(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-04
(45)【発行日】2023-12-12
(54)【発明の名称】高炉Cuステーブの損耗検出センサ
(51)【国際特許分類】
C21B 7/24 20060101AFI20231205BHJP
G01B 7/00 20060101ALI20231205BHJP
G01K 7/02 20210101ALI20231205BHJP
C21B 7/10 20060101ALI20231205BHJP
【FI】
C21B7/24 306
G01B7/00 W
G01K7/02 Z
C21B7/10 301
(21)【出願番号】P 2020058096
(22)【出願日】2020-03-27
【審査請求日】2022-12-07
(31)【優先権主張番号】P 2019065446
(32)【優先日】2019-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】390007744
【氏名又は名称】山里産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074561
【氏名又は名称】柳野 隆生
(72)【発明者】
【氏名】本田 基樹
(72)【発明者】
【氏名】溝口 博之
(72)【発明者】
【氏名】藤室 孝之
(72)【発明者】
【氏名】児玉 友樹
(72)【発明者】
【氏名】阿南 邦義
【審査官】▲辻▼ 弘輔
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-73088(JP,A)
【文献】特開昭63-67505(JP,A)
【文献】特開昭59-185713(JP,A)
【文献】特開昭63-217204(JP,A)
【文献】米国特許第3532797(US,A)
【文献】特開昭63-67504(JP,A)
【文献】特開平4-169789(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C21B 7/24
C21B 7/10
F27B 1/28
F27D 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高炉内壁に設置されているCuステーブ内に挿入され、該Cuステーブの損耗を検出する損耗検出センサであって、
前記Cuステーブの損耗に併せて損耗・断線することで、電気特性変化を引き起こす電気回路が、センサ外壁を構成する金属管の内部に内蔵されており、
前記電気回路を構成して前記電気特性変化を引き起こす検出用導線として、前記Cuステーブとともに損耗が予定される先端側部位における長さ方向の異なる位置まで延びる複数の検出用導線が配され、
各検出用導線は、前記金属管における炉外となる基端側の位置まで延び、該基端側にて前記電気回路を構成する検出素子として抵抗器が直列接続されたうえで、各検出用導線および抵抗器の組が互いに並列接続されており、
該金属管の少なくとも前記Cuステーブとともに損耗が予定される先端側部位は、Cu又はCu合金製の管とされており、
前記並列接続された前記電気回路の合成抵抗値の変化によりCuステーブの損耗を検出する、
高炉Cuステーブの損耗検出センサ。
【請求項2】
前記検出素子を介して前記電気回路がデータ処理装置に接続される、請求項1記載の高炉Cuステーブの損耗検出センサ。
【請求項3】
温度センサを内蔵してなる、請求項1又は2記載の高炉Cuステーブの損耗検出センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高炉内壁に設置されているステーブの損耗を検出するセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高炉内壁に設置されているステーブの損耗を検出する手法として、高炉休風時に高炉内に設置された既設孔に手作業にて鍵状棒を挿入し、炉内面で引っかけることによりステーブ残存厚を測定する手法がある。しかし、この手法では高炉休止中の測定のみに限られるとともに、損耗面が凹凸状で測定精度が良くなく、更には高炉全体を測定するのに高温・粉塵ガス雰囲気という劣悪環境下で多大な労力が必要となるといった問題があった。
【0003】
