(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-04
(45)【発行日】2023-12-12
(54)【発明の名称】バッテリー診断装置、方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
H01M 10/48 20060101AFI20231205BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20231205BHJP
G01R 31/389 20190101ALI20231205BHJP
【FI】
H01M10/48 Z
H02J7/00 Q
G01R31/389
H01M10/48 P
(21)【出願番号】P 2022551696
(86)(22)【出願日】2021-09-29
(86)【国際出願番号】 KR2021013400
(87)【国際公開番号】W WO2022071776
(87)【国際公開日】2022-04-07
【審査請求日】2022-08-26
(31)【優先権主張番号】10-2020-0127289
(32)【優先日】2020-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ベ、ユン-ジュン
(72)【発明者】
【氏名】ウー、キュン-ファ
(72)【発明者】
【氏名】チャ、エー-ミン
【審査官】田中 慎太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-45500(JP,A)
【文献】特開2012-212513(JP,A)
【文献】特開2019-57382(JP,A)
【文献】特開2019-103157(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/48
H02J 7/00
G01R 31/389
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリーセルに対して相異なる時点で生成された複数のインピーダンスプロファイルの各々から前記バッテリーセルのオーム抵抗を決定するオーム抵抗決定部と、
決定された複数のオーム抵抗間の抵抗変化率を算出する抵抗変化率算出部と、
算出された抵抗変化率に基づいて前記バッテリーセルの内部ガスの発生程度を決定するガス発生程度決定部と、
決定された内部ガスの発生程度によって前記バッテリーセルの状態を診断する状態診断部と、を含む、バッテリー診断装置。
【請求項2】
前記ガス発生程度決定部は、
予め設定された基準変化率区間のうち前記算出された抵抗変化率が属する区間に基づいて前記バッテリーセルの内部ガスの発生程度を決定し、
前記基準変化率区間は、
前記内部ガスの発生程度によって第1基準抵抗変化率未満の第1区間、前記第1基準抵抗変化率以上かつ第2基準抵抗変化率未満の第2区間、及び前記第2基準抵抗変化率以上の第3区間に予め設定される、請求項1に記載のバッテリー診断装置。
【請求項3】
前記ガス発生程度決定部は、
前記算出された抵抗変化率が前記第1区間に属する場合、前記内部ガスの発生程度を正常に決定し、
前記算出された抵抗変化率が前記第2区間に属する場合、前記内部ガスの発生程度を警告に決定し、
前記算出された抵抗変化率が前記第3区間に属する場合、前記内部ガスの発生程度を危険に決定する、請求項2に記載のバッテリー診断装置。
【請求項4】
前記状態診断部は、
前記内部ガスの発生程度が正常に決定された場合、前記バッテリーセルの状態を正常状態に診断し、
前記内部ガスの発生程度が警告に決定された場合、前記バッテリーセルの状態を警告状態に診断し、前記バッテリーセルの最大許容温度及び最大許容充電状態のうち少なくとも一つを減少させ、
前記内部ガスの発生程度が危険に決定された場合、前記バッテリーセルの状態を使用不可能状態に診断する、請求項2または3に記載のバッテリー診断装置。
【請求項5】
前記バッテリーセルの温度、電圧及び電流のうち少なくとも一つを測定する測定部と、
測定された電圧及び電流のうち少なくとも一つに基づいて前記バッテリーセルの充電状態を推定する充電状態推定部と、をさらに含み、
前記オーム抵抗決定部は、
前記測定部によって測定された前記バッテリーセルの温度及び前記充電状態推定部によって推定された前記バッテリーセルの充電状態に基づいて、前記複数のインピーダンスプロファイルのうち所定の条件を満たす一つ以上のインピーダンスプロファイルを選択し、
前記抵抗変化率算出部は、
前記オーム抵抗決定部によって選択されたインピーダンスプロファイルに基づいて前記抵抗変化率を算出する、請求項1から4のいずれか一項に記載のバッテリー診断装置。
【請求項6】
前記オーム抵抗決定部は、
前記複数のインピーダンスプロファイルのうち対応する前記バッテリーセルの温度が基準温度以上であり、かつ対応する前記バッテリーセルの充電状態が基準充電状態以上であるインピーダンスプロファイルを選択する、請求項1から5のいずれか一項に記載のバッテリー診断装置。
【請求項7】
前記複数のインピーダンスプロファイルの各々から電荷移動抵抗を決定する電荷移動抵抗決定部をさらに含み、
前記抵抗変化率算出部は、
決定された複数の電荷移動抵抗間の電荷移動抵抗変化率をさらに算出し、
前記状態診断部は、
算出された電荷移動抵抗変化率と基準抵抗値を比較した結果に基づいて前記バッテリーセルの状態をさらに診断する、請求項1から6のいずれか一項に記載のバッテリー診断装置。
【請求項8】
前記状態診断部は、
前記算出された電荷移動抵抗変化率が前記基準抵抗値未満である場合、前記バッテリーセルの状態を正常状態に診断し、
前記算出された電荷移動抵抗変化率が前記基準抵抗値以上である場合、前記バッテリーセルの状態を警告状態に診断し、前記バッテリーセルの充電及び放電に対する最大許容C-rateを減少させる、請求項7に記載のバッテリー診断装置。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載のバッテリー診断装置と、
前記バッテリーセルに交流電流を出力し、前記交流電流の出力結果によって前記バッテリーセルのインピーダンスを実部と虚部との対応関係として示すインピーダンスプロファイルを生成し、生成されたインピーダンスプロファイルを前記バッテリー診断装置に出力するEIS部と、を含む、バッテリー診断システム。
【請求項10】
前記バッテリーセルの温度が基準温度以上になるように前記バッテリーセルの温度を上昇させるヒーティング部と、
前記バッテリーセルの充電状態が基準充電状態以上になるように前記バッテリーセルを充電させる充電部と、をさらに含む、請求項9に記載のバッテリー診断システム。
