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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-04
(45)【発行日】2023-12-12
(54)【発明の名称】制御装置、方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   F02D 29/02 20060101AFI20231205BHJP
【FI】
F02D29/02 F
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022166776
(22)【出願日】2022-10-18
(62)【分割の表示】P 2019086023の分割
【原出願日】2019-04-26
(65)【公開番号】P2022183260
(43)【公開日】2022-12-08
【審査請求日】2022-10-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001276
【氏名又は名称】弁理士法人小笠原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川西 努
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 俊
(72)【発明者】
【氏名】西宇 正弘
【審査官】北村 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-001351(JP,A)
【文献】特開2004-050910(JP,A)
【文献】特開2017-030595(JP,A)
【文献】特開2017-094835(JP,A)
【文献】特開2013-184651(JP,A)
【文献】特開2016-088494(JP,A)
【文献】特開2006-297994(JP,A)
【文献】特開平10-280990(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 29/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の惰行状態において、複数のアクチュエータを用いて車両の進行方向を正の向きとしたときの負の駆動力を発生させる制御装置であって、
前記複数のアクチュエータのうち前記負の駆動力を発生させることが常時可能ではない一部のアクチュエータが負の駆動力を発生できなくなる不可状態を検出する検出部と、
第1期間以内に前記不可状態となることが予測される予測状態を検出する予測部と、
前記一部のアクチュエータに発生させる駆動力を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
記予測状態が検出された場合前記不可状態の前において、前記一部のアクチュエータに発生させる前記負の駆動力を、負から0の範囲で、前回の惰行状態において前記一部のアクチュエータに発生させた前記負の駆動力より徐々に大きくし
前記予測状態が検出された場合の前記不可状態において、前記一部のアクチュエータに駆動力を発生させず
記不可状態の解消後において、前記一部のアクチュエータに発生させる前記負の駆動力を、前回の惰行状態において前記一部のアクチュエータに発生させた前記負の駆動力より徐々に小さくする、
御装置。
【請求項2】
前記一部のアクチュエータ部は発電機を含み、
前記検出部は、前記不可状態として、前記発電機によって充電される電池の状態が所定の状態となったことを検出する、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記所定の状態は、前記電池の蓄電率、温度、充電量の積算値の少なくとも1つが所定の閾値より大きくなった状態である、
請求項に記載の制御装置。
【請求項4】
車両の惰行状態において、複数のアクチュエータを用いて車両の進行方向を正の向きとしたときの負の駆動力を発生させる制御装置が実行する方法であって、
前記複数のアクチュエータのうち前記負の駆動力を発生させることが常時可能ではない一部のアクチュエータが負の駆動力を発生できなくなる不可状態を検出するステップと、
第1期間以内に前記不可状態となることが予測される予測状態を検出するステップと、
前記予測状態が検出された場合前記不可状態の前において、前記一部のアクチュエータに発生させる前記負の駆動力を、負から0の範囲で、前回の惰行状態において前記一部のアクチュエータに発生させた前記負の駆動力より徐々に大きくするステップと、
前記予測状態が検出された場合前記不可状態において、前記一部のアクチュエータに駆動力を発生させないステップと、
前記不可状態の解消後において、前記一部のアクチュエータに発生させる前記負の駆動力を、前回の惰行状態において前記一部のアクチュエータに発生させた前記負の駆動力より徐々に小さくするステップと、
を含む、方法。
【請求項5】
車両の惰行状態において、複数のアクチュエータを用いて車両の進行方向を正の向きとしたときの負の駆動力を発生させる制御装置のコンピュータに実行させるプログラムであって、
