(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-04
(45)【発行日】2023-12-12
(54)【発明の名称】自走式散布装置
(51)【国際特許分類】
A01M 7/00 20060101AFI20231205BHJP
【FI】
A01M7/00 J
(21)【出願番号】P 2020208783
(22)【出願日】2020-12-16
【審査請求日】2023-02-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000171746
【氏名又は名称】株式会社ササキコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100078949
【氏名又は名称】浅野 勝美
(72)【発明者】
【氏名】梅田 洵平
(72)【発明者】
【氏名】米澤 美鈴
【審査官】吉原 健太
(56)【参考文献】
【文献】実開平05-007368(JP,U)
【文献】特開2005-138043(JP,A)
【文献】実公平01-016534(JP,Y2)
【文献】米国特許出願公開第2017/0027152(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01M 1/00 - 99/00
B05B 12/16 - 12/36
B05B 14/00 - 17/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体と、機体の進行方向に沿う両端部に設けられる走行部と、機体の進行方向に直交する方向に拡開される散布部とからなり、
上記散布部は、機体のフレームに枢着される第1アームと、該第1アームに一体に連結される第2アームと、該第2アームに設けられ、該第2アームの長手方向に延長される散布管とからなり、
上記第1アームと上記フレームのいずれか一方に該第1アームを該フレームに対し水平方向に回動する第1支点軸が設けられ、上記第2アームと上記第1アームのいずれか一方に該第2アームを該第1アームに対し水平方向に回動する第2支点軸が設けられ、
上記第2アーム及び上記散布管は、
後方退避姿勢Bかつ前方退避姿勢Cに変位可能であり、機体の進行方向に直交する方向に拡開された作業姿勢Aから、進行方向の前方から後方にかけて水平回動して機体の進行方向に沿う後方退避姿勢B又は後方から前方にかけて水平回動して機体の進行方向に沿う前方退避姿勢Cに変位可能であ
り、上記後方退避姿勢のとき上記第2支点軸が上記第1支点軸より外側に位置し、上記前方退避姿勢のとき上記第2支点軸が上記第1支点軸より内側に位置することを特徴とする自走式散布装置。
【請求項2】
請求項
1記載の自走式散布装置において、上記第1アームには一端部に上記第1支点軸が設けられ、他端部に上記第2支点軸が設けられることを特徴とする自走式散布装置。
【請求項3】
請求項1
又は請求項2記載の自走式散布装置において、上記第1アーム、第2アーム及び散布管が機体の進行方向に対し対設されることを特徴とする自走式散布装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項
3のいずれか一記載の自走式散布装置において、上記後方退避姿勢時の第1アームの最大回動範囲は上記散布管が進行方向と平行になるまでの後方回動であることを特徴とする自走式散布装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項
3のいずれか一記載の自走式散布装置において、上記前方退避姿勢時の第2アームの最大回動範囲は上記散布管が進行方向と平行になるまでの前方回動であることを特徴とする自走式散布装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項
5のいずれか一記載の自走式散布装置において、上記第1アームを付勢する第1弾性体が上記フレームと上記第1アームとの間に設けられることを特徴とする自走式散布装置。
【請求項7】
請求項1乃至請求項
6のいずれか一記載の自走式散布装置において、上記第2アームを外側に付勢する第2弾性体が該第2アームに設けられ、作業姿勢時に上記第2アームを進行方向に直交する方向に拡開することを特徴とする自走式散布装置。
【請求項8】
請求項1乃至請求項
7のいずれか一記載の自走式散布装置において、上記第1アームに設けられた係止孔に係止可能な係止部材が上記フレームの端部に設けられることを特徴とする自走式散布装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は自走式の作業車に関し、とくに液体や粉体等の散布物を散布する自走式散布装置に関する。
