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特許7396781空調システム、当該空調システムを備えたフォークリフト制御システムおよび制御プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-04
(45)【発行日】2023-12-12
(54)【発明の名称】空調システム、当該空調システムを備えたフォークリフト制御システムおよび制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   B60H 1/00 20060101AFI20231205BHJP
   B66F 9/24 20060101ALI20231205BHJP
【FI】
B60H1/00 101H
B66F9/24 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022000204
(22)【出願日】2022-01-04
(65)【公開番号】P2023099936
(43)【公開日】2023-07-14
【審査請求日】2023-01-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000232807
【氏名又は名称】三菱ロジスネクスト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000475
【氏名又は名称】弁理士法人みのり特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】寺尾 良平
【審査官】奥隅 隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-301448(JP,A)
【文献】特開2021-109760(JP,A)
【文献】特開2020-30539(JP,A)
【文献】特開2022-148538(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/00~3/06
B66F 9/06~9/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フォークリフト用空調装置と、
過去の各荷役作業における、荷役作業場所の気温、前記フォークリフトの識別子および運転者の識別子を入力データとし、前記空調装置の設定温度を出力データとする教師データによってそれらの相関を予め学習させられ、各前記荷役作業に係る前記荷役作業場所の気温、各前記フォークリフトの識別子および各前記運転者の識別子を入力されると、各前記フォークリフト、各前記運転者および各前記荷役作業の組み合わせごとの前記空調装置の適正設定温度を出力する第1ニューラルネットワークと、
対応する前記荷役作業の間、当該出力された適正設定温度において前記空調装置を作動させる空調装置制御部と、を備える
ことを特徴とする空調システム。
【請求項2】
前記第1ニューラルネットワークは、さらに、過去の各荷役作業における、荷役作業場所の気温、湿度および風速、前記フォークリフトの識別子ならびに前記運転者の識別子を入力データとし、前記空調装置の設定温度を出力データとする教師データによってそれらの相関を予め学習させられ、各前記荷役作業に係る前記荷役作業場所の気温、湿度および風速、各前記フォークリフトの識別子ならびに各前記運転者の識別子を入力されると、各前記フォークリフト、各前記運転者および各前記荷役作業の組み合わせごとの前記空調装置の前記適正設定温度を出力する
ことを特徴とする請求項1に記載の空調システム。
【請求項3】
前記荷役作業場所の施設情報に基づいて前記適正設定温度を補正する温度補正部をさらに備え、
前記空調装置制御部は、補正された前記適正設定温度に基づいて前記空調装置を作動させる
ことを特徴とする請求項1に記載の空調システム。
【請求項4】
前記荷役作業場所の施設情報には、湿度情報が含まれる
ことを特徴とする請求項3に記載の空調システム。
【請求項5】
前記荷役作業場所の施設情報には、風速情報が含まれる
ことを特徴とする請求項3または4に記載の空調システム。
【請求項6】
バッテリ式の複数のフォークリフトと、管理装置と、を備えたフォークリフト制御システムであって、
