(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-04
(45)【発行日】2023-12-12
(54)【発明の名称】センサ素子を有する測定ブリッジを有するセンサチップを有するメンブレンを有する圧力センサ
(51)【国際特許分類】
G01L 9/00 20060101AFI20231205BHJP
【FI】
G01L9/00 303Z
(21)【出願番号】P 2022536503
(86)(22)【出願日】2020-12-13
(86)【国際出願番号】 DE2020000344
(87)【国際公開番号】W WO2021115516
(87)【国際公開日】2021-06-17
【審査請求日】2022-06-24
(31)【優先権主張番号】102019008761.5
(32)【優先日】2019-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】522232547
【氏名又は名称】プリーグニッツ ミーコージスティームテーヒニーク ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】PRIGNITZ MIKROSYSTEMTECHNIK GMBH
【住所又は居所原語表記】Margarethenstrase 61 19322 Wittenberge (DE)
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】ギスク,マーティン
(72)【発明者】
【氏名】シュトゥルツェベッヒャー,シュテフェン
(72)【発明者】
【氏名】アーント,ディートマール
【審査官】松山 紗希
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-004591(JP,A)
【文献】特開昭56-107127(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 7/00-23/32
27/00-27/02
H01L 29/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧力センサであって、
前記圧力センサは、
ハウジング(4)、ネジ片(5)、及び、測定ブリッジを有する同じ直径の円形のリング上に配置されたセンサチップ(2、3)を有する円形のメンブレン(1)を有し、
前記測定ブリッジはセンサ素子を有して互いに並列に接続されており、
作動媒体を前記メンブレン(1)に適用することができ、
前記メンブレン(1)は前記ハウジング(4)内に固定されており、
互いに間隔をあけて配置され、互いに対して直角でずらして配置されている少なくとも2つのセンサチップ(2、3)は、圧力がかかると曲がる前記メンブレン(1)の少なくとも1つの面に位置づけられ、前記2つのセンサチップ(2、3)における曲げ負荷からのブリッジ応力における変化が、ほぼ同じであるが、振幅に関しては逆の符号を有し、結果として互いに相殺するという点で、
前記ネジ片(5)を有する前記圧力センサがねじ込まれる際に生じる機械的応力が補償される、センサ。
【請求項2】
請求項1に記載の圧力センサであって、
前記測定ブリッジの前記センサ素子がモノリシックシリコンブリッジ配置であるか、または前記測定ブリッジの前記センサ素子が圧電素子(30)で構成されていることを特徴とする、センサ。
【請求項3】
請求項1に記載の圧力センサであって、
前記センサチップ(2、3)は、前記メンブレン(1)の中心から外れて配置されていることを特徴とする、センサ。
【請求項4】
請求項1に記載の圧力センサであって、
前記メンブレン(1)は、前記メンブレンの片面または両面に作動媒体を適用できるような方法で、配置されていることを特徴とする、センサ。
【請求項5】
請求項1または
4に記載の圧力センサであって、
前記少なくとも2つのセンサチップ(2、3)は、前記センサ素子を有する前記測定ブリッジを有し、
前記センサチップは互いに間隔をあけて配置され、互いに対してある角度でずらして配置されており、
前記センサチップは、前記メンブレン(1)の前記面に位置し、
前記メンブレン(1)に対して、前記作動媒体を片面に適用可能であり、
前記面は、前記作動媒体から離れる方向を向いていることを特徴とする、センサ。
【請求項6】
請求項1または
4に記載の圧力センサであって、
前記センサチップ(2、3)が、作動媒体から発せられるのと同じ前記機械的応力が前記センサチップ(2、3)に適用されるような方法で、前記メンブレン(1)上に配置されていることを特徴とする、センサ。
