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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-04
(45)【発行日】2023-12-12
(54)【発明の名称】車載制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60L 3/04 20060101AFI20231205BHJP
   B60L 1/00 20060101ALI20231205BHJP
   B60L 58/10 20190101ALI20231205BHJP
【FI】
B60L3/04 E
B60L1/00 L
B60L58/10
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2023535721
(86)(22)【出願日】2022-03-30
(86)【国際出願番号】 JP2022016277
【審査請求日】2023-06-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100183689
【弁理士】
【氏名又は名称】諏訪 華子
(74)【代理人】
【識別番号】110003649
【氏名又は名称】弁理士法人真田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】前澤 宏和
(72)【発明者】
【氏名】川野 翔平
(72)【発明者】
【氏名】秋吉 紳司
(72)【発明者】
【氏名】冨田 義典
【審査官】岩田 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-156859(JP,A)
【文献】特開2006-278210(JP,A)
【文献】特開2020-39220(JP,A)
【文献】特開昭63-264837(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 3/04
B60L 1/00
B60L 58/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載されたバッテリの高電圧回路を断接する対象コンタクタの溶着の可能性の有無を前記高電圧回路の使用後に判定する判定部と、
前記判定部により前記対象コンタクタの溶着の可能性があると判定された場合に、前記対象コンタクタへの通電を一定時間のあいだ禁止するオフ制御を実施するオフ制御部と、を備え、
前記高電圧回路には、正極側及び負極側の一方に介装された第一コンタクタと、前記正極側及び前記負極側の他方に介装された第二コンタクタと、前記第一コンタクタに並列接続されるとともに抵抗器と直列接続されたプリチャージコンタクタと、が設けられており、
前記車両には、前記第一コンタクタ及び前記第二コンタクタのそれぞれを介して前記バッテリに接続される補機バッテリが設けられ、
前記対象コンタクタは、前記第一コンタクタであり、
前記オフ制御部は、前記オフ制御の実施中に、前記第二コンタクタ及び前記プリチャージコンタクタをオン状態に維持するとともに前記補機バッテリの充電率が所定の下限値以下になった場合に前記補機バッテリを充電する
ことを特徴とする、車載制御装置。
【請求項4】
前記車両の走行開始を要求する開始信号を受信した場合に、前記車両を走行可能とする走行制御部をさらに備え、
前記オフ制御部は、前記開始信号が受信された場合に、前記オフ制御を中断し、
前記走行制御部は、前記オフ制御の中断後に前記車両を走行可能状態とし、ユーザの操作に応じて前記車両を制御する
ことを特徴とする、請求項1に記載の車載制御装置。
【請求項5】
前記対象コンタクタのオンオフを繰り返す対象振動制御を含む振動制御を実施する振動制御部をさらに備え、
前記判定部は、前記オフ制御部による前記オフ制御の実施後に、前記対象コンタクタの溶着の可能性の有無を再度判定し、
前記振動制御部は、前記判定部により前記対象コンタクタの溶着の可能性があると再度判定された場合に、前記振動制御を実施する
ことを特徴とする、請求項1又は4に記載の車載制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件は、車両に搭載されたバッテリの高電圧回路を断接するコンタクタを制御する車載制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電気自動車(EV:Electric Vehicle)、ハイブリッド自動車(HEV:Hybrid Electric Vehicle)や外部充電または外部給電が可能なプラグインハイブリッド電気自動車(PHEV:Plug-in Hybrid Electric Vehicle)といった電動車両に内蔵されるバッテリの高電圧回路には、非常時にバッテリと負荷装置(例えばインバータ)との接続を遮断するためのコンタクタとよばれる電磁接触器が設けられている。コンタクタは、車載制御装置によりそのオンオフが制御される。
【0003】
このようなコンタクタは、システム停止時(例えば、運転者によってイグニッションスイッチがオフ操作されたとき)に、溶着故障していないかどうかが判定されることが知られている。例えば、特許文献1には、システム停止時に、負荷装置に設けられた平滑コンデンサの電圧変化の有無に基づいて、複数のコンタクタのそれぞれの溶着故障を判定する電源システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2020-202605号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に開示の溶着故障判定では、溶着故障以外の原因で電圧が変化しない場合、例えば、コンタクタ内の部品がずれて接触状態が維持されてしまっている場合や、コンタクタの電磁式コイルの熱膨張により一時的にコンタクタがオフ状態とならなくなっている場合も溶着故障と判定される。このような一時的な(一過性の)コンタクタの短絡(コンタクタが介装される電線の導通が遮断されなくなっている状態)は、当該短絡の原因(ずれや熱膨張など)が解消されれば解消され得るため、車載制御装置には、このような一過性のコンタクタの短絡を解消する制御が組み込まれていることが望ましい。
【0006】
本件の車載制御装置は、このような課題に鑑み案出されたもので、一過性のコンタクタの短絡状態の解消を図ることを目的の一つとする。なお、この目的に限らず、後述する発明を実施するための形態に示す各構成により導かれる作用効果であって、従来の技術によっては得られない作用効果を奏することも本件の他の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
開示の車載制御装置は、以下に開示する態様又は適用例として実現でき、上記の課題の少なくとも一部を解決する。