前記管理装置は、
請求項1~5のいずれか1項に記載の前記空調システムと、
複数の荷役予定を記憶する記憶部と、
荷役割当部と、
過去の各荷役作業における、前記フォークリフトおよび前記運転者の識別子、荷役動作ならびに荷の重量を入力データとし荷役消費電力を出力データとする教師データによってそれらの相関を予め学習させられ、各前記フォークリフトおよび各前記運転者の識別子ならびに各前記荷役作業に係る前記荷役動作および前記荷の重量を入力されると各前記フォークリフト、各前記運転者および各前記荷役作業の組み合わせごとの荷役予測消費電力を出力する第2ニューラルネットワークと、
過去の各前記荷役作業における、前記フォークリフトおよび前記運転者の識別子、前記荷役動作ならびに前記荷の重量を入力データとし荷役作業時間を出力データとする教師データによってそれらの相関を予め学習させられ、前記フォークリフトおよび前記運転者の識別子ならびに各前記荷役作業に係る前記荷役動作および前記荷の重量を入力されると各前記フォークリフト、各前記運転者および各前記荷役作業の組み合わせごとの荷役予測作業時間を出力する第3ニューラルネットワークと、
過去の各前記荷役作業における、前記荷役作業場所における気温、前記フォークリフトの識別子および前記設定温度を入力データとし前記空調装置の消費電力を出力データとする教師データによってそれらの相関を予め学習させられ、各前記荷役作業場所における気温、各前記フォークリフト、各前記運転者および各前記荷役作業の組み合わせごとの前記適正設定温度ならびに各前記荷役予測作業時間が入力されると各前記フォークリフト、各前記運転者および各前記荷役作業の組み合わせごとの前記空調装置の予測消費電力を出力する第4ニューラルネットワークと、を有し、
前記荷役予定は、複数の前記荷役作業を含むとともに、前記荷役作業が行われる施設のエリアごとに前記荷役作業を割り当てられており、
前記荷役割当部は、各前記フォークリフト、各前記運転者および各前記荷役作業の組み合わせごとの前記空調装置の前記予測消費電力と、各前記フォークリフト、各前記運転者および各前記荷役作業の組み合わせごとの前記荷役予測消費電力とに基づいて、前記複数の荷役予定の合計の消費電力が最小となる前記荷役予定ごとの前記フォークリフトおよび前記運転者の組み合わせを出力する
ことを特徴とするフォークリフト制御システム。
【請求項7】
前記管理装置は、サーバコンピュータであって、
前記サーバコンピュータを、請求項6に記載の管理装置として機能させる
ことを特徴とする制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォークリフトの空調システム、当該空調システムを備えたフォークリフト制御システムおよび制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載のように、有人フォークリフトを含む荷役システムが知られている。この荷役システムでは、有人フォークリフトと、自律して荷役作業をする無人フォークリフトと、管理サーバとを備えている。管理サーバは、有人フォークリフトと、無人フォークリフトとが混在する荷役システムにおいて、無人フォークリフトの数が少ない空位置で実行される荷役作業を有人フォークリフトに割り当てるよう構成されている。
【0003】
ところで、バッテリ電力によって動作する有人フォークリフト(以下、単に「フォークリフト」という)の場合、バッテリ残量がなくなると、バッテリを充電したり充電されたバッテリと交換する必要がある。そのため、荷役システムは、バッテリを充電、交換するタイミングを少なくするために、このフォークリフトの消費電力も考慮して荷役作業を割り当てることが好ましい。しかしながら、フォークリフトの運転者によってフォークリフトの動作が異なるので、フォークリフトの消費電力を考慮して荷役作業を割り当てることは容易ではない。
【0004】
