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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-04
(45)【発行日】2023-12-12
(54)【発明の名称】ドライ真空ポンプおよびポンプ設備
(51)【国際特許分類】
   F04C 25/02 20060101AFI20231205BHJP
   F04C 18/18 20060101ALI20231205BHJP
【FI】
F04C25/02 A
F04C18/18 B
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021559147
(86)(22)【出願日】2020-03-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-24
(86)【国際出願番号】 EP2020058968
(87)【国際公開番号】W WO2020201218
(87)【国際公開日】2020-10-08
【審査請求日】2023-01-05
(31)【優先権主張番号】1903682
(32)【優先日】2019-04-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】511148259
【氏名又は名称】ファイファー バキユーム
(74)【代理人】
【識別番号】100083389
【弁理士】
【氏名又は名称】竹ノ内 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100198317
【弁理士】
【氏名又は名称】横堀 芳徳
(72)【発明者】
【氏名】ヤニク グルニエ
【審査官】大瀬 円
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-343469(JP,A)
【文献】特表2015-522754(JP,A)
【文献】特表2017-520715(JP,A)
【文献】実開昭60-097395(JP,U)
【文献】特表2017-531125(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04C 25/02
F04C 18/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
-少なくとも1つのポンプ段(3a、3b、3c、3d、3e、3f)と、
-前記少なくとも1つのポンプ段(3a、3b、3c、3d、3e、3f)内に延び、それぞれ少なくとも1つのロータ(5)を担持する2本の回転軸(4)とを備える真空ポンプ(1)であって、
前記ロータ(5)は、前記真空ポンプ(1)の吸入口(7)と吐出口(8)との間で圧送すべきガスを駆動するために、反対方向に同期して回転するように構成されているものにおいて、
前記真空ポンプ(1)は、さらに、
-前記回転軸(4)の少なくとも1本が貫通する補助ステータ(13; 22;24)と、
-制御可能な入口弁(15)を有する入口通路(14)と、
-前記回転軸(4)によって担持される少なくとも1つの補助ロータ(16;23)とを備え、
前記入口通路(14)は、前記補助ステータ(13;22;24)の入口(17)を前記真空ポンプ(1)の前記吐出口(8)と連絡している最終のポンプ段(3f)に接続するように構成されており、
前記制御可能な入口弁(15)が開くように命令されたときに、前記補助ステータ(13;22;24)内での前記補助ロータ(16;23)の回転により、前記補助ステータ(13;22;24)の前記入口(17)と出口(18)との間で、ポンプ圧送すべきガスを駆動し、前記最終のポンプ段(3f)の圧力を下げるようになっており、
前記制御可能な入口弁(15)が閉じるように命令されたとき、前記少なくとも1つの補助ロータ(16;23)と前記補助ステータ(13;22;24)は、前記吐出口(8)と連絡している前記最終のポンプ段(3f)から流体的に隔離されるようになっていることを特徴とするドライ真空ポンプ。
【請求項2】
請求項1に記載の真空ポンプ(1)であって、
前記補助ステータ(13)は、該補助ステータの中を貫通する2本の回転軸(4)を有し、
前記真空ポンプ(1)は、前記補助ステータ(13)内に配置され、それぞれの回転軸(4)によって担持される2つの補助ロータ(16)を備え、前記2つの補助ロータは、反対方向に同期して回転するように構成されていることを特徴とするドライ真空ポンプ。
【請求項3】
請求項2に記載の真空ポンプ(1)であって、