【請求項7】
請求項1に記載の圧力センサであって
、
前記ハウジング(4)が前記メンブレン(1)の領域で覆われたキャビティを有し、
前記キャビティは、作動媒体が通過するための開口部および/またはチャネルを有し、
前記キャビティは、前記センサチップ(2、3)を有する面とは反対側の前記メンブレン(1)の面に位置していることを特徴とする、センサ。
【請求項8】
請求項1に記載の圧力センサであって、
前記メンブレン(1)はハウジング(4)の壁または壁の一部であり、
前記ハウジング(4)は前記壁で覆われたキャビティを有し、
前記センサチップ(2、3)は前記メンブレン(1)の表面上にキャビティの中に向いて位置付けられていることを特徴とする、センサ。
【請求項9】
請求項
8に記載の圧力センサであって、
前記メンブレン(1)が円錐形または円錐台状であり、前記メンブレン(1)が円錐台状のリング内に位置していることを特徴とする、センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサエレメントを有する測定ブリッジを有するセンサチップを有するメンブレンを有する圧力センサに関し、メンブレンは、ハウジング内に、キャリアと共に、またはハウジングの一部として固定され、このメンブレンに作動媒体を適用することができる。
【背景技術】
【0002】
外乱補償を有するケース入りMEMSコンポーネントは、DE102017214846A1から既知である。この目的のために、このMEMSコンポーネントは、ハウジング内に配置され、MEMSコンポーネントは、MEMSコンポーネント表面の少なくとも50%を介してハウジングと直接、機械的に接触している。外乱補償のための2つの測定配置が与えられ、一方はMEMSコンポーネントの一部であり、他方はハウジングの一部である。そこから確立した測定変数を組み合わせることで、外乱補償された測定変数が得られる。
【0003】
DE202005021706U1は、少なくとも1つの測定素子および補償素子を有するセンサ素子を含む。これらは、圧電特性および焦電特性を有し、測定電極を備えている。測定信号の干渉信号を補正するために使用される補正信号を、補償素子から導出することができる。
【0004】
EP3418707A1は、測定メンブレンに接続される圧力チャネルの壁が2部品設計である取付け可能な圧力センサを開示している。圧力チャネルの2コンポーネント設計により、圧力入力素子の材料を、流体、ならびに流体に関連する化学的、熱的、および機械的負荷に特異的に適合させることができる。
【0005】
これらの文書で紹介されている圧力センサは、外部寄生誤差の影響に耐えることができる対称的な配置の測定素子を用いている。しかしながら、これらの解決策は、実際に測定される圧力に対する感度の点で制限される。結果として、達成可能な精度には限界がある。
【0006】
さらに、一体化したブリッジ構造を有する小型のシリコンチップは既知であり、このチップはより高い感度を有する。したがって、メンブレンとセンサチップとを有する圧力センサデバイスは、DE10114862B3から既知である。メンブレンの片面には作動媒体が適用されている。センサチップは、作動媒体から離れる方に向くメンブレンの面(作動媒体と反対側の面)に配置される。当該センサチップは、4つのセンサ素子を有する測定ブリッジを有する。4つのセンサ素子は、平行に配置され、2対を形成し、互いに直角に配置される。センサチップは、メンブレンの端に配置され、これにより非対称の構造がもたらされる。圧力センサデバイスの信頼性の高い動作が保証されるように、冗長性のために第2のセンサチップを配置することができる。この欠点は、この構造の結果として、例えば、圧力センサデバイスのねじ込みやセンサハウジングへの他の任意の機械的負荷に起因する機械的応力が、センサの測定結果や出力信号に影響を与える可能性があることである。
【0007】
US2015/0377729A1より、測定対象機器に取り付けられる圧力検出デバイスは既知である。取り付け時に生じる歪み検出素子の変形を複数の耐歪みブリッジを介して圧力値として検出し、媒体に起因する圧力および測定される圧力を補正するために使用する。
【0008】
DE60028678T2は、物理量または動的量を測定するためのデバイスに組み込まれた測定センサの故障または異常を判断するためのシステムを含む。このシステムは、故障や損傷により、ブリッジ回路内の抵抗値が変化した場合に、センサの故障を検出するのに適している。この目的のために、ブリッジ回路の2つの中点間の電圧差、およびブリッジ回路の2つの中点の一方の電圧レベルと基準電圧源の基準電圧レベルとの電圧差に基づいて、ブリッジ回路の故障判定が行われる。メンブレンの固定に起因し、測定センサに作用する力は検出されない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
