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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-04
(45)【発行日】2023-12-12
(54)【発明の名称】制御装置、制御方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/02 20060101AFI20231205BHJP
【FI】
H01L21/02 B
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2022504487
(86)(22)【出願日】2021-03-05
(86)【国際出願番号】 JP2021008842
(87)【国際公開番号】W WO2021177466
(87)【国際公開日】2021-09-10
【審査請求日】2022-09-02
(31)【優先権主張番号】P 2020039015
(32)【優先日】2020-03-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】前田 栄裕
(72)【発明者】
【氏名】下田 敏正
(72)【発明者】
【氏名】三ッ石 創
(72)【発明者】
【氏名】森 博史
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼畑 貴匠
(72)【発明者】
【氏名】吉橋 正博
(72)【発明者】
【氏名】塩見 隆
(72)【発明者】
【氏名】前原 義弘
【審査官】小池 英敏
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-129286(JP,A)
【文献】特開2015-142117(JP,A)
【文献】特表2013-531395(JP,A)
【文献】特開2019-071329(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0139946(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/02
H01L 21/68
B23K 20/00
H01L 21/683
H01L 25/065
H01L 25/07
H01L 25/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板貼り合わせ装置で互いに貼り合わされる二つの基板の間に向けて供給するガスの供給条件を制御する制御装置であって、
前記二つの基板は、接触領域が中心に形成された後、前記接触領域が広がることで貼り合わされ、
前記基板の外周部の厚みの態様、前記基板の前記外周部における反りの態様、貼り合わせ工程中に前記基板間に生じるボンディングウェーブの態様、貼り合わされた基板の外周部に生じたボイドの態様、および、貼り合わされた基板間の結合の態様の少なくとも一つに関して計測された計測結果に基づいて前記供給条件を制御する、制御装置。
【請求項2】
前記供給条件は、前記ガスの、基板間への供給流量、供給圧、供給時間、供給方向、湿度、温度、および、基板間からの排出流量、のうちの少なくとも何れかである、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記基板の前記外周部における、前記厚みが相対的に小さい箇所、および、前記反りの反り量が相対的に大きい箇所、のうちの少なくとも何れかの箇所には、相対的に多い供給流量、相対的に高い供給圧、および、相対的に高い温度のうちの少なくとも何れかで前記ガスを供給する、
請求項1または2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記基板の前記外周部における、前記厚みが相対的に小さい箇所、および、前記反りの反り量が相対的に大きい箇所、のうちの少なくとも何れかの箇所に向けて、前記ガスを供給する、
請求項1から3の何れか一項に記載の制御装置。
【請求項5】
貼り合わせ工程中の前記基板の外周側における、前記ボンディングウェーブの進行が相対的に速い箇所には、相対的に多い供給流量、相対的に高い供給圧、および、相対的に高い温度のうちの少なくとも何れかで前記ガスを供給する、
請求項1から4の何れか一項に記載の制御装置。
【請求項6】
貼り合わせ工程中の前記基板の外周側における、前記ボンディングウェーブの進行が相対的に速い箇所に向けて、前記ガスを供給する、
請求項1から5の何れか一項に記載の制御装置。
【請求項7】
貼り合わされた前記基板の前記外周部における、前記ボイドが相対的に多く生じている箇所、および、前記結合が解除されて剥離している箇所、のうちの少なくとも何れかの箇所に対応する、前記基板貼り合わせ装置内の基板保持位置には、相対的に多い供給流量、相対的に高い供給圧、および、相対的に高い温度のうちの少なくとも何れかで前記ガスが供給されるようにする、
請求項1から6の何れか一項に記載の制御装置。
【請求項8】
貼り合わされた前記基板の前記外周部における、前記ボイドが相対的に多く生じている箇所、および、前記結合が解除されて剥離している箇所、のうちの少なくとも何れかの箇所に対応する、前記基板貼り合わせ装置内の基板保持位置に向けて、前記ガスが供給されるようにする、
請求項1から7の何れか一項に記載の制御装置。
【請求項9】
基板貼り合わせ装置で互いに貼り合わされる二つの基板間に供給するガスの供給条件を制御する制御装置であって、
前記二つの基板は、接触領域が中心に形成された後、前記接触領域が広がることで貼り合わされ、
前記基板、前記基板を貼り合わせる前に貼り合わされた他の基板、および、前記基板貼り合わせ装置の少なくとも一つに関して計測された計測結果に基づいて前記供給条件を制御し、
前記計測結果は、貼り合わせ工程中の前記基板間の間隔、および、貼り合わせ工程中の前記基板を保持している二つの保持部の相対位置、のうちの少なくとも何れかを含
前記間隔が所定の大きさ以上である場合、および、前記相対位置が所定の大きさ以上離れている場合、のうちの少なくとも何れかの場合に、二つの前記基板間における面方向の少なくとも中央に前記ガスを供給し、
前記間隔が所定の大きさ未満である場合、および、前記相対位置が所定の大きさ未満の近さである場合、のうちの少なくとも何れかの場合に、二つの前記基板の周囲に前記ガスを供給する
制御装置。
【請求項10】
前記間隔が所定の大きさ以上である場合、および、前記相対位置が所定の大きさ以上離れている場合、のうちの前記少なくとも何れかの場合に、二つの前記基板の側方から二つの前記基板に向かって一方向に流れている空気流の上流側から前記ガスを供給する、
請求項に記載の制御装置。
【請求項11】
前記間隔が所定の大きさ未満である場合、および、前記相対位置が所定の大きさ未満の近さである場合、のうちの前記少なくとも何れかの場合に、二つの前記基板の上方、または下方および側方の少なくとも何れかの方向から2つ二つの前記基板の全周に向けて前記ガスを供給する、
請求項9または10に記載の制御装置。
【請求項12】
基板貼り合わせ装置で互いに貼り合わされる二つの基板間に供給するガスの供給条件を制御する制御装置であって、
前記二つの基板は、接触領域が中心に形成された後、前記接触領域が広がることで貼り合わされ、
前記基板、前記基板を貼り合わせる前に貼り合わされた他の基板、および、前記基板貼り合わせ装置の少なくとも一つに関して計測された計測結果に基づいて前記供給条件を制御し、
貼り合わせる前記基板を保持している二つの保持部を更に制御し、貼り合わせる前記基板同士を対面させた後、貼り合わせる前記基板間に介在する雰囲気と前記ガスを置換する前に、前記二つの保持部によって保持されている前記基板間の間隔を広げる
制御装置。
【請求項13】
前記ガスを、前記二つの基板の間の接触前から前記二つの基板の間に供給する、
請求項1から12の何れか一項に記載の制御装置。
【請求項14】
基板貼り合わせ装置で互いに貼り合わされる二つの基板間に供給するガスの供給条件を制御する制御装置であって、
前記二つの基板は、接触領域が中心に形成された後、前記接触領域が広がることで貼り合わされ、
前記二つの基板の間隔の変化に応じて前記供給条件を切り替える、制御装置。
【請求項15】
前記ガスを、前記二つの基板の間の接触前から前記二つの基板の間に供給する、
請求項14に記載の制御装置。
【請求項16】
請求項1から15の何れか一項に記載の制御装置を備える基板貼り合わせ装置。
【請求項17】
基板貼り合わせ装置で互いに貼り合わされる二つの基板の間に向けて供給するガスの供給条件を制御する制御方法であって、
前記二つの基板は、接触領域が中心に形成された後、前記接触領域が広がることで貼り合わされ、
前記基板の外周部の厚みの態様、前記基板の前記外周部における反りの態様、貼り合わせ工程中に前記基板間に生じるボンディングウェーブの態様、貼り合わされた基板の外周部に生じたボイドの態様、および、貼り合わされた基板間の結合の態様の少なくとも一つに関して計測された計測結果に基づいて供給条件を制御する段階を備える、制御方法。
【請求項18】
コンピュータによって実行された場合に、前記コンピュータに、基板貼り合わせ装置で互いに貼り合わされる二つの基板の間に向けて供給するガスの供給条件を制御する制御方法を実行させるプログラムであって、
前記二つの基板は、接触領域が中心に形成された後、前記接触領域が広がることで貼り合わされ、
前記基板の外周部の厚みの態様、前記基板の前記外周部における反りの態様、貼り合わせ工程中に前記基板間に生じるボンディングウェーブの態様、貼り合わされた基板の外周部に生じたボイドの態様、および、貼り合わされた基板間の結合の態様の少なくとも一つに関して計測された計測結果に基づいて供給条件を制御する段階を備える、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御装置、制御方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
互いに接合される2枚のウェーハのうち一方のウェーハ上に他方のウェーハを配置した状態で、2枚のウェーハ間にボンディング波の開始点を与え、当該開始点の位置を位置センサによって検出したことをトリガに、当該開始点の方に複数のノズルを向けてガス流を送出する技術が知られている(例えば、特許文献1)。
[特許文献1]特表2013-531395号公報
【0003】
しかしながら、上記技術では、2枚のウェーハ間の外周部に発生するボイドを効率的に減らすことができなかった。
【一般的開示】
【0004】
本発明の一態様においては、基板貼り合わせ装置で互いに貼り合わされる二つの基板間に供給するガスの供給条件を制御する制御装置が提供される。制御装置は、基板、基板を貼り合わせる前に貼り合わされた他の基板、および、基板貼り合わせ装置の少なくとも一つに関して計測された計測結果に基づいて供給条件を制御してもよい。
【0005】
供給条件は、前記ガスの、基板間への供給流量、供給圧、供給時間、供給方向、湿度、温度、および、基板間からの排出流量、のうちの少なくとも何れかであってもよい。
【0006】
計測結果は、前記基板の外周部の厚みの態様、前記基板の前記外周部における反りの態様、貼り合わせ工程中に前記基板間に生じるボンディングウェーブの態様、貼り合わされた前記他の基板の外周部に生じたボイドの態様、および、貼り合わされた前記他の基板間の結合の態様、のうちの少なくとも何れかを含んでもよい。
【0007】
前記基板の前記外周部における、前記厚みが相対的に小さい箇所、および、前記反りの反り量が相対的に大きい箇所、のうちの少なくとも何れかの箇所には、相対的に多い供給流量、相対的に高い供給圧、および、相対的に高い温度のうちの少なくとも何れかで前記ガスを供給してもよい。
【0008】
前記基板の前記外周部における、前記厚みが相対的に小さい箇所、および、前記反りの反り量が相対的に大きい箇所、のうちの少なくとも何れかの箇所に向けて、前記ガスを供給してもよい。
【0009】
貼り合わせ工程中の前記基板の外周側における、前記ボンディングウェーブの進行が相対的に速い箇所には、相対的に多い供給流量、相対的に高い供給圧、および、相対的に高い温度のうちの少なくとも何れかで前記ガスを供給してもよい。
【0010】
貼り合わせ工程中の前記基板の外周側における、前記ボンディングウェーブの進行が相対的に速い箇所に向けて、前記ガスを供給してもよい。
【0011】
貼り合わされた前記他の基板の前記外周部における、前記ボイドが相対的に多く生じている箇所、および、前記結合が解除されて剥離している箇所、のうちの少なくとも何れかの箇所に対応する、前記基板貼り合わせ装置内の基板保持位置には、相対的に多い供給流量、相対的に高い供給圧、および、相対的に高い温度のうちの少なくとも何れかで前記ガスが供給されるようにしてもよい。
【0012】
貼り合わされた前記他の基板の前記外周部における、前記ボイドが相対的に多く生じている箇所、および、前記結合が解除されて剥離している箇所、のうちの少なくとも何れかの箇所に対応する、前記基板貼り合わせ装置内の基板保持位置に向けて、前記ガスが供給されるようにしてもよい。
【0013】
前記計測結果は、貼り合わせ工程中の前記基板間の間隔、および、貼り合わせ工程中の前記基板を保持している二つの保持部の相対位置、のうちの少なくとも何れかを含んでもよい。
【0014】
前記間隔が所定の大きさ以上である場合、および、前記相対位置が所定の大きさ以上離れている場合、のうちの少なくとも何れかの場合に、二つの前記基板間における面方向の少なくとも中央に前記ガスを供給してもよい。前記間隔が所定の大きさ未満である場合、および、前記相対位置が所定の大きさ未満の近さである場合、のうちの少なくとも何れかの場合に、二つの前記基板の周囲に前記ガスを供給してもよい。
【0015】
前記間隔が所定の大きさ以上である場合、および、前記相対位置が所定の大きさ以上離れている場合、のうちの前記少なくとも何れかの場合に、二つの前記基板の側方から二つの前記基板に向かって一方向に流れている空気流の上流側から前記ガスを供給してもよい。
【0016】
前記間隔が所定の大きさ未満である場合、および、前記相対位置が所定の大きさ未満の近さである場合、のうちの前記少なくとも何れかの場合に、二つの前記基板の上方、または下方および側方の少なくとも何れかの方向から2つ二つの前記基板の全周に向けて前記ガスを供給してもよい。