また、フォークリフトは、炎天下で利用されたり冷凍室で利用されたりする。そこで、運転者の体調を考慮して、空調装置がフォークリフトに設けられることがある(特許文献2および特許文献3参照)。空調装置は、フォークリフトのバッテリ電力によって動作するので、荷役システムは、荷役作業に係る電力消費だけでなく、空調装置の消費電力も加味して荷役作業を割り当てることが好ましい。しかしながら、運転者によって空調装置の温度設定が異なるので空調装置の消費電力を考慮して荷役作業を割り当てることは、さらに容易ではない。しかも、空調装置の消費電力を考慮して荷役作業を割り当てたとしても運転者がこれまでの設定と異なった温度設定に変更する場合もあり、この場合、考慮された消費電力よりも実際の消費電力が上回れば割り当てられた荷役作業が予定どおりに実行されない可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第6284212号公報
【文献】特開平7-83464号公報
【文献】国際公開第2017/179247号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、各荷役作業に係るバッテリ式有人フォークリフトの運転者の適正設定温度を出力するとともに出力された適正設定温度どおりに空調装置を作動させる空調システム、当該空調システムを備えたフォークリフト制御システムおよび制御プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係る空調システムは、
フォークリフト用空調装置と、
過去の各荷役作業における、荷役作業場所の気温、フォークリフトの識別子および運転者の識別子を入力データとし、空調装置の設定温度を出力データとする教師データによってそれらの相関を予め学習させられ、各荷役作業に係る荷役作業場所の気温、各フォークリフトの識別子および各運転者の識別子を入力されると、各フォークリフト、各運転者および各荷役作業の組み合わせごとの空調装置の適正設定温度を出力する第1ニューラルネットワークと、
対応する荷役作業の間、当該出力された適正設定温度において空調装置を作動させる空調装置制御部と、を備える、ことを特徴とする。
【0008】
上記空調システムは、好ましくは、
第1ニューラルネットワークが、さらに、過去の各荷役作業における、荷役作業場所の気温、湿度および風速、フォークリフトの識別子ならびに運転者の識別子を入力データとし、空調装置の設定温度を出力データとする教師データによってそれらの相関を予め学習させられ、各荷役作業に係る荷役作業場所の気温、湿度および風速、各フォークリフトの識別子ならびに各運転者の識別子を入力されると、各フォークリフト、各運転者および各荷役作業の組み合わせごとの空調装置の適正設定温度を出力する。
【0009】
上記空調システムは、好ましくは、
荷役作業場所の施設情報に基づいて適正設定温度を補正する温度補正部をさらに備え、
空調装置制御部が、補正された適正設定温度に基づいて空調装置を作動させる。
【0010】
上記空調システムは、好ましくは、
荷役作業場所の施設情報に湿度情報が含まれる。
【0011】
上記空調システムは、好ましくは、
荷役作業場所の施設情報に風速情報が含まれる。
【0012】
上記課題を解決するために、本発明に係るフォークリフト制御システムは、
バッテリ式の複数のフォークリフトと、管理装置と、を備え、
管理装置は、
上記空調システムと、
複数の荷役予定を記憶する記憶部と、
荷役割当部と、
過去の各荷役作業における、フォークリフトおよび運転者の識別子、荷役動作ならびに荷の重量を入力データとし荷役消費電力を出力データとする教師データによってそれらの相関を予め学習させられ、各フォークリフトおよび各運転者の識別子ならびに各荷役作業に係る荷役動作および荷の重量を入力されると各フォークリフト、各運転者および各荷役作業の組み合わせごとの荷役予測消費電力を出力する第2ニューラルネットワークと、
過去の各荷役作業における、フォークリフトおよび運転者の識別子、荷役動作ならびに荷の重量を入力データとし荷役作業時間を出力データとする教師データによってそれらの相関を予め学習させられ、フォークリフトおよび運転者の識別子ならびに各荷役作業に係る荷役動作および荷の重量を入力されると各フォークリフト、各運転者および各荷役作業の組み合わせごとの荷役予測作業時間を出力する第3ニューラルネットワークと、
