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特許7396613積層造形装置、三次元形状造形物に対する加工方法、三次元形状造形物及び金型
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-04
(45)【発行日】2023-12-12
(54)【発明の名称】積層造形装置、三次元形状造形物に対する加工方法、三次元形状造形物及び金型
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/264 20170101AFI20231205BHJP
   B22F 10/28 20210101ALI20231205BHJP
   B22F 10/36 20210101ALI20231205BHJP
   B22F 10/50 20210101ALI20231205BHJP
   B22F 10/85 20210101ALI20231205BHJP
   B22F 12/41 20210101ALI20231205BHJP
   B29C 33/38 20060101ALI20231205BHJP
   B29C 64/153 20170101ALI20231205BHJP
   B29C 64/194 20170101ALI20231205BHJP
   B29C 64/268 20170101ALI20231205BHJP
   B29C 64/393 20170101ALI20231205BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20231205BHJP
   B33Y 40/00 20200101ALI20231205BHJP
   B33Y 50/02 20150101ALI20231205BHJP
【FI】
B29C64/264
B22F10/28
B22F10/36
B22F10/50
B22F10/85
B22F12/41
B29C33/38
B29C64/153
B29C64/194
B29C64/268
B29C64/393
B33Y10/00
B33Y40/00
B33Y50/02
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019099111
(22)【出願日】2019-05-28
(65)【公開番号】P2019209688
(43)【公開日】2019-12-12
【審査請求日】2022-02-21
(31)【優先権主張番号】P 2018104485
(32)【優先日】2018-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】506209422
【氏名又は名称】地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター
(74)【代理人】
【識別番号】100145470
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 健一
(72)【発明者】
【氏名】千葉 浩行
【審査官】小山 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-038201(JP,A)
【文献】特開2015-168877(JP,A)
【文献】特開2003-117992(JP,A)
【文献】特開2019-019364(JP,A)
【文献】特開2017-030223(JP,A)
【文献】特表2005-533172(JP,A)
【文献】特開2005-59574(JP,A)
【文献】特開2011-206791(JP,A)
【文献】特開2003-251482(JP,A)
【文献】特開昭57-149118(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00-64/40
B22F 1/00-12/90
B28B 1/30
B33Y 10/00-99/00
B29C 33/38
B23K 15/00-15/10
B23K 26/00-26/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給された粉末材料に対して造形用光ビームを照射することで、当該粉末材料を焼結又は溶融固化させて層状の造形物を形成する造形作業を繰り返すことにより造形していく三次元形状造形物に対する加工方法において、前記造形作業それぞれの作業中において、前記層状の造形物の所定箇所のうち、前記粉末材料が固結している部分と、未固結状態の粉末材料が混在する範囲における所定箇所に対して、前記造形用光ビームの条件とは異なる加工用の所定条件に調整した加工用光ビームを照射していく工程を含み、前記所定箇所は、前記層状の造形物に形成された直径が0.5mm以下の小径孔の内面であることを特徴とする三次元形状造形物に対する加工方法。
【請求項2】
