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特許7396770植物細胞におけるゲノム編集のためのV型CRISPR/ヌクレアーゼシステム
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  • 特許-植物細胞におけるゲノム編集のためのV型CRISPR/ヌクレアーゼシステム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-04
(45)【発行日】2023-12-12
(54)【発明の名称】植物細胞におけるゲノム編集のためのV型CRISPR/ヌクレアーゼシステム
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/09 20060101AFI20231205BHJP
   C12N 15/55 20060101ALI20231205BHJP
   A01H 1/00 20060101ALI20231205BHJP
   C12N 5/10 20060101ALN20231205BHJP
   C12N 9/16 20060101ALN20231205BHJP
   C12N 15/87 20060101ALN20231205BHJP
【FI】
C12N15/09 110
C12N15/55 ZNA
A01H1/00 A
C12N5/10
C12N9/16 Z
C12N15/87 Z
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021500272
(86)(22)【出願日】2019-07-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-09-13
(86)【国際出願番号】 EP2019068839
(87)【国際公開番号】W WO2020011985
(87)【国際公開日】2020-01-16
【審査請求日】2022-07-08
(31)【優先権主張番号】62/697,021
(32)【優先日】2018-07-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】18194078.4
(32)【優先日】2018-09-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508186875
【氏名又は名称】キージーン ナムローゼ フェンノートシャップ
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】バンドック, ポール
【審査官】田ノ上 拓自
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/223538(WO,A1)
【文献】米国特許第09982279(US,B1)
【文献】国際公開第2018/071672(WO,A1)
【文献】Trends in Plant Science,2017年07月,Vol.22, No.7,p.550-553
【文献】Cell Biosci.,2017年,Vol.7,21 (p.1-18),DOI 10.1186/s13578-017-0148-4
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
A01H 1/00
C12N 5/10
C12N 9/16
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
DNAをcrRNA誘導型MAD7-ヌクレアーゼと接触させることを含む、植物細胞のDNAを標的化修飾するための方法であって、
前記MAD7-ヌクレアーゼが、配列番号1と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、前記MAD7-ヌクレアーゼをコードする核酸構築物で前記植物細胞をトランスフェクトすることにより、前記植物細胞に一過的に導入されるものである、方法
【請求項2】
前記MAD7-ヌクレアーゼが2つの触媒的に活性なエンドヌクレアーゼドメインを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記MAD7-ヌクレアーゼが少なくとも1つの触媒的に不活性なエンドヌクレアーゼドメインを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記MAD7-ヌクレアーゼが機能性ドメイン、好ましくはデアミナーゼドメインに融合されている、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記crRNAが、前記crRNAをコードする核酸構築物で前記細胞をトランスフェクトすることによって前記細胞に導入される、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記crRNAが、前記crRNAで前記細胞をトランスフェクトすることによって前記細胞に導入され、好ましくはcrRNAが化学的に修飾されている、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記細胞がテンプレートオリゴヌクレオチドでさらにトランスフェクトされ、好ましくはテンプレートオリゴヌクレオチドが化学的に修飾されている、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記細胞がドナー構築物でさらにトランスフェクトされ、好ましくはドナー構築物が化学的に修飾されている、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記MAD7-ヌクレアーゼ、crRNA、及び/又は任意選択でテンプレートオリゴヌクレオチド若しくはドナー構築物が、ポリエチレングリコール媒介性トランスフェクションを使用して、好ましくはPEGを含む水性媒体を使用して、前記植物細胞に導入される、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
標的化修飾を含む植物又はその子孫を再生するステップをさらに含む、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
植物細胞のDNAを標的化修飾するための、請求項1~4のいずれか一項で定義したcrRNA誘導型MAD7-エンドヌクレアーゼをコードする核酸構築物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分子生物学及び植物生物学の分野におけるものである。本発明は、標的化DNA修飾に関し、そのような修飾を生成するための方法及び組成物を含む。
【背景技術】
【0002】
生細胞の遺伝物質に故意に変化を生成させるプロセスは、その細胞、又はその細胞が一部を形成するか若しくはその細胞から再生され得る生物体の1つ又は複数の遺伝的にコードされた生物学的特性を修飾するという目的を有する。これらの変化は、例えば、遺伝物質の一部の欠失、外因性遺伝物質の付加、又は遺伝物質の既存のヌクレオチド配列の変化の形態をとる。真核生物の遺伝物質を改変する方法は20年以上にわたり公知であり、農業、人間の健康、食品の品質及び環境の保護の分野における改善のために、植物、ヒト及び動物の細胞、並びに微生物において広く適用されることがわかっている。最も一般的な方法は、外因性DNA断片を細胞のゲノムに加えることからなり、これが、既存の遺伝子の発現がそれにより抑制される適用を含め、既存の遺伝子によりコードされている特性に加えて、その細胞又はその生物体に新しい特性が付与される。多くのこのような例は望ましい特性を得るのに効果的であるが、これらの方法はいくつかの欠点を有する。例えば、これらの従来の方法はそれほど正確ではなく、その理由としては、外因性DNA断片が挿入されるゲノム位置について(したがって、最終的な発現レベルにて)常にコントロールできるものでなく、また望ましい効果が、元の十分にバランスがとれたゲノムによってコードされている自然の特性を超えて出現しなければならないからである。対照的に、所定のゲノム遺伝子座におけるヌクレオチドの付加、欠失又は変換をもたらすゲノム編集の方法は、既存の遺伝子の正確な修飾を可能にする。
【0003】
部位特異的ヌクレアーゼ、例えば、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、及びクラスター化した規則的な配置の短い回文配列リピート(Clustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeat、CRISPR)ヌクレアーゼを使用することによって、標的化DNA改変の分野が急速に発展している。
【0004】
CRISPR(クラスター化した規則的な配置の短い回文配列リピート)は、複数の短い直接配列リピートを含む遺伝子座であり、配列決定された細菌の40%及び配列決定された古細菌の90%で確認されている。CRISPRリピートは、遺伝的病原体、例えばバクテリオファージ及びプラスミドに対して獲得された細菌免疫のシステムを形成する。細菌が病原体により攻撃された場合、病原体のゲノムの小さな断片がCRISPR関連タンパク質(Cas)によってプロセシングされ、CRISPRリピート間の細菌ゲノムに組み込まれる。次いで、CRISPR遺伝子座は転写され、プロセシングされて、病原体ゲノムと同一の約30bpの配列を含む、いわゆるcrRNAを形成する。これらのRNA分子は、その後、感染の際に病原体を認識するベースを形成し、病原体ゲノムの直接消化を介して病原体の遺伝要素のサイレンシングをもたらす。Cas9タンパク質は、ストレプトコッカス・ピオゲネス(S.pyogenes)のII型CRISPR/Casシステムの必須成分であり、crRNAと、crRNAにより規定されるゲノムの位置にDNA二本鎖切断(DSB)を導入することによって、分解のため侵入病原性DNAを標的とするトランス活性化crRNA(tracrRNA)と呼ばれる第2のRNAと組み合わされた場合にエンドヌクレアーゼを形成する。このII型CRISPR/Cas9システムは、二本鎖切断の標的化導入及びその後の内因性修復メカニズムの活性化によって、目的の部位の真核生物ゲノムに修飾を導入することができる、生化学における便利で有効なツールであることが証明されている。Jinekら(2012,Science 337:816~820)は、crRNA及びtracrRNAの必須配列を単一RNA分子に結合させることにより生成される単鎖キメラRNA(単一ガイドRNA、sRNA、sgRNA)が、Cas9との組合せで機能性エンドヌクレアーゼを形成できることを証明した。多くの様々なCRISPR/Casシステムが異なる細菌種から同定されている(Zetscheら 2015 Cell 163, 759~771;Kimら 2017, Nat. Commun. 8, 1~7;Ranら 2015. Nature 520, 186~191)。
【0005】
CRISPR/Cas9システムは、幅広い様々な生物体及び細胞タイプにおけるゲノム編集に使用することができる。最初に、CRISPR/CasエンドヌクレアーゼがDSBを誘導するゲノム配列が同定され、次いでこれがプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)の存在についてスクリーニングされる。PAM配列はCRISPR/Casエンドヌクレアーゼ活性にとって不可欠であり、比較的短く、したがって、通常、ある程度の長さの任意の所定の配列に複数回存在する。例えば、ストレプトコッカス・ピオゲネスCas9タンパク質のPAMモチーフはNGGであり、これにより確実に、任意の所定のゲノム配列について複数のPAMモチーフが存在し、多くの異なるガイドRNAが設計され得る。さらに、同一の二本鎖配列の反対鎖を標的とするガイドRNAも設計され得る。PAMに直接隣接する配列がガイドRNAに組み込まれる。これは、使用されるCRISPR/Casシステムに応じて長さが異なり得る。例えば、Cas9 sgRNAのターゲティング配列の最適な長さは20ntであり、ほとんどの場合、この長さの配列は植物ゲノム内で固有である。植物細胞における発現については、ガイドRNAをコードする遺伝子をRNAポリメラーゼ-IIIプロモーターに、例えばシロイヌナズナ(Arabidopsis)のU6プロモーター、又は実験が実施される細胞タイプ、生物体、植物の種若しくはファミリー由来の対応する若しくは機能的に類似したpol-IIIプロモーターに連結させることができる。
【0006】
CRISPR/Casエンドヌクレアーゼは、実験が実施される生物体又は細胞タイプに適した構成的プロモーター又は誘導性プロモーターの任意の形態から細胞において発現され得る。場合によっては、CRISPR/Casエンドヌクレアーゼのタンパク質発現レベルは、特定の細胞タイプ又は生物体に対するそのコドン使用頻度の最適化により改善することができる。
【0007】
CRISPR/Casシステムの2つの構成要素であるエンドヌクレアーゼ及びガイドRNA(複数可)は、異所性ゲノム要素、例えば、(非複製)プラスミド構築物、ウイルスベクターから細胞において発現され得るか、又は細胞若しくは生物体においてタンパク質(CRISPR/Casエンドヌクレアーゼ)及びRNA(ガイドRNA)として直接導入され得る。さらに、CRISPR/CasエンドヌクレアーゼをコードするmRNAが使用可能である。プラスミド又はウイルスベクターが形質転換細胞において複製できない場合、CRISPR/Cas及びガイドRNA(複数可)は短時間発現又は存在した後、細胞から除去される。CRISPR/Casタンパク質及びガイドRNAの安定的発現はトランスジェニック手法を使用して達成することができ、それにより、それらをコードする遺伝子が宿主ゲノムに組み込まれる。
【0008】
CRISPR/Casエンドヌクレアーゼ及びガイドRNAが細胞内において存在/発現した場合、2つの構成要素の複合体が、ガイドRNA及び隣接するPAM配列のターゲティング配列に相補的な配列についてゲノムDNAをスキャンする。使用されるCRISPR/Casエンドヌクレアーゼに応じて、複合体はその後、PAMから様々な距離で両方のDNA鎖においてニックを誘発する。例えば、ストレプトコッカス・ピオゲネスCas9タンパク質は、PAM配列の3bp上流の両DNA鎖にニックを導入し、平滑DNA DSBを生成する。
【0009】