過去の各荷役作業における、荷役作業場所における気温、フォークリフトの識別子および設定温度を入力データとし空調装置の消費電力を出力データとする教師データによってそれらの相関を予め学習させられ、各荷役作業場所における気温、各フォークリフト、各運転者および各荷役作業の組み合わせごとの適正設定温度ならびに各荷役予測作業時間が入力されると各フォークリフト、各運転者および各荷役作業の組み合わせごとの空調装置の予測消費電力を出力する第4ニューラルネットワークと、を有し、
荷役予定は、複数の荷役作業を含むとともに、荷役作業が行われる施設のエリアごとに荷役作業を割り当てられており、
荷役割当部は、各フォークリフト、各運転者および各荷役作業の組み合わせごとの空調装置の予測消費電力と、各フォークリフト、各運転者および各荷役作業の組み合わせごとの荷役予測消費電力とに基づいて、複数の荷役予定の合計の消費電力が最小となる荷役予定ごとのフォークリフトおよび運転者の組み合わせを出力する。
【0013】
上記課題を解決するために、本発明に係る制御プログラムは、
上記管理装置が、サーバコンピュータであって、
サーバコンピュータを上記管理装置として機能させる、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る空調システムは、各荷役作業に係るバッテリ式有人フォークリフトの運転者の適正設定温度を出力するとともに出力された適正設定温度どおりに空調装置を作動させる。また、当該空調システムを備えたフォークリフト制御システムは、空調装置の消費電力を含むバッテリ式有人フォークリフトの消費電力を予測して、荷役作業を複数の有人フォークリフトに割り当てることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態に係るフォークリフト制御システムの全体図である。
図2】荷役施設を示す概略平面図である。
図3】フォークリフトを示す側面図である。
図4】管理装置のハードウェア構成を示す図である。
図5】フォークリフト制御システムのブロック図である。
図6】荷役動作出力部の動作を示す図である。
図7】第2ニューラルネットワークの動作を示す図である。
図8】フォークリフト制御システムの動作を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して、本発明の空調システム、フォークリフト制御システムおよび制御プログラムに係る一実施形態について説明する。
【0017】
図1に示すように、フォークリフト制御システムSは、複数(本実施形態では3つ)のバッテリ式有人フォークリフト(以下、単に、「フォークリフト」という)C1、C2、C3と、管理装置4と、を備えている。本実施形態では、複数(3人)の運転者D1、D2、D3がフォークリフト制御システムSを利用することを想定している。以下において、フォークリフト全体における説明の場合、「フォークリフトC」といい、運転者全体における説明の場合、「運転者D」ということがある。管理装置4および複数のフォークリフトCは、ネットワークを介して互いに通信可能に構成されている。本実施形態に係るフォークリフトCは、同種のフォークリフトCであるが単なる一例であって、本発明に係る複数のフォークリフトCは、別種のフォークリフトによって構成されていてもよい。別種のバッテリ式有人フォークリフトとしては、例えば、車体11の向きを変えずに、前・左右3方向への荷役が可能な3方向フォークリフトでもよい。フォークリフトCおよび運転者Dは、荷役予定P1、P2、P3をそれぞれ割り当てられる。
【0018】
<荷役施設>
次に、図2を参照して、本実施形態に係る荷役施設Fについて説明する。図2に示すように、荷役施設Fは、3つのエリアE1、E2、E3を有し、3つのエリアE1、E2、E3は、荷役作業jnに係る荷取位置および荷置位置をそれぞれ有している。3つのエリアE1、E2、E3の空調は、それぞれ独立しており、異なる気温および湿度で構成されている。例えば、エリアE1が冷凍施設であったり、エリアE3が屋外であったりしてもよい。3つのフォークリフトC1、C2、C3は、エリアE1、E2、E3で個別に荷役作業jnを行うよう構成されている。また、風速センサが各エリアに設けられてもよい。荷役施設Fの気温情報、湿度情報および風速情報は、管理装置4に送信される。
【0019】
次に、添付図面を参照しつつ、フォークリフト制御システムSが備える各構成要素について説明する。
【0020】
<フォークリフト>
