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特許7396696テキスタイル用柔軟剤、及びテキスタイル
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-04
(45)【発行日】2023-12-12
(54)【発明の名称】テキスタイル用柔軟剤、及びテキスタイル
(51)【国際特許分類】
   D06M 15/53 20060101AFI20231205BHJP
   D06M 13/17 20060101ALI20231205BHJP
【FI】
D06M15/53
D06M13/17
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2022004386
(22)【出願日】2022-01-14
(65)【公開番号】P2022165901
(43)【公開日】2022-11-01
【審査請求日】2022-01-14
(31)【優先権主張番号】63/177,072
(32)【優先日】2021-04-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17/533,175
(32)【優先日】2021-11-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】522019410
【氏名又は名称】グールストン テクノロジーズ インク
【氏名又は名称原語表記】GOULSTON TECHNOLOGIES,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】フェイ シン
(72)【発明者】
【氏名】スリニバサン ランガナサン
【審査官】大▲わき▼ 弘子
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-186575(JP,A)
【文献】特開平07-310280(JP,A)
【文献】特開2006-124879(JP,A)
【文献】特開昭63-249779(JP,A)
【文献】特開2005-344260(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06M13/00-15/715
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の化合物(A)と下記の架橋剤(B)とを含み、下記官能基(R1)と官能基(R2)との組み合わせは、カルボキシ基とイミノ基、アミノ基とエポキシ基、カルボキシ基とエポキシ基、イミノ基とエポキシ基、アミノ基とイソシアネート基、アミノ基とブロックドイソシアネート基、及びリン酸基又はリン酸エステル基とアミノ基から選ばれる少なくとも一種の組み合わせであり、前記官能基(R1)と官能基(R2)の当量比が1:0.1~20の範囲であり、フッ素系撥水剤を含まないことを特徴とするテキスタイル用柔軟剤。
化合物(A):分子中にポリオキシアルキレン鎖を有する非シリコーン系化合物であって、下記官能基(R2)と反応性を有する官能基(R1)を有し、1分子中の前記官能基(R1)数が3以上のものであり、質量平均分子量420以上10,000,000以下のものである化合物。
架橋剤(B):前記官能基(R1)と反応性を有する官能基(R2)を有する化合物。
【請求項2】
前記化合物(A)及び前記架橋剤(B)が、分子中にケイ素原子を有さないものである請求項1に記載のテキスタイル用柔軟剤。
【請求項3】
前記架橋剤(B)が、1分子中の官能基(R2)数が2以上のものであり、官能基(R1)の数と官能基(R2)数の合計が5以上となる組み合わせを含む請求項1又は2に記載のテキスタイル用柔軟剤。
【請求項4】
前記化合物(A)が、質量平均分子量4,000以上10,000以下のものである請求項1~3のいずれか一項に記載のテキスタイル用柔軟剤。
【請求項5】
前記架橋剤(B)が、官能基当量が10以上2000以下のものである請求項1~4のいずれか一項に記載のテキスタイル用柔軟剤。
【請求項6】
前記架橋剤(B)が、分子中にポリオキシアルキレン鎖を有する化合物である請求項1~5のいずれか一項に記載のテキスタイル用柔軟剤。
【請求項7】
前記ポリオキシアルキレン鎖が、ポリオキシメチレン鎖、ポリオキシエチレン鎖、ポリオキシプロピレン鎖、ポリオキシイソプロピレン鎖、ポリオキシブチレン鎖、又は、オキシメチレン、オキシエチレン、オキシプロピレン、オキシイソプロピレン、及びオキシブチレンから選ばれる2種以上のオキシアルキレンから成るポリオキシアルキレン鎖である請求項1~6のいずれか一項に記載のテキスタイル用柔軟剤。
【請求項8】
前記ポリオキシアルキレン鎖が、質量平均分子量400以上9000以下のものである請求項1~7のいずれか一項に記載のテキスタイル用柔軟剤。
【請求項9】
