IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 王子ホールディングス株式会社の特許一覧

特許7396423粘着シートの製造方法及び積層体の製造方法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-04
(45)【発行日】2023-12-12
(54)【発明の名称】粘着シートの製造方法及び積層体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/38 20180101AFI20231205BHJP
   C09J 4/02 20060101ALI20231205BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20231205BHJP
   C09J 133/04 20060101ALI20231205BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J4/02
C09J11/06
C09J133/04
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2022155069
(22)【出願日】2022-09-28
(62)【分割の表示】P 2019091399の分割
【原出願日】2019-05-14
(65)【公開番号】P2022173428
(43)【公開日】2022-11-18
【審査請求日】2022-10-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山口 貴迪
(72)【発明者】
【氏名】山本 真之
【審査官】小久保 敦規
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-138234(JP,A)
【文献】特開2014-201608(JP,A)
【文献】特開2010-155974(JP,A)
【文献】特開2016-155981(JP,A)
【文献】特開平09-316114(JP,A)
【文献】特開平09-031416(JP,A)
【文献】特開2014-152294(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00 - 201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘着シートのアウトガスの発生を抑制する方法であって、
分子内に重合性二重結合をする単量体と、第1の光重合開始剤と、第2の光重合開始剤とを含む粘着剤組成物の塗膜を基材上に形成する第1工程と、
前記第1の光重合開始剤が分解し、かつ、前記第2の光重合開始剤が分解しない波長の活性エネルギー線を前記塗膜に照射して前記塗膜を半硬化状態に硬化させることにより、半硬化物を含有する粘着剤層を形成する第2工程と、
を備える方法によって前記粘着シートを製造し
得られた前記粘着シートの両面にそれぞれ被着体を貼り合せて積層体を得る第3工程と、
を備え、
前記分子内に重合性二重結合を有する単量体は、重合性二重結合を一つ有する(メタ)アクリレートと重合性二重結合を二つ有するジ(メタ)アクリレートとを含有する、アウトガス発生の抑制方法
【請求項2】
前記半硬化物には、前記第2の光重合開始剤が残存している、請求項1に記載のアウトガス発生の抑制方法
【請求項3】
前記第1の光重合開始剤は、波長360~700nmに吸収波長ピークを有し、前記第2の光重合開始剤は、波長360~700nmに吸収波長ピークを有さず360nm未満に吸収波長ピークを有する、請求項1又は2に記載のアウトガス発生の抑制方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着シートの製造方法及び積層体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
粘着シートは、例えば、部材どうしを貼り合わせる用途等に使用されており、種々の分
野において広く利用されている。このような粘着シートは、近年では液晶ディスプレイ(
LCD)等の表示装置、あるいはタッチパネル等の入力装置等の用途にも使用されている
。表示装置あるいは入力装置を構成する光学ディスプレイ等の各部材どうしの貼り合わせ
に粘着シートを使用することで、高精度、かつ、容易に各種装置を製造することができる
【0003】
表示装置、あるいは入力装置においては、例えば、樹脂製のカバーパネルと、タッチパ
ネルセンサー等で構成される層とを、粘着シートによって貼り合わすことが行われており
、このような用途に適した粘着シートが種々提案されている。例えば、特許文献1には、
(メタ)アクリル酸アルキルエステル、分子内に反応性官能基を有する反応性官能基含有
モノマー及びN-ビニルカルボン酸アミドを含む(メタ)アクリル酸エステル重合体と、
架橋剤(B)とを含む粘着性組成物から形成される粘着シートが提案されている。このよ
うな特定構造を有するアクリルポリマーをベースとする粘着シートをタッチパネル等の入
力装置等に使用することで、耐ブリスター性及び耐湿熱白化性を向上させることができる
とされている。また、特許文献2には、特定構造のアクリル系ポリマーを含む粘着剤組成
物により形成され、所定のせん断貯蔵弾性率を有する粘着剤層を備える光学用粘着シート
が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-172537号公報
【文献】特開2012-87240号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、樹脂製のカバーパネル等の部材を粘着シートで貼り合わせる場合、カバ
ーパネル等の部材から発生するガス(いわゆるアウトガス)によって、接着界面において
気泡、浮き及び剥がれ等が起こり得るという問題があった。例えば、貼り合わせるカバー
パネル等をハードコート層等で保護することでアウトガス発生を抑制できる。しかし、こ
の場合は貼り合わせる部材の種類が制約されるという問題があった。つまり、アウトガス
が発生しやすい部材であって、ハードコート層等で保護されてない部材に対しては、耐ア
ウトガス性が劣るという点で、従来の粘着シートを使用し難いという課題を有していた。
特許文献1等に開示される技術では、耐ブリスター性(耐アウトガス性)に一定の改善は
期待できるものの、例えば、ハードコート層を有していないポリカーボネートを使用した
場合、耐ブリスター性は十分でなく、さらなる改善の余地を残していた。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、優れた耐アウトガス性を有する粘着シー
トの製造方法、及び、該粘着シートを用いた積層体の製造方法を提供することを目的とす
る。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、異なる2種類の光重合開
始剤を併用することにより上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至っ
た。
【0008】
すなわち、本発明は、例えば、以下の項に記載の主題を包含する。
項1
粘着シートの製造方法であって、
分子内に重合性二重結合をする単量体と、第1の光重合開始剤と、第2の光重合開始剤と
を含む粘着剤組成物の塗膜を基材上に形成する第1工程と、
前記第1の光重合開始剤が分解し、かつ、前記第2の光重合開始剤が分解しない波長の活
性エネルギー線を前記塗膜に照射して前記塗膜を半硬化状態に硬化させることにより、半
