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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-04
(45)【発行日】2023-12-12
(54)【発明の名称】逆入力遮断クラッチ
(51)【国際特許分類】
   F16D 41/08 20060101AFI20231205BHJP
   F16D 63/00 20060101ALI20231205BHJP
【FI】
F16D41/08 A
F16D63/00 R
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2023548186
(86)(22)【出願日】2023-04-20
(86)【国際出願番号】 JP2023015736
【審査請求日】2023-08-09
(31)【優先権主張番号】P 2022079538
(32)【優先日】2022-05-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100140718
【弁理士】
【氏名又は名称】仁内 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100207789
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 良平
(72)【発明者】
【氏名】土肥 永生
(72)【発明者】
【氏名】金子 祥平
(72)【発明者】
【氏名】前田 篤志
【審査官】糟谷 瑛
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2021/172558(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/026794(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 41/08
F16D 43/02-43/26
F16D 51/12
F16D 63/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内壁面を有する固定部と、
入力軸と、前記入力軸の中心軸を挟んで第1径方向に互いに離間して配された第1及び第2入力側係合部と、を有する入力部材と、
前記入力軸と同軸に配置された出力軸と、前記第1径方向において前記第1入力側係合部と前記第2入力側係合部との間に配された出力側係合部と、を有する出力部材と、
その位置及び/又は姿勢が変化可能に配された第1及び第2係合子であり、前記入力部材に回転トルクが入力されると前記回転トルクが前記第1及び第2係合子の少なくとも1つを介して前記出力部材に伝達され、前記出力部材に回転トルクが入力されると前記回転トルクの少なくとも一部が前記第1及び第2係合子の少なくとも1つに伝わり前記第1及び第2係合子の少なくとも1つと前記固定部の前記内壁面との間の接触によって遮断される、前記第1及び第2係合子と、
を備え、
前記第1入力側係合部は、前記入力部材に前記回転トルクが入力したときに、前記第1係合子と接触可能な第1接触部及び第2接触部であり、前記第1径方向と直交する第2径方向に互いに離間して配された、前記第1接触部及び前記第2接触部を有し、
前記第2入力側係合部は、前記入力部材に前記回転トルクが入力したときに、前記第2係合子と接触可能な第3接触部及び第4接触部であり、前記第2径方向に互いに離間して配された、前記第3接触部及び前記第4接触部を有し、
前記出力側係合部は、前記出力部材に前記回転トルクが入力したときに、前記第1係合子と接触可能な第5接触部及び第6接触部であり、前記第2径方向に互いに離間して配された、前記第5接触部及び前記第6接触部を有し、
前記出力側係合部は、前記出力部材に前記回転トルクが入力したときに、前記第2係合子と接触可能な第7接触部及び第8接触部であり、前記第2径方向に互いに離間して配された、前記第7接触部及び前記第8接触部を有し、
前記第1接触部、前記第2接触部、前記第3接触部、及び前記第4接触部のうちの2つを含む第1群と他の2つを含む第2群とは、前記中心軸を通りかつ前記第1径方向と平行な第1基準線、又は、前記中心軸を通りかつ前記第2径方向と平行な第2基準線を間に挟んで互いに離間して配置され、
前記第1群の2つの接触部の各々は、前記第5接触部、前記第6接触部、前記第7接触部、及び前記第8接触部のうちの2つに比べて前記第1基準線に近く配置され、
前記第2群の2つの接触部の各々は、前記第5接触部、前記第6接触部、前記第7接触部、及び前記第8接触部のうちの別の2つに比べて前記第1基準線から遠く配置される、
逆入力遮断クラッチ。
【請求項2】
前記第1接触部、前記第2接触部、前記第3接触部、前記第4接触部、前記第5接触部、前記第6接触部、前記第7接触部、及び前記第8接触部は、前記第1基準線からの前記第2径方向における距離として、第1距離、第2距離、第3距離、第4距離、第5距離、第6距離、第7距離、及び第8距離をそれぞれ有し、
(a)前記第1距離及び前記第2距離が、前記第5距離及び前記第6距離に比べてそれぞれ小さく、前記第3距離及び前記第4距離が、前記第7距離及び前記第8距離に比べてそれぞれ大きい、又は、(b)前記第1距離及び前記第3距離が、前記第5距離及び前記第7距離に比べてそれぞれ小さく、前記第2距離及び前記第4距離が、前記第6距離及び前記第8距離に比べてそれぞれ大きい、
請求項1に記載の逆入力遮断クラッチ。
【請求項3】
前記第1係合子は、前記出力部材に前記回転トルクが入力したときに、前記固定部の前記内壁面と接触可能な第9接触部及び第10接触部であり、前記第2径方向に互いに離間して配された、前記第9接触部及び前記第10接触部を有し、
前記第2係合子は、前記出力部材に前記回転トルクが入力したときに、前記固定部の前記内壁面と接触可能な第11接触部及び第12接触部であり、前記第2径方向に互いに離間して配された、前記第11接触部及び前記第12接触部を有し、
前記第1基準線及び前記第2基準線で分けられる4つの象限の少なくとも1つにおいて、前記出力部材に前記回転トルクが入力した際、前記第2基準線と、前記第9接触部、前記第10接触部、前記第11接触部、及び前記第12接触部のうちの1つと前記中心軸とを結ぶ仮想直線との間の領域に、前記第5接触部、前記第6接触部、前記第7接触部、及び前記第8接触部のうちの1つが配置される、
請求項1又は2に記載の逆入力遮断クラッチ。
【請求項4】
前記出力部材に前記回転トルクが入力した際、前記4つの象限のうちの互いに対角の位置関係にある2つの象限の各々において、前記第2基準線と前記仮想直線との間の領域に、前記第5接触部、前記第6接触部、前記第7接触部、及び前記第8接触部のうちの1つが配置される、
請求項3に記載の逆入力遮断クラッチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、逆入力遮断クラッチに関する。
本願は、2022年5月13日に出願された特願2022-079538号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
逆入力遮断クラッチは、駆動源などの入力側機構に接続される入力部材と、減速機構などの出力側機構に接続される出力部材とを備えており、入力部材に入力される回転トルクを出力部材に伝達するのに対し、出力部材に逆入力される回転トルクを完全に遮断して入力部材に伝達しないかまたはその一部のみを入力部材に伝達して残部を遮断する機能を有する。
【0003】
逆入力遮断クラッチは、出力部材に逆入力される回転トルクを遮断する機構の相違により、ロック式とフリー式に大別される。ロック式の逆入力遮断クラッチは、出力部材に回転トルクが逆入力された際に、出力部材の回転を防止する機構を備える。一方、フリー式の逆入力遮断クラッチは、出力部材に回転トルクが入力された際に、出力部材を空転させる機構を備える。ロック式の逆入力遮断クラッチとフリー式の逆入力遮断クラッチとのいずれを使用するかについては、逆入力遮断クラッチを組み込む装置の用途などによって適宜決定される。
【0004】
特許文献1(国際公開2019/026794号パンフレット)には、ロック式の逆入力遮断クラッチが記載されている。この逆入力遮断クラッチは、被押圧部材と、入力部材と、出力部材と、1対の係合子とを備える。前記被押圧部材は、内周面に被押圧面を有する。前記入力部材は、前記被押圧面の径方向内側に配置された1対の入力側係合部を有し、前記被押圧面と同軸に配置されている。前記出力部材は、前記被押圧面の径方向内側において1対の前記入力側係合部よりも径方向内側に配置された出力側係合部を有し、前記被押圧面と同軸に配置されている。前記係合子は、前記被押圧面に対向し、かつ、周方向に互いに離隔した1対の押圧面と、前記入力側係合部と係合可能な入力側被係合部と、前記出力側係合部と係合可能な出力側被係合部とを有し、前記被押圧面に対する遠近方向である第1方向の移動を可能に配置されている。この逆入力遮断クラッチでは、前記入力側被係合部は、通孔により構成されている。
【0005】
