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特許7396702光触媒を生成する方法及びNOxの分解における光触媒の使用
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  • 特許-光触媒を生成する方法及びNOxの分解における光触媒の使用 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-04
(45)【発行日】2023-12-12
(54)【発明の名称】光触媒を生成する方法及びNOxの分解における光触媒の使用
(51)【国際特許分類】
   B01J 35/02 20060101AFI20231205BHJP
   B01J 23/20 20060101ALI20231205BHJP
   B01J 37/08 20060101ALI20231205BHJP
   B01J 27/18 20060101ALI20231205BHJP
   B01D 53/86 20060101ALI20231205BHJP
【FI】
B01J35/02 J ZAB
B01J23/20 M
B01J37/08
B01J27/18 M
B01D53/86 222
【請求項の数】 10
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022033056
(22)【出願日】2022-03-04
(65)【公開番号】P2023128609
(43)【公開日】2023-09-14
【審査請求日】2022-03-04
(73)【特許権者】
【識別番号】506255902
【氏名又は名称】中原大學
(74)【代理人】
【識別番号】100167689
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 征二
(72)【発明者】
【氏名】ワング, ヤー・フェン
(72)【発明者】
【氏名】ユー, シェング・ジー
(72)【発明者】
【氏名】サニトー, クリスチャンソン・レイナード
【審査官】森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-252983(JP,A)
【文献】特開2014-171993(JP,A)
【文献】特開2004-075445(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第108325547(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 35/02
B01J 23/20
B01J 37/08
B01J 27/18
B01D 53/86
JSTPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
NOxを分解する光触媒を生成する方法であって、
(a)二酸化チタンを1:10(w/v)の比率でと混合して第1混合物を生成するステップと、
(b)ブタの骨に由来する粉をステップ(a)の前記第1混合物と混合して第2混合物を生成するステップであって、前記骨粉及び前記二酸化チタン1:1(w/w)の重量比で前記第2混合物中に存在する、ステップと、
(c)ステップ(b)の前記第2混合物を加熱して脱水生成物を生成するステップと、
(d)ステップ(c)の前記脱水生成物をか焼して前記光触媒を生成するステップと、
を備える方法。
【請求項2】
前記ステップ(c)において、前記ステップ(b)の前記第2混合物を少なくとも12時間100℃で加熱する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ステップ(d)において、ステップ(c)の前記脱水生成物を1~5時間400~1150℃でか焼する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ステップ(d)において、ステップ(c)の前記脱水生成物を2時間400~500℃でか焼する、請求項に記載の方法。
【請求項5】