図3に示すように、フォークリフトCは、前後の車輪10と、車体11と、車体11に設けられた運転席12と、バッテリ13と、バッテリ残量検出部14と、を有する。バッテリ残量検出部14は、バッテリ13の残量を検出する。検出されたバッテリ13の残量は、管理装置4に送信される。なお、本実施形態におけるフォークリフトC1、C2、C3は、同じ1方向フォークリフトCであるが、型式、年式、経年劣化により電力効率が同じではない。
【0021】
フォークリフトCは、さらに、上下に延びる左右一対のマスト15と、マスト15に連結され上下に昇降させられるリフトブラケット16と、リフトブラケット16に連結された左右一対のフォーク17と、を備えている。フォークリフトCは、フォーク17によって荷Lをすくい上げ、リフトブラケット16を介してフォーク17を昇降させることにより荷Lを持ち上げたり降ろしたりする。
【0022】
フォークリフトCは、さらに、空調装置18(図5参照)と、空調装置制御部19と、表示部20(図5参照)と、を備えている。空調装置18は、冷房および暖房のいずれかまたはその両方の機能を有していてもよい。空調装置制御部19は、後で詳細に説明するように、管理装置4によって出力された適正設定温度STにおいて空調装置18を作動させる。表示部20は、管理装置4によって割り当てられた荷役予定およびこの荷役予定に係る荷役作業jnを表示する。
【0023】
<管理装置>
次に、図4を参照して、管理装置4のハードウェア構成について説明する。管理装置4は、サーバコンピュータであって、制御手段4aと、メモリ4bと、記憶手段4cとを有する。記憶手段4cには、OS(operating system)40と、荷役リスト41と、サーバコンピュータを管理装置4として機能させる制御プログラム42とが記憶されている。
【0024】
次に、図5を参照して、管理装置4の機能構成について説明する。図5に示すように、管理装置4は、記憶部43と、荷役動作出力部44と、消費電力算出部45と、第1ニューラルネットワーク46(以下、「第1NN46」という)と、温度補正部47と、第2ニューラルネットワーク48(以下、「第2NN48」という)と、第3ニューラルネットワーク49(以下、「第3NN49」という)と、第4ニューラルネットワーク50(以下、「第4NN50」という)と、荷役割当部51と、荷役通知部52と、を有する。本発明に係る空調システムは、上記構成のうち空調装置18と、空調装置制御部19と、第1NN46と、温度補正部47と、から構成されている。
【0025】
記憶部43は、施設F情報と、荷役リスト41と、を記憶している。施設F情報には、棚Rおよび通路の座標ならびにエリアE1、E2、E3ごとの気温情報、湿度情報および風速情報が含まれている。
【0026】
荷役リスト41には、図1に示すように、荷役予定P1、P2、P3が含まれている。以下において、荷役予定全体を示す場合、「荷役予定P」ということがある。荷役予定P1、P2、P3には、複数の荷役作業jnの荷役作業情報がそれぞれ含まれている。始めに説明したように、フォークリフトCおよび運転者Dは、荷役予定Pnごとに割り当てられる。本実施形態では、荷役予定P1、P2、P3は、エリアE1、E2、E3にそれぞれ割り当てられているが単なる一例であって、例えば、荷役予定Pは、同じエリア内において、荷取位置および荷置位置といった荷役位置が互いに近い荷役作業jnごとに振り当てられていてもよい。荷役位置が互いに近ければ、前の荷役作業jnから後の荷役作業jnへの移動時間が短縮し、かつその消費電力も減少するので好ましい。
【0027】
荷役作業情報には、各荷役作業jnの荷取位置および荷置位置の座標ならびに荷Lの重量が含まれている。また、荷取位置および荷置位置の座標は、水平方向の座標と高さ方向の座標とが含まれている。
【0028】
図6に示すように、荷役動作出力部44は、フォークリフトCの種類、施設F情報ならびに荷取位置および荷置位置の座標に基づいて、各荷役作業jnにおける各フォークリフトCの走行距離(荷役時走行距離)、荷取時フォーク17揚高、荷置時フォーク17揚高を出力する。なお、荷役動作出力部44は、「過去の荷役作業jn」におけるフォークリフトCの荷役動作だけでなく、まだ行われていない「先の荷役作業jn」におけるフォークリフトCの荷役動作も出力する。なお、実際には、フォークリフトCは、運転者Dによって操作されるので、この出力される荷役動作と、運転者Dが実際に行う荷役動作とは異なることがある。