DNA DSBが生成されると、細胞のDNA修復機構、特に非相同性末端結合(NHEJ)経路に属するタンパク質がDNA末端の再連結に関与する。このDSBが正確に修復されたならば、その後、配列はCRISPR/Cas-ガイドRNA複合体による切断の標的を形成する。しかし、一部の再連結事象は不正確であり、切断時に数個のヌクレオチドがランダム欠失したり又は付加されたりする可能性があり、その結果、ゲノムDNAにインデル変異が生じる。これが、ガイドRNAの結合を阻止し、したがって任意のさらなるDSB誘導を阻止する標的配列の改変をもたらす。
【0010】
最近、DSBのプログラムされた導入が可能な第2のCRISPR/Casシステム、すなわち、V型CRISPR/Cpf1(またCRISPR/Cas12aとしても知られている)が特徴付けられた。Cpf1とCas9の間の主たる違いは、Cpf1はcrRNAとtracrRNAの両方ではなくcrRNAのみを必要とし、Cpf1の最適なスペーサーは少なくとも21ヌクレオチドであり、Cpf1はCas9のGリッチPAMではなくTリッチPAMを認識することである。さらに、PAMはガイド配列の上流に配置されており、Cpf1は、Cas9により生成されるPAMに近位の平滑末端DSBではなく、PAMの遠位の互い違いのDSB(staggered DSB)を生成する。参照により本明細書に組み込まれる、国際公開第2018/115390号では、植物細胞プロトプラストにおける効果的なゲノム編集が明示されている。
【0011】
本発明者らは、このたび、植物細胞で驚くほどに効果的であるV型CRISPR/ヌクレアーゼシステムを見出した。今までに、MAD7と呼ばれるこのシステムは、原核生物の宿主細胞で有効であることのみ報告されている(参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第9,982,279号を参照されたい)。
【発明の概要】
【0012】
定義
本発明の方法、組成物、使用及び他の態様に関する各種用語は、本明細書及び特許請求の範囲の全体にわたって使用される。そのような用語には、特段の明示のない限り、本発明が関係する技術分野における通常の意味が付与されるものとする。他の詳細に定義された用語は、本明細書で提供された定義と一致する方法で解釈されるものとする。本明細書に記載のものと類似の又は同等の任意の方法及び材料を本発明の試験の実施において使用することができ、好ましい材料及び方法は本明細書に記載されている。
【0013】
本発明に記載されているものと類似の又は同等の任意の方法及び材料を本発明の実施に使用できることは、当業者には明らかである。
【0014】
本発明の方法において使用される従来の技術を実施する方法は、当業者には明らかである。分子生物学、生化学、計算化学、細胞培養、組換えDNA、バイオインフォマティクス、ゲノミクス、配列決定及び関連する分野における従来の技術の実施は、当業者には周知であり、例えば、以下の文献:Sambrookら、Molecular Cloning. A Laboratory Manual, 2nd Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N. Y., 1989; Ausubelら、Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, New York, 1987及び定期的更新;並びにthe series Methods in Enzymology, Academic Press, San Diegoで論じられている。
【0015】
「A」、「an」、及び「the」:これらの単数形の用語は、文脈で特に明示されていない限り、複数の指示物を含む。したがって、不定冠詞の「a」又は「an」は、通常、「少なくとも1つ」を意味する。したがって、例えば、「細胞(a cell)」への言及は、2つ以上の細胞の組合せなどを含む。
【0016】
「約」及び「およそ」:これらの用語は、測定可能な値、例えば、量、一時的な期間などに言及する場合、そのような変動は開示した方法を実施するのに適切であるので、指定値から±20%又は±10%、より好ましくは±5%、さらにより好ましくは±1%、さらにより好ましくは±0.1%の変動を含むことを意味する。さらに、量、比率、及び他の数値が本明細書において範囲形式で示されている場合がある。そのような範囲形式は、便宜的かつ簡潔にするために使用されており、範囲の制限として明示的に示した数値を含むように柔軟に理解されるべきであるが、あたかも各数値及び部分的範囲が明示的に示されているように、その範囲内に含まれるすべての個々の数値又は部分的範囲もまた含むように理解されたい。例えば、約1~約200の範囲の比は、約1~約200の明示的に記載された範囲を含むが、約2、約3、及び約4などの個々の比、並びに約10~約50、約20~約100などの部分的範囲も含むものと理解されたい。
【0017】
「及び/又は」:用語の「及び/又は」とは、1つ又は複数の記載した事例が単独で、又は記載した事例の少なくとも1つと組み合わせて、記載したすべての事例に至るまで起こり得る状況を意味する。
【0018】
「含む」:この用語は、包括的で制限はなく、排他的ではないと解釈される。詳しくは、この用語及びその変化形は、指定した特徴、ステップ、又は構成要素が含まれることを意味する。これらの用語は、他の特徴、ステップ、又は構成要素の存在を排除するものと解釈されるべきではない。
【0019】
「例示的」:この用語は「例、事例、又は実例として有用である」ことを意味し、本明細書で開示されている他の構成を排除するものと解釈されるべきではない。
【0020】
「植物」とは、植物全体又は植物の一部、例えば、植物から得ることができる細胞、組織培養物又は器官(例えば、花粉、種子、胚珠、配偶子、根、葉、花、花芽、枝、葯、果実、穀粒、穂、穂軸、殻、茎、根端、粒、胚など)、並びにこれらのいずれかの誘導物、及び自家受粉又は交配によりそのような植物に由来する後代を意味する。植物の非限定的な例としては、作物及び栽培植物、例えば、大麦、キャベツ、キャノーラ、キャッサバ、カリフラワー、チコリ、ワタ、キュウリ、ナス、ブドウ、トウガラシ、レタス、トウモロコシ、メロン、アブラナ、ジャガイモ、カボチャ、コメ、ライムギ、モロコシ、カボチャ、サトウキビ、テンサイ、ヒマワリ、ピーマン、トマト、スイカ、小麦、及びズッキーニなどが挙げられる。
【0021】
「植物細胞(複数可)」は、分離の、又は組織、器官若しくは生物内のプロトプラスト、配偶子、懸濁培養物、小胞子、花粉粒などを含む。植物細胞は、多細胞構造の一部、例えば、カルス、分裂組織植物器官又は外植片などであり得る。
【0022】
用語の「構築物」、「核酸構築物」、「ベクター」、及び「発現ベクター」とは、本明細書では互換的に使用され、本明細書では、組換えDNA技術の使用によって得られる人工的核酸分子として定義される。これらの構築物及びベクターは、したがって、天然に存在する核酸分子を含まないが、核酸構築物は天然に存在する核酸分子(の一部)を含むことができる。
【0023】
ベクター骨格は、例えば、バイナリーベクター若しくはスーパーバイナリーベクター(例えば、米国特許第5,591,616号、米国特許出願公開第2002138879号及び国際公開第95/06722号を参照されたい)、当技術分野において公知であるような、また本明細書の他の箇所に記載されているような、共組み込みベクター又はT-DNAベクターであってもよく、これにキメラ遺伝子が組み込まれるか、又は適切な転写調節配列が既に存在している場合には、所望のヌクレオチド配列(例えば、コード配列、アンチセンス配列又は逆方向反復配列)のみが転写調節配列の下流に組み込まれる。ベクターは、分子クローニングにおける使用を容易にするために、遺伝要素、例えば、選択可能なマーカー、複数のクローニング部位などをさらに含むことができる。
【0024】
用語の「遺伝子」とは、細胞においてRNA分子(例えば、pre-mRNA又はncRNA)に転写される領域(転写領域)を含むDNA断片を意味する。転写領域は、本明細書で定義した遺伝子の一部を形成する、適切な調節領域(例えばプロモーター)に作動可能に連結され得る。遺伝子は、5’リーダー配列、コード領域、及びポリアデニル化部位を含む3’非翻訳配列(3’末端)など、いくつかの作動可能に連結された断片を含むことができる。
【0025】
「遺伝子の発現」とは、適切な調節領域、特にプロモーターに作動可能に連結されたDNA領域がRNAに転写され、RNAが生物学的に活性なタンパク質又はペプチドをコードする場合、続いて生物学的に活性なタンパク質又はペプチドに翻訳されるプロセスを意味する。
【0026】
用語の「作動可能に連結された」とは、機能的な関係におけるポリヌクレオチドエレメントの連結を意味する。核酸は、別のヌクレオチド配列と機能的な関係に置かれる場合、「作動可能に連結される」。例えば、プロモーター、又はむしろ転写調節配列は、それがコード配列の転写に影響を及ぼすのであれば、コード配列に作動可能に連結されている。動作可能に連結されているとは、連結されているDNA配列が隣接していることを意味し得る。
【0027】
「プロモーター」とは、1つ又は複数の核酸の転写を制御するように機能する核酸断片を意味する。プロモーター断片は、遺伝子の転写開始部位の転写方向に対して上流(5’)に位置し、DNA依存性RNAポリメラーゼの結合部位である転写開始部位(複数可)の存在により構造的に同定され、また、限定するものではないが、転写因子結合部位、リプレッサー及びアクチベータータンパク質結合部位を含む他の任意のDNA配列、並びに直接的又は間接的に作用してプロモーターからの転写量を調節することが当業者に公知である任意の他のヌクレオチド配列をさらに含むことができる。
【0028】
任意選択で、用語の「プロモーター」はまた、5’UTR領域(5’非翻訳領域)を含んでいてもよい(例えば、プロモーターは、本明細書では、転写領域の翻訳開始コドンの上流の1つ又は複数の部分を含んでいてもよく、その理由は、この領域が転写及び/又は翻訳の調節において役割を果たし得るからである)。「構成的」プロモーターは、大半の生理学的及び発生学的条件下で、大部分の組織において活性であるプロモーターである。「誘導性」プロモーターは、生理学的に(例えば、ある特定の化合物の外部適用により)又は発生的に調節されるプロモーターである。「組織特異的」プロモーターは、特定のタイプの組織又は細胞においてのみ活性がある。
【0029】
用語の「タンパク質」又は「ポリペプチド」は互換的に使用され、特定の作用機序、サイズ、三次元構造又は起源に関係なく、アミノ酸の鎖からなる分子を意味する。したがって、タンパク質の「断片」又は「一部」は、依然として「タンパク質」と呼ばれ得る。本明細書で定義され、本明細書で定義した任意の方法において使用されるようなタンパク質は、単離されたタンパク質であり得る。「単離されたタンパク質」は、もはやその自然環境に存在しない、例えば、in vitroで、又は組換え細菌若しくは植物宿主細胞におけるタンパク質を意味するように使用される。
【0030】
用語の「再生」とは、本明細書では、単一の植物細胞、カルス、外植片、組織又は器官からの新しい組織及び/又は新しい器官の形成として定義される。好ましくは、再生は、シュート再生、異所性頂端分裂組織形成、及び根再生のうちの少なくとも1つである。再生は、体細胞胚形成又は器官形成によって発生し得る。再生は、単一の植物細胞からの、又は、例えばカルス、外植片、組織若しくは器官からの、新しい植物の形成をさらに含んでいてもよい。再生のための植物細胞は、未分化の植物細胞であり得る。したがって、再生プロセスは、親組織から直接的に、又は、例えばカルスの形成を介して間接的に発生し得る。
【0031】
「再生を可能にする条件」とは、本明細書では、植物細胞又は組織が再生することができる環境として理解される。このような条件としては、少なくとも、適切な温度、栄養、昼/夜リズム、及び灌漑が挙げられる。
【0032】
用語の「デアミナーゼ」とは、脱アミノ化反応を触媒する酵素を意味する。いくつかの実施形態では、デアミナーゼは、シトシンのウラシルへの加水分解性脱アミノ化を触媒する、シトシンデアミナーゼである。またデアミナーゼは、アデニンの脱アミノ化を触媒することにより、それをイノシンに変換する、アデニンデアミナーゼであってもよい。
【0033】
「配列」又は「ヌクレオチド配列」:これは、核酸の又は核酸内のヌクレオチドの順序を意味する。言い換えると、核酸のヌクレオチドの任意の順序は、配列又はヌクレオチド配列と呼ばれ得る。
【0034】
用語の「相同性」、「配列同一性」などは、本明細書では互換的に使用される。配列同一性は、本明細書では、配列を比較することにより決定した場合に、2つ以上のアミノ酸(ポリペプチド若しくはタンパク質)配列間、又は2つ以上の核酸(ポリヌクレオチド)配列間の関係として定義される。当技術分野では、「同一性」はまた、そのような配列のストリング間の一致により決定される事例のように、アミノ酸配列又はヌクレオチド配列間の配列関係性の程度を意味する。2つのアミノ酸配列間の「類似性」は、1つのポリペプチドのアミノ酸配列及びその保存されたアミノ酸置換を第2のポリペプチドの配列と比較することにより決定される。
【0035】
用語の「相補性」とは、本明細書では、完全に相補的な鎖(本明細書で以下に定義したもの、例えば、第2の鎖)に対する配列の配列同一性として定義される。例えば、100%相補的(又は完全に相補的)である配列は、本明細書では、相補鎖と100%の配列同一性を有するものと理解され、例えば、80%相補的である配列は、本明細書では、(完全に)相補的な鎖に対して80%の配列同一性を有するものと理解される。
【0036】