硬化物を含有する粘着剤層を形成する第2工程と、
を備え、
前記分子内に重合性二重結合を有する単量体は、重合性二重結合を一つ有する(メタ)ア
クリレートと重合性二重結合を二つ有するジ(メタ)アクリレートとを含有する、粘着シ
ートの製造方法。
項2
前記半硬化物には、前記第2の光重合開始剤が残存している、項1に記載の粘着シートの
製造方法。
項3
前記第1の光重合開始剤は、波長360~700nmに吸収波長ピークを有し、前記第2
の光重合開始剤は、波長360~700nmに吸収波長ピークを有さず360nm未満に
吸収波長ピークを有する、項1又は2に記載の粘着シートの製造方法。
項4
項1~3のいずれかの方法で得られる粘着シートの両面にそれぞれ被着体を貼り合せて積
層体を得る第3工程と、
前記積層体に、前記第2の光重合開始剤が分解する波長の活性エネルギー線を照射して前
記粘着シートを硬化させる第4工程と、
を備える、積層体の製造方法。
項5
前記粘着シートの一方の面に貼り合わされる被着体は、樹脂板、樹脂シート及び樹脂フィ
ルムからなる群より選ばれる1種の第1部材である、項4に記載の積層体の製造方法。
項6
前記粘着シートの他方の面に貼り合わされる被着体は、ガラス板、樹脂フィルム及び樹脂
板からなる群より選ばれる1種の第2部材である、項5に記載の積層体の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の粘着シートの製造方法によれば、優れた耐アウトガス性を有する粘着シートを
得ることができる。
【0010】
また、本発明の積層体の製造方法方は、前記粘着シートの製造方法で得られた粘着シー
トを用いるので、優れた耐アウトガス性を有する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、本明細書中において、「含有
」及び「含む」なる表現については、「含有」、「含む」、「実質的にからなる」及び「
のみからなる」という概念を含む。
【0012】
1.粘着シートの製造方法
本発明の粘着シートの製造方法は、下記の第1工程及び第2工程を少なくとも備える。
第1工程:分子内に重合性二重結合をする単量体と、第1の光重合開始剤と、第2の光重
合開始剤とを含む粘着剤組成物の塗膜を基材上に形成する工程。
第2工程:前記第1の光重合開始剤が分解し、かつ、前記第2の光重合開始剤が分解しな
い波長の活性エネルギー線を前記塗膜に照射して前記塗膜を半硬化状態に硬化させること
により、半硬化物を含有する粘着剤層を形成する工程。
本発明の粘着シートの製造方法において、前記分子内に重合性二重結合を有する単量体
は、重合性二重結合を一つ有する(メタ)アクリレートと重合性二重結合を二つ有するジ
(メタ)アクリレートとを含有する。以下、分子内に重合性二重結合をする単量体を「重
合性単量体M」と略記し、このうち、重合性二重結合を一つ有する(メタ)アクリレート
を「重合性単量体M1」、重合性二重結合を二つ有するジ(メタ)アクリレートを「重合
性単量体M2」と略記する。
【0013】
なお、本明細書において、「(メタ)アクリル」とは「アクリル」または「メタクリル
」を、「(メタ)アクリレート」とは「アクリレート」または「メタクリレート」を、「
(メタ)アリル」とは「アリル」または「メタリル」を意味する。
【0014】
(第1工程)
第1工程は、重合性単量体M、第1の光重合開始剤と、第2の光重合開始剤とを含む粘
着剤組成物の塗膜を基材上に形成するための工程である。重合性単量体Mは、前述のよう
に、重合性単量体M1及び重合性単量体M2を含む。
【0015】
重合性単量体M1としては、例えば、単官能の(メタ)アクリル酸エステルを挙げるこ
とができる。(メタ)アクリル酸エステルとしては、水酸基を有さずにアルキル鎖を有す
る(メタ)アクリル酸アルキルエステル;水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステル;
カルボキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステル;芳香族炭化水素を有する(メタ)ア
クリル酸エステル;アルコキシアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル;等を挙
げることができる。
【0016】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)
アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(
メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t-
ブチル、(メタ)アクリル酸n-ペンチル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)
アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル
酸n-オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸n-ノニル、(
メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸n-デシル、(メタ)アクリル酸イソ
デシル、(メタ)アクリル酸n-ウンデシル、(メタ)アクリル酸n-ドデシル、(メタ
)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸イソス
テアリル等が例示される。
【0017】
重合性単量体M1が(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含む場合、粘着シートが高
い粘着力が得られやすいという観点から、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル
酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、
(メタ)アクリル酸イソステアリルから選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0018】
水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、2-ヒドロキシエチル(メタ)
アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(
メタ)アクリレート、5-ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブ
チル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレー
ト、2,2-ジメチル2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3-クロロ2-ヒド
ロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ3-フェノキシプロピル(メタ)
アクリレート、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート等が例示される。
【0019】
重合性単量体M1が水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステルを含む場合、耐アウト
ガス性に優れる粘着シートが得られやすいという観点から、2-ヒドロキシエチル(メタ