供給された粉末材料に対して電子ビームを照射することで、当該粉末材料を焼結又は溶融固化させて層状の造形物を形成する造形作業を繰り返すことにより造形していく三次元形状造形物に対する加工方法において、前記造形作業それぞれの作業中において、前記層状の造形物の所定箇所のうち、前記粉末材料が固結している部分と、未固結状態の粉末材料が混在する範囲における所定箇所に対して、加工用の所定条件に調整した光ビームを照射していく工程を含み、前記所定箇所は、前記層状の造形物に形成された直径が0.5mm以下の小径孔の内面であることを特徴とする三次元形状造形物に対する加工方法。
【請求項3】
供給された粉末材料に対して造形用電子ビームを照射することで、当該粉末材料を焼結又は溶融固化させて層状の造形物を形成する造形作業を繰り返すことにより造形する三次元形状造形物に対する加工方法において、前記造形作業それぞれの作業中において、前記層状の造形物の所定箇所のうち、前記粉末材料が固結している部分と、未固結状態の粉末材料が混在する範囲における所定箇所に対して、前記造形用電子ビームの条件とは異なる加工用の所定条件に調整した加工用電子ビームを照射していく工程を含み、前記所定箇所は、前記層状の造形物に形成された直径が0.5mm以下の小径孔の内面であることを特徴とする三次元形状造形物に対する加工方法。
【請求項4】
前記光ビームは、レーザーを用いることを特徴とする請求項1又は2項記載の三次元形状造形物に対する加工方法。
【請求項5】
前記光ビームを照射していく工程は、前記光ビーム単体又は、前記光ビームと及び造形用のアウトライン走査を組み合わせることで行われることを特徴とする請求項1、2、4何れか1項記載の三次元形状造形物に対する加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉末材料を焼結又は溶融固化させる造形作業を行うことにより造形される三次元形状造形物に対して加工することができる積層造形装置、三次元形状造形物に対する加工方法、また、その加工方法によって加工された三次元形状造形物、そして、その三次元形状造形物を用いた金型本体と入子から構成される金型で、詳しくは、三次元形状造形物の造形作業中に、三次元形状造形物の所定箇所を加工する積層造形装置や、三次元形状造形物に対する加工方法等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車や、航空・宇宙分野においては、さらなる燃費向上が求められており、内燃機関の効率化や、軽量化の技術が重要とされている。そこで、例えば、金属積層造形は、流路構造等の複雑形状を造形可能なことから、内燃機関周辺部品や、軽量化部品製造のための鋳造、そして、射出成型でのガス抜き機構等といった流路最適化を図る技術が期待されてきている。
【0003】
ところで、例えば、金属積層造形においては、流路形成に必要な造形孔分解能としては、造形機の仕様にもよるが、φ0.5mm前後が造形の限界である。しかし、鋳造や射出成形型の分野においてみると、φ0.2mm以下のガス抜きを使用している例も多く、金属造形によるメリットが活かしきれていないといった問題があった。このように、従来の金属積層技術では、流路最適化となる金属積層造形に対する、例えば、φ0.3mm以下の小径孔造形は、非常に困難であるため、更なる技術開発が望まれていた。
【0004】
そこで、例えば、特許文献1には、粉末の層の所定箇所に光ビームを照射して溶融結合させることによって粉末が結合した結合層を形成し、この結合層の上に粉末の層を被覆すると共にこの粉末の所定箇所に光ビームを照射して結合させることによって下の結合層と一体になった結合層を形成し、これを繰り返すことによって複数の結合層が積層一体化された粉末結合体で三次元形状造形物を作成するにあたって、光ビームの照射条件を変えて粉末結合体の密度を部分的に変化させることによって、溶融結合させた部分のうちの密度が低い部分で入口と出口を有する流体経路を形成することを特徴とする三次元形状造形物の製造方法が開示されている。
【0005】
つまり、金属積層造形において、レーザー条件を調整する(通常よりエネルギーが低い条件)ことによりポーラス状の構造体を成形し、エア等の経路とする成形型を製作する技術で、この技術によれば、粉末の層に光ビームを照射して粉末が結合した結合層を積層する操作を繰り返す手法で三次元形状造形物の粉末結合体を作製しながら、粉末結合体の内部に流体経路を形成することができるものであり、粉末結合体を作製した後に切削や孔あけ加工を行なう場合のように形状が制限されるようなことなく、最適な形状で自由に流体経路を設計して形成することが可能になるとしている。
【0006】
また、非特許文献1には、金属積層造形におけるレーザー走査を格子状に行い、その行使間隔を調整することで、メッシュ状の構造体を造形する技術が開示されており、この技術によれば、連続した空洞を造形することが可能とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特許第3446748号公報
【非特許文献】
【0008】
