(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-04
(45)【発行日】2023-12-12
(54)【発明の名称】回路基板モジュール
(51)【国際特許分類】
H01L 25/07 20060101AFI20231205BHJP
H01L 25/18 20230101ALI20231205BHJP
H01L 23/36 20060101ALI20231205BHJP
H01L 25/00 20060101ALI20231205BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20231205BHJP
H05K 3/36 20060101ALI20231205BHJP
【FI】
H01L25/04 C
H01L23/36 C
H01L23/36 D
H01L25/00 A
H05K7/20 F
H05K7/20 B
H05K3/36 A
(21)【出願番号】P 2022508045
(86)(22)【出願日】2020-10-22
(86)【国際出願番号】 JP2020039759
(87)【国際公開番号】W WO2021186782
(87)【国際公開日】2021-09-23
【審査請求日】2022-09-15
(31)【優先権主張番号】P 2020047122
(32)【優先日】2020-03-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】弁理士法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】細谷 達也
【審査官】河合 俊英
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/130746(WO,A1)
【文献】特開2004-235402(JP,A)
【文献】特開2015-8169(JP,A)
【文献】特開2017-228683(JP,A)
【文献】特開2016-6834(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 25/07
H01L 23/36
H01L 25/00
H05K 7/20
H05K 3/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1主面と第2主面とを有し、前記第1主面にパワー半導体素子が実装され、電力変換回路を構成する第1回路基板と、
第3主面と第4主面とを有し、前記電力変換回路が電流を供給する負荷が前記第4主面に電気的に接続されて実装される第2回路基板と、
を備え、
前記第1回路基板は、それぞれが前記第2主面から突出する形状からなる、前記電力変換回路の正極出力ピンおよび前記電力変換回路の負極出力ピンを備え、
前記第2回路基板は、それぞれが前記第3主面から前記第4主面まで貫通する形状からなる、正極貫通ビアおよび負極貫通ビアを備え、
前記第1回路基板の前記第2主面と前記第2回路基板の前記第3主面とは、物理的に密着しており、
前記正極出力ピンは、前記正極貫通ビアを挿通して、前記第4主面まで達しており、
前記負極出力ピンは、前記負極貫通ビアを挿通して、前記第4主面まで達しており、
前記負荷は、前記正極出力ピンと前記負極出力ピンとを通して、前記電力変換回路から電流が供給される、
回路基板モジュール。
【請求項2】
前記第1回路基板と前記第2回路基板との間に配置された第1熱伝導用シートを、備え、
前記第1回路基板の前記第2主面と前記第2回路基板の前記第3主面とは、前記第1熱伝導用シートを通して物理的かつ熱的に密着している、
請求項1に記載の回路基板モジュール。
【請求項3】
前記第1熱伝導用シートは、
電気絶縁性を有し、
前記第1回路基板の前記第2主面と前記第2回路基板の前記第3主面とは、電気絶縁している、
請求項2に記載の回路基板モジュール。
【請求項4】
前記第1熱伝導用シートは、
導電性を有し、
前記負極貫通ビアおよび前記負極出力ピンに電気接続し、
前記正極貫通ビアおよび前記正極出力ピンに電気絶縁する、
請求項2に記載の回路基板モジュール。
【請求項5】
前記第1熱伝導用シートは、可撓性を有する、
請求項2乃至請求項4のいずれかに記載の回路基板モジュール。
【請求項6】
前記第1熱伝導用シートの面積は、前記第1回路基板の面積よりも大きい、
請求項2乃至請求項5のいずれかに記載の回路基板モジュール。
【請求項7】
前記第1熱伝導用シートは、金属より高い熱伝導率を有するグラファイトを含む、
請求項4に記載の回路基板モジュール。
【請求項8】
前記第1熱伝導用シートは、シリコーンを含む、
請求項3に記載の回路基板モジュール。
【請求項9】
前記第1回路基板と前記負荷とは、平面視において重なっている、
