(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-04
(45)【発行日】2023-12-12
(54)【発明の名称】漁獲量管理装置および漁獲量管理プログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/02 20120101AFI20231205BHJP
【FI】
G06Q50/02
(21)【出願番号】P 2019184061
(22)【出願日】2019-10-04
【審査請求日】2022-06-20
(73)【特許権者】
【識別番号】518128218
【氏名又は名称】オーシャンソリューションテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099508
【氏名又は名称】加藤 久
(74)【代理人】
【識別番号】100182567
【氏名又は名称】遠坂 啓太
(74)【代理人】
【識別番号】100197642
【氏名又は名称】南瀬 透
(72)【発明者】
【氏名】水上 陽介
【審査官】藤澤 美穂
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-015043(JP,A)
【文献】特開2000-311181(JP,A)
【文献】国際公開第2015/136667(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一操業日における操業ごとの、操業を行った漁区と、操業により採捕された魚種の漁獲比率と、漁獲量を示す総箱数とを取得する漁獲量取得手段と、
前記総箱数と前記漁獲比率とに基づいて、生産市場からの仕切書に記載された同一操業日における魚種ごとの漁獲量を示す魚種ごとの重量から、操業した漁区ごとに、魚種ごとの漁獲量を示す魚種ごとの重量を演算する漁獲量演算手段
であり、前記総箱数に対する前記漁獲比率から魚種ごとの箱数を演算し、前記魚種ごとの箱数と、同一操業日における魚種ごとの箱数合計との比率に、同一操業日における魚種ごとの重量を乗算して、操業した漁区ごとに、魚種ごとの重量を演算する漁獲量演算手段とを備えた漁獲量管理装置。
【請求項2】
前記漁獲量取得手段は、前記魚種の漁獲比率を
前記魚種のサイズごとに取得し、
前記漁獲量演算手段は、前記魚種の重量を
前記魚種のサイズごとに演算する請求項
1記載の漁獲量管理装置。
【請求項3】
前記漁獲量演算手段が演算した、操業した各漁区の魚種ごとの重量に基づいて、漁獲成績報告書を自動生成する報告書生成手段を備えた請求項1
または2に記載の漁獲量管理装置。
【請求項4】
前記漁獲量取得手段により取得されなかった魚種であり、前記仕切書に記載された魚種を、操業日誌に記録する操業日誌処理手段を備えた請求項1から
3のいずれかの項に記載の漁獲量管理装置。
【請求項5】
コンピュータを、
同一操業日における操業ごとの、操業を行った漁区と、操業により採捕された魚種の漁獲比率と、漁獲量を示す総箱数とを取得する漁獲量取得手段、
前記総箱数と前記漁獲比率とに基づいて、生産市場からの仕切書に記載された同一操業日における魚種ごとの漁獲量を示す魚種ごとの重量から、操業した漁区ごとに、魚種ごとの漁獲量を示す魚種ごとの重量を演算する漁獲量演算手段
であり、前記総箱数に対する前記漁獲比率から魚種ごとの箱数を演算し、前記魚種ごとの箱数と、同一操業日における魚種ごとの箱数合計との比率に、同一操業日における魚種ごとの重量を乗算して、操業した漁区ごとに、魚種ごとの重量を演算する漁獲量演算手段として機能させる漁獲量管理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操業日、操業場所(漁区)、魚種、漁獲量などを管理する漁獲量管理装置および漁獲量管理プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
指定漁業の許可及び取締り等に関する省令では、「指定漁業者は、指定漁業ごとに、次の表に掲げる漁獲成績報告書又は事業成績報告書を同表に定める提出期限までに農林水産大臣に提出しなければならない」と規定されている。
この漁獲成績報告書は、
図10および