ステップ(b)の前に、前記骨粉又は殻粉末を1~5時間400~500℃でか焼するステップをさらに備える請求項1に記載の方法。
【請求項6】
サンプル中のNOxを分解する方法であって、
(i)前記サンプルを請求項1からのいずれか一項の方法によって生成される光触媒と混合するステップと、
(ii)ステップ(i)の前記混合物を太陽光又は可視光で少なくとも5分間照射するステップと、
を備える方法。
【請求項7】
前記ステップ(ii)を湿度30~70%で実施する、請求項に記載の方法。
【請求項8】
前記ステップ(ii)を湿度40%で実施する、請求項に記載の方法。
【請求項9】
前記ステップ(ii)の後、前記サンプル中の前記NOxが1.8百万分率(ppm)以下のレベルに分解される、請求項に記載の方法。
【請求項10】
前記ステップ(ii)の後、前記サンプル中の前記NOxが500十億分率(ppb)以下のレベルに分解される、請求項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、光触媒、より具体的には、骨粉又は殻粉末から光触媒を生成する方法及び窒素酸化物のような大気汚染物質の分解におけるその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
窒素酸化物(NOx)は、燃料燃焼による主要な汚染物質として認識される化合物のファミリーを表し、一酸化窒素(NO)、二酸化窒素(NO)、三酸化二窒素(N)、亜酸化窒素(NO)などの異なる形態で見られ得る。これらの汚染物質は大気質を低下させ、人間の健康を脅かす。低レベルのNOxは、目、鼻、喉及び肺を刺激して咳、息切れ、疲労感及び吐き気をもたらすことがあり、高レベルのNOxを吸うことは、喉及び上気道における組織の急速な炎症、けいれん及び腫れ、組織の酸素化の低下、肺における体液貯留並びに死さえも引き起こすことがあることが知られている。
【0003】
光触媒は、NOx問題に対処するように使用されている。しかし、光触媒のほとんどは、太陽光スペクトルの約4%のみを占める紫外(UV)光にしか反応しない。可視光駆動の光触媒のいくつかの報告はあるが、そのような光触媒の光触媒有効性は、いずれの実践的使用に対してもまだ低すぎる。光触媒に金属又は非金属イオンをドープすることが、光触媒有効性を改善し得ることが報告されている。それでもなお、ドーピング手順は時間がかかり、製造コストを大幅に増加させ得る。
【0004】
上述を鑑み、関連技術において、大気汚染物質、特にNOxを効率的に分解可能な光触媒を生成する経済的に効率的な方法に対するニーズが存在する。
【発明の概要】
【0005】
以下に、基本的な理解を読者に与えるために本開示の簡略化した概要を提示する。この概要は、開示の網羅的な概観ではなく、本発明の鍵となる/重要な要素を特定するものでも本発明の範囲を記するものでもない。その専らの目的は、ここに開示される幾つかの概念を、後述のさらに詳細な説明の序章としての簡略な形態で提示することである。
【0006】
ここで具現化され、概括的に記載されるように、本開示は、窒素酸化物(NOx)を分解する新規の光触媒を提供することを目的とする。本開示の特定の実施形態によると、NOxは、NO、NO、N、NO又はそれらの組合せであり得る。特定の例示的な実施形態によると、NOxは、NO及びNOの混合物である。
【0007】
したがって、本開示の第1の態様は、NOxを分解する光触媒を生成する方法に向けられる。本開示のいくつかの実施形態によると、方法は、
(a)遷移金属又はその酸化物を1:10(w/v)の比率で溶媒と混合して第1混合物を生成するステップと、
(b)骨粉又は殻粉末をステップ(a)の第1混合物と混合して第2混合物を生成するステップであって、骨粉又は殻粉末及び遷移金属又はその酸化物が0.1:1~10:1(w/w)の重量比で第2混合物中に存在する、ステップと、
(c)ステップ(b)の第2混合物を加熱して脱水生成物を生成するステップと、
(d)ステップ(c)の脱水生成物をか焼して光触媒を生成するステップと、を備える。
【0008】
いくつかの実施形態によると、遷移金属はチタン又は亜鉛である。
【0009】