これに対し、高炉稼働中においても容易に計測が可能な方法として、ステーブ取付ボルトの端部に超音波探触子を接触させて、該ステーブ取付ボルトの長さを超音波にて検出することによりステーブの損耗を検出するセンサ(特許文献1)や、ステーブに埋設されたマーカーに同じく超音波を印加し、その反射時間からマーカーの長さを検出し、これによりステーブの損耗を検出するセンサ(特許文献2)が提案されている。
【0004】
しかしながら、超音波により前記ステーブ取付ボルトやマーカーの長さを測定するものでは、測定時のボルト/マーカーの温度やボルト/マーカーとステーブ又は超音波測定の探触子との接触状況、ステーブの内側面の堆積状況等によって測定誤差が大きくなり、精度の向上に限界があるという課題があった。
【0005】
また、近年、高炉の長寿命化(約15~20年)に伴い、炉体冷却設備のステーブ(冷却装置)が、従来のFCD(鋳物:400~500mm)から重要部位を主体にCuステーブ(200~250mm)に変更されているが、上記取付ボルトは通常、鋼製又はステンレス製のものが用いられており、材質が異なるため損耗のスピードがCuステーブと大きく異なり、測定誤差がより大きくなるという課題もある。
【0006】
また、ステーブ本体と鉄皮との熱膨張差に起因する応力を吸収し、給排水取出管の溶接部やガスシール部溶接部の疲労破壊の発生を制御し、長期間の使用が可能な高炉用ステーブクーラーも提案されている(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開昭61-264110号公報
【文献】特開昭63-73088号公報
【文献】特開2007-308747号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明が前述の状況に鑑み、解決しようとするところは、高炉内壁に設置されているCuステーブの損耗をより正確に且つ効率良く検出することができ、高炉稼働中も検出でき、オンライン管理も可能となる、高炉Cuステーブの損耗検出センサを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、以下の発明を包含する。
(1) 高炉内壁に設置されているCuステーブ内に挿入され、該Cuステーブの損耗を検出する損耗検出センサであって、前記Cuステーブの損耗に併せて損耗・断線することで、電気特性変化を引き起こす電気回路が、センサ外壁を構成する金属管の内部に内蔵されており、前記電気回路を構成して前記電気特性変化を引き起こす検出用導線として、前記Cuステーブとともに損耗が予定される先端側部位における長さ方向の異なる位置まで延びる複数の検出用導線が配され、各検出用導線は、前記金属管における炉外となる基端側の位置まで延び、該基端側にて前記電気回路を構成する検出素子として抵抗器が直列接続されたうえで、各検出用導線および抵抗器の組が互いに並列接続されており、該金属管の少なくとも前記Cuステーブとともに損耗が予定される先端側部位は、Cu又はCu合金製の管とされており、前記並列接続された前記電気回路の合成抵抗値の変化によりCuステーブの損耗を検出する、高炉Cuステーブの損耗検出センサ。
【0010】
(2) 前記検出素子を介して前記電気回路がデータ処理装置に接続される、(1)記載の高炉Cuステーブの損耗検出センサ。
【0011】
(3) 温度センサを内蔵してなる、(1)又は(2)記載の高炉Cuステーブの損耗検出センサ。
【0012】
(4) 各検出用導線および抵抗器からなる経路の抵抗値(抵抗器の抵抗値)を、経路断線による抵抗値変化が常に一定の変化量(増加量)となるように設定した、(1)記載の高炉Cuステーブの損耗検出センサ。これにより損耗状況を常に視覚的に把握しやすいデータとして出力することが可能となる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、高炉稼働中であっても、内蔵された電気回路が、Cuステーブの損耗に併せて損耗・断線し、これにより並列回路の合成抵抗値の変化をみて、高炉内壁に設置されているCuステーブの損耗をより精度良く、効率的に検出することができ、一つの回路でこれら複数回の抵抗値変化を捉えることができる。これにより、高炉Cuステーブの損耗量をより精度良く、一つの回路として連続して検出を行うことができる。
【0014】
また、前記Cuステーブとともに損耗が予定される先端側部位の内部に、前記電気回路を構成して前記抵抗値変化を引き起こす検出用導線を配したので、前記検出用導線の断線に基づいた確実な損耗状況の検出が行われ、高精度の検出が可能となる。
【0015】