請求項1乃至請求項8のいずれかに記載の回路基板モジュール。
【請求項10】
前記第1主面には、前記パワー半導体素子に接触して覆う第2熱伝導用シートと、
前記第2熱伝導用シートに対して面状に当接する放熱板と、
を備える、
請求項1乃至請求項9のいずれかに記載の回路基板モジュール。
【請求項11】
前記第2回路基板の前記第4主面には、前記負荷を放熱する放熱器を備え、
前記第1回路基板の前記第1主面側には、前記放熱器を固定する固定部材を備え、
前記固定部材の少なくとも一部は、前記放熱板である、
請求項10に記載の回路基板モジュール。
【請求項12】
前記負荷は、CPU、GPU、および、MPUの少なくとも1つを備える、
請求項1乃至請求項11のいずれかに記載の回路基板モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源回路モジュールと、この電源回路モジュールによって大電流を供給する負荷とを備えたシステム回路基板モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、回路基板に実装された回路素子の放熱構造を有する回路部品が記載されている。特許文献1の構成では、回路基板の実装面に、回路素子が実装される。回路基板には、回路素子の放熱部が露出するように、貫通穴が形成されている。
【0003】
回路基板の実装面の裏側には、放熱フィンを有する放熱器が実装されている。放熱器は、突出部を有している。突出部は、貫通穴を挿通し、素子の放熱部に面接する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に、電気回路や回路素子を駆動させるためには、電圧や電流を供給しなければならない。このため、特許文献1に示すような構成では、例えば、回路基板における回路素子の実装面に、電源回路モジュールを実装する。そして、回路基板に形成された回路パターンによって、電源回路モジュールから回路素子に、電圧や電流を供給する。
【0006】
また、このような回路素子として、低電圧、大電流の半導体プロセッサが多く実用化されている。そして、このような半導体プロセッサでは、電圧の更なる安定化や、大電流の供給における高効率化が求められている。
【0007】
しかしながら、上述の構成では、低電圧、大電流の半導体プロセッサのような素子(負荷)に対して、電圧の安定化や、大電流の供給における高効率化を実現することが難しい。
【0008】
したがって、本発明の目的は、負荷へ供給する電圧の更なる安定化や、負荷への大電流の供給における高効率化が実現可能な回路基板モジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明の回路基板モジュールは、第1主面と第2主面とを有し、第1主面にパワー半導体素子が実装され、電力変換回路を構成する第1回路基板と、第3主面と第4主面とを有し、電力変換回路が電流を供給する負荷が第4主面に電気的に接続されて実装される第2回路基板と、を備え、第1回路基板は、それぞれが第2主面から突出する形状からなる、電力変換回路の正極出力ピンおよび電力変換回路の負極出力ピンを備え、第2回路基板は、それぞれが第3主面から第4主面まで貫通する形状からなる、正極貫通ビアおよび負極貫通ビアを備え、第1回路基板の第2主面と第2回路基板の第3主面とは、物理的に密着しており、正極出力ピンは、正極貫通ビアを挿通して、第4主面まで達しており、負極出力ピンは、負極貫通ビアを挿通して、第4主面まで達しており、負荷は、正極出力ピンと負極出力ピンとを通して、電力変換回路から電流が供給される。
【0010】
この構成では、電力変換回路、すなわち、電源回路モジュールから、正極出力ピンおよび負極出力ピンを通して、直接的に、負荷に電流が供給される。これにより、電源回路モジュールから負荷へ供給される電流の損失は抑えられ、負荷に供給される電圧の安定化、および、電圧電流の供給の高効率化が実現される。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、負荷へ供給する電圧の安定化および負荷への大電流の供給における高効率化を実現するとともに、同時に、半導体プロセッサのように多数の通信ポートを有する素子(負荷)に対して、シンプルで、低コストな電力供給のインターフェース構造を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、第1の実施形態に係る回路基板モジュールの構成を示す側面断面図である。
【
図2】
図2は、第1の実施形態に係る回路基板モジュールの分解斜視図である。
【
図3】
図3A、
図3Bは、第1の実施形態に係る回路基板モジュールを構成する電源回路モジュールの構成を示す側面図である。
【
図4】
図4は、第1の実施形態に係る回路基板モジュールを構成する電源回路モジュールの平面図である。