前記複数のアクチュエータのうち前記負の駆動力を発生させることが常時可能ではない一部のアクチュエータが負の駆動力を発生できなくなる不可状態を検出するステップと、
第1期間以内に前記不可状態となることが予測される予測状態を検出するステップと、
前記予測状態が検出された場合前記不可状態の前において、前記一部のアクチュエータに発生させる前記負の駆動力を、負から0の範囲で、前回の惰行状態において前記一部のアクチュエータに発生させた前記負の駆動力より徐々に大きくするステップと、
前記予測状態が検出された場合前記不可状態において、前記一部のアクチュエータに駆動力を発生させないステップと、
前記不可状態の解消後において、前記一部のアクチュエータに発生させる前記負の駆動力を、前回の惰行状態において前記一部のアクチュエータに発生させた前記負の駆動力より徐々に小さくするステップと、
を含む、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載され車両の制動力を制御する制御装置などに関する。
【背景技術】
【0002】
車両においては、乗り心地や操作感の向上のため、各種の技術が提案されている。例えば、特許文献1においては、車両の減速時に、触媒高温時の触媒劣化防止のため燃料カットを禁止する場合は、期待される制動力が得られるよう、オルタネータ、エアコン、ブレーキ、ギアシフト等により制動力を補わせる燃料カット制御装置を開示している。また、特許文献2は、ユーザの操作量に応じて決定される制御目標を、駆動系システム、制御系システムに、受け持ち割合に応じて分配する一方で、安定化システムには分配前の制御目標を送信して補正処理を行わせることで、安定化システムによる制御目標の分配値の同期を不要として遅延を低減し、操作に対する応答性を向上させる車両統合制御装置を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平10-280990号公報
【文献】特開2006-297994号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両の好適な乗り心地や操作感のためには、例えばユーザがアクセルペダルを踏むのをやめた後、アクセルペダルもブレーキペダルも踏んでいない惰行状態となった時に、車両に好適な減速加速度を発生させることが好ましい。十分な減速加速度を得るために、エンジン、変速機だけでなくオルタネータやエアコン等、多くのアクチュエータを用いて制動力(車両の進行方向を正の向きとしたときの負の駆動力)を発生させる場合、以下のような課題がある。
【0005】
すなわち、一部のアクチュエータは車両の走行中に負の駆動力を常時発生させることができない場合がある。例えば、オルタネータやモータは、回生発電によって負の駆動力を発生させることができるが、回生発電によって得られた電力を充電する電池の蓄電率等の状態によっては、電池を保護するため回生発電を停止する必要がある。惰行状態において負の駆動力を発生させるのに、このような負の駆動力を常時発生させることができないアクチュエータを用いる場合、惰行状態となるごとに発生させることができる負の駆動力に変動が生じるおそれがある。このような変動の幅が大きいと、惰行状態成立ごとに得られる減速感が大きく異なって、乗り心地や操作の安定感が損なわれるおそれがある。
【0006】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、車両の惰行状態において好適な乗り心地や操作感を実現できる制御装置などを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の一局面は、車両の惰行状態において、複数のアクチュエータを用いて車両の進行方向を正の向きとしたときの負の駆動力を発生させる制御装置であって、複数のアクチュエータのうちの一部の第1アクチュエータが負の駆動力を発生できなくなる不可状態を検出する検出部と、第1期間以内に不可状態となることが予測される予測状態を検出する予測部と、予測状態が検出された場合、不可状態の前において、第1アクチュエータに発生させる負の駆動力を大きくし、不可状態において、第1アクチュエータに駆動力を発生させず、不可状態の後において、第1アクチュエータに発生させる負の駆動力を小さくする制御部と、を備える、制御装置である。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、車両の惰行状態において好適な乗り心地や操作感を実現できる制御装置などを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係る制動力制御装置のその周辺の構成を示す図
図2】本発明の一実施形態に係る処理を示す図
図3】本発明の一実施形態に係る目標駆動力のマップの例を示す図
図4】本発明の一実施形態に係る目標駆動力のマップの例を示す図
図5】本発明の一実施形態に係る目標駆動力のマップの例を示す図
図6】本発明の一実施形態に係る予測状態および不可状態の例を示す図
図7】本発明の一実施形態に係る予測状態および不可状態の例を示す図
