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特許7396402液晶表示装置、偏光板および偏光子保護フィルム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-04
(45)【発行日】2023-12-12
(54)【発明の名称】液晶表示装置、偏光板および偏光子保護フィルム
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20231205BHJP
   G02F 1/1335 20060101ALI20231205BHJP
   G02F 1/13363 20060101ALI20231205BHJP
【FI】
G02B5/30
G02F1/1335 510
G02F1/13363
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022113822
(22)【出願日】2022-07-15
(62)【分割の表示】P 2018556733の分割
【原出願日】2017-12-14
(65)【公開番号】P2022153484
(43)【公開日】2022-10-12
【審査請求日】2022-08-05
(31)【優先権主張番号】P 2016242224
(32)【優先日】2016-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】早川 章太
(72)【発明者】
【氏名】阿部 尭永
(72)【発明者】
【氏名】村田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】向山 幸伸
【審査官】横川 美穂
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-053271(JP,A)
【文献】特開2015-143758(JP,A)
【文献】特開2015-028578(JP,A)
【文献】特開2015-215577(JP,A)
【文献】国際公開第2013/100041(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/037527(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0062011(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2015-0004563(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
B32B 7/02
B32B 27/36
C08J 5/18
G02F 1/1335
G02F 1/13363
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の(1)~()を満たすことを特徴とするポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルム。
(1)ポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムが3000nm以上30000nm以下のリタデーションを有する
(2)X線回折で測定した結晶の(100)面のフィルム面に対する配向度が0.70以下である
(3)ポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムを構成するポリエチレンテレフタレート系樹脂は、モノマーユニットの85モル%以上がエチレンテレフタレートである
(4)厚みが30~300μmである
【請求項2】
前記ポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムは、遅相軸方向に測定した結晶の(-105)面の結晶サイズが36Å以上である、請求項1に記載のポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルム。
【請求項3】
前記ポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムは、フィルム面内における屈折率差(遅相軸方向の屈折率-進相軸方向の屈折率)が0.08以上0.15以下である、請求項1または2に記載のポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルム。
【請求項4】
前記ポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムの少なくとも片面に易接着層を有する請求項1~3のいずれかに記載のポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置、偏光板および偏光子保護フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置(LCD)に使用される偏光板は、通常ポリビニルアルコール(PVA)などにヨウ素を染着させた偏光子を2枚の偏光子保護フィルムで挟んだ構成であり、偏光子保護フィルムとしては主にトリアセチルセルロース(TAC)フィルムが用いられている。近年、LCDの薄型化に伴い、偏光板の薄層化が求められるようになっている。しかし、このために保護フィルムとして用いられているTACフィルムの厚みを薄くすると、充分な機械強度を得ることが出来ず、また透湿性が悪化するという問題が発生する。また、TACフィルムは非常に高価であり、安価な代替素材としてポリエステルフィルムが提案されているが(特許文献1~3)、虹状の色斑が観察されるという問題があった。
【0003】
偏光子の片側に複屈折性を有する配向ポリエステルフィルムを配した場合、バックライトユニット、または、偏光子から出射した直線偏光はポリエステルフィルムを通過する際に偏光状態が変化する。透過した光は配向ポリエステルフィルムの複屈折と厚さの積であるリタデーションに特有の干渉色を示す。そのため、光源として冷陰極管や熱陰極管など不連続な発光スペクトルを用いると、波長によって異なる透過光強度を示し、虹状の色斑となる(参照:第15回マイクロオプティカルカンファレンス予稿集、第30~31項)。
【0004】
上記の問題を解決する手段として、バックライト光源として白色発光ダイオードのような連続的で幅広い発光スペクトルを有する白色光源を用い、更に偏光子保護フィルムとして一定のリタデーションを有する配向ポリエステルフィルムを用いることが提案されている(特許文献4)。白色発光ダイオードは、可視光領域において連続的で幅広い発光スペクトルを有する。そのため、複屈折体を透過した光による干渉色スペクトルの包絡線形状に着目すると、配向ポリエステルフィルムのリタデーションを制御することで、光源の発光スペクトルと相似なスペクトルを得ることが可能となり、これにより虹斑を抑制することを可能とした。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2002-116320号公報
【文献】特開2004-219620号公報
【文献】特開2004-205773号公報
【文献】WO2011/162198
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
液晶表示装置のバックライト光源として、青色発光ダイオードとイットリウム・アルミニウム・ガーネット系黄色蛍光体(YAG系黄色蛍光体)とを組み合わせた発光素子からなる白色発光ダイオード(白色LED)が、従来から広く用いられている。この白色光源の発光スペクトルは、可視光領域で幅広いスペクトルを有しているとともに、発光効率にも優れるため、バックライト光源として汎用されている。しかし、この白色LEDをバックライト光源とした液晶表示装置では、人間の目が認識可能なスペクトルの20%程度しか色を再現することが出来ない。
【0007】
一方、近年の色域拡大要求の高まりから、白色光源の発光スペクトルが、R(赤)、G(緑)、B(青)の各波長領域に、それぞれ明確なピーク形状を有する広色域化対応の液晶表示装置が開発されている。例えば、量子ドット技術を利用した白色光源、励起光によりR(赤)、G(緑)の領域に明確な発光ピークを有する蛍光体と青色LEDを用いた蛍光体方式の白色LED光源、3波長方式の白色LED光源等、様々な種類の光源を用いた、広色域化対応の液晶表示装置が開発されている。量子ドット技術を利用した白色光源をバックライト光源とする液晶表示装置の場合、人間の目が認識可能なスペクトルの60%以上の色を再現することが可能になると言われている。
【0008】
これらの白色光源は、いずれも従来のYAG系黄色蛍光体を用いた白色発光ダイオードからなる光源と比較してピークの半値幅が狭く、リタデーションを有するポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムを偏光板の構成部材である偏光子保護フィルムとして用いた場合に、光源の種類によっては虹斑が発生する場合があることが新たにわかった。
【0009】
また、偏光子保護フィルムのさらなる薄膜化の要望が強くなっており、そのような場合にも、表示画面を斜め方向から観察した場合の虹斑をより抑制することのできるポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルム(偏光子保護フィルム)を提供することが求められている。
【0010】
すなわち、本発明では、広色域化対応の液晶表示装置の偏光子保護フィルムとしてポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムを使用した場合や、偏光子保護フィルムを薄膜化した場合にも、虹斑の発生を抑制できる、偏光子保護フィルム、それを含む偏光板及び液晶表示装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、鋭意検討した結果、ポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムが特定範囲のリタデーションを有していることに加え、X線回折で測定した結晶の(100)面のフィルム面に対する配向度が低いほど虹斑抑制に効果的であることを見出した。
【0012】
代表的な本発明は、以下の通りである。
項1.
ポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムからなる偏光子保護フィルムであって、前記ポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムは下記の(1)及び(2)を満たすことを特徴とする偏光子保護フィルム。
(1)ポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムが3000nm以上30000nm以下のリタデーションを有する
(2)X線回折で測定した結晶の(100)面のフィルム面に対する配向度が0.70以下である
項2.
前記ポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムは、遅相軸方向に測定した結晶の(-105)面の結晶サイズが36Å以上である、項1に記載の偏光子保護フィルム。
項3.
偏光子の少なくとも一方の面に項1又は2に記載の偏光子保護フィルムが積層された偏光板。
項4.
バックライト光源、2つの偏光板、及び前記2つの偏光板の間に配された液晶セルを有する液晶表示装置であって、
前記2つの偏光板のうち、少なくとも一方が項3に記載の偏光板である、液晶表示装置。
【発明の効果】
【0013】
本発明の液晶表示装置、偏光板および偏光子保護フィルムであれば、偏光子保護フィルムとしてのポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムを、広色域化対応の液晶表示装置に使用した場合や、薄膜化した場合にも、表示画面への虹斑の発生を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
1.偏光子保護フィルム
本発明の偏光子保護フィルムに用いられるポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムは、3000nm以上30000nm以下のリタデーション(Re、面内リタデーション)を有することが好ましい。リタデーションが3000nm未満では、偏光子保護フィルムとして用いた場合、斜め方向から観察した時に強い干渉色を呈し、良好な視認性を確保することができない。好ましいリタデーションの下限値は4000nm、次に好ましい下限値は5000nm、より好ましい下限値は6000nmである。
【0015】
一方、リタデーションの上限は30000nmが好ましく、より好ましい上限は10000nmである。30000nmの上限を著しく超えると更なる視認性の改善効果は実質的に得られないばかりか、フィルムの厚みも相当に厚くなり、工業材料としての取り扱い性が低下するので好ましくない。
【0016】
フィルム面内における屈折率差(遅相軸方向の屈折率-進相軸方向の屈折率)は、0.08以上が好ましく、より好ましくは0.09以上、さらに好ましくは0.10以上である。前記屈折率差の上限は0.15以下が好ましい。一方向に強く延伸され、フィルム面内における屈折率差が大きいほうが、虹斑をより抑制する観点から好ましい。
【0017】
なお、本発明のリタデーションは、フィルム面内における2軸方向の屈折率とフィルム厚みを測定して求めることもできるし、KOBRA-21ADH(王子計測機器株式会社)といった市販の自動複屈折測定装置を用いて求めることもできる。フィルム面内における2軸方向の屈折率は、アッベ屈折率計(アタゴ社製、NAR-4T、測定波長589nm)によって求めることができる。
【0018】
本発明の偏光子保護フィルムに用いるポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムは、特定範囲のリタデーションを有することに加え、X線回折で測定した結晶の(100)面のフィルム面に対する配向度が0.70以下であることが斜め方向から観察される虹斑を抑制する観点から好ましい。ポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムの結晶の(100)面のフィルム面に対する配向度は0.70以下が好ましく、より好ましくは0.65以下であり、より好ましくは0.60以下であり、より好ましくは0.59以下であり、さらに好ましくは0.58以下である。下限は0.40が好ましい。結晶の(100)面のフィルム面に対する配向度は、ポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムの結晶の分子鎖方向(c軸)まわりの配向を示す指標であり、この値が低いほどc軸まわりの配向がランダムであることを表している。このc軸まわりの配向がランダムであるほど、斜め方向から観察される虹斑が抑制される。
【0019】
結晶の(100)面のフィルム面に対する配向度は、X線回折装置(株式会社リガク社製、RINT2100PC)を用いて、極点測定により得られた回折強度の遅相軸方向を軸とした半値幅を用いて、(180-半値幅)/180と定義されるパラメーターである。ただし、半値幅の単位は度である。フィルムの遅相軸方向は、分子配向計(王子計測器株式会社製、MOA-6004型分子配向計)を用いて、求めることができる。配向度の測定に関する詳細は実施例で後述する。
【0020】
さらに、前記ポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムは、X線回折で遅相軸方向に測定した結晶の(-105)面の結晶サイズが36Å(オングストローム)以上であることが好ましい。前記結晶の(-105面)の結晶サイズは、36Å以上が好ましく、より好ましくは38Å以上であり、さらに好ましくは39Å以上である。上限は60Åが好ましいが、45Å程度で十分である
【0021】
ポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムの結晶の分子鎖方向(c軸方向)がフィルムの遅相軸方向に配向し、結晶の分子鎖方向(c軸方向)の結晶サイズが特定の値より大きく、結晶の分子鎖方向軸(c軸)まわりの配向を低くすることで、より虹状の色斑が発生しにくくなると考えられる。結晶の分子鎖軸方向の結晶サイズは、下記のとおり結晶の(-105)面の見かけの結晶サイズとして測定することができる。
【0022】
遅相軸方向に測定した結晶の(-105)面の結晶サイズは、X線回折装置(株式会社リガク社製、RINT2500)を用いて遅相軸方向に測定したθ/2θの回折強度プロファイルから、結晶の(-105)面の回折位置、実測半値幅(B)を読み取り、次式(シェラーの式)を用いて見掛けの結晶サイズ(ACS)として算出することができる。測定に用いたX線は、Cu-Kα線で、波長は1.5418Åである。本発明でいう遅相軸方向に測定した結晶の(-105)面の結晶サイズとは、見掛けの結晶サイズのことである。(ACS=0.9λ/(βcosθ))。ここで、λはX線の波長(1.5418Å)、βは読み取った実測半値幅(B)と補正のための定数(b)から(B-b1/2で計算される半値幅である。なお、補正のための定数(b)は、シリコン粉末NIST640bを同条件で測定したときの半値幅である。β、B、bは、いずれもラジアン単位の値である。
