(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-04
(45)【発行日】2023-12-12
(54)【発明の名称】ショベル
(51)【国際特許分類】
E02F 9/26 20060101AFI20231205BHJP
【FI】
E02F9/26 B
(21)【出願番号】P 2018014987
(22)【出願日】2018-01-31
【審査請求日】2020-12-16
【審判番号】
【審判請求日】2022-09-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】小野寺 将
【合議体】
【審判長】前川 慎喜
【審判官】有家 秀郎
【審判官】西田 秀彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-110998(JP,A)
【文献】特開2017-179961(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F9/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行体と、
旋回自在に前記走行体に搭載される旋回体と、
前記旋回体に取り付けられ、ブーム、アーム、及び、バケットを含むアタッチメントと、
前記ブーム、前記アーム、
及び、前記バケット
のうちの何れか1つのリンク部の動作を規定する
回転軸の近傍に設けられ、加速度センサ及び角速度センサを含む第1の慣性センサと、
前記リンク部又は前記リンク部と連動する部材に取り付けられ、前記回転軸と直交する平面部を有するブラケットと、を備え、
前記第1の慣性センサは、
前記ブラケットの平面部に取り付けられ、自己の基準座標系の原点が前記
回転軸の上に位置するように配置される、
ショベル。
【請求項2】
前記ブラケットは、前記平面部を支持する脚部を有し、
前記平面部は、前記回転軸を軸心として前記回転軸に沿って延びるように設けられるピン部であって、前記リンク部と一体として前記回転軸周りに回転する前記ピン部の前記回転軸に沿う方向の一端面から離隔されるように配置され、
前記脚部は、前記平面部から前記リンク部又は前記ピン部に向けて延び出すように設けられ、前記リンク部又は前記ピン部に連結される、
請求項1に記載のショベル。
【請求項3】
前記ブラケットは、複数の前記脚部を有し、複数の前記脚部が前記リンク部に連結されることによって、前記ピン部を跨ぐように配置される、
請求項2に記載のショベル。
【請求項4】
前記ブラケットは、前記ピン部に連結される複数の前記脚部を有する、
請求項2に記載のショベル。
【請求項5】
前記第1の慣性センサは、側面視で、前記
回転軸と重なるように配置される、
請求項1
乃至4の何れか一項に記載のショベル。
【請求項6】
前記加速度センサ及び前記角速度センサの出力に基づき、前記アタッチメントの姿勢を測定する測定部を更に備える、
請求項1
乃至5の何れか一項に記載のショベル。
【請求項7】
前記測定部は、前記加速度センサの検出値を補正せずに利用して、前記アタッチメントの姿勢を
演算し、前記角速度センサの出力を利用して、演算した前記アタッチメントの姿勢を補正することによって、前記アタッチメントの姿勢を測定する、
請求項
6に記載のショベル。
【請求項8】
前記第1の慣性センサは、
前記旋回体と前記ブームとの連結部に設けられ、前記ブーム
の動作を規定する前記回転軸、
前記ブームと前記アームとの連結部に設けられ、前記アーム
の動作を規定する前記回転軸、又は、
前記アームと前記バケットとの連結部に設けられ、前記バケットの
動作を規定する前記回転軸の近傍に配置される、
請求項1乃至
7の何れか一項に記載のショベル。
【請求項9】
前記第1の慣性センサは
、前記バケットと前記アームとの間に取り付けられ
、前記バケットと連動するバケットリンクの
前記回転軸に配置される、
請求項1乃至
7の何れか一項に記載のショベル。
【請求項10】
前記旋回体に取り付けられ、前記旋回体の旋回軸の近傍に設けられた第2の慣性センサを更に備える、
請求項1乃至
9の何れか一項に記載のショベル。
【請求項11】
前記第2の慣性センサは、平面視で、前記走行体と前記旋回体とを旋回可能に連結するスイングサークルに含まれるように配置される、
請求項