(1)ここで開示する車載制御装置は、車両に搭載されたバッテリの高電圧回路を断接する対象コンタクタの溶着の可能性の有無を前記高電圧回路の使用後に判定する判定部と、前記判定部により前記対象コンタクタの溶着の可能性があると判定された場合に、前記対象コンタクタへの通電を一定時間のあいだ禁止するオフ制御を実施するオフ制御部と、を備える。
【0008】
(2)前記高電圧回路には、正極側及び負極側の一方に介装された第一コンタクタと、前記正極側及び前記負極側の他方に介装された第二コンタクタと、前記第一コンタクタに並列接続されるとともに抵抗器と直列接続されたプリチャージコンタクタと、が設けられていることが好ましい。この場合、前記対象コンタクタは、前記第一コンタクタであり、前記オフ制御部は、前記オフ制御の実施中に、前記第二コンタクタ及び前記プリチャージコンタクタをオン状態に維持することが好ましい。
【0009】
(3)前記車両には、前記第一コンタクタ及び前記第二コンタクタのそれぞれを介して前記バッテリに接続される補機バッテリが設けられていることが好ましい。この場合、前記オフ制御部は、前記オフ制御の実施中に、前記補機バッテリの充電率が所定の下限値以下になった場合に前記補機バッテリを充電することが好ましい。
【0010】
(4)前記車載制御装置は、前記車両の走行開始を要求する開始信号を受信した場合に、前記車両を走行可能とする走行制御部をさらに備えていることが好ましい。この場合、前記オフ制御部は、前記開始信号が受信された場合に、前記オフ制御を中断し、前記走行制御部は、前記オフ制御の中断後に前記車両を走行可能状態とし、ユーザの操作に応じて前記車両を制御することが好ましい。
【0011】
(5)前記車載制御装置は、前記対象コンタクタのオンオフを繰り返す対象振動制御を含む振動制御を実施する振動制御部をさらに備えていることが好ましい。この場合、前記判定部は、前記オフ制御部による前記オフ制御の実施後に、前記対象コンタクタの溶着の可能性の有無を再度判定し、前記振動制御部は、前記判定部により前記対象コンタクタの溶着の可能性があると再度判定された場合に、前記振動制御を実施することが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
開示の車載制御装置によれば、一過性のコンタクタの短絡状態の解消を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】一実施形態に係る車載制御装置が適用された車両の模式図である。
図2図1の車両に搭載されたバッテリと他の装置との間の電気的な接続を示す回路図と、図1の車載制御装置のブロック構成図と、を示す図である。
図3図1の車載制御装置で実施される高電圧回路使用後の処理を説明するためのフローチャートである。
図4図3で実施されるオフ制御を説明するためのフローチャートである。
図5図1の車載制御装置の作用を説明するタイムチャートの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図面を参照して、実施形態としての車載制御装置について説明する。以下に示す実施形態はあくまでも例示に過ぎず、以下の実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。本実施形態の各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。また、必要に応じて取捨選択することができ、あるいは適宜組み合わせることができる。
【0015】
[1.全体構成]
図1は、本実施形態に係る車載制御装置10(以下、「ECU10」ともよぶ)が適用された車両1の模式図であり、図2は、車両1に搭載されたバッテリ2と他の装置と間の電気的な接続を示す回路図と、車載制御装置10のブロック構成図と、を併せて示す図である。
【0016】
図1に示すように、車両1は、バッテリ2を動力源とする駆動用モータ3が搭載された電動車両(電気自動車,プラグインハイブリッド自動車等)である。車両1には、図2に示すように、バッテリ2と他の装置との間の高電圧回路(直流回路)を緊急時に遮断するためのコンタクタ21~23が設けられる。ECU10は、このコンタクタ21~23のオンオフ状態を制御するとともに、バッテリ2の高電圧回路の使用後にコンタクタ21~23の少なくとも一つに対して溶着の可能性の有無を判定する機能を有する。ここで、「高電圧回路の使用後」とは、例えば、車両1の走行後や外部充電器からのバッテリ2への充電後や外部給電後など、バッテリ2への充放電を含む車両1の一連の処理(一起動周期)の終了後を意味する。
【0017】
バッテリ2は、リチウムイオン二次電池,ニッケル水素電池などの二次電池であり、例えば車両1の床下に配置される。本実施形態において、バッテリ2を含むバッテリパック20には、上述のコンタクタ21~23が配設される。ここでは、バッテリ2の高電圧回路の正極側及び負極側のそれぞれに配置された第一コンタクタ21及び第二コンタクタ22と、高電圧回路への突入電流を緩和するプリチャージコンタクタ23と、の三つのコンタクタが設けられている。
【0018】
三つのコンタクタ21~23は、いずれも可動接点,固定接点及び電磁式コイルを有する常時励磁式のコンタクタである。コンタクタ21~23は、ECU10から伝達される制御信号を受けて、電磁式コイルが励磁されることでオン状態(接続状態,閉鎖状態)に制御される。一方、制御信号のない状態では電磁式コイルが消磁されることでオフ状態(切断状態,開放状態)に制御される。
【0019】
第一コンタクタ21は高電圧回路の正極側の電線Lp(以下、「正極側電線Lp」とよぶ)に介装され、第二コンタクタ22は高電圧回路の負極側の電線Ln(以下、「負極側電線Ln」とよぶ)に介装される。プリチャージコンタクタ23は、第一コンタクタ21に並列接続されるとともにプリチャージ抵抗器24(抵抗器)と直列接続される。プリチャージコンタクタ23は、高電圧回路の使用開始時に、第一コンタクタ21よりもわずかに先行して接続されることで過剰な電流が高電圧回路に流れることをプリチャージ抵抗器24によって抑制するものである。プリチャージコンタクタ23は、高電圧回路の使用開始から所定のスタートアップ時間Tsuの経過後に切断される。ここで、「高電圧回路の使用開始時」とは、例えば、車両1の走行開始時や外部充電開始時や外部給電開始時など、バッテリ2への充放電を含む車両1の一連の処理(一起動周期)の開始時を意味する。また、スタートアップ時間Tsuは、高電圧回路に設けられた後述するコンデンサ42の充電にかかる時間であり、例えば、1~数秒に設定される。
【0020】
駆動用モータ3は、バッテリ2の電力で車輪(例えば、前輪)を回転駆動する機能と、車輪の慣性トルクを利用した発電によって電力を回生する機能とを兼ね備えた交流電動発電機である。なお、本実施形態の駆動用モータ3は、図1に示すように、車両前側に配置されているが、駆動用モータ3は車両後側に設けられていてもよい。すなわち、駆動用モータ3は、車両の後輪を回転駆動するものであってもよい。また、車両1は、前輪及び後輪のそれぞれを駆動する二つの駆動用モータ3を備えた、いわゆる四輪駆動車両であってもよい。