図8】本発明の一実施形態に係る予測状態および不可状態の例を示す図
図9】本発明の一実施形態に係る制御の例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に係る制動力制御装置(又は制御装置)は、惰行状態において、複数のアクチュエータを用いて負の目標駆動力を発生させる。制動力制御装置は、一部のアクチュエータが負の駆動力を一時的に発生させることができなくなる不可状態の成立と、近い将来に不可状態となることが予測される予測状態の成立とを検出する。制動力制御装置は、予測状態が成立すると、不可状態が成立する前において、惰行状態が発生するたび、そのアクチュエータに発生させる負の駆動力を徐々に大きくし(第1処理)、不可状態において、惰行状態が発生しても、そのアクチュエータに駆動力を発生させず(第2処理)、不可状態の後において、惰行状態が発生するたび、そのアクチュエータに発生させる負の駆動力を目標駆動力まで徐々に小さくする(第3処理)。これにより、一部のアクチュエータが一時的に負の駆動力を発生させることができなくなることに起因する、惰行状態となるごとに発生させる負の駆動力の急峻な変動が抑制され、好適な乗り心地や操作の安定感を得ることができる。
【0011】
(実施形態)
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、速度、加速度、駆動力等は、車両進行方向を正とする符号付きの値で表現する。
【0012】
<構成>
図1に、本実施形態に係る制動力制御装置100とその周辺の構成を示す。制動力制御装置100は車両に搭載され、惰行状態において、第1アクチュエータ部10および第2アクチュエータ部20にそれぞれ含まれる複数のアクチュエータに負の駆動力(制動力)を発生させることができる。
【0013】
第1アクチュエータ部10は、例えばエンジンや変速機等である。第1アクチュエータ部10は、機械抵抗等の、車両の走行中に常時発生する負荷によって、指示があればいつでも一定以下の負の駆動力を発生させることができるアクチュエータを1つ以上含む。
【0014】
第2アクチュエータ部20は、例えば、オルタネータやモータのような回生発電が可能な発電機、あるいは、エンジンの回転によって駆動されるエアコンのコンプレッサ等である。例えば、発電機は、電池の蓄電率が高い場合は回生発電が不可であるため、負の駆動力を発生させることができない。また、エアコンは、ユーザの設定や車室内外の温度等によっては動作不可となり、コンプレッサによって負の駆動力を発生させることができない。このように、第2アクチュエータ部20は、車両の走行中に常時負荷を発生させることができず、指示が応じて負の駆動力を発生させることができない場合があるアクチュエータである。第1アクチュエータ部10および第2アクチュエータ部20は、それぞれに含まれるアクチュエータに関する各種処理を行い、制動力制御装置100からの指示に応じて適宜駆動力を発生させることができる制御部をそれぞれ含む。また、第1アクチュエータ部10が発生させる駆動力と第2アクチュエータ部20が発生させる駆動力との合計が車両を駆動する総駆動力となる。
【0015】
制動力制御装置100は、目標駆動力取得部101、最小駆動力取得部102、予測部103、検出部104、制御部105を含む。
【0016】
目標駆動力取得部101は、惰行状態において、発生させる総駆動力の目標値である目標駆動力を取得する。
【0017】
最小駆動力取得部102は、第1アクチュエータ部10が現在発生させることができる最小の負の駆動力を取得する。
【0018】
予測部103は、第2アクチュエータ部20による負の駆動力の発生が不可となることが予測される状態として定められた所定の予測状態を検出する。
【0019】
検出部104は、第2アクチュエータ部20による負の駆動力の発生ができない状態である不可状態を検出する。
【0020】
制御部105は、上述の各部を適宜制御して、惰行状態において第1アクチュエータ部10が発生させる負の駆動力と第2アクチュエータ部20が発生させる負の駆動力を決定し、第1アクチュエータ部10および第2アクチュエータ部20に指示して、決定したそれぞれの負の制動力を発生させる。
【0021】
<処理>
図2は、制動力制御装置100が実行する処理の一例を示すフローチャートである。図3を参照して、制動力制御装置100による負の駆動力の制御の一例を説明する。本処理は、車両がパワーオンとなり走行可能な状態において、実行される。
【0022】
(ステップS101):制御部105は、車両が備えるアクセルペダルセンサおよびブレーキペダルセンサがそれぞれ検出する、ユーザによるアクセルペダルの操作量およびブレーキペダルの操作量を常時取得する。制御部105は、取得したアクセルペダルの操作量およびブレーキペダルの操作量に基づいて、ユーザがアクセルペダル操作を行っておらず(操作量0の状態)、かつ、ユーザがブレーキペダル操作を行っていない状態(操作量0の状態)であることを検出することによって、車両が惰行状態であることを検出する。制御部105は、惰行状態を検出した場合はステップS102に進み、惰行状態を検出していない場合は、本ステップS101を繰り返し、車両が惰行状態となることを待機する。
