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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-04
(45)【発行日】2023-12-12
(54)【発明の名称】ヘッドアップディスプレイ装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 27/01 20060101AFI20231205BHJP
   B60K 35/00 20060101ALI20231205BHJP
【FI】
G02B27/01
B60K35/00 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021509257
(86)(22)【出願日】2020-03-18
(86)【国際出願番号】 JP2020011994
(87)【国際公開番号】W WO2020196161
(87)【国際公開日】2020-10-01
【審査請求日】2023-01-20
(31)【優先権主張番号】P 2019056361
(32)【優先日】2019-03-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000231512
【氏名又は名称】日本精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100195648
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 悠太
(74)【代理人】
【識別番号】100175019
【弁理士】
【氏名又は名称】白井 健朗
(74)【代理人】
【識別番号】100104329
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 卓治
(72)【発明者】
【氏名】小池 翔太
(72)【発明者】
【氏名】小柴 彰利
【審査官】鈴木 俊光
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-125193(JP,A)
【文献】特開2018-120209(JP,A)
【文献】特開2018-197074(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 27/01
B60K 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項4】
前記ケースは、裏側に前記表示部が配設される配設部を有し、
前記配設部には、前記ケースの裏側と表側とを連通する連通口が設けられ、
前記表示部は、前記ケースに対して裏側から固定されて前記配設部に配設され、前記連通口から前記ケースの表側に向かって、前記鏡に到達する前記表示光を射出する、
請求項1乃至3のいずれか1項に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッドアップディスプレイ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像を表す表示光を透光部材(例えば、車両のフロントガラス)に向けて射出し、当該画像を虚像として表示するヘッドアップディスプレイ(HUD:Head-Up Display)装置が知られている。従来のHUD装置として、例えば特許文献1には、表示光を透光部材に向けて反射させる凹面鏡と、凹面鏡を回転可能に支持する支持部とを有する凹面鏡ユニットを備えるものが開示されている。特許文献1に開示されたHUD装置では、ケースに対して支持部が表側からねじ止めされることで、凹面鏡ユニットがケースに取り付けられている(同文献の図6参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-120209号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されたHUD装置のように、凹面鏡ユニットをケースに対して表側からねじ止めする構成では、ねじ頭がケースの表側の空間(つまり、表示光が通る空間)に位置するため、ねじ頭で表示光が反射して迷光(表示に際して不要な光)が生じる虞がある。迷光を抑制するため、ねじ頭を覆う専用のカバーを設けることもできるが、こうすると、部品点数が増加して構成が複雑化する虞もある。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、簡潔な構成で迷光を抑制することができるヘッドアップディスプレイ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係るヘッドアップディスプレイ装置は、
