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特許7396737ラクトバチルス・パラカゼイ由来細胞外小胞を含む眼疾患の予防または治療用組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-04
(45)【発行日】2023-12-12
(54)【発明の名称】ラクトバチルス・パラカゼイ由来細胞外小胞を含む眼疾患の予防または治療用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/747 20150101AFI20231205BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20231205BHJP
   A61P 27/06 20060101ALI20231205BHJP
   A61P 27/12 20060101ALI20231205BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20231205BHJP
   A23L 33/135 20160101ALI20231205BHJP
【FI】
A61K35/747
A61P27/02
A61P27/06
A61P27/12
A61P29/00
A23L33/135
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2022511212
(86)(22)【出願日】2021-10-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-01
(86)【国際出願番号】 KR2021013717
(87)【国際公開番号】W WO2022255553
(87)【国際公開日】2022-12-08
【審査請求日】2022-02-21
(31)【優先権主張番号】10-2021-0072078
(32)【優先日】2021-06-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0130843
(32)【優先日】2021-10-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】516348577
【氏名又は名称】エムディー ヘルスケア インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】MD HEALTHCARE INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キム、ユン-クン
【審査官】松浦 安紀子
(56)【参考文献】
【文献】特表2020-533290(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 35/747
A61P 27/02
A61P 27/06
A61P 27/12
A61P 29/00
A23L 33/135
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラクトバチルス・パラカゼイ由来小胞を有効成分として含む、眼疾患の予防または治療用薬学的組成物。
【請求項2】
前記眼疾患は、加齢に伴う眼疾患であることを特徴とする、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項3】
前記眼疾患は、炎症性眼疾患であることを特徴とする、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項4】
前記眼疾患は、レーバー先天性黒内障(LCA)、スタルガルト病、アッシャー症候群、脈絡膜欠如、錐体桿体または桿体錐体ジストロフィー、繊毛病、ミトコンドリア障害、進行性網膜萎縮症、退行性網膜疾患、加齢黄斑変性(age-related macular degeneration,AMD)、湿性AMD、乾性AMD、地図状萎縮症、家族性または後天性黄斑症、網膜光受容体疾患、網膜色素上皮疾患、糖尿病性網膜症(diabetic retinopathy)、嚢胞様黄斑浮腫、網膜剥離、外傷性網膜損傷、医原性網膜損傷、黄斑円孔、黄斑部毛細血管拡張症、神経節細胞疾患、視神経細胞疾患、緑内障(glaucoma)、白内障(cataract)、視神経症、虚血性網膜疾患、未熟児網膜症、網膜血管閉塞症、家族性細動脈瘤(familial macroaneurysm)、網膜血管疾患、眼血管疾患、緑内障による網膜神経細胞退化および虚血性視神経症からなる群から選ばれた一つ以上であることを特徴とする、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項5】
前記炎症性眼疾患は、色素性網膜炎(RP)、結膜炎(conjunctivitis)、強膜炎(scleritis)、角膜炎(keratitis)、虹彩炎(iritis)、ブドウ膜炎(uveitis)、脈絡網膜炎(chorioretinitis)、脈絡炎(choroiditis)、および網膜炎(retinitis)からなる群から選ばれた一つ以上であることを特徴とする、請求項3に記載の薬学的組成物。
【請求項6】
前記小胞は、平均直径が10~300nmであることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項7】
ラクトバチルス・パラカゼイ由来小胞を有効成分として含む、眼疾患の予防または改善用食品組成物。
【請求項8】
ラクトバチルス・パラカゼイ由来小胞を有効成分として含む、眼疾患の予防または改善用医薬部外品組成物。
【請求項9】
ラクトバチルス・パラカゼイ由来小胞を有効成分として含む、眼疾患の予防または改善用吸入用組成物。
【請求項10】
ラクトバチルス・パラカゼイ由来小胞を有効成分として含む、眼疾患治療薬物伝達用組成物。
【請求項11】
ラクトバチルス・パラカゼイ由来小胞の眼疾患の予防または治療薬剤の製造のための使用。
【請求項12】
ラクトバチルス・パラカゼイ由来小胞の眼疾患の予防または治療薬物伝達剤の製造のための使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラクトバチルス・パラカゼイ由来細胞外小胞およびその用途に関し、より具体的に、ラクトバチルス・パラカゼイ由来細胞外小胞を有効成分として含む眼疾患の予防または治療用組成物などに関する。
【0002】
本出願は、2021年6月3日に出願された韓国特許出願第10-2021-0072078号および2021年10月1日に出願された韓国特許出願第10-2021-0130843号に基づく優先権を主張し、当該出願の明細書および図面に開示されたすべての内容は本出願に援用される。
【背景技術】
【0003】
21世紀に入って過去伝染病と認識された急性感染性疾患の重要性は減少した反面、ヒトと共生微生物との不調和によって発生する免疫機能異常を伴った慢性疾患および人体の主要臓器に発生する老化に伴う慢性疾患が生活の質の減少と人間の寿命を決定する主な疾患に病気パターンが変わった。様々なストレスによる免疫機能および代謝機能異常を特徴とする21世紀難治性慢性疾患として、がん、心血管疾患、慢性肺疾患、代謝疾患、および神経精神疾患が人間の寿命と生活の質を決定する主な疾患として国民保健に大きい問題になっている。
【0004】
免疫(immunity)は、生物学的、化学的、物理的、精神的ストレスに対する細胞の防御機序であって、先天免疫(innate immunity)と後天免疫(adaptive immunity)を通じて起こることになる。代謝(metabolism)は、人体に必要なエネルギーを作って細胞の機能を行う様々な物質を作るのであって、ミトコンドリアで生成されたATPを通じて小胞体(endoplasmic reticulum,ER)でタンパク質と脂質が生成されて、必要な領域に物質を供給する。細胞は、発生する瞬間から様々なストレスに直面することになるが、生物学的、化学的、物理的、精神的ストレスは、細胞内で小胞体(ER)ストレスを誘導し、ERストレスが持続すると、細胞は死滅したり癌細胞に変わることになる。したがって、最近問題になる多くの難治性疾患は、反復的なERストレスによって免疫機能と代謝機能に異常がもたらされて発生するという事実が最近明らかになっている。
