IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 岡崎 倫夫の特許一覧

特許7396760試算システム、試算プログラムおよび試算方法
<>
  • 特許-試算システム、試算プログラムおよび試算方法 図1
  • 特許-試算システム、試算プログラムおよび試算方法 図2
  • 特許-試算システム、試算プログラムおよび試算方法 図3
  • 特許-試算システム、試算プログラムおよび試算方法 図4
  • 特許-試算システム、試算プログラムおよび試算方法 図5
  • 特許-試算システム、試算プログラムおよび試算方法 図6
  • 特許-試算システム、試算プログラムおよび試算方法 図7
  • 特許-試算システム、試算プログラムおよび試算方法 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-04
(45)【発行日】2023-12-12
(54)【発明の名称】試算システム、試算プログラムおよび試算方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 30/0202 20230101AFI20231205BHJP
【FI】
G06Q30/0202
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2023122252
(22)【出願日】2023-07-27
【審査請求日】2023-07-27
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521373478
【氏名又は名称】岡崎 倫夫
(74)【代理人】
【識別番号】110004163
【氏名又は名称】弁理士法人みなとみらい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 倫夫
【審査官】加舎 理紅子
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-086665(JP,A)
【文献】特開2023-031241(JP,A)
【文献】特開2023-088063(JP,A)
【文献】特開2010-061574(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の製品からなる製品群が販売される市場について、前記市場の動向に応じて、前記製品の市場占有率がどの程度変動するかを試算する試算システムであって、
前記試算システムは、取得部、設定部、製品売上算出部、及びシェア値算出部を備え、
前記取得部は、前記製品群について、前記製品毎の最新の製品売上を含む売上データを取得し、
前記設定部は、前記市場のライフサイクルの時期を設定し、
前記製品売上算出部は、前記製品群の売上合計である最新の市場売上の予測伸び率の入力を受け付け、前記ライフサイクルの時期に応じた計算式を用いて、前記市場売上の予測伸び率、及び前記製品毎の最新の製品売上に基づいて、前記製品毎の将来の製品売上に係る金額を算出し、
前記シェア値算出部は、前記最新の製品売上及び前記最新の市場売上に基づいて、最新の製品の市場占有率を示す最新のシェア値を製品毎に算出すると共に、前記将来の製品売上に係る金額、及び前記最新の市場売上と前記予測伸び率から算出される将来の市場売上に基づいて、将来の製品の市場占有率を示す将来のシェア値を製品毎に算出する、試算システム。
【請求項2】
前記試算システムは、表示処理部を更に備え、
前記シェア値算出部は、前記売上データに基づいて、前記最新の市場売上に占める前記最新の製品売上の割合を示す最新のシェア値を前記製品毎に算出し、
前記表示処理部は、分析対象となる分析対象製品の指定を受け付けることで、前記分析対象製品の前記最新のシェア値と、前記最新のシェア値の順位が前記分析対象製品と前後関係にある製品の最新のシェア値と、の比が所定値以上か否かを示す指標を、前記分析対象製品毎に表示処理する、請求項1に記載の試算システム。
【請求項3】
前記試算システムは、市場売上算出部を更に備え、
前記市場売上算出部は、前記売上データに基づいて最新の前記市場売上を算出し、
前記シェア値算出部は、前記売上データに基づいて、前記最新の市場売上に占める前記最新の製品売上の割合を示す最新のシェア値を前記製品毎に算出し、
前記ライフサイクルの時期が成熟期以降の時期の場合には、
前記製品売上算出部は、ある製品の前記将来の製品売上に係る金額の算出において、前記最新の市場売上と、前記ある製品の最新の製品売上と、前記ある製品以外の製品の前記最新の製品売上と、前記ある製品以外の製品の前記将来の製品売上に係る金額とを用いる、請求項1に記載の試算システム。
【請求項4】
前記市場売上算出部は、前記最新の市場売上、及び前記市場売上の予測伸び率に基づいて、将来の市場売上に係る金額を算出し、
前記製品売上算出部は、ある製品の前記将来の製品売上に係る金額の算出において、
成熟期以降の時期に応じた市場売上への増減影響度が該ある製品よりも大きい1又は複数の他製品の前記将来の製品売上を前記将来の市場売上に係る金額から差し引くことで得られる差額、及び
該他製品の最新の製品売上を前記最新の市場売上から差し引くことで得られる差と、前記ある製品の前記最新の製品売上との比、
を用いる、請求項3に記載の試算システム。
【請求項5】
前記市場売上算出部は、前記最新の市場売上、及び前記市場売上の予測伸び率に基づいて、市場売上増減額を算出し、
前記ライフサイクルの時期が成熟期の場合には、
前記製品売上算出部は、ある製品の前記将来の市場売上に係る金額の算出において、
前記最新のシェア値が最も大きい前記製品から、前記最新のシェア値の順位が前記ある製品よりも高い製品までの将来の市場売上に係る金額の累計値を、前記将来の市場売上に係る金額から差し引いた値と、
前記最新のシェア値が最も大きい前記製品から、前記最新のシェア値の順位が前記ある製品よりも高い製品までの前記最新の製品売上の累計値を、前記最新の市場売上から差し引いた値に占める、前記ある製品の前記最新の製品売上の割合と、
を用いる、請求項4に記載の試算システム。
【請求項6】
前記市場売上算出部は、前記最新の市場売上、及び前記市場売上の予測伸び率に基づいて、市場売上増減額を算出し、
前記ライフサイクルの時期が衰退期の場合には、
前記製品売上算出部は、ある製品の前記将来の市場売上に係る金額の算出において、
前記最新のシェア値が最も小さい前記製品から、前記最新のシェア値の順位が前記ある製品よりも低い製品までの将来の市場売上に係る金額の累計値を、前記将来の市場売上に係る金額から差し引いた値と、
前記最新のシェア値が最も小さい前記製品から、前記最新のシェア値の順位が前記ある製品よりも低い製品までの前記最新の製品売上の累計値を、前記最新の市場売上から差し引いた値に占める、前記ある製品の前記最新の製品売上の割合と、
を用いる、請求項4に記載の試算システム。
【請求項7】
前記ライフサイクルの時期が成長期の場合には、
前記製品売上算出部は、ある製品の製品売上増減額の算出において、
前記最新の製品売上、及び前記市場売上の予測伸び率を乗算して、前記製品売上増減額又は前記将来の製品売上を算出する、請求項1に記載の試算システム。
【請求項8】
前記設定部は、過去に取得された売上データ、及び前記取得された売上データに基づいて前記ライフサイクルの時期を設定する、請求項1に記載の試算システム。
【請求項9】
前記試算システムは、戦力量算出部、及び表示処理部を更に備え、
前記シェア値算出部は、前記売上データに基づいて、前記最新の市場売上に占める前記最新の製品売上の割合を示す最新のシェア値を前記製品毎に算出し、
前記戦力量算出部は、前記シェア値の2乗に基づいて、分析対象の前記製品の競合製品に対して競争優位性を得るために必要な戦力量を算出し、
前記表示処理部は、前記分析対象の製品、及び前記競合製品の前記戦力量と、該2つの戦力量の比を並べて表示処理する、請求項1に記載の試算システム。
【請求項10】
前記試算システムは、市場売上算出部、比較対象特定部、需要規模算出部、顧客内シェア値算出部、及びランク付部を更に備え、
前記取得部は、複数の製品からなる製品群について、顧客及び前記製品毎の売上を含む、前記売上データの入力を受け付け、