画像を表す表示光を透光部材に向けて射出し、前記画像を虚像として表示するヘッドアップディスプレイ装置であって、
前記表示光を生成する表示部と、
前記表示部で生成された前記表示光を前記透光部材に向けて反射させる鏡と、前記鏡を所定の軸線を中心として回転可能に支持する支持部と、を有する鏡ユニットと、
前記鏡ユニットを表側において収容するケースと、を備え、
前記ケースは、前記支持部に表側から覆われる位置に貫通孔を有し、
前記支持部は、前記貫通孔に前記ケースの裏側から挿入されるねじによって前記ケースに固定されている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、簡潔な構成で迷光を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態に係るヘッドアップディスプレイ(HUD)装置の車両への搭載態様を示す図である。
図2】HUD装置の斜視図である。
図3】ケースの斜視図である。
図4】ケースを省略したHUD装置の斜視図である。
図5】凹面鏡ユニット、伝達部及び駆動部の斜視図である。
図6】HUD装置の平面図である。
図7】リアカバーを省略したHUD装置の背面図である。
図8】リアカバーを省略したHUD装置の要部斜視図である。
図9】ケースへの各部材の組み付け工程例を説明するための図である。
図10】ケースへの各部材の組み付け工程例を説明するための図である。
図11】ケースへの各部材の組み付け工程例を説明するための図である。
図12】(a)は、治具に凹面鏡ユニットがセットされた状態における要部斜視図であり、(b)は、図12(a)に示すA-A線における治具及び第2支持部の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0010】
本実施形態に係るヘッドアップディスプレイ装置(HUD:Head-Up Display)装置100は、図1に示すように、例えば、車両1のダッシュボード2内に配設される。HUD装置100は、フロントガラス3に向けて表示光Lを射出する。フロントガラス3で反射した表示光Lは、ユーザ4(主に車両1の運転者)側へと向かい、ユーザ4に表示光Lが表す画像を虚像Vとして視認させる。虚像Vは、フロントガラス3を介して車両1の前方に表示される。これにより、ユーザ4は、虚像Vを前方風景と重畳させて観察することができる。虚像Vは、車両1に関する各種情報(以下、車両情報と言う。)を表示する。なお、車両情報は、車両1自体の情報のみならず、車両1の外部情報も含む。
【0011】
HUD装置100は、図2図8に示すように、表示部10と、平面鏡20と、凹面鏡31を含む凹面鏡ユニット30と、伝達部40と、駆動部50と、回路基板60と、ケース70と、リアカバー80と、を備える。
【0012】
以下では、車両1にHUD装置100が設置された場合における、車両1の上方を表側とし、車両1の下方を裏側として各構成を説明する。図中において、表側を「F」、裏側を「B」と表した。なお、HUD装置100は、図示しない構成として、ケース70に表側から取り付けられるフロントカバーを備える。フロントカバーには表側に向かって開口する射出口101(図1参照)が設けられ、HUD装置100は、射出口101からフロントガラス3に向けて表示光Lを射出する。射出口101には、図示しない透光性カバーが取り付けられている。
【0013】
