(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-04
(45)【発行日】2023-12-12
(54)【発明の名称】過給機
(51)【国際特許分類】
F02B 37/24 20060101AFI20231205BHJP
F01D 15/08 20060101ALI20231205BHJP
【FI】
F02B37/24
F01D15/08 C
(21)【出願番号】P 2022532444
(86)(22)【出願日】2021-05-26
(86)【国際出願番号】 JP2021020054
(87)【国際公開番号】W WO2021256203
(87)【国際公開日】2021-12-23
【審査請求日】2022-11-04
(31)【優先権主張番号】P 2020105350
(32)【優先日】2020-06-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100170818
【氏名又は名称】小松 秀輝
(74)【代理人】
【識別番号】100228566
【氏名又は名称】全 哲洙
(72)【発明者】
【氏名】林 克憲
【審査官】北村 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-203239(JP,A)
【文献】特表2006-514191(JP,A)
【文献】特開2000-199433(JP,A)
【文献】特開2004-156592(JP,A)
【文献】特開2013-072401(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 37/24
F01D 15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タービン翼車が固定された回転軸を回転可能に支持するベアリングハウジングと、
前記タービン翼車を囲み、前記タービン翼車に流体を導く可変容量機構と、
前記ベアリングハウジングと前記可変容量機構との間に設けられる複数の規制部材と、を備え、
前記可変容量機構は、
前記回転軸の回転軸線を中心とした周方向において前記タービン翼車を囲むノズルリングと、
前記周方向において前記ノズルリングを囲む駆動リングと、を有し、
前記ノズルリングは、前記ベアリングハウジングに対面する第1面を含み、
前記駆動リングは、前記ベアリングハウジングに対面する第2面を含み、
前記ベアリングハウジングは、前記可変容量機構に対面する第3面を含み、
複数の前記規制部材のうち少なくとも1個の前記規制部材は、
前記第1面及び前記第2面を跨ぎ、前記ノズルリングに対する位置が固定されるフランジ部と、
前記フランジ部と一体的に形成され、前記第1面に形成された第1穴に配置される第1ピンと、
前記フランジ部と一体的に形成され、前記第3面に形成された第2穴に配置される第2ピンと、を有
し、
前記第1ピンが前記ノズルリングに固定されており且つ前記第2ピンが前記ベアリングハウジングに対して移動可能であり、又は、前記第1ピンが前記ノズルリングに対して移動可能であり且つ前記第2ピンが前記ベアリングハウジングに固定されている、過給機。
【請求項2】
前記第1ピンは、前記ノズルリングに固定され
ており、
前記第2ピンは、前記ベアリングハウジングに対して移動可能である、請求項1に記載の過給機。
【請求項3】
前記第2穴は、前記回転軸線と交差する径方向に沿って延びる長穴であり、
前記第2ピンの直径は、前記第2穴の幅よりも小さい、請求項2に記載の過給機。
【請求項4】
前記第2ピンの直径は、前記第1ピンの直径よりも大きい、請求項2又は3に記載の過給機。
【請求項5】
前記第2ピンは、前記ベアリングハウジングに固定され
ており、
前記第1ピンは、前記ノズルリングに対して移動可能である、請求項1に記載の過給機。
【請求項6】
前記第1穴は、前記回転軸線と交差する径方向に沿って延びる長穴であり、
前記第1ピンの直径は、前記第1穴の幅よりも小さい、請求項5に記載の過給機。
【請求項7】
前記第1ピンの直径は、前記第2ピンの直径よりも大きい、請求項5又は6に記載の過給機。
【請求項8】
複数の前記規制部材は、すべて前記フランジ部、前記第1ピン及び前記第2ピンを有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の過給機。
【請求項9】
複数の前記規制部材を備え、
前記第1面には、前記複数の規制部材のそれぞれの前記第1ピンが配置される複数の前記第1穴が形成され、
前記第3面には、前記複数の規制部材のそれぞれの前記第2ピンが配置される複数の前記第2穴が形成されている、請求項1~8のいずれか一項に記載の過給機。
【請求項10】
前記第2穴は、底面を有しており、
前記第2ピンは、前記第2穴の前記底面から離間した状態で、前記第2穴に配置されている、請求項1~9のいずれか一項に記載の過給機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、過給機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1~3には、可変容量機構を備えた過給機が記載されている。例えば、特許文献1に記載の可変容量機構は、ノズルリング、駆動リング(Drive ring)、ローラピン及びローラを有している。ローラピン及びローラは、ノズルリングと駆動リングとの軸方向における位置関係を維持している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2006-514191号公報
【文献】特開2000-199433号公報