10に記載のショベル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ショベルに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、加速度センサ等の慣性測定原理に基づく慣性センサを利用してショベル等の作業機械のリンク機構の姿勢(例えば、ブームとアームとの間の結合部等の角度)を測定する方法が知られている(特許文献1等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1等に開示されるように、加速度センサを利用してブーム、アーム、及び、バケットを含むショベルのアタッチメントの姿勢を測定する場合、アタッチメント動作時の動加速度の影響を受けて、正確な姿勢を測定できない可能性がある。そのため、例えば、角速度センサの出力や動加速度の理論値を用いて加速度センサの出力による測定結果を補正することが考えられるが、補正の精度によっては、実際のアタッチメントの姿勢との間に想定以上の誤差が生じてしまう可能性がある。また、あるリンクに取り付けられた加速度センサを利用して当該リンクの姿勢を測定する際に、加速度センサの出力に対して他のリンクの動作が影響してしまう。そのため、ショベルのアタッチメントのような他リンク機構では、例えば、アームの姿勢を測定する場合に、上記補正を行ったとしても、ブームの動作に関連する補正の際の誤差が重畳されるため、測定精度が更に低下してしまう可能性がある。
【0005】
そこで、上記課題に鑑み、慣性センサを利用して、より精度よくアタッチメントの姿勢を測定することが可能なショベルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の一実施形態では、
走行体と、
旋回自在に前記走行体に搭載される旋回体と、
前記旋回体に取り付けられ、ブーム、アーム、及び、バケットを含むアタッチメントと、
前記ブーム、前記アーム、及び、前記バケットのうちの何れか1つのリンク部の動作を規定する回転軸の近傍に設けられ、加速度センサ及び角速度センサを含む第1の慣性センサと、
前記リンク部又は前記リンク部と連動する部材に取り付けられ、前記回転軸と直交する平面部を有するブラケットと、を備え、
前記第1の慣性センサは、前記ブラケットの前記平面部に取り付けられ、自己の基準座標系の原点が前記動作軸の上に位置するように配置される、
ショベルが提供される。
【発明の効果】
【0008】
上述の実施形態によれば、慣性センサを利用して、より精度よくアタッチメントの姿勢を測定することが可能なショベルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】ショベルの構成の一例を示すブロック図である。
【
図3】IMUの取り付け位置の一例を示す図である。
【
図4】IMUと回転軸との位置関係を説明する図である。
【
図5A】IMUの取り付け構造を説明する図である。
【
図5B】IMUの取り付け構造を説明する図である。
【
図5C】IMUの取り付け構造を説明する図である。
【
図5D】IMUの取り付け構造を説明する図である。
【
図6】IMUの取り付け位置の他の例を示す図である。
【
図7】ショベルの構成の他の例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。
【0011】
[ショベルの概要]
【0012】
まず、
図1を参照して、本実施形態に係るショベル500の概要について説明をする。
【0013】
図1は、本実施形態に係るショベル500の側面図である。
【0014】
本実施形態に係るショベル500は、下部走行体1と、旋回機構2を介して旋回自在に下部走行体1に搭載される上部旋回体3と、アタッチメント(作業装置)としてのブーム4、アーム5、及びバケット6と、オペレータが搭乗するキャビン10を備える。以下、ショベル500の前方は、ショベル500を上部旋回体3の旋回軸に沿って真上から平面視(以下、単に「平面視」と称する)で見たときに、上部旋回体3に対するアタッチメントの延出方向(以下、単に「アタッチメントの延出方向」と称する)に対応する。また、ショベル500の左方及び右方は、それぞれ、ショベル500を平面視で見たときに、キャビン10内のオペレータの左方及び右方に対応する。
【0015】
下部走行体1(走行体の一例)は、例えば、左右一対のクローラを含み、それぞれのクローラが走行油圧モータ1A,1B(
図2参照)で油圧駆動されることにより、ショベル500を走行させる。
【0016】
上部旋回体3(旋回体の一例)は、旋回油圧モータ21(
図2参照)で駆動されることにより、下部走行体1に対して旋回する。
【0017】
ブーム4は、上部旋回体3の前部中央に俯仰可能に枢着され、ブーム4の先端には、アーム5が上下回動可能に枢着され、アーム5の先端には、バケット6が上下回動可能に枢着される。ブーム4、アーム5、及びバケット6は、それぞれ、油圧アクチュエータとしてのブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9によりそれぞれ油圧駆動される。