)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート及び6-ヒドロキシヘキシ
ル(メタ)アクリレートからなる群より選ばれる1種以上であることが好ましい。この場
合、耐アウトガス性に優れる粘着シートが得られやすい。
【0020】
カルボキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸、マ
レイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、シトラコン酸、2-(メタ)アクリ
ロイロキシエチルフタル酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチルコハク酸、2-(メタ
)アクリロイロキシエチルマレイン酸、カルボキシルエチル(メタ)アクリレート、カル
ボキシポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート等が例示される。
【0021】
芳香族炭化水素を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸ベ
ンジル等が例示される。
【0022】
アルコキシアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリ
ル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル等が例示される。
【0023】
重合性単量体M1は、1種のみの単官能の(メタ)アクリル酸エステルであってもよい
し、あるいは2種以上の(メタ)アクリル酸エステルを含むこともできる。粘着シートが
優れた粘着力と耐アウトガス性を有しやすいという観点から、重合性単量体M1は、水酸
基を有さずにアルキル鎖を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、水酸基を有す
る(メタ)アクリル酸エステルとを含むことが好ましい。
【0024】
重合性単量体M2としては、分子内に二重結合を2つ有するジ(メタ)アクリレートで
ある限りは特に制限されず、具体的には、二つのアクリレート骨格の間にアルキル鎖のみ
を有する1,4-ブタンジオールジアクリレート及び1,9-ノナンジオールジ(メタ)
アクリレート等のジアクリレート化合物;二つのアクリレート骨格の間にアルコキシアル
キル鎖を有するトリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリ
コールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート及びポ
リプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等のジアクリレート化合物;二つのアク
リレート骨格の間にビスフェノール骨格を有するビスフェノールA EO変性ジ(メタ)
アクリレート及びビスフェノールF EO変性ジ(メタ)アクリレート等のジアクリレー
ト化合物;等を挙げることができる。
【0025】
重合性単量体M2は、1種のみのジアクリレート化合物であってもよいし、あるいは2
種以上のジアクリレート化合物を含むこともできる。
【0026】
重合性単量体Mは、重合性単量体M1及び重合性単量体M2以外に他の単量体を含むこ
とができる。他の単量体としては、分子内に重合性二重結合を3つ以上有する多官能単量
体を含むこともできる。ただし、この場合は後述する積層体の製造方法の第4工程におい
て、粘着剤層を完全硬化させた時に硬化収縮が生じて密着性及び接着性を損なう可能性が
ある。従って、重合性単量体Mは、分子内に重合性二重結合を3つ以上有する多官能単量
体を含まないことも好ましく、これにより、粘着シートの密着性及び接着性が向上して耐
アウトガス性が向上しやすい。
【0027】
仮に重合性単量体Mが分子内に重合性二重結合を3つ以上有する多官能単量体を含む場
合、分子内に重合性二重結合を3つ以上有する多官能単量体の種類は特に限定されない。
例えば、例えば、粘着シートにおいて使用されている公知の多官能単量体を広く使用する
ことができる。多官能単量体としては、例えば、トリ(メタ)アクリル酸トリメチロール
プロパン、トリ(メタ)アクリル酸ペンタエリスリトール、テトラ(メタ)アクリル酸ペ
ンタエリスリトール等の多価アルコールの(メタ)アクリル酸エステル類、メタクリル酸
ビニル等が挙げられる。これらは1種類を単独で使用してもよいし、2種類以上を併用し
てもよい。
【0028】
重合性単量体Mは、重合性単量体M1、重合性単量体M2及び分子内に重合性二重結合
を3つ以上有する多官能単量体以外に、例えば、N-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリ
ルアミド等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミド化合物等を含むこともできる。
【0029】
重合性単量体Mにおいて、重合性単量体M1及び重合性単量体M2の含有割合は特に限
定されず、本発明の効果が阻害されない程度である限り、種々の配合割合とすることがで
きる。例えば、重合性単量体Mにおいて、重合性単量体M2の含有量は重合性単量体M1
の総量100質量部に対して0.01~15質量部とすることができる。重合性単量体M
2の含有量は、重合性単量体M1の総量100質量部に対して0.05質量部以上である
ことがより好ましく、0.1質量部以上であることが特に好ましい。また、重合性単量体
M2の含有量は、重合性単量体M1の総量100質量部に対して10質量部以下であるこ
とが好ましく、重合性単量体M1の総量100質量部に対して5質量部以下であることが
より好ましい。
【0030】
粘着剤組成物において、第1の光重合開始剤及び第2の光重合開始剤は、後記する活性
エネルギー線照射により重合性単量体M1及びM2の重合を開始させることができる成分
である。
【0031】
第1の光重合開始剤及び第2の光重合開始剤は異なる種類の光重合開始剤である。特に
本発明では、第1の光重合開始剤を分解させるのに必要な活性エネルギーは、第2の光重
合開始剤を分解させるのに必要な活性エネルギーよりも低い。
【0032】
第1の光重合開始剤は、例えば、波長360~700nm(波長360nm以上700
nm以下)に吸収波長ピークを有することが好ましい。また、第2の光重合開始剤は、波
長360~700nmに吸収波長ピークを有さず360nm未満に吸収波長ピークを有す
ることが好ましい。
【0033】
本明細書において、前記第1の光重合開始剤の波長360~700nmの範囲の吸収波
長ピークの有無は、0.1~0.001%のアセトニトリル溶液の分光光度計により測定
により確認することができる。同様に、前記第2の光重合開始剤の波長360~700n
mの範囲及び360nm未満の範囲の吸収波長ピークの有無は、0.1~0.001%の
アセトニトリル溶液の分光光度計により測定により確認することができる。いずれの分光
光度計による測定においてもピークの有無のみを確認するだけであって、ピーク強度は問
題としない。
【0034】
波長360~700nmに吸収波長ピークを有する第1の光重合開始剤としては、例え
ば、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド、ビ
ス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチル-ベンチルフォスフィン
オキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド
