(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-04
(45)【発行日】2023-12-12
(54)【発明の名称】位置依存的な非接触電圧及び電流測定
(51)【国際特許分類】
G01R 15/16 20060101AFI20231205BHJP
G01R 19/00 20060101ALI20231205BHJP
【FI】
G01R15/16
G01R19/00 A
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019089280
(22)【出願日】2019-05-09
【審査請求日】2022-04-20
(32)【優先日】2018-05-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】509233459
【氏名又は名称】フルークコーポレイション
【氏名又は名称原語表記】Fluke Corporation
【住所又は居所原語表記】6920 Seaway Boulevard, Everett, Washington 98203 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】クリスチャン カール シュミツェル
(72)【発明者】
【氏名】ロナルド シュトイアー
(72)【発明者】
【氏名】リカード ロドリゲス
【審査官】島▲崎▼ 純一
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-025653(JP,A)
【文献】特表2007-518086(JP,A)
【文献】特開昭56-087864(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 15/16
G01R 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気パラメータ測定装置であって、
試験中の導体を受容するようにサイズ決定及び寸法決定された開口部を含む前端部と、
前記前端部に近接して位置付けられた複数の導電センサと、
前記複数の導電センサに結合された1つ以上の基準電圧源であって、前記導電センサの各々内の基準電圧を出力するように動作する、1つ以上の基準電圧源と、
前記1つ以上の基準電圧源及び前記複数の導電センサに通信的に結合された制御回路であって、前記制御回路が、動作中に、
前記1つ以上の基準電圧源を制御して、前記導電センサの各々内の基準電圧を出力し、
前記それぞれの基準電圧源が前記導電センサ内の前記基準電圧を出力し、試験中の前記導体が前記電気パラメータ測定装置の前記前端部の前記開口部内に位置付けられたときに、前記導電センサによって測定される基準信号を示す、基準電流信号データ点を取得し、
前記複数の導電センサの各々について取得した前記基準電流信号データ点に少なくとも部分的に基づいて、試験中の前記導体の電気パラメータ測定値に適用されるべき較正係数を決定する、制御回路と、を備える、電気パラメータ測定装置。
【請求項2】
前記制御回路が、動作中に、前記較正係数を前記電気パラメータ測定値に適用して、較正された電気パラメータ測定値を生成する、請求項1に記載の電気パラメータ測定装置。
【請求項3】
前記電気パラメータ測定値が、電圧、電流、又は電力のうちの1つ以上を含む、請求項1に記載の電気パラメータ測定装置。
【請求項4】
前記複数の導電センサが、2つ又は3つの導電センサを備える、請求項1に記載の電気パラメータ測定装置。
【請求項5】
前記電気パラメータ測定装置が、非接触電圧測定装置、電流クランプ、又はスプリットコア変圧器を備える、請求項1に記載の電気パラメータ測定装置。
【請求項6】
前記制御回路が、動作中に、前記基準電流信号データ点を使用して複数の以前に決定された較正点の間を補間して、前記電気パラメータ測定値に適用されるべき前記較正係数を決定する、請求項1に記載の電気パラメータ測定装置。
【請求項7】
前記制御回路が、動作中に、前記基準電流信号データ点を以前に決定された較正式に入力して、前記電気パラメータ測定値に適用されるべき前記較正係数を決定する、請求項1に記載の電気パラメータ測定装置。
【請求項8】
前記複数の導電センサについて取得した基準電流信号データ点の各組について前記制御回路が試験中の前記導体の単一の位置を決定するように、前記複数の導電センサが、前記電気パラメータ測定装置の前記前端部に近接して位置付けられる、請求項1に記載の電気パラメータ測定装置。
【請求項9】
前記制御回路が、試験中の前記導体の前記単一の位置に少なくとも部分的に基づいて、前記較正係数を決定する、請求項8に記載の電気パラメータ測定装置。
【請求項10】
前記複数の導電センサのうちの少なくとも2つが、互いに同一平面上にある、請求項1に記載の電気パラメータ測定装置。
【請求項11】
前記複数の導電センサの各々が、長さ寸法及び幅寸法を有し、前記長さ寸法が、前記幅寸法よりも大きい、請求項1に記載の電気パラメータ測定装置。
【請求項12】
前記制御回路が、動作中に、前記基準電流信号データ点の各々の較正係数を決定する、請求項1に記載の電気パラメータ測定装置。
【請求項13】
電気パラメータ測定装置を較正するように動作する較正システムであって、前記電気パラメータ測定装置が、動作中に、複数の導電センサの基準電流信号を生成し、また、前記複数の導電センサを介して、試験中の導体内の前記基準電流信号を感知し、前記較正システムが、
較正導体内の電圧を選択的に出力するように動作する、制御可能な較正電圧源と、
較正中の電気パラメータ測定装置の前記複数の導電センサに対する前記較正導体の位置を選択的に制御するように動作する、導体位置制御システムと、
前記制御可能な較正電圧源、前記導体位置制御システム、及び前記電気パラメータ測定装置に通信的に結合可能な制御回路であって、前記制御回路が、動作中に、
複数の較正点を取得し、前記較正点の各々を取得するために、前記制御回路が、
前記導体位置制御システムを制御して、前記較正導体を、前記電気パラメータ測定装置の前記複数の導電センサに近接する新しい物理的位置へ移動させ、
前記電気パラメータ測定装置を制御して、前記導電センサの各々内の基準電圧を出力し、
前記導電センサの各々について、前記導電センサによって測定される基準信号を示す基準電流信号データ点を取得し、
前記導電センサの各々について、前記導電センサについて取得した前記基準電流信号データ点、前記較正導体の既知の電圧、及び前記電気パラメータ測定装置から受信した前記較正導体の測定した電圧に少なくとも部分的に基づいて、較正係数を決定し、
前記較正係数を前記較正導体の現在位置と論理的に関連付け、
前記複数の較正点に基づいて、較正データを決定し、また、
1つ以上の電気パラメータ測定装置による以降の使用のために、前記較正データを少なくとも1つの非一時的プロセッサ可読記憶媒体に記憶する、制御回路と、を備える、較正システム。
【請求項14】
前記較正データが、ルックアップテーブルを含み、ルックアップテーブルが、動作中に、電気パラメータ測定装置が、特定の基準電流信号測定値の較正係数を決定することを可能にする、請求項1
3に記載の較正システム。
【請求項15】
前記較正データが、1つ以上の数式の係数を含む、請求項1
3に記載の較正システム。
【請求項16】
電気パラメータ測定装置を較正するように較正システムを動作させる方法であって、前記電気パラメータ測定装置が、動作中に、複数の導電センサの基準電流信号を生成し、また、前記複数の導電センサを介して、試験中の導体内の前記基準電流信号を感知し、前記方法が、
各較正点について、
前記電気パラメータ測定装置が前記導電センサの各々内の基準電圧を出力する間に、較正導体を前記電気パラメータ測定装置の前記複数の導電センサに近接する新しい物理的位置へ移動させることによって、複数の較正点を取得することと、
前記電気パラメータ測定装置の前記導電センサの各々について、前記導電センサによって測定される基準信号を示す基準電流信号データ点を取得することと、
前記導電センサの各々について、前記導電センサについて取得した前記基準電流信号データ点、前記較正導体の既知の電圧、及び前記電気パラメータ測定装置から受信した前記較正導体の測定した電圧に少なくとも部分的に基づいて、較正係数を決定することと、
前記較正係数を前記較正導体の現在位置と論理的に関連付けることと、
前記複数の較正点に基づいて、較正データを決定することと、
1つ以上の電気パラメータ測定装置による以降の使用のために、前記較正データを少なくとも1つの非一時的プロセッサ可読記憶媒体に記憶することと、を含む、方法。
【請求項17】
較正データを決定することが、ルックアップテーブルを生成することを含み、ルックアップテーブルが、動作中に、前記電気パラメータ測定装置が、特定の基準電流信号測定値の較正係数を決定することを可能にする、請求項1
6に記載の方法。
【請求項18】
較正データを決定することが、1つ以上の数式の係数を決定することを含む、請求項1
6に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、電気パラメータ測定装置に関し、より具体的には、電気パラメータ測定装置の位置依存的な較正に関する。
【背景技術】
【0002】