【請求項11】
請求項1から8のいずれか一項に記載のバッテリー診断装置を含む、バッテリーパック。
【請求項12】
バッテリーセルに対して相異なる時点で生成された複数のインピーダンスプロファイルの各々から前記バッテリーセルのオーム抵抗を決定するオーム抵抗決定段階と、
決定された複数のオーム抵抗間の抵抗変化率を算出する抵抗変化率算出段階と、
算出された抵抗変化率に基づいて前記バッテリーセルの内部ガスの発生程度を決定するガス発生程度決定段階と、
決定された内部ガスの発生程度によって前記バッテリーセルの状態を診断する状態診断段階と、を含む、バッテリー診断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリー診断装置、方法及びシステムに関し、より詳しくは、バッテリーセルの状態が診断可能なバッテリー診断装置、方法及びシステムに関する。
【0002】
本出願は、2020年9月29日出願の韓国特許出願第10-2020-0127289号に基づく優先権を主張し、該当出願の明細書及び図面に開示された内容は、すべて本出願に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
最近、ノートブックPC、ビデオカメラ、携帯電話などのような携帯用電子製品の需要が急増し、電気自動車、エネルギー貯蔵用蓄電池、ロボット、衛星などの開発が本格化するにつれ、反復的な充放電の可能な高性能バッテリーについての研究が活発に進行しつつある。
【0004】
現在、商用化したバッテリーとしては、ニッケルカドミウム電池、ニッケル水素電池、ニッケル亜鉛電池、リチウムバッテリーなどがあり、このうち、リチウムバッテリーは、ニッケル系のバッテリーに比べてメモリー効果がほとんど起こらず、充放電が自由で、自己放電率が非常に低くてエネルギー密度が高いという長所から脚光を浴びている。
【0005】
バッテリーは、退化するにつれ、内部ガスの発生を伴う副反応が発生し、このような副反応が持続されて内部ガス量が許容値を上回ると、バッテリーの接合部がオープンされてEOL(End of life)状態に到達するようになる。
【0006】
したがって、バッテリーの状態を診断するためには、内部ガス量に対する測定が必要であるが、従来には非破壊的な方式でバッテリーの内部ガス量を測定することが困難であった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、非破壊的な方式でバッテリーのオーム抵抗に基づいてバッテリーの内部ガスの発生程度を決定し、決定された内部ガスの発生程度によってバッテリーの状態が診断可能なバッテリー診断装置、方法及びシステムを提供することを目的とする。
【0008】
本発明の他の目的及び長所は、下記の説明によって理解でき、本発明の実施例によってより明らかに理解されるであろう。また、本発明の目的及び長所は、特許請求の範囲に示される手段及びその組合せによって実現することができる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一面によるバッテリー診断装置は、バッテリーセルに対して相異なる時点で生成された複数のインピーダンスプロファイルの各々から前記バッテリーセルのオーム抵抗を決定するように構成されたオーム抵抗決定部と、決定された複数のオーム抵抗間の抵抗変化率を算出するように構成された抵抗変化率算出部と、算出された抵抗変化率に基づいて前記バッテリーセルの内部ガスの発生程度を決定するように構成されたガス発生程度決定部と、決定された内部ガスの発生程度によって前記バッテリーセルの状態を診断するように構成された状態診断部と、を含み得る。
【0010】
前記ガス発生程度決定部は、予め設定された基準変化率区間のうち前記算出された抵抗変化率が属する区間に基づいて前記バッテリーセルの内部ガスの発生程度を決定するように構成され得る。
【0011】
前記基準変化率の区間は、前記内部ガスの発生程度によって第1基準抵抗変化率未満の第1区間、前記第1基準抵抗変化率以上かつ第2基準抵抗変化率未満の第2区間、及び前記第2基準抵抗変化率以上の第3区間に予め設定されるように構成され得る。
【0012】
前記ガス発生程度決定部は、前記算出された抵抗変化率が前記第1区間に属する場合、前記内部ガスの発生程度を正常に決定し、前記算出された抵抗変化率が前記第2区間に属する場合、前記内部ガスの発生程度を警告に決定し、前記算出された抵抗変化率が前記第3区間に属する場合、前記内部ガスの発生程度を危険に決定するように構成され得る。
【0013】
前記状態診断部は、前記内部ガスの発生程度が正常に決定された場合、前記バッテリーセルの状態を正常状態に診断するように構成され得る。
【0014】
前記状態診断部は、前記内部ガスの発生程度が警告に決定された場合、前記バッテリーセルの状態を警告状態に診断し、前記バッテリーセルの最大許容温度及び最大許容充電状態のうち少なくとも一つを減少させるように構成され得る。
【0015】
前記状態診断部は、前記内部ガスの発生程度が危険に決定された場合、前記バッテリーセルの状態を使用不可能状態に診断するように構成され得る。
【0016】
本発明の他面によるバッテリー診断装置は、前記バッテリーセルの温度、電圧及び電流のうち少なくとも一つを測定するように構成された測定部と、測定された電圧及び電流のうち少なくとも一つに基づいて前記バッテリーセルの充電状態を推定するように構成された充電状態推定部と、をさらに含み得る。
【0017】
前記オーム抵抗決定部は、前記測定部によって測定された前記バッテリーセルの温度及び前記充電状態推定部によって推定された前記バッテリーセルの充電状態に基づいて、前記複数のインピーダンスプロファイルのうち所定の条件を満たす一つ以上のインピーダンスプロファイルを選択するように構成され得る。
【0018】
前記抵抗変化率算出部は、前記オーム抵抗決定部によって選択されたインピーダンスプロファイルに基盤して前記抵抗変化率を算出するように構成され得る。
【0019】
前記オーム抵抗決定部は、前記複数のインピーダンスプロファイルのうち対応する前記バッテリーセルの温度が基準温度以上であり、かつ対応する前記バッテリーセルの充電状態が基準充電状態以上であるインピーダンスプロファイルを選択するように構成され得る。
【0020】
本発明のさらに他面によるバッテリー診断装置は、前記複数のインピーダンスプロファイルの各々から電荷移動抵抗を決定するように構成された電荷移動抵抗決定部をさらに含み得る。
【0021】