本開示の特定の実施形態によると、ステップ(b)において、骨粉を二酸化チタンと1:1の重量比で混合する。他の実施形態によると、ステップ(b)において、殻粉末を二酸化チタンと0.5:1~2:1の重量比で混合する。
【0010】
いくつかの実施形態によると、ステップ(c)において、ステップ(b)の第2混合物を少なくとも12時間100℃で加熱する。
【0011】
本開示の特定の実施形態によると、ステップ(d)において、ステップ(c)の脱水生成物を1~5時間400~1150℃でか焼する。特定の好適な実施形態によると、脱水生成物を2時間400~500℃でか焼する。
【0012】
本開示のいくつかの実施形態によると、骨粉をトリ、アヒル、ブタ、ウシ、ヒツジ、ロバ又はウマの骨を粉砕することによって生成する。好ましくは、骨粉はトリ又はブタの骨に由来する。本開示の他の実施形態では、殻粉末をエビ、カニ、二枚貝、フジツボ、カタツムリ、アワビ又はカキの殻を粉砕することによって生成する。特定の例示的な実施形態によると、殻粉末は、二枚貝の殻に由来する。
【0013】
代替的又は任意選択的に、方法は、ステップ(b)の前に、骨粉又は殻粉末を1~5時間400~500℃でか焼するステップをさらに備え得る。
【0014】
他の態様では、本開示は、サンプル中のNOxを分解する方法に向けられる。方法は、(i)サンプルを本開示の方法によって生成される光触媒と混合するステップと、(ii)ステップ(i)の混合物を太陽光又は可視光で少なくとも5分間照射するステップと、を備える。
【0015】
本開示のいくつかの実施形態によると、ステップ(ii)を、湿度30~70%で実施する。特定の好適な実施形態では、ステップ(ii)を湿度40%で実施する。
【0016】
特定の実施形態によると、ステップ(ii)の後、サンプル中のNOxは、1.8百万分率(ppm)以下のレベルに分解される。いくつかの効果的な実施例によると、サンプル中のNOxは、500十億分率(ppb)以下のレベルに分解される。
【0017】
発明の1以上の実施形態の詳細を、以下の付随する説明において説明する。発明の他の特徴及び有利な効果が、詳細な説明から、及び特許請求の範囲から明らかとなる。
【0018】
本説明は、添付図面に照らして読まれる以下の詳細な説明からより深く理解される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、本開示の実施例2.2による、本光触媒によるNOxの分解を示す折れ線グラフである。ZnO@Pb、ZnO@Cb、TiO@Pb及びTiO@CbのNOx分解有効性をパネルAに示し、MmTi 2:1(2:1の重量比でTiOがドープされた殻粉末)、MmTi 1:1(1:1の重量比でTiOがドープされた殻粉末)及びMmTi 0.5:1(0.5:1の重量比でTiOがドープされた殻粉末)のNOx分解有効性をパネルBに示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
添付図面との関連で以下に与えられる詳細な説明は、本実施例の説明としてのものであり、本実施例が構成又は利用され得る形態のみを示すものではない。その記載は、実施例の機能及び実施例を構成して動作させるためのステップの配列を説明する。ただし、同一又は同等の機能及び配列が、異なる実施例によっても実現され得る。
【0021】
I.定義
便宜上、本明細書、実施例及び添付の特許請求の範囲において採用される特定の用語をここにまとめる。ここに特に断りがない限り、本開示で採用される科学的及び技術的用語は、当業者に一般に理解及び使用される意味を有するものである。また、文脈上特に要件とされない限り、単数形の用語はその複数形を含むものとし、複数形の用語は単数形を含むものとする。具体的には、ここで及び特許請求の範囲で使用されるように、単数形「a」及び「an」は、そうでないことを文脈が明示しない限り、複数の参照を含む。また、ここで及び特許請求の範囲で使用されるように、用語「少なくとも1つ」及び「1以上」は、同じ意味を有し、1、2、3又はそれ以上を含む。
【0022】
