IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社医用工学研究所の特許一覧

<>
  • 特許-医療用注意喚起システム 図1
  • 特許-医療用注意喚起システム 図2
  • 特許-医療用注意喚起システム 図3
  • 特許-医療用注意喚起システム 図4
  • 特許-医療用注意喚起システム 図5
  • 特許-医療用注意喚起システム 図6
  • 特許-医療用注意喚起システム 図7
  • 特許-医療用注意喚起システム 図8
  • 特許-医療用注意喚起システム 図9
  • 特許-医療用注意喚起システム 図10
  • 特許-医療用注意喚起システム 図11
  • 特許-医療用注意喚起システム 図12
  • 特許-医療用注意喚起システム 図13
  • 特許-医療用注意喚起システム 図14
  • 特許-医療用注意喚起システム 図15
  • 特許-医療用注意喚起システム 図16
  • 特許-医療用注意喚起システム 図17
  • 特許-医療用注意喚起システム 図18
  • 特許-医療用注意喚起システム 図19
  • 特許-医療用注意喚起システム 図20
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-04
(45)【発行日】2023-12-12
(54)【発明の名称】医療用注意喚起システム
(51)【国際特許分類】
   G16H 10/60 20180101AFI20231205BHJP
   G06F 3/01 20060101ALI20231205BHJP
【FI】
G16H10/60
G06F3/01 510
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019142186
(22)【出願日】2019-08-01
(65)【公開番号】P2021026381
(43)【公開日】2021-02-22
【審査請求日】2022-06-29
(73)【特許権者】
【識別番号】306032981
【氏名又は名称】株式会社医用工学研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100177921
【弁理士】
【氏名又は名称】坂岡 範穗
(72)【発明者】
【氏名】林 達哉
(72)【発明者】
【氏名】谷 祐児
(72)【発明者】
【氏名】北岡 義国
【審査官】木村 慎太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-176173(JP,A)
【文献】特開2006-338523(JP,A)
【文献】特開2007-094515(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/00-80/00
G06F 3/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療用アプリケーションの画面に注意情報を表示させる医療用注意喚起システムであって、
前記医療用アプリケーションのデータベースの中の重要なデータを識別するための、特定の病名、検査種類、薬、注射、症状、又は検査結果のうち任意に決められた1つ以上のデータを含めて構成される識別情報を記憶する識別情報記憶部と、
前記識別情報を前記医療用アプリケーションのデータベースに照らし合わせて、前記医療用アプリケーションのデータベースの中から前記識別情報に関連するデータを重要事項として抽出して作成する重要事項抽出部と、
前記医療用アプリケーションが前記画面の所定の領域に所定の表示データを表示させるオブジェクトを監視して、前記オブジェクトから前記表示データを取得するオブジェクト監視部と、
前記表示データを前記重要事項抽出部に照らし合わせて、前記重要事項の中から前記表示データに関連するデータを注意事項として抽出して記憶する注意事項抽出記憶部と
前記注意事項を前記画面に表示させる注意事項出力部と、
を備えることを特徴とする医療用注意喚起システム。
【請求項2】
一以上のユーザで構成されるグループ、及び前記注意事項の前記グループ毎の閲覧権限の有無を記憶するグループ記憶部を備え、
前記注意事項抽出記憶部はログインしたユーザが所属するグループの閲覧権限が有る注意事項のみを抽出することを特徴とする請求項1に記載の医療用注意喚起システム。
【請求項3】
前記注意事項出力部が、
前記注意事項が存在する旨を前記画面に表示させる報知部と、
前記注意事項の件数を含む見出しを表示するアラート出力部と、
前記注意事項の内容を前記画面に表示させる詳細出力部と、
を備えることを特徴とする請求項に記載の医療用注意喚起システム。
【請求項4】
前記注意事項出力部が、
前記注意事項が存在する旨を前記画面に表示させる報知部と、
前記注意事項の件数を含む見出しを表示するアラート出力部と、
前記注意事項の内容を前記画面に表示させる詳細出力部と、
を備えることを特徴とする請求項に記載の医療用注意喚起システム。
【請求項5】
前記注意事項抽出記憶部が、前記グループに対する前記注意事項の複数段階のステータスを記憶し、
前記注意事項出力部は、前記ステータス毎に前記ステータスの前記画面への表示又は非表示を設定可能なことを特徴とする請求項2又はに記載の医療用注意喚起システム。
【請求項6】
不要となった前記重要事項及び前記注意事項を抽出して保存するアーカイブ記憶部を備え、
前記注意事項抽出記憶部が、前記グループに対する前記注意事項の複数段階のステータスを記憶し、
前記ステータスが最終ステータスとなったとき又は前記ステータスが最終ステータスとなってから所定の時間が経過したときに、前記注意事項が前記注意事項抽出記憶部から前記アーカイブ記憶部に移動されることを特徴とする請求項2又はに記載の医療用注意喚起システム。
【請求項7】
前記注意事項抽出記憶部が、前記ユーザ毎の前記注意事項の非表示か否かの属性を記憶し、
前記注意事項出力部は、前記ユーザについて非表示の属性が付されている前記注意事項を前記画面に表示させないことを特徴とする請求項2,4ないし6のいずれか1項に記載の医療用注意喚起システム。
【請求項8】
前記注意事項抽出記憶部が、前記ユーザ毎の前記注意事項の保留か否かの属性を記憶し、
前記アラート出力部は、前記ユーザについて保留の属性が付されている前記注意事項の件数を前記画面から消去し、
前記詳細出力部は、前記ユーザについて保留の属性が付されている前記注意事項を前記画面に表示させることを特徴とする請求項に記載の医療用注意喚起システム。
【請求項9】
前記識別情報が、前記ユーザによって付与され、前記医療用アプリケーションのデータベースに記憶されたものであることを特徴とする請求項2,4ないし8のいずれか1項に記載の医療用注意喚起システム。
【請求項10】
医療用アプリケーションの画面に注意情報を表示させる医療用注意喚起システムであって、
前記医療用アプリケーションのデータベースの中の重要なデータを識別するための識別情報を記憶する識別情報記憶部と、