この逆入力遮断クラッチにおいて、前記入力部材に回転トルクが入力されると、前記入力側係合部が前記入力側被係合部に係合することに基づいて、前記係合子が前記被押圧面から離れる方向に移動し、前記出力側被係合部が前記出力側係合部に係合することで、前記入力部材に入力された回転トルクが前記出力部材に伝達される。一方、前記出力部材に回転トルクが逆入力されると、前記出力側被係合部に前記出力側係合部が係合することに基づいて、前記係合子が前記被押圧面に近づく方向に移動し、1対の前記押圧面が前記被押圧面に押し付けられ、1対の前記押圧面が前記被押圧面に摩擦係合される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開第2019/026794号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の態様は、安定した性能を有し、製造コストの抑制に有利な逆入力遮断クラッチを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様にかかる逆入力遮断クラッチは、内壁面を有する固定部と、入力軸と、入力部材と、出力部材と、第1及び第2係合子と、を備える。前記入力部材は、前記入力軸の中心軸を挟んで第1径方向に互いに離間して配された第1及び第2入力側係合部と、を有する。出力部材は、前記入力軸と同軸に配置された出力軸と、前記第1径方向において前記第1入力側係合部と前記第2入力側係合部との間に配された出力側係合部と、を有する。前記第1及び第2係合子は、その位置及び/又は姿勢が変化可能に配される。前記入力部材に回転トルクが入力されると前記回転トルクが前記第1及び第2係合子の少なくとも1つを介して前記出力部材に伝達され、前記出力部材に回転トルクが入力されると前記回転トルクの少なくとも一部が前記第1及び第2係合子の少なくとも1つに伝わり前記第1及び第2係合子の少なくとも1つと前記固定部の前記内壁面との間の接触によって遮断される。前記第1入力側係合部は、前記入力部材に前記回転トルクが入力したときに、前記第1係合子と接触可能な第1接触部及び第2接触部であり、前記第1径方向と直交する第2径方向に互いに離間して配された、前記第1接触部及び前記第2接触部を有する。前記第2入力側係合部は、前記入力部材に前記回転トルクが入力したときに、前記第2係合子と接触可能な第3接触部及び第4接触部であり、前記第2径方向に互いに離間して配された、前記第3接触部及び前記第4接触部を有する。前記出力側係合部は、前記出力部材に前記回転トルクが入力したときに、前記第1係合子と接触可能な第5接触部及び第6接触部であり、前記第2径方向に互いに離間して配された、前記第5接触部及び前記第6接触部を有する。前記出力側係合部は、前記出力部材に前記回転トルクが入力したときに、前記第2係合子と接触可能な第7接触部及び第8接触部であり、前記第2径方向に互いに離間して配された、前記第7接触部及び前記第8接触部を有する。前記第1接触部、前記第2接触部、前記第3接触部、及び前記第4接触部のうちの2つを含む第1群と他の2つを含む第2群とは、前記中心軸を通りかつ前記第1径方向と平行な第1基準線、又は、前記中心軸を通りかつ前記第2径方向と平行な第2基準線を間に挟んで互いに離間して配置される。前記第1群の2つの接触部の各々は、前記第5接触部、前記第6接触部、前記第7接触部、及び前記第8接触部のうちの2つに比べて前記第1基準線に近く配置される。前記第2群の2つの接触部の各々は、前記第5接触部、前記第6接触部、前記第7接触部、及び前記第8接触部のうちの別の2つに比べて前記第1基準線から遠く配置される。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、安定した性能を有し、製造コストの抑制に有利な逆入力遮断クラッチを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、第1実施形態にかかる逆入力遮断クラッチを示し、軸方向に関して出力部材側から見た端面図である。
図2図2は、図1のA-A断面図である。
図3図3は、図2のB-B断面図である。
図4図4は、逆入力遮断クラッチを示す分解斜視図である。
図5図5は、各部の寸法関係を説明するため、図2のB-B断面を模式的に示す図である。
図6図6は、入力部材に回転トルクが入力された状態を示す、図5と同様の図である。
図7図7は、出力部材に回転トルクが逆入力された状態を示す、図5と同様の図である。
図8図8は、各部の寸法および形状を規制することによる効果を説明するための模式図である。
図9図9は、第2実施形態にかかる逆入力遮断クラッチを模式的に示す図である。
図10図10は、第3実施形態にかかる逆入力遮断クラッチを模式的に示す図である。
図11図11は、第1比較例にかかる逆入力遮断クラッチを示す断面図である。
図12図12は、第2比較例にかかる逆入力遮断クラッチを示す断面図である。
図13図13は、第2距離Dと、ロック解除時または半ロック解除時のピークトルク、および、ロック時または半ロック時の出力部材の戻り量との関係を模式的に示す線図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[第1実施形態]
第1実施形態について、図1図8を用いて説明する。なお、軸方向、径方向および周方向とは、特に断らない限り、逆入力遮断クラッチ1の軸方向、径方向および周方向をいう。本実施形態において、逆入力遮断クラッチ1の軸方向、径方向および周方向は、入力部材3の軸方向、径方向および周方向と一致し、かつ、出力部材4の軸方向、径方向および周方向と一致する。また、軸方向片側とは、入力部材3側(図2の右側)をいい、軸方向他側とは、出力部材4側(図2の左側)をいう。
【0012】
<逆入力遮断クラッチの構造の説明>
一例において、逆入力遮断クラッチ1は、被押圧部材(固定部、固定枠)2と、入力部材3と、出力部材4と、1対の係合子5a、5b(第1係合子5a、第2係合子5b)と、付勢部材6とを備える。逆入力遮断クラッチ1は、入力部材3に入力される回転トルクを出力部材4に伝達するのに対し、出力部材4に逆入力される回転トルクは完全に遮断して入力部材3に伝達しないかまたはその一部のみを入力部材3に伝達して残部を遮断する逆入力遮断機能を有する。出力部材4に入力された回転トルクの少なくとも一部が第1及び第2係合子5a、5bの少なくとも1つに伝わり第1及び第2係合子5a、5bの少なくとも1つと被押圧部材2の内壁面との間の接触によって遮断される。
【0013】
被押圧部材2は、被押圧面(接触面、係合内周面、内壁面)7を含む円筒面状の内周面を有する。被押圧部材2は、ハウジングなど、使用時にも回転しない固定部分に支持固定されて、その回転が拘束される。本例では、被押圧部材2は、軸方向片側に配置された第1素子8と、軸方向他側に配置された第2素子9とを、複数本の結合ボルト10により結合することで、全体として中空円盤状に構成されている。
【0014】
第1素子8は、円筒状の第1大径筒部11と、円筒状の第1小径筒部12と、中空円形平板状の第1側板部13と、フランジ部14とを備える。
【0015】
第1大径筒部11は、内周面に被押圧面7を有する。被押圧面7は、第1素子8の中心軸を中心とする円筒面により構成されている。
【0016】
第1大径筒部11は、フランジ部14よりも軸方向他側に位置する部分である軸方向他側の端部の外周面に、内径側嵌合面15を有する。内径側嵌合面15は、第1素子8の中心軸を中心とする円筒面により構成されている。
【0017】
第1小径筒部12は、第1大径筒部11の軸方向片側に、第1大径筒部11と同軸に配置されている。第1小径筒部12は、内周面の軸方向他側の端部から中間部にかけての部分に、第1軸受嵌合面16を有する。第1軸受嵌合面16は、第1素子8の中心軸を中心とする円筒面により構成されている。すなわち、被押圧面7と内径側嵌合面15と第1軸受嵌合面16とは、互いに同軸に配置されている。
【0018】
第1側板部13は、軸方向から見て中空円形の端面形状を有し、第1大径筒部11の軸方向片側の端部と第1小径筒部12の軸方向他側の端部とを接続する。すなわち、第1側板部13の径方向外側の端部が第1大径筒部11の軸方向片側の端部に接続され、かつ、第1側板部13の径方向内側の端部が第1小径筒部12の軸方向他側の端部に接続されている。
【0019】
フランジ部14は、第1大径筒部11の軸方向中間部から径方向外側に向けて突出している。フランジ部14は、周方向複数箇所に、軸方向に貫通する通孔を有する。本例では、フランジ部14は、周方向8箇所に、軸方向に貫通する通孔を有する。
【0020】
第2素子9は、円筒状の第2大径筒部17と、円筒状の第2小径筒部18と、中空円形平板状の第2側板部19と、複数個の取付部20とを備える。
【0021】
第2大径筒部17は、軸方向片側部分の内周面に、外径側嵌合面21を有する。外径側嵌合面21は、第2素子9の中心軸を中心とする円筒面により構成されている。外径側嵌合面21は、第1素子8の内径側嵌合面15に対して、がたつきなく嵌合することが可能な内径寸法を有する。
【0022】
また、第2大径筒部17は、第1素子8の通孔と整合する周方向複数箇所に、軸方向片側の端面に開口するねじ孔を有する。本例では、第2大径筒部17は、第1素子8に備えられた8個の通孔と整合する周方向8箇所に、軸方向片側の端面に開口するねじ孔を有する。
【0023】
第2小径筒部18は、第2大径筒部17の軸方向他側に、第2大径筒部17と同軸に配置されている。第2小径筒部18は、内周面の軸方向片側の端部から中間部にかけての部分に、第2軸受嵌合面22を有する。第2軸受嵌合面22は、第2素子9の中心軸を中心とする円筒面により構成されている。すなわち、外径側嵌合面21と第2軸受嵌合面22とは、互いに同軸に配置されている。
【0024】
第2側板部19は、軸方向から見て中空円形の端面形状を有し、第2大径筒部17の軸方向他側の端部と第2小径筒部18の軸方向片側の端部とを接続する。すなわち、第2側板部19の径方向外側の端部が第2大径筒部17の軸方向他側の端部に接続され、かつ、第2側板部19の径方向内側の端部が第2小径筒部18の軸方向片側の端部に接続されている。
【0025】
それぞれの取付部20は、周方向複数箇所に備えられている。本例では、4個の取付部20が、周方向等間隔に備えられている。取付部20は、第2大径筒部17の外周面から径方向外側に向けて突出する突出部23と、該突出部23を軸方向に貫通する取付孔24とを有する。
【0026】
被押圧部材2は、第1素子8の内径側嵌合面15を、第2素子9の外径側嵌合面21にがたつきなく嵌合させ、かつ、第1素子8のフランジ部14の軸方向他側の側面を、第2素子9の第2大径筒部17の軸方向片側の端面に当接させた状態で、第1素子8に備えられた通孔に挿通した結合ボルト10を、第2素子9に備えられたねじ孔に螺合し、さらに締め付けることにより、第1素子8と第2素子9とを結合固定することによって構成されている。
【0027】
本例では、第1素子8の内径側嵌合面15と第1軸受嵌合面16とが互いに同軸に配置され、かつ、第2素子9の外径側嵌合面21と第2軸受嵌合面22とが互いに同軸に配置されている。このため、内径側嵌合面15と外径側嵌合面21とをがたつきなく嵌合させた、被押圧部材2の組立状態で、第1軸受嵌合面16と第2軸受嵌合面22とは、互いに同軸に配置される。
【0028】