前記市場売上算出部は、前記売上データに基づいて最新の前記市場売上を算出し、
前記シェア値算出部は、前記売上データに基づいて、前記最新の市場売上に占める前記最新の製品売上の割合を示す最新のシェア値を前記製品毎に算出し、
前記比較対象特定部は、前記製品群のうち、前記最新のシェア値が分析対象の製品の前記最新のシェア値の所定値以内である製品を特定し、
前記需要規模算出部は、前記最新のシェア値が最大の顧客の最新のシェア値を当該顧客の需要規模とするとともに、前記最新のシェア値が最大の顧客から対象の顧客までの前記最新のシェア値を降順に累計することで、対象の顧客の需要規模を算出し、
前記顧客内シェア値算出部は、ある顧客での前記製品群の最新の製品売上に占める、当該ある顧客での前記特定された製品の製品売上の割合を示す顧客内シェア値を前記顧客毎に算出し、
前記ランク付部は、前記需要規模における所定のランク毎に定められた閾値と比較することにより、前記需要規模のランクを前記顧客毎に決定し、前記顧客内シェア値における所定のランク毎に定められた条件により、前記特定された製品の前記顧客内シェア値のランクを前記顧客毎に決定する、請求項1に記載の試算システム。
【請求項11】
前記試算システムは、市場売上算出部、需要規模算出部、顧客内シェア値算出部、ランク付部、比較対象特定部、試算対象特定部及び表示処理部を更に備え、
前記取得部は、複数の製品からなる製品群について、顧客及び前記製品毎の売上を含む、前記売上データの入力を受け付け、
前記市場売上算出部は、前記売上データに基づいて最新の前記市場売上を算出し、
前記シェア値算出部は、前記売上データに基づいて、前記最新の市場売上に占める前記最新の製品売上の割合を示す最新のシェア値を前記製品毎に算出し、
前記比較対象特定部は、前記競合製品のうち、前記最新のシェア値が前記分析対象の製品の前記最新のシェア値に基づく閾値以下である製品を特定し、
前記需要規模算出部は、前記最新のシェア値が最大の顧客の最新のシェア値を当該顧客の需要規模とするとともに、前記最新のシェア値が最大の顧客から対象の顧客までの前記最新のシェア値を降順に累計することで、対象の顧客の需要規模を算出し、
前記顧客内シェア値算出部は、ある顧客での前記製品群の最新の製品売上に占める、当該ある顧客での前記特定された製品の製品売上の割合を示す顧客内シェア値を前記顧客毎に算出し、
前記ランク付部は、前記需要規模における所定のランク毎に定められた閾値と比較することにより、前記需要規模のランクを前記顧客毎に決定し、前記顧客内シェア値における所定のランク毎に定められた条件により、前記特定された製品の前記顧客内シェア値のランクを前記顧客毎に決定し、
前記試算対象特定部は、前記需要規模及び前記顧客内シェア値のランクの組み合わせのうち特定の組み合わせに属する前記顧客がある場合に、前記特定された製品を試算対象製品として特定し、
前記戦力量算出部は、前記競合製品のうち、前記試算対象製品として特定された製品の前記戦力量を算出する、請求項9に記載の試算システム。
【請求項12】
複数の製品からなる製品群が販売される市場について、前記市場の動向に応じて、前記製品の市場占有率がどの程度変動するかを試算する試算プログラムであって、
コンピュータを、取得部、設定部、製品売上算出部、及びシェア値算出部として機能させ、
前記取得部は、前記製品群について、前記製品毎の最新の製品売上を含む売上データを取得し、
前記設定部は、前記市場のライフサイクルの時期を設定し、
前記製品売上算出部は、前記製品群の売上合計である最新の市場売上の予測伸び率の入力を受け付け、前記ライフサイクルの時期に応じた計算式を用いて、前記市場売上の予測伸び率、及び前記製品毎の最新の製品売上に基づいて、前記製品毎の将来の製品売上に係る金額を算出し、
前記シェア値算出部は、前記最新の製品売上及び前記最新の市場売上に基づいて、最新の製品の市場占有率を示す最新のシェア値を製品毎に算出すると共に、前記最新の市場売上と前記予測伸び率から算出される将来の市場売上、及び前記将来の製品売上に係る金額に基づいて、将来の製品の市場占有率を示す将来のシェア値を製品毎に算出する、試算プログラム。
【請求項13】
複数の製品からなる製品群が販売される市場について、前記市場の動向に応じて、前記製品の市場占有率がどの程度変動するかを試算する試算方法であって、
コンピュータが、
前記製品群について、前記製品毎の最新の製品売上を含む売上データを取得するステップと、
前記市場のライフサイクルの時期を設定するステップと、
前記製品群の売上合計である最新の市場売上の予測伸び率の入力を受け付け、前記ライフサイクルの時期に応じた計算式を用いて、前記市場売上の予測伸び率、及び前記製品毎の最新の製品売上に基づいて、前記製品毎の将来の製品売上に係る金額を算出するステップと、
前記最新の製品売上及び前記最新の市場売上に基づいて、最新の製品の市場占有率を示す最新のシェア値を製品毎に算出すると共に、前記最新の市場売上と前記予測伸び率から算出される将来の市場売上、及び前記将来の製品売上に係る金額に基づいて、将来の製品の市場占有率を示す将来のシェア値を製品毎に算出するステップと、を実行する試算方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試算システム、試算プログラムおよび試算方法に関する。
【背景技術】
【0002】
同じ市場セグメントにおいて同種または類似の商品やサービスを提供する競合他社が存在する場合では、企業は市場シェアの獲得、売上の成長、顧客の獲得のため、他社との競争は避けられない。競合他社との市場競争は、企業にとって重要な要素であり、競争優位性を確保するために戦略的な取り組みが必要となる。近年では人口減少やコロナ禍により世界的な景気後退が進んでおり、競争環境はより激化しており、そのため競合他社の動向を常に把握し、市場の変化に迅速かつ適切に対応することが企業の持続的成長には必須となるが、多くの企業ではマーケティングプラン策定において競合の存在を加味しておらず、またそのための技術も有していない。このような状況に鑑みマーケティングプラン策定を支援するシステムが、例えば、特許文献1に開示されている。
【0003】
特許文献1には、ある商品について、自社製品の市場占有率と、市場成長率とを所定の割合を境にランク付けし、そのランク毎に最適な販売計画を策定することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-271803号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし上記の技術では、マーケティングプラン策定において重要視される、競合他社の製品を考慮した競争優位性に基づいた分析を行うことができないという問題があった。
【0006】
上記現状に鑑みて、本発明では、競合製品も考慮したマーケティングプラン策定を支援することができる新規なシステムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明は、複数の製品からなる製品群が販売される市場について、前記市場の動向に応じて、前記製品の市場占有率がどの程度変動するかを試算する試算システムであって、前記試算システムは、取得部、設定部、及び製品売上算出部を備え、前記取得部は、前記製品群について、前記製品毎の最新の製品売上を含む売上データを取得し、前記設定部は、前記市場のライフサイクルの時期を設定し、前記製品売上算出部は、前記製品群の売上合計である市場売上の予測伸び率の入力を受け付け、前記ライフサイクルの時期に応じた計算式を用いて、前記市場売上の予測伸び率、及び前記製品毎の最新の製品売上に基づいて、前記製品毎の将来の製品売上に係る金額を算出し、前記シェア値算出部は、前記最新の製品売上及び前記最新の市場売上に基づいて、最新の製品の市場占有率を示す最新のシェア値を製品毎に算出すると共に、前記将来の製品売上に係る金額、及び前記最新の市場売上と前記予測伸び率から算出される将来の市場売上に基づいて、将来の製品の市場占有率を示す将来のシェア値を製品毎に算出する。
このような構成とすることで、市場のライフサイクルの時期に応じて、複数の製品の将来の売上を算出することで、競合製品を考慮したマーケティングプラン策定を行うことができる。