電圧計は、電気回路内の電圧を測定するのに使用される器具である。1つを超える電気的特性を測定する器具は、マルチメータ又はデジタルマルチメータ(DMM)と呼ばれ、サービス用途、トラブルシューティング用途、及びメンテナンス用途に一般に必要とされるいくつかのパラメータを測定するように動作する。そのようなパラメータとしては、典型的には交流(AC)電圧及び電流、直流(DC)電圧及び電流、並びに抵抗又は継続性が挙げられる。電力特性、周波数、容量、及び温度など、他のパラメータも特定の用途の要件を満たすために測定することができる。
【0003】
AC電圧を測定する従来の電圧計又はマルチメータを使用するときは、少なくとも2つの測定電極又はプローブを導体とガルバニック接触させることが必要であり、多くの場合、絶縁電線の絶縁部分を切り離すこと、又はあらかじめ測定用端子を提供することが必要である。ガルバニック接触のために露出させた電線又は端子を必要とする他に、剥離した電線又は端子に電圧計プローブを当てる工程は、ショック又は感電死のリスクにより比較的危険である場合がある。「非接触」電圧測定装置は、回路とのガルバニック接触を必要とすることなく、交流(AC)電圧の存在を検出するために使用されることがある。
[発明が解決しようとする課題]
【0004】
更に、電流クランプ又は分割コア変圧器などのいくつかの電気パラメータ測定装置の場合、試験中の導体は、測定装置の前端部又はプローブ端部内の種々の物理的場所に自由に位置付けられ得る。特定の事例において、試験中の導体の可変位置は、試験中の導体の1つ以上の電気パラメータ(例えば、電圧、電流、電力)の測定に負の影響を及ぼし、それによって、不正確な測定結果に至る場合がある。したがって、1つ以上の電気パラメータの測定を行うときに、試験中の導体の位置を決定すること、及び/又は決定された位置を補償することが有利になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】米国特許8330449号
【文献】米国特許5473244号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
電気パラメータ測定装置は、以下のように要約することができ、電気パラメータ測定装置は、試験中の導体を受容するようにサイズ決定及び寸法決定された開口部を含む前端部と、前端部に近接して位置付けられた複数の導電センサと、複数の導電センサに結合された1つ以上の基準電圧源であって、導電センサの各々内の基準電圧を出力するように動作する、1つ以上の基準電圧源と、1つ以上の基準電圧源及び複数の導電センサに通信的に結合された制御回路であって、制御回路が、動作中に、1つ以上の基準電圧源を制御して、導電センサの各々内の基準電圧を出力し、導電センサの各々について、それぞれの基準電圧源が導電センサ内の基準電圧を出力し、試験中の導体が電気パラメータ測定装置の前端部の開口部内に位置付けられたときに、導電センサによって測定される基準信号を示す、基準電流信号データ点を取得し、複数の導電センサの各々について取得した基準電流信号データ点に少なくとも部分的に基づいて、試験中の導体の電気パラメータ測定に適用されるべき較正係数を決定する、制御回路と、を含む。
【0007】
制御回路は、動作中に、較正係数を電気パラメータ測定値に適用して、較正された電気パラメータ測定値を生成することができる。電気パラメータ測定値は、電圧、電流、又は電力のうちの1つ以上を含むことができる。複数の導電センサは、2つ又は3つの導電センサを含むことができる。電気パラメータ測定装置は、非接触電圧測定装置、電流クランプ、又はスプリットコア変圧器を含むことができる。制御回路は、動作中に、基準電流信号データ点を使用して複数の以前に決定された較正点の間を補間して、電気パラメータ測定値に適用されるべき較正係数を決定することができる。制御回路は、動作中に、基準電流信号データ点を以前に決定された較正式に入力して、電気パラメータ測定値に適用されるべき較正係数を決定することができる。複数の導電センサについて取得した基準電流信号データ点の各組について制御回路が試験中の導体の単一の位置を決定するように、複数の導電センサを電気パラメータ測定装置の前端部に近接して位置付けることができる。制御回路は、試験中の導体の単一の位置に少なくとも部分的に基づいて、較正係数を決定することができる。複数の導電センサのうちの少なくとも2つは、互いに同一平面上にあり得る。複数の導電センサの各々は、長さ寸法及び幅寸法を有することができ、長さ寸法は、幅寸法よりも大きい。制御回路は、動作中に、基準電流信号データ点の各々の較正係数を決定することができる。制御回路は、動作中に、基準電流信号データ点の各々の較正係数の加重組み合わせを決定して、較正係数として使用することができる。加重組み合わせは、線形加重組み合わせ又は指数加重組み合わせのうちの少なくとも1つを含むことができる。
【0008】
電気パラメータ測定装置を較正するように動作する較正システムであって、電気パラメータ測定装置は、動作中に、複数の導電センサの基準電流信号を生成し、また、複数の導電センサを介して、試験中の導体内の基準電流信号を感知し、以下のように要約することができ、較正システムは、較正導体内の電圧を選択的に出力するように動作する、制御可能な較正電圧源と、較正導体内の電圧を選択的に出力するように動作する、制御可能な較正電圧源と、較正中の電気パラメータ測定装置の複数の導電センサに対する較正導体の位置を選択的に制御するように動作する、導体位置制御システムと、制御可能な較正電圧源、導体位置制御システム、及び電気パラメータ測定装置に通信的に結合可能な制御回路であって、制御回路が、動作中に、複数の較正点を取得し、較正点の各々を取得するために、制御回路は、導体位置制御システムを制御して、較正導体を、電気パラメータ測定装置の複数の導電センサに近接する新しい物理的位置へ移動させ、電気パラメータ測定装置を制御して、導電センサの各々内の基準電圧を出力し、導電センサの各々について、導電センサによって測定される基準信号を示す基準電流信号データ点を取得し、導電センサの各々について、導電センサについて取得した基準電流信号データ点、較正導体の既知の電圧、及び電気パラメータ測定装置から受信した較正導体の測定した電圧に少なくとも部分的に基づいて、較正係数を決定し、較正係数を較正導体の現在位置と論理的に関連付け、複数の較正点に基づいて、較正データを決定し、また、1つ以上の電気パラメータ測定装置による以降の使用のために、較正データを少なくとも1つの非一時的プロセッサ可読記憶媒体に記憶する、制御回路と、を含む。
【0009】
較正データは、ルックアップテーブルを含むことができ、ルックアップテーブルは、動作中に、電気パラメータ測定装置が、特定の基準電流信号測定値の較正係数を決定することを可能にする。較正データは、1つ以上の数式の係数を含むことができる。
【0010】
電気パラメータ測定装置を較正するように較正システムを動作させる方法であって、電気パラメータ測定装置は、動作中に、複数の導電センサの基準電流信号を生成し、複数の導電センサを介して試験中の導体内の基準電流信号を感知し、以下のように要約することができ、方法は、各較正点について、電気パラメータ測定装置が導電センサの各々内の基準電圧を出力する間に、較正導体を電気パラメータ測定装置の複数の導電センサに近接する新しい物理的位置へ移動させることによって、複数の較正点を取得することと、電気パラメータ測定装置の導電センサの各々について、導電センサによって測定される基準信号を示す基準電流信号データ点を取得することと、導電センサの各々について、導電センサについて取得した基準電流信号データ点、較正導体の既知の電圧、及び電気パラメータ測定装置から受信した較正導体の測定した電圧に少なくとも部分的に基づいて、較正係数を決定することと、較正係数を較正導体の現在位置と論理的に関連付けることと、複数の較正点に基づいて、較正データを決定することと、1つ以上の電気パラメータ測定装置による以降の使用のために、較正データを少なくとも1つの非一時的プロセッサ可読記憶媒体に記憶することと、を含む。
【0011】
較正データを決定することは、ルックアップテーブルを生成することを含むことができ、ルックアップテーブルは、動作中に、電気パラメータ測定装置が、特定の基準電流信号測定値の較正係数を決定することを可能にする。較正データを決定することは、1つ以上の数式の係数を決定することを含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図面では、同一の参照番号により類似の要素又は作用が識別される。図面における要素の寸法及び相対位置は、必ずしも縮尺どおりに描かれていない。例えば、種々の要素及び角度の形状は必ずしも縮尺どおりに描かれているわけではなく、これらの要素の一部は、図面の明瞭性を向上させるために任意に拡大されかつ位置付けられていてもよい。なお、図示されるような要素の特定の形状は、必ずしも特定の要素の実際の形状に関する任意の情報を伝えることが意図されているわけではなく、単に図面において認識しやすいように選択されていてもよい。
【0013】
【
図1A】
図1Aは、1つの図示した実施形態による、基準信号型電圧センサを含む非接触電圧測定装置をオペレータが使用して、絶縁電線内に存在するAC電圧を、電線とのガルバニック接触を必要とすることなく測定することができる環境の絵図である。
【
図1B】
図1Bは、1つの図示した実施形態による、絶縁電線と非接触電圧測定装置の導電センサとの間に形成された結合容量、絶縁導体流成分、及び、非接触電圧測定装置とオペレータとの間の人体容量を示す、
図1Aの非接触電圧測定装置の上面図である。
【
図2】
図2は、1つの図示した実施形態による、非接触電圧測定装置の様々な内部構成要素の概略図である。