入力部材3は、電動モータなどの入力側機構に接続され、回転トルクが入力される。入力部材3は、基板部25と、入力軸部(入力軸)26と、1対の入力側係合部27a、27b(第1入力側係合部27a、第2入力側係合部27b)とを有する。
【0029】
基板部25は、軸方向から見て略円形の端面形状を有する。
【0030】
入力軸部26は、基板部25の軸方向片側面の中央部から軸方向片側に向けて軸方向に突出している。入力軸部26は、軸方向片側部分に、前記入力側機構の出力部にトルク伝達可能に接続するためのシャンク部28aを有する。本例では、シャンク部28aは、外周面に互いに平行な1対の平坦面を含む二面幅形状を有する。ただし、シャンク部は、前記入力側機構の出力部にトルク伝達可能に接続することができれば、任意の形状とすることができる。
【0031】
本例において、1対の入力側係合部(係合突起)27a、27bは、基板部25の軸方向他側面のうちで回転中心(中心軸)Oから径方向外側に外れた部分から軸方向他側に向けて軸方向に突出している。それぞれの入力側係合部27a、27bは、基板部25の軸方向他側面の径方向反対側2箇所位置に配置され、かつ、入力部材3の径方向に関して互いに離隔している。第1入力側係合部(第1係合突起)27aと第2入力側係合部(第2係合突起)27bとは、入力軸部26の中心軸を挟んで第1径方向に互いに離間して配されている。
【0032】
本例では、それぞれの入力側係合部27a、27bは、軸方向から見て、周方向に対称で、かつ、径方向外側に向かうほど周方向幅が大きくなる略扇形または略台形の端面形状を有する。それぞれの入力側係合部27a、27bの径方向内側面27a1、27b1は、互いに平行な平坦面により構成されている。それぞれの入力側係合部27a、27bの径方向外側面27a2、27b2は、基板部25の外周面に対応する円筒面状の輪郭形状を有する。また、それぞれの入力側係合部27a、27bの1対の周方向側面27a3、27b3は、径方向外側に向かうほど互いに離れる方向に傾斜した平坦面により構成されている。
【0033】
本例では、1対の入力側係合部27a、27bのうちの第1入力側係合部27a(図3および図5図7の上側に示される)の幅寸法(図3および図5の左右方向に関する寸法)が、第2入力側係合部27b(図3および図5図7の下側に示される)の幅寸法よりも小さい。すなわち、軸方向から見た場合に、第1入力側係合部27aの径方向内側面27a1の長さ寸法L27Aが、第2入力側係合部27bの径方向内側面27b1の長さ寸法L27Bよりも小さい(L27A<L27B)。
【0034】
入力部材3は、被押圧部材2の第1素子8の径方向内側に回転自在に支持されている。具体的には、入力軸部26の軸方向他側部分の外周面と、第1素子8の第1軸受嵌合面16との間に第1軸受29を配置することで、入力部材3が被押圧部材2に対し回転自在に支持されている。入力部材3が被押圧部材2に対し回転自在に支持された状態で、入力側係合部27は、被押圧面7の径方向内側に配置されている。
【0035】
出力部材4は、減速機構などの出力側機構に接続され、回転トルクを出力する。出力部材4は、入力部材3と同軸に配置されている。本例では、出力部材4は、出力軸部(出力軸)30と、出力側係合部31とを有する。
【0036】
出力軸部30は、軸方向片側の端部に、径方向外側に向けて突出するフランジ部32を有し、かつ、軸方向他側部分に、前記出力側機構の入力部にトルク伝達可能に接続するためのシャンク部28bを有する。本例では、シャンク部28bは、外周面に互いに平行な1対の平坦面を含む二面幅形状を有する。ただし、シャンク部は、前記出力側機構の入力部にトルク伝達可能に接続することができれば、任意の形状とすることができる。
【0037】
出力側係合部31は、カム機能を有する。出力部材4の回転中心(中心軸)Oから出力側係合部31の外周面までの距離は、周方向に関して一定でない。本例では、出力側係合部31は、軸方向から見て略矩形または略長円形の端面形状を有し、出力軸部30の軸方向片側の端面の中央部から軸方向片側に向けて突出している。出力側係合部31は、第1径方向(短軸方向、図3図5、および図6の上下方向)両側の側面に、互いに平行な1対の平坦面31aを有し、かつ、第2径方向(長軸方向、図3図5、および図6の左右方向)両側の側面に、それぞれが部分円筒面状の1対の凸曲面31bを有する。このため、出力部材4の回転中心Oから出力側係合部31の外周面までの距離は、周方向にわたり一定でない。なお、本例では、1対の凸曲面31bは、出力部材4の回転中心Oを中心とする部分円筒面により構成されている。
【0038】
本例において、出力側係合部31は、出力部材4の回転中心Oを通り、かつ、1対の平坦面31aに直交する仮想平面に対して面対称である。さらに、出力側係合部31は、出力部材4の回転中心Oを通り、かつ、1対の平坦面31aに平行な仮想平面に対して面対称である。出力側係合部31は、1対の入力側係合部27a、27b同士の間部分に配置される。出力側係合部31は、第1径方向(図3図5、および図6の上下方向)において第1入力側係合部27aと第2入力側係合部27bとの間に配されている。また、本例では、出力部材4の回転中心Oに直交する断面において、第1径方向両側の側面である1対の平坦面31aの第2径方向の長さ寸法L31図3図5、および図6の左右方向に関する寸法)は、第1入力側係合部27aの径方向内側面27a1の長さ寸法L27Aよりも大きく、かつ、第2入力側係合部27bの径方向内側面27b1の長さ寸法L27Bよりも小さい(L27A<L31<L27B)。
【0039】
出力部材4は、被押圧部材2の第2素子9の径方向内側に回転自在に支持されている。具体的には、出力軸部30の軸方向片側部分の外周面と、第2素子9の第2軸受嵌合面22との間に第2軸受44を配置することで、出力部材4が被押圧部材2に対し回転自在に支持されている。出力部材4が被押圧部材2に対し回転自在に支持された状態で、出力側係合部31は、被押圧面7の径方向内側に配置されている。
【0040】
1対の係合子5a、5bの各々は、1対の押圧面(接触面、係合外面)33と、入力側被係合部34と、出力側被係合部35とを備える。本例において、それぞれの係合子5a、5bは、軸方向から見て略半円形の端面形状を有し、かつ、幅方向(図5に矢印Bで示す方向(第2径方向))に関して対称な形状を有する。本例において、1対の係合子5a、5bは、説明の便宜上、符号を異ならせているが、実質的に同一の形状を有する。他の例において、1対の係合子5a、5bは、互いに異なる形状を有することができる。
【0041】
それぞれの係合子5a、5bに関して径方向とは、図5に矢印Aで示す方向をいい、それぞれの係合子5a、5bに関して幅方向とは、図5に矢印Bで示す方向をいう。本例では、それぞれの係合子5a、5bに関する径方向が、被押圧面7に対する押圧面33の遠近方向であって、第1方向(第1径方向)に相当し、それぞれの係合子5a、5bに関する幅方向が、第1方向と入力部材3の軸方向との両方に直交する第2方向(第2径方向)に相当する。
【0042】
1対の押圧面33は、被押圧面7に対向する係合子5a、5bの径方向外側面のうち、周方向に関して互いに離隔した2箇所位置に備えられている。一例において、それぞれの押圧面33は、被押圧面7の曲率半径よりも小さい曲率半径を有する部分円筒面状の凸曲面により構成されている。なお、それぞれの係合子5a、5bの径方向外側面のうち、1対の押圧面33から周方向に外れた部分は、軸方向から見た場合に、入力部材3の中心軸Oを中心とし、かつ、1対の押圧面33に接する仮想円よりも、径方向内側に存在している。すなわち、一例において、1対の押圧面33が被押圧面7に当接した状態で、それぞれの係合子5a、5bの径方向外側面のうち、1対の押圧面33から周方向に外れた部分は、被押圧面7に当接しない。
【0043】
一例において、それぞれの押圧面33は、係合子5a、5bのその他の部分よりも被押圧面7に対する摩擦係数が大きい表面性状を有することができる。また、それぞれの押圧面33は、係合子5a、5bのその他の部分(本体)と一体に構成することができる。他の例において、押圧面33は、係合子5a、5bの本体に設けられた別部材(例えば、貼着や接着などにより本体に固定された摩擦材)の表面に形成することができる。
【0044】
入力側被係合部34は、係合子5a、5bの幅方向中央部の径方向中間部に備えられている。本例では、入力側被係合部34は、軸方向から見て略弓形の開口形状を有し、かつ、係合子5a、5bの幅方向中央位置の径方向中間部を軸方向に貫通する貫通孔により構成され、貫通孔に面した内面を有する。入力側被係合部34の貫通孔は、入力側係合部27a、27bを緩く挿入できる大きさを有する。入力側被係合部34の内側に入力側係合部27a、27bを挿入した状態で、入力側係合部27a、27bと入力側被係合部34の内面との間には、係合子5a、5bの幅方向および径方向にそれぞれ隙間が存在する。このため、入力側係合部27は、入力側被係合部34に対し、入力部材3の回転方向に関する変位が可能である。係合子5a、5bは、その位置及び/又は姿勢が変化可能に配されている。例えば、入力側被係合部34は、入力側係合部27a、27bに対し、係合子5a、5bの径方向の変位が可能である。本例では、入力側被係合部34は、径方向外側を向いた面に、平行な平坦面34aを有し、かつ、径方向内側を向いた面に、部分円筒面状の凹曲面34bを有する。
【0045】
他の例において、入力側被係合部は、係合子の軸方向片側面にのみ開口する有底孔により構成することができる。別の例において、入力側被係合部は、係合子の径方向外側面に開口する切り欠きにより構成することができる。
【0046】
出力側被係合部35は、係合子5a、5bの径方向内側面の幅方向中央部に備えられている。本例では、出力側被係合部35は、平坦面により構成されている。なお、本例では、出力側被係合部35の幅方向寸法が、出力側係合部31の平坦面31aの幅方向寸法よりも大きい。
【0047】
それぞれの係合子5a、5bは、幅方向に関して出力側被係合部35を挟む2箇所位置に、径方向内側に向けて突出する1対の凸部37を有する。
【0048】
