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特許7396417ウインチ制御装置及びこれを備えたクレーン
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-04
(45)【発行日】2023-12-12
(54)【発明の名称】ウインチ制御装置及びこれを備えたクレーン
(51)【国際特許分類】
   B66D 1/44 20060101AFI20231205BHJP
   B66D 5/26 20060101ALI20231205BHJP
   F16D 65/28 20060101ALI20231205BHJP
【FI】
B66D1/44 J
B66D1/44 K
B66D5/26 B
F16D65/28
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022146265
(22)【出願日】2022-09-14
【審査請求日】2023-08-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000246273
【氏名又は名称】コベルコ建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100214961
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 洋三
(72)【発明者】
【氏名】岸 拓朗
【審査官】今野 聖一
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-116813(JP,A)
【文献】特開2018-043824(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66D 1/00 - 5/34
F16D 49/00 - 71/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロープが巻かれるウインチドラムと、
前記ウインチドラムを駆動するウインチモータと、
前記ウインチドラムをロープ巻き取り方向に回転させるための巻き取り操作が与えられるウインチ操作部材と、
ブレーキ操作が与えられるブレーキ操作部材と、
前記ウインチドラムに対するブレーキ力を発生させることが可能なブレーキ装置と、
前記ウインチモータの駆動力を前記ウインチドラムに伝えることが可能な連結モードと前記ロープの張力により前記ウインチドラムから前記ロープを繰り出すことが可能なフリーモードとの間で前記ブレーキ装置のモードを切り替えるモード切替弁と、
前記フリーモードにおいて前記ブレーキ力を調節するための2次圧を出力するブレーキ力調節器と、
コントローラと、を備え、
前記コントローラは、前記フリーモードにおいて前記ウインチ操作部材に前記巻き取り操作が与えられた場合、前記モード切替弁を制御して前記ブレーキ装置のモードを前記フリーモードから前記連結モードに切り替える第1制御と、前記第1制御の後に前記ウインチ操作部材が中立位置に戻された場合、前記ブレーキ力調節器の前記2次圧を前記ブレーキ操作の操作量に対応する操作量対応圧力よりも大きな値である設定圧力に調節するための設定圧力指令を前記ブレーキ力調節器に入力した状態で前記モード切替弁を制御して前記ブレーキ装置のモードを前記連結モードから前記フリーモードに切り替える第2制御と、前記第2制御の後に、前記ブレーキ力調節器の前記2次圧を前記操作量対応圧力に調節するための対応圧力指令を前記ブレーキ力調節器に入力する第3制御と、を行うウインチ制御装置。
【請求項2】
前記対応圧力指令は、前記ブレーキ力調節器の前記2次圧が前記設定圧力から前記操作量対応圧力に所定の時間をかけて減少するような指令である、請求項1に記載のウインチ制御装置。
【請求項3】
前記対応圧力指令は、前記ブレーキ力調節器の前記2次圧が前記設定圧力から前記操作量対応圧力に段階的に減少するような指令である、請求項1に記載のウインチ制御装置。
【請求項4】
前記コントローラは、前記ブレーキ装置のモードを前記連結モードから前記フリーモードに切り替えるためのフリーモード切替指令を前記第2制御において前記モード切替弁に入力した時点から予め設定された待機時間が経過した後に、前記第3制御において前記対応圧力指令を前記ブレーキ力調節器に入力する、請求項1に記載のウインチ制御装置。
【請求項5】
前記コントローラは、前記第1制御における前記フリーモードから前記連結モードへの前記ブレーキ装置のモードの切り替えと同時に又は前記ブレーキ装置のモードの切り替えの直後に、前記設定圧力指令を前記ブレーキ力調節器に入力する、請求項1に記載のウインチ制御装置。
【請求項6】
前記設定圧力は、前記ブレーキ力調節器の前記2次圧の最大値である、請求項1に記載のウインチ制御装置。
【請求項7】
前記設定圧力は、前記操作量対応圧力と前記ブレーキ力調節器の前記2次圧の最大値との間の中間値である、請求項1に記載のウインチ制御装置。
【請求項8】
機体と、
前記機体に取り付けられた作業装置と、
請求項1~7の何れか1項に記載のウインチ制御装置と、を備えるクレーン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ウインチ制御装置及びこれを備えたクレーンに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、クレーンは、下部体と、下部体に旋回可能に支持された上部旋回体と、上部旋回体に取り付けられたブームを含む作業装置と、作業装置の先端からロープを介して吊り下げられたフックと、ロープが巻かれるウインチドラムと、を備える。このようなクレーンは、ウインチドラムへのロープの巻き取り及びウインチドラムからのロープの繰り出しを制御するウインチ制御装置を備える(例えば特許文献1)。
【0003】
このウインチ制御装置は、ウインチドラムを駆動するウインチモータと、ブレーキ装置(クラッチ)と、モード切替弁(状態切替弁)と、を備える。ブレーキ装置は、ウインチモータとウインチドラムとの連結の状態(連結の度合い)を調節する。モード切替弁は、ウインチモータの駆動力をウインチドラムに伝えることが可能な連結モードと、ロープの張力によりウインチドラムからロープを繰り出すことが可能なフリーモードと、の間でブレーキ装置のモードを切り替える。連結モードでは、ウインチモータの駆動力により、ウインチドラムへのロープの巻き取り又はウインチドラムからのロープの繰り出しが行われる。フリーモードでは、ブレーキ操作ペダルに与えられるブレーキ操作の操作量に応じて前記連結の度合いが変わり、これにより、ウインチドラムの回転に対するブレーキ力がブレーキ操作の操作量に応じた大きさとなる。フリーモードでは、ブレーキ操作の操作量がゼロ又は小さいときには、フックの重量(又はフックと吊り荷の重量)によってフック(又はフックと吊り荷)が自由落下することが許容される。
【0004】
クレーンを操作する作業は、例えば、ウインチドラムに対するロープの巻き取り又は繰り出しを行うことでフックに吊り下げた吊り荷を昇降させる吊り荷作業、フックに吊り下げた吊り荷を移動させる移動作業、などを含む。このクレーンを操作する作業において、オペレータは、ブレーキ装置のモードを作業内容に応じて連結モード又はフリーモードに切り替えるためのモード切替操作を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2019-055880号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記のようなブレーキ装置のモードの切り替えがコントローラによって自動的に行われることは、オペレータが煩雑なモード切替操作を行わなくてもよいので、好ましい。具体的には、ブレーキ装置のモードがフリーモードに設定されているときにオペレータがウインチ操作レバーに対して巻き取り操作を与えた場合、コントローラがブレーキ装置のモードをフリーモードから連結モードに自動的に切り替えるように構成され、前記巻き取り操作が終了し、オペレータが操作レバーを中立位置に戻した場合、コントローラがブレーキ装置のモードを連結モードからフリーモードに自動的に戻すように構成されていることが好ましい。