【0023】
結晶の(-105)面の面内配向度は、0.6以上が好ましく、より好ましくは0.7以上、さらに好ましくは0.8以上である。結晶の(-105)面の面内配向度は、X線回折装置(株式会社リガク社製、RINT2500)を用いて測定することができる。測定は、θ/2θを固定して方位角測定用サンプルホルダーを用いてサンプルを360°回転させることにより結晶の(-105)面の回折強度の円周方向の分布を得る。得られた分布の半値幅から、(180-半値幅)/180で定義されるパラメーターを面内配向度とする。ここでいう半値幅の単位は度である。
【0024】
結晶の分子鎖軸方向を一軸に配向させるためには、フィルムを一方向に延伸することが好ましい。一般に延伸方向への配向度を高めるためには、延伸倍率を高くする、または、延伸温度を低くする方法がある。また、フィルム状物を一軸延伸する際、延伸方向、フィルム平面内で延伸方向に垂直な方向、厚み方向で内部に発生する応力は異なることがある。一般的には、自由端一軸延伸、固定端一軸延伸と呼ばれるように、延伸方向に垂直な方向の寸法を自由にする場合と固定する場合で内部の応力は大きく異なることが知られている。これは、延伸時に発生するポアソン収縮を延伸方向に垂直な方向に自由にするか、抑制するかの違いによるものである。通常のテンター横延伸の場合、端部をクリップで把持しているため、横延伸時にフィルム流れ方向(MD)のポアソン収縮が制限される。したがって、横延伸方向(TD)はもちろん、流れ方向への応力も発生する。厚み方向については制限されないため、応力も発生していないと考えられる。すなわち、延伸方向に配向した分子鎖軸周りの応力分布が、流れ方向と厚み方向で異なることにより、結晶のベンゼン環面の配向が進むと考えられる。よって、結晶の分子鎖方向軸(c軸)まわりの配向を低くするためには、延伸方向への応力とひずみを保ちつつ、配向軸まわりの応力を均等にすることが好ましい。実質的に、厚み方向には応力は働かないので、延伸方向に垂直な方向(流れ方向)への応力を下げることが好ましい。
【0025】
本発明の保護フィルムであるポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムは、一般的なポリエステルフィルムの製造方法に従って製造することができる。例えば、ポリエチレンテレフタレート系樹脂を溶融し、シート状に押出し成形された無配向ポリエチレンテレフタレート系樹脂をガラス転移温度以上の温度において、ロールの速度差を利用して縦方向に延伸した後、テンターにより横方向に延伸し、熱処理を施す方法が挙げられる。
【0026】
ポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムの製膜条件を具体的に説明すると、縦延伸温度、横延伸温度は100~130℃が好ましく、特に好ましくは110~125℃である。
【0027】
フィルム幅方向(TD方向)に遅相軸を有するフィルムを製造する場合、縦延伸倍率は0.7~1.0倍が好ましい。また、横延伸倍率は4.0~6.0倍が好ましく、より好ましくは4.0~5.5倍、最も好ましくは4.5~5.5倍である。
【0028】
一方、フィルム縦方向(MD方向)に遅相軸を有するフィルムを製造する場合、横延伸倍率は1.0~3.0倍が好ましく、より好ましくは1.5~3.0倍、さらに好ましくは2.0~3.0倍である。縦延伸倍率は4.0~6.5倍が好ましく、より好ましくは5.0~6.0倍である。なお、フィルム縦方向に遅相軸を有するフィルムを製造する場合、結晶の(100)面のフィルム面に対する配向度を下げる観点から、横延伸した後、縦延伸することが好ましい。
【0029】
リタデーションを上記範囲に制御するためには、縦延伸倍率と横延伸倍率の比率や、延伸温度、フィルムの厚みを制御することが好ましい。縦横の延伸倍率の差が小さすぎるとリタデーションを高くすることが難しくなり好ましくない。
【0030】
結晶の(-105)面の結晶サイズを大きくし、結晶の(100)面のフィルム面に対する配向度を下げるためには、一方向に対する延伸倍率を大きくすること、延伸温度を高く設定すること、その際、フィルムに十分な熱量が加わるように熱風の風速を適切に調整することが好ましい。熱風の風速は、好ましくは6m/秒~15m/秒であり、より好ましくは8m/秒~12m/秒である。フィルムに十分な熱量を加えながら高倍率で一方向に延伸することで、延伸方向への応力とひずみを保ちつつ、配向軸まわりの応力を均等にでき、結晶の(-105)面の結晶サイズを大きくし、結晶の(100)面のフィルム面に対する配向度を下げることができる。
【0031】
続く熱処理においては、処理温度は150~250℃が好ましく、特に好ましくは180~220℃である。結晶の(100)面のフィルム面に対する配向度を下げる観点からは、熱処理の処理温度は低いほうが好ましい。一方、結晶の(-105)面の結晶サイズを大きくする観点からは、熱処理の処理温度は高いほうが好ましいため、両者のバランスを考慮して調整することが好ましい。
【0032】
ポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムを構成するポリエチレンテレフタレート系樹脂は、モノマーユニットの85モル%以上がエチレンテレフタレートであることが好ましい。エチレンテレフタレート単位は90モル%以上が好ましく、より好ましくは95モル%以上である。なお、共重合成分としては、公知の酸成分、グリコール成分を含んでもよい。ポリエチレンテレフタレート系樹脂として、特に好ましいものは、ホモポリマーであるポリエチレンテレフタレートである。モノマーユニットの割合は、H-NMR測定により確認することができる。
【0033】
これらの樹脂は透明性に優れるとともに、熱的、機械的特性にも優れており、延伸加工によって容易にリタデーションを制御することができる。ポリエチレンテレフタレートは、固有複屈折が大きく、フィルムの厚みが薄くても比較的容易に大きなリタデーションが得ることができ、最も好適な素材である。
【0034】
また、ヨウ素色素などの光学機能性色素の劣化を抑制することを目的として、本発明の保護フィルムは、波長380nmの光線透過率が20%以下であることが望ましい。380nmの光線透過率は15%以下がより好ましく、10%以下がさらに好ましく、5%以下が特に好ましい。前記光線透過率が20%以下であれば、光学機能性色素の紫外線による変質を抑制することができる。なお、本発明における光線透過率は、フィルムの平面に対して垂直方向に測定したものであり、分光光度計(例えば、日立U-3500型)を用いて測定することができる。
【0035】
