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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-04
(45)【発行日】2023-12-12
(54)【発明の名称】振動発生装置
(51)【国際特許分類】
   A61H 23/02 20060101AFI20231205BHJP
【FI】
A61H23/02 341
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021539294
(86)(22)【出願日】2020-08-11
(86)【国際出願番号】 JP2020030556
(87)【国際公開番号】W WO2021029401
(87)【国際公開日】2021-02-18
【審査請求日】2021-10-29
【審判番号】
【審判請求日】2023-01-19
(31)【優先権主張番号】P 2019148710
(32)【優先日】2019-08-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】301053822
【氏名又は名称】テイクティ有限会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002446
【氏名又は名称】弁理士法人アイリンク国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】丈井 敏孝
【合議体】
【審判長】佐々木 正章
【審判官】内藤 真徳
【審判官】栗山 卓也
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-148521(JP,A)
【文献】特開2009-66459(JP,A)
【文献】特開2005-125045(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61H 23/02
A61N 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート形状で可撓性のある第1シート部と、
前記第1シート部の一の面側に設けられシート形状で可撓性のある圧電部と、
前記圧電部の前記第1シート部がある側とは反対側の面側に当該圧電部に接して設けられシート形状で可撓性のある第2シート部と、を有し、
前記圧電部は、駆動信号が入力されることで15kHz以上の周波数で振動し、
前記第2シート部は、前記圧電部がある側の面と反対側の面が身体に接触して取り付けられる部位であり、前記圧電部がある側の面と前記反対側の面とを貫通する経路が複数設けられ、当該複数の経路によって形成された各空気層を介して前記圧電部の振動を前記反対側の面側に伝播させる振動発生装置。
【請求項2】
前記第1シート部、前記圧電部、及び前記第2シート部は、一体として湾曲可能な帯形状をなし、円弧形状にされたときに両端部が180°以上の位置まで延びる請求項1に記載の振動発生装置。
【請求項3】
前記圧電部と前記第2シート部とは、一体とされて縫製にて凹凸形状に形成されてシート形状をなしている請求項1又は2に記載の振動発生装置。
【請求項4】
前記第1シート部の前記圧電部がある側とは反対側の面側に前記駆動信号を出力する駆動手段が設けられている請求項1乃至3の何れか1項に記載の振動発生装置。
【請求項5】
前記駆動手段は、駆動信号を継続して出力する時間、駆動信号の出力開始時刻、及び駆動信号の出力終了時刻の少なくとも何れかを基に、駆動信号を制御する請求項4に記載の振動発生装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発生した振動を身体に伝達させて治療等する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の超音波治療器は、超音波発振子に連結したプローブ又は超音波伝播媒体を身体に接触させて、身体への接触面を通して身体内部を振動させている(特許文献1、2参照)。これにより、従来の超音波治療器は、身体内部に熱を発生させて血行の改善を図っている。または、従来の超音波治療器は、超音波振動によって身体深部をマッサージして細胞を活性化させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-064273
【文献】特開2005-185802
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の超音波治療器では、治療する身体に接触させる部材として硬いプローブが用いられていた。例えば、特許文献1では、先端付近に超音波発振子を内蔵するプローブが開示されている。このプローブは、超音波発振子の振動エネルギーを身体に効率よく伝達させるために、身体に接触する先端部分の面積が小さくなっている。よって、プローブによる接触面積の狭さから治療範囲も限定的になっていた。また、プローブの先端は、硬いため、身体の曲面部分に点接触で接触してしまうことになるために、プローブから当該部分への振動エネルギーの伝達効率が悪かった。
【0005】
そこで、プローブの先端側又は身体側にゲル状の媒体を塗り、プローブの先端と身体との間にゲル状の媒体を介在させることで、振動エネルギーの伝達効率を高くすることも考えられる。しかし、ゲル状の媒体を塗るのは手間がかかり煩わしい。
【0006】
また、特許文献2には、超音波発生器に取り付けられた伝送線の先端を集束ミラーで覆って、超音波エネルギーを空気中で収束させる装置が開示されている。しかし、集束ミラーはかさばり扱いが難しい。さらに、超音波エネルギーを収束させる構造なので、身体の治療範囲も狭い。
【0007】
