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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-04
(45)【発行日】2023-12-12
(54)【発明の名称】フレーム転送の制御方法
(51)【国際特許分類】
   H04L 47/80 20220101AFI20231205BHJP
   H04L 47/765 20220101ALI20231205BHJP
【FI】
H04L47/80
H04L47/765
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022148027
(22)【出願日】2022-09-16
(62)【分割の表示】P 2019032233の分割
【原出願日】2019-02-26
(65)【公開番号】P2022177171
(43)【公開日】2022-11-30
【審査請求日】2022-09-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000006105
【氏名又は名称】株式会社明電舎
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100104938
【弁理士】
【氏名又は名称】鵜澤 英久
(74)【代理人】
【識別番号】100210240
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 友幸
(72)【発明者】
【氏名】川岸 正幸
【審査官】宮島 郁美
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-137076(JP,A)
【文献】特開2016-082259(JP,A)
【文献】特開2006-174375(JP,A)
【文献】特開2012-253434(JP,A)
【文献】特開2013-198077(JP,A)
【文献】特開平11-168491(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0155245(US,A1)
【文献】欧州特許出願公開第02472795(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L12/00-12/66,13/00,41/00-49/9057,61/00-65/80,69/00-69/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
端末間のフレーム送受信をスイッチングハブにより中継するときのフレーム転送の制御方法であって、
送信元の前記端末は、到達時間特性に強く影響を受ける時間過敏フレームを送信先の前記端末に送信する際、事前に前記スイッチングハブを経由してBPDU(Bridge Protocol Data Unit)のフレームをBPDUシグナルとして送信するステップと、
前記スイッチングハブは、前記BPDUシグナルの受信後に前記時間過敏フレームの転送ポートを前記BPDU以外のブロッキング状態にするステップと、
前記時間過敏フレームにBPDUの情報を追加したBPDUカプセル化フレームについては前記転送ポートを通過させるステップと、
送信先の前記端末は、前記BPDUシグナルの受信後に送信元の前記端末に返信するステップと、
を有することを特徴とするフレーム転送の制御方法。
【請求項2】
前記BPDUカプセル化フレームが、前記転送ポートを通過した際に前記ブロッキング状態が解除される
ことを特徴とする請求項1記載のフレーム転送の制御方法。
【請求項3】
送信元の前記端末は、前記BPDUシグナルに発呼ビットと該端末内での一意の識別番号とをセットして送信する一方、
送信先の前記端末は、前記BPDUシグナルに着呼ビットをセットして返信することを特徴とする請求項1記載のフレーム転送の制御方法。
【請求項4】
前記BPDUシグナルには、前記転送ポートを通過させる前記BPDUカプセル化フレームの個数がパスカウントとして含まれる一方、
前記各スイッチングハブは、前記BPDUシグナルの受信後に前記パスカウントの情報をシグナル情報保存部に保存し、
前記BPDUカプセル化フレームの通過毎に前記パスカウントの値から「1」を減算し、
前記パスカウントの値が「0」になれば、前記ブロッキング状態を解除することを特徴とする請求項2記載のフレーム転送の制御方法。