【0021】
駆動用モータ3とバッテリ2とを接続する回路上には、図2に示すように、インバータ4が介装される。バッテリ2とインバータ4との間には、上述のコンタクタ21~23が介装される。インバータ4は、例えば、インバータ回路41と、平滑化コンデンサ42(以下、単に「コンデンサ42」とよぶ)と、放電抵抗43と、放電スイッチ44と、電圧計45と、MCU(Motor Control Unit)46とを含んで構成される。
【0022】
インバータ回路41は、高電圧回路の正極側電線Lp及び負極側電線Lnにそれぞれ接続される。インバータ回路41は、複数のスイッチング素子〔例えばIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)〕を含む三相ブリッジ回路であり、各スイッチング素子の接続状態が断続的に切り替えられることで、駆動用モータ3を駆動するための交流電力が生成される。
【0023】
コンデンサ42は、インバータ回路41でのスイッチングによって発生するノイズを平滑化するもので、インバータ回路41と並列に正極側電線Lp及び負極側電線Lnにそれぞれ接続される。放電抵抗43は、高電圧回路の使用後にコンデンサ42に蓄えられた電荷を放電するもので、コンデンサ42と並列に接続される。放電スイッチ44は、高電圧回路の使用後に放電抵抗43を高電圧回路に接続させるもので、放電抵抗43と直列に接続される。
【0024】
電圧計45は、コンデンサ42の電圧V(以下「コンデンサ電圧V」ともいう)を測定するもので、コンデンサ42と並列に接続される。MCU46は、ECU10から出力される駆動用モータ3への出力要求に基づいてインバータ回路41を制御するとともに、ECU10から出力される信号に基づいて放電スイッチ44のオンオフ状態を制御する。また、MCU46は、電圧計45によって測定されたコンデンサ電圧VをECU10に送信する。
【0025】
本実施形態の車両1には、さらに、車両1の外部装置とバッテリ2とを電気的に接続させるための外部充電口5と、コンタクタ21~23を含む車載電装品の電力源となる補機バッテリ6とが設けられる。つまり、本実施形態の車両1は、外部充電及び外部給電の少なくとも一方が可能なプラグインハイブリッド車両(PHEV)である。
【0026】
外部充電口5は、例えば、外部充電器でバッテリ2を充電するためのコンセントであり、バッテリ2の高電圧回路に対してインバータ4と並列に接続される。外部充電口5の近傍には、外部充電口5に外部充電器の充電ガンが接続されたか否かを検出する接続検出センサ51が設けられる。接続検出センサ51は、例えば、外部充電器の充電ガンが外部充電口5に接続されたことを検出するための電圧センサである。
【0027】
補機バッテリ6は、バッテリ2よりも低電圧の二次電池である。補機バッテリ6は、DCDCコンバータ7を介して、バッテリ2の高電圧回路に対してインバータ4と並列に接続される。DCDCコンバータ7は、例えば、バッテリ2から補機バッテリ6に充電する際に電圧を降圧する降圧器である。DCDCコンバータ7の作動はECU10により制御される。補機バッテリ6には、補機バッテリ6の状態を管理するBMU(Battery Management Unit)61が設けられる。BMU61は、補機バッテリ6の電圧や電流等から補機バッテリ6の充電率(State Of Charge、以下「SOC」とよぶ)を算出し、算出したSOCをECU10に送信する。なお、ECU10に、補機バッテリ6の状態を管理する機能を設け、ECU10において補機バッテリ6のSOCを算出してもよい。
【0028】
ECU10は、例えばマイクロプロセッサやROM,RAM等を集積したLSIデバイスや組み込み電子デバイスとして構成された電子制御装置であり、車両1のネットワーク網の通信ラインに接続されている。ECU10の入力側には、上述のMCU46,BMU61及び接続検出センサ51に加えて主電源スイッチ8(パワースイッチやエンジンスイッチ)が接続される。主電源スイッチ8からは、ユーザによって主電源スイッチ8がオン操作されたかオフ操作されたかの情報(信号)がECU10に伝達される。また、ECU10の出力側には、コンタクタ21~23,MCU46及びDCDCコンバータ7が接続される。
【0029】
[2.制御概要]
ECU10は、上述の通り、バッテリ2の高電圧回路の使用後に、コンタクタ21~23の少なくとも一つに対して溶着の可能性の有無を判定する。本実施形態のECU10は、第一コンタクタ21の溶着の可能性の有無を判定する。以下、第一コンタクタ21を「対象コンタクタ21」ともよぶ。対象コンタクタ21の溶着の可能性の有無の判定は、例えば、対象コンタクタ21の短絡の有無により判定される。なお、ここでいう「短絡」とは、コンタクタ21~23の可動接点と固定接点とがオンオフの指示に関わらず接触してしまっている状態や、コンタクタ21~23へのオンオフ指示に関わらず、コンタクタ21~23が介装される電線(回路)の導通が遮断されなくなっている状態を意味する。以下、対象コンタクタ21に対して溶着の可能性の有無を判定する制御を「溶着判定制御」とよぶ。
【0030】
ここで、コンタクタ21~23の短絡の原因には、コンタクタ21~23の溶着以外のものがある。例えば、コンタクタ21~23の電磁式コイルの熱膨張により一時的にコンタクタ21~23の可動接点の変位が阻害されてしまっている場合や、コンタクタ21~23内の部品の位置のずれにより一時的にコンタクタ21~23の可動接点と固定接点とが接触状態となってしまっている場合などが他の原因として挙げられる。このような一過性のコンタクタ21~23の短絡状態は、当該短絡の原因が解消されれば解消され得る。例えば、電磁式コイルの熱膨張に起因する短絡では、電磁式コイルが冷めれば、電磁式コイルが収縮するため、短絡状態が解消され得る。また、ずれに起因する短絡では、コンタクタ21~23内の部品の位置が元の(正常な)位置に戻れば、短絡状態が解消され得る。
【0031】
そこで、ECU10は、溶着判定制御の結果、対象コンタクタ21に溶着の可能性があると判定した場合には、上述のような一過性のコンタクタの短絡を解消する制御を実施する。具体的には、上述の電磁式コイルの熱膨張に起因する短絡の解消を図る制御としてオフ制御を実施する。また、上述のずれに起因する短絡の解消を図る制御として振動制御を実施する。
【0032】
このように、ECU10は、対象コンタクタ21の短絡の有無のみで溶着故障の有無を断定するのではなく、一過性の短絡を解消する制御を実施することで、高電圧回路の使用後にコンタクタ21~23よりも下流側の電線が高電圧状態に維持されること(活線露出)を防ぐ。具体的には、ECU10は、高電圧回路の使用後の処理として、上述の溶着判定制御,オフ制御及び振動制御を含め以下の四種類の制御を必要に応じて実施する。
(1)溶着判定制御
(2)オフ制御
(3)振動制御
(4)等電圧化制御
【0033】