発明の広い範囲を説明する数値範囲及びパラメータは概数であるものの、具体的な実施例で説明される数値は可能な限り厳密に報告される。ただし、いずれの数値も、それぞれの試験測定値に見られる標準偏差から必然的にもたらされる特定の誤差を本来的に含む。また、ここで使用されるように、用語「約」は、所与の値又は範囲の10%、5%、1%又は0.5%内を一般に意味する。あるいは、用語「約」は、当業者によって考慮される場合の平均の許容標準誤差内を意味する。有効な/効果的な実施例以外においても、又は明示の断りがない限り、ここに開示されるその材料の量、継続時間、温度、動作条件、量の比率などに対するものなどの数値範囲、量、値及び割合の全ては、いずれの場合においても用語「約」によって変更されるものとして理解されるべきである。したがって、逆のことが示されない限り、本開示及び添付の特許請求の範囲で説明される数値パラメータは、所望のように変化し得る概数である。少なくとも、各数値パラメータは、報告される有効数字の数を考慮してかつ通常の四捨五入手段を適用して少なくとも解釈されるべきである。
【0023】
ここで使用されるように、用語「光触媒」とは、工程中に消費されることなく光反応を促進する材料のことをいう。本開示では、光反応は、太陽光又は可視光によって、光触媒の表面上で起こる酸化還元反応を介して活性化される。
【0024】
ここで使用されるように、用語「窒素酸化物(NOx)」とは、酸素及び窒素の二元化合物又はそのような化合物の混合物のことをいう。NOxの例は、一酸化窒素(NO)、二酸化窒素(NO)、三酸化窒素(NO)、亜酸化窒素(NO)、三酸化二窒素(N)などを含むが、これに限定されない。ここで使用されるように、用語「窒素酸化物」は、天然源、自動車両及び他の燃料燃焼工程により生成される気体であるNO及びNOの混合物を説明することを目的とする。
【0025】
ここで使用されるように、用語「太陽光」とは、太陽によってもたらされるすべての電磁放射線のことをいう。太陽の電磁放射線のスペクトルは、100nm~1mmに及ぶ。したがって、ここで使用されるように、用語「太陽光」とは、太陽と同一又は類似のスペクトルを与える任意の光源のことをいう。スペクトルは、UV光(100nm~400nm)、可視光(400nm~700nm)及び赤外光(700nm~1mm)を含む3領域に分割され得る。UVは、UVA(315nm~400nm)、UVB(280nm~315nm)及びUVC(100nm~280nm)にさらに分類され得る。
【0026】
ここで使用されるように、用語「か焼(calcination)」とは、固体を、酸素無し又は酸素の限定供給の状態で高温で加熱して、その不純物及び/若しくは揮発性物質を除去し、並びに/又は熱分解を誘導する工程のことをいう。一般に、反応は、制御された量の空気とともに摂氏550~1150度(℃)又は華氏1000~2100度(°F)の温度で行われる。
【0027】
ここで使用されるように、用語「遷移金属」とは、部分的に満たされたdサブシェルを有し、又は不完全なdサブシェルを有するカチオンを生じさせ得る元素のことをいう。遷移金属は2以上の酸化状態を示すその能力を特徴とし、複数の酸化状態を採用するその能力は有機化合物を分解するその可能性に対する主な理由である。
【0028】
ここで使用されるように、用語「骨粉」とは、任意の骨の粉末のことをいう。本開示の実施形態によると、骨粉は、動物、特にブタ、トリ、ロバ、ウシ、ヒツジ、ウマ、イヌ、ネコ、ウサギ又はラクダなどの経済動物に由来する骨を粉砕することによって生成される。本開示の特定の実施形態によると、骨粉は、トリの骨又はブタの骨に由来する。
【0029】
ここで使用されるように、「殻粉末」とは、任意の殻の粉末のことをいう。本開示の実施形態によると、殻粉末は、軟体動物、甲殻類、カメ、リクガメ及び棘皮動物を含むがこれに限定されない殻を有する任意の動物の殻を粉砕することによって生成される。動物の例示的な種は、エビ、カニ、二枚貝、フジツボ、カタツムリ、アワビ、イガイ及びカキであり得る。本開示の例示的な一実施形態によると、殻粉末は、二枚貝の殻に由来する。
【0030】
II.本発明の説明
