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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-04
(45)【発行日】2023-12-12
(54)【発明の名称】乗客コンベアおよびその支持装置
(51)【国際特許分類】
   B66B 23/00 20060101AFI20231205BHJP
【FI】
B66B23/00 B
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2023032585
(22)【出願日】2023-03-03
【審査請求日】2023-03-03
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】白井 健太
【審査官】須山 直紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-048005(JP,A)
【文献】特開2017-002621(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物に適用される乗客コンベアの主枠の前後方向の一端に設けられ、前記建物の建築梁の上面の上方において前記建築梁の上面に対向する下面を有し前後方向の外側に突出する掛け部と、
前記掛け部の下面および前記建築梁の上面の間に設けられ、前記建築梁および前記掛け部の相対位置が平衡位置からずれるときに、前記建築梁および前記掛け部の相対位置を前記平衡位置に戻す方向に復元力を生じさせる復元装置と、
を備え
前記復元装置は、
前記掛け部の下面および前記建築梁の上面の間において金属板および弾性体が鉛直方向に交互に積層された積層体
を備え、
前記復元装置は、前記積層体の弾性力によって復元力を生じさせる、
乗客コンベアの支持装置。
【請求項2】
前記復元装置の前記積層体は、前記掛け部の下面に対して固定されて取り付けられ、前記建築梁の上面に対して固定されて取り付けられる、
請求項1に記載の乗客コンベアの支持装置。
【請求項3】
建物に適用される乗客コンベアの主枠の前後方向の一端に設けられ、前記建物の建築梁の上面の上方において前記建築梁の上面に対向する下面を有し前後方向の外側に突出する掛け部と、
前記掛け部の下面および前記建築梁の上面の間に設けられ、前記建築梁および前記掛け部の相対位置が平衡位置からずれるときに、前記建築梁および前記掛け部の相対位置を前記平衡位置に戻す方向に復元力を生じさせる復元装置と、
を備え
前記復元装置は、
前記建築梁の上面に対して固定して取り付けられ、中心に向けて下方に傾斜する凹面を有する受け皿と、
前記掛け部の下面に対して水平方向に移動しないように、かつ、前記受け皿の凹面上を転がりうるように設けられ、前記掛け部の下面からの荷重を受ける球体と、
を備え、
前記復元装置は、前記球体が前記受け皿の凹面の中心の上にある相対位置を前記平衡位置とし、重力によって復元力を生じさせる、
乗客コンベアの支持装置。
【請求項4】
前記受け皿の凹面は、水平方向において等方的に傾斜する、
請求項3に記載の乗客コンベアの支持装置。
【請求項5】
前記受け皿の凹面は、中心から離れるほど大きく傾斜する曲面である、
請求項3に記載の乗客コンベアの支持装置。
【請求項6】
前記受け皿の凹面の中心における曲率は、前記球体の表面の曲率より小さく、
前記受け皿の凹面の中心から外周までの距離は、前記球体の半径より大きい、
請求項5に記載の乗客コンベアの支持装置。
【請求項7】
前記復元装置は、前記建築梁および前記掛け部の相対位置が前記平衡位置からずれるときに、前記建築梁および前記掛け部の相対位置を前記平衡位置に戻す方向に、前記平衡位置からのずれが大きいほど強い復元力を生じさせる、
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の乗客コンベアの支持装置。
【請求項8】
建物に適用される乗客コンベアであり、
前記建物の上階側および下階側の一方に設けられた第1建築梁と前記建物の上階側および下階側の他方に設けられた第2建築梁との間に掛け渡され、前記第1建築梁および前記第2建築梁の一方から他方に向かう方向を前後方向とする主枠と、
前記主枠を支持する支持装置と、
を備え、
前記支持装置は、
前記主枠の前後方向の一端に設けられ、前記第1建築梁の上面の上方において前記第1建築梁の上面に対向する下面を有し前後方向の外側に突出する掛け部と、