前記識別情報を前記医療用アプリケーションのデータベースに照らし合わせて、前記医療用アプリケーションのデータベースの中から前記識別情報に関連するデータを重要事項として抽出する重要事項抽出部と、
前記医療用アプリケーションが前記画面の所定の領域に所定の表示データを表示させるオブジェクトを監視して、前記オブジェクトから前記表示データを取得するオブジェクト監視部と、
前記表示データを前記重要事項抽出部に照らし合わせて、前記重要事項の中から前記表示データに関連するデータを注意事項として抽出して記憶する注意事項抽出記憶部と
前記注意事項を前記画面に表示させる注意事項出力部と、
一以上のユーザで構成されるグループ、及び前記注意事項の前記グループ毎の閲覧権限の有無を記憶するグループ記憶部と、を備え、
前記注意事項抽出記憶部はログインしたユーザが所属するグループの閲覧権限が有る注意事項のみを抽出し、
前記注意事項出力部が、
前記注意事項が存在する旨を前記画面に表示させる報知部と、
前記注意事項の件数を含む見出しを表示するアラート出力部と、
前記注意事項の内容を前記画面に表示させる詳細出力部と、を備え、
前記注意事項抽出記憶部が、前記ユーザ毎の前記注意事項の保留か否かの属性を記憶し、
前記アラート出力部は、前記ユーザについて保留の属性が付されている前記注意事項の件数を前記画面から消去し、
前記詳細出力部は、前記ユーザについて保留の属性が付されている前記注意事項を前記画面に表示させることを特徴とする医療用注意喚起システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子カルテ等の医療用アプリケーションが表示される画面に、医師等のユーザが注意すべき注意事項を表示させる医療用注意喚起システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、所定の情報の入力時に注意すべき注意情報の見落としを効果的に防止することを目的として、所定の指示ツールの表示要求を医師から受け付けた場合に、各指示ツールの種類と所定の情報を入力する際の注意を医師に促す球を指示ツール上に表示するよう制御する入力受付領域表示方法及び入力受付領域表示装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-257030号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に開示されている技術では、電子カルテ等の医療用アプリケーションにシステムを組み込む必要があり、システムが医療用アプリケーションに依存していた。このため、後からシステムの追加が困難となり、医療用アプリケーションの設計段階又は導入段階からシステムを設ける決定をしなければならなかった。
【0005】
本発明は、上記の点に鑑みなされたもので、医師等のユーザが注意すべき注意事項を画面に表示させるシステムを、電子カルテ等の医療用アプリケーションに依存させずに設置し、後付けも可能となる医療用注意喚起システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の医療用注意喚起システムは、
医療用アプリケーションの画面に注意情報を表示させる医療用注意喚起システムであって、
前記医療用アプリケーションのデータベースの中の重要なデータを識別するための識別情報を記憶する識別情報記憶部と、
前記識別情報を前記医療用アプリケーションのデータベースに照らし合わせて、前記医療用アプリケーションのデータベースの中から前記識別情報に関連するデータを重要事項として抽出して記憶する重要事項抽出部と、
前記医療用アプリケーションが前記画面の所定の領域に所定の表示データを表示させるオブジェクトを監視して、前記オブジェクトから前記表示データを取得するオブジェクト監視部と、
前記表示データを前記重要事項抽出部に照らし合わせて、前記重要事項の中から前記表示データに関連するデータを注意事項として抽出して記憶する注意事項抽出記憶部と
前記注意事項を前記画面に表示させる注意事項出力部と、
を備えることを特徴とする。
【0007】
本発明の医療用注意喚起システムによれば、医療用注意喚起システムが医療用アプリケーションとは別のシステムとして構成される。また、注意事項を抽出するための条件を取得する構成に、画面の所定の領域に所定の内容を表示させるオブジェクトを監視して、このオブジェクトから表示データを取得するオブジェクト監視部を備える。これらにより、電子カルテ等の医療用アプリケーションに改造を加えることなく、また電子カルテ等の医療用アプリケーションの操作に略影響を与えることなく本発明の医療用注意喚起システムを追加することができる。なお、医療用アプリケーションのデータベースとは、電子カルテ等の医療用アプリケーションそのもののデータベースは勿論のこと、該データベースをコピーして二次利用またはバックアップのための二次データ用データベースも含むことを意図する。
【0008】
本発明の医療用注意喚起システムの好ましい例は、
一以上のユーザで構成されるグループ、及び前記注意事項の前記グループ毎の閲覧権限の有無を記憶するグループ記憶部を備え、
前記注意事項抽出記憶部はログインしたユーザが所属するグループの閲覧権限が有る注意事項のみを抽出することを特徴とする。
【0009】
本発明の医療用注意喚起システムの好ましい例によれば、複数の医師等のユーザで構成されるグループに閲覧権限が設定され、閲覧権限のある注意事項のみが表示される。このため、必要なユーザに必要な注意事項を表示させることができる。
【0010】
本発明の医療用注意喚起システムの好ましい例は、
前記注意事項出力部が、
前記注意事項が存在する旨を前記画面に表示させる報知部と、
前記注意事項の件数を含む見出し表示するアラート出力部と、
前記注意事項の内容を前記画面に表示させる詳細出力部と、
を備えることを特徴とする。
【0011】
本発明の医療用注意喚起システムの好ましい例によれば、注意事項が存在する旨、注意事項の見出し、及び注意事項の内容を段階的に画面に表示させることができるため、ユーザが画面の操作をし易くなる。
【0012】
本発明の医療用注意喚起システムの好ましい例は、
前記注意事項抽出記憶部が、前記グループに対する前記注意事項の複数段階のステータスを記憶し、
前記注意事項出力部は、前記ステータス毎に前記ステータスの前記画面への表示又は非表示を設定可能なことを特徴とする。
【0013】
本発明の医療用注意喚起システムの好ましい例によれば、ステータスの段階によって当該注意事項が現在どのような状態にあるのかを把握することができる。また、例えば患者への説明が終わって不要となった注意事項を画面に表示させないようにできるため、不要な注意事項が画面表示に蓄積されるのを防止することができる。
【0014】
本発明の医療用注意喚起システムの好ましい例は、
不要となった前記重要事項及び前記注意事項を抽出して保存するアーカイブ記憶部を備え、
前記注意事項抽出記憶部が、前記グループに対する前記注意事項の複数段階のステータスを記憶し、
前記ステータスが最終ステータスとなったとき又は前記ステータスが最終ステータスとなってから所定の時間が経過したときに、前記注意事項が前記注意事項抽出記憶部から前記アーカイブ記憶部に移動されることを特徴とする。
