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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-04
(45)【発行日】2023-12-12
(54)【発明の名称】モータの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/16 20060101AFI20231205BHJP
   B29C 33/14 20060101ALI20231205BHJP
   B29C 33/34 20060101ALI20231205BHJP
   B29C 45/06 20060101ALI20231205BHJP
   B29C 45/14 20060101ALI20231205BHJP
   B29C 45/26 20060101ALI20231205BHJP
   H02K 15/12 20060101ALI20231205BHJP
【FI】
B29C45/16
B29C33/14
B29C33/34
B29C45/06
B29C45/14
B29C45/26
H02K15/12 E
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020071494
(22)【出願日】2020-04-13
(65)【公開番号】P2021167094
(43)【公開日】2021-10-21
【審査請求日】2022-10-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000144027
【氏名又は名称】株式会社ミツバ
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤生 勝
【審査官】小山 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-346461(JP,A)
【文献】特開2014-226846(JP,A)
【文献】特開平07-285146(JP,A)
【文献】特開2017-158339(JP,A)
【文献】特開2009-023117(JP,A)
【文献】特開2016-117221(JP,A)
【文献】特開2017-94503(JP,A)
【文献】特開2020-78910(JP,A)
【文献】特開2020-121457(JP,A)
【文献】特開2020-121458(JP,A)
【文献】特開2021-84381(JP,A)
【文献】国際公開第2020/100920(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/00-45/84
B29C 33/00-33/76
H02K 15/00-15/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の方向に回転するターンテーブルと、
前記ターンテーブル上に所定角度を空けて配置された複数の下型と、複数の前記下型の上方にそれぞれ配置され、前記下型に対して型開きおよび型締めを行う複数の上型と、を有する複数の金型と、
を備えた射出成形装置によって成形されるモータの製造方法であって、
(a)ステータコア、該ステータコアに巻回されたコイルおよび該コイルに接続されたターミナルを含むステータユニットを複数の前記金型のうちの1つの前記下型に配置する工程と、
(b)前記ターンテーブルを旋回して前記(a)工程後の前記下型を所定角度回転させ、対応する前記上型を型締めした後、前記ステータユニットに第1の樹脂材料を射出して前記ステータコア、前記コイルおよび前記ターミナルのそれぞれの少なくとも一部を覆う第1の成形部を成形する工程と、
(c)前記ターンテーブルを旋回して前記(b)工程後の前記下型を所定角度回転させ、対応する前記上型を型締めした後、前記第1の成形部のうち前記ターミナルの一部を覆うターミナル成形部の外周部に第2の樹脂材料を射出して、前記ターミナル成形部に積層する第2の成形部を成形する工程と、
を有し、
前記ターンテーブルを所定角度回転させることで、前記下型の位置を変えて前記(a)工程~前記(c)工程を1サイクルとした工程を行い、前記1サイクルには、前記(b)工程を実施した後、前記(b)工程にある前記下型に前記ターミナル成形部を収容した状態で前記(c)工程に移行することを特徴とするモータの製造方法。
【請求項2】
前記(c)工程では、前記第2の樹脂材料として前記第1の樹脂材料と同一の樹脂材料を射出することを特徴とする請求項1に記載のモータの製造方法。
【請求項3】