【0007】
しかしながら、ブレーキ操作装置がいわゆる電気ペダル方式を採用する場合には、コントローラがブレーキ装置のモードを連結モードからフリーモードに自動的に戻したときに、ウインチドラムに対する実際のブレーキ力がブレーキ操作の操作量に応じたブレーキ力よりも瞬間的に小さくなるという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示は、コントローラがブレーキ装置のモードを連結モードからフリーモードに自動的に戻したときに、ウインチドラムに対する実際のブレーキ力がブレーキ操作の操作量に応じたブレーキ力よりも瞬間的に小さくなることを抑制できるウインチ制御装置及びこれを備えたクレーンを提供することを目的とする。
【0009】
提供されるウインチ制御装置は、ロープが巻かれるウインチドラムと、前記ウインチドラムを駆動するウインチモータと、前記ウインチドラムをロープ巻き取り方向に回転させるための巻き取り操作が与えられるウインチ操作部材と、ブレーキ操作が与えられるブレーキ操作部材と、前記ウインチドラムに対するブレーキ力を発生させることが可能なブレーキ装置と、前記ウインチモータの駆動力を前記ウインチドラムに伝えることが可能な連結モードと前記ロープの張力により前記ウインチドラムから前記ロープを繰り出すことが可能なフリーモードとの間で前記ブレーキ装置のモードを切り替えるモード切替弁と、前記フリーモードにおいて前記ブレーキ力を調節するための2次圧を出力するブレーキ力調節器と、コントローラと、を備え、前記コントローラは、前記フリーモードにおいて前記ウインチ操作部材に前記巻き取り操作が与えられた場合、前記モード切替弁を制御して前記ブレーキ装置のモードを前記フリーモードから前記連結モードに切り替える第1制御と、前記第1制御の後に前記ウインチ操作部材が中立位置に戻された場合、前記ブレーキ力調節器の前記2次圧を前記ブレーキ操作の操作量に対応する操作量対応圧力よりも大きな値である設定圧力に調節するための設定圧力指令を前記ブレーキ力調節器に入力した状態で前記モード切替弁を制御して前記ブレーキ装置のモードを前記連結モードから前記フリーモードに切り替える第2制御と、前記第2制御の後に、前記ブレーキ力調節器の前記2次圧を前記操作量対応圧力に調節するための対応圧力指令を前記ブレーキ力調節器に入力する第3制御と、を行う。
【0010】
このウインチ制御装置では、第1制御の後にウインチ操作部材が中立位置に戻された場合、コントローラは、設定圧力指令をブレーキ調節器に入力した状態でブレーキ装置のモードを連結モードからフリーモードに切り替えるので、連結モードからフリーモードへの切り替え時に、ウインチドラムに対する実際のブレーキ力がブレーキ操作の操作量に応じたブレーキ力(操作量対応ブレーキ力)よりも瞬間的に小さくなることを抑制できる。
【0011】
前記対応圧力指令は、前記ブレーキ力調節器の前記2次圧が前記設定圧力から前記操作量対応圧力に所定の時間をかけて減少するような指令であることが好ましい。この構成では、ブレーキ力調節器の2次圧が設定圧力から操作量対応圧力に所定の時間をかけて減少するので、連結モードからフリーモードへの切り替え時に実際のブレーキ力が操作量対応ブレーキ力よりも小さくなることがより効果的に抑制される。
【0012】
前記対応圧力指令は、前記ブレーキ力調節器の前記2次圧が前記設定圧力から前記操作量対応圧力に段階的に減少するような指令であってもよい。この構成では、ブレーキ力調節器の2次圧が設定圧力から操作量対応圧力に段階的に減少するので、連結モードからフリーモードへの切り替え時に実際のブレーキ力が操作量対応ブレーキ力よりも小さくなることがより効果的に抑制される。
【0013】
前記コントローラは、前記ブレーキ装置のモードを前記連結モードから前記フリーモードに切り替えるためのフリーモード切替指令を前記第2制御において前記モード切替弁に入力した時点から予め設定された待機時間が経過した後に、前記第3制御において前記対応圧力指令を前記ブレーキ力調節器に入力することが好ましい。この構成では、フリーモード切替指令がモード切替弁に入力された時点から前記待機時間が経過した後に対応圧力指令がブレーキ力調節器に入力される。従って、フリーモード切替指令に対するモード切替弁の応答性があまりよくない場合、すなわち、フリーモード切替指令がモード切替弁に入力された時点からブレーキ装置のモードが実際にフリーモードに切り替わるまでに多少の時間を要する場合であっても、ブレーキ装置のモードが実際にフリーモードに切り替わる前に第3制御が行われることを回避できる。これにより、フリーモード切替指令に対するモード切替弁の応答性があまりよくない場合であっても、連結モードからフリーモードへの切り替え時に実際のブレーキ力が操作量対応ブレーキ力よりも小さくなることが抑制される。
【0014】
前記コントローラは、前記第1制御における前記フリーモードから前記連結モードへの前記ブレーキ装置のモードの切り替えと同時に又は前記ブレーキ装置のモードの切り替えの直後に、前記設定圧力指令を前記ブレーキ力調節器に入力することが好ましい。この構成では、第1制御の完了と同時又は第1制御の完了直後に設定圧力指令がブレーキ力調節器に入力されるので、第2制御が行われる前の十分な時間的余裕がある段階で、ブレーキ力調節器は、設定圧力指令が入力された状態になり、この状態で待機することができる。これにより、連結モードからフリーモードへの切り替え時に実際のブレーキ力が操作量対応ブレーキ力よりも小さくなることがより確実に抑制される。
【0015】
前記設定圧力は、前記ブレーキ力調節器の前記2次圧の最大値であってもよい。
【0016】
前記設定圧力は、前記操作量対応圧力と前記ブレーキ力調節器の前記2次圧の最大値との間の中間値であってもよい。
【0017】
提供されるクレーンは、機体と、前記機体に取り付けられた作業装置と、上述したウインチ制御装置と、を備える。このクレーンでは、連結モードからフリーモードへの切り替え時に、ウインチドラムに対する実際のブレーキ力が操作量対応ブレーキ力よりも瞬間的に小さくなることを抑制できる。
【発明の効果】
【0018】
本開示によれば、コントローラがブレーキ装置のモードを連結モードからフリーモードに自動的に戻したときに、ウインチドラムに対する実際のブレーキ力がブレーキ操作の操作量に応じたブレーキ力よりも瞬間的に小さくなることを抑制できるウインチ制御装置及びこれを備えたクレーンが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本開示の実施形態に係るウインチ制御装置を備えたクレーンを示す側面図である。
図2】前記ウインチ制御装置の油圧回路及びコントローラを示す図である。
図3】前記コントローラが行うアンダーシュート抑制制御を示すグラフである。
図4】前記コントローラによる演算処理の一例を示すフローチャートである。
図5】前記コントローラが行うアンダーシュート抑制制御の変形例1を示すグラフである。
図6】前記コントローラが行うアンダーシュート抑制制御の変形例2を示すグラフである。
図7】前記コントローラが行うアンダーシュート抑制制御の変形例3を示すグラフである。
図8】前記コントローラによる演算処理の一例を示すフローチャートである。
図9】前記コントローラが行うアンダーシュート抑制制御の変形例4を示すグラフである。
図10】前記コントローラが行うアンダーシュート抑制制御の変形例5を示すグラフである。
図11】参考例に係るコントローラが行う制御の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面に基づいて、本開示の実施形態について詳細に説明する。
【0021】