図11に示すように、操業日ごとに、漁区(漁場)、魚種、魚種ごとの漁獲量(Kg)などが記載される。このような漁獲成績報告書を漁業者から報告させることで、魚種ごとの漁獲量を管理して、水産資源の保全に活用している。
【0003】
このような漁獲量の管理について、特許文献1に記載のものが知られている。
特許文献1に記載の漁獲情報集計システムは、漁獲情報をそれぞれ統一的な構造の共通漁獲情報に変換するための対応情報が地域別または時期別に記録された変換テーブルと、収集した漁獲情報の構造を所定規則に従って解析することで当該漁獲情報が共通漁獲情報への変換を要するものかどうかを判別する判別部と、変換を要する漁獲情報と判別された魚種情報を変換テーブルに基づいて共通漁獲情報に変換する変換部とを有し、地域または時期による扱いの相違を吸収した上で集計情報を生成するようにしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図10および
図11に示す漁獲成績報告書では、操業日ごとに、漁区(漁場)、魚種、魚種ごとの漁獲量(Kg)などを記載するものであるが、この漁獲成績報告書は、産地市場が発行する仕切書に基づいて漁業者により作成される。
しかし、仕切書は、操業日の1日分をまとめた魚種ごとの漁獲量が、通知されるため、複数の漁区で操業した場合には、指定漁業者が、1日分の魚種ごとの漁獲量を、適当に操業した漁区に割り振っているため、正確性に欠ける。
【0006】
特許文献1に記載の漁獲情報集計システムは、魚種ごとの漁獲量を管理できるものではあるが、1日の操業を複数の漁区で行った場合まで管理できない。
水産資源の保全には、1日の操業を複数の漁区で行った場合、魚種ごとの漁獲量を管理できることが望ましい。
【0007】
そこで本発明は、漁業者の1日の操業が複数の漁区に渡っても、正確な漁獲量を報告することを可能とすることで、水産資源の保全に寄与することができる漁獲量管理装置および漁獲量管理プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の漁獲量管理装置は、同一操業日における操業ごとの、操業を行った漁区と、操業により採捕された魚種の漁獲比率と、漁獲量を示す総箱数とを取得する漁獲量取得手段と、
前記総箱数と前記漁獲比率とに基づいて、生産市場からの仕切書に記載された同一操業日における魚種ごとの漁獲量を示す魚種ごとの重量から、操業した漁区ごとに、魚種ごとの漁獲量を示す魚種ごとの重量を演算する漁獲量演算手段とを備えたことを特徴とする。
【0009】
本発明の漁獲量管理プログラムは、コンピュータを、同一操業日における操業ごとの、操業を行った漁区と、操業により採捕された魚種の漁獲比率と、漁獲量を示す総箱数とを取得する漁獲量取得手段、前記総箱数と前記漁獲比率とに基づいて、生産市場からの仕切書に記載された同一操業日における魚種ごとの漁獲量を示す魚種ごとの重量から、操業した漁区ごとに、魚種ごとの漁獲量を示す魚種ごとの重量を演算する漁獲量演算手段として機能させることを特徴とする。
【0010】
本発明は、漁獲量演算手段が、総箱数と漁獲比率とに基づいて、生産市場からの仕切書に記載された同一操業日における魚種ごとの漁獲量を示す魚種ごとの重量から、漁区ごとの漁獲量を演算することにより、漁業者の1日の各操業が複数の漁区に渡っても、正確な漁獲量を管理、報告することが可能である。
【0011】
前記漁獲量演算手段は、前記総箱数に対する前記漁獲比率から魚種ごとの箱数を演算し、前記魚種ごとの箱数と、同一操業日における魚種ごとの箱数合計との比率に、同一操業日における魚種ごとの重量を乗算して、操業した漁区ごとに、魚種ごとの重量を演算することで、1日の各操業が複数の漁区であっても、正確な漁獲量を演算することができる。
【0012】
前記漁獲量取得手段は、前記魚種の漁獲比率をサイズごとに取得し、前記漁獲量演算手段は、前記魚種の重量をサイズごとに演算することができる。このように漁獲量演算手段が演算することで、一種類の魚種でも異なるサイズを細かく管理することができ、漁獲成績報告書にて区分されたサイズに合致させることができる。
【0013】
前記漁獲量演算手段が演算した、操業した各漁区の魚種ごとの重量に基づいて、漁獲成績報告書を自動生成する報告書生成手段を備えたことができる。正確な漁獲成績報告書を作成することができ、作成者の手間を省くことができる。