【請求項5】
前記BPDUシグナルには、前記ブロッキング状態の有効時間が含まれている一方、
前記スイッチングハブは、前記BPDUシグナルの受信後に前記有効時間をシグナル情報保存部に保存し、
前記有効時間の経過後に前記転送ポートのブロッキング状態を解除することを特徴とする請求項1~3のいずれか記載のフレーム転送の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレーム転送の遅延を制御する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
イーサネット(登録商標)などのベストエフォート型のアーキテクチャーは、帯域コストが低い反面、到達信頼性や転送時間特性(遅延の大小や変動)を保証する仕組みが弱い。
【0003】
到達信頼性は従来からの伝統的課題であった。近年ではイーサネット経由での時刻同期が試みられ、転送時間特性の改善が重要となった。イーサネットなどで転送時間特性を向上させる既存の手法としては、(1)フロー制御、(2)優先度添付「IEEE P802.1p」の方式などが挙げられる。
【0004】
ところが、フロー制御については到達信頼性を向上できる反面、フレームの転送が待たされることにより転送時間特性に大きな負の影響与え、解決策とはならない。
【0005】
また、優先度添付の方式によれば、到達時間特性に強く影響を受けるフレーム(以下、時間過敏フレームとする。)に高優先度を付加し、他の一般のトラフィックよりも優先転送させることにより、出力時の待ち時間の短縮および変動抑制がある程度は期待できる。
【0006】
もっとも、イーサネットでは、図1に示すように、出力中のフレームを追い越すことはできない。すなわち、時間過敏フレームが到着したときに他の一般フレームが出力中であれば、時間過敏フレームは出力中の一般フレームを追い越すことができず、その出力が終了するまで待機させられる。
【0007】
特にイーサネットではフレーム長が「64~1518」オクテットの間で不定なため、出力の待ち時間も変動し、これにより時刻同期などに悪影響を及ぼすおそれがある。このような問題を解決するため、特許文献1記載の割り込み制御方法などが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2017-169148
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1の割り込み制御方法は、フレーム送信中の場合にエスケープ信号を発行することで現在のフレーム送信を中断し、時間過敏フレームなどの高優先度フレームの送信を割り込ませている。
【0010】
この制御方法によれば、転送時間特性は大きく改善するものの、既存のイーサネットとの互換性が失われてしまう。また、専用のハードウェアが必要となるため、高コストとなるおそれがある。
【0011】
本発明は、このような従来の問題を解決するためになされ、時間過敏フレームの優先転送を既存設備で可能にし、転送遅延の変動を低コストで抑制することを解決課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(1)本発明の一態様は、端末間のフレーム送受信を中継装置により中継するときのフレーム転送の制御方式であって、
送信元の前記端末は、到達時間特性に強く影響を受ける時間過敏フレームを送信先の前記端末に送信する際、
事前に前記中継装置を経由してBPDU(Bridge Protocol Data Unit)のフレームをBPDUシグナルとして送信し、
前記中継装置は、前記BPDUシグナルの受信後に前記時過敏フレームの転送ポートを前記BPDU以外のブロッキング状態にする一方、
前記時間過敏フレームにBPDUの情報を追加したBPDUカプセル化フレームについては前記転送ポートを通過させることを特徴としている。
【0013】
(2)本発明の他の態様は、端末間のフレーム送受信を中継装置により中継するときのフレーム転送の制御方法であって、
送信元の前記端末は、到達時間特性に強く影響を受ける時間過敏フレームを送信先の前記端末に送信する際、事前に前記中継装置を経由してBPDU(Bridge Protocol Data Unit)のフレームをBPDUシグナルとして送信するステップ
と、
前記中継装置は、前記BPDUシグナルの受信後に前記時過敏フレームの転送ポートを前記BPDU以外のブロッキング状態にするステップと、