請求項1に示された発明の根拠となる目的は、圧力センサの固定および/または設置に起因する機械的応力が測定結果および/または測定信号に影響を与えないような方法で圧力センサを設計することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的は、請求項1に記載された特徴により達成される。
【0011】
センサ素子を有する測定ブリッジを有するセンサチップを有するメンブレンを有する圧力センサであって、メンブレンが、ハウジング内に、キャリアと共に、またはハウジングの一部として固定され、このメンブレンに作動媒体を適用することができる。圧力センサは、特に、圧力センサの固定および/または設置から生じる機械応力が測定結果および/または測定信号に影響しないことを特徴とする。
【0012】
この目的のために、少なくとも2つのセンサチップは、互いに間隔をあけて配置され、互いに斜めに(ある角度で)オフセット(ある角度をなして、斜めに配置)されている。少なくとも2つのセンサチップは、圧力を加えることによって曲がるメンブレンの少なくとも1つの面に設置されている。測定ブリッジは、メンブレンの固定に起因し、したがってメンブレンに作用する少なくとも1つの力、およびこの結果生じる少なくとも1つの機械的応力が補償されている、または補償されることになるような方法で設計され、および/またはコントローラに接続される。
【0013】
圧力センサを配置および/または固定する際、機械的応力が発生し、測定誤差の原因となる。ハウジングに曲げ応力が適用されると、力が適用される箇所によって異なる影響が出ることが分かっている。センサチップを斜めに、互いに間隔を空けて配置することによる影響は、2つのセンサチップの曲げ負荷によるブリッジ電圧の変化はほぼ同じになるが、振幅に関しては、符号が逆になることである。曲げ負荷から生じるメンブレン上の応力は、同じ半径で互いに直角に配置された測定ブリッジ(したがってセンサチップ)に関して、同じ大きさであるが符号は逆となる。他方、測定される圧力によって生じるセンサチップの測定ブリッジ上の応力は、同じ符号を有する。メンブレンの同じ半径上に、互いに直角に配置された測定ブリッジを平行に接続することにより、当該測定ブリッジは、結果として、平行接続により平均化された2つの応力を与える。曲げに起因する測定ブリッジの応力は、符号が逆であるために互いに相殺し、互いに補償する。したがって、この配置は、メンブレンに作用する少なくとも1つの力およびこの結果生じる1つまたは複数の機械的応力を補償するのに適している。圧力に起因する測定ブリッジの応力は、両方のセンサチップにおいて同じ符号を有する。
【0014】
本発明の有利な構成を、請求項2~11に示す。
【0015】
センサチップの測定ブリッジは、メンブレンの固定に起因し、したがってメンブレンに作用する少なくとも1つの力、およびそこから生じる少なくとも1つの機械的応力を補償することができるような方法で、任意選択で、互いに平行に接続され、したがって補償されている、または補償されることになる。
【0016】
センサチップの測定ブリッジは、任意選択で互いに直角にオフセットされる。
【0017】
測定ブリッジのセンサ素子は、モノリシックシリコンブリッジ配置であるか、または圧電素子で構成されることができる。
【0018】
センサチップは、任意選択でメンブレン上の中心から外れて配置される。
【0019】
円形のメンブレンの場合、同じ直径の円形のリング上にセンサチップを配置することができる。
【0020】
メンブレンは、任意選択で、当該メンブレンの片面または両面に作動媒体を適用することができるような方法で配置される。
【0021】
少なくとも2つのセンサチップは、センサ素子を有する測定ブリッジを有する。このセンサチップは、互いに間隔をあけて配置され、互いに斜めにオフセットされている。センサチップをメンブレンの面に位置付けることができ、メンブレンに対して、作動媒体を片面に適用可能であり、当該面は、作動媒体から離れる方向を向いている。
【0022】
センサチップは、作動媒体から発せられるのと同じ機械的応力がセンサチップにかかるような方法で、任意選択でメンブレン上に配置される。
【0023】
メンブレンは、任意選択で、ハウジング内に配置される。ハウジングは、メンブレンの領域で覆われたキャビティを有し、このキャビティは、作動媒体が通過するための開口部および/またはチャネルを有する。キャビティは、センサチップを有する面とは反対のメンブレンの面に位置づけられる。