【
図3】
図3は、1つの図示した実施形態による、非接触電圧測定装置の様々な信号処理構成要素を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、1つの図示した実施形態による、高速フーリエ変換(FFT)を実装する非接触電圧測定装置の概略図である。
【
図5】
図5は、1つの図示した実施形態による、
図1A~
図4に示される電圧測定装置などの電気パラメータ測定装置の較正システムの概略ブロック図である。
【
図6】
図6は、1つの図示した実施形態による、試験中の導体の位置を決定するために使用することができる3つの導電センサを示す、電気パラメータ測定装置のV字形状の前端部の概略図である。
【
図7】
図7は、1つの図示した実施形態による、試験中の導体の位置を決定するために使用することができる2つの導電センサを示す、電気パラメータ測定装置のV字形状の前端部の概略図であり、2つの導電センサの位置は、試験中の導体の正確な位置の決定を可能にする。
【
図8】
図8は、1つの図示した実施形態による、試験中の導体の位置を決定するために使用することができる2つの導電センサを示す、電気パラメータ測定装置のV字形状の前端部の概略図であり、2つの導電センサの位置は、試験中の導体に不正確な位置の決定を生じさせる場合がある。
【
図9】
図9は、1つの非限定的な図示した実施形態による、互いに同一平面上にあり、かつ試験中の導体の位置を決定するために使用することができる2つの導電センサを示す、電気パラメータ測定装置の前端部の概略図である。
【
図10】
図10は、1つの非限定的な図示した実施形態による、試験中の導体の種々の可能な位置を示す、3つの導電センサを含む電気パラメータ測定装置のV字形状の前端部の概略図である。
【
図11】
図11は、1つの非限定的な図示した実施形態による、種々の位置における3つの導電センサの位置依存的な較正係数を示す表である。
【
図12】
図12は、1つの非限定的な図示した実施形態による、試験中の導体が導電センサから種々の距離に位置付けられたときの、単一の導電センサの位置依存的な較正係数を示す表である。
【
図13】
図13は、1つの非限定的な図示した実施形態による、距離の関数としての、導電センサの基準電流信号及び較正係数を示すグラフである。
【
図14】
図14は、1つの非限定的な図示した実施形態による、距離の関数としての、基準電流信号の逆数の線形近似及び較正係数の多項式近似を示すグラフである。
【
図15】
図15は、1つの非限定的な図示した実施形態による、導電センサによって検出される基準電流信号の逆数の関数としての、較正係数を示すグラフである。
【
図16A】
図16Aは、1つの非限定的な図示した実施形態による、2つの導電センサを支持するV字形状のガードを示す、電気パラメータ測定装置の前端部の一部分の側面図である。
【
図17】
図17は、1つの非限定的な図示した実施形態による、
図16A及び16Bに示される前端部のセンサのうちの1つの二次元垂直距離依存の較正係数の模式的表現を図示するグラフである。
【
図18】
図18は、1つの非限定的な図示した実施形態による、垂直距離の関数としての、
図16A及び16Bに示される前端部の2つの導電センサの基準電流信号及び較正係数を図示するグラフである。
【
図19】
図19は、1つの非限定的な図示した実施形態による、基準電流信号から導出される垂直距離を使用して、試験中の導体の位置の決定を例示する概略図である。
【
図20】
図20は、1つの非限定的な図示した実施形態による、試験中の導体の位置を決定するために、及び/又は測定精度を向上させるために使用される1つ以上の較正係数を決定するために使用することができる3つの導電センサの位置を示す、クランプメータの前端部の絵図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本開示のシステム及び方法は、接触及び非接触「基準信号」型測定装置、クランプメータ、及びスプリットコア変圧器などの電気パラメータ測定装置の較正、並びにこのような装置及び他の装置の導体位置の決定を有利に提供する。最初に、
図1A~
図4を参照して、基準信号型測定装置の種々の例が論じられる。次いで、
図5~
図20に関して、種々の較正システム及び関連するデバイス、並びに方法が論じられる。
【0015】
少なくともいくつかの実施形態では、本明細書に開示される較正システム及び方法は、絶縁電線と試験電極又はプローブとの間でガルバニック接続する必要なしに、絶縁電線内の1つ以上の交流(AC)電気パラメータの測定が行われる、非接触測定装置を較正するために使用することができる。較正システム及び方法はまた、基準信号を生成及び検出し、試験中の導体とガルバニック接触している導電試験リード線又はプローブを利用する、従来の接触型測定装置を較正するために使用することができる。本明細書で論じられる実施形態を使用することができる測定装置の非限定的な例としては、デジタルマルチメータ、電流クランプ、及びスプリットコア変圧器が挙げられる。
【0016】
以下の説明では、種々の開示の実施形態の完全な理解が得られるように、特定の具体的な詳細について記載する。しかしながら、当業者は、これらの具体的な詳細のうちの1つ以上を伴わずに、又は他の方法、構成要素、材料などを伴って実施形態を実践することができることを理解するであろう。その他の場合では、コンピュータシステム、サーバコンピュータ、及び/又は通信ネットワークに関係する周知の構造は、実施形態の説明を必要以上に不明瞭にすることを避けるためにも、詳細には示されていないか又は記載されていない。
【0017】
文脈上その他の意味に解すべき場合を除き、以下の明細書及び特許請求の範囲を通して、用語「備える(comprising)」とは用語「含む(including)」と同義であり、包括的であり、つまり限定的ではない(即ち、更なる記載されていない要素又は方法の行為を除外しない)。
【0018】
本明細書の全体を通して「1つの実施形態(one implementation)」又は「一実施形態(an implementation)」を参照することは、実施形態に関して記述された特定の特徴、構造、又は特性が少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書の全体を通して種々の場所における「1つの実施形態において(in one implementation)」又は「一実施形態において(in an implementation)」という句の出現は、必ずしも全てが同じ実施形態に言及するものではない。更に、1つ以上の実施形態では、特定の特徴、構造、又は特性は、任意の好適な方法で組み合わせることができる。
【0019】
本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用する際に、単数形「a」、「an」、及び「the」は、その内容について別段の明確な指示がない限り、複数の指示対象を含む。用語「又は」は、文脈上、別段の明確な指示がない限り、その意味において「及び/又は」を含んで一般的に用いられる、という点にも留意すべきである。
【0020】
本開示で提供される見出し及び要約書は、便宜のためだけであり、実施形態の範囲又は意味を説明するものではない。
【0021】
基準信号型非接触電圧測定装置
以下で論じる内容では、絶縁(例えば、絶縁電線)又はブランク非絶縁導体(例えば、バスバー)の交流(AC)電圧を、導体と試験電極又はプローブとのガルバニック接続を必要とすることなく測定するためのシステム及び方法の例を提供する。本セクションで開示される実施形態は、本明細書では「基準信号型電圧センサ」又はシステムという場合がある。一般に、非ガルバニック接触(又は「非接触」)電圧測定装置が提供され、システムは、接地に対する絶縁導体内のAC電圧信号を、容量センサを使用して測定する。ガルバニック接続を必要としないそのようなシステムを本明細書では「非接触」という。本明細書で使用するとき、「電気的に結合された」は、特記のない限り、直接及び間接の両方の電気的結合を含む。以下の論述は、非接触基準信号型測定装置に焦点を当てるが、本明細書に開示される較正システム及び方法が、接触基準信号電圧測定装置(例えば、基準信号を生成及び検出するデジタルマルチメータ(DMM))を較正するために、追加的又は代替的に使用されてもよいことが認識されよう。したがって、以下の論述は、1つ以上の較正係数及び/又は試験中の導体の位置を決定するために使用することができる測定装置の較正サブシステム、並びに1つ以上の電気パラメータ(例えば、電圧、電流、電力)の測定値を取得するために使用される測定装置の測定サブシステムに適用することができる。
【0022】
図1Aは、基準信号型電圧センサ又はシステムを含む非接触電圧測定装置102を、オペレータ104が使用して、絶縁電線106内に存在するAC電圧を、非接触電圧測定装置と電線106とのガルバニック接触を必要とすることなく測定することができる、環境100の絵図である。
図1Bは、動作中の非接触電圧測定装置の種々の電気的特性を示す、