前記抵抗変化率算出部は、決定された複数の電荷移動抵抗間の電荷移動抵抗変化率をさらに算出するように構成され得る。
【0022】
前記状態診断部は、算出された電荷移動抵抗変化率と基準抵抗値を比較した結果に基づいて前記バッテリーセルの状態をさらに診断するように構成され得る。
【0023】
前記状態診断部は、前記算出された電荷移動抵抗変化率が前記基準抵抗値未満である場合、前記バッテリーセルの状態を正常状態に診断するように構成され得る。
【0024】
前記状態診断部は、前記算出された電荷移動抵抗変化率が前記基準抵抗値以上である場合、前記バッテリーセルの状態を警告状態に診断し、前記バッテリーセルの充電及び放電に対する最大許容C-rateを減少させるように構成され得る。
【0025】
本発明のさらに他面によるバッテリー診断システムは、本発明の一面によるバッテリー診断装置と、前記バッテリーセルに交流電流を出力し、前記交流電流の出力結果によって前記バッテリーセルのインピーダンスを実部と虚部との対応関係として示すインピーダンスプロファイルを生成し、生成されたインピーダンスプロファイルを前記バッテリー診断装置に出力するように構成されたEIS部と、を含み得る。
【0026】
本発明のさらに他面によるバッテリー診断システムは、前記バッテリーセルの温度が基準温度以上になるように前記バッテリーセルの温度を上昇させるように構成されたヒーティング部と、前記バッテリーセルの充電状態が基準充電状態以上になるように前記バッテリーセルを充電させるように構成された充電部と、をさらに含み得る。
【0027】
本発明のさらに他面によるバッテリーパックは、本発明の一面によるバッテリー診断装置を含み得る。
【0028】
本発明のさらに他面によるバッテリー診断方法は、バッテリーセルに対して相異なる時点で生成された複数のインピーダンスプロファイルの各々から前記バッテリーセルのオーム抵抗を決定するオーム抵抗決定段階と、決定された複数のオーム抵抗間の抵抗変化率を算出する抵抗変化率算出段階と、算出された抵抗変化率に基づいて前記バッテリーセルの内部ガスの発生程度を決定するガス発生程度決定段階と、決定された内部ガスの発生程度によって前記バッテリーセルの状態を診断する状態診断段階と、を含み得る。
【発明の効果】
【0029】
本発明の一面によると、バッテリーセルのオーム抵抗とバッテリーセルの内部ガス発生程度との相関関係に基づき、バッテリーセルのオーム抵抗の抵抗変化率からバッテリーセルの内部ガスの発生程度及び状態が非破壊的に診断可能であるという長所がある。
【0030】
本発明の効果は上述した効果に制限されず、言及されていない本発明の他の効果は請求範囲の記載から当業者により明らかに理解されるだろう。
【0031】
本明細書に添付される次の図面は、本発明の望ましい実施例を例示するものであり、発明の詳細な説明とともに本発明の技術的な思想をさらに理解させる役割をするため、本発明は図面に記載された事項だけに限定されて解釈されてはならない。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】本発明の一実施例によるバッテリー診断装置を概略的に示した図である。
【
図2】本発明の一実施例によるインピーダンスプロファイルを概略的に示した図である。
【
図3】本発明の一実施例による複数のインピーダンスプロファイルを概略的に示した図である。
【
図4】本発明の一実施例による他の複数のインピーダンスプロファイルを概略的に示した図である。
【
図5】本発明の他の実施例によるバッテリー診断システムを概略的に示した図である。
【
図6】本発明のさらに他の実施例によるバッテリーパックの例示的構成を概略的に示した図である。
【
図7】本発明のさらに他の実施例によるバッテリー診断方法を概略的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、添付された図面を参照して本発明の望ましい実施例を詳しく説明する。これに先立ち、本明細書及び特許請求の範囲に使われた用語や単語は通常的や辞書的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者自らは発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義できるという原則に則して本発明の技術的な思想に応ずる意味及び概念で解釈されねばならない。
【0034】
したがって、本明細書に記載された実施例及び図面に示された構成は、本発明のもっとも望ましい一実施例に過ぎず、本発明の技術的な思想のすべてを代弁するものではないため、本出願の時点においてこれらに代替できる多様な均等物及び変形例があり得ることを理解せねばならない。
【0035】
また、本発明に関連する公知の機能または構成についての具体的な説明が、本発明の要旨をぼやかすと判断される場合、その説明を省略する。
【0036】
第1、第2などのように序数を含む用語は、多様な構成要素のうちいずれか一つを残りと区別する目的として使用され、このような用語によって構成要素が限定されることではない。
【0037】
なお、明細書の全体にかけて、ある部分が、ある構成要素を「含む」とするとき、これは特に反する記載がない限り、他の構成要素を除くことではなく、他の構成要素をさらに含み得ることを意味する。
【0038】
さらに、明細書の全体に亘って、ある部分が他の部分と「連結(接続)」されているとするとき、これは、「直接的に連結(接続)」されている場合のみならず、その中間に他の素子を介して「間接的に連結(接続)」されている場合も含む。
【0039】
以下では、添付された図面を参照して本発明の望ましい実施例を説明する。
【0040】
図1は、本発明の一実施例によるバッテリー診断装置100を概略的に示した図である。
【0041】
図1を参照すると、バッテリー診断装置100は、オーム抵抗決定部110、抵抗変化率算出部120、ガス発生程度決定部130及び状態診断部140を含み得る。
【0042】
オーム抵抗決定部110は、バッテリーセルに対して相異なる時点で生成された複数のインピーダンスプロファイルの各々から前記バッテリーセルのオーム抵抗Roを決定するように構成され得る。
【0043】
ここで、バッテリーセルは、負極端子及び正極端子を備え、物理的に分離可能な一つの独立したバッテリーセルを意味し得る。一例で、パウチ型リチウムポリマーセル一つがバッテリーセルとして看做され得る。
【0044】
また、インピーダンスプロファイルは、バッテリーセルのインピーダンスを実部Zreと虚部-Zimとの対応関係として示したプロファイルであり得る。インピーダンスプロファイルについては、
図2及び