【0015】
本発明の医療用注意喚起システムの好ましい例によれば、上記の発明同様にステータスの段階によって当該注意事項が現在どのような状態にあるのかを把握することができる。また、最終ステータスとなって不要となった注意事項をアーカイブ記憶部に移動させるため、不要となった注意事項は当然に画面に表示されることがなく、またデータの保存量も削減でき、検索や抽出のレスポンスを向上させることができる。
【0016】
本発明の医療用注意喚起システムの好ましい例は、
前記注意事項抽出記憶部が、前記ユーザ毎の前記注意事項の非表示か否かの属性を記憶し、
前記注意事項出力部は、前記ユーザについて非表示の属性が付されている前記注意事項を前記画面に表示させないことを特徴とする。
【0017】
本発明の医療用注意喚起システムの好ましい例によれば、ユーザが不要とした注意事項を画面に表示させなくすることができ、個々のユーザに合った運用をすることができる。
【0018】
本発明の医療用注意喚起システムの好ましい例は、
前記注意事項抽出記憶部が、前記ユーザ毎の前記注意事項の保留か否かの属性を記憶し、
前記アラート出力部は、前記ユーザについて保留の属性が付されている前記注意事項の件数を前記画面から消去し、
前記詳細出力部は、前記ユーザについて保留の属性が付されている前記注意事項を前記画面に表示させることを特徴とする。
【0019】
本発明の医療用注意喚起システムの好ましい例によれば、ユーザが通常見る画面には表示させたくないが、情報として残しておきたい注意事項を詳細出力部で画面に表示させることができる。
【0020】
本発明の医療用注意喚起システムの好ましい例は、
前記識別情報が、前記ユーザによって付与され、前記医療用アプリケーションのデータベースに記憶されたものであることを特徴とする。
【0021】
本発明の医療用注意喚起システムによれば、ユーザが、注意事項を抽出するもととなる識別情報を任意に設定できるため、システムの運用の自由度が向上する。
【0022】
本発明の医療用注意喚起システムの好ましい例は、
前記注意事項出力部に、前記注意事項の元データを有する医療用アプリケーションを前記画面に表示させる起動呼出部を備えることを特徴とする。
【0023】
本発明の医療用注意喚起システムの好ましい例によれば、ユーザが注意事項の詳細データをすぐに見ることができる。
【発明の効果】
【0024】
上述したように、本発明の医療用注意喚起システムによれば、医師等のユーザが注意すべき注意事項を画面に表示させるシステムを、電子カルテ等の医療用アプリケーションに依存させずに設置し、後付けも可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の一実施形態に係る医療用注意喚起システムの構成と、接続される医療用アプリケーションの構成を説明するブロック図である。
図2】医療用アプリケーションの画面の例及び該画面に表示された報知部の例を示す図である。
図3】医療用アプリケーションの画面の他の例及び該画面に表示された報知部の例を示す図である。
図4】アラート出力部の表示例を説明する図である。
図5】詳細出力部の表示例を説明する図である。
図6】詳細出力部の他の表示例を説明する図である。
図7】詳細出力部の他の表示例を説明する図である。
図8】詳細出力部の他の表示例を説明する図である。
図9】識別情報記憶部を説明する図である。
図10】グループ記憶部を説明する図である。
図11】医療用アプリケーションの一例である電子カルテのデータ又は二次データの例を示す図である。
図12】重要事項抽出部を説明する図である。
図13】重要事項抽出部を説明する他の図である。
図14】医療用アプリケーションの一例である画像診断のデータ又は二次データ、及び重要事項抽出部を説明する図である。
図15】医療用アプリケーションの一例である病理検査のデータ又は二次データ、及び重要事項抽出部を説明する図である。
図16】注意事項抽出記憶部を説明する図である。
図17】注意事項抽出記憶部を説明する他の図である。
図18】注意事項抽出記憶部を説明する他の図である。
図19】注意事項抽出記憶部を説明する他の図である。
図20】注意事項のステータス及び属性と、画面の表示又は非表示の関係を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の医療用注意喚起システム1の実施の形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。なお、本発明の医療用注意喚起システム1は、コンピュータを用いて実施される。
【0027】
先ず、図1を参照して、本実施形態の医療用注意喚起システム1が接続される医療用システム50の構成を説明する。図1に示すように、病院には、電子カルテ52、画像診断プログラム54、病理検査プログラム56等の医療用アプリケーション51及びこれらの医療用アプリケーション51のデータを記憶するデータベース53,55,57,60等を備える医療用システム50が構築されている。この医療用システム50には、キーボードやマウス等の入力装置、画面59やプリンタ等の出力装置等を備える操作端末58も接続される。また、電子カルテデータベース53、画像診断データベース55、病理検査データベース57には、例えば1日毎や12時間毎等の頻度でこれらのデータベース53,55,57からデータをコピーして記憶する二次データ用データベース60も接続され、ここに二次データが保存される。本実施形態の医療用注意喚起システム1は、この二次データ用データベース60に記憶された二次データを利用するとともに、操作端末58にも医療用システム50を通じて接続される。なお、二次データを利用することは必須の構成ではなく、直接に電子カルテデータベース53、画像診断データベース55、病理検査データベース57等にアクセスすることもできる。
【0028】
次に、本実施形態の医療用注意喚起システム1の構成を説明する。本実施形態の医療用注意喚起システム1は、識別情報記憶部10と、グループ記憶部11と、重要事項抽出部12と、オブジェクト監視部13と、注意事項抽出記憶部14と、注意事項出力部15と、起動呼出部19と、アーカイブ記憶部20とを備える。
【0029】
識別情報記憶部10は、医療用アプリケーション51のデータベースの中の重要なデータを識別するための識別情報を記憶するものである。この識別情報としては、例えば、図9に示す識別情報テーブル10aに記憶された情報がある。これは、医療用アプリケーション51のデータの中から、特定の病名と検査種類の組み合わせを重要な事項として抽出するための識別情報である。例えば、重要ID「1」では、病名「がん」、検査種類「血液検査レポート」の組み合わせを重要と定義している。また、重要ID「2」では、病名「がん」、検査種類「画像診断レポート」の組み合わせを重要と定義している。さらに、重要ID「3」では、病名に関係なく検査種類「病理検査レポート」は重要と定義している。なお、識別情報としては、上記の他にも様々なものがあり、例えば病名と薬又は注射との組み合わせ、薬又は注射同士の組み合わせ、症状と検査結果との組み合わせ等がある。