【背景技術】
【0002】
粉体や液体等の散布物を散布する自走式散布装置において、散布作業時には散布幅を広くとるために散布装置を進行方向の左右に展開させ、非作業時には左右の先端部を折り畳むことが知られている。
【0003】
また、自走式散布装置を展開させた姿勢で障害物等に接触した際に緩衝機能を有する装置が知られている。
【0004】
例えば従来の自走式散布装置は、機体の左右外方へ展張されるブームの収納構造が上向きに折り畳まれる走行機体側の第一ブームと、第一ブームに連結され走行機体の進行方向に沿って折り畳まれる第二ブームと、第二ブームと記第一ブームの折り畳み内角部を連結するショックアブソーバを備えているものがある。
【0005】
しかしながら、従来の自走式散布装置はブームの一方向側である前方側にしかブームが回動できないため、進行方向の前後から障害物に衝突すると、作業中断となる難があった。作業現場では障害物回避のため後進するだけでなく、前進する必要がある場合もあるからである。
【0006】
また枢支軸が機体に対して側方に突出していると、走行機体の近傍側方に障害物が位置する場合、ブームの前方への回動ができない問題があった。
【0007】
さらに、従来の自走式散布装置は作業員が乗用して操作する大型の機体であり、作業員が現場を視認しながら操作する。しかしながら無人型の小型で遠隔操作可能な機体の場合、現場の視認操作は困難であり、また走行機体とその周囲近傍の距離感の把握が困難であるため、前進、後進の進行方向を問わず、走行機体に備えた作業部(散布部)が障害物等に接触されやすい問題も生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本願発明は上記背景に鑑み、走行機体の側方近傍に位置する障害物に対する緩衝を進行方向の前方後方を問わず適正に行うことができ、作業効率の良好な自走式散布装置を提供することを目的とする。
【0010】
また視認操作が困難な現場にも容易に適用することができる自走式散布装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題解決のため、本願発明請求項1による自走式散布装置は、機体と、機体の進行方向に沿う両端部に設けられる走行部と、機体の進行方向に直交する方向に拡開される散布部とからなり、上記散布部は、機体のフレームに枢着される第1アームと、該第1アームに一体に連結される第2アームと、該第2アームに設けられ、該第2アームの長手方向に延長される散布管とからなり、上記第1アームと上記フレームのいずれか一方に該第1アームを該フレームに対し水平方向に回動する第1支点軸が設けられ、上記第2アームと上記第1アームのいずれか一方に該第2アームを該第1アームに対し水平方向に回動する第2支点軸が設けられ、上記第2アーム及び上記散布管は、後方退避姿勢Bかつ前方退避姿勢Cに変位可能であり、機体の進行方向に直交する方向に拡開された作業姿勢Aから、進行方向の前方から後方にかけて水平回動して機体の進行方向に沿う後方退避姿勢B又は後方から前方にかけて水平回動して機体の進行方向に沿う前方退避姿勢Cに変位可能であり、上記後方退避姿勢のとき上記第2支点軸が上記第1支点軸より外側に位置し、上記前方退避姿勢のとき上記第2支点軸が上記第1支点軸より内側に位置することを特徴とする。
また本願発明請求項2による自走式散布装置は、請求項1記載の自走式散布装置において、上記第1アームには一端部に上記第1支点軸が設けられ、他端部に上記第2支点軸が設けられることを特徴とする。
また本願発明請求項3による自走式散布装置は、請求項1又は請求項2記載の自走式散布装置において、上記第1アーム、第2アーム及び散布管が機体の進行方向に対し対設されることを特徴とする。
また本願発明請求項4による自走式散布装置は、請求項1乃至請求項3のいずれか一記載の自走式散布装置において、上記後方退避姿勢時の第1アームの最大回動範囲は上記散布管が進行方向と平行になるまでの後方回動であることを特徴とする。
また本願発明請求項5による自走式散布装置は、請求項1乃至請求項3のいずれか一記載の自走式散布装置において、上記前方退避姿勢時の第2アームの最大回動範囲は上記散布管が進行方向と平行になるまでの前方回動であることを特徴とする。
また本願発明請求項6による自走式散布装置は、請求項1乃至請求項5のいずれか一記載の自走式散布装置において、上記第1アームを付勢する第1弾性体が上記フレームと上記第1アームとの間に設けられることを特徴とする。