表示部10は、画像を表示することで、図2に示すように、その画像を表す表示光Lを上方(表側)へ発する。表示部10は、表示光Lを生成する構成(以下、表示光生成部と言う。)として、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)と、LCDを背後から照明するバックライトとを有する。LCDは、例えば、TFT(Thin Film Transistor)型のものである。バックライトは、例えば、LED(Light Emitting Diode)や導光部材などにより構成されている。表示部10は、表示光生成部の他に、図7に示すように、表示光生成部と電気的に接続される表示用基板11と、放熱フィンを有するヒートシンク12と、樹脂などから形成されて表示光生成部を収容する表示用筐体13とを有し、ユニット化されている。なお、図7は、リアカバー80を省略したHUD装置100を裏側から見た図(背面図)である。表示用基板11は、表示用筐体13の裏側に固定されている。ヒートシンク12は、表示用基板11を挟んで表示用筐体13の裏側に取り付けられている。表示部10のケース70に対する固定態様については、後述する。
【0014】
平面鏡20は、例えばコールドミラーからなり、図2に示すように、表示部10が表側に向かって発した表示光Lを凹面鏡31に向けて反射させる。平面鏡20は、ホルダ21を介してケース70に固定されている。
【0015】
凹面鏡ユニット30は、主に図5に示すように、凹面鏡31と、凹面鏡31を軸線AXを中心として回転可能に支持する一対の第1支持部32及び第2支持部33と、を備える。第1支持部32と第2支持部33とは、軸線AXが延びる方向において凹面鏡31を挟んで位置する。
【0016】
凹面鏡31は、平面鏡20からの表示光Lを拡大しつつ、フロントガラス3に向けて反射させる反射面Rを有する。これにより、ユーザ4に視認される虚像Vは、表示部10に表示されている画像が拡大されたものとなる。凹面鏡31は、円柱状に形成された一対の第1軸部31a及び第2軸部31bを有する。一対の第1軸部31a及び第2軸部31bは、凹面鏡31の側面から互いに逆向きに突出し、軸線AXに沿って延びて設けられている。
【0017】
第1支持部32は、台座部321と、台座部321の表側に設けられ、第1軸部31aを軸線AX周りに回転可能に支持する軸受322と、を有する。台座部321には、表側に向かって突起するボスB1,B2が設けられている。ボスB1は、ケース70に対して第1支持部32を固定するためのねじS1(図11参照)に対応する。ボスB2は、ケース70に対して第1支持部32を固定するためのねじS2(図11参照)に対応する。
第2支持部33は、台座部331と、台座部331の表側に設けられ、第2軸部31bを軸線AX周りに回転可能に支持する軸受332と、を有する。台座部331には、表側に向かって突起するボスB3,B4,B5が設けられている。ボスB3は、ケース70に対して第2支持部33を固定するためのねじS3(図11参照)に対応する。ボスB4は、ケース70に対して第2支持部33を固定するためのねじS4(図11参照)に対応する。ボスB5は、ケース70に対して第2支持部33を固定するためのねじS5(図11参照)に対応する。
なお、ボスB1~B5の各々には、裏側から表側に向かう有底孔であって、後述のねじS1~S5に対応したねじ穴が形成されている。したがって、後述のように、ねじS1~S5がボスB1~B5に締め付けられたとしても、ねじS1~S5は、ボスB1~B5の表側には露出しない。凹面鏡ユニット30のケース70に対する固定態様については、後述する。
【0018】
伝達部40は、駆動部50の動力を凹面鏡31に伝達するための構成であり、主に図5に示すように、凹面鏡31に設けられた平板状のレバー41と、駆動部50の動作に応じて移動する移動部42と、を有する。レバー41は、図5で左側に位置する第2軸部31bの下方に、凹面鏡31の側面から突出して設けられている。移動部42は、例えば、レバー41を挟み込む形状で形成されている。
【0019】
駆動部50は、凹面鏡31に伝達部40を介して動力を伝達することで、凹面鏡31を回転駆動する構成である。駆動部50は、図5図7又は図8に示すように、モータMと、モータMが取り付けられる駆動用筐体51とを有する。モータMは、例えばステッピングモータからなり、回路基板60に実装された制御部の制御によって駆動される。図5に示すように、駆動用筐体51には、レバー41の主面が向く方向に沿って延びるガイド軸Gが取り付けられている。モータMは、図示しないギア機構を介して、移動部42をガイド軸Gに沿って移動させる。移動部42の移動に伴って、移動部42に挟み込まれたレバー41も移動する。このように、駆動部50は、移動部42及びレバー41を移動させることで、凹面鏡31を軸線AX周りに回転駆動する。駆動部50のケース70に対する固定態様については、後述する。
【0020】