「同一性」及び「類似性」は、公知の方法により容易に算出することができる。「配列同一性」及び「配列類似性」は、グローバル又はローカルアラインメントアルゴリズムを使用し、2つの配列の長さに応じて、2つのペプチド配列又は2つのヌクレオチド配列のアラインメントによって決定することができる。同様の長さの配列は、好ましくは、配列を全長にわたり最適に整列するグローバルアラインメントアルゴリズム(例えば、Needleman Wunsch)を使用して整列されるが、実質的に異なる長さの配列は、好ましくは、ローカルアライメントアルゴリズム(例えば、Smith Waterman)を使用して整列される。配列は、(例えば、デフォルトパラメータを使用してプログラムGAP又はBESTFITにより最適に整列される場合に)、(下記で定義した)配列同一性の少なくとも特定のパーセンテージを共有する場合、「実質的に同一の」又は「本質的に類似の」と呼ばれ得る。GAPは、Needleman及びWunschのグローバルアライメントアルゴリズムを使用して、2つの配列をその全長(完全長)にわたり整列し、一致の数を最大化し、ギャップの数を最小化する。グローバルアライメントは、2つの配列が類似の長さを有する場合に配列の同一性を決定するのに適切に使用される。一般的には、GAPデフォルトパラメータは、ギャップ作成ペナルティ(gap creation penalty)=50(ヌクレオチド)/8(タンパク質)及びギャップ伸長ペナルティ(gap extension penalty)=3(ヌクレオチド)/2(タンパク質)とともに使用される。ヌクレオチドの場合、使用されるデフォルトスコアリングマトリックスはnwsgapdnaであり、タンパク質の場合、デフォルトスコアリングマトリックスはBlosum62である(Henikoff&Henikoff、1992、PNAS 89、915~919)。配列アラインメント及び配列同一性パーセンテージのスコアは、コンピュータープログラム、例えば、Accelrys Inc., 9685 Scranton Road, San Diego, CA 92121-3752 USAから入手可能なGCG Wisconsin Package、バージョン10.3を使用し、又はオープンソースソフトウェア、例えば、上記のGAPと同じパラメータを使用するか、若しくはデフォルト設定を使用するEmbossWIN バージョン2.10.0のプログラム「needle」(グローバルNeedleman Wunschアルゴリズムを使用)若しくは「water」(ローカルSmith Watermanアルゴリズムを使用)を使用して決定することができる(「needle」及び「water」の両方、並びにタンパク質アラインメント及びDNAアライメントの両方において、デフォルトギャップ作成ペナルティは10.0であり、デフォルトギャップ伸長ペナルティは0.5である;デフォルトスコアリングマトリックスは、タンパク質についてはBlosum62であり、DNAについてはDNAFullである)。配列が実質的に異なる全長を有する場合は、ローカルアラインメント、例えばSmith Watermanアルゴリズムを使用するものが好ましい。
【0037】
或いは、類似性又は同一性のパーセンテージは、アルゴリズム、例えばFASTA、BLASTなどを使用して、公共データベースに対して検索することにより決定することができる。したがって、本発明の核酸配列及びタンパク質配列は、「クエリ配列」としてさらに使用することができ、例えば、他のファミリーメンバー又は関連配列を同定するために、公共データベースに対して検索を実施することができる。このような検索は、Altschulら (1990) J. Mol. Biol. 215:403~10のBLASTn及びBLASTxプログラム(バージョン2.0)を使用して実施することができる。BLASTヌクレオチド検索は、NBLASTプログラム、スコア=100、ワード長=12を用いて実施し、本発明の核酸分子に相同なヌクレオチド配列を得ることができる。BLASTタンパク質検索は、BLASTxプログラム、スコア=50、ワード長=3を用いて実施し、本発明のタンパク質分子に相同なアミノ酸配列を得ることができる。比較の目的でギャップを加えたアライメントを得るには、Altschulら, (1997) Nucleic Acids Res. 25(17): 3389~3402に記載のように、Gapped BLASTを利用することができる。BLAST及びGapped BLASTのプログラムを利用する場合、それぞれのプログラムのデフォルトパラメータ(例えば、BLASTx及びBLASTn)を使用することができる。http://www.ncbi.nlm.nih.gov/の米国国立バイオテクノロジー情報センター(National Center for Biotechnology Information)のホームページを参照されたい。
【0038】
遺伝子の「ホモログ」は、共通の先祖DNA配列からの系統によるさらなる遺伝子である。用語のホモログとは、種分化の事象(オルソログ)によって分離される遺伝子間の関係、又は遺伝子重複の事象(パラログ)によって分離される遺伝子間の関係に適用され得る。遺伝子の「オルソログ」は、種分化により共通の先祖遺伝子から進化した異なる種の遺伝子であり、本明細書では、進化の間、同じ機能を保持していたと理解される。
【0039】
「標的配列」は、標的とされる核酸内のヌクレオチドの順序を示すものであり、例えば、改変は導入されるか、又は検出される。例えば、標的配列は、DNA二重鎖の第1の鎖に含まれるヌクレオチドの順序である。
【0040】
「エンドヌクレアーゼ」は、その認識部位に結合した際に、二重鎖DNAの少なくとも1つの鎖を加水分解する酵素である。エンドヌクレアーゼは、本明細書では、部位特異的エンドヌクレアーゼと理解されたく、用語の「エンドヌクレアーゼ」及び「ヌクレアーゼ」は、本明細書では互換的に使用される。制限エンドヌクレアーゼは、本明細書では、二重鎖の両鎖を同時に加水分解し、DNAに二本鎖切断を導入するエンドヌクレアーゼとして理解されたい。「ニッキング」エンドヌクレアーゼは、二重鎖の1つの鎖のみを加水分解し、切断されるというよりはむしろ「切れ目が入れられた」DNA分子を生成するエンドヌクレアーゼである。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1】MAD7とAsCpf1の比較。標的領域でインデルを示す読み取りのパーセンテージをy軸に示す。各サンプルにおいて、AsCpf1(Cpf1)又はMAD7酵素のいずれかは、表1に挙げたそれぞれの標的部位を標的とするための適切なcrRNAと一緒に発現された。
【発明を実施するための形態】
【0042】
本発明者らは、部位特異的な方法で、すなわち、MAD7又はMAD7-ヌクレアーゼとして知られている、新しいV型CRISPR/ヌクレアーゼを植物細胞において初めて使用することによって、植物細胞のDNAを効果的に修飾するための新規な方法を発見した。驚いたことに、植物細胞においては、crRNA-誘導型MAD7-ヌクレアーゼは、V型CRISPR/ヌクレアーゼ対応物、すなわち、アシドミノコックス属種(Acidominococcus sp.)Cpf1(AsCpf1)と比較して、合計4つの異なる植物遺伝子内の7つの独立した植物標的部位のうち6つで、より効果的であり、また残りの標的部位で同様に有効であるようであった。今まで、Cpf1は、植物において最も、又は極めて最も効果的なCRISPRヌクレアーゼの1つと見なされてきた。それ故、本発明者らは、植物細胞のDNA修飾のためのより効果的な新しいV型CRISPR/ヌクレアーゼを発見した。
【0043】
したがって、DNAをcrRNA-誘導型MAD7-ヌクレアーゼと接触させることを含む、植物細胞のDNAを標的化修飾するための方法が提供される。DNAは、細胞に対して内因性又は外因性の任意のタイプのDNAであってよく、例えば、ゲノムDNA、染色体DNA、人工染色体、プラスミドDNA、又はエピソームDNAであってよい。DNAは、核又はオルガネラDNAであり得る。好ましくは、DNAは染色体DNAであり、好ましくは細胞にとって内因性である。本発明の方法は、好ましくは目的の遺伝子内にあり、好ましくは植物の内因性染色体DNAの遺伝子内にあり、標的配列としてもまた本明細書で示されている目的の部位での改変されたDNAをもたらす。言い換えると、本発明の方法は、好ましくは、エピジェネティックな修飾及び/又は遺伝子修飾を意味し得るゲノム修飾をもたらす。用語の「改変」及び「修飾」とは、本明細書では互換的に使用される。エピジェネティックな修飾は、ヌクレオチド配列を変化させずに、遺伝子の機能又は活性を変化させる遺伝的修飾である。一実施形態では、修飾は遺伝子修飾である。遺伝子修飾は、本明細書では、DNAのヌクレオチド配列の改変、例えば、1つ又は複数のヌクレオチドの欠失、挿入、置換又は変換として理解される。
【0044】
好ましくは、本明細書に詳述されるようなDNAを標的化修飾するための方法であって、DNAをcrRNA-誘導型MAD7-ヌクレアーゼと接触させるステップを含む方法は、Cpf1ヌクレアーゼがcrRNA-誘導型MAD7-ヌクレアーゼの代わりに使用されるということを除き、同一の方法又はほぼ同一の方法と比較して少なくとも同様に効率的である。好ましくは、Cpf1ヌクレアーゼは、配列番号6のアミノ酸配列を有する。したがって、好ましくは、植物ゲノムにおいて1つ又は複数のインデル変異を生成する効率は、MAD7とCpf1との間に相当する。MAD7は、植物ゲノムでインデルを生成する場合にCpf1よりも効率的であり得、好ましくは、MAD7ヌクレアーゼは、好ましくはMAD7及びCpf1が植物ゲノムの同じ配列を標的とする場合、Cpf1ヌクレアーゼよりも、少なくとも1.2、1.5、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15又は20倍効率的である。
【0045】
植物ゲノムでインデル変異を生成する効率は、標的領域でインデルを示す読み取りのパーセンテージとして表され得る。
【0046】
本発明の方法は、ヌクレオチド改変をスクリーニング又は試験するために、当技術分野で公知の任意の従来の方法を使用する増殖及び/又は遺伝子型同定のステップをさらに含むことができる。本発明の方法は、したがって、DNAをcrRNA-誘導型MAD7ヌクレアーゼと接触させた後のそのようなステップを含む。好ましい実施形態では、本明細書で定義した標的化修飾を含む細胞、好ましくは、植物細胞は、ディープ配列決定技術、例えばIllumina又は454配列決定などを使用して遺伝子型が同定され得る。好ましくは、本発明の方法を使用する場合、配列読み取りの総数の少なくとも0.5%、0.8%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%又はそれ以上が標的領域にインデルを有する。
【0047】
標的化DNA修飾は、植物ゲノムのコード配列内にあることにより、修飾タンパク質、例えば、1つ若しくは複数のアミノ酸改変を含むタンパク質、又はトランケーションを含むタンパク質が生じ得る。標的化DNA修飾は、植物ゲノムの非コード配列内、例えば、イントロン配列又は非コード(nc)RNAをコードする配列内にあり得る。非コード配列の標的化修飾は、例えば、修飾されたスプライス部位又は非コードRNAの調節機能の改変をもたらし得る。標的化ヌクレオチドの改変はまた、遺伝子発現のダウンレギュレーション又はアップレギュレーションをもたらし、任意選択で遺伝子発現をノックアウトする調節配列内にあってもよい。本発明の方法は、タンパク質修飾及び/又はタンパク質発現のレベルについてスクリーニング又は試験するステップを含み得る。そのようなスクリーニング又は試験は、タンパク質自体に対して直接的に、又は任意の従来の手段を使用して改変された機能性に対して行われ得る。さらに、又は或いは、DNA修飾は、植物細胞又は植物の表現型の改変をもたらし得る。したがって、本方法は、植物細胞又は植物における表現型の改変又は特徴についてスクリーニング又は試験するステップ、好ましくは、本明細書で定義した表現型の特徴についてスクリーニング又は試験するステップを含み得
【0048】
好ましくは、本発明の方法は、目的の遺伝子の遺伝子修飾をもたらす。
【0049】
目的の遺伝子
好ましくは、目的の遺伝子(GOI)は、特徴、好ましくは表現型の特徴を付与又は改変する遺伝子である。植物GOIは、したがって、好ましくは、植物の特徴、好ましくは表現型の植物の特徴を付与又は改変する。用語の「植物の特徴」とは、植物、植物細胞又は植物組織の任意の特徴を意味する。好ましくは、植物の特徴は、植物の発達、植物の成長、収量、バイオマス生産、植物の構造、植物生化学、植物生理学、代謝、生存能力、及びストレス耐性からなる群から選択される。或いは、又はさらに、植物の特徴は、DNA合成、DNA修飾、核内倍加、細胞期、細胞壁生合成、転写調節、シグナル伝達、貯蔵脂質動員、及び光合成からなる群から選択される。
【0050】
本明細書で使用される用語の「植物の特徴を改変する」とは、植物の特徴、例えば時間又は場所における増加、減少又は変化などの任意の変化を包含する。本明細書では、植物GOIは、GOIの発現を導入、増加、減少若しくは除去することによって、及び/又は、例えばコード配列を改変することによりコードタンパク質の機能性を修飾し、それにより修飾されたコードタンパク質の発現をもたらすことによって、植物の特徴を改変することができると理解される。植物の特徴が、GOIの発現の導入、GOIの発現の増加、GOIの発現の減少、GOIの発現の除去、及び/又はコードタンパク質の機能性の修飾により改変されたかどうかは、GOIのタイプ及び/又は植物の特徴のタイプに依存する。
【0051】
一実施形態では、標的化修飾は、植物の特徴を改変する遺伝子修飾である。そのような修飾は、早期停止であり得る。そのような修飾はまた、翻訳されたタンパク質のアミノ酸変化をもたらす単一ヌクレオチド修飾(SNP)であってもよく、これは単一アミノ酸変化をもたらし得る。
本明細書で以下に詳述するのは、本明細書に記載された本発明の方法によって修飾することができる植物の特徴の非限定的な例である:
「成長」とは、バイオマスを拡大及び増加させる植物又は植物部分の能力を意味する。改変された成長とは、中でも、改変された成長速度、周期の時間、サイズ、植物の増殖又は増加を意味する。さらに及び/又は或いは、成長の特徴は、限定するものではないが、細胞周期(入口、進行、出口)、細胞分裂、細胞壁生合成及び/又はDNA合成、DNA修飾及び/又は核内倍加を含む、細胞プロセスを意味し得る。
【0052】
「収量」とは、植物の収穫可能な部分を意味する。「バイオマス」とは、植物の任意の部分を意味する。またこれらの用語は、それぞれ対応する野生型の植物と比較した、種子のバイオマス(種子重量)の増加並びに/又は(入っている)種子の数及び/若しくは種子のサイズ及び/若しくは種子のサイズの増加並びに/又は種子の体積の増加を含む、種子収量の増加を包含する。種子のサイズ及び/又は体積の増加もまた、種子の組成に影響を及ぼし得る。種子収量の増加は、花の数及び/又はサイズの増加による可能性がある。収量の増加はまた、バイオマス全体の収穫可能な部分、例えば種子などの収量に対する比率として表される、収穫指数を増加させ得る。
【0053】
「植物の発達」とは、植物細胞の発達運命、特に前駆細胞が発達する特定の組織又は器官のタイプの決定に関わる植物の任意の細胞プロセスを意味する。本発明による典型的な植物の特徴は、したがって、植物の発達、例えば、形態形成、光形態形成、シュートの発達、根の発達、栄養の発達、生殖の発達、茎の伸長、開花、細胞運命の決定に関与する調節メカニズム、パターン形成、分化、老化、開花期及び/又は開花までの時間などに関連する細胞プロセスに関する特徴である。