図1Aの非接触電圧測定装置102の平面図である。非接触電圧測定装置102は、握持部分又は端部110と、握持部分の反対側の、本明細書では前端部とも称されるプローブ部分又は端部112と、を含む、ハウジング又は本体108を含む。ハウジング108はまた、非接触電圧測定装置102とのユーザインタラクションを容易にするユーザインターフェース114を含むこともできる。ユーザインターフェース114は、任意の数の入力部(例えば、ボタン、ダイヤル、スイッチ、タッチセンサ)、及び任意の数の出力部(例えば、ディスプレイ、LED、スピーカ、ブザー)を含むことができる。非接触電圧測定装置102はまた、1つ以上の有線及び/又は無線通信インターフェース(例えば、USB、Wi-Fi(登録商標)、Bluetooth(登録商標))を含むこともできる。
【0023】
少なくともいくつかの実施形態では、
図1Bに最良に示されるように、プローブ部分112は、第1の拡張部分118及び第2の拡張部分120によって画定された凹部分116を含むことができる。凹部分116は、絶縁電線106(
図1Aを参照)を受容する。絶縁電線106は、導体122と、導体122を取り囲む絶縁体124と、を含む。凹部分116は、センサ又は電極126を含むことができ、センサ又は電極は、絶縁電線が非接触電圧測定装置102の凹部分116内に位置付けられたときに、絶縁電線106の絶縁体124に近接して載置される。明瞭性のために図示されていないが、センサ126は、センサと他の物体との物理的及び電気的接触を防止するために、ハウジング108内部に配置することができる。更に、この実施例では、単一のセンサ126が示されるが、他の実施形態では、下で論じられるように、複数の離間されたセンサが提供され得る。
【0024】
図1Aに示されるように、使用中に、オペレータ104は、ハウジング108の握持部分110を把持し、プローブ部分112を絶縁電線106に近接して配置することができ、非接触電圧測定装置102は、電線内に存在するAC電圧をアース接地(又は別の基準ノード)に対して正確に測定することができるようになっている。プローブ端部112は、凹部分116を有するように示されるが、その他の実施形態では、プローブ部分112を異なる方法で構成することができる。例えば、少なくともいくつかの実施形態において、プローブ部分112は、移動可能なクランプ、フック、センサを含む選択的に平坦な若しくは円弧の面、又は非接触電圧測定装置102のセンサを絶縁電線106に近接して位置付けることを可能にする他の型のインターフェースを含むことができる。種々のプローブ部分及びセンサの例は、下で論じられる。
【0025】
オペレータの身体がアース/接地の基準として作用するのは、一部の実施形態においてだけであり得る。代替的に、試験リード線139を介したアース128に対する直接接続を使用することができる。本明細書で論じられる非接触測定値の機能は、アースに対して測定する用途だけに限定されない。外部基準は、任意の他の電位に容量結合又は直接結合することができる。例えば、外部基準が三相システムの別の位相に容量結合された場合、相間電圧が測定される。一般に、本明細書で論じられる概念は、基準電圧及び任意の他の基準電位に容量結合接続された身体を使用するアースに対する基準だけに限定されない。
【0026】
下で更に論じられるように、少なくともいくつかの実施形態では、非接触電圧測定装置102は、AC電圧測定中に、オペレータ104と接地128との間の人体容量(CB)を利用することができる。接地という用語がノード128に使用されているが、ノードは、必ずしもアース/接地であるというわけではなく、容量結合させることによって任意の他の基準電位にガルバニック絶縁された様態で接続することができる。
【0027】
AC電圧を測定するために非接触電圧測定装置102によって使用される特定のシステム及び方法は、
図2~
図4を参照して下で論じられる。
【0028】
図2は、
図1A及び
図1Bにも示される非接触電圧測定装置102の種々の内部構成要素の概略図を示す。この実施例では、非接触電圧測定装置102の導電センサ126は、実質的に「V字形」であり、試験中の絶縁電線106に近接して位置付けられ、絶縁電線106の導体122と容量結合して、センサ結合コンデンサ(C
O)を形成する。非接触電圧測定装置102を取り扱うオペレータ104は、人体容量(C
B)を接地に対して有する。また、電線(例えば、試験リード線139)による直接導電接地結合を、
図1A及び1Bに示されるように使用することができる。したがって、
図1B及び
図2に示すように、電線122内のAC電圧信号(V
O)は、絶縁導体電流成分又は「信号電流」(I
O)を、直列に接続されている結合コンデンサ(C
O)及び人体容量(C
B)にわたって生成する。いくつかの実施形態では、人体容量(C
B)はまた、容量を接地又は任意の他の基準電位に生成する、ガルバニック絶縁された試験リード線を含むこともできる。
【0029】
測定される電線122内のAC電圧(V
O)は、外部接地128(例えば、中性点)への接続を有する。非接触電圧測定装置102自体もまた、接地128に対する容量を有し、この容量は、主として、オペレータ104(
図1)が非接触電圧測定装置を自分の手で保持したときの人体容量(C
B)からなる。容量C
O及びC
Bの両方により導電ループが作成され、ループ内側の電圧が信号電流(I
O)を生成する。信号電流(I
O)は、導電センサ126に容量結合されたAC電圧信号(V
O)によって生成され、非接触電圧測定装置のハウジング108及び接地128に対する人体コンデンサ(C
B)を介して外部接地128に戻る。電流信号(I
O)は、非接触電圧測定装置102の導電センサ126と試験中の絶縁電線106との間の距離、導電センサ126の特定の形状、並びに導体122内のサイズ及び電圧レベル(V
O)に依存する。
【0030】
信号電流(IO)に直接影響を及ぼす距離の変動及びそれに伴う結合コンデンサ(CO)の変動を補償するために、非接触電圧測定装置102は、コモンモード基準電圧源130を含み、コモンモード基準電圧源は、信号電圧周波数(fO)と異なる基準周波数(fR)を有するAC基準電圧(VR)を生成する。
【0031】
迷走電流を低減させる、又は避けるために、非接触電圧測定装置102の少なくとも一部分は、導電内部接地ガード又はスクリーン132によって取り囲むことができ、スクリーンは、電流の大部分に導電センサ126を通させ、導電センサは、結合コンデンサ(CO)を絶縁電線106の導体122で形成する。内部接地ガード132は、任意の適切な導電材料(例えば、銅)から形成することができて、また、固体(例えば、箔)とすること、又は1つ以上の開口部(例えば、メッシュ)を有することができる。
【0032】
更に、内部接地ガード132と外部接地128との間の電流を避けるために、非接触電圧測定装置102は、導電基準遮蔽体134を含む。基準遮蔽体134は、任意の適切な導電材料(例えば、銅)から形成することができ、固体(例えば、板金)、プラスチック筐体内側のスパッタリングされた金属、可撓性(例えば、箔)とすること、又は1つ以上の開口部(例えば、メッシュ)を有することができる。コモンモード基準電圧源130は、基準遮蔽体134と内部接地ガード132との間に電気的に結合され、これによって、非接触電圧測定装置102の基準電圧(VR)と、基準周波数(fR)と、を有するコモンモード電圧又は基準信号が作成される。このようなAC基準電圧(VR)により、付加基準電流(IR)が、結合コンデンサ(CO)及び人体コンデンサ(CB)を介して駆動される。
【0033】
導電センサ126の少なくとも一部分を取り囲む内部接地ガード132は、導電センサ126と基準遮蔽体134との間に基準電流(IR)の望ましくないオフセットを引き起こすAC基準電圧(VR)の直接的な影響から導電センサを保護する。上述したように、内部接地ガード132は、非接触電圧測定装置102の内部電子接地138である。少なくともいくつかの実施形態では、内部接地ガード132はまた、電子品に結合するAC基準電圧(VR)を避けるために、非接触電圧測定装置102の電子品のうちの一部又は全部を取り囲む。
【0034】
上述したように、基準遮蔽体134は、基準信号を入力AC電圧信号(VO)に注入するために利用され、また、第2の機能として、アース接地128容量に対するガード132を最小にする。少なくともいくつかの実施形態では、基準遮蔽体134は、非接触電圧測定装置102のハウジング108のうちの一部又は全部を取り囲む。このような実施形態では、電子品のうちの一部又は全部は、基準コモンモード信号を参照し、基準コモンモード信号は、導電センサ126と絶縁電線106内の導体122との間に基準電流(IR)を生成する。少なくともいくつかの実施形態では、基準遮蔽体134の唯一の間隙は、導電センサ126のための開口部とすることができ、この開口部は、非接触電圧測定装置102の動作中に、導電センサを絶縁電線106に近接して位置付けることを可能にする。
【0035】
内部接地ガード132及び基準遮蔽体134は、二重層スクリーンを非接触電圧測定装置102のハウジング108(
図1A及び
図1Bを参照)の周囲に提供することができる。基準遮蔽体134は、ハウジングの外面108に配置することができ、内部接地ガード132は、内部遮蔽体又はガードとして機能することができる。導電センサ126は、ガード132によって、基準遮蔽体134に対して遮蔽され、よって、任意の基準電流が、結合コンデンサ(C
O)によって、試験中の導電センサ126と導体122との間に生成される。センサ126の周囲のガード132はまた、センサの近くに隣接する電線の迷走の影響を低減させる。
【0036】