図3を参照して具体的に説明する。
【0045】
図2は、本発明の一実施例によるインピーダンスプロファイルを概略的に示した図である。具体的には、
図2は、インピーダンスプロファイルの一例を概略的に示した図である。
【0046】
図2を参照すると、インピーダンスプロファイルは、Xを実部Zreに設定し、Yを虚部-Zimに設定したときのX-Y平面グラフとして示され得る。
図2の実施例において、バッテリーセルのオーム抵抗は、インピーダンスプロファイルの開始抵抗値であり得る。具体的には、インピーダンスプロファイルにおいて、虚部-Zimの値が0であるときの実部Zreの抵抗値がバッテリーセルのオーム抵抗であり得る。オーム抵抗は、公知の因子であることから、オーム抵抗そのものについての説明は省略する。
【0047】
図3は、本発明の一実施例による複数のインピーダンスプロファイルを概略的に示した図である。具体的には、
図3は、オーム抵抗決定部110が獲得した複数のインピーダンスプロファイルを示した図である。
【0048】
図3の実施例において、オーム抵抗決定部110は、第1~第9インピーダンスプロファイルP1~P9を獲得し得る。望ましくは、第1~第9インピーダンスプロファイルP1~P9は、一つのバッテリーセルに対して相異なる時点で生成されたインピーダンスプロファイルであり得る。例えば、第1~第9インピーダンスプロファイルP1~P9は、温度及び充電状態(State of charge;SOC)が所定の範囲内に含まれる条件で、一つのバッテリーセルに対して24時間の間隔を置いて測定されたインピーダンスに対するインピーダンスプロファイルであり得る。ここで、望ましくは、第1インピーダンスプロファイルP1が最も先に生成され、第9インピーダンスプロファイルP9が最も後に生成され得る。
【0049】
そして、
図3の実施例において、オーム抵抗決定部110は、第1~第9インピーダンスプロファイルP1~P9の各々からオーム抵抗を決定し得る。具体的には、オーム抵抗決定部110は、第1~第9インピーダンスプロファイルP1~P9の各々から、虚部-Zimの値が0であるときの実部Zreの抵抗値を当該インピーダンスプロファイルに対するオーム抵抗に決定し得る。望ましくは、
図3の実施例において、第1インピーダンスプロファイルP1のオーム抵抗が最も小さく、第9インピーダンスプロファイルP9のオーム抵抗が最も大きい。
【0050】
抵抗変化率算出部120は、決定された複数のオーム抵抗間の抵抗変化率を算出するように構成され得る。
【0051】
具体的には、抵抗変化率算出部120は、オーム抵抗決定部110によって決定された複数のオーム抵抗間の抵抗変化率を算出し得る。望ましくは、抵抗変化率算出部120は、複数のインピーダンスプロファイルが生成された時点を考慮し、複数のオーム抵抗間の抵抗変化率を算出し得る。
【0052】
例えば、
図3の実施例において、抵抗変化率算出部120は、第1インピーダンスプロファイルP1のオーム抵抗を基準にして設定し、第1~第9インピーダンスプロファイルP1~P9のオーム抵抗間の抵抗変化率を算出し得る。
【0053】
例えば、オーム抵抗決定部110によって第1~第nインピーダンスプロファイルの各々のオーム抵抗がRo_1~Ro_nに決定されたと仮定する。抵抗変化率算出部120は、Ro_1に対するRo_nの割合を抵抗変化率として算出し得る。この場合、抵抗変化率算出部120は、「Ro_n÷Ro_1」の数式を計算し、抵抗変化率を算出し得る。
【0054】
他の例で、抵抗変化率算出部は、Ro_1に対するRo_nとRo_1との差の割合を抵抗変化率として算出し得る。この場合、抵抗変化率算出部120は「(Ro_n-Ro_1)÷Ro_1」の数式を計算し、抵抗変化率を算出し得る。
【0055】
ガス発生程度決定部130は、算出された抵抗変化率に基づいて前記バッテリーセルの内部ガスの発生程度を決定するように構成され得る。即ち、ガス発生程度決定部130は、抵抗変化率算出部120によって算出された抵抗変化率に基づいてバッテリーセルの内部ガスの発生程度を決定し得る。
【0056】
具体的には、前記ガス発生程度決定部130は、予め設定された基準変化率区間のうち前記算出された抵抗変化率が属する区間に基づいて前記バッテリーセルの内部ガスの発生程度を決定するように構成され得る。
【0057】
例えば、基準変化率区間は、第1区間、第2区間及び第3区間に予め設定され得る。以下では、基準変化率区間が第1~第3区間に設定されたことに説明するが、基準変化率区間は、より細分化して設定され得る。
【0058】
望ましくは、基準変化率区間は、前記内部ガスの発生程度によって第1基準抵抗変化率未満の第1区間、前記第1基準抵抗変化率以上かつ第2基準抵抗変化率未満の第2区間、及び前記第2基準抵抗変化率以上の第3区間に予め設定されるように構成され得る。
【0059】
ガス発生程度決定部130は、算出された抵抗変化率を基準変化率区間に代入して、算出された抵抗変化率が属する区間を決定し得る。即ち、ガス発生程度決定部130は、基準変化率区間で算出された抵抗変化率が属する区間を決定し得る。
【0060】
例えば、前記ガス発生程度決定部130は、前記算出された抵抗変化率が前記第1区間に属する場合、前記内部ガスの発生程度を正常に決定し、前記算出された抵抗変化率が前記第2区間に属する場合、前記内部ガスの発生程度を警告に決定し、前記算出された抵抗変化率が前記第3区間に属する場合、前記内部ガスの発生程度を危険に決定するように構成され得る。
【0061】
状態診断部140は、決定された内部ガスの発生程度によって前記バッテリーセルの状態を診断するように構成され得る。即ち、状態診断部140は、ガス発生程度決定部130によって決定された内部ガスの発生程度によってバッテリーセルの状態を診断し得る。
【0062】
例えば、前述した実施例で、ガス発生程度決定部130は、算出された抵抗変化率に基づいて内部ガスの発生程度を、正常、警告または危険に決定し得る。これに対応するように、状態診断部140は、バッテリーセルの状態を、正常状態、警告状態または使用不可能状態に診断し得る。
【0063】
具体的には、状態診断部140は、前記内部ガスの発生程度が正常に決定された場合、前記バッテリーセルの状態を正常状態に診断するように構成され得る。
【0064】
また、状態診断部140は、前記内部ガスの発生程度が警告に決定された場合、前記バッテリーセルの状態を警告状態に診断するように構成され得る。望ましくは、状態診断部140は、バッテリーセルの内部ガスの発生を抑制するために、前記バッテリーセルの最大許容温度及び最大許容充電状態のうち少なくとも一つを減少させるように構成され得る。即ち、当該バッテリーセルに対しては、最大許容温度及び最大許容充電状態のうち少なくとも一つが減少するように設定され得る。