【0054】
本明細書で使用される「植物構造」は、任意の1つ若しくは複数の構造的特徴又はそれらの構造的特徴の組合せを含む、植物の外観を意味する。そのような構造的特徴には、中でも、根、茎、葉、シュート、葉柄、毛状突起、花、花弁、柱頭、花柱、雄蕊、花粉、胚珠、種子、胚、胚乳、種皮、アリューロン、繊維、果実、形成層、木部、心材、柔組織、気孔、篩要素、師部又は維管束組織を含む、植物の任意の細胞、組織若しくは器官、又は植物の細胞、組織若しくは器官の群の形状、サイズ、数、位置、色、テクスチャー、配置、及びパターン化が含まれる。
【0055】
用語の「ストレス耐性」とは、生物的又は非生物的であり得る、ストレス条件、例えば環境ストレスにおいて、より良好な生存及び/又はより良好な性能の能力として理解される。塩分、干ばつ、熱、冷却、及び凍結は、すべて、浸透圧ストレスを誘導する状態の例として説明されている。本発明で使用される用語の「環境ストレス」とは、無生物又は非生物学的な環境的ストレス要因によって生じる、細胞、組織、種子、器官又は植物全体の代謝、成長又は生存能力に対する任意の悪影響を意味する。より詳しくは、環境要因、例えば、水ストレス(洪水、水検層、干ばつ、脱水)、嫌気性ストレス(低レベル酸素、CO2など)、好気性ストレス、浸透圧ストレス、塩ストレス、温度ストレス(高温/熱、冷却、凍結、霜)又は栄養素欠乏、汚染物質ストレス(重金属、有毒化学物質)、オゾン、高輝度、病原体(ウイルス、細菌、真菌、昆虫及び線虫を含む)、並びにこれらの組合せを包含することができる。生物的ストレスは、植物に対する生物体の影響の結果としてのストレスである。例としては、病原体(ウイルス、細菌、線虫、昆虫など)によって引き起こされるストレスである。別の例は、植物にとって必ずしも有害ではない生物体によって引き起こされるストレスであり、例えば、共生又は着生植物によって引き起こされるストレスである。したがって、GOIの修飾によって得られる特定の植物の特徴は、初期の強勢、生存率、ストレス耐性を包含し得る。
【0056】
「植物生理学」に関連する特徴は、発達プロセス、例えば、中でも、成長、増殖及び分化、性的発達、有性生殖、種子セット、種子発達、登熟、無性生殖、細胞分裂、休眠、発芽、明順応、光合成、葉拡大、繊維生産、二次成長又は木材生産を含む植物の機能的プロセスの特徴を包含することができ;外部的に加えられた因子、例えば金属、化学物質、ホルモン、成長因子、環境因子及び環境ストレス因子(例えば、中でも、無酸素、低酸素、高温、低温、脱水、光、日長、洪水、塩、重金属など)への植物の反応を、前記の外部的に加えられた因子への植物の適応反応を含めて、包含することができる。本発明の方法で同定されたGOIにより改変される特定の植物生理学的な特徴は、改変された貯蔵脂質動員、光合成、転写調節及びシグナル伝達をさらに包含することができる。
【0057】
「植物生化学」に関連する植物の特徴は、好ましくは、代謝の特徴を意味するように当業者によって理解されるものである。「代謝」は、生化学と互換的に使用され得る。代謝及び/又は生化学は、一次代謝及び二次代謝を含む植物の触媒又は同化又は他の代謝プロセス、並びに、植物によって生成される、任意の要素、小分子、高分子又は化学化合物を含むそれらの生成物、例えば限定するものではないが、デンプン、糖、タンパク質、ペプチド、酵素、ホルモン、成長因子、核酸分子、セルロース、ヘミセルロース、カロース、レクチン、繊維、アントシアニンなどの色素、ビタミン、ミネラル、微量栄養素、又は多量栄養素を包含する。
【0058】
GOIの修飾は、改変された植物の特徴を決定することによって、好ましくは、本明細書で上記に定義した少なくとも1つ又は複数の改変された植物の特徴を決定することによって同定され得る。一実施形態では、好ましく改変された植物の特徴を有する植物細胞が選択され、改変された植物の特徴を有していない植物細胞から単離される。植物細胞は、改変された植物の特徴を有する植物を選択する前に、まず、植物に生成することができる。
【0059】
改変された植物の特徴を有する植物細胞又は植物を配列決定し、目的の遺伝子を同定及び/又はさらに分析することができる。当業者は、植物ゲノム全体を配列決定することができること、又は植物ゲノムの一部を配列決定できることを理解する。一実施形態では、少なくとも改変された配列が決定される。
【0060】
好ましくは、GOIの修飾が改変された植物の特徴をもたらす場合、その修飾は目的の遺伝子を同定する。したがって、本発明の方法は、遺伝子の機能性をスクリーニングするために使用され得る。
【0061】
crRNA-誘導型MAD7-ヌクレアーゼ
MAD7-ヌクレアーゼ又はcrRNA-誘導型MAD7-ヌクレアーゼ複合体のタンパク質は、ユウバクテリウム・レクターレ(Eubacterium rectale)から得ることができるMAD7-ヌクレアーゼ、又はその任意のホモログ若しくはオルソログであり得る。好ましくは、MAD7-ヌクレアーゼは、配列番号1と少なくとも約50%、60%、70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を有する。好ましくは、MAD7-ヌクレアーゼは、配列番号2と少なくとも約50%、60%、70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するヌクレオチド配列によってコードされているタンパク質である。好ましくは、MAD7-ヌクレアーゼは、配列番号74と少なくとも約50%、60%、70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するヌクレオチド配列によってコードされているタンパク質である。
【0062】
crRNAは、MAD7-エンドヌクレアーゼと複合体を形成することが可能であり、標的配列とハイブリダイズすることにより、ヌクレアーゼを標的配列に向けることができる。ガイド核酸と複合体を形成することが可能な対象のヌクレアーゼは、ガイド核酸と適合性のあるヌクレアーゼと呼ぶことができる。同様に、ヌクレアーゼと複合体を形成することが可能なガイド核酸は、ヌクレアーゼと適合性のあるガイド核酸と呼ぶことができる。好ましくは、crRNAはRNAであるが、DNAを含んでいてもよい。MAD7-エンドヌクレアーゼは、したがって、crRNAと複合体を形成し、crRNA-誘導型MAD7-ヌクレアーゼをもたらし得る。
【0063】
crRNAは、非修飾ヌクレオチド又は天然に存在するヌクレオチドを含み得るか、又はそれからなり得る。或いは、crRNAは、修飾ヌクレオチド又は天然に存在しないヌクレオチドを含み得るか、又はそれからなり得、好ましくは、そのような化学修飾されたヌクレオチドは、分解からcrRNAを保護するためのものである。
【0064】
本発明の一実施形態では、crRNAは、リボヌクレオチド及び非リボヌクレオチドを含む。crRNAは、1つ又は複数のリボヌクレオチドと1つ又は複数のデオキシリボヌクレオチドを含むことができる。
【0065】
crRNAは、1つ又は複数の天然に存在しないヌクレオチド又はヌクレオチド類似体、例えば、ホスホロチオエート結合を有するヌクレオチド、リボース環の2’炭素と4’炭素の間にメチレン架橋を含むロックド核酸(LNA)ヌクレオチド、架橋核酸(BNA)、2’-O-メチル類似体、2’-デオキシ類似体、2’-フルオロ類似体又はそれらの組合せを含むことができる。修飾ヌクレオチドは、限定するものではないが、2-アミノプリン、5-ブロモ-ウリジン、プソイドウリジン、イノシン、及び7-メチルグアノシンからなる群から選択される修飾塩基を含み得る。
【0066】
crRNAは、1つ又は複数の末端ヌクレオチドで、2’-O-メチル(M)、2’-O-メチル3’ホスホロチオエート(MS)、2’-O-メチル3’チオPACE(ホスホノアセテート)(MSP)、又はそれらの組合せを組み込むことにより化学的に修飾することができる。そのような化学的に修飾されたcrRNAは、未修飾のcrRNAと比較して、増加した安定性及び/又は増加した活性を含み得る。(Hendelら, 2015, Nat Biotechnol.33(9);985~989)。特定の実施形態では、crRNAは、標的DNAに結合する領域内のリボヌクレオチドと、MAD7-ヌクレアーゼに結合する領域内の1つ又は複数のデオキシリボヌクレオチド及び/又はヌクレオチド類似体を含む。本発明の一実施形態では、デオキシリボヌクレオチド及び/又はヌクレオチド類似体は、操作されたcrRNA構造に組み込まれ得、例えば、限定するものではないが、ガイド配列、足場配列に、及び/又はガイド配列と足場配列との間に組み込まれ得る。或いは、又はさらに、化学的に修飾されたヌクレオチドは、足場配列の5’及び/又は3’又はガイド配列に位置し得る。
【0067】
好ましくは、MAD7-ヌクレアーゼをDNAの標的配列に誘導又は標的化するためのcrRNAは、足場及びガイド配列を含むか、又はそれらからなり、好ましくは、前記足場配列はその5’末端にあるか、又はその近くにあり、ガイド配列はその3’末端にあるか、又はその近くにある。好ましくは、前記足場配列は、配列番号21~24のいずれか1つと、好ましくは配列番号24と少なくとも約50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一である配列を有する。或いは、足場配列は、配列番号73と少なくとも約50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一である配列を有する。
【0068】
ガイド配列は、標的配列とハイブリダイズし、複合体化されたMad-7ヌクレアーゼが標的配列に直接、配列特異的に結合するように、標的配列との十分な相補性を有するよう設計されている。前記標的配列は、好ましくは、本明細書で定義したGOI内にある。標的配列は、プロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)配列に隣接しており、これは、好ましくは、Tリッチモチーフ、好ましくはTTTNであり、ここで、NはT、G、A又はCのいずれか1つであり得る。当業者は、任意の所望の標的配列にハイブリダイズするために、好ましくは、ガイド配列を任意の所望の標的配列に相補的であるように操作することによって、任意の所望の標的配列を標的とするようにcrRNAを操作することが可能である。好ましくは、ガイド配列とその対応する標的配列との間の相補性は、適切なアラインメントアルゴリズムを使用して最適に整列される場合、少なくとも約70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は100%である。ガイド配列は、少なくとも約5、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、35、40、45、50、75、又はそれ以上のヌクレオチドの長さであり得る。いくつかの実施形態では、ガイド配列は、約75、50、45、40、35、30、25、20ヌクレオチド未満の長さである。好ましくは、ガイド配列は、約10~30ヌクレオチドの長さであるか、又は約15~20ヌクレオチドの長さである。好ましくは、ガイド配列は、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24又は25ヌクレオチドの長さであり、好ましくは21ヌクレオチドである。
【0069】
MAD7-ヌクレアーゼは、内因性触媒活性を含み得ることによりDSBを導入することができ、又は少なくとも1つの触媒的に不活性なドメイン、例えば1つの活性ドメインと1つの不活性ドメインを含むように操作することができる。前記MAD7-ヌクレアーゼは、MAD7-ニッカーゼ、例えばMAD7-R1173Aをレンダリングする不活性Nucドメインを有するか、又は触媒的に不活性なMAD7、例えばMAD7-D1213Aをレンダリングする不活性RuvCドメインを有するか、又は類似の若しくは同等の位置に変異を有するMAD7の任意のホモログ若しくはオルソログを有するように修飾され得る。そのような触媒的に不活性なMAD7-ヌクレアーゼは、本明細書で以下に詳述するような(融合された)機能性ドメインを、crRNAにより決定されるDNAの特定の部位に誘導するのに有用であり得る。
【0070】
MAD7-ヌクレアーゼ、又はMAD7-ニッカーゼ又は触媒的に不活性なMAD7-ヌクレアーゼは、機能性ドメインに融合させることができる。任意選択で、そのような機能性ドメインは、エピジェネティック修飾のためのものであり、例えばヒストン修飾ドメインである。エピジェネティック修飾のドメインは、メチルトランスフェラーゼ、デメチラーゼ、デアセチラーゼ、メチラーゼ、デアセチラーゼ、デオキシゲナーゼ、グリコシラーゼ、及びアセチラーゼからなる群から選択され得る(Cano-Rodriguezら, Curr Genet Med Rep (2016) 4:170~179)。メチルトランスフェラーゼは、G9a、Suv39h1、DNMT3、PRDM9及びDot1Lからなる群から選択され得る。デメチラーゼは、LSD1であり得る。デアセチラーゼは、SIRT6又はSIRT3であり得る。メチラーゼは、KYP、TgSET8及びNUEのうちの少なくとも1つであり得る。デアセチラーゼは、HDAC8、RPD3、Sir2a及びSin3aからなる群から選択され得る。デオキシゲナーゼは、TET1、TET2及びTET3のうちの少なくとも1つであってもよく、好ましくはTET1cdであり得る(Gallego-Bartolome Jら, Proc Natl Acad Sci USA.(2018); 115(9):E2125~E2134)。グリコシラーゼは、TDGであり得る。アセチラーゼは、p300であり得る。
【0071】
任意選択で、機能性ドメインは、アポリポタンパク質B mRNA編集複合体(APOBEC)ファミリーデアミナーゼ、活性化誘導型シトシンデアミナーゼ(AID)、ACF1/ASEデアミナーゼ、アデニンデアミナーゼ、及びADATファミリーデアミナーゼからなる群から選択される、デアミナーゼ又はその機能的断片である。或いは、又はさらに、デアミナーゼ又はその機能的断片は、ADAR1若しくはADAR2、又はそれらのバリアントであり得る。
【0072】
