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  • 特許-除電装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-04
(45)【発行日】2023-12-12
(54)【発明の名称】除電装置
(51)【国際特許分類】
   H05F 3/02 20060101AFI20231205BHJP
【FI】
H05F3/02 R
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2022174069
(22)【出願日】2022-10-31
【審査請求日】2023-05-30
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000183738
【氏名又は名称】春日電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002446
【氏名又は名称】弁理士法人アイリンク国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】最上 智史
(72)【発明者】
【氏名】峯村 和樹
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 輝夫
(72)【発明者】
【氏名】志村 真二
(72)【発明者】
【氏名】廣田 友樹
【審査官】関 信之
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-142187(JP,A)
【文献】特開2019-067733(JP,A)
【文献】実開昭54-048584(JP,U)
【文献】特開2019-167169(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05F 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯電したシートの表面を除電する第1の除電装置と、上記シートの搬送方向を基準にして、第1の除電装置の下流側に配置された第2の除電装置とを備え、
上記第1の除電装置は、
上記シートを外周面で挟持して搬送する一対の第1、第2除電ローラを備えるとともに、上記一対の第1、第2除電ローラ間には直流又は交流の電圧が印加され、
上記第2の除電装置は、
上記シートを挟持して搬送する一対の第3、第4除電ローラを備えるとともに、上記一対の第3、第4除電ローラの両方が接地に接続され、
上記第1、第2、第3、第4除電ローラの外周面が弾性を有する導電性樹脂で構成され
上記第1、第2除電ローラ、及び上記第3、第4除電ローラで挟持された上記シートの表面を除電する除電装置。
【請求項2】
上記第1、第2、第3、第4除電ローラが、導電性樹脂の発泡体で構成された請求項1に記載の除電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、帯電したシートの表面を除電するための除電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、デジタル印刷を施された樹脂などのシートは、その印刷工程で、摩擦や、印刷工程内の帯電プロセスなどによって、静電気帯電してしまう。
このように帯電したシートは、それが単独で存在する際には両面の正,負の電荷が閉じた電界からなる電気二重層を形成するため、見かけ上の帯電電位は低くなり、外部に対して特に問題を起こさない。
【0003】
しかし、上記のような帯電したシートが積層した場合には、積層された上下のシート間にクーロン力による吸引力が発生してシート同士がくっついてしまう。
その結果、印刷の後の、例えば折り、裁断工、製本などの後加工がスムーズに進まないという問題が発生する。
【0004】
そこで、印刷済みシートのように帯電したシートを、搬送しながら除電するための除電装置が知られている。
例えば、特許文献1に示す接触型の除電装置は、金属製の一対の除電ローラ間に挟んでシートを搬送しながら除電するもので、一方の除電ローラを接地し、他方の除電ローラに直流又は交流電源を接続したものである。シート表面の帯電電荷と逆極性の除電ローラを接触させることによって、非接触型の除電装置と比べて高電位に帯電したシートの表面を十分に除電することができるというものである。