【0018】
キャビン10は、オペレータが搭乗する操縦室であり、上部旋回体3の前部左側に搭載される。キャビン10には、その内外を区画する透明な窓が設けられ、その少なくとも一部は、開閉可能とされる。また、キャビン10の操縦席には、オペレータを操縦席に保持するシートベルトが設けられる。
【0019】
[ショベルの構成]
次に、
図1に加えて、
図2を参照して、ショベル500の具体的な構成について説明する。
【0020】
図2は、本実施形態に係るショベル500の構成の一例を示すブロック図である。
【0021】
尚、図中、機械的動力ラインは二重線、高圧油圧ラインは太い実線、パイロットラインは破線、電気駆動・制御ラインは細い実線でそれぞれ示される。
【0022】
本実施形態に係るショベル500の油圧アクチュエータを油圧駆動する油圧駆動系は、エンジン11と、メインポンプ14と、コントロールバルブ17を含む。また、本実施形態に係るショベル500の油圧駆動系は、上述の如く、下部走行体1、上部旋回体3、ブーム4、アーム5、及びバケット6のそれぞれを油圧駆動する走行油圧モータ1A,1B、旋回油圧モータ21、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9等の油圧アクチュエータを含む。
【0023】
エンジン11は、油圧駆動系におけるメイン動力源であり、例えば、上部旋回体3の後部に搭載される。具体的には、エンジン11は、後述するエンジンコントロールモジュール(ECM:Engine Control Module)75による制御の下、予め設定される目標回転数で一定回転し、メインポンプ14及びパイロットポンプ15を駆動する。エンジン11は、例えば、軽油を燃料とするディーゼルエンジンである。
【0024】
メインポンプ14は、例えば、エンジン11と同様、上部旋回体3の後部に搭載され、高圧油圧ライン16を通じてコントロールバルブ17に作動油を供給する。メインポンプ14は、上述の如く、エンジン11により駆動される。メインポンプ14は、例えば、可変容量式油圧ポンプであり、後述するコントローラ30による制御の下、レギュレータ(不図示)が斜板の角度(傾転角)を制御することでピストンのストローク長を調整し、吐出流量(吐出圧)を制御することができる。
【0025】
コントロールバルブ17は、例えば、上部旋回体3の中央部に搭載され、オペレータによる操作装置26に対する操作に応じて、油圧駆動系の制御を行う油圧制御装置である。コントロールバルブ17は、上述の如く、高圧油圧ライン16を介してメインポンプ14と接続され、メインポンプ14から供給される作動油を、操作装置26の操作状態に応じて、油圧アクチュエータである走行油圧モータ1A(右用),1B(左用)、旋回油圧モータ21、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9に選択的に供給する。具体的には、コントロールバルブ17は、メインポンプ14から油圧アクチュエータのそれぞれに供給される作動油の流量と流れる方向を制御する複数の油圧制御弁(方向切換弁)を含むバルブユニットである。
【0026】
本実施形態に係るショベル500の操作系は、パイロットポンプ15と、操作装置26を含む。
【0027】
パイロットポンプ15は、例えば、上部旋回体3の後部に搭載され、パイロットライン25を介して操作装置26にパイロット圧を供給する。パイロットポンプ15は、例えば、固定容量式油圧ポンプであり、エンジン11により駆動される。
【0028】
操作装置26は、レバー26A,26Bと、ペダル26Cを含む。操作装置26は、キャビン10の操縦席付近に設けられ、オペレータが各種動作要素(下部走行体1、上部旋回体3、ブーム4、アーム5、バケット6等)の操作を行うための操作入力手段である。換言すれば、操作装置26は、それぞれの動作要素を駆動する油圧アクチュエータ(即ち、走行油圧モータ1A,1B、旋回油圧モータ21、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、バケットシリンダ9等)の操作を行うための操作入力手段である。操作装置26(即ち、レバー26A,26B、及びペダル26C)は、油圧ライン27を介して、コントロールバルブ17にそれぞれ接続される。これにより、コントロールバルブ17には、操作装置26における下部走行体1、上部旋回体3、ブーム4、アーム5、及びバケット6等の操作状態に応じたパイロット信号(パイロット圧)が入力される。そのため、コントロールバルブ17は、操作装置26における操作状態に応じて、それぞれの油圧アクチュエータを駆動することができる。また、操作装置26は、油圧ライン28を介して圧力センサ29に接続される。