【0005】
一方、眼球の網膜は、中枢神経系に属する器官であり、成熟した網膜細胞は、脳に存在する多くのニューロン細胞と同様に、正常状態では分裂しない。したがって、網膜細胞の機能が低下すると、視覚機能に異常が現われやすく、老化が早く進むことになる。網膜細胞の機能が低下する最も大きい原因としては、酸化ストレスが挙げられるが、眼球を構成する網膜、視神経、光受容細胞、水晶体を含む組織は、日常生活で光、紫外線のような酸化的損傷に続いて露出するためである。このような酸化的損傷によって細胞を構成するDNA、タンパク質、脂質に変形が生じ、細胞死滅が誘導されることで、眼に老化が発生し、地図状萎縮(geographic atrophy)、糖尿病性網膜症(diabetic retinopathy)、白内障(cataract)、緑内障(glaucoma)および眼球乾燥症(ドライアイ)などのような加齢に伴う眼疾患が発生することになる。
【0006】
また、青色光(ブルーライト)、紫外線などのような環境的ストレスに対して視覚関連細胞が正確に防御しなければ、眼に炎症が発生し、反復的なストレスによって慢性炎症性眼疾患が発生することになり、最近では、このような慢性炎症性眼疾患を治療または予防するために、炎症疾患の主な媒介体と知られた炎症性サイトカインであるTNF-α抑制剤に対する関心が増加している。
【0007】
人体に共生する微生物は、100兆に至り、ヒト細胞より10倍多く、微生物の遺伝子数は、ヒト遺伝子数の100倍を超えると知られている。微生物叢(microbiotaあるいはmicrobiome)は、与えられた生息地に存在する真正細菌(bacteria)、古細菌(archaea)、真核生物(eukarya)を含む微生物群集(microbial community)を言う。
【0008】
人体に共生する細菌および周辺環境に存在する細菌は、他の細胞への遺伝子、低分子化合物、タンパク質などの情報を交換するために、ナノメートルサイズの小胞(vesicle)を分泌する。粘膜は、200ナノメートル(nm)サイズ以上の粒子が通過できない物理的な防御膜を形成して、粘膜に共生する細菌である場合には、粘膜を通過しないが、細菌由来の小胞は、サイズが200ナノメートルサイズ以下であるので、比較的自由に粘膜を通じて上皮細胞を通過して人体に吸収される。このように、細菌由来小胞は、細菌から分泌されたものであるが、細菌と構成成分、体内吸収率、副作用の危険性などが互いに異なっていて、そのため、細菌由来小胞を使用することは、生きている細菌を使用することとは全く異なったり顕著な効果を示す。
【0009】
局所的に分泌された細菌由来小胞は、粘膜の上皮細胞を通じて吸収されて局所炎症反応を誘導するとともに、上皮細胞を通過した小胞は、リンパ管を通じて全身に吸収されて各臓器に分布し、分布した臓器で免疫および炎症反応を調節する。例えば、大腸菌(Eshcherichia coli)のような病原性細菌に由来する小胞は、ウイルスを複製する病原性ナノ粒子であって、局所的に大腸炎や食中毒を起こし、血管に吸収された場合に、血管内皮細胞炎症反応を通じて全身的な炎症反応および血液凝固を促進させる。反面、有益な細菌に由来する小胞は、病原性小胞による免疫機能および代謝機能異常を調節して疾患を調節できる。
【0010】
乳酸菌(lactic acid bacteria)または乳酸菌は、物質代謝により炭水化物を乳酸に分解させる細菌の総称である。ヨーグルト、乳酸菌飲料、キムチなどの食品を発酵させ、一部の乳酸菌は、腸などの消化器系(腸内細菌)や膣内に存在して他の病原微生物から身体を守り、恒常性の維持を助けることが知られている。これらの中で、ラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)細菌は、胞子(spore)を形成しない通性乳酸菌であって、ヒトの消化管、女性の膣に共生する細菌であって、病原性細菌からヒトの身体を守る役割を担当することが知られている。
【0011】
しかし、まだラクトバチルス・パラカゼイ由来小胞を活用して老化または炎症に関連した眼疾患の治療に応用した事例は報告されたことがない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、前述のような従来技術上の問題点を解決するためになされたものであって、本発明の目的は、ラクトバチルス・パラカゼイ由来小胞を有効成分として含む、眼疾患の予防または治療用薬学的組成物を提供することにある。
【0013】
本発明の他の目的は、ラクトバチルス・パラカゼイ由来小胞を有効成分として含む、眼疾患の予防または改善用食品組成物を提供することにある。
【0014】
本発明のさらに他の目的は、ラクトバチルス・パラカゼイ由来小胞を有効成分として含む、眼疾患の予防または改善用医薬部外品組成物を提供することにある。
【0015】
本発明のさらに他の目的は、ラクトバチルス・パラカゼイ由来小胞を有効成分として含む、眼疾患の予防または改善用吸入用組成物を提供することにある。
【0016】
本発明のさらに他の目的は、ラクトバチルス・パラカゼイ由来小胞を有効成分として含む、眼疾患治療薬物伝達用組成物を提供することにある。
【0017】
しかしながら、本発明が解決しようとする技術的課題は、以上で言及した課題に制限されず、言及されていない他の課題は、下記の記載から本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者に明確に理解され得る。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、ラクトバチルス・パラカゼイ由来小胞を有効成分として含む、眼疾患の予防または治療用薬学的組成物を提供する。
【0019】
また、ラクトバチルス・パラカゼイ由来小胞を有効成分として含む、眼疾患の予防または改善用食品組成物を提供する。
【0020】
また、本発明は、ラクトバチルス・パラカゼイ由来小胞を有効成分として含む、眼疾患の予防または改善用医薬部外品組成物を提供する。
【0021】
また、本発明は、ラクトバチルス・パラカゼイ由来小胞を有効成分として含む、眼疾患の予防または改善用吸入用組成物を提供する。
【0022】
また、本発明は、ラクトバチルス・パラカゼイ由来小胞を有効成分として含む、眼疾患治療薬物伝達用組成物を提供する。
【0023】
本発明の一具体例において、前記眼疾患は、加齢に伴う眼疾患であってもよいが、これに制限されない。
【0024】
本発明の他の具体例において、前記眼疾患は、炎症性眼疾患であってもよいが、これに制限されない。
【0025】
本発明のさらに他の具体例において、前記眼疾患は、レーバー先天性黒内障(LCA)、スタルガルト病、アッシャー症候群、脈絡膜欠如、錐体桿体または桿体錐体ジストロフィー、繊毛病、ミトコンドリア障害、進行性網膜萎縮症、退行性網膜疾患、加齢黄斑変性(age-related macular degeneration,AMD)、湿性AMD、乾性AMD、地図状萎縮症、家族性または後天性黄斑症、網膜光受容体疾患、網膜色素上皮疾患、糖尿病性網膜症(diabetic retinopathy)、嚢胞様黄斑浮腫、網膜剥離、外傷性網膜損傷、医原性網膜損傷、黄斑円孔、黄斑部毛細血管拡張症、神経節細胞疾患、視神経細胞疾患、緑内障(glaucoma)、白内障(cataract)、視神経症、虚血性網膜疾患、未熟児網膜症、網膜血管閉塞症、家族性細動脈瘤(familial macroaneurysm)、網膜血管疾患、眼血管疾患、緑内障による網膜神経細胞退化および虚血性視神経症からなる群から選ばれた一つ以上であってもよいが、これらに制限されない。
【0026】