前記補助ロータ(16)は、ルーツ型であることを特徴とするドライ真空ポンプ。
【請求項4】
請求項1に記載の真空ポンプ(1)であって、
前記補助ステータ(22)は、前記真空ポンプ(1)のオイルケーシング(10)内に形成され、
前記真空ポンプ(1)は、同期歯車(6)のそれぞれの歯車(31)によって形成されている2つの前記補助ロータを含み、
前記同期歯車(6)と前記補助ステータ(22)とで1つの歯車ポンプを形成し、
前記同期歯車(6)は、さらに、前記回転軸(4)の回転を同期させるように構成されていることを特徴とするドライ真空ポンプ。
【請求項5】
請求項1に記載の真空ポンプ(1)であって、
前記補助ロータ(23)は、前記補助ステータ(24)と共に前記真空ポンプ(1)のオイルケーシング(10)のチャンバ(25)内に受け入れられたロータリーベーンポンプを形成するロータリーベーンポンプのロータであることを特徴とするドライ真空ポンプ。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の真空ポンプ(1)であって、
前記補助ステータ(13;22;24)の前記出口(18)が、制御可能な出口弁(21)を有する補助出口通路(20)によって、前記真空ポンプの吐出口(8)と連絡するように構成されていることを特徴とするドライ真空ポンプ。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の真空ポンプ(1)であって、
前記真空ポンプは、大気圧でガスを排出するように構成された粗引き真空ポンプ(1)であることを特徴とするドライ真空ポンプ。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の真空ポンプ(1)であって、
前記真空ポンプは、制御ユニット(19)を含み、
前記制御ユニットは、前記真空ポンプ(1)の吸入口の圧力、および/または前記真空ポンプ(1)によって消費される電力の測定値の関数として、前記制御可能な入口弁(15)を開くように命令するように構成されていることを特徴とするドライ真空ポンプ。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の真空ポンプ(1)であって、
前記ロータ(5)は、ルーツ型または爪型であることを特徴とするドライ真空ポンプ。
【請求項10】
1つのロードロック(101)を備えるポンプ設備(100)であって、
前記ロードロック(101)内の圧力を交互に上下させるために、前記ロードロック(101)に接続された請求項1~9のいずれか1項に記載のドライ真空ポンプ(1)を含んでいることを特徴とするポンプ設備。
【請求項11】
請求項10に記載のポンプ設備(100)であって、
前記ロードロック(101)は、前記制御可能な入口弁(15)の制御手段(102)を備えており、前記制御手段は、前記ロードロック(101)がアイドル段階にあるとき、前記制御可能な入口弁(15)を開くように命令するように構成されていることを特徴とするポンプ設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、ルーツ型ポンプ、爪型ポンプ、またはスクリュー型ポンプのような粗引き真空ポンプ等の、ドライ真空ポンプに関する。また、本発明は、真空ポンプに接続されたロードロックを含む、ポンプ設備にも関するものである。
【背景技術】
【0002】
ガスの圧縮に必要な電力は、真空ポンプのエネルギー消費における重要なパラメータの1つである。このガスの圧縮のための電力は、ルーツ型または爪型の多段粗引き真空ポンプの場合、主に圧縮ステージの最終の2つの段で使用される。
【0003】
ロードロックポンプ装置は、特に、エネルギー消費量が比較的多い。このロードロックは、処理室内に何らかの不純物が混入するのを防ぐために、基板が低圧に維持された処理室内へ搬出される前に、ロードロックのチャンバ内における基板の周囲の圧力を下げるのに使用される。
したがって、基板をロードする毎に、ロードロックのチャンバ内の圧力を、交互に下げてから上げる必要がある。この圧力を下げる度に、その後基板が処理室内へ搬送されるまでの間、ロードロックのチャンバ内の圧力は下がったままである。ロードロックが低圧に維持されたこのアイドル段階は比較的長い時間となる可能性があり、エネルギーの面でコストがかかる。
【0004】
電気エネルギーの消費を削減するための公知の1つの解決策は、例えばロードロックのこれらのアイドル段階の間、外部のポンプ装置の助けを借りて、真空ポンプの最終の圧縮ステージの圧力を下げることである。
【0005】