図1は、本開示の実施形態に係るクレーン100を示す側面図である。図1に示すように、クレーン100は、自走可能な下部走行体101と、下部走行体101上に軸回りに旋回可能に支持された上部旋回体103と、上部旋回体103に取り付けられた作業装置と、作業装置の先端からロープRを介して吊り下げられたフック105と、上部旋回体103に取り付けられたガントリ107と、ウインチドラム11と、を備える。上部旋回体103は、機体の一例である。図1に示すクレーン100では作業装置がブーム104により構成されるが、作業装置は、ブーム104と、ブーム104の先端に取り付けられる図略のジブと、を含んでいてもよい。また、クレーン100は、ガントリ107に代えて図略のマストを備えたものであってもよい。
【0022】
ウインチドラム11にはフック105に繋がるロープRが巻かれている。ロープRは、ウインチドラム11から繰り出されて作業装置の先端を経由し、その作業装置の先端から垂れ下がるように配置されてフック105を支持している。フック105には吊り荷106が吊り下げられる。ウインチドラム11は、ロープ巻き取り方向に回転することによりロープRを巻き取り、ロープ繰り出し方向に回転することによりロープRを繰り出す。ウインチドラム11は、ロープRを巻き取り又は繰り出すことにより、フック105に吊り下げた吊り荷106を昇降させる吊り荷作業を行わせる。ウインチドラム11は、その回転軸と上部旋回体103の幅方向とが一致するように配置されている。本実施形態では、ウインチドラム11は、上部旋回体103に支持されているが、ブーム104に支持されていてもよい。
【0023】
図2に示すように、クレーン100は、メインポンプ21と、ウインチモータ23と、ウインチ制御弁24と、ウインチ操作装置25と、減速機28と、をさらに備える。
【0024】
メインポンプ21は、例えばエンジンなどの駆動源(図示省略)により駆動されることにより作動油を吐出する。
【0025】
ウインチモータ23は、ウインチドラム11を回転駆動するための油圧モータである。ウインチモータ23は、メインポンプ21から作動油の供給を受けて回転する。具体的には、ウインチモータ23は、巻き取りポート23a及び繰り出しポート23bを有し、これらの一方のポートへの作動油の供給を受けることにより当該一方のポートに対応する方向に回転するとともに他方のポートから作動油を排出するように作動する。
【0026】
ウインチ制御弁24は、メインポンプ21とウインチモータ23との間に介在し、ウインチモータ23を駆動するための作動油をメインポンプ21からウインチモータ23の巻き取りポート23a及び繰り出しポート23bの一方に択一的に導いて当該ウインチモータ23に供給される作動油の方向を制御するとともに、ウインチモータ23に供給される作動油の流量を制御する。ウインチ制御弁24は、巻き取りパイロットポート24a及び繰り出しパイロットポート24bを有する。
【0027】
ウインチ操作装置25は、ウインチ操作レバー25aと、リモコン弁25bと、を有する。ウインチ操作レバー25aは、オペレータによってウインチ操作レバー25aに与えられるウインチ操作に応じた向きに回動する。ウインチ操作は、巻き取り操作と、繰り出し操作と、を含む。巻き取り操作は、ウインチドラム11をロープ巻き取り方向に回転させるための操作、すなわち、ウインチドラム11にロープRを巻き取らせるための操作である。繰り出し操作は、ウインチドラム11をロープ繰り出し方向に回転させるための操作、すなわち、ウインチドラム11からロープRを繰り出させるための操作である。ウインチ操作レバー25aは、ウインチ操作部材の一例である。
【0028】
リモコン弁25bは、図示されていないパイロットポンプに接続される入口ポートと、一対の出口ポートと、を有する。一方の出口ポートは、パイロットライン41を介してウインチ制御弁24の巻き取りパイロットポート24aに接続されている。他方の出口ポートは、パイロットライン42を介してウインチ制御弁24の繰り出しパイロットポート24bに接続されている。リモコン弁25bは、ウインチ操作レバー25aに与えられるウインチ操作の大きさに対応した2次圧(パイロット圧)を、巻き取りパイロットポート24a及び繰り出しパイロットポート24bのうち、ウインチ操作の向きに対応するパイロットポートに対して入力する。なお、前記パイロットポンプは、後述するコントロールポンプ22であってもよく、コントロールポンプ22とは別のポンプであってもよい。
【0029】
ウインチ制御弁24は、巻き取りパイロットポート24a及び繰り出しパイロットポート24bの何れにもパイロット圧が入力されないときは中立位置(図2の中央位置)に保持される。この中立位置では、メインポンプ21とウインチモータ23との間が遮断されてセンターバイパスラインが開通することによりメインポンプ21からの作動油がセンターバイパスラインを通じてそのままタンク27に戻る。
【0030】
ウインチ制御弁24は、巻き取りパイロットポート24aに一定以上のパイロット圧が入力されるとそのパイロット圧の大きさに対応したストロークで前記中立位置から巻き取り駆動位置(図2の上側位置)にシフトする。この巻き取り駆動位置では、メインポンプ21からの作動油が前記ストロークに対応した流量でウインチモータ23の巻き取りポート23aに供給されるとともに、繰り出しポート23bから作動油が排出される。これにより、ウインチモータ23が巻き取り方向に回転する。排出された作動油はタンク27に戻る。後述する連結モードにおいて、ウインチモータ23が巻き取り方向に回転すると、ウインチドラム11がロープ巻き取り方向に回転する。
【0031】
ウインチ制御弁24は、繰り出しパイロットポート24bに一定以上のパイロット圧が入力されるとそのパイロット圧の大きさに対応したストロークで前記中立位置から繰り出し駆動位置(図2の下側位置)にシフトする。この繰り出し駆動位置では、メインポンプ21からの作動油が前記ストロークに対応した流量でウインチモータ23の繰り出しポート23bに供給されるとともに、巻き取りポート23aから作動油が排出される。これにより、ウインチモータ23が繰り出し方向に回転する。排出された作動油はタンク27に戻る。後述する連結モードにおいて、ウインチモータ23が繰り出し方向に回転すると、ウインチドラム11がロープ繰り出し方向に回転する。
【0032】
減速機28は、ウインチモータ23とウインチドラム11との間に介在し、回転速度を減速させながらウインチモータ23の駆動力をウインチドラム11に伝達する。減速機28は、例えば遊星歯車機構によって構成されている。減速機28のキャリア軸には、後述するブレーキ装置6におけるプレート6eが接続されている。
【0033】
図2に示すように、クレーン100は、コントロールポンプ22と、ブレーキ装置6(クラッチ装置)と、ブレーキ操作装置7と、モード切替弁1と、電磁比例弁2(電磁比例減圧弁)と、緊急ブレーキ切替弁3と、圧力センサ5と、リリーフ弁9と、コントローラ4と、をさらに備える。
【0034】
コントロールポンプ22は、例えばエンジンなどの前記駆動源により駆動されることにより作動油を吐出する。
【0035】
ブレーキ装置6は、ウインチドラム11に対するブレーキ力を発生させることが可能なように構成されている。具体的には、ブレーキ装置6は、コントロールポンプ22から吐出される作動油の圧力を利用してウインチドラム11に対するブレーキ力を発生させることが可能なように構成されている。
【0036】
ブレーキ装置6は、ウインチモータ23の駆動力がウインチドラム11に伝達されるクラッチオン状態と、ウインチドラム11がウインチモータ23から切り離されてウインチドラム11の自由回転を許容するクラッチオフ状態との間で切り替え動作可能に構成されている。ブレーキ装置6のモードは、ウインチモータ23の駆動力をウインチドラム11に伝えることが可能な連結モードと、ロープRの張力によりウインチドラム11からロープRを繰り出すことが可能なフリーモードと、の間で切り替わることが可能である。
【0037】