シトシンデアミナーゼ酵素のアポリポタンパク質B mRNA編集複合体(APOBEC)ファミリーは、制御された有益な方法で変異誘発を開始するのに有用な11個のタンパク質を包含する。好ましくは、APOBECデアミナーゼは、APOBEC1、APOBEC2、APOBEC3A、APOBEC3B、APOBEC3C、APOBEC3D、APOBEC3F、APOBEC3G、APOBEC3H、APOBEC4及び活性化誘導型(シチジン)デアミナーゼからなる群から選択される。好ましくは、APOBECファミリーのシトシンデアミナーゼは、活性化誘導型シトシン(若しくはシチジン)デアミナーゼ(AID)又はアポリポタンパク質B編集複合体3(APOBEC3)である。これらのタンパク質は、すべて、Zn2+-配位モチーフ(His-X-Glu-X23-26-Pro-Cys-X2_4-Cys)と触媒活性用の結合水分子を必要とする。好ましくは、本発明の方法において、MAD7-ヌクレアーゼに融合されるデアミナーゼドメインは、APOBEC1ファミリーデアミナーゼである。好ましくは、デアミナーゼドメインは、配列番号25又は37、好ましくは配列番号37と少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する配列によってコードされているラットデアミナーゼ(rAPOBEC1)である。さらに、又は或いは、ラットデアミナーゼドメインのアミノ酸配列は、配列番号26と少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する。好ましくは、デアミナーゼドメインは、デアミナーゼ活性を有する。
【0073】
MAD7-ヌクレアーゼに融合され得るデアミナーゼドメインの別の例示的な適切なタイプは、アデニン(又はアデノシン)デアミナーゼ、例えばADATファミリーのアデニンデアミナーゼである。さらに、アデニンデアミナーゼは、好ましくはGaudelliら,2017(Gaudelliら 2017 Nature 551: 464~471)に記載されているように、TadA又はそのバリアントであり得る。好ましくは、デアミナーゼドメインは、配列番号27と少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する配列によってコードされているTadAである。さらに、又は或いは、TadAのアミノ酸配列は、配列番号28と少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する。好ましくは、デアミナーゼドメインは、デアミナーゼ活性を有する。さらに、MAD7-ヌクレアーゼは、例えばADAR1又はADAR2に由来する、アデニンデアミナーゼドメインに融合され得る。本発明のデアミナーゼドメインは、触媒活性を有するデアミナーゼタンパク質全体又はその断片を含み得るか、又はそれらからなり得る。
【0074】
機能性ドメイン、例えばデアミナーゼドメインは、MAD7-ヌクレアーゼ又は触媒的に不活性なMAD7-ヌクレアーゼのN末端又はC末端に融合され得る。好ましくは、機能性ドメインは、MAD7-ヌクレアーゼのN末端に融合される。任意選択で、本発明の方法において使用される機能性ドメイン及びMAD7-ヌクレアーゼは、互いに直接的に融合されるか、又はリンカー(本明細書ではスペーサーとも呼ばれる)を介して融合される。
【0075】
リンカーは、例えば、(GGGGS)n、(GGS)n、及び(G)nの形態の非常に柔軟なリンカーから、(EAAAK)n(配列番号29)、(SPKKKRKVEAS)n(配列番号30)、若しくは(SGSETPGTSESATPES)n(配列番号31)、若しくは(KSGSETPGTSESATPES)n(配列番号32)の形態又はそれらの任意のバリアントのよりリジッドなリンカーまでの範囲にある当技術分野における任意の適切なリンカーであってもよく、ここで、nは、好ましくは1~7であり、すなわち、1、2、3、4、5、6、又は7である。
【0076】
リンカーは、好ましくは、2~30アミノ酸の間、又は3~23アミノ酸の間、又は3~18アミノ酸の間の長さを有する。
【0077】
任意選択で、MAD7-ヌクレアーゼは、UDG阻害(UGI)ドメインにさらに融合される。UGIドメインは、MAD7-ヌクレアーゼのN末端又はC末端に融合され得る。好ましくは、デアミナーゼドメインは、MAD7-ヌクレアーゼのC末端に融合される。融合は、上記のように、直接的であってよく、又はリンカーを介してであってもよい。好ましくは、MAD7-ヌクレアーゼは、MAD7-ヌクレアーゼのN末端でデアミナーゼドメインに融合され、MAD7-ヌクレアーゼは、MAD7-ヌクレアーゼのC末端でUGIドメインに融合される。
【0078】
ウラシルDNAグリコシラーゼ(UDG)は、DNAに意図せず存在するウラシルを認識し、ウラシルとデオキシリボース糖との間のN-グリコシド結合を切断し、ウラシルを放出し、塩基性部位(AP部位)を残すことによってウラシル除去修復経路を開始する。次いで、AP部位はプロセシングされ、引き続きAP-エンドヌクレアーゼ、dRPase、DNAポリメラーゼ、及びDNAリガーゼの酵素の作用によって標準塩基に復元される。UGIドメインをMAD7-ヌクレアーゼ融合タンパク質を含有するシトシンデアミナーゼに融合することによって、塩基編集の効率が増加する。好ましくは、UGIドメインは、枯草菌(B. subtilis)バクテリオファージPBS1又はPBS2(UniProtKB-P14739)由来のUGIであるか、又はそのバリアントである。好ましくは、UGIドメインのヌクレオチド配列は、配列番号33又は35と、好ましくは配列番号35と少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有し得る。好ましくは、UGIドメインのアミノ酸配列は、配列番号34又は36と、好ましくは配列番号36と少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有し得る。好ましくは、UGIドメインは、UDGを阻害する。
【0079】
一実施形態では、UDG阻害剤は、本明細書で定義したMAD7-ヌクレアーゼタンパク質に融合されないが、好ましくはcrRNA誘導型MAD7-ヌクレアーゼとともに、さらなる機能性タンパク質として編集されるDNAに接触される。この実施形態では、細胞、好ましくは、植物細胞は、UDG阻害剤又はUDG阻害剤をコードする構築物を使用してトランスフェクトされ得る。後者の場合において、前記構築物は、本明細書で定義したMAD7-ヌクレアーゼ(融合)タンパク質をコードする配列をさらに含み得るか、或いはUDG阻害剤及びMAD7-ヌクレアーゼ(融合)タンパク質は別個の構築物にコードされ得る。
【0080】
本発明はまた、本発明の方法において、本明細書で定義した前記MAD7-ヌクレアーゼ又はそれをコードする核酸を誘導するための、すなわち、植物細胞DNAの修飾において使用するための、及び/又は植物細胞を安定して発現させるための、MAD7-ヌクレアーゼ又はそれをコードする核酸、及び/若しくはcrRNAの使用に関する。
【0081】
オリゴヌクレオチド媒介性標的化ヌクレオチド交換(ODTNE)
一実施形態では、本明細書で定義したcrRNA-誘導型MAD7-ヌクレアーゼは、一本鎖切断又は二本鎖切断を導入することが可能である。この実施形態では、本発明の方法は、標的配列に少なくとも部分的に相補的である配列を有する一本鎖オリゴヌクレオチドを植物細胞に導入するステップをさらに含むことができる。このような一本鎖オリゴヌクレオチドはまた、テンプレートオリゴヌクレオチドとして注釈を付けることもできる。本発明の文脈では、「一本鎖」とは、その完全に相補的な鎖が存在しない、5’末端及び3’末端を有する、ヌクレオチドの直鎖ストレッチを意味する。
【0082】
好ましくは、一本鎖オリゴヌクレオチドは、標的配列に関して少なくとも1つのミスマッチを除き、標的配列を含む。言い換えると、一本鎖オリゴヌクレオチドは、本発明の方法で修飾されるDNAの標的配列に導入しようとする改変に関する情報を含む。1つ又は複数のミスマッチを有する標的配列に加えて、一本鎖オリゴヌクレオチドは、ある特定の実施形態では、1つ又は複数のミスマッチを有する標的配列に隣接するヌクレオチドの追加のストレッチを含むこともできる。しかし、好ましくは、オリゴヌクレオチドは、DNA二重鎖の第1の鎖に含まれる標的配列に関して1つ又は複数のミスマッチを有する標的配列から実質的になる。好ましくは、一本鎖オリゴヌクレオチドは、好ましくは標的配列に存在するPAM配列に関して少なくとも1つのミスマッチを含む。好ましくは、一本鎖オリゴヌクレオチドは、好ましくは標的配列に存在するPAM配列に関して少なくとも1つのミスマッチを含み、さらに、前記PAM配列の外側に少なくとも1つのミスマッチを含む。好ましくは、前記PAM配列の外側の前記少なくとも1つのミスマッチは、コドン改変をもたらし、好ましくは、コードされたタンパク質のアミノ酸変化又は早期停止をもたらす、ミスマッチである。
【0083】
ODTNEの使用並びにこの技術において機能するオリゴヌクレオチドの構造及び設計は、特に、国際公開第98/54330号、国際公開第99/25853号、国際公開第01/24615号、国際公開第01/25460号、国際公開第2007/084294号、国際公開第2007/073149号、国際公開第2007/073166号、国際公開第2007/073170号、国際公開第2009/002150号、国際公開第2012/074385号、国際公開第2012/074386号、国際公開第2018/115389号及び国際公開第2015/139008号に十分に説明されている。当業者は、したがって、本発明において使用するための第1のオリゴヌクレオチド及び第2のオリゴヌクレオチドを設計する方法を容易に理解する。
【0084】
本発明で使用される変異原性オリゴヌクレオチドは、好ましくは、当技術分野で使用される他の変異原性オリゴヌクレオチドと一致する長さを有し、すなわち典型的には、10~60ヌクレオチド、好ましくは20~55ヌクレオチド、より好ましくは25~50ヌクレオチドを有する。一本鎖オリゴヌクレオチドは、例えばオリゴヌクレオチドをヌクレアーゼに対して少なくとも部分的に耐性にするように、化学修飾を含むことができる。
【0085】
一実施形態では、オリゴヌクレオチドは、標的配列を含むDNAの少なくとも約18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48の、又は少なくとも約50の連続するヌクレオチドとそれぞれ100%の配列同一性を有する、好ましくは、標的配列を含むDNAの少なくとも約18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48の、又は少なくとも約50の連続するヌクレオチドとそれぞれ100%の配列同一性を有する、少なくとも約18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48の、又は少なくとも約50の連続するヌクレオチドを含む。
【0086】
一本鎖オリゴヌクレオチドは、RNAヌクレオチドとDNAヌクレオチドの両方を含んでいてもよく、好ましくは、一本鎖オリゴヌクレオチドは、RNAヌクレオチドを含まない。好ましくは、一本鎖オリゴヌクレオチドは、DNAヌクレオチドからなる。いくつかの実施形態では、本明細書で詳述されるように、一本鎖オリゴヌクレオチドのヌクレオチドの1つ又は複数は化学修飾を含む。好ましくは、一本鎖オリゴヌクレオチドは、化学的に保護されたオリゴヌクレオチドであり、好ましくは、少なくとも1、2、3又は4個の化学的に保護されたヌクレオチドを含む。そのような化学的に保護されたオリゴヌクレオチドは、ヌクレアーゼにより耐性がある可能性があり、さらにより高い結合親和性を提供することができる。
【0087】
化学的に保護されたオリゴヌクレオチドを提供する修飾のタイプは特に限定されない。適切な修飾の例には、オリゴヌクレオチドの3’末端にリバース塩基導入(idC)して修復オリゴヌクレオチドに3’ブロック末端を生成すること;修復オリゴヌクレオチドの5’及び/又は3’で、1つ又は複数の2’O-メチルヌクレオチド又はハイブリダイゼーションエネルギーを増加させる塩基(国際公開第2007/073149号を参照されたい)を導入すること;アクリジン、ソラレン、臭化エチジウムなどの色素を結合させて(5’又は3’)挿入すること;5’末端キャップ、例えばT/Aクランプ、コレステロール部分、SIMA(HEX)、及びriboCなどを導入すること;ホスホチオエート、メチルホスホネート、MOE(メトキシエチル)、ジPS及びペプチド核酸(PNA)などの骨格修飾;又は、2’Oメチル及びロックド核酸(LNA)などのリボース修飾が含まれる。好ましい化学修飾は、一本鎖オリゴヌクレオチドを分解から保護するのを助けるホスホロチオエート(PS)(PSは、通常一本鎖オリゴヌクレオチドの末端に配置される)、又はヌクレアーゼに対する保護とより高い結合親和性の両方を付与するロックド核酸(LNA)(LNAは、一本鎖オリゴヌクレオチドの末端又は内部のいずれかに配置させることができる)のいずれかである。
【0088】
好ましくは、少なくとも1つのミスマッチは、化学的に保護されたヌクレオチドではない。別の選好によれば、化学的に保護されたヌクレオチドは、少なくとも1つのミスマッチからの少なくとも1つのヌクレオチドである。言い換えると、好ましくは、一本鎖オリゴヌクレオチドのミスマッチは、化学的に保護されたヌクレオチドではなく、ミスマッチ(のいずれかの側)に隣接するヌクレオチドはまた、化学的に保護された(又は修飾された)ヌクレオチドではない。
【0089】
相同組換え
一実施形態では、本明細書で定義したcrRNA-誘導型MAD7-ヌクレアーゼは、一本鎖切断又は二本鎖切断を導入することができるが、例えば、その理由は、ヌクレアーゼが好ましくは内因性のヌクレアーゼ活性を含むためである。この実施形態では、本発明の方法は、本発明の方法によって修飾され、標的配列を含むDNAの配列に少なくとも部分的に相補的である配列を有する二本鎖オリゴヌクレオチド、二本鎖DNA、又は二本鎖DNA断片(ドナー断片)を植物細胞に導入するステップをさらに含むことができる。そのような二本鎖オリゴヌクレオチド又はDNAは、「ドナー構築物」又は「ドナーヌクレオチド」として本明細書で注釈が付けられ、これらは本明細書では互換的に使用される。
【0090】
二本鎖オリゴヌクレオチドを使用して、好ましくは相同組換えによって、本明細書で定義したDNAの配列を修飾することができる。したがって、二本鎖オリゴヌクレオチドは、好ましくは、修飾されるDNAの配列と100%の配列同一性又は100%の配列相補性を有する配列をその3’末端及びその5’末端に含む。好ましくは、二本鎖オリゴヌクレオチドと同一であるDNAの配列は、crRNA-誘導型MAD7-ヌクレアーゼによって生成された切断部位に直接隣接して位置している。