【文献】特開2004-156592号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したような過給機では、ベアリングハウジング(Bearing housing)と可変容量機構との周方向における位置関係を維持するために、ベアリングハウジングと可変容量機構との間に規制部材が設けられる場合がある。このような場合には、ローラピン及びローラに加えて、規制部材を配置するためのスペースも確保する必要があるため、可変容量機構の設計の自由度が低下するおそれがある。
【0005】
そこで、本開示は、可変容量機構の設計の自由度が向上された過給機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一形態である過給機は、タービン翼車が固定された回転軸を回転可能に支持するベアリングハウジングと、タービン翼車を囲み、タービン翼車に流体を導く可変容量機構と、ベアリングハウジングと可変容量機構との間に設けられる複数の規制部材と、を備え、可変容量機構は、回転軸の回転軸線を中心とした周方向においてタービン翼車を囲むノズルリングと、周方向においてノズルリングを囲む駆動リングと、を有し、ノズルリングは、ベアリングハウジングに対面する第1面を含み、駆動リングは、ベアリングハウジングに対面する第2面を含み、ベアリングハウジングは、可変容量機構に対面する第3面を含み、複数の規制部材のうち少なくとも1個の規制部材は、第1面及び第2面を跨ぎノズルリングに対する位置が固定されるフランジ部と、フランジ部と一体的に形成され、第1面に形成された第1穴に配置される第1ピンと、フランジ部と一体的に形成され、第3面に形成された第2穴に配置される第2ピンと、を有する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、可変容量機構の設計の自由度が向上された過給機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、第1実施形態の過給機を示す断面図である。
【
図4】
図4は、
図1に示すベアリングハウジングを示す平面図である。
【
図6】
図6は、第2実施形態の過給機を示す断面図である。
【
図8】
図8は、比較例の過給機を示す断面図である。
【
図10】
図10は、比較例の過給機が有する可変容量機構を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一形態である過給機は、タービン翼車が固定された回転軸を回転可能に支持するベアリングハウジングと、タービン翼車を囲み、タービン翼車に流体を導く可変容量機構と、ベアリングハウジングと可変容量機構との間に設けられる複数の規制部材と、を備え、可変容量機構は、回転軸の回転軸線を中心とした周方向においてタービン翼車を囲むノズルリングと、周方向においてノズルリングを囲む駆動リングと、を有し、ノズルリングは、ベアリングハウジングに対面する第1面を含み、駆動リングは、ベアリングハウジングに対面する第2面を含み、ベアリングハウジングは、可変容量機構に対面する第3面を含み、複数の規制部材のうち少なくとも1個の規制部材は、第1面及び第2面を跨ぎノズルリングに対する位置が固定されるフランジ部と、フランジ部と一体的に形成され、第1面に形成された第1穴に配置される第1ピンと、フランジ部と一体的に形成され、第3面に形成された第2穴に配置される第2ピンと、を有する。
【0010】
この過給機によれば、フランジ部によって、回転軸線に沿った軸方向におけるノズルリングと駆動リングとの位置関係を維持することができる。また、第1ピン及び第1穴並びに第2ピン及び第2穴によって、周方向におけるベアリングハウジングと可変容量機構との位置関係を維持することができる。つまり、この過給機では、規制部材によって、ノズルリングと駆動リングとの位置関係を維持すると共に、ベアリングハウジングと可変容量機構との位置関係を維持している。これにより、例えば、ノズルリングと駆動リングとの位置関係、及び、ベアリングハウジングと可変容量機構との位置関係をそれぞれ別々の部材によって維持する場合に比べて、ノズルリングの第1面及び駆動リングの第2面のうち、利用可能なスペースが増える。したがって、可変容量機構の設計の自由度が向上する。
【0011】
一形態において、第1ピンは、ノズルリングに固定されてもよい。この構成によれば、第1ピンをノズルリングに固定することによって、ノズルリングに対するフランジ部の位置を固定することができる。
【0012】
一形態において、第2穴は、回転軸線と交差する径方向に沿って延びる長穴であり、第2ピンの直径は、第2穴の幅よりも小さくてもよい。過給機が稼働状態であるとき、過給機には高温のガスが供給されている。その結果、過給機を構成する可変容量機構などの部品の温度が上昇する。部品の温度が上昇すると、部品の熱変形が生じる。過給機を構成する部品は、温度に対する熱変形の程度が様々である。上記の構成によれば、ベアリングハウジング及び可変容量機構の径方向における熱変形を許容することができる。
【0013】
一形態において、第2ピンの直径は、第1ピンの直径よりも大きくてもよい。この構成によれば、第2ピンの直径を相対的に大きくすることによって、第2ピンの表面積を相対的に大きくすることができる。これにより、第2ピンの摩耗を抑制することができる。
【0014】
一形態において、第2ピンは、ベアリングハウジングに固定されてもよい。この構成によれば、第2ピンをベアリングハウジングに固定することによって、ノズルリングに対するフランジ部の位置を固定することができる。
【0015】