そこで、本発明の目的は、一度に身体の広範囲に振動をより効率よく伝達させることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明の第1の態様は、シート形状で可撓性のある第1シート部と、前記第1シート部の一の面側に設けられシート形状で可撓性のある圧電部と、前記圧電部の前記第1シート部がある側とは反対側の面側に当該圧電部に接して設けられシート形状で可撓性のある第2シート部と、を有し、前記圧電部は、駆動信号が入力されることで15kHz以上の周波数で振動し、前記第2シート部は、前記圧電部がある側の面と反対側の面が身体に接触して取り付けられる部位であり、前記圧電部がある側の面と前記反対側の面とを貫通する経路が複数設けられ、当該複数の経路によって形成された各空気層を介して前記圧電部の振動を前記反対側の面側に伝播させる振動発生装置である。
【0009】
本発明の第2の態様では、前記第1シート部、前記圧電部、及び前記第2シート部は、一体として湾曲可能な帯形状をなし、円弧形状にされたときに両端部が180°以上の位置まで延びることが好ましい。
【0010】
本発明の第3の態様では、前記圧電部と前記第2シート部とは、一体とされて縫製にて凹凸形状に形成されてシート形状をなしていることが好ましい。
【0011】
本発明の第4の態様では、前記第1シート部の前記圧電部がある側とは反対側の面側に前記駆動信号を出力する駆動手段が設けられていることが好ましい。
【0012】
本発明の第5の態様では、前記駆動手段は、駆動信号を継続して出力する時間、駆動信号の出力開始時刻、及び駆動信号の出力終了時刻の少なくとも何れかを基に、駆動信号を制御することが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の前記第1の態様によれば、振動発生装置は、全体として可撓性があるため、身体の曲面部分に装着された際に当該曲面部分に沿って密着して圧電部の振動を身体に伝播させることができる。
【0014】
また、本発明の前記第1の態様によれば、振動発生装置は、圧電部がシート形状であるため、圧電部の振動を身体に効率よく伝播させることができる。
【0015】
また、本発明の前記第1の態様によれば、振動発生装置は、複数の経路によって形成された各空気層を介して圧電部の振動を伝播させることができる。
【0016】
また、本発明の前記第1の態様によれば、振動発生装置は、15kHz以上の周波数の圧電部の振動を伝播させることができる。
【0017】
本発明の前記第2の態様によれば、振動発生装置は、第1シート部、圧電部、及び第2シート部が円弧形状にされたときに両端部が180°以上の位置まで延びるので、身体の広い曲面部分に装着された際にも、当該曲面部分に沿って密着して圧電部の振動を身体に伝播させることができる。
【0018】
本発明の前記第3の態様によれば、振動発生装置は、圧電部と第2シート部とが一体とされて縫製にて凹凸形状に形成されてシート形状をなしている結果、効果的に圧電部の振動を伝播させることができる。
【0019】
また、本発明の前記第3の態様によれば、振動発生装置は、縫製によって凹凸形状が形成されるため、簡易に凹凸形状が形成される。
【0020】
本発明の前記第4の態様によれば、振動発生装置は、駆動手段を有することで、携帯されつつ駆動可能になる。
【0021】
本発明の前記第5の態様によれば、振動発生装置は、圧電部の駆動を時刻、時間に応じて制御できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、第1の実施形態に係る超音波出力装置の構成例を示す図である。
図2図2は、第1の実施形態に係る超音波出力装置の圧電帯を湾曲させた一例を示す斜視図である。
図3図3は、膝に圧電帯が装着されている一例を示す図である。
図4図4は、第1の比較例の圧電帯の構成例を示す図である。
図5図5は、第1の比較例の圧電帯が腕に巻き付けられた状態を示す断面図である。
図6図6は、第2の比較例の圧電帯の構成例を示す図である。
図7図7は、第2の実施形態における圧電装置の構成例を示す斜視図である。
図8図8は、第2の実施形態における圧電帯を湾曲させた一例を示す斜視図である。
図9図9は、第3の実施形態に係る超音波出力装置の構成例を示すである。
図10図10は、第4の実施形態に係る超音波出力装置の構成例を示す図である。
図11図11は、第5の実施形態に係る超音波出力装置の構成例を示す図である。
図12図12は、第5の実施形態における時計本体部が内蔵する回路又は機能の構成例を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明の実施形態を図面を参照しつつ説明する。
(第1の実施形態)
【0024】
第1の実施形態では、超音波出力装置を挙げている。
【0025】
図1は、第1の実施形態に係る超音波出力装置1の構成例を示す図である。図2は、第1の実施形態に係る超音波出力装置の圧電帯を湾曲させた一例を示す斜視図である。
【0026】
図1に示すように、超音波出力装置1は、圧電装置2、及び駆動装置3を有している。圧電装置2は、圧電帯10、及びコネクタ部50を有している。圧電帯10は、シート状であり、全体として長方形状(例えば帯形状)を有している。圧電帯10は、ベースシート11、圧電シート部20、及びカバーシート12が積層されて形成されている。
【0027】
ベースシート11は、例えば、可撓性がある材料で形成されている。ベースシート11は、湾曲されて円弧形状になったときに長辺方向の両端部が180°以上の位置まで延びるようになっている。ベースシート11上に圧電シート部20が設けられている。
【0028】
圧電シート部20は、圧電シート本体21、第1電極層22、及び第2電極層23を有している。圧電シート部20において、圧電シート本体21が第1電極層22と第2電極層23とに挟まれている構造になっている。
【0029】
圧電シート本体21は、シート形状又はフィルム形状をなしたシート部材又はフィルム部材である。圧電シート本体21は、例えば、PVDF(ポリフッ化ビニリデン樹脂)等のような屈曲可能な高分子圧電フィルムである。第1電極層22及び第2電極層23は、例えば、圧電シート本体21の両面にアルミ蒸着などの方法で形成されている。これによって、圧電シート部20は、全体としても、シート形状又はフィルム形状をなしている。ここで、第1電極層22及び第2電極層23には、外周端にコネクタ部50が電気的に接続されている。コネクタ部50は、例えば、導電性接着剤などで第1電極層22及び第2電極層23に電気的に接続されている。