さらに、任意選択でシリコーン化合物又はシラン化合物を含み、テキスタイル用柔軟剤中の前記シリコーン化合物及びシラン化合物の含有割合の合計が40質量%以下である請求項1~8のいずれか一項に記載のテキスタイル用柔軟剤。
【請求項10】
前記シリコーン化合物及びシラン化合物の含有割合の合計が1質量%以下である請求項9に記載のテキスタイル用柔軟剤。
【請求項11】
ステープルファイバーテキスタイル用である請求項1~10のいずれか一項に記載のテキスタイル用柔軟剤。
【請求項12】
綿繊維テキスタイル用である請求項11に記載のテキスタイル用柔軟剤。
【請求項13】
請求項1~10のいずれか一項に記載のテキスタイル用柔軟剤における前記化合物(A)と前記架橋剤(B)との反応により形成された高分子化合物が付着していることを特徴とするテキスタイル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗濯耐久性を有するテキスタイル用柔軟剤、及びテキスタイルに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエステル等の繊維に対して、触感又は風合を改良するための種々の方法が知られている。従来より、主成分として例えば洗濯耐久性を有するシリコーン成分を含有する柔軟剤が使用されている。
【0003】
特許文献1は、(a)アミノ官能性重合体及び(b)アミノ官能性重合体の反応基と反応しうるシリコーン重合体を含んで且つ洗濯耐久性を有する柔軟剤で繊維を処理することを特徴とする繊維に柔らかさと風合を与える方法について開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許第5445652号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に開示される従来の洗濯耐久性を有する柔軟剤は、主成分としてシリコーン成分を含むため高い燃焼性を示し、難燃性に劣るという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記の課題を解決するべく研究した結果、特定の化合物(A)と架橋剤(B)を含有して成るテキスタイル用柔軟剤が正しく好適であることを見出した。
上記目的を達成するために、本発明の一態様であるテキスタイル用柔軟剤では、下記の化合物(A)と下記の架橋剤(B)とを含み、下記官能基(R1)と官能基(R2)との組み合わせは、カルボキシ基とイミノ基、アミノ基とエポキシ基、カルボキシ基とエポキシ基、イミノ基とエポキシ基、アミノ基とイソシアネート基、アミノ基とブロックドイソシアネート基、及びリン酸基又はリン酸エステル基とアミノ基から選ばれる少なくとも一種の組み合わせであり、前記官能基(R1)と官能基(R2)の当量比が1:0.1~20の範囲であり、フッ素系撥水剤を含まないことを要旨とする。
【0007】
化合物(A):分子中にポリオキシアルキレン鎖を有する非シリコーン系化合物であって、下記官能基(R2)と反応性を有する官能基(R1)を有し、1分子中の前記官能基(R1)数が3以上のものであり、質量平均分子量420以上10,000,000以下のものである化合物。
架橋剤(B):前記官能基(R1)と反応性を有する官能基(R2)を有する化合物。
【0008】
前記テキスタイル用柔軟剤において、前記化合物(A)及び前記架橋剤(B)が、分子中にケイ素原子を有さないものであってもよい。
前記テキスタイル用柔軟剤において、前記架橋剤(B)が、1分子中の官能基(R2)数が2以上のものであり、官能基(R1)の数と官能基(R2)数の合計が5以上となる組み合わせであってもよい。
【0009】
前記テキスタイル用柔軟剤において、前記化合物(A)が、質量平均分子量4,000以上10,000以下のものであってもよい。
【0010】
前記テキスタイル用柔軟剤において、前記架橋剤(B)が、官能基当量が10以上2000以下のものであってもよい。
前記テキスタイル用柔軟剤において、前記架橋剤(B)が、分子中にポリオキシアルキレン鎖を有する化合物であってもよい。
【0011】
前記テキスタイル用柔軟剤において、前記ポリオキシアルキレン鎖が、ポリオキシメチレン鎖、ポリオキシエチレン鎖、ポリオキシプロピレン鎖、ポリオキシイソプロピレン鎖、ポリオキシブチレン鎖、又は、オキシメチレン、オキシエチレン、オキシプロピレン、オキシイソプロピレン、及びオキシブチレンから選ばれる2種以上のオキシアルキレンから成るポリオキシアルキレン鎖であってもよい。
【0012】
前記テキスタイル用柔軟剤において、前記ポリオキシアルキレン鎖が、質量平均分子量400以上9000以下のものであってもよい。
前記テキスタイル用柔軟剤において、さらに、任意選択でシリコーン化合物又はシラン化合物を含み、テキスタイル用柔軟剤中の前記シリコーン化合物及びシラン化合物の含有割合の合計が40質量%以下であってもよい。