前記時間過敏フレームにBPDUの情報を追加したBPDUカプセル化フレームについては前記転送ポートを通過させるステップと、を有することを特徴としている。
【0014】
(3)本発明のさらに他の態様は、端末間において到達時間特性に強く影響を受ける時間過敏フレームを中継する装置であって、
前記時間過敏フレームに先だってBPDU(Bridge Protocol Data Unit)のフレームで構成されたBPDUシグナルを受信すれば、前記時過敏フレームの転送ポートを前記BPDU以外のブロッキング状態にする一方、
前記時間過敏フレームに前記BPDUの情報を追加したBPDUカプセル化フレームについては前記転送ポートを通過させることを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、時間過敏フレームの優先転送を可能となり、転送遅延の変動を低コストで抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】イーサネットにおける転送遅延変動の発生を示す説明図。
図2】本発明の実施形態に係るフレーム転送の制御方式が適用されるモデルケースの概念図。
図3】同 BPDUシグナルの送信時を示す模式図。
図4】同 BPDUシグナルを1番目のBDスイッチで中継した状態を示す模式図。
図5】同 BPDUシグナルを2番目のBDスイッチで中継した状態を示す模式図。
図6】同 BPDUシグナルの返信を3番目のBDスイッチが中継する状態を示す模式図。
図7】同 BPDUカプセル化フレームの送信時を示す模式図。
図8】同 BPDUカプセル化フレームを2番目のBDスイッチで中継した状態を示す模式図。
図9】同 BPDUカプセル化フレームを3番目のBDスイッチで中継した状態を示す模式図。
図10】同 BPDUカプセル化フレームの送信完了後の状態を示す模式図。
図11】同 BDスイッチの構成図。
図12】同 BPDUシグナルのデータ構成図。
図13】同 BPDUカプセル化フレームのデータ構成図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態に係るフレーム転送の制御方式(方法)を説明する。この制御方式は、主にスパニングツリープロトコル(Spanning Tree Protocol:STP)のインフラを応用している。
【0018】
このSTPは、レイヤー2ネットワーク上において、閉路を自動検出し、閉路上の一点を遮断することにより、閉路上のフレーム無限巡回を防止する経路制御プロトコルに関し、IEEE802.1Dにて規定されている。
【0019】
具体的にはネットワーク上のひとつのブリッジをルート(Root)として選定し、ルート以外のノードからルートへの最短経路を計算し、最短経路に包含されないパスを冗長経路とみなし、これを遮断する。
【0020】
その際、ブリッジ間で経路情報を交換するために「BPDU(Bridge Protocol Data Unit)」と呼ばれる専用のイーサネットフレームが使用される。この「BPDU」は遮断されたパスも通過することができる。
【0021】
そして、前記制御方式は、「BPDU」の専用インサーネットフレームをスイッチングハブ(以下、スイッチとする。)に応用することで時間過敏フレームの通過時に一時的に転送経路、即ち転送ポートを占有させる。これにより時間過敏フレームが優先転送でき、転送遅延変動の発生を抑制すると同時に到達信頼性も確保することが可能となる。
【0022】
なお、前記制御方式は、「BPDU」の専用イーサネットフレームを用いてシグナリングを実行する点で「BPDUシグナリング(Signaling)」とも呼ぶことができ、これを実行するスイッチを「BSスイッチ」と呼ぶものとする。
【0023】
≪ネットワーク構成≫
図2に基づき前記制御方式のモデルケースを説明する。図2では比較的簡易なネットワーク構成を例示しているが、端末間のフレーム送受信をスイッチなどの中継装置で中継するネットワーク構成であれば、同様に適用されるものとする。
【0024】
図2中の端末11,12間では、時間過敏フレームF1を用いたアプリケーションが実行され、BSスイッチ1a~1cを経由(中継)して時間過敏フレームF1が送受信されている。
【0025】
例えば端末11,12間においてPTP(Precision Time Protocol)の時刻同期を実行し、両端末11,12間で時刻同期用のメッセージ(同期メッセージ,遅延要求メッセージ,遅延応答メッセージなど)の交換などが想定される。