【0017】
貼り合わせる前記基板を保持している二つの保持部を更に制御し、貼り合わせる前記基板同士を対面させた後、貼り合わせる前記基板間に介在する雰囲気と前記ガスを置換する前に、前記二つの保持部によって保持されている前記基板間の間隔を広げてもよい。
【0018】
本発明の一態様においては、基板貼り合わせ装置で互いに貼り合わされる二つの基板間に供給するガスの供給条件を制御する制御装置が提供される。制御装置は、二つの基板の間隔の変化に応じて供給条件を切り替えてもよい。
【0019】
本発明の一態様においては、上記の何れかの制御装置を備える基板貼り合わせ装置が提供される。
【0020】
本発明の一態様においては、基板貼り合わせ装置で互いに貼り合わされる二つの基板間に供給するガスの供給条件を制御する制御方法が提供される。制御方法は、基板、基板を貼り合わせる前に貼り合わされた他の基板、および、基板貼り合わせ装置の少なくとも一つに関して計測された計測結果に基づいて供給条件を制御する段階を備える、制御方法が提供される。
【0021】
本発明の一態様においては、コンピュータによって実行された場合に、コンピュータに、基板貼り合わせ装置で互いに貼り合わされる二つの基板間に供給するガスの供給条件を制御する制御方法を実行させるプログラムが提供される。制御方法は、基板、基板を貼り合わせる前に貼り合わされた他の基板、および、基板貼り合わせ装置の少なくとも一つに関して計測された計測結果に基づいて供給条件を制御する段階を備える、プログラムが提供される。
【0022】
上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。これらの特徴群のサブコンビネーションもまた発明となり得る。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】基板貼り合わせユニット10の模式的平面図である。
図2】ガス制御工程前の貼り合わせ部300の動作を説明するための貼り合わせ部300の模式的断面図である。
図3】ガス制御工程前の貼り合わせ部300の動作を説明するための貼り合わせ部300の模式的断面図である。
図4】ガス制御工程前の貼り合わせ部300の動作を説明するための貼り合わせ部300の模式的断面図である。
図5】接触領域の拡大と上下ウェハの相対形状の説明図である。
図6】基板230の外周垂れ及び反りと外周側における基板210、230間の間隔との関係の一例(a)~(d)を説明するための模式的な説明図である。
図7】ガス制御工程中の貼り合わせ部300の動作を説明するための貼り合わせ部300の模式的断面図である。
図8】固定配管部321-1A~321-1Dによるガス供給方法を説明するための、(A)模式的平面図と、(B)模式的断面図である。
図9】固定配管部321-2A~321-2Bによるガス供給方法を説明するための、(A)模式的平面図と、(B)模式的断面図である。
図10】固定配管部321-3A~321-3Dによるガス供給方法を説明するための、(A)模式的平面図と、(B)模式的断面図である。
図11】ガス制御工程中の貼り合わせ部300の動作を説明するための貼り合わせ部300の模式的断面図である。
図12】貼り合わせ工程中の基板210、230間の間隔が大きい場合における、一例としてのガス供給パターン(a)~(d)を説明するための模式的平面図である。
図13】貼り合わせ工程中の基板210、230間の間隔が小さい場合における、一例としてのガス供給パターン(a)~(b)を説明するための模式的平面図である。
図14】ガス供給方法の変形例を説明するための模式的断面図である。
図15】本発明の複数の態様が全体的又は部分的に具現化されうるコンピュータ1200の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、発明の実施の形態を説明する。下記の実施形態は請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0025】
図1は、基板貼り合わせユニット10の模式的平面図である。基板貼り合わせユニット10は、制御装置50と、基板貼り合わせ装置100とを備える。
【0026】
制御装置50は、少なくとも二つの基板210、230を貼り合わせて積層基板201を製造する基板貼り合わせ装置100を制御する。より具体的には、本実施形態における制御装置50は、基板貼り合わせ装置100の各部を相互に連携させて統括的に制御する。また、制御装置50は、例えば外部からユーザの指示を受け付けて、積層基板201を製造する場合の製造条件を設定してもよい。制御装置50は、基板貼り合わせ装置100の動作状態を外部のユーザに向かって表示するユーザインターフェイスを更に有してもよい。
【0027】
基板貼り合わせ装置100は、筐体110と、基板カセット120、130と、ホルダストッカ400と、搬送部140と、活性化装置170と、貼り合わせ部300と、ガス供給部350と、プリアライナ500とを備える。
【0028】
筐体110は、基板カセット120、130と、搬送部140と、貼り合わせ部300と、ホルダストッカ400と、プリアライナ500とを収容する。筐体110の内部は温度管理されており、例えば、室温に保たれる。
【0029】
基板カセット120は、貼り合わせる基板210、230を収容する。基板カセット130は、積層基板201を収容する。
【0030】
基板210、230はそれぞれ、シリコンウェハの表面に複数の構造物が形成されている。複数の構造物の一例は、基板210、230のそれぞれの表面で面方向に周期的に配される複数の回路領域であって、複数の回路領域の各々には、フォトリソグラフィ技術等によって形成された配線、保護膜や、基板210、230を他の基板230、210、リードフレーム等に電気的に接続する場合に接続端子となるパッド、バンプ等の接続構造が設けられる。複数の構造物の他の一例は、基板210、230を他の基板230、210と位置合わせする際の指標となる複数のアライメントマークである。複数のアライメントマークは、例えば、基板210、230のそれぞれの表面の複数の回路領域の相互間に配されたスクライブラインに設けられる。
【0031】
ホルダストッカ400は、基板210、230を保持する基板ホルダ220、240を収容する。基板ホルダ220、240は、アルミナセラミックス等の硬質材料により形成されており、静電チャックや真空チャック等により基板210、230、積層基板201などを吸着して保持する。基板ホルダ220、240は、支持面の全体的な形状として、平坦であってもよく、中凸形状であってもよく、例えば保持する基板の面内の歪みに対応した形状のように自由曲面であってもよい。
【0032】
搬送部140は、基板210、230、基板ホルダ220、240、積層基板201などをそれぞれ単体で保持して搬送し、または、基板210、230、積層基板201などを保持した基板ホルダ220、240などを保持して搬送する。
【0033】
活性化装置170は、上述の搬送部140によって、基板210、230を保持した基板ホルダ220、240が搬入される。活性化装置170は、基板210、230のそれぞれの貼り合わせ面を清浄化するプラズマを発生する。活性化装置170では、例えば減圧雰囲気下において処理ガスである酸素ガスを励起してプラズマ化し、酸素イオンを基板210、230のそれぞれの貼り合わせ面に照射することにより、例えば、基板230がSi上にSiO膜を形成したウェハである場合には、貼り合わせ面におけるSiOの結合を切断し、SiおよびOのダングリングボンドを形成する。基板の表面にこのようなダングリングボンドを形成することを活性化と称する場合がある。この状態で大気に晒すと、空気中の水分がダングリングボンドに結合して基盤表面がOH基で覆われる。これにより、基板の表面が水分子と結合しやすい状態すなわち親水化されやすい状態となる。つまり、活性化により、結果として基板の表面が親水化しやすい状態になる。基板の表面を親水化する親水化装置は、図示しないが、例えば純水によって二つの基板の貼り合わせ面にそれぞれ塗布することにより貼り合わせ面を親水化するとともに、貼り合わせ面を洗浄する。
【0034】
なお、活性化装置170は、プラズマに暴露する方法の他に、不活性ガスを用いたスパッタエッチング、イオンビーム、または、高速原子ビーム等により基板210、230の表面を活性化してもよい。イオンビームや高速原子ビームを用いる場合は、活性化装置170を減圧下にして生成することが可能である。また更に、活性化装置170は、紫外線照射、オゾンアッシャー等により基板210、230を活性化してもよい。また更に、活性化装置170は、例えば、液体または気体のエッチャントを用いて、基板210、230の表面を化学的に清浄化することにより活性化してもよい。なお、基板210、230は、表面を活性化された後、表面を上記の親水化装置によって親水化されてもよい。
【0035】
貼り合わせ部300は、対向する上ステージ322および下ステージ332を有する。上ステージ322は、基板ホルダ220、240を介して、活性化された基板210、230を保持する。下ステージ332も同様に、基板ホルダ220、240を介して、活性化された基板210、230を保持する。
【0036】
上ステージ322および下ステージ332はそれぞれ、活性化された基板210、230を直接保持してもよい。この場合、上ステージ322および下ステージ332に、基板ホルダが固定されていてもよい。換言すると、基板ホルダと呼ぶ場合、基板ホルダ220、240のような搬送可能な装置を指す場合もあり、上ステージ322および下ステージ332に固定して設けられるような、搬送不能な装置を指す場合もある。なお、上ステージ322および下ステージ332は、貼り合わせる基板210、230を保持している二つの保持部の一例である。
【0037】
貼り合わせ部300は、上ステージ322および下ステージ332のそれぞれに保持させた基板210、230を相互に位置合わせする。貼り合わせ部300はその後、基板210、230のうちの一方を上ステージ322および下ステージ332のうちの一方に保持させた状態を維持して、上ステージ322および下ステージ332のうちの他方による基板210、230のうちの他方の保持を解除することで、表面が活性化された基板210、230を互いに接触させて貼り合わせる。
【0038】
ここで、貼り合わせた状態とは、積層された二つの基板に設けられた端子が互いに接続され、これにより、二つの基板間に電気的な導通が確保された状態を指してもよい。また、積層された二つの基板に設けられた端子が互いに接続され、これにより、二つの基板の貼り合わせ強度が所定の強度以上となった状態を指してもよい。また、積層された二つの基板にアニール等の処理を行うことによって二つの基板の端子が電気的に接続される場合には、アニール等の処理前に二つの基板が一時的に結合している状態、すなわち仮接合されている状態を指してもよい。また、二つの基板の接合後に二つの基板に電気的接続のための端子を形成する場合は、端子が形成されていない二つの基板の接合面同士が接合された状態を指してもよい。また、積層された二つの基板にアニール等の処理を行うことによって二つの基板の接合強度が所定の強度以上となる場合には、アニール等の処理前に上記の仮接合されている状態を指してもよい。アニールにより接合強度が所定の強度以上になる状態は、例えば、二つの基板の表面同士が互いに共有結合により結合されている状態を含む。また、仮接合されている状態は、重なり合った二つの基板を分離して再利用することができる状態を含む。
【0039】
ガス供給部350は、貼り合わせ部300に接続され、貼り合わせ部300内にガスを供給する。より具体的には、ガス供給部350は、当該ガスを、貼り合わせる基板210、230間の接触前から基板210、230間に供給する。ガス供給部350は、当該ガスを、基板210、230間の接触後も基板210、230間に供給する。本実施形態によるガス供給部350は、当該ガスを、基板210、230間の接触前に基板210、230間に介在する雰囲気と置換して且つ基板210、230間の接触後に接触領域が基板210、230の外周側に到達するまで基板210、230間に供給し続けてもよい。当該ガスは、一例として、ヘリウム(He)ガス、アルゴン(Ar)ガス、ヘリウムとアルゴンとの混合ガス、などの不活性ガスや、窒素(N)ガス、CDA(クリーンドライエアー)などを、湿度制御したものであってもよい。本実施形態において、当該ガスは空気よりも比重が軽いヘリウムである。なお、上記の接触領域は、基板210の一部と基板230の一部とを接触させることによって基板210、230間に形成されて徐々に拡大する領域である。
【0040】
ガス供給部350は、制御装置50からの指令に基づき、上記ガスの供給条件を調整することが可能である。ガス供給部350は、一例として、ヒータ、マスフローコントローラ、レギュレータなどを有し、当該ガスの温度、流量、圧力などを調整することが可能である。
【0041】
なお、本実施形態において、貼り合わせ部300内には、ガス供給部350によって供給される当該ガスの他、貼り合わせる基板210、230間の温度を一定に保つために、基板210、230の側方から基板210、230に向かって空気が一方向に流れている。当該一方向の空気の流れを、サイドフローと呼ぶ場合がある。当該空気は、湿度が一定に保たれていてもよい。
【0042】
プリアライナ500は、基板210、230と基板ホルダ220、240との位置合わせをそれぞれ行い、基板210、230を基板ホルダ220、240にそれぞれ保持させる。
【0043】
上記のような基板貼り合わせ装置100においては、上記の様に素子、回路、端子等が形成された基板210、230の他に、構造物が形成されていない未加工のシリコンウェハであるベアシリコン、Geを添加したSiGe基板、Ge単結晶基板、III-V族またはII-VI族等の化合物半導体ウェハ、および、ガラス基板等を貼り合わせることもできる。貼り合わせる対象は、回路基板および未加工基板であっても、未加工基板同士であってもよい。貼り合わされる基板210、230は、それ自体が、既に積層された複数の基板を有する積層基板201であってもよい。貼り合わされる基板210、230は、例えば、歪みが生じていない状態において互いに略同一の外形寸法を有してもよい。なお、基板210、230の外形は略円形状であってもよく、他の形状であってもよい。
【0044】