【文献】『Koresawa H., Tanaka K., Narahara H.:Low-Energy Injection Molding Process by a Mold with Permeability Fabricated by Additive Manufacturing, International Journal of Automation Technology, 10(1),(2016) 101-105』
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に開示されている技術では、エア等の通気性は構造体の密度で調整するが、内部の空洞は、複雑に連結する形状になってしまう。つまり、レーザー条件の調整により、造形体の密度を低下させポーラス状の構造体を成形するため、通気経路が複雑になってしまい、通気度の制御が難しい。また、故意的に造形体の密度を低下させるため、強度に対する懸案がある。
【0010】
また、非特許文献1に開示されている技術では、レーザーを格子状に照射することで、メッシュ構造を持った構造体を成形する技術であり、直線的な通気経路を有するものである。しかし、成形の性質上、格子部分はレーザースポット径に近い肉厚しか有していないため、強度が高くなく、曲線孔や、斜め孔の成形は困難であり、形状自由度に制限が生じてしまう。また、この技術では、メッシュ構造以外の製作が困難である。
【0011】
また、従来技術においては、三次元形状造形物の孔輪郭外周部分にレーザーを照射し、孔形状を成形するが、このような小径孔の成形となると、従来の方法では、例えば、金属積層造形の場合、孔周辺部で溶融した金属粉末溶湯の孔形状部への流入、粉末形状による輪郭崩れ、レーザー照射による周辺部への熱影響による孔形状周辺部での粉末固着化によって、小径孔自体が閉塞してしまうという問題が指摘されている。
【0012】
本発明が解決しようとしている課題は、上述の課題に対応するためのもので、三次元形状造形物の低密度化による強度懸念や、通気度制御の困難性、そして、形状自由度への制約を解決する三次元形状造形物を造形可能とする積層造形装置、三次元形状造形物に対する加工方法、さらに、その加工方法により加工された三次元形状造形物及び、三次元形状造形物を用いた金型本体と入子から構成される金型を提供することにある。
【0013】
つまり、本発明は、例えば、三次元形状造形物に対する加工をする際、造形用のレーザーを照射する工程の後に、対象箇所における粉末材料が固結している部分(固着形状)と、未固結粉末状態の粉末形状が混在する範囲に高出力(短周期)のレーザーを当て、レーザー照射による蒸発反力を利用して不要な粉末及び固着形状を除去する工程を追加するものである。これにより、例えば、対象箇所が、三次元形状造形物に形成された小径孔であれば、確実に小径孔部分を層として積み重ね、最終的に貫通した小径孔を得ることができる。さらに、造形用のアウトライン走査を用いる工程を追加すると、より対象箇所の加工(例えば、小径孔輪郭(内面)の加工)の精度を上げることができる。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上述の課題を解決するために、本発明は、以下の技術的手段を講じている。
即ち、請求項1記載の発明は、供給された粉末材料に対して造形用光ビームを照射することで、当該粉末材料を焼結又は溶融固化させて層状の造形物を形成する造形作業を繰り返すことにより造形していく三次元形状造形物に対する加工方法において、前記造形作業それぞれの作業中において、前記層状の造形物の所定箇所のうち、前記粉末材料が固結している部分と、未固結状態の粉末材料が混在する範囲における所定箇所に対して、前記造形用光ビームの条件とは異なる加工用の所定条件に調整した加工用光ビームを照射していく工程を含み、前記所定箇所は、前記層状の造形物に形成された小径孔の内面であることを特徴とする三次元形状造形物に対する加工方法である。
【0021】
さらに、請求項記載の発明は、供給された粉末材料に対して電子ビームを照射することで、当該粉末材料を焼結又は溶融固化させて層状の造形物を形成する造形作業を繰り返すことにより造形していく三次元形状造形物に対する加工方法において、前記造形作業それぞれの作業中において、前記層状の造形物の所定箇所のうち、前記粉末材料が固結している部分と、未固結状態の粉末材料が混在する範囲における所定箇所に対して、加工用の所定条件に調整した光ビームを照射していく工程を含み、前記所定箇所は、前記層状の造形物に形成された小径孔の内面であることを特徴とする三次元形状造形物に対する加工方法である。
【0022】
またさらに、請求項記載の発明は、供給された粉末材料に対して造形用電子ビームを照射することで、当該粉末材料を焼結又は溶融固化させて層状の造形物を形成する造形作業を繰り返すことにより造形する三次元形状造形物に対する加工方法において、前記造形作業それぞれの作業中において、前記層状の造形物の所定箇所のうち、前記粉末材料が固結している部分と、未固結状態の粉末材料が混在する範囲における所定箇所に対して、前記造形用電子ビームの条件とは異なる加工用の所定条件に調整した加工用電子ビームを照射していく工程を含み、前記所定箇所は、前記層状の造形物に形成された小径孔の内面であることを特徴とする三次元形状造形物に対する加工方法である。