【0030】
また、識別情報としては、上記の他に、例えば電子カルテ52や画像診断プログラム54等に、医師等が手動で操作するボタン等を設け、このボタンが押されたときにフラグを立てる等して当該フラグを識別情報とすることもできる。例えば、画像診断プログラム54に重要画像をマーキング又はピックアップする機能があるとき、そのマーキング又はピックアップ情報を識別情報として用いることも可能である。係る場合、本実施形態の医療用注意喚起システム1は、二次データ用データベース60内の、マーキング又はピックアップ情報が記憶された場所を識別情報記憶部10として認識する。
【0031】
グループ記憶部11は、医師等の複数のユーザを、1つのグループとしてまとめるものであり、グループ毎の閲覧権限を定めるものである。本実施形態では、このグループ記憶部11として、図10(A)(B)に示すグループテーブル11aと、グループ対応テーブル11bとを備える。グループテーブル11aは、各グループに所属する医師を定めるものである。ここでは、グループID「GP1」には、医師「Dr001」「Dr002」が所属していることがわかる。グループ対応テーブル11bは、ある患者にどのグループIDの医師が対応しているかを示し、逆にどのグループIDの医師がどの患者に対して閲覧権限があるかを示すものである。ここでは、患者ID「PA0001」「PA0006」「PA0080」「PA0189」「PA0205」には、グループID「GP1」の医師が対応することがわかる。
【0032】
重要事項抽出部12は、上記の識別情報を医療用アプリケーション51のデータベースに照らし合わせて、医療用アプリケーション51のデータベースの中から識別情報に関連するデータを重要事項として抽出するものである。この重要事項抽出部12として、本実施形態では、重要診断情報付加テーブル12a,12b,12c(図12図14(B)、図15(B))と、重要事項テーブル12d,12e,12f(図13図14(C)、図15(CB))とを用いて説明する。これらの重要診断情報付加テーブル及び重要事項テーブルは、必須の構成でなくコンピュータの内部的な処理で済むものであるが、ここでは説明をし易くするために記載した。なお、本実施形態では既に述べたように、医療用アプリケーション51のデータベースとして、二次データ用データベース60を用いている。そして、この二次データを検索して、識別情報に該当するデータが記憶されたレコードを、重要事項として抽出するのである。
【0033】
例えば、図11に電子カルテデータベース53からコピーされて二次データ用データベース60に記憶された血液検査レポート70というテーブルがある場合、この血液検査レポートテーブルに、新たに項目名「重要診断情報」を付加して図12に示す重要診断情報付加テーブル(血液検査レポート)12aを作成する。次に、この重要診断情報付加テーブル(血液検査レポート)12aから、識別情報テーブル10a(図9)の病名及び検査種類(識別情報)に該当するレコードを検索する。そして、該当するレコードに「1」のフラグを付す。この「1」のフラグが付されたレコードが重要事項となる。さらに、図13に示すように、「1」のフラグが付されたレコードのみを抽出して、重要事項テーブルを作成する。
【0034】
上記の例では、医療用アプリケーション51のデータベース(二次データ)として血液検査レポートのテーブルを挙げたが、他にも図14(A)~(C)に示す画像診断レポート71に関するテーブル、図15(A)~(C)に示す病理検査レポート72に関するテーブルも同様に処理される。
【0035】
また、医療用アプリケーション51のマーキング又はピックアップ情報を識別情報として利用する場合は、そのマーキング又はピックアップ情報そのものが「重要診断情報」のフラグ「1」となるため、血液検査レポート70、画像診断レポート71、病理検査レポート72というテーブルの代わりに、重要診断情報付加テーブル12a,12b,12cが二次データ用データベース60に記憶されている。
【0036】
オブジェクト監視部13は、電子カルテ52等の医療用アプリケーション51が、画面59の所定の領域に所定の表示データを表示させるオブジェクトを監視するとともに、このオブジェクトから表示データを取得するものである。本実施形態では、例えば、医療用アプリケーション51にログインした医師ID、又は医療用アプリケーション51の患者IDが表示されるオブジェクトを監視して、当該オブジェクトに表示される医師ID、患者ID等を表示データとして取得している。
【0037】
具体的には、図2に示すように、ある医療用システム50の画面59の領域a1を監視して、医師がその病院システムにログインしたときに、その領域a1の表示データである医師ID「Dr001」を表示データとして取得するのである。また、図3に示すように、電子カルテ52の画面59の領域a2,a3を監視して、医師がその電子カルテ52にログインして特定の患者の情報を見たときに、領域a2から医師ID「Dr001」を、領域a3から患者ID「PA0001」を表示データとして取得するのである。このオブジェクト監視部13を実現する方法として、例えばマイクロソフト社から提供されるWindows(登録商標)に用いられる、Inspectツールと呼ばれるものがある。なお、ログインユーザである医師については、画面のオブジェクトから医師IDを取得するのではなく、ログイン時のIDとパスワードの送信時に医師IDを取得する構成としてもよい。
【0038】
注意事項抽出記憶部14は、オブジェクト監視部13で取得された表示データを、重要事項抽出部12に照らし合わせて、重要事項の中から表示データに関連するデータを注意事項として抽出して記憶するものである。詳しくは、オブジェクト監視部13で取得された表示データを、図13図14(C)、図15(C)に示す重要事項テーブル12d,12e,12fに照らし合わせて、これらの重要事項テーブルから該当するデータが含まれるレコードを抽出して記憶するのである。この注意事項抽出記憶部14として本実施形態では、注意事項テーブル14a、ステータステーブル14b、通知テーブル14c、注意事項表示テーブル14d(図16図19)を備える。なお、これらの注意事項テーブル14a、ステータステーブル14b、通知テーブル14c、注意事項表示テーブル14dは、便宜上このように記載しているだけであり、実際の運用ではこれらの記載と異なるテーブルとすることができる。
【0039】
ここで、注意事項抽出記憶部14の説明の途中であるが、先に注意事項出力部15の説明をする。
注意事項出力部15は、注意事項を画面59に表示させるものであり、報知部16と、アラート出力部17と、詳細出力部18とを備える。報知部16は、図2及び図3の画面59右下に表示sd1されるように、ログインしたユーザに注意事項があることのみを知らせるものである。アラート出力部17は、報知部16をマウスでクリック等することで展開されるもので、例えば図4に示すように、どの患者にどのような注意事項が何件あるといった見出しを表示するものである。詳細出力部18は、アラート出力部17の所望の箇所をマウスでクリック等することで展開されるもので、クリックした見出しの詳細情報を、例えば図5図8のようにして詳細情報を表示するものである。