本発明の保護フィルムの波長380nmの光線透過率を20%以下にするためには、紫外線吸収剤の種類、濃度、及びフィルムの厚みを適宜調節することが望ましい。本発明で使用される紫外線吸収剤は公知の物質である。紫外線吸収剤としては、有機系紫外線吸収剤と無機系紫外線吸収剤が挙げられるが、透明性の観点から有機系紫外線吸収剤が好ましい。有機系紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、環状イミノエステル系等、及びその組み合わせが挙げられるが本発明の規定する吸光度の範囲であれば特に限定されない。しかし、耐久性の観点からはベンゾトリアゾール系、環状イミノエステル系が特に好ましい。2種以上の紫外線吸収剤を併用した場合には、別々の波長の紫外線を同時に吸収させることができるので、より紫外線吸収効果を改善することができる。
【0036】
ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、アクリロニトリル系紫外線吸収剤としては例えば2-[2'-ヒドロキシ-5' -(メタクリロイルオキシメチル)フェニル]-2H-ベンゾトリアゾール、2-[2' -ヒドロキシ-5' -(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]-2H-ベンゾトリアゾール、2-[2' -ヒドロキシ-5' -(メタクリロイルオキシプロピル)フェニル]-2H-ベンゾトリアゾール、2,2'-ジヒドロキシ-4,4'-ジメトキシベンゾフェノン、2,2',4,4'-テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,4-ジ-tert-ブチル-6-(5-クロロベンゾトリアゾール-2-イル)フェノール、2-(2'-ヒドロキシ-3'-tert-ブチル-5'-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(5-クロロ(2H)-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-メチル-6-(tert-ブチル)フェノール、2,2'-メチレンビス(4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェノールなどが挙げられる。環状イミノエステル系紫外線吸収剤としては例えば2,2’-(1,4-フェニレン)ビス(4H-3,1-ベンズオキサジン-4-オン)、2-メチル-3,1-ベンゾオキサジン-4-オン、2-ブチル-3,1-ベンゾオキサジン-4-オン、2-フェニル-3,1-ベンゾオキサジン-4-オンなどが挙げられる。しかし特にこれらに限定されるものではない。
【0037】
紫外線吸収剤以外に、本発明の効果を妨げない範囲で、触媒以外の各種の添加剤を含有させることも好ましい様態である。添加剤として、例えば、無機粒子、耐熱性高分子粒子、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、リン化合物、帯電防止剤、耐光剤、難燃剤、熱安定剤、酸化防止剤、ゲル化防止剤、界面活性剤等が挙げられる。また、高い透明性を奏するためにはポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムに実質的に粒子を含有しないことも好ましい。「粒子を実質的に含有させない」とは、例えば無機粒子の場合、ケイ光X線分析で無機元素を定量した場合に50ppm以下、好ましくは10ppm以下、特に好ましくは検出限界以下となる含有量を意味する。
【0038】
本発明におけるポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムに紫外線吸収剤を配合する方法としては、公知の方法を組み合わせて採用し得るが、例えば予め混練押出機を用い、乾燥させた紫外線吸収剤とポリマー原料とをブレンドしマスターバッチを作製しておき、フィルム製膜時に所定の該マスターバッチとポリマー原料を混合する方法などによって配合することができる。
【0039】
この時マスターバッチの紫外線吸収剤濃度は紫外線吸収剤を均一に分散させ、且つ経済的に配合するために5~30質量%の濃度にするのが好ましい。マスターバッチを作製する条件としては混練押出機を用い、押し出し温度はポリエチレンテレフタレート系樹脂原料の融点以上、290℃以下の温度で1~15分間で押し出すのが好ましい。290℃以上では紫外線吸収剤の減量が大きく、また、マスターバッチの粘度低下が大きくなる。押し出し時間1分以下では紫外線吸収剤の均一な混合が困難となる。この時、必要に応じて安定剤、色調調整剤、帯電防止剤を添加しても良い。
【0040】
本発明ではフィルムを少なくとも3層以上の多層構造とし、フィルムの中間層に紫外線吸収剤を添加することが好ましい。中間層に紫外線吸収剤を含む3層構造のフィルムは、具体的には次のように作製することができる。外層用としてポリエチレンテレフタレート系樹脂のペレット単独、中間層用として紫外線吸収剤を含有したマスターバッチとポリエチレンテレフタレート系樹脂のペレットを所定の割合で混合し、乾燥したのち、公知の溶融積層用押出機に供給し、スリット状のダイからシート状に押出し、キャスティングロール上で冷却固化せしめて未延伸フィルムを作る。すなわち、2台以上の押出機、3層のマニホールドまたは合流ブロック(例えば角型合流部を有する合流ブロック)を用いて、両外層を構成するフィルム層、中間層を構成するフィルム層を積層し、口金から3層のシートを押し出し、キャスティングロールで冷却して未延伸フィルムを作る。なお、発明では、光学欠点の原因となる、原料のポリエチレンテレフタレート系樹中に含まれている異物を除去するため、溶融押し出しの際に高精度濾過を行うことが好ましい。溶融樹脂の高精度濾過に用いる濾材の濾過粒子サイズ(初期濾過効率95%)は、15μm以下が好ましい。濾材の濾過粒子サイズが15μmを超えると、20μm以上の異物の除去が不十分となりやすい。
【0041】
さらに、本発明のポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムには、偏光子との接着性を良好にするためにコロナ処理、コーティング処理や火炎処理等を施したりすることも可能である。
【0042】
本発明においては、偏光子との接着性を改良のために、本発明のフィルムの少なくとも片面(好ましくは、偏光子と接する面)に、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂またはポリアクリル樹脂の少なくとも1種類を主成分とする易接着層を有することが好ましい。ここで、「主成分」とは易接着層を構成する固形成分のうち50質量%以上である成分をいう。本発明の易接着層の形成に用いる塗布液は、水溶性又は水分散性の共重合ポリエステル樹脂、アクリル樹脂及びポリウレタン樹脂の内、少なくとも1種を含む水性塗布液が好ましい。これらの塗布液としては、例えば、特許第3567927号公報、特許第3589232号公報、特許第3589233号公報、特許第3900191号公報、特許第4150982号公報等に開示された水溶性又は水分散性共重合ポリエステル樹脂溶液、アクリル樹脂溶液、ポリウレタン樹脂溶液等が挙げられる。
【0043】