【0023】
続いて、請求項記載の発明は、請求項又は項記載の三次元形状造形物に対する加工方法であって、前記光ビームは、レーザーを用いることを特徴としている。そして、請求項記載の発明は、請求項何れか1項記載の三次元形状造形物に対する加工方法であって、前記光ビームを照射していく工程は、前記光ビーム単体又は、前記光ビームと及び造形用のアウトライン走査を組み合わせることで行われることを特徴としている。
【0024】
また、請求項記載の発明は、請求項何れか1項記載の三次元形状造形物に対する加工方法であって、前記造形作業それぞれの作業中において、前記層状の造形物に形成された直径が0.5mm以下の小径孔に対して加工することを特徴としている
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、例えば、従来の積層造形では成形困難であった小径孔の精度の高い加工が可能となる。また、三次元形状造形物及び三次元形状造形物からなる金型(金型本体と入子から構成される)によれば、三次元形状造形物の低密度化による強度懸念や、通気度制御の困難性、そして、形状自由度への制約を解決することができる。
【0027】
また、本発明によれば、鋳造や射出成型等の金型において、ガス抜きを今まで以上に最適配置することができ、薄肉軽量化部品を製造することができるようになる。さらに、内燃機関においても、従来製造できなかった構造の製品の実用化ができるようになることから、自動車や航空宇宙分野等において、燃費向上技術に貢献することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明に係る積層造形装置の第1の実施形態を示した簡略構成図である。
図2】本発明に係る積層造形装置の第2の実施形態を示した簡略構成図である。
図3】本発明に係る積層造形装置の第3の実施形態を示した簡略構成図である。
図4】本発明に係る積層造形装置のその他の実施形態において用いられる電子ビーム照射装置を示した簡略構成図である。
図5】本発明に係る三次元形状造形物に対する加工方法の実施形態における加工の流れを示した概略図で、(a)及び(b)は三次元形状造形物の造形作業中の状態を上方から見たもの、(c)及び(d)は三次元形状造形物の造形作業中の状態を示した側断面、(e)は三次元形状造形物に対して光ビームを照射し、小径孔の加工を行っている状態を示した側断面、(f)は三次元形状造形物の小径孔が加工された状態を示した側断面である。
図6】本発明に係る三次元形状造形物に対する加工方法の実施形態による実験において用いられた小径孔通気確認用試験片を示したものである。
図7】本発明に係る三次元形状造形物に対する加工方法の実施形態による実験において用いられた小径孔通気流量測定治具を示したものである。
図8】本発明に係る三次元形状造形物に対する加工方法の実施形態による実験結果と、従来の加工方法による実験結果を示したグラフである。
図9】本発明に係る三次元形状造形物に対する加工方法の実施形態において、小径孔形成の成立するレーザー条件範囲を示した図である。
図10】本発明に係る三次元形状造形物に対する加工方法の実施形態において、アウトライン走査を併用した際の小径孔形状を示した顕微鏡画像である。
図11】本発明に係る三次元形状造形物に対する加工方法の実施形態において、アルミニウム合金(Al-12%Si合金)での小径孔の加工が可能な高出力のレーザー照射工程におけるレーザー条件範囲を示した図である。
図12】本発明に係る三次元形状造形物に対する加工方法の実施形態において、マルエージング鋼での小径孔の加工が可能な高出力のレーザー照射工程におけるレーザー条件範囲を示した図である。
図13】本発明に係る三次元形状造形物に対する加工方法の実施形態により加工した小径孔からなるガス抜き経路を有する入子の、鋳造金型における有効性を確認するための実験手段を示す図で、(a)は鋳物形状の一例、(b)は鋳造金型の一例である。
図14】本発明に係る三次元形状造形物に対する加工方法の実施形態により加工した小径孔からなるガス抜き経路を有する入子の一例図である。
図15】本発明に係る三次元形状造形物に対する加工方法の実施形態により加工した小径孔からなるガス抜き経路を有する入子のガス抜き経路のエア流量と鋳物湯先長さの関係を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
続いて、本発明に係る積層造形装置の実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明に係る積層造形装置の第1の実施形態を示した簡略構成図で、図2は、本発明に係る積層造形装置の第2の実施形態を示した簡略構成図、図3は、本発明に係る積層造形装置の第3の実施形態を示した簡略構成図、そして、図4は、本発明に係る積層造形装置のその他の実施形態において用いられる電子ビーム照射装置を示した簡略構成図である。