また、シート表面の帯電量がそれほど大きくない場合には、一対の除電ローラを接地して、これら接地ローラで帯電したシートを挟持して、表面の電荷を接地へ流すことによって除電することもできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2019-167169号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記した、従来の接触型除電装置では、除電ローラ間を通過したシートが期待通りに除電されないことがあった。シートには、全体的に電荷が残ってしまったり、部分的に電荷が残ってしまったりすることがあった。
【0007】
その原因は次のように考えられる。
従来の除電ローラは金属製で、その表面にはわずかな凹凸があり、シートの表面がその凹凸に追従できず、部分的に除電ローラの表面との間に隙間ができてしまうことがある。除電ローラとシート表面との間に隙間ができ、除電ローラとシート表面との距離や、対向する電極間の距離が部分的に不均一になると、除電ローラ間の電界強度が不均一になる。その結果、除電能力も不均一になって、均一な除電処理ができないと推測できる。
【0008】
このような問題は、接地した一対の除電ローラ間にシートを挟持する除電装置においても同様に発生する。すなわち、シートの表面電荷は、除電ローラと接触した部分から接地に流れるが、除電ローラと接触していない部分があれば、その部分の電荷はほとんど除電されないことになる。
特に、シートの搬送速度が速い場合には、除電不良になることが多い。
【0009】
この発明の目的は、帯電したシートを搬送しながら、確実かつ均一に除電できる除電装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の発明は、帯電したシートの表面を除電する第1の除電装置と、上記シートの搬送方向を基準にして、第1の除電装置の下流側に配置された第2の除電装置とを備え、上記第1の除電装置は、上記シートを外周面で挟持して搬送する一対の第1、第2除電ローラを備えるとともに、上記一対の第1、第2除電ローラ間には直流又は交流の電圧が印加され、上記第2の除電装置は、上記シートを挟持して搬送する一対の代3,第4除電ローラを備えるとともに、上記一対の第3、第4除電ローラの両方が接地に接続され、上記第1、第2、第3、第4除電ローラの外周面が弾性を有する導電性樹脂で構成され、上記第1、第2除電ローラ、及び上記第3、第4除電ローラで挟持された上記シートの表面を除電する。
【0014】
の発明は、上記第1、第2、第3、第4除電ローラが、導電性樹脂の発泡体で構成されている。
【発明の効果】
【0015】
第1の発明によれば、弾力を有する除電ローラの表面をシートの表面に押し付けることで、除電ローラとシートの表面とを密着させることができ、除電ローラと対向する範囲で均一な除電ができる
【0016】
また、弾力を有する接地された除電ローラの表面をシートの面に密着させることができるので、シートの表面電荷をスムーズに接地へ流すことができる。
【0017】
そのため、電圧をかけた除電ローラで大きな表面電荷を除電してから、残留電荷を接地された除電ローラによって除電することができる。そのため、シートの表面が、均一かつ確実に除電される。
【0019】
の発明によれば、除電ローラの外周面が変形しやすく、シート表面に対してさらに密着させやすい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、第1実施形態の除電装置の概略構成図である。
図2図2は、第1実施形態の除電ローラの外観図である。
図3図3は、第2実施形態の除電装置の概略構成図である。
図4図4は、第3実施形態の除電装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[第1実施形態]
図1,2を用いて、この発明の第1実施形態の除電装置を説明する。図1は、第1実施形態の概略構成図である。
第1実施形態の除電装置1は、デジタル印刷工程の後に、シートsの搬送経路に沿って設けられている。
【0022】
図1に示すように、シートsを上下から挟むように一対の除電ローラ2,3が上下に設けられている。除電ローラ2は上側に配置されており、除電ローラ3は下側に配置されており、以下、除電ローラ2を上側の除電ローラ2といい、除電ローラ3を下側の除電ローラ3という。これら上下の除電ローラ2,3は、図2に示すように、弾力を有する導電性樹脂製のローラ本体2a,3aの中心に金属製のシャフト2b,3bを貫通させた部材である。上記ローラ本体2a,3aの材質は、導電性の発泡ゴムなどでその電気抵抗値は1×10〔Ω〕~1×1010〔Ω〕に調整されている。