易接着層は、前記塗布液を未延伸フィルム又は縦方向の1軸延伸フィルムの片面または両面に塗布した後、100~150℃で乾燥し、さらに横方向に延伸して得ることができる。最終的な易接着層の塗布量は、0.05~0.20g/mに管理することが好ましい。塗布量が0.05g/m未満であると、得られる偏光子との接着性が不十分となる場合がある。一方、塗布量が0.20g/mを超えると、耐ブロッキング性が低下する場合がある。ポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムの両面に易接着層を設ける場合は、両面の易接着層の塗布量は、同じであっても異なっていてもよく、それぞれ独立して上記範囲内で設定することができる。
【0044】
易接着層には易滑性を付与するために粒子を添加することが好ましい。微粒子の平均粒径は2μm以下の粒子を用いることが好ましい。粒子の平均粒径が2μmを超えると、粒子が被覆層から脱落しやすくなる。易接着層に含有させる粒子としては、例えば、酸化チタン、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、シリカ、アルミナ、タルク、カオリン、クレー、リン酸カルシウム、雲母、ヘクトライト、ジルコニア、酸化タングステン、フッ化リチウム、フッ化カルシウム等の無機粒子や、スチレン系、アクリル系、メラミン系、ベンゾグアナミン系、シリコーン系等の有機ポリマー系粒子等が挙げられる。これらは、単独で易接着層に添加されてもよく、2種以上を組合せて添加することもできる。
【0045】
また、塗布液を塗布する方法としては、公知の方法を用いることができる。例えば、リバースロール・コート法、グラビア・コート法、キス・コート法、ロールブラッシュ法、スプレーコート法、エアナイフコート法、ワイヤーバーコート法、パイプドクター法、などが挙げられ、これらの方法を単独であるいは組み合わせて行うことができる。
【0046】
なお、上記の粒子の平均粒径の測定は次の方法により行う。粒子を走査型電子顕微鏡(SEM)で写真を撮り、最も小さい粒子1個の大きさが2~5mmとなるような倍率で、300~500個の粒子の最大径(最も離れた2点間の距離)を測定し、その平均値を平均粒径とする。
【0047】
本発明のポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムの厚みは任意であるが、30~300μmの範囲が好ましい。30μmを下回る厚みのフィルムでも、原理的には3000nm以上のリタデーションを得ることは可能である。しかし、その場合にはフィルムの力学特性の異方性が顕著となり、裂け、破れ等を生じやすくなり、工業材料としての実用性が著しく低下する。好ましい厚みの下限は40μmであり、特に好ましい厚みの下限は45μmである。一方、偏光子保護フィルムの厚みの上限は、300μmを超えると偏光板の厚みが厚くなりすぎてしまい好ましくない。偏光子保護フィルムとしての実用性の観点からは厚みの上限は200μmが好ましく、120μmが好ましく、より好ましくは100μm以下、さらにより好ましくは80μm以下、さらにより好ましくは65μm以下、さらにより好ましくは60μm以下、さらにより好ましくは55μm以下である。
【0048】
リタデーションの変動を抑制する為には、フィルムの厚み斑が小さいことが好ましい。延伸温度、延伸倍率はフィルムの厚み斑に大きな影響を与えることから、厚み斑の観点からも製膜条件の最適化が好ましい。特にリタデーションを高くするために縦延伸倍率を低くすると、縦厚み斑が悪くなることがある。縦厚み斑は延伸倍率のある特定の範囲で非常に悪くなる領域があることから、この範囲を外したところで製膜条件を設定することが望ましい。
【0049】
本発明のフィルムの厚み斑は5.0%以下であることが好ましく、4.5%以下であることがさらに好ましく、4.0%以下であることがよりさらに好ましく、3.0%以下であることが特に好ましい。
【0050】
ポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムは、そのリタデーション(Re)と厚さ方向リタデーション(Rth)の比(Re/Rth)が、好ましくは0.2以上、より好ましくは0.5以上、さらに好ましくは0.6以上である。斜め方向から見た際の虹斑を抑制する観点から、上記比(Re/Rth)が大きいほど好ましい。比(Re/Rth)の上限は2.0以下が好ましく、より好ましくは1.8以下である。一方、厚みムラや平面性の観点から上記比(Re/Rth)の上限は1.0未満が好ましい。なお、厚さ方向リタデーションとは、フィルム厚さ方向断面から見たときの2つの複屈折△Nxz(=|nx-nz|)、△Nyz(=|ny-nz|)にそれぞれフィルム厚さdを掛けて得られるリタデーションの平均を示すパラメーターである。nx、ny、nzとフィルム厚みd(nm)を求め、(△Nxz×d)と(△Nyz×d)との平均値を算出して厚さ方向リタデーション(Rth)を求めることができる。なお、nx、ny、nzは、アッベ屈折率計(アタゴ社製、NAR-4T、測定波長589nm)によって求める。
【0051】
2.偏光板
本発明の偏光板は、ポリビニルアルコール(PVA)などにヨウ素を染着させた偏光子の少なくとも一方の面に偏光子保護フィルムを貼り合わせた構造を有し、いずれかの偏光子保護フィルムが前述した本発明の偏光子保護フィルムであることが好ましい。他方の偏光子保護フィルムには、TACフィルムやアクリルフィルム、ノルボルネン系フィルムに代表されるような複屈折が無いフィルムを用いることが好ましい。もしくは他方には偏光子保護フィルムが存在しなくてもよい。本発明に用いられる偏光板には、写り込み防止やギラツキ抑制、キズ抑制などを目的として、種々のハードコートを表面に塗布することも好ましい様態である。
【0052】
3.液晶表示装置
一般に、液晶パネルは、バックライト光源に対向する側から画像を表示する側(視認側)に向かう順に、後面モジュール、液晶セルおよび前面モジュールから構成されている。後面モジュールおよび前面モジュールは、一般に、透明基板と、その液晶セル側表面に形成された透明導電膜と、その反対側に配置された偏光板とから構成されている。ここで、偏光板は、後面モジュールでは、バックライト光源に対向する側に配置され、前面モジュールでは、画像を表示する側(視認側)に配置されている。
【0053】
本発明の液晶表示装置は少なくとも、バックライト光源と、2つの偏光板の間に配された液晶セルとを構成部材とする。また、これら以外の他の構成、例えばカラーフィルター、レンズフィルム、拡散シート、反射防止フィルムなどを適宜有しても構わない。前記2つの偏光板のうち、少なくとも一方の偏光板が前述した本発明の偏光板であることが好ましい。
【0054】
バックライトの構成としては、導光板や反射板などを構成部材とするエッジライト方式であっても、直下型方式であっても構わない。
【0055】
液晶表示装置のバックライト光源としては、特に限定されない。例えば、バックライト光源は、蛍光体方式の白色LED(すなわち化合物半導体を使用した青色光、もしくは紫外光を発する発光ダイオードと蛍光体を組み合わせることにより白色を発する素子)であってもよい。蛍光体としては、イットリウム・アルミニウム・ガーネット系の黄色蛍光体やテルビウム・アルミニウム・ガーネット系の黄色蛍光体等がある。