【0014】
前記漁獲量取得手段により取得されなかった魚種であり、前記仕切書に記載された魚種を、操業日誌に記録する操業日誌処理手段を備えたものとすることができる。操業時には把握できない、魚種であっても操業日誌に記録して管理することにより、漁獲量を管理することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、正確な漁獲量を管理、報告することが可能であるため、水産資源の保全に寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施の形態に係る漁獲量管理システムを示す図である。
【
図2】
図1に示す漁獲量管理システムの漁業者が操作する端末装置の構成を説明するための図である。
【
図3】
図1に示す漁獲量管理システムの漁獲量管理装置の構成を説明するための図である。
【
図4】漁労長が操作する端末装置に表示される操業日誌画面の一例を示す図であり、1回目の操業を示す操業日誌画面の図である。
【
図5】漁労長が操作する端末装置に表示される操業日誌画面の一例を示す図であり、2回目の操業を示す操業日誌画面の図である。
【
図6】漁労長が操作する端末装置に表示される操業日誌画面の一例を示す図であり、3回目の操業を示す操業日誌画面の図である。
【
図7】仕切書に基づいて漁獲量を登録する仕切書登録画面の一例を示す図である。
【
図8】
図3に示す漁獲量管理装置における漁獲量演算手段の動作を説明するための図である。
【
図9】漁業者の事務担当者が操作する端末装置に表示される報告書出力画面の一例を示す図である。
【
図12】
図4に示す1回目の操業を示す操業日誌画面の備考欄に「まいわし」が50kg採捕されたことが表示された図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施の形態に係る漁獲量管理システムを、図面に基づいて説明する。
図1に示す漁獲量管理システム10は、漁獲成績報告書を作成するための情報を生成することができるものである。漁獲量管理システム10は、漁業者である漁労長が、船上や陸上にて操作する端末装置20と、電子操業日誌や漁獲量の管理などのサービスを提供するサービス提供会社に設置される漁獲量管理装置30と、漁業者が所属する会社に設置される端末装置40とを備え、電気通信回線の一例であるインターネットWを介して接続されている。
【0018】
図2に示す端末装置20は、操業者が入力した操業日誌に関する情報を漁獲量管理装置30に通知するコンピュータである。この端末装置20は、持ち運びが容易なタブレット型コンピュータやスマートフォンとすることができるが、デスクトップ型、ノートブック型などのコンピュータでもよい。この端末装置20に操業日誌記録プログラムが動作することで、コンピュータを次の各手段として機能させている。
端末装置20は、通信手段21と、操業日誌登録手段22と、操業情報通知手段23と、入力手段24と、表示手段25と、記憶手段26とを備えている。
【0019】
通信手段21は、例えば、端末装置20内の各手段からのデータを、無線通信により、中継局(図示せず)を介してインターネットWへ送信したり、インターネットWからのデータを無線信号により受信して各手段へ出力したりする。
操業日誌登録手段22は、操業に関する情報を操業日誌として記憶手段26に記録する機能を備えている。
操業情報通知手段23は、操業日誌として記録された操業に関する情報を漁獲量管理装置30へ通知する機能を備えている。
入力手段24は、端末装置20がタブレット型コンピュータまたはスマートフォンであればタッチパネルとすることができる。また、端末装置20がデスクトップ型、ノートブック型などのコンピュータであればキーボードやマウス、タッチパッドとすることができる。
【0020】
表示手段25は、操業日誌登録手段22からの表示データを表示する。表示手段25は、LCDパネル、有機ELパネル等とすることができる。
記憶手段26は、OSやアプリケーションソフトなどのプログラムおよび各種のデータが記憶される。例えば、記憶手段26には、漁業者が操業したときの各種の情報が操業日誌として記録される。