図2から図4は、ガス制御工程前の貼り合わせ部300の動作を説明するための貼り合わせ部300の模式的断面図である。図2から図4を用いて、本実施形態の貼り合わせ部300の構成と、貼り合わせ部300における、例えば基板210、基板230間の位置合わせ行程などを含む、ガス制御工程前の工程の概要を説明する。
【0045】
図2に示すように、本実施形態では、制御装置50は、貼り合わせ部300の上ステージ322に基板ホルダ220を介して基板210を保持させ、下ステージ332に基板ホルダ240を介して基板230を保持させる。上述の搬送部140によって、基板210を保持した基板ホルダ220が貼り合わせ部300内に搬入されて上ステージ322に載置され、基板230を保持した基板ホルダ240が貼り合わせ部300内に搬入されて下ステージ332に載置される。
【0046】
上ステージ322は、真空チャック、静電チャック等の保持機能を有し、枠体310の天板316に下向きに固定される。下ステージ332は、真空チャック、静電チャック等の保持機能を有し、枠体310の底板312に配されたX方向駆動部331に重ねられたY方向駆動部333の上面に搭載される。なお、図2から図4では、基板ホルダ220、240の支持面の構成を簡略化し、平坦に描いている。以降の図においても同様として、重複する説明を省略する。
【0047】
天板316には、顕微鏡324が上ステージ322の側方に固定される。顕微鏡324は、下ステージ332に保持された基板230の上面を観察できる。天板316には更に、複数の固定配管部321が上ステージ322の側方に固定される。
【0048】
複数の固定配管部321はそれぞれ、一端がガス供給部350に接続され、他端が貼り合わせ部300内の上ステージ322の側方に露出しており、ガス供給部350から供給されるガスを貼り合わせ部300内に送出可能である。本実施形態における複数の固定配管部321は、それぞれ上記一端に流量調整用のバルブが設けられ、ガス供給部350によって、個別に又は一括で、貼り合わせ部300内に供給するガスの流量を調整される。
【0049】
一例として、図2に示すように、固定配管部321の上記他端には、基板ホルダ220の上ステージ322の周りを囲う充填用天板323が結合されている。他の一例として、固定配管部321の上記他端には、基板ホルダ220の上ステージ322の周りを囲う充填用カバー部327が結合されていてもよい。本実施形態において、複数の固定配管部321のうちの幾つかは、上記他端に充填用天板323が結合され、複数の固定配管部321のうちの幾つかは、上記他端に充填用カバー部327が結合されている。なお、図2においては、単に説明を明確にする目的で、一部の固定配管部321の図示を省略している。
【0050】
充填用天板323は、上ステージ322を通す開口が中央に形成された円盤状の部材である。充填用天板323は、上ステージ322に基板ホルダ220が保持された場合に、基板ホルダ220の裏面、すなわち基板210が載置されていない面に対面するように配置されている。充填用天板323は、上ステージ322に基板ホルダ220が保持された場合に固定配管部321の上記他端が充填用天板323と基板ホルダ220との間に露出するように、固定配管部321に結合されている。充填用天板323の上面には、充填用天板323の外周に沿って、平らな環状の封止部材328が固定されている。封止部材328は、例えばゴム製であってもよい。なお、封止部材328は、Oリングであってもよい。
【0051】
充填用カバー部327は、上ステージ322等を通す開口が中央に形成された、概して角筒状の部材である。図2において破線の円内を部分的に拡大した(A)に示している通り、充填用カバー部327は、側壁341と、側壁341のZ軸方向正側の上端からXY平面内で中央側に延出する天板343と、側壁341のZ軸方向負側の下端からXY平面内で中央側に延出する底板345とを有する。
【0052】
充填用カバー部327は、エアシリンダ部326および昇降アーム部325を介して固定配管部321に保持されている。エアシリンダ部326は、固定配管部321に連結され、圧縮空気のエネルギーによってZ軸方向に伸び縮みする。昇降アーム部325は、エアシリンダ部326に連結され、エアシリンダ部326の伸び縮みによって、Z軸方向に昇降可能である。よって、充填用カバー部327は、昇降アーム部325の昇降に伴ってZ軸方向に昇降可能である。
【0053】
充填用カバー部327は、Z軸方向の最も正側まで上昇した場合、充填用カバー部327のZ軸方向の下端が、上ステージ322によって保持される基板210の貼り合わせ面よりもZ軸方向正側に位置する。そのため、Z軸方向の最も正側まで上昇した場合に、充填用カバー部327は、上ステージ322によって保持される基板210の貼り合わせ面よりもZ軸方向負側でXY平面内を移動する下ステージ332上の基板230等の構成と接触しない。なお、図2から図4に示す通り、ガス制御工程前の昇降アーム部325および充填用カバー部327は、Z軸方向の最も正側に位置した状態を保つ。
【0054】
また、充填用カバー部327は、上ステージ322および下ステージ332によって保持されている基板210および基板230が互いに向かい合っている状態で、Z軸方向の最も負側まで降下した場合、基板210および基板230の全周に亘って基板210および基板230を側方から囲うことができる。Z軸方向の最も負側まで降下した場合、Z軸方向において、充填用カバー部327の底板345は基板ホルダ240と概ね同じ位置にあり、充填用カバー部327の天板343は封止部材328を介して充填用天板323に接続されている。なお、かかる場合、封止部材328は全周に亘って充填用カバー部327の天板343の下面に密着していてもよい。
【0055】
X方向駆動部331は、底板312と平行に、図中に矢印Xで示す方向に移動する。Y方向駆動部333は、X方向駆動部331上で、底板312と平行に、図中に矢印Yで示す方向に移動する。X方向駆動部331およびY方向駆動部333の動作を組み合わせることにより、下ステージ332は、底板312と平行に二次元的に移動する。
【0056】
また、下ステージ332は、昇降駆動部338により支持されており、昇降駆動部338の駆動により、図中の矢印Zで示す方向に昇降する。このように、下ステージ332は、基板ホルダ220を介して基板210を保持する上ステージ322との間で、基板ホルダ240に保持された基板230と基板ホルダ220に保持された基板210との相対位置を変位させる。
【0057】
X方向駆動部331、Y方向駆動部333および昇降駆動部338による下ステージ332の移動量は、干渉計等を用いて精密に計測される。
【0058】
Y方向駆動部333には、顕微鏡334が下ステージ332の側方に搭載される。顕微鏡334は、上ステージ322に保持された基板210の下面である表面を観察できる。
【0059】
なお、貼り合わせ部300は、底板312に対して垂直な回転軸の回りに下ステージ332を回転させる回転駆動部、および、下ステージ332を揺動させる揺動駆動部を更に備えてもよい。これにより、下ステージ332を上ステージ322に対して平行にすると共に、下ステージ332に保持された基板230を回転させて、基板210、230の位置合わせ精度を向上させることができる。
【0060】
顕微鏡324、334は、制御装置50により、焦点を相互に合わせたり共通の指標を観察させたりすることによって較正される。これにより、貼り合わせ部300における一対の顕微鏡324、334の相対位置が測定される。
【0061】
図2に示した状態に続いて、図3に示すように、制御装置50は、X方向駆動部331およびY方向駆動部333を動作させて、相対位置が既知である顕微鏡324、334により基板210および基板230の各々に設けられたアライメントマークを検出させ、基板210と基板230との相対位置を算出する。そして、基板210および基板230において対応するアライメントマーク間の位置ずれ量が予め定められた閾値以下となり、且つ、基板210および基板230の間で対応する接続構造の位置ずれ量が予め定められた閾値以下となるように、基板210と基板230との相対移動量を算出する。位置ずれは、貼り合わされた基板210と基板230との間における、対応するアライメントマーク同士の位置ずれを指してもよく、貼り合わされた基板210と基板230との間における対応する接続構造同士の位置ずれを指してもよい。位置ずれは、二つの基板210、230のそれぞれに生じる歪みの量の差に起因する場合がある。
【0062】
ここで、閾値は、基板210、230の相互の貼り合わせが完了したときに、基板210、230間に電気的な導通が可能となるずれ量であってもよく、基板210、230にそれぞれ設けられた構造物同士が少なくとも一部で接触するときのずれ量であってもよい。制御装置50は、基板210、230間の位置ずれが予め定められた閾値以上になった場合に、接続構造同士が接触しない又は適切な電気的導通が得られない状態、もしくは接続構造間に所定の接合強度が得られない状態であると判断してもよい。
【0063】
図3に示した状態に続いて、図4に示すように、制御装置50は、下ステージ332を移動させて、基板210と基板230とを相互に位置合わせする。より具体的には、制御装置50は、顕微鏡324、334の相対位置と、基板210、230のアライメントマークの位置とに基づいて、相互のアライメントマークの位置が一致するように、下ステージ332を移動させる。
【0064】
図5は、接触領域の拡大と基板210、230の相対形状の説明図である。上述したように、基板230および基板210を貼り合わせる場合、基板230の一部と基板210の一部とを接触させて接触領域を形成した後、当該接触領域を拡大させる。
【0065】
例えば、基板ホルダ240が中凸形状の支持面を有する場合、基板ホルダ240の湾曲した支持面に倣うことによって凸状に変形した基板230の突出部分を基板210に接触させて接触領域を形成した後、当該接触領域を広げることで、基板230を変形させた状態で基板210と基板230とを貼り合わせる。
【0066】
より具体的には、先ず、基板210と基板230とを接近させて、基板210および基板230の一部を互いに接触させ、既に活性化されている当該接触箇所に接触領域を形成する。更に、基板ホルダ220を介した上ステージ322による基板210の保持を解除することで、活性化された表面相互の分子間力により当該接触箇所に隣接する領域が自律的に相互に吸着され、当該接触領域が基板210および基板230の径方向外側に向かって順次広がるボンディングウェーブ(Bonding Wave。ボンディング波とも言う。以降、BWと呼ぶ場合がある。)が発生し、これによって、基板230を変形させた状態で、基板210と基板230とを貼り合わせる。
【0067】
中凸形状の支持面を有する基板ホルダ240を用いることにより、基板210および基板230にはただひとつの接触箇所が形成され、その結果、複数の接触箇所が別個に形成されることに起因する貼り合わせ面内のボイドの発生を抑止することができる。なお、本実施形態において、貼り合わせ過程は、基板210および基板230が、互いに一部で接触してから、接触領域の拡大が終了するまでの過程を含む。
【0068】
図5では、左側に、接触領域の外周部分(すなわち断面において、BWの進行方向の先端部分)が未だ基板210、230の中央側に位置している状態を示し、右側に、接触領域の外周部分が基板210、230の外周側にまで到達した状態を示す。なお、図5においては、上側および下側の基板ホルダを省略した。
【0069】
図5の左側の状態において、基板ホルダに保持されていないフリーな上の基板210は、基板間に介在する空気の抵抗により、大きく曲がった状態となっている。一方で、図5の右側の状態において、接触領域の外周部分が基板210、230の外周側にまで到達しているために、基板間に介在していた空気が外部へ放出され、これにより、基板210の空気抵抗の受け方に変化が生じている。すなわち、基板210、230の外周側において基板間に介在する空気の抵抗を受ける面積が、基板210、230の中央側の当該面積よりも小さくなっており、基板210が平面的(断面で見て直線的)な形のまま基板間が閉じようとしている。
【0070】
図5の左右の上方には、各状態での、接触領域の外周部分における基板210、230の相対形状を模式的に図示している。二つの相対形状を比較すると、接触領域から外周側に向かって任意の一定距離の位置における基板210、230間の間隔は、接触領域が中央側に位置する状態よりも、接触領域が外周側に位置する状態の方が狭い。基板210、230の間隔が狭いと、基板210、230間に介在する空気のような気体、もしくは、結露により発生した水のような液体の圧力が高まりやすくなる。その結果、基板210、230間には当該気体または液体が外部に向けて押し出されずに残ってしまい、積層基板201の剥がれを誘発し得るボイド(気泡ともいう)となってしまう。換言すると、貼り合わせる基板210、230間の外周部は、中央部に比べてボイド発生リスクが高い。なお、φ300mmの基板210、230を、当該直径よりも僅かに小さい直径の保持領域(貼り合わせ過程で保持を維持する基板230と接触する領域)を有する基板ホルダを用いて貼り合わせる場合、すなわち、基板230の周縁において基板ホルダに保持されないオーバーハング部分が存在する場合、ボイドは積層基板201の周縁から数mm内側に多く発生する実験データが得られている。尚、基板230の周縁において基板ホルダに保持されないオーバーハング部分が存在しない場合でも、積層基板201の周縁から数mm内側にボイドが発生する場合もある。
【0071】
積層基板201の外周部で生じるボイドの種類として、例えば段差ボイドや、断熱膨張ボイドといったものがある。段差ボイドとは、基板210、230の貼り合わせ面の外周側が平坦ではないことにより、貼り合わせの過程で当該平坦ではない部分に空気等の気体が残ることで発生するボイドである。断熱膨張ボイドとは、貼り合わせの過程で、基板210、230の中央側から外周側に向かって移動した湿気を含む気体が、基板210、230の外側との大きな圧力変化によって断熱膨張し、急激に温度低下することで湿気が結露して生じるボイドである。したがって、断熱膨張ボイドは、BW速度が速いほど、もしくは、上下基板間の空気圧力が高いほど、生じるリスクが高まるボイドである。
【0072】