【0030】
ここで、超音波振動子は、セラミック基板の両面に電極を形成した剛性のあるセラミック圧電板と、高分子圧電フィルムの両面に電極を形成した屈曲性のある圧電シートとに大きく分類される。例えば、粉末状のセラミックなどを湾曲性のある物質に均一に練り込んだフィルムもあり、その両面に電極層を形成したフィルムも、本実施形態における圧電シート部20に含まれる。このような構成を有する圧電シート部20上にカバーシート12が設けられている。
【0031】
カバーシート12は、例えば、通気性及び可撓性のある材料で形成されている。通気性及び可撓性のある材料は、例えば、布である。カバーシート12には、表裏面を貫通する所定形状の孔12aが複数形成されている。複数の孔12aの形状は、例えば、円形である。
【0032】
以上のような構成を有する圧電帯10は、図2に示すように、圧電帯10は、可撓性が高いため、湾曲させて円弧形状にしたときに長辺方向の両端部が180°以上の位置まで延びる。また、圧電帯10は、ベースシート11と圧電シート部20とカバーシート12との一体性が保てるように、ベースシート11と圧電シート部20とカバーシート12とをピンチ4などで一体にして固定されている。
【0033】
コネクタ部50は、2本の第1及び第2ケーブル51,52、並びにプラグ53を有している。第1ケーブル51は、一端が圧電帯10の第1電極層22に電気的に接続されている。また、第2ケーブル52は、一端が圧電帯10の第2電極層23に電気的に接続されている。第1及び第2ケーブル51,52の他端は、プラグ53に電気的に接続されている。
【0034】
プラグ53は、ジャック3aに電気的に接続されて駆動装置3に接続されている。例えば、駆動装置3は、ファンクションジェネレーターである。ファンクションジェネレーターは、市販品等の一般的なファンクションジェネレーターである。駆動装置3は、15kHzから100kHzの範囲の何れかの周波数で駆動信号(超音波信号)を出力することができる。ここで、駆動信号は、圧電帯10の圧電シート部20を駆動するための信号である。例えば、駆動信号の波形は、サイン波、矩形波、又は鋸波のいずれか、又はそれら波形を混合した波形である。
【0035】
(動作、作用等)
次に、第1の実施形態に係る超音波出力装置1の動作、及びその作用等の一例について説明する。本例では、超音波出力装置1を人の治療用に用いる場合を説明する。さらに、本例では、人の膝の治療用に用いる場合を説明する。
【0036】
図3は、膝に圧電帯10が装着されている一例を示す図である。
【0037】
図3に示すように、圧電帯10は、カバーシート12が身体1000の肌側になるように、膝1001に巻き付けられる。圧電帯10は、全体として可撓性があるため、膝1001に密着し膝1001の外周に沿って巻き付けられる。このとき、ベースシート11が、湾曲されて円弧形状にされたときに長辺方向の両端部が180°以上の位置まで延びる結果、圧電帯10全体としても、湾曲させて円弧形状にしたときに長辺方向の両端部が180°以上の位置まで延びるようになる。
【0038】
これにより、圧電帯10は、膝1001に密着しつつ膝1001の外周に沿って巻き付けられる。そして、圧電帯10が確実に膝1001に固定されるよう、圧電帯10は、その上から固定手段71によって膝1001に対し固定される。固定手段71は、例えば、大き目の輪ゴム、面ファスナーである。これにより、圧電帯10は、さらに膝1001への密着度が増す。
【0039】
その後、駆動装置3のジャック3aに圧電装置2のプラグ53を接続する。その後、駆動装置3が操作されて、15kHzから100kHzの範囲の何れかの周波数の駆動信号(超音波信号)が駆動装置3から圧電装置2の圧電シート部20に出力される。
【0040】
これにより、圧電シート部20は、駆動装置3からの駆動信号に応じた15kHzから100kHzの範囲の何れかの周波数で振動する。そして、その振動は、カバーシート12に設けられた複数の孔12a内の空気層を介して膝1001に超音波として伝達される。このとき、カバーシート12が身体と圧電シート部20とのスペーサーの役目を果たし、身体と圧電シート部20との距離が最短に保たれつつ、カバーシート12に設けられた複数の孔12a内の空気層を介して圧電シート部20の振動が近距離で膝1001に超音波として伝達される。このようにして、超音波出力装置1が人の治療用に用いられる。
【0041】
また、超音波出力装置1を人が装着し圧電帯を駆動しながら、その人が音楽を聴くと、聴いている音楽の音質が改善されるという音質改善効果も得られた。このような結果について、出願人は、孔12a内の空気層を介して身体に伝達された超音波が、圧電帯10の装着部位に限らず身体全体に何かしらの影響をもたらし、聞いている音の音質の改善に作用したと考えている。
【0042】
(第1の比較例)
次に、本実施形態と比較するための第1の比較例の圧電帯を説明する。
【0043】
図4は、第1の比較例の圧電帯500の構成例を示す図である。
【0044】
図4に示すように、第1の比較例では、圧電帯500は、ベースシート501、セラミック製の複数の圧電板502、及びカバーシート503が積層されて構成されている。複数の圧電板502は、従来からあるセラミック製の圧電板である。また、複数の圧電板502はそれぞれ、ベースシート501に貼り付けられている。また、カバーシート503は、複数の網目を有するメッシュ素材である。
【0045】
図5は、この第1の比較例の圧電帯500が人の腕1002に巻き付けられた状態を示す断面図である。
【0046】