ブレーキ装置6は、ピストン6aと、バネ6dと、複数のプレート6eと、これらを収容するユニットケース6fと、を有する。複数のプレート6eは、例えば冷却油に浸された複数の摩擦板(複数のブレーキディスク)である。ユニットケース6f内は、ポジティブクラッチ室6bと、ネガティブクラッチ室6cと、複数のプレート6eが配置されたプレート室と、に区画されている。ピストン6aは、その軸方向にユニットケース6fに対して変位することが可能である。前記軸方向は、ピストン6aが複数のプレート6eに近づく方向又はピストン6aが複数のプレート6eから遠ざかる方向である。
【0038】
ピストン6aが前記軸方向に移動することにより、ブレーキ装置6の状態が、前記クラッチオン状態(ブレーキがかかる状態)と、前記クラッチオフ状態(ブレーキが解除される状態)と、の間で切り替わる。
【0039】
具体的には、ピストン6aは、複数のプレート6eに近づく方向に移動することにより、隣り合うプレート6e同士が接するように複数のプレート6eに押圧力を加える。その結果、ブレーキ装置6の状態がクラッチオン状態となる、すなわち、ブレーキ装置6のモードが連結モードになる。一方、ピストン6aが複数のプレート6eから遠ざかる方向に移動することにより、隣り合うプレート6eが離間する。その結果、ブレーキ装置6の状態がクラッチオフ状態となる。バネ6dは、ブレーキ装置6の状態がクラッチオン状態になる方向、すなわちピストン6aが複数のプレート6eに近づく方向にピストン6aを付勢する。
【0040】
本実施形態では、ポジティブクラッチ室6bの圧力とネガティブクラッチ室6cの圧力とが同じ場合には、バネ6dの付勢力によりブレーキ装置6の状態がクラッチオン状態になる。一方、ネガティブクラッチ室6cの圧力がポジティブクラッチ室6bの圧力よりも大きくなり、かつ、これらの差圧に起因して発生する力(すなわちピストン6aを複数のプレート6eから遠ざける方向の力)がバネ6dの付勢力よりも大きくなると、ブレーキ装置6の状態がクラッチオフ状態になる。
【0041】
図2に示すように、ブレーキ装置6は、隣り合うプレート6eの間に生じる摩擦に起因するプレート6eの焼き付きを防止するために、前記プレート室に冷却油が供給されるように構成されている。
【0042】
ブレーキ操作装置7は、いわゆる電気ペダル方式を採用する操作装置である。電気ペダル方式のブレーキ操作装置7は、ブレーキ操作ペダル7a(フットペダル)と、操作量センサ7bと、を有する。ブレーキ操作ペダル7aには、ウインチドラム11に対するブレーキ力を調節するためのブレーキ操作がオペレータによって与えられる。ブレーキ操作ペダル7aに対してオペレータによるブレーキ操作(ペダル操作)が与えられると、操作量センサ7bは、当該ペダル操作の操作量を検出し、検出した操作量に応じた検出信号であるブレーキ検出信号をコントローラ4に入力する。ブレーキ操作ペダル7aは、ブレーキ操作部材の一例である。
【0043】
モード切替弁1は、コントロールポンプ22とブレーキ装置6との間に介在する。モード切替弁1は、ブレーキ装置6のモードを連結モードとフリーモードとの間で切り替えるための切替弁である。言い換えると、モード切替弁1は、ブレーキ装置6のモードを連結モードとフリーモードの何れかに設定するための切替弁である。モード切替弁1は、コントローラ4から連結モード切替指令が入力されると、ブレーキ装置6のモードがフリーモードから連結モードに切り替わるように作動する。モード切替弁1は、コントローラ4からフリーモード切替指令が入力されると、ブレーキ装置6のモードが連結モードからフリーモードに切り替わるように作動する。
【0044】
具体的には、本実施形態では、図2に示すように、モード切替弁1は、コントロールポンプ22とブレーキ装置6が電磁比例弁2を介して接続される第1状態(図2の右側位置)と、コントロールポンプ22とブレーキ装置6が電磁比例弁2を迂回して(電磁比例弁2を介さずに)接続される第2状態(図2の左側位置)と、の間で切り替わる。モード切替弁1の状態が第1状態であるときには、コントロールポンプ22、電磁比例弁2、モード切替弁1、及びブレーキ装置6がこの順に接続される。モード切替弁1の状態が第2状態であるときには、コントロールポンプ22、モード切替弁1、及びブレーキ装置6がこの順に接続される。モード切替弁1の状態が第2状態であるときには、コントロールポンプ22とモード切替弁1との間に電磁比例弁2が介在しない。
【0045】
モード切替弁1は、コントローラ4からの連結モード切替指令又はフリーモード切替指令に応じて、第1状態と第2状態とを切り替えることが可能な電磁切替弁である。具体的には、本実施形態では、モード切替弁1のソレノイドが非励磁状態であるときには、モード切替弁1の状態は第2状態(図2の左側位置)となり、モード切替弁1のソレノイドが励磁状態であるときには、モード切替弁1の状態は第1状態(図2の右側位置)となる。
【0046】
電磁比例弁2は、モード切替弁1の状態が第1状態のとき、すなわち、ブレーキ装置6のモードがフリーモードであるときに、ウインチドラム11に対するブレーキ力を調節するための2次圧をコントローラ4からの指令に応じて出力する。電磁比例弁2から出力された2次圧はモード切替弁1を介してブレーキ装置6のポジティブクラッチ室6bに供給され、これにより、ウインチドラム11に対するブレーキ力が調節される。具体的には、後述するアンダーシュート抑制制御ではない通常の制御では、コントローラ4は、ブレーキ装置6のモードがフリーモードであるときに、ブレーキ操作(ペダル操作)の操作量に応じたブレーキ指令である対応圧力指令を電磁比例弁2に入力し、電磁比例弁2は、対応圧力指令に応じた2次圧、すなわち、ブレーキ操作の操作量に応じた操作量対応圧力を出力する。コントローラ4は、アンダーシュート抑制制御では前記通常の制御とは異なる指令(後述する設定圧力指令)を電磁比例弁2に出力する。アンダーシュート抑制制御の詳細については後述する。電磁比例弁2は、本開示におけるブレーキ力調節器の一例である。
【0047】
緊急ブレーキ切替弁3は、コントロールポンプ22からの作動油がネガティブクラッチ室6cに供給されることを許容する供給位置(図2の右側位置)と、ネガティブクラッチ室6c内の作動油がネガティブクラッチ室6cからタンク27に排出されることを許容する排出位置(図2の左側位置)との間で切り替わることが可能なように構成されている。本実施形態では、緊急ブレーキ切替弁3は、電磁弁(電磁切替弁)によって構成されている。本実施形態では、緊急ブレーキ切替弁3のソレノイドは通常時には図2に示すように励磁状態であり、緊急ブレーキ切替弁3のスプールは供給位置にセットされている。モード切替弁1の状態が第1状態(ソレノイドが励磁状態)のときに、例えば断線などの故障が発生して電磁比例弁2の2次圧が低下した場合、コントローラ4は、緊急ブレーキ切替弁3を非励磁の状態に切り替える。これにより、緊急ブレーキ切替弁3のスプールは、供給位置から排出位置に切り替わり、ネガティブクラッチ室6cはタンク27に接続される。その結果、ウインチドラム11に対するブレーキ力が発生した状態、すなわちウインチドラム11に対するブレーキがかかった状態となる。
【0048】
モード切替弁1の状態が第2状態(ソレノイドが非励磁状態)であるときには、ポジティブクラッチ室6b及びネガティブクラッチ室6cの両方にコントロールポンプ22の吐出圧であるポンプ圧に対応する圧力が供給されるので、バネ6dの付勢力によりブレーキ装置6の状態がクラッチオン状態になり、ブレーキ装置6のモードが連結モードになる。この連結モードでは、ウインチドラム11に対するブレーキ力が常に発生した状態、すなわちウインチドラム11に対するブレーキがかかった状態(クラッチオン状態)となる。このクラッチオン状態では、ウインチモータ23の駆動力がウインチドラム11に伝達される。従って、ウインチ操作レバー25aに与えられるオペレータによるウインチ操作(巻き取り操作又は繰り出し操作)に応じて、ウインチドラム11がウインチモータ23の駆動力により回転し、ロープRの巻き取り又は繰り出しが行われる。
【0049】