【0026】
一方、端末13~15は、時間過敏ではない一般のアプリケーションを実行している。ここでは時間過敏フレームF1ではなく、一般フレームF2を送受信し、帯域を大きく消費している。
【0027】
特に一般フレームのサイズは不統一なため、前述のように時間過敏フレームF1の転送遅延が変動し、時間過敏アプリケーション(PTP時刻同期など)に悪影響を与えるおそれがある。
【0028】
なお、図2中の矢印R1~R4は、BSスイッチ1a~1cを経由して端末13から端末15に一般フレームF2を送信する経路を示している。また、同矢印r1~r3は、BSスイッチb1,1cを経由して端末14から端末15に一般フレームF2を送信する経路を示している。
【0029】
≪シグナリングの推移≫
図3図6に基づき前記制御方式のシグナリングの推移を説明する。ここで各図中のP1~P5はBSスイッチ1a~1cのポートを示し、ポートP1~P5上に表した「FWD」はフォワーディング状態を示し、同「BLK」はブロッキング状態を示している。
【0030】
(1)まず、図3に示すように、端末11から端末12に時間過敏フレームF1を送信する際、事前にBPDUシグナルSが送信される。すなわち、BPDUシグナルSを時間過敏フレームF1に先だって送信し、BPDUシグナルSの送信の段階では時間過敏フレームF1は送信されない。
【0031】
このBPDUシグナルSの送信は、各時間過敏フレームF1のエントリー毎(BPDUシグナリングのエントリー毎)に行われる。また、図2図10では、端末11からの送信のみを示しているが、端末12からの送信の場合も同様とする。
【0032】
具体的にはBPDUシグナルSは、イーサネットフレームをベースに構成され、図12に示すように、
(A)プロトコルID
(B)プロトコルバージョンID
(C)BPDUタイプ
(D)フラグ
(E)セッションID
(F)送信元MACアドレス
(G)送信先MACアドレス
(H)パスカウント
(I)タイマー
のフィールドが追加されている。
【0033】
【表1】
【0034】
表1は、各フィールド(A)~(I)の詳細を示している。ここで端末11は、フラグのフィールドに「発呼ビット」をセットして送信するものとする。また、セッションIDには、端末11内で一意の識別番号が付与され、BPDUシグナリングの複数エントリーを識別するために用いられている。
【0035】
なお、端末11からのBPDUシグナルSの送信は、「BSスイッチ1a→1b→1c」の順で端末12に向けて転送される。
【0036】
(2)つぎにBSスイッチ1aは、図4に示すように、端末11からBPDUシグナルSを受信すれば、時間過敏フレームF1の転送ポートP1をSTPブロッキング状態、即ちBPDU以外のフレームの通過ができない状態に設定する。
【0037】
したがって、矢印R1に示すように、端末13から一般フレームF2を受信した場合に転送ポートP1からBSスイッチ1bに転送できなくなる。一方、BSスイッチ1aは、STPブロッキング状態のまま転送ポートP1からBPDUシグナルSをBSスイッチ1bに転送する。
【0038】
(3)また、BSスイッチ1bは、図5に示すように、ポートP2でBPDUシグナルSを受信すれば、時間過敏フレームF1の転送ポートP3をSTPブロッキング状態に設定する。
【0039】
したがって、矢印r1に示すように、端末14から一般フレームF2を受信した場合に転送ポートP3からBSスイッチ1cに転送できなくなる。一方、BSスイッチ1bは、STPブロッキング状態のまま転送ポートP3からBPDUシグナルSをBSスイッチ1cに転送する。
【0040】
(4)さらにBSスイッチ1cは、図6に示すように、ポートP4でBPDUシグナルSを受信した後に時間過敏フレームF1の転送ポートP5をSTPブロッキング状態に設定する。
【0041】
これにより端末11から端末12への転送ポートP1,P3,P5のすべてがSTPブロッキング状態に設定され、BPDU以外のフレームが通過できない状態となる。この意味で転送ポートP1,P3,P5に出力中のフレームが存在しない状態が完成する。
【0042】
その後、BSスイッチ1cはBPDUシグナルSを端末12に送信する。このBPDUシグナルSを受信した端末12は、矢印Lに示すように、端末11の発呼に応じる場合にBPDUシグナルSを返信する。
【0043】
