
樹脂基材に含まれる樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート(PEN)、芳香族ポリエステル等のポリエステル樹脂;ポリカーボネート;ポリアリレート;ポリウレタン;ポリアミド、ポリエーテルアミド等のポリアミド樹脂;ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド等のポリイミド樹脂;ポリスルホン、ポリエーテルスルホン等のポリスルホン樹脂;ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン等のポリエーテルケトン樹脂;ポリフェニレンサルファイド(PPS);変性ポリフェニレンオキシド等が挙げられる。樹脂のガラス転移温度は、例えば80℃以上であり、140℃以上であってもよく、200℃以上であってもよい。また、樹脂として、液晶ポリマー(LCP)を用いてもよい。
【0161】
不織布としては、例えば、セルロース繊維、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、アラミド繊維、ポリフェニレンサルファイド繊維、液晶ポリマー繊維、ガラス繊維、金属繊維、カーボン繊維等の繊維を含む不織布が挙げられる。
【0162】
基材は、第一接着層や第二接着層との密着性を高めるため、表面処理が施されていてもよい。
【0163】
基材の平均厚さは、特に限定されないが、例えば2μm以上であり、5μm以上であってもよく、9μm以上であってもよい。また、基材の平均厚さは、例えば200μm以下であり、100μm以下であってもよく、50μm以下であってもよい。
【0164】
4.その他の構成
(1)第一中間層および第二中間層
本開示における発泡性接着シートは、基材および第一接着層の間に第一中間層を有していてもよい。また、本開示における発泡性接着シートは、基材および第二接着層の間に第二中間層を有していてもよい。第一中間層や第二中間層が配置されていることにより、第一接着層や第二接着層の基材に対する密着性を向上させることができる。さらには、第一中間層や第二中間層が配置されていることで、例えば、発泡性接着シートを折り曲げた際に屈曲部にかかる応力を緩和したり、発泡性接着シートを切断した際に切断部にかかる応力を緩和したりすることができる。その結果、発泡性接着シートの屈曲時や切断時において基材からの第一接着層や第二接着層の浮きや剥がれを抑制することができる。
【0165】
例えば、
図3に示す発泡性接着シート10においては、基材3および第一接着層1の間に第一中間層4が配置され、基材3および第二接着層2の間に第二中間層5が配置されている。なお、
図3においては、発泡性接着シート10は、第一中間層4および第二中間層5の両方を有するが、いずれか一方のみを有していてもよい。
【0166】
発泡性接着シートは、第一中間層および第二中間層の少なくとも一方を有していればよく、例えば、基材および第一接着層の間に配置された第一中間層のみを有していてもよく、基材および第二接着層の間に配置された第二中間層のみを有していてもよく、基材および第一接着層の間に配置された第一中間層と、基材および第二接着層の間に配置された第二中間層との両方を有していてもよい。中でも、基材および第一接着層の間に第一中間層が配置され、かつ、基材および第二接着層の間に第二中間層が配置されていることが好ましい。
【0167】
第一中間層および第二中間層に含まれる材料としては、基材と第一接着層や第二接着層との密着性を高めることができ、かつ、応力を緩和することができる材料であれば特に限定されず、基材、第一接着層、および第二接着層の材料等に応じて適宜選択される。例えば、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、それらの少なくとも2種以上を共重合させた重合体、それらの架橋体、およびそれらの混合物等が挙げられる。
【0168】