【0024】
メンブレンは、ハウジングの壁または壁の一部とできる。この目的のために、ハウジングは、メンブレンを有する壁で、またはメンブレンとしての壁で覆われたキャビティを有する。センサチップは、キャビティの中に向けてメンブレンの表面上に位置づけられる。したがって、メンブレンを、表側に利用することができる。また、したがって、メンブレンを、例えば、容器の壁の一部とすることもできる。
【0025】
メンブレンは、任意選択で円錐形もしくは円錐台状であるか、または円錐台状のリング内に位置づけられる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
本発明の例示的実施形態を、それぞれの場合において、図面において原理的に描いており、以下により詳細に説明する。
【
図2】
図2は、ハウジングと固定素子としてのネジ片を有する圧力センサを示す。
【
図3】
図3は、メンブレンを有する圧力センサを示す。
【
図4】
図4は、表側にメンブレンを有する圧力センサを示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
圧力センサは、実質的に、センサ素子を有する測定ブリッジを有するセンサチップ2、3を有するメンブレン1から構成される。
【0028】
図1は、圧力センサのメンブレン1を基本的な表現で示す。
【0029】
互いに間隔を空けて配置され、互いに斜めにオフセットされている2つのセンサチップ2、3がメンブレン1上に配置されている。メンブレン1の固定に起因し、したがってメンブレン1に作用する少なくとも1つの力を補償することができ、したがって補償され、または補償されることになるような方法で、センサチップ2、3の測定ブリッジを設計および/またはコントローラに接続する。この目的のために、測定ブリッジを、機械的な外乱を補償することができるような方法で、互いに並列に接続することができる。測定ブリッジは、さらに、互いに直角にオフセットすることができる。測定ブリッジのセンサ素子は、モノリシックシリコンブリッジ配置である。
【0030】
メンブレン1の固定に起因し、したがってメンブレン1に作用する力は、特に、センサチップ2、3におけるほぼ同じ振幅および反対の作動方向の機械的応力からの機械的な外乱である。したがって、曲げ負荷に起因するメンブレン上の応力は、同じ半径で、互いに直角に配置された測定ブリッジ(したがってセンサチップ)に関して、同じ大きさであるが逆の符号を有する。他方、測定される圧力によって生じるセンサチップの測定ブリッジの応力は、同じ符号を有する。メンブレンの同じ半径上に、互いに直角に配置された測定ブリッジを平行に接続することにより、当該測定ブリッジは、結果として、平行接続により平均化された2つの応力を与える。曲げに起因する測定ブリッジの応力は、符号が逆であるために互いに相殺し、互いに補償する。
【0031】
図2は、ハウジング4と固定素子としてのネジ片5を有する圧力センサを示し、
図3は、メンブレン1を有する圧力センサを、それぞれの場合で原理的な表現で示す。
【0032】
メンブレン1は、ネジ片5と六角ナット6とでハウジング4内に固定されている。ハウジング4は、メンブレン1の領域で覆われたキャビティを有し、このキャビティは、作動媒体が通過するための開口部および/またはチャネルを有する。キャビティは、センサチップ2、3を有する面とは反対のメンブレン1の面に位置している。
【0033】
例えば、圧力センサデバイスを有するハウジング4を、エンジンブロックにねじ込むと、機械的応力、したがってメンブレン1に作用する力が生じ、これが測定誤差につながる。センサチップ2、3が斜めに配置され、互いに間隔を空けて配置される結果として、2つのセンサチップ2、3における曲げ負荷からのブリッジ応力の変化は、実質的に同じであるが、振幅に関しては逆の符号を有する。したがって、この配置は、メンブレン1の固定に起因する曲げ応力、したがってメンブレン1に作用する力を補償するのに好適である。圧力に起因する応力は、両方のセンサチップ2、3において同じ符号を有する。
【0034】
図4は、表側にメンブレン1を有する圧力センサの基本的な図を示す。
【0035】
一実施形態では、メンブレン1を、ハウジング4の壁または壁の一部とすることができる。ハウジング4は、壁としてメンブレン1で覆われたキャビティを有する。センサチップ2、3は、メンブレン1の表面上に、キャビティの中に向いて位置している。この目的のために、メンブレン1を円錐形とでき、円錐台状のリング内に位置づけることができる。