【0013】
前記テキスタイル用柔軟剤において、前記シリコーン化合物及びシラン化合物の含有割合の合計が1質量%以下であってもよい。
前記テキスタイル用柔軟剤において、ステープルファイバーテキスタイル用であってもよい。
前記テキスタイル用柔軟剤において、綿繊維テキスタイル用であってもよい
【0014】
記目的を達成するために、本発明の別の態様であるテキスタイルでは、前記テキスタイル用柔軟剤における前記化合物(A)と前記架橋剤(B)との反応により形成された高分子化合物が付着していることを要旨とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、テキスタイル用柔軟剤において難燃性を悪化させることなく洗濯耐久性を向上できる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<第1実施形態>
先ず、本発明に係るテキスタイル用柔軟剤(以下、柔軟剤ともいう)を具体化した第1実施形態について説明する。本実施形態の柔軟剤は、下記の化合物(A)と架橋剤(B)とを含み、フッ素系撥水剤を含まない。
【0017】
(化合物(A))
本発明において、化合物(A)は、分子中にポリオキシアルキレン鎖を有する非シリコーン系化合物であって、後述する官能基(R2)と反応性を有する官能基(R1)を有し、1分子中の前記官能基(R1)数が3以上のものであり、質量平均分子量420以上10,000,000以下のものである化合物である。また、官能基(R1)と後述する官能基(R2)との組み合わせは、カルボキシ基とイミノ基、アミノ基とエポキシ基、カルボキシ基とエポキシ基、イミノ基とエポキシ基、アミノ基とイソシアネート基、アミノ基とブロックドイソシアネート基、及びリン酸基又はリン酸エステル基とアミノ基から選ばれる少なくとも一種の組み合わせが適用される。以下、かかる構成から外れるものは参考例とする。
化合物(A)は、分子中にポリオキシアルキレン鎖を有する非シリコーン系化合物であって、架橋剤(B)との反応により、エーテル、エステル、又は含窒素化合物を生成可能な官能基(R1)を有する化合物である。化合物(A)は、1分子中の官能基(R1)数が2以上のものが好ましい。かかる構成により架橋剤(B)との反応により、繊維上により耐久性のある高分子化合物からなる被膜を形成できる。化合物(A)は、難燃性を向上させる観点から、分子中にケイ素原子を有さないものが好ましい。
【0018】
官能基(R1)としては、上述したように架橋剤(B)との反応により、エーテル、エステル、又は含窒素化合物を生成可能な官能基であれば特に限定されない。官能基(R1)の具体例としては、例えばアミノ基、カルボキシ基、ヒドロキシ基、エポキシ基、イソシアネート基、エステル基、リン酸基、リン酸エステル基、含硫黄酸基、含硫黄酸エステル基等が挙げられる。
【0019】
エステルの具体例としては、エステル結合として、例えばカルボン酸エステル、リン酸エステル、チオエステル等を有する化合物が挙げられる。
エーテルの具体例としては、例えばエーテル結合を有する化合物、チオエーテル結合を有する化合物であるスルフィド等が挙げられる。
【0020】
含窒素化合物の具体例としては、例えばアミド化合物、リン酸アミド化合物、スルホンアミド化合物、イミド化合物、ウレタン化合物、アミン化合物、ウレア化合物等が挙げられる。
【0021】
化合物(A)の主鎖にはポリオキシアルキレン鎖が含まれる。ポリオキシアルキレン鎖により、繊維の柔軟性向上に寄与する。化合物(A)のポリオキシアルキレン鎖を構成するオキシアルキレン単位としては、例えば炭素数1以上4以下のオキシアルキレン単位が挙げられる。ポリオキシアルキレン鎖は、一種類のオキシアルキレン単位から形成されてもよく、又は二種以上のオキシアルキレン単位が組み合わされて形成されてもよい。二種以上のオキシアルキレン単位が適用される場合、それらの付加形態は、ブロック付加、ランダム付加、及びブロック付加とランダム付加の組み合わせのいずれでもよく、特に制限はない。
【0022】
ポリオキシアルキレン鎖の具体例としては、例えばポリオキシメチレン鎖、ポリオキシエチレン鎖、ポリオキシプロピレン鎖、ポリオキシイソプロピレン鎖、ポリオキシブチレン鎖、又は、オキシメチレン、オキシエチレン、オキシプロピレン、オキシイソプロピレン、及びオキシブチレンの各単位から選ばれる2種以上のオキシアルキレンから成るポリオキシアルキレン鎖等が挙げられる。
【0023】
ポリオキシアルキレン鎖の質量平均分子量の下限は、特に限定されないが、好ましくは400以上、より好ましくは1000以上である。ポリオキシアルキレン鎖の質量平均分子量の上限は、特に限定されないが、好ましくは9000以下、より好ましくは7000以下である。上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。かかる数値範囲により、柔軟剤が付与された繊維の柔軟性を向上させる。また、化合物(A)を溶液に分散させた場合、溶液の安定性を向上させる。また、乳化剤を用いた場合、さらに安定性を向上させる。