【0023】
(ステップS102):目標駆動力取得部101は、惰行状態に発生させる総駆動力の目標値である目標駆動力を取得する。目標駆動力は、惰行状態の成立時にユーザが期待すると想定される駆動力であり、予め定められた方法により算出される。目標駆動力取得部101は、他の装置が算出した目標駆動力を取得してもよいし、目標駆動力取得部101が、算出に必要な情報をセンサや他の装置から取得して目標駆動力を算出してもよい。
【0024】
目標駆動力の算出方法の各例を説明する。各例では、いずれも、車速に対して目標駆動力を予め定めたマップを用いる。図3、4、5は、各例におけるマップを模式的に示す。
【0025】
図3に示す例では、車速が大きくなるほど、目標駆動力が小さくなる。具体的な値は、実験等による評価を行って定めることができる。
【0026】
図4に示す例では、車速に加え、ユーザが指定する走行特性を表すドライブモードを考慮し、ドライブモードが低燃費での走行を指定するエコモードである場合には、エコモード以外のドライブモードである通常モードの場合より、同じ速度においては目標駆動力が大きくなるように設定される。例えば、図3に示すマップを通常モードの場合のマップとし、図3に示すマップの目標駆動力の値に1より小さい正の係数αを乗算した値によって、図4に示すエコモードにおけるマップを生成することができる。同様に、例えば、ドライブモードがスポーティな走行を指定するスポーツモードである場合には、通常モードの場合より、同じ速度においては目標駆動力が小さくなるように設定してもよい。
【0027】
図5に示す例では、車速に加え、路面勾配を考慮し、路面が降坂路である場合は、平坦路である場合に比べて、同じ速度においては目標駆動力が小さくなるように設定される。例えば、図3に示すマップを平坦路の場合のマップとし、図3に示すマップの目標駆動力の値に1より大きい係数βを乗算した値によって、図5に示す降坂路におけるマップを生成することができる。
【0028】
また、路面が登坂路である場合は、平坦路である場合に比べて、同じ速度においては、目標駆動力が大きくなるように設定されてもよい。例えば、図3に示すマップを平坦路の場合のマップとし、図3に示すマップの目標駆動力の値に1より小さい正の係数γを乗算した値によって、登坂路におけるマップを生成することができる。
【0029】
また、ドライブモードと路面勾配との両方に基づいて、目標駆動力を算出してもよい。例えば、図3に示すマップを平坦路かつ通常モードの場合のマップとし、図3に示すマップの目標駆動力の値に係数αおよび係数βを乗算した値によって、降坂路かつエコモードにおけるマップを生成することができる。同様に図3に示すマップの目標駆動力の値に係数αおよび係数γを乗算した値によって、登坂路かつエコモードにおけるマップを生成することができる。
【0030】
目標駆動力の算出のため、車両が備える各種センサやECU(Electronic Control Unit)から出力される各種の情報が用いられる。上述の例では、車両の速度、あるいはさらに、ユーザが指定したドライブモードや路面の勾配をそれぞれ表す情報が用いられる目標駆動力の算出方法は限定されず、上述のように基本となるマップを用意し、車両やその周囲の状態に応じて異なる係数を乗算して算出してもよいし、予め状態ごとに個別に生成したマップを用いてもよい。あるいは、例えば、カメラ、レーダーによって車両前方の所定距離内に他車両が存在することが検出された場合は、これを表す情報を取得して、同じ速度において他車両が存在しない場合より目標駆動力を小さく算出してもよい。
【0031】
(ステップS103):最小駆動力取得部102は、第1アクチュエータ部10から、現在第1アクチュエータ部10が発生させることができる最小の駆動力である最小駆動力を取得する。第1アクチュエータ部10の制御部は、例えばエンジンの暖機状態や変速機の変速比等、第1アクチュエータ部10に含まれるアクチュエータの現在の動作状態による制約、および、これらのアクチュエータに対する他の制御系統からの制御要求等に基づいて最小駆動力を算出することができる。
【0032】
(ステップS104):制御部105は、目標駆動力と最小駆動力とを比較する。目標駆動力が最小駆動力以上である場合、ステップS105に進む。目標駆動力が最小駆動力未満である場合ステップS106に進む。
【0033】
(ステップS105):制御部105は、第1アクチュエータ部10に目標駆動力を発生させる。本ステップでは、第1アクチュエータ部10のみで目標駆動力を発生させることができるので、第2アクチュエータ部20には駆動力を発生させない。その後、ステップS101に進み、次に惰行状態が開始されるのを待機する。
【0034】
(ステップS106):制御部105は、第1アクチュエータ部10に最小駆動力を発生させる。本ステップでは、第1アクチュエータ部10のみで目標駆動力を発生させることができないので、第1アクチュエータ部10に現在発生させることが可能な最小駆動力を発生させる。
【0035】