【0029】
本実施形態に係るショベル500の制御系は、コントローラ30と、圧力センサ29と、ECM75と、エンジン回転数センサ11aと、IMU(Inertial Measurement Unit:慣性計測装置)40,42,44を含む。
【0030】
コントローラ30は、ショベル500の駆動制御を行う電子制御ユニットである。コントローラ30は、その機能が任意のハードウェア、ソフトウェア、或いは、その組み合わせにより実現されてよい。例えば、コントローラ30は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、補助記憶装置、I/O(Input-Output interface)等を含むマイクロコンピュータで構成され、ROMや補助記憶装置に格納される各種プログラムをCPU上で実行することにより各種機能が実現される。
【0031】
例えば、コントローラ30は、オペレータ等の所定操作により予め設定される作業モード等に基づき、目標回転数を設定し、ECM75を介して、エンジン11を一定回転させる駆動制御を行う。
【0032】
また、例えば、コントローラ30は、圧力センサ29から入力される、操作装置26における各種動作要素(即ち、各種油圧アクチュエータ)の操作状態に対応するパイロット圧の検出値等に基づき、コントロールバルブ17を含む油圧アクチュエータを駆動する油圧回路の制御を行う。
【0033】
また、例えば、コントローラ30(測定部の一例)は、IMU40,42,44の出力に基づき、アタッチメントの姿勢を計測(算出)する。具体的には、コントローラ30は、ブーム4、アーム5、及び、バケット6のそれぞれの姿勢角度、より具体的には、ブーム4の上部旋回体3を基準とする上下方向の俯仰角(以下、「ブーム角度」と称する)、アーム5のブーム4を基準とする上下方向の俯仰角(以下、「アーム角度」と称する)、及び、バケット6のアーム5を基準とする上下方向の俯仰角(以下、「バケット角度」と称する)を算出する。
【0034】
また、例えば、コントローラ30は、算出されたアタッチメントの姿勢(具体的には、ブーム4、アーム5、及び、バケット6の姿勢角度)に基づき、各種制御を実行する。具体的には、コントローラ30は、算出したアタッチメントの姿勢からショベル500の姿勢安定度を把握し、姿勢安定度が相対的に低くなると、ショベル500の動作を制限してよい。また、コントローラ30は、算出されたアタッチメントの姿勢に基づき、アタッチメントの動作を予め規定された動作パターンに追従させるように、コントロールバルブ17の動作を制御し、ショベル500の自動制御を行ってもよい。また、コントローラ30は、算出されたアタッチメントの姿勢状態を、キャビン10内に設けられるディスプレイ(不図示)にCG画像等により表示させ、オペレータに現在の姿勢状態を把握させてもよい。
【0035】
尚、コントローラ30の機能の一部は、他のコントローラにより実現されてもよい。即ち、コントローラ30の機能は、複数のコントローラにより分散される態様で実現されてもよい。
【0036】
圧力センサ29は、上述の如く、油圧ライン28を介して操作装置26と接続され、操作装置26の二次側のパイロット圧、即ち、操作装置26におけるそれぞれの動作要素(油圧アクチュエータ)の操作状態に対応するパイロット圧を検出する。圧力センサ29は、一対一の通信線やCAN(Controller Area Network)等の車載ネットワークを通じてコントローラ30と通信可能に接続され、操作装置26における下部走行体1、上部旋回体3、ブーム4、アーム5、及びバケット6等の操作状態に対応するパイロット圧の検出信号は、コントローラ30に入力される。
【0037】
ECM75は、コントローラ30から制御指令に基づき、エンジン11を駆動制御する。例えば、ECM75は、エンジン回転数センサ11aから入力される検出信号に対応するエンジン11の回転数(回転速度)の測定値に基づき、コントローラ30からの制御指令に対応する目標回転数でエンジン11が一定回転するように、エンジン11のトルク指令を生成する。そして、ECM75は、生成したトルク指令に応じたトルクがエンジン11に発生するような駆動指令を、エンジン11の燃料噴射装置等の各種アクチュエータに出力する。
【0038】
尚、ECM75の機能は、コントローラ30に内蔵されてもよい。
【0039】