前記掛け部の下面および前記第1建築梁の上面の間に設けられ、前記第1建築梁および前記掛け部の相対位置が平衡位置からずれるときに、前記第1建築梁および前記掛け部の相対位置を前記平衡位置に戻す方向に復元力を生じさせる復元装置と、
を備え
前記復元装置は、
前記掛け部の下面および前記第1建築梁の上面の間において金属板および弾性体が鉛直方向に交互に積層された積層体
を備え、
前記復元装置は、前記積層体の弾性力によって復元力を生じさせる、
乗客コンベア。
【請求項9】
建物に適用される乗客コンベアであり、
前記建物の上階側および下階側の一方に設けられた第1建築梁と前記建物の上階側および下階側の他方に設けられた第2建築梁との間に掛け渡され、前記第1建築梁および前記第2建築梁の一方から他方に向かう方向を前後方向とする主枠と、
前記主枠を支持する支持装置と、
を備え、
前記支持装置は、
前記主枠の前後方向の一端に設けられ、前記第1建築梁の上面の上方において前記第1建築梁の上面に対向する下面を有し前後方向の外側に突出する掛け部と、
前記掛け部の下面および前記第1建築梁の上面の間に設けられ、前記第1建築梁および前記掛け部の相対位置が平衡位置からずれるときに、前記第1建築梁および前記掛け部の相対位置を前記平衡位置に戻す方向に復元力を生じさせる復元装置と、
を備え
前記復元装置は、
前記第1建築梁の上面に対して固定して取り付けられ、中心に向けて下方に傾斜する凹面を有する受け皿と、
前記掛け部の下面に対して水平方向に移動しないように、かつ、前記受け皿の凹面上を転がりうるように設けられ、前記掛け部の下面からの荷重を受ける球体と、
を備え、
前記復元装置は、前記球体が前記受け皿の凹面の中心の上にある相対位置を前記平衡位置とし、重力によって復元力を生じさせる、
乗客コンベア。
【請求項10】
前記主枠は、前記建物に設けられた免震装置によって地震が発生している間の相対変位が許容される前記第1建築梁および前記第2建築梁の間に掛け渡される、
請求項8または請求項9に記載の乗客コンベア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、乗客コンベアおよびその支持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、エスカレーターの例を開示する。エスカレーターは、中間階に免震装置を設けた建物において、免震階とその上層階との間に設けられる。エスカレーターの上端は、上層階に固定される。エスカレーターの下端は、免震階に滑り支承を介して取り付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平10-291759号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のエスカレーターなどの乗客コンベアにおいて、地震発生後に乗客コンベアの下端側が地震発生前の位置に戻らない可能性がある。このため、地震発生後に乗客コンベアの下端側の掛かり代が不足し、復旧するまで乗客コンベアが利用できなくなる可能性がある。
【0005】
本開示は、このような課題の解決に係るものである。本開示は、地震発生後に利用不能になりにくい乗客コンベアおよびその支持装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る乗客コンベアの支持装置は、建物に適用される乗客コンベアの主枠の前後方向の一端に設けられ、建物の建築梁の上面の上方において建築梁の上面に対向する下面を有し前後方向の外側に突出する掛け部と、掛け部の下面および建築梁の上面の間に設けられ、建築梁および掛け部の相対位置が平衡位置からずれるときに、建築梁および掛け部の相対位置を平衡位置に戻す方向に復元力を生じさせる復元装置と、を備え、復元装置は、掛け部の下面および建築梁の上面の間において金属板および弾性体が鉛直方向に交互に積層された積層体を備え、復元装置は、積層体の弾性力によって復元力を生じさせる
本開示に係る乗客コンベアの支持装置は、建物に適用される乗客コンベアの主枠の前後方向の一端に設けられ、建物の建築梁の上面の上方において建築梁の上面に対向する下面を有し前後方向の外側に突出する掛け部と、掛け部の下面および建築梁の上面の間に設けられ、建築梁および掛け部の相対位置が平衡位置からずれるときに、建築梁および掛け部の相対位置を平衡位置に戻す方向に復元力を生じさせる復元装置と、を備え、復元装置は、建築梁の上面に対して固定して取り付けられ、中心に向けて下方に傾斜する凹面を有する受け皿と、掛け部の下面に対して水平方向に移動しないように、かつ、受け皿の凹面上を転がりうるように設けられ、掛け部の下面からの荷重を受ける球体と、を備え、復元装置は、球体が受け皿の凹面の中心の上にある相対位置を平衡位置とし、重力によって復元力を生じさせる。