【0065】
また、状態診断部140は、前記内部ガスの発生程度が危険に決定された場合、前記バッテリーセルの状態を使用不可能状態に診断するように構成され得る。
【0066】
即ち、本発明の一実施例によるバッテリー診断装置100は、バッテリーセルのオーム抵抗とバッテリーセルの内部ガスの発生程度との相関関係に基づき、バッテリーセルのオーム抵抗の抵抗変化率からバッテリーセルの内部ガスの発生程度及び状態を非破壊的に診断可能であるという長所がある。例えば、バッテリーセルの内部ガスの発生量が増加すると、内部ガスによって電極内の電子伝達力が低下し、電解質のイオン伝導度の減少によってバッテリーセルのオーム抵抗が敏感に増加し得る。これによって、バッテリー診断装置100は、このようなオーム抵抗と内部ガス発生量との関係を考慮することで、オーム抵抗の抵抗変化率に基づいてバッテリーセルのガス発生程度及び状態を診断可能である。
【0067】
例えば、再使用のために収集された複数のバッテリーセルの状態を診断するとき、本発明の一実施例によるバッテリー診断装置100が用いられ得る。バッテリー診断装置100は、複数のバッテリーセルの各々に対する複数のインピーダンスプロファイルを獲得し、獲得された複数のインピーダンスプロファイルに基づいて複数のバッテリーセルの各々の内部ガスの発生程度及び状態を非破壊的に診断し得る。正常状態に診断されたバッテリーセルは、追加的な設定変更なく再使用可能であるが、警告状態に診断されたバッテリーセルは、最大許容温度及び最大許容充電状態のうち少なくとも一つが減少するように設定された後に再使用され得る。また、使用不可能状態に診断されたバッテリーセルは、再使用されない。このように、本発明の一実施例によると、バッテリーセルのオーム抵抗を用いてバッテリーセルの内部ガスの発生程度及び状態が迅速かつ簡便に診断可能であるため、バッテリーセルの状態診断の効率が向上する。
【0068】
一方、バッテリー診断装置100は、保存部(図示せず)をさらに含み得る。保存部は、バッテリー診断装置100に必要なプログラム及びデータなどを保存し得る。即ち、保存部は、バッテリー診断装置100の各構成要素が動作及び機能を行うのに必要なデータやプログラム、または動作及び機能が行われる過程で生成されるデータなどを保存し得る。保存部は、データを記録、消去、更新及び読出可能な公知の情報保存手段であれば、その種類は特に制限されない。一例として、情報保存手段には、RAM、フラッシュメモリー(登録商標)、ROM、EEPROM、レジスターなどが挙げられる。また、保存部は、バッテリー診断装置100の各構成要素によって実行可能なプロセスが定義されたプログラムコードを保存し得る。
【0069】
図1を参照すると、バッテリー診断装置100は、測定部150及び充電状態推定部160をさらに含み得る。
【0070】
測定部150は、前記バッテリーセルの温度、電圧及び電流のうち少なくとも一つを測定するように構成され得る。
【0071】
望ましくは、測定部150は、バッテリーセルの温度を測定し得る。そして、測定部150は、バッテリーセルの電圧及び電流のうち少なくとも一つを測定し得る。
【0072】
より望ましくは、測定部150は、バッテリーセルの温度、電圧及び電流を全て測定し得る。
【0073】
充電状態推定部160は、測定された電圧及び電流のうち少なくとも一つに基づいて前記バッテリーセルの充電状態を推定するように構成され得る。
【0074】
例えば、充電状態推定部160は、拡張カルマンフィルター(Extended kalman filter;EKF)を用いてバッテリーセルの充電状態を推定し得る。他の例で、充電状態推定部160は、測定部150によって測定されるバッテリーセルの電流を積算する電流積算法(Coulomb counting, Ampere counting)を用いてバッテリーセルの充電状態を推定し得る。充電状態推定部160がバッテリーセルの充電状態を推定する方式は、公知の方式を用い得るので、これについての詳しい説明は省略する。
【0075】
前記オーム抵抗決定部110は、前記測定部150によって測定された前記バッテリーセルの温度と、前記充電状態推定部160によって推定された前記バッテリーセルの充電状態と、に基づいて、前記複数のインピーダンスプロファイルのうち所定の条件を満たす一つ以上のインピーダンスプロファイルを選択するように構成され得る。
【0076】
具体的には、オーム抵抗決定部110は、複数のインピーダンスプロファイルのうちバッテリーセルの温度と充電状態が所定の条件を満たすインピーダンスプロファイルのみを選択し得る。例えば、オーム抵抗決定部110が100個のインピーダンスプロファイルを獲得しても、バッテリーセルの温度と充電状態が所定の条件を満たすインピーダンスプロファイルが10個であれば、オーム抵抗決定部110は、当該10個のインピーダンスプロファイルのみを選択し得る。
【0077】
そして、抵抗変化率算出部120は、オーム抵抗決定部110によって選択されたインピーダンスプロファイルに基づいて前記抵抗変化率を算出するように構成され得る。
【0078】
例えば、前述した実施例において、オーム抵抗決定部110が100個のインピーダンスプロファイルのうち10個のインピーダンスプロファイルのみを選択した場合、オーム抵抗決定部110は、10個のインピーダンスプロファイルの各々からバッテリーセルのオーム抵抗を決定し得る。そして、抵抗変化率算出部120は、決定された10個のオーム抵抗間の抵抗変化率を算出し得る。
【0079】
以下では、
図3及び
図4を参照して、オーム抵抗決定部110がインピーダンスプロファイルを選択する条件についてより具体的に説明する。
【0080】
図4は、本発明の一実施例による他の複数のインピーダンスプロファイルを概略的に示した図である。
【0081】
前記オーム抵抗決定部110は、前記複数のインピーダンスプロファイルのうち、対応する前記バッテリーセルの温度が基準温度以上であり、対応する前記バッテリーセルの充電状態が基準充電状態以上であるインピーダンスプロファイルを選択するように構成され得る。
【0082】
通常、バッテリーセルの充電状態が一定の水準以上である場合、バッテリーセルの温度が高くなるほどバッテリーセルの内部ガス発生量が増加し得る。即ち、バッテリーセルの充電状態が一定の水準未満である場合には、バッテリーセルの内部ガス発生量そのものが少ないため、バッテリーセルが高温であるとしてもバッテリーセルの内部ガス発生量が増加しない。これによって、バッテリーセルの内部ガス発生量に関わるバッテリーセルのオーム抵抗は、バッテリーセルの温度及び充電状態が両方とも所定の条件を満たす場合に増加可能である。