【0029】
「荷役時走行距離」とは、荷取位置から荷置位置までの走行距離のことである。荷役動作出力部44は、施設F情報および荷取位置および荷置位置の座標からそのルートを取得し、次いで、そのルートの距離に基づいて荷役時の走行距離を出力する。
【0030】
「荷取時および荷置時フォーク17揚高」とは、荷取作業および荷置作業の際のフォーク17の揚高のことである。荷役動作出力部44は、荷取位置および荷置位置の高さ座標とフォークリフトCの仕様とに基づいて荷取時および荷置時におけるフォークリフトCのフォーク17の揚高を出力する。
【0031】
「車体方向転換回数」とは、荷取位置から荷置位置までに行われるフォークリフトCの車体11の方向転換のことである。荷役動作出力部44は、フォークリフトCの種類、施設F情報ならびに荷取位置および荷置位置の座標からフォークリフトCが荷取位置から荷置位置まで何回方向転換が必要かを出力する。例えば、3方向フォークリフトCの方向転換回数は、1方向フォークリフトCの方向転換回数よりも少なく出力される。
【0032】
消費電力算出部45は、通信によってバッテリ残量検出部14からフォークリフトCのバッテリ13の残量を受信する。消費電力算出部45は、荷役作業jn開始時のバッテリ13の残量と荷役作業jn完了時のバッテリ13の残量とに基づいて、各荷役作業jnにおけるフォークリフトCの荷役消費電力を算出する。
【0033】
第1NN46は、過去に行われた各荷役作業jnにおける、荷役作業場所の気温、フォークリフトCの識別子および運転者Dの識別子を入力データとし空調装置18の設定温度を出力データとする教師データによって、それらの相関を予め学習させられている。これにより、第1NN46は、各荷役作業場所の気温、各フォークリフトCの識別子および各運転者Dの識別子を入力されると、各フォークリフトC、各運転者Dおよび各荷役作業jnの組み合わせごとの適正設定温度STを出力する。適正設定温度STとは、過去に行われた各荷役作業jnにおける、荷役作業場所の気温、フォークリフトC、運転者Dおよび空調装置18の設定温度の相関に基づいて各フォークリフトC、各運転者Dおよび各荷役作業jnの組み合わせごとに導出された各運転者Dにとって好ましい空調装置18の設定温度のことである。
【0034】
温度補正部47は、荷役作業場所の環境に基づいて、第1NN46によって出力された適正設定温度STを補正する。温度補正部47は、例えば、荷役作業場所の湿度、風速または湿度、風速および気温のバランスに基づいて適正設定温度STを補正する。体感温度は、気温だけでなく湿度、風速によって変更される。したがって、温度補正部47は、適正設定温度STを補正して運転者Dの体感温度を適切にするよう構成されている。具体的には、温度補正部47は、荷役作業場所の湿度が80%以上かつ気温が28度以上のときは、適正設定温度STを1度以上下げるよう設定されてもよい。また、温度補正部47は、荷役作業場所の風速が1m/s以上かつ気温が25度以下のとき適正設定温度STを1度以上上げるよう設定されてもよい。
【0035】
図7に示すように、第2NN48は、過去に行われた各荷役作業jnにおける、フォークリフトCの識別子、運転者Dの識別子、荷役動作および荷Lの重量を入力データとし荷役消費電力を出力データとする教師データによって、それらの相関を予めディープラーニングによる教師あり学習をさせられている。これにより、第2NN48は、各フォークリフトCの識別子、各運転者Dの識別子ならびに各荷役作業jnに係る荷役動作および荷Lの重量を入力されると、各フォークリフトC、各運転者Dおよび各荷役作業jnの組み合わせごとの荷役予測消費電力ECを出力する。
【0036】
第3NN49は、過去に行われた各荷役作業jnにおける、フォークリフトCの識別子、運転者Dの識別子、荷役動作、荷Lの重量を入力データとし荷役作業時間を出力データとする教師データによってそれらの相関を予めディープラーニングによる教師あり学習をさせられている。これにより、第3NN49は、各フォークリフトCの識別子、各運転者Dの識別子ならびに各荷役作業jnに係る荷役動作および荷Lの重量を入力されると、各フォークリフトC、各運転者Dおよび各荷役作業jnの組み合わせごとの荷役予測作業時間CTを出力する。なお、「荷役作業時間」は、荷役作業jn開始時および荷役作業jn完了時に消費電力算出部45がバッテリ13の残量を受信した時刻に基づいて設定されてもよい。