【0007】
本開示に係る乗客コンベアは、建物に適用される乗客コンベアであり、建物の上階側および下階側の一方に設けられた第1建築梁と建物の上階側および下階側の他方に設けられた第2建築梁との間に掛け渡され、第1建築梁および第2建築梁の一方から他方に向かう方向を前後方向とする主枠と、主枠を支持する支持装置と、を備え、支持装置は、主枠の前後方向の一端に設けられ、第1建築梁の上面の上方において第1建築梁の上面に対向する下面を有し前後方向の外側に突出する掛け部と、掛け部の下面および第1建築梁の上面の間に設けられ、第1建築梁および掛け部の相対位置が平衡位置からずれるときに、第1建築梁および掛け部の相対位置を平衡位置に戻す方向に復元力を生じさせる復元装置と、を備え、復元装置は、掛け部の下面および第1建築梁の上面の間において金属板および弾性体が鉛直方向に交互に積層された積層体を備え、復元装置は、積層体の弾性力によって復元力を生じさせる
本開示に係る乗客コンベアは、建物に適用される乗客コンベアであり、建物の上階側および下階側の一方に設けられた第1建築梁と建物の上階側および下階側の他方に設けられた第2建築梁との間に掛け渡され、第1建築梁および第2建築梁の一方から他方に向かう方向を前後方向とする主枠と、主枠を支持する支持装置と、を備え、支持装置は、主枠の前後方向の一端に設けられ、第1建築梁の上面の上方において第1建築梁の上面に対向する下面を有し前後方向の外側に突出する掛け部と、掛け部の下面および第1建築梁の上面の間に設けられ、第1建築梁および掛け部の相対位置が平衡位置からずれるときに、第1建築梁および掛け部の相対位置を平衡位置に戻す方向に復元力を生じさせる復元装置と、を備え、復元装置は、第1建築梁の上面に対して固定して取り付けられ、中心に向けて下方に傾斜する凹面を有する受け皿と、掛け部の下面に対して水平方向に移動しないように、かつ、受け皿の凹面上を転がりうるように設けられ、掛け部の下面からの荷重を受ける球体と、を備え、復元装置は、球体が受け皿の凹面の中心の上にある相対位置を平衡位置とし、重力によって復元力を生じさせる。
【発明の効果】
【0008】
本開示に係る乗客コンベアの支持装置によれば、地震発生後に乗客コンベアが利用不能になる可能性が抑えられる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の形態1に係る乗客コンベアの構成図である。
図2】実施の形態1に係る支持装置の配置の例を示す図である。
図3】実施の形態1に係る支持装置の構成を示す鉛直断面図である。
図4】実施の形態1に係る支持装置の構成を示す要部拡大図である。
図5】実施の形態1に係る支持装置の機能の例を示す図である。
図6】実施の形態2に係る支持装置の構成を示す要部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示の対象を実施するための形態について添付の図面を参照しながら説明する。各図において、同一または相当する部分には同一の符号を付して、重複する説明は適宜に簡略化または省略する。なお、本開示の対象は以下の実施の形態に限定されることなく、本開示の趣旨を逸脱しない範囲において、実施の形態の任意の構成要素の変形、または実施の形態の任意の構成要素の省略が可能である。
【0011】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る乗客コンベア1の構成図である。
【0012】
乗客コンベア1は、建物に適用される。乗客コンベア1は、例えば、建物の上階と下階との間に掛け渡されるエスカレーターである。このとき、乗客コンベア1は、上階および下階の間で乗客を輸送する。乗客コンベア1の上階側および下階側の一方は、乗客が乗客コンベア1に乗り込む出発側である。乗客コンベア1の上階側および下階側の他方は、乗客が乗客コンベア1から降りる到着側である。乗客コンベア1は、主枠2と、支持装置3と、駆動装置4と、複数の踏段5と、一対の手摺6と、制御装置7と、を備える。
【0013】
主枠2は、乗客コンベア1の構造を支持する、乗客コンベア1の前後方向に長い部分である。主枠2は、例えばトラスである。主枠2は、建物の上階側に設けられた上部建築梁8aと、建物の下階側に設けられた下部建築梁8bとの間に掛け渡される。上部建築梁8aおよび下部建築梁8bの一方は、第1建築梁の例である。上部建築梁8aおよび下部建築梁8bの他方は、第2建築梁の例である。主枠2の前後方向の一端は、上階側の端部である。主枠2の前後方向の他端は、下階側の端部である。主枠2の荷重は、支持装置3によって支持される。