架橋体は、上記の樹脂を硬化剤により架橋した架橋体である。硬化剤としては、例えば、イソシアネート系硬化剤が挙げられる。また、例えば、反応基/NCO当量を1とした場合、樹脂に対してイソシアネート系硬化剤を、0.5質量%以上、20質量%以下の割合で添加することが好ましい。
【0169】
中でも、第一中間層および第二中間層は、架橋された樹脂を含有することが好ましい。なお、架橋された樹脂とは、高温にしても溶融しないものをいう。これにより、高温下での接着力、つまり耐熱性を向上させることができる。
【0170】
第一中間層および第二中間層の平均厚さは、特に限定されないが、例えば0.1μm以上であり、0.5μm以上であってもよく、1μm以上であってもよい。第一中間層や第二中間層が薄すぎると、発泡性接着シートの屈曲時および切断時の基材からの第一接着層や第二接着層の剥がれを抑制する効果が十分に得られない可能性がある。一方、第一中間層および第二中間層の平均厚さは、例えば4μm以下であり、3.5μm以下であってもよい。第一中間層および第二中間層自体は、通常、耐熱性が高くないため、第一中間層や第二中間層が厚すぎると、耐熱性(高温下での接着力)が低下する可能性がある。
【0171】
第一中間層および第二中間層は、例えば、樹脂組成物を塗布し、溶剤を除去することで形成することができる。塗布方法としては、例えば、ロールコート、リバースロールコート、トランスファーロールコート、グラビアコート、グラビアリバースコート、コンマコート、ロッドコ-ト、ブレードコート、バーコート、ワイヤーバーコート、ダイコート、リップコート、ディップコートが挙げられる。
【0172】
(2)第一セパレータおよび第二セパレータ
本開示における発泡性接着シートは、第一接着層の第二接着層とは反対の面側に第一セパレータを有していてもよい。また、本開示における発泡性接着シートは、第二接着層の第一接着層とは反対の面側に第二セパレータを有していてもよい。
【0173】
第一セパレータおよび第二セパレータは、第一接着層や第二接着層から剥離可能であれば特に限定されず、第一接着層や第二接着層を保護することが可能な程度の強度を有することができる。このような第一セパレータおよび第二セパレータとしては、例えば、離型フィルム、剥離紙等を挙げることができる。また、第一セパレータおよび第二セパレータは、単層構造を有していてもよく、複層構造を有していてもよい。
【0174】
単層構造のセパレータとしては、例えば、フッ素樹脂系フィルム等が挙げられる。
【0175】
また、複層構造のセパレータとしては、例えば、基材層の片面または両面に離型層を有する積層体が挙げられる。基材層としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート等の樹脂フィルムや、上質紙、コート紙、含浸紙等の紙が挙げられる。離型層の材料としては、離型性を有する材料であれば特に限定されず、例えば、シリコーン化合物、有機化合物変性シリコーン化合物、フッ素化合物、アミノアルキド化合物、メラミン化合物、アクリル化合物、ポリエステル化合物、長鎖アルキル化合物等が挙げられる。これらの化合物は、エマルジョン型、溶剤型または無溶剤型のいずれもが使用できる。
【0176】
第一セパレータおよび第二セパレータは、同じであってもよく、異なっていてもよい。中でも、第一セパレータが重剥離性を有し、第二セパレータが軽剥離性を有することが好ましい。発泡性接着シートでは、第一接着層が実質的に非粘着性(タックフリー)であり、第二接着層がタックを有する。そのため、例えば、埋込磁石型モータにおいてロータおよび永久磁石を接着する場合等、第二部材に発泡性接着シートを配置した後、第一部材の穴に、発泡性接着シートが配置された第二部材を挿入する場合には、第二部材に発泡性接着シートの第二接着層の面を貼り付けて、発泡性接着シートの第一接着層の面を表側にすることで、挿入時の、第二部材および発泡性接着シートの密着性、発泡性接着シートが配置された第二部材の挿入性を向上させることができる。この場合、第一セパレータおよび第二セパレータのうち、第二セパレータから剥離することになるため、第一セパレータが重剥離性を有し、第二セパレータが軽剥離性を有することにより、第二セパレータを第一セパレータよりも剥離しやすくすることができる。