本開示は、光触媒を生成する経済的に効率的な方法を提供することを目的とする。複雑な光化学工程を含み、高価でありかつ時間のかかる従来の方法と比較して、本方法は、骨粉(例えば、動物の骨に由来する粉末)、殻粉末(例えば、二枚貝の殻に由来する粉末)及び遷移金属を反応物として使用することを特徴とし、加熱及びか焼ステップのみが必要とされるように工程全体が比較的単純であり、したがって触媒を生成する費用を大幅に低減する。
【0031】
したがって、本開示の第1の態様は、環境中のNOxを分解するのに有用な光触媒を生成する方法に向けられる。方法は、(a)遷移金属又はその酸化物を溶媒と混合して第1混合物を生成するステップ、(b)骨粉又は殻粉末を第1混合物と混合して第2混合物を生成するステップ、(c)第2混合物を加熱して脱水生成物を生成するステップ、及び(d)脱水生成物をか焼して光触媒を生成するステップを備える。
【0032】
ステップ(a)において、遷移金属又はその酸化物を溶媒と1:10(w/v)の比率で混合して第1混合物を生成する。特定の実施形態によると、溶媒は、材料(例えば、骨粉、殻粉末及び遷移金属又はその酸化物)を均一に懸濁する当技術分野で既知の任意の溶媒であり得る。本方法において使用するのに適した溶媒は、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール及びブタノール)又は水であり得る。いくつかの効果的な実施例によると、溶媒は水である。
【0033】
そして、ステップ(b)において、骨粉又は殻粉末をステップ(a)の第1混合物と混合して第2混合物を生成する。第2混合物では、骨粉及び遷移金属又はその酸化物を0.1:1~10:1(w/w)の重量比で、例えば、0.1:1、0.2:1、0.3:1、0.4:1、0.5:1、0.6:1、0.7:1、0.8:1、0.9:1、1:1、1.5:1、2:1、2.5:1、3:1、3.5:1、4:1、4.5:1、5:1、5.5:1、6:1、6.5:1、7:1、7.5:1、8:1、8.5:1、9:1、9.5:1又は10:1(w/w)の重量比で混合する。好適な実施形態によると、骨粉を遷移金属又はその酸化物と1:1(w/w)の重量比で混合する。
【0034】
他の実施形態によると、第2混合物において、殻粉末及び遷移金属又はその酸化物を0.1:1、0.2:1、0.3:1、0.4:1、0.5:1、0.6:1、0.7:1、0.8:1、0.9:1、1:1、1.5:1、2:1、2.5:1、3:1、3.5:1、4:1、4.5:1、5:1、5.5:1、6:1、6.5:1、7:1、7.5:1、8:1、8.5:1、9:1、9.5:1又は10:1(w/w)の重量比で混合する。特定の好適な実施形態によると、殻粉末を遷移金属又はその酸化物と0.5:1~2:1(w/w)の重量比で混合する。いくつかの効果的な実施例によると、殻粉末を遷移金属又はその酸化物と0.5:1、1:1又は2:1(w/w)の重量比で混合する。
【0035】
好ましくは、遷移金属又はその酸化物及び骨粉又は殻粉末を溶媒に添加し、続いて、反応物(すなわち、遷移金属又はその酸化物及び骨粉又は殻粉末)を溶液中に均一に分布させるために、室温で少なくとも4時間撹拌する(例えば、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10、10.5、11、11.5若しくは12時間又はそれ以上撹拌する)。本開示の特定の実施例によると、反応物の混合物を4時間撹拌する。
【0036】
本開示のいくつかの実施形態によると、骨粉を、動物、特にトリ、アヒル、ブタ、ウシ、ヒツジ、ロバ、ウマ、ウサギ又はガチョウなどの経済動物の骨を粉砕することによって生成する。好ましくは、骨粉を、トリ又はブタの骨を粉砕することによって生成する。
【0037】
他の実施形態によると、殻粉末を、エビ、カニ、二枚貝、フジツボ、カタツムリ、アワビ、トップシェル又はカキの殻を粉砕することによって生成する。好ましくは、殻粉末を二枚貝の殻を粉砕することによって生成し、より具体的には、殻粉末はタイワンハマグリの殻に由来する。
【0038】