【
図5】
図5は、第1の実施形態に係る回路基板モジュールを構成する電源回路モジュールの外観斜視図である。
【
図6】
図6は、第1の実施形態に係る電源回路モジュールの簡略的な等価回路図である。
【
図7】
図7は、
図6に示す電源回路モジュールの電力変換部の簡略的な構成を示す等価回路図である。
【
図8】
図8は、第1の実施形態に係る回路基板モジュールの派生例の構成を示す側面断面図である。
【
図9】
図9は、第2の実施形態に係る回路基板モジュールの構成を示す側面断面図である。
【
図10】
図10は、第3の実施形態に係る回路基板モジュールの側面断面図である。
【
図11】
図11は、第3の実施形態に係る回路基板モジュールの派生例の構成を示す側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態に係る回路基板モジュールについて、図を参照して説明する。
図1は、第1の実施形態に係る回路基板モジュールの構成を示す側面断面図である。
図2は、第1の実施形態に係る回路基板モジュールの分解斜視図である。
図3A、
図3Bは、第1の実施形態に係る回路基板モジュールを構成する電源回路モジュールの構成を示す側面図である。
図4は、第1の実施形態に係る回路基板モジュールを構成する電源回路モジュールの平面図である。
図5は、第1の実施形態に係る回路基板モジュールを構成する電源回路モジュールの外観斜視図である。
【0014】
【0015】
図1、
図2に示すように、回路基板モジュール10は、電源回路モジュール2、半導体デバイス7、回路基板30、および、熱伝導用シート40を備える。
【0016】
(電源回路モジュール2の構成)
図3A、
図3B、
図4、
図5に示すように、電源回路モジュール2は、回路基板20、複数のスイッチングIC21、複数のインダクタ22、複数の外部端子導体24、複数の正極出力ピン241、および、複数の負極出力ピン242を備える。電源回路モジュール2の回路構成例は、
図6、
図7を用いて後述する。
【0017】
回路基板20は、絶縁性の基材からなる。回路基板20は、第1主面201と第2主面202とを有する平板である。図示を省略しているが、回路基板20には、電源回路モジュール2を実現するための導体パターンが形成されている。回路基板20は、基材内に、正極導体層203と負極導体層204とを備える。正極導体層203および負極導体層204は、回路基板20の厚み方向に直交する。正極導体層203と負極導体層204とは、回路基板20の厚み方向において異なる位置に配置されている。正極導体層203と負極導体層204とは、電気的に絶縁されている。回路基板20は、複数の貫通ビア205と複数の貫通ビア206とを備える。複数の貫通ビア205は、内壁面に導体が形成されており、正極導体層203に電気的に接続する。複数の貫通ビア206は、内壁面に導体が形成されており、負極導体層204に電気的に接続する。回路基板20が、本発明の「第1回路基板」に対応する。
【0018】
回路基板20の第1主面201には、複数のスイッチングIC21および複数のインダクタ22が実装されている。
【0019】
複数のスイッチングIC21は、所定の配列で、回路基板20に実装されている。複数のインダクタ22は、複数のスイッチングIC21の実装領域を挟むように、所定の配列で、回路基板20に実装されている。この際、複数のスイッチングIC21と複数のインダクタ22とは、それぞれに構成する電力変換部(後述の
図6、
図7参照)毎に近接して配置される。
【0020】
複数の外部端子導体24は、例えば、略円形や矩形等の導体パターンであり、回路基板20の第2主面202に形成されている。複数の外部端子導体24は、回路基板20の平面視において、複数のスイッチングIC21の実装領域および複数のインダクタ22の実装領域とは異なる領域に配置されている。例えば、複数の外部端子導体24は、回路基板20の側面付近に、所定のパターンで配置されている。複数の外部端子導体24は、電源回路モジュール2の出力端子Pout(後述の
図6参照)以外の端子を構成する。
【0021】
複数の正極出力ピン241および複数の負極出力ピン242は、導電性を有する棒状体である。複数の正極出力ピン241および複数の負極出力ピン242は、断面積等の形状を適宜設定することによって、回路基板20および回路基板30に形成される導体パターンよりも低抵抗である。
【0022】
複数の正極出力ピン241と複数の負極出力ピン242とは、回路基板20に対して、それぞれ対になって配置される。複数の正極出力ピン241と複数の負極出力ピン242との対によって、電源回路モジュール2の出力端子Poutが構成される。
【0023】