【0008】
本発明の好ましい形態では、前記試算システムは、表示処理部を更に備え、前記シェア値算出部は、前記売上データに基づいて、最新の前記市場売上に占める前記製品売上の割合を示す最新のシェア値を前記製品毎に算出し、
前記表示処理部は、分析対象となる分析対象製品の指定を受け付けることで、前記分析対象製品の前記最新のシェア値と、前記最新のシェア値の順位が前記分析対象製品と前後関係にある製品の最新のシェア値と、の比が所定値以上か否かを示す指標を、前記分析対象製品毎に表示処理する。
このような構成とすることで、製品のシェア値の比を確認することができ、どの競合製品と対抗すべきかどうかを容易に把握することができる。
【0009】
本発明の好ましい形態では、前記試算システムは、市場売上算出部を更に備え、前記市場売上算出部は、前記売上データに基づいて最新の前記市場売上を算出し、前記シェア値算出部は、前記売上データに基づいて、前記最新の市場売上に占める最新の前記製品売上の割合を示す最新のシェア値を前記製品毎に算出し、前記ライフサイクルの時期が成熟期以降の時期の場合には、ある製品の前記製品売上増減額の算出において、前記最新の市場売上と、前記ある製品の最新の製品売上と、前記ある製品以外の製品の前記最新の製品売上と、前記ある製品以外の製品の前記製品売上増減額とを用いる。
このような構成とすることで、ライフサイクルの時期が成熟期以降の時期の場合には、ある製品の製品売上増減額を算出する為に、競合製品の最新の製品売上と、製品売上増減額を用いることで、競合製品の影響も加味して製品売上増減額を算出することができる。
【0010】
本発明の好ましい形態では、前記市場売上算出部は、前記最新の市場売上、及び前記市場売上の予測伸び率に基づいて、将来の市場売上に係る金額を算出し、前記製品売上算出部は、ある製品の前記将来の製品売上に係る金額の算出において、成熟期以降の時期に応じた市場売上への増減影響度が該ある製品よりも大きい1又は複数の他製品の前記将来の製品売上を前記将来の市場売上に係る金額から差し引くことで得られる差額、及び該他製品の最新の製品売上を前記最新の市場売上から差し引くことで得られる差と、前記ある製品の前記最新の製品売上との比、を用いる。
このような構成とすることで、成熟期以降の時期において、製品の市場売上への増減影響度を考慮して、将来の製品売上に係る金額を算出することができる。
【0011】
本発明の好ましい形態では、前記市場売上算出部は、前記最新の市場売上、及び前記市場売上の予測伸び率に基づいて、将来の市場売上に係る金額を算出し、前記ライフサイクルの時期が成熟期の場合には、前記製品売上算出部は、ある製品の前記製品売上増減額の算出において、前記シェア値が最も大きい前記製品から、前記シェア値の順位が前記ある製品よりも高い製品までの製品売上増減額の累計値を、前記市場売上増減額から差し引いた値と、前記シェア値が最も大きい前記製品から、前記シェア値の順位が前記ある製品よりも高い製品までの前記最新の製品売上の累計値を、前記最新の市場売上から差し引いた値に占める、前記ある製品の前記最新の製品売上の割合と、を用いる。
このような構成とすることで、ライフサイクルの時期が成熟期の場合には、より正確な製品売上増減額を算出することができる。
【0012】
本発明の好ましい形態では、前記市場売上算出部は、前記最新の市場売上、及び前記市場売上の予測伸び率に基づいて、市場売上増減額を算出し、前記ライフサイクルの時期が衰退期の場合には、前記製品売上算出部は、ある製品の前記将来の市場売上に係る金額の算出において、前記最新のシェア値が最も小さい前記製品から、前記最新のシェア値の順位が前記ある製品よりも低い製品までの将来の市場売上に係る金額の累計値を、前記将来の市場売上に係る金額から差し引いた値と、前記最新のシェア値が最も小さい前記製品から、前記最新のシェア値の順位が前記ある製品よりも低い製品までの前記最新の製品売上の累計値を、前記最新の市場売上から差し引いた値に占める、前記ある製品の前記最新の製品売上の割合と、を用いる。
このような構成とすることで、ライフサイクルの時期が衰退期の場合には、より正確な製品売上増減額を算出することができる。
【0013】
本発明の好ましい形態では、前記ライフサイクルの時期が成長期の場合には、前記製品売上算出部は、ある製品の製品売上増減額の算出において、前記最新の製品売上、及び前記市場売上の予測伸び率を乗算して、前記製品売上増減額又は前記将来の製品売上を算出する。
このような構成とすることで、ライフサイクルの時期が成長期の場合にも、より正確な製品売上増減額を算出することができる。
【0014】
本発明の好ましい形態では、前記設定部は、過去に取得された売上データ、及び前記取得された売上データに基づいて前記ライフサイクルの時期を設定する。
このような構成とすることで、過去の売上データと新たな売上データを用いて、自動的にライフサイクルの時期を設定することができる。
【0015】
本発明の好ましい形態では、前記試算システムは、戦力量算出部、及び表示処理部を更に備え、前記シェア値算出部は、前記売上データに基づいて、前記市場売上に占める前記製品売上の割合を示す最新のシェア値を前記製品毎に算出し、前記戦力量算出部は、前記シェア値の2乗に基づいて、分析対象の前記製品の競合製品に対して競争優位性を得るために必要な戦力量を算出し、前記表示処理部は、前記分析対象の製品、及び前記競合製品の前記戦力量と、該2つの戦力量の比を並べて表示処理する。
このような構成とすることで、分析対象の製品と比較対象の製品の戦力量を比較可能に表示することができる。
【0016】
本発明の好ましい形態では、前記試算システムは、市場売上算出部、比較対象特定部、需要規模算出部、顧客内シェア値算出部、及びランク付部を更に備え、前記取得部は、複数の製品からなる製品群について、顧客及び前記製品毎の売上を含む、前記売上データの入力を受け付け、前記市場売上算出部は、前記売上データに基づいて最新の前記市場売上を算出し、前記シェア値算出部は、前記売上データに基づいて、前記市場売上に占める全顧客での製品売上合計の割合を示す最新のシェア値を前記製品毎に算出し、前記比較対象特定部は、前記製品群のうち、前記最新のシェア値が分析対象の製品の前記最新のシェア値の所定値以内である製品を特定し、前記需要規模算出部は、前記最新のシェア値が最大の顧客の最新のシェア値を当該顧客の需要規模とするとともに、前記最新のシェア値が最大の顧客から対象の顧客までの前記最新のシェア値を降順に累計することで、対象の顧客の需要規模を算出し、前記顧客内シェア値算出部は、ある顧客での前記製品群の最新の製品売上に占める、当該ある顧客での前記特定された製品の製品売上の割合を示す顧客内シェア値を前記顧客毎に算出し、前記ランク付部は、前記需要規模における所定のランク毎に定められた閾値と比較することにより、前記需要規模のランクを前記顧客毎に決定し、前記顧客内シェア値における所定のランク毎に定められた条件により、前記特定された製品の前記顧客内シェア値のランクを前記顧客毎に決定する。
【0017】
このような構成とすることで、最新のシェア値が分析対象製品の最新のシェア値に基づく閾値以下である製品を分析対象とすることができ、該製品に関して顧客をランク付けすることができる。これにより、どの顧客に対してマーケティングを行うべきかを容易に判断することができる。
【0018】