エンジン回転数センサ11aは、エンジン11の回転数を検出する既知の検出手段である。エンジン回転数センサ11aは、一対一の通信線やCAN等の車載ネットワークを通じてECM75と通信可能に接続され、エンジン11の回転数に対応する検出信号は、ECM75に取り込まれる。
【0040】
IMU40,42,44(第1の慣性センサ、慣性センサの一例)は、それぞれ、慣性測定原理に基づき、ブーム4、アーム5、及び、バケット6の三次元の加速度及び角速度を検出し、外部に出力する。IMU40,42,44は、それぞれ、自己に固定されたローカル直交座標系(以下、単に「ローカル座標系」と称する)の三軸方向(つまり、x軸方向、y軸方向、及び、z軸方向)の加速度を検出する加速度センサ40as,42as,44asを含む。また、IMU40,42,44は、それぞれ、ローカル座標系の三軸回りの角速度を検出する角速度センサ40gs,42gs,44gsを含む。加速度センサ40as,42as,44as及び角速度センサ40gs,42gs,44gsは、例えば、シリコンや水晶を材料とするMEMS(Micro-Electro Mechanical Systems)素子を中心に構成される。IMU40,42,44は、それぞれ、加速度センサ40as,42as,44asと角速度センサ40gs,42gs,44gsの出力信号をそのまま外部に出力してもよいし、これらの出力に対する軸間補正、温度補正、感度補正等の各種補正が加えられた信号を外部に出力してもよい。以下、後述するIMU46(
図7参照)についても同様である。IMU40,42,44の出力信号は、コントローラ30に取り込まれる。
【0041】
[IMUの配置]
次に、
図1に加えて、
図3、
図4、及び、
図5(
図5A~5D)を参照して、IMU40,42,44の配置(取り付け位置)について説明する。
【0042】
図3は、IMU42の取り付け位置の一例を示す図である。
図4は、IMU42とアーム5の回動動作の中心である回転軸5aとの配置関係を説明する図であり、具体的には、IMU42のローカル座標系と、アーム5の回転軸5aとの配置関係を示す図である。
図5は、IMU40,42,44の取り付け構造を説明する図である。具体的には、
図5Aは、IMU42の取り付け構造の一例を示す断面図であり、
図5Bは、IMU44の取り付け構造の一例を示す断面図であり、
図5C及び
図5Dは、それぞれ、IMU42の取付用のブラケット42Bの構造の一例及び他の例を示す断面図である。
【0043】
尚、IMU42とアーム5の回転軸5aとの位置関係を明示するため、
図4において、IMU42は、アタッチメントにおける実際の取り付け位置から回転軸5aに沿う方向に離間された状態が示されている。
【0044】
ブーム4、アーム5、及び、バケット6の加速度及び角速度を検出するIMU40,42,44は、それぞれ、ブーム4、アーム5、及び、バケット6の回動(俯仰)動作の中心軸である回転軸4a,5a,6aの近傍に配置される。例えば、IMU40,42,44は、それぞれ、
図1及び
図3に示すように、側面視で(具体的には、アタッチメントの動作面に鉛直な側方から見て)、回転軸4a,5a,6aと重なるように配置される。
【0045】
これにより、ブーム4の回転軸4aを中心とする回動動作時に、IMU40に発生するブーム4の回動動作に起因する動加速度を、略ゼロに近づくように抑制することができる。また、アーム5の回転軸5aを中心とする回動動作時に、IMU42に発生するアーム5の回動動作に起因する動加速度を、略ゼロに近づくように抑制することができる。また、バケット6の回転軸6aを中心とする回動動作時に、IMU44に発生するバケット6の回動動作に起因する動加速度を、略ゼロに近づくように抑制することができる。
【0046】
具体的には、
図4に示すように、IMU42は、ローカル座標系の原点Oが回転軸5a上に位置するように、より具体的には、ローカル座標系の一軸(本例の場合、y軸)が回転軸5aと一致するように配置される。同様に、IMU40及びIMU44についても、それぞれ、ローカル座標系の原点が回転軸4a及び回転軸6a上に位置するように、より具体的には、ローカル座標系の一軸(y軸)が回転軸4a及び回転軸6aと一致するように配置される。
【0047】
これにより、ブーム4の回転軸4aを中心とする回動動作時に、IMU40には、ブーム4の回動動作に起因する動加速度が発生しないようにすることができる。また、アーム5の回転軸5aを中心とする回動動作時に、IMU42には、アーム5の回動動作に起因する動加速度が発生しないようにすることができる。また、バケット6の回転軸6aを中心とする回動動作時に、IMU44には、バケット6の回動動作に起因する動加速度が発生しないようにすることができる。
【0048】