また本願発明請求項7による自走式散布装置は、請求項1乃至請求項6のいずれか一記載の自走式散布装置において、上記第2アームを外側に付勢する第2弾性体が該第2アームに設けられ、作業姿勢時に上記第2アームを進行方向に直交する方向に拡開することを特徴とする。
また本願発明請求項8による自走式散布装置は、請求項1乃至請求項7のいずれか一記載の自走式散布装置において、上記第1アームに設けられた係止孔に係止可能な係止部材が上記フレームの端部に設けられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
散布管及び第2アームが障害物により押圧され、上記各部が第1アームとともに第1支点軸を軸にして進行方向の前方から後方にかけて水平回動することにより、
図1に示す後方退避姿勢Bの位置まで回動する場合、散布部の散布管は進行方向と平行になるまで後方側に回動する。よって走行機は、自走式散布装置を含めた機体の全幅W
2を最小にして、障害物を通過することができる。すなわち、障害物が乱立するような狭い場所でも容易に散布装置を含めた走行機体を通過させることができるので、散布部と障害物との衝突を防止することができる。
【0013】
また散布部及び第2アームが障害物により押圧され、上記各部が第1アームの第2支点軸を軸にして進行方向の後方から前方にかけて水平回動することにより
図1に示す前方退避姿勢Cの位置まで回動する場合、散布管は走行部より内側に位置されるから、散布部は障害物との衝突を防止することができる。
【0014】
このように、障害物との衝突を回避すべく機体の前進や後進を繰り返すような障害物が多い現場であっても、走行機体の側方近傍に位置する障害物に対し、散布部が接触乃至衝突するのを防止することができる。
【0015】
散布管と機体との位置関係について述べると、退避姿勢とくに後方退避姿勢Bにおける散布部と走行機体との位置関係は、散布部が機体走行部の側方に位置する。このため、散布物が走行機体に落下することがなく、薬液等による走行部の腐食を防止することができる。
【0016】
また作業姿勢Aにおける第1支点軸は、第2支点軸より外側に位置しており、散布ノズルが第1支点軸の内側から外側にかけて設けられているので、散布物を走行機体の中央部から外側にかけて散布することができる。
【0017】
さらに第1アームを第1支点軸より内側に向くように常時付勢する第1弾性体が設けられた場合、第1アームは、後方退避姿勢Bに姿勢変更されても、障害物を通過した際、第1アームを元の位置である作業姿勢Aの位置に即時に復帰させることができる。
【0018】
また第2アームの先端側が進行方向に対する幅方向に向くように常時付勢する第2弾性体が設けられた場合、第2アームは、前方退避姿勢Cに姿勢変更されても、障害物を通過した際、第2アームを元の位置である作業姿勢Aの位置に即時に復帰させることができる。
【0019】
よって第1アーム及び第2アームは、障害物に接触しても、障害物に抗することなくやり過ごし、障害物の通過後直ちに作業姿勢Aに復帰することができ、アームの復帰のために散布作業が中断されることがない。
【0020】
さらにまた、第1アームの回動を固定する係止部材が設けられた場合、第2アーム及び散布管が後方退避姿勢Bのまま走行機体の側方に収納された状態で固定されるので、散布作業時以外の移動走行時に散布部が邪魔にならない。よってスムーズな移動走行が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本願発明による自走式散布装置の実施の形態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に実施の形態を示す本願発明による自走式散布装置をさらに詳しく説明する。なお、便宜上同一の機能を奏する部分には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0023】
図1乃至
図6において、自走式散布装置は、ラジコンと呼ばれる操作送信機(図示省略)により操縦される無人型の小型で遠隔操作可能な機体1と、該機体1の進行方向両端部に設けられる走行部3と、該機体1の進行方向に直交する方向に拡開される散布部5とからなる。上記走行部3は図示しない走行モータと、駆動輪3aたる後輪と従動輪3bたる前輪からなり、両輪間に転輪3cを介して、クローラベルト3dが掛け渡される。上記散布部5は、機体1のフレーム7にフリーに枢着される一対の第1アーム9と、該第1アーム9に一体に連結される一対の第2アーム11と、該第2アーム11に設けられ、該第2アーム11の長手方向に延長される一対の散布管13とからなる。上記散布管13には3箇の散布ノズル14a、14b、14c(総称するときは「散布ノズル14」という)が内側から外側にかけて設けられる。上記第1アーム9には、一端部に、該第1アーム9を上記フレーム7に対し水平方向に回動する第1支点軸15が設けられ、他端部に、上記第2アーム11を上記第1アーム9に対し水平方向に回動する第2支点軸17が設けられる。