図5に示すように、圧電板502の剛性が高いために、圧電板502と腕1002とはカバーシート503を介して点504でほぼ点接触になる。ここで、圧電板502の振動が腕1002にダイレクトに伝わるため、圧電板502の振動は腕1002にそのまま機械的な振動として伝わる。一方、腕1002に接触していない圧電板502における腕1002から離れた部位502aの振動は、音波として放射されて腕1002に届く。しかし、その音波は、距離の2乗で減衰するため、非常に弱い状態で腕1002に伝達されることになる。
【0047】
ここで、セラミック圧電板は、大きな面積に形成され難いため、耳元で聞く電話などに利用されている。また、セラミック圧電板は、剛性が高いため、振動を直接皮膚や骨に伝えることができ、耳や頭の周囲の骨を介して音信号を耳に届ける骨伝導スピーカーに使用されている。
【0048】
このようなセラミック圧電板からの伝達面積を広くするためには、セラミック圧電板を多数用いる必要がある。さらに、セラミック圧電板を多数用いる場合には、各セラミック圧電板をリード線で電気的に接続する必要がある。このように、セラミック圧電板からの伝達面積を広くしようとすると様々な手間がかかるため、セラミック圧電板を利用した機器、装置の使用用途は限定的になっている。
【0049】
第1の比較例のように複数のセラミック圧電板を利用した機器、装置を湾曲させて身体等に装着させて使用する場合、各セラミック圧電板が湾曲しないため、機器、装置全体としてみて装着面が連続した振動伝達面とはならない。すなわち、機器、装置に取り付けられた各セラミック圧電板が装着面に対して点接触になり、セラミック圧電板の振動は、接触面に飛び飛びの振動として伝達される。
【0050】
このようなことから、第1の比較例では、腕1002には点接触する点504から伝播する強い機械的振動が支配的になり、音波として伝播する振動は非常に弱いので、機械的振動に打ち消されてしまう。
【0051】
また、この第1の比較例の圧電帯500を用いて筋肉痛やテニス肘などの治療を行ってみた。しかし、圧電板502の振動を強くしても、治療効果は得られなかった。この第1の比較例の圧電帯500を用いた治療結果から、前述の本実施形態のように身体に巻き付けた圧電帯10から空気層を介して超音波を身体に伝達して行う治療と、第1の比較例のように身体に巻き付けた圧電帯500の圧電板502から身体に振動を伝達させて行う治療とは全く異なることがわかる。このような結果について、出願人は、本発明の音質改善効果についても、本実施形態のようにカバーシート12に設けられた複数の孔12a内の空気層を介して圧電シート部20の振動が超音波となって近距離で均一に広く身体に伝達して治療効果が得られたのと同じ作用で、超音波が音波として生体に作用して音質改善効果が発生したと考えている。
【0052】
また、第1の比較例の圧電板502よりも小さい圧電板(又は振動板)、例えば、数cm、数mm程度の圧電板を複数並べることで、圧電帯を湾曲しやすくすること考えられる。しかし、この場合でも、複数の圧電板を電気的に接続するためや圧電板同士の接触を防ぐために、複数の圧電板の間にある程度隙間を設ける必要がある。このようにすると、圧電帯を身体に被せたとき、圧電板が配置されていない隙間部分は振動しないので、圧電帯に無駄なスペースが存在することになる。また、圧電帯において振動したり振動しない部分があることは、治療効果や音質改善効果の低下につながる。
また、複数の圧電板の間で接続インピーダンスが発生したり物理的定数が複数できたりするため、複数の圧電板すべてを同じように振動させることが難しくなり、結果的に、圧電帯全体で均一に振動させることが難しくなる。
これに対して、第1の実施形態における圧電帯10は、圧電シート部20が単一のシート形状、シート部材からなるため、全面で振動が均一になる。また、出願人は、圧電シート部20が単一のシート形状、シート部材であることが、治療効果や音質改善効果を発揮する重要な要件であることも確認している。
【0053】
(第2の比較例)
次に、本実施形態と比較するための第2の比較例の圧電帯を説明する。
【0054】
図6は、第2の比較例の圧電帯600の構成例を示す図である。
【0055】
図6に示すように、第2の比較例では、圧電帯600は、セラミック製の複数の圧電板601を有し、バンダナのように頭1003に巻き付けられて使用されている。そして、第2の比較例では、圧電帯600は、耳に装着されたヘッドホン650と同時に使用されている。このような構成によって、第2の比較例は、ヘッドホン650と圧電帯600の圧電板601とを同時に駆動して、ヘッドホン650から耳で直接聴く音の耳殻信号に、圧電帯600の圧電板601からの信号をミックスさせている。ここで、圧電板601からの信号は、圧電板601の機械的な振動を頭蓋骨の骨伝導で耳殻に伝達される信号になる。このように、ヘッドホン650から耳で直接聴く音の耳殻信号に、圧電帯600の圧電板601からの信号をミックスさせることで、音質が改善される。
【0056】
また、第2の比較例では、音源装置660からの音楽信号が、分離回路661が入力されて、分離回路661によって各アンプ662,663に分けられて、各ケーブル664,665を介して圧電帯600及びヘッドホン650に入力される。
【0057】
この第2の比較例と前述の本実施形態とを比較すると、第2の比較例の圧電帯600は、セラミック製の圧電板601を用いて構成されているのに対して、本実施形態における圧電帯10は、湾曲可能な圧電シート部20によって構成されている。第2の比較例と前述の本実施形態とでは、これら構成に違いがあるため、音質改善の原理が異なっている。
【0058】
例えば、第2の比較例の圧電帯600を頭以外の身体に取り付けて音質改善の検証もしたが、音質が改善されるという結果を得ることもできなかった。一方、本実施形態における圧電帯10を頭以外の身体に取り付けて音質改善の検証をしたところ、音質が改善されるという結果を得ることができた。このような結果についても、出願人は、本実施形態のようにカバーシート12に設けられた複数の孔12a内の空気層を介して圧電シート部20の振動が超音波となって近距離で均一に広く身体に伝達されたことが治療効果として作用していると考えている。
【0059】
また、図6に示す構成からわかるように、第2の比較例と前述の本実施形態とでは、圧電帯を駆動させるためのシステムも異なっている。