一形態において、第1穴は、回転軸線と交差する径方向に沿って延びる長穴であり、第1ピンの直径は、第1穴の幅よりも小さくてもよい。この構成によれば、上述したように、ベアリングハウジング及び可変容量機構の径方向における熱変形を許容することができる。
【0016】
一形態において、第1ピンの直径は、第2ピンの直径よりも大きくてもよい。この構成によれば、第1ピンの直径を相対的に大きくすることによって、第1ピンの表面積を相対的に大きくすることができる。これにより、第1ピンの摩耗を抑制することができる。
【0017】
一形態において、複数の規制部材は、すべてフランジ部、第1ピン及び第2ピンを有してもよい。この構成によれば、軸方向におけるノズルリングと駆動リングとの位置関係をより確実に維持し、可変容量機構を含む過給機の構造の安定性を確保することができる。
【0018】
一形態において、過給機は、複数の規制部材を備え、第1面には、複数の規制部材のそれぞれの第1ピンが配置される複数の第1穴が形成され、第3面には、複数の規制部材のそれぞれの第2ピンが配置される複数の第2穴が形成されていてもよい。この構成によれば、複数の規制部材によって、軸方向におけるノズルリングと駆動リングとの位置関係をより確実に維持することができる。その結果、熱変形に起因するノズルリングと駆動リングとの位置関係の変化が抑制することが可能になる。従って、ノズルリングと駆動リングとの位置関係の変化によって生じ得る可変容量機構の意図しない動きが抑制されるので、過給機の性能を確実に発揮することができる。
【0019】
以下、添付図面を参照しながら本開示を実施するための形態を詳細に説明する。図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0020】
<第1実施形態>
<過給機>
図1及び
図2に示す過給機1は、可変容量型の過給機である。過給機1は、例えば、船舶又は車両の内燃機関に適用される。過給機1は、タービン10とコンプレッサ20とを有する。タービン10は、タービンハウジング11と、タービン翼車12と、可変容量機構30と、を有する。タービンハウジング11は、スクロール流路13を有する。スクロール流路13は、タービン翼車12の周囲において後述する回転軸線AXを中心とした周方向(以下、単に「周方向」という)に延びる。コンプレッサ20は、コンプレッサハウジング21と、コンプレッサ翼車22と、を有する。コンプレッサ翼車22は、コンプレッサハウジング21に収納される。コンプレッサハウジング21は、スクロール流路23を有する。スクロール流路23は、コンプレッサ翼車22の周囲において周方向に延びる。
【0021】
タービン翼車12は回転軸2の第1端に設けられている。コンプレッサ翼車22は回転軸2の第2端に設けられている。タービンハウジング11とコンプレッサハウジング21との間には、ベアリングハウジング3が設けられている。回転軸2は、ベアリング4を介してベアリングハウジング3に回転可能に支持される。回転軸2、タービン翼車12及びコンプレッサ翼車22が一体の回転体5を構成する。回転体5は回転軸2の回転軸線AXの周りに回転する。
【0022】
タービンハウジング11は、図示しない流入口と、流出口14と、を有する。図示しない内燃機関から排出された排気ガスは、流入口を通じてタービンハウジング11に流入する。流入した排気ガスは、スクロール流路13を通じてタービン翼車12に流入する。そして、排気ガスは、タービン翼車12を回転させる。その後、排気ガスは、流出口14を通じてタービンハウジング11の外部に流出する。
【0023】
コンプレッサハウジング21は、吸入口24と、図示しない吐出口と、を有する。タービン翼車12が回転すると、回転軸2を介してコンプレッサ翼車22が回転する。回転するコンプレッサ翼車22は、吸入口24を通じて外部の空気を吸入する。吸入された空気は、コンプレッサ翼車22及びスクロール流路23を通過することにより圧縮される。空気は、圧縮空気として吐出口から吐出される。圧縮空気は、内燃機関に供給される。
【0024】
タービン10は、接続流路Sを有する。接続流路Sは、スクロール流路13からタービン翼車12へ排気ガスを導く。接続流路Sには、複数のノズルベーン(Nozzle vane)34が配置される。複数のノズルベーン34は、回転軸線AXを中心とする基準円上に等間隔に配置される。互いに隣接するノズルベーン34は、ノズルを構成する。ノズルベーン34は同期して回転軸線AXに平行な軸線の周りに回転する。複数のノズルベーン34が回転することで、接続流路Sの断面積が調整される。接続流路Sの断面積を調整する機構として、タービン10は、可変容量機構30を有する。可変容量機構30は、タービンハウジング11に取り付けられる。可変容量機構30は、タービン翼車12を囲み、タービン翼車12に排気ガス(流体)を導く。
【0025】
<可変容量機構>
図1~
図3に示すように、可変容量機構30は、CCプレート(Clearance Control Plate)31と、ノズルリング32と、複数のCCピン(Clearance Control Pin)33と、を有する。ノズルリング32は、CCプレート31と対面する。CCピン33は、CCプレート31とノズルリング32とを連結する。CCプレート31とノズルリング32との間には、接続流路Sが形成される。可変容量機構30は、さらに、複数のノズルベーン34と、駆動リング35と、複数のノズルリンク板(Nozzle link plate)36と、図示しない駆動リンク板と、を有する。ノズルリンク板36及び駆動リンク板は、ノズルリング32に対してCCプレート31とは反対側に配置される。駆動リング35及び駆動リンク板は、協働してノズルリンク板36を回転させる。ノズルリンク板36が回転すると、ノズルベーン34が回転する。