複数の正極出力ピン241は、複数の貫通ビア205に挿通された状態で、回路基板20に固定される。この際、複数の正極出力ピン241は、第2主面202からの所定長さ突出するように、回路基板20に固定される。複数の正極出力ピン241は、それぞれに複数の貫通ビア205の内壁面の導体に接続する。これにより、複数の正極出力ピン241は、回路基板20の正極導体層203に電気的に接続する。
【0024】
複数の負極出力ピン242は、複数の貫通ビア206に挿通された状態で、回路基板20に固定される。この際、複数の負極出力ピン242は、第2主面202からの所定長さ突出するように、回路基板20に固定される。複数の負極出力ピン242は、それぞれに複数の貫通ビア206の内壁面の導体に接続する。これにより、複数の負極出力ピン242は、回路基板20の負極導体層204に電気的に接続する。
【0025】
(回路基板30の構成)
回路基板30は、絶縁性の基材からなり、所定の導体パターンが形成されている。回路基板30は、第3主面301と第4主面302とを有する平板である。回路基板30は、例えば、パソコン等の電子機器のマザーボードである。回路基板30の平面面積は、回路基板20の平面面積よりも大きく、さらに大幅に大きい方が好ましい。回路基板30が、本発明の「第2回路基板」に対応する。
【0026】
回路基板30の第3主面301には、複数のランド導体311が形成されている。回路基板30の第4主面302には、複数のランド導体321が形成されている。回路基板30には、複数の貫通ビア303と複数の貫通ビア304とが形成されている。複数の貫通ビア303と複数の貫通ビア304は、回路基板30を、第3主面301から第4主面302まで貫通する。貫通ビア303が、本発明の「正極貫通ビア」に対応し、貫通ビア304が、本発明の「負極貫通ビア」に対応する。
【0027】
(半導体デバイス7の構成)
半導体デバイス7は、ベース基板70、半導体IC71、複数の受動素子72、および、モールド樹脂73を備える。
【0028】
ベース基板70は、絶縁性材料からなり、主面701と主面702とを有する平板である。図示を省略しているが、ベース基板70は、半導体デバイス7を構成する導体パターンが形成されている。ベース基板70には、複数の正極用貫通ビア704と複数の負極用貫通ビア705が形成されている。複数の正極用貫通ビア704と複数の負極用貫通ビア705は、内壁面に導体を備える。複数の正極用貫通ビア704における内壁面の導体と複数の負極用貫通ビア705における内壁面の導体は、所定の接続パターンによって、ベース基板70に形成された導体パターンに接続する。
【0029】
半導体IC71、および、複数の受動素子72は、ベース基板70の主面701に実装されている。モールド樹脂73は、ベース基板70の主面701側に形成され、半導体IC71、および、複数の受動素子72を覆っている。ベース基板70の主面702には、複数の端子導体703が配列して形成されている。半導体IC71は、例えば、パワー半導体である。
【0030】
(熱伝導用シート40の構成)
熱伝導用シート40は、高い熱伝導率を有する膜である。熱伝導用シート40は、可撓性を有することが好ましい。熱伝導用シート40の面積は、回路基板20の面積(第2主面202の面積)と略同じである。
【0031】
熱伝導用シート40は、例えば、グラファイトシートやシリコーンシートによって実現される。熱伝導用シート40が、本発明の「第1熱伝導用シート」に対応する。なお、グラファイトシートを用いる場合、金属よりも高い熱伝導率を有するグラファイトシートを用いるとよりよい。これにより、後述の放熱効率はさらに向上する。
【0032】
(回路基板モジュール10の構成)
電源回路モジュール2は、第2主面202が回路基板30の第3主面301と対向するように、回路基板30に対して配置される。回路基板20の複数の外部端子導体24と回路基板30の複数のランド導体311とは、はんだ等の導電性接合材を用いて接合される。これにより、電源回路モジュール2と回路基板30とは、電気的および物理的に接合される。
【0033】
半導体デバイス7は、回路基板30の第4主面302に実装される。半導体デバイス7の複数の端子導体703と回路基板30の複数のランド導体321とは、はんだ等の導電性接合材を用いて接合される。これにより、半導体デバイス7と回路基板30とは、電気的および物理的に接続する。
【0034】
電源回路モジュール2と半導体デバイス7とは、回路基板モジュール10を平面視して、重なっている。
【0035】
回路基板20の複数の正極出力ピン241は、回路基板30の複数の貫通ビア303を挿通する。複数の正極出力ピン241は、回路基板30の第4主面302からも突出しており、半導体デバイス7における複数の正極用貫通ビア704に挿通する。複数の正極出力ピン241は、複数の正極用貫通ビア704の内壁面の導体に接続する。