【0060】
(第3の比較例)
次に、本実施形態と比較するための第3の比較例を説明する。
【0061】
第3の比較例は、音の出るポスター等に使用される圧電シートである。そして、この第3の比較例の圧電シートは、圧電シート本体の両面に電極が形成され、さらにその上が絶縁物でコーティングされて保護膜が形成されている。
【0062】
このような構成の圧電シートを身体の腕等に被せたときに、圧電シート本体と身体の間には保護膜が介在することになる。このような場合、圧電シート本体からの振動は、保護膜内で減衰してしまい、身体に伝達される振動が小さくなってしまう。そのため、第3の比較例でも、治療効果や音質改善効果は得られなかった。
【0063】
また、フィルム状の圧電シートは、剛性がないので、他の物体に接触すると、その振動が止まってしまう。これによって、圧電シートの振動は、他の物体に伝達されにくくなってしまう。このようなこともあるため、第3の比較例では、治療効果や音質改善効果は得られなかったと言える。そして、孔の開いたカバーシートがないために音波としても身体に振動が伝搬され難くなる。
【0064】
(第1の実施形態における効果)
(1)圧電帯10は、全体として可撓性があるため、身体の曲面部分に装着された際に当該曲面部分に沿って密着して圧電シート部20の振動を身体に伝播させることができる。
【0065】
(2)圧電帯10は、圧電シート部20がシート形状であるため、特に、単一のシート形状であるため、圧電シート部20の振動を身体に効率よく伝播させることができる。
【0066】
(3)圧電帯10は、カバーシート12の複数の孔12a内の空気層を介して圧電シート部20の振動を身体に伝播させることができる。これにより、圧電帯10は、圧電シート部20の振動を広く均一に身体に伝播させることができる。
【0067】
(4)圧電帯10は、15kHz以上の周波数の振動を身体に伝播させることができる。出願人は、様々な周波数で効果測定をしたが、15kHz以上の周波数の振動がより効果的であるという結果を得ている。
【0068】
(5)圧電帯10は、湾曲されて円弧形状されたときに、両端部が180°以上の位置まで延びるので、身体の広い曲面部分に装着された際にも、当該曲面部分に沿って密着して圧電シート部20の振動を音波として身体に伝播させることができる。
【0069】
(6)圧電帯10は、圧電シート部20が可撓性の部材で形成されていることで、その形状の自由度が高くなる。例えば、圧電帯10は、治療部位の形状に合わせた形状に形成可能になるので、一度に治療できる範囲を広くでき治療効果を上げることができ、さらに、様々な治療部位への適用の許容度も高くなる。
【0070】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態を図面を参照しつつ説明する。なお、前述の第1の実施形態と同様な構成については同一の符号を付して説明する。
【0071】
図7は、第2の実施形態における圧電装置2の構成例を示す斜視図である。
【0072】
図7に示すように、第2の実施形態では、圧電帯30が、その長手方向の両端部に位置するように第1圧電帯部30aと第2圧電帯部30bとに分かれている。具体的には、圧電シート部40は、第1の実施形態と同様に、シート形状又はフィルム形状をなしており、圧電シート本体41が第1電極層42と第2電極層43とに挟まれている構造になっている。また、第1電極層42及び第2電極層43の構成は第1の実施形態と同様であるが、圧電シート本体41には、その長手方向の中央付近に圧電フィルムが形成されていない分離領域が形成されている。また、第1電極層42及び第2電極層43は、圧電シート本体41の分離領域で、前記第1の実施形態と同様に、図示しない第1及び第2ケーブルに電気的に接続されている。さらに、第2の実施形態では、カバーシート13に複数の孔13aが形成されているが、その複数の孔13aは、圧電帯30の長手方向で両端部に分かれて形成されている。このような構成によって、圧電帯30には、第1圧電帯部30aと第2圧電帯部30bとが分かれて形成されている。
【0073】
(動作、作用等)
次に、第2の実施形態に係る超音波出力装置1の動作、及びその作用等の一例について説明する。本例では、超音波出力装置1を人の治療用に用いる場合を説明する。
【0074】
第2の実施形態では、圧電帯30は、第1圧電帯部30aと第2圧電帯部30bとが形成されている。そして、第1圧電帯部30a及び第2圧電帯部30bはそれぞれ、全体として可撓性があるため、湾曲させて円弧形状にしたときに長辺方向の両端部が180°以上の位置まで延びるようになる。
【0075】
図8は、第2の実施形態における圧電帯30を湾曲させた一例を示す斜視図である。
【0076】
図8に示すように、第1圧電帯部30a及び第2圧電帯部30bはそれぞれ、湾曲されて円弧形状にされたときに長辺方向の両端部が180°以上の位置まで延びるようになる。
【0077】
ここで、例えば、テニス肘では肘の上下の骨付近に痛みが出る。このようなテニス肘の治療のために、第2の実施形態における圧電帯30を肘の横から巻くと、圧電帯30の第1圧電帯部30a及び第2圧電帯部30bのそれぞれの両端部が180°以上の位置まで延びる。これにより、第1圧電帯部30aが肘の上に確実に被さるようになり、第2圧電帯部30bが肘の下に確実に被さるようになる。
【0078】
そして、第1圧電帯部30a及び第2圧電帯部30bは、駆動装置3によって駆動されると、15kHzから100kHzの範囲の何れかの周波数で振動する。そして、その振動は、超音波としてカバーシート31に設けられた複数の孔31a内の空気層を介して超音波として肘に伝達される。このようにして、超音波出力装置1が人の治療用に用いられる。
【0079】
(第2の実施形態における効果)
(1)圧電帯30の第1圧電帯部30a及び第2圧電帯部30bはそれぞれ、湾曲されて円弧形状されたときに、両端部が180°以上の位置まで延びるので、身体の広い曲面部分に装着された際にも、当該曲面部分に沿って密着して第1圧電帯部30a及び第2圧電帯部30bの振動を身体に伝播させることができる。