【0040】
注意事項抽出記憶部14の説明に戻る。
また、注意事項抽出記憶部14は、それぞれの注意事項について、グループ(図10)との関係を示すステータスと、非表示か否かの属性と、保留か否かの属性とを付与して記憶することができる。これらの関係を図20を参照して説明する。ある注意事項があって、その注意事項はユーザ1、ユーザ2、ユーザ3のグループで閲覧可能であるとする。ステータスはそのグループのユーザに共通して記憶されるものである。ステータスの種類やステータスを何段階にするかは、それぞれの医療機関の希望によって変動するが、ここでは未読、既読、申請、承認願、承認済の5段階のステータスがある。例えば、未読は注意事項をまだ読んでいない状態、既読は注意事項を読んでいる状態、申請は患者に当該注意事項を説明した状態、承認願はユーザ1~ユーザ3を管理する管理者に患者に説明済であることを承認してもらいたい状態、承認済は管理者が承認した状態を示す。
【0041】
これらのステータスは、ユーザ1~ユーザ3又は管理者のいずれかが任意に変更可能である。ここで、ステータスが承認済となったとき、又は承認済となってから例えば1時間や1日等の所定の時間が経過したとき、当該注意事項は、注意事項抽出記憶部14からアーカイブ記憶部20に移動される。従って、ある注意事項が承認済になると、この注意事項は画面59には表示されなくなる。この注意事項をアーカイブ記憶部20に移動させる理由は、注意事項の表示のレスポンスを上げるためである。もっとも、アーカイブ記憶部20を設けずに、単に承認済となった注意事項を画面59に表示させない構成とすることもできる。さらに、アーカイブ記憶部20を設ける構成としていても、任意のステータスの注意事項を画面59に表示させないようにすることができる。なお、ステータスは、アラート出力部17と詳細出力部18に表示される(図4図8)。
【0042】
非表示の属性は、ユーザ毎に付与されるものであり、それぞれのユーザが任意に付与することができる。そして、あるユーザが非表示を選択すると、そのユーザの報知部16、アラート出力部17、詳細出力部18に当該注意事項は表示されなくなる。但し、他のユーザの操作端末58には表示される。例えば、図20の表で、ステータスが「申請」の段階でユーザ2が「非表示」を付与した場合(符号x1)、当該注意事項はユーザ2がログインする端末の画面59には表示されなくなる。
【0043】
保留の属性は、ユーザ毎に付与されるものであり、それぞれのユーザが任意に付与することができる。そして、あるユーザが保留を選択すると、そのユーザのログインする画面59の報知部16とアラート出力部17の件数表示には当該注意事項は表示されなくなるが、詳細出力部18には表示される。ここで、他のユーザの操作端末58には影響を与えないのは上記の非表示の属性と同じである。例えば、図20の表で、ステータスが「既読」の段階でユーザ1が「保留」を付与した場合(符号x2)、当該注意事項はユーザ2がログインする端末の報知部16には表示されなくなり、アラート出力部17の件数表示からもその分引かれて表示されるが、詳細出力部18を開けば見ることができる。
【0044】
次に、注意事項抽出記憶部14に備えられた注意事項テーブル14a、ステータステーブル14b、通知テーブル14c、注意事項表示テーブル14dを説明する。
注意事項テーブル14aは図16に示すように、図13に示す重要事項テーブル(血液検査レポート)12dから、医師ID「Dr001」、患者ID「PA0001」に該当するレコード(※0のレコード)を抽出して、さらに、アラートキー等の新たな項目を追加して作成される。この追加された項目を説明する。「アラートキー」は、抽出された注意事項を識別するために注意事項毎に付与されるIDである。「取込日時」は、二次データ用データベース60から、本実施形態の医療用注意喚起システム1にデータを取り込んだ日時である。医療用アプリケーション51のデータベースから二次データ用データベース60、そして本実施形態の医療用注意喚起システム1へとデータを取り込むのにタイムラグがあるため、この取込日時は検査日とはずれが生じている。もっとも、取込の頻度を上げることで、リアルタイム性を上げることも可能である。「アラートネーム」は、任意に付与されるものでアラームの名前を意味する。ここでは、重要事項テーブル(血液検査レポート)12dの「(血液検査レポート)」を自動で取り込んでアラートネームとしている。このアラートネームは、注意事項出力部15のアラート出力部17及び詳細出力部18に表示される。「更新日時」は、当該レコードが更新された日時である。なお、ここでは、図13に示す重要事項テーブル(血液検査レポート)12dから、医師ID「Dr001」、患者ID「PA0001」に該当するレコード(※0のレコード)を抽出した例を説明したが、例えば病名を示す画面領域から病名を表示データとして取得する等して、他の検索条件でレコードを抽出することも勿論可能である。
【0045】
ステータステーブル14bは図17に示すように、アラートキーで区別されたそれぞれの注意事項のステータスが現在どのようになっているかを記憶するものである。ここでは、テーブルに新たに「ステータス」の項目が追加される。また、「削除日時」も追加される。そして、ステータスが変更されるたびに、当該注意事項のレコードの「削除日時」にその日時が記憶されるとともに、新たなレコードが複製されて、新たなステータスとともに記憶される。すなわち、「削除日時」の項目にデータが入っていないレコードが最新のステータスを表すものとなる。ここでは、アラートキー「AL1」の注意事項はステータスが「申請」、「AL2」と「AL3」は「承認願」、「AL4」と「AL5」は「既読」、「AL6」と「AL7」と「AL8」は「未読」であることがわかる。
【0046】
通知テーブル14cは図18に示すように、グループに所属する医師ID「Dr001」と「Dr002」のそれぞれの「保留」「非表示」の属性を記憶するものである。ここでは、テーブルに新たに「保留日時」と「非表示日時」の項目が追加される。ユーザである医師が、ある注意事項に「保留」又は「非表示」の属性を付与すると、その日時が「保留日時」又は「非表示日時」の項目に記憶される。ここでは、医師ID「Dr001」が、アラートキー「AL2」、ステータス「承認願」の注意事項を「非表示」としており、さらにアラートキー「AL4」、ステータス「既読」の注意事項を「保留」としていることがわかる。
【0047】
注意事項表示テーブル14dは、図19に示すように、ステータステーブル14bの各アラートキーの最新のレコードに、通知テーブル14cの「保留日時」と「非表示日時」の項目を加えたものとなっている。ここでは、表示寸法の関係からテーブルを2つに分割して記載しているが、本来はこれら上下のテーブルは横に繋げられた1つのテーブルである。そして、注意事項出力部15は、このテーブルの必要な情報を、報知部16、アラート出力部17、詳細出力部18によって画面59に表示させる。なお、上記の注意事項テーブル14a、ステータステーブル14b、通知テーブル14c、注意事項表示テーブル14dは、説明を理解しやすくするために、血液検査レポートに限っており、さらに主に医師ID「Dr001」と、患者ID「PA0001」に関係するレコードを表わしている。