【0036】
回路基板20の複数の正極出力ピン241は、回路基板30の複数の貫通ビア303を挿通する。複数の正極出力ピン241は、回路基板30の第4主面302からも突出しており、半導体デバイス7における複数の正極用貫通ビア704に挿通する。複数の正極出力ピン241は、複数の正極用貫通ビア704の内壁面の導体に接続する。
【0037】
回路基板20の複数の負極出力ピン242は、回路基板30の複数の貫通ビア304を挿通する。複数の負極出力ピン242は、回路基板30の第4主面302からも突出しており、半導体デバイス7における複数の負極用貫通ビア705に挿通する。複数の負極出力ピン242は、複数の負極用貫通ビア705の内壁面の導体に接続する。
【0038】
これにより、電源回路モジュール2と半導体デバイス7とは、電気的に接続する。
【0039】
熱伝導用シート40は、回路基板20と回路基板30との間に配置され、回路基板20および回路基板30と面接触する。
【0040】
このような構成によって、半導体デバイス7は、電源回路モジュール2から、複数の正極出力ピン241および複数の負極出力ピン242のみを通して、電流の供給を受ける。言い換えれば、半導体デバイス7は、回路基板30を通すことなく、電源回路モジュール2から、電流の供給を受けることができる。
【0041】
ここで、複数の正極出力ピン241および複数の負極出力ピン242は、回路基板30に形成された導体パターンよりも低抵抗である。したがって、電源回路モジュール2から半導体デバイス7への電流供給経路は、低抵抗になる。これにより、回路基板モジュール10は、半導体デバイス7へ供給される電圧の安定化を実現でき、半導体デバイス7への電圧電流の供給を、高効率に実現できる。また、このような低抵抗の電流供給経路を用いることによって、半導体デバイス7の消費電流が変化するような場合であっても、回路基板モジュール10は、半導体デバイス7に供給する電圧を高精度で安定化できる。
【0042】
さらに、回路基板モジュール10の構成では、電源回路モジュール2と半導体デバイス7とが平面視において重なっている。このため、複数の正極出力ピン241および複数の負極出力ピン242を直線状にでき、長さを短くできる。したがって、電源回路モジュール2から半導体デバイス7とを最短で接続でき、電源回路モジュール2から半導体デバイス7への電流供給経路で生じる損失をさらに小さくできる。これにより、回路基板モジュール10は、半導体デバイス7へ供給される電圧の更なる安定化を実現でき、半導体デバイス7への電圧電流の供給をさらに高効率に実現でき、供給電圧の精度をさらに向上できる。
【0043】
また、上述の構成によって、電源回路モジュール2は、正極導体層203と負極導体層204とを、回路基板20の異なる層に形成している。これにより、正極導体層203と負極導体層204の形状の自由度が向上する。したがって、複数の正極出力ピン241と複数の負極出力ピン242の配置の自由度が向上する。すなわち、上述の作用効果を実現しながら、設計自由度の高い電源回路モジュール2を実現できる。
【0044】
また、上述の構成によって、電源回路モジュール2は、立体的な形状でなく、平面的な形状で実現できる。これにより、回路基板モジュール10は低背化される。さらに、電源回路モジュール2の平面面積は大きくなり、放熱効果は向上する。
【0045】
また、上述の構成によって、回路基板モジュール10は、電源回路モジュール2の複数のスイッチングIC21およびインダクタ22から生じた熱を、回路基板20の基材、回路用の導体パターン、および、熱伝導用シート40を通して、回路基板30に伝導できる。回路基板30は、回路基板20よりも大きな面積であるので、伝搬された熱は、効果的に放熱される。
【0046】
このように、上述の構成を備えることによって、回路基板モジュール10は、電源回路モジュール2を効果的に放熱できる。さらに、回路基板モジュール10は、従来構成に示すような放熱フィンを用いないので、低背化を実現できる。すなわち、回路基板モジュール10は、優れた放熱性と低背化とを実現できる。
【0047】
また、上述の構成において、熱伝導用シート40が可撓性を有する場合、回路基板20と回路基板30とで、所定の押圧が係るように挟みこむとよい。これにより、熱伝導用シート40と回路基板20および回路基板30との密着性が向上する。これにより、回路基板モジュール10は、さらに高い放熱性を実現できる。
【0048】
また、熱伝導用シート40は、回路基板20と回路基板30との不要な短絡を防止する目的があれば、シリコーンシートを用いればよい。この場合、回路基板20の第2主面202や回路基板30の第3主面301における互いに対向する部分に設ける絶縁性のレジスト膜を、省略することも可能である。また、絶縁性のレジスト膜がある態様であっても、回路基板20と回路基板30との不要な短絡は、さらに確実に防止できる。