【0024】
ポリオキシアルキレン鎖がアルキレンオキサイドを付加して形成される場合、アルキレンオキサイドの付加モル数の下限は、特に限定されないが、好ましくは10モル以上、より好ましくは25モル以上である。かかる付加モル数の上限は、特に限定されないが、好ましくは200モル以下、より好ましくは150モル以下である。上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。かかる数値範囲により、柔軟剤が付与された繊維の柔軟性を向上させる。また、化合物(A)を溶液に分散させた場合、溶液の安定性を向上させる。また、乳化剤を用いた場合、さらに安定性を向上させる。なお、アルキレンオキサイドの付加モル数は、仕込み原料中における官能基(R1)を有する化合物1モルに対するアルキレンオキサイドのモル数を示す。
【0025】
化合物(A)としては、例えば下記式(1)~(3)に示されるようなポリオキシアルキレン鎖を主鎖として、そのポリマー鎖の末端、途中、又はその両方に複数の官能基(R1)又は官能基(R1)を有する化合物が付加された化合物が挙げられる。
【0026】
R1-(オキシアルキレン基)-R1 (1)
[(オキシアルキレン基)-R1-(オキシアルキレン基)] (2)
R1-[(オキシアルキレン基)-R1-(オキシアルキレン基)]-R1 (3)
式(1)~(3)中におけるa~gは、それぞれ重合度を示す。
【0027】
また、化合物(A)としては、例えば官能基(R1)を有する化合物にポリオキシアルキレン鎖が付加した化合物、多価アルコールにポリオキシアルキレン鎖がエーテル結合し、さらに官能基(R1)を有する化合物がポリオキシアルキレン鎖に付加した化合物等が挙げられる。より具体的には、例えばポリオキシエチレンの両末端をベンゼン-1,2,4,5-テトラカルボン酸で封鎖した化合物、グリセロールポリプロポキシレートトリグリシジルエーテル、グリセリルポリ(オキシプロピレン)トリアミン等が挙げられる。
【0028】
これらは、一種の化合物(A)を単独で使用してもよく、2種以上の化合物(A)を組み合わせて使用してもよい。
化合物(A)の質量平均分子量の下限は、420以上、好ましくは4,000以上である。化合物(A)の質量平均分子量の上限は、10,000,000以下、好ましくは10,000以下である。上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。かかる範囲に規定することにより、繊維に対して効果的に柔軟性を付与できる。なお、質量平均分子量はゲル浸透クロマトグラフィー分析法(GPC)により、ポリスチレンを基準として測定できる。
【0029】
(架橋剤(B))
架橋剤(B)は、化合物(A)の官能基(R1)と反応性を有する官能基(R2)を有する。したがって、架橋剤(B)は、化合物(A)の官能基(R1)の種類によって、官能基(R1)と官能基(R2)とが反応性を有する化合物の中から適宜決定される。官能基(R2)の具体例としては、例えばアミノ基、イミノ基、カルボキシ基、無水カルボン酸基、ハロゲン化アシル基、カルボニル基、ヒドロキシ基、エポキシ基、エステル基、チオエステル基、リン酸基、リン酸エステル基、ホスホナート基、チオイソシアネート基、ブロックドイソシアネート基、イソシアネート基等が挙げられる。
【0030】
化合物(A)の官能基(R1)と架橋剤(B)の官能基(R2)との組み合わせの具体例としては、例えばカルボキシ基とアミノ基、カルボキシ基とヒドロキシ基、ヒドロキシ基の無水物とアミノ基、ヒドロキシ基の無水物とヒドロキシ基、アミノ基とエポキシ基、カルボキシ基とエポキシ基、カルボキシ基とイソシアネート基、アミノ基とイソシアネート基、カルボキシ基とブロックドイソシアネート基、アミノ基とブロックドイソシアネート基、エステル基とアミノ基、リン酸基又はリン酸エステル基とアミノ基、リン酸基とエポキシ基、含硫黄酸基又は含硫黄エステル基とアミノ基、含硫黄酸基又は含硫黄エステル基とエポキシ基等が挙げられる。
【0031】
架橋剤(B)は、1分子中の官能基(R2)数が2以上のものが好ましい。かかる構成により化合物(A)との反応により、繊維上により耐久性のある被膜を形成できる。さらに1分子中の官能基(R1)数及び官能基(R2)数がそれぞれ2以上であり、官能基(R1)の数と官能基(R2)数の合計が5以上となる組み合わせがより好ましい。かかる構成により化合物(A)との反応により、三次元網目構造を形成し、繊維上により耐久性のある被膜を形成できる。架橋剤(B)は、難燃性を向上させる観点から、分子中にケイ素原子を有さないものが好ましい。
【0032】