図5Aに示すように、IMU40,42,44は、それぞれ、回転軸4a,5a,6aを構成する部品、つまり、ブーム4、アーム5、バケット6と一体的に回転するブームピン4p、アームピン5p、バケットピン6pの一端に、直接、或いは、間接的に取り付けられてよい。本例では、IMU42は、アームピン5pに対して、取付用のブラケット42Bを介して、間接的に取り付けられる。
【0049】
ブラケット42Bは、IMU42の取付用の平面である座面42Baと、座面42Baから下方に延出し、アームピン5pの一端に取り付けられる脚部42Bbを含む。
図5Aに示すように、ブラケット42Bは、アーム5の回転軸5aを跨ぐように、アームピン5pに取り付けられる。IMU40及びIMU44についても、同様の構造のブラケットによって、それぞれ、ブームピン4p及びバケットピン6pの一端に取り付けられてよい。
【0050】
また、
図5Bに示すように、IMU40,42,44は、それぞれ、加速度及び角速度の検出対象であるブーム4、アーム5、及び、バケット6の回転軸4a,5a,6aに隣接する部分に取り付けられてもよい。本例では、IMU44は、取付用のブラケット44Bを介してバケット6に取り付けられる。
【0051】
ブラケット44Bは、IMU44の取付用の平面である座面44Baと、座面44Baから下方に延出し、バケット6のバケットピン6pに隣接する部分に取り付けられる脚部44Bbを含む。
図5Bに示すように、ブラケット44Bは、バケットピン6pを跨ぐように、バケット6に取り付けられる。これにより、座面44Baは、側面視で、回転軸6aと重なるため、IMU44を、側面視で、バケットピン6p(回転軸6a)と重なるように配置することができる。IMU40及びIMU42についても、同様の構造のブラケットによって、それぞれ、ブーム4及びアーム5に取り付けられてよい。
【0052】
このとき、IMU40,42,44を取付対象(例えば、上述したブームピン4p、アームピン5p、バケットピン6pの一端や、ブーム4、アーム5、バケット6におけるブームピン4p、アームピン5p、バケットピン6pに隣接する部分)に取り付けるブラケット(ブラケット42B,44B等)の構造は任意である。
【0053】
例えば、IMU42の取付用のブラケット42Bは、
図5Cに示すように、平板状で矩形の座面42Baと、座面42Baの各角部のそれぞれから下方に延出される柱状の脚部42Bbとを有する態様であってよい。この場合、座面42Baと脚部42Bbとが、例えば、溶接等により連結されることにより、ブラケット42Bが形成される。また、例えば、IMU42の取付用のブラケット42Bは、
図5Dに示すように、平板状で矩形の座面42Baと、座面42Baの四辺のそれぞれから下方に延出し、下端部に固定用のフランジ面を有する平板状の脚部42Bbとを有する態様であってもよい。つまり、ブラケット42Bは、取付対象に取り付けられる一端面が開放される略箱形状であってもよい。この場合、ブラケット42Bは、例えば、略十字形状に打ち抜き加工された平板に対して、折り曲げ加工やプレス加工等が施されることより、座面42Ba及び脚部42Bbが一体的に形成されてよい。また、ブラケット42Bの脚部42Bbは、座面42Baの四辺のうちの対向する二辺からだけ下方に延出される態様であってもよい。つまり、ブラケット42Bの側面は、開放されていてもよい。IMU40やIMU44の取付用のブラケットについても、同様の構造が採用されうる。
【0054】
IMU40,42,44を取付対象に取り付けるブラケット(ブラケット42B,44B等)は、例えば、その脚部が溶接やボルト締結により、取付対象(例えば、上述したブームピン4p、アームピン5p、バケットピン6pの一端や、ブーム4、アーム5、バケット6におけるブームピン4p、アームピン5p、バケットピン6pに隣接する部分)に取り付けられる。
【0055】
[作用]
次に、上述したIMU40,42,44の配置による作用を説明する。
【0056】
コントローラ30は、上述の如く、IMU40,42,44の出力信号に基づき、アタッチメントの姿勢に相当するブーム角度θ1、アーム角度θ2、及び、バケット角度θ3を算出する。
【0057】
例えば、コントローラ30は、IMU42から出力される三軸方向の加速度の検出値からアーム角度θ2を算出する。このとき、IMU42から出力される三軸方向の加速度の検出値には、静加速度(つまり、重力加速度)だけでなく、下部走行体1の移動、上部旋回体3の旋回、ブーム4の回動、及び、アーム5の回動により生じる動加速度が含まれうる。そのため、コントローラ30は、動加速度の影響を排除するために、IMU42から出力された三軸方向の加速度の検出値に対する各種補正を行ったり、三軸方向の角速度の積分値を補完的に利用したり等の既知の方法を適用することにより、アーム角度θ2を算出する必要がある。