【0030】
そして、図5は、本発明に係る三次元形状造形物に対する加工方法の実施形態における加工の流れを示した概略図で、(a)及び(b)は三次元形状造形物の造形作業中の状態を上方から見たもの、(c)及び(d)は三次元形状造形物の造形作業中の状態を示した側断面、(e)は三次元形状造形物に対して光ビームを照射し、小径孔の加工を行っている状態を示した側断面、(f)は三次元形状造形物の小径孔が加工された状態を示した側断面である。
【0031】
また、符号については、10は積層造形装置、12は光ビーム発振器、14は走査ミラー、16は集光レンズ、18は粉末供給ユニット、20は造形用プレートハウジング、22はスキージ、24は粉末材料、26は造形用プレート、28は造形物、30はカメラ、32は造形用ビーム発振器、34は第1の走査ミラー、36は第1の集光レンズ、38は加工用ビーム発振器、40は第2の走査ミラー、42は第2の集光レンズ、44は電子ビーム照射装置、46はフィラメント、48はアノード、50は照射系レンズ群、52は造形部位、54は粉末材料、56は熱影響部、58は未固結粉末材料、60は固結粉末材料、62は粉末依存形状、64は造形用のレーザー、66は高出力レーザー、68は小径孔を示している。
【0032】
まず、本発明における積層造形装置の第1の実施形態における積層造形装置10は、図1に示すように、光ビーム発振器12と、光ビーム発振器12からの光ビームを所定方向へと誘導する走査ミラー14(本実施形態では、ガルバノミラーを使用)と、走査ミラー14により誘導される光ビームを集光する集光レンズ16とを備えており、光ビーム発振器12から造形用光ビームを発振し、光ビームを走査ミラー14と、集光レンズ16を通じ、供給された粉末材料24に対して照射することで、粉末材料24を焼結又は溶融固化させて造形物28を形成する造形作業を繰り返していくことにより三次元形状の造形物28を造形するもので、造形作業それぞれの作業中において、造形物28のうち、粉末材料24が固結している部分と、未固結状態の粉末材料が混在する範囲における所定箇所に対して加工を行う際には、光ビーム発振器12から、造形用光ビームの条件とは異なる加工用の所定条件に調整した加工用光ビームを発振し、この光ビームを走査ミラー14と、集光レンズ16を通じて、該当箇所に照射していくというものである。
【0033】
以下、本発明における積層造形装置の第1の実施形態と三次元形状造形物に対する加工方法の実施形態について、詳しく説明する。まず、スキージ22が、昇降可能な粉末供給ユニット18から供給される粉末材料24を造形用プレートハウジング20に設けられた昇降可能な造形用プレート26上に薄く敷き詰める(供給する)動作を行う。そして、光ビーム発振器12から造形用光ビームを発振し、造形用光ビームを走査ミラー14と、集光レンズ16を通じ、造形用プレート26上に供給された粉末材料24に対して照射することで、粉末材料24を焼結又は溶融固化させて造形物28を形成する造形作業が行われる。そして、この造形作業を繰り返していくことで、三次元形状の造形物28が造形されていく。
【0034】
次に、繰り返される造形作業それぞれの作業中において、造形物28のうち、粉末材料24が固結している部分と、未固結状態の粉末材料が混在する範囲における所定箇所に対して加工を行う際には、光ビーム発振器12から、造形用光ビームの条件とは異なる加工用の所定条件に調整した加工用光ビームを発振し、この加工用光ビームを走査ミラー14と、集光レンズ16を通じて、該当箇所に照射していく。なお、造形用光ビームと、加工用光ビームの切り替えを行う切替手段を設け、所定の造形作業毎に発生する電気信号に基づいて、光ビームの切り替え制御を行うように構成しても良い。
【0035】
このような構成、加工方法を採用するため、例えば、従来の積層造形では成形困難であった小径孔の精度の高い加工が可能となり、また、その成果物からなる三次元形状造形物や、三次元形状造形物からなる金型本体と入子から構成される金型を用いれば、三次元形状造形物の低密度化による強度懸念や、通気度制御の困難性、そして、形状自由度への制約を解決することが可能となる。なお、所定箇所に光ビームを照射する際には、光ビーム単体で行う他、造形用のアウトライン走査を組み合わせることで、より適確に造形物28の加工を行うことができる。
【0036】
また、本実施形態では、カメラ30が配置されており、粉末材料24が固結している部分と、造形物28の境界の加工を行った際の、加工形状を確認するようにするのが好ましい。さらに、カメラ30に、2色温度測定機能を内蔵させ、2色温度測定により、粉末材料24が固結している部分と、造形物28の境界の加工前後の温度分布を計測し、加工時の熱影響を確認するようにし、加工精度の管理を行うようにするのが良い。なお、加工形状の確認用のカメラと、2色温度測定用のカメラを別に設置しても良い。