前記(c)工程では、前記第2の成形部から前記ターミナルの一部が露出するように射出成形することを特徴とする請求項1に記載のモータの製造方法。
【請求項4】
前記複数回繰り返される前記1サイクルには、前記(a)工程と前記(b)工程と前記(c)工程とを同時に実施する前記1サイクルが含まれることを特徴とする請求項1に記載のモータの製造方法。
【請求項5】
前記(a)工程、前記(b)工程および前記(c)工程を、回転自在に設けられたターンテーブル上に該ターンテーブルの回転中心に対して等間隔で配置された複数の前記金型において実施することを特徴とする請求項1に記載のモータの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に組付けられる燃料ポンプが備えるモータとして、コイル、ターミナルおよび該ターミナルを覆う樹脂成形体等の部品を有するモータが知られている。
【0003】
上記モータの製造方法の一例として、特許文献1には、ターミナルと一体となる樹脂成形部を射出成形することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平11-346461号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のようなモータでは、ターミナルを埋め込むため樹脂成形部の肉厚が厚くなる。そして、肉厚が厚い樹脂成形部を成形する場合、複数回に分けて成形を行って必要な肉厚を確保している。
【0006】
例えば、モータの樹脂成形部を2回に分けて成形する場合、1回目に金型にコイルやターミナル等の部品をセットして成形品を成形した後、当該成形品を一度金型から取出し、別の金型を装着して2回目の成形を行っている。この場合、成形品の冷却時間の違い等による温度のバラツキや金型の組み合わせによるバラツキの影響により、成形品セット時に成形品と金型との間でがたつきが発生し、その結果、樹脂漏れやバリが発生し、樹脂成形部の品質が低下する。
【0007】
なお、上記特許文献1に記載されたモータの樹脂成形部(モールド本体)の成形においても、予備モールド部と外皮モールド部とに分けて樹脂成形を実施している。
【0008】
本発明の目的は、モータの製造方法においてモータの品質の向上を図ることが可能な技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様は、所定の方向に回転するターンテーブルと、前記ターンテーブル上に所定角度を空けて配置された複数の下型と、複数の前記下型の上方にそれぞれ配置され、前記下型に対して型開きおよび型締めを行う複数の上型と、を有する複数の金型と、を備えた射出成形装置によって成形されるモータの製造方法であって、(a)ステータコア、該ステータコアに巻回されたコイルおよび該コイルに接続されたターミナルを含むステータユニットを複数の前記金型のうちの1つの前記下型に配置する工程と、(b)前記ターンテーブルを旋回して前記(a)工程後の前記下型を所定角度回転させ、対応する前記上型を型締めした後、前記ステータユニットに第1の樹脂材料を射出して前記ステータコア、前記コイルおよび前記ターミナルのそれぞれの少なくとも一部を覆う第1の成形部を成形する工程と、(c)前記ターンテーブルを旋回して前記(b)工程後の前記下型を所定角度回転させ、対応する前記上型を型締めした後、前記第1の成形部のうち前記ターミナルの一部を覆うターミナル成形部の外周部に第2の樹脂材料を射出して、前記ターミナル成形部に積層する第2の成形部を成形する工程と、を有し、前記ターンテーブルを所定角度回転させることで、前記下型の位置を変えて前記(a)工程~前記(c)工程を1サイクルとした工程を行い、前記1サイクルには、前記(b)工程を実施した後、前記(b)工程にある前記下型に前記ターミナル成形部を収容した状態で前記(c)工程に移行す
【0010】
本発明の他の態様は、前記(c)工程では、前記第2の樹脂材料として前記第1の樹脂材料と同一の樹脂材料を射出する。
【0011】
本発明の他の態様は、前記(c)工程では、前記第2の成形部から前記ターミナルの一部が露出するように射出成形する。
【0012】
本発明の他の態様では、前記複数回繰り返される前記1サイクルには、前記(a)工程と前記(b)工程と前記(c)工程とを同時に実施する前記1サイクルが含まれる。
【0013】
本発明の他の態様では、前記(a)工程、前記(b)工程および前記(c)工程を、回転自在に設けられたターンテーブル上に該ターンテーブルの回転中心に対して等間隔で配置された複数の前記金型において実施する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、モータの品質の向上化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施の形態の射出成形装置の構成を示す概略図である。