本例の逆入力遮断クラッチ1では、係合子5a、5bは、被押圧部材2の内側に、第1方向に並んで配される。第1係合子5aの押圧面33と第2係合子5bの押圧面33とが径方向に関して互いに反対側に向けられている。第1係合子5aの径方向内側面と第2係合子5bの径方向内側面とが互いに対向するように中心軸Oに向けられている。係合子5a、5bの各々が独立して径方向(例えば、第1方向)に移動可能に配置される。軸方向片側に配置した入力部材3の1対の入力側係合部27a、27bが、係合子5a、5bの入力側被係合部34の孔部に軸方向にそれぞれ挿入されている。軸方向他側に配置した出力部材4の出力側係合部31が、係合子5a、5bの出力側被係合部35同士の間の隙間に軸方向に挿入されている。すなわち、出力側係合部31の径方向外側に1対の係合子5a、5bが分かれて配置される。係合子5a、5bの出力側被係合部35の間に、出力側係合部31が挟むように配置されている。
【0049】
本例において、1対の係合子5a、5bが被押圧部材2の径方向内側に配置された状態で、被押圧面7と1対の押圧面33との間部分、および、凸部37の先端面同士の間部分の少なくとも一方に隙間が存在するように、被押圧部材2の内径寸法と係合子5a、5bの径方向寸法が設定されている。
【0050】
付勢部材6は、係合子5a、5bの各々を、径方向外方(第1方向に関して1対の押圧面33を被押圧面7に対して近づける方向)に弾性的に付勢する。本例の逆入力遮断クラッチ1は、2つの付勢部材6を備える。それぞれの付勢部材6は、1対の係合子5a、5bの径方向内側面同士の間に配置されている。一例において、それぞれの付勢部材6は、圧縮コイルばねにより構成されている。それぞれの付勢部材6は、1対の係合子5a、5bの径方向内側面同士の間で、弾性的に圧縮された状態で挟持されている。1対の係合子5a、5bは、2つの付勢部材6により、第1方向に関して互いに離れる方向に弾性的に付勢される。これにより、入力部材3と出力部材4とのいずれにもトルクが加わっていない中立状態において、それぞれの係合子5a、5bの1対の押圧面33が被押圧面7に接触する。他の例において、逆入力遮断クラッチ1は、上記と異なる、機能、形状及び/又は数を有する付勢部材6を有することができる。別の例において、逆入力遮断クラッチ1は、付勢部材6が実質的に省略された構成を有することができる。
【0051】
本例では、それぞれの付勢部材6の長さ方向両側の端部の内側に、それぞれの係合子5a、5bの凸部37が挿入されることで、それぞれの係合子5同士の間からの付勢部材6の脱落が防止されている。
【0052】
さらに本例の逆入力遮断クラッチ1は、入力部材3の1対の入力側係合部27a、27bの先端部(軸方向他側の端部)同士の間にかけ渡されたサポート部材45を備える。
【0053】
サポート部材45は、図4に示すように、軸方向から見て、略長円形または略矩形の端面形状を有する。サポート部材45は、中央部に、出力部材4の出力側係合部31を挿通するための大径通孔39を有し、かつ、長軸方向に関して大径通孔39を挟んだ反対側2箇所に小径通孔40を有する。サポート部材45は、それぞれの小径通孔40を挿通した支持ボルト41が、それぞれの入力側係合部27a、27bの軸方向他側の端面に開口するねじ孔42に螺合されることで、1対の入力側係合部27a、27bにかけ渡されるように支持固定される。他の例において、逆入力遮断クラッチ1は、上記と異なる、機能、形状及び/又は数を有するサポート部材45を有することができる。別の例において、逆入力遮断クラッチ1は、サポート部材45が実質的に省略された構成を有することができる。
【0054】
<逆入力遮断クラッチの動作説明>
本例の逆入力遮断クラッチ1の動作について、図6および図7を用いて説明する。
【0055】
まず、入力部材3に入力側機構から回転トルクが入力された場合を説明する。
【0056】
入力部材3に回転トルクが入力されると、図6に示すように、係合子5a、5bのそれぞれの入力側被係合部34の内側で、入力側係合部27a、27bが、入力部材3の回転方向(周方向、図6の例では反時計方向)に動く(回転する)。この結果、入力側係合部27a、27bの径方向内側面27a1、27b1により、係合子5a、5bのそれぞれの入力側被係合部34の平坦面34aが径方向内側に向けて押圧され、それぞれの係合子5a、5bの押圧面33が、被押圧面7から離れる方向に移動する。つまり、それぞれの係合子5a、5bが、入力部材3との係合に基づき、互いに近づく方向である径方向内側に向けて(図6の上側の係合子5aが下側に向けて、図6の下側の係合子5bが上側に向けて)移動する。これにより、1対の係合子5a、5bの径方向内側面が互いに近づく方向に移動し、それぞれの係合子5a、5bの出力側被係合部35により出力部材4の出力側係合部31が径方向両側から挟持される。例えば、出力側係合部31の平坦面31aが、それぞれの係合子5a、5bの出力側被係合部35と平行になるように、出力部材4が回転し、出力側係合部31と、それぞれの係合子5a、5bの出力側被係合部35とが実質的にがたつきなく係合(当接)する。この結果、入力部材3に入力された回転トルクが、1対の係合子5a、5bを介して、出力部材4に伝達され、該出力部材4から出力される。
【0057】
本例の逆入力遮断クラッチ1では、入力部材3に回転トルクが入力されると、入力部材3の回転方向に関係なく、1対の係合子5a、5bが、被押圧面7から離れる方向にそれぞれ移動する。そして、入力部材3に入力された回転トルクが、1対の係合子5a、5bを介して、出力部材4に伝達される。
【0058】
次に、出力部材4に出力側機構から回転トルクが逆入力された場合を説明する。
【0059】
出力部材4に回転トルクが逆入力されると、図7に示すように、出力側係合部31が、第1係合子5aの出力側被係合部35と第2係合子5bの出力側被係合部35との間において、出力部材4の回転方向(図7の例では時計方向)に回転する。すると、出力側係合部31の外周面のうち、平坦面31aと凸曲面31bとの接続部(例えば、角部)により、1対の係合子5a、5bの出力側被係合部35が径方向外側に向けて押圧され、それぞれの係合子5a、5bが、被押圧面7に近づく方向に移動する。つまり、1対の係合子5a、5bが、出力部材4との係合に基づき、互いに離れる方向である径方向外側に向けて(図7の上側の係合子5aが上側に向けて、図7の下側の係合子5bが下側に向けて)移動する。これにより、それぞれの係合子5a、5bの1対の押圧面33が、被押圧面7に対して摩擦係合する。
【0060】
この結果、出力部材4に逆入力された回転トルクが完全に遮断されて入力部材3に伝達されないか、または、出力部材4に逆入力された回転トルクの一部が入力部材3に伝達され残部が遮断される。それぞれの押圧面33が被押圧面7に対して摺動(相対回転)しないような、1対の係合子5a、5bが出力側係合部31と被押圧部材2との間で突っ張った(挟持して)状態では、出力部材4がロックされ、出力部材4に逆入力された回転トルクが完全に遮断されて入力部材3に伝達されない。それぞれの押圧面33が被押圧面7に対して摺動するような、1対の係合子5a、5bが出力側係合部31と被押圧部材2との間で突っ張った(挟持して)状態では、出力部材4が半ロック(部分ロック)され、出力部材4に逆入力された回転トルクのうちの一部が入力部材3に伝達され残部が遮断される。
【0061】
本例の逆入力遮断クラッチ1では、上記の動作が適切に実行されるように、各構成部材間の隙間の大きさ等が調整されている。特に、1対の係合子5a、5bのそれぞれの押圧面33が被押圧面7に接触したときの構成部材同士の位置関係が適切となるように各構成部材が設計されている。
【0062】
一例において、1対の係合子5a、5bのそれぞれの押圧面33が被押圧面7に接触したときに、入力側係合部27の径方向内側面27a1と入力側被係合部34の内面との間に、所定の隙間が存在する。この場合、出力側係合部31の角部が出力側被係合部35を押圧するとき、それぞれの押圧面33が被押圧面7に向けてさらに押し付けることを許容する隙間が存在する。適切な設計により、出力部材4に回転トルクが逆入力されたときに、それぞれの係合子5a、5bの径方向外側への移動が入力側係合部27a、27bによって阻止されることが防止される。また、それぞれの押圧面33が被押圧面7に接触した後も、それぞれの押圧面33と被押圧面7との接触部に作用する面圧が、出力部材4に逆入力された回転トルクの大きさに応じて変化する。すなわち、出力部材4のロックまたは半ロックが適正に行われる。
【0063】
本例の逆入力遮断クラッチ1では、以下の関係を満たすように、被押圧部材2、入力部材3、出力部材4、および係合子5a、5bの各部の寸法および形状が設定されている。
【0064】
本例の逆入力遮断クラッチ1において、第1入力側係合部27aは、入力部材3に回転トルクが入力したときに、第1係合子5aと接触可能な第1接触部PI1及び第2接触部PI2を有する。第1接触部PI1及び第2接触部PI2は、第1方向(第1径方向)と直交する第2方向(第2径方向)に互いに離間して配されている。第2入力側係合部27bは、入力部材3に回転トルクが入力したときに、第2係合子5bと接触可能な第3接触部PI3及び第4接触部PI4を有する。第3接触部PI3及び第4接触部PI4は、第2方向に互いに離間して配されている。出力側係合部31は、出力部材4に回転トルクが入力したときに、第1係合子5aと接触可能な第5接触部PO1及び第6接触部PO2を有する。第5接触部PO1及び第6接触部PO2は、第2方向に互いに離間して配されている。また、出力側係合部31は、出力部材4に回転トルクが入力したときに、第2係合子5bと接触可能な第7接触部PO3及び第8接触部PO4を有する。第7接触部PO3及び第8接触部PO4は、第2方向に互いに離間して配されている。第1接触部PI1及び第2接触部PI2を含む第1群と、第3接触部PI3及び第4接触部PI4を含む第2群とは、中心軸Oを通りかつ第2方向と平行な第2基準線RL2を間に挟んで互いに離間して配置されている。第1群の2つの接触部PI1、PI2の各々は、第5接触部PO1及び第6接触部PO2に比べて第1基準線RL1に近く配置されている。第2群の2つの接触部PI3、PI4の各々は、第7接触部PO3及び第8接触部PO4に比べて第1基準線RL1から遠く配置されている。
【0065】