この外部のポンプ装置としては、例えば、エジェクター、ダイアフラムポンプおよびロータリーベーンポンプがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この解決策の1つの欠点は、異なる2種類のポンプ装置を使用する必要があるため、使いづらく、コストがかかり、電気エネルギーやガスを消費し、かつ、ポンプシステムがかさばる可能性があることである。
【0007】
本発明の1つの目的は、上記従来技術の欠点の1つを少なくとも部分的に解決した、ドライ真空ポンプを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的のために、本発明のドライ真空ポンプは、
-少なくとも1つのポンプ段と、
-前記少なくとも1つのポンプ段内に延び、それぞれ少なくとも1つのロータを担持する2本の回転軸とを備え、前記ロータは、前記真空ポンプの吸入口と吐出口との間で圧送すべきガスを駆動するために反対方向に同期して回転するように構成されており、さらに、
この真空ポンプは、
-前記回転軸の少なくとも1本が貫通している補助ステータと、
-制御可能な入口弁を有する入口通路と、
-前記回転軸によって担持されている少なくとも1つの補助ロータとを備え、
前記入口通路は、前記補助ステータの入口を前記真空ポンプの前記吐出口と連絡している最終のポンプ段に接続するように構成されており、
前記制御可能な入口弁が開くように命令されたとき、前記補助ステータ内での前記補助ロータの回転により、前記補助ステータの前記入口と出口との間で、ポンプ圧送すべきガスを駆動し、前記最終のポンプ段の圧力を下げるように構成されており、
前記制御可能な入口弁が閉じるように命令されているとき、前記少なくとも1つの補助ロータと前記補助ステータは、前記吐出口と連絡している前記最終のポンプ段から流体的に隔離されていることを特徴としている。
【0009】
本発明によれば、真空ポンプの吐出口と連絡している最終のポンプ段の圧力を下げるために制御可能な入口弁が開くように命令されたときに、真空ポンプのロータを駆動するための回転軸の回転が、前記少なくとも1つの補助ロータを駆動して回転させるのにも使用される。これにより、真空ポンプの外部に新たなポンプ装置を設ける必要はなくなり、真空ポンプの電力消費を減らすことができる。
制御可能な入口弁を閉じるように命令されると、真空ポンプの動作を妨げることなく、補助ロータ自体がオンとなる。したがって、補助ポンプ段はバイパスされ、この補助ポンプ段は真空ポンプにおけるガスのポンプ作用に関与しなくなる。
【0010】
制御可能な入口弁を開くように命令されると、正確な瞬間に、選択した時間だけ、真空ポンプの吐出口と連絡しているポンプ段の圧力を下げることができる。したがって、制御可能な入口弁の使用により、動作の柔軟性が大幅に向上する。
【0011】
本発明の真空ポンプは、コンパクトであり、設置が簡単であり、制御も簡単である。
【0012】
この真空ポンプは、例えば、大気圧でガスを排出するように構成された粗引き真空ポンプである。前記ロータは、例えばルーツ型や爪型のロータである。
【0013】
補助ステータの出口は、制御可能な出口弁が取り付けられた補助出口通路によって、真空ポンプの吐出口と連絡される。
制御可能な出口弁を使用すると、最終のポンプ段の圧力を下げるのに使用されていないときに、少なくとも1つの補助ロータを真空下に維持することができる。少なくとも1つの補助ロータは、エネルギーを殆どまたは全く消費せずに、それ自体がオンとなる。このとき、ガスが新たに入ることなく、真空ポンプの少なくとも1つのポンプ段におけるポンプ作用を阻害することもない。
【0014】
真空ポンプは、制御ユニットを含んでおり、この制御ユニットは、この真空ポンプの吸入口の圧力、および/またはこの真空ポンプによって消費される電力の測定値の関数として、制御可能な入口弁および/または制御可能な出口弁を開くべく命令するように構成されている。
【0015】
本発明の別の実施例によれば、真空ポンプに接続されたロードロックなどのエンクロージャは、制御可能な入口弁および/または制御可能な出口弁の制御手段を含んでいる。この制御手段は、例えば、ロードロックがアイドル段階にあるとき、例えば、予め設定された、アイドル段階の開始から終了までの所定の期間にわたって、制御可能な入口弁および/または制御可能な出口弁を開くように命令する。また、制御可能な弁は、例えば、電力がその閾値を下回ると、すぐに閉じるように命令されるようにすることができる。
【0016】