また、ECU10は、上記のオフ制御や振動制御の実施中に、車両1の走行開始を要求する開始信号を受信した場合には、オフ制御や振動制御を中断し、車両1を走行可能状態とする開始制御を実施する。開始信号としては、例えば、ユーザが主電源スイッチ8をオン操作したときに主電源スイッチ8から出力されるオン信号や、ユーザ操作によらず、自動運転により(例えば緊急で)車両1を走行開始させる必要が生じた場合に発生される信号が挙げられる。
【0034】
溶着判定制御は、上述の通り、対象コンタクタ21の溶着の可能性の有無を判定する制御である。本実施形態において、EUC10は、高電圧回路の使用後,オフ制御の実施後、及び振動制御の実施後のそれぞれにおいて、この溶着判定制御を実施する。
【0035】
溶着判定制御において、ECU10は、所定の判定時間Tjのあいだ、対象コンタクタ21が介装される側の電線Lpを開状態とするとともに、放電抵抗43を高電圧回路に接続するように制御することで、コンデンサ42を放電させる。そして、ECU10は、判定時間Tjの経過後、コンデンサ電圧Vを検出することで、対象コンタクタ21の溶着の可能性の有無を判定する。判定時間Tjは、コンデンサ42の放電にかかる所定の時間(1秒程度)よりも長く、コンデンサ42の放電にかかる部品(コンデンサ42や放電抵抗43など)のバラツキを考慮して、例えば2~20秒に設定される。
【0036】
詳述すると、高電圧回路の使用直後において、コンデンサ42の電圧は、バッテリ2の電圧と同等の値(バッテリ電圧Vb)をとる。ECU10は、溶着判定制御として、判定時間Tjのあいだ、正極側の第一コンタクタ21及びプリチャージコンタクタ23がオフ状態となるように各コンタクタ21,23へ伝達される制御信号を停止するとともに、MCU46を介して放電スイッチ44がオン状態となるように制御する。なお、溶着判定制御の実施中、ECU10は、負極側の第二コンタクタ22がオン状態となるように制御信号の伝達を維持する。
【0037】
ここで、第一コンタクタ21及びプリチャージコンタクタ23が短絡していなければ(正常であれば)、正極側電線Lpは開状態となるため、コンデンサ42に蓄えられた電荷が放電抵抗43により放電されて、コンデンサ電圧Vが低下する。一方で、第一コンタクタ21及びプリチャージコンタクタ23の少なくとも一方が短絡している場合には、第一コンタクタ21及びプリチャージコンタクタ23への制御信号が停止されても高電圧回路が閉回路のままとなるため、コンデンサ42に蓄えられた電荷が放電されず、コンデンサ電圧Vがバッテリ電圧Vbに維持されてしまう。
【0038】
ECU10は、判定時間Tjの経過後に、コンデンサ電圧Vが所定の判定閾値Vth以下となった場合には、対象コンタクタ21の溶着が無い、すなわち、正常であると判定する。また、ECU10は、判定時間Tjの経過後に、コンデンサ電圧Vが判定閾値Vthよりも大きい場合には、対象コンタクタ21の溶着の可能性があると判定する。判定閾値Vthは、例えば、コンデンサ42の放電が正常に行われる状態で判定時間Tjの経過後に想定されるコンデンサ電圧Vよりも高い値であって、バッテリ電圧Vbよりも低い値に設定される。
【0039】
オフ制御は、上述の通り、溶着判定制御での判定の結果、対象コンタクタ21の溶着の可能性があると判定された場合に実施される制御であり、対象コンタクタ21の電磁式コイルの熱膨張に起因する一過性の短絡の解消を試みる制御である。オフ制御において、ECU10は、所定のオフ時間Toff(一定時間)のあいだ、対象コンタクタ21への制御信号の送信を禁止(停止)することで、対象コンタクタ21の電磁式コイルの励磁を禁止する。ECU10は、このように対象コンタクタ21への通電(励磁側の通電)をオフ時間Toffのあいだ禁止することで、対象コンタクタ21の電磁式コイルを冷まし、一過性の短絡の解消を図る。なお、ここで、オフ時間Toffは、対象コンタクタ21の熱膨張した電磁式コイルが外気温と同等の温度まで冷めるのにかかる時間であり、例えば、1~2時間に設定される。
【0040】
オフ制御の実施時間は、溶着判定制御や後述する振動制御及び等電圧化制御に比べて長いことから、オフ制御の実施中に、上記の走行開始を要求する開始信号が入力される可能性がある。本実施形態のECU10は、オフ制御の実施中、第二コンタクタ22及びプリチャージコンタクタ23をオン状態に維持し、開始信号が入力されたらオフ制御を中断する。つまり、ECU10は、上記のように第二コンタクタ22及びプリチャージコンタクタ23を制御することで、オフ制御中断後の車両1の速やかな走行を可能にする。さらに、オフ制御後の溶着判定制御を効率良く実施できる。なお、ECU10は、オフ制御の実施中、放電スイッチ44をオフ状態に制御する。
【0041】
さらに、本実施形態のECU10は、オフ制御の実施中、補機バッテリ6のSOCが所定の下限値TH以下となった場合に、DCDCコンバータ7を起動して、補機バッテリ6を充電する。ここで、下限値THは、0よりも大きい値であって、少なくとも高電圧回路の使用開始時に車載の各種電装品の起動に必要な電力を出力可能な値に設定される。ECU10は、このように制御することでオフ制御の実施中の補機バッテリ6のバッテリ上がりを抑制する。
【0042】
振動制御は、オフ制御後に実施される溶着判定制御での判定の結果、対象コンタクタ21の溶着の可能性があると判定された場合に実施される。振動制御は、上述の通り、対象コンタクタ21のずれに起因する一過性の短絡の解消を試みる制御である。すなわち、オフ制御を実施しても短絡解消に至らなかった場合、熱膨張に起因して短絡しているわけではないと考えられるため、別の手法にて、一過性の短絡の解消を試みる。
【0043】
振動制御において、ECU10は、対象コンタクタ21への制御信号を断続的に送信することで、対象コンタクタ21のオンオフを繰り返す対象振動制御を実施する。ECU10は、このように対象振動制御を実施し、対象コンタクタ21へ電気的な制御信号を断続的に与えることで、対象コンタクタ21のずれに起因する一過性の短絡の解消を図る。また、ECU10は、対象コンタクタ21の可動接点を物理的にも振動させることで、対象コンタクタ21内の部品の位置ずれの解消を図る。
【0044】
また、本実施形態のECU10は、振動制御として、プリチャージコンタクタ23への制御信号を断続的に送信することで、プリチャージコンタクタ23のオンオフを繰り返す非対象振動制御を実施する。非対象振動制御は、対象振動制御の実施前に実施される。ECU10は、このように非対象振動制御を実施することで、プリチャージコンタクタ23を振動させて、当該振動により対象コンタクタ21内のずれの解消を図る。プリチャージコンタクタ23の振動は、例えば、高電圧回路に設けられたバスバーやハーネス(いずれも図示せず)を介して対象コンタクタ21に伝達される。また、プリチャージコンタクタ23が対象コンタクタ21に隣接されている場合には、プリチャージコンタクタ23の振動が直接的に対象コンタクタ21に伝達され得る。
【0045】