【0026】
CCプレート31の形状は、回転軸線AXを中心とするリング状である。CCプレート31は、軸穴31h(
図1参照)を有する。CCプレート31は、軸穴31hに配置されたタービン翼車12を周方向に囲む。CCプレート31は、スクロール流路13と流出口14との間に配置される。CCプレート31は、回転軸線AXに沿った軸方向(以下、単に「軸方向」という)においてノズルリング32から離間する。接続流路Sは、CCプレート31とノズルリング32との間に形成される。接続流路Sは、スクロール流路13を流出口14に接続する。CCプレート31は、ノズルリング32に対してベアリングハウジング3とは反対側に配置される。CCプレート31は、図示しない複数のピン穴を有する。CCプレート31の複数のピン穴の周方向における間隔は、互いに等しい。
【0027】
ノズルリング32の形状も、回転軸線AXを中心とするリング状である。ノズルリング32は、軸穴32h(貫通穴)を有する。ノズルリング32も、軸穴32hに配置されたタービン翼車12を周方向に囲む。ノズルリング32も、スクロール流路13と流出口14との間に配置される。CCプレート31は、ノズルリング32に対して平行である。ノズルリング32は、複数のピン穴32pを有する。複数のピン穴32pの周方向における間隔は、互いに等しい。ピン穴32pの中心軸線は、CCプレート31のピン穴の中心軸線と重複する。換言すると、ピン穴32pは、CCプレート31のピン穴と同軸である。
【0028】
ノズルリング32は、ノズルリング本体32aと、ノズルリングフランジ32bと、を有する。ノズルリング本体32aの形状は、円筒状であり、軸穴32hを有する。ノズルリング本体32aは、複数のベーン軸穴32cを有する。複数のベーン軸穴32cの周方向における間隔は、互いに等しい。ノズルリング本体32aは、ベアリングハウジング3に対面する第1面32dを含む。第1面32dには、複数(例えば3つ)の第1穴32eが形成されている。第1穴32eの断面形状は、円形である。第1穴32eは、ノズルリング本体32aを貫通していない。つまり、第1穴32eは、底面を有している。
【0029】
ノズルリングフランジ32bは、ノズルリング本体32aの外周面から径方向に突出する。ノズルリング32の外径は、ノズルリングフランジ32bの外径によって規定される。ノズルリングフランジ32bは、複数のピン穴32pを有する。ピン穴32pの位置は、ベーン軸穴32cの位置よりもノズルリング32の径方向の外側である。
【0030】
ノズルリング32は、CCプレート31に対して離間している。つまり、ノズルリング32とCCプレート31との間には、隙間が形成されている。この隙間は、排気ガスが通る接続流路Sである。ノズルリング32とCCプレート31との間の隙間は、CCピン33によって維持される。CCピン33の第1端は、CCプレート31のピン穴に差し込まれる。CCピン33の第2端は、ノズルリング32のピン穴32pに差し込まれる。
【0031】
複数のノズルベーン34は、回転軸線AXを中心とする基準円上に配置される。ノズルベーン34は、ベーン本体34aと、ベーン軸34bと、を有する。ベーン本体34aは、CCプレート31とノズルリング32との間に配置される。換言すると、ベーン本体34aは、接続流路Sに配置される。ベーン軸34bの第1端は、ベーン本体34aに固定される。ベーン軸34bの第2端は、ノズルリング32のベーン軸穴32cに挿入される。ベーン軸34bの第2端の先端部は、ノズルリング本体32aから突出する。ベーン軸34bは、ノズルリング32に対して回転可能である。ベーン本体34aは、ベーン軸34bの回転に伴って回転する。可変容量機構30では、ベーン本体34aを回転させることによって、接続流路Sの断面積を調整する。断面積が調整された結果、スクロール流路13からタービン翼車12に供給される排気ガスの流速が制御される。従って、タービン翼車12の回転数を所望の値に制御できる。
【0032】
駆動リング35は、ノズルリングフランジ32b上に配置される。駆動リング35の形状は、回転軸線AXを中心とするリング状である。駆動リング35は、軸穴35hを有する。軸穴35hには、ノズルリング本体32aが差し込まれる。つまり、駆動リング35は、ノズルリング本体32aを周方向に囲み、ノズルリング32に対して同軸である。駆動リング35は、回転軸線AXを中心にノズルリング32に対して回転可能である。駆動リング35は、駆動リング本体35aと、複数のリンク板配置部35bと、を有する。駆動リング本体35aは、ベアリングハウジング3に対面する第2面35cを含む。リンク板配置部35bの周方向における間隔は、互いに等しい。リンク板配置部35bは、周方向において互いに離間する2つの起立部材を有する。
【0033】
ノズルリンク板36の形状は、バー状である。ノズルリンク板36の第1端は、ベーン軸34bの端部に固定されている。ノズルリンク板36の第2端は、駆動リング35のリンク板配置部35bに配置されている。より詳細には、ノズルリンク板36の第2端は、リンク板配置部35bの2つの起立部材の間に配置される。駆動リング35が駆動リンク板から駆動力を受けると、駆動リング35は、回転軸線AXを中心に回転する。この回転によって、ノズルリンク板36の第2端は、駆動リング35の回転に伴って周方向に沿って移動する。これにより、ノズルリンク板36は、ベーン軸34bを中心に回転する。ノズルリンク板36が回転すると、ノズルリンク板36の第1端に取り付けられたベーン軸34bが回転する。これに伴って、ベーン軸34bの第1端に取り付けられたベーン本体34aが回転する。その結果、ベーン本体34a同士の間隔が変化する。つまり、接続流路Sの断面積が変化する。