【0014】
駆動装置4は、駆動力を発生させる例えばモーターなどの装置である。駆動装置4は、例えば主枠2の上階側などに設けられた機械室に配置される。各々の踏段5は、駆動装置4が発生させる駆動力によって循環移動する機器である。各々の踏段5は、出発側から到着側まで往路を移動し、到着側から出発側まで往路より下方の帰路を移動する。複数の踏段5は、往路において階段状に配置される。各々の手摺6は、駆動装置4が発生させる駆動力によって循環移動する機器である。各々の手摺6は、出発側から到着側まで往路を移動し、到着側から出発側まで往路より下方の帰路を移動する。各々の手摺6は、可撓性を有する環状の部材からなる。一方の手摺6は、複数の踏段5の左側に配置される。他方の手摺6は、複数の踏段5の右側に配置される。制御装置7は、乗客コンベア1の動作を制御する装置である。制御装置7は、例えば主枠2の上階側などに設けられた機械室に配置される。
【0015】
通常運転時において、乗客コンベア1は、例えば一方の手摺6を掴みながらいずれかの踏段5の上に立ち止まっている乗客を、制御装置7の制御に基づいて駆動装置4が発生させる駆動力によって輸送する。このとき、各々の踏段5は、往路において出発側から到着側まで進行方向に移動する。各々の手摺6は、各々の踏段5に合わせた移動速度で循環移動する。
【0016】
乗客コンベア1が適用される建物において、図示されない免震装置が適用される。この例において、免震装置は、建物の下層および上層の間に設けられる。免震装置は、建物の下層および上層の相対変位を許容することで、下層および上層の間の地震による振動のエネルギーの伝達を緩和する。この例において、乗客コンベア1の主枠2は、建物の上層に設けられた上階と、建物の下層に設けられた下階との間に掛け渡される。すなわち、免震装置は、地震が発生している間の上部建築梁8aおよび下部建築梁8bの相対変位を許容する。
【0017】
図2は、実施の形態1に係る支持装置3の配置の例を示す図である。
【0018】
支持装置3は、主枠2の前後方向の一端に設けられる。この例において、支持装置3は、主枠2の下階側の端部に設けられる。このとき、主枠2の上階側の端部は、上部建築梁8aに固定される。なお、支持装置3は、主枠2の上階側の端部に設けられてもよい。また、支持装置3は、主枠2の前後方向の一方の端部にのみ設けられていてもよいし、主枠2の前後方向の両方の端部に設けられていてもよい。
【0019】
図3は、実施の形態1に係る支持装置3の構成を示す鉛直断面図である。
図3において、乗客コンベア1の前後方向を含む鉛直平面による支持装置3の断面が示される。
【0020】
支持装置3は、支持アングル9と、復元装置10と、を備える。
【0021】
支持アングル9は、主枠2の前後方向の一端に設けられる。この例において、支持アングル9は、主枠2の下階側の端部に取り付けられる。支持アングル9は、第1板部9aおよび第2板部9bがその縁で直角に交わる形状、すなわち断面がL字状の形状のアングル材である。支持アングル9は、第1板部9aの法線が前後方向を向き、第2板部9bの法線が上下方向を向くように配置される。第1板部9aは、主枠2の下階側の端部に取り付けられる。第2板部9bは、第1板部9aに対して主枠2の反対側、すなわち前後方向の外側に突出する。第2板部9bの下面は、下部建築梁8bの上面の上方において、下部建築梁8bの上面に対向する。第2板部9bは、支持装置3の掛け部の例である。乗客コンベア1の掛かり代の長さは、例えば、第2板部9bおよび下部建築梁8bのうち、水平投影面において重なりを持つ部分の前後方向の長さに対応する。
【0022】
復元装置10は、支持アングル9の第2板部9bの下面および下部建築梁8bの上面の間に設けられる。復元装置10は、第2板部9bおよび下部建築梁8bの相対位置が平衡位置からずれるときに、第2板部9bおよび下部建築梁8bの相対位置を平衡位置に戻す方向の復元力を生じさせる装置である。ここで、第2板部9bおよび下部建築梁8bの相対位置は、例えば、下部建築梁8bを基準とした第2板部9bの位置である。平衡位置は、乗客コンベア1の通常運転時における第2板部9bおよび下部建築梁8bの相対位置である。地震が発生していないときに、第2板部9bおよび下部建築梁8bの相対位置は、平衡位置にある。第2板部9bおよび下部建築梁8bの相対位置が平衡位置にあるときに、乗客コンベア1の掛かり代の長さは、乗客コンベア1の運転に十分な長さである。