図2図1に示す射出成形装置における下型の配置を示す概略図である。
図3】本発明の実施の形態のステータ成形品の外観構造を示す斜視図である。
図4】本発明の実施の形態のモータの外観構造を示す斜視図である。
図5図4に示すモータの構造を示す断面図である。
図6図4に示すモータにおけるステータユニットの構造を示す斜視図である。
図7】本発明の実施の形態のモータの第1の成形部の構造を示す斜視図である。
図8】変形例の射出成形装置における下型の配置を示す概略図である。
図9図8に示す射出成形装置を用いたモータの組立ての加工手順図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。
【0017】
図1および図2に示す本実施の形態の射出成形装置の構造について説明する。図1に示す射出成形装置20は、例えば、自動二輪車等に装着される燃料ポンプに内蔵される図4のモータ3の樹脂成形部を射出成形する装置である。
【0018】
射出成形装置20は、回転中心C(図2参照)に対して回転自在に設けられたターンテーブル5を備えており、このターンテーブル5を所定の角度回転させて、設定されたターンテーブル5の周縁部上の複数の箇所で所望の処理を同時に行うことが可能な装置である。
【0019】
本実施の形態では、図2に示すように、ターンテーブル5の周縁部において120°間隔で設定された3箇所(X位置、Y位置、Z位置)において処望の処理が実施される場合について説明する。例えば、X位置では、金型へのユニット部品のセットおよび完成品の取出しが実施される。また、Y位置では、モータ3の樹脂成形部の1回目の射出成形が実施され、さらにZ位置では、モータ3の樹脂成形部の2回目の射出成形が実施される。
【0020】
そして、図1に示すように、射出成形装置20は、ターンテーブル5上に、このターンテーブル5の回転方向に沿って120°間隔で配置された第1金型6、第2金型7および第3金型8を備えている。つまり、第1金型6、第2金型7および第3金型8は、ターンテーブル5上にターンテーブル5の回転方向に沿って120°間隔で配置されており、第1金型6、第2金型7および第3金型8は、それぞれ下型である。なお、図2に示すように、ターンテーブル5上の120°毎に設定された処理位置をそれぞれX位置、Y位置およびZ位置とすると、例えば、初期状態では、X位置に第1金型6が配置され、Y位置に第2金型7が配置され、Z位置に第3金型8が配置されている。
【0021】
そして、図1に示すように、射出成形装置20は、下型に対して型開きおよび型締めをする第5金型10および第6金型11を備えている。第5金型10および第6金型11は、それぞれ上型である。さらに、射出成形装置20は、型締めされた金型内に樹脂を射出する第1射出装置12および第2射出装置13を備えている。第1射出装置12は、射出筒12aを有し、かつ、第5金型10の上部に配置され、第2射出装置13は、射出筒13aを有し、かつ、第6金型11の上部に配置されている。
【0022】
すなわち、射出成形装置20においては、第5金型10に第1射出装置12が取り付けられ、第6金型11に第2射出装置13が取り付けられている。そして、第1射出装置12は、射出口12bを有する射出筒12aを備えている。また、第2射出装置13は、射出口13bを有する射出筒13aを備えている。
【0023】
なお、射出成形装置20では、ターンテーブル5の回転(旋回)動作や金型の型開きおよび型締めの動作、さらに各射出装置からの射出動作等が図示しない制御部によって制御される。具体的には、下型である第1金型6、第2金型7および第3金型8の何れかに対して、上型である第5金型10および第6金型11を接近させたり、離反させたりする動作、使用する各射出装置、使用する樹脂および射出のタイミングなどの射出動作が上記制御部によって制御される。さらに、第1射出装置12および第2射出装置13に対して、必要なタイミングで必要な樹脂をそれぞれの射出筒の射出口から射出するようになっている。
【0024】
また、ターンテーブル5の位置制御として、上記制御部は、例えば、ターンテーブル5に対して第1の位置制御、第2の位置制御および第3の位置制御を実行する制御を行う。上記第1の位置制御が実行されると、第2金型7と第5金型10とが対向し、かつ、第3金型8と第6金型11とが対向する第1回転位置にターンテーブル5が回転する。また、上記第2の位置制御が実行されると、第1金型6と第5金型10とが対向し、かつ、第2金型7と第6金型11とが対向する第2回転位置にターンテーブル5が回転する。さらに、上記第3の位置制御が実行されると、第3金型8と第5金型10とが対向し、かつ、第1金型6と第6金型11とが対向する第3回転位置にターンテーブル5が回転する。