柔軟剤中における官能基(R1)と官能基(R2)の当量比は、1:0.1~20の範囲であり、1:0.5~10の範囲が好ましい。上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。かかる範囲に規定することにより、繊維上により耐久性のある被膜を形成できる。
【0033】
架橋剤(B)の官能基当量の下限は、特に限定されないが、好ましくは10以上、より好ましくは20以上である。架橋剤(B)の官能基当量の上限は、特に限定されないが、好ましくは2000以下、より好ましくは1500以下である。上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。かかる構成により化合物(A)との反応により、三次元網目構造を形成し、繊維上により耐久性のある被膜を形成できる。
【0034】
架橋剤(B)は、分子中にポリオキシアルキレン鎖を有する化合物であることが好ましい。ポリオキシアルキレン鎖としては、化合物(A)欄で記載の構成を採用できる。かかるポリオキシアルキレン鎖の構成により、柔軟剤が付着された繊維の柔軟性をより向上させる。
【0035】
(その他成分)
本実施形態の柔軟剤は、化合物(A)及び架橋剤(B)以外に、任意選択で難燃性を低下させない程度にシリコーン化合物又はシラン化合物を含んでもよい。シリコーン化合物又はシラン化合物を含む場合、シリコーン化合物及びシラン化合物の含有割合の合計は、水等の溶媒を除く柔軟剤中において40質量%以下、好ましくは1質量%以下である。
【0036】
さらに本発明の効果を阻害しない範囲内において、柔軟剤は、品質保持、反応性向上等を目的として、公知の添加剤を配合してもよい。添加剤としては、例えば水、乳化剤、触媒、溶剤、安定化剤、難燃剤等が挙げられる。
【0037】
(剤型)
本実施形態の柔軟剤の保存時における剤型は、特に限定されない。保存安定性を向上させる観点から、上述した化合物(A)を含む柔軟剤の第1剤と、上述した架橋剤(B)を含む柔軟剤の第2剤とを含む多剤型として構成することが好ましい。かかる構成により、保存時における配合成分の安定性を向上させ、使用時における化合物(A)と架橋剤(B)との反応性を向上させる。化合物(A)と架橋剤(B)との室温での反応性が十分に低い場合、柔軟剤は、化合物(A)及び架橋剤(B)を含む1剤型の柔軟剤として構成してもよい。
【0038】
<第2実施形態>
次に、本発明に係るテキスタイルを具体化した第2実施形態について説明する。
本実施形態のテキスタイルは、第1実施形態において説明した化合物(A)と架橋剤(B)とが繊維に付与され、化合物(A)と架橋剤(B)とが繊維上で反応して形成された架橋高分子化合物が付着しているテキスタイルである。化合物(A)と架橋剤(B)との反応により形成された架橋高分子化合物が繊維表面を被覆することにより、テキスタイルに柔軟性と洗濯耐久性を付与する。
【0039】
柔軟剤を繊維に付与する際の形態としては、希釈溶媒で希釈した希釈溶液、例えば低粘度鉱物油溶液、有機溶媒溶液、水性液等として付与されてもよい。柔軟剤は、安定性、化合物(A)と架橋剤(B)との反応性、取り扱い性等に優れる観点から水性液として調製されることが好ましい。水性液は、所定容量の水中に、上述した柔軟剤の第1剤及び柔軟剤の第2剤を添加し、混合する方法により製造してもよい。また、水性液は、まず上述した柔軟剤の第1剤の水性液及び柔軟剤の第2剤の水性液をそれぞれ調製し、使用時に混合する方法により製造してもよい。
【0040】
柔軟剤が付与される繊維は、ステープルファイバーであっても、織布であっても、不織布であってもよい。また、織布又は不織布を製造するための溶融紡績糸、延伸糸、繊維束等であってもよい。テキスタイルを構成する繊維は、合成繊維であっても、天然繊維であってもよい。繊維の種類は、特に制限はなく、例えば(1)ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリトリメチレンテレフタラート、ポリブチレンテレフタラート、ポリエチレンナフタラート、ポリ乳酸、これらのポリエステル系樹脂を含有して成る複合繊維等のポリエステル系繊維、(2)ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド系繊維、(3)ポリアクリル、モダアクリル等のポリアクリル系繊維、(4)ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系繊維、(5)綿繊維、レーヨン繊維、ウール等の天然繊維、これら複数の種類の混紡等が挙げられる。
【0041】
上記のように得られた水性液等の柔軟剤の希釈溶液は、公知の方法を用いて繊維に付与される。繊維に付与する方法は、特に制限はなく、例えばローラー給油法、ガイド給油法、浸漬給油法、スプレー給油法等が挙げられる。
【0042】