このときBPDUシグナルSのフラグフィールドにACKビットをセットすることで返信であることを明示し、BPDUシグナルのキャッチボール状態を防止する。なお、端末12からのBPDUシグナルSの返信は、BSスイッチ1c→1b→1aの順で端末11に向けて転送される。
【0044】
≪時間過敏フレームの転送≫
(1)図7図10に基づき時間過敏フレームF1の転送を説明する。ここでは端末11は、図7に示すように、時間過敏フレームF1をBPDUカプセル化した状態でBSブリッジ1aに送信する。
【0045】
この送信時期としては、矢印Lの返信を受信して転送ポートP1,P3,P5のSTPブロッキング状態を確認できた後が好ましい。ここで前記カプセル化された時間過敏フレームF1をBPDUカプセル化フレームCと呼ぶ。このフレームCは、図13に示すように、時間過敏フレームF1に
(A)プロトコルID
(B)プロトコルバージョンID
(C)BPDUタイプ
(D)フラグ
(E)セッションID
のフィールドが追加されている。これによりBPDUカプセル化フレームCにBPDUの情報などが追加され、BPDUカプセル化フレームの外見上はBPDUといえる。なお、前記各フィールドは表1と同義とする。
【0046】
(2)BPDUカプセル化フレームCは、外見上BPDUといえ、図7中の矢印X1に示すように、BSスイッチ1aのブロッキング状態の転送ポートP1を通過し、BSスイッチ1bのポートP2で受信される。
【0047】
同様にBPDUカプセル化フレームCは、図8中の矢印X2に示すように、BSスイッチ1bのブロッキング状態の転送ポートP3を通過し、BSスイッチ1cのポートP4で受信される。ここで受信されたBPDUカプセル化フレームCは、図9中の矢印X3に示すように、BSスイッチ1cのブロッキング状態の転送ポートP5を通過し、端末12に受信されて到達する。
【0048】
このように前記制御方式によれば、転送ポートP1,P3,P5のブロッキング状態でBPDUカプセル化フレームCを端末11から端末12に転送することが可能となる。これにより時間過敏フレームF1が一般フレームF2の出力終了まで待機させられることがなく、時間過敏フレームF1の優先転送が実現される。
【0049】
このとき図8図10に示すように、各ポートP1,P3,P5をBPDUカプセル化フレームCが通過した後は、それぞれのブロッキング状態が解除され、一般フレームF2の通過が許可される。
【0050】
したがって、ブロッキング状態の解除後には、矢印R1~R4に示すように、端末13から一般フレームF2を端末15に送ることが可能となる。また、矢印r1~r3に示すように、端末14から一般フレームF2を端末15に送ることも可能となる。
【0051】
≪BSスイッチの構成≫
図11に基づきBSスイッチ1a~1cの構成例を説明する。この各BSスイッチ1a~1cは、一般的なスイッチと同じく、スイッチエンジン2,ポート3(図2図10のポートP1~P5に相当する。),FDBテーブル(MACアドレステーブル)4を備えている。
【0052】
このポート3は、矢印Qに示すように、ポートステートという状態を持つ。このポートステートがフォワーディング状態の場合には、すべてのフレームが通過することができる。一方、ポートステートがブロッキング状態の場合にはBPDUのみが通過することができる。
【0053】
さらにBSスイッチ1a~1cは、BPDUシグナルSをモニタリングするBPDUシグナリング処理部6と、シグナリング処理部のモニタリングするBPDUシグナルの情報を記録するSIB(シグナル情報ベース)7と、エントリーの送信先MACアドレスがマルチキャストの場合のユーザの割当てを記憶する設定値DB5とを備えている。
【0054】
≪BSスイッチ1a~1cの動作例≫
以下、BSスイッチ1a~1cの主要な動作を図2図10のネットワーク構成に基づき説明する。
【0055】
(1)シグナル処理
BPDUシグナルSの発呼を受信したBSスイッチ1a~1cは、該BPDUシグナルSの「セッションID」・「送信元MACアドレス」・「送信先MACアドレス」・「パスカウント」・「タイマー」の情報を読み出す。読み出した情報をBPDUシグナルS毎にSIB7に記録し、エントリーとして登録する。
【0056】
(2)ポートブロッキング
BSスイッチ1a~1cは、SIB7に登録された個々のエントリーに対して、次の動作を行う。ここでは一例としてBSスイッチ1aの動作に基づき説明する。
【0057】
まず、BSスイッチ1aは、エントリーの送信先MACアドレスがユニキャストアドレスであればFDB4を参照して該当アドレスの転送ポートP1を割り出し、割り出された転送ポートP1をブロッキング状態とする。