記憶手段26は、例えば、タブレット型コンピュータまたはスマートフォンであればSSD(Solid State Drive)が使用できる。デスクトップ型、ノートブック型などのコンピュータであればSSDやハードディスクドライブとすることもできる。
【0021】
図3に示す漁獲量管理装置30は、端末装置20からの操業日誌の漁獲量に関する情報に基づいて、操業日、操業場所(漁区)、魚種、漁獲量などを管理するコンピュータである。
漁獲量管理装置30は、通信手段31と、操業日誌取得手段32と、漁獲量登録手段33と、漁獲量演算手段34と、報告書生成手段35と、操業日誌処理手段36と、記憶手段37とを備えている。漁獲量管理装置30に漁獲量管理プログラムが動作することで、コンピュータを各手段として機能させている。
【0022】
操業日誌取得手段32は、端末装置20から操業に関する情報(操業日誌)を取得して、記憶手段37に格納する、漁獲量取得手段として機能するものである。
漁獲量登録手段33は、産地市場が発行する仕切書に記載の漁獲量を魚種ごとに記憶手段37に登録する機能を有するものである。
漁獲量演算手段34は、漁獲量取得手段からの総箱数と漁獲比率に基づいて、仕切書に記載された魚種ごとの漁獲量を示す重量から、漁区が異なる操業ごとの魚種の漁獲量を示す重量を演算する機能を有するものである。
【0023】
報告書生成手段35は、漁獲成績報告書を自動生成する機能を有する。
操業日誌処理手段36は、漁獲成績報告書に含まれない魚種の漁獲量を、記憶手段37に格納された操業日誌に記録する漁獲量通知手段として機能するものである。また、操業日誌処理手段36は、端末装置20からの要求に応じて操業日誌を記憶手段37から読み出し、端末装置20へ送信する。
記憶手段37は、OSやアプリケーションソフトなどのプログラムおよび各種のデータを記憶するもので、例えば、SSDやハードディスクドライブとすることができる。
【0024】
端末装置40は、漁獲量管理装置30にアクセスして漁獲量管理装置30からの画面を表示する閲覧ソフトが動作するコンピュータである。端末装置40は、タブレット型、デスクトップ型、ノートブック型、スマートフォンなどとすることができる。
【0025】
以上のように構成された本発明の実施の形態に係る漁獲量管理システムの動作および使用状態を、図面に基づいて説明する。なお、端末装置20には、操業日誌を記録する操業日誌記録プログラムが動作しているものとする。
【0026】
まず、漁業者の漁労長は、漁船に乗って操業しながら、操業するごとに、操業日誌を入力する。
例えば、
図2に示す端末装置20の表示手段25には、1回目の操業の内容を記録する操業日誌画面P11(
図4参照)が表示されている。また、
図5および
図6では、同日に操業されたときの操業日誌画面P12,P13が表示されている。
この操業日誌画面P11~P13には、最上段に、操業時間入力欄R11が表示されている。この操業時間入力欄R11は、操業開始時間を入力するための開始時間入力欄R111と、操業終了時間を入力するための終了時間入力欄R112とを備えている。
【0027】
操業時間入力欄R11の下方には、漁場に関する情報を入力する漁場情報入力欄R12が表示されている。この漁場情報入力欄R12は、潮流に関する情報を入力するための水温入力欄R121と、潮流の方向を入力するための方向入力欄R122と、潮流の速さを入力するための速度入力欄R123とを備えている。
【0028】
また、漁場情報入力欄R12は、漁区(海区)に関する情報について、エリアを入力するためのエリア入力欄R124と、方角を入力するための方角入力欄R125と、距離を入力するための距離入力欄R126と、漁区に対応する海区番号を入力するための海区入力欄R127と、経度および緯度を入力するための経緯度入力欄R128とを備えている。
【0029】
次に、操業によって採捕した魚種に関する情報を入力するための漁獲量入力欄R13が表示されている。
漁獲量入力欄R13は、魚種を入力する魚種入力欄R131と、サイズを入力するサイズ入力欄R132と、その魚種が全体に占める割合(漁獲比率)を入力するための比率入力欄R133とを備え、魚種ごとに横一列に表示されている。