本発明のさらに他の具体例において、前記炎症性眼疾患は、色素性網膜炎(RP)、結膜炎(conjunctivitis)、強膜炎(scleritis)、角膜炎(keratitis)、虹彩炎(iritis)、ブドウ膜炎(uveitis)、脈絡網膜炎(chorioretinitis)、脈絡炎(choroiditis)、および網膜炎(retinitis)からなる群から選ばれた一つ以上であってもよいが、これらに制限されない。
【0027】
本発明のさらに他の具体例において、前記炎症性眼疾患は、IL-6により媒介されるものであってもよいが、これに制限されない。
【0028】
本発明のさらに他の具体例において、前記眼疾患は、免疫機能または代謝機能異常がもたらされて発生する眼疾患であってもよいが、これに制限されない。
【0029】
本発明のさらに他の具体例において、前記眼疾患は、酸化ストレスによる眼疾患であってもよいが、これに制限されない。
【0030】
本発明のさらに他の具体例において、前記小胞は、平均直径が10~300nmであってもよいが、これに制限されない。
【0031】
本発明のさらに他の具体例において、前記小胞は、ラクトバチルス・パラカゼイから自然的にまたは人工的に分泌されるものであってもよいが、これに制限されない。
【0032】
本発明のさらに他の具体例において、前記小胞は、ラクトバチルス・パラカゼイの培養液またはラクトバチルス・パラカゼイを添加して培養した食品から分離できるが、これに制限されない。
【0033】
また、本発明は、ラクトバチルス・パラカゼイ由来小胞を有効成分とする組成物を個体に投与する段階を含む眼疾患の予防または治療方法を提供する。
【0034】
また、本発明は、ラクトバチルス・パラカゼイ由来小胞を有効成分として含む組成物の眼疾患の予防または治療用途を提供する。
【0035】
また、本発明は、ラクトバチルス・パラカゼイ由来小胞の眼疾患の予防または治療薬剤の製造のための使用を提供する。
【0036】
また、本発明は、ラクトバチルス・パラカゼイ由来小胞の眼疾患の予防または改善食品の製造のための使用を提供する。
【0037】
また、本発明は、ラクトバチルス・パラカゼイ由来小胞の眼疾患の予防または治療医薬部外品の製造のための使用を提供する。
【0038】
また、本発明は、ラクトバチルス・パラカゼイ由来小胞を有効成分とする組成物を個体に投与する段階を含む眼疾患治療薬物の伝達方法を提供する。
【0039】
また、本発明は、ラクトバチルス・パラカゼイ由来小胞を有効成分として含む組成物の眼疾患治療薬物伝達用途を提供する。
【0040】
また、本発明は、ラクトバチルス・パラカゼイ由来小胞の眼疾患の予防または治療薬物伝達剤の製造のための使用を提供する。
【発明の効果】
【0041】
本発明によるラクトバチルス・パラカゼイ由来小胞は、人体に吸収された後、血液脳関門(blood brain barrier,BBB)を通過して中枢神経系に分布し、細胞に吸収された後、難治性炎症疾患の主な媒介体であるIL-6の分泌を効果的に抑制し、AMPKシグナルを活性化して代謝機能を増加させて、細胞老化および炎症による眼疾患の発生を効率的に抑制することを確認した。ひいては、酸化ストレスによる眼疾患ウサギモデルに前記小胞を投与したとき、酸化ストレスによる網膜変性の発生を有意に抑制することを確認したところ、本発明によるラクトバチルス・パラカゼイ由来小胞は、眼疾患の改善、予防、または治療剤として幅広く使用できると期待される。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1】本発明の一実施例に係るラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)菌由来小胞を経口投与して体内分布様相を分析した結果である。
図2】本発明の一実施例に係るラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)菌由来小胞を経口投与して中枢神経系への分布様相を分析した結果である。
図3】本発明の一実施例に係るLPSによる炎症性サイトカインの分泌に対するラクトバチルス・パラカゼイ由来小胞の抑制効果およびラクトバチルス・パラカゼイ由来小胞に熱処理、酸処理、または胆汁処理時の小胞の治療効果に及ぼす影響を評価した図である(MDH-001:Lactobacillus paracasei EV)。
図4】本発明の一実施例に係るラクトバチルス・パラカゼイ由来小胞の代謝機能障害に対する治療効能を評価した図であって、対照薬物であるメトホルミンとラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)由来小胞を細胞に処理して代謝機能の核心シグナル伝達経路であるAMPKシグナル伝達に対する効果を評価した図である(MDH-001:Lactobacillus paracasei EV)。
図5】本発明の一実施例に係るラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)菌由来小胞を経口投与して眼疾患に対する効能を確認するための動物モデル実験方法および評価方法を示した図である。
図6】本発明の一実施例に係るラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)菌由来小胞を眼疾患に対する効能を確認するために、酸化ストレスによる眼疾患ウサギモデルに小胞を経口投与して対照群に対する処理群の網膜変性面積(retinal degenerated area)を測定した結果を示した図である。G1:未処理陰性対照群、G2:疾患誘発陽性対照群、G3:低用量小胞処理群、G4:高用量小胞処理群。
図7】本発明の一実施例に係るラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)菌由来小胞を加齢に伴う眼疾患に対する効能を確認するために、酸化ストレスによる眼疾患ウサギモデルに小胞を経口投与した後、眼底カメラ(TRC-50IX,TOPCON,Japan)で眼底を撮影した図である。G1:未処理陰性対照群、G2:疾患誘発陽性対照群、G3:低用量小胞処理群、G4:高用量小胞処理群。
図8】本発明の一実施例に係る眼疾患に対するラクトバチルス・パラカゼイ由来小胞の作用機序を図式化した図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
[発明を実施するための最良の形態]
本発明は、ラクトバチルス・パラカゼイ由来小胞およびその用途に関する。
【0044】
本発明者らは、ラクトバチルス・パラカゼイ由来小胞を分離して、ラクトバチルス・パラカゼイ由来小胞が経口投与後、様々な臓器に良好に伝達されることを確認し、特に血管脳障壁(BBB)を通過して網膜を含む中枢神経系に移動および分布することを確認した(実施例2参照)。
【0045】
また、本発明者らは、LPSによる炎症反応に対してラクトバチルス・パラカゼイ由来細胞外小胞がIL-6の分泌を抑制し、このような抑制効果は、小胞に熱処理、酸処理、および胆汁処理によっても維持されることを確認した(実施例3参照)。
【0046】
また、本発明者らは、ラクトバチルス・パラカゼイ由来小胞が代謝障害調節の核心シグナル伝達因子であるAMPKシグナルを活性化して自食作用を誘導することによって、代謝機能の恒常性を増加させて代謝障害による眼疾患を治療できることを確認した(実施例4参照)。
【0047】
また、本発明者らは、酸化ストレスによる黄斑変性ウサギモデルにラクトバチルス・パラカゼイ由来小胞を経口投与した結果、網膜色素上皮細胞層の変性による黄斑変性が有意に減少することを確認した(実施例5参照)。
【0048】
したがって、本発明は、ラクトバチルス・パラカゼイ由来小胞を有効成分として含む、眼疾患の予防、治療または改善用組成物を提供する。前記組成物は、薬学的組成物、食品組成物、および医薬部外品組成物を含む。
【0049】
以下、本発明のラクトバチルス・パラカゼイ由来小胞の眼疾患の予防、改善または治療用途について詳細に説明する。