また、特に前記電気回路が、外壁を構成する金属管の内部に内蔵されており、該金属管の少なくとも前記Cuステーブとともに損耗が予定される先端側部位が、同等の材質であるCu又はCu合金製の管とされているので、Cuステーブの損耗状況に合わせてセンサ先端側部位の管もほぼ同一の損耗状況となるため、より正確な損耗検出が可能となる。
【0016】
さらに、前記先端側部位の内部に、該先端側部位における長さ方向の異なる位置まで延びる複数の検出用導線を配したので、Cuステーブの損耗を複数の位置で検出でき、より詳細な損耗状況の把握が可能となる。
【0017】
また、前記検出用導線が金属管の炉外の位置となる基端側まで延び、該基端側にて前記電気回路を構成する検出素子として抵抗器が直列に接続されているので、高温となる先端側に耐熱性のある検出用導線のみ配置し、一般的には200℃以上の高温下で動作保証されていない検出素子(抵抗器)を、炉外側の低温部に配置して、10年以上の長期間にわたってセンサの精度を確保することも可能となる。
【0018】
また、前記検出素子としての抵抗器を介して前記電気回路がデータ処理装置に接続されるものでは、オンライン管理ができるとともに、高炉の高さ方向および円周方向の各部位にセンサ複数本を適正に配置することによる高炉全体の測定・管理も効率的に行うことが可能となる。
【0019】
また、さらに温度センサを内蔵したものでは、損耗状況の管理に加えて温度状況の測定をすることで損耗進行状況と温度レベルとの関係性といったより詳細な高炉状況を得ることができるとともに、従来Cuステーブの温度測定を目的に設置している高炉Cuステーブ温度計の交換品としての運用が、本センサの金属管および取付フランジ等を従来の高炉Cuステーブ温度計と同寸法にて設計することで可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の代表的実施形態にかかる損耗検出センサを示す概略図。
【
図2】同じく損耗検出センサの設置状態を示す概略図。
【
図3】同じく損耗検出センサの電気回路を示すイメージ図。
【
図4】同じく損耗検出センサの先端側部位を示す要部説明図。
【
図5】(a)の場合の合成抵抗値の変化を示すグラフ。
【
図6】(b)の場合の合成抵抗値の変化を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、本発明の実施形態を添付図面に基づき詳細に説明する。
【0022】
本発明にかかる損耗検出センサ1は、
図2に示すように、高炉内壁に設置されているCuステーブ100内に厚み方向に挿入され、該Cuステーブ100の損耗を検出するものであり、前記Cuステーブ100の損耗に併せて損耗・断線することで、電気特性変化を引き起こす電気回路2を内蔵し、前記電気特性変化によりCuステーブ100の損耗を検出するものである。図中符号102はキャスタブル、103は鉄皮、104は取付部をそれぞれ示している。
【0023】
損耗検出センサ1は、
図1及び
図4にも示すように、Cuステーブとともに損耗が予定される検出部としての先端側部位1aに、前記電気回路2を構成して前記電気特性変化を引き起こす検出用導線20が配置されている。より詳しくは、先端側部位1aの内部に、該先端側部位1aにおける長さ方向の異なる位置(A1、A2、…)まで延びる複数の検出用導線20が配され、検出部が構成されている。図中符号6は先端側部位1aがCuステーブ100内に挿入されるような長手方向位置に設けられ、上述の取付部104にセンサを固定するための取付フランジであり、60は取付フランジ6を保護管(金属管)3上に固定するためのコンプレッションフィッティングをそれぞれ示している。
【0024】
これら検出用導線20は、センサ基端側から延びるとともに、それぞれ先端側部位1aに設けられた先端保護管30内の長さ方向の異なる位置(A1、A2、…)で折り返し、基端側に戻るように構成され、これにより、折り返しの位置が先端側にあるものから順に上記損耗・断線し、順次電気特性変化を引き起こしてゆくように配置されている。このように検出用導線20のみを先端側部位1a(検出部)内にまとめることで、検出数を多く取ることが出来るように構成されている。
【0025】