本例の逆入力遮断クラッチ1では、入力部材3の回転に伴い、1対の入力側係合部27a、27bと1対の係合子5a、5bの入力側被係合部34とが接触する。図5及び図6に示すように、一方向における入力部材3の回転において、入力部材3の入力側係合部27a、27bと係合子5a、5bとが第1接触部PI1及び第4接触部PI4で接触する。逆方向における入力部材3の回転において、入力側係合部27a、27bと係合子5a、5bとが第2接触部PI2及び第3接触部PI3で接触する。一方、出力部材4の回転に伴い、出力側係合部31と1対の係合子5a、5bの出力側被係合部35とが接触し、各係合子5a、5bの1対の押圧面33が被押圧面7に押し付けられる。図5及び図7に示すように、一方向における出力部材4の回転において、出力部材4の出力側係合部31と係合子5a、5bとが第5接触部PO1及び第8接触部PO4で接触する。逆方向における出力部材4の回転において、出力側係合部31と係合子5a、5bとが第6接触部PO2及び第7接触部PO3で接触する。入力側係合部27a、27bと係合子5a、5bの入力側被係合部34との接触部である2つの入力側接触部PI1、PI4(PI2、PI3)のうちの一方の入力側接触部PI1(PI2)と、入力部材3の回転中心Oとの第2方向に関する距離を距離DI1(DI2)とする。出力側係合部31と係合子5a、5bの出力側被係合部35との接触部である2つの出力側接触部PO1、PO4(PO2、PO3)のうちで第2方向に関して一方の入力側接触部PI1(PI2)に近い側である一方の出力側接触部PO1(PO2)と、出力部材4の回転中心Oとの第2方向に関する距離を距離DO1(DO2)とする。このとき、距離DI1(DI2)は、距離DO1(DO2)よりも小さい(DI1<DO1、DI2<DO2)。2つの入力側接触部PI1、PI4(PI2、PI3)のうちの他方の入力側接触部PI4(PI3)と、入力部材3の回転中心Oとの第2方向に関する距離を距離DI4(DI3)とする。2つの出力側接触部PO1、PO4(PO2、PO3)のうちで第2方向に関して他方の入力側接触部PI4(PI3)に近い側である他方の出力側接触部PO4(PO3)と、出力部材4の回転中心Oとの第2方向に関する距離を距離DO4(DO3)とする。このとき、距離DI4(DI3)は、距離DO4(DO3)よりも大きい(DI4>DO4、DI3>DO3)。
【0066】
第1接触部PI1、第2接触部PI2、第3接触部PI3、第4接触部PI4、第5接触部PO1、第6接触部PO2、第7接触部PO3、及び第8接触部PO4は、第1基準線RL1からの第2方向における距離として、第1距離DI1、第2距離DI2、第3距離DI3、第4距離DI4、第5距離DO1、第6距離DO2、第7距離DO3、及び第8距離DO4をそれぞれ有する。本例において、第1距離DI1及び第2距離DI2が、第5距離DO1及び第6距離DO2に比べてそれぞれ小さく、第3距離DI3及び第4距離DI4が、第7距離DO3及び第8距離DO4に比べてそれぞれ大きい。
【0067】
本例では、出力側係合部31のうち、短軸方向両側の側面である1対の平坦面31aの長さ寸法L31が、1対の入力側係合部27a、27bのうちの第1入力側係合部27a(図3および図5図7の上側)の径方向内側面27a1の長さ寸法L27Aよりも大きく、かつ、1対の入力側係合部27a、27bのうちの第2入力側係合部27b(図3および図5図7の下側)の径方向内側面27b1の長さ寸法L27Bよりも小さい。
【0068】
本例において、中心軸Oに垂直な平面視において、第1基準線RL1に対して、第1接触部PI1及び第3接触部PI3が、第2接触部PI2及び第4接触部PI4とそれぞれ実質的に対称に位置する。また、中心軸Oに垂直な平面視において、第2基準線RL2に対して、第1接触部PI1及び第2接触部PI2が、第3接触部PI3及び第4接触部PI4とそれぞれ実質的に非対称に位置する。また、中心軸Oに垂直な平面視において、第1基準線RL1に対して、第5接触部PO1及び第7接触部PO3が、第6接触部PO2及び第8接触部PO4とそれぞれ実質的に対称に位置する。また、第2基準線RL2に対して、第5接触部PO1及び第6接触部PO2が、第7接触部PO3及び第8接触部PO4とそれぞれ実質的に対称に位置する。
【0069】
本例では、出力側係合部31は、出力部材4の回転中心Oを通り、かつ、1対の平坦面31aに直交する仮想平面に対して面対称であり、かつ、出力部材4の回転中心Oを通り、かつ、1対の平坦面31aに平行な仮想平面に対して面対称である。このため、出力部材4の回転方向にかかわらず、第5距離DO1及び第6距離DO2(1対の係合子5a、5bのうちの第1係合子5a(図3および図5図7の上側)の出力側被係合部35と出力側係合部31との接触部である出力側接触部PO1、O2と、出力部材4の回転中心Oとの第2方向に関する距離)と、第7距離DO3及び第8距離DO4(1対の係合子5a、5bのうちの第2係合子5b(図3および図5図7の下側)の出力側被係合部35と出力側係合部31との接触部である出力側接触部PO3、O4と、出力部材4の回転中心Oとの第2方向に関する距離)とは、互いに等しい。
【0070】
本例において、第1距離DI1と第2距離DI2とが互いに実質的に同じであり、第3距離DI3と第4距離DI4とが互いに実質的に同じであり、第1距離DI1及び第2距離DI2が第3距離DI3及び第4距離DI4とそれぞれ異なる。また、第5距離DO1と第6距離DO2とが互いに実質的に同じであり、第7距離DO3と第8距離DO4とが互いに実質的に同じである。本例において、DI1=DI2<DI3=DI4であり、DO1=DO2=DO3=DO4である。また、DI1=DI2<DO1=DO2であり、DI3=DI4>DO3=DO4である。
【0071】
本例では、図7に示すように、第1係合子5aは、出力部材4に回転トルクが入力したときに、被押圧部材2の内壁面7と接触可能な第9接触部C1及び第10接触部C2を有する。第9接触部C1及び第10接触部C2は、第2方向に互いに離間して配される。第2係合子5bは、出力部材4に回転トルクが入力したときに、被押圧部材2の内壁面7と接触可能な第11接触部C3及び第12接触部C4を有する。第11接触部C3及び第12接触部C4は、第2方向に互いに離間して配される。第1基準線RL1及び第2基準線RL2で分けられる4つの象限(第1象限QR1、第2象限QR2、第3象限QR3、第4象限QR4)の少なくとも1つにおいて、出力部材4に回転トルクが入力した際、第2基準線RL2と、第9接触部C1、第10接触部C2、第11接触部C3、及び第12接触部C4のうちの1つと中心軸Oとを結ぶ仮想直線PLとの間の領域に、第5接触部PO1、第6接触部PO2、第7接触部PO3、及び第8接触部PO4のうちの1つが配置される。図7の例において、出力部材4に回転トルクが入力した際、4つの象限のうちの互いに対角の位置関係にある2つの象限QR2,QR4において、第2基準線RL2と仮想直線PLとの間の領域に、第5接触部PO1、第8接触部PO4がそれぞれ配置される。
【0072】
本例では、図7に示すロック状態では、1対の係合子5a、5bのそれぞれについて、出力部材4に回転トルクが逆入力され、係合子5a、5bのそれぞれの押圧面33が被押圧面7に接触している。このロック状態において、第2象限QR2では、第9接触部(当接部)C1と出力部材4の回転中心Oとを結ぶ仮想直線PLよりも、第1方向に関して出力部材4の回転中心Oに近い側に第5接触部PO1が位置し、第4象限QR4では、第12接触部(当接部)C4と出力部材4の回転中心Oとを結ぶ仮想直線PLよりも、第1方向に関して出力部材4の回転中心Oに近い側に第8接触部PO4が位置する。第9接触部C1は、第2方向に関して出力部材4の回転中心Oよりも第5接触部PO1に近い側の押圧面33(図7の例では、上側の係合子5aの左側の押圧面33)と被押圧面7との当接部である。第12接触部C4は、第2方向に関して出力部材4の回転中心Oよりも第8接触部PO4に近い側の押圧面33(図7の例では、下側の係合子5bの左側の押圧面33)と被押圧面7との当接部である。
【0073】
本例の逆入力遮断クラッチ1によれば、軸方向寸法を短くでき、かつ、部品点数を抑えることができる。
【0074】
すなわち、本例の逆入力遮断クラッチ1において、入力部材3および出力部材4のそれぞれの回転が、係合子5a、5bの径方向内方又は径方向外方の移動に変換される。径方向内方に移動した係合子5a、5bが、該係合子5a、5bの径方向内側に位置する出力部材4に係合する。径方向外方に移動した係合子5a、5bが、該係合子5a、5bの径方向外側に位置する被押圧部材2に押し付けられる。その結果、係合子5a、5bの径方向移動に基づき、入力部材3から出力部材4に回転トルクが伝達可能になる出力部材4のロック解除状態(半ロック解除状態を含む)と、出力部材4の回転が防止されるロック状態または出力部材4の回転が抑制される半ロック状態とが切り替えられる。このような構成は、逆入力遮断クラッチ1の装置全体の軸方向寸法の短縮化に有利である。
【0075】
係合子5a、5bは、入力部材3に入力された回転トルクを出力部材4に伝達する機能と、出力部材4をロックまたは半ロックする機能との両方の機能の作動部材として使用される。このため、逆入力遮断クラッチ1の部品点数の抑制、及び動作の安定に有利である。たとえば、回転トルクを伝達する機能とロックまたは半ロックする機能とで使用される作動部材が異なる場合、ロック解除または半ロック解除のタイミングと回転トルクの伝達開始のタイミングとがずれる可能性がある。例えば、ロック解除または半ロック解除から回転トルクの伝達開始までの間に出力部材に回転トルクが逆入力されると、出力部材が再びロックまたは半ロックされる可能性がある。本例では、複数の機能に共通の作動部材が使用されるため、このような不都合が防止される。
【0076】
また、本例では、入力部材3から係合子5a、5bに作用する力の向きが、出力部材4から係合子5a、5bに作用する力の向きに対して逆向きである。このため、各機能にかかわる要素の設定値が独立的に調整可能である。例えば、両方の力の大小関係が設定され、係合子5a、5bの動きが適切に制御される。このため、出力部材4のロック状態とロック解除状態との切り換え動作を安定して確実に行うことができる。
【0077】
特に本例の逆入力遮断クラッチ1によれば、ロック性能とロック解除性能とを両立させることができる。