(ステップS107):制御部105は、予測部103から、近い将来に第2アクチュエータ部20による負の駆動力の発生が不可となることが予測される状態である予測状態が成立しているか否かを表す予測結果を取得する。また、制御部105は、検出部104から第2アクチュエータ部20による負の駆動力の発生ができない状態である不可状態が成立しているか否かを表す検出結果を取得する。
【0036】
以下に、予測部103による予測状態の検出方法および検出部104による不可状態の検出方法の例をいくつか説明する。これらの例においては、第2アクチュエータ部20に含まれるアクチュエータは、発電機(オルタネータまたはモータ)であり、いずれも発電機が回生発電によって得た電力が充電される電池の状態に基づく判定が行われる。
【0037】
図6は、電池の蓄電率(SOC)と、発電機による発電可能な電力との関係を示すグラフである。電池の蓄電率が相対的に高いほど、発電による充電を継続した場合に電池が過充電により品質劣化するおそれがある。そのため、電池の充放電制御において、電池の蓄電率が一定値より高くなると発電可能な量を低減する制限が設けられ、回生発電による負の駆動力の発生可能量も抑制される。さらに、蓄電率が所定の閾値K2より大きくなると発電が不可となり、負の駆動力の発生が不可となる。そこで、一例として、予測部103は、電池の蓄電率が閾値K2より小さい所定の閾値K1より大きくなった状態を、現在から所定期間内に蓄電率が閾値K2より大きくなる可能性が高い状態である予測状態とすることができる。また、検出部104は、電池の蓄電率が実際に閾値K2より大きくなった状態を不可状態とすることができる。
【0038】
図7は、電池の温度と、発電機による発電可能な電力との関係を示すグラフである。電池の温度が一定値より高い場合、電池の特性上充電可能量が低下する。そのため、電池の充放電制御において、電池の温度が一定値より高くなると発電可能な量を低減する制限が設けられ、回生発電による負の駆動力の発生可能量も抑制される。さらに、温度が所定の閾値K4より大きくなると発電が不可となり、負の駆動力の発生が不可となる。そこで、一例として、予測部103は、電池の温度が閾値K4より小さい所定の閾値K3より大きくなった状態を、現在から所定期間内に温度が閾値K4より大きくなる可能性が高い状態である予測状態とすることができる。また、検出部104は、電池の温度が実際に閾値K4より大きくなった状態を不可状態とすることができる。
【0039】
図8は、電池の充電量積算値と、発電機による発電可能な電力との関係を示すグラフである。充電開始からの電池の充電量の積算値が相対的に大きい場合、充電を継続すると電池が品質劣化したりするおそれがある。そのため、電池の充放電制御において、電池の充電量積算値が所定の閾値K6より大きくなると発電が不可となり、負の駆動力の発生が不可となる。そこで、一例として、予測部103は、電池の充電量積算値が閾値K6より小さい所定の閾値K5より大きくなった状態を、現在から所定期間内に充電量積算値が閾値K6より大きくなる可能性が高い状態である予測状態とすることができる。また、検出部104は、電池の充電量積算値が実際に閾値K5より大きくなった状態を不可状態とすることができる。なお、以上の各例においては、予測状態の成立時において、不可状態が成立している場合もありうる。
【0040】
上述した方法は例示であって、予測状態や不可状態の検出方法はこれらに限定されず、上述した各例を組み合わせてもよいし、他の方法を用いてもよい。たとえば電池の蓄電率、温度、充電量積算値のいずれも監視して、少なくとも1つが所定の閾値を超えた状態や、いずれか2つ以上がそれぞれ所定の閾値を超えた状態を予測状態としてもよい。また、蓄電率、温度、充電量積算値以外にも、電池の状態を表す各種の測定値や測定値に基づく計算値を用いて、その値が所定範囲にある状態を予測状態や不可状態としてもよい。また、第2アクチュエータ部20に含まれるアクチュエータがエアコンのコンプレッサ等、他のアクチュエータである場合は、上述の例と同様、負の駆動力の発生が不可となる条件に応じて、適宜予測状態や不可状態を定義すればよい。予測部103、検出部104は、第2アクチュエータ部20の制御部から、それぞれ予測状態、不可状態を表す情報を取得してもよいし、センサや他の装置から電池の温度等、所定の監視対象の情報を取得し、これに基づいて、予測状態、不可状態の検出を行ってもよい。
【0041】
(ステップS108):制御部105は、不可状態が成立していれば、ステップS101に進み、次に惰行状態が開始されるのを待機し、不可状態が成立していなければ、ステップS109に進む。
【0042】
(ステップS109):制御部105は、予測状態が成立していれば、ステップS110に進み、予測状態が成立していなければ、ステップS112に進む。
【0043】
(ステップS110):制御部105は、前回の惰行状態において、第2アクチュエータ部20に負の駆動力を発生させた場合、最小駆動力と、前回の惰行状態において発生させた総駆動力に正の第1所定値δを加算した値である加算値とを比較する。加算値が最小駆動力より小さい場合、ステップS111に進む。加算値が最小駆動力以上である場合、ステップS101に進み、次に惰行状態が開始されるのを待機する。なお、前回の惰行状態において、第2アクチュエータ部20に負の駆動力を発生させなかった場合は、本ステップにおいて、例えば、第2アクチュエータ部20に、目標駆動力に正の第1所定値δを加算した値から最小駆動力を減算した値に相当する負の駆動力を発生させて、ステップS101に進めばよい。