図6は、基板230の外周垂れ及び反りと外周側における基板210、230間の間隔との関係の一例(a)~(d)を説明するための模式的な説明図である。図6に示す例において、基板ホルダ240は、少なくとも支持面の外周側を全周に亘って囲う環状の壁部241を有し、壁部241の内側を負圧にすることで、壁部241上に載置された基板230を吸着する。また、図6に示す例において、基板230の周縁には、基板ホルダ240の壁部241よりも外周側に位置して基板ホルダ240に吸着されないオーバーハング部分が存在している。
【0073】
図6(a)および(b)に、貼り合わせる基板230の外周垂れの異なる態様をそれぞれ示す。外周垂れは、貼り合わせる基板230の径方向における中央部の厚みに対して外周部の厚みが小さい状態である。基板230の径方向における中央部とは、基板230の中心を含む領域であり、基板230の径方向における外周部とは、基板230の中央部の外側の領域であって、少なくとも基板210、230間のBWが終了する位置から基板230の内側に所定の距離を離れた位置までの間の領域であり、ボイドが発生する位置を含む領域である。
【0074】
基板貼り合わせ装置100が貼り合わせる基板230は、例えば、表面に積層された配線層の外周部が、毎回の配線層の製膜後のCMP(化学的機械研磨)の結果として中央部よりも薄くなり、基板230そのものの厚みが中央部から外周部に向かって薄くなっている場合がある。基板230がこのような厚みの変化を有することを、基板230が外周垂れを有すると表現する場合が有り、基板230の中央部の厚みと外周部の厚みとの差を垂れ量と呼ぶ場合がある。
【0075】
図6(a)に示す基板230の中央部の厚みと、図6(b)に示す基板230の中央部の厚みとは、互いに同じである。しかしながら、図6(b)に示す基板230の外周部の厚みは、図6(a)に示す基板230の外周部の厚みに比べて大きく、換言すると、外周垂れの垂れ量が小さい。その結果、両図に白抜きの矢印で示すように、垂れ量が小さな基板230や、垂れ量が小さな箇所を含む基板230では、外周側の全体又は一部で基板210と基板230との間の空間が狭くなり、上述した断熱膨張ボイドの発生リスクが高まる。
【0076】
図6(c)および(d)に、貼り合わせる基板230の外周部における反りの、異なる態様をそれぞれ示す。基板貼り合わせ装置100が貼り合わせる基板230は、面内で不均一に湾曲していたり、面内全体で一様に湾曲していたりする場合がある。例えば、基板230の周縁側が、貼り合わせ面の側に向かって凹状に反っている場合がある。そのような基板230を、最外周に環状の壁部241が形成された真空吸着式の基板ホルダ240によって保持する場合であって、基板230には、当該壁部241よりも外周側に位置して基板ホルダ240に吸着保持されない領域、すなわちオーバーハング部分が存在している場合、基板230のオーバーハング部分が上述の凹状の反りに起因して貼り合わされる基板210の側に跳ね上がる。
【0077】
図6(d)に示す基板230は、図6(c)に示す基板230に比べて、少なくとも一部において反りの反り量が大きい。その結果、両図に白抜きの矢印で示すように、反り量が大きな基板230や、反り量が大きな箇所を含む基板230では、外周側の全体又は一部で基板210と基板230との間の空間が狭くなり、断熱膨張ボイドの発生リスクが高まる。
【0078】
なお、図6では、一例として、下ステージ332に保持される基板230が外周垂れや反りを有する場合を説明したが、基板230に代えて上ステージ322に保持される基板210が外周垂れや反りを有する場合や、上ステージ322および下ステージ332に保持される基板210および基板230の両方が外周垂れや反りを有する場合にも、上記と同様の説明が当てはまるため、重複する説明を省略する。
【0079】
図7は、ガス制御工程中の貼り合わせ部300の動作を説明するための貼り合わせ部300の模式的断面図である。制御装置50は、図7に白抜きの矢印で示すように、エアシリンダ部326を動作させて昇降アーム部325および充填用カバー部327をZ軸方向の最も負側まで降下させる。これにより、充填用カバー部327は、上ステージ322および下ステージ332によって互いに向かい合う状態で保持されている基板210および基板230の全周に亘って、基板210および基板230を側方から囲う。
【0080】
本実施形態による制御装置50は、ガス供給部350が固定配管部321を介して貼り合わせ部300内に供給するガスを、貼り合わせる基板210、230間の接触前に基板210、230間に介在する雰囲気と置換する。ただし、本実施形態において、制御装置50は、貼り合わせる基板210、230同士を対面させた後、貼り合わせる基板210、230間に介在する雰囲気とガス供給部350からのガスを置換する前に、上ステージ322および下ステージ332によって保持されている基板210、230間の間隔を広げる。一例として、制御装置50は、当該間隔を2mmから4mmへと広げてもよい。
【0081】
より具体的には、制御装置50は、図4に示した、貼り合わせる基板210、230同士を対面させた状態に続いて、図7に白抜きの矢印で示すように、昇降駆動部338を動作させて下ステージ332をZ軸負方向に降下させ、基板210と基板230との間隔を広げる。基板210、230を位置合わせする際は、位置合わせ後のステージ移動を極力少なくして基板210、230間の位置ずれを防ぐべく、基板210、230間の距離が狭くなっていることが通例である。当該距離が狭い場合、ガス供給部350によって基板210、230間に供給するガスが、粘性によって、基板210、230間に速やか且つ十分に充填されない虞がある。そこで、本実施形態による制御装置50は、貼り合わせる基板210、230間に介在する雰囲気とガス供給部350からのガスを置換する前に基板210と基板230との間隔を広げておくことによって、ガス供給部350からのガスを基板210、230間に速やか且つ十分に充填可能な状態にしておくことができる。尚、二つの基板210、230のアライメントマークの検出が完了した時点、または、二つの基板210、230の位置合せが完了した時点で、基板210、230間の間隔が、ガスの充填が可能な大きさである場合は、ガスを置換する前に基板210と基板230との間隔を更に広げなくてもよい。
【0082】
制御装置50は、互いに貼り合わされる二つの基板210、230間の接触前から基板210、230間へ供給するガスの供給条件を制御する。制御装置50は更に、基板210、基板230または基板貼り合わせ装置100に関して計測された計測結果に応じて、上記の供給条件を制御する。当該供給条件は、一例として、上記ガスの供給流量、供給圧、供給時間、供給方向、湿度、温度、および、排出流量、のうちの少なくとも何れかであってもよい。
【0083】
本実施形態において、以下で説明する図8から図10に示す通り、複数の固定配管部321は、貼り合わせ部300内で貼り合わされる基板210、230に対して、多様な方向からガスを送出可能である。図8から図10では、説明を明確にする目的で、互いに同様の経路でガスを貼り合わせ部300に供給する固定配管部321ごとに別図を用いて図示しているが、本実施形態による貼り合わせ部300は、図8から図10に示す全ての固定配管部321を含む。そのため、本実施形態による制御装置50は、ガス供給部350から、個別に流量を調整可能なバルブが設けられた複数の固定配管部321の一部又は全てを通じて、貼り合わせ部300内に供給するガスの供給流量、供給圧、供給時間、供給方向、湿度、および、温度を調整可能である。なお、貼り合わせ部300は、図8から図10に示す複数の固定配管部321のうちの一部のみを含んでもよい。
【0084】
図8は、固定配管部321-1A~321-1Dによるガス供給方法を説明するための、(A)模式的平面図と、(B)模式的断面図である。図8(A)には、Z軸正方向から見た場合における、固定配管部321-1A~321-1D、充填用カバー部327および充填用天板323を実線で示す。ただし、同方向から見た場合の充填用天板323における、充填用カバー部327の天板343によって隠れる部分の輪郭を細い破線で示す。また、同方向から見た場合の封止部材328を太い破線で示す。
【0085】
図8(B)は、貼り合わせ部300のうち、図8(A)に示すI-I線における充填用カバー部327等の断面と、上ステージ322、下ステージ332、基板210、230、基板ホルダ220、240の断面とを抽出し、固定配管部321-1A~321-1Dの一端に接続されたガス供給部350と共に模式的に示す。
【0086】
また、図8において、ガス供給部350から固定配管部321-1A~321-1Dを介して貼り合わせ部300内に供給されるガスの流れを、白抜きの細い矢印で示す。また、図8において、上記で説明したサイドフローを最も太い白抜きの矢印で示している。図8に示す通り、本実施形態においてサイドフローは図中の上側から下側に向かって一方向に流れている。図8に関する上記の説明は、以降で説明する図9および図10においても同様であり、重複する説明を省略する。
【0087】
固定配管部321-1A~321-1Dは、貼り合わせ部300内に延びるそれぞれの一端が、充填用天板323に結合されている。より具体的には、固定配管部321-1Aの当該一端は、充填用天板323における、サイドフローの上流側に結合されており、固定配管部321-1Cの当該一端は、充填用天板323における、サイドフローの下流側に結合されている。また、固定配管部321-1Bおよび固定配管部321-1Dの当該一端は、充填用天板323における、固定配管部321-1Aが結合されている位置と固定配管部321-1Cが結合されている位置の中間付近で、対向する両端にそれぞれ位置する。
【0088】
固定配管部321-1A~321-1Dを介してガス供給部350から供給されるガスは、基板ホルダ220における基板210が載置されていない面に向かってZ軸負方向に放出され、基板ホルダ220の当該面に沿って径方向外側に拡散する。固定配管部321-1A~321-1Dから供給するガスは、比較的、低流量であってもよい。
【0089】
充填用カバー部327の天板343の下面と充填用天板323の上面との間は封止部材328によってシールされている。本実施形態において、ガス供給部350が貼り合わせ部300内に供給するガスは、ヘリウムガスである。そのため、基板ホルダ220の裏面を伝って径方向外側に拡散したガスは、基板ホルダ220と充填用カバー部327との間に上方から充満していく。換言すると、当該ガスは、基板ホルダ220と充填用カバー部327との間に介在する雰囲気と、Z軸正方向側から徐々に置換されていく。
【0090】
当該置換が進むと、当該ガスが基板210の貼り合わせ面よりもZ軸方向の負側に到達し、基板210と基板230との間に流れ込んでいく。この際、当該ガスは、サイドフローの影響も受けて、効率的に基板210、230間に流れ込んでいき、基板210、230間に介在する雰囲気と置換される。
【0091】
固定配管部321-1A~321-1Dによるガス供給方法によれば、ガスを基板210、230間に介在する雰囲気と置換するのに要する時間が比較的に長くなるが、ガスが固定配管部321-1A~321-1Dから基板210、230間に向かって直接送出されないため、ガスに含まれ得るパーティクルが基板210、230の貼り合わせ面に与える影響が小さい。
【0092】
図9は、固定配管部321-2A~321-2Bによるガス供給方法を説明するための、(A)模式的平面図と、(B)模式的断面図である。図9(B)は、貼り合わせ部300のうち、図9(A)に示すII-II線における充填用カバー部327等の断面と、上ステージ322、下ステージ332、基板210、230、基板ホルダ220、240の断面とを抽出し、固定配管部321-2A~321-2Bの一端に接続されたガス供給部350と共に模式的に示す。
【0093】
固定配管部321-2A~321-2Bは、貼り合わせ部300内に延びるそれぞれの一端が、充填用カバー部327の天板343に結合されている。より具体的には、固定配管部321-2Aおよび固定配管部321-2Bの当該一端は、充填用カバー部327の天板343における、サイドフローの上流側で、対向する両端に結合されている。なお、貼り合わせ部300内をサイドフローが流れていない場合、固定配管部321-2Aおよび固定配管部321-2Bの当該一端は、例えば貼り合わせ部300における上記ガスの排気口の反対側で、充填用カバー部327の天板343における対向する両端に結合されていてもよい。貼り合わせ部300内をサイドフローが流れている場合には、充填用カバー部327の天板343における、固定配管部321-2Aおよび固定配管部321-2Bの当該一端の結合位置を、サイドフローの流れ方向に応じて決めることが好ましい。
【0094】
上述の通り、充填用カバー部327は上ステージ322に対してZ軸方向に移動する。そこで、充填用カバー部327が移動する際に固定配管部321-2A等が充填用カバー部327の移動の妨げとならないよう、固定配管部321-2Aおよび固定配管部321-2Bの上記一端は、例えばヒンジを介して充填用カバー部327の天板343に結合されていてもよい。これに代えて、固定配管部321-2Aおよび固定配管部321-2Bは、充填用カバー部327と共に移動してもよく、柔軟性を有する材料で形成され、充填用カバー部327の移動に伴って伸縮してもよい。
【0095】
固定配管部321-2A~321-2Bを介してガス供給部350から供給されるガスは、充填用カバー部327の底板345の上面に向かってZ軸負方向に放出され、底板345の当該上面に設置された反射板で反射し、基板210、230間の中央側に向かって流れ込んでいく。この際、当該ガスは、サイドフローの影響も受けて、効率的に基板210、230間に流れ込んでいき、基板210、230間に介在する雰囲気と置換される。
【0096】
固定配管部321-2A~321-2Bによるガス供給方法によれば、ガスを基板210、230間に介在する雰囲気と置換するのに要する時間を比較的に短くすることができる。また、当該ガス供給方法によれば、固定配管部321-2Aおよび固定配管部321-2Bのそれぞれから基板210、230間の中央側に向かうガス流が、サイドフローの影響も受けて、流速を落とさずに共にサイドフローの下流側に向かうため、ガスに含まれ得るパーティクルが基板210、230間に滞留し難く、当該パーティクルが基板210、230の貼り合わせ面に与える影響が小さい。