本実施形態のECU10は、非対象振動制御の実施中に第一コンタクタ21をオン状態に維持し、対象振動制御の実施中にプリチャージコンタクタ23をオン状態に維持する。また、振動制御の実施中、ECU10は、第二コンタクタ22をオン状態に維持する。ECU10は、このように、並列接続された二つのコンタクタ21,23のうちの一方のオンオフを繰り返しているときに、他方をオン状態に維持することで、高電圧回路の電圧(コンデンサ42側の電圧)をバッテリ電圧Vbと同等の値に維持させる。これにより、オンオフを繰り返している一方のコンタクタ21,23が、オンオフ時の突入電流により溶着することが抑制される。さらに、振動制御後の溶着判定制御を効率良く実施できる。なお、振動制御中、ECU10は、放電スイッチ44をオフ状態に制御する。
【0046】
等電圧化制御は、振動制御の前に実施される制御であり、コンデンサ42をバッテリ2と等電圧化する制御である。この等電圧化制御は、万一、溶着判定制御でコンデンサ42の放電が正常に行われていたにも関わらず、ECU10にて「溶着の可能性がある」と誤判定された場合に、後続する振動制御で高電圧回路に突入電流が流れることを防ぐために実施される。上記の誤判定の原因としては、例えば、ECU10のエラーや電圧計45の故障などの電気信号に関する異常が挙げられる。
【0047】
等電圧化制御として、ECU10は、所定の等電圧化時間Tepのあいだ、第二コンタクタ22及びプリチャージコンタクタ23をオン状態に制御して第一コンタクタ21をオフ状態に制御するとともに、放電スイッチ44をオフ状態に制御する。等電圧化時間Tepは、コンデンサ42の充電にかかる時間であり、例えば、数百ミリ~1秒に設定される。
【0048】
開始制御は、上述のように、オフ制御や振動制御の中断後に、車両1を走行可能状態とする制御である。開始制御として、ECU10は、第二コンタクタ22とプリチャージコンタクタ23に制御信号を出力することでオン状態とするとともに放電スイッチ44をオフ状態とし、そこからわずかに後行して第一コンタクタ21に制御信号を出力する。また、ECU10は、プリチャージコンタクタ23をオン状態としてからスタートアップ時間Tsuの経過後に、プリチャージコンタクタ23への制御信号を停止することでオフ状態とする。これにより、インバータ4及び駆動用モータ3が駆動可能な状態、すなわち、車両1が走行可能状態となる。
【0049】
なお、ECU10は、オフ制御や振動制御の実施中に、外部充電口5に外部充電器の充電ガンが接続された信号を接続検出センサ51から受信した場合にも、オフ制御や振動制御を中断し、上述の開始制御を実施してもよい。ECU10が、開始制御を実施することで、高電圧回路が外部充電器からバッテリ2を充電可能な状態となる。
【0050】
[3.制御構成]
図2に示すように、ECU10には、上述の各制御を実施するための要素として、判定部11,オフ制御部12,再判定部13,等電圧化制御部14,振動制御部15,最終判定部16,中断指示部17及び開始制御部(走行制御部)18が設けられる。これらの要素は、ECU10の機能を便宜的に分類して示したものである。これらの各要素は電子回路(ハードウェア)によって実現してもよく、ソフトウェアとしてプログラミングされたものとしてもよいし、あるいはこれらの機能のうちの一部をハードウェアとして設け、他部をソフトウェアとしたものであってもよい。
【0051】
判定部11は、高電圧回路の使用後に上述の溶着判定制御を実施するものである。具体的には、判定部11は、判定時間Tjのあいだ、上述のように各コンタクタ21~23及び放電スイッチ44を制御し、判定時間Tjの経過後、MCU46を介して電圧計45からコンデンサ電圧Vを取得する。判定部11は、取得した電圧Vが判定閾値Vth以下である場合には、対象コンタクタ21は正常であると判定して、全てのコンタクタ21~23をオフ状態とする。一方で、判定部11は、取得した電圧Vが判定閾値Vthよりも高い場合には、対象コンタクタ21の溶着の可能性があると判定して、判定結果をオフ制御部12に伝達する。
【0052】
オフ制御部12は、判定部11から判定結果を受信した場合に、上述のオフ制御を実施するものである。具体的には、オフ制御部12は、上述のように各コンタクタ21~23及び放電スイッチ44を制御する。また、オフ制御装置12は、オフ制御の実施中、BMU61から補機バッテリ6のSOCを取得し、補機バッテリ6のSOCが下限値TH以下となった場合には、DCDCコンバータ7を上述のように制御する。オフ制御部12は、オフ制御の完了後、オフ制御が完了したことを再判定部13に伝達する。また、オフ制御部12は、中断指示部17から中断指示を受信した場合には、上述のオフ制御を中断する。
【0053】
再判定部13は、オフ制御部12からオフ制御の完了の信号を受信した場合に、判定部11と同様に、上述の溶着判定制御を実施するものである。再判定部13は、判定時間Tjの経過後、取得した電圧Vが判定閾値Vth以下である場合には、対象コンタクタ21は正常であると判定して、全てのコンタクタ21~23をオフ状態とする。一方で、再判定部13は、取得した電圧Vが判定閾値Vthよりも高い場合には、対象コンタクタ21の溶着の可能性があると判定して、判定結果を等電圧化制御部14及び振動制御部15に伝達する。
【0054】
等電圧化制御部14は、再判定部13から判定結果を受信した場合に、上述の等電圧化制御を実施するものである。具体的には、等電圧化制御部14は、等電圧化時間Tepのあいだ、上述のように各コンタクタ21~23及び放電スイッチ44を制御し、等電圧化時間Tepの経過後、等電圧化制御が完了したことを振動制御部15に伝達する。
【0055】
振動制御部15は、再判定部13から判定結果を受信し、且つ、等電圧化制御部14から等電圧化制御の完了の信号を受信した場合に、上述の振動制御を実施するものである。具体的には、振動制御部15は、上述の振動制御として、非対象振動制御と対象振動制御とをこの順に実施する。非対象振動制御において、振動制御部15は、プリチャージコンタクタ23のオンオフを所定回数(例えば、数十回)繰り返すとともに、上述のように第一コンタクタ21,第二コンタクタ22及び放電スイッチ44を制御する。また、対象振動制御において、振動制御部15は、第一コンタクタ21のオンオフを所定回数(例えば、数十回)繰り返すとともに、上述のように第二コンタクタ22,プリチャージコンタクタ23及び放電スイッチ44を制御する。振動制御の完了後、振動制御部15は、振動制御が完了したことを最終判定部16に伝達する。また、振動制御部13は、中断指示部17から中断指示を受信した場合には、上述の振動制御を中断する。
【0056】
最終判定部16は、振動制御部15から振動制御の完了の信号を受信した場合に、判定部11及び再判定部13と同様に上述の溶着判定制御を実施するものである。最終判定部16は、判定時間Tjの経過後、取得した電圧Vが判定閾値Vth以下である場合には、対象コンタクタ21は正常であると判定して、全てのコンタクタ21~23をオフ状態とする。一方で、最終判定部16は、取得した電圧Vが判定閾値Vthよりも高い場合には、対象コンタクタ21が溶着故障していると判定する。最終判定部16は、対象コンタクタ21が溶着故障していると判定した場合には、全てのコンタクタ21~23をオフ状態とするとともに、車両1のフェールセーフ処理を実行する。最終判定部16は、フェールセーフ処理の実行として、車両1を走行可能状態とすることを禁止してもよく、車載の図示しない警報装置を作動させてもよい。