【0080】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態を図面を参照しつつ説明する。なお、前述の第1、第2の実施形態と同様な構成については同一の符号を付して説明する。
【0081】
第3の実施形態も、超音波出力装置を挙げている。
【0082】
図9は、第3の実施形態に係る超音波出力装置1の構成例を示すである。
【0083】
図9に示すように、第3の実施形態における圧電帯100は、第1の実施形態同様に、ベースシート110、圧電シート部101、及びカバーシート102が積層されて形成されている。しかし、第3の実施形態における圧電帯10は、ベースシート110、圧電シート部101、及びカバーシート102を糸で縫い合わせて形成されている。
【0084】
ベースシート110は、布111上に厚みのあるフェルト112を貼り合わせた複合素材によって形成されている。例えば、布111は、しなやかで厚み方向への押圧に対して反発力のある生地の布である。
【0085】
圧電シート部101は、第1の実施形態と同様に、圧電シート本体が第1電極層と第2電極層とに挟まれている構造になっている。
【0086】
カバーシート120は、ネット状の素材によって形成されている。ネット状の素材は、例えば、オーディオのスピーカーに用いられるスピーカーネットである。
【0087】
第3の実施形態では、ベースシート110、圧電シート部101、及びカバーシート102が一体とされて、カバーシート102側が凹凸形状に形成されている。凹凸形状は、次のようにして形成されている。
【0088】
ベースシート110、圧電シート部101、及びカバーシート102を積層させた状態で、長手方向の両端部100aを糸で縫い、さらに、長辺方向に向かって梯子状に等間隔の部位100bを糸で縫って、ベースシート110、圧電シート部101、及びカバーシート102が縫い合わされている。糸は、例えば絶縁性のある糸である。
【0089】
これにより、フェルト112は、縫い目の部位112aが押しつぶされ、縫い目の部位112aに隣接する部位112bが押しつぶされず形が維持される。その結果、ベースシート110、圧電シート部101、及びカバーシート102を積層させて得られる厚さが、縫合部では他の部分よりも薄くなる。そのため、ベースシート110、圧電シート部101、及びカバーシート102を積層させて得られる形状は、縫合部に隣接する部位の断面が略半円形状の凸部になる。これにより、カバーシート102側が全体として、凹凸形状になる。例えば、凸部の高さは、数mmであり、例えば、1mm程度である。そのため、圧電帯100のカバーシート102側の形状の目視による見た目は、ほぼ平らである。
【0090】
また、圧電シート部101には、縫合部を避けるようなパターンで電極を形成することもできる。これにより、圧電シート部101の電極を縫い糸が貫通してしまい電極が破損してしまうことを防止することができる。ただ、電極を糸が貫通しても、電極の縫い目で電気的なショートが起こらないことを確認できているので、パターン形成することなく電極に糸を通して縫製することもできる。この場合、電極が容易に形成される。
【0091】
(動作、作用等)
次に、第3の実施形態に係る超音波出力装置1の動作、及びその作用等の一例について説明する。
【0092】
第3の実施形態では、圧電帯100は、カバーシート102側が凹凸形状に形成されている。これにより、圧電帯100は、カバーシート102に設けられた複数の孔102a内の空気層を介して伝達面に伝播される超音波を増加させることができる。
【0093】
また、凹凸形状は、縫製によって簡易に形成される。さらに、縫製位置を調整するだけで、凹凸形状のパターンや凸部の高さが簡易に調整可能になる。その結果、圧電帯100は、カバーシート102に設けられた複数の孔102a内の空気層を介して伝播される超音波の出力を簡易に調整できるようになる。よって、圧電帯100は、カバーシート102に設けられた複数の孔102a内の空気層を介して所望の周波数の超音波出力が最大になるような調整も、簡易にできる。
【0094】
また、出願人は、孔102a内の空気層を介して伝播される超音波が最大となる凹凸形状の大きさやその形状があることも発見した。このようなことから、凹凸形状の凸部の高さをできるだけ低くしつつ、孔102a内の空気層を介して伝播される超音波が最大となるような凹凸形状にすることもできる。このようにすることで、圧電帯100が身体に装着されて湾曲された際でも、凹凸形状が小さいためにその形状が維持されるので、孔102a内の空気層を介して伝播される超音波は、最大に維持されるようになる。
【0095】
(第3の実施形態における効果)
(1)圧電帯100は、圧電シート部101とカバーシート102とが一体とされて縫製にて凹凸形状に形成されてシート形状をなしている結果、効果的に圧電シート部101の振動を伝播させることができる。
【0096】
(2)圧電帯100は、縫製によって簡易に凹凸形状が形成される。そして、圧電帯100は、縫製によって簡易に凹凸形状が形成されるため、超音波による効果が最大となるような凹凸形状が容易に形成される。
【0097】
(3)圧電帯100は、縫製によって音波が放射しない無駄なスペースが作られることなく凸凹が形成されるので、効果的に圧電シート部101の振動を伝播させることができる。
【0098】
(第4の実施形態)
次に、第4の実施形態を図面を参照しつつ説明する。なお、前述の第1~第3の実施形態と同様な構成については同一の符号を付して説明する。
【0099】
第4の実施形態も、超音波出力装置を挙げている。
【0100】
図10は、第4の実施形態に係る超音波出力装置1の構成例を示す図である。
【0101】