柔軟剤を繊維に付着させる割合に特に制限はないが、繊維に対して、水等の希釈溶媒を除く柔軟剤として0.1質量%以上4.0質量%以下の割合となるよう付着させることが好ましい。かかる構成により、柔軟性付与効果を効率的に発揮させる。
【0043】
次に、柔軟剤が付与された繊維は、好ましくは100℃以上250℃以下の条件下で加熱処理される。加熱時間は、処理温度等により適宜設定されるが、好ましくは1~20分間、より好ましくは5~10分間である。かかる加熱処理により、化合物(A)と架橋剤(B)との反応を促進させ、繊維上に耐久性のある架橋高分子化合物からなる被膜が形成される。被膜が形成された繊維は、さらに室温等の保存環境下において、ポストキュアリングにより後硬化処理を行ってもよい。かかる構成により、より耐久性のある架橋高分子化合物からなる被膜が形成される。ポストキュアリングの期間は、温度条件、生産性等によって適宜設定されるが、好ましくは1~30日間、より好ましくは7~14日間である。
【0044】
上述した実施形態の柔軟剤及びテキスタイルの作用及び効果について説明する。
上述した実施形態の柔軟剤は、架橋剤(B)と、分子中にポリオキシアルキレン鎖を有する非シリコーン系化合物であって、架橋剤(B)との反応により、エーテル等を生成可能な官能基(R1)を有する化合物(A)とを含むよう構成した。主成分としてシリコーン成分を含まないため難燃性を悪化させることがないテキスタイルが得られる。また、柔軟性、洗浄耐久性に優れるテキスタイルが得られる。
【0045】
実施例
以下、本発明の構成及び効果をより具体的にするため、実施例等を挙げるが、本発明がこれらの実施例に限定されるというものではない。尚、以下の実施例及び比較例において、部は質量部を、また%は質量%を意味する。
【0046】
試験区分1(テキスタイルの調製)
表4に示される各柔軟剤により、テキスタイルに相当するポリエステルステープル上に架橋高分子化合物の被膜を形成した各実施例、比較例のポリエステルステープルを調製した。
【0047】
表4に示される各柔軟剤は、組成物(P-1)~(P-31)、(rP-1)、必要により添加されるシリコーン化合物(rA-1)から構成される。組成物(P-1)~(P-31)、組成物(rP-1)は、表3に示される比率で化合物(A)、架橋剤(B)、必要により触媒(C)を含有する。
【0048】
各実施例、比較例のポリエステルステープルの調製方法を以下に示す。
(実施例1)
まず、イオン交換水を撹拌しながら、表1に示される化合物(A-1)が最終的に1.2部(%)となるように徐々に添加し、分散させた分散処理液Aを準備した。同様に、イオン交換水を撹拌しつつ、表2に示される架橋剤(B-1)が最終的に1.2部(%)となるように徐々に添加し、分散させた分散処理液Bを準備した。ポリエステルステープルに付与する直前に、表3に示される組成物(P-1)の比率で、化合物(A-1)の分散処理液Aを82.3部と架橋剤(B-1)の分散処理液Bを17.7部とを混合し、柔軟剤分散処理液を調製した。柔軟剤分散処理液にポリエステルステープル(15デニール×64mm)を浸漬した。このとき、ポリエステルステープル10部に対し、柔軟剤分散処理液が10部付着する様に絞り、余分な柔軟剤分散処理液を除去した。なお、柔軟剤分散処理液中の柔軟剤(純分)の濃度1.2%とポリエステルステープルに付着される付着量1.2%owfが一致するように調整した。
【0049】
その後、自然乾燥させ熱硬化処理前の繊維試料とした。130℃に調温した熱風オーブンに繊維試料を10分間放置することで熱硬化処理を行った。繊維上に架橋高分子化合物の被膜が形成された実施例1のポリエステルステープルを得た。
【0050】
(実施例2~17,19~21)
表3,4に示される組成物(P-2)~(P-16),(P-20)をそれぞれ使用した。柔軟剤分散処理液中の柔軟剤(純分)の濃度及びポリエステルステープルへの柔軟剤の付着量は表4に示される各量とした。それ以外は、実施例1と同様の方法にて、ポリエステルステープルを調製した。
【0051】
(実施例18)
表3,4に示される組成物(P-19)を使用した。また、ポリエステルステープルへの柔軟剤の付着量が表4に示される付着量とした。
【0052】
イオン交換水を撹拌しながら、表1に示される化合物(A-3)が最終的に0.7部(%)となるように徐々に添加し、分散させた分散処理液Aを準備した。同様に、イオン交換水を撹拌しつつ、表2に示される架橋剤(B-1)が最終的に0.7部(%)となるように徐々に添加し、分散させた分散処理液Bを準備した。さらにイオン交換水を撹拌しつつ、表3に示される触媒(C-1)が最終的に0.7部(%)となるように徐々に添加し、分散させた分散処理液Cを準備した。ポリエステルステープルに付与する直前に、表3に示される組成物(P-19)の比率で、化合物(A-3)の分散処理液Aを70部と、架橋剤(B-1)の分散処理液Bを28部と、触媒(C-1)の分散処理液Cを2部とを混合し、柔軟剤分散処理液を調製した。得られた柔軟剤分散処理液中の柔軟剤(純分)の濃度は、0.7%となる。それ以外は、実施例1と同様の方法にて、ポリエステルステープルを調製した。