【0083】
具体的には、
図3に示した複数のインピーダンスプロファイルは、バッテリーセルの温度が基準温度以上であり、バッテリーセルの充電状態が基準充電状態以上である場合に生成されたインピーダンスプロファイルである。
【0084】
例えば、
図3の実施例において、基準温度は40℃であり、バッテリーセルの温度は55℃であり、基準充電状態は90%であり、バッテリーセルの充電状態は100%であり得る。即ち、
図3に示した複数のインピーダンスプロファイルは、高温及び完全充電状態のバッテリーセルに対して一定の周期で生成されたインピーダンスプロファイルである。
【0085】
逆に、
図4に示した複数のインピーダンスプロファイルは、バッテリーセルの温度が基準温度以上であるが、バッテリーセルの充電状態は基準充電状態未満である場合に生成されたインピーダンスプロファイルである。
【0086】
例えば、
図4の実施例において、基準温度は40℃であり、バッテリーセルの温度は55℃であり、基準充電状態は90%であり、バッテリーセルの充電状態は0%であり得る。即ち、
図4に示した複数のインピーダンスプロファイルは、高温及び完全放電状態のバッテリーセルに対して一定の周期で生成されたインピーダンスプロファイルである。
【0087】
また、
図3及び
図4の複数のインピーダンスプロファイルは、バッテリーセルに同じ電流を出力して測定されたインピーダンスに対するプロファイルである。即ち、
図3及び
図4のインピーダンスプロファイル間の差は、測定当時のバッテリーセルの充電状態である。
【0088】
図3を参照すると、時間が経過するほど(例えば、第1インピーダンスプロファイルP1から第9インピーダンスプロファイルP9へ進むほど)バッテリーセルのオーム抵抗が増加することを明確に確認できる。
【0089】
一方、
図4を参照すると、時間が経過してもバッテリーセルのオーム抵抗は、近似範囲内で維持されることを確認することができる。これは、
図4の場合、バッテリーセルの充電状態が0%であることからバッテリーセルの内部ガス自体が発生しないか、または発生量自体が少ないため、バッテリーセルの温度が高温であるとしてもバッテリーセルのオーム抵抗は、近似範囲内で維持されるのである。
【0090】
即ち、バッテリーセルの内部ガスの発生程度と、バッテリーセルのオーム抵抗の抵抗変化率との相関関係を考慮してバッテリーセルの状態を診断するためには、インピーダンスが測定される当時のバッテリーセルの温度が基準温度以上であり、かつバッテリーセルの充電状態が基準充電状態以上でなければならない。
【0091】
例えば、
図4の実施例によると、バッテリーセルが深刻に退化して使用不可能状態である場合にも、オーム抵抗の抵抗変化率が非常に小さいことから、内部ガスの発生程度が正常であり、バッテリーセルの状態が正常状態であると誤診断されてしまう問題がある。具体的には、
図4の実施例によると、バッテリーセルの内部ガスそのものが発生しないか、または発生量そのものが少ないため、オーム抵抗の抵抗変化率が低く算出され、低く算出された抵抗変化率によってバッテリーセルが正常状態であることに誤診断されることがある。
【0092】
そこで、本発明の一実施例によるバッテリー診断装置100は、インピーダンスが測定される当時のバッテリーセルの温度及び充電状態を全て考慮することで、バッテリーセルの内部ガスの発生程度及び状態をより正確に診断可能であるという長所がある。
【0093】
図1を参照すると、バッテリー診断装置100は、電荷移動抵抗決定部170をさらに含み得る。
【0094】
電荷移動抵抗決定部170は、前記複数のインピーダンスプロファイルの各々から電荷移動抵抗(Charge transfer resistance;Rct)を決定するように構成され得る。
【0095】
ここで、電荷移動抵抗とは、電極物質界面におけるリチウムイオンの酸化反応または還元反応によって発生する抵抗を示す。電荷移動抵抗は公知であるため、電荷移動抵抗そのものについての説明は省略する。
【0096】
前述したように、インピーダンスプロファイルで虚部-Zimの値が0である場合の実部Zreの抵抗値がバッテリーセルのオーム抵抗Roであり、これはオーム抵抗決定部110によって決定され得る。
【0097】
これと異なり、電荷移動抵抗Rctは、バッテリーセルのオーム抵抗Roと、インピーダンスプロファイルにおけるターゲットピークTPの抵抗値RTPと間の差に基づいて決定され得る。インピーダンスプロファイルの特性上、ターゲットピークTPの抵抗値RTPはいつもオーム抵抗Roよりも大きさため、電荷移動抵抗は「ターゲットピークTPの抵抗値RTP-オーム抵抗Ro」の数式によって決定され得る。
【0098】
即ち、電荷移動抵抗決定部170は、複数のインピーダンスプロファイルの各々からターゲットピークTPを決定し、決定されたターゲットピークTPの抵抗値RTPと、オーム抵抗決定部110によって決定されたオーム抵抗Roとの差に基づいて各々のインピーダンスプロファイルの電荷移動抵抗を決定し得る。
【0099】
例えば、
図2の実施例において、インピーダンスプロファイルは、ターゲットピークTPを含み得る。具体的に、ターゲットピークTPは、インピーダンスプロファイルにおいて、実部Zreに対する虚部-Zimの瞬間変化率が0でありながら、下方へ膨らんだ概形のピークであり得る。即ち、ターゲットピークTPを基準にして、実部Zreの抵抗値が増加するほど実部Zreに対する虚部-Zimの瞬間変化率が負から正に変わり得る。
【0100】
例えば、
図3の実施例において、電荷移動抵抗決定部170は、第1~第9インピーダンスプロファイルP1~P9の各々に対して電荷移動抵抗を決定し得る。ここで、第1インピーダンスプロファイルP1の電荷移動抵抗が最も小さく、第9インピーダンスプロファイルP9の電荷移動抵抗が最も大きくなり得る。即ち、第1~第9インピーダンスプロファイルP1~P9の電荷移動抵抗の大きさは順次に増加し得る。
【0101】
前記抵抗変化率算出部120は、決定された複数の電荷移動抵抗間の電荷移動抵抗変化率をさらに算出するように構成され得る。
【0102】
即ち、抵抗変化率算出部120は、オーム抵抗決定部110によって決定された複数のオーム抵抗については抵抗変化率を算出し、電荷移動抵抗決定部170によって決定された複数の電荷移動抵抗については、電荷移動抵抗変化率を算出し得る。
【0103】
前記状態診断部140は、算出された電荷移動抵抗変化率と基準抵抗値を比較した結果に基づいて前記バッテリーセルの状態をさらに診断するように構成され得る。