【0037】
例えば、図5に一例と示すように、造形物28に形成された小径孔68の加工を行う場合には、造形物28の造形作業中に、造形部位52に形成された小径孔68の輪郭内面のうち、造形用のレーザー64(造形用光ビーム)の照射による熱影響部56周辺に生じた粉末依存形状62、そして、孔形状周辺部の未固結粉末材料58、固結粉末材料60に対して、(c)に示すように、高出力レーザー66(加工用光ビーム)を照射することで、これらを除去していく。このようにして、(d)に示すように、造形部位52に形成された小径孔68の加工が完了し、続けて造形作業により、造形物28を積層させていくことにより、加工済みの造形物28の小径孔68が貫通した状態にさせることができる。また、このような加工を行えることから、曲線形状の小径孔68や、造形物28の表面から内部に向かって所定の角度で傾斜する直線状の小径孔68も加工することが可能である。
【0038】
さらに、このような加工を行うことにより、小径孔周辺部で溶融した金属粉末溶湯の孔形状部への流入や、粉末形状による輪郭崩れ、レーザー照射による周辺部への熱影響による孔形状周辺部での粉末固結化による小径孔自体の閉塞を回避できることになる。特に、直径が0.5mm以下の小径孔に対しても非常に効果が発揮される。なお、本実施形態では、金属積層造形を想定しているが、本積層造形装置や、加工方法は、例えば、樹脂積層造形においても実施できるものである。
【0039】
続いて、本発明における積層造形装置の第2の実施形態について説明する。本実施形態における積層造形装置10は、図2に示すように、造形用光ビーム発振器32と、造形用光ビーム発振器32からの造形用光ビームを所定方向へと誘導する第1の走査ミラー34(本実施形態では、ガルバノミラーを使用)と、第1の走査ミラー34により誘導される造形用光ビームを集光する第1の集光レンズ36と、さらに、加工用光ビーム発振器38と、加工用光ビーム発振器38からの加工用光ビームを所定方向へと誘導する第2の走査ミラー40(本実施形態では、ガルバノミラーを使用)と、第2の走査ミラー40により誘導される加工用光ビームを集光する第2の集光レンズ42と、を備え、造形用光ビーム発振器32から造形用光ビームを発振し、この造形用光ビームを第1の走査ミラー34と、第1の集光レンズ36を通じ、供給された粉末材料4に対して照射することで、粉末材料24を焼結又は溶融固化させて造形物28を形成する造形作業を繰り返していくことにより三次元形状の造形物28を造形するもので、造形作業それぞれの作業中において、造形物28のうち、粉末材料24が固結している部分と、未固結状態の粉末材料24が混在する範囲における所定箇所に対して加工を行う際には、加工用光ビーム発振器38から、造形用光ビームの条件とは異なる加工用の所定条件に調整した加工用光ビームを発振し、この加工用光ビームを第2の走査ミラー40と、第2の集光レンズ42を通じて、所定箇所に照射していくというものである。
【0040】
次に、本発明における積層造形装置の第2の実施形態と三次元形状造形物に対する加工方法の実施形態について、詳しく説明する。まず、スキージ22が、昇降可能な粉末供給ユニット18から供給される粉末材料24を造形用プレートハウジング20に設けられた昇降可能な造形用プレート26上に薄く敷き詰める(供給する)動作を行う。そして、造形用光ビーム発振器32から造形用光ビームを発振し、光ビームを第1の走査ミラー34と、第1の集光レンズ36を通じ、造形用プレート26上に供給された粉末材料24に対して照射することで、粉末材料24を焼結又は溶融固化させて造形物28を形成する造形作業を行われる。そして、この造形作業を繰り返していくことで、三次元形状の造形物28が造形されていく。
【0041】
次に、繰り返される造形作業それぞれの作業中において、造形物28のうち、粉末材料24が固結している部分と、未固結状態の粉末材料が混在する範囲における所定箇所に対して加工を行う際には、加工用光ビーム発振器38から、造形用光ビームの条件とは異なる加工用の所定条件に調整した加工用光ビームを発振し、この加工用光ビームを第2の走査ミラー40と、第2の集光レンズ42を通じて、該当箇所に照射していく。なお、造形用光ビーム発振器32と、加工用光ビーム発振器38の切り替えを行う切替手段を設け、所定の造形作業毎に発生する電気信号に基づいて、光ビームの切り替え制御を行うように構成しても良い。
【0042】
このような構成、加工方法を採用するため、例えば、従来の積層造形では成形困難であった小径孔の精度の高い加工が可能となり、また、その成果物からなる三次元形状造形物や、三次元形状造形物からなる金型本体と入子から構成される金型を用いれば、三次元形状造形物の低密度化による強度懸念や、通気度制御の困難性、そして、形状自由度への制約を解決することが可能となる。なお、所定箇所に光ビームを照射する際には、光ビーム単体で行う他、造形用のアウトライン走査を組み合わせることで、より適確に造形物28の加工を行うことができる。
【0043】