本発明の好ましい形態では、市場売上算出部、需要規模算出部、顧客内シェア値算出部、ランク付部、比較対象特定部、試算対象特定部及び表示処理部を更に備え、前記取得部は、複数の製品からなる製品群について、顧客及び前記製品毎の売上を含む、前記売上データの入力を受け付け、前記市場売上算出部は、前記売上データに基づいて最新の前記市場売上を算出し、前記シェア値算出部は、前記売上データに基づいて、前記市場売上に占める全顧客での製品売上合計の割合を示す最新のシェア値を前記製品毎に算出し、前記比較対象特定部は、前記競合製品のうち、前記最新のシェア値が前記分析対象の製品の前記最新のシェア値に基づく閾値以下である製品を特定し、前記需要規模算出部は、前記最新のシェア値が最大の顧客の最新のシェア値を当該顧客の需要規模とするとともに、前記最新のシェア値が最大の顧客から対象の顧客までの前記最新のシェア値を降順に累計することで、対象の顧客の需要規模を算出し、前記顧客内シェア値算出部は、ある顧客での前記製品群の最新の製品売上に占める、当該ある顧客での前記特定された製品の製品売上の割合を示す顧客内シェア値を前記顧客毎に算出し、前記ランク付部は、前記需要規模における所定のランク毎に定められた閾値と比較することにより、前記需要規模のランクを前記顧客毎に決定し、前記顧客内シェア値における所定のランク毎に定められた条件により、前記特定された製品の前記顧客内シェア値のランクを前記顧客毎に決定し、前記試算対象特定部は、前記需要規模及び前記顧客内シェア値のランクの組み合わせのうち特定の組み合わせに属する前記顧客がある場合に、前記特定された製品を試算対象製品として特定し、前記戦力量算出部は、前記競合製品のうち、前記試算対象製品として特定された製品の前記戦力量を算出する。
このような構成とすることで、最新のシェア値が分析対象製品の最新のシェア値に基づく閾値以下である製品を分析対象とすることができ、該製品に関して顧客をランク付けすることができる。そしてランクに応じて、どの程度マーケティングに戦力を投下するべきかを容易に判断することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、競合他社も考慮したマーケティングプラン策定を支援することができる新規な技術を提供する効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】市場のライフサイクルの一例を示す図である。
図2】本発明の実施形態における機能ブロック図である。
図3】本発明の実施形態におけるハードウェア構成図である。
図4】本発明の実施形態における処理フローチャートの一例である。
図5】本発明の実施形態における製品売上増減額を算出する為の表示画面の一例である。
図6】本発明の実施形態におけるマトリクス分析を行う為の表示画面の一例である。
図7】本発明の実施形態における戦力量の試算を行う為の表示画面の一例である。
図8】本発明の実施形態における構造シェアの試算を行う為の表示画面の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。なお、以下に示す実施形態は本発明の一例であり、本発明を以下の実施例に限定するものではなく、様々な実施形態を採用することも可能である。
【0022】
例えば、本実施形態では試算システムの構成、動作等について説明するが、同様の構成の方法、装置、コンピュータプログラム等も、同様の作用効果を奏することができる。また、プログラムは、記録媒体に記憶させてもよい。この記録媒体を用いれば、例えばコンピュータにプログラムをインストールすることができ、試算システム、又は試算端末装置を構成することができる。ここで、プログラムを記憶した記録媒体は、例えばCD-ROM等の非一過性の記録媒体であっても良い。本実施形態においては、
【0023】
本発明は、複数の製品からなる製品群が複数の販売先(以下、顧客と呼ぶ)に販売される市場において、該市場の動向に応じて、ある顧客における製品群の売上合計に占める該顧客における製品の売上の割合を示すシェア値がどの程度変動するかを試算するシステムに関する。本発明における製品群とは、ある商品毎の売上データに含まれる自社及び競合他社が提供する複数の製品を総称したものである。
【0024】
また、本発明は、シェア値の変動の試算結果に応じて、自社製品を分析対象として(以下、分析対象製品APと呼ぶ)、特にどの競合製品を対抗すべき製品とするかを判別可能に表示する。そして、顧客の規模感、顧客内での製品の市場占有率によって決定される顧客のランクを用いて、分析対象製品AP、及び対抗すべき製品毎にこれらの製品が販売されている顧客をランク付けし、そのランクに応じて、どの製品に対してどの程度マーケティングの戦力を注力すべきかどうかを試算することができる。なお、以下では、自社製品を分析対象製品APとして説明するが、売上データに含まれる製品のうちユーザから指定された製品を分析対象製品APとすることもできる。
【0025】
また更に、本発明は、マーケティングの戦力を注力した結果、シェア値がどの程度変動するかを試算することができる。
【0026】
本発明において市場の動向とは、市場のライフサイクルである。図1は、全顧客における製品群の売上合計である市場売上の時間推移を示すグラフと、市場売上に応じたライフサイクルの時期の一例を示す図である。ライフサイクルの時期としては、例えば、導入期、成長期、成熟期、飽和期、及び衰退期があるが、本実施形態においては、今回の市場売上が前回の市場売上を上回っており、前回から今回までの市場売上伸び率が前々回から前回までの市場売上の市場売上伸び率よりも大きい時期を成長期;今回の市場売上が前回の市場売上を上回っているが、前回から今回までの市場売上伸び率が前々回から前回までの市場売上の市場売上伸び率よりも小さい時期を成熟期;今回の市場売上が前回の市場売上を下回っている時期を衰退期;として各時期におけるシェア値の変動を試算する。
【0027】
<1.システム構成>
図2は、一実施の形態のシステムの構成を示すブロック図である。図1に示すように、試算システム0は、試算端末装置1を備える。試算端末装置1としては、汎用のパーソナルコンピュータ等を利用することが可能である。また、本実施形態において試算システム0は、試算プログラムをインストールしたクライアントコンピュータを試算端末装置1として構成されるが(いわゆるスタンドアロン型)、クライアントコンピュータがサーバと有線又は無線で通信可能に構成され、試算端末装置1が備える各機能構成要素(手段)の一部又は全部がサーバに備えられていてもよい(いわゆるサーバ・クライアント型)。
【0028】
<1.1.機能構成>
図2に示すように、試算端末装置1は、機能構成として、シェア値予測部110、マトリクス分析部120、戦力量試算部130、構造シェア試算部140、表示処理部150、及びデータベース2を備える。シェア値予測部110は、取得部101、設定部102、製品売上算出部103、市場売上算出部104、シェア値算出部105、及び比較対象特定部106を備える。また、マトリクス分析部120は、需要規模算出部121、顧客内シェア値算出部122、及びランク付部123を備える。また、戦力量試算部130は、試算対象特定部131、及び戦力量算出部132を備える。また、構造シェア試算部140は、ランク率算出部141、カバー率算出部142、及び構造シェア算出部143を備える。これは、ソフトウェア(後述の記憶部12に記憶されている)による情報処理が、ハードウェア(処理部11等)によって具体的に実現されたものである。
【0029】
<1.2.ハードウェア構成>
図3は、本実施形態の試算システムを構成する、試算端末装置1のハードウェア構成の一例を示す図である。試算端末装置1は、ハードウェア構成として、処理部11、記憶部12、通信部13、入力部14、出力部15を備える。
処理部11は、CPU等の1又は複数のプロセッサを含み、本発明に係る試算プログラム、OSやその他のアプリケーションを実行することで、試算端末装置1の動作処理全体を制御する。
記憶部12は、命令セットを記憶可能なRAM等の揮発性メモリ、OS及び試算プログラム等を記憶可能なHDDやSSD等の不揮発性の記録場体を有する。
通信部13は、ネットワークに接続する為の通信インタフェース装置を有し、通信ネットワークNWとの通信制御を実行して、情報の入出力を行う。
入力部14は、キーボードやタッチパネルなどの入力処理が可能な入力デバイスを有する。
出力部95は、ディスプレイなどの表示処理が可能な表示デバイスを有する。
【0030】
<1.3.システム機能構成>
次いで、上述の機能構成について、各部の処理内容を詳述する。
【0031】
<1.3.1.シェア値予測部110>
以下では、売上データに含まれる製品群に関して、製品毎の将来のシェア値等を算出するシェア値予測部110の各部について説明する。
【0032】
<1.3.1.1.取得部101>