【0049】
一方、熱伝導用シート40は、このような短絡の防止を目的とする必要が無い場合、もしくは、後述の実施形態に示すように、積極的に熱伝導用シート40を導通させたければ、グラファイトシートを用いるとよい。グラファイトシートを用いる場合、回路基板20の第2主面202や回路基板30の第3主面301における互いに対向する部分において、必要な箇所に絶縁性のレジスト膜を設けることで、回路基板20と回路基板30との不要な短絡は防止できる。
【0050】
また、熱伝導用シート40は、回路基板20における複数の外部端子導体24の形成領域には配置されていない。これにより、熱伝導用シート40が導電性のシート(例えば、グラファイトシート)であれば、不要な短絡を抑制でき、熱伝導用シート40が絶縁性のシート(例えば、シリコーンシート)であれば、不要な断線を抑制できる。
【0051】
(適する電源回路モジュール例)
このような構成からなる回路基板モジュール10の電源回路モジュール2は、例えば、
図6、
図7に示すようなマルチセルコンバータを実現する。
図6は、第1の実施形態に係る電源回路モジュールの簡略的な等価回路図である。
図7は、
図6に示す電源回路モジュールの電力変換部の簡略的な構成を示す等価回路図である。なお、電源回路モジュールの具体的な構成および動作については、説明を省略する。
【0052】
図6に示すように、電源回路モジュール2は、MPU901、複数の電力変換部911-917、電圧検出回路902、複数の入力コンデンサCi1-Ci7を備える。複数の電力変換部911-917は、入力端子Pinに接続され、外部から入力電圧Viの供給を受けている。複数の電力変換部911-917の入力端には、それぞれ、入力コンデンサCi1-Ci7が接続されている。複数の電力変換部911-917は、出力端子Poutに接続される。
【0053】
MPU901は、入力端子Pinに接続され、入力電圧Viの供給を受けている。MPU901は、複数の電力変換部911-917に接続する。
【0054】
電圧検出回路902は、複数の電力変換部911-917に接続し、検出される電圧は、MPU901に与えられる。
【0055】
MPU901は、入力電圧Viから得られる駆動電圧によって駆動し、電圧検出回路902で検出した電圧に基づいて、複数の電力変換部911-917のオンオフを制御する。すなわち、MPU901は、出力端子Poutに接続される負荷の状態に応じて、複数の電力変換部911-917における動作させる電力変換器の個数を制御する。具体的には、例えば、MPU901は、負荷に供給する電流を大きくしたければ、動作させる電力変換部の個数を増加させ、負荷に供給する電流が過剰であれば、動作させる電力変換部の個数を減少させる。
【0056】
これにより、電源回路モジュール2は、負荷の状態に応じた電流供給を行うことができる。また、この構成では、複数の電力変換部911-917が、負荷に対して、並列に接続されることで、電源回路モジュール2は、負荷に対して、低電圧でありながら、大電流を供給することができる。
【0057】
このような構成において、複数の電力変換部911-917は、同じ構成を備え、概略的には、
図7に示す構成を備える。なお、以下では、
図7を参照して、電力変換部911を例に説明する。
【0058】
電力変換部911は、スイッチングIC21、インダクタ22、フィードバック信号生成回路921、および、出力コンデンサCoを備える。
【0059】
スイッチングIC21は、内部に複数のスイッチング素子と、スイッチング素子の制御部とを備える。スイッチングIC21は、MPU901からオン制御を受けると、動作し、オフ制御を受けると停止する。
【0060】
スイッチングIC21は、インダクタ22に接続し、インダクタ22は、出力端子Poutに接続する。インダクタ22の出力端子Pout側には、出力コンデンサCoが接続される。フィードバック信号生成回路921は、出力電流、出力電圧に応じたフィードバック信号を生成し、スイッチングIC21に与える。
【0061】
スイッチングIC21は、フィードバック信号に基づいて、出力電流、出力電圧を制御する。
【0062】
この構成において、スイッチングIC21は、複数のスイッチング素子のオンオフを高速で切り替える。これにより、スイッチングIC21は、発熱を伴う。すなわち、スイッチングIC21は、本願の発熱を伴う電子機器に相当する。したがって、本願の回路基板モジュール10の構成は、より有効に作用する。
【0063】
また、上述のように、複数の電力変換部911-917は、大電流を供給するものであるので、当該電流によるスイッチングIC21およびインダクタ22での発熱も大きくなり易い。
【0064】