図2に示されるように、非接触電圧測定装置102は、反転電流-電圧変換器として動作する入力増幅器136を含むことができる。入力増幅器136は、非接触電圧測定装置102の内部接地138として機能する内部接地ガード132に電気的に結合された非反転端子を有する。入力増幅器136の反転端子は、導電センサ126に電気的に結合することができる。フィードバック回路137(例えば、フィードバック抵抗)もまた、入力信号を調整するためのフィードバック及び適切なゲインを提供するために、反転端子と入力増幅器136の出力端子との間に結合することができる。
【0037】
入力増幅器136は、信号電流(IO)及び基準電流(IR)を導電センサ126から受信し、受信した電流を、入力増幅器の出力端子において導電センサ電流を示すセンサ電流電圧信号に変換する。例えば、センサ電流電圧信号は、アナログ電圧であってもよい。アナログ電圧は、信号処理モジュール140に送給することができ、信号処理モジュールは、下で更に論じられるように、センサ電流電圧信号を処理して、絶縁電線106の導体122内のAC電圧(VO)を決定する。信号処理モジュール140は、デジタル及び/又はアナログ回路の任意の組み合わせを含むことができる。
【0038】
非接触電圧測定装置102はまた、決定されたAC電圧(VO)を示すために、又はインターフェースによって非接触電圧測定装置のオペレータ104に通信するために信号処理モジュール140に通信可能に結合された、ユーザインターフェース142(例えば、ディスプレイ)も含むことができる。
【0039】
図3は、非接触電圧測定装置の種々の信号処理構成要素を示す、非接触電圧測定装置300のブロック図である。
図4は、
図3の非接触電圧測定装置300のより詳細な図である。
【0040】
非接触電圧測定装置300は、先に論じた非接触電圧測定装置102と類似するか又は全く同じであってもよい。故に、類似する又は同一である構成要素には、同じ参照番号が標識付けされる。示されるように、入力増幅器136は、導電センサ126からの入力電流(IO+IR)を、入力電流を示すセンサ電流電圧信号に変換する。センサ電流電圧信号は、アナログ-デジタル変換器(ADC)302を使用して、デジタル形式に変換される。
【0041】
電線122のAC電圧(V
O)は、式(1)によってAC基準電圧(V
R)に関連付けられる。
【数1】
式中、(I
O)は、導体122内のAC電圧(V
O)により導電センサ126を通る信号電流であり、(I
R)は、AC基準電圧(V
R)により導電センサ126を通る基準電流であり、(f
O)は、測定されているAC電圧(V
O)の周波数であり、(f
R)は、基準AC電圧(V
R)の周波数である。
【0042】
AC電圧(V
O)に関連付けられる指数「O」を有する信号は、コモンモード基準電圧源130に関連付けられる指数「R」を有する信号とは異なる、周波数のような特性を有する。
図4の実施形態では、高速フーリエ変換(FFT)アルゴリズム306を実装する回路などのデジタル処理を使用して、異なる周波数で信号の大きさを分離することができる。他の実施形態では、アナログ電子フィルタを使用して、「O」信号特性(例えば、大きさ、周波数)を「R」信号特性から分離することもできる。
【0043】
電流(IO)及び(IR)は、結合コンデンサ(CO)のために、それぞれ、周波数(fO)及び(fR)に依存する。結合コンデンサ(CO)を通って流れる電流及び人体容量(CB)は、周波数と比例し、したがって、試験中の導体122内のAC電圧(VO)の周波数(fO)は、上記の式(1)で利用される基準周波数(fR)と信号周波数(fO)との比率を決定するために測定すること、又は基準周波数がシステムによって生成されるので基準周波数が既知であること、のいずれかが必要とされる。
【0044】
入力電流(I
O+I
R)が入力増幅器136によって調整され、ADC302によってデジタル化された後に、FFT306を使用して周波数領域内の信号を表すことによって、デジタルセンサの電流電圧信号の周波数成分を決定することができる(
図7を参照されたい)。周波数(f
O)及び(f
R)の両方が測定されたときに、電流(I
O)及び(I
R)の基本的な大きさをFFT306から計算するために、周波数ビンを決定することができる。
【0045】
電流(IR)及び/又は電流(IO)の大きさは、絶縁電線106の基準信号センサ又は電極(例えば、電極126)と導体122との間の距離の関数として変動し得る。したがって、システムは、測定された電流(IR)及び/又は電流(IO)を予想されるそれぞれの電流と比較して、基準信号センサ又は電極と導体122との間の距離を判定することができる。
【0046】
次に、
図3のブロック308によって示されるように、I
R,1及びI
O,1と指定された電流(I
R)及び(I
O)の基本高調波の比率を、決定された周波数(f
O)及び(f
R)によってそれぞれ補正することができ、この因子を使用して、高調波(V
O)を電線122内に加えることによって、測定された元の基本電圧又はRMS電圧を計算することができ、これは、二乗高調波合計の平方根を計算することによって行われ、ディスプレイ312上でユーザに示すことができる。
【0047】
結合コンデンサ(CO)は、一般に、絶縁導体106と導電センサ126との間の距離、並びにセンサ126の特定の形状及び寸法に応じて、例えば、約0.02pF~1pFの範囲の容量値を有することができる。人体容量(CB)は、例えば、約20pF~200pFの容量値を有することができる。
【0048】
上記の式(1)から、コモンモード基準電圧源130によって生成されたAC基準電圧(VR)は、信号電流(IO)及び基準電流(IR)に関して類似する電流の大きさを達成するために、導体122内のAC電圧(VO)と同じ範囲内である必要がないことが分かる。相対的に高くなるように基準周波数(fR)を選択することによって、AC基準電圧(VR)を相対的に低く(例えば、5V未満に)することができる。一例として、基準周波数(fR)は、3kHzになるように選択することができ、これは、60Hzの信号周波数(fO)を有する典型的な120VRMS AC電圧(VO)の50倍の高さである。このような場合、AC基準電圧(VR)は、信号電流(IO)と同じ基準電流(IR)を生成するために、わずか2.4V(即ち、120V÷50)となるように選択することができる。一般に、基準周波数(fR)を信号周波数(fO)のN倍になるように設定することは、AC基準電圧(VR)が、類似する不確実性をIR及びIOについて達成するように互いに同じ範囲にある電流(IR)及び(IO)を生成するために、電線122内のAC電圧(VO)の(1/N)倍である値を有することを可能にする。
【0049】
任意の好適な信号発生器を使用して、基準周波数(f
R)を有するAC基準電圧(V
R)を発生させることができる。
図3に図示した実施例では、シグマ-デルタデジタル-アナログ変換器(Σ-ΔDAC)310が使用される。Σ-ΔDAC310は、ビットストリームを使用して、定義された基準周波数(f
R)及びAC基準電圧(V
R)を有する波形(例えば、正弦波形)信号を作成する。少なくともいくつかの実施形態では、Σ-ΔDAC310は、ジッタを低減させるために、FFT306のウィンドウと同相である波形を生成することができる。Σ-ΔDACよりも低いコンピューティング電力を使用し得るPWMなどの、任意の他の基準電圧発生器が使用され得る。
【0050】
少なくともいくつかの実施形態では、ADC302は、14ビットの解像度を有することができる。動作時に、ADC302は、FFT306によって処理するために準備した、100ms内に2n個のサンプル(1024)(FFT306の場合、10Hzビン)を供給するために、公称50Hzの場合に10.24kHzのサンプリング周波数で、入力増幅器136からの出力をサンプリングすることができる。60Hzの入力信号の場合、1サイクルあたり同じサンプル数を得るために、例えば、サンプリング周波数を12.288kHzとすることができる。ADC302のサンプリング周波数は、基準周波数(fR)の全サイクル数に同期させることができる。例えば、入力信号周波数は、40~70Hzの範囲内とすることができる。AC電圧(VO)の測定された周波数に応じて、AC電圧(VO)のビンは、FFT306を使用して決定することができ、また、更なる計算のためにハニング窓機能を使用して、集約間隔内で捕捉された不完全な信号サイクルによって引き起こされた位相シフトジッタを抑制することができる。
【0051】
1つの例では、コモンモード基準電圧源130は、2419Hzの基準周波数(fR)を有するAC基準電圧(VR)を生成する。この周波数は、60Hz信号の場合は、40番目の高調波と41番目の高調波との間にあり、50Hz信号の場合は、48番目の高調波と49番目の高調波との間にある。予想されるAC電圧(VO)の高調波ではない基準周波数(fR)を有するAC基準電圧(VR)を提供することによって、AC電圧(VO)が基準電流(IR)の測定値に影響を及ぼす可能性が少なくなる。
【0052】