【0024】
上記第2アーム11及び上記散布管13は、
図1示のように前進の際、立木等の障害物に当接・押圧され、機体1の進行方向に直交する方向の姿勢(作業姿勢A)から、進行方向の前方から後方にかけて水平回動して機体1の進行方向に沿う姿勢(後方退避姿勢B)に移行するとき、変位即ち姿勢が変更される。
また上記第2アーム11及び上記散布管13は、
図5示のように後進の際、立木等の障害物に当接・押圧された場合、後方から前方にかけて水平回動して機体1の進行方向に沿う姿勢(前方退避姿勢C)に移行するときにも(
図5に実線で示す)、変位即ち姿勢が変更される。
【0025】
上記第2アーム11及び上記散布管13は、後方退避姿勢Bのとき上記第2支点軸17が上記第1支点軸15より外側に位置し、前方退避姿勢Cのとき上記第2支点軸17が上記第1支点軸15より内側に位置する。
【0026】
後方退避姿勢B時の第1アーム9の最大回動範囲は上記散布管13が進行方向と平行になるまでの後方回動である。
また前方退避姿勢C時の第2アーム11の最大回動範囲は上記散布管13が進行方向と平行になるまでの前方回動である。
【0027】
上記第1アーム9には上記フレーム7と上記第1アーム9との間に、上記第1アーム9を第1支点軸15より内側に向くように常時付勢する第1弾性体19が設けられる。また上記第2アーム11には、該第2アーム11を外側に付勢する第2弾性体21が設けられ、作業姿勢A時に上記第2アーム11を進行方向に直交する方向に拡開する。
【0028】
上記第1アーム9の上記フレーム7側端部には係止孔23が設けられ、該係止孔23に上記フレーム7に設けられた係止部材25が脱着可能に篏合される。
【0029】
ここで本実施例による自走式散布装置の各部の寸法を述べる。各部の寸法及び第1アーム9と第2アーム11との取付角Dは次の通りである。
機体全長L1:1309mm
機体から散布管までの全長L2:1536mm
前方退避姿勢C時の全長L3:2238mm
機体の全幅W1:648mm
後方退避姿勢B時の機体の全幅W2:973mm
散布管展開時の全幅W3:1675mm
機体の全高H1:456mm
散布管の高さH0:240mm
第2アームと第1アームの取付角D=30°
【0030】
次に本実施の形態による自走式散布装置の作業姿勢及び退避姿勢について説明する。
作業姿勢Aは、
図1に示すように第2アーム11及び散布管13が拡開されて機体1の進行方向に対し直交する方向の姿勢となり、この展開された姿勢で薬液等の散布物を散布する。
【0031】
退避姿勢は、
図1に示す後方退避姿勢Bと前方退避姿勢Cの2種類ある。後方退避姿勢Bは、散布管5及び第2アーム11が障害物により押圧され、上記各部が第1アーム9とともに第1支点軸15を軸にして進行方向の前方から後方にかけて水平回動することにより、機体1の進行方向に沿う姿勢である。前方退避姿勢Cは、散布部5及び第2アーム11が障害物により押圧され、上記各部が第1アーム9の第2支点軸17を軸にして進行方向の後方から前方にかけて水平回動することにより、機体1の進行方向に沿う姿勢である。
【0032】
立木が点々密集する等障害物が多い作業現場では、障害物回避のため機体の前進や後進を余儀なくされることが多い。まして本実施の形態のように無人型の小型機体であって遠隔操作するような場合、現場の視認操作が困難であるため、また走行機体とその周囲近傍の距離感の把握が困難であるため、前進、後進を度々行うこととなる。
【0033】
後方退避姿勢Bの位置まで回動する場合、散布部5の散布管13は進行方向と平行になるまで後方側に回動するから、走行機は、散布部5を含めた機体1の全幅W2を最小にして、障害物を通過することができる。また前方退避姿勢Cの位置まで回動する場合も、散布管13は走行部3より内側に位置される。よって障害物が乱立するような狭い場所でも容易に散布部5を含めた走行機体1を通過させることができるので、散布部5と障害物との衝突を防止することができる。
【0034】