【0091】
姉妹染色分体、ドナー断片又は二本鎖オリゴヌクレオチドのいずれかであり得る相同配列の存在下で、DSBは、相同組換え(HR)によって修復することができる。これは、修復に使用されている姉妹染色分体ではなく、情報が、細胞に導入される二本鎖オリゴヌクレオチド又はドナー断片からコピーされる、遺伝子ターゲティングのプロセスの基礎である。二本鎖オリゴヌクレオチド又はドナー断片は、元の染色体遺伝子座と比較すると改変又は外因性配列を含有しており、したがって、HRのプロセスはこれらの改変又は外因性配列をゲノムに組み込む。好ましくは、HRによって導入しようとする外因性配列は、DNAの配列と100%の配列同一性又は100%の配列相補性を有するその3’末端及びその5’末端の配列の間の二本鎖オリゴヌクレオチド又はドナー断片内に位置する。
【0092】
二本鎖オリゴヌクレオチド又は二本鎖DNA、又はDNA断片は、直鎖状化又は環状化することができる。好ましくは、二本鎖オリゴヌクレオチドは、直鎖状化分子である。第1及び/又は第2の二本鎖オリゴヌクレオチドは、例えば、オリゴヌクレオチドをヌクレアーゼに対して少なくとも部分的に耐性にするように化学修飾を含むことができる。好ましくは、二本鎖オリゴヌクレオチドは、RNA、DNAを含むか、又はRNA-DNAハイブリッドである。好ましくは、二本鎖オリゴヌクレオチドは、DNAを含む。
【0093】
crRNA-誘導型MAD7-ヌクレアーゼの導入
本発明の方法は、植物細胞のDNAをcrRNA-誘導型MAD7-ヌクレアーゼと接触させるステップを含む。これは、MAD7-ヌクレアーゼとMAD7-ヌクレアーゼをDNAに誘導するためのcrRNAとを植物細胞に導入することによって達成され得る。したがって、本発明の方法はまた、MAD7-ヌクレアーゼとMAD7-ヌクレアーゼをDNAに誘導するためのcrRNAとを植物細胞に導入するステップを含む、植物細胞のDNAを標的化修飾するための方法として定義することができる。MAD7-ヌクレアーゼ及びcrRNAは、MAD7-ヌクレアーゼ及び/若しくはcrRNA及び/若しくはcrRNA前駆体を細胞にコードするmRNAとして、又はMAD7-ヌクレアーゼタンパク質及び/若しくはcrRNAをコードする1つ又は複数の核酸として、MAD7-ヌクレアーゼタンパク質及び/若しくはcrRNA(好ましくは、事前に構築されたリボヌクレオ-タンパク質複合体として)の形態で、植物細胞に直接送達され得る。後者は、MAD7-ヌクレアーゼ及び/又はcrRNAをコードする遺伝子を含む1つ又は複数のベクターのトランスフェクションによって実施されてもよく、ベクターは前記遺伝子及び/又はcrRNAの一過性発現用である。植物細胞における導入又はトランスフェクションは、当技術分野で公知の任意の従来の方法により実施され得る。任意選択で、MAD7及び/又はcrRNA(複数可)をコードする配列は、植物細胞のゲノムに安定して導入される。MAD7-ヌクレアーゼ及びcrRNAがリボヌクレオ-タンパク質複合体として細胞内に送達される場合、本発明の方法は、前記複合体を植物細胞に導入するステップの前に、前記複合体を形成するステップをさらに含む。
【0094】
任意選択で、本方法は、本明細書で定義したODTNEのための一本鎖オリゴヌクレオチドを導入するステップ、又は本明細書で定義したHRのための二本鎖オリゴヌクレオチド若しくはドナー断片を導入するステップをさらに含む。任意選択で、MAD7-ヌクレアーゼタンパク質又はそのタンパク質をコードする構築物、crRNA又はそのcrRNAをコードする構築物、及びODTNEのための一本鎖オリゴヌクレオチド又はHRのための二本鎖オリゴヌクレオチド若しくはドナー断片は、単一ステップで、すなわち実質的に同時に、植物細胞に導入される。言い換えれば、好ましくは、MAD7-ヌクレアーゼタンパク質又はそのタンパク質をコードする構築物、crRNA又はそのcrRNAをコードする構築物、及びODTNEのための一本鎖オリゴヌクレオチド又はHRのための二本鎖オリゴヌクレオチド又はドナー断片は、単一のトランスフェクションステップで植物細胞に導入される。任意選択で、これらの成分は、2つ以上のトランスフェクションステップでトランスフェクトされる。
【0095】
MAD7ヌクレアーゼタンパク質は、1つ又は複数の核局在化シグナル配列(NLS)、変異、欠失、改変、又はトランケーションを含むことができる。好ましくは、NLS結合MAD7-ヌクレアーゼタンパク質は、配列番号3と少なくとも約50%、60%、70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を有する。好ましくは、NLS結合MAD7-ヌクレアーゼは、配列番号4と少なくとも約50%、60%、70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するヌクレオチド配列によってコードされるタンパク質である。さらに、MAD7-ヌクレアーゼをコードする遺伝子は、植物における、例えば、発現のためにコドン最適化されていてもよく、転写調節配列を含み、また適用可能な場合、構成的、誘導的、組織特異的又は種特異的プロモーターのいずれかによって駆動することができる。好ましくは、植物細胞における発現に適している構成的、誘導的、組織特異的又は種特異的プロモーターによる。好ましくは、コドン最適化されたNLS結合MAD7-ヌクレアーゼコード配列は、配列番号4と少なくとも約50%、60%、70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有する。
【0096】
例示的な転写終止及びポリアデニル化シグナルは、NosT、RBCT、HSP18.2T、又は他の遺伝子特異的若しくは種特異的ターミネーターのいずれかである。MAD7ヌクレアーゼ遺伝子カセット又はmRNAは、ネイティブで、又は遺伝子特異的プロモーター及び/若しくは合成プロモーターとの組合せでイントロンを含み得る。
【0097】
好ましい実施形態では、細胞は、少なくとも1つのMAD7-ヌクレアーゼで形質転換され、すなわち、MAD7-ヌクレアーゼタンパク質は、細胞に直接送達される。さらなる実施形態では、細胞は、少なくとも1つのcrRNAで形質転換される。任意選択で、細胞は、1つのMAD7ヌクレアーゼ及び2つ以上のcrRNAで形質転換され、それぞれのcrRNAは、異なるガイド配列を含み、すなわち、植物ゲノム内の異なる配列を標的とする。好ましくは、本発明の方法は、MAD7-ヌクレアーゼ及びcrRNAを細胞に導入する前に、MAD7-ヌクレアーゼタンパク質を少なくとも1つのcrRNAと複合体化するステップを含む。そのような実施形態では、crRNA誘導型MAD7-ヌクレアーゼは、複合体として植物細胞に導入される。任意選択で、前記導入ステップはまた、本明細書で定義したODTNEのための一本鎖オリゴヌクレオチド、又は本明細書で定義したHRのための二本鎖オリゴヌクレオチド若しくはドナー断片の導入を含む。
【0098】
別の好ましい実施形態では、細胞は、少なくとも1つのMAD7-ヌクレアーゼをコードする核酸構築物でトランスフェクトされる。細胞は、少なくとも1つのcrRNAをコードする追加の核酸構築物でさらにトランスフェクトされていてもよく、任意選択で、前記核酸構築物は、2つ以上のcrRNAをコードしており、それぞれのcrRNAは、異なるガイド配列を含み、すなわち、植物ゲノム内の異なる配列を標的とする。好ましくは、この実施形態内では、細胞は、本明細書で定義した少なくとも1つのMAD7-ヌクレアーゼ及び1つ又は複数のcrRNAをコードする単一の構築物でトランスフェクトされる。好ましくは、MAD7-ヌクレアーゼタンパク質をコードするヌクレオチド配列及びcrRNAをコードするヌクレオチド配列は、異なるプロモーターの制御下にある。例えば、好ましくは、MAD7-ヌクレアーゼタンパク質は、好ましくは植物における発現に適している、構成的プロモーター、例えば35Sプロモーター(例えばカリフラワーモザイクウイルスから促進される35S(CaMV; Odellら Nature 313:810~812; 1985)の制御下にあってもよい。他の適切な構成的プロモーターとしては、限定するものではないが、キャッサバ葉脈モザイクウイルス(CsVMV)プロモーター、及びサトウキビ桿状型バドナウイルス(sugarcane bacilliform badnavirus)(ScBV)プロモーターが挙げられる(例えば、Samacら Transgenic Res. 2004 Aug;13(4):349~61を参照されたい)。他の構成的プロモーターとしては、例えば、Rsyn7プロモーターのコアプロモーター、及び国際公開第99/43838号及び米国特許第6072050号に開示されている他の構成的プロモーター;ユビキチン(Christensenら, Plant Mol. Biol. 12:619~632, 1989及びChristensenら, Plant Mol. Biol. 18:675~689, 1992);pEMU (Lastら, Theor. Appl. Genet. 81:581~588, 1991);AA6プロモーター(国際公開第2007/069894号)などが挙げられる。核酸構築物はまた、転写終止領域を含むことができる。転写終止領域が使用される場合、任意の終止領域が核酸構築物の調製に使用され得る。好ましい実施形態では、核酸構築物は一過性発現のためのものである。言い換えると、植物材料における発現は、核酸構築物の非永続的な存在の結果として一時的である。構築物が宿主ゲノムに組み込まれない場合、発現は、例えば、一過性であり得る。例えば、MAD7-ヌクレアーゼタンパク質及びcrRNAは、植物細胞に一過的に提供され、続いて、成分のいずれかの又は両方の量が減少し得る。続いて、植物細胞、植物細胞の後代、及び植物細胞を含むか、又は二本鎖DNAが改変された植物プロトプラストに由来する植物は、本発明の方法において使用される成分のいずれかの若しくは両方の減少された量を含むか、又はもはや1つ若しくは複数の成分を含有しない。好ましくは、前記植物細胞、植物細胞の後代、及び植物細胞を含むか、又は二本鎖DNAが改変された植物プロトプラストに由来する植物は、依然として、DNA修飾を含む。
【0099】
MAD7-ヌクレアーゼをコードする核酸構築物は、形質転換された植物における増加された発現のために最適化されていてもよく、すなわち、植物細胞における発現のためにコドン最適化され得る。例えば、MAD7-ヌクレアーゼをコードするヌクレオチド配列は、トマトにおける発現のためにコドン最適化されていてもよく、前記トマトは、好ましくはソラヌム・リコペルシクム(Solanum lycopersicum)である。すなわち、MAD7-ヌクレアーゼタンパク質をコードする核酸構築物は、発現の改善のために植物に好ましいコドンを使用して合成することができる。宿主に好ましいコドンの使用についての考察は、例えば、Campbell及びGowri(Plant Physiol. 92: 1~11, 1990)を参照されたい。植物に好ましい遺伝子を合成するための方法は、当技術分野において利用可能である(例えば、Murrayら, Nucleic Acids Res. (1989) 17:477~498、又はLanzaら (2014) BMC Systems Biology 8:33~43を参照されたい)。
【0100】
本発明はまた、本明細書で定義したMAD7-エンドヌクレアーゼをコードする核酸及び/又は構築物であって、前記コード配列が、好ましくは、植物細胞での発現、例えば限定するものではないがソラヌム・リコペルシクムにおける発現のためにコドン最適化されていることを特徴とする、核酸及び/又は構築物に関する。好ましくは、そのコード配列は、配列番号2と少なくとも約50%、60%、70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有し、及び/又はそのコード配列は、配列番号74と少なくとも約50%、60%、70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有する。
【0101】
本発明はまた、ガイド配列が植物ゲノムの配列、好ましくは本明細書で定義したGOI内の配列を標的とするためのものであることを特徴とする、本明細書で定義した1つ又は複数のcrRNAをコードする核酸及び/又は構築物に関する。crRNAは、本明細書で定義した足場配列を含み得る。
【0102】
そのような核酸は、一本鎖、二本鎖、又は部分的二本鎖;1つ又は複数の遊離末端を含む核酸分子、遊離末端を含まない(例えば、環状)核酸分子;DNA、RNA、又はその両方を含む核酸分子;及び当技術分野で公知の他の様々なポリヌクレオチドを含み得る。本発明による発現ベクターは、細胞、好ましくは植物細胞における遺伝子発現を導入するのに適する。好ましい発現ベクターは、裸のDNA、DNA複合体又はウイルスベクターであり、DNA分子はプラスミドであり得る。プラスミドとは、追加のDNA断片を、例えば標準的な分子クローニング技術などによって挿入することができる環状二本鎖DNAループを意味する。DNA複合体は、DNAを細胞に送達するのに適した任意の担体に結合されたDNA分子であり得る。好ましい担体は、リポプレックス、リポソーム、ポリマーソーム、ポリプレックス、デンドリマー、無機ナノ粒子、ビロソーム及び細胞透過性ペプチドからなる群から選択される。好ましい実施形態では、発現ベクターは、ウイルスベクター、好ましくはタバコ茎壊疽ウイルス(TRV)、豆黄萎病ウイルス(BeYDV)、キャベツ巻葉ウイルス(CaLCuV)、トブラウイルス、及びコムギ萎縮ウイルス(WDV)である。好ましくは、ウイルスベクターは、本明細書の上記で定義したタバコ茎壊疽ウイルスである。
【0103】
本発明はさらに、本明細書で定義した1つ又は複数の、好ましくは2つ以上のcrRNAを含む組成物に関する。好ましくは、1つ又は複数のcrRNAは、ガイド配列が植物ゲノムの配列、好ましくは本明細書で定義したGOI内の配列を標的とするためのものであることを特徴とする。1つ又は複数のcrRNAは、本明細書で定義した足場配列を含んでいてもよい。
【0104】
核酸(MAD7-ヌクレアーゼをコードする核酸及び/若しくはcrRNA(をコードする)核酸)、又はタンパク質又はリボヌクレオ-タンパク質複合体を細胞に送達するための当技術分野で公知の多くの適切な手法がある。送達システムは、例えば、ウイルスベースの送達システム又は非ウイルス性の送達システムを構成し得る。
