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  • 特許-歯列矯正用アンカー 図1
  • 特許-歯列矯正用アンカー 図2
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  • 特許-歯列矯正用アンカー 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-04
(45)【発行日】2023-12-12
(54)【発明の名称】歯列矯正用アンカー
(51)【国際特許分類】
   A61C 7/36 20060101AFI20231205BHJP
【FI】
A61C7/36
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020188481
(22)【出願日】2020-11-12
(65)【公開番号】P2022077611
(43)【公開日】2022-05-24
【審査請求日】2022-04-13
(73)【特許権者】
【識別番号】515085989
【氏名又は名称】医療法人イースマイル国際矯正歯科
(74)【代理人】
【識別番号】110001885
【氏名又は名称】弁理士法人IPRコンサルタント
(72)【発明者】
【氏名】有本 博英
【審査官】岡▲さき▼ 潤
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-238954(JP,A)
【文献】特開2004-329912(JP,A)
【文献】特開2005-102953(JP,A)
【文献】登録実用新案第3133861(JP,U)
【文献】米国特許第04165561(US,A)
【文献】特表2010-502356(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0335468(US,A1)
【文献】特表2015-516187(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯に固定される板状の部材からなる略楕円形のベースと、
前記ベースのうちの前記犬歯に固定される面とは反対側の外面から突出し、前記犬歯に固定された状態で、前方においてに向かって前記ベース外まで延びる単一の第1のフックと、
記外面から突出し、前記犬歯に固定された状態で、前記第1のフックと略平行にかつ後方において顎に向かって前記ベース外まで延びる単一の第2のフックと、
を具備し、
前記第1のフックと前記第2のフックとが、前記ベースの外面において短軸方向に対して傾斜して延びており、記外面の中心に対して略対称に配置されており
他のアンカーとの間において弾性体が掛け渡され引っかけられて用いられること、
を特徴とする歯列矯正用アンカー。
【請求項2】
前記ベースが、前記犬歯の外面に沿うように湾曲していること、
を特徴とする請求項1に記載の歯列矯正用アンカー。
【請求項3】
前記第1及び第2のフックは前記ベースの短軸方向に対して10~30度傾斜していること、
を特徴とする請求項に記載の歯列矯正用アンカー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯列矯正のために歯に固定されて使用されるアンカーに関し、特に上顎の犬歯に好適に固定されるアンカーに関する。
【背景技術】
【0002】
上下の歯牙に取り付けられて、掛け渡されたゴムの引っ張り力により歯列矯正及び噛合せの改善を行うアンカーが知られている。例えば特許文献1では、各アンカーはベースと1つのフックを備え、これらの鉤部の間にゴムが掛け渡されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2015-516187号公報、図4参照
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1のアンカーでは、フックがベースの重心から外れた位置にあるため、フックがゴムで引っ張られるとアンカーに力のモーメントが生じることがある。そうすると、ゴムの引っ張り力が歯牙に十分に伝達されずに歯牙の充分な移動が得られなかったり、歯牙が回転したりするおそれがある。
【0005】