取得部101は、製品毎の製品売上を含む売上データの入力を受け付けてデータベース2に格納する。取得部101は、複数の製品からなる製品群について、製品及び顧客毎の最新の製品売上を含む売上データ(以下、最新の売上データと呼ぶ)を取得する。ここで最新の製品売上とは、単位期間があり、最新期間の製品売上であるが、製品の販売期間全ての製品売上であってもよい。
【0033】
<1.3.1.2.設定部102>
設定部102は、市場のライフサイクルの時期を設定する。本実施形態において設定部102は、ユーザからライフサイクルの時期の入力を受け付けることで、ライフサイクルの時期を設定する。
【0034】
より好ましい形態では、設定部102は、設定部102が最新の売上データ以前に取得した売上データ(以下、過去の売上データと呼ぶ)、及び最新の売上データに基づいて、ライフサイクルの時期を設定する。具体的には、設定部102は、最新の売上データに基づく市場売上の、過去の売上データに基づく市場売上からの伸び率に基づいて、ライフサイクルの時期を設定する。例えば、設定部102は、2023年7月において、過去の売上データとして2022年度の第4四半期の売上データ、及び最新の売上データとして2023年度の第1四半期の売上データに基づく市場売上の伸び率を用いて、ライフサイクルの時期を設定する。なお、以下の説明では、特に言及がない場合には、売上データとして最新の売上データを用いる。
【0035】
<1.3.1.3.製品売上算出部103>
製品売上算出部103は、将来の製品売上に係る金額を算出する。製品売上算出部103は、将来の製品売上に係る金額として、将来の製品売上がどの程度増減するかを示す製品売上増減額を算出する。本実施形態において製品売上算出部103は、最新の市場売上が所定期間経過後(例えば1年後)にどの程度増減するかを示す予測伸び率の入力を受け付ける。そして製品売上算出部103は、ライフサイクルの時期に応じた計算式を用いて、市場売上の予測伸び率、及び製品毎の最新の製品売上に基づいた、製品毎の製品売上増減額を算出する。また、製品売上算出部103は、将来の製品売上に係る金額として、製品売上増減額及び最新の製品売上に基づいて、例えば、1年後の将来の製品売上を算出する。
【0036】
<1.3.1.4.市場売上算出部104>
市場売上算出部104は、市場売上を算出する。市場売上算出部104は、売上データに基づいて、最新の市場売上を算出する。また、市場売上算出部104は、将来の市場売上に係る金額を算出する。市場売上算出部104は、将来の市場売上に係る金額として、将来の市場売上がどの程度増減するかを示す市場売上増減額を算出する。市場売上算出部104は、市場売上の予測伸び率の入力を受け付け、最新の市場売上、及び市場売上の予測伸び率に基づいて、市場売上増減額を算出する。また、市場売上算出部104は、将来の市場売上に係る金額として、最新の市場売上、及び市場売上増減額に基づいて、将来の(例えば1年後の)市場売上を算出する。
【0037】
<1.3.1.5.シェア値算出部105>
シェア値算出部105は、製品毎のシェア値を算出する。シェア値算出部105は、売上データに基づいて、最新の市場売上に占める最新の製品売上の割合を示す最新のシェア値(市場占有率)を算出する。また、シェア値算出部105は、将来の製品売上に係る金額、及び製品群の売上合計と予測伸び率から算出される将来の市場売上に基づいて、将来の製品の市場占有率を示す将来のシェア値を製品毎に算出する。
【0038】
<1.3.1.6.比較対象特定部106>
比較対象特定部106は、分析対象製品APの比較対象となる比較対象製品CPを特定する。比較対象特定部106は、製品群のうち、最新の製品売上に基づく最新のシェア値が分析対象製品APの最新のシェア値に基づく閾値以下である製品を比較対象製品CPとして特定する。
【0039】
<1.3.2.マトリクス分析部120>
以下では、特定の製品に関して、顧客のランク付けを行うマトリクス分析部120の各部を説明する。なお、本実施形態におけるマトリクス分析部120の各部は、特定の製品として分析対象製品AP及び比較対象製品CPを用いるが、任意の製品の指定を受け付けて、該指定された製品を用いてもよい。また、以下では特定の製品が比較対象製品CPの場合について説明する。
【0040】
<1.3.2.1.需要規模算出部121>
需要規模算出部121は、最新のシェア値に基づいて、顧客毎の最新のシェア値を降順に累計した需要規模を算出する。需要規模算出部121は、最新のシェア値が最大の顧客の最新のシェア値を当該顧客の需要規模とするとともに、最新のシェア値が最大の顧客から対象の顧客までの前記最新のシェア値を降順に累計することで、対象の顧客の需要規模を算出する。
【0041】
<1.3.2.2.顧客内シェア値算出部122>
顧客内シェア値算出部122は、売上データに基づいて、ある顧客において比較対象製品CPがどの程度普及しているかどうかを示す顧客内シェアを算出する。顧客内シェア値算出部122は、ある顧客での製品群の最新の製品売上に占める、当該ある顧客における比較対象製品CPの製品売上の割合を示す、顧客内シェアを顧客毎に算出する。
【0042】
<1.3.2.3.ランク付部123>
ランク付部123は、顧客毎の需要規模に基づいて、需要規模のランクを顧客毎に決定する。ランク付部123は、需要規模における所定のランク毎に定められた閾値と比較することにより、需要規模のランクを顧客毎に決定する。
【0043】
またランク付部123は、顧客毎の顧客内シェア値に基づいて、比較対象製品CPに関して顧客内シェアのランクを顧客毎に決定する。ランク付部123は、ある顧客での顧客内シェア値について、比較対象製品CPの顧客内シェアが製品群の顧客内シェアの中で最大である否かに基づいて、顧客内シェアのランクを顧客毎に決定する。
【0044】
<1.3.3.戦力量試算部130>
以下では、特定の製品に関して、戦力量を試算する戦力量試算部130の各部を説明する。
【0045】
<1.3.3.1.試算対象特定部131>
試算対象特定部131は、戦力量を試算する対象である試算対象製品SPを特定する。試算対象特定部131は、製品群のうち、特定のランクに属する顧客において販売されている製品を戦力量の試算対象製品SPとして特定する。なお、本実施形態における試算対象特定部131は、分析対象製品APの競合製品であって、比較対象製品CPとして特定された製品のうち、特定のランクに属する顧客において販売されている製品を試算対象製品として特定するが、任意の製品の指定を受け付けて、該指定された製品を試算対象製品SPとしてもよい。
【0046】
<1.3.3.2.戦力量算出部132>
戦力量算出部132は、製品の販売のしやすさを示す戦力量を算出する。戦力量算出部132は、最新のシェア値の2乗に基づいて分析対象製品AP及び試算対象製品SPの戦力量を算出する。
【0047】
<1.3.4.構造シェア試算部140>
以下では、特定の製品に関して、構造シェアを算出する構造シェア試算部140の各部を説明する。なお、本実施形態における構造シェア試算部140の各部は、特定の製品として分析対象製品APを用いるが、任意の製品の指定を受け付けて、該指定された製品を用いてもよい。
【0048】
<1.3.4.1.ランク率算出部141>
ランク率算出部141は、売上データにランク付部123によってランク付けされた顧客について、第1のランクに属する顧客数に占める、第2のランクに属する顧客数の割合を示すランク率を算出する。ランク率算出部141は、分析対象製品APについて、第1のランクとして需要規模のランク、第2のランクとして需要規模及び顧客内シェアのランクの組み合わせを用いて、ランク率を算出する。
【0049】
更にランク率算出部141は、第2のランクに属する顧客数の入力をユーザから受け付けて、該顧客数を用いて、ランク率を算出する。本実施形態においてランク率算出部141は、ユーザから任意の入力値を受け付け、該入力値を、需要規模のランク及び顧客内シェアのランクの組に属する顧客数であると仮定して、該組を成す需要規模のランクに属する顧客数で割ることによって、ランク率を算出する。
【0050】
<1.3.4.2.カバー率算出部142>