漁獲量入力欄R13には、行ごとに、行を削除する行削除ボタンB11が表示されている。また、漁獲量入力欄R13の下方には、一行追加する行追加ボタンB12が表示されている。
そして、漁獲量入力欄R13の下方には、操業情報入力欄R14が表示されている。操業情報入力欄R14は、運搬船が何回目の運搬であるかを入力するための回数入力欄R141と、魚の保存方法を入力するための保存方法入力欄R142と、1回の操業における全魚種の漁獲量を総箱数で入力する箱数入力欄R143とを備えている。
操業情報入力欄R14の下方には、備考欄R15が表示されている。
【0030】
操業時間入力欄R11および漁場情報入力欄R12は、漁労長により、操業終了時や寄港した後に入力される。また、漁獲量入力欄R13は、漁労長が、操業するごとに採捕された魚を網船から運搬船に移し替える際に入力される。また、このとき、比率入力欄R133に入力される漁獲比率と、箱数入力欄R143に入力される箱数とは、運搬船に移し替える魚を見て判断して入力される。
【0031】
例えば、
図4に示す操業日誌画面P11では、漁獲量入力欄R13の最初の行に、中サイズの「サバ」が全体の2割採捕され、大サイズの「マアジ」が残りの8割採捕され、1回目の操業の漁獲量が箱数にして100箱であったことが入力されている。また、
図5に示す操業日誌画面P12では、中サイズの「サバ」が全体の7割採捕され、大サイズの「マアジ」が残りの3割採捕され、2回目の操業の漁獲量が箱数にして200箱であったことが入力されている。なお、操業日誌では、サイズを「特大」、「大」、「中」、「小」等から選択しているが、「特大」と「大」はまとめて「大」として登録される。
【0032】
そして、
図4~
図6に示す操業日誌画面P11~P13に入力する度に、保存せずにホーム画面(図示せず)に戻る(ホームボタンB21)か、新規日誌として保存する(新規登録ボタンB22)か、既存の操業日誌に追加保存してホーム画面に戻る(追加保存ボタンB23)かのいずれかが選択される。
【0033】
漁労長が操業日誌画面P11~P13により操業に関する情報を入力して、新規登録ボタンB22を押下すると、操業日誌登録手段22は、新規の操業日誌として記憶手段26に記録する。または、追加保存ボタンB23が押下されると、操業日誌登録手段22は、入力された情報を、既存の操業日誌への追記として記憶手段26に記録する。
【0034】
このとき、漁船が漁港の近くに位置していたり、漁船が漁港に着き、漁労長が下船したりしていれば、通信手段21が無線通信により、漁獲量管理装置30と通信可能であるため、操業情報通知手段23が記憶手段26から操業日誌を読み出し、通信手段21を介して、漁獲量管理装置30へ送信する。
【0035】
また、漁船が沖合に出ていて、通信手段21が漁獲量管理装置30と通信不可能な状態である場合には、漁船が漁港に戻り、通信手段21が漁獲量管理装置30と通信可能な状態になったときに、操業情報通知手段23が記憶手段26から操業日誌を読み出し、漁獲量管理装置30へ送信する。
漁獲量管理装置30では、通信手段31を介して操業日誌取得手段32が端末装置20からの操業に関する情報である操業日誌を取得して記憶手段37に格納する。
【0036】
操業日誌が記憶手段37に格納されると、次に、産地市場からの仕切書に基づいて漁獲量が入力される。
仕切書における漁獲量の入力は、漁業者の事務担当者が端末装置40を操作して漁獲量管理装置30にアクセスすることで行われる。
仕切書は、1日分の操業日について、魚種ごとに、漁獲量が重量により記載されている。例えば、
図7に示す仕切書では、8月1日の漁獲量は「さば」が2段に分かれており、合計4200kgであり、「まあじ」が2940kgであり、「ぶり」も2段に分かれており、合計が1500kgであり、「まいわし」が50kgであったことが報告されている。
【0037】
端末装置40が漁獲量管理装置30にアクセスして、仕切書の入力を要求することで、漁獲量管理装置30では、漁獲量登録手段33が仕切書登録画面P2を端末装置40へ送信する。
事務担当者は、仕切書と、端末装置40の表示手段に表示された仕切書登録画面P2(
図7参照)とを見て、端末装置40の入力手段を操作して、仕切書の漁獲量を入力する。
【0038】