そこで、本発明は、ゴムで引っ張られる際に歯に生じる力のモーメントを抑制できる歯列矯正用アンカーの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決すべく、本発明は、
歯(特に上顎の犬歯)に固定されるベースと、
前記ベースの外面から突出し、下方(下顎)に向かって延びる第1のフックと、
前記ベースの外面から突出し、前記第1のフックと略平行にかつ略反対方向に延びる第2のフックと、
を具備する歯列矯正用アンカーを提供する。
【0007】
本発明の歯列矯正用アンカーでは、前記ベースが略楕円状であること、が好ましい。
【0008】
また、本発明の歯列矯正用アンカーでは、前記第1及び第2のフックが前記ベースの長軸に沿って整列していること、が好ましい。
【0009】
本発明の歯列矯正用アンカーでは、前記第1及び第2のフックが延びる方向が前記ベースの短軸に対して所定の角度だけ傾いている(傾斜している)こと、が好ましい。
【発明の効果】
【0010】
上記本発明の歯列矯正用アンカーを用いることで、ゴムで引っ張られる際に歯牙に生ずる力のモーメントを抑制することができる。これにより、歯牙を回転させることなく、効率よく引っ張ることができ、効率的な歯列矯正及び噛合せの改善が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施形態に係る歯列矯正用アンカー1の適用場面の一例を示す図である。
図2】歯列矯正用アンカー1の斜視図である。
図3】歯列矯正用アンカー1の正面図である。
図4】歯列矯正用アンカー1の平面図である。
図5図3のA-A線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の代表的な実施形態に係る歯列矯正用アンカーについて、図面を参照しつつ詳細に説明する。ただし、本発明は、本実施形態に限定されるものではない。また、図面は、本発明を概念的に説明するためのものであるから、理解容易のために、必要に応じて寸法、比又は数を誇張又は簡略化して表している場合もある。
【0013】
説明の便宜上、口内の位置関係を示す場合には、「前」「奥」を口内の唇側、喉側の意味で用い、「上」「下」を鉛直方向の上側、下側の意味で用いる。また、歯列矯正用アンカーの各構成要素の位置関係を示す場合には、X軸方向をベースの幅方向(あるいはベースの長軸方向)とし、Y軸方向をベースの厚さ方向とし、Z軸方向をX,Y軸に直交する方向(あるいはベースの短軸方向)とすることとする。なお、口内の前奥と歯列矯正用アンカーのX軸方向は必ずしも一致するわけではなく、口内の上下と歯列矯正用アンカーのZ軸方向は必ずしも一致するわけでもない。
【0014】
図1を参照して、本実施形態に係る歯列矯正用アンカー1の概略を説明する。
使用者の上顎7の犬歯7Aに、歯列矯正用アンカー1(以下、単にアンカー1という。)が取り付けられている。下顎8の臼歯(例えば第一大臼歯)8Aには、他のアンカー3が取り付けられている。そして、これらのアンカー1,3の間に、環状の弾性体5が着脱自在に掛け渡される。
【0015】
弾性体5は、アンカー1,3の間に適度な引っ張り力を生ずるようにこれらアンカー間に掛け渡される。それゆえ、上顎7の犬歯7Aは奥側に、下顎8の臼歯8Aは前側に、それぞれ動かされて、歯列が矯正されることとなる。
【0016】
次いで、図2図5を参照してアンカー1を詳細に説明する。
図2に示すように、アンカー1は、ベース11及びフック12,13を具備する。アンカー1は、これら構成要素の一体成型品として作製されてもよいし、別部材の組合せでもよい。アンカー1は、成型により、好適には樹脂で作製されるが、金属などの他の材料で作製されてもよい。
【0017】
ベース11は、例えば接着剤などの固定手段によって上顎7の犬歯7Aに固定される板状の部材である。ベース11は、上顎7の犬歯7Aの外面に沿うように、ベース11の厚さ方向(Y軸方向)に凹に湾曲しており(図4参照)、アンカー1の上顎犬歯7A上での位置決め及び固定を容易にしている。
【0018】