【0023】
図4は、実施の形態1に係る支持装置3の構成を示す要部拡大図である。
図4において、図3に破線で示した部分Aの拡大図が示される。
【0024】
復元装置10は、ベアリングプレート11と、積層体12と、を備える。
【0025】
ベアリングプレート11は、例えば平坦な金属板である。ベアリングプレート11は、乗客コンベア1の荷重を受ける部分である。ベアリングプレート11は、下部建築梁8bの上面に固定して取り付けられる。
【0026】
積層体12は、例えば、積層ゴム支承である。積層体12は、上部フランジ13aと、下部フランジ13bと、複数の金属板14と、複数の弾性体15と、を備える。上部フランジ13aは、積層体12の上面をなす板状の部分である。上部フランジ13aは、支持アングル9の第2板部9bの下面に対して固定されて取り付けられる。下部フランジ13bは、積層体12の下面をなす板状の部分である。下部フランジ13bは、下部建築梁8bの上面に対して固定されて取り付けられる。複数の金属板14および複数の弾性体15は、上部フランジ13aおよび下部フランジ13bの間において鉛直方向に交互に積層される。複数の金属板14および複数の弾性体15は、互いに平行に配置される。各々の金属板14は、例えば、円盤状の鋼板である。各々の弾性体15は、例えば、円盤状のゴム板である。積層された複数の金属板14および複数の弾性体15の側面は、例えば被覆ゴムなどの弾性体によって被覆されていてもよい。
【0027】
続いて、図5を用いて、支持装置3の機能の例を説明する。
図5は、実施の形態1に係る支持装置3の機能の例を示す図である。
図5において、図4に示す部分の地震発生時の状態の例が示される。
【0028】
地震発生時において、建物の下層は地震によって揺れる。免震装置によって振動エネルギーの伝達が緩和されるので、建物の上層は建物の下層より小さく揺れる。この例において、下部建築梁8bは建物の下層とともに揺れる。また、上部建築梁8aは、建物の上層とともに建物の下層より小さく揺れる。乗客コンベア1の主枠2の上階側の端部は上部建築梁8aに固定されているので、乗客コンベア1の主枠2は、建物の上層とともに建物の下層より小さく揺れる。すなわち、乗客コンベア1の下階側において、乗客コンベア1の主枠2の下階側の端部は、下部建築梁8bより小さく揺れる。
【0029】
このような揺れの差異により、乗客コンベア1の下階側に設けられた支持装置3の支持アングル9の第2板部9bおよび下部建築梁8bの相対位置が平衡位置からずれる。このとき、積層体12は各々の金属板14および各々の弾性体15が水平方向に平行にずれるようにせん断変形する。積層体12は、弾性体15の弾性力によって、第2板部9bおよび下部建築梁8bの相対位置を平衡位置に戻す方向の復元力を生じさせる。例えば弾性体15が線形弾性体の場合などに、積層体12は、平衡位置からのずれが大きいほど強い復元力を生じさせる。なお、弾性体15は、非線形弾性体であってもよい。積層体12は復元力を生じさせながら自身のせん断変形を許容するので、地震発生時に第2板部9bおよび下部建築梁8bの相対位置の平衡位置からの変動が許容される。
【0030】
以上に説明したように、実施の形態1に係る乗客コンベア1の支持装置3は、第2板部9bを含む支持アングル9と、復元装置10と、を備える。第2板部9bは、主枠2の前後方向の下階側の端部に設けられる。第2板部9bの下面は、下部建築梁8bの上面の上方において下部建築梁8bの上面に対向する。第2板部9bは、主枠2の前後方向において主枠2の外側に突出する。復元装置10は、第2板部9bの下面および下部建築梁8bの上面の間に設けられる。復元装置10は、下部建築梁8bおよび第2板部9bの相対位置が平衡位置からずれるときに、下部建築梁8bおよび第2板部9bの相対位置を平衡位置に戻す方向に復元力を生じさせる。
【0031】
このような構成により、地震発生時において、復元装置10は復元力を生じさせながら、第2板部9bおよび下部建築梁8bの相対位置の平衡位置からの変動を許容する。このため、建物の下層から乗客コンベア1の本体への地震による振動のエネルギーの伝達が緩和される。すなわち、復元装置10はアイソレータとして機能する。これにより、乗客コンベア1の本体の損傷などの可能性が抑えられる。また、復元装置10は第2板部9bおよび下部建築梁8bの相対位置が平衡位置からずれるときに復元力を生じさせるので、地震発生後に、第2板部9bおよび下部建築梁8bの相対位置が平衡位置に戻るようになる。このため、乗客コンベア1の下階側における掛かり代の不足などが生じにくくなる。これにより、地震発生後に乗客コンベア1が利用不能になる可能性が抑えられる。また、掛かり代不足を解消するための復旧作業が必要となる可能性が抑えられるため、当該復旧作業のための保守員の出動の可能性が抑えられる。これにより、保守員は、地震発生時に同時多発的に発生しうる復旧作業が必要な現場のうち、より緊急度の高い現場により速やかに出動できるようになる。