【0053】
(実施例22)
表3,4に示される組成物(P-23)及びシリコーン化合物(rA-1)を使用した。また、ポリエステルステープルへの柔軟剤の付着量が表4に示される付着量とした。
【0054】
まず、25℃のイオン交換水に化合物(A-3)を0.0929部(%)と、架橋剤(B-7)を0.0066部(%)と、シリコーン化合物(rA-1)が40%含まれる溶液0.00125部(%)を徐々に添加し、分散させた柔軟剤分散処理液を調製した。得られた柔軟剤分散処理液中の柔軟剤(純分)の濃度は、0.1%となる。それ以外は、実施例1と同様の方法にて、ポリエステルステープルを調製した。
【0055】
(実施例23~30)
表3,4に示される組成物(P-23),(P-29)~(P-31)をそれぞれ使用した。また、柔軟剤分散処理液中の柔軟剤(純分)の濃度及びポリエステルステープルへの柔軟剤の付着量は表4に示される各量とした。それ以外は、実施例22と同様の方法にて、ポリエステルステープルを調製した。
【0056】
(比較例1)
表3,4に示される組成物(rP-1)を使用した。また、ポリエステルステープルへの柔軟剤の付着量は表4に示される付着量とした。すなわち、25℃のイオン交換水にシリコーン化合物(rA-1)が40%含まれる溶液を0.95部(%)と、架橋剤(rB-1)を0.02部(%)とを徐々に添加し、分散させた柔軟剤分散処理液を調製した。得られた柔軟剤分散処理液中の柔軟剤(純分)の濃度は、0.4%となる。それ以外は、実施例22と同様の方法にて、ポリエステルステープルを調製した。
【0057】
各例のポリエステルステープルの調製で使用した化合物(A)について、化合物(A)中のポリオキシアルキレン鎖の種類及び質量平均分子量、官能基(R1)の種類及び化合物(A)中の数、化合物(A)の質量平均分子量を、表1の「ポリオキシアルキレン鎖」欄、「官能基(R1)」欄、「質量平均分子量」欄にそれぞれ示す。
【0058】
また、各例のポリエステルステープルの調製で使用した架橋剤(B)について、官能基(R2)の種類及び架橋剤(B)中の数、架橋剤(B)中のポリオキシアルキレン鎖の種類及び質量平均分子量、官能基当量、架橋剤(B)の質量平均分子量を、表2の「官能基(R2)」欄、「ポリオキシアルキレン鎖」欄、「官能基当量」欄、「質量平均分子量」欄にそれぞれ示す。
【0059】
また、各例のポリエステルステープルの調製で使用した組成物(P)について、化合物(A)の種類及び組成物(P)中における比率、架橋剤(B)の種類及び組成物(P)中における比率、組成物(P)中における官能基(R1)と官能基(R2)の当量比、触媒(C)の種類及び組成物(P)中における比率を、表3の「化合物(A)」欄、「架橋剤(B)」欄、「官能基」欄、「触媒(C)」欄にそれぞれ示す。
【0060】
また、各例のポリエステルステープルの調製で使用した柔軟剤について、組成物(P)の種類及び柔軟剤中における比率、シリコーン化合物の種類及び柔軟剤中における比率、柔軟剤(溶媒としての水を除く純分)のポリエステルステープルへの付着量(%owf)、柔軟剤分散処理液中の柔軟剤(溶媒としての水を除く純分)の濃度(%)を、表4の「組成物(P)」欄、「シリコーン化合物」欄、「柔軟剤付着量」欄、「柔軟剤濃度」欄にそれぞれ示す。なお、柔軟剤中の組成物(P)及びシリコーン化合物の比率は、水を除く純分の量で示される。
【0061】
【表1】
【0062】
【表2】
【0063】
【表3】
【0064】
【表4】
【0065】
表1~4に記載する化合物(A)、架橋剤(B)、触媒(C)、その他成分の詳細は以下のとおりである。
(化合物(A))
A-1:ポリオキシエチレンの両末端をベンゼン-1,2,4,5-テトラカルボン酸で封鎖した化合物
A-2:グリセロールポリプロポキシレートトリグリシジルエーテル
A-3:グリセリルポリ(オキシプロピレン)トリアミン
(架橋剤(B))
B-1:ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールの繰り返し単位は3
B-2:分岐ポリエチレンイミン(繰り返し単位:-(CH-CH-NH)-(10<n<10))
B-3:分岐ポリエチレンイミン
B-4:分岐ポリエチレンイミン
B-5:ポリ(アリルアミン)
B-6:ソルビトールポリグリシジルエーテル
B-7:(5-エチル-2-メチル-1,3,2-ジオクサリン酸-5-イル)メチルジメチルホスホナートP-オキシドと、ビス[(5-エチル-2-メチル-1,3,2-ジオクサリン酸-5-イル)メチル]メチルホスホナートP,P’-ジオキシド(2:1質量比)
B-8:ブロックドポリイソシアネート(NCO含有率=12.5質量%)