仕切書登録画面P2では、操業年月を指定する登録年月選択欄R21と、操業日に対応させて魚種ごとの漁獲量を入力する漁獲量入力欄R22と、漁獲量入力欄R22に入力された漁獲量を登録する登録ボタンB3とが表示されている。
事務担当者が端末装置40を操作して登録ボタンB3が押下されたことで、漁獲量登録手段33は、漁獲量入力欄R22に入力された漁獲量を記憶手段37に格納する。
【0039】
次に、漁獲量演算手段34が、漁区が異なる操業ごとの魚種の漁獲量を示す重量を演算する。
例えば、
図4に示す8月1日における1回目の操業を示す操業日誌画面P11では、海区(漁区)「228111」での操業により採捕されたサバのサイズ「中」の割合が「2」となっている。また、箱数が100箱となっている。
図5に示す2回目の操業を示す操業日誌画面P12では、海区(漁区)「228111」での操業により採捕されたサバのサイズ「中」の割合が「7」となっている。また、箱数が200箱となっている。
図6に示す3回目の操業を示す操業日誌画面P13では、海区(漁区)「224276」での操業により採捕されたサバのサイズ「中」の割合が「1」となっている。また、箱数が500箱となっている。
なお、操業日誌では、漁区を6桁で表しているが、漁獲成績報告書(
図10参照)では、上位4件が使用される。
【0040】
このような情報から、漁獲量演算手段34は漁区ごとの漁獲量を、次のように演算する。まず、操業日における操業1回分の全魚種の総箱数に対する漁獲比率から魚種ごとの箱数を演算する(ステップS10参照)。
図8に示す例では、8月1日において、操業1回目(
図4に示す操業日誌画面P11参照)の箱数が100箱で、「さば」の割合が「2」であるため、「さば」の箱数は20箱であると推定できる。同様にして、操業2回目(
図5に示す操業日誌画面P12参照)の箱数が200箱で、「さば」の割合が「7」であるため、「さば」の箱数は140箱であると推定できる。このようにして、各操業の魚種ごとの箱数を演算する。
【0041】
次に、各操業の魚種ごとの箱数と操業1日分の魚種ごとの箱数合計との比率を演算する(ステップS20参照)。
図8に示す例では、操業1回目が20箱、2回目が140箱、3回目が50箱であるため、操業1回目の比率は、20箱÷(20箱+140箱+50箱)=0.0952となる。
【0042】
そして、この比率を、仕切書に記載の魚種ごとの漁獲量(重量)を乗算することで、各操業の魚種ごとの漁獲量(重量)を演算する(ステップS30)。
図8に示す例では、比率「0.0952」×漁獲量(重量)「4200kg」(
図7に示す仕切書登録画面P2参照)により400kgを得ることができる。従って、8月1日における操業1回目の「さば」の漁獲量は、400kgであると推定することができる。
【0043】
そして、各操業の魚種ごとの漁獲量において、漁区が同じであれば漁獲量を合算する(ステップS40)。
図8に示す例では、操業1回目と操業2回目とが漁区が同じ「2281」であるため、1回目の「さば」の漁獲量400kgと2800kgとを合算することで、8月1日の漁区「2281」による操業により採捕された「さば」は、3200kgであることが得られる(ステップS50参照)。操業1回目と操業2回目との漁区が異なる操業3回目の漁区「2242」では、同様に演算することで、「さば」が1000kg採捕されたことが得られる。
【0044】
漁獲量演算手段34が各操業における漁区ごとの漁獲量(kg)を演算すると、各漁獲量を記憶手段37に格納する。
【0045】
このようにして、漁区ごとの漁獲量が演算されると、漁獲成績報告書を生成することができる。
漁獲成績報告書を生成するときには、事務担当者が端末装置40を操作して、漁獲量管理装置30にアクセスすることにより表示される報告書出力画面P3(
図9参照)により行われる。
図9に示す報告書出力画面P3では、出力対象とする年月を選択する出力年月指定欄R3と、漁獲成績報告書の出力を指示する報告書出力ボタンB4とが表示されている。
事務担当者は、端末装置40を操作して、出力年月指定欄R3にて出力対象の年月を選択し、報告書出力ボタンB4を押下する。そうすることで、
図10および
図11に示す漁獲成績報告書が表計算ソフトで読み込み可能なファイル形式で生成される。