【0097】
図10は、固定配管部321-3A~321-3Dによるガス供給方法を説明するための、(A)模式的平面図と、(B)模式的断面図である。図10(B)は、貼り合わせ部300のうち、図10(A)に示すIII-III線における充填用カバー部327等の断面と、上ステージ322、下ステージ332、基板210、230、基板ホルダ220、240の断面とを抽出し、固定配管部321-3A~321-3Dの一端に接続されたガス供給部350と共に模式的に示す。
【0098】
固定配管部321-3A~321-3Dは、貼り合わせ部300内に延びるそれぞれの一端が、充填用カバー部327の側壁341に結合されている。より具体的には、固定配管部321-3Aおよび固定配管部321-3Bの当該一端は、充填用カバー部327の側壁341における、サイドフローの上流側で、対向する両端に結合されている。ただし、固定配管部321-3Aは、サイドフローの流れ方向に対して真横から、基板210、230の外周の接線方向にガスを供給し、固定配管部321-3Bは、サイドフローの流れ方向に平行に、基板210、230の接線方向にガスを供給する。
【0099】
固定配管部321-3Cおよび固定配管部321-3Dの当該一端は、充填用カバー部327の側壁341における、サイドフローの下流側で、対向する両端に結合されている。ただし、固定配管部321-3Cは、サイドフローの流れ方向に対して真横から、基板210、230の外周の接線方向にガスを供給し、固定配管部321-3Dは、サイドフローの流れ方向に平行に、基板210、230の接線方向にガスを供給する。
【0100】
固定配管部321-2A等と同様、充填用カバー部327が移動する際に固定配管部321-3A等が充填用カバー部327の移動の妨げとならないよう、固定配管部321-3A~固定配管部321-3Dの上記一端は、例えばヒンジを介して充填用カバー部327の側壁341に結合されていてもよい。これに代えて、固定配管部321-3A~固定配管部321-3Dは、充填用カバー部327と共に移動してもよく、柔軟性を有する材料で形成され、充填用カバー部327の移動に伴って伸縮してもよい。
【0101】
固定配管部321-3A~321-3Dを介してガス供給部350から供給されるガスは、互いに異なる4方向から基板210、230の外周の接線方向に放出され、すなわち、充填用カバー部327内へと渦状に流入する。この際、当該ガスは、サイドフローの影響も受けて、効率的に基板210、230間に流れ込んでいき、基板210、230間に介在する雰囲気と置換される。
【0102】
固定配管部321-3A~321-3Dによるガス供給方法によれば、ボイドが発生し易い基板210、230間の外周側に向けて直接的にガスを供給することができる。また、低コストのCDAや窒素を基板210、230に充填するのに適している。
【0103】
上述の通り、制御装置50は、基板210、基板230または基板貼り合わせ装置100に関して計測された計測結果に応じて、上記の供給条件を制御する。本実施形態において、当該計測結果は、例えば基板230等の外周部の厚みの態様を含んでもよい。ここで言う、外周部の厚みの態様は、一例として、上述した外周垂れの態様であってもよい。当該計測結果はまた、例えば基板230等の外周部における反りの態様を含んでもよい。
【0104】
当該計測結果はまた、例えば貼り合わせ工程中に基板210、230間に生じるBWの態様を含んでもよい。当該計測結果はまた、例えば貼り合わされた基板210、230の外周部に生じたボイドの態様を含んでもよい。当該計測結果はまた、例えば貼り合わされた基板210、230間の結合の態様を含んでもよい。
【0105】
当該計測結果はまた、例えば貼り合わせ工程中の基板210、230間の間隔を含んでもよい。当該計測結果はまた、例えば貼り合わせ工程中の基板210、230を保持している上ステージ322および下ステージ332の貼り合わせ方向(z軸方向)における相対位置を含んでもよい。ここで言う相対位置は、例えば、固定式の上ステージ322のZ軸座標と移動式の下ステージ332のZ軸座標との差分であってもよく、X軸座標およびY軸座標の少なくとも一方の差分であってもよい。
【0106】
当該計測結果はまた、例えば貼り合わせ工程中の基板230を保持している移動式の下ステージ332の空間座標であってもよく、当該下ステージ332のZ軸座標であってもよく、当該下ステージ332のX軸座標およびY軸座標の少なくとも一方であってもよい。当該計測結果はまた、例えば上記の複数の計測結果の例の組み合わせであってもよい。
【0107】
一例として、本実施形態による制御装置50は、貼り合わせる基板230等の外周部における、厚みが相対的に小さい箇所、および、反りの反り量が相対的に大きい箇所、のうちの少なくとも何れかの箇所には、相対的に多い供給流量、相対的に高い供給圧、および、相対的に高い温度のうちの少なくとも何れかでガスを供給する。この場合、制御装置50は、貼り合わせる基板210、230間の全体に亘って、すなわち基板210、230の全周に対して等間隔で複数個所からガスを供給してもよい。また、制御装置50は、上記の厚みが小さい箇所や反り量が大きい箇所に向けてガスを供給する一方で、他の箇所に向けてガスを供給しなくてもよい。なお、この場合において、当該他の箇所には順次ガスが行き渡る場合がある。また、以降の実施形態において、基板230等の外周部における特定箇所に対して相対的に異なる供給流量、供給圧または供給温度でガスを供給する場合は、上記のガス供給方法と同様に、基板210、230の全周に向けてガスを吹き付けてもよく、基板210、230の全周の一部に向けてガスを吹き付ける一方で、当該全周の残りの箇所にはガスを直接吹き付けなくてもよい。
【0108】
一例として、本実施形態による制御装置50は、貼り合わせる基板230等の外周部における、厚みが相対的に小さい箇所、および、反りの反り量が相対的に大きい箇所、のうちの少なくとも何れかの箇所に向けて、ガスを供給する。この場合、制御装置50は、上記の垂れ量が小さい箇所や反り量が大きい箇所に向けてガスを供給する一方で、他の箇所に向けてガスを供給しない。なお、この場合において、当該他の箇所には順次ガスが行き渡る場合がある。また、以降の実施形態において、基板230等の外周部における特定箇所に向けてガスを直接吹き付ける場合は、上記のガス供給方法と同様に、当該特定箇所以外にはガスを直接吹き付けなくてもよい。
【0109】
図11は、ガス制御工程中の貼り合わせ部300の動作を説明するための貼り合わせ部300の模式的断面図である。図7に示した状態に続いて、図11に示すように、制御装置50は、昇降駆動部338を動作させて下ステージ332を上昇させ、基板210と基板230とを相互に接近させる。そして、基板230の一部と基板210の一部とを接触させて接触領域を形成した後に、基板ホルダ220を介した上ステージ322による基板210の保持を解除することでBWを発生させ、接触領域を拡大させることにより基板230および基板210を貼り合わせる。
【0110】
制御装置50は、ガス供給部350からのガスを、基板210、230間の接触後も基板210、230間に供給する。制御装置50は更に、基板210、230間の接触前と同様、基板210、230間の接触後に供給する当該ガスの供給条件も、基板210、基板230または基板貼り合わせ装置100に関して計測された計測結果に応じて制御する。
【0111】
本実施形態による制御装置50は、当該ガスを、基板210、230間の接触後に接触領域が基板210、230の外周側に到達するまで基板210、230間に供給する。本実施形態による制御装置50は更に、接触領域が当該外周側に到達するまで基板210、230間に供給するガスの供給条件を、基板210、基板230または基板貼り合わせ装置100に関して計測された計測結果に応じて制御する。
【0112】
一例として、本実施形態による制御装置50は、貼り合わせ工程中の基板210、230の外周側における、BWの進行が相対的に速い箇所には、相対的に多い供給流量、相対的に高い供給圧、および、相対的に高い温度のうちの少なくとも何れかでガスを供給する。上述の通り、BW速度が速い箇所ほど、断熱膨張ボイドが生じるリスクが高いためである。
【0113】
一例として、本実施形態による制御装置50は、貼り合わせ工程中の基板210、230の外周側における、BWの進行が相対的に速い箇所に向けて、ガスを供給する。
【0114】
一例として、本実施形態による制御装置50は、貼り合わされた基板210、230の外周部における、ボイドが相対的に多く生じている箇所、および、結合が解除されて剥離している箇所、のうちの少なくとも何れかの箇所に対応する、基板貼り合わせ装置100内の基板保持位置には、相対的に多い供給流量、相対的に高い供給圧、および、相対的に高い温度のうちの少なくとも何れかでガスが供給されるようにする。一例として、本実施形態による制御装置50は、貼り合わされた基板210、230の外周部における、ボイドが相対的に多く生じている箇所、および、結合が解除されて剥離している箇所、のうちの少なくとも何れかの箇所に対応する、基板貼り合わせ装置100内の基板保持位置に向けて、ガスが供給されるようにする。すなわち、これら何れの例においても、制御装置50は、貼り合わせた後に計測された基板210、230間の結合状態に従ってフィードバック制御する。
【0115】
この場合、貼り合わされた基板210、230を引き剥がして、再度貼り合わせる際にフィードバック制御してもよく、次の貼り合わせ対象となる基板210、230を貼り合わせる際にフィードバック制御してもよい。後者の場合、制御装置50は、例えば、貼り合わせた基板210、230と同一ロット内の基板210、230や、同一製造プロセスによって製造された基板210、230に対してフィードバック制御することが好ましい。なお、上記の基板保持位置は、上ステージ322および下ステージ332によって次回以降に保持される基板210、230の外周部における対応箇所を意図する。当該対応箇所の一例は、ノッチが形成されている箇所や、基板ホルダ240等においてリフトアップピンが挿入されるために形成された穴と対面する箇所などである。
【0116】
以上で説明した本実施形態によれば、制御装置50は、基板貼り合わせ装置100で互いに貼り合わされる二つの基板210、230間の接触前から基板210、230間へ供給するガスの供給条件を制御する。制御装置50は更に、基板210、基板230または基板貼り合わせ装置100に関して計測された計測結果に応じて当該供給条件を制御する。これにより、制御装置50は、貼り合わせる基板210、230の外周部に発生するボイドを効率的に減らすことができる。
【0117】
例えば、制御装置50は、貼り合わせようとする基板210および基板230の一方または両方の外周部が、貼り合わせ面が凹状となるように全体的に大きく反っていることを示す計測結果、または、貼り合わせようとする基板210および基板230の一方または両方における貼り合わせ面の膜種が吸湿性であることを示す計測結果を取得する。この場合、制御装置50は、当該計測結果に応じて、貼り合わせる基板210、230間に供給するガスの供給流量を多くしたり、供給圧を高くしたり、供給時間を長くしたりすることで、貼り合わせる基板210、230間の少なくとも外周側における、不活性ガスや湿度制御されたガスの充填率を高めることができる。また、上記の場合、制御装置50は、当該計測結果に応じて、貼り合わせる基板210、230間に供給するガスの湿度を低くしたり、温度を高くしたりすることができる。また、上記の場合、制御装置50は、追加的に又は代替的に、当該計測結果に応じて、貼り合わせる基板210、230間に供給したガスの排出流量を少なくしてもよい。何れの方法によっても、制御装置50は、貼り合わせる基板210、230の外周部に発生するボイドを効率的に減らすことができると言える。
【0118】
また、例えば、制御装置50は、貼り合わせようとする基板210および基板230の一方または両方の外周部における外周垂れが全体的に大きな垂れ量を有していることを示す計測結果を取得する。換言すると、貼り合わせる基板210、230の外周部にボイドが発生するリスクが非常に低いことを示す計測結果を取得する。この場合、制御装置50は、当該計測結果に応じて、貼り合わせる基板210、230間に供給するガスの供給流量を少なくしたり、供給圧を低くしたり、供給時間を短くしたりすることで、ガスの使用量を減らし、コストを削減したり、当該ガスによる他の機器への悪影響を減らしたりすることができる。また、この場合に、制御装置50は、当該計測結果に応じて、貼り合わせる基板210、230間に供給するガスの温度を低くする、すなわち当該ガスの加熱を抑止することで、コストを削減することができる。何れの方法によっても、制御装置50は、貼り合わせる基板210、230の外周部に発生するボイドを効率的に減らすことができると言える。
【0119】
また、例えば、制御装置50は、貼り合わせた基板210、230の外周部において、全体的にボイドが多く生じていることを示す計測結果、または、CMP処理中に剥離したことを示す計測結果を取得する。この場合、制御装置50は、当該計測結果に応じて、当該基板210、230を再度貼り合わせる際や次の貼り合わせ対象となる基板210、230を貼り合わせる際に、基板210、230間に供給するガスの供給流量を多くしたり、供給圧を高くしたり、供給時間を長くしたりするよう設定し直すことで、次回以降に貼り合わせる基板210、230間の少なくとも外周側における、不活性ガスや湿度制御されたガスの充填率を高めることができる。また、上記の場合、制御装置50は、当該計測結果に応じて、次回以降に貼り合わせる基板210、230間に供給するガスの湿度を低くしたり、温度を高くしたりすることができる。また、上記の場合、制御装置50は、追加的に又は代替的に、当該計測結果に応じて、次回以降に貼り合わせる基板210、230間に供給するガスの排出流量を少なくしてもよい。何れの方法によっても、制御装置50は、次回以降に貼り合わせる基板210、230の外周部に発生するボイドを効率的に減らすことができる。
【0120】