【0050】
本発明において使用される用語「細胞外小胞(Extracellular vesicle)」または「小胞(Vesicle)」とは、多様な細菌から分泌されるナノサイズの膜からなる構造物を意味し、例えば、内毒素(lipopolysaccharide)、毒性タンパク質および細菌DNAとRNAを有する大腸菌のようなグラム陰性菌(gram-negative bacteria)由来小胞または外膜小胞体(outer membrane vesicles,OMVs)およびタンパク質と核酸の他にも、細菌の細胞壁の構成成分であるペプチドグリカン(peptidoglycan)とリポタイコ酸(lipoteichoic acid)を有するマイクロコッカス細菌のようなグラム陽性菌(gram-positive bacteria)由来小胞などがある。
【0051】
本明細書において、前記小胞は、ラクトバチルス・パラカゼイから自然的に分泌されたり、人工的に生産された膜からなるすべての構造物を総称する。
【0052】
前記小胞は、ラクトバチルス・パラカゼイの培養過程で熱処理、高圧処理したり、前記細菌培養液を遠心分離、超高速遠心分離、高圧処理、押出、超音波分解、細胞溶解、均質化、冷凍-解凍、電気穿孔、機械的分解、化学物質処理、フィルターによるろ過、ゲルろ過クロマトグラフィー、フリーフロー電気泳動、およびキャピラリー電気泳動からなる群から選ばれた一つ以上の方法を使って分離できる。また、不純物の除去のための洗浄、収得された小胞の濃縮などの過程をさらに含んでもよい。
【0053】
本発明の前記ラクトバチルス・パラカゼイの培養液または醗酵食品から小胞を分離する方法は、小胞を含むと、特に制限されない。例えば遠心分離、超高速遠心分離、フィルターによるろ過、ゲルろ過クロマトグラフィー、フリーフロー電気泳動、またはキャピラリー電気泳動などの方法、およびこれらの組み合わせを用いて小胞を分離することができ、また、不純物の除去のための洗浄、収得された小胞の濃縮などの過程をさらに含んでもよい。
【0054】
本発明において使用される用語「眼疾患」とは、眼と関連して発病する疾患を意味する。
【0055】
本発明において使用される用語「加齢に伴う眼疾患(age-related ocular disease)」とは、加齢に伴う生体機能の退化に起因した眼疾患だけでなく、実年齢より生体機能が退化して高齢者において主に生じる疾患の症状と類似した症状を示す眼疾患を全部含む概念であり、本発明において、加齢に伴う眼疾患は、AMPKにより媒介される眼疾患または酸化ストレスに起因した眼疾患を含んでもよい。前記加齢に伴う眼疾患は、例えば、レーバー先天性黒内障(LCA)、スタルガルト病、アッシャー症候群、脈絡膜欠如、錐体桿体または桿体錐体ジストロフィー、繊毛病、ミトコンドリア障害、進行性網膜萎縮症、退行性網膜疾患、黄斑変性(age-related macular degeneration,AMD)、湿性AMD、乾性AMD、地図状萎縮症、家族性または後天性黄斑症、網膜光受容体疾患、網膜色素上皮疾患、糖尿病性網膜症(diabetic retinopathy)、嚢胞様黄斑浮腫、網膜剥離、外傷性網膜損傷、医原性網膜損傷、黄斑円孔、黄斑部毛細血管拡張症、神経節細胞疾患、視神経細胞疾患、緑内障(glaucoma)、白内障(cataract)、視神経症、虚血性網膜疾患、未熟児網膜症、網膜血管閉塞症、家族性細動脈瘤(familial macroaneurysm)、網膜血管疾患、眼血管疾患、緑内障による網膜神経細胞退化および虚血性視神経症からなる群から選ばれた一つ以上を含んでもよいが、これらに制限されない。
【0056】
本発明において使用される用語「炎症性眼疾患(inflammatory ocular disease)」とは、炎症性原因因子によって眼に炎症が発生して示す眼疾患を全部含む概念であり、本発明において、炎症性眼疾患は、IL-6により媒介される眼疾患または酸化ストレスに起因した眼疾患を含んでもよい。前記炎症性眼疾患は、例えば、色素性網膜炎(RP)、結膜炎(conjunctivitis)、強膜炎(scleritis)、角膜炎(keratitis)、虹彩炎(iritis)、ブドウ膜炎(uveitis)、脈絡網膜炎(chorioretinitis)、脈絡炎(choroiditis)、および網膜炎(retinitis)などを含んでもよいが、これらに制限されない。
【0057】
本明細書において、前記「網膜地図状萎縮症(retinal geographic atrophy)」は、老化に伴って眼の機能が低下し、血流供給が円滑に行われなくて網膜色素上皮に積もる老廃物であるドルーゼン(drusen)が石灰化することで、網膜と脈絡膜毛細血管が萎縮し、萎縮した部位が地図状に大きくなって中心部位まで広がることになって視力を喪失することになる疾患を意味する。
【0058】
本明細書において、「黄斑変性(Age-related macular degeneration,AMD)」とは、視力に大変重要な役割をする網膜の黄斑部に加齢に伴って様々な変化が伴って生じる病気である。本発明において、前記加齢黄斑変性は、乾性(非滲出性)または湿性(滲出性)を含んでもよい。「乾性AMD」は、網膜にドルーゼンや網膜色素上皮の萎縮のような病変が生じた場合を言い、AMDの90%近くを占める。黄斑にある視細胞が徐々に萎縮して、時間が経つほど視力が次第に低下し、湿性形態に発展することがある。「湿性AMD」は、網膜の下に脈絡膜新生血管が成長して、当該新生血管自体または血管からの出血、滲出などによりひどい視力損傷が発生しやすく、発病後に数ヶ月から数年間に円盤状萎縮、ひどい出血などで失明を招くことができる。
本明細書において、「糖尿病性網膜症(diabetic retinopathy)」とは、糖尿病に現れる微細血管合併症の一つであり、高血糖とこれに伴う様々な生化学的な変化によって網膜の血管透過性増加虚血と新生血管生成のような毛細血管の機能的形態学的変化によって発生する。本発明において、前記糖尿病性網膜症は、非増殖性または増殖性網膜症を含んでもよいが、これに制限されるものではない。「非増殖性網膜症」は、網膜の小さい血管が弱くなって血清が漏れたり、血管が詰まって栄養供給が中断される状態をいう。「増殖性網膜症」は、血液循環が悪いところに新生血管が生じることによって、適切な治療を受けなければ、新生血管で発生する出血により5年以内に失明することになることが知られている。
【0059】
本発明において、前記小胞は、球形の形態を有し、平均直径が10~300nm、10~200nm、10~190nm、10~180nm、10~170nm、10~160nm、10~150nm、10~140nm、10~130nm、10~120nm、10~110nm、10~100nm、10~90nm、10~80nm、10~70nm、10~60nm、10~50nm、20~200nm、20~180nm、20~160nm、20~140nm、20~120nm、20~100nm、または20~80nmであり、好ましくは、20~200nmであってもよいが、これに制限されない。
【0060】
本発明において使用される用語「有効成分として含む」とは、前記ラクトバチルス・パラカゼイ由来小胞の効能または活性を達成するのに十分な量を含むことを意味する。
【0061】
本発明の組成物内の前記小胞の含有量は、疾患の症状、症状の進行程度、患者の状態などによって適切に調節可能であり、例えば、全体組成物重量を基準として0.0001~99.9重量%、または0.001~50重量%であってもよいが、これに限定されるものではない。前記含有量比は、溶媒を除去した乾燥量を基準とした値である。
【0062】
本発明による薬学的組成物は、薬学的組成物の製造に通常使用する適切な担体、賦形剤および希釈剤をさらに含んでもよい。前記賦形剤は、例えば、希釈剤、結合剤、崩解剤、滑沢剤、吸着剤、保湿剤、フィルムコーティング物質、および放出制御添加剤からなる群から選ばれた一つ以上でありうる。
【0063】
