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▶ エルゴン ファーマシューティカルズ エルエルシーの特許一覧

<図1>
  • 特許-イタコン酸誘導体の組成物及び使用方法 図1
  • 特許-イタコン酸誘導体の組成物及び使用方法 図2
  • 特許-イタコン酸誘導体の組成物及び使用方法 図3
  • 特許-イタコン酸誘導体の組成物及び使用方法 図4
  • 特許-イタコン酸誘導体の組成物及び使用方法 図5
  • 特許-イタコン酸誘導体の組成物及び使用方法 図6A
  • 特許-イタコン酸誘導体の組成物及び使用方法 図6B
  • 特許-イタコン酸誘導体の組成物及び使用方法 図7
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-04
(45)【発行日】2023-12-12
(54)【発明の名称】イタコン酸誘導体の組成物及び使用方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 57/60 20060101AFI20231205BHJP
   A61K 31/194 20060101ALI20231205BHJP
   A61K 31/205 20060101ALI20231205BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20231205BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20231205BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20231205BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20231205BHJP
   C07C 229/44 20060101ALI20231205BHJP
【FI】
C07C57/60 CSP
A61K31/194
A61K31/205
A61P29/00
A61P31/00
A61P35/00
A61P37/06
C07C229/44
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020572891
(86)(22)【出願日】2019-07-01
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-11-04
(86)【国際出願番号】 US2019040121
(87)【国際公開番号】W WO2020006557
(87)【国際公開日】2020-01-02
【審査請求日】2022-06-13
(31)【優先権主張番号】62/763,735
(32)【優先日】2018-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513312982
【氏名又は名称】エルゴン ファーマシューティカルズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】パパサナスィウ アドニア
【審査官】阿久津 江梨子
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-504863(JP,A)
【文献】国際公開第2011/035332(WO,A1)
【文献】特表2015-516965(JP,A)
【文献】特開平5-262693(JP,A)
【文献】国際公開第2017/142855(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0086986(US,A1)
【文献】特許第4467801(JP,B2)
【文献】Bagavant, G.; Gole, S.R.; Joshi, V.W.; Soni, S.B.,"Studies on anti-inflammatory and analgesic activities of itaconic acid systems. Part 1: Itaconic acids and diesters",Indian Journal of Pharmaceutical Sciences,1994年,Vol. 56, No. 3,pp. 80-85
【文献】Mizufune, Hideya; Nakamura, Minoru; Mitsudera, Hiroyuki,"Process research on arylnaphthalene lignan aza-analogues: a new palladium-catalyzed benzannulation of α,β-bisbenzylidenesuccinic acid derivatives",Tetrahedron,2006年,Vol. 62, No. 36,pp. 8539-8549
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
A61K
A61P
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(12):
【化1】
(式中、
R16、R17、R19、R20、R21、R22、R25及びR26は水素であり、
R23及びR24は水素または-CH であり、
8は、水素、重水素、C~Cアルキル、ハロ、CN、CF、-COOH、-OH、C~Cアルコキシ、-NH、-(C~Cアルキル)NH、-(C~Cアルキル)NH(C~Cアルキル)、-(C~Cアルキル)N(C~Cアルキル)、-NH(C~Cアルキル)、-N(C~Cアルキル)、-CONH、-NH(CO)(C~Cアルキル)、-N(C~Cアルキル)CO(C~Cアルキル)、-SO-(C~Cアルキル)、-(SO)NH、(SO)NH(C~Cアルキル)及び(SO)N(C~Cアルキル)からなる群から選択される)の化合物またはその薬学的に許容可能な塩
【請求項2】
R16~R26が水素であり、下記構造:
【化2】
を有する、請求項に記載の化合物またはその薬学的に許容可能な塩
【請求項3】
R16、R17及びR19~R26が水素であり、R18が-NHであり、下記構造:
【化3】
を有する、請求項に記載の化合物またはその薬学的に許容可能な塩
【請求項4】
請求項1に記載の1種以上の化合物またはその薬学的に許容可能な塩を含む、免疫系の抑制を特徴とする疾患を治療するための医薬組成物。
【請求項5】
前記疾患が癌であり、前記医薬組成物が化合物(6)及び化合物(8)からなる群から選択される1種以上の化合物またはその薬学的に許容可能な塩を含む、請求項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記疾患が感染性疾患であり、前記医薬組成物が化合物(6)及び化合物(8)からなる群から選択される1種以上の化合物またはその薬学的に許容可能な塩を含む、請求項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
請求項1に記載の1種以上の化合物またはその薬学的に許容可能な塩を含む、異常なT細胞活性化を特徴とする疾患を治療するための医薬組成物。
【請求項8】
前記疾患が自己免疫疾患であり、前記医薬組成物が化合物(6)及び化合物(8)からなる群から選択される1種以上の化合物またはその薬学的に許容可能な塩を含む、請求項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記疾患が同種移植片拒絶反応であり、前記医薬組成物が化合物(6)及び化合物(8)からなる群から選択される1種以上の化合物またはその薬学的に許容可能な塩を含む、請求項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
請求項1に記載の1種以上の化合物またはその薬学的に許容可能な塩を含む、IRG1発現を特徴とする疾患を治療するための医薬組成物。
【請求項11】
前記医薬組成物が化合物(6)及び化合物(8)からなる群から選択される1種以上の化合物またはその薬学的に許容可能な塩を含む、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
請求項1に記載の1種以上の化合物またはその薬学的に許容可能な塩を含む、炎症性の障害又は疾患を治療するための医薬組成物。
【請求項13】
前記医薬組成物が化合物(6)及び化合物(8)からなる群から選択される1以上の化合物またはその薬学的に許容可能な塩を含む、請求項12に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イタコン酸の誘導体である化合物、並びに治療に使用するための該化合物、該化合物を含む医薬組成物、有効量の該化合物を、それを必要とする被験体に投与することを含む、免疫系の活性化を増加させる方法、免疫系の活性化を抑制する方法、免疫系の活性化、免疫系の抑制、異常な炎症又は異常な線維症を特徴とする疾患、IRG1の発現を特徴とする疾患を治療する方法、並びにウイルス感染症、細菌感染症、虚血、敗血症、骨疾患及び癌を治療する方法、並びに医薬品の製造における該化合物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
イタコン酸は、細菌感染時に活性化されたマクロファージ及びミクログリア細胞によって分泌される天然の殺菌性化合物であり、その合成は、トリカルボン酸(TCA)サイクルでイタコン酸を産生するためにcis-アコニット酸の脱カルボキシル化を触媒する免疫応答遺伝子1(IRG1:Immune-Responsive Gene 1)タンパク質の発現を必要とする(非特許文献1)。IRG1は主に炎症促進状態のもと癌で発現される(非特許文献2、非特許文献3)。その殺菌活性に加えて、イタコン酸及びそのエステルは抗炎症特性を示す(非特許文献4)。イタコン酸による炎症の阻害は、コハク酸デヒドロゲナーゼを阻害するその能力と関連している(非特許文献5)。非特許文献5では、イタコン酸ジメチルの静脈内(i.v.)注入は、該疾患のマウスモデルにおいて心虚血再灌流傷害を制限した。同研究は、マクロファージ内の内因性イタコネートの蓄積が炎症の調節に必要であることを示した。イタコン酸誘導体はまた、直接的な抗ウイルス特性を呈することが示されている(非特許文献6)。
【0003】
イタコン酸の構造を式(1)に示す。
【化1】
【0004】
イタコン酸が一例である小さな有機モノカルボン酸及びジカルボン酸は、エピジェネティックな変化の誘導を通じてしばしば特有の免疫調節特性を有することが、数多くの研究で示されている。エピジェネティクスは、「DNA配列中の変更を伴わない染色体の変化に起因する安定した遺伝性の表現型」の研究である(非特許文献7)。例えば、プロピオネート及びブチレート等のモノカルボン酸は既知のヒストンデアセチラーゼ阻害剤である(非特許文献8)。また、アセテートによるヒストンアセチル化の調節も報告されており(非特許文献9)、アセテートはメモリーCD8T細胞の応答を最適化することが示されている(非特許文献10)。ジカルボン酸L(S)-2-ヒドロキシグルタレート(S-2HG)はヒストン脱メチル化を減少させることが知られている(非特許文献11)。S-2HGはまた、CD8T細胞における様々なヒストンリジンメチル化部位の全体レベルを変化させ、エフェクター分化を促進し、抗腫瘍特性を呈することが示された(非特許文献12)。
【0005】