【0104】
具体的には、前記状態診断部140は、前記算出された電荷移動抵抗変化率が前記基準抵抗値未満である場合、前記バッテリーセルの状態を正常状態に診断するように構成され得る。
【0105】
また、状態診断部140は、前記算出された電荷移動抵抗変化率が前記基準抵抗値以上である場合、前記バッテリーセルの状態を警告状態に診断するように構成され得る。そして、状態診断部140は、前記バッテリーセルの充電及び放電に対する最大許容C-rateを減少させるように構成され得る。ここで、C-rate(Current rate)とは、バッテリーセルの充放電率を意味する。
【0106】
即ち、状態診断部140は、バッテリーセルの状態が警告状態に診断された場合、電荷移動抵抗を減少させるために、バッテリーセルの最大許容C-rateを減少させ得る。したがって、バッテリーセルに充電C-rate及び放電C-rateの最大許容値が減少し得る。
【0107】
例えば、再使用のために収集された複数のバッテリーセルの状態を診断するとき、本発明の一実施例によるバッテリー診断装置100は、オーム抵抗のみならず、電荷移動抵抗をさらに考慮し得る。電荷移動抵抗に基づいて正常状態に診断されたバッテリーセルは、追加的な設定変更なく再使用可能であるが、警告状態に診断されたバッテリーセルは、最大許容C-rateが減少するように設定された後に再使用され得る。
【0108】
このように、本発明の一実施例によるバッテリー診断装置100は、インピーダンスプロファイルから決定されたバッテリーセルのオーム抵抗に基づいてバッテリーセルの状態を診断できるのみならず、インピーダンスプロファイルから決定された電荷移動抵抗に基づいてもバッテリーセルの状態が診断可能である。即ち、バッテリー診断装置100は、二つの方式でバッテリーセルの状態が診断可能であるので、バッテリーセルの状態をより正確に診断することができる。
【0109】
図5は、本発明の他の実施例によるバッテリー診断システム10を概略的に示した図である。
【0110】
図5を参照すると、バッテリー診断システム10は、バッテリー診断装置100及びEIS部200を含み得る。
【0111】
EIS部200は、前記バッテリーセルに交流電流を出力し、前記交流電流の出力結果によって前記バッテリーセルのインピーダンスを実部Zre及び虚部-Zimとの対応関係として示すインピーダンスプロファイルを生成するように構成され得る。
【0112】
具体的には、EIS部200は、電気化学的インピーダンス分光法(Electrochemical Impedance Spectroscopy;EIS)を実施するための構成であり得る。したがって、EIS部200は、バッテリーセルに微小な交流電流を印加してバッテリーセルのインピーダンスを計測し、インピーダンスを実部Zreと虚部-Zimとの対応関係を示すインピーダンスプロファイルを生成し得る。
【0113】
EIS部200は、生成されたインピーダンスプロファイルを前記バッテリー診断装置100に出力するように構成され得る。
【0114】
例えば、EIS部200は、生成したインピーダンスプロファイルをバッテリー診断装置100のオーム抵抗決定部110及び電化移動決定部170に送信し得る。
【0115】
他の例で、EIS部200は、生成したインピーダンスプロファイルをバッテリー診断装置100の保存部に送信し得る。この場合、オーム抵抗決定部110及び電解移動抵抗決定部170は、保存部にアクセスして、EIS部200によって生成されたインピーダンスプロファイルを獲得し得る。
【0116】
また、
図5を参照すると、バッテリー診断システム10は、ヒーティング部300及び充電部400をさらに含み得る。
【0117】
ヒーティング部300は、前記バッテリーセルの温度が基準温度以上になるように前記バッテリーセルの温度を上昇させるように構成され得る。
【0118】
充電部400は、前記バッテリーセルの充電状態が基準充電状態以上になるよう、前記バッテリーセルを充電するように構成され得る。
【0119】
望ましくは、ヒーティング部300及び充電部400は、バッテリー管理装置によって動作が制御され得る。例えば、ヒーティング部300及び充電部400は、状態診断部140によって動作が制御され得る。
【0120】
前述したように、
図3を参照すると、バッテリーセルの温度が基準温度以上であり、バッテリーセルの充電状態が基準充電状態以上である場合に、複数のインピーダンスプロファイルにおいてバッテリーセルのオーム抵抗が次第に増加できる。
【0121】
したがって、ヒーティング部300によってバッテリーセルの温度が基準温度以上になり、充電部400によってバッテリーセルの充電状態が基準充電状態以上になることが可能であるため、このような条件でEIS部200によって生成されたインピーダンスプロファイルは、バッテリーセルの状態の診断に用いられるインピーダンスプロファイルとして選択され得る。即ち、このような条件で生成されたインピーダンスプロファイルに基づき、バッテリーセルの状態が診断され得る。
【0122】
したがって、バッテリー診断システム10は、バッテリーセルの温度及び充電状態が所定の条件を満たす場合のみに対応するインピーダンスプロファイルに基づいてバッテリーセルの状態が診断可能であるため、バッテリーセルの状態診断の正確度及び信頼度が高い。
【0123】
本発明によるバッテリー診断装置100は、BMS(Battery Management System)に適用可能である。即ち、本発明によるBMSは、上述したバッテリー診断装置100を含み得る。このような構成において、バッテリー診断装置100の各構成要素のうち少なくとも一部は、従来のBMSに含まれた構成の機能を補完または追加することで具現され得る。
【0124】
また、本発明によるバッテリー診断装置100は、バッテリーパック1に備えられ得る。即ち、本発明によるバッテリーパック1は、上述したバッテリー診断装置100及び一つ以上のバッテリーセルを含み得る。また、バッテリーパック1は、電装品(リレー、ヒューズなど)及びケースなどをさらに含み得る。
【0125】
図6は、本発明のさらに他の実施例によるバッテリーパック1の例示的構成を概略的に示した図である。
図6を参照すると、バッテリーパック1には、バッテリー診断装置100、EIS部200、ヒーティング部300及び充電部400が備えられ得る。
【0126】
例えば、
図6の実施例において、バッテリー診断装置100は、第1~第4センシングラインSL1、SL2、SL3、SL4と接続され得る。望ましくは、第1~第4センシングラインSL1、SL2、SL3、SL4は、バッテリー診断装置100の測定部150と接続され得る。