先端保護管30は金属管であり、具体的にはCuステーブと同材質のCu又はCu合金製の金属管とされている。このような先端保護管30は、Cuステーブ100の損耗と同程度に先端保護管30も損耗し、Cuステーブの損耗と一体とした損耗性をもつ。これにより内部の検出用導線20及び後述の充填材40もCuステーブ100の損耗面と同じ位置で損耗し、該検出用導線20の断線による電気特性変化を引き起こし、精度よくCuステーブ100の損耗を検出できるように構成されている。同じ趣旨で、検出用導線20についてもステーブと同材質のCu又はCu合金製の導線を用いることが好ましい。
【0026】
また、先端保護管30はCuステーブ100の少なくとも炉内側先端から冷却水管路101の炉内側の内周面に対応する位置までの範囲の長さ以上とされ、内部の検出用導線20によって当該範囲の損耗の程度を検出できるように構成することが好ましい。すなわち、冷却水管路101に至る前にCuステーブの損耗の程度を検出・把握し、冷却水管路101が損傷して水漏れを起こす前に事前に対処できるように構成することが好ましい。
【0027】
先端保護管30内には、チューブ保護管20aが設けられており、各検出導線20の片側(折り返し部に至る2本の線のうちの片側)がチューブ保護管20a内に挿入され、前記折り返された各検出用導線20は、前記チューブ保護管20aに支持されることで該先端保護管30に安定状態で保持され、それぞれ設定どおりの折り返しの位置に正確に固定される。チューブ保護管20aはステーブと同材質のCu又はCu合金製のものやセラミックス等を用いても良い。検出導線20が絶縁被膜付きの場合はCu又はCu合金製とすることが好ましく、絶縁被膜なしの場合はセラミックス等とすることが好ましい。
【0028】
検出導線20の片側をこのようなチューブ保護管20aに挿通させて支持することで、各検出導線20が先端保護管30内に安定状態で保持され、それぞれ設定どおりの折り返しの位置に正確に固定される。このようなチューブ保護管20aを用いて各検出用導線20の特に折り返し部分を安定した状態に保持することで、各検出用導線20を極性ごとに隔離して配置させ、損耗した導線の内部芯線がバリ等により抵抗値異常となる短絡(回路形成)を防止できる構造とされている。
【0029】
先端保護管30内部の隙間には、耐熱性に優れた充填材40として、たとえばセメントが充填され、炉内高圧ガスのセンサ内部への侵入を防止している。セメントは高い耐熱性(~1000℃)をもち、固化するまでの流動性が高く、内部の検出用導線20が密集している部分にも隙間なく充填することが可能である。検出用導線20および充填材40を本例のような耐熱性を有するものにすることで、高炉稼働中でも長期間の使用を可能としている。
【0030】
電気回路2を構成している各検出用導線20の基端側は、
図1及び
図3に示すように、先端保護管30及び中間保護管31を通じて金属管内における炉外となる位置まで延び、当該基端側の基端側保護管32内において同じく電気回路2を構成する検出素子21がそれぞれ接続されている。すなわち、炉内側の高温部の位置には耐熱性のある検出用導線20のみを配置し、炉外側の低温部の位置に検出素子21が配置されている。これにより検出素子21に対する温度勾配の影響をなくし、温度による変動を防止するように構成されている。中間保護管31は、
図2に示すように外周面に取り付けられたフランジ31bを介して鉄皮103の開口周縁部に溶接固定されている。
【0031】
検出用導線20が損耗・断線して引き起こす上記電気特性変化は、本例では電気回路2を構成する検出用導線20の断線による抵抗値変化としている。すなわち、Cuステーブの損耗に応じて先端側部位1aに内蔵した検出用導線が充填材40とともに損耗し、検出用導線が断線することで抵抗値が変化することを利用して、Cuステーブ損耗状況を検出するものである。その他、たとえば導通の有無により断線を判定し、これによりCuステーブ損耗状況を検出するものや、検出用導線に熱電対線を使用し、起電力測定により断線を判定し、これによりCuステーブ損耗状況を検出するもの等でもよい。
【0032】
本実施形態では、
図3に示すように、上記検出素子21として、各検出用導線20の基端側にそれぞれ抵抗器9が直列接続されたうえで、各検出用導線20および抵抗器9の組が互いに並列接続され、外部の計測器91にて合成抵抗値を計測できるように構成されている。すなわち、本実施形態では、電気回路2がCuステーブ100に挿入される先端側部位における長さ方向の異なる位置まで延び、Cuステーブの損耗に併せて順次断線する複数の検出用導線20および抵抗器9の各径路を並列に接続した並列回路から構成されており、各経路(検出用導線20)が断線する毎に段階的に増加する合成抵抗値を捉えることで損耗の状況を把握するものである。