なお、基板210、230を貼り合わせることで製造される積層基板201は、BWが終了する位置よりも中央側の部分が製品として用いられ、当該位置よりも外周側の部分は製品として用いられない場合があり、制御装置50によれば積層基板201の製品として用いられる部分にボイドが発生するリスクを下げることができるため、製品の歩留まりを向上させることができる。
【0121】
なお、基板貼り合わせ装置100は、基板230等の外周部の厚みの態様、基板230等の外周部における反りの態様、貼り合わせ工程中に基板210、230間に生じるBWの態様、貼り合わされた基板210、230の外周部に生じたボイドの態様、および、貼り合わされた基板210、230間の結合の態様、のうちの少なくとも何れかを計測してもよい。この場合、制御装置50は、基板貼り合わせ装置100から当該計測の結果を取得してもよい。なお、これに代えて、制御装置50は自ら、当該計測を行ってもよい。
【0122】
基板230は、面内で不均一に反っていたり、面内全体で一様に反っていたりする場合がある。また、その反り量(反りの程度)は、各基板230等に固有のものであったり、複数の基板230等のグループ、例えば保管の為に複数の基板230等が積層されているロッドや、同じ製造プロセスを経たグループや、同じ結晶方位のグループなどに固有のものだったりする場合がある。
【0123】
反りの程度が各基板230に固有のものである場合には、例えば基板貼り合わせ装置100に搬入する前や搬入した後で反りの程度が計測される。反りの程度が複数の基板230のグループごとに固有のものである場合には、最初の一つの基板について計測した計測結果を同一グループの他の基板に対しても適用してもよい。制御装置50は、一例として、グループごとにボイドが発生し易い箇所を示す情報を予め取得し、同じ種類の基板群に対して、同じ結晶方位を有する基板群に対して、または、同じ製造プロセスを通ってきた基板群に対して、一様に、同じガス供給方法を使用してもよい。
【0124】
図12は、貼り合わせ工程中の基板210、230間の間隔が所定の大きさ以上である場合における、一例としてのガス供給パターン(a)~(d)を説明するための模式的平面図である。また、図13は、貼り合わせ工程中の基板210、230間の間隔が所定の大きさ未満である場合における、一例としてのガス供給パターン(a)~(b)を説明するための模式的平面図である。
【0125】
本実施形態による制御装置50は、貼り合わせ工程中の基板210、230間の間隔、および、貼り合わせ工程中の基板210、230を保持している上ステージ322および下ステージ332の貼り合わせ方向における相対位置、のうちの少なくとも何れかに応じて、ガス供給部350から供給するガスの上記供給条件を制御する。本実施形態による制御装置50は、基板貼り合わせ装置100で互いに貼り合わされる基板210、230の間隔の変化に応じて、当該基板210、230間に供給するガスの供給条件を切り替える、とも言える。なお、基板210、230間に供給するガスの供給条件を切り替えることは、基板210、230間にガスを供給し続けながら当該ガスの供給条件を切り替えることを意味してもよい。この場合、例えば、基板210、230間の接触前から当該ガスを供給していることを前提として、制御装置50は、基板210、230の間隔の変化に応じて、当該ガスの供給条件を切り替えてもよい。
【0126】
より具体的には、制御装置50は、上記の間隔が所定の大きさ以上である場合、および、上記の相対位置が所定の大きさ以上に離れている場合、のうちの少なくとも何れかの場合に、当該ガスが二つの基板210、230間における面方向の中央すなわち起点形成時に接触する部分の間を流れるように当該ガスを供給する。この場合において、上述したサイドフローが貼り合わせ部300内を一方向に流れている場合には、制御装置50は、サイドフローの上流側から当該ガスを供給する。この際、当該ガスは、サイドフローの影響も受けて、効率的に基板210、230間に流れ込んでいき、基板210、230間に介在する雰囲気と置換される。尚、所定の大きさとは、基板210、230間にガスが充填可能または流入可能な大きさ、基板210、230の中央部にガスの流れが形成可能な大きさ、および、基板210、230間の流体をガス置換可能な大きさ、の少なくとも一つであってよく、流入するガス種、基板の材料、および、周囲環境等によって設定される。
【0127】
図12には、本実施形態による複数の固定配管部321の構成を使用する場合に、サイドフローの上流から当該ガスを供給するパターンの一例を4つ示す。図12(a)は、固定配管部321-3Aと、固定配管部321-1A~321-1Dとの組み合わせを使用したガス供給パターンを示す。図12(b)は、固定配管部321-2A~321-2Bのみを使用したガス供給パターンを示す。図12(c)は、固定配管部321-3Aと、固定配管部321-1A~321-1Bとの組み合わせを使用したガス供給パターンを示す。図12(d)は、固定配管部321-1A~321-1Bのみを使用したガス供給パターンを示す。
【0128】
本実施形態において、制御装置50は、XY平面内において90度間隔で4方向に配置された4つの固定配管部321-1A~321-1Dのうち、いずれの方向に配置された固定配管部321からガスを供給するかを、サイドフローの向きに応じて変更することが好ましい。4つの固定配管部321-3A~3Dについても同様である。なお、二つの基板210、230の間隔が大きい状態で、サイドフローが流れていない場合、制御装置50は、貼り合わせる基板210、230間で一方向の流れを作るべく、適切な固定配管部321からガスを供給することが好ましい。この場合、上ステージ322には、当該ガスを回収するためのガス回収部が一つ又は複数形成されていてもよく、制御装置50は、固定配管部321から流出させた当該ガスをガス回収部で回収することにより、当該ガスの一方向の流れを作ってもよい。
【0129】
本実施形態による制御装置50は更に、上記の間隔が所定の大きさ未満である場合、および、上記の相対位置が所定の大きさ未満の近さである場合、のうちの少なくとも何れかの場合に、二つの基板210、230の周囲に向けて、ガス供給部350からのガスを供給する。ここで言う基板210、230の周囲とは、基板210、230の全周であってもよく、基板210、230の全周の一部であってもよい。これにより、制御装置50は、二つの基板210、230間に介在している上記ガスが二つの基板210、230間から流出することを抑止する。制御装置50は、基板210、230の上方、下方および側方の少なくとも何れかの方向から基板210、230の全周に向けて当該ガスを供給してもよい。
【0130】
基板210、230が相互に接近すると、ガス供給部350からのガスが、二つの基板210、230間における面方向の中央を流れ難くなる。上述したサイドフローが流れている場合であっても、基板210、230が相互に接近すると、当該ガスは基板210、230間に流れ込み難くなる。そこで、制御装置50は、二つの基板210、230の周囲に向けて上記ガスを供給することにより、二つの基板210、230間に介在している上記ガスが二つの基板210、230間から流出することを抑止する。
【0131】
換言すると、制御装置50は、既に基板210、230間に充填された上記ガスを出来るだけ基板210、230間に留められるように、二つの基板210、230の周囲に向けて上記ガスを供給する。また、制御装置50は、上記の間隔が大きい場合、および、上記の相対位置が離れている場合、のうちの少なくとも何れかの場合に比べて、基板210、基板230、上ステージ322、および下ステージ332に吹き付けるガスの流量を減らすことによって、ガス流による各ステージの振動などの外乱を減らしてもよい。
【0132】
図13には、本実施形態による複数の固定配管部321の構成を使用する場合に、基板210、230の上方または側方から基板210、230の全周に向けて当該ガスを供給するパターンの一例を二つ示す。
【0133】
図13(a)は、固定配管部321-1A~321-1Dのみを使用したガス供給パターンを示す。貼り合わせ部300は、固定配管部321-2Aおよび固定配管部321-2Bに加えて、固定配管部321-3Cおよび固定配管部321-3Dと同様の位置にそれぞれ配置される固定配管部321-2Cおよび固定配管部321-2Dを有していてもよい。図13(b)は、固定配管部321-2A~321-2Dのみを使用したガス供給パターンを示す。なお、本実施形態では、図13に示す通り、上記の間隔が小さい場合、および、上記の相対位置が近い場合、のうちの少なくとも何れかの場合に、基板210、230に向けたサイドフローの供給を停止してもよい。
【0134】
本実施形態において、上記の間隔が大きい場合、または、上記の相対位置が離れている場合とは、貼り合わせる基板210、230をただ一箇所のみで接触させるための起点形成動作を開始する時点までの期間を意図してもよい。ここで言う起点形成動作は、図11に示した、昇降駆動部338を動作させて下ステージ332を上昇させ、基板210と基板230とを相互に接近させる動作を意図してもよい。この場合、制御装置50は、下ステージ332の上昇が開始されたときに、二つの基板210、230間の少なくとも中央にガスの流れを形成する供給条件から、二つの基板210、230間に介在しているガスが二つの基板210、230間から流出することを抑止する流れを形成する供給条件に切り替えてもよい。これに代えて、起点形成動作は、基板210、230を相互に接近させた状態で、基板ホルダ220による基板210の中央部の保持を解除させる動作、および/または、基板ホルダ220によって基板210の中央部を基板230に向けて凸形状に変形させる動作、を意図してもよい。ここで言う基板210、230を相互に接近させた状態の一例として、基板210、230の間隔が70μmであってもよい。また、これに代えて、起点形成動作は、基板210、230をただ一箇所のみで接触させる動作を意図してもよい。上記の間隔が小さい場合、または、上記の相対位置が近い場合とは、当該起点形成動作を開始した時点以降の期間を意図してもよい。
【0135】
基板貼り合わせ装置100の貼り合わせ部300は更に、貼り合わせ工程中の基板210、230間の間隔を計測する干渉計を有してもよい。貼り合わせ部300は追加的に又は代替的に、上ステージ322または下ステージ332への圧力変化を検出するロードセルを有してもよい。この場合、制御装置50は、基板貼り合わせ装置100から当該計測の結果を取得してもよい。なお、これに代えて、制御装置50は自ら、当該計測を行ってもよい。
【0136】
なお、貼り合わせ工程中の基板210、230間の間隔を計測せずに、上ステージ322および下ステージ332のそれぞれをシーケンス制御によって移動させる場合には、上記の相対位置に応じて当該ガスを制御することが好ましい。なお、上ステージ322および下ステージ332は、二つの保持部の一例である。
【0137】
本実施形態による制御装置50は更に、上記の間隔が大きい場合、および、上記の相対位置が離れている場合、のうちの少なくとも何れかの場合に、サイドフローの上流側から当該ガスを基板210、230間に一様に供給してもよい。
【0138】
このようにガスを制御する場合において、制御装置50は更に、上記の間隔が小さい場合、および、上記の相対位置が近い場合、のうちの少なくとも何れかの場合において、貼り合わせる基板210、230の外周部における、厚みが相対的に小さい箇所、および、反りの反り量が相対的に大きい箇所、のうちの少なくとも何れかの箇所には、相対的に多い供給流量、相対的に高い供給圧、および、相対的に高い温度のうちの少なくとも何れかで当該ガスを供給してもよい。
【0139】
また、このようにガスを制御する場合において、制御装置50は更に、上記の間隔が小さい場合、および、上記の相対位置が近い場合、のうちの少なくとも何れかの場合において、貼り合わせる基板210、230の外周部における、厚みが相対的に小さい箇所、および、反りの反り量が相対的に大きい箇所、のうちの少なくとも何れかの箇所に向けて、当該ガスを供給してもよい。
【0140】
また、このようにガスを制御する場合において、制御装置50は更に、上記の間隔が小さい場合、および、上記の相対位置が近い場合、のうちの少なくとも何れかの場合において、貼り合わせ工程中の基板210、230の外周側における、BWの進行が相対的に速い箇所には、相対的に多い供給流量、相対的に高い供給圧、および、相対的に高い温度のうちの少なくとも何れかで当該ガスを供給してもよい。
【0141】
また、このようにガスを制御する場合において、制御装置50は更に、上記の間隔が小さい場合、および、上記の相対位置が近い場合、のうちの少なくとも何れかの場合において、貼り合わせ工程中の基板210、230の外周側における、BWの進行が相対的に速い箇所に向けて、当該ガスを供給してもよい。
【0142】
また、このようにガスを制御する場合において、制御装置50は更に、上記の間隔が小さい場合、および、上記の相対位置が近い場合、のうちの少なくとも何れかの場合において、貼り合わされた基板210、230の外周部における、ボイドが相対的に多く生じている箇所、および、結合が解除されて剥離している箇所、のうちの少なくとも何れかの箇所に対応する、基板貼り合わせ装置100内の基板保持位置には、相対的に多い供給流量、相対的に高い供給圧、および、相対的に高い温度のうちの少なくとも何れかで当該ガスが供給されるように設定してもよい。
【0143】
また、このようにガスを制御する場合において、制御装置50は更に、上記の間隔が小さい場合、および、上記の相対位置が近い場合、のうちの少なくとも何れかの場合において、貼り合わされた基板210、230の外周部における、ボイドが相対的に多く生じている箇所、および、結合が解除されて剥離している箇所、のうちの少なくとも何れかの箇所に対応する、基板貼り合わせ装置100内の基板保持位置に向けて、当該ガスが供給されるようにしてもよい。
【0144】