【0127】
測定部150は、第1センシングラインSL1を介してバッテリーセルBの温度を測定し得る。
【0128】
また、測定部150は、第2センシングラインSL2を介してバッテリーセルBの正極電圧を測定し、第3センシングラインSL3を介してバッテリーセルBの負極電圧を測定し得る。そして、測定部150は、測定されたバッテリーセルBの正極電圧と負極電圧との差を算出し、バッテリーセルBの電圧を測定し得る。
【0129】
また、測定部150は、第4センシングラインSL4を介して電流測定素子Aと接続され得る。ここで、電流測定素子Aは、電流計またはシャント抵抗であり得る。これによって、測定部150は、第4センシングラインSL4を介してバッテリーセルBの電流を測定し得る。
図7では、望ましい実施例として電流測定素子AがバッテリーセルBの負極とバッテリーパック1の負極端子P-との間に備えられた実施例を示したが、電流測定素子Aは、バッテリーセルBの正極とバッテリーパック1の正極端子P+との間にも備えられ得ることに留意する。
【0130】
EIS部200は、一端がバッテリーパック1の正極端子P+とバッテリーセルBの正極との間に接続され、他端がバッテリーパック1の負極端子P-とバッテリーセルBの負極との間に接続され得る。そして、EIS部200は、微小な交流電流を出力した後、バッテリーセルBのインピーダンスを測定し得る。その後、EIS部200は、バッテリーセルBのインピーダンスプロファイルを生成してバッテリー診断装置100に送信し得る。
【0131】
ヒーティング部300の一端はバッテリーセルBの正極に接続され、他端はバッテリーセルBの負極に接続され得る。そして、ヒーティング部300の動作は、バッテリー診断装置100(特に、状態診断部140)によって制御され、ヒーティング部300が動作されると、バッテリーセルBの温度が上昇し得る。
【0132】
充電部400の一端は、バッテリーパック1の正極端子P+に接続され、他端は、バッテリーパック1の負極端子P-に接続され得る。他の実施例で、充電部400は、ヒーティング部300と同様に、一端がバッテリーセルBの正極に直接接続され、他端がバッテリーセルBの負極に直接接続され得る。充電部400の動作は、バッテリー診断装置100(特に、状態診断部140)によって制御され、充電部400が動作されると、バッテリーセルBが充電され得る。
【0133】
図7は、本発明のさらに他の実施例によるバッテリー診断方法を概略的に示した図である。
【0134】
ここで、バッテリー診断方法の各段階は、バッテリー診断装置100によって行われ得る。以下では、説明の便宜のために、前述した内容と重複する内容は簡略に説明するか、または省略する。
【0135】
バッテリーの診断方法は、オーム抵抗決定段階S100、抵抗変化率算出段階S200、ガス発生程度決定段階S300及び状態診断段階S400を含み得る。
【0136】
オーム抵抗決定段階S100は、バッテリーセルBに対して相異なる時点で生成された複数のインピーダンスプロファイルの各々から前記バッテリーセルBのオーム抵抗を決定する段階であって、オーム抵抗決定部110によって行われ得る。
【0137】
例えば、
図4の実施例において、オーム抵抗決定部110は、第1~第9インピーダンスプロファイルP1~P9を獲得し得る。そして、オーム抵抗決定部110は、第1~第9インピーダンスプロファイルP1~P9の各々からバッテリーセルBのオーム抵抗を決定し得る。
【0138】
抵抗変化率算出段階S200は、決定された複数のオーム抵抗間の抵抗変化率を算出する段階であって、抵抗変化率算出部120によって行われ得る。
【0139】
例えば、
図4の実施例において、オーム抵抗決定部110によって第1~第9インピーダンスプロファイルP1~P9の各々からオーム抵抗が決定された場合、抵抗変化率算出部120は、9個のオーム抵抗に対する抵抗変化率を算出し得る。
【0140】
ガス発生程度決定段階S300は、算出された抵抗変化率に基づいて前記バッテリーセルBの内部ガスの発生程度を決定する段階であって、ガス発生程度決定部130によって行われ得る。
【0141】
ガス発生程度決定部130は、抵抗変化率算出部120によって算出された抵抗変化率を予め設定された基準変化率区間に代入することで、算出された抵抗変化率が属する区間に対応する内部ガスの発生程度を決定し得る。
【0142】
状態診断段階S400は、決定された内部ガスの発生程度によって前記バッテリーセルBの状態を診断する段階であって、状態診断部140によって行われ得る。
【0143】
状態診断部140は、ガス発生程度決定部130によって決定されたバッテリーセルBの内部ガスの発生程度に対応するようにバッテリーセルBの状態を診断し得る。
【0144】
例えば、内部ガスの発生程度が正常であれば、状態診断部140は、バッテリーセルBの状態を正常状態に診断し得る。内部ガスの発生程度が警告であれば、状態診断部140は、バッテリーセルBの状態を警告状態に診断し得る。内部ガスの発生程度が危険であれば、状態診断部140は、バッテリーセルBの状態を使用不可能状態に診断し得る。
【0145】
以上で説明した本発明の実施例は、必ずしも装置及びシステムを通じて具現されることではなく、本発明の実施例の構成に対応する機能を実現するプログラムまたはそのプログラムが記録された記録媒体を通じて具現され得、このような具現は、本発明が属する技術分野における専門家であれば、前述した実施例の記載から容易に具現できるはずである。
【0146】
以上、本発明を限定された実施例と図面によって説明したが、本発明はこれに限定されず、本発明の属する技術分野で通常の知識を持つ者によって本発明の技術思想と特許請求の範囲の均等範囲内で多様な修正及び変形が可能であることは言うまでもない。
【0147】
また、上述の本発明は、本発明が属する技術分野における通常の知識を持つ者によって本発明の技術思想から脱しない範囲内で多様な置換、変形及び変更が可能であるため、上述の実施例及び添付された図面によって限定されず、多様な変形が行われるように各実施例の全部または一部を選択的に組み合わせて構成可能である。
【符号の説明】
【0148】
1 バッテリーパック
10 バッテリー診断システム
100 バッテリー診断装置
110 オーム抵抗決定部
120 抵抗変化率算出部
130 ガス発生程度決定部
140 状態診断部
150 測定部
160 充電状態推定部
170 電荷移動抵抗決定部
200 EIS部
300 ヒーティング部
400 充電部
B バッテリーセル