【0034】
可変容量機構30は、ベアリングハウジング3に対して位置決めされている。より詳細には、可変容量機構30のノズルリング32の内周面32gにベアリングハウジング3の突出部3aがはめ込まれている。具体的には、内周面32gに対して、突出部3a(はめ込み部)の外周面が接触している。従って、可変容量機構30及びベアリングハウジング3は、協働して、インロー構造(Centering location structure, spigot type structure)39を構成する。より詳細には、ノズルリング本体32aの内周面32g及びベアリングハウジング3の突出部3aは、インロー構造39を構成する。このインロー構造39によって、ベアリングハウジング3に対する可変容量機構30の位置が決まっている。
【0035】
<規制部材>
過給機1は、ベアリングハウジング3と可変容量機構30との間に設けられる複数(例えば3つ)の規制部材40を更に備えている。以下、規制部材40について、詳細に説明する。
【0036】
図1及び
図4に示すように、ベアリングハウジング3には、環状の凹部3bが形成されている。凹部3bは、可変容量機構30に対面する第3面3cを含む。第3面3cは、凹部3bの底面である。第3面3cには、複数(例えば3つ)の第2穴3dが形成されている。第2穴3dは、回転軸線AXと交差する径方向(以下、単に「径方向」という)に沿って延びる長穴である。
【0037】
軸方向から見た場合に、径方向における第2穴3dの長さは、周方向における第2穴3dの幅よりも大きい。軸方向から見た場合に、第2穴3dは、径方向に沿って延在する中間部と、径方向における中間部の両端のそれぞれに接続された端部と、を含む。端部のそれぞれの形状は、例えば、半円である。半円の直径は、周方向における中間部の幅と同じである。第2穴3dは、ベアリングハウジング3を貫通していない。つまり、第2穴3dは、底面を有している。
【0038】
図5に示すように、可変容量機構30の第1面32d及び第2面35cは、ベアリングハウジング3の第3面3cから離間している。規制部材40は、可変容量機構30とベアリングハウジング3との間に設けられ、軸方向におけるノズルリング32と駆動リング35との位置関係を維持すると共に、周方向における可変容量機構30とベアリングハウジング3との位置関係を維持する。
【0039】
具体的には、規制部材40は、可変容量機構30に固定されている。規制部材40は、フランジ部41と、駆動リングガイドピン部42(第1ピン)と、位相決めピン部43(第2ピン)と、を有している。フランジ部41の形状は、円板状である。フランジ部41は、第1面32d及び第2面35cを跨いでいる。フランジ部41は、軸方向から見た場合に第1面32dの一部及び第2面35cの一部と重なっている。フランジ部41の直径は、第1穴32eの直径よりも大きい。フランジ部41の外縁41cは、ノズルリング本体32aの外縁32rよりも回転軸線AXとは反対側に位置する部分を有する(
図3参照)。フランジ部41の外縁41cは、駆動リング35の内縁35dよりも回転軸線AXとは反対側に位置する部分を有する(
図3参照)。
【0040】
フランジ部41の厚さは、第1面32dと第3面3cとの距離よりも小さい。フランジ部41の規制面41aは、第1面32dに当接している。フランジ部41の規制面41aとは反対側の面41bは、第3面3cから離間している。フランジ部41は、軸方向におけるノズルリング32と駆動リング35との位置関係を維持する。フランジ部41は、駆動リング35がノズルリング32から脱落することを防ぐ。具体的には、駆動リング35がノズルリング32に対して、軸方向に沿ってベアリングハウジング3に向かって移動した場合に、駆動リング35は、フランジ部41の規制面41aに当接する。つまり、駆動リング35の軸方向における移動は、フランジ部41によって制限される。
【0041】
なお、駆動リング35の厚さは、第1面32dとノズルリングフランジ32bのガイド面(駆動リング35に対面する面)32fとの距離よりも小さい。つまり、駆動リング35の厚さは、規制面41aとガイド面32fとの距離よりも小さい。これにより、駆動リング35がガイド面32fと規制面41aとの間において回転可能となる。
【0042】
駆動リングガイドピン部42は、フランジ部41の規制面41aに設けられている。駆動リングガイドピン部42は、フランジ部41と一体的に形成されている。駆動リングガイドピン部42の形状は、円柱である。駆動リングガイドピン部42の直径は、フランジ部41の直径よりも小さい。駆動リングガイドピン部42の長さは、第1穴32eの深さよりも小さい。駆動リングガイドピン部42は、第1穴32eに配置されている。駆動リングガイドピン部42は、ノズルリング32に固定されている。駆動リングガイドピン部42は、第1穴32eに圧入されている。これにより、フランジ部41のノズルリング32に対する位置が固定されている。駆動リングガイドピン部42は、第1穴32eの底面から離間している。
【0043】
位相決めピン部43は、フランジ部41の面41bに設けられている。位相決めピン部43は、フランジ部41と一体的に形成されている。位相決めピン部43の形状は、円柱である。位相決めピン部43の直径は、フランジ部41の直径よりも小さい。位相決めピン部43の直径は、駆動リングガイドピン部42の直径よりも大きい。位相決めピン部43の長さは、フランジ部41の面41bと第3面3cとの距離よりも大きい。位相決めピン部43の長さは、第2穴3dの深さよりも大きい。位相決めピン部43の先端部は、第2穴3dに配置されている。位相決めピン部43は、第2穴3dの底面から離間している。
【0044】