このようなマルチセルコンバータを実現する電源回路モジュール2を用いることで、半導体デバイス7が消費電流が切り替わる負荷であっても、電源回路モジュール2は、半導体デバイス7で必要な消費電流を、安定して、かつ、高速で切り替えて供給できる。そして、上述の構成を備えることによって、回路基板モジュール10は、電源回路モジュール2から半導体デバイス7に供給する電圧の安定化を実現でき、半導体デバイス7への電圧電流の供給を、高効率に実現できる。
【0065】
(第1の実施形態に係る回路基板モジュールの派生例)
上述の構成では、負荷として、回路基板30に実装される半導体デバイス7を例に説明した。しかしながら、上述の構成は、次に示すような構成の回路基板モジュールにも適用できる。
図8は、第1の実施形態に係る回路基板モジュールの派生例の構成を示す側面断面図である。
【0066】
図8に示すように、派生例の回路基板モジュール10Xは、半導体デバイス7に代えて、ソケット60を備える。ソケット60は、回路基板30の第4主面302に実装されている。ソケット60は、平面視において、回路基板20に重なっている。ソケット60には、放熱器としての機能が取り付けられていてもよい。
【0067】
ソケット60は、CPU、GPU、MPU等のデータ処理用の半導体デバイスが装着される。ソケット60に装着された半導体デバイスは、回路基板20によって実現される電源回路モジュール(例えば、上述の
図6、
図7に示す電源回路モジュール2)から電力供給を受けて駆動する。この際、ソケット60には、電源回路モジュール2の複数の正極出力ピン241および複数の負極出力ピン242が接続される。
【0068】
CPU、GPU、MPU等は、現在、低電圧、大電流を必要とする仕様のものが多く、この場合、上述のように、安定した電圧の供給が要求される。しかしながら、
図8に示す構成を備えることによって、回路基板モジュール10Xは、ソケット60に装着されたCPU、MPU等に、安定した電圧を供給でき、CPU、GPU、MPU等への電圧電流の供給を、高効率に実現できる。
【0069】
また、電源回路モジュール2の発熱量は、大きくなり易い。しかしながら、上述のように、回路基板モジュール10Xの構成を備えることによって、効果的な放熱が可能になる。
【0070】
また、この構成では、平面状の電源回路モジュール2を用い、熱伝導用シート41を用いた放熱を行い、従来のような放熱板を用いない。これにより、回路基板モジュール10Xは、低背化できる。
【0071】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態に係る回路基板モジュールについて、図を参照して説明する。
図9は、第2の実施形態に係る回路基板モジュールの構成を示す側面断面図である。
【0072】
図9に示すように、第2の実施形態に係る回路基板モジュール10Aは、第1の実施形態に係る回路基板モジュール10に対して、電源回路モジュール2Aおよび熱伝導用シート40Aの構成において異なる。回路基板モジュール10の他の構成は、回路基板モジュール10と同様であり、同様の箇所の説明は省略する。
【0073】
電源回路モジュール2Aは、複数の熱伝導ビア25を回路基板20に備える。複数の熱伝導ビア25は、回路基板20の第1主面201から第2主面202までを貫通する。複数の熱伝導ビア25は、所定の金属等、熱伝導性の高い材料からなる。具体的には、複数の熱伝導ビア25は、回路基板20の第1主面201から第2主面202までを貫通する貫通孔に、高い熱伝導率を有する熱伝導性部材を収容することによって、実現可能である。複数の熱伝導ビア25は、例えば、回路基板20に回路を形成するためのビア導体とは別に形成されている。複数の熱伝導ビア25は、回路を形成するためのビア導体よりも大きな断面積を有することが好ましい。
【0074】
複数の熱伝導ビア25は、複数のスイッチングIC21が実装される実装端子(導体パターン)の近傍に形成されている。また、複数の熱伝導ビア25は、複数のインダクタ22が実装される実装端子(導体パターン)の近傍に形成されている。
【0075】
回路基板モジュール10Aは、このように複数の熱伝導ビア25を備えることによって、複数のスイッチングIC21およびインダクタ22から生じた熱を、熱伝導用シート40Aへ、より効果的に伝導できる。そして、熱伝導用シート40Aは、複数の熱伝導ビア25の総面積よりも大きく、複数のスイッチングIC21および複数のインダクタ22が実装される面積よりも大きいので、伝導した熱を、さらに面状に拡散して、回路基板30に伝導できる。そして、熱伝導用シート40Aよりも大面積の回路基板30によって、熱はさらに拡散して、さらに効率的な放熱を実現できる。
【0076】
また、熱伝導用シート40Aは、上述のグラファイトシート等の導電性を有する材料を用い、複数の負極出力ピン242に接続する。これにより、負極出力ピン242と熱伝導用シート40Aとは、同電位になる。