第1の実施形態の真空ポンプは、補助ステータの中を貫通する2本の回転軸と、この補助ステータ内に配置され、それぞれの回転軸によって担持される2つの補助ロータとを有しており、これら2つの補助ロータは、反対方向に同期して回転するように構成されている。補助ロータは、例えば、ルーツ型、ねじ型または爪型である。この実施形態では、補助ステータは、追加のドライポンプ段と同様の構成である。
【0017】
本発明の第2の実施形態によれば、補助ステータが、真空ポンプのオイルケーシング内に設けられ、真空ポンプは、この真空ポンプの同期歯車のそれぞれの歯車によって形成される2つの補助ロータを含み、同期歯車と補助ステータとで1つの歯車ポンプを構成している。同期歯車は、さらに2本の回転軸の回転を同期させるように構成されている。この実施形態では、2本の回転軸の同期のために既に存在する同期歯車が、最終のポンプ段の圧力を下げる必要がある場合の、追加のポンプ手段としても使用される。
【0018】
本発明の第3の実施形態によれば、補助ロータは、補助ステータと共に真空ポンプのオイルケーシングのチャンバ内に配置されたロータリーベーンポンプを形成する、ロータリーベーンポンプのロータである。
この実施形態では、ロータリーベーンポンプと一体化された真空ポンプは、非常に良好な圧縮比で、最終のポンプ段の圧力を下げることを可能にする。
【0019】
本発明はまた、ロードロックを含むポンプ設備であって、前記ロードロック内の圧力を交互に上下させるためにこのロードロックに接続された前記ドライ真空ポンプを備えるポンプ設備にも関係する。
本発明の他の利点および特徴は、本発明の例示的であるが限定されない各実施例の説明を、添付の図面を参照して読むことにより明らかになると思う。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】一般的なポンプ設備の概略を示す図である。
図2図1のポンプ設備に適用した、本発明の第1の実施形態によるドライ粗引き真空ポンプの概略を示す図である。
図3】本発明の第2の実施形態によるドライ粗引き真空ポンプの概略を示す図である。
図4図3のA-A断面における、真空ポンプのオイルケーシングを示す概略図である。
図5】本発明の第3の実施形態によるドライ粗引き真空ポンプの概略を示す図である。
図6図5のA-A断面における、真空ポンプのオイルケーシングを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下の実施形態は例示である。説明は1つまたは複数の実施形態に言及しているが、これは、必ずしも各参照符号が同じ実施形態に関係すること、または特徴が1つの実施形態にのみ適用されることを意味するものではない。異なる実施形態の単一の特徴を組み合わせたり、交換したりして、他の実施形態を提供することもできる。
【実施例1】
【0022】
図1は、一般的なポンプ設備100を示している。このポンプ設備は、1つのロードロック101と、このロードロック101のチャンバ内の圧力を交互に上下させるためにこのロードロック101に接続された1つのドライ真空ポンプ1とを含んでいる。ロードロック101は、処理室内へ不純物が混入するのを防ぐために、基板がロードロックのチャンバから、低圧に維持された処理室へ搬出される前に、このチャンバ内の基板の周りの圧力を下げるのに使用される。前記基板は、例えば、フラットパネルディスプレイ、光起電性基板、半導体ウェーハ、または半導体製造フォトマスクである。
【0023】
真空ポンプ1は、大気圧でガスを排出するように構成された粗引き真空ポンプである。
粗引き真空ポンプは、1対のロータを用いて、圧送すべきガスを吸引、移送し、大気圧で排出する、容積式の真空ポンプとして定義される。
図2に示すように、真空ポンプ1は、少なくとも1段のポンプ段3a~3f、および2本の回転軸4を備えている。
これらの回転軸4は、少なくとも1段のポンプ段3a~3f内まで延び、それぞれ、少なくとも1つのロータ5を担持している。
この実施例では、真空ポンプ1は、複数の、例えば6段のポンプ段3a、3b、3c、3d、3e、3fを備えており、これらのポンプ段は、真空ポンプ1の1つの吸入口7と1つの吐出口8との間に直列に設けられており、ポンプ圧送すべきガスが、この複数のポンプ段の間において循環する。
【0024】
各ポンプ段3a~3fは、それぞれ、1対のロータ5を受け入れる圧縮チャンバによって構成され、これらの圧縮チャンバは、それぞれの入口および出口を有する。連続するポンプ段3a~3fは、前段のポンプ段の出口を後段のポンプ段の入口に接続する、それぞれのステージ間通路によって、次々に直列に接続されている。