【0023】
一対の除電ローラ2,3は、本体が発泡ゴムで形成されているため、その外周面が弾力を備えている。これらの上下の除電ローラ2,3は、互いに押し付け力を発揮して、接触部分が多少変形するように設置されるとともに、図1中に示す矢印方向に回転してシートsを搬送する。
【0024】
また、上側の除電ローラ2には直流電源4が接続され、下側の除電ローラ3は接地されている。
上記電源4は、上側の除電ローラ2に対し、シートsの上側表面s1の帯電極性と逆極性の電圧を印加するようにしている。シートsは、デジタル印刷工程で積極的に帯電させられるので、上側表面s1の帯電極性は予めわかっている。そこで、上側除電ローラ2には、上記帯電極性と逆極性の電圧を印加することができる。
【0025】
[作用・効果など]
この第1実施形態では、一対の除電ローラ2,3は、ローラ本体2a,3aが発泡ゴムで形成されている。すなわち、外表面が弾力を備えている。
そのため、両除電ローラ2,3で挟持されるシートsの表面s1,s2に、除電ローラ2,3の外表面を密着させることができる。これにより、両除電ローラ2,3とシートsとの間に部分的に隙間ができることがない。
【0026】
このように、除電ローラ2,3がシートsの表面s1,s2に密着した状態で、直流電圧が印加されるので、除電ローラ2,3間の電界による除電効果が均一かつ十分なものとなり、シートsを均一かつ確実に除電することができる。
【0027】
[第2実施形態]
図3は、第2実施形態の概略構成図である。
第2実施形態の除電装置は、図3に示すように、シートsの搬送方向に沿って、上流側から、第1の除電装置1と第2の除電装置5とが設けられている。上流側の第1の除電装置1は、図1に示す第1実施形態の除電装置1と同じである。
【0028】
一方、下流側の第2の除電装置5は、第1の除電装置1で除電済みのシートsを搬送しながら除電する装置で、一対の除電ローラ6,7を備えている。除電ローラ6,7は、第1の除電装置1の除電ローラ2,3と同様の構成である。すなわち、除電ローラ6,7は、導電性の発泡ゴムで形成されたローラ本体6a,7aの中心に金属製のシャフト6b,7bを貫通させて構成されている。したがって、これら除電ローラ6,7も、外表面が弾力を有する導電性樹脂で構成されたローラである。これらの除電ローラ6,7も、シートsを挟んだ上下で互いに押し付け力を発揮して、接触部分が多少変形するように設置されている。
そして、除電ローラ6,7は、シャフト6b,7bを介して接地に接続され、これらの除電ローラ6,7に挟持されて搬送されるシートsの表面電荷を接地へ流すことによって除電する。
【0029】
[作用・効果など]
第2実施形態の除電装置では、上流側の第1の除電装置1において除電ローラ2,3がシートsの表面s1,s2に密着した状態で、直流電圧が印加されるため、均一かつ十分な除電ができる。また、上記第1の除電装置1を通過した後に、シートsの表面にわずかに電荷が残されていたとしても、その残留電荷は下流側の第2の除電装置5で除電される。
しかも、第2の除電装置5の除電ローラ6,7も、弾力を備えたローラの外周面がシートsの表面s1,s2に密着しシートsとの間に部分的に隙間ができることがないため、シートsの表面電荷をスムーズに接地へ流すことができる。そのため、シートsの表面電荷量が大きく、しかも搬送速度が速い場合にも、均一な除電をより確実に実現できる。
【0030】
なお、シートsは、上記第1の除電装置1を通過して表面電荷のほとんどが除電され、残留電荷はそれほど多くない状態で、第2の除電装置5を通過することになる。このように、表面電荷量が少ない状況で、第1の除電装置1と同様に第2の除電装置5の上側の除電ローラ6に直流電圧を印加すると、シートsの表面s1を逆帯電させてしまう可能性がある。そこで、下流側で残留電荷を除去するような場合には、この第2実施形態のように、下流側の第2の除電装置5は接地したローラ6,7で構成することが好ましい。
【0032】
[第3実施形態]
図4は、第3実施形態の概略構成図である。
第3実施形態は、図4に示すように、接地された大径の除電ローラ9の周囲にその周方向に並んで小径の3個の除電ローラ10,11,12が配置された除電装置8である。