【0177】
なお、軽剥離、重剥離とは、第一接着層や第二接着層から第一セパレータや第二セパレータを剥離するのに要する力の程度をいい、軽剥離は、重剥離よりも、剥離力が小さいことを意味する。
【0178】
5.発泡性接着シート
本開示における発泡性接着シートの平均厚さは、例えば10μm以上であり、20μm以上であってもよい。一方、発泡性接着シートの平均厚さは、例えば1000μm以下であり、200μm以下であってもよい。
【0179】
本開示における発泡性接着シートは、形状保持性が良好であることが好ましい。形状保持性が良好であることが好ましい。ISO 2493に対応するJIS P8125に基づく曲げモーメントは、例えば0.1gf・cm以上であり、1gf・cm以上であってもよい。一方、上記曲げモーメントは、例えば40gf・cm未満であり、30gf・cm未満であってもよい。従来、発泡性接着シートでは、曲げモーメントを高くし、形状保持性および狭い隙間への挿入性を上げる手法が一般的である。これに対し、本開示の発明者らは、形状の工夫によって形状保持性は担保可能であること、および、曲げモーメントが高いことには別の不具合があることから、他の特性を鑑みて、曲げモーメントは上記範囲内であることが好ましいことを見出した。曲げモーメントが上記範囲よりも小さいと、折り返し等の工夫によったとしても形状保持が困難である可能性がある。また、曲げモーメントが上記範囲よりも大きいと、折り曲げ加工後に形状がもとに戻ってしまうため、折り曲げ加工時に加熱したり、折り目にスジを付けたりする必要がある。加熱するとシートライフが低下し、スジをつけるとその部分の絶縁性が低下する可能性がある。加えて、本開示における発泡性接着シートにおいては、表面硬度を高くすることで高速挿入しても表面が傷つかない。
【0180】
本開示における発泡性接着シートは、発泡硬化後の接着性が高いことが好ましい。ISO 4587に対応するJIS K6850に基づくせん断強度(接着強度)は、23℃において、例えば1.50MPa以上であってもよく、1.80MPa以上であってもよく、2.10MPa以上であってもよい。また、上記せん断強度(接着強度)は、130℃において、例えば0.50MPa以上であってもよく、0.75MPa以上であってもよく、1.00MPa以上であってもよい。例えば、加熱の必要のない高強度のアクリルフォーム粘着テープにおいては、せん断強度(接着強度)が常温で1MPa以上2MPa以下程度であり、200℃では耐熱性がない。そのため、上記せん断強度(接着強度)が23℃で上記範囲であれば、強度面での優位性がある。また、上記せん断強度(接着強度)が130℃で上記範囲であれば、自動車のエンジン回りやそれに近い耐熱性が必要とされる用途への適用が可能になる。
【0181】
本開示における発泡性接着シートは、発泡硬化後の電気絶縁性が高いことが好ましい。IEC 60454-2に対応するJIS C2107に基づく絶縁破壊電圧は、例えば3kV以上であることが好ましく、5kV以上であることがより好ましい。上記絶縁破壊電圧が上記範囲であることにより、防錆や銅線まわりへの適用が可能となる。また、発泡硬化後の接着シートは、熱伝導率が、例えば0.1W/mK以上であることが好ましく、0.15W/mK以上であることがより好ましい。上記熱伝導率が上記範囲であることにより、部品の小型化を図ることができ、また加熱時の硬化反応を促進することができる。
【0182】
本開示における発泡性接着シートの用途は、特に限定されない。本開示における発泡性接着シートは、例えば、2つの部材間に発泡性接着シートを配置し、その後、発泡性接着シートを発泡硬化させることで、2つの部材同士を接着する場合に用いることができる。中でも、本開示における発泡性接着シートは、第二部材に発泡性接着シートを配置した後、第一部材の穴に、発泡性接着シートが配置された第二部材を挿入し、発泡性接着シートを発泡硬化させることで、第一部材および第二部材を接着する場合に好ましく用いられる。