【0078】
図11-13に比較例を示す。比較例において、ロック解除性能とロック性能とを両立させる面からは、改良の余地がある。この理由について、図11図13を参照しつつ説明する。なお、ロック解除性能は、1対の押圧面が被押圧面に押し付けられたロック状態または半ロック状態から、1対の押圧面が被押圧面から離れたロック解除状態に切り換えることに関する。ロック性能は、ロック解除状態からロック状態または半ロック状態に切り換えることに関する。以下の説明では、基本的には、半ロック状態を含めてロック状態といい、半ロック解除状態を含めてロック解除状態をいう。
【0079】
図11に示す比較例(逆入力遮断クラッチ100A)において、出力部材101の回転に伴い、係合子102の1対の押圧面103が被押圧部材104の被押圧面105に押し付けられる。また、入力部材106の回転に伴い、入力側係合部107が入力側被係合部108に接触する。入力側係合部107と入力側被係合部108との接触部である入力側接触部Pinと、入力部材106の回転中心Oとの、係合子102の幅方向(図11の左右方向)に関する距離Dは、出力側係合部109と出力側被係合部110との接触部である出力側接触部Poutと、出力部材4の回転中心Oとの、係合子102の幅方向に関する距離Dよりも小さい(D<D)。
【0080】
図11の比較例では、ロック状態において、入力部材106に回転トルクが入力されると、係合子102が、出力側接触部Poutを中心に、入力部材106の回転方向と逆方向に回転する傾向になる。このため、1対の押圧面103がいずれも、被押圧面105に対して実質的に押し付けられないか、または、押圧面103(係合子102の幅方向に関して入力部材106の回転中心Oよりも入力側接触部Pinに近い側の押圧面103)が、比較的小さい押付力で、被押圧面105に押し付けられる。この場合、被押圧面105に対して押圧面103が強く食い込むことが防止され、ロック状態からロック解除状態に切り換える際に、入力部材106の回転トルクが瞬間的に大きくなることが防止される。換言すれば、ロック解除時のピークトルクが小さく抑えられる。すなわち、図11の逆入力遮断クラッチ100Aは、比較的良好なロック解除性能を有する。
【0081】
一方、図12の比較例(逆入力遮断クラッチ100B)は、比較的良好なロック性能を有する。図12に示す逆入力遮断クラッチ100Bでは、係合子102の幅方向に関する、入力側接触部Pinと入力部材106の回転中心Oとの距離である第1距離Dが、係合子102の幅方向に関する、出力側接触部Poutと、出力部材4の回転中心Oとの第2距離Dよりも大きい(D>D)。
【0082】
図12の比較例では、入力部材106に所定方向(たとえば図12の反時計方向)の回転トルクが入力されると、係合子102が、入力側接触部Poutを中心に、前記所定方向に回転する傾向となる。例えば、係合子102の押圧面103(図12の上側の係合子102の右側の押圧面103、および、下側の係合子102の左側の押圧面103)が被押圧面105に近づく(接近する)傾向となる。
【0083】
そのため、図12の比較例では、ロック解除状態(入力部材106に入力された回転トルクが出力部材101に伝達されている)において、それぞれの係合子102の押圧面103が被押圧面105に接近した状態となる傾向にある。この場合、出力部材101に回転トルクが逆入力されると、押圧面103がすぐに被押圧面105に押し付けられる。すなわち、図12の比較例では、ロック解除状態から速やかにロック状態に切り換えることができる。
【0084】
ただし、図12の比較例では、入力部材106に入力された回転トルクが、1対の係合子102を介して、出力部材101に伝達される際に、それぞれの係合子102の一方の押圧面103と被押圧面105との間で引き摺りが発生する可能性がある。これは、トルクの伝達効率の確保に不利である。
【0085】
これらの比較例(逆入力遮断クラッチ100A、100B)において、ロック性能とロック解除性能との両立を目的として、入力側接触部Pinと入力部材106の回転中心Oとの距離Dと、出力側接触部Poutと出力部材101の回転中心Oとの距離Dとを一致させることが想定される。
【0086】
しかしながら、図13に示すように、ロック状態からロック解除状態に切り換わる際のピークトルクの大きさ、および、入力部材106と出力部材101との間の伝達効率は、距離Dが距離Dと等しくなるときに変曲点を示す。すなわち、ピークトルクの大きさ、および、伝達効率は、距離Dと距離Dとが等しくなる点を挟んで大きく傾向が変化する。したがって、ロック性能とロック解除性能とを両立させるためには、出力部材101、係合子102、および入力部材106の形状精度および組立精度を十分に高くする必要がある。これは、逆入力遮断クラッチ100A、100Bの製造コストに関して不利である。
【0087】
図5図7に示す本実施形態では、各構成要素の位置、構成要素の間での相対的な位置関係、構成要素の間での距離に関する相対関係等が前述のように設定されていることから、ロック解除性能と、ロック性能との両立に有利である。
【0088】
まず、ロック状態からロック解除状態への切り換えにおいて、第1係合子5aを介して優れたロック解除性能が実現される。例えば、図6に示すように、ロック状態において、入力部材3に所定方向(図6の反時計方向)の回転トルクが入力されると、第1係合子5aは、該第1係合子5aの出力側被係合部35と出力側係合部31との接触部である出力側接触部(第5接触部PO1)を中心として、入力部材3の回転方向と逆方向に回転する傾向になる。このため、後述する図8(A)に示すように、1対の押圧面33がいずれも、被押圧面7に対して実質的に押し付けられないか、または、図8(C)に示すように、押圧面33(第2方向に関して入力部材3の回転中心Oよりも、第1入力側係合部27aと第1係合子5aの入力側被係合部34との入力側接触部PI1に近い側の押圧面33)が、比較的小さい押付力で、被押圧面7に押し付けられる。この場合、第1係合子5aについて、被押圧面7に対して押圧面33が強く食い込むことが防止される。このため、ロック状態からロック解除状態に切り換える際に、第1係合子5aの押圧面33が、第1方向に関して被押圧面7から遠ざかる方向に、円滑に移動する。したがって、逆入力遮断クラッチ1では、ロック状態からロック解除状態への切り換えが円滑に行われ、良好なロック解除性能が確保される。
【0089】
次に、ロック解除状態からロック状態への切り換えにおいて、第2係合子5bを介して優れたロック性能が実現される。図5に示すように、第2係合子5bにおいて、第3距離DI3及び第4距離DI4が、第7距離DO3及び第8距離DO4に比べてそれぞれ大きく、ロック解除状態において、第2係合子5bの押圧面33の1つが、被押圧面7に接近した状態となる傾向にある。この場合、出力部材4に回転トルクが逆入力されると、押圧面33がすぐに被押圧面7に押し付けられる。、したがって、逆入力遮断クラッチ1では、ロック解除状態から速やかにロック状態に切り換えられ、良好なロック性能が確保される。
【0090】
本例の逆入力遮断クラッチ1において、上述のように、第1係合子5aが良好なロック解除性能に主に関係し、第2係合子5bが良好なロック性能に主に関係する。このため、各機能にかかわる要素の設定値が独立的に調整可能である。すなわち、ロック性能とロック解除性能とが両立した構造が、各種精度(例えば、入力部材3、出力部材4、および1対の係合子5a、5bの形状精度および組立精度など)を過度に高くすることなく実現される。したがって、逆入力遮断クラッチ1は、ロック性能とロック解除性能とが両立するなどの安定した性能を有するとともに、製造コストの抑制に有利である。
【0091】
本例の逆入力遮断クラッチ1において、中心軸Oに垂直な平面視において、第1基準線RL1を境に、第1接触部PI1、第3接触部PI3、第5接触部PO1、第7接触部PO3、第9接触部C1、及び第11接触部C3がX1群(図5及び7における左側グループ)に属し、第2接触部PI2、第4接触部PI4、第6接触部PO2、第8接触部PO4、第10接触部C2、及び第12接触部C4がX2群(図5及び7における右側グループ)に属する。X1群の接触部PI1、PI3、PO1、PO3、C1、C3と、X2群の接触部PI2、PI4、PO2、PO4、C2、C4とが、第1基準線RL1に対して、それぞれ実質的に対称の位置関係を有する。各動作に関連する接触部が第1基準線RL1に対して対称に配置されている。本例の逆入力遮断クラッチ1によれば、入力部材3/出力部材4が第1回転方向に動く場合とその逆の第2回転方向に動く場合とで、実質的に同じ性能が発揮される。
【0092】
さらに本例の逆入力遮断クラッチ1では、図7に示すように、4つの象限(第1象限QR1、第2象限QR2、第3象限QR3、第4象限QR4)の少なくとも1つにおいて、出力部材4に回転トルクが入力した際、第2基準線RL2と、仮想直線PLとの間の領域に、第5接触部PO1、第6接触部PO2、第7接触部PO3、及び第8接触部PO4のうちの1つが配置される。本例において、出力部材4に回転トルクが入力した際、互いに対角の位置関係にある2つの象限QR2,QR4において、第2基準線RL2と仮想直線PLとの間の領域に、第5接触部PO1、第8接触部PO4がそれぞれ配置される。あるいは、出力部材4に逆向きの回転トルクが入力した際、互いに対角の位置関係にある2つの象限QR1,QR3において、第2基準線RL2と仮想直線PLとの間の領域に、第6接触部PO2、第7接触部PO3がそれぞれ配置される。この構成は、ロック状態からロック解除状態への円滑な切り換えに有利である。この理由について、図8(A)~(C)を参照しつつ説明する。なお、下記説明では、図5図7に示される符号が適宜用いられる。
【0093】
逆入力遮断クラッチ1のロック状態において、入力部材3に回転トルクが入力されると、第1係合子5aは、該第1係合子5aの出力側被係合部35と出力側係合部31との接触部である出力側接触部(例えば、図8(a)における接触部PO1)を中心として回転する傾向となる。
【0094】