回路基板60は、各種回路が形成され、マイクロコンピュータからなる制御部が実装されたプリント回路板である。回路基板60は、表示部10(具体的には表示用基板11)及び駆動部50(具体的にはモータM)の各々と、FPC(Flexible Printed Circuits)等の配線を介して、電気的に接続されている。回路基板60に実装された制御部は、HUD装置100の全体動作を制御するものであり、駆動部50を介して凹面鏡31の回転駆動を制御し、表示部10の表示動作を制御する。制御部は、車両1の各部を制御するECU(Electronic Control Unit)などのシステムと通信を行い、車両情報を示す画像を表示部10に表示させる。
【0021】
ケース70は、合成樹脂や金属により遮光性を有して箱状に形成され、表示部10、平面鏡20、凹面鏡ユニット30、伝達部40及び駆動部50の各々を上記の機能を満たす位置に収容する。
【0022】
まず、図2図3及び図6を参照して、ケース70の表側について説明する。ケース70の表側には、表示光Lが通過する光路空間Sが形成されている。また、ケース70の底に相当する部分には、凹面鏡31を収容する収容部71が形成されている。図6に示すように、ケース70における収容部71の両隣りには、第1支持部32が載置される第1載置部72と、第2支持部33が載置される第2載置部73とが設けられている。第1載置部72と第2載置部73とは、軸線AXが延びる方向において収容部71を挟んで位置する。
【0023】
続いて、図7及び図8を参照して、ケース70の裏側について説明する。ケース70における第2載置部73の裏側には、駆動部50が固定される固定部74が設けられている。また、ケース70における固定部74に隣接した部分には、ケース70の裏側と表側とを連通する孔74aが形成されている。この孔74aは、ケース70の裏側に設けられた固定部74に固定される駆動部50と、ケース70の表側の収容部71内に収容された凹面鏡31との間に位置する伝達部40を通すために形成されている。孔74aは、伝達部40の移動を妨げない大きさで形成されている。
【0024】
また、ケース70の裏側には、表示部10が配設される配設部75が設けられている。配設部75には、ケース70の裏側と表側とを連通する連通口75aが形成されている。配設部75内に裏側から固定された表示部10は、この連通口75aからケース70の表側に向かって表示光Lを射出する。
【0025】
また、ケース70における収容部71の裏側には、回路基板60が固定される基板固定部76が設けられている。回路基板60は、例えば、基板固定部76に設けられたフックH1,H2により係止され、ケース70の裏側に固定されている。
【0026】
リアカバー80は、遮光性を有する部材から構成され、図2に示すように、ケース70に裏側から取り付けられている。リアカバー80は、例えば、フックを利用した係合手段により、ケース70に固定される。リアカバー80は、ケース70の裏側に固定された表示部10、駆動部50及び回路基板60を裏側から覆う。つまり、表示部10、駆動部50及び回路基板60は、リアカバー80とケース70との間に位置する。
【0027】
以上の構成からなるHUD装置100において、表示部10から発せられ、平面鏡20、凹面鏡31の順で反射した表示光Lは、射出口101からHUD装置100の外部に射出され、フロントガラス3へと向かう。この表示光Lがフロントガラス3で反射することで、ユーザ4から見てフロントガラス3の前方に虚像Vが表示される。
【0028】
(凹面鏡ユニット30、駆動部50及び表示部10のケース70に対する固定態様)
ここからは、凹面鏡ユニット30、駆動部50及び表示部10のケース70に対する固定態様について説明する。
【0029】
凹面鏡ユニット30は、ケース70の裏側から挿入されるねじS1~S5(図11参照)によってケース70に対して固定される。
具体的に、ケース70のうち、第1支持部32が表側から載置される第1載置部72には、図7に示すように、ケース70を貫通する貫通孔O1,O2が形成されている。第1支持部32は、ケース70の裏側から貫通孔O1を通ってボスB1に締め付けられるねじS1と、ケース70の裏側から貫通孔O2を通ってボスB2に締め付けられるねじS2とによって、ケース70に対して固定される。また、第2支持部33が表側から載置される第2載置部73には、図7に示すように、ケース70を貫通する貫通孔O3~O5が形成されている。第2支持部33は、ケース70の裏側から貫通孔O3を通ってボスB3に締め付けられるねじS3と、ケース70の裏側から貫通孔O4を通ってボスB4に締め付けられるねじS4と、ケース70の裏側から貫通孔O5を通ってボスB5に締め付けられるねじS5とによって、ケース70に対して固定される。このように、凹面鏡ユニット30は、ケース70の裏側から挿入され、第1支持部32及び第2支持部33に締め付けられるねじS1~S5によって、ケース70に対して固定される。