【0037】
第4NN50は、過去に行われた各荷役作業jnにおける、荷役作業場所における気温、フォークリフトCの識別子および設定温度を入力データとし空調装置18の消費電力を出力データとする教師データによって、それらの相関を予め学習させられている。空調装置18の消費電力は、設定温度だけでなく周囲温度によっても変動する。第4NN50は、上記学習により、この変動の相関を予め学習している。これにより、第4NN50は、各荷役作業場所における気温、各フォークリフトC、各運転者Dおよび各荷役作業jnの組み合わせごとの適正設定温度STならびに各荷役予測作業時間CTが入力されると、各フォークリフトC、各運転者Dおよび各荷役作業jnの組み合わせごとの空調装置18の予測消費電力ACを出力する。すなわち、第4NN50は、荷役施設Fの気温と適正設定温度STから時間当たりの消費電力を予測するとともに、この予測した消費電力に荷役予測作業時間CTを積算して、予測消費電力ACを出力する。
【0038】
荷役割当部51は、各フォークリフトC、各運転者Dおよび各荷役作業jnの組み合わせごとの空調装置18の予測消費電力ACと、各フォークリフトC、各運転者Dおよび各荷役作業jnの組み合わせごとの荷役予測消費電力ECとに基づいて、複数の荷役予定P1、P2、P3の合計の消費電力AECが最小となる荷役予定P1、P2、P3ごとのフォークリフトC1、C2、C3および運転者D1、D2、D3の組み合わせを出力する。これにより、荷役割当部51は、各フォークリフトC1、C2、C3に、最適な運転者D1、D2、D3および荷役作業jnをそれぞれ割り当てる。
【0039】
荷役割当部51によって出力された各フォークリフトC、各運転者Dおよび各荷役作業jnの組み合わせに対応する各適正設定温度STは、各フォークリフトCの空調装置制御部19にそれぞれ送信される。空調装置制御部19は、対応する荷役作業jnの間、受信した適正設定温度STにおいて空調装置18を作動させる。これにより、各運転者Dは、自ら空調装置18の設定温度を設定しなくても、好ましい空調において荷役作業jnを行うことができる。また、本実施形態では、第1NN46によって出力された適正設定温度STは、温度補正部47によって適切に補正されるので、運転者Dは、より適切な空調において荷役作業jnを行うことができる。
【0040】
荷役通知部52は、荷役割当部51によって出力された荷役予定PごとのフォークリフトCおよび運転者Dの組み合わせに基づいて、各フォークリフトCに対応する荷役予定Pを通知する。フォークリフトCの表示部20は、通知された荷役予定Pをそれぞれ表示する。なお、荷役通知部52は、対応する荷役予定Pを運転者Dに直接通知してもよい。運転者Dは、通知された荷役予定Pに従ってフォークリフトCを選択し荷役予定Pに従って荷役作業jnを行う。
【0041】
次に、図8を参照して、フォークリフト制御システムSの動作について説明する。
(1)まず、管理装置4は、荷役割当部51によって、各フォークリフトCの識別子と、各運転者Dの識別子と、各荷役予定P1、P2、P3に含まれる荷役作業jnに係る荷役動作と、各荷役予定P1、P2、P3に含まれる荷役作業jnに係る荷Lの重量と、を第2NN48に入力して、各フォークリフトC、各運転者Dおよび各荷役作業jnの組み合わせごとの荷役予測消費電力ECを出力させる(図8のS1)。
(2)次いで、荷役割当部51は、フォークリフトCの識別子、運転者Dの識別子ならびに各荷役作業jnに係る荷役動作および荷Lの重量と、を第3NN49に入力して、各フォークリフトC、各運転者Dおよび各荷役作業jnの組み合わせごとの荷役予測作業時間CTを出力させる(図8のS2)。
(3)次いで、荷役割当部51は、各荷役作業jnに係る荷役作業場所の気温、フォークリフトCの識別子および運転者Dの識別子を第1NN46に入力して、各フォークリフトC、各運転者Dおよび各荷役作業jnの組み合わせごとの空調装置18の適正設定温度STを出力させる(図8のS3)。