図10および
図11に示す漁獲成績報告書では、8月1日に漁区「2281」にて中サイズ「さば」が3200kg採捕され、漁区「2242」にて大サイズの「まあじ」が2100kg採捕されていることが判る。
【0046】
漁獲成績報告書が生成されれば、事務担当者は、漁獲量管理装置30から端末装置40にダウンロードすることができる。そして、事務担当者は、漁獲成績報告書を所定の政府関係機関が運営するサイトにアップロードして提出する。
【0047】
このように漁獲量演算手段34が、総箱数と漁獲比率とに基づいて、生産市場からの仕切書に記載された同一操業日における魚種ごとの漁獲量を示す魚種ごとの重量から、漁区ごとの漁獲量を演算することにより、漁業者の1日の操業が複数の漁区に渡っても、正確な漁獲量を管理、報告することが可能である。
従って、漁獲量管理装置30は、水産資源の保全に寄与することができる
【0048】
また、操業日誌取得手段32が魚種の漁獲比率をサイズごとに取得しており、漁獲量演算手段34が魚種の重量をサイズごとに演算しているため、一種類の魚種でも異なるサイズを細かく管理することができ、漁獲成績報告書にて区分されたサイズに合致させることができる。
【0049】
更に、漁獲量演算手段34が演算した漁区ごとの漁獲量に基づいて、報告書生成手段35が漁獲成績報告書を自動生成するので、正確な漁獲成績報告書を作成することができ、報告書の作成者となる事務担当者の手間を省くことができる。
【0050】
本実施の形態では、
図7に示す8月1日付の仕切書に「まいわし」が50kg採捕されたことが示されている。また、仕切書登録画面P2では、8月1日に「まいわし」が50kgであることが入力されている。この「まいわし」は、
図4~
図6に示す操業日誌画面P11~P13では、漁獲量が少なすぎて、採捕されたことが認識できずに、入力されなかったものである。
【0051】
操業日誌処理手段36は、操業日誌画面P11~P13に入力されなかった魚種が採捕されたことを判断すると、漁業日誌の備考欄に魚種と漁獲量とを記録する。このとき、複数の漁区にて操業された場合には、いずれかの漁区での操業日誌に記録することになる。
例えば、1回目の操業の漁業日誌である、
図4に示す操業日誌画面P11の備考欄R15では空欄であったが、
図12に示す操業日誌画面P11の備考欄R15に、「まいわし」が50kg採捕されたことが示される。
このように、漁獲成績報告書にて指定されることにより、または「その他」の欄に含まれることにより、報告が必要な魚種であるが、操業時には採捕されたことが把握できなかった魚種であっても、漁獲量を管理することができる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、漁業法により定められた指定漁業を操業する、漁獲成績報告書の提出が義務付けられた指定漁業者に好適である。
【符号の説明】
【0053】
10 漁獲量管理システム
20 端末装置
21 通信手段
22 操業日誌登録手段
23 操業情報通知手段
24 入力手段
25 表示手段
26 記憶手段
30 漁獲量管理装置
31 通信手段
32 操業日誌取得手段
33 漁獲量登録手段
34 漁獲量演算手段
35 報告書生成手段
36 操業日誌処理手段
37 記憶手段
40 端末装置
W インターネット
P11,P12,P13 操業日誌画面
P2 仕切書登録画面
P3 報告書出力画面
R11 操業時間入力欄
R111 開始時間入力欄
R112 終了時間入力欄
R12 漁場情報入力欄
R121 水温入力欄
R122 方向入力欄
R123 速度入力欄
R124 エリア入力欄
R125 方角入力欄
R126 距離入力欄
R127 海区入力欄
R128 経緯度入力欄
R13 漁獲量入力欄
R131 魚種入力欄
R132 サイズ入力欄
R133 比率入力欄
R14 操業情報入力欄
R141 回数入力欄
R142 保存方法入力欄
R143 箱数入力欄
R15 備考欄
R21 登録年月選択欄
R22 漁獲量入力欄
R3 出力年月指定欄
B11 行削除ボタン
B12 行追加ボタン
B21 ホームボタン
B22 新規登録ボタン
B23 追加保存ボタン
B3 登録ボタン
B4 報告書出力ボタン