本発明による薬学的組成物は、それぞれ通常の方法によって散剤、顆粒剤、徐放性顆粒剤、腸溶性顆粒剤、液剤、点眼剤、エリキシル剤、乳剤、懸濁液剤、酒精剤、トローチ剤、芳香水剤、リモナーデ剤、錠剤、徐放性錠剤、腸溶性錠剤、舌下錠、硬質カプセル剤、軟質カプセル剤、徐放性カプセル剤、腸溶性カプセル剤、丸剤、チンキ剤、軟エキス剤、乾燥エキス剤、流動エキス剤、注射剤、カプセル剤、灌流液、硬膏剤、ローション剤、パスタ剤、噴霧剤、吸入剤、パッチ剤、滅菌注射溶液、またはエアロゾルなどの外用剤などの形態に剤形化して使用でき、前記外用剤は、クリーム、ジェル、パッチ、噴霧剤、軟膏剤、硬膏剤、ローション剤、リニメント剤、パスタ剤またはカタプラズマ剤などの剤形を有することができる。
【0064】
本発明による薬学的組成物に含まれ得る担体、賦形剤および希釈剤としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、オリゴ糖、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、デンプン、アカシアガム、アルギン酸、ゼラチン、カルシウムホスフェート、カルシウムシリケート、セルロース、メチルセルロース、微結晶セルロース、ポリビニルピロリドン、水、メチルヒドロキシベンゾアート、プロピルヒドロキシベンゾアート、タルク、マグネシウムステアレートおよび鉱物油が挙げられる。
【0065】
製剤化する場合には、通常使用する充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩解剤、界面活性剤などの希釈剤または賦形剤を使って調製される。
【0066】
本発明による錠剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤、丸剤、トローチ剤の添加剤としてトウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、小麦デンプン、乳糖、白糖、ブドウ糖、果糖、 D-マンニトール、沈降炭酸カルシウム、合成ケイ酸アルミニウム、リン酸一水素カルシウム、硫酸カルシウム、塩化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、精製ラノリン、微結晶セルロース、デキストリン、アルギン酸ナトリウム、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カオリン、ヨウ素、コロイド状シリカゲル、ヒドロキシプロピルスターチ、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)1928、HPMC2208、HPMC2906、HPMC2910、プロピレングリコール、カゼイン、乳酸カルシウム、プリモジェルなどの賦形剤;ゼラチン、アラビアガム、エタノール、寒天粉、酢酸フタル酸セルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、ブドウ糖、精製水、カゼインナトリウム、グリセリン、ステアリン酸、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、微結晶セルロース、デキストリン、ヒドロキシセルロース、ヒドロキシプロピルスターチ、ヒドロキシメチルセルロース、精製セラック、デンプン糊、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンなどの結合剤が使用でき、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、トウモロコシデンプン、寒天粉、メチルセルロース、ベントナイト、ヒドロキシプロピルスターチ、カルボキシメチルセルロースナトリウム、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、クエン酸カルシウム、ラウリル硫酸ナトリウム、無水ケイ酸、 L-ヒドロキシプロピルセルロース、デキストラン、イオン交換樹脂、酢酸ポリビニル、ホルムアルデヒド処理カゼインおよびゼラチン、アルギン酸、アミロース、グアーガム(Guar gum)、重曹、ポリビニルピロリドン、リン酸カルシウム、ゲル化デンプン、アラビアガム、アミロペクチン、ペクチン、ポリリン酸ナトリウム、エチルセルロース、白糖、ケイ酸マグネシウムアルミニウム、 D-ソルビトール液、硬質無水ケイ酸などの崩解剤;ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、水素化植物油(Hydrogenated vegetable oil)、タルク、石松子、カオリン、ワセリン、ステアリン酸ナトリウム、カカオ脂、サリチル酸ナトリウム、サリチル酸マグネシウム、ポリエチレングリコール4000、PEG6000、流動パラフィン、水素添加大豆油(Lubri wax)、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸亜鉛、ラウリル硫酸ナトリウム、酸化マグネシウム、マクロゴール(Macrogol)、合成ケイ酸アルミニウム、無水ケイ酸、高級脂肪酸、高級アルコール、シリコーン油、パラフィン油、ポリエチレングリコール脂肪酸エーテル、デンプン、塩化ナトリウム、酢酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、 DL-ロイシン、硬質無水ケイ酸などの滑沢剤;が使用できる。
【0067】
本発明による液剤の添加剤としては、水、希塩酸、希硫酸、クエン酸ナトリウム、モノステアリン酸スクロース類、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル類(ツインエステル)、ポリオキシエチレンモノアルキルエテール類、ラノリンエテール類、ラノリンエステル類 、酢酸、塩酸、アンモニア水、炭酸アンモニウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、プロラミン、ポリビニルピロリドン、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムなどが使用できる。
【0068】
本発明によるシロップ剤には、白糖の溶液、他の糖類あるいは甘味剤などが使用でき、必要に応じて芳香剤、着色剤、保存剤、安定剤、懸濁化剤、乳化剤、粘稠剤などが使用できる。
【0069】
本発明による乳剤には、精製水が使用でき、必要に応じて乳化剤、保存剤、安定剤、芳香剤などが使用できる。
【0070】
本発明による懸濁剤には、アカシア、トラガカンタ、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、微結晶セルロース、アルギン酸ナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、HPMC1828、HPMC2906、HPMC 2910等懸濁化剤が使用でき、必要に応じて界面活性剤、保存剤、安定剤、着色剤、芳香剤が使用できる。
【0071】
本発明による注射剤には、注射用蒸留水、0.9%塩化ナトリウム注射液、リンゲル注射液、デキストロース注射液、デキストロース+塩化ナトリウム注射液、PEG、乳酸リンゲル注射液、エタノール、プロピレングリコール、非揮発性油-ゴマ油、綿実油、落花生油、ダイズ油、とうもろこし油、オレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、安息香酸ベンゼンのような溶剤;安息香酸ナトリウム、サリチル酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、ヨウ素、ウレタン、モノエチルアセトアミド、ブタゾリジン、プロピレングリコール、ツイン類、ニコチン酸アミド、ヘキサミン、ジメチルアセトアミドのような溶解補助剤;弱酸およびその塩(酢酸と酢酸ナトリウム)、弱塩基およびその塩(アンモニアおよび酢酸アンモニウム)、有機化合物、タンパク質、アルブミン、ペプトン、ガム類のような緩衝剤;塩化ナトリウムのような等張剤;重亜硫酸ナトリウム(NaHSO)二酸化炭素ガス、メタ重亜硫酸ナトリウム(Na)、亜硫酸ナトリウム(NaSO)、窒素ガス(N)、エチレンジアミンテトラ酢酸のような安定剤;ナトリウムバイサルファイト0.1%、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート、チオウレア、エチレンジアミンテトラ酢酸ジナトリウム、アセトンナトリウムバイサルファイトのような硫酸化剤;ベンジルアルコール、クロロブタノール、塩酸プロカイン、ブドウ糖、グルコン酸カルシウムのような無痛化剤;CMCナトリウム、アルギン酸ナトリウム、ツイン80、モノステアリン酸アルミニウムのような懸濁化剤を含んでもよい。