【0057】
中断指示部17は、オフ制御の中断指示又は振動制御の中断指示を、オフ制御部12又は振動制御部15に伝達するものである。中断指示部17は、オフ制御の実施中に上記の開始信号を受信した場合には、オフ制御部12に中断指示を伝達し、振動制御の実施中に上記の開始信号を受信した場合には、振動制御部15に中断指示を伝達する。なお、本実施形態の中断指示部17は、オフ制御又は振動制御の実施中に、外部充電口5に外部充電器の充電ガンが接続された信号を受信した場合にも、オフ制御部12又は振動制御部15に中断指示を伝達する。中断指示部17は、中断指示を伝達した場合には、中断指示を伝達したことを示す信号を開始制御部18に伝達する。
【0058】
開始制御部18は、中断指示部17から信号を受信した場合に、上述のように各コンタクタ21~23及び放電スイッチ44を制御することで開始制御を実施するものである。また、開始制御部18は、開始制御の完了後、ユーザの操作に応じて、MCU46を介しインバータ回路41を制御することで駆動用モータ3を駆動させて、車両1を走行させる。
【0059】
[4.フローチャート]
図3及び図4は、ECU10で実施される高電圧回路の使用後の処理を説明するためのフローチャート例である。このフローチャートは、高電圧回路の使用後、例えば、主電源スイッチ8がオフ操作された場合、又は、外部充電器が外部充電口5から外された場合に実施される。
【0060】
ステップS1では、上述の溶着判定制御が実施されてステップS2に進む。ステップS2では、対象コンタクタ21の溶着の可能性があるか否かが判定される。ステップS2において、対象コンタクタ21の溶着の可能性がないと判定された場合には、対象コンタクタ21は正常であると判定されて、このフローを終了する。一方で、ステップS2で対象コンタクタ21の溶着の可能性があると判定された場合には、ステップS3に進む。
【0061】
ステップS3では、上述のオフ制御の実施として、図4のステップS21~30の処理が実施される。具体的には、ステップS21では、オフ制御の開始としてECU10に内蔵されたタイマのカウントTが開始され、ステップS22に進み、第一コンタクタ21(Pコンタクタ)がオフ状態とされるとともに第二コンタクタ22(Nコンタクタ)及びプリチャージコンタクタ23(Preコンタクタ)がオン状態とされる。これにより、第一コンタクタ21への通電が禁止される。続くステップS23では、車両1の走行開始を要求する開始信号を受信したか否かが判定され、開始信号を受信していない場合は、続くステップS24において、外部充電口5に外部充電器の充電ガンが接続されたか否かが判定される。
【0062】
ステップS23において、車両1の走行開始を要求する開始信号を受信したと判定された場合、又は、ステップS24において、外部充電口5に外部充電器の充電ガンが接続されたと判定された場合には、ステップS28に進み、オフ制御が中断される。そして、ステップS29に進み、上述の開始制御が実施されて、このフローを終了する。
【0063】
一方で、開始信号の受信がなく、且つ、充電ガンが接続されていない場合は、ステップS23及びステップS24の双方において不成立であるため、ステップS25に進み、補機バッテリ6のSOCが下限値TH以下となったか否かが判定される。ステップS25において、補機バッテリ6のSOCが下限値THよりも高いと判定された場合には、ステップS27に進む。一方で、ステップS25において、補機バッテリ6のSOCが下限値TH以下と判定された場合には、ステップS26でDCDCコンバータ7が起動されてからステップS27に進む。
【0064】
ステップS27では、カウントTがオフ時間Toff以上であるか否かが判定される。ステップS27において、カウントTがオフ時間Toff未満であると判定された場合には、ステップS23に戻り、ステップS27の判定が成立するまで、ステップS23~26の処理が繰り返される。そして、ステップS27の判定が成立すると、ステップS30でカウントTがリセットされて、この処理をリターンし、図3のステップS4に進む。
【0065】
オフ制御完了後のステップS4では、再度、溶着判定制御が実施される。そして、ステップS5に進み、対象コンタクタ21の溶着の可能性があるか否かが再度判定される。ステップS5において、対象コンタクタ21の溶着の可能性がないと判定された場合には、電磁式コイルの熱膨張に起因した一過性の短絡状態が解消されたことで対象コンタクタ21は正常であるものと判定されて、このフローを終了する。一方で、ステップS5で対象コンタクタ21の溶着の可能性があると判定された場合には、ステップS6に進む。
【0066】
ステップS6では、上述の等電圧化制御が実施され、その後のステップS7では、上述の振動制御が開始され、ステップS8に進む。ステップS8では、車両1の走行開始を要求する開始信号を受信したか否かが判定され、開始信号を受信していない場合は、続くステップS9において、外部充電口5に外部充電器の充電ガンが接続されたか否かが判定される。充電ガンが接続されていない場合は、ステップS8及びステップS9の双方において不成立であるため、ステップS10に進み、振動制御が完了したか否かが判定される。ステップS10において、振動制御が完了していないと判定された場合には、ステップS8に戻り、ステップS10において振動制御が完了した判定されるまで、ステップS8,S9の判定が繰り返される。
【0067】
一方で、ステップS8において、車両1の走行開始を要求する開始信号を受信したと判定された場合、又は、ステップS9において、外部充電口5に外部充電器の充電ガンが接続されたと判定された場合には、ステップS11に進み、振動制御が中断される。そして、ステップS12に進み、上述の開始制御が実施されて、このフローを終了する。
【0068】
ステップS8及びステップS9のいずれも成立することなく、振動制御が完了すると、ステップS10が成立してステップS13に進む。ステップS13では、最後の溶着判定制御が実施される。そして、ステップS14に進み、対象コンタクタ21の溶着の可能性があるか否かが最終判定される。ステップS14において、対象コンタクタ21の溶着の可能性がないと判定された場合には、ずれに起因した一過性の短絡状態が解消されたことで対象コンタクタ21は正常であると判定されて、このフローを終了する。一方で、ステップS14で対象コンタクタ21の溶着の可能性があると最終判定された場合には、対象コンタクタ21が溶着故障しているものと判定されて、ステップS15で車両1のフェールセーフ処理が実施されて。このフローを終了する。
【0069】
[5.タイムチャート]