また、本実施形態では、カメラ30が配置されており、粉末材料24が固結している部分と、造形物28の境界の加工を行った際の、加工形状を確認するようにするのが好ましい。さらに、カメラ30に、2色温度測定機能を内蔵させ、2色温度測定により、粉末材料24が固結している部分と、造形物28の境界の加工前後の温度分布を計測し、加工時の熱影響を確認するようにし、加工精度の管理を行うようにするのが良い。なお、加工形状の確認用のカメラと、2色温度測定用のカメラを別に設置しても良い。
【0044】
続いて、本発明における積層造形装置の第3の実施形態について説明する。本実施形態における積層造形装置10は、図3に示すように、造形用光ビーム発振器32と、加工用光ビーム発振器38と、これら両者の光ビーム発振器からの光ビームを所定方向へと誘導する走査ミラー14(本実施形態では、ガルバノミラーを使用)と、走査ミラー14により誘導される光ビームを集光する集光レンズ16と、を備え、造形用光ビーム発振器32から造形用光ビームを発振し、造形用光ビームを走査ミラー14と、集光レンズ16を通じ、供給された粉末材料24に対して照射することで、粉末材料24を焼結又は溶融固化させて造形物28を形成する造形作業を繰り返していくことにより三次元形状造形物を造形するもので、造形作業それぞれの作業中において、造形物28のうち、粉末材料24が固結している部分と、未固結状態の粉末材料24が混在する範囲における所定箇所に対して加工を行う際には、加工用光ビーム発振器38から、造形用光ビームの条件とは異なる加工用の所定条件に調整した加工用光ビームを発振し、光ビームを走査ミラー14と、集光レンズ16を通じて、所定箇所に照射していくものである。
【0045】
次に、本発明における積層造形装置の第3の実施形態と三次元形状造形物に対する加工方法の実施形態について、詳しく説明する。まず、スキージ22が、昇降可能な粉末供給ユニット18から供給される粉末材料24を造形用プレートハウジング20に設けられた昇降可能な造形用プレート26上に薄く敷き詰める(供給する)動作を行う。そして、造形用光ビーム発振器32から造形用光ビームを発振し、造形用光ビームを走査ミラー14と、集光レンズ16を通じ、造形用プレート26上に供給された粉末材料24に対して照射することで、粉末材料24を焼結又は溶融固化させて造形物28を形成する造形作業を行われる。そして、この造形作業を繰り返していくことで、三次元形状の造形物28が造形されていく。
【0046】
次に、繰り返される造形作業それぞれの作業中において、造形物28のうち、粉末材料24が固結している部分と、未固結状態の粉末材料が混在する範囲における所定箇所に対して加工を行う際には、造形用ビーム発信器32から、加工用光ビーム発振器38に制御を切り替え、加工用光ビーム発振器38から、造形用光ビームの条件とは異なる加工用の所定条件に調整した加工用光ビームを発振し、この加工用光ビームを走査ミラー14と、光レンズ16を通じて、該当箇所に照射していく。なお、造形用光ビーム発振器32と、加工用光ビーム発振器38の切り替えを行う切替手段を設け、所定の造形作業毎に発生する電気信号に基づいて、光ビームの切り替え制御を行うように構成しても良い。
【0047】
このような構成、加工方法を採用するため、例えば、従来の積層造形では成形困難であった小径孔の精度の高い加工が可能となり、また、その成果物からなる三次元形状造形物や、三次元形状造形物からなる金型本体と入子から構成される金型を用いれば、三次元形状造形物の低密度化による強度懸念や、通気度制御の困難性、そして、形状自由度への制約を解決することが可能となる。なお、所定箇所に光ビームを照射する際には、光ビーム単体で行う他、造形用のアウトライン走査を組み合わせることで、より適確に造形物28の加工を行うことができる。
【0048】
また、本実施形態では、カメラ30が配置されており、粉末材料24が固結している部分と、造形物28の境界の加工を行った際の、加工形状を確認するようにするのが好ましい。さらに、カメラ30に、2色温度測定機能を内蔵させ、2色温度測定により、粉末材料24が固結している部分と、造形物28の境界の加工前後の温度分布を計測し、加工時の熱影響を確認するようにし、加工精度の管理を行うようにするのが良い。なお、加工形状の確認用のカメラと、2色温度測定用のカメラを別に設置しても良い。
【0049】
さらに、本発明における積層造形装置のその他の実施形態について説明する。本実施形態における積層造形装置10は、上記実施形態における造形用光ビーム発信器32に代わり、電子ビーム照射装置44を用いて造形物28の造形を行うもので、図4に示すように、電子ビーム照射装置44と、光ビーム発振器(図示せず)と、当該光ビーム発振器からの光ビームを所定方向へと誘導する走査ミラー(図示せず)と、当該走査ミラーにより誘導される光ビームを集光する集光レンズ(図示せず)と、を備え、電子ビーム照射装置44からの電子ビームを供給された粉末材料24に対して照射することで、粉末材料24を焼結又は溶融固化させて造形物28を形成する造形作業を繰り返していくことにより三次元形状造形物を造形するもので、造形作業それぞれの作業中において、造形物28のうち、粉末材料24が固結している部分と、未固結状態の粉末材料が混在する範囲における所定箇所に対して加工を行う際には、光ビーム発振器から、加工用の所定条件に調整した光ビームを発振し、当該光ビームを走査ミラーと、集光レンズを通じて、所定箇所に照射していくというものである。