位相決めピン部43の直径は、第2穴3dの周方向における幅と同じであるか又は周方向における幅よりも僅かに小さい。位相決めピン部43は、第2穴3dに挿入されている。位相決めピン部43の側面は、第2穴3dの中間部の側面(周方向において互いに対面する側面)と接触している。位相決めピン部43は、第2穴3dに対して径方向において移動可能である。換言すると、位相決めピン部43が第2穴3dに配置された状態においては、位相決めピン部43の径方向への移動が許可され、位相決めピン部43のそのほかの方向への移動が禁止される。
【0045】
<作用効果>
以上説明したように、過給機1によれば、フランジ部41によって、軸方向におけるノズルリング32と駆動リング35との位置関係を維持することができる。また、駆動リングガイドピン部42及び第1穴32e並びに位相決めピン部43及び第2穴3dによって、周方向におけるベアリングハウジング3と可変容量機構30との位置関係を維持することができる。つまり、過給機1では、規制部材40によって、ノズルリング32と駆動リング35との位置関係を維持すると共に、ベアリングハウジング3と可変容量機構30との位置関係を維持している。これにより、例えば、ノズルリング32と駆動リング35との位置関係、及び、ベアリングハウジング3と可変容量機構30との位置関係をそれぞれ別々の部材によって維持する場合に比べて、ノズルリング32の第1面32d及び駆動リング35の第2面35cのうち、利用可能なスペースが増える。したがって、可変容量機構30の設計の自由度が向上する。また、ノズルリング32の第1面32d及び駆動リング35の第2面35cのうち、増えた利用可能なスペースに、更に規制部材40を設けることができるため、規制部材40の数を増やすことによって、例えば位相決めピン部43の摩耗を抑制することができる。また、過給機1によれば、例えば、ノズルリング32と駆動リング35との位置関係、及び、ベアリングハウジング3と可変容量機構30との位置関係をそれぞれ別々の部材によって維持する場合に比べて、部品点数を削減することができるため、組立を簡易化すると共に、コストを削減することができる。
【0046】
図8~
図10は、比較例の過給機1Bを示す図である。
図8及び
図9に示すように、過給機1Bは、規制部材40Bを備えている。規制部材40Bは、位相決めピン部43を有していない点で規制部材40と相違する。規制部材40Bは、軸方向におけるノズルリング32と駆動リング35との位置関係を維持するだけであって、周方向における可変容量機構30とベアリングハウジング3との位置関係を維持しない。
【0047】
図10に示すように、過給機1Bでは、周方向における可変容量機構30Bとベアリングハウジング3Bとの位置関係は、ベアリングハウジング3Bのピン3eと可変容量機構30Bの穴32mによって維持される。具体的には、可変容量機構30Bでは、ノズルリング32の第1面32dに複数の穴32mが形成されている。そして、当該穴32mに、ベアリングハウジング3Bのピン3eが挿入される。このように、比較例の過給機1Bでは、ノズルリング32の第1面32dにおいては、規制部材40Bが配置される場所だけではなく、複数の穴32mが形成される場所も必要となる。
【0048】
これに対して、実施形態の過給機1では、上述したように、規制部材40によって、ノズルリング32と駆動リング35との位置関係を維持すると共に、ベアリングハウジング3と可変容量機構30との位置関係を維持している。そのため、比較例の過給機1Bのように、周方向におけるベアリングハウジング3と可変容量機構30との位置関係を維持するために、ノズルリング32の第1面32dに、穴32m等を設けなくてもよい。これにより、上述したように、ノズルリング32の第1面32d及び駆動リング35の第2面35cのうち、利用可能なスペースが増える。
【0049】
可変容量機構は、部品の数が多いため、それぞれの部品の配置についての制約が厳しい場合がある。このような可変容量機構においては、規制部材40のように、1つの部品が複数の機能を有することに特に大きな意味がある。具体的には、例えば、
図10に示されるように、比較例の可変容量機構30Bにおいては、ノズルリング32の第1面32d及び駆動リング35の第2面35cには、複数のノズルリンク板36及び複数の規制部材40Bが配置されている。また、第1面32dには、複数のピン穴32p及び複数の穴32mが形成されている。
【0050】
このような可変容量機構の設計に当たっては、例えば、まず、第1面32d及び第2面35cにおいて、複数のノズルリンク板36が配置されるスペースが確保される。次に、第1面32d及び第2面35cのうち、複数のノズルリンク板36が配置されるスペース以外のスペースにおいて、複数のピン穴32pが配置されるスペースが確保される。次に、第1面32d及び第2面35cのうち、複数のノズルリンク板36及び複数のピン穴32pが配置されるスペース以外のスペースにおいて、複数の規制部材40Bが配置されるスペースが確保される。次に、第1面32d及び第2面35cのうち、複数のノズルリンク板36、複数のピン穴32p、及び複数の規制部材40Bが配置されるスペース以外のスペースにおいて、複数の穴32mが配置されるスペースが確保される。
【0051】
このように、可変容量機構30の設計では、回転軸線AXを中心とする円周上に様々な部品等が配置されるスペースが順次に確保されることになる。つまり、ノズルリンク板36やピン穴32pといった構成要素は、回転軸線AXを中心とする円周上という有限の領域に配置される。そうすると、スペースの確保の順番が相対的に後にある部品等(以下、「当該部品等」という)については、残されたスペースが相対的に少なくなっているため、当該部品等の設計の自由度が低下するおそれがある。具体的には、例えば、当該部品等が、配置されるべき理想の位置からずれた位置に配置され、又は、当該部品等の寸法が、理想の寸法よりも小さくされる等の場合が考えられる。したがって、可変容量機構30においては、第1面32d及び第2面35cのうち、利用可能なスペースが増えることは、特に重要である。