モード切替弁1の状態が第1状態(ソレノイドが励磁状態)であるときには、ブレーキ装置6のモードがフリーモードになる。このフリーモードでは、電磁比例弁2の2次圧がポジティブクラッチ室6bに印加される。このフリーモードでは、電磁比例弁2の2次圧に応じてポジティブクラッチ室6bの圧力とネガティブクラッチ室6cの圧力とのバランスが変化し、ピストン6aがその軸方向にユニットケース6fに対して変位する。アンダーシュート抑制制御ではない通常の制御では、ブレーキ操作の操作量に応じたブレーキ検出信号が操作量センサ7bからコントローラ4に入力されると、コントローラ4は、ブレーキ検出信号に応じたブレーキ指令を電磁比例弁2に出力し、電磁比例弁2は、コントローラ4から入力されるブレーキ指令に応じた2次圧を出力する。すなわち、電磁比例弁2は、ブレーキ操作の操作量に応じた2次圧を出力する。具体的には、電磁比例弁2は、ブレーキ操作の操作量が大きくなるほど大きな2次圧を出力する。電磁比例弁2の出力(2次圧)が大きくなるとウインチドラム11に対するブレーキ力も大きくなり、ウインチドラム11に対するブレーキがかかった状態となる。電磁比例弁2の出力(2次圧)が小さくなるとウインチドラム11に対するブレーキ力も小さくなり、ウインチドラム11に対するブレーキが解除された状態となる。従って、オペレータは、フリーモードにおいて、ブレーキ操作の操作量を調節することにより、ウインチドラム11に対してブレーキをかけた状態とブレーキを解除した状態とを切り替えることができる。フリーモードにおいてブレーキが解除された状態では、吊り荷106は自重によって自由落下することが可能になる。この自由落下の速度はブレーキ操作ペダル7aの操作量に応じて増減可能である。
【0050】
クレーン100は、モード切替スイッチ30をさらに備えていてもよい。モード切替スイッチ30は、オペレータが手動でブレーキ装置6のモードを連結モードとフリーモードとの間で切り替えるための入力器である。モード切替スイッチ30は、例えばクレーンのキャブ内に設けられることによりオペレータによって操作可能に構成されている。モード切替スイッチ30は、オペレータによるフリーモード操作を受けると、フリーモード信号をコントローラ4に入力し、コントローラ4は、モード切替弁1の状態が第1状態(図2の右側位置)になるようにモード切替弁1の動作を制御する。これにより、ブレーキ装置6のモードがフリーモードに切り替えられる。一方、モード切替スイッチ30は、オペレータによる連結モード操作を受けると、連結モード信号をコントローラ4に入力し、コントローラ4は、モード切替弁1の状態が第2状態(図2の左側位置)になるようにモード切替弁1の動作を制御する。これにより、ブレーキ装置6のモードが連結モードに切り替えられる。なお、後述するアンダーシュート抑制制御が行われる所定のケースでは、ブレーキ装置6のモードは、コントローラ4によって自動的に切り替えられる。
【0051】
圧力センサ5は、ウインチ操作装置25に巻き取り操作が与えられたか否かを検出する巻き取り操作検出器の一例である。本実施形態では、圧力センサ5は、リモコン弁25bの2次圧を検出する圧力センサである。具体的には、圧力センサ5は、リモコン弁25bとウインチ制御弁24の巻き取りパイロットポート24aとをつなぐパイロットライン41の圧力を検出する。圧力センサ5は、検出した圧力に応じた検出信号である圧力検出信号をコントローラ4に入力し、コントローラ4は、この圧力検出信号に基づいて、ウインチ操作装置25に巻き取り操作が与えられたか否かを判定することができる。
【0052】
リリーフ弁9は、コントロールポンプ22に接続された吐出ライン(コントロールポンプ22から作動油が吐出される吐出ライン)の圧力が所定の値を超えると、作動油の少なくとも一部をタンク27に流すように開弁する。
【0053】
コントローラ4は、CPU、MPUなどの演算処理装置と、メモリと、を含むコンピュータを備える。
【0054】
クレーン100は、図2に示す本実施形態に係るウインチ制御装置10を備える。このウインチ制御装置10は、前記ウインチドラム11と、前記ウインチモータ23と、前記ウインチ操作装置25と、前記ブレーキ操作装置7と、前記ブレーキ装置6と、前記モード切替弁1と、前記電磁比例弁2と、前記メインポンプ21と、前記コントロールポンプ22と、前記圧力センサ5と、前記コントローラ4と、を備える。コントローラ4のコンピュータは、メモリに予め記憶されたプログラムを実行することにより、下記の課題を解決するために、後述するアンダーシュート抑制制御を行う。
【0055】
本実施形態に係るウインチ制御装置10が解決しようとする課題について、図11を参照しながら説明する。ウインチ制御装置10の解決課題は、ブレーキ操作装置7がいわゆる電気ペダル方式を採用する場合において、コントローラ4がブレーキ装置6のモードを連結モードからフリーモードに自動的に戻したときに、ウインチドラム11に対する実際のブレーキ力がブレーキ操作の操作量に応じたブレーキ力よりも瞬間的に小さくなることである。具体的には以下の通りである。
【0056】
電気ペダル方式では、ブレーキ操作装置7の操作量センサ7bは、検出した操作量に応じた検出信号をコントローラ4に入力し、コントローラ4は、入力された検出信号に応じたブレーキ指令を電磁比例弁2に入力し、電磁比例弁2は、ウインチドラム11の回転に対するブレーキ力をブレーキ指令に応じた大きさに調節するための2次圧(パイロット圧)を出力する。これにより、ウインチドラム11の回転に対するブレーキ力がブレーキ操作の操作量に応じた大きさとなる。
【0057】
このような電気ペダル方式のブレーキ操作装置7を備えたウインチ制御装置10では、次のようなケースにおいてブレーキ装置6のモードの切り替えがコントローラ4によって自動的に行われる。図11のグラフにおいて、時間t1までの時間帯では、ブレーキ装置6のモードがフリーモードに設定されている。このフリーモードでは、コントローラ4は、電磁比例弁2の2次圧を、ブレーキ操作ペダル7aに与えられるブレーキ操作の操作量(ペダル操作量)に対応する操作量対応圧力Pv0に調節するためのブレーキ指令である対応圧力指令を電磁比例弁2に入力する。これにより、図11のグラフにおける時間t1までの時間帯では、電磁比例弁2は、対応圧力指令に応じた2次圧、すなわち、ブレーキ操作の操作量に応じた操作量対応圧力Pv0を出力し、その結果、ブレーキ装置6のポジティブクラッチ室6bの圧力は、図11において実線で示されるように操作量対応圧力Pv0に調節される。
【0058】
そして、ブレーキ装置6のモードがフリーモードに設定されているときに、図11の時間t1の時点でオペレータがウインチ操作レバー25aに対して巻き取り操作を与えた場合、コントローラ4は、ブレーキ装置6のモードをフリーモードから連結モードに自動的に切り替える。これにより、コントロールポンプ22は、電磁比例弁2を介さずに、ブレーキ装置6のポジティブクラッチ室6bに接続されるので、図11の時間t1から時間t2の時間帯では、ポジティブクラッチ室6bの圧力は、図11において実線で示されるように、コントロールポンプ22の2次圧であるポンプ圧Pcに調節される。
【0059】
なお、図11のグラフにおける時間t1から時間t2の時間帯、すなわち、オペレータがウインチ操作レバー25aに巻き取り操作を与えており、コントローラ4によってブレーキ装置6のモードが連結モードに切り替えられている間、オペレータは、図11のグラフにおいて破線で示されるように、ブレーキ操作ペダル7aにもブレーキ操作を与えた状態のまま待機している。したがって、時間t1から時間t2の時間帯では、コントローラ4は、電磁比例弁2の2次圧を、ブレーキ操作ペダル7aに与えられるブレーキ操作の操作量に対応する操作量対応圧力Pv0に調節するためのブレーキ指令である対応圧力指令を電磁比例弁2に入力している。その理由は、オペレータが巻き取り操作を終了してウインチ操作レバー25aを中立位置に戻すことによりコントローラ4がブレーキ装置6のモードを連結モードからフリーモードに自動的に戻したときに、ブレーキ操作によるブレーキ力がウインチドラム11に対して直ちに与えられ、これにより、オペレータの意図しないフック105(吊り荷106)の自由落下を回避するためである。