【0058】
ここで、次の式(1)は、下部走行体1の移動や上部旋回体3の旋回がない前提で、IMU42に生じる動加速度Accを表している。
【0059】
【0060】
尚、R1、R2は、それぞれ、ブーム4及びアーム5の回動動作に伴う動加速度項を表し、カッコ内は、その引数(変数)を表している。また、L1は、ブーム4のリンク長、つまり、回転軸4aと回転軸5aとの間の距離を表し、P2は、アーム5の回転軸5aとIMU42の取付位置との間の距離(具体的には、側面視の距離)を表している。
【0061】
上述の如く、IMU42は、回転軸5aの近傍に、具体的には、回転軸5aとそのローカル座標系のy軸が一致する態様で配置される。つまり、"P2=0"とみなすことができるため、上述したIMU42の配置を採用することで、IMU42の加速度の出力信号に、アーム5の回動動作に伴う動加速度の影響が含まれないにすることができる。よって、コントローラ30は、アーム角度θ2を算出する際に、アーム5の回動動作に伴う動加速度を考慮する必要がないため、算出処理負荷を低減することができると共に、補正や補完等により生じる誤差を低減し、測定精度を向上させることができる。
【0062】
また、IMU40は、回転軸4aの近傍に、具体的には、回転軸4aとそのローカル座標系のy軸が一致する態様で配置される。そのため、IMU42の場合と同様、IMU40の加速度の出力信号に、ブーム4の回動動作に伴う動加速度の影響が含まれないようにすることができる。よって、コントローラ30は、ブーム角度θ1を算出する際に、ブーム4の回動動作に伴う動加速度を考慮する必要がないため、算出処理負荷を低減することができると共に、補正や補完等により生じる誤差を低減し、測定精度を向上させることができる。
【0063】
また、IMU44は、回転軸6aの近傍に、具体的には、回転軸6aとそのローカル座標系のy軸が一致する態様で配置される。そのため、IMU42の場合と同様、IMU44の加速度の出力信号に、バケット6の回動動作に伴う動加速度の影響が含まれないようにすることができる。よって、コントローラ30は、バケット角度θ3を算出する際に、バケット6の回動動作に伴う動加速度を考慮する必要がないため、算出処理負荷を低減することができると共に、補正や補完等により生じる誤差を低減し、測定精度を向上させることができる。
【0064】
このように、本実施形態では、IMU40,42,44は、アタッチメントの動作時における動加速度が作用しにくいように、アタッチメントに取り付けられる。具体的には、IMU40,42,44は、それぞれ、ブーム4、アーム5、及び、バケット6の回転軸4a,5a,6aの近傍に設けられる。
【0065】
これにより、より精度良くアタッチメントの姿勢を測定することができる。
【0066】
尚、本実施形態では、コントローラ30は、ブーム4、アーム5、及び、バケット6の全ての姿勢角度(ブーム角度θ1、アーム角度θ2、及び、バケット角度θ3)を測定するが、その要否に応じて、これらの少なくとも一つを測定する態様であればよい。この場合、慣性センサ(IMU40,42,44)のうちの測定される姿勢角度に対応する慣性センサだけがアタッチメントに取り付けられていればよい。
【0067】
以上、本発明を実施するための形態について詳述したが、本発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0068】
例えば、上述した実施形態では、IMU40,42,44は、それぞれ、加速度及び角速度の検出対象であるブーム4、アーム5、バケット6の回転軸4a,5a,6aの近傍に設けられるが、当該態様には限定されない。
【0069】
例えば、
図6は、IMU44の取り付け位置の他の例を示す図である。
【0070】
本例では、バケット6の姿勢角を測定するためのIMU44は、アーム5とバケット6との間に設けられるバケットリンク6Lのアーム5側の回転軸6La1の近傍、具体的には、側面視で、回転軸6La1と重なるように配置される。また、IMU44は、バケットリンク6Lのバケット6側の回転軸6La2の近傍、具体的には、側面視で、回転軸6La2と重なるように配置されてもよい。バケットリンク6Lの動作によりバケット6の姿勢角(バケット角度)が決定されるからである。このとき、IMU44は、バケットリンク6Lに直接取り付けられてもよいし、
図5A~
図5Dに示すようなブラケット及び取り付け構造によりバケットリンク6Lに取り付けられてもよい。
【0071】