【0072】
本発明による坐剤には、カカオ脂、ラノリン、ウィテプソル、ポリエチレングリコール、グリセロゼラチン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ステアリン酸とオレイン酸の混合物、スバナル(Subanal)、綿実油、落花生油、ヤシ油、カカオバター+コレステロール、レシチン、ラネットワックス、モノステアリン酸グリセロール、ツインまたはスパン、イムハウゼン(Imhausen)、モノレン(モノステアリン酸プロピレングリコール)、グリセリン、アデプスソリダス(Adeps solidus)、ブチラムテゴ-G(Buytyrum Tego-G)、セベスファーマ16(Cebes Pharma 16)、ヘキサライドベース95、コトマー(Cotomar)、ヒドロコテSP、S-70-XXA、S-70-XX75(S-70-XX95)、ヒドロコテ(Hydrokote)25、ヒドロコテ711、イドロポスタル(Idropostal)、マッサエストラリウム(Massa estrarium、A、AS、B、C、D、E、I、T)、マッサ-MF、マスポール、マスポール-15、ネオスポスタル-N、パラマウント-B、スポシロ(OSI、OSIX、A、B、C、D、H、L)、坐剤基剤IVタイプ(AB、B、A、BC、BBG、E、BGF、C、D、299)、スポスタル(N、Es)、ウェコビー(W、R、S、M、Fs)、テゲスタートリグリセライド基剤(TG-95、MA、57)のような基剤が使用できる。
【0073】
経口投与のための固形製剤には、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤などが含まれ、このような固形製剤は、前記抽出物に少なくとも一つ以上の賦形剤、例えば、デンプン、カルシウムカーボネート(calcium carbonate)、スクロース(sucrose)またはラクトース(lactose)、ゼラチンなどを混ぜて調製される。また、単純な賦形剤以外に、マグネシウムステアレート、タルクのような潤滑剤も使用される。
【0074】
経口投与のための液状製剤としては、懸濁剤、内用液剤、乳剤、シロップ剤などが該当するが、頻用される単純希釈剤である水、リキッドパラフィン以外に様々な賦形剤、例えば湿潤剤、甘味剤、芳香剤、保存剤などが含まれ得る。非経口投与のための製剤には、滅菌水溶液、非水性溶剤、懸濁剤、乳剤、凍結乾燥製剤、坐剤が含まれる。非水性溶剤、懸濁剤としては、プロピレングリコール(propylene glycol)、ポリエチレングリコール、オリーブオイルのような植物油、エチルオレートのような注射可能なエステルなどが使用できる。
【0075】
本発明による薬学的組成物は、薬学的に有効な量で投与する。本発明において、「薬学的に有効な量」は、医学的治療に適用可能な合理的なベネフィット/リスクの割合で疾患を治療するのに十分な量を意味し、有効用量レベルは、患者疾患の種類、重症度、薬物の活性、薬物に対する感度、投与時間、投与経路および排出比率、治療期間、同時使用される薬物を含む要素およびその他医学分野によく知られた要素によって決定できる。
【0076】
本発明による薬学的組成物は、個別治療剤として投与したり他の治療剤と併用して投与でき、従来の治療剤とは順次にまたは同時に投与でき、単一または多重投与できる。上記した要素を全部考慮して副作用なしで最小限の量で最大効果を得ることができる量を投与することが重要であり、これは、本発明の属する技術分野における通常の技術者によって容易に決定できる。
【0077】
本発明の薬学的組成物は、個体に多様な経路で投与できる。投与のすべての方式は、予想され得るが、例えば、経口服用、皮下注射、腹腔投与、静脈注射、筋肉注射、脊髄の周囲空間(硬膜内)注射、舌下投与、頬粘膜投与、直腸内挿入、膣内挿入、眼球投与、耳投与、鼻腔投与、吸入、口または鼻を通した噴霧、皮膚投与、経皮投与などにより投与できる。
【0078】
本発明において、前記眼球投与は、結膜嚢内投与、硝子体内投与、網膜下投与、脈絡膜上腔投与、結膜下投与およびテノン嚢下投与からなる群から選ばれた一つであってもよいが、これらに制限されるものではない。
【0079】
本発明の薬学的組成物は、治療する疾患、投与経路、患者の年齢、性別、体重および疾患の重症度等などの様々な関連因子とともに、活性成分である薬物の種類によって決定される。具体的に、本発明による組成物の有効量は、患者の年齢、性別、体重により変わることができ、一般的には、体重1kg当たり0.001~150mg、好ましくは、0.01~100mgを毎日または隔日投与したり1日に1~3回に分けて投与できる。しかし、投与経路、肥満の重症度、性別、体重、年齢などによって増減できるので、前記投与量がいかなる方法でも本発明の範囲を限定するものではない。
【0080】
本発明において「個体」とは、病気の治療を必要とする対象を意味し、より具体的には、ヒトまたは非ヒトである霊長類、マウス(mouse)、ラット(rat)、イヌ、ネコ、ウマ、およびウシなどの哺乳類であってもよいが、これらに制限されるものではない。
【0081】
本発明において「投与」とは、任意の適切な方法で個体に所定の本発明の組成物を提供することを意味する。
【0082】
本発明において「予防」とは、目的する疾患の発病を抑制したり遅延させるすべての行為を意味し、「治療」とは、本発明による薬学的組成物の投与により目的する疾患とそれによる代謝異常症状が好転したり有益に変更されるすべての行為を意味し、「改善」とは、本発明による組成物の投与により目的する疾患に関連したパラメーター、例えば症状の程度を減少させるすべての行為を意味する。
【0083】
また、本発明は、ラクトバチルス・パラカゼイ由来小胞を有効成分として含む食品組成物を提供する。
【0084】
前記食品組成物は、健康機能性食品組成物であってもよいが、これに制限されるものではない。
【0085】
本発明の前記小胞を食品添加物として使用する場合、そのまま添加したり他の食品または食品成分とともに使用でき、通常の方法により適切に使用できる。有効成分の混合量は、使用目的(予防、健康または治療的処置)によって適宜に決定できる。一般的に、食品または飲料の製造時に、本発明の小胞は、原料に対して15重量%以下、または10重量%以下の量で添加できる。しかし、健康および衛生を目的としたりまたは健康調節を目的とする長期間の摂取の場合、前記量は、前記範囲以下であってもよく、安全性の観点から何の問題もないので、有効成分は、前記範囲以上の量でも使用できる。
【0086】
前記食品の種類には、特別な制限はない。前記物質を添加できる食品の例としては、肉類、ソーセージ、パン、チョコレート、キャンディ類、スナック類、菓子類、ピザ、ラーメン、その他麺類、ガム類、アイスクリーム類を含む酪農製品、各種スープ、飲料、茶、ドリンク剤、アルコール飲料およびビタミン複合剤などがあり、通常の意味における健康機能食品を全部含む。
【0087】
本発明による健康飲料組成物は、通常の飲料のように様々な香味剤または天然炭水化物などを追加成分として含有できる。上で述べた天然炭水化物は、ブドウ糖および果糖のような単糖類、マルトースおよびスクロースのような二糖類、デキストリンおよびシクロデキストリンのような多糖類、およびキシリトール、ソルビトールおよびエリスリトールなどの糖アルコールである。甘味剤としては、ソーマチン、ステビア抽出物のような天然甘味剤や、サッカリン、アスパルテームのような合成甘味剤などを使用できる。前記天然炭水化物の割合は、本発明の組成物100mL当たり一般的に約0.01~0.20g、または約0.04~0.10gである。