この種の多段ポンプでは、入口が真空ポンプ1の吸入口7と連絡している第1のポンプ段3aは、吸引ステージとも呼ばれる。出口が真空ポンプ1の吐出口8と連絡している最終のポンプ段3fは、排出ステージとも呼ばれ、その排出圧力は、一般に、周囲圧力(または大気圧)のオーダーである。
【0025】
1対のロータ5は、各段において、その動作中、反対方向に同期して回転し、吸入口7と吐出口8との間で、ポンプ圧送すべきガスを駆動する。
真空ポンプの回転中、吸入口から吸引されたガスは、真空ポンプ1のロータ5およびステータ9によって形成される容積内に閉じ込められ、次いで、ロータ5によって次のステージに向かって駆動される(ポンプ圧送するべきガスの循環方向は、図1および図2に矢印で示されている)。
ロータ5は、例えば、同じプロファイルを有するローブを有する、例えばルーツ型、例えば8字型または豆型の断面のロータ、または爪型、またはねじ型のロータ、または、容積式真空ポンプの原理に従う他の同様のロータである。
ロータ5を担持する各回転軸4は、真空ポンプ1のモータMによって駆動される。各回転軸は、真空ポンプ1の少なくとも1つのオイルケーシング10内の潤滑剤によって潤滑される軸受けによって支持され、潤滑されている同期歯車6により同期して駆動される。オイルケーシング10は、その中で回転軸4が常に回転することができるシーリング手段により、ドライポンプ部分から隔離されている。
【0026】
本発明の一つの実施形態によれば、真空ポンプ1は、最終のポンプ段3fの出口を吐出口8に接続する主出口通路11を有している。主出口通路11には、ポンプ圧送するべきガスの真空ポンプ1への逆流を防ぐために、逆止弁12が配置されている。
【0027】
真空ポンプ1は、さらに、補助ステータ13と、制御可能な入口弁15を備える入口通路14、および、補助ステータ13内に配置された少なくとも1つの補助ロータ16を備えている。
補助ステータ13は、1つの入口17および1つの出口18を備えており、回転軸4のうちの少なくとも1本が、この補助ステータの中を貫通している。
入口通路14は、補助ステータ13の入口17を、真空ポンプ1の吐出口8と連絡している最終のポンプ段3fに、例えば、このポンプ段3fの入口のレベルで接続している。このステージは、真空ポンプが多段真空ポンプ1の場合には、ポンプ圧送されるガスの流れの方向にある最終のポンプ段であり、単段スクリュー型の真空ポンプの場合には、ポンプ圧送されるガスの流れの方向の最終スクリューピッチによって形成されている。
【0028】
少なくとも1つの補助ロータ16が、補助ステータ13の中を貫通する回転軸4によって担持されている。この補助ロータは、制御可能な入口弁15が開くように命令されたとき、補助ステータ13内での回転により、補助ステータ13の入口17と出口18との間で圧送すべきガスを駆動して、吐出口8と連絡している最終のポンプ段3f内の圧力を下げるように構成されている。
制御可能な入口弁15が閉じるように命令されたときには、少なくとも1つの補助ロータ16および補助ステータ13は、吐出口8と連絡している最終のポンプ段3fから流体的に隔離されている。
【0029】
したがって、真空ポンプ1のロータ5を駆動する回転軸4の回転は、制御可能な入口弁15が開くように命令されたときに、真空ポンプ1の吐出口と連絡しているポンプ段3fの圧力を下げるために、少なくとも1つの補助ロータ16を回転駆動するためにも使用される。これにより、真空ポンプ1の外部に新たなポンプ装置を設ける必要が無いので、真空ポンプ1の電力消費を低減させることができる。
制御可能な入口弁15が閉じるように命令されると、真空ポンプの動作を妨げることなく、補助ステータ内において補助ロータ自体がオンとなる。したがって、補助ポンプ段はバイパスされ、もはや真空ポンプにおけるガスのポンプ圧送に関与しなくなる。
この真空ポンプ1は、コンパクトであり、設置が簡単であり、制御も簡単である。
【0030】
制御可能な入口弁15は、例えば空気圧弁、またはソレノイド、例えば電磁弁または圧電弁であり、特にオン/オフ弁、すなわち、開いているか閉じているかのどちらかの機能を有する弁である。
真空ポンプ1は、制御可能な入口弁15を制御するために、1つまたは複数のコントローラ、またはマイクロコントローラ、またはプロセッサとメモリとを含む制御ユニット19を備えている。
【0031】
制御ユニット19は、例えば、真空ポンプ1の吸入口の圧力、および/または真空ポンプ1によって消費される電力の測定値の関数として、制御可能な入口弁15の開放を制御するように構成されている。