少なくともいくつかの実施形態では、コモンモード基準電圧源130の基準周波数(fR)は、試験中の導体122内のAC電圧(VO)の高調波の影響を及ぼされる可能性が最も少ない周波数になるように選択される。一例として、コモンモード基準電圧源130は、基準電流(IR)が限度を超えた場合にスイッチをオフにすることができ、これは、導体122が、試験中の導電センサ126に接近していることを示し得る。測定(例えば、100msの測定)は、コモンモード基準電圧源130のスイッチをオフにした状態で行って、いくつか(例えば、3つ、5つ)の候補基準周波数において信号高調波を検出することができる。次いで、AC電圧(VO)内の信号高調波の振幅を、その数の候補基準周波数において決定して、どの候補基準周波数が、AC電圧(VO)の信号高調波によって及ぼされる影響が最も少ない可能性があるかを識別することができる。次いで、基準周波数(fR)を、識別された候補基準周波数に設定することができる。基準周波数のこの切り換えは、信号スペクトル内の有効基準周波数要素への影響を避ける、又は低減させることができ、これは、測定された基準信号を増大させ、精度を低減させる場合があり、不安定な結果を生じる場合がある。2419Hz以外で同じ特性を有するその他の周波数としては、例えば、2344Hz及び2679Hzが挙げられる。
【0053】
較正システム及び方法
上記のように、電圧測定装置によって生成された基準電圧(V
R)及び基準周波数(f
R)は、既知であり、基準電圧源130の出力で測定され得る(
図2)。出力電圧(V
O)は、上記の方程式(1)によって定義される。理想的な状況において、基準電圧(V
R)が既知である場合、必要とされる全ての他のパラメータは、I
O/I
R及びf
R/f
Oであり、その後、電圧測定装置の較正は、要求されないことになる。しかしながら、実際には、信号処理回路の帯域幅、リーク容量、及び測定装置に対する試験中の導体の特定の位置などのいくつかの影響因子が存在し、これらは、試験中の導体内の実際の出力電圧から出力される電圧測定値の偏差につながる。1つの因子は、センサ126(又は複数のセンサ)と環境との間の迷走リーク容量であり、これは、基準電流(
IR)の増加、したがって、比率I
O/I
Rの低減をもたらす傾向がある。また、センサ126と基準遮蔽体134との間の直接容量結合は、基準電流(I
R)を更に増加させるオフセットにつながる。このような理想状態からの基準電流(I
R)の増加は、試験中の導体内の実際の出力電圧未満である出力電圧(V
O)の計算をもたらす。故に、本明細書で論じられる較正システム及び方法は、結合容量(C
O)に、又は等価的に1つ以上のセンサの各々と試験中の導体との間の距離に依存する、決定された較正パラメータ又は係数を使用して、試験中の導体内の出力電圧(V
O)又は他のパラメータの正確な測定を可能にする。下で更に論じられるように、少なくともいくつかの実施形態では、複数のセンサが利用され、試験中の導体の位置は、複数のセンサによって測定される基準電流の三角測量によって決定される。
【0054】
図5は、電気パラメータ測定装置502(例えば、DMM、電流クランプ、スプリットコア変圧器)を較正するために使用することができる、例示的な較正システム500の概略ブロック図を示す。電気パラメータ測定装置502は、基準信号を生成及び感知する測定装置などの、任意の非接触又は接触測定装置とすることができる。較正システム500は、較正システムの種々の機能を制御する制御回路504を含むことができる。較正システム500はまた、較正電圧又は試験電圧を較正導体508に選択的に出力するように動作可能である、較正電圧源506を含み得る。制御回路504は、その動作を制御するために、較正電圧源506に動作的に結合することができる。較正システム500はまた、較正プロセス中に電気パラメータ測定装置502に対する較正導体508の位置を選択的に機械的に制御するように動作する、位置制御サブシステム510も含むことができる。較正導体508は、非接触電気パラメータ測定装置を較正する際に使用するための絶縁導体とすることができ、又は接触型電気パラメータ測定装置を較正する際に使用するための非絶縁導体とすることができる。
【0055】
較正システム500の制御回路504は、任意の適切な有線又は無線接続によって、電気パラメータ測定装置502に動作的に結合することができる。下で更に論じられるように、制御回路504は、命令若しくはデータを電気パラメータ測定装置502に送信するように、又はそこから命令若しくはデータを受信するように動作することができる。制御回路504は、位置制御サブシステム510を制御して、電気パラメータ測定装置の前端部又は測定端部の開口部又は受容部分内の較正導体508の位置を選択的に調整し、よって、複数のセンサの各々と較正導体との間の容量結合COを変動させて、複数のセンサのそれぞれの基準電流IRを修正して、較正導体508の複数の物理的場所の異なる較正点を取得する。
【0056】
一般に、制御回路504は、較正電圧源506、位置制御サブシステム510、及びプロセッサ実行可能命令又はデータの少なくとも1つを記憶する少なくとも1つの非一時的プロセッサ可読記憶媒体に通信的に結合された少なくとも1つのプロセッサを含むことができる。制御回路504は、1つ以上の中央処理ユニット(CPU)、デジタル信号プロセッサ(DSP)、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、プログラマブル論理コントローラ(PLC)、人工ニューラルネットワーク回路若しくはシステム、又は任意の他の離散若しくは統合論理構成要素などの、任意のタイプの処理ユニットを含むことができる。制御回路504に結合された非一時的プロセス可読記憶媒体は、任意の形式の非一時的揮発性及び/又は不揮発性メモリを含むことができる。
【0057】
少なくともいくつかの実施形態では、制御回路504は、通信インターフェース又はユーザインターフェースを含むことができる。ユーザインターフェースは、較正システム500とのユーザインタラクションを容易にすることができる。ユーザインターフェースは、任意の数の入力部(例えば、ボタン、ダイヤル、スイッチ、タッチセンサ)と、任意の数の出力部(例えば、ディスプレイ、LED、スピーカ、ブザー)と、を含むことができる。例えば、ユーザインターフェースは、較正システム500又は電気パラメータ測定装置502の1つ以上の調整可能な設定をオペレータが修正することを可能にする、入力部を含むことができる。通信インターフェースは、較正システム500が電気パラメータ測定装置502と、又は1つ以上のローカル若しくはリモート外部プロセッサベースの装置と通信することを可能にする、1つ以上の有線及び/又は無線通信技術(例えば、USB、Wi-Fi(登録商標)、Bluetooth(登録商標))を実装することができる。
【0058】
少なくともいくつかの実施形態では、電気パラメータ測定装置502の出力電圧(VO)の測定値は、測定された基準電流信号(IR)及び/又は試験中の導体内の実際の出力電圧に依存し得る。したがって、少なくともいくつかの実施形態では、本明細書で論じられる較正システム及び方法は、このようなパラメータの一方又は両方の補償を提供して、種々の電圧での出力電圧(VO)、及び電気パラメータ測定装置502に対する試験中の導体の種々の位置の正確な測定を可能にし、種々の位置は、電気パラメータ測定装置502の複数のセンサ(例えば、2つのセンサ、3つのセンサ)の基準電流(IR)のレベルの種々の組み合わせに対応する。
【0059】
一般に、較正プロセス中に、制御回路504は、較正電圧源506を制御して、既知の較正電圧(例えば、100VAC、250VAC、800VAC)を較正導体508に出力し、また、位置制御システム510を制御して、較正導体を、電気パラメータ測定装置502の前端部又は測定部分内の既知の位置(例えば、X/Y位置)に移動させる。制御回路504は、次いで、電気パラメータ測定装置502から、較正導体508内の較正電圧の測定中に電気パラメータ測定装置によって取得したデータを受信する。このようなデータは、複数のセンサの測定された基準電流信号(I
R)、決定された出力電圧(V
O)などを含むことができる。電気パラメータ測定装置502は、例えば、
図1A~
図4を参照して上で論じた様態で、このようなデータを取得することができる。このプロセスは、較正導体508が異なる位置に、及び任意選択で異なる較正電圧に位置付けられるたびに繰り返すことができる。
【0060】
較正導体508の複数の位置の各々について、及び1つ以上の較正電圧(例えば、100VAC、250VAC、800VAC)の各々について、制御回路504は、較正電圧と関連付けられた複数の較正点を取得することができる。少なくともいくつかの実施形態では、較正点の各々は、電気パラメータ測定装置のそれぞれ複数のセンサの各々の基準電流信号データ点、及び較正係数を含む。基準電流信号データ点は、電気パラメータ測定装置502のセンサから取得される測定値であり、測定値は、較正電圧源506が較正導体508内の較正電圧を出力したときに電気パラメータ測定装置のセンサによって測定される基準電流信号を示す。較正係数は、既知の較正電圧と、測定された未較正の出力電圧(VO)データ点との比率を示す値とすることができ、測データ点は、センサの(例えば、上記の式(1)を使用する)基準電流信号データ点に少なくとも部分的に基づいて電気パラメータ測定装置によって測定される、電気パラメータ測定装置のセンサから取得される。例えば、制御回路504が較正電圧源506に較正導体508内で100VACを出力させ、電気パラメータ測定装置502のセンサが110VACの出力電圧を測定した場合、較正係数は、100/110=0.909となる。特定の測定について、電気パラメータ測定装置502によって測定される未較正の出力電圧は、正しい出力電圧を提供するために、較正係数を乗算することができる。上記の例を続けると、110VACの未較正の出力電圧は、100VACの実際の出力電圧を試験中の導体内に提供するために、0.909の較正係数を乗算することができる。