つまり、アタッチメントの各リンク(ブーム4、アーム5、バケット6)の姿勢角を測定するためのIMUは、加速度及び角速度の検出対象であるリンクの動作を規定する動作軸(回転軸4a,5a,6a、回転軸6La1,6La2等)の近傍に設けられるとよい。これにより、上述の如く、加速度及び角速度の検出対象であるリンクの動作時にIMUに発生する動加速度を抑制することができるため、姿勢角を測定するための処理負荷を軽減したり、測定精度を向上させたりすることができる。
【0072】
また、上述した実施形態及び変形例では、アタッチメントの姿勢(姿勢角)を測定するためのIMU40,42,44が設けられるが、これらに代えて、或いは、加えて、上部旋回体3の姿勢(姿勢角)を測定するためのIMU46(第2の慣性センサの一例)が設けられてもよい。このとき、IMU46は、IMU40,42,44と同様、加速度センサと角速度センサを含んでよい。
【0073】
例えば、
図7は、ショベル500の構成の他の例を示す平面図である。
【0074】
図7に示すように、IMU46は、ショベル500(上部旋回体3)を平面視で見て、上部旋回体3の旋回軸3aの近傍に設けられる。
【0075】
具体的には、IMU46は、ショベル500を平面視で見て、下部走行体1と上部旋回体3とを旋回可能に連結する旋回機構2(スイングサークル)に含まれるように(つまり、旋回軸3aを中心とするスイングサークルの外径に相当する円よりも内部の領域に含まれるように)配置される。換言すれば、IMU46は、ショベル500を平面視で見て、スイングサークルに含まれる部品(の部分)に取り付けられる。
【0076】
例えば、IMU46は、
図7に示すように、上部旋回体3の底部を構成する旋回フレーム3bの旋回軸3aに相当する部分に設けられるスイベルジョイント3cに取り付けられる。この場合、IMU46は、スイベルジョイント3cの構成部位のうち、下部走行体1に取り付けられる外筒部に対して回転可能に内挿され、上部旋回体3に固定される内筒部に取り付けられてよい。また、IMU46は、ブーム4の付け根の部分に取り付けられてもよい。また、IMU46は、上部旋回体3におけるブーム4の取付位置の近傍の旋回フレーム3b上に取り付けられてもよい。
【0077】
これにより、上部旋回体3の旋回時にIMU46に発生する動加速度(つまり、遠心加速度)を低減することができる。そのため、コントローラ30は、上述したIMU40,42,44の場合と同様、IMU46の出力信号に基づき、上部旋回体3の姿勢角(旋回角度や傾斜角度)を測定するための処理負荷を軽減したり、測定精度を向上させたりすることができる。
【0078】
また、上述した実施形態及び変形例では、ショベル500は、アタッチメントや上部旋回体3の姿勢を測定するための慣性センサとして、IMU40,42,44,46を搭載するが、当該態様には限定されない。具体的には、アタッチメントや上部旋回体3の姿勢を測定するための慣性センサとして、ショベル500には、単純に三次元の加速度センサ及び角速度センサを組み合わせた、いわゆる、6軸センサが搭載されてもよいし、単純な三次元の加速度センサが搭載されてもよい。
【0079】
また、上述した実施形態及び変形例では、ショベル500は、下部走行体1、上部旋回体3、ブーム4、アーム5、及びバケット6等の各種動作要素を全て油圧駆動する構成であったが、その一部が電気駆動される構成であってもよい。つまり、上述した実施形態で開示される構成等は、適宜、ハイブリッドショベルや電動ショベル等に適用されてもよい。
【符号の説明】
【0080】
1 下部走行体
1A 走行油圧モータ
1B 走行油圧モータ
2 旋回機構(スイングサークル)
3 上部旋回体(旋回体)
3a 旋回軸
3b 旋回フレーム
3c スイベルジョイント
4 ブーム
4a 回転軸
4p ブームピン
5 アーム
5a 回転軸
5p アームピン
6 バケット
6a 回転軸
6L バケットリンク
6La1 回転軸
6La2 回転軸
7 ブームシリンダ
8 アームシリンダ
9 バケットシリンダ
10 キャビン
11 エンジン
11a エンジン回転数センサ
14 メインポンプ
15 パイロットポンプ
16 高圧油圧ライン
17 コントロールバルブ
21 旋回油圧モータ
25 パイロットライン
26 操作装置
26A レバー
26B レバー
26C ペダル
27 油圧ライン
28 油圧ライン
29 圧力センサ
30 コントローラ
40,42,44 IMU(第1の慣性センサ、慣性センサ)
40as,42as,44as 加速度センサ
40gs,42gs,44gs 角速度センサ
42B,44B ブラケット
42Ba,44Ba 座面
42Bb,44Bb 脚部
46 IMU(第2の慣性センサ)
75 エンジンコントロールモジュール
500 ショベル