【0183】
6.発泡性接着シートの製造方法
本開示における発泡性接着シートの製造方法は、特に限定されるものではなく、発泡性接着シートの層構成に応じて適宜選択される。
【0184】
発泡性接着シートが、第一接着層および第二接着層の間に基材を有さない場合、発泡性接着シートの製造方法においては、例えば、まず
図4(a)に示すように、第一セパレータ6上に第一接着層を形成するための接着剤組成物を塗布および乾燥して、第一接着層1を形成し、また
図4(b)に示すように、第二セパレータ7上に第二接着層を形成するための接着剤組成物を塗布および乾燥し、第二接着層2を形成する。次に、
図4(c)に示すように、第一セパレータ6および第一接着層1の積層体と、第二セパレータ7および第二接着層2の積層体とをラミネートする。これにより、発泡性接着シートが得られる。なお、第一接着層1は実質的に非粘着性(タックフリー)であることから、ラミネート後に第一セパレータ6を剥がして、発泡性接着シートとしてもよい。
【0185】
また、発泡性接着シートが、第一接着層および第二接着層の間に基材を有する場合、例えば、2つの発泡性接着シートの製造方法を挙げることができる。
【0186】
1つ目の発泡性接着シートの製造方法においては、例えば、まず、
図5(a)に示すように、基材3上に第一中間層を形成するための樹脂組成物を塗布および乾燥して、第一中間層4を形成する。次いで、
図5(b)に示すように、第一中間層4上に第一接着層を形成するための接着剤組成物を塗布および乾燥して、第一接着層1を形成する。また、
図5(c)に示すように、第二セパレータ7上に第二接着層を形成するための接着剤組成物を塗布および乾燥し、第二接着層2を形成する。次に、
図5(d)に示すように、基材3、第一中間層4および第一接着層1の積層体と、第二セパレータ7および第二接着層2の積層体とをラミネートする。これにより、発泡性接着シートが得られる。なお、第一中間層4の形成を省いてもよい。この方法では、第一接着層1に対する乾燥工程が1回であることから、効率良く発泡性接着シートを製造することができる。
【0187】
2つ目の発泡性接着シートの製造方法においては、例えば、まず、
図6(a)に示すように、基材3の一方の面に第一中間層を形成するための樹脂組成物を塗布および乾燥して、第一中間層4を形成する。次いで、
図6(b)に示すように、第一中間層4上に第一接着層を形成するための接着剤組成物を塗布および乾燥して、第一接着層1を形成する。次に、
図6(c)に示すように、基材3の他方の面に第二中間層を形成するための樹脂組成物を塗布および乾燥して、第二中間層5を形成する。次いで、
図6(d)に示すように、第二中間層5上に第二接着層を形成するための接着剤組成物を塗布および乾燥し、第二接着層2を形成する。続いて、
図6(e)に示すように、第二接着層2上に第二セパレータ7をラミネートする。これにより、発泡性接着シートが得られる。なお、第一中間層4の形成を省いてもよい。また、第二中間層5の形成を省いてもよい。
【0188】
B.物品の製造方法
本開示における物品の製造方法は、第一部材および第二部材の間に、上述の発泡性接着シートを配置する配置工程と、上記発泡性接着シートを発泡硬化させ、上記第一部材および上記第二部材を接着する接着工程と、を有する。
【0189】
図7(a)~(c)は、本開示における物品の製造方法の一例を示す工程図である。まず、
図7(a)に示すように、第二部材20bに発泡性接着シート10の第二接着層2の面を貼り付ける。次に、
図7(b)に示すように、第一部材20aの穴に、発泡性接着シート10が配置された第二部材20bを挿入する。次いで、
図7(c)に示すように、例えば加熱により、発泡性接着シート10の第一接着層1および第二接着層2を発泡硬化させる。発泡硬化後の第一接着層11および第二接着層12を有する接着シート13により、第一部材20aおよび第二部材20bは接着(接合)される。これにより、第一部材20aおよび第二部材20bの間に接着シート13が配置された物品100が得られる。
【0190】