T細胞は、典型的には、系統が明らかな(lineage defining)受容体であるCD3の存在によって同定される。CD3はT細胞発生の全ての段階で存在し、T細胞活性化に必要とされる。CD3T細胞は、CD4又はCD8のT細胞に分化することができる。ナイーブ状態からエフェクター状態へのCD8T細胞の分化は、細菌及びウイルスの感染、並びに癌等の他の免疫原性病態に対する適応免疫応答の一部である(非特許文献13)。抗原との遭遇及びT細胞受容体(TCR)の結合(engagement)に続いて、CD8T細胞は、エフェクター機能とも称される細胞溶解能を獲得する急速に拡大する期間を経る。エフェクター表現型の獲得は、IFNγ、グランザイムB(GZMB)及びパーフォリンを含む様々なサイトカインの発現を特徴とする。IFNγは、ウイルス複製を阻害し、免疫賦活効果及び免疫調節効果を示す。GZMB及びパーフォリンは共同で細胞溶解を誘導するように働き、パーフォリンは標的細胞の形質膜に孔を形成し、セリンプロテアーゼであるGZMBが細胞質内に進入するのを可能にしてカスパーゼ依存性アポトーシス経路の引き金となる(非特許文献14)。
【0006】
病原体クリアランスはエフェクターCD8T細胞の急速な縮小をもたらし、これらの細胞の大部分は元の細胞数のわずか5%~10%を残して死ぬ。生き残った細胞は脱分化を経て、長命の免疫記憶細胞になる。慢性感染症の場合、CD8T細胞は更なる刺激に対して、疲弊と称される無反応状態に入ることが知られている(非特許文献15)。疲弊CD8T細胞は刺激に対して反応性が低下しており、標的細胞を溶解する能力の低下を示し、PD-1、LAG3、TIM3及びCTLA-4を含む幾つかの阻害性細胞表面受容体の発現増加を特徴とする(非特許文献16)。疲弊表現型は、腫瘍浸潤CD8T細胞(TIL又は腫瘍浸潤リンパ球としても知られる)で共通しており、宿主免疫攻撃の存在下で腫瘍細胞の生存を可能にする(非特許文献17)。活性化CD8T細胞による阻害性細胞表面受容体の発現は、免疫応答を終了し、自己免疫寛容を維持するために重要であると考えられている。T細胞疲弊は免疫反応性を制限する役割を果たし、自己免疫疾患における良好な予後と関連することが示されている(非特許文献18)。CD8T細胞の運命(エフェクター、メモリー又は疲弊T細胞への分化)は、活性化の非常に初期の段階でプログラムされていることはよく理解されている。ヒストン修飾は、活性化CD8T細胞の宿命を決定する上で極めて重要であると考えられている(非特許文献19)。
【0007】
骨髄由来サプレッサー細胞(MDSC)は、慢性及び急性の炎症状態のもとで存在する未熟な骨髄細胞である。MDSCは、主に免疫抑制的な役割を果たす癌の場合に見られ、感染性疾患及び敗血症を発病する一因であることが知られている(非特許文献20及び非特許文献21)。MDSCには、多形核(PMN-MDSC)及び単球性(M-MDSC)の2つの主な亜集団があり、特定のバイオマーカーの存在によって区別される。マウスでは、PMN-MDSCは、CD11bLy-6GLy-6Cloであるのに対し、N-MDSCはCD11bLy-6GLy-6Chiである。MDSCは、破骨細胞及び腫瘍関連マクロファージの前駆細胞と考えられている。単球性MDSCは、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)の侵入を妨げ、免疫療法の効果を制限することが示唆されている(非特許文献22)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【文献】Michelucci A et al. Immune-responsive gene 1 protein links metabolism to immunity by catalyzing itaconic acid production, Proc Natl Acad Sci USA 2013, 110(19):7820-7825
【文献】Pan, J. et al. Immune responsive gene 1, a novel oncogene, increases the growth and tumorigenicity of glioma, Oncology Reports 2014, 32(5):1957-1966
【文献】McNeal, S. et al, Association of Immunosuppression with DR6 Expression during Development and Progression of Spontaneous Ovarian Cancer in Laying Hen Model, J. Immunol Res 2016, 2016:6729379
【文献】Bagvant, G. et al. Studies on anti-inflammatory and analgesic activities of itaconic acid systems. Part 1: itaconoc acids and diesters, Indian Journal of Pharmaceutical Sciences 1994, 56(3) 80-5
【文献】Lampropoulou, V. et al. Itaconate links inhibition of succinate dehydrogenase with macrophage metabolic remodeling and regulation of inflammation, Cell Metabolism 2016, 24: 158-166
【文献】Sethy V. et al. Design, synthesis, and biological evaluation of itaconic acid derivatives as potential anti-influenza agents, J. Med. Chem. 2019, 62(5): 2390-2403
【文献】Berger, SL et al. Genes &Dev. 2009, 23:781-783
【文献】Paul. B. et al. Influences of diet and the gut microbiome on epigenetic modulation in cancer and other diseases, Clin Epigenetics 2015, 7:112
【文献】Gao, X. et al. Acetate functions as an epigenetic metabolite to promote lipid synthesis under hypoxia, Nat Comm 2016, 7:11960
【文献】Blamer, M.L. et al. Memory CD8+ T cells require increased concentrations of acetate induced by stress for optimal function, Immunity 2016, 44:1312-1324
【文献】Shim, E.H. et al. L-2-Hydroxyglutarate: an epigenetic modifier and putative oncometabolite in renal cancer, Cancer Discov., 2014, 4(11): 1290-8
【文献】Tyrakis, P. et al. S-2-hydroxyglutarate regulates CD8+ T-lymphocyte fate, Nature 2016, 540: 236-241
【文献】Williams, M.A. and Bevan, J.E. Effector and memory CTL differentiation, Annu. Rev. Immunol. 2007, 25:171-192
【文献】Pinkoski, M.J. et al, Granzyme B-mediated apoptosis proceeds predominantly through a Bcl-2-inhibitable mitochondrial pathway, J Biol Chem 2001, 276:12060-12067
【文献】Moskophidis, D. et al. Virus persistence in acutely infected immunocompetent mice by exhaustion of antiviral cytotoxic effector T cells, Nature 1993, 362: 758-761
【文献】Yi. J.S. et al. T-cell exhaustion: characteristics, causes and conversion, Immunology 2010, 129(4): 474-481
【文献】Wherry, E.J. T cell exhaustion, Nat. Immunol. 2011, 12(6):492-496
【文献】McKinney, E.F. et al. T cell exhaustion, costimulation and clinical outcome in autoimmunity and infection, Nature 2015, 523(7562):612-616
【文献】Scott-Browne, J.P. et al. Dynamic changes in chromatin accessibility occur in CD8+ T cells responding to viral infection, Immunity 2016, 45(6): 1327-1340
【文献】Schrijver, I.T. et al. Myeloid-derived suppressor cells in sepsis. Front. Immunol. 2019, 10: 327
【文献】Weber, R. et al. Myeloid-Derived Suppressor Cells Hinder the Anti-Cancer Activity of Immune Checkpoint Inhibitors, Front. Immunol. 2018, 9:1310
【文献】Lesokhin, A.M. et al. Monocytic CCR2+ myeloid derived suppressor cells promote immune escape by limiting activated CD8 T cell infiltration into the tumor microenvironment, Cancer Res. 2012, 72(4): 876-886
【発明の概要】
【0009】
第1の実施の形態において、本発明は、式(2):
【化2】
(式中、
R1、R2及びR3は、水素、重水素、C~Cアルキル、C~Cアルケニル、C~Cアルキニル、C~C14シクロアルキル、C~Cアルキルベンゼン、アリール、ヘテロアリール、アリール(C~Cアルキル)、-CN、アミノ、(C~C)アルキルアミノ、ジアルキル(C~C)アミノ、ハロアルキル(C~C)、(C~C)アルコキシ、(C~C)ハロアルコキシ、ヘテロアリール(C~Cアルキル)、(C~C15)複素環、(C~C15)複素環(C~Cアルキル)、C~Cシクロアルコキシ、C~C10-アリールオキシ、並びに(a-1)、(a-2)及び(a-3)の部分からなる群から独立して選択され、上記アルキル、C~Cアルキルベンゼン、アリール、シクロアルキル、複素環、ヘテロアリール、アルコキシ、シクロアルコキシ、ハロアルキル又はハロアルコキシは、-C~Cアルキル、ハロ、CN、CF、-COOH、-OH、-(C~C)アルコキシ、-NH、-(C~Cアルキル)NH、-(C~Cアルキル)NH(C~Cアルキル)、-(C~Cアルキル)N(C~Cアルキル)、-NH(C~Cアルキル)、-N(C~Cアルキル)、-CONH、-NH(CO)(C~Cアルキル)、-N(C~Cアルキル)CO(C~Cアルキル)、-SO-(C~Cアルキル)、-(SO)NH、(SO)NH(C~Cアルキル)及び(SO)N(C~Cアルキル)からなる群から選択される1以上の置換基で更に任意に置換され、
【化3】