図8(B)の例では、第1入力側係合部27aと第1係合子5aの入力側被係合部34との入力側接触部(PI1)と、入力部材3の回転中心Oとの第2方向に関する距離(DI1)が、第1係合子5aの出力側被係合部35と出力側係合部31との出力側接触部(PO1)と、出力部材4の回転中心Oとの第2方向に関する距離(DO1)よりも大きい(DI1>DO1)。この場合、図8(B)に示すように、入力部材3に反時計方向の回転トルクが入力されると、第1係合子5aが、出力側接触部(PO1)を中心に反時計方向に回転する傾向となる。そして、図8(B)に一点鎖線で軌跡rを示すように、2つの押圧面33のうち、第2方向に関して出力部材4の回転中心Oを挟んで出力側接触部(PO1)と反対側(図8(B)の右側)に位置する押圧面33が、被押圧面7に強く押し付けられて食い込む傾向となる。ロック状態からロック解除状態へ切り換える際に、食い込みの解除を伴うと、入力部材3の回転トルクが瞬間的に大きくなりやすい(ピークトルクが発生する)。
【0095】
図8(C)の例では、出力側接触部(PO1)が、仮想直線PLよりも第1方向に関して出力部材4の回転中心Oから遠い側に位置する。この場合、図8(C)に示すように、入力部材3に反時計方向の回転トルクが入力されると、第1係合子5aが出力側接触部(PO1)を中心に、時計方向に回転する傾向となる。そして、図8(C)に一点鎖線で軌跡rを示すように、2つの押圧面33のうち、第2方向に関して出力部材4の回転中心Oよりも出力側接触部(PO1)に近い側(図8(C)の左側)に位置する押圧面33が、被押圧面7に押し付けられて食い込む傾向となる。図8(C)の例において、ロック状態からロック解除状態へ切り換える際に、食い込みの解除を伴うと、入力部材3の回転トルクが、図8(B)の例に比べて小さいものの、瞬間的に大きくなる。
【0096】
これに対し、図8(A)の例では、第1入力側係合部27aと第1係合子5aの入力側被係合部34との入力側接触部(PI1)と、入力部材3の回転中心Oとの第2方向に関する距離(DI1)が、第1係合子5aの出力側被係合部35と出力側係合部31との出力側接触部(PO1)と、出力部材4の回転中心Oとの第2方向に関する距離DO1よりも小さい(DIA<DO1)(図5参照)。また、第2象限QR2において、第2基準線RL2と仮想直線PLとの間の領域に第5接触部(PO1)が配置され、第4象限QR4において、第2基準線RL2と仮想直線PLとの間の領域に第8接触部(PO4)が配置される(図7参照)。図8(A)に示すように、出力側接触部(PO1)が、仮想直線PLよりも第1方向に関して出力部材4の回転中心Oに近い側に位置する場合、入力部材3に反時計方向の回転トルクが入力されると、第1係合子5aが出力側接触部(PO1)を中心に、時計方向に回転する傾向となる。
【0097】
ここで、図8(A)の例では、一点鎖線で軌跡r、rを示すように、1対の押圧面33はいずれも、被押圧面7に対する実質的な押し付けが回避される。このため、ロック状態からロック解除状態へ切り換える際に、入力部材3の回転トルクが瞬間的に大きくなることが抑制され、ロック状態からロック解除状態に円滑にモードが遷移する。また、ピークトルクが抑制されるため、入力側機構の最大出力トルクが比較的低く設定可能である。これは、入力側機構の不必要な大型化の回避に有利である。
【0098】
逆入力遮断クラッチ1の一例において、付勢部材6により、係合子5a、5bが径方向外側に向けて弾性的にそれぞれ付勢され、中立状態において、それぞれの係合子5a、5bの押圧面33が被押圧面7に接触して配置される。このため、出力部材4に回転トルクが逆入力された際に、該出力部材4の回転を直ちにロックまたは半ロックさせることができる。
【0099】
逆入力遮断クラッチ1の一例において、サポート部材45が、入力部材3に備えられた2つの入力側係合部27の先端部同士の間にかけ渡すように設けられている。この場合、逆入力遮断クラッチ1がロック状態からロック解除状態に切り換わる際等において、係合子5から径方向外側を向いた力を入力側係合部27が受けたたとしても、入力側係合部27の変形(例えば、2つの入力側係合部27が互いに離れるような変形)が防止される。
【0100】
逆入力遮断クラッチ1の一例において、被押圧面7を有する第1素子8と、固定部分に対して支持固定される取付部20を有する第2素子9とが別体に構成されている。すなわち、被押圧面7を有する第1素子8が、固定部分に対し間接的に固定され、直接的なボルト止めにより固定されることが回避される。第2素子9のそれぞれの取付孔24に挿通された支持ボルトが、固定部分のそれぞれのねじ孔に螺合しさらに締め付けられることにより、被押圧部材2が固定部分に対して支持固定され、第1素子8に変形が生じることが防止される。また、第1素子8の第1大径筒部11の内周面に備えられた被押圧面7の真円度の低下が防止される。この結果、逆入力遮断クラッチ1をロック解除状態からロック状態に切り換えるロック性能が良好に確保される、および/または、逆入力遮断クラッチ1を組み込んだ機械装置の制御性が良好に確保される。
【0101】
逆入力遮断クラッチ1の一例において、第1素子8の第1大径筒部11の外周面に備えられた内径側嵌合面15と、第2素子9の第2大径筒部17の内周面に備えられた外径側嵌合面21とががたつきなく嵌合されている。この場合、出力部材4への回転トルクの逆入力に伴って、それぞれの係合子5a、5bの押圧面33により被押圧面7が径方向外側に向けて押圧された場合でも、該被押圧面7が径方向外側に向けて変形することが防止される。
【0102】
逆入力遮断クラッチ1の他の例において、図2に二点鎖線で示すように、第1素子8の第1小径筒部12の外周面と第1側板部13の軸方向片側の側面との間にかけ渡された補強リブ43を備えることができる。補強リブ43は、被押圧面7の変形のより効果的な防止に有利である。
【0103】
逆入力遮断クラッチ1の一例において、第1大径筒部11の内周面のうち、被押圧面7およびその近傍部分にのみ高周波焼き入れにより硬化層が形成され、その後研磨加工が施されている。これにより、被押圧面7の硬さを確保しつつ、被押圧面7の寸法精度および真円度が良好に確保される。さらに、逆入力遮断クラッチ1において、ロック解除状態からロック状態に滑らかにモードが切り換えられる。
【0104】
逆入力遮断クラッチ1の一例において、入力部材3が、被押圧面7を有する第1素子8に対して回転自在に支持され、かつ、出力部材4が、取付部20を有する第2素子9に対して回転自在に支持されている。他の例において、入力部材が、固定部分に支持固定される取付部を有する第2素子に対して回転自在に支持され、かつ、出力部材が、被押圧面を有する第1素子に対して回転自在に支持されることができる。別の例において、被押圧面と取付部とが、同一の素子に備えられる構成が適用可能である。
【0105】
なお、入力部材、出力部材、被押圧部材、および、係合子の材質は、特に限定されない。たとえば、これらの材質としては、鉄合金、銅合金、アルミニウム合金などの金属のほか、必要に応じて強化繊維を混入した合成樹脂などでも良い。また、入力部材、出力部材、被押圧部材、および、係合子のそれぞれで、同じ材質にしても良いし、異なる材質にしても良い。
【0106】
追加的及び/又は代替的に、出力部材に回転トルクを逆入力した場合に、出力部材がロックまたは半ロックする条件さえ満たせば、入力部材、出力部材、被押圧部材、および、係合子が相互に接触する部分に、潤滑剤を介在させることができる。たとえば、入力部材、出力部材、被押圧部材、および、係合子のうちの少なくとも1つを含油メタル製とすることもできる。
【0107】
[第2実施形態]
第2実施形態について、図9を用いて説明する。逆入力遮断クラッチ1aの一例において、入力部材3aに備えられた1対の入力側係合部27c、27dは、軸方向から見て、周方向に非対称で、かつ、径方向外側に向かうほど周方向幅が大きくなる略扇形または略台形の端面形状を有する。以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成部分については同一の符号を付し、その説明を簡略又は省略する。
【0108】
本例の逆入力遮断クラッチ1aにおいて、第1接触部PI1及び第3接触部PI3を含む第1群と、第2接触部PI2及び第4接触部PI4を含む第2群とは、第1基準線RL1を間に挟んで互いに離間して配置されている。第1群の2つの接触部PI1、PI3の各々は、第5接触部PO1及び第7接触部PO3に比べて第1基準線RL1に近く配置されている。第2群の2つの接触部PI2、PI4の各々は、第6接触部PO2及び第8接触部PO4に比べて第1基準線RL1から遠く配置されている。
【0109】
本例では、入力部材3aが所定方向(図9に矢印Fで示す反時計方向)に回転することに伴い、1対の入力側係合部27c、27dと1対の係合子5a、5bの入力側被係合部34とが第1接触部PI1及び第4接触部PI4で接触する。また、入力部材3aが前記所定方向と反対方向(図9に矢印Rで示す時計方向)に回転することに伴い、1対の入力側係合部27c、27dと1対の係合子5a、5bの入力側被係合部34とが第2接触部PI2及び第3接触部PI3で接触する。一方、一方向における出力部材4の回転において、出力部材4の出力側係合部31と係合子5a、5bとが第5接触部PO1及び第8接触部PO4で接触する。逆方向における出力部材4の回転において、出力側係合部31と係合子5a、5bとが第6接触部PO2及び第7接触部PO3で接触する。
【0110】
本例において、第1距離DI1及び第3距離DI3が、第5距離DO1及び第7距離DO3に比べてそれぞれ小さく、第2距離DI2及び第4距離DI4が、第6距離DO2及び第8距離DO4に比べてそれぞれ大きい。
【0111】
本例において、第1基準線RL1に対して、第1接触部PI1及び第3接触部PI3が、第2接触部PI2及び第4接触部PI4とそれぞれ実質的に非対称に位置する。第2基準線RL2に対して、第1接触部PI1及び第2接触部PI2が、第3接触部PI3及び第4接触部PI4とそれぞれ実質的に対称に位置する。また、中心軸Oに垂直な平面視において、第1基準線RL1に対して、第5接触部PO1及び第7接触部PO3が、第6接触部PO2及び第8接触部PO4とそれぞれ実質的に対称に位置する。また、第2基準線RL2に対して、第5接触部PO1及び第6接触部PO2が、第7接触部PO3及び第8接触部PO4とそれぞれ実質的に対称に位置する。
【0112】