図8(a)~(c)は、本開示における物品の製造方法の他の例を示す工程図である。
図8(a)においては、第二部材20bの両側に発泡性接着シートを貼り付けている。なお、配置工程および接着工程については、
図7(a)~(c)と同様である。
【0191】
以下、本開示における物品の製造方法について説明する。
【0192】
1.発泡性接着シート
本開示における物品の製造方法において、発泡性接着シートとしては、上述の発泡性接着シートが用いられる。
【0193】
発泡性接着シートが第一セパレータや第二セパレータを有する場合には、発泡性接着シートを第一部材および第二部材の間に配置する際、発泡性接着シートから第一セパレータや第二セパレータを剥がして用いる。
【0194】
なお、発泡性接着シートの詳細については、上記「A.発泡性接着シート」の項に記載したので、ここでの説明は省略する。
【0195】
2.配置工程
本開示における配置工程において、第一部材および第二部材の間に発泡性接着シートを配置する方法としては、第一部材および第二部材の種類等に応じて適宜選択される。例えば、第一部材が穴や溝を有しており、第一部材の穴や溝に第二部材を配置する場合において、接着により第一部材および第二部材を固定する場合には、発泡性接着シートの第二接着層のタックを利用して第二部材に発泡性接着シートの第二接着層の面を貼り付けた後、第一部材の穴や溝に、発泡性接着シートが貼り付けられた第二部材を配置する方法や、第一部材の穴や溝に発泡性接着シートを配置し、発泡性接着シートの第二接着層のタックを利用して第一部材の穴や溝に発泡性接着シートの第二接着層の面を貼り付けた後、発泡性接着シートが貼り付けられた第一部材の穴や溝に、第二部材を配置する方法等が挙げられる。
【0196】
3.接着工程
本開示における接着工程において、発泡性接着シートを発泡硬化させる方法としては、例えば、加熱または光照射を挙げることができる。中でも、加熱により発泡性接着シートを発泡硬化させることが好ましい。加熱による方法は、例えば金属製の部材のように第一部材および第二部材が透明性を有さない場合でも適用可能である。
【0197】
加熱条件としては、第一接着層や第二接着層に含有される硬化性の接着剤や発泡剤の種類、基材の種類等に応じて適宜設定される。加熱温度は、例えば、130℃以上、200℃以下とすることができる。また、加熱時間は、例えば、3分間以上、3時間以下とすることができる。
【0198】
なお、本開示は、上記実施形態に限定されない。上記実施形態は、例示であり、本開示における特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本開示における技術的範囲に包含される。
【実施例】
【0199】
[製造例]
まず、下記表1および表2に示す組成の接着剤組成物を準備した。また、表1および表2に記載した各材料の詳細を下記に示す。
【0200】
・アクリル樹脂:PMMA-PBuA-PMMA(一部にアクリルアミド基)、Tg:-20℃、120℃、Mw:150,000
・エポキシ樹脂A:ビスフェノールAノボラック型、常温固形、軟化温度:70℃、エポキシ当量:210g/eq、Mw:1300、150℃での溶融粘度:0.5Pa・s
・エポキシ樹脂B:BPAフェノキシ型、常温固形、軟化温度:110℃、エポキシ当量:8000g/eq、Mw:50,000
・エポキシ樹脂C:ビスフェノールA型、常温液状、エポキシ当量:184~194g/eq
・エポキシ樹脂D:ジアミノジフェニルメタン型、高粘調液体、エポキシ当量:110~130g/eq
・エポキシ樹脂E:シリコーン変性、エポキシ当量:1200g/mol
・エポキシ樹脂F:フェノールノボラック型、常温液状、エポキシ当量:176~178g/eq
【0201】
・硬化剤1:α-(ヒドロキシ(又はジヒドロキシ)フェニルメチル)-ω-ヒドロポリ[ビフェニル-4,4’-ジイルメチレン(ヒドロキシ(又はジヒドロキシ)フェニレンメチレン)]