Xは、N又はCR8のいずれかであり、
R4、R5、R6、R7及びR8は、水素、重水素、C~Cアルキル、C~Cアルケニル、C~Cアルキニル、C~C14シクロアルキル、C~Cアルキルベンゼン、アリール、ヘテロアリール、アリール(C~Cアルキル)、-CN、アミノ、(C~C)アルキルアミノ、ジアルキル(C~C)アミノ、ハロアルキル(C~C)、(C~C)アルコキシ、(C~C)ハロアルコキシ、ヘテロアリール(C~Cアルキル)、(C~C15)複素環、(C~C15)複素環(C~Cアルキル)、C~Cシクロアルコキシ、C~C10-アリールオキシからなる群から独立して選択され、上記アルキル、C~Cアルキルベンゼン、アリール、シクロアルキル、複素環、ヘテロアリール、アルコキシ、シクロアルコキシ、ハロアルキル又はハロアルコキシは、C~Cアルキル、ハロ、CN、CF、-COOH、-OH、C~Cアルコキシ、-NH、-(C~Cアルキル)NH、-(C~Cアルキル)NH(C~Cアルキル)、-(C~Cアルキル)N(C~Cアルキル)、-NH(C~Cアルキル)、-N(C~Cアルキル)、-CONH、-NH(CO)(C~Cアルキル)、-N(C~Cアルキル)CO(C~Cアルキル)、-SO-(C~Cアルキル)、-(SO)NH、(SO)NH(C~Cアルキル)及び(SO)N(C~Cアルキル)からなる群から選択される1以上の置換基で更に任意に置換される)に包含される化合物を含むイタコン酸誘導体を提供する。
【0010】
幾つかの実施の形態では、R1及びR2がC~Cアルキル基であり、R3が水素である。
【0011】
幾つかの実施の形態では、R1がHであり、R2がアリールであり、該アリールが、C~Cアルキル、ハロ、CN、CF、-COOH、-OH、C~Cアルコキシ、-NH、-(C~Cアルキル)NH、-(C~Cアルキル)NH(C~Cアルキル)、-(C~Cアルキル)N(C~Cアルキル)、-NH(C~Cアルキル)、-N(C~Cアルキル)、-CONH、-NH(CO)(C~Cアルキル)、-N(C~Cアルキル)CO(C~Cアルキル)、-SO-(C~Cアルキル)、-(SO)NH、(SO)NH(C~Cアルキル)及び(SO)N(C~Cアルキル)からなる群から選択される1以上の置換基で更に任意に置換され、R3が-(C~Cアルキル)ベンゼンであり、ベンゼン環が、C~Cアルキル、ハロ、CN、CF、-COOH、-OH、C~Cアルコキシ、-NH、-(C~Cアルキル)NH、-(C~Cアルキル)NH(C~Cアルキル)、-(C~Cアルキル)N(C~Cアルキル)、-NH(C~Cアルキル)、-N(C~Cアルキル)、-CONH、-NH(CO)(C~Cアルキル)、-N(C~Cアルキル)CO(C~Cアルキル)、-SO-(C~Cアルキル)、-(SO)NH、(SO)NH(C~Cアルキル)及び(SO)N(C~Cアルキル)からなる群から選択される1以上の置換基で更に任意に置換される。
【0012】
幾つかの実施の形態では、R1がHであり、R2がアリールであり、該アリールが、C~Cアルキル、ハロ、CN、-COOH、-OH、C~Cアルコキシ、-NH、-(C~Cアルキル)NH、-(C~Cアルキル)NH(C~Cアルキル)、-(C~Cアルキル)N(C~Cアルキル)、-NH(C~Cアルキル)、-N(C~Cアルキル)、-CONH、-NH(CO)(C~Cアルキル)及び-N(C~Cアルキル)CO(C~Cアルキル)、-(SO)NH、(SO)NH(C~Cアルキル)及び(SO)N(C~Cアルキル)からなる群から選択される1以上の置換基で更に任意に置換され、R3が基a-1である。
【0013】
式(2)に包含される化合物は、式(1)のイタコン酸及び化合物(3)(IUPAC名:2-(プロパン-2-イリデン)ブタン二酸)及び化合物(4)(IUPAC名:2-(フェニルメチリデン)ブタン二酸)を明示的に除外する。
【0014】
本発明はまた、式(11):
【化4】
(式中、
R9、R10及びR11は、水素、重水素、C~Cアルキル、C~Cアルケニル、C~Cアルキニル、C~C14シクロアルキル、C~Cアルキルベンゼン、アリール、ヘテロアリール、アリール(C~Cアルキル)、-CN、アミノ、(C~C)アルキルアミノ、ジアルキル(C~C)アミノ、ハロアルキル(C~C)、(C~C)アルコキシ、(C~C)ハロアルコキシ、ヘテロアリール(C~Cアルキル)、(C~C15)複素環、(C~C15)複素環(C~Cアルキル)、C~Cシクロアルコキシ、C~C10-アリールオキシ、並びに(a-1)、(a-2)及び(a-3)の部分からなる群から独立して選択され、上記アルキル、C~Cアルキルベンゼン、アリール、シクロアルキル、複素環、ヘテロアリール、アルコキシ、シクロアルコキシ、ハロアルキル又はハロアルコキシは、-C~Cアルキル、ハロ、CN、CF3、-COOH、-OH、-C~Cアルコキシ、-NH、-(C~Cアルキル)NH、-(C~Cアルキル)NH(C~Cアルキル)、-(C~Cアルキル)N(C~Cアルキル)、-NH(C~Cアルキル)、-N(C~Cアルキル)、-CONH、-NH(CO)(C~Cアルキル)、-N(C~Cアルキル)CO(C~Cアルキル)、-SO-(C~Cアルキル)、-(SO)NH、(SO)NH(C~Cアルキル)及び(SO)N(C~Cアルキル)からなる群から選択される1以上の置換基で更に任意に置換され、
R12、R13、R14及びR15は、水素、重水素、C~Cアルキル、ハロ、CN、CF、-COOH、-OH、C~Cアルコキシ、-NH、-(C~Cアルキル)NH、-(C~Cアルキル)NH(C~Cアルキル)、-(C~Cアルキル)N(C~Cアルキル)、-NH(C~Cアルキル)、-N(C~Cアルキル)、-CONH、-NH(CO)(C~Cアルキル)、-N(C~Cアルキル)CO(C~Cアルキル)、-SO-(C~Cアルキル)、-(SO)NH、(SO)NH(C~Cアルキル)及び(SO)N(C~Cアルキル)からなる群から独立して選択される)に記載される化合物を包含する。
【0015】
幾つかの実施の形態では、R9、R11、R12、R13、R14及びR15は水素であり、R10は(a-1)、(a-2)又は(a-3)の基から選択される。
【0016】
式(11)に包含される化合物は、化合物(5)(IUPAC名:2-[(4-フルオロフェニル)メチリデン]ブタン二酸)を明示的に除外する。
【0017】
本発明はまた、式(12):
【化5】
(式中、
R21及びR26は、水素、重水素、C~Cアルキル、C~Cアルケニル、C~Cアルキニル、C~C14シクロアルキル、C~Cアルキルベンゼン、アリール、ヘテロアリール、アリール(C~Cアルキル)、-CN、アミノ、(C~C)アルキルアミノ、ジアルキル(C~C)アミノ、ハロアルキル(C~C)、(C~C)アルコキシ、(C~C)ハロアルコキシ、ヘテロアリール(C~Cアルキル)、(C~C15)複素環、(C~C15)複素環(C~Cアルキル)、C~Cシクロアルコキシ、C~C10-アリールオキシ、並びに(a-1)、(a-2)及び(a-3)の部分からなる群から独立して選択され、上記アルキル、C~Cアルキルベンゼン、アリール、シクロアルキル、複素環、ヘテロアリール、アルコキシ、シクロアルコキシ、ハロアルキル又はハロアルコキシは、-C~Cアルキル、ハロ、CN、CF3、-COOH、-OH、-C~Cアルコキシ、-NH、-(C~Cアルキル)NH、-(C~Cアルキル)NH(C~Cアルキル)、-(C~Cアルキル)N(C~Cアルキル)、-NH(C~Cアルキル)、-N(C~Cアルキル)、-CONH、-NH(CO)(C~Cアルキル)、-N(C~Cアルキル)CO(C~Cアルキル)、-SO-(C~Cアルキル)、-(SO)NH、(SO)NH(C~Cアルキル)及び(SO)N(C~Cアルキル)からなる群から選択される1以上の置換基で更に任意に置換され、
R16、R17、R18、R19、R20、R22、R23、R24及びR25は、水素、重水素、C~Cアルキル、ハロ、CN、CF、-COOH、-OH、C~Cアルコキシ、-NH、-(C~Cアルキル)NH、-(C~Cアルキル)NH(C~Cアルキル)、-(C~Cアルキル)N(C~Cアルキル)、-NH(C~Cアルキル)、-N(C~Cアルキル)、-CONH、-NH(CO)(C~Cアルキル)、-N(C~Cアルキル)CO(C~Cアルキル)、-SO-(C~Cアルキル)、-(SO)NH、(SO)NH(C~Cアルキル)及び(SO)N(C~Cアルキル)からなる群から独立して選択される)に記載される化合物を包含する。
【0018】
幾つかの実施の形態では、R16、R17、R19、R20、R21、R22、R25及びR26は水素であり、R23及びR24はH又は-CHであり、R18は、水素、重水素、C~Cアルキル、ハロ、CN、CF、-COOH、-OH、C~Cアルコキシ、-NH、-(C~Cアルキル)NH、-(C~Cアルキル)NH(C~Cアルキル)、-(C~Cアルキル)N(C~Cアルキル)、-NH(C~Cアルキル)、-N(C~Cアルキル)、-CONH、-NH(CO)(C~Cアルキル)、-N(C~Cアルキル)CO(C~Cアルキル)、-SO-(C~Cアルキル)、-(SO)NH、(SO)NH(C~Cアルキル)及び(SO)N(C~Cアルキル)からなる群から選択される。
【0019】
特定の態様では、本発明のイタコン酸誘導体は、以下の化合物の1つである:
2-ベンジル-3-[(4-フルオロフェニル)メチリデン]ブタン二酸(化合物(6))、2-(4-フルオロフェニル)メチリデン]-3-(プロパ-2-エン-1-イル)ブタン二酸(化合物(7))、及び2-[(4-アミノフェニル)メチル]-3-[(4-フルオロフェニル)メチリデン]ブタン二酸(化合物(8))。
【化6】
【0020】
第2の実施の形態では、本発明は、被験体(例えばヒト等の哺乳動物)における炎症性の障害又は疾患を治療する方法を提供する。方法は、治療に有効な量の式(2)、式(11)若しくは式(12)の1以上の化合物、又は該化合物の薬学的に許容可能な塩(本明細書に記載される全ての実施の形態及び2以上の実施の形態の組み合わせ、又は純粋なエナンチオマー及びラセミ混合物を含むその任意のサブコンビネーションを含む)を、炎症性の障害又は疾患を有する被験体に投与することを含む。或る特定の態様では、方法は、化合物(3)、化合物(4)、化合物(5)、化合物(6)、化合物(7)及び化合物(8)の1以上を被験体に投与することによって実施される。或る特定の態様では、疾患は、限定されないが、腫瘍壊死因子α(TNFα)、インターロイキン(IL)-1β、IL-2、IL-2R、IL-6、IL-7、IL-12、IL-15、IL-17、IL-18、ケモカイン(C-Cモチーフ)リガンド2(CCL2)、C-C-Cモチーフケモカイン(CXCL)8、CXCL9及びCXCL10の1以上を含む炎症誘発性サイトカインの産生を特徴とする。更なる態様では、炎症誘発性サイトカインの産生は虚血と関連しており、疾患は虚血である。他の態様では、炎症誘発性サイトカインの産生は敗血症症候群に関連しており、疾患は敗血症である。他の態様では、炎症誘発性サイトカインの産生は慢性閉塞性肺疾患(COPD)に関連しており、疾患はCOPDである。
【0021】
第3の実施の形態では、本発明は、被験体(例えばヒト等の哺乳動物)において免疫系の活性化を特徴とする疾患を治療する方法を提供する。方法は、治療に有効な量の式(2)、式(11)若しくは式(12)の1以上の化合物、又は該化合物の薬学的に許容可能な塩(本明細書に記載される全ての実施の形態及び2以上の実施の形態の組み合わせ、又は純粋なエナンチオマー及びラセミ混合物を含むその任意のサブコンビネーションを含む)を、免疫系の活性化を有する被験体に投与することを含む。或る特定の態様では、方法は、化合物(6)、化合物(7)若しくは化合物(8)、又は化合物(6)と化合物(7)と化合物(8)との組み合わせを被験体に投与することによって実施される。この実施の形態の或る特定の態様では、免疫系の活性化は免疫系の異常な活性化である。或る特定の態様では、免疫系の異常な活性化は、望ましくないT細胞活性化によって駆動される。或る特定の態様では、望ましくないT細胞活性化は、自己免疫疾患又は急性同種移植片拒絶反応に関連している。