【0044】
(ステップS111):制御部105は、第2アクチュエータ部20に発生させる負の駆動力を、最小駆動力との合計が上述の加算値に相当する駆動力となるようにする。すなわち、第2アクチュエータ部20に、加算値から最小駆動力を減算した値に相当する負の駆動力を発生させる。その後、ステップS101に進み、次に惰行状態が開始されるのを待機する。
【0045】
(ステップS112):制御部105は、目標駆動力と、前回の惰行状態において発生させた総駆動力に正の第2所定値δ’を減算した値である減算値とを比較する。減算値が目標駆動力より大きい場合、ステップS113に進む。減算値が目標駆動力以下である場合、ステップS114に進む。
【0046】
(ステップS113):制御部105は、第2アクチュエータ部20に発生させる負の駆動力を、最小駆動力との合計が上述の減算値に相当する駆動力となるようにする。すなわち、第2アクチュエータ部20に、減算値から最小駆動力を減算した値に相当する負の駆動力を発生させる。その後、ステップS101に進み、次に惰行状態が開始されるのを待機する。
【0047】
(ステップS114):制御部105は、第2アクチュエータ部20に発生させる負の駆動力を、最小駆動力との合計が上述の目標駆動力となるようにする。すなわち、第2アクチュエータ部20に、目標駆動力から最小駆動力を減算した値に相当する負の駆動力を発生させる。その後、ステップS101に進み、次に惰行状態が開始されるのを待機する。
【0048】
以上の処理に基づく制御の例を説明する。図9に横軸に時刻を取り、縦軸に惰行状態、予測状態、不可状態のそれぞれの成立、不成立と、総駆動力とを示す。図9には、また、総駆動力には、その内訳として、第1アクチュエータ部10が発生させる負の駆動力の相当分と、第2アクチュエータ部20が発生させる負の駆動力の相当分とを、それぞれハッチングで示す。図9には、分かりやすい例として、目標駆動力、最小駆動力の変動がほぼなく、また、目標駆動力が最小駆動力より小さい状態が継続する場合を模式的に示す。
【0049】
時刻T1までは、ユーザがアクセルペダルを操作しており、アクセルペダルの操作量に応じた従来の制御が実行され正の駆動力が発生している。
【0050】
時刻T1において、ユーザがアクセルペダル操作をやめることにより、車両はアクセルペダル操作もブレーキペダル操作もされていない惰行状態となる。時刻T1において、目標駆動力が最小駆動力より小さく、また、不可状態および予測状態は不成立である。また、前回の惰行状態において第1アクチュエータ部10が発生させた負の駆動力と第2アクチュエータ部20とが発生させた駆動力との合計である総駆動力が、目標駆動力と等しいものとする。この場合、制御部105は、第1アクチュエータ部10に最小駆動力を発生させ(ステップS106)、第2アクチュエータ部20に(目標駆動力-最小駆動力)を発生させる(ステップS114)ことにより、総駆動力として、目標駆動力を発生させる。その後、時刻T2からT3までは、ユーザがアクセルペダルを操作し、従来のアクセルペダルの操作量に応じた従来の制御が実行され正の駆動力が発生する。
【0051】
時刻T2とT3との間において、予測状態が成立する。時刻T3において再び惰行状態となる。時刻T3において、目標駆動力が最小駆動力より小さく、また、不可状態は不成立であるが、予測状態は成立している。また、前回の惰行状態において発生させた総駆動力に正の第1所定値δを加算した値が最小駆動力より小さい。制御部105は、第1アクチュエータ部10に最小駆動力を発生させ(ステップS106)、第2アクチュエータ部20に((前回の総駆動力+δ)-最小駆動力)を発生させる(ステップS111)ことにより、総駆動力として、(前回の総駆動力+δ)を発生させる。その後、時刻T4からT5までは、ユーザがアクセルペダルを操作し、従来のアクセルペダルの操作量に応じた従来の制御が実行され正の駆動力が発生する。
【0052】
時刻T5において再び惰行状態となる。時刻T5において、目標駆動力が最小駆動力より小さく、また、不可状態は不成立であるが、予測状態は成立している。また、前回の惰行状態において発生させた総駆動力に正の第1所定値δを加算した値が最小駆動力より小さい。制御部105は、第1アクチュエータ部10に最小駆動力を発生させ(ステップS106)、第2アクチュエータ部20に((前回の総駆動力+δ)-最小駆動力)を発生させる(ステップS111)ことにより、総駆動力として、(前回の総駆動力+δ)を発生させる。その後、時刻T6からT7までは、ユーザがアクセルペダルを操作し、従来のアクセルペダルの操作量に応じた従来の制御が実行され正の駆動力が発生する。
【0053】