・硬化剤2:2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、平均粒子径:3μm、融点:230℃、反応開始温度145℃~155℃、活性領域155℃~173℃(四国化成工業社製、2PHZ-PW)
・硬化剤3:ジシアンジアミド、粒子径:10μm以下、融点:209℃(エボニックデグサ社製、DYHARD100SH)
・硬化剤4:エポキシ樹脂アミンアダクト(味の素ファインテクノ社製、アミキュアMY-H)
【0202】
・熱発泡剤1:熱膨張性マイクロカプセル、平均粒径7μm、膨張開始温度120~145℃、最大膨張温度155~175℃、コア:炭化水素、シェル:熱可塑性高分子
・熱発泡剤2:熱膨張性マイクロカプセル、平均粒径13μm、膨張開始温度123~133℃、最大膨張温度168~178℃、コア:炭化水素、シェル:熱可塑性高分子
・熱発泡剤3:熱膨張性マイクロカプセル、平均粒径17μm、膨張開始温度120~130℃、最大膨張温度160~170℃、コア:炭化水素、シェル:アクリロニトリルコポリマー
・熱発泡剤4:熱膨張性マイクロカプセル、平均粒径20μm、膨張開始温度115~125℃、最大膨張温度155~165℃、コア:炭化水素、シェル:熱可塑性高分子
・熱発泡剤5:熱膨張性マイクロカプセル、平均粒径21μm、膨張開始温度130~140℃、最大膨張温度160~170℃、コア:炭化水素、シェル:アクリロニトリルコポリマー
・熱発泡剤6:熱膨張性マイクロカプセル、平均粒径21μm、膨張開始温度123~133℃、最大膨張温度180~195℃、コア:炭化水素、シェル:熱可塑性高分子
・熱発泡剤7:熱膨張性マイクロカプセル、平均粒径21μm、膨張開始温度120~130℃、最大膨張温度175~190℃、コア:炭化水素、シェル:熱可塑性高分子
・熱発泡剤8:熱膨張性マイクロカプセル、平均粒径25μm、膨張開始温度125~135℃、最大膨張温度165~180℃、コア:炭化水素、シェル:熱可塑性高分子
・熱発泡剤9:熱膨張性マイクロカプセル、平均粒径30μm、膨張開始温度120~130℃、最大膨張温度160~170℃、コア:炭化水素、シェル:アクリロニトリルコポリマー
・熱発泡剤10:熱膨張性マイクロカプセル、平均粒径41μm、膨張開始温度115~125℃、最大膨張温度165~175℃、コア:炭化水素、シェル:アクリロニトリルコポリマー
【0203】
・シランカップリング剤:3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン
・酸化防止剤:ヒンダードフェノール系酸化防止剤
・溶剤:メチルエチルケトン
【0204】
[実施例1~13]
基材として、ポリエチレンナフタレート(PENフィルム、東洋紡フィルムソリューション社製、テオネックスQ51、厚さ25μm)を用いた。また、ポリエステル重合体100質量部に対して、硬化剤(ポリイソシアネート)を15質量部および触媒(トリスジメチルアミノメチルフェノール)を0.3質量部の割合で配合し、さらに固形分が15質量%になるようにメチルエチルケトン(MEK)で希釈し、樹脂組成物を調製した。上記基材の一方の面に、上記樹脂組成物をバーコーターにて塗布し、オーブンにて100℃で1分間乾燥させ、厚さ2μmの第一中間層を形成した。次に、上記第一中間層の基材とは反対の面に、上記接着剤組成物を、塗工後の厚さが45μmとなるようにアプリケーターを用いて塗布した。その後、オーブンにて100℃で3分間乾燥させて、第一接着層を形成した。
【0205】
次に、第二セパレータとして、離型フィルム(PETセパレータ、ニッパ社製、PET50×1-J2、厚さ50μm)を用い、離型フィルムの離型処理面に、上記接着剤組成物を、塗工後の厚さが45μmとなるようにアプリケーターを用いて塗布した。その後、オーブンにて100℃で3分間乾燥させて、第二接着層を形成した。
【0206】
次に、基材、第一中間層および第一接着層を有する積層体の基材の面に、第二セパレータおよび第二接着層を有する積層体の第二接着層の面をラミネートした。これにより、第一接着層、第一中間層、基材、第二接着層、および第二セパレータがこの順に配置された発泡性接着シートを得た。