【0025】
また、図2に示すように、射出成形装置20においては、ターンテーブル5のX位置の近傍に、金型に対してユニットのセットおよび完成品の取出しを行うハンドリング用のロボット14が設けられている。
【0026】
次に、本実施の形態のモータ3の構造について説明する。
【0027】
図4および図5に示すモータ3は、例えば、自動二輪車等に装着された燃料ポンプに内蔵されるブラシレスモータである。モータ3の構造について説明すると、ステータ3aと、このステータ3aの内部に回転可能に設けられたロータ3fと、ロータ3fを回転自在に支持する軸受4と、ステータ3aの一部を覆う樹脂製の第1の成形部1と、第1の成形部1に積層された樹脂製の第2の成形部2と、第1の成形部1および第2の成形部2から露出する外部接続用端子であるターミナル3dと、を有している。
【0028】
ステータ3aは、薄い複数の鋼板を積層してなるステータコア3bと、ステータコア3bのティース3kに導線が巻回されて形成されたコイル3cと、ステータコア3bとコイル3cとの間を絶縁するインシュレータ3jと、を備えている。
【0029】
ロータ3fは、ロータコア3gと、軸受4により回転自在に支持されたロータシャフト3hと、ロータコア3gに設けられ、かつ、N極およびS極が交互に配列されたマグネット3iと、を備えている。
【0030】
ターミナル3dは、コイル3cと電気的に接続されている。
【0031】
また、第1の成形部1は、ターミナル3dの一部を覆うターミナル成形部1aと、ステータコア3bのターミナル成形部1aと反対側の端部を覆うコア端部成形部1bと、ステータコア3bの内部の隣り合うコイル3c間に埋め込まれるコア内部成形部1cと、からなる。
【0032】
一方、第2の成形部2は、ターミナル成形部1aに積層するように成形されており、燃料の出口となる排出口2aを有している。
【0033】
上記構成のモータ3では、コイル3cに電流を流すことにより、ステータコア3bにはN極およびS極の回転磁界が生じ、この回転磁界に追随してロータコア3gに設けられたロータシャフト3hが回転する。そして、ロータシャフト3hの回転によって図示しないインペラが回転する。さらに、このインペラの回転に伴ってモータ3が装着される燃料ポンプの弁が開閉し、これにより、エンジンに送られる燃料の量が調整される。
【0034】
本実施の形態では、第1の成形部1を成形する第1の樹脂材料と、第2の成形部2を成形する第2の樹脂材料とが同一の樹脂材料の場合を説明する。上記樹脂材料の一例は、PPS(ポリフェニレンスルファイド)樹脂である。
【0035】
次に、本実施の形態のモータの製造手順について説明する。
【0036】
まず、図2に示すターンテーブル5のX位置において、図6に示すステータユニット3eを、図2に示すハンドリング用のロボット14により図1に示す第1金型6にセットする。ステータユニット3eは、ステータコア3b、ステータコア3bに巻回されたコイル3cおよびコイル3cに接続されたターミナル3dを含むユニットである。なお、ステータユニット3eを第1金型6にセットする際の第1金型6に対するターミナル3dの向きは特に問わない。つまり、第1金型6にステータユニット3eを配置する際のターミナル3dの向きは、下向き、上向きまたは横向きの何れであってもよい。
【0037】
ステータユニット3eの配置後、ターンテーブル5を120°旋回し、図2のY位置において、1回目の成形(1回目成形)を実施する。具体的には、第1金型6および第5金型10を型締めし、型締め後、第1金型6および第5金型10内のステータユニット3eに第1の樹脂材料を射出して、ステータコア3b、コイル3cおよびターミナル3dのそれぞれの少なくとも一部を覆う第1の成形部1を成形する。本実施の形態では、第1の成形部1として、図7に示すターミナル3dの一部を覆うターミナル成形部1aと、ステータコア3bのターミナル成形部1aと反対側の端部を覆うコア端部成形部1bと、図5に示すステータコア3bの内部の隣り合うコイル3c間の隙間に埋め込まれるコア内部成形部1cと、を射出成形する。
【0038】
なお、1回目の成形時には、第1金型6のエジェクタ(図示せず)を所定量上昇させることで、ターミナル3dの一部を覆うターミナル成形部1aを射出成形することができる。
【0039】