、ビス(η5-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)-ビス(2,6-ジフルオロ-
3-(1H-ピロール-1-イル)-フェニル))チタニウム等が挙げられる。これらは
1種類を単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0035】
中でも、第1の光重合開始剤としては、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-
ジフェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-
フォスフィンオキサイドを使用することが好ましい。
【0036】
波長360~700nmに吸収波長ピークを有さず360nm未満に吸収波長ピークを
有する第2の光重合開始剤としては、例えば、ベンゾイルギ酸メチル、4-メチルベンゾ
フェノン等の分子内水素引き抜き型光重合開始剤;その他、2,2-ジメトキシー2-フ
ェニルアセトフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシル-フェニルケトン、2-ヒドロキ
シ-2-メチル-1-ヘニルプロパノン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシル)-フ
ェニル]-2-ヒドロキシ-メチルプロパノン、2-ヒドロキシ-1-(4-(4-(2
-ヒドロキシ-2-メチルプロピオニル)ベンジル)フェニル)-2-メチル-1-プロ
パノン等のアルキルフェノン系光重合開始等が挙げられる。中でも、第2の光重合開始剤
としては、粘着剤層硬さが粘着シートとして適した範囲になりやすいという観点から、ベ
ンゾイルギ酸メチル、4-メチルベンゾフェノン等の分子内水素引き抜き型光重合開始剤
であることが好ましい。
【0037】
第1の光重合開始剤及び第2の光重合開始剤はいずれも1種類のみを使用することがで
き、あるいはいずれも2種類以上を併用することもできる。
【0038】
粘着剤組成物において、第1の光重合開始剤及び第2の光重合開始剤は任意の組合せで
使用することができる。例えば、第1の光重合開始剤として2,4,6-トリメチルベン
ゾイル-ジフェニルフォスフィンオキサイド及び2,4,6-トリメチルベンゾイルフェ
ニルフォスフィンオキサイドからなる群より選ばれる1種以上であり、第2の光重合開始
剤として、ベンゾイルギ酸メチル及び4-メチルベンゾフェノンからなる群より選ばれる
1種以上である組み合わせとすることができる。
【0039】
粘着剤組成物において、第1の光重合開始剤及び第2の光重合開始剤の含有量は、重合
性単量体M1及びM2の重合を進行させることができる限りは特に限定されない。例えば
、粘着剤組成物において、第1の光重合開始剤の含有量は、例えば、100質量部の前記
重合性単量体Mあたり、0.05~10質量部とすることができ、0.1~5質量部とす
ることがより好ましい。また、粘着剤組成物において、第2の光重合開始剤の含有量は、
例えば、100質量部の前記重合性単量体Mあたり、0.05~10質量部とすることが
でき、0.1~5質量部とすることがより好ましい。
【0040】
粘着剤組成物は、基材への塗工性を向上させるために、ベースポリマーを含むこともで
きる。ベースポリマーの種類は特に限定されず、粘着シートを形成するための粘着剤組成
物に含まれる公知のベースポリマーを広く適用することができる。具体的に、ベースポリ
マーとして、(メタ)アクリル共重合体を挙げることができる。(メタ)アクリル共重合
体としては、前述の重合性単量体M1で例示列挙した各種単量体と同様の単量体を重合し
てなる重合体を挙げることができる。
【0041】
ベースポリマーは、前記水酸基を有さずにアルキル鎖を有する(メタ)アクリル酸アル
キルエステル;前記水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステル;前記カルボキシ基を有
する(メタ)アクリル酸エステル;前記芳香族炭化水素を有する(メタ)アクリル酸エス
テル;前記アルコキシアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル;等の重合体を挙
げることができる。中でも、ベースポリマーは、前記水酸基を有さずにアルキル鎖を有す
る(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、前記水酸基を有する(メタ)アクリル酸エス
テルとの共重合体であることが好ましい。
【0042】
ベースポリマーは、ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体等の各種
構造を形成することができ、中でも、製造が容易であるとの観点から、ランダム共重合体
であることが好ましい。また、ベースポリマーの重量平均分子量は特に限定されず、例え
ば、5万~200万、好ましくは10万~100万とすることができる。
【0043】
粘着剤組成物がベースポリマーを含む場合、粘着剤組成物中のベースポリマーの含有量
は特に限定されず、粘着剤組成物が塗工可能な粘度を有する限りは特に制限されない。例
えば、ベースポリマー、重合性単量体M1及び重合性単量体M2の全質量に対し、ベース
ポリマーの含有割合は5~80質量%とすることができ、10~65質量%であることが
好ましく、15~50質量%であることがより好ましい。
【0044】
ベースポリマーの製造方法も特に限定されず、例えば、公知のラジカル重合により、ベ
ースポリマーを製造することができる。
【0045】
粘着剤組成物は、本発明の効果が阻害されない限り、その他の成分、例えば、帯電防止
剤、酸化防止剤、防腐剤、溶剤等が含まれていてもよい。粘着剤組成物がその他の成分を
含む場合、その含有量は、例えば、粘着剤組成物の全質量に対して10質量%以下、好ま
しくは5質量%以下、より好ましくは1質量%以下、特に好ましくは0.1質量%以下と
することができる。粘着剤組成物は、無溶剤とすることが特に好ましい。
【0046】
粘着剤組成物の調製方法は特に限定されない。例えば、所定量の重合性単量体M1及び
重合性単量体M2、第1光重合開始剤及び第2の光重合開始剤、並びに必要に応じて所定
量のベースポリマーを混合することで粘着剤組成物を調製することができる。混合方法も
特に限定されず、例えば、市販の混合機を使用できる。
【0047】
第1工程では、前記粘着剤組成物を基材に塗布して塗膜を形成する。塗膜を形成する方
法は特に限定されず、例えば、公知の塗布方法を広く採用することができる。例えば、ブ
レードコーター、エアナイフコーター、ロールコーター、バーコーター、グラビアコータ
ー、マイクログラビアコーター、ロッドブレードコーター、リップコーター、ダイコータ
ー、カーテンコーター等の市販の塗布装置を用いて塗膜を形成することができる。
【0048】
第1工程において、粘着剤組成物の塗布量は特に限定されず、目的の粘着シートの粘着
剤層の厚みに応じて適宜設定することができる。例えば、粘着剤組成物の塗布量は、粘着
剤層の厚みが5~1000μmとなるように調節することができる。
【0049】
第1工程において、塗膜を形成させる基材も特に限定されず、粘着シートを形成するた
めに使用されている基材を広く使用することができる。例えば、基材として、剥離シート
を挙げることができる。
【0050】
剥離シートとしては、例えば、粘着シートにおいて接着剤層を保護するために使用され
ている、いわゆるセパレータを挙げることができる。より具体的には、剥離シートとして