【0207】
[比較例1]
実施例1と同様にして、基材上に第一中間層および第一接着層を形成した。次に、上記基材の第一中間層とは反対の面に、上記接着剤組成物を、塗工後の厚さが45μmとなるようにアプリケーターを用いて塗布した。その後、オーブンにて100℃で3分間乾燥させて、第二接着層を形成した。これにより、第一接着層、第一中間層、基材、および第二接着層がこの順に配置された発泡性接着シートを得た。
【0208】
[比較例2~3]
第一セパレータとして、離型フィルム(PETセパレータ、ニッパ社製、PET38×1-J2、厚さ38μm)を用い、離型フィルムの離型処理面に、上記接着剤組成物を、塗工後の厚さが45μmとなるようにアプリケーターを用いて塗布した。その後、オーブンにて100℃で3分間乾燥させて、第一接着層を形成した。
【0209】
次に、基材として、ポリエチレンナフタレート(PENフィルム、東洋紡フィルムソリューション社製、テオネックスQ51、厚さ25μm)を用い、基材に、第一セパレータおよび第一接着層を有する積層体の第一接着層の面をラミネートした。
【0210】
次に、第二セパレータとして、離型フィルム(PETセパレータ、ニッパ社製、PET38×1-Q2ASI5、厚さ38μm)を用い、離型フィルムの離型処理面に、上記接着剤組成物を、塗工後の厚さが45μmとなるようにアプリケーターを用いて塗布した。その後、オーブンにて100℃で3分間乾燥させて、第二接着層を形成した。
【0211】
次に、基材、第一接着層および第一セパレータを有する積層体の基材の面に、第二セパレータおよび第二接着層を有する積層体の第二接着層の面をラミネートした。これにより、第二セパレータ、第二接着層、基材、第一接着層、および第一セパレータがこの順に配置された発泡性接着シートを得た。
【0212】
[評価]
(第一接着層および第二接着層のタック)
第一接着層のタックについては、RHESCA社製のタッキング試験機「TAC-II」を用いて、発泡性接着シートの第一接着層の面に、直径5mmの円柱形のステンレス製のプローブを、温度25℃の条件で、荷重10.0gf、速度30mm/minで押し付け、1.0秒間保持した後、速度30mm/minで引き剥がし、引き剥がすときの荷重を測定した。この測定を5回行い、平均値をタックとした。
【0213】
第一接着層のタックと同様に、第二接着層のタックについても測定した。
【0214】
(第一接着層の表面の摩擦係数)
JIS K7125に準拠して、発泡性接着シートの第一接着層と金属板との動摩擦係数および静摩擦係数を測定した。まず、発泡性接着シートを80mm×200mmに断裁した。次に、水平に静置した矩形状の金属板(SUS板)上に発泡性接着シートを静置し、発泡性接着シートの第一接着層上に滑り片(63mm×63mm、重さ200g、底面:フェルト)を載せて、試験速度100mm/min、試験長50mm、ロードセル10N、温度23℃の条件で摩擦力を測定し、動摩擦係数および静摩擦係数を算出した。装置は、東洋精機社製作所製の摩擦測定機FRICTION TESTER TR-2を用いた。
【0215】
(第一接着層の算術平均粗さRa)
Zygo社製の白色干渉計NewView7300を用い、観察視野:0.55mm×0.55mm、サンプリング間隔:0.55μmにて、第一接着層の算術平均粗さRaを測定した。
【0216】
(第二接着層のtanδのピーク値)
上記で作製した第二セパレータおよび第二接着層の積層体から、第二セパレータを剥離して、第二接着層単体とした。固体粘弾性アナライザー(ティー・エイ・インスツルメント株式会社製、RSA-III)を用い、JIS K7244-1に準拠した動的粘弾性測定法によって、アタッチメントモード:圧縮モード、周波数:1Hz、温度:-20℃~200℃、昇温速度:10℃/分にて、第二接着層の貯蔵弾性率(E’)および損失弾性率(E’’)を測定し、損失正接(tanδ)を算出した。なお、tanδのピークが複数存在する場合は、高い温度の方をtanδのピーク値とした。
【0217】
(発泡倍率)