本開示における使用に適した遷移金属及びその酸化物の例は、スカンジウム(Sc)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、イットリウム(Y)、ジルコニウム(Zr)、ニオビウム(Nb)、モリブデン(Mo)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、銀(Ag)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、白金(Pt)、二酸化チタン(TiO)、酸化チタン(TiO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化タングステン(WO)、二酸化ジルコニウム(ZrO)、酸化第二鉄(Fe)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO)、二酸化ケイ素(SiO)を含むが、これに限定されない。本開示の一実施形態によると、TiOをトリの骨粉と混合し、結果として得られた光触媒を「TiO@Cb」と指定する。他の実施形態によると、TiOをブタの骨粉と混合し、結果として得られた光触媒を「TiO@Pb」と指定する。更なる他の実施形態によると、ZnOをトリの骨粉と混合し、結果として得られた光触媒を「ZnO@Cb」と指定する。さらに他の実施形態によると、ZnOをブタの骨粉と混合し、結果として得られた光触媒を「ZnO@Pb」と指定する。さらに他の実施形態によると、TiOをタイワンハマグリの殻粉末と混合してもよく、結果として得られた光触媒をMmTiと指定する。
【0039】
代替的又は任意選択的に、ステップ(b)の前に、骨粉及び殻粉末を、その中のいずれの揮発性物質も除去するために、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5又は5時間、400~500℃でか焼してもよい。
【0040】
次に、ステップ(c)において、ステップ(b)の第2混合物を、第2の混合物を100℃で少なくとも12時間加熱すること、例えば、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23若しくは24時間又はそれ以上加熱することを介して乾燥させて脱水生成物を生成する。いくつかの実施形態によると、脱水生成物を生成するために、ステップ(b)の第2混合物を100℃で12時間加熱する。理解され得るように、脱水ステップは、当業者に既知の他の乾燥技術、例えば、凍結乾燥、超臨界乾燥、噴霧乾燥、共沸乾燥、断熱乾燥、マイクロ波乾燥、真空乾燥又はそれらの組合せによって代替的に実施され得る。
【0041】
そして、ステップ(d)において、ステップ(c)において生成された脱水生成物を約400~1150℃の温度で一定期間にわたってか焼し、例えば、脱水生成物を、400、405、410、415、420、425、430、435、440、445、450、455、460、465、470、475、480、485、490、495、500、510、520、530、540、550、560、570、580、590、600、610、620、630、640、650、660、670、680、690、700、710、720、730、740、750、760、770、780、790、800、810、820、830、840、850、860、870、880、890、900、910、920、930、940、950、960、970、980、990、1000、1010、1020、1030、1040、1050、1060、1070、1080、1090、1100、1110、1120、1130、1140又は1150℃で1~5時間(例えば、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5又は5時間)か焼し得る。特定の好適な実施形態によると、脱水生成物を400~500℃で2時間、か焼する。
【0042】
本開示の他の態様は、結果として生成された光触媒を使用することによってサンプル中のNOxを分解する方法に向けられる。方法は、(i)サンプルを結果として生成された光触媒と混合するステップ及び(ii)混合物を太陽光又は可視光で少なくとも5分間照射するステップを備える。
【0043】