1回目の成形を実施した後、第1金型6および第5金型10の型開きを行い、型開き後、ターンテーブル5を120°旋回し、第1金型6を図2に示すZ位置に移動させる。この時、第1金型6のキャビティ(図示せず)にターミナル成形部1aを含む成形品を収容した状態でZ位置に移動させる。そして、図2のZ位置において、2回目の成形(2回目成形)を実施する。具体的には、第1金型6および第6金型11を型締めし、型締め後、第1金型6および第6金型11内に配置されたターミナル成形部1aの外周部に第2の樹脂材料を射出して、図3に示すようなターミナル成形部1aに積層する第2の成形部2を射出成形する。なお、2回目の成形(第2の成形部2を成形する射出成形)では、上記第2の樹脂材料として上記第1の樹脂材料と同一の樹脂材料を射出する。上記第1の樹脂材料と上記第2の樹脂材料とを同一の樹脂材料とすることで、モータ3の組立てにおける材料管理を容易にすることができる。さらに、モータ3のコストの低減化を図ることができる。
【0040】
また、上記2回目の成形では、図3に示すように、第2の成形部2からターミナル成形部1aの一部を露出させるとともに、第2の成形部2からターミナル3dの先端部が露出するように射出成形する。さらに、2回目の成形時には、第1金型6の上記エジェクタを上昇させないことで、第1金型6における残りの半分、すなわちターミナル成形部1aに積層させて第2の成形部2を射出成形することができる。
【0041】
2回目の成形を実施した後、第1金型6および第6金型11の型開きを行い、型開き後、ターンテーブル5を120°旋回し、図2のX位置において、2回目の成形が行われた図3に示すステータ成形品15を、図2に示すロボット14により第1金型6から取出す。
【0042】
そして、第1金型6から取出したステータ成形品15に、マグネット3iが装着されたロータコア3gおよびロータシャフト3hを組付けることで、図4に示すモータ3の組立てを完了する。
【0043】
以上のように、本実施の形態のモータ3の組立ては、回転自在に設けられたターンテーブル5上にターンテーブル5の回転中心Cに対して120°ずつ等間隔で配置された第1金型6、第2金型7および第3金型8を用いるものである。そして、ターンテーブル5上に等間隔で配置された第1金型6、第2金型7および第3金型8において、下型にステータユニット3eをセットする工程と、1回目の成形によって第1の成形部1を成形する工程と、2回目の成形によって第2の成形部2を成形する工程と、下型から完成品を取出す工程と、を実施するものである。
【0044】
本実施の形態のモータ3の組立ては、以降、X位置、Y位置およびZ位置のそれぞれにおいて、繰り返して上記同様の処理が行われ、モータ3を連続的に生産することが可能である。なお、本実施の形態のモータ3の製造方法は、上記X位置、Y位置およびZ位置で実施される各処理を1サイクルとして、該1サイクルを複数回繰り返すものである。そして、複数回繰り返される上記1サイクルに、1回目の成形を実施して第1の成形部1を成形した後、2回目の成形が実施される箇所にターミナル成形部1aを含む成形品を移行する際に、第1金型6のキャビティ(図示せず)にターミナル成形部1aを含む成形品を収容した状態で2回目の成形が実施される箇所に移行させるような上記1サイクルが含まれていればよい。本実施の形態では、複数回繰り返される上記1サイクルのそれぞれにおいて、1回目の成形を実施した後、第1金型6の上記キャビティにターミナル成形部1aを含む成形品を収容した状態で2回目の成形が実施される箇所に移行させる場合を説明した。ターミナル成形部1aだけでなく、図3に示すコア端部成形部1bや、図5に示すコア内部成形部1cの一部を2回目の成形が実施される形態でもよい。
【0045】
したがって、本実施の形態のモータ3の組立てでは、Y位置でターミナル成形部1aを成形した後、ターンテーブル5の旋回によってZ位置に移行する際に、ターミナル成形部1aを含む成形品を第1金型6の上記キャビティから取出さずにZ位置に移行させることができる。
【0046】
なお、本実施の形態では、下型にステータユニット3eをセットする工程と、1回目の成形によって第1の成形部1を成形する工程と、2回目の成形によって第2の成形部2を成形する工程と、下型から完成品を取出す工程と、をターンテーブル5上で同時に実施する場合を説明した。ただし、モータ3の組立てとしては、複数回繰り返される上記1サイクルにおいて、下型にステータユニット3eをセットする工程と、1回目の成形によって第1の成形部1を成形する工程と、2回目の成形によって第2の成形部2を成形する工程と、下型から完成品を取出す工程と、を同時に実施する上記1サイクルを含んでいればよい。
【0047】