【0088】
上記以外に、本発明の組成物は、様々な栄養剤、ビタミン、電解質、風味剤、着色剤、ペクチン酸およびその塩、アルギン酸およびその塩、有機酸、保護性コロイド増粘剤、pH調節剤、安定化剤、防腐剤、グリセリン、アルコール、炭酸飲料に使用される炭酸化剤などを含有できる。その他に、本発明の組成物は、天然果物ジュース、果物ジュース飲料および野菜飲料の製造のための果肉を含有できる。このような成分は、独立してまたは組み合わせて使用できる。このような添加剤の割合は、大きく重要なことではないが、本発明の組成物100重量部当たり0.01~0.20重量部の範囲で選択されることが一般的である。
【0089】
また、本発明は、ラクトバチルス・パラカゼイ由来小胞を有効成分として含む吸入用組成物形態で提供できる。
【0090】
吸入投与剤の場合、当業界に公知となった方法により剤形化でき、好適な推進剤、例えば、ジクロロフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素または他の好適な気体を使って、加圧パックまたは煙霧機からエアロゾル スプレー形態で便利に伝達できる。加圧エアロゾルの場合、投薬単位は、計量された量を伝達するバルブを提供して決定できる。例えば、吸入器または吹込器に使用されるゼラチンカプセルおよびカートリッジは、化合物およびラクトースまたはデンプンのような好適な粉末基剤の粉末混合物を含有するように剤形化できる。
【0091】
また、本発明は、ラクトバチルス・パラカゼイ由来小胞を有効成分として含む医薬部外品組成物の形態で提供できる。
【0092】
本発明において使用される用語「医薬部外品」は、ヒトや動物の病気を診断、治療、改善、軽減、処置または予防する目的で使用される物品のうち医薬品より作用が軽微な物品を意味するものである。例えば薬事法によれば、医薬部外品とは、医薬品の用途に使用される物品を除いたものであり、ヒト・動物の病気の治療や予防に使用される繊維・ゴム製品、人体に対する作用が軽微であるか、直接作用せず、機構または機械でないものとこれと似ているもの、感染病を防ぐための殺菌・殺虫剤なども含まれる。
【0093】
本発明において、医薬部外品組成物は、眼科用組成物の剤形に剤形化して使用でき、例えば眼科用液剤、点眼剤、眼軟膏、注射液、および洗眼薬(eyewash)からなる群から選ばれる一つ以上の剤形を使用できるが、これらに制限されない。
【0094】
また、本発明は、ラクトバチルス・パラカゼイ由来小胞を有効成分として含む、眼疾患治療薬物伝達用組成物を提供する。
【0095】
本発明において使用される用語「薬物伝達」とは、特定の臓器、組織、細胞または細胞小器官に薬物を伝達するために、本発明による組成物に薬物をローディングして伝達するすべての手段または行為を意味する。
【0096】
以下、本発明の理解を助けるために好ましい実施例を提示する。しかしながら、下記の実施例は、本発明をより容易に理解するために提供されるものに過ぎず、下記実施例によって本発明の内容が限定されるものではない。
【実施例
【0097】
[実施例1:ラクトバチルス・パラカゼイ由来小胞の分離]
ラクトバチルス・パラカゼイ由来小胞(extracellular vesicle;EV)を分離するために、様々なラクトバチルス・パラカゼイを自体製作した培地に接種し、37℃で200rpmで吸光度OD600nmが1.0~1.5になるまで培養した後に、培地に再接種して培養した。そして、菌体が含まれている培養液を回収して、10,000gで4℃で20分間遠心分離して、菌体が除去された上澄み液を獲得した。獲得した上澄み液は、さらに、0.22μmのフィルターを用いてろ過した。ろ過した上澄み液は、100kDa Pellicon 2 Cassetteフィルターメンブレン(Merck Millipore)とMasterFlex pump system(Cole-Parmer)を用いて50mL以下の体積に濃縮した。濃縮させた上澄み液は、さらに、0.22μmのフィルターを用いてろ過させて、ラクトバチルス・パラカゼイ由来小胞を分離した。上澄み液に含まれているタンパク質の量は、Pierce BCA Protein Assay kit(Thermo Fisher Scientific)を用いて測定した。分離した小胞に対して下記の実験を実施した。
【0098】
[実施例2:ラクトバチルス・パラカゼイ由来小胞の薬物動態学的特性の分析]
ラクトバチルス由来小胞の経口投与時に薬物動態学的特性を調べるために、蛍光染色試薬であるCy7-NHSで染色した小胞をマウスに経口投与して、投与直前から投与後72時間まで身体の各臓器で発現した蛍光を測定した。
【0099】
図1に示されたように、蛍光染色されたラクトバチルス・パラカゼイ由来小胞は、経口投与後1時間が経過すると、胃で蛍光シグナルが観察され、3時間には、胃と小腸、大腸、そして肺に若干のシグナル数値が記録され、6時間には、胃、小腸、大腸、肺だけでなく、脳までシグナルが現れることを確認できた。このような蛍光シグナルは、経口投与6時間から24時間の間に最も強いシグナルを示し、次第に減少する傾向を示し、48時間後にはほとんど消えた。
【0100】
また、図2に示されたように、ラクトバチルス・パラカゼイ由来小胞を経口投与した後、中枢神経系に分布する様相を評価したとき、経口投与3時間後から中枢神経系に分布し、6時間目にピークを示し、48時間後からシグナルがなくなることを観察した。
【0101】
前記結果から、ラクトバチルス・パラカゼイ由来小胞を経口投与したとき、粘膜を通過して体内に吸収されて、様々な臓器に分布することが分かり、特に血管脳障壁(BBB,brain biood barrier)を通過して網膜を含む中枢神経系に移動して分布することが分かる。
【0102】
[実施例3:LPSによる炎症反応の発生にラクトバチルス・パラカゼイ由来小胞の抗炎症効果の評価]
ラクトバチルス・パラカゼイ由来小胞の抗炎症効果を確認するために、マウスマクロファージ(RAW264.7細胞)にラクトバチルス・パラカゼイ由来小胞を各10μg/mlおよび100μg/mlずつ前処理した後、炎症誘導物質であるLPS(Lipopolysaccharide)を100ng/ml処理した後、炎症関連マーカーであるIL-6の分泌量を測定した。また、ラクトバチルス・パラカゼイ由来小胞を経口投与が可能であるかを評価するために、前記小胞に熱処理、酸処理および胆汁処理を行った後、IL-6の分泌量を測定した。
【0103】
その結果、図3に示されたように、陽性対照群であるLPS 100ng/ml処理群と比較して、ラクトバチルス・パラカゼイ由来小胞がIL-6の分泌量を顕著に減少させることを確認した。また、ラクトバチルス・パラカゼイ由来小胞に熱処理、酸処理、および胆汁処理時にも、マクロファージでのIL-6の分泌抑制効果が維持されることを確認した。
【0104】
以上の結果は、ラクトバチルス・パラカゼイ由来小胞が、熱や酸にも安定しており、小胞を経口投与したとき、抗炎症効果が維持できることが分かる。
【0105】
[実施例4:代謝障害調節核心シグナル伝達であるAMPKシグナル活性化に及ぼすラクトバチルス・パラカゼイ由来小胞の効果の評価]