【0060】
次に、巻き取り操作が終了し、図11の時間t2の時点でオペレータがウインチ操作レバー25aを中立位置に戻した場合、コントローラ4は、ブレーキ装置6のモードを連結モードからフリーモードに自動的に戻す。
【0061】
しかしながら、ブレーキ操作装置7がいわゆる電気ペダル方式を採用する場合には、時間t1から時間t2の時間帯においてオペレータがブレーキ操作ペダル7aにブレーキ操作を与えて待機していたとしても、時間t2の時点でコントローラ4がブレーキ装置6のモードを連結モードからフリーモードに自動的に戻したときに、図11に示されるように、ブレーキ装置6のポジティブクラッチ室6bの圧力が瞬間的に操作量対応圧力Pv0より小さくなるような状況であるアンダーシュートが発生する。その理由は、次の通りである。
【0062】
電磁比例弁2は、ソレノイドコイルの電磁力と、バネ力及びコントロール回路圧(電磁比例弁2の2次圧)と、が釣り合うことで適正な2次圧を保持することができる。しかしながら、時間t2の時点でブレーキ装置6のモードが連結モードからフリーモードに切り替わった時点において、過大なコントロール回路圧(電磁比例弁2の2次圧)が生じるため、ソレノイドコイルの電磁力と、バネ力及びコントロール回路圧とが釣り合わず、電磁比例弁2のスプールが瞬間的に過度に移動し、電磁比例弁2におけるタンク側のポートが過度に押し開けられる。その結果、上記のようなアンダーシュートが発生する。このアンダーシュートが発生すると、ウインチドラム11に対する実際のブレーキ力がブレーキ操作の操作量に応じたブレーキ力よりも瞬間的に小さくなる。本実施形態に係るウインチ制御装置10が解決しようとする課題は上記の通りである。
【0063】
なお、ブレーキ操作装置が、電気ペダル方式ではなく、次のようにペダルと比例弁とが機械的にリンクする構造を有する機械的リンク方式のブレーキ操作装置である場合には、上記のようなアンダーシュートの課題は生じない。図示は省略するが、この操作装置は、ブレーキ操作ペダルと、リンク機構などの機構を介してブレーキ操作ペダルに接続された比例弁と、を備える。この機械的リンク方式の場合、比例弁のスプールを押す力は、リンク機構を介して比例弁に伝達されるオペレータによる踏み込み力を含むので、スプールの過度な移動が生じにくい。
【0064】
本実施形態に係るウインチ制御装置10は、上記の課題を解決するために、次のような第1制御、第2制御及び第3制御を含むアンダーシュート抑制制御を行う。まず、コントローラ4は、フリーモードにおいてウインチ操作レバー25aに巻き取り操作が与えられた場合、モード切替弁1を制御してブレーキ装置6のモードをフリーモードから連結モードに切り替える第1制御を行う。そして、コントローラ4は、第1制御の後にウインチ操作レバー25aが中立位置に戻された場合、電磁比例弁2の2次圧をブレーキ操作の操作量に対応する操作量対応圧力Pv0よりも大きな値である設定圧力Pv1に調節するための設定圧力指令を電磁比例弁2に入力した状態でモード切替弁1を制御してブレーキ装置6のモードを連結モードからフリーモードに切り替える第2制御を行う。そして、コントローラ4は、第2制御の後に、電磁比例弁2の2次圧を操作量対応圧力Pv0に調節するための対応圧力指令を電磁比例弁2に入力する第3制御を行う。
【0065】
このウインチ制御装置10では、第1制御の後にウインチ操作レバー25aが中立位置に戻された場合、コントローラ4は、設定圧力指令を電磁比例弁2に入力した状態でブレーキ装置6のモードを連結モードからフリーモードに切り替えるので、連結モードからフリーモードへの切り替え時に、上記のようなアンダーシュートの発生、すなわち、ブレーキ装置6のポジティブクラッチ室6bの圧力が瞬間的に操作量対応圧力Pv0より小さくなるような状況の発生、を抑制できる。これにより、ウインチドラム11に対する実際のブレーキ力がブレーキ操作の操作量に応じたブレーキ力(操作量対応ブレーキ力)よりも瞬間的に小さくなることを抑制できる。
【0066】
アンダーシュートの発生を抑制できる主な理由は次の通りである。すなわち、本実施形態では、対応圧力指令ではなく設定圧力指令が電磁比例弁2に入力された状態でブレーキ装置6のモードが連結モードからフリーモードに切り替えられる(第2制御)。ブレーキ装置6のモードが連結モードからフリーモードに切り替わった時点において、図11を参照して説明したような過大なコントロール回路圧(電磁比例弁2の2次圧)が生じたとしても、その時点では電磁比例弁2には対応圧力指令ではなく設定圧力指令が入力されているので、その時点で瞬間的に発生するアンダーシュートは、設定圧力Pv1に対するアンダーシュートであり、操作量対応圧力Pv0に対するアンダーシュートではない。従って、その時点において、ブレーキ装置6のポジティブクラッチ室6bの圧力が瞬間的に操作量対応圧力Pv0より小さくなるような状況は生じにくくなる。そして、コントローラ4は、第2制御の後に、電磁比例弁2の2次圧を設定圧力Pv1から操作量対応圧力Pv0に下げるための対応圧力指令を電磁比例弁2に入力する(第3制御)。この第3制御において、コントローラ4は、電磁比例弁2の2次圧を設定圧力Pv1から操作量対応圧力Pv0に下げるときの圧力変化の勾配を調節することが可能である。従って、電磁比例弁2のスプールが瞬間的に過度に移動することが抑制されるように前記圧力変化の勾配が調節された対応圧力指令をコントローラ4が電磁比例弁2に入力することで、ソレノイドコイルの電磁力と、バネ力及びコントロール回路圧と、の釣り合いが保たれやすくなる。その結果、ブレーキ装置6のポジティブクラッチ室6bの圧力が瞬間的に操作量対応圧力Pv0より小さくなるような状況の発生が抑制される。
【0067】
次に、図3及び図4を参照しながら、本実施形態に係るウインチ制御装置10の動作について説明する。図3は、コントローラ4が行うアンダーシュート抑制制御を示すグラフであり、図4は、コントローラ4による演算処理の一例を示すフローチャートである。
【0068】
図3に示す時間t1よりも前の時間帯では、例えば、ブレーキ装置6のモードがフリーモードに設定されている(図4のステップS11)。フリーモードの設定は、例えば、モード切替スイッチ30に対するオペレータのフリーモード操作により行われてもよく、所定の条件に基づいてコントローラ4が自動で行ってもよい。
【0069】
図3のグラフの時間t1までの時間帯におけるフリーモードでは、コントローラ4は、電磁比例弁2の2次圧を、ブレーキ操作ペダル7aに与えられるブレーキ操作の操作量(ペダル操作量)に対応する操作量対応圧力Pv0に調節するためのブレーキ指令である対応圧力指令を電磁比例弁2に入力する。言い換えると、コントローラ4は、電磁比例弁2の2次圧の目標である2次圧目標値を、ペダル操作量に対応する操作量対応圧力Pv0に設定する。これにより、時間t1までの時間帯では、電磁比例弁2は、対応圧力指令に応じた2次圧、すなわち、ブレーキ操作の操作量に応じた操作量対応圧力Pv0を出力する。その結果、ブレーキ装置6のポジティブクラッチ室6bの圧力は、図3において実線で示されるように操作量対応圧力Pv0に調節される。
【0070】
次に、ブレーキ装置6のモードがフリーモードに設定されているときに、コントローラ4は、ウインチ操作装置25のウインチ操作レバー25aに巻き取り操作が与えられたか否かを判定する(図4のステップS12)。具体的には、コントローラ4は、圧力センサ5から入力される圧力検出信号に基づいて、ウインチ操作レバー25aに巻き取り操作が与えられたか否かを判定する。
【0071】
ウインチ操作レバー25aに巻き取り操作が与えられた場合(図4のステップS12においてYES)、コントローラ4は、モード切替弁1を制御してブレーキ装置6のモードをフリーモードから連結モードに自動的に切り替える(図4のステップS13、第1制御)。これにより、コントロールポンプ22は、電磁比例弁2を介さずに、ブレーキ装置6のポジティブクラッチ室6bに接続されるので、図3の時間t1から時間t2の時間帯では、ポジティブクラッチ室6bの圧力は、図3において実線で示されるように、コントロールポンプ22の2次圧であるポンプ圧Pcに調節される。