、離型層を備える樹脂フィルム等を挙げることができる。
【0051】
剥離シートにおいて、樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレートフ
ィルム等を挙げることができる。
【0052】
前記離型層とは、前記樹脂フィルムの少なくとも片面に形成された層であって、粘着剤
層の粘着力よりも小さい剥離力を有し、容易に剥離シートを剥離することができるように
形成された層であることを意味する。このような離型層は、例えば、粘着シートにおいて
離型層として使用される公知の成分を広く適用することができる。例えば、公知のシリコ
ーン材料で離型層を形成することができる。
【0053】
基材として前記剥離シートを使用する場合、粘着剤組成物は、当該剥離シートの離型層
面に塗布して、粘着剤組成物の塗膜を形成することができる。
【0054】
なお、本発明では、第1工程において、粘着剤組成物の塗布性を向上させるべく、あら
かじめ硬化を進行させて粘度を上昇させた粘着剤組成物を、前記剥離シート等の基材上に
塗布することにより、塗膜を形成してもよい。ただし、あらかじめ硬化を進行させた粘着
剤組成物は流動性が低下しているため、塗布することが困難な場合があるので、この場合
は加温により、あらかじめ硬化を進行させた粘着剤組成物の流動性を上げることができる
【0055】
(第2工程)
第2工程は、前記第1の光重合開始剤が分解し、かつ、前記第2の光重合開始剤が分解
しない波長の活性エネルギー線を前記塗膜に照射して前記塗膜を半硬化状態に硬化させる
ことにより、半硬化物を含有する粘着剤層を形成するための工程である。塗膜に特定波長
の活性エネルギー線を照射することで、前記塗膜に存在する前記単量体M(前記重合性単
量体M1及びM2)の一部又は全部が重合し、重合物が生成する。つまり、塗膜が半硬化
して、半硬化物を含有する粘着剤層として形成される。当該半硬化物には、第2の光重合
開始剤が残存している。
【0056】
ここで、本明細書でいう半硬化物とは、粘着剤組成物の塗膜に、例えば、特定波長(例
えば、360nm~700nmの波長)を有する活性エネルギー線を照射することにより
シート状の成型体をいい、該成型体中、第2の光重合開始剤が活性を失わずに存在してい
る状態を意味する。従って、半硬化物にさらに活性エネルギー線を照射すれば、さらに硬
化が進めることができる。
【0057】
第2工程で照射する活性エネルギー線は、360nm~700nmの波長を有する活性
エネルギー線とすることができる。第1の光重合開始剤が波長360~700nmに吸収
波長ピークを有する場合、第2工程で照射する活性エネルギー線は、360nm~700
nmの波長を有する活性エネルギー線であることが特に好ましい。これにより、第2工程
では第2の光重合開始剤の分解が抑制され、第1の光重合開始剤を選択的に分解させるこ
とが可能となり、粘着シートはアフタキュア性が向上する。
【0058】
第2工程で半硬化物を形成するにあたって、活性エネルギー線の照射時間は、活性エネ
ルギー線の波長によって、適宜設定することができ、例えば、60~1000秒とするこ
とができる。半硬化するために照射する活性エネルギー線の積算光量は、例えば波長が3
65nmの光である場合、100~4000mJ/cm、好ましくは200~2000
mJ/cm、より好ましくは300~1000mJ/cmである。
【0059】
第2工程で粘着剤組成物の塗膜を半硬化して得られる半硬化物は、重合性単量体M1及
び重合性単量体M2の重合体を含む。粘着剤組成物の塗膜が半硬化された状態では、前記
重合性単量体M1及びM2の一部が重合体を形成し、残りの重合性単量体M1及びM2は
半硬化物中に残存することが好ましい。つまり、粘着剤組成物の塗膜を半硬化して得られ
る半硬化物は、前記重合性単量体M1及びM2の重合体と、未反応の前記重合性単量体M
1及びM2とを含むことが好ましい。ただし、第2の光量開始剤に水素引抜き型光重合開
始剤を用いる場合は、未反応の前記重合性単量体M1及びM2が半硬化物中に残存してい
なくても良い。この場合、第2の光量開始剤による重合体からの水素引抜き作用によって
、重合性単量体M1及びM2が半硬化物中に残存せずとも、硬化反応が進行するからであ
る。
【0060】
また、粘着剤組成物の塗膜を半硬化して得られる半硬化物は少なくとも前記第2の光重
合開始剤を含む。粘着剤組成物の塗膜を半硬化すると、前記第1の光重合開始剤が重合反
応によって消費されるが、すべてが消費されない場合もあるので、一部の第1の光重合開
始剤が半硬化物中に残存する場合もある。
【0061】
なお、半硬化物において、前記第2の光重合開始剤は半硬化における重合反応には関与
しない。よって、半硬化前後の前記第2の光重合開始剤の含有量は変化しないか、変化す
るにしても、半硬化前の前記第2の光重合開始剤の全量を基準として、半硬化後の前記第
2の光重合開始剤の含有量は99質量%以上で半硬化物中に存在する。
【0062】
第2工程で半硬化によって形成される重合体は、前記重合性単量体M1及び重合性単量
体M2に由来する単量体単位をする。すなわち、第2工程での半硬化によって形成される
重合体は(メタ)アクリル重合体である。
【0063】
該塗膜に波長が360nm以上である活性エネルギー線を照射する前に、必要に応じて
、後記第1の剥離シート及び第2の剥離シートをそれぞれ塗膜の両面に貼り合わすことも
できる。
【0064】
第2工程において形成される粘着剤層の厚みは特に限定されず、使用する用途等に応じ
て適宜設定することができる。例えば、得られる粘着シートを、入力装置等における樹脂
製のカバーパネル等の部材の貼り合わせに使用する場合、粘着剤層の厚みは、5~100
0μmとすることができる。
【0065】
以上の第1工程及び第2工程を含む製造方法によって、半硬化物を含有する粘着剤層を
備えた粘着シートを得ることができる。得られる粘着シートは片面粘着シート及び両面粘
着シートのいずれでもよく、通常は、両面粘着シートである。
【0066】
本発明の製造方法は、必要に応じて、第1工程及び第2工程以外の工程を含むこともで
きる。例えば、第2工程によって、基材上に粘着剤層を形成した後、さらに粘着剤層を保
護するための保護層を貼り合せることができる。この場合、保護層は、粘着剤層の基材と
は逆側の面に貼り合わされる。保護層としては、例えば、前述と同様、剥離シートを挙げ
ることができる。この保護層としての剥離シートも前記基材の場合と同様、離型層を備え
る樹脂フィルム等を挙げることができる。樹脂フィルムとしては、例えば、前述と同様、
ポリエチレンテレフタレートフィルム等を挙げることができ、また、離型層は、例えば、
公知のシリコーン材料で形成することができる。
【0067】
基材及び保護層がいずれも剥離シート(それぞれ第1の剥離シート、第2の剥離シート
とする)である場合、基材としての剥離シート(第1の剥離シート)の離型層の剥離力と
、保護層を形成するための剥離シート(第2の剥離シート)の離型層の剥離力とは異なる
ことが好ましい。つまり、基材及び保護層がいずれも剥離シートである場合、それぞれの
剥離シートの剥離力が異なることが好ましい。この場合、剥離シートを剥がすときに一方
の剥離シートだけを選択的に剥がすことが容易になり、いわゆる泣き別れの現象を抑止し
やすい。
【0068】
剥離シートの厚みは特に限定されない。例えば、剥離シートの厚みは20~300μm
とすることができ、好ましくは30~150μmとすることができる。粘着剤層の両面の
剥離シートは互いに厚みが異なっていてもよい。
【0069】
本発明の粘着シートの製造方法で得られる粘着シートは耐アウトガス性に優れることか