図3に示すように、ベース11は、正面から見た場合に略楕円形であることが好ましい。ここでは、ベース11は、フック12,13の整列方向(X軸方向)に長い楕円形である。このことは、ベース11の湾曲形状とも相俟って、アンカー1が弾性体5の引っ張り力により生ずるフック12,13の周りのモーメントに抗して、犬歯7Aからの脱落を抑止することを可能にする。
【0019】
フック12,13は弾性体5を引っ掛ける部材であり、それぞれ第1,第2のフックに相当する。すなわち、フック12は、ベース11の外側面から突出し、アンカー1が犬歯7Aに固定された状態において下顎8(の犬歯)に向かって延びる。フック13は、ベース11の外側面から突出し、フック11と略平行にかつ略反対側に延びる。
【0020】
より具体的に説明すると、フック12,13は、ベース11の長軸Mに沿って整列している。本実施形態では、他のアンカー3から離れている方(図3の例ではフック12)が下方(下顎側)を向き、他のアンカー3に近い方(図3の例ではフック13)が上方を向いている(図1参照)。あるいは、フック12,13は、略楕円状のベース11の中心Qに対して略対称に配置されていると言ってもよい。
【0021】
フック12,13は、ベース11の短軸Nから所定の角度αだけ傾いた線Pに略平行に配置されている。言い換えれば、フック12は、下方(Z軸方向の負側)に向かうにつれて前方(X軸方向の正側)に向い、フック13は、上方(Z軸方向の正側)に向かうにつれて後方(X軸方向の負側)に向かうように、所定の角度αだけ傾いている。フック12,13が所定の角度αだけ傾くことで、図1に示すように、フック13とこのフックから他のアンカー3へ伸びる弾性体5との角度Rがほぼ90度とる。これにより、フック12,13がベース11の中心(重心)Qから離れた位置にあっても、弾性体5の引っ張り力が効率的に(つまり力のモーメントを極力抑えつつ)犬歯7Aに伝達されることとなる。更には、ベース11及びフック12,13がこのような形状を有することから、咬合面からみたときの過回転を防止する機能も発揮する。ここで、所定の角度αは、10度~30度であることが好ましく、中でも15度~25度であることが好ましい。
【0022】
なお、他のアンカー3は、下顎8の臼歯8Aに固定されるベースと、弾性体5を引っ掛けるための少なくとも1つのフックと、を持つ。他のアンカー3は、金属部材でも樹脂部材でもよく、また、従来のアンカーを利用可能である。
【0023】
弾性体5は、環状のゴムであり、顎間ゴム又はエラスティックゴムと言ってもよい。弾性体5は、アンカー1,3の間に架け渡されることで、上顎7の犬歯7Aと下顎8の臼歯8Aの間に引っ張り力を作用させ、これらの歯同士を近づけるように歯列全体を移動させて、歯列及び噛み合わせを改善する。弾性体5としては、従来の顎間ゴムを用いることができる。
【0024】
上述した構成を有するアンカー1の使用方法を説明する。
まず、アンカー1を上顎7の犬歯7Aに、他のアンカー3を下顎8の臼歯8Aに、それぞれ接着剤等で固定する。このとき、アンカー1は、ベース11の短軸Nが犬歯7Aの延びる方向Lに概ね沿うように配置される(図1参照)。他のアンカー3は、そのフックが奥側を向くように配置される。
【0025】
次いで、アンカー1と他のアンカー3との間に弾性体5を架け渡す。例えば、フック12に弾性体5を掛け、フック13に渡した後、他のアンカー3のフックに引っ掛ける(図1参照)。このとき、アンカー1と他のアンカー3との間に適度な引っ張り力が発生するように弾性体5の長さや太さ等が適宜調整される。
【0026】
これらの作業により、上顎7の犬歯7Aが奥側に引っ張られる。このとき、フック13とこのフックから伸びる弾性体5との角度Rがほぼ90度となり、弾性体5の引っ張り力が効率的に犬歯7Aに伝達される。つまり、アンカー1に生ずる力のモーメントを極力抑えることができるから、弾性体5から犬歯7Aに効率的に力を伝えることができ、弾性体5の引っ張り力を極力小さくすることができる。
【0027】
以上、本発明の代表的な実施形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、種々の設計変更が可能である。
【符号の説明】
【0028】
1 歯列矯正用アンカー
3 他のアンカー
5 弾性体
7A (上顎の)犬歯
8A (下顎の)臼歯
11 ベース
12,13 フック
図1
図2
図3
図4
図5