【0072】
そして、コントローラ4は、第1制御におけるフリーモードから連結モードへのブレーキ装置6のモードの切り替えと同時に又はブレーキ装置6のモードの切り替えの直後に、電磁比例弁2に設定圧力指令を入力する(図4のステップS14)。設定圧力指令は、電磁比例弁2の2次圧をブレーキ操作の操作量(ペダル操作量)に対応する操作量対応圧力Pv0よりも大きな値である設定圧力Pv1に調節するための指令である。すなわち、コントローラ4は、ステップS14において、電磁比例弁2の2次圧の目標である2次圧目標値を、操作量対応圧力Pv0よりも大きな設定圧力Pv1に変更する。このように本実施形態に係るアンダーシュート抑制制御では、第1制御の完了と同時又は第1制御の完了直後に、コントローラ4は、図11に示すように対応圧力指令を電磁比例弁2に入力するのではなく、図3に示すように設定圧力指令を電磁比例弁2に入力する。
【0073】
本実施形態では、第1制御の完了と同時又は第1制御の完了直後に設定圧力指令が電磁比例弁2(ブレーキ力調節器)に入力されるので、後述する第2制御が行われる前の十分な時間的余裕がある段階で、電磁比例弁2は、設定圧力指令が入力された状態になり、この状態で待機することができる。これにより、後述する第2制御における連結モードからフリーモードへの切り替え時に実際のブレーキ力が操作量対応ブレーキ力よりも小さくなることがより確実に抑制される。
【0074】
また、本実施形態では、設定圧力Pv1は、電磁比例弁2の2次圧の最大値(最大2次圧)である。最大2次圧は、電磁比例弁2の開度が最大のときの2次圧であり、本実施形態では、図3の時間t1から時間t2の時間帯において破線で示されるように、コントロールポンプ22の2次圧であるポンプ圧Pcとほぼ同じ圧力である。
【0075】
図3のグラフにおける時間t1から時間t2の時間帯、すなわち、オペレータがウインチ操作レバー25aに巻き取り操作を与えており、コントローラ4によってブレーキ装置6のモードが連結モードに切り替えられている間、オペレータは、ブレーキ操作ペダル7aにもブレーキ操作を与えた状態のまま待機している。時間t1から時間t2の時間帯におけるブレーキ操作の操作量(ペダル操作量)は、時間t1までの時間帯において破線で示される操作量対応圧力Pv0に対応するペダル操作量と同じである。
【0076】
次に、コントローラ4は、圧力センサ5から入力される圧力検出信号に基づいて、ウインチ操作レバー25aが中立位置に戻されたか否かを判定する(図4のステップS15)。ウインチ操作レバー25aが中立位置に戻されずにウインチ操作レバー25aに巻き取り操作が与えられている場合には(ステップS15においてNO)、コントローラ4はステップS13-S15の処理を繰り返す。
【0077】
一方、ウインチ操作レバー25aが、例えば時間t2の時点において中立位置に戻された場合(ステップS15においてYES)、コントローラ4は、モード切替弁1を制御してブレーキ装置6のモードを連結モードからフリーモードに自動的に切り替える(図4のステップS16、第2制御)。すなわち、本実施形態では、第1制御の後にウインチ操作レバー25aが中立位置に戻された場合、電磁比例弁2の2次圧を操作量対応圧力Pv0よりも大きな設定圧力Pv1に調節するための設定圧力指令が電磁比例弁2に入力された状態で、ブレーキ装置6のモードが連結モードからフリーモードに切り替えられる。図3の時間t2においてブレーキ装置6のモードがフリーモードに切り替えられると、コントロールポンプ22は、電磁比例弁2を介してブレーキ装置6のポジティブクラッチ室6bに接続される。このとき、電磁比例弁2は、設定圧力指令が入力された状態で待機しているので、電磁比例弁2におけるタンク側のポートが過度に押し開けられることが抑制される。その結果、上記のようなアンダーシュートの発生が抑制される。
【0078】
次に、コントローラ4は、第2制御の後に、電磁比例弁2の2次圧を操作量対応圧力Pv0に調節するための対応圧力指令を電磁比例弁2に入力する(ステップS17、第3制御)。すなわち、コントローラ4は、ステップS17において、電磁比例弁2の2次圧の目標である2次圧目標値を、設定圧力Pv1から操作量対応圧力Pv0に変更する。
【0079】
本実施形態では、対応圧力指令は、電磁比例弁2の2次圧が、図3に示すように傾きa1の減少度合いで設定圧力Pv1から操作量対応圧力Pv0に所定の時間をかけて減少するような指令である。このように電磁比例弁2の2次圧が所定の時間をかけて減少することで、ソレノイドコイルの電磁力と、バネ力及びコントロール回路圧との釣り合いが保たれやすくなる。その結果、電磁比例弁2のスプールが過度に移動すること、すなわち電磁比例弁2におけるタンク側のポートが過度に押し開けられることが抑制され、上記のようなアンダーシュートの発生がさらに抑制される。これにより、連結モードからフリーモードへの切り替え時に実際のブレーキ力が操作量対応ブレーキ力よりも小さくなることがより効果的に抑制される。
【0080】
この対応圧力指令は、図5の変形例1のように、前記所定の時間が傾きa1に比べてより長くなるような傾きa2の減少度合いで設定圧力Pv1から操作量対応圧力Pv0に所定の時間をかけて減少するような指令であってもよい。これにより、連結モードからフリーモードへの切り替え時に実際のブレーキ力が操作量対応ブレーキ力よりも小さくなることがさらに効果的に抑制される。また、図示は省略するが、対応圧力指令は、電磁比例弁2の2次圧が設定圧力Pv1から操作量対応圧力Pv0に段階的に減少するような指令であってもよい。
【0081】
図6は、コントローラ4が行うアンダーシュート抑制制御の変形例2を示すグラフである。図6に示す変形例2では、設定圧力Pv1は、操作量対応圧力Pv0と電磁比例弁2の2次圧の最大値との間の中間値に設定されている。アンダーシュートの発生しやすさは、電磁比例弁2の特性にも左右される。従って、アンダーシュートが発生しやすい電磁比例弁2の場合には、図3に示すように設定圧力Pv1と操作量対応圧力Pv0との差を大きくすることが好ましい。一方、アンダーシュートが発生しにくい電磁比例弁2の場合には、図5に示すように設定圧力Pv1と操作量対応圧力Pv0との差を比較的小さくしてもよい。
【0082】
図7は、コントローラ4が行うアンダーシュート抑制制御の変形例3を示すグラフであり、図8は、変形例3に係るコントローラ4による演算処理の一例を示すフローチャートである。
【0083】
この変形例3では、図7に示すように、コントローラ4は、ブレーキ装置6のモードを連結モードからフリーモードに切り替えるためのフリーモード切替指令を第2制御においてモード切替弁1に入力した時点(図7の時間t2)から予め設定された待機時間Δtが経過した後に、第3制御において対応圧力指令を電磁比例弁2に入力する。
【0084】
この変形例3では、フリーモード切替指令がモード切替弁1に入力された時点(時間t2)から待機時間Δtが経過した後に対応圧力指令が電磁比例弁2に入力されるので、フリーモード切替指令に対するモード切替弁1の応答性があまりよくない場合、すなわち、フリーモード切替指令がモード切替弁1に入力された時点(時間t2)からブレーキ装置6のモードが実際にフリーモードに切り替わるまでに多少の時間を要する場合であっても、ブレーキ装置6のモードが実際にフリーモードに切り替わる前に第3制御が行われることを回避できる。これにより、フリーモード切替指令に対するモード切替弁1の応答性があまりよくない場合であっても、連結モードからフリーモードへの切り替え時に実際のブレーキ力が操作量対応ブレーキ力よりも小さくなることが抑制される。
【0085】