【0030】
駆動部50は、ケース70の固定部74に、ねじS3,S4によってケース70の裏側から固定される。具体的に、駆動用筐体51には、図7及び図11に示すように、ケース70に設けられた貫通孔O3,O4と対応する挿通孔51a,51bが形成されている。駆動用筐体51は、ケース70の裏側から挿通孔51aとケース70の貫通孔O3とを通ってボスB3に締め付けられるねじS3と、ケース70の裏側から挿通孔51bと貫通孔O4とを通ってボスB4に締め付けられるねじS4とによって、ケース70に対して固定される。この結果、ボスB3,B4と、ねじS3,S4の頭との間には、ケース70及び駆動用筐体51が介在することになる。つまり、ねじS3,S4は、第2支持部33及び駆動用筐体51の双方をケース70に対して固定する。
【0031】
表示部10は、ケース70の配設部75に、ねじS6,S7(図11参照)によってケース70の裏側から固定される。具体的に、ケース70の配設部75には、裏側に向かって突起するボス(図示せず)が例えば2つ設けられており、一方のボスにねじ穴O6が設けられ、他方のボスにねじ穴O7が設けられている。また、表示部10の表示用筐体13には、ねじ穴O6,O7のそれぞれに対応し、ねじS6,S7を挿通させる貫通孔が設けられている。裏側から表側に向かって締め付けられるねじS6,S7によって表示用筐体13がケース70に固定されることで、表示部10は、ケース70の裏側に設けられた配設部75に配設されている。
【0032】
(ケース70への各部材の組み付け工程例)
ここからは、ケース70への各部材の組み付け工程例を、主に図9図12を参照して説明する。
【0033】
まず、図9に示すように、平坦面上に設置された治具5に、凹面鏡ユニット30と、ホルダ21に保持された平面鏡20(以下、平面鏡ユニットと呼ぶ。)とをセットする。この際、凹面鏡ユニット30及び平面鏡ユニットを、車両1にHUD装置100が搭載される状態と上下逆さまで治具5にセットする。したがって、HUD装置100における表側「F」は、図9における下側となる。
【0034】
治具5には、凹面鏡ユニット30の第1支持部32がセットされる第1設置部5aや、第2支持部33がセットされる第2設置部5bや、その他、平面鏡ユニットなどがセットされる設置部が設けられている。なお、図12(a)に示すように、治具5における第2設置部5bに隣接した位置には、凹面鏡31に設けられたレバー41を挟み込み、組み付け時における凹面鏡31の回転(第1支持部32及び第2支持部33に対する回転)を防止する回転防止部5cが設けられている。この回転防止部5cにより、ケース70の収容部71に対して、凹面鏡31を所望の姿勢で収容することができる。
【0035】
また、凹面鏡ユニット30の治具5に対する位置合わせは、第1支持部32及び第2支持部33に設けられたボスB1~B5の突起を利用して行われる。代表してボスB3について説明すると、図12(b)に断面で示すように、治具5の第2設置部5bには、ボスB3が嵌まり込む溝が形成されている。ボスB1,B2と第1設置部5aとの関係や、ボスB4,B5と第2設置部5bとの関係も同様である。なお、図12(b)では、ボスの裏側に形成されるねじ穴に、当該ねじ穴に対応するボスの符号B3,B4を付した。
【0036】
以上のように、治具5にセットされた凹面鏡ユニット30及び平面鏡ユニットに対して、ケース70を、表側が下方に向くようにして被せる。この際、凹面鏡ユニット30及び平面鏡ユニットの各々は、ケース70の表側における適切な位置に収容される。
【0037】