図10に示すように、駆動装置151が、携帯可能になるように小型軽量化された装置である。駆動装置151は、ファンクションジェネレーターの機能の一部を有している。これにより、駆動装置151は、機能が少なく省電力で駆動されるようになるため、小型の電池やバッテリで駆動可能になる。電池やバッテリは、例えば、一本のリチウムイオン電池や一枚のコイン電池である。また、第4の実施形態では、駆動装置151側のジャック151aとプラグ53の抜き差しで、圧電帯10と駆動装置151との電気的接続がオン及びオフされる。一方、圧電帯10は、1Vの電圧でも15kHz以上の入力があれば十分な超音波を発生できるように構成されている。
【0102】
(動作、作用等)
次に、第4の実施形態に係る超音波出力装置1の動作、及びその作用等の一例について説明する。
【0103】
第4の実施形態では、シャツ1100などの衣服に圧電帯10が取り付けられている。例えば、圧電帯10が衣服に縫い付けられている。この第4の実施形態では、駆動装置151が、小型軽量化されているため、使用者は、このように圧電帯10をシャツに付けたままで超音波出力装置1を携帯することができる。
【0104】
(第5の実施形態)
次に、第5の実施形態を図面を参照しつつ説明する。なお、前述の第1~第4の実施形態と同様な構成については同一の符号を付して説明する。
【0105】
第5の実施形態は、超音波出力装置を挙げている。第5の実施形態に係る超音波出力装置は、時計型の超音波出力装置である。
【0106】
図11は、第5の実施形態に係る超音波出力装置200の構成例を示す図である。
【0107】
図11に示すように、超音波出力装置200は、腕時計と一体とされている。超音波出力装置200は、腕時計部201、及び圧電帯202を有している。腕時計部201は、時計本体部210、及びベルト部220を有している。
【0108】
図12は、時計本体部210が内蔵する回路または機能の構成例を示す図である。
【0109】
図12に示すように、時計本体部210は、時計機能部211、表示部212、通信部213、電池部214、及び駆動制御部215を有している。
【0110】
時計機能部211は、時計、アラーム、タイマー等を含めた各種の時計機能を有している。表示部212は、時計等の情報を表示する。表示部212は、タッチパネルになっており、外部からの操作も可能になっている。通信部213は、時計本体部210がスマートフォン等の他の携帯端末と通信を行うための部位である。時計本体部210は、通信部213によって他の通信端末と通信を行い、当該他の通信端末と連動することができる。電池部214は、圧電帯202を駆動するための電源となる。電池部214は、例えば、リチウムイオン電池である。駆動制御部215は、電池部214に接続されており、圧電帯202に電源供給して圧電帯202を駆動しつつ、その駆動を駆動信号で制御する。駆動制御部215は、例えば、表示部212になされた外部操作に応じて、駆動信号で制御する。また、駆動制御部215は、通信部213を介して受信した他の通信端末からの要求に応じて制御可能とされている。
【0111】
ベルト部220は、長尺であり、表面側の中央付近に時計本体部210が設けられている。ベルト部220が、一般の時計等のベルトと同様に、一端側に美錠221が設けられており、他端側に小穴222が複数形成されている。このベルト部220の裏面に圧電帯202が設けられている。また、ベルト部220には、時計本体部210の近くに時計側接続部223が設けられている。
【0112】
時計側接続部223は、時計本体部210の駆動制御部215と電気的に接続されている。時計側接続部223には、後述の圧電帯202の圧電帯側接続部が着脱可能に接続される。
【0113】
圧電帯202は、シート状であり、全体として長方形状を有している。例えば、圧電帯の長辺方向の長さは、5cm~20cmであり、圧電帯202の短辺方向の幅は、2cm~10cmである。圧電帯202は、前述の第1の実施形態と同様に、ベースシート、圧電シート部、及びカバーシートが積層されて形成されている。圧電帯202は、ベルト部220の裏面の中央付近に当該ベルト部220に沿って設けられている。
【0114】
圧電帯202は、着脱可能手段となるスナップ230によってベルト部220に着脱可能に取り付けられている。本例では、ベルト部220の両側に、時計本体部210を挟むようにして、それぞれ2個のスナップ雄部231が設けられている。これに対応して、圧電帯202に、スナップ雄部231の位置に対応するように4個のスナップ雌部232が設けられている。このようなスナップ230によって、圧電帯202はベルト部220に着脱可能に取り付けられている。なお、スナップ230の数は、4個以外とされることもできる。
【0115】
また、圧電帯202は、図示しない圧電帯側接続部を有している。圧電帯側接続部は、圧電帯202の第1電極層、及び第2電極層と電気的に接続されている。圧電帯側接続部は、ベルト部220に設けられている時計側接続部223に対して着脱可能とされている。時計側接続部223に圧電帯側接続部が装着された状態で、電池部214から圧電帯の第1電極層、及び第2電極層に電源が供給される。
【0116】
(動作、作用等)
次に、第5の実施形態に係る超音波出力装置200の動作、及びその作用等の一例について説明する。
【0117】
先ず、超音波出力装置200のユーザは、スナップ230を利用して、ベルト部220に圧電帯202を取り付ける。スナップ230なので、ユーザは、ベルト部220に圧電帯202を簡易に取り付けることができる。その後、ユーザは、ベルト部220の時計側接続部223に圧電帯202圧電帯側接続部を接続する。これによって、圧電帯202は電源が供給可能とされるとともに駆動可能になる。
【0118】
このように、圧電帯202がベルト部220、すなわち、腕時計部201に着脱自在にされていることで、ユーザは、圧電帯202をベルト部220から外しておくことで、普段は、超音波出力装置1を時計として使える。そして、ユーザは、必要なときだけ圧電帯202を装着して超音波出力装置として使うことができる。
【0119】