図5を参照して、ECU10の作用を説明する。図5のタイムチャートの横軸は時間である。図5では、時刻t0で、例えば、主電源スイッチ8がオフ操作されたことに伴い高電圧回路の使用が終了したものとする。
【0070】
ECU10では、時刻t0で高電圧回路の使用が終了したことに伴い、時刻t1において、高電圧回路使用後のはじめの処理として、時刻t1から判定時間Tjが経過するまでのあいだ、溶着判定制御(P溶着判定)が実施される。溶着判定制御では、正極側の第一コンタクタ21(Pコンタクタ)及びプリチャージコンタクタ23(Preコンタクタ)がオフ状態に制御され、第二コンタクタ22(Nコンタクタ)がオン状態に制御される。
【0071】
このとき、第一コンタクタ21及びプリチャージコンタクタ23の双方が短絡していなければ、図5に破線で示すように、コンデンサ電圧Vは、コンデンサ42の放電により時刻t1から判定時間Tj経過後の時刻t2にかけて徐々に低下して、判定閾値Vthを下回る。ECU10では、時刻t2の時点でコンデンサ電圧Vが判定閾値Vth以下となっていることを以て、対象コンタクタ21が正常であると判定される。
【0072】
一方で、第一コンタクタ21及びプリチャージコンタクタ23の少なくとも一方が短絡している場合には、コンデンサ42が放電されないため、図5に実線で示すように、コンデンサ電圧Vが時刻t1から時刻t2にかけて判定閾値Vthよりも下回ることなく、バッテリ電圧Vbの近傍で維持される。ECU10では、時刻t2の時点でコンデンサ電圧Vが判定閾値Vthよりも高いことを以て、対象コンタクタ21の溶着の可能性があると判定される。
【0073】
対象コンタクタ21の溶着の可能性があると判定された場合、ECU10では、時刻t2からオフ時間Toffが経過するまでのあいだ、オフ制御が実施される。オフ制御では、オフ時間Toffが経過するまでのあいだ、第一コンタクタ21がオフ状態に制御されることで、第一コンタクタ21への通電が禁止される。これにより、対象コンタクタ21の電磁式コイルが熱膨張していた場合には、当該電磁式コイルが、時間が経つにつれて外気温と同等の温度まで放熱されて縮小する。よって、熱膨張した電磁式コイルによって阻害されていた可動接点の変位が許容され、熱膨張に起因した短絡の解消が図られる。
【0074】
また、オフ制御では、第二コンタクタ22及びプリチャージコンタクタ23がオン状態に制御される。これにより、コンデンサ電圧Vは、図5に実線で示すように、バッテリ電圧Vbの近傍で維持される。よって、後続の溶着判定制御を効率良く実施できる。
【0075】
さらに、オフ制御では、補機バッテリ6のSOCが所定の下限値TH以下となった場合に、DCDCコンバータ7が起動されて、補機バッテリ6の充電が実施される。これにより、オフ制御の実施中の補機バッテリ6のバッテリ上がりが抑制される。さらに、上述のように、本実施形態のオフ制御では、第二コンタクタ22及びプリチャージコンタクタ23がオン状態に制御されることで、コンデンサ電圧Vがバッテリ電圧Vbの近傍に維持されていることから、速やかに補機バッテリ6の充電を開始することができる。
【0076】
オフ制御の実施後の時刻t3において、ECU10では、再度溶着判定制御が実施される。このとき、オフ制御の実施によって、対象コンタクタ21の短絡が解消されていれば、図5に破線で示すように、コンデンサ電圧Vは、時刻t3から判定時間Tj経過後の時刻t4にかけて徐々に低下する。ECU10では、時刻t4の時点でコンデンサ電圧Vが判定閾値Vth以下となっていることを以て、対象コンタクタ21が正常であると判定される。
【0077】
一方で、オフ制御を実施してもなお、コンデンサ電圧Vが判定閾値Vth以下とならない場合には、第一コンタクタ21及びプリチャージコンタクタ23の少なくとも一方が短絡しており、図5に実線で示すように、コンデンサ電圧Vがバッテリ電圧Vbの近傍で維持される。このため、ECU10では、時刻t4の時点でコンデンサ電圧Vが判定閾値Vthよりも高いことを以て、対象コンタクタ21の溶着の可能性があると判定される。
【0078】
時刻t4において対象コンタクタ21の溶着の可能性があると判定された場合、ECU10では、時刻t4から等電圧化時間Tepが経過するまでのあいだ、等電圧化制御が実施される。等電圧化制御では、第一コンタクタ21のオフ状態及び第二コンタクタ22のオン状態が維持されたまま、プリチャージコンタクタ23がオン状態に制御される。
【0079】
上述の通り、第一コンタクタ21及びプリチャージコンタクタ23の少なくとも一方が短絡している場合には、先に実施される溶着判定制御でコンデンサ42が放電されない。このため、コンデンサ電圧Vは時刻t4の時点でバッテリ電圧Vbの近傍で維持されている。よって、図5に実線で示すように、コンデンサ電圧Vは、時刻t4から等電圧化時間Tep経過後の時刻t5にかけて変動することなく、バッテリ電圧Vbの近傍で維持される。
【0080】
一方で、電気信号に関する異常により、時刻t4においてコンデンサ42の実際の電圧Vが0付近の値となっているにも関わらず、ECU10が「溶着の可能性あり」と判定してしまう可能性がある。この場合には、等電圧化制御の実施により、図5に二点鎖線で示すように、コンデンサ電圧Vは、時刻t4から時刻t5にかけてコンデンサ42が充電されることで、バッテリ電圧Vb付近まで充電される。これにより、後続する振動制御の開始時に、高電圧回路に突入電流が流れることが抑制される。
【0081】
等電圧化制御の実施後の時刻t5において、ECU10では、振動制御が開始される。振動制御では、非対象振動制御と対象振動制御とがこの順に実施される。非対象振動制御では、プリチャージコンタクタ23のオンオフが繰り返される。これにより、プリチャージコンタクタ23の振動が第一コンタクタ21に伝達されて、第一コンタクタ21のずれによる短絡の解消が図られる。また、先に実施された溶着判定制御での判定結果がプリチャージコンタクタ23の短絡に起因したものであった場合には、プリチャージコンタクタ23のずれに起因した短絡の解消が図られる。
【0082】
対象振動制御では、第一コンタクタ21のオンオフが繰り返される。このように、対象コンタクタ21へ電気的な制御信号が断続的に与えられることで、対象コンタクタ21のずれに起因する一過性の短絡の解消が図られる。また、第一コンタクタ21内の可動接点が物理的に振動することでも、第一コンタクタ21のずれに起因した短絡の解消が図られる。また、先に実施された溶着判定制御での判定結果がプリチャージコンタクタ23の短絡に起因したものであった場合には、第一コンタクタ21の振動がプリチャージコンタクタ23に伝達されて、プリチャージコンタクタ23のずれに起因した短絡の解消が図られる。
【0083】
また、振動制御では、第二コンタクタ22のオン状態が維持されたまま、非対象振動制御で第一コンタクタ21がオン状態に制御され、対象振動制御でプリチャージコンタクタ23がオン状態に制御される。これにより、コンデンサ電圧Vが、図5に実線で示すように、バッテリ電圧Vbの近傍で維持されるため、オンオフが繰り返される一方のコンタクタ21,23の溶着が抑制されるとともに、後続する溶着判定制御を効率良く実施できる。なお、振動制御では、第一コンタクタ21やプリチャージコンタクタ23のずれだけでなく、各コンタクタ21,22の軽溶着に起因した短絡の解消も図られる。