【0022】
第4の実施の形態では、本発明は、異常なT細胞活性化を特徴とする疾患を有する被験体(例えばヒト等の哺乳動物)を治療する方法を提供する。方法は、治療に有効な量の式(2)、式(11)若しくは式(12)の1以上の化合物、又は該化合物の薬学的に許容可能な塩(本明細書に記載される全ての実施の形態及び2以上の実施の形態の組み合わせ、又は純粋なエナンチオマー及びラセミ混合物を含むその任意のサブコンビネーションを含む)を、免疫系の活性化を有する被験体に投与することを含む。或る特定の態様では、方法は、化合物(6)、化合物(7)若しくは化合物(8)、又は化合物(6)と化合物(7)と化合物(8)との組み合わせを被験体に投与することによって実施される。或る特定の態様では、異常なT細胞活性化は、自己免疫疾患、又は急性同種移植片拒絶反応を含む同種移植片拒絶反応に関連している。
【0023】
第5の実施の形態では、本発明は、免疫系の活性化を必要とする被験体(例えばヒト等の哺乳動物)を治療する方法を提供する。方法は、治療に有効な量の式(2)、式(11)若しくは式(12)の1以上の化合物、又は該化合物の薬学的に許容可能な塩(本明細書に記載される全ての実施の形態及び2以上の実施の形態の組み合わせ、又は純粋なエナンチオマー及びラセミ混合物を含むその任意のサブコンビネーションを含む)を、免疫系の活性化を必要とする被験体に投与することを含む。或る特定の態様では、方法は、化合物(6)、化合物(7)及び化合物(8)の1以上を被験体に投与することによって実施される。この実施の形態の或る特定の態様では、被験体は免疫系の抑制を特徴とする疾患を有する。或る特定の態様では、疾患は感染性疾患である。他の態様では、疾患は癌である。
【0024】
第6の実施の形態では、本発明は、免疫系の抑制を特徴とする疾患を有する被験体(例えばヒト等の哺乳動物)を治療する方法を提供する。方法は、治療に有効な量の式(2)、式(11)若しくは式(12)の1以上の化合物、又は該化合物の薬学的に許容可能な塩(本明細書に記載される全ての実施の形態及び2以上の実施の形態の組み合わせ、又は純粋なエナンチオマー及びラセミ混合物を含むその任意のサブコンビネーションを含む)を、免疫系の活性化を必要とする被験体に投与することを含む。或る特定の態様では、方法は、化合物(6)、化合物(7)及び化合物(8)の1以上を被験体に投与することによって実施される。或る特定の態様では、疾患は感染性疾患である。他の態様では、疾患は癌である。
【0025】
第7の実施の形態では、本発明は、被験体(例えばヒト等の哺乳動物)においてIRG1の発現を特徴とする疾患を治療する方法を提供する。方法は、治療に有効な量の式(2)、式(11)若しくは式(12)の1以上の化合物、又は該化合物の薬学的に許容可能な塩(本明細書に記載される全ての実施の形態及び2以上の実施の形態の組み合わせ、又は純粋なエナンチオマー及びラセミ混合物を含むその任意のサブコンビネーションを含む)を、IRG1の発現を特徴とする疾患を有する被験体に投与することを含む。或る特定の態様では、方法は、化合物(3)、化合物(4)、化合物(5)、化合物(6)、化合物(7)及び化合物(8)の1以上を被験体に投与することによって実施される。この実施の形態の或る特定の態様では、IRG1の発現はIRG1の異常発現である。或る特定の態様では、疾患は神経変性及び/又は神経炎症性の疾患である。他の態様では、疾患はIRG1発現癌である。
【0026】
本発明の各関連する実施の形態及び態様では、治療に有効な量の式(2)、式(11)又は式(12)の1以上の化合物を、式(2)、式(11)又は式(12)の1以上の化合物と、薬学的に許容可能な希釈剤又は賦形剤とを含む医薬組成物で、被験体に投与する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】マイクロモル濃度の化合物(6)で処理した後のLPS刺激ヒト単球由来マクロファージ(hMDM)からのイタコン酸の産生低下を示す図である。左カラム(A):イタコン酸の細胞内レベル;右カラム:イタコン酸の細胞外レベル。
図2】500μM以上の濃度の化合物(6)で処理した後のLPS刺激ヒト単球由来マクロファージ(hMDM)からのTNFαの分泌低下を示す図である。
図3】様々な濃度の化合物(3)、化合物(4)、化合物(5)、化合物(6)及び化合物(7)で処理した後のC6-IRG1-9ラットグリオーマ細胞の増殖の阻害を示す図である。
図4】10nMの化合物(6)で処理した後のTCR活性化hCD8T細胞の増殖の増加を示す図である。
図5】化合物(6)によるTCR活性化hCD8T細胞の処理後のリジン4におけるヒストン3のトリメチル化(H3K4me3)の枯渇を示す図である。タンパク質レベルをウェスタン免疫ブロッティングによって評価し、続いて可視化されたバンドの濃度測定を行った。ヒストン3(H3)のタンパク質レベルを正規化する目的で求めた。
図6】化合物(6)により動物をi.p.処理した後のマウスCT26大腸腫瘍(colorectal tumors)を持つC57BL/6マウスの生存率の増加を示す図である。(図6A)0.2mg/kgの化合物(6)を週に2回i.p.で与えた。(図6B)3mg/kgの化合物(6)を1日に2回経口で与えた。
図7】0.2mg/kgの化合物(6)を用いてi.p.で処理した腫瘍におけるM-MDSCの腫瘍内頻度(intratumoral frequency)の減少を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明のその他の目的、特徴及び態様は、以下の発明を実施するための形態において開示されているか、又はそれから自明である。当業者であれば、本発明の考察は例示的な実施形態の説明に過ぎず、本発明のより広い態様の制限を意図するものではなく、より広い態様が例示的な解釈において具体化されることが理解される。
【0029】
本発明は、イタコネート誘導体、例えば、式(2)、式(11)又は式(12)の化合物と同様に、化合物(3)~化合物(8)を含む。これらの化合物は、虚血、敗血症及びCOPD等の異常な炎症を特徴とする障害、自己免疫疾患若しくは同種移植片拒絶反応等の適応免疫系の異常活性化を特徴とする障害、又は感染性疾患及び癌等の免疫系の活性化の増加を必要とする疾患、並びに神経変性疾患及び神経炎症性疾患等のIRG1発現疾患を患うヒト又は動物の治療に適している。
【0030】
I.定義
本明細書で使用される「アルキル」の用語は、直鎖及び分岐鎖を含む脂肪族飽和炭化水素を含むと定義される。「C~Cアルキル」の用語は、本明細書で参照される他の基(すなわちC~Cアルコキシ)のアルキル部分と同様に、1個~6個の炭素原子の直鎖又は分岐鎖のラジカル(すなわち、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、terl-ブチル、n-ペンチル、又はn-ヘキシル)を指す。アルキル基は、1以上(例えば1個~5個)の好適な置換基によって任意に置換されてもよい。
【0031】
本明細書で使用される「アルケニル」の用語は、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を有する直鎖及び分岐鎖を含む、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を有する脂肪族炭化水素を指す。「C~Cアルケニル」の用語は、限定されないが、エテニル、1-プロペニル、2-プロペニル(アリル)、イソプロペニル、2-メチル-1-プロペニル、1-ブテニル、2-ブテニル等を含む、2個~6個の炭素原子の直鎖又は分岐鎖の不飽和ラジカル(少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を有する)を意味する。アルケニル基は、1以上(例えば1個~5個)の好適な置換基によって任意に置換されてもよい。式(2)の化合物がアルケニル基を含む場合、該アルケニル基は、純粋なトランス(E)型、純粋なシス(Z)型、又はそれらの任意の混合物として存在し得る。
【0032】
本明細書で使用される「アルキニル」の用語は、少なくとも1つの炭素-炭素三重結合を有する直鎖及び分岐鎖を含む、少なくとも1つの炭素-炭素三重結合を有する脂肪族炭化水素を指す。「C~Cアルキニル」の用語は、上に定義される2個~6個の炭素原子を有する直鎖又は分岐鎖の炭化水素鎖アルキニルラジカルを指す。アルキニル基は、1以上(例えば1個~5個)の好適な置換基によって任意に置換されてもよい。
【0033】
本明細書で使用される「シクロアルキル」の用語は、飽和又は不飽和、非芳香族、単環式又は多環式(二環式等)の炭化水素環(例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル等の単環式、又はスピロ系、縮合系、若しくは架橋系(ビシクロ[1.1.1]ペンタニル、ビシクロ[2.2.1]ヘプタニル、ビシクロ[3.2.1]オクタニル、又はビシクロ[5.2.0]ノナニル、デカヒドロナフタレニル等)を含む二環式)を指す。シクロアルキル基は、3個~14個の炭素原子を有する。幾つかの実施形態では、シクロアルキルは、1個、2個以上の非累積的な(non-cumulative)非芳香族の二重結合又は三重結合、及び/又は1個~3個のオキソ基を任意に含んでもよい。幾つかの実施形態では、ビシクロアルキル基は、6個~14個の炭素原子を有する。例えば、「C~C14シクロアルキル」の用語は、飽和又は不飽和、非芳香族、単環式又は多環式(二環式等)の3個~14個の環形成炭素原子の炭化水素環(すなわち、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、ビシクロ[1.1.1]ペンタニル又はシクロデカニル)を指し、「C~Cシクロアルキル」の用語は、飽和又は不飽和、非芳香族、単環式又は多環式(二環式等)の3個~7個の環形成炭素原子の炭化水素環(すなわち、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、ビシクロ[1.1.1]ペンタン-1-イル、又はビシクロ[1.1.1]ペンタン-2-イル)を指す。
【0034】
本明細書で使用される「アリール」の用語は、共役パイ電子系を有する、全て炭素の単環式又は縮合環多環式芳香族基を指す。アリール基は、環(複数の場合がある)の中に6個~10個の炭素原子を有する。最も一般には、アリール基は環の中に6個の炭素原子を有する。例えば、本明細書で使用される「アリール」の用語は、フェニル又はナフチル等の6個~10個の炭素原子を含む芳香族ラジカルを意味する。アリール基は、1以上(例えば1個~5個)の好適な置換基によって任意に置換されてもよい。
【0035】
本明細書で使用される「アルキルベンゼン」の用語は、一般式-C2n+1(C)(式中、n=1~6)を有するベンゼン環で置換された飽和脂肪族炭化水素を指す。ベンゼン環は、1以上(例えば1個~5個)の好適な置換基によって任意に置換されてもよい。
【0036】