カバー率算出部142は、全顧客数に占める分析対象製品APを売り上げている顧客数の割合を示すカバー率を算出する。本実施形態においてカバー率算出部142は、分析対象製品APを所定値以上売り上げている顧客数を全顧客数で割り算することでカバー率を算出する。ここで本実施形態において、分析対象製品APを所定値以上売り上げている顧客とは、分析対象製品APの顧客内シェアが5%以上売り上げている顧客である。なお、分析対象製品APの売上額が所定金額以上売り上げている顧客であってもよい。
【0051】
<1.3.4.3.構造シェア算出部143>
構造シェア算出部143は、ランク率及びカバー率に基づいて、分析対象製品APが市場をどの程度占有するかを示す構造シェアを算出する。本実施形態において構造シェア算出部143は、分析対象製品APの最新のシェア値と、カバー率、売上データに基づいて算出されたランク率、及び重みを示す変数を用いて表した構造シェアの数値とが等しくなるように該変数を決定し、該決定された変数、カバー率、及びユーザから入力された入力値に基づいて算出されたランク率を用いて、ランク率がユーザが指定した数になった場合の構造シェアを算出する。
【0052】
ここで構造シェアとは、有力な顧客における他社製品との競争状況に関する質的な構造を示すランク率と、指定製品の市場での普及度合に関する量的な構造を示すカバー率を用いて計算されるため、実際の市場におけるシェアと似た性質を持つ指標として認識することができ、これにより指定された製品の市場におけるシェアの傾向を推測することが可能になる。
【0053】
<1.3.5.表示処理部150>
表示処理部150は、後述する種々の画面を表示処理し、表示処理結果をユーザに表示させる。ここで本実施形態において表示処理は、表示処理部150が必要な情報を生成する処理を実行し、生成した情報を試算端末装置1の出力部15に送信することで、出力部15が該生成された情報を表示する処理を指す。なお、試算システムがサーバと試算端末装置1(クライアント)によって構成される場合であって、サーバが表示処理部150を備える場合には、表示処理部150が表示に必要な情報を生成する処理を実行し、生成した情報を試算端末装置1に送信することで、試算端末装置1が該生成された情報を表示してもよく、表示処理部150が表示に必要な情報を生成する処理命令を試算端末装置1に送信することで、試算端末装置1が表示に必要な情報を生成し、該生成した情報を表示する処理であってもよい。
【0054】
<2.処理フローチャート>
以下、図4~7を参照して、本発明の試算方法について説明する。図4は、構造シェアの試算を行うまでの処理を示すフローチャートである。なお、以下のフローチャートでは、特に言及がない限り、シェア値は「最新のシェア値」を用いる。
【0055】
<2.1.シェア値予測のフロー>
まず、S1~S5において、シェア値予測部110の各部の処理が実行される。
【0056】
<2.1.1.売上データの取得>
まず、ステップS1(以下、「ステップSX」を「SX」とする)では、取得部101は、製品群について、顧客及び製品毎の製品売上を含む売上データを取得する。なお、本実施形態では、ユーザから売上データの入力を受け付けることで、売上データを取得するが、データベース2又は外部のデータベースに格納された売上データを取得してもよい。
【0057】
<2.1.2.ライフサイクルの時期の設定>
次いでS2において、設定部102は、ライフサイクルの時期を設定する。本実施形態において設定部102は、ユーザからライフサイクルの時期として、成長期、成熟期、又は衰退期の入力を受け付けることで、ライフサイクルの時期を設定する。
【0058】
<2.1.3.市場売上増減額の試算>
次いで、S3において市場売上算出部104は、市場売上の予測伸び率の入力を受け付けて、S1において取得された売上データに含まれる最新の製品売上に基づいて最新の市場売上を算出する。そして、市場売上算出部104は、該予測伸び率、及び該最新の市場売上に基づいて将来の市場売上に係る金額として市場売上増減額を算出する。なお、ライフサイクルの時期に対応する予測伸び率が設定されており、市場売上算出部104は、S2において設定されたライフサイクルの時期に基づく予測伸び率を用いて、市場売上増減額を算出してもよい。この場合、ライフサイクルの時期と予測伸び率を学習データとして予測伸び率を推測する機械学習モデルや、統計モデルを用いてライフサイクルの時期に基づいて、対応する予測伸び率を設定されることが好ましい。統計モデルとしては、例えば、TREND関数、GROWTH関数、FORECAST関数等を用いる。
【0059】
またより好ましい形態では、図示しない製品売上予測部が、製品毎の売上データを学習データとして製品毎の予測伸び率を推測する機械学習モデルや、統計モデルを用いて、最新の売上データに基づいて、製品毎の売上伸び率を算出する。
【0060】
<2.1.4.製品売上増減額の試算>
次いで、S4において製品売上算出部103は、市場売上の予測伸び率の入力を受け付けて、S2において設定されたライフサイクルの時期に応じた計算式を用いて、少なくとも該予測伸び率と、S1において取得された売上データに含まれる製品毎の最新の製品売上とに基づいて、将来の製品売上に係る金額として製品売上増減額を算出する。
【0061】
<2.1.4.1.成長期の場合の製品売上増減額>
本実施形態において製品売上算出部103は、ライフサイクルの時期が成長期の場合、ある製品Pの製品売上増減額PIを算出する計算式として、以下を用いる。ここで下付き添え字Lは、最新のシェア値を降順に並べた時の順位を示す。
【数1】
ある製品Pの最新の製品売上CPE、及び予測伸び率αを乗算する式を用いて、製品売上増減額PIを算出する。
【0062】
<2.1.4.2.成熟期以降の場合の製品売上増減額>
また、製品売上算出部103は、ライフサイクルの時期が成熟期以降の場合、ある製品Pの将来の製品売上に係る金額の算出において、該他製品の最新の製品売上を最新の市場売上から差し引くことで得られる差と、ある製品Pの前記最新の製品売上との比、及び成熟期以降の時期に応じた市場売上への増減影響度が該ある製品Pよりも大きい1又は複数の他製品の将来の製品売上に係る金額を将来の市場売上に係る金額から差し引くことで得られる差(差額)を用いる。ここで、増減影響度とは、市場売上の増減に対して与える影響の度合いであって、最新の製品売上やシェア値の順位に従う。
【0063】
<2.1.4.2.1.成熟期の場合の製品売上増減額>
具体的には、製品売上算出部103は、ライフサイクルの時期が成熟期の場合、ある製品Pの将来の製品売上に係る金額として製品売上増減額PIを算出する計算式として、以下を用いる。ここで、符号Mは売上データに含まれる製品個数を示し、符号iは、シェア値が大きいものから順に数え上げられる(シェア値の順位)。
【数2】
シェア値が最も大きい製品Pから、シェア値の順位が該ある製品Pよりも高い製品PL-1までの製品売上増減額PI&shy;&shy;iの累計値を、市場売上増減額MIから差し引いた値と、シェア値が最も大きい製品Pからシェア値の順位が該ある製品Pよりも高い製品PL-1までの最新の製品売上CPE&shy;&shy;iの累計値を、最新の市場売上CMEから差し引いた値に占める、該ある製品Pの最新の製品売上CPEの割合と、を含む式を用いる。本実施形態において製品売上算出部103は、具体的に、シェア値が最も大きい製品Pからシェア値の順位がある製品Pよりも高い製品PL-1までの製品売上増減額PI&shy;&shy;iの累計値を、市場売上増減額MIから差し引いた値と、シェア値が最も大きい製品Pから、シェア値の順位が該ある製品Pよりも高い製品PL-1までの最新の製品売上CPE&shy;&shy;iの累計値を、最新の市場売上CMEから差し引いた値に占める、該ある製品Pの最新の製品売上CPEの割合の平方根とを乗算する式を計算式として用いる。なお、製品売上算出部103は、シェア値が最も大きい製品Pの製品売上増減額PIを算出する場合には、市場売上増減額MIと、最新の市場売上CMEに占める最新の製品売上CPEの割合の平方根とを乗算する計算式を用いる。
【0064】
<2.1.4.2.2.衰退期の場合の製品売上増減額>
また、製品売上算出部103は、ライフサイクルの時期が衰退期の場合、ある製品Pの製品売上増減額PIを算出する計算式として、以下を用いる。
【数3】