この目的のために、制御ユニット19は、圧力および/または電力が、閾値を超えたかどうかを監視する。例えば、真空ポンプ1の吸入口の圧力が低圧の閾値を超えたかどうか、および/または、モータMの電力(または電流)が所定の時間にわたって電力閾値を超えたかどうかを監視する。この状況は、一般に、ロードロック101の低圧でのアイドル段階に対応し、真空ポンプ1が、限界真空でポンプ作用をしている状況(ガス注入なし)、または低圧で、少量のパージ流のポンプ作用をしている状況にある。
【0032】
別の実施例によれば、ロードロック101は、制御可能な入口弁15用の制御手段102を備えており、この制御手段は、制御可能な入口弁15を直接制御することができ、あるいはまた、制御可能な入口弁15を制御するために真空ポンプ1の制御ユニット19に接続されている。
制御手段102は、例えば、ロードロック101がアイドル段階にあるときに、制御可能な入口弁15を開くように命令する。制御手段102の信号は、例えば電気スイッチから来る信号、または数値コードである。
制御可能な入口弁15は、限られた時間、すなわち、所定の期間、例えば5分未満の間だけ、開くように命令される。制御可能な入口弁15は、アイドル段階の開始時(開くように命令される)と終了時にトリガーされる。制御可能な入口弁15はまた、例えば、電力が電力閾値を下回ったときは、直ちに閉じるように命令される。
制御可能な入口弁15を開くように命令することにより、正確な時間に、選択された期間だけ、真空ポンプの吐出口と連絡しているポンプ段3f内の圧力を下げることが可能になる。したがって、制御可能な入口弁15の使用は、ポンプの動作に大きな柔軟性を与える。
【0033】
本発明の一つの実施形態によれば、補助ステータ13の出口18は、制御可能な出口弁21を備える補助出口通路20によって、真空ポンプ1の吐出口8と連絡している。
補助出口通路20の出口は、例えば、ポンプ圧送すべきガスの流れの方向における主出口通路11の逆止弁12の下流側で、真空ポンプ1の吐出口8に接続されている。
主出口通路11と補助出口通路20の出口は独立している。
【0034】
制御可能な出口弁21の制御は、制御可能な入口弁15の制御とリンクしている。これら2つの弁15、21は、同じ手段によって、同時に開閉するように命令される。できれば、補助ステータ13の容積を隔離する前にこの容積を排気するために、入口弁15が閉じられた直後、少しのオフセットを伴って、出口弁21が閉じられるか、または、入口弁15が開く直前に出口弁21が開かれる。
したがって、制御可能な出口弁21は、例えば、真空ポンプ1の吸入口の圧力、および/または真空ポンプ1によって消費される電力の測定値の関数として、制御ユニット19によって開くように命令される。または、制御可能な出口弁21は、例えば、ロードロック101がアイドル段階にあるとき、ロードロック101の制御手段102によって、開くように命令される。
少なくとも1つの補助ロータ16は、それが最終のポンプ段の圧力を下げるのに使用されていないときは、真空状態に維持することができる。少なくとも1つの補助ロータ16は、ガスの新たな流入なしに、それ自体をオンにする。このとき、真空ポンプ1のポンプ段3a~3fにおけるポンプ作用を妨げることはなく、エネルギーを全くまたはほとんど消費しない。
【0035】
図2に示す第1の実施形態においては、真空ポンプ1は、補助ステータ13内に配置された1対の補助ロータ16を有している。この1対の補助ロータ16は、補助ステータ13の中を貫通する真空ポンプ1のそれぞれの回転軸4、すなわち、補助ステータ13の中を貫通する2本の回転軸4によってそれぞれ担持されている。この1対の補助ロータ16は、反対方向に同期して回転し、補助ステータ13の入口17と出口18との間で、ポンプ圧送すべきガスを駆動するように構成されている。
補助ロータ16は、例えば、ルーツ型、ねじ型または爪型である。
【0036】
補助ステータ13は、例えば、真空ポンプ1の真空ポンプ1の吐出口と連通しているポンプ段3fのステータ9の寸法と同じか、それよりも小さい寸法を有する。例えば、補助ステータ13は、最終のポンプ段のステータ9よりも薄いか、または、補助ステータ13の回転軸4が、真空ポンプの回転軸より大きな直径を有していても良い。
補助ステータ13は、例えば、ポンプ段3a~3fの端部に、例えば、真空ポンプの吐出口と連通しているポンプ段3fに沿って配置されている。例えば、補助ステータは、オイルケーシング10と最終のポンプ段3fとの間に配置されている。
また、補助ステータ13は、2つの連続するポンプ段3a~3fの間、例えば、最終のポンプ段3fと最終のポンプ段から2番目のポンプ段3eの間に配置されても良い。