【0077】
この構成によって、熱伝導用シート40Aは、ノイズの遮蔽膜として機能する。これにより、回路基板モジュール10Aは、複数のスイッチングIC21から発生するノイズが回路基板30および半導体デバイス7に伝搬することを抑制できる。
【0078】
特に、この構成では、熱伝導用シート40Aは、回路基板20の略全面に広がる形状であるので、回路基板モジュール10Aは、広範囲において、ノイズを遮蔽できる。
【0079】
(第3の実施形態)
本発明の第3の実施形態に係る回路基板モジュールについて、図を参照して説明する。
図10は、第3の実施形態に係る回路基板モジュールの側面断面図である。
【0080】
図10に示すように、第3の実施形態に係る回路基板モジュール10Bは、第1の実施形態に係る回路基板モジュール10に対して、熱伝導用シート41、および、放熱板51をさらに備える点で異なる。回路基板モジュール10Bの他の構成は、回路基板モジュール10と同様であり、同様の箇所の説明は省略する。
【0081】
回路基板モジュール10Bは、熱伝導用シート41、および、放熱板51を備える。熱伝導用シート41は、シリコーンゴム等の絶縁性のシートである。熱伝導用シート41は、複数のスイッチングIC21および複数のインダクタ22の実装面側と反対側の面に当接する。放熱板51は、熱伝導用シート41における複数のスイッチングIC21および複数のインダクタ22への当接面と反対側の面に当接する。熱伝導用シート41が、本発明の「第2熱伝導用シート」に対応する。
【0082】
このような構成によって、回路基板モジュール10Bは、熱伝導用シート40から回路基板30へ通じる放熱に追加して、放熱板51を通して放熱することができる。
【0083】
なお、放熱板51の面積は、複数のスイッチングIC21の総面積と、複数のインダクタ22の総面積とを加算した面積よりも大きいことが好ましい。これにより、放熱効率は、さらに向上する。
【0084】
(第3の実施形態に係る回路基板モジュールの派生例)
このような構成の回路基板モジュール10Bは、例えば、例えば、
図11に一部を示すような構成に適用できる。
図11は、第3の実施形態に係る回路基板モジュールの派生例の構成を示す側面断面図である。
【0085】
図11に示す回路基板モジュール10BXは、
図8に示した第1の実施形態の回路基板モジュール10Xに対して、ソケット用のバックプレート51B、および、上述の熱伝導用シート41を備える点で異なる。
図11に示す回路基板モジュール10BXの他の構成は、
図8に示した回路基板モジュール10Xと同様であり、同様の箇所の説明は省略する。
【0086】
バックプレート51Bは、回路基板30の第3主面301に固定される。バックプレート51Bは、電源回路モジュール2を囲むように配置されている。バックプレート51Bは、熱伝導用シート41を介して、複数のスイッチングIC21および複数のインダクタ22に接触する。バックプレート51Bは、上述の放熱板51と同様の熱伝導性を有する材料からなる。
【0087】
このような構成によって、
図11に示す回路基板モジュール10BXは、バックプレート51Bも用いて放熱できる。また、バックプレート51Bは、回路基板30に固定されているので、バックプレート51Bから回路基板30への熱の伝導も可能であり、これにより、さらに効果的な放熱が可能になる。
【0088】
なお、上述の説明では、電源回路モジュールから電流が供給される負荷として、半導体デバイス7、CPU、GPU、MPU等を例として示したが、負荷の種類はこれらに限るものではない。
【0089】
また、上述の各実施形態の構成は、適宜組み合わせることができ、それぞれの組合せに応じた作用効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0090】
2、2A:電源回路モジュール
7:半導体デバイス
10、10A、10B、10BX、10X:回路基板モジュール
20:回路基板
22:インダクタ
24:外部端子導体
25:熱伝導ビア
30:回路基板
40、40A、41:熱伝導用シート
51:放熱板
51B:バックプレート
60:ソケット
70:ベース基板
71:半導体IC
72:受動素子
73:モールド樹脂
201:第1主面
202:第2主面
203:正極導体層
204:負極導体層
205:貫通ビア
206:貫通ビア
241:正極出力ピン
242:負極出力ピン
301:第3主面
302:第4主面
303:貫通ビア
304:貫通ビア
311:ランド導体
321:ランド導体
701:主面
702:主面
703:端子導体
704:正極用貫通ビア
705:負極用貫通ビア
901:MPU
902:電圧検出回路
911:電力変換部
921:フィードバック信号生成回路