ら、従来、被着体からのアウトガスによる気泡等の発生が起こりやすかった用途に好適に
使用することができる。具体的に本発明の粘着シートの製造方法で得られる粘着シートは
、基板、フィルム等の各種部材(被着体ともいう)どうしを貼り合せて接着させる用途に
広く使用することができる。
【0070】
より具体的に、本発明の粘着シートの製造方法で得られる粘着シートは液晶ディスプレ
イ(LCD)等の表示装置、タッチパネル等の入力装置等の用途に特に好適に使用するこ
とができる。タッチパネルの構成部材としては、例えば、透明樹脂フィルムにITO膜が
設けられたITOフィルム、ガラス板の表面にITO膜が設けられたITOガラス、透明
樹脂フィルムに導電性ポリマーをコーティングした透明導電性フィルム、ハードコートフ
ィルム、耐指紋性フィルム等が挙げられる。画像表示装置の構成部材としては、例えば液
晶表示装置に用いられる反射防止フィルム、配向フィルム、偏光フィルム、位相差フィル
ム、輝度向上フィルム等が挙げられる。
【0071】
2.積層体の製造方法
本発明の積層体の製造方法では、前述の粘着シートの製造方法で得られる粘着シートを
用いるものであり、下記の第3工程及び第4工程を備える。
第3工程:前述の粘着シートの製造方法で得られた粘着シートの両面にそれぞれ被着体を
貼り合せて積層体を得る工程。
第4工程:前記積層体に、前記第2の光重合開始剤が分解する波長の活性エネルギー線を
照射して前記粘着シートを硬化させる工程。
【0072】
第3工程は、粘着シートの両面にそれぞれ被着体を貼り合せて積層体を得るための工程
である。粘着シートの両面にそれぞれ被着体を貼り合せて積層体を得る方法は特に限定さ
れない。
【0073】
例えば、一対の被着体の間に粘着シートを介在させて被着体どうしを粘着シートで貼り
合せることにより積層体を形成することができる。これにより、被着体どうしを粘着シー
トで貼り合せることができる。なお、粘着シートが剥離シートを備える場合は、当該剥離
シートを剥がした状態で、一対の被着体の間に粘着シートを介在させればよい。
【0074】
第4工程は、前記第3工程作製した積層体に、前記第2の光重合開始剤が分解する波長
の活性エネルギー線を照射して前記粘着シートを硬化させるための工程である。このよう
に活性エネルギー線を照射することで、粘着剤層中の半硬化物に残存している重合性単量
体M1及びM2の重合反応が、第2の光重合開始剤の作用によって進行する。あるいは、
第2の光重合開始剤が水素引抜型光重合開始剤である場合、その作用により分子間の架橋
反応が進み半硬化物中の重合体の硬化がさらに進行する。これにより、被着体どうしがよ
り強固に接着される。
【0075】
第4工程において、積層体に照射する活性エネルギー線が、第2の光重合開始剤が分解
する限りは特に限定されず、例えば、波長が360nm未満である活性エネルギー線を挙
げることができる。なお、半硬化物中に第1の光重合開始剤が残存している場合は、第4
工程での活性エネルギー線の照射によって、第1の光重合開始剤も分解して重合反応進行
させることができる。
【0076】
波長が360nm未満である活性エネルギー線としては、紫外線、電子線、可視光線、
X線、イオン線等が挙げられる。中でも、汎用性の点から、紫外線または電子線が好まし
く、紫外線が特に好ましい。紫外線の光源としては、例えば、高圧水銀灯、低圧水銀灯、
超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、カーボンアーク、キセノンアーク、無電極紫外線
ランプ等を使用できる。電子線としては、例えば、コックロフトワルト型、バンデクラフ
型、共振変圧型、絶縁コア変圧器型、直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子
線加速器から放出される電子線を使用できる。
【0077】
活性エネルギー線照射の積算光量は、例えば500~6000mJ/cm、好ましく
は1000~5000mJ/cm、より好ましくは1500~4000mJ/cm
ある。
【0078】
活性エネルギー線の照射方法も特に限定されず、例えば、前記積層体の全面に対して活
性エネルギー線を照射することができる。この観点から、被着体の少なくとも一方は、透
明であることが好ましい。活性エネルギー線の照射にあたっては、例えば、公知の活性エ
ネルギー線照射装置を使用することができる。
【0079】
以上のようにして、被着体どうしを粘着シートで貼り合わせて、さらに特定波長の活性
エネルギー線を照射することで、被着体どうしが強固に接着された積層体を得ることがで
きる。
【0080】
特に、本発明の積層体の製造方法では、前述の第2工程における活性エネルギー線の照
射によって、半硬化状態とした粘着剤層と被着体とを接着させることから、粘着シートと
、被着体との密着性をより高めることができる。次いで、第4工程における活性エネルギ
ー線の照射によって、被着体どうしを強固に接着させることができる。以上のように、被
着体どうしが粘着シートで接着されることで、優れた耐アウトトガス性を有することがで
き、粘着シートに気泡、浮き及び剥離が発生しにくい。
【0081】
本発明の積層体の製造方法で使用する被着体の種類は特に限定されない。例えば、粘着
シートの一方の面に貼り合わされる被着体は、樹脂板、樹脂シート及び樹脂フィルムから
なる群より選ばれる1種の第1部材であることが好ましい。他方、粘着シートの他方の面
に貼り合わされる被着体は、ガラス板、樹脂フィルム及び樹脂板からなる群より選ばれる
1種の第2部材であることが好ましい。
【0082】
第1部材及び第2部材は、例えば、公知の製造方法により得ることができ、あるいは、
市販品から入手することもできる。第1部材及び第2部材が樹脂板である場合、例えば、
キャスト法により得ることができる他、射出成型法等の各種成型方法によって得ることが
できる。なお、第1部材は、粘着シートの使用目的に応じて、板、シート及びフィルム以
外の種々の形状に成型加工されていてもよい。
【0083】
第1部材及び第2部材の厚みは特に限定されず、粘着シートが適用される用途に応じて
適宜設定することができる。例えば、第1部材及び第2部材が樹脂板である場合、その厚
みは通常、1mm以上とすることができる。
【0084】
樹脂板等の第1部材を形成するための樹脂としては特に限定されず、例えば、ポリメチ
ルメタクリレート等のアクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン等のスチレン
樹脂等を挙げることができる。樹脂は、異なる2種以上を含むこともでき、例えば、アク
リル樹脂とポリカーボネート樹脂とを含む複合材料を挙げることもできる。中でも粘着シ
ートは、ポリメチルメタクリレート樹脂板及びポリカーボネート樹脂板等の貼り合せに使
用されることが好ましく、ポリカーボネート樹脂板の貼り合せに使用されることが特に好
ましい。つまりは、粘着シートを使用して貼り合わせを行う場合、一方の被着体をポリカ
ーボネート樹脂等の樹脂板とすることができる。
【0085】
ポリカーボネート樹脂は、アクリル樹脂等に比べてアウトガスが発生しやすい材料とし
て知られている。このため、アウトガスの問題を抑制すべく、従来はポリカーボネート樹
脂板にハードコート層を設ける等の工夫がなされていたが、本発明の粘着シートの製造方
法で得られる粘着シートを使用する場合は、ハードコート層を有していないポリカーボネ
ート樹脂板であっても、アウトガスによる影響を抑制することができる。アウトガスは、
例えば、貼り合わせ時の活性エネルギー線の照射時に発生することがあるし、あるいは、