【0032】
また、復元装置10は、下部建築梁8bおよび第2板部9bの相対位置が平衡位置からずれるときに、平衡位置からのずれが大きいほど強い復元力を生じさせる。これにより、平衡位置からのずれが大きい場合により強く復元力が働くため、地震発生後に乗客コンベア1の下階側における掛かり代の不足などがより生じにくくなる。これにより、地震発生後に乗客コンベア1が利用不能になる可能性がより抑えられる。
【0033】
また、復元装置10は、積層体12を備える。積層体12は、第2板部9bの下面および下部建築梁8bの上面の間において金属板14および弾性体15が鉛直方向に交互に積層された構造を有する。復元装置10は、積層体12の弾性力によって復元力を生じさせる。積層体12の弾性体15自体の物性である弾性によって復元力が生じるので、機構の不具合などによる支持装置3の故障が生じない。このため、復元装置10は、地震発生時により確実に機能するようになる。また、弾性体15として高減衰ゴムなどを用いることができるので、弾性体15の材料自体に減衰の機能を持たせることができるようになる。このとき、復元装置10は、ダンパとして機能する。これにより、復元装置10は、乗客コンベア1の本体への振動の影響をより効果的に抑えることができるようになる。
【0034】
また、積層体12は、第2板部9bの下面に対して固定されて取り付けられる。積層体12は、下部建築梁8bの上面に対して固定されて取り付けられる。これにより、積層体12は、下部建築梁8bおよび第2板部9bの相対位置が平衡位置から鉛直方向にずれるときにおいても復元力を生じさせるようになる。このため、地震による揺れが鉛直方向であるか水平方向であるかの揺れの方向によらずに、復元装置10は、乗客コンベア1の本体への地震による振動の影響を抑えることができるようになる。
【0035】
また、建物に設けられた免震装置は、地震が発生している間の上部建築梁8aおよび下部建築梁8bの相対変位を許容する。主枠2は、このような上部建築梁8aおよび下部建築梁8bの間に掛け渡される。地震による上部建築梁8aおよび下部建築梁8bの相対変位が支持装置3によって吸収されるため、乗客コンベア1の損傷などの可能性が抑えられる。
【0036】
なお、乗客コンベア1は、往路において踏段5がスロープ状に配置される傾斜式の動く歩道などであってもよい。
【0037】
実施の形態2.
実施の形態2において、実施の形態1で開示される例と相違する点について特に詳しく説明する。実施の形態2で説明しない特徴については、実施の形態1で開示される例のいずれの特徴が採用されてもよい。
【0038】
図6は、実施の形態2に係る支持装置3の構成を示す要部拡大図である。
図6において、乗客コンベア1の前後方向を含む鉛直平面による支持装置3の断面が示される。
【0039】
復元装置10は、ベアリングプレート11と、受け皿16と、保持器17と、球体18と、を備える。
【0040】
受け皿16は、下部建築梁8bの上面に対して固定されるように、ベアリングプレート11上に取り付けられる。受け皿16は、上方に向けられた凹面16aを有する。受け皿16の凹面16aは、中心に向けて下方に傾斜する。受け皿16の凹面16aは、水平方向において等方的に傾斜する。受け皿16の凹面16aは、中心から離れるほど大きく傾斜する曲面である。受け皿16の凹面16aの形状は、例えば鉛直方向を回転軸とした回転体の表面形状である。受け皿16の凹面16aの形状は、例えば、球冠などの球面の一部、回転楕円面の一部、またはその他の回転体面の一部などであってもよい。受け皿16の凹面16aの中心から外周までの距離は、例えば凹面16aの水平方向の半径などである。例えば受け皿16の凹面16aが球冠である場合に、受け皿16の凹面16aの中心から外周までの距離は、球冠の底の半径などである。
【0041】
保持器17は、球体18を保持する機器である。保持器17は、支持アングル9の第2板部9bの下面に対して固定されるように第2板部9bに取り付けられる。保持器17は、例えば、ボールベアリングなどである。保持器17は、球体18が第2板部9bの下面に対して水平方向に移動しないように保持する。保持器17は、回転可能に球体18を保持する。すなわち、保持器17は、球体18の回転を拘束しない。