【0048】
起動呼出部19は、図5図8に示すように、注意事項出力部15の詳細出力部18に、注意事項の元データを有する医療用アプリケーション51を起動するためのボタン19aを備えるもので、当該ボタン19aを押すことで、元データを有する医療用アプリケーション51を画面59に表示させることができる。これにより、例えば注意事項が血液検査に関するものであれば、血液検査に関する医療用アプリケーション51を画面59に表示させ、詳細なその他の検査結果を知ることができる。また、画像診断に関するものであれば、画像診断プログラム54を画面59に表示させ、撮影した画像を見ることができる。
【0049】
次に、上述した本実施形態の医療用注意喚起システム1の各構成を踏まえて、医療用注意喚起システム1の動作を説明する。
先ず、医師のオーダによって、例えば患者に血液検査がなされ、電子カルテ52のデータベース53に血液検査レポートのテーブル70が作成される(図11)。この血液検査レポートのテーブルは、所定の時間毎に二次データ用データベース60にコピーされ、同じテーブルが二次データとして作成される。
【0050】
次に、本実施形態の医療用注意喚起システム1の重要事項抽出部12が、二次データ用データベース60から血液検査レポートのテーブルを取り込むとともに、重要診断情報の項目を追加した重要診断情報付加テーブル(血液検査レポート)12aを作成する(図12)。さらに、重要事項抽出部12は、識別情報記憶部10である識別情報テーブル10a(図9)に記憶された識別情報をもとに、重要診断情報付加テーブル(血液検査レポート)12aのうち、識別情報に該当するレコードの重要診断情報の列に「1」を記憶させ、該当しないレコードには「0」を記憶させる。ここでは、識別情報テーブル10a(図9)のうち、項目「検査種類」でデータ「血液検査レポート」、かつ項目「病名」で「がん」「糖尿病」「腎臓病」のレコードが識別情報となる(※01が付されたレコード)。そして、重要診断情報付加テーブル(血液検査レポート)12a(図12)の中から、病名「がん」「糖尿病」「腎臓病」のレコードの重要診断情報に「1」が付される。この「1」が付されたレコードが重要事項となる。
【0051】
次に、重要事項抽出部12は、重要診断情報付加テーブル(血液検査レポート)12a(図12)から、重要事項を抽出して重要事項テーブル(血液検査レポート)12d(図13)を作成する。なお、医療用アプリケーション51のマーキング又はピックアップ情報を識別情報として用いる場合は、重要診断情報付加テーブル(血液検査レポート)12aは、既に重要診断情報に「1」又は「0」が付された状態で、医療用アプリケーション51のデータベース53,55,57又は二次データ用データベース60に記憶されている。重要事項抽出部12は、二次データ用データベース60に記憶された重要診断情報付加テーブル(血液検査レポート)12aから、重要事項を抽出して重要事項テーブル(血液検査レポート)12dを作成する。
【0052】
同様に、画像診断の検査においても、識別情報テーブル10a(図9)を参照しつつ、図14(A)~(C)の流れで画像診断レポート71、重要診断情報付加テーブル(画像診断レポート)12b、重要事項テーブル(画像診断レポート)12eとテーブルが作成される。さらに、他の検査である病理検査でも、識別情報テーブル10a(図9)を参照しつつ、図15(A)~(C)の流れで病理検査レポート72、重要診断情報付加テーブル(病理検査レポート)12c、重要事項テーブル(病理検査レポート)12fとテーブルが作成される。
【0053】
次に、オブジェクト監視部13が、医療用アプリケーション51が表示された画面59のオブジェクト(所定の領域)を監視して、そこに表示される表示データを取得する。ここでは、主に医療用アプリケーション51にログインする医師IDと、医療用アプリケーション51によって開かれる患者の患者IDが表示されるオブジェクトを監視して、医師IDと患者IDのいずれか又は両方を取得する。例えば、図2に示す医療用システム50において、ログインユーザを示す領域a1を監視して、表示データの医師ID「Dr001」を取得する。または、図3に示す電子カルテ52の画面59において、医師IDを示す領域a2と患者IDを示す領域a3を監視して、表示データの医師ID「Dr001」、患者ID「PA0001」を取得する等である。なお、上述の医師IDと患者IDは一例であり、例えば医師以外の病院職員のIDを用いたり、医療用の物品が納品される状態を監視するために、監視するオブジェクトを物流部門の納品欄に設定して取得する表示データに物品IDを用いたりすることもできる。さらに、医師IDの取得では、医師が医療用システム50にログインするときの情報を取得してもよい。
【0054】
次に、注意事項抽出記憶部14が、オブジェクト監視部13で取得された表示データをもとに、重要事項テーブルから必要なデータを抽出して記憶する。ここでは、図3に示す電子カルテ52の画面59をもとに説明する。当該画面59から医師ID「Dr001」、患者ID「PA0001」を表示データとして取得することは既に述べた。次に、注意事項抽出記憶部14は、グループ記憶部11のグループテーブル11aとグループ対応テーブル11b(図10)を参照して、上記の医師がどのグループにいて、患者がどのグループに対応付けられているかを見る。ここでは、医師ID「Dr001」はグループID「GP1」に所属して、同じグループに医師ID「Dr002」がいることがわかる。また、患者ID「PA0001」にはグループID「GP1」が対応していることがわかる。
【0055】
次に、注意事項抽出記憶部14は、重要事項テーブル(血液検査レポート)12d(図13)、重要事項テーブル(画像診断レポート)12e(図14(C))、重要事項テーブル(病理検査レポート)12f(図15(C))から、同じグループID「GP1」となる医師ID「Dr001」又は「Dr002」、かつ患者ID「PA0001」のレコードを検索して抽出する。この抽出したレコードが注意事項となって、注意事項テーブル14a(図16)が作成される。
【0056】
次に、注意事項抽出記憶部14は、それぞれの注意事項についてのステータスを記憶するためのステータステーブル14b(図17)を作成する。また、それぞれの注意事項についての保留又は非表示の属性を記憶するための通知テーブル14c(図18)を作成する。さらに、これらの注意事項テーブル14a、ステータステーブル14b、通知テーブル14cから画面59の表示に必要なデータを抽出して注意事項表示テーブル14d(図19)を作成する。
【0057】