貼り合わせ後、時間と共に徐々に発生することも考えられる。
【0086】
本発明の積層体の製造方法で得られる積層体は、耐アウトガス性に優れることから、液
晶ディスプレイ(LCD)等の表示装置、タッチパネル等の入力装置等の用途に特に好適
に使用することができる。
【実施例
【0087】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例の態様に
限定されるものではない。
【0088】
(実施例1)
<粘着剤組成物(a-1)の調製>
2-ブチルアクリレート(BA)を45質量部、メチルアクリレート(MA)を40質
量部、4-ヒドロキシブチルアクリレート(4HBA)を15質量部となるように配合し
、ラジカル重合開始剤として2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)を
溶液へ溶解した。溶液を60℃に加熱してランダム共重合させ、アクリル共重合体をベー
スポリマーとして得た。このアクリル共重合体の重量平均分子量は54万であった。
【0089】
このアクリル共重合体に含まれる溶剤分を完全に除去した後、アクリル共重合体35質
量部に、分子内に重合性二重結合を一つ有する単量体(重合性単量体M1)として、2-
ブチルアクリレート(BA)30質量部、メチルアクリレート(MA)25質量部及び4
-ヒドロキシブチルアクリレート(4HBA)9質量部の混合物を加え、さらに、分子内
に重合性二重結合を二つ有する単量体(重合性単量体M2)として、ビスフェノールA
エチレンオキサイド変性ジアクリレート(東亞合成(株)社製「アロニックス M211
B」)を1質量部加えて、混合物A-1を得た。
【0090】
混合物A-1に、第1の光重合開始剤として、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジ
フェニルフォスフィンオキサイド(BASFジャパン社製「IRGACURE TPO」
、以下、「IrgTPO」と表記)を、第2の光重合開始剤として、4-メチルベンゾフ
ェノン(LAMBSON社製「SPEED CURE MBP」、以下、「4MBP」と
表記)を加えて粘着剤組成物(a-1)を調製した。第1の光重合開始剤(IrgTPO
)の使用量は、100質量部の混合物A-1に対し0.5質量部とし、第2の光重合開始
剤(4MBP)の使用量は、100質量部の混合物A-1に対し0.5質量部とした。
【0091】
<粘着剤層(粘着シート)の形成>
シリコーン系剥離剤で処理された剥離剤層を備えた厚さ100μmのポリエチレンテレ
フタレートフィルム(重セパレータフィルム、帝人デュポンフィルム(株)製、離型処理
されたポリエチレンテレフタレートフィルム)を第1の剥離シートとして準備した。この
第1の剥離シート表面に上記粘着剤組成物(a-1)を、塗工量が150μm/mにな
るようにアプリケーターで均一に塗工し塗膜を形成した(第1工程)。次いで、塗膜の表
面に、第1の剥離シートより剥離性の高い離型処理が施された厚さ75μmである第2の
剥離シート(軽セパレータフィルム、帝人デュポンフィルム(株)製、離型処理されたポ
リエチレンテレフタレートフィルム)を貼合した。その後、フィルターにより360nm
未満の波長の光をカットした高圧水銀ランプにより、積算光量が500mJになるように
光を塗膜に照射して、剥離力差のある1対の剥離シートに挟まれた第1の剥離シート/粘
着剤層/第2の剥離シートの構成の剥離シート付き粘着シートを得た(第2工程)。
【0092】
(実施例2)
第1の光重合開始剤(IrgTPO)及び第2の光重合開始剤(4MBP)の使用量を
いずれも100質量部の混合物A-1に対して1質量部に変更したこと以外は、実施例1
と同様の方法で粘着シートを得た。
【0093】
(実施例3)
第1の光重合開始剤をビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィ
ンオキサイド(BASFジャパン社製、IRGACURE819、以下、「Irg819
」と表記)に変更し、第2の光重合開始剤をベンゾイルギ酸メチル(BASFジャパン社
製、IRGACURE MBF、以下、「IrgMBF」と表記)に変更したこと以外は
、実施例1と同様の方法で粘着シートを得た。
【0094】
(実施例4)
第1の光重合開始剤(Irg819)及び第2の光重合開始剤(IrgMBF)の使用
量をいずれも100質量部の混合物A-1に対して1質量部に変更したこと以外は、実施
例3と同様の方法で粘着シートを得た。
【0095】
(比較例1)
第1の光重合開始剤を使用しなかったこと以外は、実施例1と同様の方法で粘着シート
を得た。
【0096】
(比較例2)
第2の光重合開始剤を使用しなかったこと以外は、実施例1と同様の方法で粘着シート
を得た。
【0097】
(比較例3)
前述の特許文献1を参照し、2-エチルヘキシルアクリレート(2EHA)60質量%
、4-アクリロイルモルホリン5質量%、イソボルニルアクリレート15質量%、N-ビ
ニルアセトアミド5質量%及び2-ヒドロキシエチルアクリレート15質量%を溶液重合
法により共重合させて、架橋性(メタ)アクリル共重合体(b-1)を調製した。この架
橋性(メタ)アクリル共重合体(b-1)の分子量は重量平均分子量(Mw)51万であ
った。
【0098】
この架橋性(メタ)アクリル共重合体(b-1)100質量部に対して、架橋剤として
トリメチロールプロパン変性トリレンジイソシアネート(トーヨーケム社製,BHS85
15)0.15質量部と、シランカップリング剤としての3-グリシドキシプロピルトリ
メトキシシラン(信越化学工業社製,KBM-403)0.30質量部とを添加し、固形
分濃度が35質量%となるように溶剤としてメチルエチルケトンを添加して粘着剤組成物
(B-1)を得た。
【0099】
次いで、第1の剥離シートとして、シリコーン系剥離剤で処理された易接着剤層を備え
た厚さ100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(重セパレータフィルム、帝人
デュポンフィルム社製、離型処理されたポリエチレンテレフタレートフィルム)を準備し
た。この第1の剥離シートの易接着剤層側の面に、乾燥後の塗工厚みが150μmになる
ように粘着剤組成物(B-1)を、アプリケーターにて均一に塗工し、粘着剤組成物(B
-1)の塗膜を作製した後、90℃の空気循環式恒温オーブンで3分間乾燥処理すること
で、第1の剥離シートの表面に粘着剤層(A-1)を形成した。
【0100】
次いで、第1の剥離シートより剥離性の高い離型処理が施された厚さ75μmの第2の
剥離シート(軽セパレータフィルム、帝人デュポンフィルム社製、離型処理されたポリエ
チレンテレフタレートフィルム)を準備した。この第2の剥離シートを、第1の剥離シー
トの表面に形成されている粘着剤層(B-1)の上に貼り合わせた。これにより、粘着剤
層(B-1)が剥離力差のある1対の剥離シートに挟まれた第1の剥離シート/粘着剤層
(B-1)/第2の剥離シートの構成の剥離シート付き粘着シートが得られた。この剥離
シート付き粘着シートを23℃、相対湿度50%の条件で7日間静置して、エージング処
理を行った。
【0101】
(比較例4)
前述の特許文献2の実施例1記載の方法に従って、次のように架橋性アクリル共重合体
を調製した。2-エチルヘキシルアクリレート(2EHA)63質量部、N-ビニル-2
-ピロリドン(NVP)15質量部、メタクリル酸メチル(MMA)9質量部、2-ヒド
ロキシエチルアクリレート(2HEA)13質量部、ラジカル重合開始剤として2,2’