シェア値が最も小さい製品Pから、シェア値の順位が該ある製品Pよりも低い製品PL+1までの製品売上増減額PIiの累計値を、市場売上増減額MIから差し引いた値と、シェア値が最も小さい製品Pからシェア値の順位が該ある製品Pよりも低い製品PL+1までの最新の製品売上CPEiの累計値を、最新の市場売上CMEから差し引いた値に占める、該ある製品Pの最新の製品売上CPEの割合と、を含む式を用いる。本実施形態において製品売上算出部103は、具体的に、シェア値が最も小さい製品Pからシェア値の順位が該ある製品Pよりも低い製品PL+1までの製品売上増減額PI&shy;&shy;iの累計値を、市場売上増減額MIから差し引いた値と、シェア値が最も小さい製品Pからシェア値の順位が該ある製品Pよりも低い製品PL+1までの最新の製品売上CPEの累計値を、最新の市場売上CMEから差し引いた値に占める、該ある製品Pの最新の製品売上CPEの割合の平方根とを乗算する式を計算式として用いる。なお、製品売上算出部103は、シェア値が最も小さい製品Pの製品売上増減額PI&shy;&shy;iを算出する場合には、市場売上増減額MIと、最新の市場売上CMEに占める最新の製品売上CPEの割合の平方根とを乗算する計算式を用いる。
【0065】
なお、製品売上算出部103は、売上データに含まれる製品の個数が3つ以上の場合に上記式(2)及び式(3)を用いるが、製品の個数が2つの場合には、式(2)及び式(3)から平方根が外れた式を用いる。
【0066】
<2.1.5.比較対象製品CPの特定>
そして、S5において比較対象特定部106は、分析対象製品APのシェア値と、シェア値の順位が分析対象製品APと前後関係にある製品のシェア値と、の比に基づいて、比較対象製品CPを特定する。本実施形態において比較対象特定部106は、シェア値の順位が分析対象製品APと前後関係にある製品のシェア値が、分析対象製品APのシェア値の√3倍又は3倍の閾値以下である場合に、該製品を比較対象製品CPとして特定する。ここで、比較対象特定部106は、売上データに含まれる製品数が2つの場合には、分析対象製品APのシェア値の3倍の値を閾値として、売上データに含まれる製品数が3つ以上の場合には、分析対象製品APのシェア値の√3倍の値を閾値として用いる。
【0067】
図5は、試算端末装置1に表示される、製品売上増減額を算出する為のシェア値試算結果画面の表示例である。シェア値試算結果画面には、時期入力部LCI、予測伸率入力部MEGI、現製品売上表示部CPED、予測製品売上表示部APED、増減表示部GED、及び射程距離表示部RDを含む。
【0068】
時期入力部LCIは、ライフサイクルの時期を入力可能に構成される。なお、設定部102が過去の売上データ及びS1において入力された売上データに基づいて、ライフサイクル時期を設定した場合には、設定された時期が表示される。
予測伸率入力部MEGIは、市場売上の予測伸び率を入力可能に構成される。
現製品売上表示部CPEDは、S1において取得された売上データに含まれる製品群についての製品毎の製品売上、及びシェア値が表示される。
予測製品売上表示部APEDは、製品売上増減額及び最新の製品売上を合計した将来の製品売上、及び将来の市場売上(図示例では、予測される市場売上)に占める将来の製品売上の割合を示す将来のシェア値を製品毎に表示する。
増減表示部GEDは、S4において算出された製品売上増減額、将来の製品売上と最新の製品売上の比、及びシェア値と将来のシェア値との差を表示する。また、シェア値と将来のシェア値の差がマイナスとなる製品は、プラスとなる製品と異なる態様で表示される。
射程距離表示部RDは、製品の入力を受け付け可能に構成され、選択された製品のシェア値と、シェア値の順位が該選択された製品と前後関係にある製品のシェア値と、の比が所定値以上であるかを示す指標が前後関係の製品毎に表示される。
【0069】
<2.2.マトリクス分析のフロー>
次いで、S6~S7において、マトリクス分析部120の各部の処理が実行される。なお以下では、比較対象製品CPのランク付けについて説明するが、分析対象製品APのランク付けも同様な処理によって実行される。
【0070】
<2.2.1.ランク付け処理>
まず、S6において、顧客毎に需要規模及び顧客内シェアのランクが決定される。需要規模算出部121は、S1において取得された売上データに基づいて算出される顧客毎のシェア値を用いて、ある顧客の需要規模の算出については、シェア値が最も大きい顧客から該ある顧客までのシェア値を高い順に累積することで、累積値を該ある顧客の需要規模として算出する。なお、需要規模算出部121は、シェア値が最も大きい顧客については、シェア値を需要規模とする。また、顧客内シェア値算出部122は、ある顧客での製品群の最新の製品売上合計に占める、当該ある顧客におけるS5において特定された比較対象製品CPの製品売上の割合を顧客内シェアとして算出する。
【0071】
そして、ランク付部123は、算出された需要規模に基づいて、需要規模における所定のランク毎に定められた閾値と比較することにより、需要規模のランクを顧客毎に決定する。ここで本実施形態において、所定のランク毎に定められた閾値とは、ランク「A」は需要規模が80%、ランク「B」は需要規模が95%、ランクCは需要規模が100%である。なお、ランクの個数と閾値は任意に設定可能である。
【0072】
また、ランク付部123は、顧客毎の顧客内シェア値に基づいて、比較対象製品CPに関して顧客内シェアのランクを顧客毎に決定する。ランク付部123は、ある顧客での顧客内シェアにおいて、比較対象製品CPの顧客内シェアが製品群の顧客内シェアの中で最大である場合には、比較対象製品CPの顧客内シェアと、製品群の顧客内シェアのうち2番目に大きい顧客内シェアと、の比が所定値を超えているか否かに基づいて、顧客内シェアのランクを決定する。この場合の顧客内シェアのランクとしては、具体的に、顧客内シェアの比が所定値を超えている場合は「a」、顧客内シェアの比が所定値を超えていない場合は「b」である。ここで本実施形態における該所定値とは、売上データに含まれる製品の個数が2つの場合は「3」、3つ以上の場合は「√3」であるが、所定値は任意に設定可能である。
【0073】
また、ランク付部123は、ある顧客での顧客内シェアにおいて、比較対象製品CPの顧客内シェアが製品群の顧客内シェアの中で最大でない場合には、比較対象製品CPの顧客内シェアが所定値を超えているか否かに基づいて、顧客内シェアのランクを決定する。この場合の顧客内シェアのランクとしては、具体的に、顧客内シェアが所定値を超えている場合は「c」、顧客内シェアが所定値を超えていない場合は「d」である。ここで本実施形態における該所定値とは、「5」であるが、任意に設定可能である。
【0074】
<2.2.2.ランク表の表示>
そしてS7において、比較対象製品CPを販売する顧客についてのランク表が表示される。図6は、試算端末装置1に表示される、比較対象製品CPを販売する顧客についてのランク表の表示例である。図示例では、比較対象製品CPとして競合製品1についてのランク表が表示されている。そして、需要規模と顧客内シェアのランクの組み合わせ毎に、該組み合わせに属する顧客の顧客数が表示されている。
【0075】
<2.3.戦力量の試算フロー>
次いで、S8~S9において、戦力量試算部130の各部の処理が実行される。
【0076】
<2.3.1.試算対象製品SPの特定>
まず、S8において、試算対象特定部131は、S5において特定された比較対象製品CPのうち、特定のランクに属する顧客において販売されている製品を試算対象製品SPとして特定する。本実施形態において試算対象特定部131は、特定のランクとして「Ab」に属する顧客において販売されている製品を試算対象として特定するが、「Ab」に顧客が存在しない場合には、「Ac」や「Ad」等に属する顧客において販売されている製品を試算対象製品SPとして特定してもよい。
【0077】
<2.3.2.戦力量の試算>
そして、S9において戦力量算出部132は、S8において特定された試算対象製品SP、及び分析対象製品APの戦力量を算出する。本実施形態において戦力量算出部132は、分析対象製品AP、及び試算対象製品SPのそれぞれについて、シェア値の2乗と競争優位性に係る数値を乗算した値を戦力量として算出する。具体的に、戦力量算出部132は、試算対象製品SPの競争優位性に係る数値を「1」として、分析対象製品APの競争優位性に係る数値をユーザから入力された数値として、戦力量を算出する。