本明細書で使用される「ヘテロアリール」の用語は、少なくとも1つの環の中に、各々独立してO、S、及びNから選択される1以上のヘテロ原子環メンバー(環形成原子)を有する、単環式の又は縮合環多環式の芳香族複素環基を指す。ヘテロアリール基は、1個~13個の炭素原子と、O、S、及びNから選択される1個~8個のヘテロ原子とを含む、5個~14個の環形成原子を有する。幾つかの実施形態では、ヘテロアリール基は、1個~4個のヘテロ原子を含む、5個~10個の環形成原子を有する。また、ヘテロアリール基は、1個~3個のオキソ基又はチオノ基(すなわち=S)を含んでもよい。幾つかの実施形態では、ヘテロアリール基は、1個、2個、又は3個のヘテロ原子を含む、5個~8個の環形成原子を有する。例えば、「5員ヘテロアリール」の用語は、単環式ヘテロアリール環中に5個の環形成原子を有する、上に定義される単環式ヘテロアリール基を指し、「6員ヘテロアリール」の用語は、上記環中に6個の環形成原子を有する、上に定義される単環式ヘテロアリール基を指し、「5員又は6員のヘテロアリール」の用語は、単環式ヘテロアリール環中に5個又は6個の環形成原子を有する、上に定義される単環式ヘテロアリール基を指す。別の例について、「5員又は10員のヘテロアリール」の用語は、単環式又は二環式ヘテロアリール環中に5個、6個、7個、8個、9個又は10個の環形成原子を有する、上に定義される単環式又は二環式ヘテロアリール基を指す。ヘテロアリール基は、1以上(例えば1個~5個)の好適な置換基によって任意に置換されてもよい。単環式ヘテロアリールの例として、1個~3個のヘテロ原子を含む5個の環形成原子を有するもの、又は1個、2個若しくは3個の窒素ヘテロ原子を含む6個の環形成原子を有するものが挙げられる。縮合二環式ヘテロアリールの例として、1個~4個のヘテロ原子を含む、2つの縮合5員及び/又は6員の単環式環が挙げられる。ヘテロアリール基の例として、ピリジニル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、チエニル、フリル、イミダゾリル、ピロリル、オキサゾリル(例えば、1,3-オキサゾリル、1,2-オキサゾリル)、チアゾリル(例えば、1,2-チアゾリル、1,3-チアゾリル)、ピラゾリル(例えば、ピラゾール-1-イル、ピラゾール-3-イル、ピラゾール-4-イル)、テトラゾリル、トリアゾリル(例えば、1,2,3-トリアゾリル、1,2,4-トリアゾリル)、オキサジアゾリル(例えば1,2,3-オキサジアゾリル)、チアジアゾリル(すなわち、1,3,4-チアジアゾリル)、キノリル、イソキノリル、ベンゾチエニル、ベンゾフリル、インドリル、1H-イミダゾ[4,5-c]ピリジニル、イミダゾ[1,2-a]ピリジニル、1H-ピロロ[3,2-c]ピリジニル、イミダゾ[1,2-a]ピラジニル、イミダゾ[2,1-c][1,2,4]トリアジニル、イミダゾ[1,5-a]ピラジニル、イミダゾ[1,2-a]ピリミジニル、1H-インダゾリル、9H-プリニル、イミダゾ[1,2-a]ピリミジニル、[1,2,4]トリアゾロ[1,5-a]ピリミジニル、[1,2,4]トリアゾロ[4,3-b]ピリダジニル、イソオキサゾロ[5,4-c]ピリダジニル、イソオキサゾロ[3,4-c]ピリダジニル、ピリドン、ピリミドン、ピラジノン、ピリミジノン、1H-イミダゾール-2(3H)-オン、1H-ピロール-2,5-ジオン、3-オキソ-2H-ピリダジニル、1H-2-オキソ-ピリミジニル、1H-2-オキソ-ピリジニル、2,4(1H,3H)-ジオキソ-ピリミジニル、1H-2-オキソ-ピラジニル等が挙げられる。
【0037】
本明細書で使用される「ヘテロシクロアルキル」の用語は、1個~14個の環形成炭素原子と、O、S、及びNから各々独立して選択される1個~10個の環形成ヘテロ原子とを含む、単環式又は多環式(スピロ系、縮合系又は架橋系を含む互いに縮合した2以上の環、例えば二環式環系を含む)、飽和又は不飽和、非芳香族の4員~15員環系(4員~14員環系、4員~12員環系、5員~10員環系、4員~8員環系、4員~6員環系、又は5員~6員環系)を指す。また、ヘテロシクロアルキル基は、1以上のオキソ基又はチオノ基(すなわち=S)を任意に含んでもよい。例えば、「4員~12員のヘテロシクロアルキル」の用語は、O、S及びNから各々独立して選択される1以上の環形成ヘテロ原子を含む、単環式又は多環式、飽和又は不飽和、非芳香族の4員~12員環系を指し、「4員~10員のヘテロシクロアルキル」の用語は、O、S及びNから各々独立して選択される1以上の環形成ヘテロ原子を含む、単環式又は多環式、飽和又は不飽和、非芳香族の4員~10員環系を指す。別の例については、「4員~6員のヘテロシクロアルキル」の用語は、O、S及びNから各々独立して選択される1以上の環形成ヘテロ原子を含む、単環式又は多環式、飽和又は不飽和、非芳香族の4員~6員環系を指し、「5員~6員のヘテロシクロアルキル」の用語は、O、S及びNから各々独立して選択される1以上の環形成ヘテロ原子を含む、単環式又は多環式、飽和又は不飽和、非芳香族の5員~6員環系を指す。また、ヘテロシクロアルキルの定義には、非芳香族ヘテロシクロアルキル環に縮合された1以上の芳香環(アリール及びヘテロアリールを含む)を有する部分、例えば、非芳香族ヘテロシクロアルキル環のピリジニル誘導体、ピリミジニル誘導体、チオフェニル誘導体、ピラゾリル誘導体、フタルイミジル誘導体、ナフタルイミジル誘導体、及びベンゾ誘導体が含まれる。ヘテロシクロアルキル基は、1以上(例えば1個~5個)の好適な置換基によって任意に置換されてもよい。かかるヘテロシクロアルキル環の例として、アゼチジニル、テトラヒドロフラニル、イミダゾリジニル、ピロリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、オキサゾリジニル、チアゾリジニル、ピラゾリジニル、チオモルホリニル、テトラヒドロチアジニル、テトラヒドロチアジアジニル、モルホリニル、オキセタニル、テトラヒドロジアジニル、オキサジニル、オキサチアジニル、キヌクリジニル、クロマニル、イソクロマニル、ベンゾオキサジニル、2-オキサスピロ[3.3]ヘプチル(例えば2-オキサスピロ[3.3]ヘプタ-6-イル)、7-アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン-1-イル、7-アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-イル、7-アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン-7-イル、2-アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン-3-オン-2-イル、3-アザビシクロ[3.1.O]ヘキサニル、3-アザビシクロ[4.1.0]ヘプタニル等が挙げられる。ヘテロシクロアルキル環の更なる例として、テトラヒドロフラン-2-イル、テトラヒドロフラン-3-イル、テトラヒドロピラニル(例えばテトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)、イミダゾリジン-1-イル、イミダゾリジン-2-イル、イミダゾリジン-4-イル、ピロリジン-1-イル、ピロリジン-2-イル、ピロリジン-3-イル、ピペリジン-1-イル、ピペリジン-2-イル、ピペリジン-3-イル、ピペリジン-4-イル、ピペラジン-1-イル、ピペラジン-2-イル、1,3-オキサゾリジン-3-イル、1,4-オキサゼパン-1-イル、イソチアゾリジニル、1,3-チアゾリジン-3-イル、1,2-ピラゾリジン-2-イル、1,2-テトラヒドロチアジン-2-イル、1,3-チアジナン-3-イル、1,2-テトラヒドロジアジン-2-イル、1,3-テトラヒドロジアジン-1-イル、1,4-オキサジン-4-イル、オキサゾリジノニル、2-オキソ-ピペリジニル(例えば2-オキソ-ピペリジン-1-イル)、2-オキソアゼパン-3-イル等が挙げられる。芳香族縮合ヘテロシクロアルキル基の幾つかの例として、インドリニル基、イソインドリニル基、イソインドリン-1-オン-3-イル基、5,7-ジヒドロ-6H-ピロロ[3,4-b]ピリジン-6-イル基、6,7-ジヒドロ-5H-ピロロ[3,4-d]ピリミジン-6-イル基、4,5,6,7-テトラヒドロチエノ[2,3-c]ピリジン-5-イル基、5,6-ジヒドロチエノ[2,3-c]ピリジン-7(4H)-オン-5-イル基、1,4,5,6-テトラヒドロピロロ[3,4-c]ピラゾール-5-イル基、及び3,4-ジヒドロイソキノリン-1(2H)-オン-3-イル基が挙げられる。ヘテロシクロアルキル基は、1以上(例えば1個~5個)の好適な置換基によって任意に置換される。ヘテロシクロアルキル基の例として、5員又は6員の単環式環、及び9員又は10員の縮合二環式環が挙げられる。
【0038】
本明細書で使用される「ハロ」基又は「ハロゲン」基の用語は、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素を含むと定義される。
【0039】
本明細書で使用される「ハロアルキル」の用語は、1以上のハロゲン置換基を有するアルキル基(最大でパーハロアルキル、すなわちアルキル基の全ての水素原子がハロゲン原子によって置換されている)を指す。例えば、「C~Cハロアルキル」の用語は、1以上のハロゲン置換基を有するC~Cアルキル基(最大でパーハロアルキル、すなわちアルキル基の全ての水素原子がハロゲン原子によって置換されている)を指す。ハロアルキル基の例として、CF、C、CHF、CHF、CHCF等が挙げられる。
【0040】
本明細書で使用される「アルコキシ」又は「アルキルオキシ」の用語は、-O-アルキル基を指す。例えば、「C~Cアルコキシ」又は「C~Cアルキルオキシ」の用語は、-O-(C~Cアルキル)基を指す。アルコキシの例として、メトキシ、エトキシ、プロポキシ(すなわち、n-プロポキシ及びイソプロポキシ)、terl-ブトキシ等が挙げられる。アルコキシ基又はアルキルオキシ基は、1以上(例えば1個~5個)の好適な置換基によって任意に置換されてもよい。
【0041】
本明細書で使用される「ハロアルコキシ」の用語は、-O-ハロアルキル基を指す。例えば、「C~Cハロアルコキシ」の用語は、-O-(C~Cハロアルキル)基を指す。ハロアルコキシの例は、-OCF又は-OCHFである。
【0042】
本明細書で使用される「シクロアルコキシ」又は「シクロアルキルオキシ」の用語は、-O-シクロアルキル基を指す。例えば、「C~Cシクロアルコキシ」又は「C~Cシクロアルキルオキシ」の用語は、-O-(C~Cシクロアルキル)基を指す。シクロアルコキシの例として、シクロプロポキシ、シクロブトキシ、シクロペントキシ、シクロヘキサノキシ等が挙げられる。シクロアルコキシ基、又はシクロアルキルオキシ基は、1以上(例えば1個~5個)の好適な置換基によって任意に置換されてもよい。
【0043】
本明細書で使用される「C~C10アリールオキシ」の用語は、-O-(C~C10アリール)基を指す。C~C10アリールオキシ基の一例は-O-フェニル(すなわち、フェノキシ)である。C~C10アリールオキシ基は、1以上(例えば1個~5個)の好適な置換基によって任意に置換されてもよい。
【0044】
本明細書で使用される「オキソ」の用語は=Oを指す。オキソが炭素原子上で置換される場合、それらは共にカルボニル部分(-C(=O)-)を形成する。オキソが硫黄原子上で置換される場合、それらは共にスルフィニル部分(-S(=O)-)を形成し、2個のオキソ基が硫黄原子上で置換される場合、それらは共にスルホニル部分(-S(=O)z-)を形成する。
【0045】
本明細書で使用される「好適な塩」の用語は、式(2)、式(11)又は式(12)の酸(化合物(3)~化合物(8)を含むが、これらに限定されない)と塩基とから形成された非毒性の塩を指す。塩基の例として、アルミニウム、亜鉛、カルシウム、マグネシウム、カリウム及びナトリウムの水酸化物;アルギニン、グリシン及びリジン等のアミノ酸;ベンザチン;コリン;ジエチルアミン;ジオールアミン;メグルミン;オラミン;並びにトロメタミンが挙げられる。
【0046】
本明細書で使用される「IC50」の用語は、所与の生体応答を50%減少させるために必要とされる化合物の濃度を指す。
【0047】