この実施形態では、補助ステータ13は、追加のドライポンプ段と同様の構成であり、最終のポンプ段の圧力を下げる必要がある場合にのみ使用される。
【実施例2】
【0037】
図3および図4に示す第2の実施形態においては、真空ポンプ1は、補助ステータ22内に配置された、2つの補助ロータ16を備えており、これらの補助ロータは、同期歯車6のそれぞれの歯車31によって形成されている。
同期歯車6の1対の歯車31は、それぞれの回転軸4によって担持され、これら真空ポンプ1の2本の回転軸4は、オイルケーシング10内に設けられた補助ステータ22の中を貫通している。
1対の歯車31は、2本の回転軸4の回転を同期させ、補助ステータ22の入口17と出口18との間で、ポンプ圧送すべきガスを駆動するように構成されている。したがって、同期歯車6の1対の歯車31と補助ステータ22は、1つの歯車ポンプを形成している。
【0038】
この歯車ポンプは、1対の歯車31の組み合わされたプロファイルを利用して、圧送するべきガスを駆動する。歯車ポンプの動作中、圧送されるべきガスは、歯車ポンプの歯車31の各歯と補助ステータ22との間に収容される。1対の歯車31の反対方向への回転は、これらの歯車31の外側の周りにおいて、ガスを駆動する。
この実施形態では、1対の回転軸4を同期させるために既に存在している1対の同期歯車6が、最終のポンプ段の圧力を下げる必要があるときの追加のポンプ手段として使用される。
補助ステータ22の入口17と制御可能な入口弁15との間に、オイルトラップを追加することにより、ドライポンプ部分への潤滑剤の移動を防止できる。
【実施例3】
【0039】
図5および図6に示す第3の実施形態においては、補助ロータ23は、ロータリーベーンポンプのロータである。
この補助ロータ23は、補助ステータ24とにより、真空ポンプ1のオイルケーシング10のチャンバ25内に収容された、ロータリーベーンポンプを構成している。
図6から分かるように、ロータリーベーンポンプのロータは、良く知られているような1つのスロット内でスライドする2つのベーン26と、それらを互いに押し離すことで互いを接続する1つのばねとを有している。このロータリーベーンポンプのロータは、補助ステータ24のシリンダ内で偏心して回転する。補助ステータ24は、オイルケーシング10のチャンバ25に収容されているオイルなどの液体の潤滑剤27の中に設置されている。補助ステータ24の入口17は、チャンバ25の内側へ延びているが、液体の潤滑剤27からは隔離されている。補助ステータ24の出口18には、液体潤滑剤27に浸ったリリーフ弁(または逆止弁)29が設けられている。
回転ベーンポンプのロータは、補助ステータ24の中を貫通する真空ポンプ1の回転軸4によって担持され、この回転軸の回転に伴って駆動される。
【0040】
このポンプが動作を開始すると、補助ロータ23と補助ステータ24によって形成される容積が増大し、入口17からガスを吸引する。ベーン26が垂直位置にあるときに、吸引容積は最大になる。次に、この容積はベーン26の回転に伴って減少し、したがって、前記容積内に閉じ込められたガスの圧力を増加させる。その後、このガスは出口18から排出される。このガスは、リリーフ弁29を介して逃げ、液体の潤滑剤27を経て、補助出口通路20に接続されたチャンバ25の出口30へ向かって上昇する。
【0041】
ロータリーベーンポンプを内蔵した真空ポンプ1は、非常に良好な圧縮比で最終のポンプ段の圧力を下げることができる。
補助ステータ24の入口17と制御可能な入口弁15との間にオイルトラップを追加することにより、潤滑剤がドライポンプ部分に移動するのを防ぐことができる。
【符号の説明】
【0042】
1 真空ポンプ
3a~3f ポンプ段
4 回転軸
5 真空ポンプのロータ
6 同期歯車
7 真空ポンプの吸入口
8 真空ポンプの吐出口
9 真空ポンプのステータ
10 オイルケーシング
11 出口通路
12 逆止弁
13 補助ステータ
14 入口通路
15 制御可能な入口弁
16 補助ロータ
17 補助ステータの入口
18 補助ステータの出口
19 制御ユニット
20 補助出口通路
21 制御可能な出口弁
22 補助ステータ
23 補助ロータ
24 補助ステータ
25 オイルケーシングのチャンバ
26 ベーン
27 液体の潤滑剤
29 リリーフ弁
30 チャンバの出口
31 歯車ポンプの歯車
100 ポンプ設備
101 ロードロック
102 制御手段
M モータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6