発泡性接着シートを25mm×100mmの大きさに切り出し、第二セパレータを剥がして、発泡性接着シートの第二接着層の面を厚さ1.0mmのガラス板に貼り付けた状態にし、発泡性接着シートを第一接着層の面が上面になるようにアルミバット上に並べた状態にした。このとき、発泡性接着シートが第一セパレータを有する場合は、第一セパレータの剥離を行った。180℃で30分の条件で発泡硬化させた後、室温で2時間冷却し、発泡硬化後の接着シートを得た。そして、発泡硬化後の接着シートの厚さを、JIS Z0237に準拠する方法で、シックネスゲージを用いて測定した。発泡倍率は、下記式により求めた。
発泡倍率(倍)={発泡硬化後の接着シートの厚さ-(基材の厚さ+第一中間層の厚さ)}/(発泡硬化前の発泡性接着シートの第一接着層および第二接着層の合計厚さ)
【0218】
(発泡硬化後の接着性)
図9(a)、(b)に示すように、厚さ1.6mm、幅25mm、長さ100mmの金属板31(冷間圧延鋼板SPCC-SD)を2枚用意した。そのうちの1枚の金属板31の一方の先端にスペーサ32(カプトンテープ)を所定の間隔を設けて配置した。スペーサ32の厚さは、約280μm(日東電工社製のカプトンテープP-221を4枚重ねた厚さ)とした。次いで、スペーサ32の間に、12.5mm×25mmの大きさに切り出し、発泡性接着シートがセパレータを有する場合には第一セパレータおよび第二セパレータを剥がした状態で、発泡性接着シート10を配置し、もう1枚の金属板31を一方の先端が重なるように配置し、クリップにて固定し、試験片を得た。その後、試験片を熱オーブンに入れ、180℃30分加熱することで、発泡性接着シート10を硬化させた。
【0219】
加熱後の試験片を、JIS K6850に準拠し、引張試験機テンシロンRTF1350(エーアンドデイ社製)にて、せん断強度(接着強度)を測定した。測定条件は、引張速度10mm/min、温度23℃または130℃とした。
【0220】
(挿入時の第一接着層の滑り性および第二接着層の密着性)
5.5cm×8.0cmに断裁した発泡性接着シートと、外径22mm、厚さ1.5mm、長さ60mmの中空状の円筒1と、外径18mm、厚さ1.0mm、長さ80mmの中空状の円筒2とを用意した。発泡性接着シートが第二セパレータを有する場合には第二セパレータを剥離し、円周方向に短辺がくるように円筒2の外径部に第二接着層の面を貼り付け、発泡接着シートを配置した。発泡性接着シートが第一セパレータを有する場合は第一セパレータの剥離を行なった。その後、円筒2をゆっくりと手で押して円筒1の中空状の隙間に挿入し、その際の第一接着層の滑り性および第二接着層の密着性を評価した。評価基準は下記の通りとした。
【0221】
・第一接着層の滑り性
A:挿入時に引っかかりがない。
B:挿入時に引っかかりがある(第一接着層が円筒1にくっついて挿入性が悪い)。
【0222】
・第二接着層の密着性
A:挿入時に発泡性接着シートが円筒2から剥がれない。
B:挿入時に発泡性接着シートが円筒2から剥がれてしまう、もしくは貼り付け時に発泡性接着シートが円筒2に密着しない。
【0223】
【0224】
【0225】
【0226】
実施例1~13の発泡性接着シートにおいては、第一接着層のタックおよび第二接着層のタックがそれぞれ所定の範囲内であり、第二接着層の損失正接(tanδ)のピーク値が所定の範囲内であるため、挿入時の第一接着層の滑り性および第二接着層の密着性が良好であり、発泡硬化後の接着性も良好であった。これに対し、比較例1では、第二接着層のタックが低いため、挿入時の第二接着層の密着性に劣っていた。また、比較例2、3では、第一接着層のタックおよび第二接着層のタックが等しく、第一接着層のタックが高いため、挿入時の第一接着層の滑り性に劣っていた。
【符号の説明】
【0227】
1 … 第一接着層
2 … 第二接着層
3 … 基材
4 … 第一中間層
5 … 第二中間層
6 … 第一セパレータ
7 … 第二セパレータ
10 … 発泡性接着シート
11 … 発泡硬化後の接着シート
20a … 第一部材
20b … 第二部材
100 … 物品