本明細書で使用される「治療する(treat)」、「治療している(treating)」及び「治療(treatment)」の用語は、それらの通常かつ慣例の意味を有し、疾患症状の緩和、疾患症状の再発の阻止又は緩和、疾患症状の重症度及び/又は頻度の減少のうち1つ以上を含む。治療は、治療が施されていない被験体に対して約1%~約100%緩和すること、阻止すること、低減すること、減少すること又は阻害することを意味する。好ましくは、緩和、阻止、低減、減少又は阻害は、約100%、約99%、約98%、約97%、約96%、約95%、約90%、約80%、約70%、約60%、約50%、約40%、約30%、約20%、約10%、約5%又は約1%である。治療は、疾患の臨床症状の発現の前、臨床症状の発現と同時、又は臨床症状の発現の後に開始されてもよい。したがって、被験体は、疾患を有していてもよく、又は単に疾患に易罹患性であってもよい。治療の結果は恒久的なものであってもよく、又は数日間(例えば1日間、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間又は7日間)、数週間(例えば1週間、2週間、3週間又は4週間)又は数カ月(例えば1カ月間、2カ月間、3カ月間、4カ月間、5カ月間、6カ月間、又はそれ以上)に亘って持続するものであってもよい。
【0048】
「被験体」の用語は、鳥類又は、ヒト、並びにイヌ、ネコ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、及びウシ等の獣医学上又は農業上重要な動物を含む哺乳類等の動物を意味することが意図される。
【0049】
本発明の式(2)、式(11)又は式(12)の化合物(化合物(3)~化合物(8)を含むが、これらに限定されない)及び上記の薬学的に許容可能な塩が治療に有用な可能性がある癌として、急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄白血病、副腎皮質癌(adrenocortical carcinoma)、副腎皮質癌(adrenal cortex cancer)、肛門癌、非定型奇形腫様/横紋筋肉腫様腫瘍、基底細胞癌、胆管癌、膀胱癌、骨癌(ユーイング肉腫及び骨肉腫、悪性線維性組織球腫を含む)、脳腫瘍(膠芽腫、星状細胞腫、神経芽細胞腫)、乳癌、気管支癌、バーキットリンパ腫、消化器癌、噴門癌、中枢神経系の癌、子宮頸癌、胆管細胞癌、脊索腫、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性骨髄増殖性腫瘍、大腸癌、頭蓋咽頭腫、皮膚T細胞リンパ腫、非浸潤性乳管癌、子宮内膜癌、食道癌、頭蓋外胚葉細胞腫瘍、性腺外胚細胞腫瘍、眼(眼内、網膜芽細胞腫)癌、卵管の癌、胆嚢の癌、胃の(胃)癌、毛様細胞性白血病、頭頸部癌、肝細胞癌、組織球増殖症、ホジキンリンパ腫、膵癌、カポジ肉腫、腎臓癌、頭頸部癌、肺癌、マクログロブリン血症、黒色腫を含む皮膚癌、メルケル細胞癌、中皮腫、多発性内分泌腺腫瘍症候群、骨髄異形成症候群、慢性骨髄性白血病、急性骨髄白血病、非ホジキンリンパ腫、卵巣癌、膵癌、陰茎癌、咽頭癌、脳下垂体癌、横紋筋肉腫、唾液腺癌、小腸癌、軟部組織肉腫、皮膚T細胞リンパ腫、精巣癌、喉頭癌、口腔癌、胸腺腫及び胸腺癌、甲状腺癌、膣癌、血管腫瘍、外陰癌、並びにウィルムス腫瘍が挙げられる。
【0050】
本発明の式(2)、式(11)又は式(12)の化合物(化合物(3)~化合物(8)を含むが、これらに限定されない)及び上記の薬学的に許容可能な塩が治療に有用な可能性がある自己免疫疾患として、I型又は若年発症型の糖尿病、関節リウマチ、若年性関節リウマチ、ライター症候群、全身性紅斑性狼瘡、円形脱毛症、シェーグレン症候群、全身性硬化症、自己免疫性脳脊髄炎、バロー病、ビッカースタフ脳炎、抗NMDA受容体脳炎、慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー、ギラン-バレー症候群、特発性炎症性脱髄疾患、ランバート-イートン筋無力症候群、多発性硬化症、進行性炎症性ニューロパシー、スティッフパーソン症候群、シデナム舞踏病、多発性筋炎及び皮膚筋炎、水疱性類天疱瘡、自己免疫性血管浮腫、自己免疫性蕁麻疹様血管炎、瘢痕性類天疱瘡、疱疹状皮膚炎、後天性表皮水疱症、結節性紅斑、化膿性汗腺炎、扁平苔癬、硬化性苔癬、尋常性天疱瘡、ムーシャ-ハーベルマン病、全身性強皮症、急性運動性軸索型ニューロパチー、有痛脂肪症、アジソン病、橋本甲状腺炎、グレーブス病、膜性糸球体腎炎、グッドパスチャー病、間質性膀胱炎、肉芽腫症、自己免疫性腸疾患、セリアック病(Coeliac disease)、クローン病、潰瘍性大腸炎、原発性胆汁性肝硬変、劇症慢性肝炎、自己免疫性肝炎、自己免疫性異形成性萎縮性胃炎(autoimmune metaplastic atrophic gastritis)、自己免疫溶血性貧血、悪性貧血、自己免疫性リンパ増殖症候群、自己免疫性好中球減少症、自己免疫性血小板減少症、強直性脊椎炎、ダーカム病、成人発症型スチル病、クレスト症候群、フェルティ症候群、IgG4関連疾患、混合性結合組織病、再発性多発性軟骨炎、後腹膜線維症、サルコイドーシス、シュニッツラー症候群、重症筋無力症、筋炎、多発性筋炎、封入体筋炎、交感性眼炎、自己免疫性網膜症、自己免疫性ブドウ膜炎、スザック症候群、コーガン症候群、及び自己免疫性睾丸炎、自己免疫性心筋炎、自己免疫性心筋症、コクサッキー心筋炎、ドレスラー症候群、自己免疫性血管浮腫、乾癬、1型、2型及び3型多腺性自己免疫症候群(autoimmune polyendocrine syndrome)、自己免疫性膵炎、自己免疫性内部疾患(autoimmune inner disease)、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症、巨細胞性動脈炎、脈管炎、抗好中球細胞質抗体関連血管炎、抗リン脂質抗体症候群、抗合成酵素症候群、再生不良性貧血、自己免疫性内耳疾患、自己免疫性卵巣炎、自己免疫性網膜症、自己免疫性血小板減少性紫斑病、ベーチェット病、セリアック病(Celiac disease)、チャーグ-ストラウス症候群、寒冷凝集素症、複合性局所疼痛症候群、円板状エリテマトーデス、腱付着部炎、腱付着部炎関連関節炎、好酸球性食道炎、好酸球性筋膜炎、本態性混合型クリオグロブリン血症、エヴァンス症候群、線維筋痛症、妊娠性類天疱瘡、グレーブス眼症、橋本脳症、ヘノッホ-シェーンライン紫斑病、炎症性腸疾患、中間部ブドウ膜炎、IgA血管炎、白血球破砕性血管炎、木質結膜炎、線状IgA病、ループス腎炎、ループス血管炎、慢性ライム病、メニエール病、顕微鏡的大腸炎、顕微鏡的多発血管炎、モーレン潰瘍、斑状強皮症、視神経脊髄炎、神経性筋緊張症、オプソクローヌス-ミオクローヌス症候群、視神経炎、オード甲状腺炎、回帰性リウマチ、傍腫瘍性小脳変性症、パリー-ロンバーク症候群、小児自己免疫性溶連菌関連性精神神経障害、急性痘瘡状苔癬状粃糠疹、POEMS症候群、結節性多発動脈炎、リウマチ性多発筋痛症、心膜切開後症候群、原発性免疫不全症、原発性硬化性胆管炎、赤芽球癆、壊疽性膿皮症、レイノー現象、反応性関節炎、レストレスレッグス症候群、腹膜線維症、リューマチ熱、リウマトイド血管炎、シュニッツラー症候群、亜急性細菌性心内膜炎、トロサ-ハント症候群、横断性脊髄炎、未分化結合組織疾患、憩室炎、アトピー、免疫媒介性脊髄症、及び川崎病が挙げられる。
【0051】
本発明の式(2)、式(11)又は式(12)の化合物(化合物(3)~化合物(8)を含むが、これらに限定されない)及び上記の薬学的に許容可能な塩が免疫寛容の誘導による治療に有用な可能性がある、臓器移植、すなわち同種免疫寛容の誘導の例として、心臓、心臓弁、肺、腎臓、肝臓、膵臓、腸、胃、精巣、手、角膜、皮膚、顔、ランゲルハンス島、骨髄、血管、及び骨の移植が挙げられる。
【0052】
本発明の式(2)の化合物及び上記の薬学的に許容可能な塩が治療に有用な可能性がある神経変性疾患の例として、アルツハイマー病、パーキンソン病及びPD関連障害、プリオン病、運動ニューロン疾患、レビー小体疾患、アルパース病、脳・眼・顔・骨格症候群(COFS)、皮質基底核変性症、ゲルストマン-ストロイスラー-シャインカー病(Gerstmann-Straussler-Scheinker Disease)、クールー病、リー症候群、一側性筋萎縮症(Monomelic Amyotrophy:平山病)、多系統萎縮症、起立性低血圧を伴う多系統萎縮症(シャイ-ドレーガー症候群)、脳内鉄沈着を伴う神経変性症、眼球クローヌス、ミオクローヌス、線条体黒質変性症、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症、脊髄小脳失調症、フリードライヒ運動失調症、脊髄性筋萎縮症、アレキサンダー病、アルパース-フッテンロッヒャー症候群、アルファメチルアシルCoAラセマーゼ(AMACR)欠乏症、アンダーマン症候群、アーツ症候群、運動失調症(Ataxia neuropathy)、眼球運動失行を伴う失調症、常染色体優性の小脳性運動失調、聴覚消失及びナルコレプシー(ADCADN)、常染色体劣性シャルルヴォア-サグネ型痙性運動失調症、ベータ-プロペラタンパク関連神経変性症(BPAN)、CLN1病、CLN2病、CLN3病、CLN4病、CLN5病、CLN6病、CLN7病、CLN8病、CLN10病、先天性無痛無汗症(CIPA)、ニューロセルピン封入体を伴う家族性脳疾患(FENIB)、脂肪酸ヒドロキシラーゼ関連神経変性(FAHN)、GM2ガングリオシドーシスAB異型、遺伝性感覚性自律神経性ニューロパチーIE型(HSAN IE)、遺伝性感覚性自律神経性ニューロパチーII型(HSAN2)、遺伝性感覚性自律神経性ニューロパチーV型(HSAN5)、乳児軸索ジストロフィー、遺伝性痙性対麻痺、乳児期発症脊髄小脳失調症(IOSCA)、若年型原発性側索硬化症、マリネスコ-シェーグレン症候群、ミトコンドリア膜タンパク質関連神経変性(MPAN)、多系統萎縮症、視神経脊髄炎、パントテン酸キナーゼ関連神経変性症、硬化性白質脳症を伴う嚢胞性脂肪膜性骨異形成症(PLOSL)、進行性外眼筋麻痺、リボフラビントランスポーター欠乏性神経細胞障害(Riboflavin transporter deficiency neuronopathy)、サンドホフ病及びバッテン病が挙げられる。
【0053】
本発明の式(2)、式(11)又は式(12)の化合物(化合物(3)~化合物(8)を含むが、これらに限定されない)及び上記の薬学的に許容可能な塩が治療に有用な可能性がある炎症及び炎症性障害の例として、限定されないが、骨盤炎症性疾患、痛風、喘息、肋膜炎、湿疹、関節炎、胃炎、脾炎、副鼻腔炎、肝炎、腎炎、血管炎、喉頭炎、甲状腺炎、前立腺炎、咽頭炎、アテローム性動脈硬化症、アレルギー反応、脂漏性皮膚炎、ウェゲナー肉芽腫症、クモ膜炎、伝達性海綿状脳症、COPD及び敗血症が挙げられる。
【0054】