【0105】
非ウイルス性の送達システムの非限定的な例としては、化学ベースのトランスフェクション(例えば、リン酸カルシウム、デンドリマー、シクロデキストリン、ポリマー、リポソーム、又はナノ粒子の使用)、非化学ベースの方法(例えば、エレクトロポレーション、細胞圧搾、ソノポレーション、光学トランスフェクション、プロトプラスト融合、インペールフェクション(impalefection)、熱ショック及び流体力学的送達)、粒子ベースの方法(例えば、遺伝子銃又は磁石介在トランスフェクション)並びに細菌ベースの送達システム(例えば、アグロバクテリウム(agrobacterium)媒介送達)が挙げられる。ウイルス送達システムの非限定的な例としては、レンチウイルス及びアデノウイルスが挙げられる。
【0106】
好ましい実施形態では、核酸及び/又はタンパク質は、水性媒体を使用して細胞に導入され、その水性媒体はPEGを含む。任意の適切な方法を使用することができ、好ましくは、媒体は5~8の間、好ましくは6~7.5の間のpH値を有する。MAD7ヌクレアーゼ及び任意選択でのcrRNAの水性媒体中の存在に次いで、媒体はポリエチレングリコールを含む。ポリエチレングリコール(PEG)は、工業的製造から医薬まで多くの用途を有するポリエーテル化合物である。PEGはまた、ポリエチレンオキシド(PEO)又はポリオキシエチレン(POE)としても知られている。PEGの構造は、一般に、H-(O-CH2-CH2)n-OHとして表される。好ましくは、使用されるPEGは、20,000g/mol未満の分子量を有するオリゴマー及び/若しくはポリマー、又はそれらの混合物である。
【0107】
例えば植物細胞の集団を含む水性媒体は、好ましくは100~400mg/mlのPEGを含む。そのため、PEGの最終濃度は、好ましくは100~400mg/mlの間であり、例えば150~300mg/mlの間、例えば180~250mg/mlの間である。好ましいPEGは、PEG 4000 Sigma-Aldrich no.81240である(すなわち、平均Mn 4000を有する(Mn、数平均分子量は、試料中のすべてのポリマー分子の総重量を試料中のポリマー分子の総数で除算したものである))。好ましくは、PEGは、約1000~10000、例えば2000~6000の間のMnとして使用される。
【0108】
さらに好ましい実施形態では、PEGを含む水性媒体は、約0.001%、0.01%、0.05%、0.1%、1%、2%、5%、10%又は20%(v/v)を超えるグリセロールを含まない。好ましくは、媒体は、約0.001%、0.01%、0.05%、0.1%、1%、2%、5%、10%又は20%(v/v)未満のグリセロールを含む。特にMAD7ヌクレアーゼタンパク質の導入においては、水性媒体は、約0.1%未満(例えば、0.09%、0.08%、0.07%、0.06%、0.05%、0.04%、0.03%、0.02%、0.01%、0.009%、0.008%、0.007%、0.006%、0.005%、0.004%、0.003%、0.002%、0.001%、0.0009%、0.0008%、0.0007%、0.0006%、0.0005%、0.0004%、0.0003%、0.0002%又は0.0001%(v/v)未満のグリセロール)を含む。任意選択で、植物細胞の集団を含む水性媒体は、グリセロールを完全に含まない。
【0109】
好ましくは、例えば植物細胞の細胞周期は、二重鎖DNAをcrRNA-誘導型MAD7-ヌクレアーゼに曝露した場合に同調される。同調は、好ましくは、本明細書で詳述したように、crRNA-誘導型MAD7-ヌクレアーゼ又はそれをコードする核酸(複数可)が細胞に導入された場合に起こる。同調は、好ましくは、(植物)細胞を同調剤と接触させることにより実施する。
【0110】
そのような(植物)細胞の細胞周期を同調する方法は、欧州特許第2516652号に詳細に記載されており、これは参照により本明細書に組み込まれる。より詳しくは、(植物)細胞、例えば植物プロトプラストを同調することにより、二重鎖DNAの改変の導入の有効性をさらに高めるために本発明の特定の実施形態では有利となり得る。したがって、特定の実施形態では、本方法は、細胞、好ましくは植物細胞の細胞周期を同調するステップを含む。
【0111】
同調は、好ましくは、crRNA-誘導型MAD7-ヌクレアーゼ又はcrRNA-誘導型MAD7-ヌクレアーゼをコードする核酸(複数可)が本明細書に詳述されているように細胞に導入される場合に起こり、その結果、ほとんどの(植物)細胞が、二重鎖DNAが本明細書で定義した部位特異的ヌクレアーゼに曝露された際に細胞周期の同じ段階になる。これは有利であり、二重鎖DNAの改変の導入率を上昇させ得る。
【0112】
(植物)細胞の同調は、任意の適切な手段によって達成することができる。例えば、細胞周期の同調は、栄養枯渇、例えば、リン酸塩枯渇、硝酸塩枯渇、イオン枯渇、血清枯渇、スクロース枯渇、オーキシン枯渇によって達成され得る。
【0113】
同調は、同調剤を(植物)細胞に添加することによっても達成することができる。好ましくは、同調剤は、アフィディコリン(aphidocolin)、ヒドロキシ尿素、チミジン、コルヒチン、コブトリン(cobtorin)、ジニトロアニリン、ベネフィン、ブトラリン、ジニトラミン、エタルフルラリン、オリザリン、ペンジメタリン、トリフルラリン、アミプロホスメチル、ブタミホスジチオピル、チアゾピルプロピザミド、テブタムDCPA(クロルタールジメチル)、ミモシン、アニソマイシン、アルファアマニチン、ロバスタチン、ジャスモン酸、アブシジン酸、メナジオン、クリプトゲイン(cryptogeine)、過酸化水素、過マンガン酸ナトリウム、インドメタシン、エポキソマイシン、ラクタシスチン(lactacystein)、icrf 193、オロモウシン、ロスコビチン、ボヘミン、スタウロスポリン、K252a、オカダ酸、エンドタール(endothal)、カフェイン、MG 132、サイクリン依存性キナーゼ、及びサイクリン依存性キナーゼ阻害剤、並びにそれらの標的メカニズムからなる群から選択される。量及び濃度、並びにそれらに関連する細胞周期段階は、例えば、「Flow Cytometry with plant cells」, J. Dolezel c.s. Eds. Wiley-VCH Verlag 2007 pp 327 ffに記載されている。好ましくは、同調剤は、アフィディコリン及び/又はヒドロキシ尿素である。
【0114】
好ましくは、本発明の方法では、細胞周期の同調は、細胞周期のS期、M期、G1期及び/又はG2期に(植物)細胞を同調させる。
【0115】
好ましい実施形態では、MAD7-ヌクレアーゼは、2つの触媒的に活性なエンドヌクレアーゼドメインを含む。この実施形態内では、crRNA-誘導型MAD7-ヌクレアーゼは、標的配列に二本鎖切断を導入する。修復メカニズムのその後の活性化は、植物ゲノムの標的配列の改変をもたらす。標的化改変は、少なくとも1つの塩基対の挿入、欠失又は修飾を含み得る。例えば、標的化改変は、少なくとも1つの塩基対の欠失及び少なくとも1つの塩基対の挿入を含み得る。例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10又はそれ以上の塩基対は、本発明の方法で改変され得る。複数の修飾を単一の実験で導入することができ、及び/又は実験を繰り返して植物細胞のゲノムに、任意選択で第1の事象で標的とされた他の遺伝子若しくは同じ遺伝子で、その後の改変を導入することができる。
【0116】
本発明はさらに、好ましくは参照により本明細書に組み込まれる国際出願PCT/EP2018/074150に記載されているような、二重鎖DNAのコード配列(CDS)を標的化改変するための方法であって、二重鎖DNAを少なくとも2つのcrRNA-誘導型MAD7ヌクレアーゼに曝露するステップを含み、第1の部位特異的ヌクレアーゼがDNAを切断してORF内の第1の位置で第1のインデルを生成し、第2の部位特異的ヌクレアーゼがDNAを切断して同一CDS内の第2の位置で第2のインデルを生成し、第1のインデルの前及び第2のインデルの後のCDSは同一リーディングフレームのままであり、改変されたCDSは終止コドンを含まない、方法に関する。
【0117】
植物細胞
本発明の方法は、本明細書で定義したMAD7-ヌクレアーゼ及びMAD7-ヌクレアーゼを誘導するためのcrRNAを植物細胞に導入するステップに先行して、前記植物細胞を提供するステップをさらに含んでいてもよい。当業者は、本発明の方法が特定の植物細胞タイプに限定されないことを理解する。特に、本明細書に開示した本発明の方法は、分裂細胞及び非分裂細胞に適用することができる。細胞は、トランスジェニックであっても非トランスジェニックであってもよい。植物細胞は、例えば、植物が再生され得る植物細胞組織培養物、植物カルス、植物塊、及び植物又は植物の一部、例えば、胚、花粉、胚珠、種子、葉、花、枝、果実、穀粒、穂、穂軸、殻、茎、根、根端、葯、粒などが無傷の植物細胞から得ることができる。
【0118】
好ましい実施形態では、植物細胞は植物プロトプラストである。当業者には、植物プロトプラストを調製及び繁殖する方法及びプロトコルは公知であり、例えば、Plant Tissue Culture (ISBN: 978-0-12-415920-4, Roberta H. Smith)を参照されたい。本発明の方法で使用するための植物プロトプラストは、植物細胞プロトプラストの生成で使用される一般的手順を使用して提供することができる(例えば、細胞壁は、セルロース、ペクチナーゼ及び/又はキシラナーゼを使用して分解され得る)。
【0119】
植物細胞プロトプラスト系は、例えば、トマト、タバコ、及び他の多くのもの(セイヨウアブラナ(Brassica napus)、ニンジン(Daucus carota)、レタス(Lactucca sativa)、トウモロコシ(Zea mays)、ベンサミアナタバコ(Nicotiana benthamiana)、ペチュニア(Petunia hybrida)、ジャガイモ(Solanum tuberosum)、イネ(Oryza sativa))に対して記載されている。本発明は、一般に、限定するものではないが、以下の参考文献:Barsbyら 1986, Plant Cell Reports 5(2): 101~103; Fischerら 1992, Plant Cell Rep. 11(12): 632~636; Huら 1999, Plant Cell, Tissue and Organ Culture 59: 189~196; Niedzら 1985, Plant Science 39: 199~204; Prioli及びSondahl, 1989, Nature Biotechnology 7: 589~594; S. Roest及びGilissen 1989, Acta Bot. Neerl. 38(1): 1~23; Shepard及びTotten, 1975, Plant Physiol.55: 689~694; Shepard及びTotten, 1977, Plant Physiol. 60: 313~316のいずれか1つに記載の系を含む任意のプロトプラスト系に適用することができ、これらは、参照により本明細書に組み込まれる。
【0120】
植物細胞は、好ましくは、作物植物、例えば単子葉植物若しくは双子葉植物、又は作物若しくは穀物植物、例えばキャッサバ、トウモロコシ、モロコシ、大豆、小麦、オート麦若しくは米から得ることができる。作物植物とは、ヒトによって栽培及び育種された植物種である。作物植物は、食用(例えば畑作物)又は観賞用(例えば、刈り取るための花、芝生用草などの生産)に栽培され得る。本明細書で定義した作物植物は、非食料品、例えば、燃料用油、プラスチックポリマー、医薬品、コルクなどが収穫される植物も含む。
【0121】
植物細胞はまた、藻類、樹木、又は生産の植物、果物若しくは野菜(例えば、樹木、例えば柑橘類の樹木、例えばオレンジ、グレープフルーツ若しくはレモンの樹木;桃若しくはネクタリンの樹木;リンゴ若しくはナシの樹木;堅果類の樹木、例えばアーモンド若しくはクルミ若しくはピスタチオの樹木;イヌホオヅキ植物;アブラナ属の植物;レタス属の植物;ホウレンソウ属の植物;トウガラシ属の植物;ナス属の植物、好ましくはソラヌム・リコペルシクム)であり得る。
【0122】
別の好ましい実施形態では、細胞は、アスパラガス、大麦、ブラックベリー、ブルーベリー、ブロッコリー、キャベツ、キャノーラ、ニンジン、キャッサバ、カリフラワー、チコリ、ココア、コーヒー、ワタ、キュウリ、ナス、ブドウ、トウガラシ、レタス、トウモロコシ、メロン、アブラナ、コショウ、ジャガイモ、カボチャ、ラズベリー、コメ、ライムギ、モロコシ、ホウレンソウ、カボチャ、イチゴ、サトウキビ、テンサイ、ヒマワリ、ピーマン、タバコ、トマト、スイカ、小麦、及びズッキーニからなる群から選択される植物から得ることができる。
【0123】
好ましくは、標的化改変を含む得られた植物細胞は、植物又はそれらの子孫に再生される。したがって、本発明の好ましい実施形態である本方法は、標的化改変を含む植物又はその子孫を再生するステップをさらに含む。
【0124】
植物細胞及び植物又は植物産物
本方法は、標的化修飾を含む植物又はその子孫を再生するステップをさらに含み得る。好ましくは、そのような再生は、再生に適した条件を使用して実施される。当業者は、植物プロトプラストから植物を再生する方法及びプロトコルを十分に知っている。再生された植物の後代、子孫、バリアント、及び変異体もまた、これらの部分が本明細書で教示した方法で導入された標的化改変を含むならば、本発明の範囲内に含まれる。
【0125】
標的化修飾を含む植物細胞又は植物に加えて、本発明はまた、MAD7-エンドヌクレアーゼを一過的又は安定的に発現する植物細胞に関する。好ましくは、植物細胞は、本明細書で定義したそのゲノムにMAD7-エンドヌクレアーゼをコードする配列を含むように修飾されたトランスジェニック植物である。本発明の範囲内に含まれるのは、そのようなトランスジェニック植物細胞及びその再生植物、好ましくは誘導性プロモーター及び/又は構成的活性分裂組織プロモーターであり得る分裂組織プロモーターの制御下にある、MAD7-エンドヌクレアーゼをコードする配列を含む任意の後代、子孫、バリアント、及び変異体である。したがって、本発明はまた、本明細書で定義したMAD7-エンドヌクレアーゼをコードする配列をそのゲノムに組み込むステップを含む、そのようなトランスジェニック植物細胞及び/又はそれに由来する植物を生産するための方法に関する。
【0126】
