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特許7396813開回路電圧計測方法、開回路電圧計測装置、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-04
(45)【発行日】2023-12-12
(54)【発明の名称】開回路電圧計測方法、開回路電圧計測装置、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/385 20190101AFI20231205BHJP
   G01R 31/367 20190101ALI20231205BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20231205BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20231205BHJP
【FI】
G01R31/385
G01R31/367
H01M10/48 P
H02J7/00 P
H02J7/00 B
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019105876
(22)【出願日】2019-06-06
(65)【公開番号】P2020201044
(43)【公開日】2020-12-17
【審査請求日】2022-01-17
(73)【特許権者】
【識別番号】514136668
【氏名又は名称】パナソニック インテレクチュアル プロパティ コーポレーション オブ アメリカ
【氏名又は名称原語表記】Panasonic Intellectual Property Corporation of America
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100118049
【弁理士】
【氏名又は名称】西谷 浩治
(72)【発明者】
【氏名】井本 淳一
(72)【発明者】
【氏名】阪田 隆司
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 康介
【審査官】島▲崎▼ 純一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/051722(WO,A1)
【文献】特開2017-159727(JP,A)
【文献】特開2009-219290(JP,A)
【文献】国際公開第2011/059025(WO,A1)
【文献】特開2019-074501(JP,A)
【文献】特開2004-289976(JP,A)
【文献】特開2013-211601(JP,A)
【文献】特開2008-191103(JP,A)
【文献】特開2011-036042(JP,A)
【文献】特開2012-055115(JP,A)
【文献】特開2016-220498(JP,A)
【文献】特開2017-046490(JP,A)
【文献】特開平09-243716(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/385
G01R 31/367
H01M 10/48
H02J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次電池の開回路電圧を計測する開回路電圧計測装置における開回路電圧計測方法であって、
(a)前記二次電池と充電器との接続を検知し、
(b)前記接続を検知した場合、前記二次電池の状態が安定したか否かを判定し、
(c)前記二次電池の状態が安定したと判定した場合、前記二次電池の充電前の開回路電圧である第1開回路電圧を計測し、
(d)前記二次電池の充電開始を前記充電器に指示し、
(e)前記二次電池の充電の終了を検知し、
(f)前記二次電池の充電の終了を検知した場合、前記二次電池の状態が安定したか否かを判定し、
(g)前記二次電池の状態が安定したと判定した場合、前記二次電池の充電後の開回路電圧である第2開回路電圧を計測し、
(h)前記二次電池の前記第2開回路電圧が計測されるまでの充電状態の終了をユーザに通知し、
前記(a)の処理の後に、所定の学習モデルの学習が終了しているか否かを判定し、
学習が終了したと判定された場合、前記(d)、(e)の処理及び前記二次電池の充電の終了をユーザに通知する処理を実行し、
学習が終了していないと判定された場合、前記(b)から(h)までの処理を実行する、
開回路電圧計測方法。
【請求項2】
前記充電状態は、前記充電器の前記二次電池への接続が検知されてから、前記第2開回路電圧が計測されるまでの状態である、
請求項1記載の開回路電圧計測方法。
【請求項3】
さらに、前記充電器と前記二次電池との接続を検知した場合、前記二次電池の残容量に基づいて、前記(g)に示す前記第2開回路電圧の計測が終了する第1時刻を予測し、
さらに、前記二次電池に対する前記ユーザの使用履歴を取得し、
さらに、前記使用履歴に基づいて、前記充電器への接続を検知した後に前記ユーザが前記二次電池の使用を開始する第2時刻を予測し、
さらに、前記第1時刻が前記第2時刻よりも前である場合、前記(b)、(c)、(f)、(g)、及び(h)の処理を実行する、
請求項1又は2記載の開回路電圧計測方法。
【請求項4】
前記第1開回路電圧及び前記第2開回路電圧は、所定の学習モデルの学習に使用され、
前記(b)、(c)、(f)、(g)、及び(h)の処理は、前記学習モデルの学習が終了するまで実行される、
請求項1~3のいずれかに記載の開回路電圧計測方法。
【請求項5】
さらに、前記第1開回路電圧及び前記第2開回路電圧を出力する、
請求項1~のいずれかに記載の開回路電圧計測方法。
【請求項6】
前記(b)では、前記二次電池の放電の終了を検知してから第1所定時間が経過した場合、前記二次電池の状態が安定したと判定し、