本発明の式(2)、式(11)又は式(12)の化合物(化合物(3)~化合物(8)を含むが、これらに限定されない)及び上記の薬学的に許容可能な塩が治療に有用な可能性がある感染性疾患の例として、アシネトバクター感染症、放線菌症、アフリカ睡眠病、後天性免疫不全症候群(AIDS)、アメーバ症、アナプラズマ症、住血線虫症、アニサキス症、炭疽菌感染症、溶血性アルカノバクテリア感染症、アルゼンチンティーガン熱(Argentine Teagan fever)、回虫症、アスペルギルス症、アストロウイルス感染症、バベシア症、バチルス・セレウス(Bacillus cereus)感染症、細菌性肺炎、細菌性腟症、バクテロイデス感染症、バランチジウム症、バルトネラ症、アライグマ回虫感染症、BKウイルス感染症、黒色砂毛症、ブラストシスチス症(blastocystosis)、ブラストミセス症、ボリビア出血熱、ブルセラ症、腺ペスト、バークホルデリア感染症、ブルーリ潰瘍、カリシウイルス感染症、カンピロバクター症、カンジダ症、カピラリア症、カリオン病、猫引っかき病、蜂窩織炎、シャーガス病、軟性下疳、水疱瘡、チクングニア、クラミジア、クラミドフィラ・ニューモニエ(Chlamydophila pneumoniae)感染症、コレラ、黒色分芽菌症、ツボカビ症、肝吸虫症、クロストリジウム・ディフィシル腸炎、コクシジオイデス症、コロラドダニ熱、急性ウイルス性鼻咽頭炎、クロイツフェルト-ヤコブ病、クリミア-コンゴ出血熱、クリプトコッカス症、クリプトスポリジウム症、皮膚幼虫移行症、サイクロスポラ症、嚢虫症、サイトメガロウイルス感染症、デング熱、デスモデスムス(Desmodesmus)感染症、二核アメーバ症、ジフテリア、裂頭条虫症、メジナ虫症、エボラ出血熱、エキノコックス症、エーリキア症、腸蟯虫症、エンテロコッカス感染症、エンテロウイルス感染症、発疹チフス、伝染性紅斑、突発性発疹、肝蛭症、肥大吸虫症、致死性家族性不眠症、フィラリア症、クロストリジウム・パーフリンジェンス(Clostridium perfringens)感染症、自由生活性アメーバ感染症、クロストリジウム性筋壊死、ゲオトリクム症、ゲルストマン-シュトロイスラー-シャインカー症候群、ジアルジア症、鼻疽、顎口虫症、淋病、鼠径肉芽腫、A群レンサ球菌感染症、B群レンサ球菌感染症、ヘモフィルス・インフルエンザ(Haemophilius influenzae)感染症、手足口病、ハンタウイルス肺症候群、ハートランドウイルス病、ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)感染症、溶血性尿毒症症候群、腎症候性出血熱、A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎、D型肝炎、E型肝炎、単純ヘルペス、ヒストプラスマ症、鉤虫感染症、ヒトボカウイルス感染症、ヒトエウィンギイエーリキア症(Human ewingii ehrliochiosis)、ヒトパピローマウイルス感染症、ヒトパラインフルエンザウイルス感染症、膜様条虫症、エプスタイン・バーウイルス感染性単核球症、インフルエンザ、イソスポーラ症、角膜炎、キンゲラ・キンゲ(Kingella Kingae)感染症、クールー病、ラッサ熱、レジオネラ症、リーシュマニア症、ハンセン病、レプトスピラ症、リステリア症、ライム病、リンパ管フィラリア症、リンパ球性脈絡髄膜炎、マラリア、マールブルグ出血熱、はしか、中東呼吸器症候群、類鼻疽、髄膜炎、髄膜炎性疾患、横川吸虫症、微胞子虫症、伝染性軟属腫、サル痘、流行性耳下腺炎、発疹熱、マイコプラズマ肺炎、菌腫、ハエ幼虫症、新生児結膜炎、ノロウイルス、異型クロイツフェルト-ヤコブ病、ノカルジア症、オンコセルカ症、オピストルキス症、パラコクシジオイデス症、肺吸虫症、パスツレラ症、百日咳、ペスト、肺炎球菌感染症、ニューモシスチス肺炎、肺炎、灰白髄炎、プレボテラ感染症、原発性アメーバ性髄膜脳炎、進行性多巣性白質脳症、オウム病、Q熱、狂犬病、回帰熱、呼吸器合胞体ウイルス感染症、リノスポリジウム症、ライノウイルス感染症、リケッチア感染症、リケッチア痘、リフトバレー熱、ロッキー山紅斑熱、ロタウイルス感染症、風疹、サルモネラ症、重症急性呼吸器症候群、疥癬、猩紅熱、住血吸虫症、細菌性赤痢、帯状疱疹、天然痘、スポロトリクム症、ブドウ球菌感染症、糞線虫症、亜急性硬化性全脳炎、梅毒、条虫症、破傷風、ティナズエレス・バルバエ(Tineazuelean barbae)、頭部白癬、体部白癬、股部白癬、手白癬、黒癬、足白癬、爪白癬、癜風、トキソカラ症、トキソプラズマ症、トラコーマ、旋毛虫病、トリコモナス症、鞭虫症、結核、野兎病、腸チフス、チフス熱、ウレアプラズマ・ウレアリチカム(Ureaplasma urealyticum)感染症、渓谷熱、ベネズエラウマ脳炎、ベネズエラ出血熱、ビブリオ・バルニフィカス(Vibrio vulnificus)感染症、ビブリオ・パラヘモリチカス(Vibrio parahaemolyticus)腸炎、ウイルス性肺炎、西ナイル熱、白色砂毛症(White Piedra)、仮性結核菌(Yersinia pseudotuberculosis)感染症、エルシニア感染症、黄熱病、接合菌症及びジカ熱が挙げられる。
【0055】
本発明の式(2)、式(11)又は式(12)の化合物(化合物(3)~化合物(8)を含むが、これらに限定されない)及び上記の薬学的に許容可能な塩が治療に有用な可能性がある虚血の例として、心虚血、冠動脈疾患又は虚血性心疾患、腸管虚血、脳虚血、デジタル虚血(digital ischemia)、肢虚血及び皮膚虚血が挙げられる。
【0056】
本発明の式(2)、式(11)又は式(12)の化合物(化合物(3)~化合物(8)を含むが、これらに限定されない)及び上記の薬学的に許容可能な塩が治療に有用な可能性がある敗血症症候群の例として、感染の存在を特徴とする初期の敗血症及び菌血症、感染に対する宿主応答の調節不全及び臓器不全を特徴とする敗血症、循環、細胞及び代謝の異常を特徴とする敗血症性ショック、並びに多臓器不全症候群(MODS)が挙げられる。
【0057】
本発明の式(2)、式(11)又は式(12)の化合物(化合物(3)~化合物(8)を含むが、これらに限定されない)及び上記の薬学的に許容可能な塩が治療に有用な可能性がある神経変性の例として、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病及び筋萎縮性側索硬化症が挙げられる。
【0058】
神経炎症性疾患の例としては、外傷性脳損傷、脊髄損傷、急性播種性脳脊髄炎、急性視神経炎、横断性脊髄炎、視神経脊髄炎、急性弛緩性脊髄炎及び白質髄炎が挙げられる。
【0059】
投与
本発明の化合物は、本明細書に定義される方法で使用され得る。典型的には、これらの化合物は、in vivoでの方法に対して、並びに式(2)、式(11)又は式(12)の1以上の化合物(化合物(3)~化合物(8)を含むが、これらに限定されない)と、薬学的に許容可能な希釈剤又は賦形剤とを含む医薬組成物における使用に対して製剤化される。
【0060】
イタコン酸誘導体、例えば式(2)、式(11)又は式(12)の化合物(化合物(3)~化合物(8)を含むが、これらに限定されない)を含む製剤を、1以上の局所、経口、直腸、及び非経口(静脈内、皮下、又は筋肉内)の経路によって、それを必要とする被験体に投与してもよい。該製剤はまた、徐放のため疾患部位に埋め込まれる生分解性ポリマーに組み込まれてもよい。製剤の用量は、治療される病状、使用される薬物の活性、投与経路、並びに疾患の重症度及び患者の体重等のその他の臨床的因子に依存する。製剤は、具体的な投与経路に適した方法で製剤化される。
【0061】
経口投与に適した製剤としては、所定量の活性成分を含有するカプセル、カシェ剤又は錠剤、粉末又は顆粒、溶液、懸濁液、及び乳剤が挙げられる。口腔内の局所投与に適した製剤としては、薬用キャンディー、トローチ剤、及び洗口液が挙げられる。皮膚への局所投与に適した製剤としては、軟膏、クリーム、ゲル、ペースト、及び経皮パッチが挙げられる。直腸投与用製剤は、好適な基剤と共に坐剤として提供されてもよく、膣内投与用としては、適当な担体中に活性成分を含むペッサリー、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、フォーム、及びスプレーとして提供されてもよい。非経口投与に適した製剤としては、単位用量容器又は反復投与容器中に提供される水性又は非水性滅菌注射液が挙げられる。また、上記成分に加え、本発明の製剤は、件の製剤タイプを考慮して当該技術分野において一般的なその他の作用物質を含んでもよいことが理解されるべきである。
【0062】
治療方法に関する本発明の各実施形態では、製剤は式(2)、式(11)又は式(12)の1以上の化合物(化合物(3)~化合物(8)を含むが、これらに限定されない)を単独で含んでもよく、又は該製剤は薬学的に許容可能な賦形剤を更に含んでもよい。単独で投与されるか、又は賦形剤と組み合わせて投与されるかにかかわらず、1以上のイタコン酸誘導体を含む製剤は、特定の障害又は疾患を治療するために有効な量で被験体に投与される。一般に、1以上の誘導体を含む製剤は、約0.01mg/体重kg~約100mg/体重kgの量で被験体に投与される。また、許容可能な範囲として、約0.01mg/kg~約100mg/kg、0.1mg/kg~約100mg/kg、0.1mg/kg~約10mg/kg、0.1mg/kg~約9mg/kg、0.1mg/kg~約8mg/kg、0.1mg/kg~約5mg/kg、0.5mg/kg~約10mg/kg、1mg/kg~約10mg/kg、1.5mg/kg~約10mg/kg及び2mg/kg~約10mg/kgが挙げられる。製剤中のイタコン酸誘導体の具体的な用量としては、0.1mg/kg、0.2mg/kg、0.3mg/kg、0.4mg/kg、0.5mg/kg、0.6mg/kg、0.7mg/kg、0.8mg/kg、0.9mg/kg、1mg/kg、1.1mg/kg、1.2mg/kg、1.3mg/kg、1.4mg/kg、1.5mg/kg、1.6mg/kg、1.7mg/kg、1.8mg/kg、1.9mg/kg、2mg/kg、2.1mg/kg、2.2mg/kg、2.3mg/kg、2.4mg/kg、2.5mg/kg、2.6mg/kg、2.7mg/kg、2.8mg/kg、2.9mg/kg、3mg/kg、3.1mg/kg、3.2mg/kg、3.3mg/kg、3.4mg/kg、3.5mg/kg、3.6mg/kg、3.7mg/kg、3.8mg/kg、3.9mg/kg、4mg/kg、4.1mg/kg、4.2mg/kg、4.3mg/kg、4.4mg/kg、4.5mg/kg、4.6mg/kg、4.7mg/kg、4.8mg/kg、4.9mg/kg、5mg/kg、6mg/kg、7mg/kg、8mg/kg、9mg/kg、及び10mg/kgが挙げられる。しかしながら、被験体に投与される製剤中の誘導体の量は、障害又は疾患の位置、起源、属性、範囲及び重症度、治療される個体の年齢及び状態等によって幅広い範囲で変化する。最終的には、医師が使用される適切な用量を決定する。また、1以上のイタコン酸誘導体を含む製剤の投与頻度も、治療される疾患又は病状、及び投与方法を含む因子により変化する。各製剤は、一日に4回、3回、2回独立して投与されるか、又は1日に1回投与されてもよく、隔日、2日おき、3日おき、4日おき、5日おき、1週間に1回、7日おき、8日おき、9日おき、隔週で、月に1回及び隔月で投与されてもよい。
【0063】
治療方法に関する本発明の実施形態では、製剤は、それを必要とする被験体の養子細胞療法に使用される、式(2)、式(11)又は式(12)の化合物(化合物(3)~化合物(8)を含むが、これらに限定されない)で処理した後に形質導入された細胞(T細胞又はNK細胞)を含有する組成物である。
【0064】
本発明は、その範囲に対して何らかの制限を課すものとは解釈されない、以下の非限定的な実施例により更に理解される。一方、本明細書の記載を読めば、本発明の趣旨及び/又は添付の特許請求の範囲から逸脱することなくそれら自体が当業者に示唆され得る、多様なその他の実施形態、改良、及びそれらの等価物に対する手段(resort)を有し得ることが明確に理解される。
【実施例
【0065】
II.実施例
IRG1の阻害
イタコン酸レベルは、IRG1発現/活性の尺度である。IRGの活性を求めるため、治療剤の存在下又は不在下で100ng/mLのLPSでhMDMを8時間刺激した。ガスクロマトグラフィー質量分析法(GC-MS)を使用して、イタコン酸の細胞内濃度及び細胞外濃度を推定した。典型的なアッセイでは、1×10細胞~5×10細胞を6ウェルプレートに蒔き、一晩接着させた。その後、対象の化合物の存在下又は不在下で0.1μg/mL~1μg/mLのLPSで細胞を8時間刺激した。次いで、細胞を洗浄し、メタノール/水及びアセトニトリルの添加を用いて代謝産物を抽出した。この混合物の水相を乾燥し、存在する代謝産物をGC-MSによる検出前に誘導体化した。
【0066】
in vitro炎症アッセイ
対象の化合物の存在下又は不在下で4時間~6時間後に0.1μg/mL~1μg/mLのLPSで刺激したマクロファージの馴化培地中のTNFαの濃度を測定することによって、in vitro炎症を評価した。
【0067】
in vivo炎症アッセイ