本発明の方法によって得ることができる細胞又は生物体は、続いて、例えば、細胞、生物体(の一部)又はその任意の子孫の培養物が得られるように増殖させることができる。
【0127】
好ましくは、細胞は、作物植物、例えば単子葉植物若しくは双子葉植物、又は作物若しくは穀物植物、例えばキャッサバ、トウモロコシ、モロコシ、大豆、小麦、オート麦若しくは米から得ることができる植物細胞である。植物細胞はまた、藻類、樹木、又は生産の植物、果物若しくは野菜(例えば、樹木、例えば柑橘類の樹木、例えばオレンジ、グレープフルーツ若しくはレモンの樹木、桃若しくはネクタリンの樹木;リンゴ若しくはナシの樹木;堅果類の樹木、例えばアーモンド若しくはクルミ若しくはピスタチオの樹木;イヌホオヅキ植物;アブラナ属の植物;レタス属の植物;ホウレンソウ属の植物;トウガラシ属の植物;ナス属の植物、好ましくはソラヌム・リコペルシクム)であり得る。
【0128】
別の好ましい実施形態では、細胞は、シロイヌナズナ、アスパラガス、大麦、ブラックベリー、ブルーベリー、ブロッコリー、キャベツ、キャノーラ、ニンジン、キャッサバ、カリフラワー、チコリ、ココア、コーヒー、ワタ、キュウリ、ナス、ブドウ、トウガラシ、レタス、トウモロコシ、メロン、アブラナ、コショウ、ジャガイモ、カボチャ、ラズベリー、コメ、ライムギ、モロコシ、ホウレンソウ、カボチャ、イチゴ、サトウキビ、テンサイ、ヒマワリ、ピーマン、タバコ、トマト、スイカ、小麦、及びズッキーニからなる群から選択される植物から得ることができる。
本発明はまた、本発明の方法によって得ることができる植物細胞又は植物の後代に関する。さらに、本発明は、本明細書で定義した植物細胞又は植物から得ることができる植物産物、例えば、果実、葉、植物器官、植物油脂、植物油、植物デンプン、及び粉砕、磨砕されたか、完全なままであるか、他の材料と混合された、乾燥された、凍結された植物タンパク質画分に関する。これらの産物は繁殖しない物であり得る。好ましくは、前記植物産物は、
i)修飾されたDNA、好ましくは、本明細書で定義した修飾されたGOI、又はコードされたそれらの産物、
ii)本明細書で定義したMAD7-ヌクレアーゼ、及び
iii)MAD7-ヌクレアーゼをコードする配列
のうちの少なくとも1つ又は少なくとも一部を含む。
【0129】
好ましくは、これらの産物は、修飾されたDNAの少なくとも一部、MAD7-ヌクレアーゼ又はコード配列を含み、これは、植物産物が本明細書で定義した方法によって得られた植物に由来することを評価することを可能にする。
【0130】
キットオブパーツ
本発明はまた、キットオブパーツ、好ましくは、本明細書に記載した方法において使用するためのキットオブパーツに関する。好ましくは、キットオブパーツは、
本明細書で定義したMAD7-ヌクレアーゼを含む容器;
本明細書で定義したMAD7-ヌクレアーゼを誘導するためのcrRNA、本明細書で定義したODTNEのための一本鎖オリゴヌクレオチド、本明細書で定義したHRのための一本鎖オリゴヌクレオチド、又はそれらの任意の組合せを含む容器(好ましくは、容器は、異なる標的配列を標的とするための異なるガイド配列をそれぞれ含む2つ以上のcrRNAを含む);
本明細書で定義したMAD7-ヌクレアーゼをコードする1つ又は複数の核酸構築物又はベクターを含む容器(任意選択で、前記構築物又はベクターは、本明細書で定義した前記MAD7-ヌクレアーゼを誘導するための1つ又は複数のcrRNAをさらにコードする);及び、
本明細書で定義した前記MAD7-ヌクレアーゼを誘導するための1つ又は複数のcrRNAをコードする1つ又は複数の核酸構築物又はベクターを含む容器
のうちの少なくとも1つを含む。
【0131】
キットオブパーツは、本明細書で定義したトランスフェクションのための1つ又は複数の物質を含む容器をさらに含んでいてもよい。また、本明細書で指定した植物細胞内のDNAを修飾する本発明の方法を実施するためのマニュアルもキット内に含むことができる。
【0132】
試薬は、凍結乾燥された形態で存在していてもよく、又は適切な緩衝液中に存在していてもよい。キットはまた、本発明を実施するのに必要な任意の他の構成要素、例えば、緩衝液、ピペット、マイクロタイタープレート、及び書面の説明書を含むことができる。本発明のキットのためのそのような他の構成要素は、当業者には公知である。
【0133】
本発明をここで一般的に説明したが、例示として提供され、また本発明を限定することを意図するものではない以下の実施例を参照することによって、本発明はより容易に理解されよう。
【実施例
【0134】
実施例1
トマトに標的化変異を生成するためのMAD7の使用
構築物
トマトでの翻訳に向けて最適化された、V型CRISPRヌクレアーゼMAD7及びAsCpf1の配列を、MAD7及びAsCpf1のタンパク質配列についてはそれぞれ配列番号3及び配列番号5により示し、Mad7及びAsCpf1タンパク質をコードするヌクレオチド配列についてはそれぞれ配列番号4及び配列番号6により示している。これらのORFを合成し、植物細胞で発現させるためにベクターで構成的35Sプロモーターの後ろにクローニングした。使用したcrRNAカセットの配列(U6プロモーター+crRNA)を表1に示す。これらもまた合成し、ベクターにクローニングした。すべてのプラスミド構築物を大腸菌(E.coli)に導入し、次いで形質転換したコロニーを使用して50mlの培養物に接種した。一晩増殖させた後、プラスミドDNAを、標準的な方法を使用してこれらの培養物から単離した。
【0135】
【表1】

【0136】
トマトプロトプラスト単離及びトランスフェクション
トマト(Solanum lycopersicon)のMoneyberg種のin vitroシュート培養は、高プラスチック容器に0.8%寒天を含むMS20培地において、2000ルクスの光周期16/8hで、25℃及び60~70%RHにて維持した。若葉(1g)を主脈(mid nerve)に対して垂直方向に静かにスライスし、酵素混合物の浸透を促進した。スライスした葉を酵素混合物(2%セルラーゼOnozuka RS、0.4%マセロザイムOnozuka R10を含むCPW9M)に移し、細胞壁消化を暗所で25℃にて一晩進行させた。プロトプラストを50μmのナイロン篩で濾過し、800rpmで5分間遠心分離することによって回収した。プロトプラストをCPW9M(Frearson、1973)培地に再懸濁し、3mLのCPW18S(Frearsonら 1973. Developmental Biology, 33:130~137)を各チューブの底に長首ガラスパスツールピペットを使用して加えた。生存プロトプラストは、800rpmで10分間の遠心分離により、ショ糖とCPW9M培地の間の界面の細胞画分として回収した。プロトプラストをカウントし、MaMg(Negrutiuら 1987. Plant Molecular Biology, 8:363~373)培地に1mLあたり10個の最終密度で再懸濁した。
【0137】
プロトプラストトランスフェクションについては、10μgのMAD7又はAsCpf1発現プラスミドと20μgのsgRNA発現プラスミドの1つを500μL(500000プロトプラスト)のプロトプラスト懸濁液と混合し、次いで500μLのPEG溶液(400g/lのポリ(エチレングリコール)4000、Sigma-Aldrich #81240;0.1M Ca(NO))を添加し、トランスフェクションを20分間、室温で行った。対照サンプルはまた、プラスミドの一方又は両方をトランスフェクションから省くことにより生成した。次いで、0.275MのCa(NO溶液10mLを添加し、完全に、しかし穏やかに混合した。プロトプラストを5分間800rpmで遠心分離することにより回収し、9Mの培養培地に0.5×10/mlの密度で再懸濁し、直径4cmのペトリ皿に移し、等量の2%アルギン酸塩溶液(20g/l Alginate-Na(Sigma-Aldrich #A0682)、0.14g/lのCaCl.2HO、90g/lのマンニトール)を添加した。次いで、1mlアリコート(125000個のトランスフェクトされたプロトプラスト)をCa-Agarプレート(72.5g/l マンニトール、7.35g/l CaCl.2HO、8g/l 寒天、pH5.8)に広げ、1時間重合させた。次いで、包埋されたプロトプラストを含むアルギン酸塩ディスクを、4mlのK8p(Kaoら 1975. Planta, 126:105~110)培地を含む4cmの組織培養皿に移した。標的配列でのインデル形成の頻度を決定するため、トランスフェクトされたプロトプラストのディスクを48時間後に皿から取り出し、アルギン酸塩を溶解させ、プロトプラストを遠心分離により単離した。カルスを再生させるため、プロトプラストをK8p培地中で21日間、28℃で暗所にてインキュベートする。この期間の後、トランスフェクトされたプロトプラストのディスクを、1mg.l-1のゼアチン、0.2mg.l-1のGA3及び20nMのクロルスルフロンを補充した固形GM培地(Tanら 1987. Plant Cell Reports, 6:172~175)に移す。次いで、生存しているカルスがピンセットで採取するのに十分な大きさになるまで、ディスクを同じGM培地の新しいプレートに3週間ごとに移し、その後、GM培地で遺伝子型判定するために増殖させる。標的部位に変異を含有するカルスが同定されたら、その後、繁殖力のある植物に再生される。カルスは、最初のシュートが成長するまで、除草剤を含まないGM培地で維持する。次いで、シュートが成長したカルスを、2mg.l-1のゼアチン及び0.1mg.l-1のIAA培地を補充したMS培地に置いた。しばらくした後、再生トマト苗木を切り取り、0.5mg.l-1のIBAを補充したMS培地で根ざさせた後、温室に移した。
【0138】
プロトプラスト及びカルスの遺伝子型判定
全ゲノムDNAを、トマトプロトプラスト(トランスフェクションの48時間後)からDNeasy Plant Mini Kit(Qiagen)を使用して単離した。次いで、このgDNAをPCR反応で使用し、いずれかの標的領域を増幅した。次いで、PCR産物をテンプレートとして使用して各サンプルからライブラリーを生成し、次にこれをプールし、MiSeqプラットフォーム(Illumina)で126nt paired runを使用して配列決定した。各サンプルは、固有の5bpタグを使用して同定された。配列決定後、各サンプルから得た読み取りデータを処理して、標的部位に存在する配列変化の数及びタイプを同定した。標的部位に変異を有するカルスを同定するために、トランスフェクトされたプロトプラストを直径およそ3mmのカルスに再生させる。次いで、ダイレクトPCRキット(Phire Plant Direct PCRキット、Thermo Scientific)を遺伝子特異的プライマーと一緒に使用してそれぞれのカルスから標的配列を増幅する。次いで、得られたPCR産物を異なる方法で配列決定又は遺伝子型決定し、標的部位に変異を有するカルスを同定する。これらのカルスを次いで再生のために選択する。
【0139】
結果
本発明者らは、クラスV-CRISPRヌクレアーゼMAD7がゲノム植物細胞のINDEL変異を生成する能力を、トマトプロトプラストで異所的に7つの異なる配列を標的とするMAD7タンパク質及びcrRNAを発現させることにより試験した。最初に、トマトでのコドン利用に最適化されたMAD7 ORFを、C末端で融合した核局在化シグナル(NLS)とともに構築した。次いで、これを、植物細胞で発現させるために、構成的CaMV 35Sプロモーターの後ろにクローニングした。MAD7タンパク質は、標的配列に隣接するPAM配列、この場合にはTTTN、の存在を必要とし、これは、植物細胞並びに他の真核細胞のタイプで有効であることが報告されている別のクラスV-CRISPRヌクレアーゼ AsCpf1のPAMと同一である。この共通のPAM配列により、MAD7とAsCpf1の両方に全く同じ標的配列を含有するcrRNAを設計することができ、その結果、それぞれのヌクレアーゼによって生成される変異誘発効率の直接比較を実施することができる。MAD7又はAsCpf1のいずれかを発現するベクターを、トマト葉肉プロトプラストに、シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)のU6プロモーターによって駆動されるcrRNAを発現する第2のベクターとともに導入した。そのようなシステムにおいて、MAD7又はAsCpf1 mRNAとcrRNAは、24~48時間の短い期間で、高レベルで発現し、その時点で、導入されたプラスミドは細胞ヌクレアーゼによって分解され、CRISPR試薬は細胞から消失する。それらが存在している間は、それらはゲノムの特定の標的部位を見つけて、INDEL変異を生成することができる。導入されたプラスミドはゲノムに組み込まれることは稀であり、そのため、この手法はトランスジェニック系統をもたらさない。次いでプロトプラストを48時間培養した後、標的部位でのINDELの存在について配列決定することにより分析した。
【0140】
全体で、トマトゲノムの4つの異なる遺伝子(PDS、LIN5、eIF4e、及びETR1)のエクソンに位置する、7つの異なる標的部位を調査した。図1に示したように、MAD7のクラスV-CRISPRヌクレアーゼは、様々な効率で7つのすべての標的部位にINDEL変異を導入することができた。驚いたことに、MAD7を使用する場合のINDEL形成の効率は、ほぼすべての場合において、同じ配列がAsCpf1のクラスV-CRISPRヌクレアーゼを使用して標的化された場合よりも高かった。いくつかの刊行物には、植物及び他の真核細胞タイプにおけるAsCpf1の使用が報告されているが、本発明者らのデータは、MAD7が予期せず優れており、したがって植物での変異誘発実験により適していることを示している。表2は、MAD7とAsCpf1の両方により標的部位で導入されるINDEL変異のタイプをまとめている。いずれかのヌクレアーゼにより生成されるINDELのサイズ及び位置は類似しており、ほとんどの場合、コード配列でのフレームシフトの導入に基づいた遺伝子活性(ヌル対立遺伝子)の排除を引き起こす。MAD7 INDEL変異を担持する植物を生成するために、トマト葉肉プロトプラストにMAD7発現ベクター及び適切な標的部位に関するcrRNA発現ベクターをトランスフェクトした後、カルスに成長させる。次いで、これらのカルスは遺伝子型判定され、INDEL変異を含有するものは無傷の植物に再生される。
【0141】
【表2】

図1
【配列表】
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