【0061】
下で更に論じられるように、較正点を取得した後に、制御回路504は、取得した複数の較正点に基づいて、電気パラメータ測定装置502の較正データを決定することができる。較正データは、電気パラメータ測定装置の複数のセンサによって測定される基準電流信号に依存し得る。少なくともいくつかの実施形態では、較正データはまた、複数の較正電圧に依存し得る。制御回路504は、次いで、電気パラメータ測定装置又は(例えば、同じ又は類似する物理的特性を有する)他の電気パラメータ測定装置によって、以降のその動作中に使用するために、較正データを、電気パラメータ測定装置502と関連付けられた少なくとも1つの非一時的プロセッサ可読記憶媒体に記憶することができる。較正データは、例えば、1つ以上の数式について、1つ以上のルックアップテーブル及び/又は係数を含むことができる。
【0062】
図6は、試験中の導体610の位置を決定するために使用することができる、ガード602に配置された3つの導電センサ604、606、及び608を示す、電気パラメータ測定装置のV字形状の前端部600の概略図である。また、センサ604、606、及び608によって測定される基準電流612、614、及び616の大きさもそれぞれ示され、各一定の大きさの基準電流は、基準電流の一定の大きさを示す特定の距離を有する円弧破線として表され、基準電流は、センサによって決定される試験中の導体610の可能な位置を示す。示されるように、3つの基準電流612、614、及び616は、試験中の導体610のX/Y場所で交差する。したがって、3つのセンサ604、606、及び608の基準電流612、614、及び616の三角測量を使用して、試験中の導体610の場所を正確に決定することができる。
【0063】
下で更に論じられるように、場所の決定は、電気パラメータ測定装置の電気パラメータ測定に適用されるべき較正係数を選択又は導出するために使用することができる。例えば、従来の較正プロセスは、試験中の導体の任意の可能な位置の較正係数を指定する、較正グリッドなどの一組の別々のデータ点を定義するために実装することができる。較正プロセスは、位置座標、センサ604、606、及び608の各々の基準電流IREF1、IREF2、IREF3のそれぞれ、及び電気パラメータ(例えば、電流、電圧、電力)の測定値に適用されるべき補正量を示す較正係数(例えば、VCAL1、VCAL2、VCAL3)をもたらすことができる。上記の式(1)と同様に、未知の信号電圧VOは、以下のように計算することができる。
【0064】
【数2】
式中、V
CALXは、センサX(すなわち、X=1、2、3)の較正係数であり、I
OXは、各センサからの信号電流であり、f
OXは、3つのセンサの各々によって測定される信号周波数(例えば、50Hz、60Hz)であり、V
REFは、電気パラメータ測定装置内部で生成されるコモンモード基準電圧であり、f
Rは、基準電圧の周波数である。
【0065】
図7は、試験中の導体708の位置を決定するために使用することができるガード702に配置された2つの導電センサ704及び706を示す、電気パラメータ測定装置のV字形状の前端部700の概略図であり、2つの導電センサの位置は、試験中の導体の正確な位置の決定を可能にする。対照的に、
図8は、試験中の導体808の位置を決定するために使用することができるガード802に配置された2つの導電センサ804及び806を示す、電気パラメータ測定装置のV字形状の前端部800の概略図であり、2つの導電センサの位置は、試験中の導体の曖昧な又は不正確な位置の決定を生じさせる場合がある。
【0066】
図7を参照すると、センサ704は、ガード702の底部又は基部部分に位置付けられ、センサ706は、ガードの左側又は(示されるように)その一部分に位置付けられる。第1の曲線状の破線710は、センサ704によって検出された一定の基準電流の大きさを表し、第2の曲線状の破線712は、センサ706によって検出された一定の基準電流の大きさを表す。示されるように、曲線710及び712は1つの場所だけで交差し、これが試験中の導体708の場所である。すなわち、曲線710及び712の他の理論的な交差部は、V字形状のガード702の外側になり、したがって、その場所が試験中の導体708の可能な場所でないので、測定装置によって無視することができる。したがって、曲線710及び712の1つの可能な交差部だけしか存在しないので、測定装置は、試験中の導体708の場所を正確に決定することができる。
【0067】
以下、
図8を参照すると、センサ804は、ガード802の左側又は(示されるように)その一部分に位置付けられ、センサ806は、左側に対向してガードの右側又は(示されるように)その一部分に位置付けられる。第1の曲線状の破線810は、センサ804によって検出された一定の基準電流の大きさを表し、第2の曲線状の破線812は、センサ806によって検出された一定の基準電流の大きさを表す。示されるように、曲線810及び812は、2つの場所、即ち、試験中の導体808の実際の場所、及びガードの基部に向かって第2の場所809で交差する。このシナリオでは、測定装置は、2つの交差点が存在するので、導体808がどちらの場所に位置付けられているのかを決定することが困難であり得る。この問題は、
図7の実施例のように、ガードの内側に1つの曲線だけしか存在しないように2つのセンサの場所を慎重に選択することによって、又は、上で論じた
図6の実施例のように、3つのセンサを使用することによって改善することができる。
【0068】
図9は、平面ガード902上で互いに同一平面上にあり、試験中の導体908の位置を決定するために使用することができる2つの導電センサ904及び906を示す、電気パラメータ測定装置の前端部900の概略図である。一定の基準電流曲線910及び912もまた、それぞれ、センサ904及び906について示される。センサ904及び906を互いに関して同一平面上に配置することによって、曲線910及び912は、1つの許容可能な場所(即ち、ガード902の上側)だけで互いに交差し、それによって、
図8に示される実施例のように、一定の基準電流曲線が2つの許容可能な場所で交差するように配設された2つのセンサによって生じ得る曖昧性を避ける。
【0069】
図10は、試験中の導体1010の種々の可能な位置1012を示す、ガード1002に配置された3つの導電センサ1004、4006、及び1008を含む電気パラメータ測定装置のV字形状の前端部1000の概略図である。種々の位置1012は、較正データを取得するために較正プロセス中に使用することができる較正位置又はポイントとすることができる。例えば、較正導体が較正位置1012の各々に位置付けられたときに、電気パラメータ測定装置は、較正導体のX/Y位置、センサ1004、1006、及び1008の各々の基準電流I
REFX、並びに正確なパラメータ測定を取得するために適用されるべき修正を示す較正係数CALFACを取得することができる。
【0070】
図11は、種々のX/Y位置における
図10の3つの導電センサ1004(センサ1)、1006(センサ2)、及び1008(センサ3)の位置依存的な較正係数を示す表1100である。示されるように、各X/Y位置について、3つのセンサ1004(センサ1)、1006(センサ2)、及び1008(センサ3)の基準電流IREFX及び較正係数VCALXが決定される。
【0071】
図12は、試験中の導体が導電センサから種々の距離(DIST:距離)に位置付けられたときの、単一の導電センサ(例えば、センサ1004、1006、又は1008のうちの1つ)の位置依存的な較正係数(CALF)及び基準電流信号(ref_pk)を示す表1200である。
図13は、ミリメートル(mm)の距離の関数として、基準電流信号(ref_pk)及び較正係数(CALF)をグラフィカルに示す、グラフ1300である。示されるように、基準信号は、距離と共に急激に減少し、較正係数は、距離と共に増加する。
【0072】
グラフ1300から、基準電流(ref_pk)が1/xの挙動のいくつかの形態を呈することは明らかである。したがって、簡略化され、最適に正確な表現を導出するために、基準電流の逆数、即ち1/ref_pkを示すことが有利であり得る。
図14は、基準電流信号の逆数の線形近似値、即ち1/ref_pk、及び距離の関数としての較正係数CALFの二次近似を示すグラフ1400である。線形近似及び二次近似について、それぞれ、0.9957及び0.999のR
2値によって示されるように、近似は、距離の関数として、基準電流信号及び較正係数のそれぞれの逆数を正確に表す。
【0073】
図15は、基準電流信号の逆数、即ち1/ref_pkの関数としての較正係数(CALF)のグラフである。示されるように、点は、1.000のR
2値を有する二次関数に密にフィットさせることによって近似される。
【0074】
図16A及び16Bは、説明的な目的でそれぞれ左センサ及び右センサと称される2つの細長い導電センサ1604及び1606を支持するV字形状のガード1602を含む、電気パラメータ測定装置の前端部1600の一部分を示す。特に、ガード1602は、(示されるように)左センサ1604を支持する左側部分1602aと、右側センサ1606を支持する右側部分1602bと、を含む。センサ1604及び1606の各々は、長さ寸法及び幅寸法を有し、長さ寸法は、幅寸法よりも大きい。非限定的な例として、長さと幅との比率は、1.5:1、2:1、4:1、8:1、20:1、100:1などとすることができる。センサ1604及び1606が細長いので、検出された信号の変動だけが、試験中の導体とセンサの各々との間の垂直距離に由来すると想定又は推定することができ、よって、一定の垂直距離における横方向移動によって生じる影響を無視することができる。