ユーザは、超音波出力装置200を装着する際には、ベルト部220を手首に巻き付けて、ベルト部220の美錠221と小穴222でベルト部220の長さを調整し、ベルト部220を手首に固定する。このとき、圧電帯202の長さが5cm~20cmであるため、圧電帯202は、ユーザの手首の周囲を過不足なく囲む状態になる。圧電帯202の長さが5cm~20cmであることで、例えば、子供、痩せている大人、太っている大人であっても、圧電帯202は、そのようなユーザの手首の周囲を過不足なく囲むことができる。また、圧電帯202の短辺方向の幅が2cm~10cmであるため、ユーザは、ベルト部220の裏に取り付けられている圧電帯202に違和感を感じることもない。このようにして、圧電帯202は、ユーザの手首に密着した状態になる。
【0120】
それから、ユーザは、時計本体部210を操作したり、時計本体部210と通信可能になっている他の通信装置であるスマートフォンを操作したりして、駆動制御部215を介して圧電帯202を駆動させる。また、ユーザは、時計本体部210のアラーム機能を使って、予め設定した時刻に圧電帯202を駆動させたり、駆動している圧電帯202を予め設定した時刻に停止させたりすることができる。また、ユーザは、時計本体部210のタイマー機能を使って、予め設定した時間だけ圧電帯202を駆動させることもできる。
【0121】
これにより、ユーザは、例えば、テレビを視聴する時間帯に合わせて、圧電帯202を駆動させることができる。すなわち、ユーザは、視聴番組の開始時刻に圧電帯202を駆動させ、視聴番組の終了時刻に圧電帯202の駆動を止めるようなこともできる。また、超音波出力装置200は、このように駆動時間を自動的に制御できるため、消費電力を低減できる。
【0122】
(第5の実施形態における効果)
(1)超音波出力装置200は、駆動制御部215を有することで、携帯されつつ駆動可能になる。
【0123】
(2)超音波出力装置200は、時刻、時間を基に圧電帯202の駆動を制御できる。
【0124】
(3)超音波出力装置200は、手首に装着した圧電帯202からの超音波を身体に伝播させているので、その装着者がコードレスイヤホンやヘッドホンで視聴している音の音質を改善できる。また、出願人は、身体の様々な部位に圧電帯を装着する実験をしたが、圧電帯を手首に装着するともっとも音質改善効果が高くなるという実験結果を得ている。第5の実施形態は、このような実験を基に構成した例である。
【0125】
なお、前記の実施形態の説明において、圧電帯は、例えば、振動発生装置を構成している。また、ベースシートは、例えば、第1シート部を構成している。また、圧電シート部は、例えば、圧電部を構成している。また、カバーシートは、例えば、第2シート部を構成している。また、孔は、例えば、空気層が形成された経路を構成している。また、駆動制御部は、例えば、駆動手段を構成している。
【0126】
(本実施形態の変形例等)
前記の実施形態の他の例として、圧電帯は、可撓性がある限り、前述した材料以外でも構成されることができる。また、圧電帯の形状も、前述した形状以外の形状で形成されることができる。
【0127】
また、前記の実施形態の他の例として、カバーシートに形成される空気層を形成する経路は、カバーシートの表裏面を貫通する経路であれば、孔以外の形状とされることもできる。
【0128】
また、前記の実施形態の他の例として、圧電帯は、20kHz以上の周波数で振動するように駆動制御されることもできる。例えば、20kHz未満の振動数だと、年齢が若い人にとっては耳障りになる場合がある。これに対して、20kHz以上の周波数で振動することで、その振動数が人間の可聴帯域外になるので、治療者は、治療中にその音が気にならなくなる。
【0129】
また、前記の第1の実施形態の他の例として、カバーシート12は、メッシュ状の布(ある程度の厚さのある布でも良い)とされることもでき、その場合、複数の孔12aは網目になる。
【0130】
また、前記の第2の実施形態の他の例として、カバーシート13には、孔13aが圧電帯30の長手方向で両端部に分かれて形成されることなく、当該カバーシート13の全体に形成されることもできる。
【0131】
また、前記の第3の実施形態の他の例として、ベースシート110は、布111上に厚みのあるフェルト112を貼り合わせた複合素材でなく、単一素材とされることもできる。この場合、例えば、カバーシート側にしわを作りながら縫製することで、凹凸形状がカバーシート側に形成される。
【0132】
また、前記の第3の実施形態の他の例として、ベースシート110、圧電シート部101、及びカバーシート102は、積層された状態で梯子状に縫う等、一定パターンで縫われているが、ランダムに縫われることもできる。このような場合でも、凹凸形状がベースシート110側に形成される。
【0133】
また、前記の第4の実施形態の他の例として、超音波出力装置1は、圧電帯10と駆動装置151とが、ジャック、プラグを介在させることなく、電気的に接続されることもできる。この場合、例えば、駆動装置151は、駆動をオン及びオフするスイッチを有する。
【0134】
また、前記の第4の実施形態の他の例として、シャツ1100自体が圧電帯とされることもできる。すなわち、第1~第5の本実施形態における圧電帯は、効果を発揮できる限り、形状が限定されない。
【0135】
また、本発明の実施形態を開示したが、当業者によっては本発明の範囲を逸脱することなく変更が加えられうることは明白である。すべてのこのような修正及び等価物が次の請求項に含まれることが意図されている。
【産業上の利用の可能性】
【0136】
屈曲性があり、薄く広い面積から超音波を出力する圧電帯は、ウエラブルな利用ができるので、医療施設などの業務用だけでなく家庭での手軽な利用が見込める。また、オーディオ分野では、音場と音質を向上させる装置、テレビの視聴では音を明瞭にする装置として利用できる。
【符号の説明】
【0137】
1 超音波出力装置,2 圧電装置、10,30,100 圧電帯、11,110 ベースシート、20,40,101 圧電シート部、12,31,102 カバーシート、12a,31a 孔、215 駆動制御部


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12