【0056】
一実施形態において、バックライト光源は、400nm以上495nm未満、495nm以上600nm未満、及び600nm以上780nm以下の各波長領域にそれぞれ発光スペクトルのピークトップを有する白色光源が好ましい。例えば、量子ドット技術を利用した白色光源、励起光によりR(赤)、G(緑)の領域にそれぞれ発光ピークを有する蛍光体と青色LEDを用いた蛍光体方式の白色LED光源、3波長方式の白色LED光源、赤色レーザーを組み合わせた白色LED光源、その他、例えば組成式がKSiF:Mn4+であるフッ化物蛍光体(「KSF」ともいう)等と青色LEDを用いた白色LED光源等が挙げられる。これらは、広色域対応の液晶表示装置のバックライト光源として注目されているものである。
【0057】
当該特定のリタデーションを有する本発明の偏光子保護フィルムの液晶表示装置内における配置は特に限定されないが、入射光側(光源側)に配される偏光板と、液晶セルと、出射光側(視認側)に配される偏光板とを配された液晶表示装置の場合、入射光側に配される偏光板の入射光側の偏光子保護フィルム、及び/又は出射光側に配される偏光板の射出光側の偏光子保護フィルムが当該特定のリタデーションを有するポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムからなる偏光子保護フィルムであることが好ましい。特に好ましい態様は、出射光側に配される偏光板の射出光側の偏光子保護フィルムを当該特定のリタデーションを有するポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムとする態様である。上記以外の位置にポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムを配する場合は、液晶セルの偏光特性を変化させてしまう場合がある。偏光特性が必要とされる箇所には本発明の高分子フィルムを用いることは好ましくない為、このような特定の位置の偏光板の保護フィルムとして使用されることが好ましい。
【実施例
【0058】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は、下記実施例によって制限を受けるものではなく、本発明の趣旨に適合し得る範囲で適宜変更を加えて実施することも可能であり、それらは、いずれも本発明の技術的範囲に含まれる。なお、以下の実施例における物性の評価方法は以下の通りである。
【0059】
(1)リタデーション(Re)
リタデーションとは、フィルム上の直交する二軸の屈折率の異方性(△Nxy=|nx-ny|)とフィルム厚みd(nm)との積(△Nxy×d)と定義されるパラメーターであり、光学的等方性又は異方性を示す尺度である。二軸の屈折率の異方性(△Nxy)は、以下の方法により求めた。分子配向計(王子計測器株式会社製、MOA-6004型分子配向計)を用いて、フィルムの遅相軸方向を求め、遅相軸方向が測定用サンプル長辺と平行になるように、4cm×2cmの長方形を切り出し、測定用サンプルとした。このサンプルについて、直交する二軸の屈折率(遅相軸方向の屈折率:ny,遅相軸方向と直交する方向の屈折率:nx)、及び厚さ方向の屈折率(nz)をアッベ屈折率計(アタゴ社製、NAR-4T、測定波長589nm)によって求め、前記二軸の屈折率差の絶対値(|nx-ny|)を屈折率の異方性(△Nxy)とした。フィルムの厚みd(nm)は電気マイクロメータ(ファインリューフ社製、ミリトロン1245D)を用いて測定し、単位をnmに換算した。屈折率の異方性(△Nxy)とフィルムの厚みd(nm)の積(△Nxy×d)より、リタデーション(Re)を求めた。
【0060】
(2)厚さ方向リタデーション(Rth)
厚さ方向リタデーションとは、フィルム厚さ方向断面から見たときの2つの複屈折△Nxz(=|nx-nz|)、△Nyz(=|ny-nz|)にそれぞれフィルム厚さdを掛けて得られるリタデーションの平均を示すパラメーターである。リタデーションの測定と同様の方法でnx、ny、nzとフィルム厚みd(nm)を求め、(△Nxz×d)と(△Nyz×d)との平均値を算出して厚さ方向リタデーション(Rth)を求めた。
【0061】
(3)結晶の(100)面のフィルム面に対する配向度
結晶の(100)面のフィルム面に対する配向度は、X線回折装置(株式会社リガク社製、RINT2100PC)を用いて、極点測定により得られた回折強度の遅相軸方向を軸とした半値幅から、(180-半値幅)/180で定義されるパラメーターである。測定に用いたX線は、Cu-Kα線で、波長は1.5418Åである。極点測定はRINT2100PCに装着できるRINT2000ゴニオメータと極点用多目的試料台を取り付け、シュルツ反射法にて行った。サンプルは直径5cmの円状に切り出し、遅相軸方向がβ=90度および270度方向と一致するよう試料台に取り付けた。なお、サンプルの遅相軸方向は、分子配向計(王子計測器株式会社製、MOA-6004型分子配向計)を用いて求めた。測定条件の詳細は、管電圧を40kV、管電流を40mA、2θ固定角度を25.830度、発散縦制限を1.2mm、発散スリットを1度、散乱スリットを7mm、受光スリットを7mmとした。透過測定ではα開始角度=0度、α終了角度=35度、αステップ角度=5度とした。反射測定ではα開始角度=25度、α終了角度=90度、αステップ角度=5度とした。走査方法は同心円にβ開始角度=0度、β終了角度=360度、βステップ角度=5度である。
以下、結晶の(100)面のフィルム面に対する配向度の計算方法を示す。測定で得られたβ=0度およびβ=180度における反射回折強度プロファイルをI(α)(25≦α≦90)とする。横軸をα’(β=0度のときα’=α、β=180度のときα’=180-α)、縦軸を各α’における回折強度とすることで、β=0度および180度における回折強度プロファイルを接続し、回折強度プロファイルI(α’)(25≦α’≦155)が得られる。このとき、α’=90度における回折強度は、β=0度とβ=180度の平均値を用いた。α’=25度および155度での回折強度を結ぶ直線をベースラインとして差し引き、得られた回折強度プロファイルから半値幅を用いて、(180-半値幅)/180により、結晶の(100)面のフィルム面に対する配向度を算出した。半値幅の単位は度である。
【0062】
(4)結晶の(-105)面の結晶サイズ
フィルムの遅相軸方向における結晶の(-105)面の結晶サイズは、X線回折装置(株式会社リガク社製、RINT2500)を用いて遅相軸方向に測定したθ/2θの回折強度プロファイルから、結晶の(-105)面の回折位置(2θ=42.7度)における回折ピークの実測半値幅(B)を読み取り、次式(シェラーの式)を用いて見掛けの結晶サイズ(ACS)として算出した。測定に用いたX線は、Cu-Kα線で、波長は1.5418Åである。なお、ベースラインは、2θが30度から42.7度の間で最も回折強度が小さい点と、42.7度から50度の間で最も回折強度の小さい点の2点を直線で繋いだ線とした。(ACS=0.9λ/(βcosθ))。ここで、λはX線の波長(1.5418Å)、βは読み取った実測半値幅(B)と補正のための定数(b)から(B-b1/2で計算される半値幅である。なお、補正のための定数(b)は、シリコン粉末NIST640bを同条件で測定したときの半値幅である。ここで、β、B、bはいずれもラジアン単位の値である。なお、サンプルの遅相軸方向は、分子配向計(王子計測器株式会社製、MOA-6004型分子配向計)を用いて求めた。