【0052】
また、駆動リングガイドピン部42は、ノズルリング32に固定されている。この構成によれば、駆動リングガイドピン部42をノズルリング32に固定することによって、ノズルリング32に対するフランジ部41の位置を固定することができる。
【0053】
また、第2穴3dは、径方向に沿って延びる長穴である。位相決めピン部43の直径は、第2穴の幅よりも小さい。過給機1が稼働状態であるとき、過給機1には高温のガスが供給されている。その結果、過給機1を構成する可変容量機構30などの部品の温度が上昇する。部品の温度が上昇すると、部品の熱変形が生じる。過給機1を構成する部品は、温度に対する熱変形の程度が様々である。上記の構成によれば、位相決めピン部43が第2穴3dに配置された状態においては、位相決めピン部43の径方向への移動が許可されるため、ベアリングハウジング3及び可変容量機構30の径方向における熱変形を許容することができる。
【0054】
また、位相決めピン部43の直径は、駆動リングガイドピン部42の直径よりも大きい。この構成によれば、位相決めピン部43の直径を相対的に大きくすることによって、位相決めピン部43の表面積を相対的に大きくすることができる。これにより、位相決めピン部43の摩耗を抑制することができる。
【0055】
また、複数の規制部材40は、すべてフランジ部41、駆動リングガイドピン部42A及び位相決めピン部43Aを有してもよい。この構成によれば、軸方向におけるノズルリング32と駆動リング35との位置関係をより確実に維持し、可変容量機構30を含む過給機1の構造の安定性を確保することができる。
【0056】
また、過給機1は、複数の規制部材40を備えている。第1面32dには、複数の規制部材40のそれぞれの駆動リングガイドピン部42が配置される複数の第1穴32eが形成されている。第3面3cには、複数の規制部材40のそれぞれの位相決めピン部43が配置される複数の第2穴3dが形成されている。この構成によれば、複数の規制部材40によって、軸方向におけるノズルリング32と駆動リング35との位置関係がより確実に維持される。その結果、熱変形に起因するノズルリング32と駆動リング35との位置関係の変化が抑制することが可能になる。従って、ノズルリング32と駆動リング35との位置関係の変化によって生じ得る可変容量機構30の意図しない動きが抑制されるので、過給機1の性能を確実に発揮することができる。
【0057】
また、上述したように、過給機1が稼働状態であるとき、過給機1を構成する部品は、温度に対する熱変形の程度が様々である。熱変形の程度に差があると、部品同士の位置関係が変わってしまう。部品同士の位置関係の変化は、過給機1の特性に影響を与える。上記の構成によれば、熱変形が生じた場合であっても、ベアリングハウジング3と可変容量機構30との位置関係は、複数の位相決めピン部43及び複数の第2穴3dによる規制により、維持される。したがって、稼働時においても過給機1は所望の性能を発揮できる。具体的には、実施形態のノズルリング32は、熱変形によって全体的に膨張する。熱変形は、周方向に等方的であり向きによって相違がないものとする。そうすると、複数の位相決めピン部43及び複数の第2穴3dは、径方向への変形のみを許容する。そして、熱変形によってノズルリング32の内周面32gとベアリングハウジング3の突出部3aの外周面との間に隙間が生じる。この隙間によってベアリングハウジング3及びノズルリング32の位置関係は、相対的に変化しようとする。しかし、可変容量機構30の平行移動は、複数の位相決めピン部43及び複数の第2穴3dによって規制されている。そして、互いに対応する1つの位相決めピン部43及び1つの第2穴3dが許可する移動の方向と、当該1つの位相決めピン部43及び1つの第2穴3dとは異なる他の位相決めピン部43及び他の第2穴3dが許可する移動の方向と、が互いに異なっている。従って、ノズルリング32は、実質的にあらゆる方向への平行移動が規制されている。つまり、ノズルリング32は、ノズルリング32の中心を起点とする等方的な膨張または収縮のみが許される。その結果、熱変形が生じた場合であっても、ベアリングハウジング3と可変容量機構30との相対的な位置関係は維持される。従って、稼働時においても過給機1は所望の性能を発揮できる。
【0058】
<第2実施形態>
図6及び
図7に示すように、第2実施形態の過給機1Aは、規制部材40に代えて規制部材40Aを備えている点、及び、規制部材40Aがベアリングハウジング3Aに固定されている点で、第1実施形態の過給機1と主に相違している。第2実施形態の過給機1Aのその他の構成については、第1実施形態の過給機1と同様であるため、詳細な説明を省略する。
【0059】
可変容量機構30Aの第1面32dには、複数の第1穴32eに代えて複数の第1穴32nが形成されている。第1穴32nは、径方向に沿って延びる長穴である。軸方向から見た場合に、径方向における第1穴32nの長さは、周方向における第1穴32nの幅よりも大きい。軸方向から見た場合に、第1穴32nは、径方向に沿って延在する中間部と、径方向における中間部の両端のそれぞれに接続された端部と、を含む。端部のそれぞれの形状は、例えば、半円である。半円の直径は、周方向における中間部の幅と同じである。第1穴32nは、ノズルリング32を貫通していない。つまり、第1穴32nは、底面を有している。