続いて、図10に示すように、ケース70の裏側に、駆動部50(移動部42が組み付けられたもの。以下略。)と、表示部10と、回路基板60とを設置する。具体的には、ケース70の裏側において、固定部74に駆動部50を設置し、配設部75に表示部10を設置し、基板固定部76に回路基板60を設置する。なお、当該設置におけるケース70に対する各部の位置合わせは、例えば、ケース70と所定部材との一方に設けられた位置決め用の突起を、他方に設けられた位置決め用の孔に挿入すること等でなされる。図9を参照して説明した、ケース70に対しての凹面鏡ユニット30及び平面鏡ユニットの各々の位置合わせについても同様である。また、駆動部50を固定部74に設置する際には、駆動部50に組み付けられた移動部42を、孔74a(図8参照)を介して、凹面鏡31に設けられたレバー41を挟み込むようにセットする。つまり、孔74aの形成箇所には、伝達部40の少なくとも一部が位置する。
【0038】
回路基板60については、前述の通り、フックH1,H2により基板固定部76に固定される。なお、樹脂等により、基板固定部76と一体でフックH1,H2を設ける場合、成形用の金型の制約上、フックH1,H2の近傍に孔が生じる。しかしながら、この実施形態に係るHUD装置100においては、このような孔が生じる基板固定部76の表側が、凹面鏡31を収容する収容部71となっている。そのため、凹面鏡31で、このような孔を覆い隠すことができ、当該孔の像が反射してユーザ4に見えてしまうことを防止することができる。
【0039】
ケース70の裏側に、駆動部50、表示部10及び回路基板60を設置した後に、駆動部50及び表示部10の各々を、回路基板60と図示しないFPC等の配線で接続する。
【0040】
ケース70の裏側に、駆動部50、表示部10及び回路基板60を設置し、駆動部50及び表示部10の各々と回路基板60とを配線で接続した後、図11に示すように、ケース70の裏側から表側に向かって締められるねじS1~S7で、各部材をケース70に対して固定する。具体的には、前述の通り、凹面鏡ユニット30の第1支持部32をねじS1,S2でケース70に対して固定する。また、第2支持部33をねじS3~S5でケース70に対して固定する。これらのねじS3~S5のうち、ねじS4,S5は、駆動部50をケース70の裏側に固定するものと共用となっている。また、ねじS6,S7で表示部10をケースの裏側に固定する。なお、駆動用筐体51がケース70に固定されると、図12(b)に示すように、ボスB3とねじS3の頭との間に、ケース70及び駆動用筐体51が介在することになる。図示しないが、ボスB4とねじS4の頭との間にも、ケース70及び駆動用筐体51が介在することになる。
【0041】
以上のように、ケース70に対し各部材を固定した後、リアカバー80をケース70の裏側に取り付ける。その後、各部材が固定され、且つ、リアカバー80を取り付けたケース70をひっくり返した後、図示しないフロントカバーをケース70の表側に取り付ける。
【0042】
なお、本発明は以上の実施形態及び図面によって限定されるものではない。本発明の要旨を変更しない範囲で、適宜、変更(構成要素の削除も含む)を加えることが可能である。
【0043】
表示部10は、LCDを用いたものに限られず、OLED(Organic Light-Emitting Diode)を用いたものを採用してもよい。また、表示部10は、例えば、DMD(Digital Micro mirror Device)やLCOS(Liquid Crystal On Silicon)などの反射型表示デバイスを用いたものであってもよい。
【0044】
また、平面鏡20と凹面鏡31とを結ぶ表示光Lの光路において、平面鏡20以外の平面鏡を設けてもよい。平面鏡を何枚用いるかや、どのように表示光Lの光路を折り返すかは、設計に応じて適宜変更可能である。また、鏡ユニットの一例としての凹面鏡ユニット30の代わりに、凹面鏡31以外の鏡を有する鏡ユニットを採用してもよい。当該凹面鏡31以外の鏡は、表示光Lを透光部材(フロントガラス3等)に向けて反射させるものであれば、平面鏡や自由曲面鏡などであればよい。なお、表示光Lを透光部材に向けて反射させる鏡とは、表示光Lの光路において透光部材側に表示光Lを反射させるものであればよく、当該鏡で反射した表示光Lが結果的に透光部材に到達する位置に設けられるものであればよい。
【0045】
また、表示光Lの投射対象(透光部材)は、車両1のフロントガラス3に限定されず、板状のハーフミラー、ホログラム素子等により構成されるコンバイナであってもよい。
【0046】
また、HUD装置100が搭載される車両1の種類は限定されず、自動四輪車や、自動二輪車など様々な車両に適用可能である。また、HUD装置100は、航空機、船舶、スノーモービル等、車両1以外の乗り物に搭載されてもよい。