【0063】
(5)虹斑観察
PVAとヨウ素からなる偏光子の片側に後述する方法で作成したポリエチレンテレフタレートフィルムを偏光子の吸収軸とフィルムの配向主軸が垂直になるように貼り付け、その反対の面に市販のTACフィルムを貼り付けて、ポリエチレンテレフタレートフィルム/偏光子/TACフィルムからなる偏光板を作成した。得られた偏光板を、市販の液晶表示装置(SONY社製のBRAVIA KDL-40W920A)に元々存在した出射光側の偏光板と置き換えた。なお、偏光板の吸収軸が、元々液晶表示装置に貼付されていた偏光板の吸収軸方向と一致するように、ポリエチレンテレフタレートフィルムが視認側になるよう偏光板を置き換えた。前記液晶表示装置は、励起光を出射する光源と量子ドットを含むバックライト光源を有する。この液晶表示装置のバックライト光源の発光スペクトルを、浜松ホトニクス製 マルチチャンネル分光器 PMA-12を用いて測定したところ、450nm、528nm、630nm付近にピークトップを有する発光スペクトルが観察され、各ピークトップの半値幅は16nm~34nmであった。なお、スペクトル測定の際の露光時間は20msecとした。
このようにして作製した液晶表示装置に白画像を表示させ、ディスプレイの正面、および、斜め方向から目視観察を行って、虹ムラの発生について、以下の基準に従って判定した。なお、観察角度は、ディスプレイの画面の中心から法線方向(垂直)に引いた線と、ディスプレイ中心と観察時の眼の位置とを結ぶ直線とのなす角とした。
◎: 観察角度0~65度の範囲で、虹ムラは観察されなかった。
○: 観察角度0~65度の範囲で、わずかに虹ムラは観察された。
×: 観察角度0~65度の範囲で虹ムラが観察された。
【0064】
(製造例1-ポリエステルA)
エステル化反応缶を昇温し200℃に到達した時点で、テレフタル酸を86.4質量部およびエチレングリコール64.6質量部を仕込み、撹拌しながら触媒として三酸化アンチモンを0.017質量部、酢酸マグネシウム4水和物を0.064質量部、トリエチルアミン0.16質量部を仕込んだ。ついで、加圧昇温を行いゲージ圧0.34MPa、240℃の条件で加圧エステル化反応を行った後、エステル化反応缶を常圧に戻し、リン酸0.014質量部を添加した。さらに、15分かけて260℃に昇温し、リン酸トリメチル0.012質量部を添加した。次いで15分後に、高圧分散機で分散処理を行い、15分後、得られたエステル化反応生成物を重縮合反応缶に移送し、280℃で減圧下重縮合反応を行った。
【0065】
重縮合反応終了後、95%カット径が5μmのナスロン製フィルターで濾過処理を行い、ノズルからストランド状に押出し、予め濾過処理(孔径:1μm以下)を行った冷却水を用いて冷却、固化させ、ペレット状にカットした。得られたポリエチレンテレフタレート樹脂(A)の固有粘度は0.62dl/gであり、不活性粒子及び内部析出粒子は実質上含有していなかった。(以後、PET(A)と略す。)
【0066】
(製造例2-ポリエステルB)
乾燥させた紫外線吸収剤(2,2’-(1,4-フェニレン)ビス(4H-3,1-ベンズオキサジン-4-オン)10質量部、粒子を実質上含有しないPET(A)(固有粘度が0.62dl/g)90質量部を混合し、混練押出機を用い、紫外線吸収剤含有するポリエチレンテレフタレート樹脂(B)を得た。(以後、PET(B)と略す。)
【0067】
(製造例3-接着性改質塗布液の調整)
常法によりエステル交換反応および重縮合反応を行って、ジカルボン酸成分として(ジカルボン酸成分全体に対して)テレフタル酸46モル%、イソフタル酸46モル%および5-スルホナトイソフタル酸ナトリウム8モル%、グリコール成分として(グリコール成分全体に対して)エチレングリコール50モル%およびネオペンチルグリコール50モル%の組成の水分散性スルホン酸金属塩基含有共重合ポリエステル樹脂を調製した。次いで、水51.4質量部、イソプロピルアルコール38質量部、n-ブチルセルソルブ5質量部、ノニオン系界面活性剤0.06質量部を混合した後、加熱撹拌し、77℃に達したら、上記水分散性スルホン酸金属塩基含有共重合ポリエステル樹脂5質量部を加え、樹脂の固まりが無くなるまで撹拌し続けた後、樹脂水分散液を常温まで冷却して、固形分濃度5.0質量%の均一な水分散性共重合ポリエステル樹脂液を得た。さらに、凝集体シリカ粒子(富士シリシア(株)社製、サイリシア310)3質量部を水50質量部に分散させた後、上記水分散性共重合ポリエステル樹脂液99.46質量部にサイリシア310の水分散液0.54質量部を加えて、撹拌しながら水20質量部を加えて、接着性改質塗布液を得た。
【0068】
(実施例1)
基材フィルム中間層用原料として粒子を含有しないPET(A)樹脂ペレット90質量部と紫外線吸収剤を含有したPET(B)樹脂ペレット10質量部を135℃で6時間減圧乾燥(1Torr)した後、押出機2(中間層II層用)に供給し、また、PET(A)を常法により乾燥して押出機1(外層I層および外層III用)にそれぞれ供給し、285℃で溶解した。この2種のポリマーを、それぞれステンレス焼結体の濾材(公称濾過精度10μm粒子95%カット)で濾過し、2種3層合流ブロックにて、積層し、口金よりシート状にして押し出した後、静電印加キャスト法を用いて表面温度30℃のキャスティングドラムに巻きつけて冷却固化し、未延伸フィルムを作った。この時、I層、II層、III層の厚さの比は10:80:10となるように各押し出し機の吐出量を調整した。
【0069】
次いで、リバースロール法によりこの未延伸PETフィルムの両面に乾燥後の塗布量が0.08g/mになるように、上記接着性改質塗布液を塗布した後、80℃で20秒間乾燥した。
【0070】
この塗布層を形成した未延伸フィルムをテンター延伸機に導き、フィルムの端部をクリップで把持しながら、温度110℃で熱風吹き出し口の風速が12m/秒の熱風ゾーンに導き、幅方向(TD)に4.0倍、フィルム流れ方向(MD)に0.7倍となるよう延伸した。次に、幅方向に延伸された幅を保ったまま、温度200℃で熱風吹き出し口の風速が10m/秒の熱風ゾーンで熱処理し、さらに幅方向に3%の緩和処理を行い、フィルム厚み約50μmの一軸配向PETフィルムを得た。
【0071】
(実施例2)
実施例1と同じ方法で作製された未延伸フィルムをテンター延伸機に導き、フィルムの端部をクリップで把持しながら、温度125℃で熱風吹き出し口の風速が10m/秒の熱風ゾーンに導き、幅方向に4.5倍となるよう延伸した。次に、幅方向に延伸された幅を保ったまま、温度200℃で熱風吹き出し口の風速が10m/秒の熱風ゾーンで熱処理し、さらに幅方向に3%の緩和処理を行い、フィルム厚み約80μmの一軸配向PETフィルムを得た。