AMPK(AMP-activated protein kinase)シグナルは、自食作用(autophagy)などの機序を通じてエネルギーの枯渇時に発生する代謝障害を抑制する。本発明では、ラクトバチルス・パラカゼイ由来細胞外小胞(MDH-001-CM)を細胞で処理してAMPK活性化に及ぼす影響を評価した。60mmの細胞培養ペトリ皿に細胞を2×10個ずつ分注したDMEM無血清培地を入れて2時間培養した。以後、ラクトバチルス・パラカゼイ由来小胞を0、0.1、1、10μg/mLの濃度で1時間処理し、比較群であるインスリン(1μM)とメトホルミン(50mM)も、1時間処理した。細胞溶解アッセイを進めるために、サンプルを処理したペトリ皿を氷の上に載置し、上澄み液を吸入(suction)した後、冷たいPBSバッファーを5mLずつ入れて、2回洗浄した。溶解バッファー(Lysis buffer)1mLにprotease/phosphatase抑制剤10μLを入れてよく混ぜた後、各ディッシュに細胞溶解バッファー100μLずつを滴下して、5分間氷でインキュベーションした。スクラッパーで細胞を取り外した後、1.5mLマイクロチューブに移して、ボルテックスおよび氷でのインキュベーション過程を各1分ずつ20分間繰り返した。以後、14,000rpm、10分、4℃の条件で遠心分離し、溶解したサンプル上澄み液を新しい1.5mLマイクロチューブ2個にそれぞれ5μL、70μLずつ移した。5μLを移したマイクロチューブは、-20℃に保管し、70μLを移したマイクロチューブには、5Xサンプルバッファーを16.5μL入れた後、100℃で5分間ボイルした。ボイルしたサンプルは、-20℃に保管した。BCA定量分析を進めるために、溶解したサンプル上澄み液5μLずつを入れた1.5mLマイクロチューブは、常温に取り出しておいて、滅菌蒸留水20μLを入れてボルテックスした後、スピンダウンした。ウシ血清アルブミン(BSA)を滅菌蒸留水に2mg/mLの濃度で溶かした後、1/2ずつ希釈して2、1、0.5、0.25、0.125、0.0625、0.03125、0mg/mLのストックを製造した。96ウェルポリスチレンプレートにBSA濃度別に25μLずつ3個のウェルに入れ、溶解したサンプルも25μLずつ1個のウェルに入れた。8mLのBCA Protein Assay Reagent Aと160μLのBCA Protein Assay Reagent Bを混合した後、200μLずつウェルに入れた。37℃インキュベーターで30分間反応させた後に、SpectraMax M3 microplate reader(Molecular Devices,USA)を用いて562nmで吸光度を測定した。ウェスタンブロットのためにTris-glycine SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動を進める過程で10%ゲルを製造し、各サンプル当たりタンパク質50μgを定量してローディングした。ニトロセルロース膜にトランスファーした後に、5%スキムミルクでブロッキングする過程を経て、AMPKα抗体は1:400、phospho-AMPKα抗体は1:400,β-actin抗体は1:1,000の割合で5%スキムミルクに希釈してメンブレンとともに一晩中混和した。1X PBST(0.05%tween20が入っているPBS)溶液で5分ずつ3回洗った後、抗ウサギIgG、HRP-linked抗体を1:1,000の割合で希釈して1時間メンブレンと混和した。1X PBST溶液で5分ずつ3回洗った後、West-Q Chemiluminescent Substrate Kitのsolution Aとsolution Bを1:1で混ぜた溶液をメンブレンに十分に散布し、Chemidoc機器でバンドを確認した。
【0106】
その結果、図4に示されたように、ラクトバチルス・パラカゼイ由来小胞(MDH-001-CM)の処理濃度に依存的にリン酸化したAMPKの発現が増加することを確認した。これは、ラクトバチルス・パラカゼイ由来小胞が、用量依存的にAMPKシグナルを活性化して自食作用を誘導し、代謝機能障害を抑制して細胞の恒常性を増加させることが分かる。
【0107】
[実施例5:酸化ストレス(oxidative stress)による眼疾患ウサギモデルでラクトバチルス・パラカゼイ由来小胞の治療効果の評価]
酸化ストレスは、加齢黄斑変性(AMD)、早産児網膜症、網膜光損傷、緑内障および白内障のような無数に多くの眼疾患において病理学的観点から重要な役割をするという点は知られている(文献Beatty S., Koh H., Phil M.,Henson D., and Boulton M., “The role of oxidative stress in the pathogenesis of age-related macular degeneration”, Surv. Ophthalmol., 45(2):115-134 (2000) 参照)。
【0108】
これより、酸化ストレスによる眼疾患を誘発するために、ウサギに酸化ストレスによって黄斑変性を誘発する物質であるSI(Sodium iodate)を単回静脈内投与した。ラクトバチルス・パラカゼイ由来小胞の治療効果を評価するために、ラクトバチルス・パラカゼイ由来小胞(MDH-001)0.25mg/kgおよび2.5mg/kgを誘発3日前から誘発後7日目まで毎日1回ずつ経口投与した。評価方法は、変性網膜の面積(retinal degenerated area)を眼底カメラ(TRC-50IX,TOPCON,Japan)を用いて疾患誘発後7日目の最後投与日に撮影して分析した(図5参照)。
【0109】
その結果、図6に示されたように、低用量小胞(MDH-001)処理群(G3)と高用量小胞(MDH-001)処理群(G4)において陽性対照群(G2)に比べて網膜色素上皮細胞層(retinal pigment epithelium,RPE)の変性面積が統計的に有意に減少し、これは用量依存的であることを確認した。
【0110】
一方、ラクトバチルス・パラカゼイ由来小胞の黄斑変性治療効果を評価するために、ウサギの右眼球に散瞳剤(ミドリアシル1%点眼液)を点眼した後、動物を麻酔し、眼底カメラを用いて、眼底を撮影した結果を図7に示した。
【0111】
図7に示されたように、陰性対照群(G1)は黄斑変性がほとんど見られず、疾患が誘発された陽性対照群(G2)においては黄斑変性が明確に発生することが分かった。また、低用量小胞処理群(G3)と高用量小胞処理群(G4)においては陽性対照群に比べて黄斑変性が明確に減少していることが分かり、高用量処理群において減少効果が一層明確に現れた。
【0112】
前記結果を通じて、本発明のラクトバチルス・パラカゼイ由来小胞は、酸化ストレスによる眼疾患の発生を効率的に抑制することが分かった。特に病原性因子による炎症性媒介体の分泌を抑制するだけでなく、代謝ストレスに対する抵抗性をAMPKシグナルを通じて増加させて、細胞老化に伴う眼疾患の病因を効率的に調節できることを確認した(図8参照)。
【0113】
したがって、本発明のラクトバチルス・パラカゼイ由来小胞は、細胞老化関連および炎症性眼疾患の改善、予防、または治療用途に使用できると期待される。
【0114】
上述した本発明の説明は、例示のためのものであって、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者は、本発明の技術的思想や必須的な特徴を変更することなく、他の具体的な形態に容易に変形が可能であることが理解することができる。したがって、以上で記述した実施例は、全ての面において例示的なものであり、限定的でないものと理解すべきである。
【産業上の利用可能性】
【0115】
本発明によるラクトバチルス・パラカゼイ由来小胞は、人体に吸収された後、血液脳関門(blood brain barrier,BBB)を通過して中枢神経系に分布し、細胞に吸収された後、難治性炎症疾患の主な媒介体であるIL-6の分泌を効果的に抑制し、AMPKシグナルを活性化して代謝機能を増加させて、細胞老化および炎症による眼疾患の発生を効率的に抑制することを確認した。ひいては、酸化ストレスによる眼疾患ウサギモデルに前記小胞を投与したとき、酸化ストレスによる網膜変性の発生を有意に抑制することを確認したところ、本発明によるラクトバチルス・パラカゼイ由来小胞は、眼疾患の改善、予防、または治療剤として幅広く使用できるので、産業上の利用可能性がある。
図1
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図8