以上の実施形態において、ガス供給部350がヘリウムガスを使用し、且つ、基板貼り合わせ装置100の貼り合わせ部300が干渉計によって下ステージ332等の位置を検出している場合、制御装置50は、ヘリウムガスと基板210、230間の雰囲気とが混在することによって、干渉計のゆらぎによる位置計測誤差が生じる場合がある。この位置計測誤差を低減するために、基板210、230のアライメント工程では、基板210、230間へのガス供給を行わないことが好ましい。一方、干渉計のゆらぎへの対策が講じられている場合には、基板210、230のアライメント工程中もしくはアライメント工程前からヘリウムガスを貼り合わせ部300内に供給してもよい。当該対策の一例は、干渉計ゆらぎによって生じる位置計測誤差を補正することや、干渉計からの光の光路を筒で囲うことであってもよい。位置計測誤差を補正する方法について、より具体的には、干渉計からの光の光路上の雰囲気における、ヘリウム濃度や屈折率などを計測し、当該計測結果に基づいて補正値を算出し、干渉計が計測した位置計測値を当該補正値で補正してもよい。当該対策の他の一例は、基板210、230間へ供給されたガスが、基板210、230間から周囲に漏れ出て、少なくとも干渉計からの光の光路へと流れ込まないように、当該漏れ出るガスをサイドフローで吹き飛ばしてもよい。これらの対策の何れによっても、制御装置50は、タクトタイムへの影響を低減させることができる。
【0145】
以上の実施形態において、制御装置50は、貼り合わせる基板210、230同士を対面させた後、貼り合わせる基板210、230間に介在する雰囲気とガス供給部350からのガスを置換する前に、上ステージ322および下ステージ332によって保持されている基板210、230の間隔を広げるように制御するものとして説明した。貼り合わせる基板210、230同士を対面させた後、基板210、230同士を貼り合わせるために、下ステージ332をZ軸方向に移動させない場合には、制御装置50は、基板210、230同士を対面させる前に、ガス供給部350から貼り合わせ部300内にガスを供給し始めてもよい。
【0146】
より具体的には、基板210、230のアライメント工程後であって、基板210、230同士を対面させる前、すなわち図3のように基板210、230がXY平面内で互いにずれている状態において、制御装置50は、エアシリンダ部326を動作させ、基板230を保持した下ステージ332の移動を充填用カバー部327が阻害しない程度に、昇降アーム部325および充填用カバー部327をZ軸方向の負側に降下させてもよい。これにより、充填用カバー部327は、上ステージ322によって保持されている基板210の全周に亘って、基板210を側方から囲う。この際、充填用カバー部327の天板343の下面と充填用天板323の上面との間は封止部材328によってシールされていることが好ましい。
【0147】
この状態で、制御装置50は、ガス供給部350からのガスを、固定配管部321を介して基板210の貼り合わせ面下に沿うように供給してもよい。一例として、制御装置50は、固定配管部321-1A~321-1Dを介して、当該ガスを、基板ホルダ220の裏面を伝って径方向外側に拡散させて、基板ホルダ220と充填用カバー部327との間に上方から充満させていってもよい。
【0148】
他の一例として、上ステージ322には、当該ガスを回収するためのガス回収部が一つ又は複数形成されていてもよい。この場合に、制御装置50は、上ステージ322に保持された基板210を挟んで当該ガス回収部の反対側に位置する固定配管部321から流出させた当該ガスを、当該ガス回収部で回収することによって、ガスの流れが基板210の貼り合わせ面下に沿うようにガスを供給してもよい。なお、この場合、当該ガス回収部の回収口は、基板210の貼り合わせ面よりもZ軸方向負側に位置し、且つ、基板230を保持して移動する下ステージ332と干渉しない程度にZ軸方向正側に位置することが好ましい。なお、これらの構成は、当該ガスの比重が空気よりも重い場合には、上下逆転させてもよい。
【0149】
以上の実施形態において、充填用カバー部327は、エアシリンダ部326によってZ軸方向の最も負側に降下した状態で、基板210を保持している基板ホルダ220および基板230を保持している基板ホルダ240を囲う構成として説明した。これに代えて、充填用カバー部327は、当該状態で、基板ホルダ220上に保持されている基板210および基板ホルダ240上に保持されている基板230のみを囲ってもよく、すなわち、対面した状態の基板210および基板230の外周近傍を囲ってもよい。
【0150】
図14は、ガス供給方法の変形例を説明するための模式的断面図である。本変形例による制御装置50は、保持している基板210の全周に亘って基板210を側方から囲う垂下部223を有する基板ホルダ222と、当該垂下部223の少なくとも先端部分を受け入れるべく、当該垂下部223と相補的な形状を有する陥凹部243を有する基板ホルダ242とを用いる。なお、本変形例において、基板ホルダ222は、上ステージ322とは別体として構成されているものとするが、一体的に構成されていてもよい。
【0151】
当該垂下部223のZ軸方向負側の先端部分は、基板210の貼り合わせ面よりもZ軸方向負側に位置し、且つ、基板230を保持して移動する下ステージ332と干渉しない程度にZ軸方向正側に位置することが好ましい。なお、当該陥凹部243は、基板210、230の貼り合わせ面が互いに近接したときに、当該垂下部223を逃がす、すなわち当該垂下部223が基板ホルダ242に干渉することを防止する機能を有する、とも言える。なお、当該機能を実現するための代替手段として、基板ホルダ222の垂下部223は、基板210、230の貼り合わせ面が互いに近接したときに、基板ホルダ222内に引っ込むように構成されてもよい。例えば、垂下部223のZ軸方向の根元部分は、バネなどの弾性体で基板ホルダ222に保持され、垂下部223のZ軸方向の先端部分が基板ホルダ242の表面で押圧された場合に、基板ホルダ222内に引っ込むように構成されてもよい。また例えば、垂下部223は、モータによってZ軸方向に移動可能に構成され、制御装置50の制御によって、基板210、230の貼り合わせ面が互いに近接したときに、基板ホルダ242の表面と接触しないように引っ込まされてもよい。
【0152】
基板ホルダ222は、垂下部223の外周側の予め定められた位置に固定された1又は複数の位置計測器370を有する。また同様に、基板ホルダ242は、陥凹部243の外周側の予め定められた位置に固定された1又は複数の位置計測器370を有する。すなわち、位置計測器370と基板210との間に垂下部223が配置されている。基板ホルダ222および基板ホルダ242のそれぞれの位置計測器370は、一例として干渉計ミラーである。この場合、基板ホルダ222の位置計測器370のZ軸方向負側の先端部分は、基板ホルダ222の垂下部223のZ軸方向負側の先端部分よりもZ軸方向正側に位置してもよい。すなわち、基板ホルダ222の保持面からの垂下部223の高さは、基板ホルダ222の保持面からの位置測定器370の高さよりも高くてもよい。
【0153】
なお、基板ホルダ222の位置計測器370および基板ホルダ242の位置計測器370は、干渉計ミラーに代えて又は加えて、エンコーダであってもよい。なお、基板ホルダ222および基板ホルダ242の何れかは、位置計測器370を有さなくてもよい。
【0154】
また、本変形例では、貼り合わせ部300の天板316には、1つ又は複数のガス供給管361および1つ又は複数のガス回収管362が、上ステージ322の側方に固定される。
【0155】
また、本変形例において、1つ又は複数のガス供給管361はそれぞれ、一端がガス供給部350に接続され、他端が、貼り合わせ部300内の上ステージ322に保持された基板ホルダ222の垂下部223に形成された孔に接続され、基板ホルダ222に保持された基板210の側方に露出している。1つ又は複数のガス供給管361はそれぞれ、ガス供給部350から供給されるガスを、貼り合わせ部300内の基板ホルダ222に保持された基板210の貼り合わせ面上に送出可能である。本変形例における1つ又は複数のガス供給管361はそれぞれ、上記一端に流量調整用のバルブが設けられ、ガス供給部350によって、個別に又は一括で、貼り合わせ部300内に供給するガスの流量を調整される。
【0156】
なお、1つ又は複数のガス供給管361の上記他端は、基板ホルダ222の垂下部223と基板210との間で基板ホルダ222に形成された孔に接続され、基板ホルダ222に保持された基板210の側方に露出してもよい。
【0157】
また、本変形例において、1つ又は複数のガス回収管362はそれぞれ、一端がガス供給部350に接続され、他端が、貼り合わせ部300内の上ステージ322に保持された基板ホルダ222の垂下部223に形成された孔に接続され、基板ホルダ222に保持された基板210の側方に露出している。
【0158】
1つ又は複数のガス回収管362はそれぞれ、基板210の貼り合わせ面上を流動するガスを回収し、ガス供給部350へと送出可能である。本変形例における1つ又は複数のガス回収管362はそれぞれ、上記一端に流量調整用のバルブが設けられ、ガス供給部350によって、個別に又は一括で、基板210の貼り合わせ面上から回収するガスの流量を調整される。
【0159】
垂下部223において、1つ又は複数のガス回収管362の上記他端は、基板ホルダ222に保持された基板210を挟んで、1つ又は複数のガス供給管361の上記他端の反対側に位置することが好ましい。これにより、制御装置50は、1つ又は複数のガス供給管361の上記他端から流出させたガスを1つ又は複数のガス回収管362の当該他端で回収することによって、ガスを効果的に基板210の貼り合わせ面下に沿って流動させることができる。
【0160】
上述の干渉計のゆらぎへの対策の一例として、本変形例による制御装置50は、上述した構成を有する、基板ホルダ222、基板ホルダ242、1つ又は複数のガス供給管361、1つ又は複数のガス回収管362、および、1又は複数の位置計測器370を用いてもよい。なお、これらの構成は、当該ガスの比重が空気よりも重い場合には、上下逆転させてもよい。
【0161】
また、本変形例による制御装置50は、基板210、230同士を対面させる前に、ガス供給部350から貼り合わせ部300内にガスを供給し始め、基板210の貼り合わせ面上にガスが流動している状態を形成してもよい。この場合、制御装置50は、貼り合わせる基板210、230同士を対面させた後、基板210、230同士を貼り合わせるために、図14中に黒塗りの矢印で示すように、下ステージ332をZ軸正方向に移動させる。
【0162】
このように、基板210、230同士を対面させる前に、基板210の貼り合わせ面上にガスを流動させることにより貼り合わせ面上にガスを溜めた状態を形成する場合、図14中に黒塗りの矢印で示すように、制御装置50は、1つ又は複数のガス供給管361の上記他端から基板210の貼り合わせ面上へとガスを流す方向と、基板210、230同士を対面させるために下ステージ332をXY平面内で移動させる方向とを、同じ方向にすることが好ましい。これにより、制御装置50は、ガスを効果的に基板210の貼り合わせ面下に沿って一方向に流動させることができる。同様の観点で、基板210、230同士を対面させる前に、基板210の貼り合わせ面上にガスを溜めた状態を形成する場合に、制御装置50は、1つ又は複数のガス供給管361の上記他端から基板210の貼り合わせ面上へとガスを流す方向と、サイドフローの方向とを、同じ方向にすることが好ましい。
【0163】
以上の実施形態において、ガス供給部350から貼り合わせ部300内に供給されるガスの比重が空気よりも軽いことを前提として、充填用天板323の上面と充填用カバー部327の天板343の下面との間を封止部材328によってシールする構成とした。ガス供給部350から貼り合わせ部300内に供給されるガスの比重が空気よりも重い場合には、充填用天板323に代えて、基板ホルダ240の下面よりもZ軸方向の負側に位置する充填用底板を使用し、充填用底板の上面と充填用カバー部327の底板345の下面との間を封止部材328によってシールする構成としてもよい。
【0164】
また、固定配管部321の一端は、当該ガスの比重が空気よりも軽い場合には、基板ホルダ220における基板210を保持する側の面に当該一端が露出するように、基板ホルダ220に固定されてもよい。また、固定配管部321の一端は、当該ガスの比重が空気よりも重い場合には、基板ホルダ240における基板230を保持する側の面に当該一端が露出するように、基板ホルダ240に固定されてもよい。いずれの場合においても、基板ホルダ220および基板ホルダ240における基板210および基板230の外側の外周部に固定配管部321の一端を接続することにより、基板210および基板230の外周上に向けてガスを吐出してもよい。
【0165】
また、貼り合わせ部300は、ガス供給部350からのガスを、上ステージ322側および下ステージ332側の上下両方向から供給できる構成であってもよい。制御装置50は、一例として、貼り合わせる基板210、230間に向けて、基板210等の下方から、基板210等の上方および下方の両方から、基板210等の上方および側方の両方から、基板210等の下方および側方の両方から、あるいは、基板210等の上方、下方および側方の全てから、当該ガスを供給してもよい。このように多数方向から当該ガスを供給する場合、制御装置50は、例えば基板210、230間にガスを充填する時間を短縮できる場合がある。
【0166】
以上の実施形態において、充填用カバー部327はヒータによって加熱されてもよい。これにより、ガス供給部350から貼り合わせ部300内に供給されるガスの温度だけでなく、貼り合わせる基板210、230に向かって流れるサイドフローの温度も、充填用カバー部327の熱で高くすることができ、断熱膨張ボイドの発生を抑止することができる。
【0167】
以上の実施形態において、基板貼り合わせ装置100が貼り合わせる基板210、230のうち、貼り合わせ面に垂直な断面において、貼り合わせ面側が相対的に中凸である形状の基板を、上ステージ322側で保持し、下ステージ332側に保持された他の基板に向けて解放することが好ましい。これにより、BW進行中の基板間の空間を好適に広げることができる。
【0168】
以上の実施形態において、貼り合わせ部300または制御装置50は、少なくとも充填用カバー部327の内側の空間における湿度を計測可能な湿度モニタを有してもよい。制御装置50は、当該湿度モニタによる計測結果に応じて、例えば当該空間における湿度が予め定められた閾値を下回ったことに応じて、貼り合わせる基板210、230間の雰囲気が、ガス供給部350からのガスと置換されたと判断してもよい。追加的に又は代替的に、貼り合わせ部300または制御装置50は、少なくとも充填用カバー部327の内側の空間における温度や気圧等を計測可能なモニタを有してもよい。この場合、制御装置50は、当該モニタによる計測結果に応じて、例えば当該空間における温度または気圧が予め定められた閾値を上回ったことに応じて、貼り合わせる基板210、230間の雰囲気が、ガス供給部350からのガスと置換されたと判断し、または、断熱膨張ボイドが発生し難い状況になったと判断してもよい。