-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)を酢酸エチルへ溶解した。溶液を65℃
に加熱してランダム共重合させ、架橋性アクリル共重合体(b-2)を得た。架橋性アク
リル共重合体(b-2)の重量平均分子量は78万であった。
この架橋性アクリル共重合体(b-2)100質量部に対して、架橋剤としてイソシア
ネート系架橋剤(三井化学社製、タケネートD110N)を0.3質量部、架橋促進剤と
してエチレンジアミンにプロピレンオキシドを付加したポリオール(アデカ社製、EDP
-300)を0.2質量部、シランカップリング剤として3-グリシドキシプロピルトリ
メトキシシラン(信越化学工業製、KBM-403)0.15重量を添加し、固形分濃度
が30質量%となるように溶剤として酢酸エチルを添加して粘着剤組成物(B-2)を得
た。次いで、比較例3の粘着剤層(B-1)の作製方法において、粘着剤組成物(B-1
)を粘着剤組成物(B-2)に変更し、かつ、乾燥処理を60℃の空気循環式恒温オーブ
ンで1分間乾燥後さらに155℃で1分間乾燥する条件に変更すると共に、エージング処
理を23℃で120時間の処理に変更した以外は比較例3と同様の手順で剥離シート付き
粘着シートを得た。この剥離シート付き粘着シートは、粘着剤層(B-2)を有していた
【0102】
<耐アウトガス性評価>
(試験例1-1)
実施例1~4及び比較例1~2で作製した剥離シート付き粘着シートを用いて、耐アウ
トガス性評価を以下のように行った。剥離シート付き粘着シートにおいて、軽セパレータ
フィルムである第2の剥離シートを剥がして粘着剤層を露出させ、該粘着剤層に対して第
1部材として厚み1mmのポリカーボネート樹脂板(帝人社製のパンライトシートPC-
1151)に貼り合わせた。次に、重セパレータフィルムである第1の剥離シートを剥が
し、露出した粘着剤層に対し、第2部材として100mm×200mmの大きさのガラス
板を全面に貼着した。これにより、ポリカーボネート樹脂板/粘着剤層/ガラス板で構成
される積層体サンプルを得た(第3工程)。積層体サンプルをオートクレーブにて、40
℃、0.5MPaで30分処理した後、ガラス板側から波長254nm~436nmの間
に発行スペクトルを有する高圧水銀ランプにて積算光量が3000mJ/cmとなるよ
うに照射して、100mm×200mmの大きさの試験サンプルを得た(第4工程)。試
験サンプルを85℃、相対湿度85%の環境下に置き、2時間後及び100時間後のそれ
ぞれにおいて、試験サンプルを目視観察し、気泡、浮き及び剥がれを下記の3種類の判定
基準で評価した。
◎:2時間後及び100時間後のいずれも気泡、浮き及び剥がれが見られなかった。
○:2時間後に微小気泡が観察されるが、100時間後には気泡、浮き及び剥がれが見ら
れなかった。
×:2時間後にも100時間後にも気泡、浮き及び剥がれが見られた。
【0103】
(試験例1-2)
剥離シート付き粘着シートとして、比較例3及び4で作製した剥離シート付き粘着シー
トを用いたこと、及び、積層体サンプルに紫外線を照射しなかったこと以外は試験例1-
1と同様の方法で、試験サンプルを得た。試験サンプルを目視観察し、気泡、浮き及び剥
がれを試験例1-1と同様の判定基準で評価した。
【0104】
(試験例2-1)
実施例1~4及び比較例1~2で作製した剥離シート付き粘着シートを用いて、耐アウ
トガス性評価を以下のように行った。剥離シート付き粘着シートにおいて、軽セパレータ
フィルムである第2の剥離シートを剥がして粘着剤層を露出させ該粘着剤層に対して、第
1部材として厚み1mmのハードコート付ポリカーボネート樹脂板(三菱ガス化学社製の
ユーピロン・シートMR-58U)のハードコート層が付いていない側に貼り合わせた。
次に、重セパレータフィルムである第1の剥離シートを剥がし、露出した粘着剤層に対し
、第2部材として100mm×200mmの大きさのガラス板を全面に貼着した。これに
より、ポリカーボネート樹脂板/粘着剤層/ガラス板で構成される積層体サンプルを得た
(第3工程)。積層体サンプルをオートクレーブにて、40℃、0.5MPaで30分処
理した後、ガラス板側から波長254nm~436nmの間に発行スペクトルを有する高
圧水銀ランプにて積算光量が3000mJ/cmとなるように照射して、100mm×
200mmの大きさの試験サンプルを得た(第4工程)。試験サンプルを85℃、相対湿
度85%の環境下に置き、2時間後及び100時間後のそれぞれにおいて、試験サンプル
を目視観察し、気泡、浮き及び剥がれを下記の3種類の判定基準で評価した。
◎:2時間後及び100時間後のいずれも気泡、浮き及び剥がれが見られなかった。
○:2時間後に微小気泡が観察されるが、100時間後には気泡、浮き及び剥がれが見ら
れなかった。
×:2時間後にも100時間後にも気泡、浮き及び剥がれが見られた。
【0105】
(試験例2-2)
剥離シート付き粘着シートとして、比較例3及び4で作製した剥離シート付き粘着シー
トを用いたこと、及び、積層体サンプルに紫外線を照射しなかったこと以外は試験例2-
1と同様の方法で、試験サンプルを得た。試験サンプルを目視観察し、気泡、浮き及び剥
がれを試験例2-1と同様の判定基準で評価した。
【0106】
(試験例3-1)
実施例1~4及び比較例1~2で作製した剥離シート付き粘着シートを用いて、耐アウ
トガス性評価を以下のように行った。剥離シート付き粘着シートにおいて、軽セパレータ
フィルムである第2の剥離シートを剥がして粘着剤層を露出させ、該粘着剤層に対して、
第2部材として厚み125μmのITOフィルム(尾池工業社製 KB300)を貼り合
わせた。次に、重セパレータフィルムである第1の剥離シートを剥がし、露出した粘着剤
層に対し、第1部材として100mm×200mmの大きさの厚さ1mmのポリメチルメ
タクリレート(PMMA)からなるアクリル樹脂板(三菱レイヨン社製,アクリライト
MR-200)を全面に貼着した。これにより、ポリメチルメタクリレート樹脂板/粘着
剤層/ITOフィルムで構成される積層体サンプルを得た(第3工程)。積層体サンプル
をオートクレーブにて、40℃、0.5MPaで30分処理した後、ガラス板側から波長
254nm~436nmの間に発行スペクトルを有する高圧水銀ランプにて積算光量が3
000mJ/cmとなるように照射して、100mm×200mmの大きさの試験サン
プルを得た(第4工程)。試験サンプルを85℃、相対湿度85%の環境下に置き、2時
間後及び100時間後のそれぞれにおいて、試験サンプルを目視観察し、気泡、浮き及び
剥がれを下記の3種類の判定基準で評価した。
◎:2時間後及び100時間後のいずれも気泡、浮き及び剥がれが見られなかった。
○:2時間後に微小気泡が観察されるが、100時間後には気泡、浮き及び剥がれが見ら
れなかった。
×:2時間後にも100時間後にも気泡、浮き及び剥がれが見られた。
【0107】
(試験例3-2)
剥離シート付き粘着シートとして、比較例3及び4で作製した剥離シート付き粘着シー
トを用いたこと、及び、積層体サンプルに紫外線を照射しなかったこと以外は試験例3-
1と同様の方法で、試験サンプルを得た。試験サンプルを目視観察し、気泡、浮き及び剥
がれを試験例3-1と同様の判定基準で評価した。
【0108】
(評価結果)
表1に、耐アウトガス性の評価結果を示す。実施例1~4で得られた粘着シートと、比
較例1~4で得られた粘着シートとの対比から、実施例1~4で得られた粘着シートでは
耐アウトガス性に優れ、特にハードコート層を有していないポリカーボネートフィルムに
対しても優れた耐アウトガス性を有していることがわかった。
【0109】
【表1】