【0042】
球体18は、例えば金属球などである。球体18は、保持器17を介して支持アングル9の第2板部9bの下面から受ける乗客コンベア1の荷重を受ける。球体18は、受け皿16の凹面16aの上に配置される。球体18の表面の曲率は、球体18の半径によって定まる。球体18の表面の曲率は、受け皿16の凹面16aの中心における曲率より大きい。球体18の半径は、受け皿16の凹面16aの中心から外周までの距離より短い。球体18は、保持器17によって保持されながら、受け皿16の凹面16a上を転がりうるように設けられる。
【0043】
復元装置10は、球体18が受け皿16の凹面16aの中心の上にある相対位置を、第2板部9bおよび下部建築梁8bの相対位置の平衡位置とする。第2板部9bおよび下部建築梁8bの相対位置が平衡位置からずれるときに、球体18は、転がって受け皿16の凹面16aの中心に向けて下方に傾斜する部分に移動する。このとき、復元装置10は、第2板部9bおよび下部建築梁8bの相対位置を平衡位置に戻す復元力を重力によって生じさせる。
【0044】
復元装置10は、球体18が受け皿16の凹面16aの中心の上にある相対位置を、第2板部9bおよび下部建築梁8bの相対位置の平衡位置とする。地震発生時の建物の下層および上層の揺れの差異により、乗客コンベア1の下階側に設けられた支持装置3の支持アングル9の第2板部9bおよび下部建築梁8bの相対位置が平衡位置からずれる。このとき、球体18は、転がって受け皿16の凹面16aの中心に向けて下方に傾斜する部分に移動する。これにより、復元装置10は、第2板部9bおよび下部建築梁8bの相対位置を平衡位置に戻す復元力を重力によって生じさせる。復元力の大きさは、球体18が移動した部分の凹面16aの傾斜によって定まる。受け皿16の凹面16aが中心から離れるほど大きく傾斜している場合などに、復元装置10は、平衡位置からのずれが大きいほど強い復元力を生じさせる。
【0045】
以上に説明したように、実施の形態2に係る乗客コンベア1の支持装置3の復元装置10は、受け皿16と、球体18と、を備える。受け皿16は、下部建築梁8bの上面に対して固定して取り付けられる。受け皿16は、中心に向けて下方に傾斜する凹面16aを有する。球体18は、支持アングル9の第2板部9bの下面に対して水平方向に移動しないように、かつ、受け皿16の凹面16a上を転がりうるように設けられる。球体18は、第2板部9bの下面からの荷重を受ける。復元装置10は、球体18が受け皿16の凹面16aの中心の上にある相対位置を平衡位置とする。復元装置10は、第2板部9bおよび下部建築梁8bの相対位置を平衡位置に戻す復元力を重力によって生じさせる。
【0046】
このような構成により、地震発生時において、復元装置10は受動的に復元力を生じさせながら、第2板部9bおよび下部建築梁8bの相対位置の平衡位置からの変動を許容する。これにより、乗客コンベア1の本体の損傷などの可能性が抑えられる。また、復元装置10は第2板部9bおよび下部建築梁8bの相対位置が平衡位置からずれるときに復元力を生じさせるので、地震発生後に、第2板部9bおよび下部建築梁8bの相対位置が平衡位置に戻るようになる。このため、乗客コンベア1の下階側における掛かり代の不足などが生じにくくなる。これにより、地震発生後に乗客コンベア1が利用不能になる可能性が抑えられる。
【0047】
また、受け皿16の凹面16aは、水平方向において等方的に傾斜する。これにより、水平方向の地震動の向きによらずに、復元装置10は、乗客コンベア1の本体への地震による振動の影響を抑えることができるようになる。
【0048】
また、受け皿16の凹面16aは、中心から離れるほど大きく傾斜する曲面である。これにより、平衡位置からのずれが大きい場合により強く復元力が働くため、地震発生後に乗客コンベア1の下階側における掛かり代の不足などがより生じにくくなる。これにより、地震発生後に乗客コンベア1が利用不能になる可能性がより抑えられる。
【0049】
また、受け皿16の凹面16aの中心における曲率は、球体18の表面の曲率より小さい。受け皿16の凹面16aの中心から外周までの距離は、球体18の半径より大きい。これにより、球体18は凹面16a上を滑らかに転がることができるようになる。このため、地震発生時において、復元装置10による復元力がより確実に生じるようになる。
【0050】
以上の説明をまとめると、本開示に係る技術の取りうる構成は、以下に付記として示す各構成などを含む。
(付記1)