【0169】
以上の実施形態において、制御装置50は、貼り合わせ面内に複数の湿度センサが分布して内蔵されているテスト用の基板を使用して、貼り合わせる基板間の適切な湿度のバランス、ガス充填時間を確認しておき、製品として使用される基板210、230の貼り合わせ時には、テスト用の基板での確認結果を目安にして同じようにガスを制御してもよい。
【0170】
以上の実施形態において、制御装置50は、貼り合わせ工程中の基板210、230間の間隔が大きい場合、および、貼り合わせ工程中の基板210、230を保持している上ステージ322および下ステージ332の貼り合わせ方向における相対位置が離れている場合の何れかの場合においてのみ、ガス供給部350から貼り合わせ部300内に供給するガスを制御してもよい。
【0171】
以上の実施形態において、制御装置50は、基板の貼り合わせ工程前に取得した計測結果に応じて、当該基板が予め定められた基準を下回ると判断した場合に、当該基板を貼り合わせ対象から除外すると決定してもよい。
【0172】
以上の実施形態において、制御装置50は、基板貼り合わせ装置100と別の構成として説明した。これに代えて、制御装置50は、基板貼り合わせ装置100に統合されていてもよく、換言すると、基板貼り合わせ装置100は制御装置50を備えていてもよく、また、基板貼り合わせ装置100が、制御装置50の一部の機能を実行する制御部を備えてもよく、この場合、制御装置50は、当該機能を実行しても実行しなくてもよい。
【0173】
以上の実施形態において、主に、上ステージ322側で保持した基板210を、下ステージ332側に保持された基板230に向けて解放する形態を説明したが、その逆であってもよく、すなわち、下ステージ332側で保持した基板230を、上ステージ322側に保持された基板210に向けて解放してもよい。また、基板ホルダ220、240は、上ステージ322および下ステージ332のそれぞれから負圧を供給されてもよく、自身が負圧を供給するポンプを備えてもよい。
【0174】
本発明の様々な実施形態は、フローチャートおよびブロック図を参照して記載されてよく、ここにおいてブロックは、(1)操作が実行されるプロセスの段階または(2)操作を実行する役割を持つ装置のセクションを表わしてよい。特定の段階およびセクションが、専用回路、コンピュータ可読媒体上に格納されるコンピュータ可読命令と共に供給されるプログラマブル回路、および/またはコンピュータ可読媒体上に格納されるコンピュータ可読命令と共に供給されるプロセッサによって実装されてよい。専用回路は、デジタルおよび/またはアナログハードウェア回路を含んでよく、集積回路(IC)および/またはディスクリート回路を含んでよい。プログラマブル回路は、論理AND、論理OR、論理XOR、論理NAND、論理NOR、および他の論理操作、フリップフロップ、レジスタ、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、プログラマブルロジックアレイ(PLA)等のようなメモリ要素等を含む、再構成可能なハードウェア回路を含んでよい。
【0175】
コンピュータ可読媒体は、適切なデバイスによって実行される命令を格納可能な任意の有形なデバイスを含んでよく、その結果、そこに格納される命令を有するコンピュータ可読媒体は、フローチャートまたはブロック図で指定された操作を実行するための手段を作成すべく実行され得る命令を含む、製品を備えることになる。コンピュータ可読媒体の例としては、電子記憶媒体、磁気記憶媒体、光記憶媒体、電磁記憶媒体、半導体記憶媒体等が含まれてよい。コンピュータ可読媒体のより具体的な例としては、フロッピー(登録商標)ディスク、ディスケット、ハードディスク、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリメモリ(ROM)、消去可能プログラマブルリードオンリメモリ(EPROMまたはフラッシュメモリ)、電気的消去可能プログラマブルリードオンリメモリ(EEPROM)、静的ランダムアクセスメモリ(SRAM)、コンパクトディスクリードオンリメモリ(CD-ROM)、デジタル多用途ディスク(DVD)、ブルーレイ(RTM)ディスク、メモリスティック、集積回路カード等が含まれてよい。
【0176】
コンピュータ可読命令は、アセンブラ命令、命令セットアーキテクチャ(ISA)命令、マシン命令、マシン依存命令、マイクロコード、ファームウェア命令、状態設定データ、またはSmalltalk(登録商標)、JAVA(登録商標)、C++等のようなオブジェクト指向プログラミング言語、および「C」プログラミング言語または同様のプログラミング言語のような従来の手続型プログラミング言語を含む、1または複数のプログラミング言語の任意の組み合わせで記述されたソースコードまたはオブジェクトコードのいずれかを含んでよい。
【0177】
コンピュータ可読命令は、汎用コンピュータ、特殊目的のコンピュータ、若しくは他のプログラム可能なデータ処理装置のプロセッサまたはプログラマブル回路に対し、ローカルにまたはローカルエリアネットワーク(LAN)、インターネット等のようなワイドエリアネットワーク(WAN)を介して提供され、フローチャートまたはブロック図で指定された操作を実行するための手段を作成すべく、コンピュータ可読命令を実行してよい。プロセッサの例としては、コンピュータプロセッサ、処理ユニット、マイクロプロセッサ、デジタル信号プロセッサ、コントローラ、マイクロコントローラ等を含む。
【0178】
図15は、本発明の複数の態様が全体的又は部分的に具現化されうるコンピュータ1200の例を示す。コンピュータ1200にインストールされたプログラムは、コンピュータ1200に、本発明の実施形態に係る装置に関連付けられるオペレーション又は当該装置の1又は複数の「部」として機能させ、又は当該オペレーション又は当該1又は複数の「部」を実行させることができ、及び/又はコンピュータ1200に、本発明の実施形態に係るプロセス又は当該プロセスの段階を実行させることができる。このようなプログラムは、コンピュータ1200に、本明細書に記載のフローチャート及びブロック図のブロックのうちのいくつか又はすべてに関連付けられた特定のオペレーションを実行させるべく、CPU1212によって実行されてよい。
【0179】
本実施形態によるコンピュータ1200は、CPU1212、RAM1214、グラフィックコントローラ1216、及びディスプレイデバイス1218を含み、これらはホストコントローラ1210によって相互に接続される。コンピュータ1200はまた、通信インターフェース1222、ハードディスクドライブ1224、DVD-ROMドライブ1226、及びICカードドライブのような入出力ユニットを含み、これらは入出力コントローラ1220を介してホストコントローラ1210に接続される。コンピュータはまた、ROM1230及びキーボード1242のようなレガシの入出力ユニットを含み、これらは入出力チップ1240を介して入出力コントローラ1220に接続される。
【0180】
CPU1212は、ROM1230及びRAM1214内に格納されたプログラムに従い動作し、これにより各ユニットを制御する。グラフィックコントローラ1216は、RAM1214内に提供されるフレームバッファ等又は当該グラフィックコントローラ1216自体の中に、CPU1212によって生成されるイメージデータを取得し、イメージデータがディスプレイデバイス1218上に表示させる。
【0181】
通信インターフェース1222は、ネットワークを介して他の電子デバイスと通信する。ハードディスクドライブ1224は、コンピュータ1200内のCPU1212によって使用されるプログラム及びデータを格納する。DVD-ROMドライブ1226は、プログラム又はデータをDVD-ROM1201から読み取り、ハードディスクドライブ1224にRAM1214を介してプログラム又はデータを提供する。ICカードドライブは、プログラム及びデータをICカードから読み取り、及び/又はプログラム及びデータをICカードに書き込む。
【0182】
ROM1230は、内部に、アクティブ化時にコンピュータ1200によって実行されるブートプログラム等、及び/又はコンピュータ1200のハードウェアに依存するプログラムを格納する。入出力チップ1240はまた、様々な入出力ユニットをパラレルポート、シリアルポート、キーボードポート、マウスポート等を介して、入出力コントローラ1220に接続してよい。
【0183】
プログラムが、DVD-ROM1201又はICカードのようなコンピュータ可読記憶媒体によって提供される。プログラムは、コンピュータ可読記憶媒体から読み取られ、コンピュータ可読記憶媒体の例でもあるハードディスクドライブ1224、RAM1214、又はROM1230にインストールされ、CPU1212によって実行される。これらのプログラム内に記述される情報処理は、コンピュータ1200に読み取られ、プログラムと、上記様々なタイプのハードウェアリソースとの間の連携をもたらす。装置又は方法が、コンピュータ1200の使用に従い情報のオペレーション又は処理を実現することによって構成されてよい。
【0184】
例えば、通信がコンピュータ1200及び外部デバイス間で実行される場合、CPU1212は、RAM1214にロードされた通信プログラムを実行し、通信プログラムに記述された処理に基づいて、通信インターフェース1222に対し、通信処理を命令してよい。通信インターフェース1222は、CPU1212の制御の下、RAM1214、ハードディスクドライブ1224、DVD-ROM1201、又はICカードのような記録媒体内に提供される送信バッファ領域に格納された送信データを読み取り、読み取られた送信データをネットワークに送信し、又はネットワークから受信した受信データを記録媒体上に提供される受信バッファ領域等に書き込む。
【0185】
また、CPU1212は、ハードディスクドライブ1224、DVD-ROMドライブ1226(DVD-ROM1201)、ICカード等のような外部記録媒体に格納されたファイル又はデータベースの全部又は必要な部分がRAM1214に読み取られるようにし、RAM1214上のデータに対し様々なタイプの処理を実行してよい。CPU1212は次に、処理されたデータを外部記録媒体にライトバックしてよい。
【0186】
様々なタイプのプログラム、データ、テーブル、及びデータベースのような、様々なタイプの情報が、情報処理されるべく、記録媒体に格納されてよい。CPU1212は、RAM1214から読み取られたデータに対し、本開示の随所に記載され、プログラムの命令シーケンスによって指定される様々なタイプのオペレーション、情報処理、条件判断、条件分岐、無条件分岐、情報の検索/置換等を含む、様々なタイプの処理を実行してよく、結果をRAM1214に対しライトバックする。また、CPU1212は、記録媒体内のファイル、データベース等における情報を検索してよい。例えば、各々が第2の属性の属性値に関連付けられた第1の属性の属性値を有する複数のエントリが記録媒体内に格納される場合、CPU1212は、当該複数のエントリの中から、第1の属性の属性値が指定されている条件に一致するエントリを検索し、当該エントリ内に格納された第2の属性の属性値を読み取り、これにより予め定められた条件を満たす第1の属性に関連付けられた第2の属性の属性値を取得してよい。
【0187】
以上の説明によるプログラム又はソフトウェアモジュールは、コンピュータ1200上又はコンピュータ1200近傍のコンピュータ可読記憶媒体に格納されてよい。また、専用通信ネットワーク又はインターネットに接続されたサーバシステム内に提供されるハードディスク又はRAMのような記録媒体が、コンピュータ可読記憶媒体として使用可能であり、これにより、プログラムをコンピュータ1200にネットワークを介して提供する。
【0188】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加え得ることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態もまた、本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、請求の範囲の記載から明らかである。
【0189】
請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0190】
10 基板貼り合わせユニット、50 制御装置、100 基板貼り合わせ装置、110 筐体、120、130 基板カセット、140 搬送部、170 活性化装置、201 積層基板、210、230 基板、220、222、240、242 基板ホルダ、223 垂下部、241 壁部、243 陥凹部、300 貼り合わせ部、310 枠体、312 底板、316 天板、321、321-1A、321-1B、321-1C、321-1D、321-2A、321-2B、321-3A、321-3B、321-3C、321-3D 固定配管部、322 上ステージ、323 充填用天板、324、334 顕微鏡、325 昇降アーム部、326 エアシリンダ部、327 充填用カバー部、328 封止部材、331 X方向駆動部、332 下ステージ、333 Y方向駆動部、338 昇降駆動部、341 側壁、343 天板、345 底板、350 ガス供給部、361 ガス供給管、362 ガス回収管、370 位置計測器、400 ホルダストッカ、500 プリアライナ、1200 コンピュータ、1201 DVD-ROM、1210 ホストコントローラ、1212 CPU、1214 RAM、1216 グラフィックコントローラ、1218 ディスプレイデバイス、1220 入出力コントローラ、1222 通信インターフェース、1224 ハードディスクドライブ、1226 DVD-ROMドライブ、1230 ROM、1240 入出力チップ、1242 キーボード
図1
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図15