【0033】
各検出用導線20および抵抗器9からなる経路の抵抗値(抵抗器9の抵抗値)を一定値とした場合、センサ先端側部位の損耗量が少なく断線経路数も少ない段階では、その合成抵抗値の変化が微小となり、高い検出精度が必要となる。これに対し、各検出用導線20および抵抗器9からなる経路の抵抗値(抵抗器9の抵抗値)を、経路断線による抵抗値変化が常に一定の変化量(増加量)となるように設定した場合、この電気回路をデータ処理装置に接続することで、特別な電気信号の処理を必要とせず、損耗状況を常に視覚的に把握しやすいデータとして出力することが可能となる。
【0034】
たとえば、表1に示すように、各検知用導線をセンサ先端から10mm間隔で10経路分配置し、各径路が持つ抵抗値を、それぞれ(a)断線毎の抵抗値の増加量が一定となるように設定(20Ω、60Ω、120Ω、・・・)、(b)各径路の抵抗値を一定(100Ω)に設定し、センサ先端からの損耗状況に応じて、検知用導線が先端側(経路1)から順次断線された場合の合成抵抗値を求めた(表2)。
図5は、表2に示された(a)の場合の合成抵抗値の変化を示すグラフ、
図6は、表2に示された(b)の場合の合成抵抗値の変化を示すグラフである。位置A
kまでの導線が断線した場合の合成抵抗値R
kは、1/{(1/R
k+1)+(1/R
k+2)+・・・+(1/R
n)}で算出される。
【0035】
【0036】
【0037】
図5、6から分かるように、(a)の場合のグラフでは損耗の進行度合いに関わらず常に抵抗値が変化量(増加量)が一定となる一方で、(b)の場合のグラフでは損耗段階前半部での変化量が僅かであることが分かる。回路と接続する測定器を考えた場合、(b)の場合には損耗初期段階のわずかな抵抗値変化を測定するために高い検出精度が必要となるが、(a)の場合は一定の検出精度で損耗段階の全域に渡り過不足なく測定できる。また、得られるデータについても、(a)の場合には常に一定の変化量であるから定量的に損耗状況が把握しやすいことが明らかである。
【0038】
そして、合成抵抗値変化を生じる電気回路2を外部のデータ処理装置としての計測器91に接続するだけで、特別な電気信号の処理を必要とすることなく、Cuステーブの損耗状況が容易に判定可能なデータを出力することが出来る。このような計測器91により、Cuステーブ100の損耗状況のオンライン管理が可能とされている。また、計測器91(および計測器51)が出力する信号を、有線または無線の通信網を介して別途設けたデータ処理装置に送信するように構成すれば、遠隔でのオンライン監視も可能となる。
【0039】
また、本例の損耗検出センサ1は、
図1、3、4に示すように、熱電対50からなる温度センサ5が内蔵されており、熱電対50は保護管30の基端側から延出して外部の計測器51に接続されている。熱電対以外の温度センサでも勿論よい。温度センサの測温部の位置は任意に設定できる。このような損耗検出センサ1は高炉の測温機能を併せ持ち、損耗進行とCuステーブ温度履歴との関係も把握可能とされている。このような温度センサ付きの損耗検出センサとすれば、操業解析、設備管理に効果的であり、既設のステーブ温度計と外形寸法や接続フランジを同じサイズに設定することで、該ステーブ温度計と交換して使用することが可能となり、容易に実機の現場に設置する事が可能となる。
【0040】
損耗検出センサ1は、高炉の高さ方向、円周方向に複数配置することで、高炉操業、炉体管理センサにも成り得る。本発明の損耗検出センサ1は、高炉内壁に設置されているCuステーブの損耗進行を10年以上の長期間にわたりオンラインにて精度良く検出することが可能となり、高炉寿命に関わる箇所(朝顔部、炉腹部、シャフト下部)の炉体管理に適している。
【0041】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこうした実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0042】
1 損耗検出センサ
1a 先端側部位
2 電気回路
3 保護管(金属管)
5 温度センサ
6 取付フランジ
9 抵抗器
20 検出用導線
21 検出素子
30 先端保護管
31 中間保護管
32 基端側保護管
40 充填材
50 熱電対
51 計測器
60 コンプレッションフィッティング
91 計測器
100 Cuステーブ
101 冷却水管路
102 キャスタブル
103 鉄皮
104 取付部