本開示の特定の実施形態によると、光源は自然光、又は重水素ランプ、キセノンランプ、パルスキセノンフラッシュランプ、キセノンハロゲンランプ、ハロゲンランプ、レーザー、白熱灯若しくは発光ダイオード(LED)ランプを含む同様のスペクトルの太陽光若しくは可視光を供給可能な任意の供給源であり得る。特定の例示的な実施形態によると、光源はキセノンランプである。
【0044】
特定の実施形態によると、混合物を太陽光又は可視光によって少なくとも5分間照射する。いくつかの好適な実施形態によると、混合物を太陽光又は可視光によって5~150分(例えば、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145又は150分)間、照射する。本開示のいくつかの実施例では、混合物を5分間照射すれば、NOx分解効果を達成するのには十分である。
【0045】
本開示の特定の実施形態によると、分解工程(すなわち、ステップ(ii))を湿度30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69又は70%で実施する。好ましくは、分解工程を湿度40%で実施する。
【0046】
いくつかの実施形態によると、サンプル中のNOxは、混合物の照射を停止した後、1.8百万分率(ppm)以下のレベルに分解される。特定の実施形態によると、サンプル中のNOxは、500十億分率(ppb)以下のレベルに分解される。
【実施例
【0047】
実施例1 本光触媒の合成
トリの骨、ブタの骨を飲食店及び/又は製造廃棄物から収集し、洗浄して骨以外のいずれの残骸も除去した。そして、骨を100℃で少なくとも24時間加熱し、続いて、粉砕機に移して骨粉を生成した。そして、骨粉をマッフル炉において400℃~500℃で少なくとも2時間か焼した。さらに、殻を上記と同様の工程に適用して、殻粉末を生成した。
【0048】
本光触媒を生成する目的のために、3gのTiO又はZn(NOを30mLの脱イオン水で希釈し、少なくとも30分間撹拌した。そして、溶液を(トリの骨又はブタの骨に由来する)骨粉又は(殻に由来する)殻粉末と混合し、TiO若しくはZn(NO及び骨粉は1:1(w/w)の比率で溶液中に存在し、又は殻粉末は1:1、1:2若しくは2:1(w/w)の比率で溶液中に存在した。そして、結果として生成された混合物を4時間、完全に混合した。
【0049】
次に、混合物を100℃で12時間加熱し、続いて、400~450℃で2時間か焼した。結果として得られた光触媒を、ZnO@Cb(すなわち、ニワトリの骨粉がドープされたZnO)、ZnO@Pb(すなわち、ブタの骨粉がドープされたZnO)、TiO@Cb(すなわち、ニワトリの骨粉がドープされたTiO)、TiO@Pb(すなわち、ブタの骨粉がドープされたTiO)並びにMmTi 2:1、MmTi 1:1及びMmTi 0.5:1(すなわち、タイワンハマグリ種に由する殻粉末が、2:1、1:1及び0.5:1(w/w)の比率でそれぞれTiOをドープされる)と、それぞれ指定した。
【0050】
実施例2 本光触媒の特徴付け
この実施例では、ZnO@Cb、ZnO@Pb、TiO@Cb、TiO@Pb及びMmTiを含む、実施例1で生成された光触媒の構造、有効性及び再利用性を調べた。
【0051】
2.1 本光触媒の構造
ZnO@Cb、ZnO@Pb、TiO@Cb及びTiO@Pbを含む光触媒の結晶構造を、X線回折(XRD)によって分析した。結果によると、ZnO@Cb又はZnO@Pbの結晶構造は、主にヒドロキシアパタイト、酸化カルシウム、ZnO及び水酸化リン酸カルシウム亜鉛酸化物からなり(データ不図示)、TiO@Cb又はTiO@Pbの結晶構造は、主にアナターゼ及びルチルからなっていた(データ不図示)。
【0052】
各光触媒の形態を、走査型電子顕微鏡-エネルギー分散型X線(SEM-EDX)及び透過型電子顕微鏡(TEM)によってさらに分析した。結果は、各光触媒がマイクロキューブとして存在し、ZnO@Cb又はTiO@Cbの粒子サイズはZnO@Pb又はTiO@Pbのものよりも大きく、ZnO@Cb又はTiO@Cbの2粒子間の空隙はZnO@Pb又はTiO@Pbのものよりも広いことを示した(データ不図示)。調査結果は、トリ骨粉がドープされた光触媒はブタ骨粉がドープされた光触媒のものよりも剛性が低いことを示唆した。