建物に適用される乗客コンベアの主枠の前後方向の一端に設けられ、前記建物の建築梁の上面の上方において前記建築梁の上面に対向する下面を有し前後方向の外側に突出する掛け部と、
前記掛け部の下面および前記建築梁の上面の間に設けられ、前記建築梁および前記掛け部の相対位置が平衡位置からずれるときに、前記建築梁および前記掛け部の相対位置を前記平衡位置に戻す方向に復元力を生じさせる復元装置と、
を備える乗客コンベアの支持装置。
(付記2)
前記復元装置は、前記建築梁および前記掛け部の相対位置が前記平衡位置からずれるときに、前記建築梁および前記掛け部の相対位置を前記平衡位置に戻す方向に、前記平衡位置からのずれが大きいほど強い復元力を生じさせる、
付記1に記載の乗客コンベアの支持装置。
(付記3)
前記復元装置は、
前記掛け部の下面および前記建築梁の上面の間において金属板および弾性体が鉛直方向に交互に積層された積層体
を備え、
前記復元装置は、前記積層体の弾性力によって復元力を生じさせる、
付記1または付記2に記載の乗客コンベアの支持装置。
(付記4)
前記復元装置の前記積層体は、前記掛け部の下面に対して固定されて取り付けられ、前記建築梁の上面に対して固定されて取り付けられる、
付記3に記載の乗客コンベアの支持装置。
(付記5)
前記復元装置は、
前記建築梁の上面に対して固定して取り付けられ、中心に向けて下方に傾斜する凹面を有する受け皿と、
前記掛け部の下面に対して水平方向に移動しないように、かつ、前記受け皿の凹面上を転がりうるように設けられ、前記掛け部の下面からの荷重を受ける球体と、
を備え、
前記復元装置は、前記球体が前記受け皿の凹面の中心の上にある相対位置を前記平衡位置とし、重力によって復元力を生じさせる、
付記1または付記2に記載の乗客コンベアの支持装置。
(付記6)
前記受け皿の凹面は、水平方向において等方的に傾斜する、
付記5に記載の乗客コンベアの支持装置。
(付記7)
前記受け皿の凹面は、中心から離れるほど大きく傾斜する曲面である、
付記5または付記6に記載の乗客コンベアの支持装置。
(付記8)
前記受け皿の凹面の中心における曲率は、前記球体の表面の曲率より小さく、
前記受け皿の凹面の中心から外周までの距離は、前記球体の半径より大きい、
付記7に記載の乗客コンベアの支持装置。
(付記9)
建物に適用される乗客コンベアであり、
前記建物の上階側および下階側の一方に設けられた第1建築梁と前記建物の上階側および下階側の他方に設けられた第2建築梁との間に掛け渡され、前記第1建築梁および前記第2建築梁の一方から他方に向かう方向を前後方向とする主枠と、
前記主枠を支持する支持装置と、
を備え、
前記支持装置は、
前記主枠の前後方向の一端に設けられ、前記第1建築梁の上面の上方において前記第1建築梁の上面に対向する下面を有し前後方向の外側に突出する掛け部と、
前記掛け部の下面および前記第1建築梁の上面の間に設けられ、前記第1建築梁および前記掛け部の相対位置が平衡位置からずれるときに、前記第1建築梁および前記掛け部の相対位置を前記平衡位置に戻す方向に復元力を生じさせる復元装置と、
を備える、
乗客コンベア。
(付記10)
前記主枠は、前記建物に設けられた免震装置によって地震が発生している間の相対変位が許容される前記第1建築梁および前記第2建築梁の間に掛け渡される、
付記9に記載の乗客コンベア。
【符号の説明】
【0051】
1 乗客コンベア、 2 主枠、 3 支持装置、 4 駆動装置、 5 踏段、 6 手摺、 7 制御装置、 8a 上部建築梁、 8b 下部建築梁、 9 支持アングル、 9a 第1板部、 9b 第2板部、 10 復元装置、 11 ベアリングプレート、 12 積層体、 13a 上部フランジ、 13b 下部フランジ、 14 金属板、 15 弾性体、 16 受け皿、 16a 凹面、 17 保持器、 18 球体
【要約】      (修正有)
【課題】地震発生後に利用不能になりにくい乗客コンベアおよびその支持装置を提供する。
【解決手段】乗客コンベアの支持装置は、第2板部9bを含む支持アングル9と、復元装置10と、を備える。第2板部9bは、主枠の前後方向の下階側の端部に設けられる。第2板部9bの下面は、下部建築梁8bの上面の上方において下部建築梁8bの上面に対向する。第2板部9bは、主枠の前後方向において主枠の外側に突出する。復元装置10は、第2板部9bの下面および下部建築梁8bの上面の間に設けられる。復元装置10は、下部建築梁8bおよび第2板部9bの相対位置が平衡位置からずれるときに、下部建築梁8bおよび第2板部9bの相対位置を平衡位置に戻す方向に復元力を生じさせる。
【選択図】図4
図1
図2
図3
図4
図5
図6