【0058】
一方、エントリーの送信先MACアドレスがマルチキャストであれば設定値5に従って対象の転送ポートP1を割り出し、割り出された転送ポートP1をブロッキング状態とする。ただし、個々のエントリー毎にポートブロッキングが行われるため、BSスイッチ1aにおけるブロッキング状態は転送ポートP1だけに限られない。
【0059】
その後、BSスイッチ1aは、前記割り出された転送ポートP1からBPDUシグナルSの発呼を転送する。この転送を受信したBSスイッチ1bも同様に前述のシグナル処理およびポートブロッキングの動作を行う。この動作の連鎖により転送経路上の転送ポートP1,P3,P5のすべてがブロッキングされ、出力中のフレームが排除される。
【0060】
これにより特別なハードウェアを必要とすることなく、広く普及しているスパニングツリー用のSTPポートステートのみを使って時間過敏フレームF1の優先転送および転送遅延の変動を抑制ができ、この点で低コスト化に貢献する。
【0061】
(3)シグナル返信
端末12からBPDUシグナルSの返信を受信したBSスイッチ1a~1cは、該シグナルの返信を端末11に向けて順に転送する。このとき端末11のMACアドレスがBPDUシグナルSに記述されているので、FDB4を参照すれば転送するポート(図2図10中ではポートP4、P2)を割り出すことができる。
【0062】
(4)BPDUカプセル化フレームの転送
BPDUカプセル化フレームCは外見上BPDUなので、各BSスイッチ1a~1cは、ブロッキングポートP1,P3,P5を透過させ、宛先の端末12まで転送する(スイッチエンジン2をBPDUトラップではなく、ハードウェア転送も可能にしておく。)。
【0063】
(5)BPDUカプセル化フレームのモニタリング
BPDUカプセル化フレームCは、BSスイッチ1a~1cにおいてCPU転送され、シグナリング処理部6により以下のモニタリング処理が施される。
【0064】
まず、BPDUカプセル化フレームCの送信元MACアドレス・送信先MACアドレス・セッションIDをキーにSIB7を検索し、SIB7から同じ情報を持つBPDUシグナルSのエントリーを取得する。
【0065】
つぎにBSスイッチ1a~1cは、前記エントリーのパスカウントの値から「1」を減算する。減算の結果、パスカウントの値が「0」になれば前記エントリーに対応した転送ポートP1,P3,P5のブロッキング状態を解除して前記エントリーを削除する一方、パスカウントの値が「0」でなければブロッキング状態を維持する。
【0066】
したがって、同じエントリーについて、パスカウントに記述された個数のBPDUカプセル化フレームCを優先的に送信することができる。特に個々のBPDU毎にブロッキングの維持・解除を繰り返す必要がなく、効率化が図られている。
【0067】
(6)エントリーエージング
BSスイッチ1a~1cは、周期的に自己のSIB7をスキャンし、各エントリーのタイマー(BPDUシグナルSの有効時間/ブロッキング状態の有効時間)を、BPDUシグナルSの受信時からの経過時間に応じて減算する。
【0068】
このときタイマーのタイムアップまでは、前記エントリーに対応した転送ポートP1,P3,P5をブロッキング状態に維持する。したがって、同じエントリーについては、複数のBPDUカプセル化フレームCをタイムアップまでの間に優先的に送信することができる。一方、タイマーがタイムアップした場合には、転送ポートP1,P3,P5のブロッキング状態を解除し、前記エントリーをSIB7から削除する。
【0069】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、各請求項に記載された範囲内で変形して実施することができる。例えばBPDUシグナルSのパスカウントやタイマーのフィールドは必須ではなく、記述がなくともよい。
【0070】
この場合には前述のモニタリングやエントリーエージングの効果を得ることができないものの、時間過敏フレームF1の優先転送および転送遅延の変動抑制の効果を得ることが可能である。
【符号の説明】
【0071】
1a~1c…BSスイッチ(中継装置)
2…スイッチエンジン
3(P1,P2,P3)…ポート
4…FDB
5…設定値
6…BPDUシグナリング処理部
7…SIB
11~15…端末
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13