【0078】
図7は、試算端末装置1に表示される、戦力量を試算する為の画面の表示例である。図示例では、売上データに基づく分析対象製品AP及び試算対象製品SPの最新のシェア値、競争優位性に係る数値、及び戦力量が同一画面上に表示され、分析対象製品APについての競争優位性に係る数値が入力可能に構成される。また、分析対象製品APと試算対象製品SPの戦力量の比と、戦力量の比が所定の閾値を超えるかどうかを示す指標とが並べて表示される。本実施形態において所定の閾値とは、売上データに含まれる製品数が3つ以上の場合は「√3」、製品数が2つの場合は「3」である。
【0079】
ここで本実施形態において競争優位性とは、製品力、製薬企業の営業担当者の質、ブランド力、経営資源の量、アクションプラン、医薬品卸売会社の営業担当者との共闘、上司動向等の指標によって決定されるものであって、これらの指標を数値化したものである。
これにより、戦力量が競合他社を超える為には、競争優位性がどの程度必要であるかを試算することができ、必要な競争優位性が現実的かどうかに応じて、戦力量を投資すべきかどうかを判断することができる。
【0080】
<2.4.構造シェアの試算フロー>
次いで、S10~S11において、構造シェア試算部140の各部の処理が実行される。本実施形態において構造シェア試算部140は、戦力量比が所定の閾値以下となるような分析対象製品APの競争優位性に係る数値が、予め設定された数値以下である場合に、分析対象製品APの構造シェアを算出する。
【0081】
<2.4.1.構造シェアの重みの決定>
まず、S10において、ランク率算出部141は、分析対象製品APについて、S6においてランク付けされた顧客について、第1のランクに属する顧客数に占める、第2のランクに属する顧客数の割合を示すランク率を算出する。本実施形態においてランク率算出部141は、具体的に、第1のランクとして「A」を用いて、第2のランクとして「Aa」を用いる。即ち、ランク率算出部141は、分析対象製品APを売り上げる顧客に関して、「Aa」に属する顧客数を、「Aa」、「Ab」、「Ac」又は「Ad」に属する顧客の顧客数合計で割り算することでランク率を算出する。
【0082】
次いで、カバー率算出部142は、分析対象製品APを所定値以上売り上げている顧客数を、売上データに含まれる全顧客数で割り算することでカバー率を算出する。そして、構造シェア算出部143は、該ランク率、該カバー率、重みを示す変数を用いて表した構造シェアの数値と、分析対象製品APのシェア値とが等しくなるように該変数を決定する。本実施形態において構造シェア算出部143は、具体的に、分析対象製品APについて、売上データに基づいて算出されたランク率と重みを示す変数を乗算した値と、1から該変数を引いた値とカバー率を乗算した値との和を2で割った値を構造シェアとして、該構造シェア及び分析対象製品APのシェア値と、が等しくなるように該変数を決定する。
【0083】
<2.4.2.構造シェアの試算>
S11においてランク率算出部141は、第2のランクに属する顧客数の入力をユーザから受け付けて、該顧客数を用いてランク率を算出する。本実施形態においてランク率算出部141は、具体的に、第2のランクとして「Aa」に属する顧客数としてユーザから入力された数値を、分析対象製品APを売り上げる顧客に関して「Aa」、「Ab」、「Ac」又は「Ad」に属する顧客の顧客数合計で割り算することでランク率を算出する。
【0084】
そして、構造シェア算出部143は、該算出されたランク率、S10において決定された変数、カバー率を用いて、ランク率がユーザが指定した数になった場合の構造シェアを算出する。本実施形態において構造シェア算出部143は、ユーザから入力された値に基づいて算出されたランク率と決定された変数を乗算した値と、1から該変数を引いた値とカバー率を乗算した値と、の和を2で割ることで、ランク率がユーザが指定した数になった場合の構造シェアを算出する。
【0085】
図8は、試算端末装置1に表示される、構造シェアを試算する為の画面の表示例である。図示例では、構造シェアの試算対象として自社製品(分析対象製品AP)が指定され、分析対象製品APに関して、シェア値、ランク率(図示例では、Aa率)、カバー率、及び構造シェアが表示される。そして、ランク率入力部RIPにおいてユーザから数値の入力を受け付けることで、該数値をランク「Aa」に属する顧客数と仮定して、ランク率算出部141によりランク率が算出され、該ランク率が表示される。また、該ランク率に基づいて構造シェア算出部143により構造シェアが算出され、該構造シェアが表示される。
【0086】
このように、売上データに基づいて現状の構造シェアを算出し、更にAa率の数を入力可能にすることで、Aa率に変動して構造シェアがどのように変動するかを試算することができる。
【0087】
以上S1~S11を実施することで、現状の売上に基づいて、最新のシェア値にあまり差がなく最新のシェア値を逆転できるような競合製品を特定し、戦力量を試算することで最新のシェア値を逆転することが現実的であるかどうかをシミュレーションし、更に構造シェアの試算結果と将来のシェア値を比較することで、ランク「Aa」に属する顧客数をどの程度増やす必要があるのかについて戦力を立てることができる。
【0088】
なお、本実施形態において製品売上算出部103は、ある製品Pの将来の製品売上に係る金額として製品売上増減額PIを算出するが、将来の製品売上FPEを算出してもよい。この場合、製品売上算出部103は、式(2)に代えて式(4)、式(3)に代えて式(5)を用いる。ここで、FMEは将来の市場売上を示す。つまり、製品売上算出部103は、市場売上増減額MIに代えて将来の市場売上FMEを用いて、製品売上増減額PIに代えて将来の製品売上FPEを用いて、式(2)及び式(3)と同様の計算方法により、ある製品Pの将来の製品売上FPEを算出する。
【数4】
【数5】
【0089】
なお、本発明は医療産業の現状に鑑みて開発された試算システムであるが、他の産業におけるマーケティングプラン策定においても有用である。
【符号の説明】
【0090】
0 :試算システム
1 :試算端末装置
2 :データベース
11 :処理部
12 :記憶部
13 :通信部
14 :入力部
15 :出力部
NW :通信ネットワーク
110 :シェア値予測部
101 :取得部
102 :設定部
103 :製品売上算出部
104 :市場売上算出部
105 :シェア値算出部
106 :比較対象特定部
120 :マトリクス分析部
121 :需要規模算出部
122 :顧客内シェア値算出部
123 :ランク付部
130 :戦力量試算部
131 :試算対象特定部
132 :戦力量算出部
140 :構造シェア試算部
141 :ランク率算出部
142 :カバー率算出部
143 :構造シェア算出部
150 :表示処理部
AP :分析対象製品
CP :比較対象製品
SP :試算対象製品
【要約】      (修正有)
【課題】競合製品も考慮したマーケティングを支援するシステムを提供する。
【解決手段】複数の製品からなる製品群が販売される市場の動向に応じて製品の市場占有率の変動の程度を試算する試算システム0であって、試算端末装置の取得部は、製品群について、製品毎の最新の背品売上を含む売上データを取得し、設定部は、市場のライフサイクルの時期を設定し、製品売上算出部は、最新の市場売上の予測伸び率の入力を受け付け、ライフサイクルの時期に応じた計算式を用いて、市場売上の予測伸び率及び製品毎の最新の売上に基づいて製品毎の将来の売上に係る金額を算出し、シェア値算出部は、最新の売上及び最新の市場売上に基づいて、最新の市場占有率を示す最新のシェア値を製品毎に算出すると共に、将来の売上に係る金額及び最新の市場売上と予測伸び率から算出される将来の市場売上に基づいて、将来の市場占有率を示す将来のシェア値を製品毎に算出する。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8