次に、注意事項出力部15が、注意事項表示テーブル14dのデータをもとに、注意事項の内容を画面59に表示させる。これらの表示は、報知部16と、アラート出力部17と、詳細出力部18とによってなされる。先ず、報知部16が、ログインユーザである医師ID「Dr001」に関する注意事項が存在することを図3に示す画面59の右下に表示sd1させる。これは、図2においても同様である。
【0058】
次に、ログインユーザである医師ID「Dr001」が当該表示sd1をマウスでクリック等すると、図4に示すように、アラート出力部17によって注意事項の見出しが表示sd2,sd3される。この表示sd2は、ログインユーザである医師ID「Dr001」が所属するグループID「GP1」かつ現在電子カルテ52に表示している患者ID「PA0001」に関する注意事項を表示させる個別表示sd2である。また、表示sd3は、ログインユーザである医師ID「Dr001」が所属するグループID「GP1」に関する患者全般の注意事項を表示させる全体表示sd3である。この例では電子カルテ52からの表示で特定の患者IDがわかっているが、図2に示す例では特定の患者IDは不明である。そのような場合は、アラート出力部17は全体表示sd3のみを画面59に表示させる。
【0059】
次に、ログインユーザが見出しをマウスでクリック等すると、詳細出力部18によって、それぞれの詳細情報である注意事項の内容が画面59に表示される。これを図5図8を参照して説明する。ここでは、個別表示sd2での例を説明するが、全体表示sd3を選択しても基本的な動作は同じである。先ず、個別表示sd2の1段目1st~4段目4stを説明する。この個別表示sd2では、注意事項のステータス毎に段が分かれている。今回の例ではアラートネームが「血液検査レポート」だけであるが、他に画像診断レポートや病理検査レポートがあれば、その都度別のアラートネームが表示された別の段が追加される。
【0060】
先ず、未読のステータスを有する注意事項がまとめられた1段目1stをマウスでクリック等すると、詳細出力部18によって、図5に示すような画面59が表示される。ここでは、アラートキー「AL6」「AL7」「AL8」の注意事項(図19の※2のレコード)を表示している。注意事項が作成された当初は、ステータスは全てこの「未読」となっており、グループID「GP1」に所属する医師「Dr001」「Dr002」又は別に存在する管理者がステータスを変更しない限り「未読」のままである。もっとも、詳細出力部18の画面59を開いたら、ステータスを「未読」から「既読」に自動的に変更できる場合もある。なお、このステータスは、既に述べたように、グループID「GP1」内で共有される。
【0061】
このステータスの変更方法であるが、例えば図5の画面59においてステータスを変更したい注意事項のステータス欄sd4をクリック等して、表示されるプルダウンメニュー(図示せず)から希望のステータスを選択する等の方法が用いられる。このステータスを変更すると、ステータステーブル14b(図17)の内容が書き換えられる。例えば、アラートキー「AL1」のステータスを「未読」から「既読」に変更すると、※3のレコードをコピーして新たなレコード※4を作成する。そして、※3のレコードの「削除日時」の項目にステータスを変更した日時が記憶されるとともに、新たに作成された※4のレコードのステータスは「既読」とされる。このようにして、ステータスの変化をステータステーブル14bに記憶させる。
【0062】
また、この詳細出力部18での表示では、画面スペースの関係から、さらに詳細なデータは表示できないが、「呼出」ボタン19aをクリックすることで起動呼出部19が動作して、当該注意事項の元データを有する医療用アプリケーション51を画面59に表示させ、詳細な検査結果を表示させることができる。なお、この詳細出力部18の画面では血液検査レポートの検査結果の一部を表示させているが、例えば画像診断レポートの場合だと、検査値の代わりに撮影日時等を表示させても良い。
【0063】
次に、既読のステータスを有する注意事項がまとめられた2段目2stをマウスでクリック等すると、詳細出力部18によって、図6に示すような画面59が表示される。ここでは、アラートキー「AL4」「AL5」の注意事項(図19の※5のレコード)を表示している。また、注意事項表示テーブル14d(図19)のアラートキー「AL4」では、保留日時の項目に日時が入力されている。これは、医師ID「Dr001」が、当該注意事項に保留の属性を付加したためである。この保留の属性を付加するには、図6の画面59において当該注意事項の行の「保留」欄sd5をマウスでクリック等すればよい。そうすると、保留欄にレ点が付されて、アラートキー「AL4」のレコードに保留の属性が付加される。これは、通知テーブル14c(図18)の医師ID「Dr001」のアラートキー「AL4」のステータス「既読」のレコード(※6)の、保留日時の項目に日時が記憶されることでなされ、誰がいつ保留にしたかを記録することができる。ここで、保留、非表示の属性は、グループ内のユーザ毎に付加されるため、通知テーブル14c(図18)は、同じグループID「GP1」に属する医師ID「Dr002」のレコードも備えられる(図18、※7から下のレコード)。なお、アラートキー「AL4」を保留にしたことで、次回のアラート出力部17の表示より、2段目2stの件数表示は現在の2件から1件となる。但し、図6の詳細画面を開くと2件ともに表示される。
【0064】
次に、申請のステータスを有する注意事項がまとめられた3段目3stをマウスでクリック等すると、詳細出力部18によって、図7に示すような画面59が表示される。ここでは、アラートキー「AL1」の注意事項(図19の※8のレコード)を表示している。先ほど、ステータステーブル14b(図17)の※3と※4のレコードを参照して、アラートキー「AL1」の注意事項のステータスが「未読」から「既読」になった状態を説明した。現在は、さらにステータスが変更され、新たなレコードが設けられている(※9のレコード)。この※9のレコードの項目「削除日時」は空欄となっているため、アラートキー「AL1」のステータスはこの※9のレコードに記憶された「申請」が最新であることがわかる。
【0065】
次に、承認願のステータスを有する注意事項がまとめられた4段目4stをマウスでクリック等すると、詳細出力部18によって、図8に示すような画面59が表示される。ここでは、アラートキー「AL2」「AL3」の注意事項(図19の※10のレコード)を表示している。また、注意事項表示テーブル14d(図19)のアラートキー「AL2」では、非表示日時の項目に日時が入力されている。これは、医師ID「Dr001」が、当該注意事項に非表示の属性を付加したためである。この非表示の属性を付加するには、図8の画面59において当該注意事項の行の「非表」欄sd6をマウスでクリック等すればよい。そうすると、非表欄にレ点が付されて、アラートキー「AL4」のレコードに非表示の属性が付加される。これは、通知テーブル14c(図18)の医師ID「Dr001」のアラートキー「AL2」のステータス「承認願」のレコード(※11)の、非表示日時の項目に日時が記憶されることでなされ、誰がいつ保留にしたかが記録される。アラートキー「AL2」を非表示にしたことで、次回のアラート出力部17の表示より、4段目4stの件数表示は現在の2件から1件となる。また、図8の詳細画面も「AL3」のみの1件の表示となる。