時刻T7において再び惰行状態となる。時刻T7において、目標駆動力が最小駆動力より小さく、また、不可状態は不成立であるが、予測状態は成立している。また、前回の惰行状態において発生させた総駆動力に正の第1所定値δを加算した値が最小駆動力以上である。制御部105は、第1アクチュエータ部10に最小駆動力を発生させ(ステップS106)、第2アクチュエータ部20には駆動力を発生させないことにより、総駆動力として、最小駆動力を発生させる。その後、時刻T8からT9までは、ユーザがアクセルペダルを操作し、従来のアクセルペダルの操作量に応じた従来の制御が実行され正の駆動力が発生する。
【0054】
時刻T8とT9との間において、不可状態が成立する。時刻T9において再び惰行状態となる。時刻T9において、目標駆動力が最小駆動力より小さく、また、不可状態および予測状態が成立している。制御部105は、第1アクチュエータ部10に最小駆動力を発生させ(ステップS106)、第2アクチュエータ部20には駆動力を発生させない(ステップS110で「いいえ」)ことにより、総駆動力として、最小駆動力を発生させる。その後、時刻T10からT11までは、ユーザがアクセルペダルを操作し、従来のアクセルペダルの操作量に応じた従来の制御が実行され正の駆動力が発生する。
【0055】
時刻T10とT11との間において、予測状態および不可状態が不成立となる。時刻T11において再び惰行状態となる。時刻T11において、目標駆動力が最小駆動力より小さく、また、不可状態および予測状態が不成立となっている。また、前回の惰行状態において発生させた総駆動力に正の第2所定値δ’を減算した値が目標駆動力より大きい。制御部105は、第1アクチュエータ部10に最小駆動力を発生させ(ステップS106)、第2アクチュエータ部20に((前回の総駆動力-δ’)-最小駆動力)を発生させる(ステップS113)ことにより、総駆動力として、(前回の総駆動力-δ’)を発生させる。その後、時刻T12からT13までは、ユーザがアクセルペダルを操作し、従来のアクセルペダルの操作量に応じた従来の制御が実行され正の駆動力が発生する。
【0056】
時刻T13において再び惰行状態となる。時刻T13において、目標駆動力が最小駆動力より小さく、また、不可状態および予測状態が不成立となっている。また、前回の惰行状態において発生させた総駆動力に正の第2所定値δ’を減算した値が目標駆動力より大きい。制御部105は、第1アクチュエータ部10に最小駆動力を発生させ(ステップS106)、第2アクチュエータ部20に((前回の総駆動力-δ’)-最小駆動力)を発生させる(ステップS113)ことにより、総駆動力として、(前回の総駆動力-δ’)を発生させる。その後、時刻T14からT15までは、ユーザがアクセルペダルを操作し、従来のアクセルペダルの操作量に応じた従来の制御が実行され正の駆動力が発生する。
【0057】
時刻T15において再び惰行状態となる。時刻T15において、目標駆動力が最小駆動力より小さく、また、不可状態および予測状態が不成立となっている。また、前回の惰行状態において発生させた総駆動力に正の第2所定値δ’を減算した値が目標駆動力以下である。制御部105は、第1アクチュエータ部10に最小駆動力を発生させ(ステップS106)、第2アクチュエータ部20に(目標駆動力-最小駆動力)を発生させる(ステップS114)ことにより、総駆動力として目標駆動力を発生させる。その後、時刻T16からT17までは、ユーザがアクセルペダルを操作し、従来のアクセルペダルの操作量に応じた従来の制御が実行され正の駆動力が発生する。
【0058】
時刻T17において再び惰行状態となる。時刻T17において、目標駆動力が最小駆動力より小さく、また、不可状態および予測状態が不成立となっている。また、前回の惰行状態において発生させた総駆動力に正の第2所定値δ’を減算した値が目標駆動力以下である。制御部105は、第1アクチュエータ部10に最小駆動力を発生させ(ステップS106)、第2アクチュエータ部20に(目標駆動力-最小駆動力)を発生させる(ステップS114)ことにより、総駆動力として目標駆動力を発生させる。その後、時刻T18以降は、ユーザがアクセルペダルを操作し、従来のアクセルペダルの操作量に応じた従来の制御が実行され正の駆動力が発生する。
【0059】
以上のように、第2アクチュエータ部20が不可状態となる前の期間において、目標駆動力が一定であっても、第2アクチュエータ部20に発生させる駆動力を負から0までの範囲内で、徐々に大きくすることができる。また、第2アクチュエータ部20の不可状態が解除された後の期間において、第2アクチュエータ部20に発生させる駆動力を0から、総駆動力が目標駆動力となるまで、徐々に小さくすることができる。これによって、第2アクチュエータ部20に発生させる駆動力の変動を抑制することができる。
【0060】
図9に示した例においては、目標駆動力、最小駆動力の変動がほぼなく、また、目標駆動力が最小駆動力より小さい状況が継続するものとした。しかし、このような状況でなくても、上述の処理によって、不可状態とその前後において第2アクチュエータ部20に発生させる負の駆動力の変動幅をなるべく抑制することができる。また、惰行状態は、アクセルペダル操作の解除によって成立する惰行状態だけでなく、ブレーキペダル操作の解除によって成立する惰行状態を含めてもよいし、含めなくてもよい。
【0061】