rB-1:シラン系架橋剤(グールストン テクノロジーズ インク社製、製品名ルロールPS-662)
(触媒(C))
C-1:2-ピペラジン-1-イル-エチルアミン
(その他成分)
rA-1:シリコーン系化合物(グールストン テクノロジーズ インク社製、製品名ルロールPS-12186)
試験区分2(後硬化処理(ポストキュアリング))
製造ラインで給油及び熱硬化処理を行う事で得られたポリエステルステープルを、さらに室温で2週間放置した。
【0066】
表4の「後硬化処理」欄において、後硬化処理を行ったものを「有」、後硬化処理を行わなかったものを「無」として示す。
試験区分3(洗浄前柔軟性)
得られた各例のポリエステルステープルの試料を用いて、洗浄前柔軟性(触感)及び洗浄前柔軟性(SPF)の評価を行った。
【0067】
・洗浄前柔軟性(触感)
触感について、評価者3名がポリエステルステープルの表面状態を手での触感を以下の基準で評価することにより、触感が優れるか否かについて判断した。触感が非常に優れる場合を5点、触感が優れる場合を4点、触感が良好な場合を3点、触感がやや悪い場合を2点、及び触感が悪い場合を1点の5段階で採点した。
【0068】
各評価者の採点結果について平均値を算出した。平均値が4.6点以上を「優れる:5」、3.6点以上4.6点未満を「良好:4」、2.6点以上3.6点未満を「可:3」、1.6点以上2.6点未満を「やや不良:2」、及び1.6点未満を「不良:1」とし、評価結果とした。結果を表4の洗浄前柔軟性の「触感」欄に示す。
【0069】
・洗浄前柔軟性(SPF)
ポリエステルステープルの柔軟性は、インストロンテスターを用いたステープルパッド摩擦試験を行って評価した。かかる試験は、B.S. Gupta, Friction in Textile Materials, Chapter 5, page 216-217, published by Woodhead Publishing Limited, Year 2008に準じて行った。
【0070】
まず、得られたポリエステルステープルの試料を、開繊し、パッド状にされたのち、試料台に設置される。試料の上には荷重を持った擦過体が設置され、この擦過体を引っ張り発生する摩擦を測定し得られる摩擦係数(すなわちstaple pad friction,SPF)を測定する。なお、高いSPF値は、手触りが悪い事を示し、低いSPF値は、ステープルが柔軟である事を示す。測定値を表4の洗浄前柔軟性の「SPF」欄に示す。
【0071】
試験区分4(洗浄後柔軟性)
試験区分3の柔軟性を評価した後、下記に示される洗浄を行い、洗浄後の柔軟性を評価した。
【0072】
洗浄方法は、AATCC-61規格に準じた方法で行った。柔軟剤を付与したポリエステルステープルの各試料を、表4の「洗浄温度」欄に示される洗浄温度(40℃、60℃、又は90℃)でランドリーOメーターを使用し加速洗浄方法で洗浄した。洗浄水の体積に対する試料の質量の比率は100:1であった。
【0073】
45分間の洗浄時間を、1サイクルあたり9分の5サイクルに分け、最初のサイクルでは、0.15質量%のAATCC標準洗剤1993イオン交換水を添加した洗浄液を利用した。
【0074】
最初のサイクルの後、試料をシリンダーから取り出し、できるだけ液体を取り除くために絞った。2サイクル目も1サイクル目と同様の処理を行った。残りの3サイクルは、イオン交換水のみを使用し、同様に処理を行った。洗浄後、試料は風乾により乾燥させた。
【0075】
得られた洗浄後の各試料について、洗浄前柔軟性(触感)及び洗浄前柔軟性(SPF)と同様の方法にて、触感を評価し、SPFを測定した。結果を表4の洗浄5回後柔軟性の「触感」欄及び「SPF」欄にそれぞれ示す。
【0076】
試験区分5(難燃性)
難燃性試験は、BS-5852規格に基づいて行われる。ポリエステルステープルの各試料は、25℃の環境温度で160mL/分のガス流量の点火源によって40秒間、燃焼させられる。その後、点火源を除去し、試料が燃焼し続ける時間を測定した。下記の基準に基づいて難燃性を評価した。
【0077】
難燃性の評価基準
合格:試料が燃焼し続ける時間が120秒未満の場合
不合格:試料が燃焼し続ける時間が120秒以上の場合
(その他)
上述した実施例1は、まず化合物(A)と架橋剤(B)をそれぞれ別々の水性液として調製し、次に使用直前に混合することにより柔軟剤分散処理液を調製した。
【0078】
一方、化合物(A)と架橋剤(B)とを同じ容器中に同時に水に投入することにより、柔軟剤分散処理液を調製した場合であっても、すぐに繊維に付着させる場合には、実施例1と同様の評価が得られることを確認している。
【0079】
表4の比較例に対する各実施例の評価結果からも明らかなように、本発明によると、難燃性に優れる柔軟剤が得られる。また、洗浄耐久性に優れ、柔軟性に優れる被膜が形成される。