【0084】
振動制御の実施後の時刻t6において、ECU10では、最後の溶着判定制御が実施される。このとき、振動制御の実施によって、対象コンタクタ21(又はプリチャージコンタクタ23又はその両方)の短絡が解消されていれば、図5に破線で示すように、コンデンサ電圧Vは、時刻t6から判定時間Tj経過後の時刻t7にかけて徐々に低下する。ECU10では、時刻t7の時点でコンデンサ電圧Vが判定閾値Vth以下となっていることを以て、対象コンタクタ21が正常であると判定される。
【0085】
一方で、振動制御を実施してもなお、第一コンタクタ21及びプリチャージコンタクタ23の少なくとも一方が短絡している場合には、図5に実線で示すように、コンデンサ電圧Vがバッテリ電圧Vbの近傍で維持される。このため、ECU10では、時刻t7の時点でコンデンサ電圧Vが判定閾値Vthよりも大きいことを以て、対象コンタクタ21が溶着故障していると判定されて、フェールセーフ処理が実施される。
【0086】
[6.効果]
(1)上述したECU10によれば、高電圧回路の使用後、対象コンタクタ21の溶着の可能性がある場合に、オフ制御が実施されるため、対象コンタクタ21の電磁式コイルの熱膨張による一過性の短絡の解消を図ることができる。また、このように、高電圧回路の使用後に、対象コンタクタ21の溶着の可能性の有無を判定するだけでなく、オフ制御を実施して対象コンタクタ21の一過性の短絡の解消を図ることで、高電圧回路の使用後の活線露出を防ぐことができる。さらには、不要なフェールセーフによって、車両1が走行できなくなる状態を防ぐことができる。また、オフ制御では、対象コンタクタ21への通電をオフ時間Toffのあいだ禁止することで当該一過性の短絡の解消が図られることから、新たな装置や部品などを設ける必要がなく、車両1の複雑化やコストアップを抑制することができる。
【0087】
(2)オフ制御の実施中、第二コンタクタ22及びプリチャージコンタクタ23は、オン状態に制御される。これにより、オフ制御の実施中、高電圧回路は閉回路状態となり、バッテリ電圧Vb近傍に維持される。このため、オフ制御の実施中に補機バッテリ6を充電する必要が生じた場合に、コンデンサ42を再充電させる処理を要さず、DCDCコンバータ7を起動させるだけで、素早く補機バッテリ6を充電することができる。また、オフ制御の中断後に、車両1を素早く走行可能な状態に復帰させることができる。加えて、オフ制御の実施後に再度溶着判定が実施される場合にも、コンデンサ42を再充電させる処理が必要なく、効率良く後続の溶着判定制御を実施できる。
【0088】
(3)オフ制御部12は、補機バッテリ6のSOCが下限値TH以下になった場合に補機バッテリ6を充電するため、オフ制御の実施中やオフ制御の完了後のバッテリ上がりを防ぐことができる。特に、本実施形態の各コンタクタ21~23は、上述の通り、補機バッテリ6の電力を利用してオン状態となるため、補機バッテリ6が適宜充電されることでオフ制御を継続できる。
【0089】
(4)上述したECU10によれば、車両1の走行開始を要求する開始信号が受信された場合には、オフ制御が実施中であってもその制御が中断され、開始制御部18により車両1が走行可能状態とされる。これにより、緊急で車両1を動かさなければならない場合やサービスエリアなどで一時的に車両1を停車している場合に、車両1が動かせなくなる事態を回避することができるため、車両1の利便性を向上させることができる。
【0090】
(5)上述したECU10によれば、オフ制御の実施後の溶着判定制御において再度対象コンタクタ21の溶着の可能性があると判定された場合には、振動制御が実施される。これにより、対象コンタクタ21の熱膨張とは異なる理由、すなわち、ずれによる一過性の短絡の解消を図ることができる。また、振動制御に含まれる対象振動制御は、対象コンタクタ21そのものを対象として行われるため、当該一過性の短絡の解消を図るための新たな装置や部品などを設ける必要がなく、車両1の複雑化やコストアップを抑制することができる。
【0091】
[7.変形例]
上述のECU10の構成及びECU10で実施される制御は一例である。高電圧回路の使用後に溶着の可能性の有無が判定される対象コンタクタは、第一コンタクタ21に限らず、第二コンタクタ22やプリチャージコンタクタ23であってもよい。また、ECU10は、高電圧回路の使用後に、高電圧回路に設けられた全てのコンタクタに対して上述の制御を実施してもよい。
【0092】
また、コンタクタ21~23は、バッテリ2を収容するケースの内部及び外部のいずれに配置されていてもよい。プリチャージコンタクタ23は、第二コンタクタ22と並列接続されていてもよい。また、高電圧回路には、第一コンタクタ21及び第二コンタクタ22のそれぞれに並列接続された、二つのプリチャージコンタクタ23が設けられていてもよい。
【0093】
上述のECU10に設けられた要素11~18のうち、再判定部13,等電圧化制御部14,振動制御部15,最終判定部16,中断指示部17及び開始制御部18は省略されてもよい。すなわち、ECU10は、振動制御やオフ制御の実施中にこれらの制御を中断しない構成であってもよく、振動制御を実施しない構成であってもよく、振動制御前に等電圧化制御を実施しない構成であってもよい。例えば、等電圧化制御部14を省略する場合には、再判定部13は、判定結果を振動制御部15のみに伝達し、振動制御部15は、判定結果を受信した場合に上記の振動制御を実施すればよい。なお、溶着の可能性の有無の判定を複数回実施するものでなくてもよい。
【0094】
オフ制御部12は、オフ制御の実施中に補機バッテリ6を充電しないものであってもよい。また、オフ制御の実施中、オフ制御部12は、第二コンタクタ22及びプリチャージコンタクタ23をオフ状態としてもよい。この場合、オフ制御の実施中の第二コンタクタ22及びプリチャージコンタクタ23による補機バッテリ6の電力消費が抑制される。
【符号の説明】
【0095】
1 車両
2 バッテリ
10 ECU(車載制御装置)
11 判定部
12 オフ制御部
15 振動制御部
18 開始制御部(走行制御部)
21 第一コンタクタ(対象コンタクタ)
22 第二コンタクタ
23 プリチャージコンタクタ
24 プリチャージ抵抗器(抵抗器)
42 平滑化コンデンサ(コンデンサ)
Toff オフ時間(一定時間)
【要約】
車載制御装置(10)は、車両に搭載されたバッテリ(2)の高電圧回路を断接する対象コンタクタ(21)の溶着の可能性の有無を高電圧回路の使用後に判定する判定部(11)と、判定部(11)により対象コンタクタ(21)の溶着の可能性があると判定された場合に、対象コンタクタ(21)への通電を一定時間のあいだ禁止するオフ制御を実施するオフ制御部(12)と、を備える。これにより、対象コンタクタ(21)の一過性の短絡状態の解消を図る。
図1
図2
図3
図4
図5