上記全ての除電ローラ9,10,11,12は、上記第1実施形態の除電ローラ2,3と同様に、外表面を構成するローラ本体9a,10a,11a,12aが弾力を有する導電性の発泡ゴムで形成され、中心に金属製のシャフト9b,10b,11b,12bが備えられている。
【0033】
そして、上記除電ローラ10,11,12は、除電ローラ9に押し付けられるようにしてシートsを挟持する。
また、大径の除電ローラ9に対向する小径の除電ローラ10,11,12のうち、最上流側の除電ローラ10には、直流電源4が接続され、この除電ローラ10に対して直流電圧を印加する。他の除電ローラ11,12は、接地されている。
このような第3実施形態の除電装置8は、3か所で除電が行なわれるので、帯電電荷量の大きなシートsを搬送しながら除電するのに適している。
【0034】
[作用・効果など]
上記第3実施形態の除電装置8においても、帯電したシートsを挟持する除電ローラ9,10,11,12がいずれもシートsの表面に密着するので、除電ローラ9,10,11,12とシートsとの間に部分的に隙間ができることがない。
そのため、上流側の除電ローラ10に印加した電圧を、除電に有効に機能させることができる。
【0035】
また、除電ローラ9,10間で除電されたシートsの残留電荷を、シートsに密着した除電ローラ11,12及び除電ローラ9を介してスムーズに接地へ流すことができる。このように、この第3実施形態では、3か所で除電を行なうため、帯電電位が高い場合にも、均一かつ確実な除電が可能である。
【0036】
なお、上記小径の除電ローラ11,12にも電圧を印加するようにして除電装置8として、その下流側に、図3に示す下流側の除電装置5を設ければ、除電装置8を通過しても残留している電荷を、取り除き、さらに完璧に除電することもできる。
【0037】
なお、上記第1~3実施形態では、デジタル印刷済みのシートsを除電することを想定し、直流電源4を接続した除電ローラ2,10,11,12には印刷工程での帯電極性と逆極性の直流電圧を印加するようにしている。ただし、シートsの帯電状況によっては、直流電源4を交流電源に替えて、除電ローラ2,10,11,12に交流電圧を印加するようにしてもよい。
上記実施形態の除電装置の除電対象となるシートsはデジタル印刷済みのシートに限らない。上記した除電装置は、様々な原因で静電気帯電したシートを、均一かつ確実に除電することができる。
【0038】
また、上記ではシートsを挟んで、一方側の除電ローラ2,10,11,12には直流電源4を接続し、他方側の除電ローラ3,9を接地にしているが、除電ローラ3,9に除電ローラ2,10,11,12と逆極性の電圧を印加するようにしてもよい。
さらに、全ての除電ローラを、弾力を有する導電性樹脂で構成せずに、シートsを挟む一対の除電ローラのうち、少なくともいずれか一方のみの外周面を、弾力を有する導電性樹脂で構成するようにしてもよい。シートsの一方の面に、弾力を有する外周面を押し付けることによって、他方の面側の除電ローラもシートsに密着させることができるからである。
ただし、シートを挟持する一対の除電ローラの双方を、樹脂の発泡体などの弾力を有する導電性樹脂で構成すれば、除電ローラの外周面をより確実にシートに密着させることができる。
【0039】
また、上記除電ローラの外周面を構成する材質は、弾力を有する導電性の樹脂であればよく、樹脂の種類などは限定されないし、発泡体でなくても構わない。
そして、弾力を有する導電性樹脂によって、ローラ本体の全体を構成する必要はなく、外周面が小さな力で弾性変形してシートsの表面に密着可能になるように、少なくとも外周面に沿って設けられていればよい。
【産業上の利用可能性】
【0040】
帯電したシートを搬送しながら、短時間で除電することができる。
【符号の説明】
【0041】
1,5,8 除電装置
2,3,6,7,9,10,11,12 除電ローラ
4 直流電源
s シート
【要約】
【課題】 帯電したシートを搬送しながら、確実かつ均一に除電できる除電装置を提供することである。
【解決手段】 帯電したシートsを外周面で挟持して搬送する一対の除電ローラ2,3を備え、上記一対の除電ローラ2,3で挟持された上記シートの表面を除電する除電装置1であって、上記一対の除電ローラ2,3間に直流又は交流の電圧が印加されるとともに、上記一対の除電ローラ2,3のうち、少なくともいずれか一方の除電ローラ2又は3の外周面が弾力を有する導電性樹脂で構成されている。
【選択図】 図1
図1
図2
図3
図4