本例において、第1距離DI1と第3距離DI3とが互いに実質的に同じであり、第2距離DI2と第4距離DI4とが互いに実質的に同じであり、第1距離DI1及び第3距離DI3が第2距離DI2及び第4距離DI4とそれぞれ異なる。また、第5距離DO1と第7距離DO3とが互いに実質的に同じであり、第6距離DO2と第8距離DO4とが互いに実質的に同じである。本例において、DI1=DI3<DI2=DI4であり、DO1=DO2=DO3=DO4である。また、DI1=DI3<DO1=DO3であり、DI2=DI4>DO2=DO4である。
【0113】
本例の逆入力遮断クラッチ1aにおいて、中心軸Oに垂直な平面視において、第2基準線RL2を境に、第1接触部PI1、第2接触部PI2、第5接触部PO1、第6接触部PO2、第9接触部C1、及び第10接触部C2がY1群(図9における上側グループ)に属し、第3接触部PI3、第4接触部PI4、第7接触部PO3、第8接触部PO4、第11接触部C3、及び第12接触部C4がY2群(図9における下側グループ)に属する。Y1群の接触部PI1、PI2、PO1、PO2、C1、C2と、Y2群の接触部PI3、PI4、PO3、PO4、C3、C4とが、第2基準線RL2に対して、それぞれ実質的に対称の位置関係を有する。各動作に関連する接触部が第2基準線RL2に対して対称に配置されている。本例の逆入力遮断クラッチ1aによれば、入力部材3a/出力部材4が第1回転方向に動く場合とその逆の第2回転方向に動く場合とで、実質的に同じ性能が発揮される。
【0114】
図9に示す第2実施形態では、各構成要素の位置、構成要素の間での相対的な位置関係、構成要素の間での距離に関する相対関係等が前述のように設定されていることから、前述した実施形態と同様に、ロック性能とロック解除性能とが両立するなどの安定した性能を有するとともに、製造コストの抑制に有利である。また、ピークトルクが抑制されるため、入力側機構の最大出力トルクが比較的低く設定可能である。これは、入力側機構の不必要な大型化の回避に有利である。その他の部分の構成および作用効果は、前述の実施形態と同様である。
【0115】
[第3実施形態]
第3実施形態について、図10を用いて説明する。逆入力遮断クラッチ1bの一例において、入力部材3bに備えられた1対の入力側係合部27e、27fは、互いに実質的に同じ形状及び大きさを有する。本例において、入力側係合部27e、27fの各々は、第1基準線RL1に対して、実質的に対称な形状を有する。出力部材4bは、第1基準線RL1に対して非対称な形状を有する。以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成部分については同一の符号を付し、その説明を簡略又は省略する。
【0116】
本例の逆入力遮断クラッチ1bにおいて、第2接触部PI2及び第4接触部PI4を含む第1群と、第1接触部PI1及び第3接触部PI3を含む第2群とは、第1基準線RL1を間に挟んで互いに離間して配置されている。第1群の2つの接触部PI2、PI4の各々は、第6接触部PO2及び第8接触部PO4に比べて第1基準線RL1に近く配置されている。第2群の2つの接触部PI1、PI3の各々は、第5接触部PO1及び第7接触部PO3に比べて第1基準線RL1から遠く配置されている。
【0117】
本例では、入力部材3bが所定方向に回転することに伴い、1対の入力側係合部27e、27fと1対の係合子5a、5bの入力側被係合部34とが第1接触部PI1及び第4接触部PI4で接触する。また、入力部材3aが前記所定方向と反対方向に回転することに伴い、1対の入力側係合部27e、27fと1対の係合子5a、5bの入力側被係合部34とが第2接触部PI2及び第3接触部PI3で接触する。一方、一方向における出力部材4bの回転において、出力部材4bの出力側係合部31と係合子5a、5bとが第5接触部PO1及び第8接触部PO4で接触する。逆方向における出力部材4bの回転において、出力側係合部31と係合子5a、5bとが第6接触部PO2及び第7接触部PO3で接触する。
【0118】
本例において、第2距離DI2及び第4距離DI4が、第6距離DO2及び第8距離DO4に比べてそれぞれ小さく、第1距離DI1及び第3距離DI3が、第5距離DO1及び第7距離DO3に比べてそれぞれ大きい。
【0119】
本例において、第1基準線RL1に対して、第1接触部PI1及び第3接触部PI3が、第2接触部PI2及び第4接触部PI4とそれぞれ実質的に対称に位置する。また、第2基準線RL2に対して、第1接触部PI1及び第2接触部PI2が、第3接触部PI3及び第4接触部PI4とそれぞれ実質的に対称に位置する。また、中心軸Oに垂直な平面視において、第1基準線RL1に対して、第5接触部PO1及び第7接触部PO3が、第6接触部PO2及び第8接触部PO4とそれぞれ実質的に非対称に位置する。また、第2基準線RL2に対して、第5接触部PO1及び第6接触部PO2が、第7接触部PO3及び第8接触部PO4とそれぞれ実質的に対称に位置する。
【0120】
本例において、第1距離DI1と第3距離DI3とが互いに実質的に同じであり、第2距離DI2と第4距離DI4とが互いに実質的に同じである。また、第5距離DO1と第7距離DO3とが互いに実質的に同じであり、第6距離DO2と第8距離DO4とが互いに実質的に同じである。本例において、DI1=DI2=DI3=DI4であり、DO1=DO3<DO2=DO4である。また、DI1=DI3>DO1=DO3であり、DI2=DI4<DO2=DO4である。
【0121】
本例の逆入力遮断クラッチ1bにおいて、中心軸Oに垂直な平面視において、第2基準線RL2を境に、第1接触部PI1、第2接触部PI2、第5接触部PO1、第6接触部PO2、第9接触部C1、及び第10接触部C2がZ1群(図10における上側グループ)に属し、第3接触部PI3、第4接触部PI4、第7接触部PO3、第8接触部PO4、第11接触部C3、及び第12接触部C4がZ2群(図10における下側グループ)に属する。Z1群の接触部PI1、PI2、PO1、PO2、C1、C2と、Z2群の接触部PI3、PI4、PO3、PO4、C3、C4とが、第2基準線RL2に対して、それぞれ実質的に対称の位置関係を有する。各動作に関連する接触部が第2基準線RL2に対して対称に配置されている。本例の逆入力遮断クラッチ1bによれば、入力部材3b/出力部材4bが第1回転方向に動く場合とその逆の第2回転方向に動く場合とで、実質的に同じ性能が発揮される。
【0122】
図10に示す第3実施形態では、各構成要素の位置、構成要素の間での相対的な位置関係、構成要素の間での距離に関する相対関係等が前述のように設定されていることから、前述した実施形態と同様に、ロック性能とロック解除性能とが両立するなどの安定した性能を有するとともに、製造コストの抑制に有利である。また、ピークトルクが抑制されるため、入力側機構の最大出力トルクが比較的低く設定可能である。これは、入力側機構の不必要な大型化の回避に有利である。その他の部分の構成および作用効果は、前述した実施形態と同様である。
【0123】
上記では、種々の実施の形態および変形例を説明したが、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。上述した一形態と別の形態とを組み合わせることができる。また、本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の態様も本発明の範囲内に含まれる。
【0124】
形態を組み合わせた変形例(図示略)において、第1距離DI1と第3距離DI3とが互いに実質的に同じであり、第2距離DI2と第4距離DI4とが互いに実質的に同じである。また、第1距離DI1(第3距離DI3)に比べて、第2距離DI2(第4距離DI4)が小さい。また、第5距離DO1と第7距離DO3とが互いに実質的に同じであり、第6距離DO2と第8距離DO4とが互いに実質的に同じである。また、第5距離DO1(第7距離DO3)に比べて、第6距離DO2(第8距離DO4)が小さい。本例において、DI1=DI3>DI2=DI4であり、DO1=DO3>DO2=DO4である。また、DI1=DI3>DO1=DO3であり、DI2=DI4<DO2=DO4である。
【符号の説明】
【0125】
1、1a、1b 逆入力遮断クラッチ
2 被押圧部材
3、3a、3b 入力部材
4、4b 出力部材
5a、5b 係合子
6 付勢部材
7 被押圧面
8 第1素子
9 第2素子
10 結合ボルト
11 第1大径筒部
12 第1小径筒部
13 第1側板部
14 フランジ部
15 内径側嵌合面
16 第1軸受嵌合面
17 第2大径筒部
18 第2小径筒部
19 第2側板部
20 取付部
21 外径側嵌合面
22 第2軸受嵌合面
23 突出部
24 取付孔
25 基板部
26 入力軸部
27a、27b、27c、27d、27e、27f 入力側係合部
27a1、27b1 径方向内側面
27a2、27b2 径方向外側面
27a3、27b3 周方向側面
28a、28b シャンク部
29 第1軸受
30 出力軸部
31 出力側係合部
31a 平坦面
31b 凸曲面
32 フランジ部
33 押圧面
34 入力側被係合部
34a 平坦面
34b 凹曲面
35 出力側被係合部
37 凸部
38 サポート部材
39 大径通孔
40 小径通孔
41 支持ボルト
42 ねじ孔
43 補強リブ
44 第2軸受
45 サポート部材
100A、100B 逆入力遮断クラッチ
101 出力部材
102 係合子
103 押圧面
104 被押圧部材
105 被押圧面
106 入力部材
107 入力側係合部
108 入力側被係合部
109 出力側係合部
110 出力側被係合部
【要約】
逆入力遮断クラッチ(1)において、第1群の2つの接触部(PI1、PI2)の各々は、第5接触部(PO1)、第6接触部(PO2)、第7接触部(PO3)、及び第8接触部(PO4)のうちの2つに比べて第1基準線(RL1)に近く配置され、第2群の2つの接触部(PI3、PI4)の各々は、第5接触部(PO1)、第6接触部(PO2)、第7接触部(PO3)、及び第8接触部(PO4)のうちの別の2つに比べて第1基準線(RL1)から遠く配置される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13