【0047】
また、以上では、凹面鏡31に設けたレバー41と、駆動部50によって移動が制御される移動部42とから伝達部40が構成される例を示したが、伝達部40の構成は、これに限られず任意である。例えば、伝達部40は、レバー41を備えていない凹面鏡31を挟み込むとともに、駆動部50によって移動が制御される部材であってもよい。また、伝達部40は、凹面鏡31に設けられた第1歯車部と、第1歯車部と噛み合うとともに駆動部50によって回転駆動される第2歯車部と、を有して構成されていてもよい。
【0048】
また、ケース70に各部を固定するためのねじの本数や、第1支持部32及び第2支持部33の各々に設けるボスの本数や、ケース70に設ける貫通孔の個数などは、課題を解決できる限りにおいては、任意である。
【0049】
また、以上では、駆動部50が第2支持部33に対応して、第2支持部33の裏側に設けられる例を示したが、これに限られない。例えば、駆動部50は第1支持部32に対応して、第1支持部32の裏側に設けられてもよい。
【0050】
以上に説明したHUD装置100は、画像を表す表示光Lを透光部材(例えば、フロントガラス3)に向けて射出し、画像を虚像Vとして表示する。HUD装置100は、表示光Lを生成する表示部10と、凹面鏡ユニット30(請求項における鏡ユニットの一例)と、凹面鏡ユニット30を表側において収容するケース70と、を備える。凹面鏡ユニット30は、表示部10で生成された表示光Lを透光部材に向けて反射させる凹面鏡31(請求項における鏡の一例)と、凹面鏡31を軸線AXを中心として回転可能に支持する支持部(第1支持部32,第2支持部33)と、を有する。
【0051】
(1-1)HUD装置100において、ケース70は、支持部(第1支持部32,第2支持部33)に表側から覆われる位置に貫通孔O1~O5を有する。また、支持部は、貫通孔O1~O5にケースの裏側から挿入されるねじS1~S5によってケース70に固定されている。
この構成により、凹面鏡ユニット30をケース70に固定するためのねじの頭がケース70の裏側に位置するとともに、ねじの軸(首下)が支持部に覆われる。そうすると、ケース70の表側に形成された光路空間Sに、凹面鏡ユニット30をケース70に固定するためのねじが露出せず、ねじを覆うための専用のカバーを設ける必要もない。したがって、簡潔な構成で、ねじで表示光Lが反射することによる迷光の発生を防止することができる。なお、ねじに起因する迷光を防止する観点からは、駆動部50のケース70に対する固定態様は任意であり、駆動部50をケース70の表側に固定してもよい。
【0052】
(1-2)また、HUD装置100は、凹面鏡31を回転駆動する駆動部50を備え、支持部として、軸線AXが延びる方向において凹面鏡31を挟んで位置する一対の第1支持部32及び第2支持部33がある。駆動部50は、第1支持部32と第2支持部33の一方に対応して設けられ、ケース70に対して裏側から固定されている。
この構成により、凹面鏡ユニット30をケース70にねじ(例えば、ねじS1~S5)で締める方向(裏から表に向かう方向)と、駆動部50をケース70に対して固定する方向とを同方向とすることができ、組み付けが容易となる。なお、駆動部50のケース70に対する固定手法は任意であるが、ねじ(例えば、ねじS3,S4)を利用することが好ましい。
【0053】
(1-3)また、HUD装置100は、表示部10と駆動部50の各々と電気的に接続される回路基板60を備える。そして、ケース70は、表側に凹面鏡31を収容する収容部71を有し、回路基板60は、ケース70における収容部71の裏側(例えば、基板固定部76)に固定されている。
この構成により、凹面鏡ユニット30をケース70にねじで締める方向(裏から表に向かう方向)と、駆動部50及び回路基板60をケース70に対して固定する方向とを同方向とすることができ、組み付けが容易となる。
【0054】
(1-4)また、ケース70は、裏側に表示部10が配設される配設部75を有し、配設部75には、ケース70の裏側と表側とを連通する連通口75aが設けられている。そして、表示部10は、ケース70に対して裏側から固定されて配設部75に配設され、連通口75aからケース70の表側に向かって、凹面鏡31に到達する表示光Lを射出する。