【0053】
2.2 本光触媒のNOx分解に対する効果
この実施例では、実施例1で生成された各光触媒のNOx分解における効果を調べた。この目的のために、各光触媒をNO及びNOを含むNOxガス(骨粉がドープされた光触媒(すなわち、ZnO@Cb、ZnO@Pb、TiO@Cb及びTiO@Pb)の試験に対して500十億分率(ppb)及び1800百万分率(ppm)並びに殻粉末がドープされた光触媒(すなわち、MmTi 1:1、MmTi 0.5:1及びMmTi 2:1)の試験に対して440ppb)と混合し、混合物を湿度40%で30分間太陽光で照射した。そして、容器中のNOxの濃度を決定した。NOxの分解/除去に対する光触媒の有効性を式(I)によって決定した。
【数1】
【0054】
ZnO@Cb、ZnO@Pb、TiO@Cb、TiO@Pb及びMmTiのNOx分解有効性を表1にまとめ、図1(パネルA及びB)に示し、TiO@Pbが、骨粉がドープされた他の光触媒のものと比較して、NOxの分解において最も高い有効性を示した。さらに、MmTiのNOx分解有効性は約50%~60%であり、MmTi 1:1は、殻粉末がドープされた他の光触媒のものと比較して、NOxの分解において最も高い有効性を示した。
【0055】
NOxの分解におけるTiO@Cb又はTiO@Pbの効果を、1.8ppmのNOx濃度においてさらに調査し、各光触媒を太陽光及び可視光で照射した。結果を表1にまとめる。
【0056】
表1によると、TiO@Pb及びTiO@Cbの触媒混合物を太陽光でそれぞれ照射した場合、NOxの分解はそれぞれ50%~60%及び20%~40%であった。TiO@Pbの触媒混合物を可視光で照射した場合、NOxの分解は約70%であり、一方、TiO@Cbのものはごく少量であった。まとめると、結果は、TiO@Pb及びTiO@Cbを太陽光によって照射した場合、TiO@PbがNOxの50%~60%を分解し、TiO@CbがNOxの20%~40%を分解し得ることを示す。さらに、可視光下でのNOxの分解においては、TiO@Pbのみが活性を維持した。
【0057】
【表1】
【0058】
2.3 本光触媒の再利用性
この実施例では、ZnO@Cb、ZnO@Pb、TiO@Cb及びTiO@Pbを含む実施例1の光触媒の再利用性を、リサイクル試験を使用して調べた。具体的には、光触媒をNOxと混合し、混合物を太陽光で30分間照射し(分解反応)、そして、反応した光触媒を脱イオン水で洗浄し、70℃で2回加熱することによって乾燥させた(回収反応)。そして、回収された光触媒を、2回目の反応では光触媒材料として使用した。合計で、5回の分解及び回収反応を行った。光触媒の再利用性を、各回の反応におけるNOx分解有効性を分析することによって決定した。結果を表2にまとめる。
【0059】
表2によると、全ての光触媒がNOxを分解可能であった。ZnO@Pb及びZnO@Cbと比較して、TiO@Pb及びTiO@Cbは、リサイクル試験の間に優れた再利用性を示し、NOxの分解におけるそれらの能力は、ZnO@Pb及びZnO@Cbのものが各回の反応とともに減少する一方で、5回の反応後もほとんど変化しなかった。
【0060】
【表2】
【0061】
結論として、本開示は、NOxを分解する光触媒を生成する迅速及び経済的な方法を提供する。本開示の実施形態によると、トリ骨粉、ブタ骨粉及び殻粉末はTiO又はZnOの有望なドーパントであり、したがって、光触媒は単純及び簡便な工程によってかつ低減された費用で生成され得る。
【0062】
実施形態の上記説明は例示としてのみ与えられること及び種々の変形が当業者によってなされ得ることが理解されるはずである。上記仕様、実施例及びデータは、発明の例示的実施形態の構造及び使用の完全な説明を与える。発明の種々の実施形態がある程度の特殊性で又は1以上の個別の実施形態を参照して上述されたが、当業者であれば、この発明の趣旨又は範囲から逸脱することなく開示の実施形態に対して多数の変更を行うことができるはずである。
図1