上記実施の形態によれば、第1支点軸15と第2支点軸17の2点軸構成であるため、散布部5とくに散布管13及び第2アーム11の後方退避姿勢B又は前方退避姿勢Cへの姿勢変更を迅速容易に行うことができる。よってこの間作業中断となることがない。また、後方退避姿勢B又は前方退避姿勢Cから作業姿勢Aへの復帰も第1弾性体19及び第2弾性体21が設けられているため、迅速容易に行うことができ、この間作業中断となることがない。
【0035】
この点をさらに詳しく述べると、作業姿勢Aから後方退避姿勢Bに移行する場合、第1支点軸15を中心に第1アーム9が回動し、かつ、第2支点軸17が変位するものの、第1アーム9に対して第2アーム11は相対的に回動しない。また作業姿勢Aから前方退避姿勢Cに移行する場合、第2支点軸17を中心に第2アーム11のみが回動し、第1アーム9は回動しない。つまり、前方退避姿勢Cのときは、作業姿勢Aに対して第1アームが回動しないため、第1支点軸15の変位はない。このように、上記実施の形態によれば、第1支点軸15と第2支点軸17の2点軸構成とすることにより、姿勢変更時における散布部5とくに散布管13及び第2アーム11の動きが大であるにもかかわらず、上記2点軸の動きを小とすることができるので、姿勢変更を迅速容易に行うことができるのである。
【0036】
この点を失敗例を述べてさらに説明する。後方退避姿勢Bをとるのは、障害物から散布管13を含む散布部5の損傷を防止するためである。この場合、散布部を機体の上方に位置させると、薬液を自機に散布してしまうことがあり、自機が腐食等で損傷するおそれがある。また、散布部5を走行機体の上方に位置させるので、散布管が上方に突出して、上方に位置する障害物等に接触する懸念もある。
よって本実施の形態では上記したような散布管と機体との位置関係にしたのである。
【0037】
即ち、退避姿勢とくに後方退避姿勢Bにおける散布部5と走行機体1との位置関係は、
図1「B」及び
図4に示すように、散布部5が機体走行部3の側方に位置されるので、散布物が走行機体に落下することがなく、薬液等による走行部3の腐食を防止することができるのである。
【0038】
また作業姿勢Aにおける第1支点軸15は、第2支点軸17より外側に位置しており、散布ノズル14a、14b、14cが第1支点軸15の内側から外側にかけて設けられているので、散布物を走行機体1の中央部から外側にかけて散布することができるのである。
【0039】
さらに、第1弾性体19が第1アーム9を第1支点軸15より内側に向くように常時付勢しているので、第1アーム9が後方退避姿勢Bに姿勢変更されても、障害物を通過した際、第1アーム9を元の位置である作業姿勢Aの位置に即時に復帰させることができる。
【0040】
また第2弾性体21により第2アーム11の先端側が進行方向に対する幅方向に向くように常時付勢されているので、第2アーム11が前方退避姿勢Cに姿勢変更されても、障害物を通過した際、第2アーム11を元の位置である作業姿勢Aの位置に即時に復帰させることができる。
【0041】
よって第1アーム9及び第2アーム11は、障害物に接触しても、障害物に抗することなくやり過ごし、障害物の通過後直ちに作業姿勢Aに復帰することができ、アームの復帰のために散布作業が中断されることがない。
【0042】
さらに係止部材25により第1アーム9の回動が固定され、これにより、第2アーム11及び散布管13が後方退避姿勢Bのまま走行機体1の側方に収納された状態で固定されるので、散布作業時以外の移動走行時に散布部5が邪魔にならない。よってスムーズな移動走行が可能となる。
【0043】
本願発明による自走式散布装置は上記した実施の形態に制限されることはない。例えば、第1支点軸15を第1アーム9側にではなく、フレーム7に設けて、第1アーム9をフレーム7に対し水平方向に回動自在としてもよい。また第2支点軸17を第1アーム9側にではなく、第2アーム11に設けて、第2アーム11を第1アーム9に対し水平方向に回動自在としてもよい。さらに散布物は任意であり、液体だけでなく、例えば粉体の散布にも適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本願発明による自走式散布装置は無人型の小型で遠隔操作可能な機体により、散布物を散布する自走式散布装置に活用することができる。
【符号の説明】
【0045】
1 機体
3 走行部
5 散布部
7 フレーム
9 第1アーム
11 第2アーム
13 散布管
14 散布ノズル
15 第1支点軸
17 第2支点軸
19 第1弾性体
21 第2弾性体
23 係止孔
25 係止部材
A 作業姿勢
B 後方退避姿勢
C 前方退避姿勢
D 取付角