本実施の形態のモータ3の組立てでは、1回目の射出成形を実施した後、2回目の射出成形を実施する際に、下型から成形品を取出さずに2回目の射出成形を実施するため、成形品の冷却時間の違い等による温度のバラツキや金型の組み合わせによるバラツキの影響で、成形品セット時にがたつきが発生することを無くすことができる。その結果、樹脂漏れやバリが発生することを防ぐことができ、モータ3の品質の向上化を図ることができる。特に、モータ3の樹脂成形部の品質を向上させることができる。
【0048】
また、1回目の射出成形を実施した後、下型から成形品を取出さずに2回目の射出成形を実施するため、静電気による成形品への異物の付着を防止することができる。これにより、除電処理が不要になるとともに異物の付着がない生産が可能になり、モータ3の品質の向上化を図ることができる。
【0049】
また、1回目の射出成形を実施した後、2回目の射出成形を実施する際に、下型から成形品を取出さずに2回目の射出成形を実施するため、中間在庫を発生させることなく、モータ3を生産することが可能になる。これにより、中間在庫を収容するための収容箱や該収容箱内で成形品を仕切るための仕切り板が不要になり、モータ3の製造コストの低減化を図ることができる。
【0050】
さらに、1回目の射出成形を実施した後、下型から成形品を取出さずに2回目の射出成形を実施するため、モータ3に限らず、厚肉部分を有する他の樹脂成形品の射出成形を行うことができる。
【0051】
また、1回目の射出成形を実施した後、下型から成形品を取出さずに2回目の射出成形を実施するため、一定の時間で成形することができ、樹脂成形部の温度バラツキを無くすことができる。その結果、モータ3の樹脂成形部の品質の安定化を図ることができる。
【0052】
また、金型において複数個取りしても、下型と上型の組み合わせが決まるため、金型の組合わせによる成形品のバラツキを低減することができる。
【0053】
また、1回目の射出成形を実施した後、下型から成形品を取出さずに2回目の射出成形を実施するため、成形時間の短縮化を図ることができ、モータ3の生産性の向上化を図ることができる。
【0054】
また、2回の射出成形に対して、ロボット1台で自動生産を行うことが可能になるため、射出成形装置20の小型化を図ることができる。
【0055】
次に、図8および図9を用いて、本実施の形態の変形例について説明する。
【0056】
変形例のモータの組立ては、図8に示す回転自在に設けられたターンテーブル5上にターンテーブル5の回転中心Cに対して180°間隔で配置された2つの下型、例えば、図1に示す第2金型7および第3金型8を用いるものである。そして、ターンテーブル5上に配置された第2金型7および第3金型8において、下型にステータユニット3eをセットする工程と、1回目の成形によって第1の成形部1を成形する工程と、2回目の成形によって第2の成形部2を成形する工程と、下型から完成品を取出す工程と、を実施する。
【0057】
図9を用いて変形例のモータの製造手順について説明する。
【0058】
まず、図8に示すターンテーブル5のX位置において、図6に示すステータユニット3eを、図8に示すハンドリング用のロボット14により第3金型8にセットする。ステータユニット3eは、ステータコア3b、ステータコア3bに巻回されたコイル3cおよびコイル3cに接続されたターミナル3dを含むユニットである。
【0059】
ステータユニット3eの配置後、図9のX位置において、1回目の成形(1回目成形)を実施する。具体的には、第3金型8および第6金型11を型締めし、型締め後、第3金型8および第6金型11内のステータユニット3eに第1の樹脂材料を射出して、ステータコア3b、コイル3cおよびターミナル3dのそれぞれの少なくとも一部を覆う第1の成形部1を成形する。ここでは、第1の成形部1として、図7に示すターミナル3dの一部を覆うターミナル成形部1aと、ステータコア3bのターミナル成形部1aと反対側の端部を覆うコア端部成形部1bと、図5に示すステータコア3bの内部の隣り合うコイル3c間の隙間に埋め込まれるコア内部成形部1cと、を射出成形する。
【0060】
一方、X位置で1回目の成形を実施している間、Y位置では、前段で1回目の成形が行われた成形品に対して第2金型7および第5金型10により、2回目の成形(2回目成形)を実施する。具体的には、第2金型7および第5金型10内に配置されたターミナル成形部1aの外周部に第2の樹脂材料を射出して、図3に示すようなターミナル成形部1aに積層する第2の成形部2を射出成形する。なお、上記2回目の成形では、図3に示すように、第2の成形部2からターミナル3dの一部が露出するように射出成形する。
【0061】