【0050】
なお、本実施形態における電子ビーム照射装置44は、図4に示すように、従来から用いられているもので、真空中にて高温に加熱したフィラメント46から放出される熱電子を、アノード48において高電圧で加速させ、さらに電磁レンズから構成される照射系レンズ群50により、細く収束させるものである。
【0051】
また、その他の本発明における積層造形装置の実施形態として、電子ビーム照射装置44が、造形用光ビーム発信器32と、加工用光ビーム発信器38両者の役割を担う構成や、その構成によりもたらされる加工方法を採用しても良い。
【実施例
【0052】
次に、本発明に係る積層造形装置、及び三次元形状造形物の加工方法により小径孔を加工した三次元形状造形物の精度測定のために行った実験について説明する。粉末材料17-4PHステンレス鋼において、図6に示すような、造形物中心に、φ0.1mmの貫通孔が空いた試験片を造形し、本発明に係る積層造形装置(3DSystems ProX300の場合)、及び三次元形状造形物の加工方法により、高出力のレーザーによる照射で小径孔を加工したものと、加工しないものの貫通孔を通るエア流量の変化を測定した(図7に示す冶具を用いた。)。
【0053】
その結果を図8に示す。グラフから分かるように、従来の技術では、φ0.1mmの貫通孔はエアが導通していないが、本発明の技術によれば、φ0.1mmの貫通孔はエアが導通し、孔の長さによって、エア流量に変化が生じることが確認できた。
【0054】
また、小径孔の加工が可能な高出力のレーザー照射工程における条件範囲を図9に示す。レーザー出力433~451W、レーザー走査速度0.6~1.5m/sの範囲での検証では、エネルギー密度が4.69~6.78J/cm、且つ、レーザー走査速度が0.9~1.3m/sの範囲が加工成立範囲であった。また、小径孔の加工精度向上には、造形用のアウトライン走査も併用することが有用であると考える(図10参照、左図:アウトライン不使用、右図:アウトライン使用)。なお、上記条件範囲は、あくまで一例であり、本発明を限定するものではない。
【0055】
また、図11にアルミニウム合金(Al-12%Si合金)、図12にマルエージング鋼での小径孔の加工が可能な高出力のレーザー照射工程における条件範囲を示す。材料により小径孔の加工が可能な高出力のレーザー照射工程における条件範囲は異なるが、17-4PHステンレス鋼以外の材料でも小径孔加工は可能であることが分かる。
【0056】
さらに、本発明に係る積層造形装置、及び三次元形状造形物の加工方法により加工した鋳造金型における有効性の確認も行った。図13に鋳物形状及び金型の概略を示す。(a)に示すように、鋳物70は板厚5mm、一定の平板形状であり、(b)に示すように、鋳物形状の最端部における金型本体72は、入子構造となっており、その部分に、本発明に係る積層造形装置、及び三次元形状造形物の加工方法により加工したガス抜き機構を有する入子74を挿入した。
【0057】
図14に入子形状を示す。入子74の下部側内部がガス抜き経路76となっており、φ0.1mmと、φ0.2mmの小径孔を組み合わせ、経路から抜けるエア流量を調整したものである。また、金型本体72内部の背圧を測定する背圧測定経路78も有する。なお、エア流量の指標は、図7に示す冶具を用いて評価した。図15に、入子ガス抜き経路76のエア流量と、鋳物湯先長さの関係を示す。エア流量が大きくなると、湯先長さが長くなり、また、鋳造中に吸引を行うと、鋳造性への効果が高いことを確認した。以上より、鋳造における湯回り性にガス抜きが有効であり、そのための、金型へのガス抜き機構付与が重要なものということが明確なものとなった。
【符号の説明】
【0058】
10 積層造形装置
12 光ビーム発振器
14 走査ミラー
16 集光レンズ
18 粉末供給ユニット
20 造形用プレートハウジング
22 スキージ
24 粉末材料
26 造形用プレート
28 造形物
30 カメラ
32 造形用ビーム発振器
34 第1の走査ミラー
36 第1の集光レンズ
38 加工用ビーム発振器
40 第2の走査ミラー
42 第2の集光レンズ
44 電子ビーム照射装置
46 フィラメント
48 アノード
50 照射系レンズ群
52 造形部位
54 粉末材料
56 熱影響部
58 未固結粉末材料
60 固結粉末材料
62 粉末依存形状
64 造形用のレーザー
66 高出力レーザー
68 小径孔
70 鋳物
72 金型本体
74 入子
76 入子ガス抜き経路
78 背圧測定経路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15