【0075】
基準電流ref_pk及び較正係数CALFの距離依存を表す際の数学的な簡略化に基づいて、V字形状の前端部1600の領域内にフィットする測定グリッドを生成することができる。1つの例において、センサ1604は、X/Y座標系において、点A(X=-2、Y=-35)から点B(X=-35、Y=+45)まで延在する、直線セグメントであると想定され、センサ1606は、X/Y座標系において、点A’(X=+2、Y=-35)から点B’(X=+35、Y=+45)まで延在する直線セグメントであると想定される。点ごとに、左センサ1604及び右センサ1606までの垂直距離を算出し、基準電流ref_pk及び較正係数CALFを導出することができる。右センサ1606の結果として生じた較正係数の三次元表現は、
図17のグラフに示される。
【0076】
図18は、Y位置をy=+40に固定したときの種々のX位置に関する、垂直距離の関数としての、センサ1604及び1606の基準電流信号ref_pk1及びref_pk2並びに較正係数CALF1及びCALF2をそれぞれ例示するグラフ1800である。
【0077】
図16A及び16Bに示されるような2Dのセンサ配設によって、任意の測定は、基準電流及び対応する信号測定について、1つのセンサあたり1つの値を提供する。このような情報を使用することで、測定装置は、適切な較正係数を決定して、センサまでの距離(例えば、垂直距離)の変動を補償することができる。加えて、少なくともいくつかの実施形態では、測定装置は、このような情報を利用して、試験中の導体の特定のX/Y位置を決定することができる。
【0078】
図19は、基準電流信号から導出される垂直距離を使用して試験中の導体の位置を決定する一実施例を示す。
図19において、センサ配設1900は、V字形状に配設された左センサ1902及び右センサ1904を含むように示される。試験中の導体1910は、位置Pにおいてセンサ1902と1904との間に示される。
図18のグラフ1800に示されるように、基準電流ref_pkは、既知の垂直距離を使用して計算することができる。ここで、目的は、測定された基準電流信号から垂直距離情報を導出することであり、これは、
図18に示される関数の逆関数を必要とする。元々の関数(ref_pk1及びref_pk2)が狭義単調であるので、それぞれの固有の逆関数を決定することができる。次いで、この逆関数は、測定された基準電流に適用して、通常の距離情報を取得することができる。示される実施例において、破線1906は、センサ1902から決定される垂直距離を示し、及び破線1908は、センサ1904から決定される垂直距離を示す。線1906及び1908の交差部は、試験中の導体1910の場所Pを示す。場所は、電気パラメータ測定装置の測定値に適用してその精度を改善するために1つ以上の位置依存的な較正係数を決定することが挙げられるが、これに限定されない、様々な目的で使用することができる。
【0079】
本明細書で論じられるセンサのV字形状の配設内の任意の所与の点の場合は、第1のセンサ(ref_pk1)について1つの基準電流値を導出することができ、第2のセンサ(ref_pk2)について1つの基準電流値を導出することができる。これらの値に基づいて、補間によること、又は、以前に近似した適合関数若しくは他の数式を利用すること、のいずれかによって、別個の較正係数を決定することができる。2つの(又は2つ以上の)較正係数を使用して、測定値(例えば、電圧)の2つの(又は2つ以上の)結果を計算することができる。
【0080】
少なくともいくつかの実施形態において、測定装置は、結果の加重組み合わせを利用することができ、又は、較正係数のうちの1つが決定された範囲外にある場合には、1つの結果だけを使用することができる。加重組み合わせは、線形加重組み合わせ、指数加重組み合わせなどとすることができる。
【0081】
非限定的な例として、より大きい較正係数がより大きい距離及びより不正確な測定値を示すので、装置は、1.5を超える較正係数を無視するように構成することができる。このような例において、有用な較正係数は、1.0~1.5の範囲に決定することができ、1.0により近い較正係数は、1.5により近い較正係数よりも良好であると考えられる。したがって、1.0の加重が1.0の較正係数に適用され、0.0の加重が1.5の較正係数に適用されるように、線形又は他の加重を適用することができる。例えば、加重測定結果は、以下の式を用いて見出すことができる。
【0082】
【数3】
ここで、各較正係数の加重は、式W(calfX)=2×(1.5-calfX)を使用して線形に加重され、2つのセンサの測定結果は、Sns1_result及びSns2_resultである。実際には、較正係数の適切な限度は、特定の器具又は器具のタイプについて取得した実際の較正データを使用して決定することができる。
【0083】
図20は、
図20に示される例示的な導体2008a、2008b、及び2008cなどの試験中の導体を受容するようにサイズ決定及び寸法決定される、選択的に閉じてそれらの間に開口部を形成する第1のクランプ部分2002及び第2のクランプ部分2004を含む、クランプメータの前端部2000の絵図である。この実施例において、前端部2000は、試験中の導体2008の正確な場所を決定するために、及び/又はクランプメータの測定値を改善するために適用するための1つ以上の較正係数を決定するために使用することができる、3つの「点」センサ2006a、2006b、及び2006cを含む。例示される実施形態において、センサ2006は、比較的小さくすることができ(例えば、3×3mm)、これは、
図16A及び16Bに示される線形センサ1604及び1606によって提供される線形の変動ではなく、検出された信号の実質的に放射状の変動を提供する。センサ2006は、試験中の導体の位置を最も正確に決定することができる場所に戦略的に位置付けることができる。
【0084】
上で説明した技術を使用して、センサ2006a、2006b、及び2006cの各々について基準電流信号を取得することができ、信号は、上で論じたように処理して、試験中の導体のX/Y場所を決定することができ、これらの情報は、較正又は他の目的に使用することができる。例えば、上で論じたように、取得した基準電流信号及び以前に決定した較正係数を使用してX/Y場所及び/又は構成係数を決定するために、補間プロセスを使用することができる。
【0085】
前述の詳細な説明では、ブロック図、概略図、及び実施例を使用して、装置及び/又はプロセスの種々の実施形態を説明してきた。このようなブロック図、系統図、及び実施例が1つ以上の機能及び/又は動作を含む限り、このようなブロック図、フロー図、又は実施例内のそれぞれの機能及び/又は動作は、広範囲にわたるハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、又はこれらの実質的に任意の組み合わせにより、個別にかつ/又は集合的に実装することができることが、当業者には理解されるであろう。一実施形態では、特定用途向け集積回路(ASIC)を介して、本発明の主題を実施してよい。しかし、本明細書で開示する実施形態が、全部、又は一部を問わず、1つ以上のコンピュータ上で実行される1つ以上のコンピュータプログラムとして(例えば、1つ以上のコンピュータシステム上で実行される1つ以上のプログラムとして)、1つ以上の制御装置(例えば、マイクロコントローラ)上で実行される1つ以上のプログラムとして、1つ以上のプロセッサ(例えば、マイクロプロセッサ)上で実行される1つ以上のプログラムとして、ファームウェアとして、又はこれらの実質的に任意の組み合わせとして標準的な集積回路内で同等に実装することができ、ソフトウェア及び/又はファームウェアについての回路設計及び/又はコード書き込みであれば、十分に、本開示に照らして当該技術分野における当業者の知識の範囲内になることを当業者は認識するであろう。
【0086】
当業者は、本明細書に記載する方法又はアルゴリズムの多くが付加的な行為を採用することができ、一部の行為を省略することができ、かつ/又は行為を指定された順番と異なる順番で実行することができることを、理解するであろう。
【0087】
更に、当業者は、本明細書で教示する機構が、種々の形態でプログラム製品として流通可能であり、代表的な実施形態が、流通を実際に実行するために使用される特定の形式の信号担持媒体に関係なく等しく適用されることを、認識するであろう。信号担持媒体の例としては、以下のもの、即ち、フロッピーディスク、ハードディスクドライブ、CD-ROM、デジタルテープ、及びコンピュータメモリなどの記録可能な形式の媒体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0088】
上述した種々の実施形態を組み合わせて、更なる実施形態を提供してもよい。上記の説明を考慮すれば、実施形態へのこれらの変更及びその他の変更を行うことができる。通常、以下の請求項において使用する用語は、明細書及び請求項に開示された特定の実施形態に対する請求項を限定するものと解釈すべきではないが、こうした請求項に権利を与えた等価物の全範囲と共に全ての考えられる実施形態を含むものと解釈すべきである。したがって、請求項は、開示によって制限されるものではない。