その後、下型と上型の型開きを行い、型開き後、ターンテーブル5を180°旋回し、第2金型7を図8に示すX位置に移動させるとともに、第3金型8をY位置に移動させる。この時、第3金型8のキャビティ(図示せず)にターミナル成形部1aを含む成形品を収容した状態でY位置に移動させる。そして、図9のY位置において、2回目の成形(2回目成形)を実施する。具体的には、第3金型8および第5金型10を型締めし、型締め後、第3金型8および第5金型10内に配置されたターミナル成形部1aの外周部に第2の樹脂材料を射出して、図3に示すようなターミナル成形部1aに積層する第2の成形部2を射出成形する。
【0062】
一方、Y位置で2回目の成形を実施している間、X位置において、前段で2回目の成形が行われた図3に示すステータ成形品15を、図8に示すロボット14により第2金型7から取出す。さらに、ロボット14により図6に示すステータユニット3eを第2金型7にセットする。
【0063】
その後、下型と上型の型開きを行い、型開き後、ターンテーブル5を180°旋回してX位置およびY位置で図9に示す処理を複数回繰り返して行う。すなわち、変形例のモータ3(図4参照)の組立てにおいても、以降、X位置およびY位置のそれぞれにおいて、繰り返して上記同様の処理が行われ、モータ3を連続的に生産することが可能である。
【0064】
以上のように、変形例のモータ3の組立ては、ターンテーブル5上にターンテーブル5の回転中心Cに対して180°の間隔で配置された下型を用いて、下型にステータユニット3eをセットする工程と、1回目の成形によって第1の成形部1を成形する工程と、2回目の成形によって第2の成形部2を成形する工程と、下型から完成品を取出す工程と、を実施するものである。
【0065】
なお、下型から取出した図3に示すステータ成形品15に、マグネット3iが装着されたロータコア3gおよびロータシャフト3hを組付けることで、図4に示すモータ3の組立てを完了する。
【0066】
また、変形例のモータ3の組立てでは、X位置とY位置とで成形サイクルの長さに応じて、完成品の取出しおよびユニットのセットの実施位置を変更することが可能である。
【0067】
本変形例のモータ3の組立てにおいても、上記実施の形態のモータ3の組立てと同様に、1回目の射出成形を実施した後、2回目の射出成形を実施する際に、下型から成形品を取出さずに2回目の射出成形を実施するため、成形品の冷却時間等による温度のバラツキや金型の組み合わせによるバラツキの影響で、成形品セット時にがたつきが発生することを無くすことができる。その結果、樹脂漏れやバリが成形されることを防ぐことができ、モータ3の品質の向上化を図ることができる。
【0068】
また、1回目の射出成形を実施した後、下型から成形品を取出さずに2回目の射出成形を実施するため、静電気による成形品への異物の付着を防止することができる。これにより、除電処理が不要になるとともに異物の付着がない生産が可能になり、モータ3の品質の向上化を図ることができる。
【0069】
また、本変形例では、ターンテーブル5上に2つの下型を配置すればよいため、射出成形装置20の小型化と低コスト化を図ることができる。
【0070】
本変形例のモータ3の組立てによって得られるその他の効果については、上記実施の形態のモータ3の組立てによって得られるその他の効果と同様であるため、その重複説明は省略する。
【0071】
本発明は上記実施の形態および変形例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
【0072】
上記実施の形態および変形例では、ターンテーブル5における下型の配置間隔(回転中心Cの周上の角度)がそれぞれ120°または180°の場合を説明したが、下型の配置間隔の角度は、120°や180°に限らず120°および180°以外の角度であってもよい。また、横型ロータリー式射出成型機を用いてもよい。
【符号の説明】
【0073】
1 第1の成形部
1a ターミナル成形部(第1の成形部)
1b コア端部成形部(第1の成形部)
1c コア内部成形部(第1の成形部)
2 第2の成形部
2a 排出口
3 モータ
3a ステータ
3b ステータコア
3c コイル
3d ターミナル
3e ステータユニット
3f ロータ
3g ロータコア
3h ロータシャフト
3i マグネット
3j インシュレータ
3k ティース
4 軸受
5 ターンテーブル
6 第1金型(下型)
7 第2金型(下型)
8 第3金型(下型)
10 第5金型(上型)
11 第6金型(上型)
12 第1射出装置
12a 射出筒
12b 射出口
13 第2射出装置
13a 射出筒
13b 射出口
14 ロボット
15 ステータ成形品
20 射出成形装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9