(4)次いで、荷役割当部51は、各荷役作業場所における気温、各フォークリフトC、各運転者Dおよび各荷役作業jnの組み合わせごとの適正設定温度STならびに各荷役予測作業時間CTを第4NN50に入力して、各フォークリフトC、各運転者Dおよび各荷役作業jnの組み合わせごとの空調装置18の予測消費電力ACを出力させる(図8のS4)。
(5)次いで、荷役割当部51は、各フォークリフトC、各運転者Dおよび各荷役作業jnの組み合わせごとの空調装置18の予測消費電力ACと、各フォークリフトC、各運転者Dおよび各荷役作業jnの組み合わせごとの荷役予測消費電力ECとに基づいて、複数の荷役予定P1、P2、P3の合計の消費電力AECが最小となる荷役予定PごとのフォークリフトCおよび運転者Dの組み合わせを出力する(図8のS5)。
(6)次いで、管理装置4は、荷役通知部52によって対応する荷役予定Pを各フォークリフトCおよび運転者Dに通知する(図8のS6)。運転者Dは、通知された荷役予定Pに従って荷役作業jnを行う。
(7)次いで、管理装置4は、適正設定温度STを各空調装置制御部19に送信する。空調装置制御部19は、受信した適正設定温度STにおいて空調装置18を作動させる(図8のS7)。
【0042】
これにより、フォークリフト制御システムSは、バッテリ式有人フォークリフトCの荷役に係る消費電力および空調装置18の消費電力を考慮して、荷役作業jnをフォークリフトCに割り当てることができる。しかも、フォークリフト制御システムSは、運転者DごとにばらつきのあるフォークリフトCの消費電力を考慮して運転者DをフォークリフトCに割り当てているので、荷役情報のみに基づいて荷役作業jnをフォークリフトCに割り当てるよりもより省電力な荷役スケジュールを出力することができる。さらに、空調装置制御部19は、受信した適正設定温度STにおいて空調装置18を作動させるので、フォークリフトCのバッテリ13は、空調装置18の予測消費電力ACどおりに電力を消費させられる。したがって、本実施形態に係るフォークリフト制御システムSは、フォークリフトCがバッテリ13を充電、交換するタイミングを少なくすることができる。
【0043】
以上、本発明の一実施形態に係る空調システム、フォークリフト制御システムおよび制御プログラムについて説明してきたが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。本発明に係る空調システム、フォークリフト制御システムおよび制御プログラムは、公知の技術と組み合わせて実施されてもよい。
【0044】
本発明の空調システムの変形例として、例えば、第1NN46は、さらに、過去の各荷役作業jnにおける、荷役作業場所の気温、湿度および風速、フォークリフトCの識別子ならびに運転者Dの識別子を入力データとし、空調装置18の設定温度を出力データとする教師データによってそれらの相関を予め学習させられ、各荷役作業jnに係る荷役作業場所の気温、湿度および風速、各フォークリフトCの識別子ならびに各運転者Dの識別子を入力されると、各フォークリフトC、各運転者Dおよび各荷役作業jnの組み合わせごとの空調装置18の適正設定温度STを出力するよう構成されてもよい。この場合、空調システムは、温度補正部47を有しなくてもよい。
【符号の説明】
【0045】
S フォークリフト制御システム
F 施設
R 棚
C、C1、C2、C3 バッテリ式有人フォークリフト
D、D1、D2、D3 運転者
L 荷
10 車輪
11 車体
12 運転席
13 バッテリ
14 バッテリ残量検出部
15 マスト
16 リフトブラケット
17 フォーク
18 空調装置
19 空調装置制御部
20 表示部
4 管理装置
4a 制御手段
4b メモリ
4c 記憶手段
40 OS
41 荷役リスト
42 制御プログラム
43 記憶部
44 荷役動作出力部
45 消費電力算出部
46 第1ニューラルネットワーク(第1NN)
47 温度補正部
48 第2ニューラルネットワーク(第2NN)
49 第3ニューラルネットワーク(第3NN)
50 第4ニューラルネットワーク(第4NN)
51 荷役割当部
52 荷役通知部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8