この変形例3における図8のフローチャートは、ステップS21の処理を含む点で図4に示すフローチャートと異なる。図8のフローチャートにおけるステップS11-S17は、図4のフローチャートにおけるステップS11-S17と同じである。この変形例3では、ウインチ操作レバー25aが時間t2の時点において中立位置に戻され(図8のステップS15においてYES)、モード切替弁1にフリーモード切替指令が入力されると(図8のステップS16)、コントローラ4は、フリーモード切替指令をモード切替弁1に入力した時点(図7の時間t2)から予め設定された待機時間Δtが経過したか否かを判定する(図8のステップS21)。そして、時間t2から待機時間Δtが経過した場合(ステップS21においてYES)、コントローラ4は、電磁比例弁2の2次圧を操作量対応圧力Pv0に調節するための対応圧力指令を電磁比例弁2に入力する(ステップS17、第3制御)。
【0086】
変形例3では、対応圧力指令は、電磁比例弁2の2次圧が、図7に示すように傾きa1の減少度合いで設定圧力Pv1から操作量対応圧力Pv0に所定の時間をかけて減少するような指令である。この対応圧力指令は、図9の変形例4のように、前記所定の時間が傾きa1に比べてより長くなるような傾きa2の減少度合いで設定圧力Pv1から操作量対応圧力Pv0に所定の時間をかけて減少するような指令であってもよい。これにより、連結モードからフリーモードへの切り替え時に実際のブレーキ力が操作量対応ブレーキ力よりも小さくなることがさらに効果的に抑制される。また、図示は省略するが、対応圧力指令は、電磁比例弁2の2次圧が設定圧力Pv1から操作量対応圧力Pv0に段階的に減少するような指令であってもよい。
【0087】
図10は、コントローラ4が行うアンダーシュート抑制制御の変形例5を示すグラフである。図10に示す変形例5では、設定圧力Pv1は、操作量対応圧力Pv0と電磁比例弁2の2次圧の最大値との間の中間値に設定されている。また、この変形例5では、図10に示すように、コントローラ4は、ブレーキ装置6のモードを連結モードからフリーモードに切り替えるためのフリーモード切替指令を第2制御においてモード切替弁1に入力した時点(図10の時間t2)から予め設定された待機時間Δtが経過した後に、時間t3において対応圧力指令を電磁比例弁2に入力する(第3制御)。
【0088】
[変形例]
本開示は、以上説明した実施形態に限定されない。本開示は、例えば次のような形態を含む。
【0089】
(A)ブレーキ力調節器について
前記実施形態では、ブレーキ力調節器が電磁比例弁2により構成されるが、本開示におけるブレーキ力調節器は、フリーモードにおいてコントローラ4の指令に基づいてブレーキ装置が発生させるブレーキ力を調節するための2次圧を出力することができるものであればよく、電磁比例弁2に限られない。
【0090】
(B)モード切替弁について
前記実施形態では、モード切替弁1は、ソレノイドが非励磁状態であるときにブレーキ装置6のモードを連結モードに設定し、ソレノイドが励磁状態であるときにブレーキ装置6のモードをフリーモードに設定するように構成されるが、ソレノイドが励磁状態であるときにブレーキ装置6のモードを連結モードに設定し、ソレノイドが非励磁状態であるときにブレーキ装置6のモードをフリーモードに設定するように構成されていてもよい。
【0091】
(C)設定圧力指令を入力するタイミングについて
前記実施形態では、例えば図3及び図4に示すように、コントローラ4は、時間t1におけるフリーモードから連結モードへのブレーキ装置6のモードの切り替えと同時に又はブレーキ装置6のモードの切り替えの直後に、電磁比例弁2に設定圧力指令を入力するが(図4のステップS14)、電磁比例弁2に設定圧力指令を入力するタイミングは、必ずしも連結モードへの切り替えと同時又は連結モードへの切り替えの直後でなくてもよく、例えば、ウインチ操作レバー25aが中立位置に戻された後で、かつ、コントローラ4がブレーキ装置6のモードを連結モードからフリーモードに戻す前のタイミングであってもよい。この場合であっても、コントローラ4は、第2制御において、設定圧力指令を電磁比例弁2に入力した状態でモード切替弁1を制御してブレーキ装置6のモードを連結モードからフリーモードに切り替えることができる。
【0092】
(D)ウインチ操作装置について
前記実施形態では、ウインチ操作装置25は、ウインチ操作レバー25aとリモコン弁25bとを有するが、いわゆる電気レバー方式のウインチ操作装置であってもよい。電気レバー方式のウインチ操作装置は、オペレータのウインチ操作が与えられるウインチ操作レバー25aと、ウインチ操作センサと、を有する。ウインチ操作センサは、ウインチ操作レバー25aに与えられたウインチ操作が巻き取り操作及び繰り出し操作の何れであるかを検出するとともに当該ウインチ操作の操作量を検出する。ウインチ操作装置が電気レバー方式である場合、クレーン100は、図略の一対の電磁比例弁をさらに備える。一対の電磁比例弁は、巻き取り操作に対応する電磁比例弁と、繰り出し操作に対応する電磁比例弁と、を含む。ウインチ操作センサは、検出結果に応じた検出信号をコントローラに入力し、コントローラは、入力された検出信号に応じた制御指令を、検出結果に対応する電磁比例弁に入力する。当該電磁比例弁は、ウインチ制御弁24の巻き取りパイロットポート24a又は繰り出しパイロットポート24bに対して制御指令に応じた2次圧(パイロット圧)を出力する。これにより、ウインチ制御弁24は、ウインチ操作(巻き取り操作又は繰り出し操作)に応じた方向に当該ウインチ操作の操作量に応じた流量の作動油がウインチモータ23に供給されることを許容するように開弁する。
【0093】
なお、ウインチ操作装置が電気レバー方式である場合、前記巻き取り操作検出器はウインチ操作センサにより構成される。すなわち、ウインチ操作センサは、検出結果に応じた検出信号をコントローラ4に入力し、コントローラ4は、この検出信号に基づいて、ウインチ操作装置25に巻き取り操作が与えられたか否かを判定することができる。
【0094】
(E)第3制御における対応圧力指令について
前記実施形態では、前記対応圧力指令は、電磁比例弁2の2次圧が前記設定圧力から前記操作量対応圧力に所定の時間をかけて減少するような指令であるが、これに限られない。コントローラ4は、第3制御において、電磁比例弁2に対する指令を、設定圧力指令から対応圧力指令に瞬時に変更してもよい。
【符号の説明】
【0095】
1 :モード切替弁
2 :電磁比例弁(ブレーキ力調節器の一例)
4 :コントローラ
6 :ブレーキ装置
7 :ブレーキ操作装置
7a :ブレーキ操作ペダル(ブレーキ操作部材の一例)
7b :操作量センサ
10 :ウインチ制御装置
11 :ウインチドラム
21 :メインポンプ
22 :コントロールポンプ
23 :ウインチモータ
24 :ウインチ制御弁
25 :ウインチ操作装置
25a :ウインチ操作レバー(ウインチ操作部材の一例)
25b :リモコン弁
100 :クレーン
103 :上部旋回体(機体の一例)
104 :ブーム(作業装置の一例)
R :ロープ
【要約】
【課題】ブレーキ装置のモードがフリーモードに自動的に戻されたときに、ウインチドラムに対するブレーキ力がブレーキ操作の操作量に応じたブレーキ力よりも瞬間的に小さくなることを抑制できるウインチ制御装置及びこれを備えたクレーンを提供する。
【解決手段】ウインチ制御装置10のコントローラ4は、フリーモードにおいて巻き取り操作が与えられた場合、ブレーキ装置6のモードをフリーモードから連結モードに切り替える第1制御と、ウインチ操作部材25aが中立位置に戻された場合、ブレーキ力調節器2の2次圧をブレーキ操作の操作量に対応する操作量対応圧力Pv0よりも大きな設定圧力Pv1に調節するための指令をブレーキ力調節器2に入力した状態でモードを連結モードからフリーモードに切り替える第2制御と、ブレーキ力調節器2の2次圧を操作量対応圧力Pv0に調節するための指令をブレーキ力調節器2に入力する第3制御と、を行う。
【選択図】図3
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11