【0072】
(実施例3)
実施例1と同じ方法で作製された未延伸フィルムをテンター延伸機に導き、フィルムの端部をクリップで把持しながら、温度120℃で熱風吹き出し口の風速が12m/秒の熱風ゾーンに導き、幅方向に4.5倍となるよう延伸した。次に、幅方向に延伸された幅を保ったまま、温度200℃で熱風吹き出し口の風速が10m/秒の熱風ゾーンで熱処理し、さらに幅方向に3%の緩和処理を行い、フィルム厚み約100μmの一軸配向PETフィルムを得た。
【0073】
(実施例4)
実施例1と同じ方法で作製された未延伸フィルムをテンター延伸機に導き、フィルムの端部をクリップで把持しながら、温度130℃で熱風吹き出し口の風速が9m/秒の熱風ゾーンに導き、幅方向に5.5倍となるよう延伸した。次に、幅方向に延伸された幅を保ったまま、温度200℃で熱風吹き出し口の風速が10m/秒の熱風ゾーンで熱処理し、さらに幅方向に3%の緩和処理を行い、フィルム厚み約60μmの一軸配向PETフィルムを得た。
【0074】
(実施例5)
実施例1と同じ方法で作製された未延伸フィルムをテンター延伸機に導き、フィルムの端部をクリップで把持しながら、温度125℃で熱風吹き出し口の風速が10m/秒の熱風ゾーンに導き、幅方向に5.0倍、流れ方向に0.9倍となるよう延伸した。次に、幅方向に延伸された幅を保ったまま、温度200℃で熱風吹き出し口の風速が10m/秒の熱風ゾーンで熱処理し、さらに幅方向に3%の緩和処理を行い、フィルム厚み約60μmの一軸配向PETフィルムを得た。
【0075】
(実施例6)
実施例1と同じ方法で作製された未延伸フィルムをテンター延伸機に導き、フィルムの端部をクリップで把持しながら、温度120℃で熱風吹き出し口の風速が10m/秒の熱風ゾーンに導き、幅方向に5.0倍となるよう延伸した。次に、幅方向に延伸された幅を保ったまま、温度200℃で熱風吹き出し口の風速が10m/秒の熱風ゾーンで熱処理し、さらに幅方向に3%の緩和処理を行い、フィルム厚み約40μmの一軸配向PETフィルムを得た。
【0076】
(実施例7)
実施例1と同じ方法で作製された未延伸フィルムをテンター延伸機に導き、フィルムの端部をクリップで把持しながら、温度110℃で熱風吹き出し口の風速が12m/秒の熱風ゾーンに導き、幅方向に4.5倍となるよう延伸した。次に、幅方向に延伸された幅を保ったまま、温度200℃で熱風吹き出し口の風速が10m/秒の熱風ゾーンで熱処理し、さらに幅方向に3%の緩和処理を行い、フィルム厚み約125μmの一軸配向PETフィルムを得た。
【0077】
(実施例8)
実施例1と同じ方法で作製された未延伸フィルムをテンター延伸機に導き、フィルムの端部をクリップで把持しながら、温度115℃で熱風吹き出し口の風速が10m/秒の熱風ゾーンに導き、幅方向に4.5倍となるよう延伸した。次に、幅方向に延伸された幅を保ったまま、温度200℃で熱風吹き出し口の風速が10m/秒の熱風ゾーンで熱処理し、さらに幅方向に3%の緩和処理を行い、フィルム厚み約60μmの一軸配向PETフィルムを得た。
【0078】
(実施例9)
実施例1と同じ方法で作製された未延伸フィルムをテンター延伸機に導き、フィルムの端部をクリップで把持しながら、温度120℃で熱風吹き出し口の風速が12m/秒の熱風ゾーンに導き、幅方向に5.0倍となるよう延伸した。次に、幅方向に延伸された幅を保ったまま、温度130℃で熱風吹き出し口の風速が10m/秒の熱風ゾーンで熱処理し、さらに幅方向に3%の緩和処理を行い、フィルム厚み約50μmの一軸配向PETフィルムを得た。
【0079】
(比較例1)
実施例1と同じ方法で作製された未延伸フィルムをテンター延伸機に導き、フィルムの端部をクリップで把持しながら、温度125℃で熱風吹き出し口の風速が5m/秒の熱風ゾーンに導き、幅方向に4.0倍となるよう延伸した。次に、幅方向に延伸された幅を保ったまま、温度225℃で熱風吹き出し口の風速が5m/秒の熱風ゾーンで熱処理し、さらに幅方向に3%の緩和処理を行い、フィルム厚み約50μmの一軸配向PETフィルムを得た。
【0080】
(比較例2)
実施例1と同じ方法で作製された未延伸フィルムをテンター延伸機に導き、フィルムの端部をクリップで把持しながら、温度95℃で熱風吹き出し口の風速が10m/秒の熱風ゾーンに導き、幅方向に4.0倍となるよう延伸した。次に、幅方向に延伸された幅を保ったまま、温度150℃で熱風吹き出し口の風速が10m/秒の熱風ゾーンで熱処理し、さらに幅方向に3%の緩和処理を行い、フィルム厚み約60μmの一軸配向PETフィルムを得た。
【0081】
(比較例3)
実施例1と同じ方法で作製された未延伸フィルムを、加熱されたロール群および赤外線ヒーターを用いて105℃に加熱し、その後周速差のあるロール群で走行方向に1.5倍延伸した後、温度100℃で熱風吹き出し口の風速が10m/秒の熱風ゾーンに導き、幅方向に4.0倍となるよう延伸した。次に、幅方向に延伸された幅を保ったまま、温度200℃で熱風吹き出し口の風速が10m/秒の熱風ゾーンで熱処理し、さらに幅方向に3%の緩和処理を行い、フィルム厚み約50μmの二軸配向PETフィルムを得た。
【0082】
(比較例4)
実施例1と同じ方法で作製された未延伸フィルムをテンター延伸機に導き、フィルムの端部をクリップで把持しながら、温度90℃で熱風吹き出し口の風速が10m/秒の熱風ゾーンに導き、幅方向に4.0倍となるよう延伸した。次に、幅方向に延伸された幅を保ったまま、温度200℃で熱風吹き出し口の風速が10m/秒の熱風ゾーンで熱処理し、さらに幅方向に3%の緩和処理を行い、フィルム厚み約50μmの一軸配向PETフィルムを得た。
【0083】
(比較例5)
実施例1と同じ方法で作製された未延伸フィルムを、加熱されたロール群および赤外線ヒーターを用いて105℃に加熱し、その後周速差のあるロール群で走行方向に3.5倍延伸した後、テンター延伸機に導き、フィルムの端部をクリップで把持しながら、温度130℃で熱風吹き出し口の風速が10m/秒の熱風ゾーンに導き、幅方向に4.0倍となるよう延伸した。次に、幅方向に延伸された幅を保ったまま、温度220℃で熱風吹き出し口の風速が10m/秒の熱風ゾーンで熱処理し、さらに幅方向に3%の緩和処理を行い、フィルム厚み約100μmの二軸配向PETフィルムを得た。
【0084】
実施例1~9、比較例1~5のPETフィルムについて、各物性、X線構造解析、虹斑観察をした結果を以下の表1に示す。なお、実施例2~4、6~9で得られたPETフィルムは、Re/Rthが1未満でありフィルムの平面性に優れていた。
【0085】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明の液晶表示装置、偏光板および偏光子保護フィルムであれば、偏光子保護フィルムとしてのポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムを、広色域化対応の液晶表示装置に使用した場合や、薄膜化した場合にも、表示画面に観察される虹斑の発生を抑制することができる。