LPSを注射した動物における循環炎症誘発性サイトカインの濃度を測定することによって、in vivo炎症を評価した。簡単に言えば、C57BL/6に1.5mg/kgのLPSを腹腔内(i.p.)注射して、ビヒクル又は治療剤を投薬した。LPS注射の2時間~3時間後に動物を流血させ、血清を得て、TNFα、IL-1β又はIL-6等の炎症誘発性サイトカインのレベルを商業的に入手可能なELISAキットを用いて求めた。
【0068】
抗ウイルスアッセイ
プラーク減少アッセイを用いて、抗ウイルス活性を試験した。細胞内増殖によって、ウイルス粒子は円形帯の感染領域又はプラークを作る。プラーク減少アッセイは、プラーク形成を阻害する薬物候補の能力を測定した。
【0069】
抗菌アッセイ
試験微生物の標準化された接種材料による寒天プレートの接種、及び寒天表面にかかる作用物質を含む濾紙を置くことによる殺菌剤の塗布を含む、寒天ディスク拡散アッセイを用いて、殺菌活性を判定した。濾紙から寒天プレートへの殺菌性化合物の拡散は、細菌増殖の阻止帯をもたらし、次いで効力を評価するためにこれを測定した。
【0070】
腫瘍細胞増殖アッセイ
このアッセイを、in vitroでの治療剤の抗腫瘍特性を評価するために使用した。典型的な増殖アッセイでは、細胞を適切な培地中でコンフルエント近くまで培養した。後に、細胞をトリプシン処理して、1つのウェル当たり2000個又は5000個の細胞で96ウェルプレート上に蒔いた。細胞を治療剤の存在下又は不在下で48時間~96時間培養した。その後、分光光度法(MTTアッセイ、BrdUアッセイ)又は蛍光定量法(Cyquantアッセイ)を使用して細胞増殖を判定した。
【0071】
T細胞の分化
T細胞がナイーブからエフェクターの状態に分化する能力を、抗CD2/抗CD3/抗CD28抗体のカクテルを用いた細胞の活性化の後、IFNγ又はGZMBの合成レベルを測定することによって評価した。IFNγ、GZMB及び他のエフェクターサイトカインの発現を、活性化開始から24時間~72時間後の馴化培地中の濃度を求めるか、又は蛍光標識細胞分取(FACS)を用いてこれらのサイトカインを発現する細胞%を推定することによって測定した。
【0072】
エピジェネティック修飾
ヒストンのアセチル化及び/又はメチル化を変化させる治療剤の能力を、ウェスタン免疫ブロッティングによって評価した。簡単に言えば、免疫細胞及び他の種類の細胞を、特定の期間、典型的には24時間~72時間に亘り治療剤又はビヒクル対照に曝露した後に収集した。その後、細胞を溶解し、等量のタンパク質を含む対照及び処理した細胞に由来する細胞溶解物を、SDS-PAGE電気泳動に供した。アセチル化及びメチル化されたヒストン部位の存在を、適切な抗体を用いたウェスタン免疫ブロッティングによって判定した。
【0073】
in vivo抗腫瘍効果
治療剤の抗癌特性を、担腫瘍動物の腫瘍の成長を抑制する及び/又は生存率を高める作用物質の能力を求めることによってin vivoで評価した。典型的な実験では、0.1×10個~1×10個の腫瘍細胞を、20%Matrigelを含むPBSに懸濁し、各マウスの右脇腹に皮下注射した。腫瘍が触知可能になったとき、動物を種々の群に無作為化し、治療を開始した。in vivo試験は、慣例的に、ビヒクル対照群、並びに種々の用量及び/又は投与経路の治療剤を含んでいた。腫瘍成長を、ノギス及び下記式を用いて評価した:
腫瘍体積=長さ×幅×幅×1/2
【0074】
カプラン-マイヤー分析を、担腫瘍動物の生存可能性を推定するために使用した。
【0075】
腫瘍免疫表現型検査
in vivoで特定の免疫細胞型に対する治療剤の効果を判定するため、同系腫瘍モデルを用いた。典型的な実験では、腫瘍を一定の大きさに成長させた後、終了前に所定の日数に亘って治療を行った。実験の最後に動物を安楽死させ、腫瘍を切除し、直ちにコラゲナーゼにより腫瘍組織を解離させることで単一細胞懸濁液を得た。その後、様々なバイオマーカーの存在を判定するため腫瘍細胞懸濁液をFACS分析に供した。
【0076】
実施例1
化合物(6)の合成
化合物(6)を以下の概要に従って合成した。反応物(9)及び反応物(10)は市販の材料のものとした。H NMR(400MHz,CDCl):2.36(3H,s)、3.20~3.23(4H,dd)、3.75(1H,t)、7.14~7.24(6H,m)、7.48(1H,s)、7.81(2H,m)。
【化7】
【0077】
化合物(8)の合成
化合物(8)を下記の概略に従って合成した。反応物(9)及び反応物(10)は、商業的に入手可能であるか、又は一般に当業者に知られている従来技術によって調製することができる。
【化8】
【0078】
実施例2
化合物(6)による処理後のLPS刺激マクロファージのイタコン酸合成
ヒト単球を末梢血から単離し、100ng/mLの単球コロニー刺激因子(M-CSF)の存在下でマクロファージへと5日間分化させ、1×10細胞/ウェルの密度で6ウェルプレートに蒔いた。細胞を一晩接着させた。その後、細胞を0μM、50μM、100μM及び500μMの化合物(6)で15分間前処理し、続いて、100νg/mLのLPSで8時間刺激した。インキュベーション期間の終了時に、細胞をPBSで2回洗浄した。予め-20℃に冷やしたメタノール400μLで細胞をクエンチした。氷冷超純水を添加した後、細胞を収集し、短時間ボルテックスを行い、氷上に10分間放置した。予め-20℃に冷やしたジクロロメタン400μLの添加に続いて、試料をボルテックスして4℃にて14000gで10分間遠心分離した。試料の水層を回収し、乾燥させた。20mgのメトキサミンHClを500μLのピリジンに室温で30分間溶解させて調製したMOX溶液20μLに、乾燥した材料を溶解した。MOXに溶解した代謝産物を室温で90分間インキュベートし、その後65℃で60分間、N-メチル-N-(トリメチルシリル)トリフルオロアセトアミド(MSFTA)80μLを加えることにより誘導体化した。誘導体化された代謝産物をGC-MSで分析した。試料中に存在するイタコン酸の量を、ピーク積算後に求めた。結果を図1に示す。化合物(6)は、イタコン酸の細胞内及び細胞外レベルを抑制した。
【0079】
TNFα分泌の阻害
hMDMを様々な濃度の化合物(6)で15分間前処理した後、1μg/mLのLPSでhMDMを刺激した。馴化培地を6時間後に回収し、TNFα濃度をELISAにより求めた。図2に示される結果は、化合物(6)がin vitroで炎症を阻害することを示す。
【0080】
C6-IRG1-9ラットグリオーマ細胞増殖の阻害
C6-IRG1-9細胞は、IRG1を過剰発現するようにトランスフェクションされたラットC6グリオーマ細胞である。IRG1の過剰発現は、0.55μg/mLのピューロマイシンを含むDMEM培地で細胞を培養することによって維持される。増殖アッセイの場合、2000細胞/ウェルの密度で96ウェルプレートに細胞を蒔いた。細胞を一晩接着させ、その後、様々な濃度の式(2)の化合物で細胞を48時間処理した。インキュベーション期間の終了時、細胞数を、製造業者の指示に従ってCyQuant細胞増殖キット(Thermo Fisher)を使用して評価する。図3に示される結果は、式(2)の化合物がC6-IRG1-9細胞の増殖を減少又は抑制できることを示す。図3において、細胞増殖は%未処理対照として表され、以下の通り定義される:
(t-s)×100/(c-s)
(式中、tはインキュベーション期間の終了時に処理ウェルに存在する細胞の数であり、cはインキュベーション期間の終了時に未処理ウェルに存在する細胞の数であり、sは処理開始前のウェル内の細胞の初期数である)。
【0081】
CD8T細胞増殖の増強
磁気分離及びMiltenyi Biotec製の適切なキットを使用して、商業的に入手可能なバフィーコートからナイーブhCD8T細胞を分離した。その後、抗CD2/抗CD3/抗CD28抗体のカクテルを使用して細胞をTCR活性化に供した。未処理の対照細胞及び処理された細胞を実験に含めた。IL-2を含まないTexMACS培地(Miltenyi Biotec)で細胞を72時間培養し、20UヒトIL-2/mLを含むTexMACS培地で更に48時間培養した。細胞分裂を、カルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステル(CFSE)希釈法を用いてフローサイトメトリーにより評価した。図4に示される結果は、未処理のTCR活性化対照細胞と比較して、化合物(6)がhCD8T細胞の増殖を増加させたことを示す。
【0082】
エフェクターT細胞へのhCD8T細胞分化の増強
磁気分離及びMiltenyi Biotec製の適切なキットを使用して、ヒトバフィーコートからナイーブCD8+T細胞を分離した。その後、抗CD2/抗CD3/抗CD28抗体のカクテルを使用して細胞を活性化した。エフェクターT細胞への細胞の分化を、適切なELISAキットを使用してそれぞれ24時間及び72時間に培地に放出されたIFNγ及びGZMBのレベルを求めることによって評価した。サイトカイン濃度を存在する細胞数ごとに正規化し、%未処理対照として表した。結果を下記表1及び表2に示す。
【0083】
表1は、低(0.1nM~100μMの範囲)濃度の化合物(6)で処理した後の精製されたヒトCD8(hCD8)T細胞のTCR活性化に続くINFγ合成の増加を示し、高(100μM超)濃度の化合物(6)ではIFNγ合成の減少を示す。
【0084】
【表1】
【0085】
表2は、低濃度の化合物(6)がGZMBの産生を増加させることを示す。
【0086】
【表2】
【0087】
エピジェネティック修飾
TCR活性化hCD8T細胞を、溶解に先立って72時間に亘り0μM又は10μMの化合物(6)に曝露した。同量の細胞溶解物を、ヒストン3のトリメチル化リジン部位4(H3K4me3)に対してゲル電気泳動及びウェスタン免疫ブロッティングに供した。実験には、ナイーブ細胞に由来する細胞溶解物も含まれていた。Image Jをタンパク質定量に使用した。また、正規化の目的でヒストン3(H3)に対するウェスタン免疫ブロッティングを行った。図5は、H3K4me3/H3比と共に2つのウェスタン免疫ブロッティングの結果を示す。hCD8T細胞を10μMの化合物(6)に曝露すると、トリメチル化H3K4が枯渇した。H3K4me3は、通常、転写の活性化と関連付けられる。H3K4me3の枯渇は活性化の抑制を示唆している。
【0088】
CT26担腫瘍マウスの生存率の増加
20%Matrigelを含むPBSに懸濁した1×10個のCT26マウス大腸腫瘍細胞を、C57BL/6マウスの右脇腹に皮下注射した。腫瘍を約100mmまで成長させた。マウスを2群(n=6動物/群)に無作為化し、1つの群はビヒクル対照を与え、もう1つの群は0.2mg/kgの化合物(6)のi.p.注射で週2回(火曜日-木曜日)処理された。実験は27日間続き、その時点で対照動物の死亡率は80%であった。カプラン-マイヤー生存分析を図6Aに示し、ビヒクル対照を与えた動物と比較した、化合物(6)で処理した動物間の生存優位性を示す。実験を繰り返した(図6B)。図6Bにおいて、処理動物に3mg/kgの化合物(6)の経口投与を1日2回行った。実験の終了時に、6匹のうち1匹の動物は完全な腫瘍退縮を経験し、6匹のうち5匹のマウスは腫瘍成長がより遅かった。
【0089】
CT26腫瘍の腫瘍免疫表現型検査
ビヒクル対照又は0.2mg/kgの化合物(6)(ip、1日2回)のいずれかで処理したCT26担腫瘍マウスを、腫瘍が250mm~1500mmの大きさに達したときに安楽死させた。腫瘍を切除し、製造業者の指示に従ってMiltenyi Biotec製の腫瘍解離キットを用いて単一細胞懸濁液を得た。懸濁液を、MDSCの存在について分析した。図7は、低濃度の化合物(6)による処理がM-MDSCの腫瘍内頻度を有意に減少させることを示している。
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7