【0060】
可変容量機構30Aの第3面3cには、複数の第2穴3dに代えて複数の第2穴3fが形成されている。第2穴3fの断面形状は、円形である。第2穴3fは、ベアリングハウジング3Aを貫通していない。つまり、第2穴3fは、底面を有している。
【0061】
規制部材40Aは、ベアリングハウジング3Aに固定されている。規制部材40Aは、フランジ部41と、連結部41Aと、駆動リングガイドピン部42Aと、位相決めピン部43Aと、を有している。フランジ部41の直径は、周方向における第1穴32nの幅よりも大きい。フランジ部41の直径は、径方向における第1穴32nの幅よりも大きい。
【0062】
連結部41Aは、フランジ部41の面41bに設けられている。連結部41Aは、フランジ部41と一体的に形成されている。連結部41Aの形状は、円柱である。連結部41Aの直径は、フランジ部41の直径よりも小さい。連結部41Aの直径は、第2穴3fの直径よりも大きい。連結部41Aの長さは、フランジ部41の面41bと第3面3cとの距離と略同じである。連結部41Aにおけるフランジ部41とは反対側の面41dは、第3面3cに当接している。
【0063】
位相決めピン部43Aは、連結部41Aの面41dに設けられている。位相決めピン部43Aは、連結部41Aと一体的に形成されている。つまり、位相決めピン部43Aは、連結部41Aと共にフランジ部41と一体的に形成されている。位相決めピン部43Aの形状は、円柱である。位相決めピン部43Aの直径は、連結部41Aの直径よりも小さい。位相決めピン部43Aの長さは、第2穴3fの深さよりも小さい。位相決めピン部43Aは、第2穴3fに配置されている。位相決めピン部43Aは、ベアリングハウジング3Aに固定されている。位相決めピン部43Aは、第2穴3fに圧入されている。これにより、フランジ部41のノズルリング32に対する位置が固定されている。位相決めピン部43Aは、第2穴3fの底面から離間している。
【0064】
駆動リングガイドピン部42Aは、フランジ部41の規制面41aに設けられている。駆動リングガイドピン部42Aは、フランジ部41と一体的に形成されている。駆動リングガイドピン部42Aの形状は、円柱である。駆動リングガイドピン部42Aの直径は、位相決めピン部43Aの直径よりも大きい。駆動リングガイドピン部42Aの直径は、連結部41Aの直径と略同じである。駆動リングガイドピン部42Aは、第1穴32nに配置されている。駆動リングガイドピン部42Aは、第1穴32nの底面から離間している。
【0065】
駆動リングガイドピン部42Aの直径は、第1穴32nの周方向における幅よりも小さい。駆動リングガイドピン部42Aは、第1穴32nに挿入されている。駆動リングガイドピン部42Aの側面は、第1穴32nの中間部の側面(周方向において互いに対面する側面)と接触している。駆動リングガイドピン部42Aは、第1穴32nに対して径方向において移動可能である。換言すると、駆動リングガイドピン部42Aが第1穴32nに配置された状態においては、駆動リングガイドピン部42Aの径方向への移動が許可され、駆動リングガイドピン部42Aのそのほかの方向への移動が禁止される。
【0066】
以上説明したように、第2実施形態の過給機1Aでは、位相決めピン部43Aが、ベアリングハウジング3Aに固定されている。この構成によれば、位相決めピン部43Aをベアリングハウジング3Aに固定することによって、ノズルリング32に対するフランジ部41の位置を固定することができる。
【0067】
また、第1穴32nは、径方向に沿って延びる長穴である。駆動リングガイドピン部42Aの直径は、第1穴32nの幅よりも小さい。この構成によれば、上述したように、ベアリングハウジング3A及び可変容量機構30Aの径方向における熱変形を許容することができる。
【0068】
また、駆動リングガイドピン部42Aの直径は、位相決めピン部43Aの直径よりも大きい。この構成によれば、駆動リングガイドピン部42Aの直径を相対的に大きくすることによって、駆動リングガイドピン部42Aの表面積を相対的に大きくすることができる。これにより、駆動リングガイドピン部42Aの摩耗を抑制することができる。
【0069】
以上、本開示の過給機の実施形態について説明した。本開示の過給機は、上述した実施形態に限定されない。例えば、複数の規制部材40のすべてがフランジ部41、駆動リングガイドピン部42及び位相決めピン部43を有している例を示したが、複数の規制部材40のうち少なくとも1個の規制部材40がフランジ部41、駆動リングガイドピン部42及び位相決めピン部43を有していてもよい。すなわち、3つの規制部材40のうち、2つの規制部材40がフランジ部41、駆動リングガイドピン部42及び位相決めピン部43を有し、そのほかの1つの規制部材40は、フランジ部41及び駆動リングガイドピン部42を有し、位相決めピン部43を有していなくてもよい。また、3つの規制部材40のうち、1つの規制部材40がフランジ部41、駆動リングガイドピン部42及び位相決めピン部43を有し、そのほかの2つの規制部材40は、フランジ部41及び駆動リングガイドピン部42を有し、位相決めピン部43を有していなくてもよい。
【符号の説明】
【0070】
1,1A 過給機
2 回転軸
3,3A ベアリングハウジング
3c 第3面
3d,3f 第2穴
12 タービン翼車
30,30A 可変容量機構
32 ノズルリング
32d 第1面
32e,32n 第1穴
35 駆動リング
35c 第2面
40,40A 規制部材
41 フランジ部
42,42A 駆動リングガイドピン部(第1ピン)
43,43A 位相決めピン部(第2ピン)
AX 回転軸線