【0066】
次に、アラート出力部17で表示された画面59(図4)の全体表示sd3について説明する。ここでは、ログインユーザである医師ID「Dr001」が所属するグループID「GP1」に対応する患者の情報(図10参照)が表示される。具体的には、グループID「GP1」に所属する医師ID「Dr001」と「Dr002」の2名の医師が担当する患者に関する注意事項が表示される。
【0067】
先ず、全体表示sd3の1段目2-1stの段では、患者ID「PA0189」、アラートネーム「画像診断レポート」が表示されている。これは、重要事項テーブル(画像診断レポート)12e(図14(C))の※12のレコードが注意事項として抽出されているからである。なお、注意事項抽出記憶部14の動作と、注意事項テーブル14a、ステータステーブル14b、通知テーブル14c、及び注意事項表示テーブル14dの作成、並びに詳細出力部18の動作については、上述の患者ID「PA0001」の例を参照すれば理解できるため説明を省略する(以下同様。)
【0068】
次に、全体表示sd3の2段目2-2stでは、患者ID「PA0006」、アラートネーム「血液検査レポート」が表示されている。これは、重要事項テーブル(血液検査レポート)12d(図13)の※13のレコードが注意事項として抽出されているからである。
また、全体表示sd3の3段目2-3stでは、患者ID「PA0006」、アラートネーム「画像診断レポート」が表示されている。これは、重要事項テーブル(画像診断レポート)12e(図14(C))の※14のレコードが注意事項として抽出されているからである。
【0069】
また、全体表示sd3の4段目2-4stでは、患者ID「PA0006」、アラートネーム「病理検査レポート」が表示されている。これは、重要事項テーブル(病理検査レポート)12f(図15(C))の※15のレコードが注意事項として抽出されているからである。なお、ここでは同じ患者ID「PA0006」について、全体表示sd3の2段目2-2st~4段目2-4stを用いて表示している。
【0070】
次に、全体表示sd3の5段目2-5stでは、患者ID「PA0205」、アラートネーム「病理検査レポート」が表示されている。これは、重要事項テーブル(病理検査レポート)12f(図15(C))の※16のレコードが注意事項として抽出されているからである。
また、全体表示sd3の6段目2-6stでは、患者ID「PA0080」、アラートネーム「血液検査レポート」が表示されている。これは、重要事項テーブル(血液検査レポート)12d(図13)の※17のレコードが注意事項として抽出されているからである。
【0071】
次に、ステータスが最終ステータスである承認済になったときの動作を説明する。グループID「GP1」に含まれる医師ID「Dr001」又は「Dr002」が、検査内容を患者に説明して同意を得てグループ内での最終確認を行なうと、医師ID「Dr001」又は「Dr002」は、ステータスを例えば「承認願」にする。次に、管理者が当該注意事項を確認してステータスを「承認済」とする。すると、アーカイブ記憶部20は、承認済となったとき又は承認済となってから1時間や1日等の所定の時間が経過してから、注意事項テーブル14a、ステータステーブル14b、通知テーブル14c、注意事項表示テーブル14dから、当該注意事項に関するレコードをアーカイブ記憶部20に設けられたアーカイブテーブル(図示せず)に移動させる。このようにすることで、重要事項抽出部12及び注意事項抽出記憶部14のデータ量を少なくしておき、検索の速度を向上させるのである。
【0072】
以上、説明したように本実施形態の医療用注意喚起システム1によれば、ユーザが注意すべき注意事項を画面59に表示させることができるため、例えば重要な検査結果を患者に説明し忘れるといったことを防止できる。また、注意事項には複数段階のステータスが付与され、その注意事項が現在どんな状態にあるのかを把握することができる。また、ステータスは複数のユーザによるグループで共有されるため、ある患者の診療に携わる全ての職員で情報を共有することができる。また、ステータスが最終ステータスとなったときに、当該注意事項に関するデータをアーカイブ記憶部20に移動させるため、検索の速度低下を防止することができ、ハードウエアの負担も低減させることができる。
【0073】
また、注意事項には、グループに含まれる個々のユーザ毎に、保留又は非表示の属性を付加することができるため、ユーザによっては優先度が低い又は不要な注意事項を、報知部16とアラート出力部17、又は詳細出力部18の段階に分けて非表示にすることができる。
【0074】
さらに、本実施形態の医療用注意喚起システム1は、医療用アプリケーション51とは別に構成され、医療用アプリケーション51に影響を与えない。このため、医療用アプリケーション51に依存せずに設置することが可能となる。これにより、医療用アプリケーション51のベンダーを問わず、また既に設置されている医療用アプリケーション51に後付けすることも可能となる。
【0075】
なお、上述の医療用注意喚起システム1は、本発明の例示であり、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、その構成を適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0076】
1・・医療用注意喚起システム、
10・・識別情報記憶部、10a・・識別情報テーブル、
11・・グループ記憶部、11a・・グループテーブル、11b・・グループ対応テーブル、
12・・重要事項抽出部、12a・・重要診断情報付加テーブル(血液検査レポート)、12b・・重要診断情報付加テーブル(画像診断レポート)、12c・・重要診断情報付加テーブル(病理検査レポート)、12d・・重要事項テーブル(血液検査レポート)、12e・・重要事項テーブル(画像診断レポート)、12f・・重要事項テーブル(病理検査レポート)、
13・・オブジェクト監視部、
14・・注意事項抽出記憶部、14a・・注意事項テーブル、14b・・ステータステーブル、14c・・通知テーブル、14d・・注意事項表示テーブル、
15・・注意事項出力部、16・・報知部、17・・アラート出力部、18・・詳細出力部、19・・起動呼出部、19a・・ボタン、20・・アーカイブ記憶部、
50・・医療用システム、51・・医療用アプリケーション、52・・電子カルテ、53・・電子カルテデータベース、54・・画像診断プログラム、55・・画像診断データベース、56・・病理検査プログラム、57・・病理検査データベース、58・・操作端末、59・・画面、
60・・二次データ用データベース、
70・・血液検査レポート、71・・画像診断レポート、72・・病理検査レポート、
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20