図9に示す例では、惰行状態の継続中、負の駆動力の発生を継続するものとしたが、上述のステップS105、S106、S111、S113、S114で、それぞれ負の駆動力を発生させる期間は、これに限定されない。負の駆動力を発生させる期間は、例えば、車両の加速度が、所望の負の加速度に達するまでの期間とすればよい。所望の負の加速度は、例えば上述した目標駆動力を算出するのと同様の方法を用いて設定することができる。すなわち車両の速度、ドライブモード、路面勾配に応じて用意されたマップ等によって、好適な減速感が得られる加速度として定められた目標駆動力を得ることができる。あるいは、負の駆動力を発生させる期間は、惰行状態発生から予め定めた所定の期間としてもよいし、上述した目標駆動力を算出するのと同様の方法を用いて可変に設定してもよい。
【0062】
なお、上述の閾値K1、K3、K5のような、予測部103が予測状態と判定するためのパラメータは、予測状態が成立してから検出部104が不可状態を検出するまでの期間が、惰行状態間の想定される間隔(例えば20秒)より長くなるように定めることが好ましい。例えば予測状態が成立してから不可状態が成立するまでの期間を1分程度とし、期間中に、惰行状態が3回程度成立することが好ましい。
【0063】
上述の第1所定値δおよび第2所定値δ’のような、第2アクチュエータ部20が発生させる駆動力の惰行状態ごとの変動幅を規定する値は、第2アクチュエータ部20がそれぞれ発生させることができる最小の駆動力等に応じて、適宜設定することが好ましい。例えば、第1所定値δおよび第2所定値δ’は、第2アクチュエータ部20がそれぞれ発生させることができる最小の駆動力の絶対値の3分の1程度とすることが好ましい。
【0064】
また、第1所定値δは、予測状態であるが不可状態でない期間において、第1所定値δに依存して定まる、惰行状態ごとに第2アクチュエータ部20に発生させる駆動力が、予測状態における電池の充電制御等の第2アクチュエータ部20固有の動作制限に反しないように設定することが好ましい。あるいは、第2アクチュエータ部20の制御部が、制動力制御装置100の制御部105からの制御より、電池の充電制御等の制限を優先するようにすれば、第1所定値δは、第2アクチュエータ部20の動作制限を満たすように設定しなくてもよい。
【0065】
また、第2所定値δ’は、予測状態でも不可状態でもない期間中、総駆動力として惰行状態ごとに目標駆動力の発生を維持する場合における目標駆動力の変動への追随性に影響を与えないよう、惰行状態間において想定される目標駆動力の変動幅の絶対値より小さいことが好ましい。第1所定値δおよび第2所定値δ’は同一値であってもよいし異なる値であってもよい。
【0066】
以上のような制御パラメータの好適な設定により、不可状態の前後において、惰行状態が発生するたびに、第2アクチュエータ部20に発生させる負の駆動力を、好適な期間、変動幅および回数で徐変させることができる。
【0067】
なお、第2アクチュエータ部20が発生する負の駆動力の、不可状態に起因する急峻な変動を抑制できれば、第2アクチュエータ部20に発生させる駆動力の決定方法は、上述のものに限定されず、変動量を複数回の機会に分散させ1回あたりの変動幅の絶対値を低減する各種アルゴリズムを採用できる。
【0068】
(効果)
本発明に係る制御装置においては、惰行状態において、複数のアクチュエータを用いて負の目標駆動力を発生させる。制動力制御装置は、一部のアクチュエータが負の駆動力を一時的に発生させることができなくなる不可状態と、近い将来に不可状態となることが予測される予測状態を検出する。制動力制御装置は、予測状態が成立すると不可状態が成立する前において、惰行状態が発生するたび、そのアクチュエータに発生させる負の駆動力を徐々に大きくし(第1処理)、不可状態において、惰行状態が発生しても、そのアクチュエータに駆動力を発生させず(第2処理)、不可状態の後において、惰行状態が発生するたび、そのアクチュエータに発生させる負の駆動力を目標駆動力まで徐々に小さくする(第3処理)。これにより、一部のアクチュエータが一時的に負の駆動力を発生させることができなくなることに起因する、惰行状態となるごとに発生させる負の駆動力の急峻な変動が抑制され、好適な乗り心地や操作の安定感を得ることができる。
【0069】
本発明は、制御装置だけでなく、制御装置が備える1つ以上のコンピュータが実行する制動力制御の方法、制動力制御のプログラムおよびこれを記憶したコンピュータ読み取り可能な非一時的な記録媒体、複数のアクチュエータを含む制動力制御システムおよびこれを搭載した車両等として捉えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明は、車両等に搭載される制動力の制御装置に有用である。
【符号の説明】
【0071】
10 第1アクチュエータ部
20 第2アクチュエータ部
100 制動力制御装置(制御装置)
101 目標駆動力取得部
102 最小駆動力取得部
103 予測部
104 検出部
105 制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9