この構成により、凹面鏡ユニット30をケース70にねじで締める方向(裏から表に向かう方向)と、駆動部50、回路基板60及び表示部10をケース70に対して固定する方向とを同方向とすることができ、組み付けが容易となる。また、駆動部50、回路基板60及び表示部10の全てがケース70の裏側に位置すると、回路基板60と、駆動部50及び表示部10の各々との配線の接続作業が容易となる。
【0055】
(2-1)上記(1-1)とは別の観点に係るHUD装置100は、表示部10、凹面鏡ユニット30及びケース70に加えて、凹面鏡31に伝達部40を介して動力を伝達することで、凹面鏡31を回転駆動する駆動部50と、ケース70の裏側に固定され、駆動部50と電気的に接続される回路基板60と、を備える。そして、ケース70における駆動部50と凹面鏡31との間には、伝達部40を通す孔74aが形成され、駆動部50は、第1支持部32と第2支持部33の一方に対応して設けられ、ケース70に対して裏側から固定されている。
この構成により、回路基板60及び駆動部50の各々をケース70に対して固定する方向(裏から表に向かう方向)を同方向とすることができるとともに、回路基板60及び駆動部50がケース70の裏側に位置するため、両者を配線で接続する作業が容易となる。つまり、当該構成によれば、組み付け性質が良好である。
【0056】
(2-2)また、表示部10は、ケース70に対して裏側から固定されて配設部75に配設され、連通口75aからケース70の表側に向かって、凹面鏡31に到達する表示光Lを射出する。
この構成により、駆動部50、回路基板60及び表示部10の各々をケース70に対して固定する方向を同方向とすることができ、組み付けが容易となる。また、駆動部50、回路基板60及び表示部10の全てがケース70の裏側に位置すると、回路基板60と、駆動部50及び表示部10の各々との配線の接続作業が容易となる。
【0057】
(2-3)また、回路基板60は、ケース70における収容部71(ケース70の表側における凹面鏡31を収容する部分)の裏側に固定されている。
この構成により、回路基板60を、第1支持部32と第2支持部33の一方に対応して設けられる駆動部50の近くに位置させることができるため、特に、回路基板60と駆動部50との配線の接続作業が容易となる。また、配線のレイアウトの複雑化を抑制することもできる。
【0058】
(2-4)また、HUD装置100は、ケース70に裏側から取り付けられるリアカバー80を備え、駆動部50、回路基板60及び表示部10は、リアカバー80とケース70との間に位置する。
この構成により、駆動部50、回路基板60及び表示部10の各々をケース70に対して固定する方向(裏から表に向かう方向)と、当該固定後に、ケース70に対してリアカバー80を取り付ける方向とを同方向とすることができ、組み付けが容易となる。また、リアカバー80で、駆動部50、回路基板60及び表示部10を一度に裏側から覆って保護することができるため、組み付けが容易なだけでなく、HUD装置100の構造の複雑化を抑制することができる。
【0059】
以上の説明では、本発明の理解を容易にするために、公知の技術的事項の説明を適宜省略した。
【符号の説明】
【0060】
100…ヘッドアップディスプレイ(HUD)装置、101…射出口
1…車両、2…ダッシュボード、3…フロントガラス、4…ユーザ
L…表示光、V…虚像
10…表示部、11…表示用基板、12…ヒートシンク、13…表示用筐体
20…平面鏡、21…ホルダ
30…凹面鏡ユニット
31…凹面鏡、R…反射面、AX…軸線
31a…第1軸部、31b…第2軸部
32…第1支持部
321…台座部、B1,B2…ボス
322…軸受
33…第2支持部
331…台座部、B3,B4,B5…ボス
332…軸受
40…伝達部
41…レバー、42…移動部
50…駆動部
51…駆動用筐体、51a,51b…挿通孔
M…モータ、G…ガイド軸
60…回路基板
70…ケース、S…光路空間
O1~O5…貫通孔
71…収容部、72…第1載置部、73…第2載置部
74…固定部、74a…孔
75…配設部、75a…連通口、O6,O7…ねじ穴
76…基板固定部、H1,H2…フック
80…リアカバー
S1~S7…ねじ
5…治具、5a…第1設置部、5b…第2設置部、5c…回転防止部
図1
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