前記(f)では、前記二次電池の充電の終了を検知してから第2所定時間が経過した場合、前記二次電池の状態が安定したと判定する、
請求項1~のいずれかに記載の開回路電圧計測方法。
【請求項7】
前記(b)及び前記(f)では、前記二次電池の電圧変化が電圧閾値以下になった場合、前記二次電池の状態が安定したと判定する、
請求項1~のいずれかに記載の開回路電圧計測方法。
【請求項8】
前記(d)において前記充電開始の指示が行われた場合、前記充電器は前記二次電池に電力の供給を開始する、
請求項1~のいずれかに記載の開回路電圧計測方法。
【請求項9】
前記二次電池は、電動自動車に搭載される、
請求項1~のいずれかに記載の開回路電圧計測方法。
【請求項10】
二次電池の開回路電圧を計測する開回路電圧計測装置であって、
前記二次電池と充電器との接続を検知する第1検知部と、
前記第1検知部が前記接続を検知した場合、前記二次電池の状態が安定したか否かを判定する第1判定部と、
前記第1判定部が前記二次電池の状態が安定したと判定した場合、前記二次電池の充電前の開回路電圧である第1開回路電圧を計測する第1計測部と、
前記二次電池の充電開始を前記充電器に指示する指示部と、
前記二次電池の充電の終了を検知する第2検知部と、
前記第2検知部が前記二次電池の充電の終了を検知した場合、前記二次電池の状態が安定したか否かを判定する第2判定部と、
前記第2判定部が前記二次電池の状態が安定したと判定した場合、前記二次電池の充電後の開回路電圧である第2開回路電圧を計測した後、前記二次電池の前記第2開回路電圧が計測されるまでの充電状態の終了をユーザに通知する第2計測部と、
前記第1検知部の処理の後に、所定の学習モデルの学習が終了しているか否かを判定する学習要否判定部とを備え、
前記学習要否判定部は、
前記学習が終了したと判定された場合、前記指示部の処理と、前記第2検知部の処理と、前記二次電池の充電の終了をユーザに通知する処理とを実行し、
前記学習が終了していないと判定された場合、前記第1判定部の処理と、前記第1計測部の処理と、前記指示部の処理と、前記第2検知部の処理と、前記第2判定部の処理と、前記第2計測部の処理とを実行する、
開回路電圧計測装置。
【請求項11】
二次電池の開回路電圧を計測する開回路電圧計測装置としてコンピュータを機能させるプログラムであって、
前記二次電池と充電器との接続を検知する第1検知部と、
前記第1検知部が前記接続を検知した場合、前記二次電池の状態が安定したか否かを判定する第1判定部と、
前記第1判定部が前記二次電池の状態が安定したと判定した場合、前記二次電池の充電前の開回路電圧である第1開回路電圧を計測する第1計測部と、
前記二次電池の充電開始を前記充電器に指示する指示部と、
前記二次電池の充電の終了を検知する第2検知部と、
前記第2検知部が前記二次電池の充電の終了を検知した場合、前記二次電池の状態が安定したか否かを判定する第2判定部と、
前記第2判定部が前記二次電池の状態が安定したと判定した場合、前記二次電池の充電後の開回路電圧である第2開回路電圧を計測した後、前記二次電池の前記第2開回路電圧が計測されるまでの充電状態の終了をユーザに通知する第2計測部と、
前記第1検知部の処理の後に、所定の学習モデルの学習が終了しているか否かを判定する学習要否判定部として前記コンピュータを機能させ、
前記学習要否判定部は、
前記学習が終了したと判定された場合、前記指示部の処理と、前記第2検知部の処理と、前記二次電池の充電の終了をユーザに通知する処理とを実行し、
前記学習が終了していないと判定された場合、前記第1判定部の処理と、前記第1計測部の処理と、前記指示部の処理と、前記第2検知部の処理と、前記第2判定部の処理と、前記第2計測部の処理とを実行する、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、二次電池の開回路電圧を計測する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電動自動車の普及に伴い、二次電池の寿命を正確に求めるニーズが高まっており、種々の技術が提案されている。例えば、特許文献1には、学習済みのニューラルネットワークに判定対象となる二次電池の開回路電圧などのパラメータを入力することで、前記二次電池の使用時点における寿命を判定する技術が開示されている。この文献では、複数の使用経過時点における学習用二次電池の開回路電圧などのパラメータを計測すると共に、学習用二次電池の各使用時点における寿命を求め、各使用経過時点におけるパラメータ及び寿命をニューラルネットワークに与えることによって、ニューラルネットワークが学習されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平9-243716号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1では、判定対象の二次電池の開回路電圧が計測されているが、開回路電圧を計測するためには、判定対象の二次電池の状態が安定している必要がある。そのため、特許文献1において、判定対象の二次電池の開回路電圧を計測するには、ユーザに対して、放電終了後に充電開始を待機させたり、充電終了後に二次電池の使用を待機させたりする必要がある。その結果、特許文献1において、ユーザにストレスを与えることなく、判定対象の二次電池の開回路電圧を計測するにはさらなる改善が必要である。
【0005】
本開示は、ユーザにストレスを掛けずに二次電池の開回路電圧を計測する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は、二次電池の開回路電圧を計測する開回路電圧計測装置における開回路電圧計測方法であって、(a)前記二次電池と充電器との接続を検知し、(b)前記接続を検知した場合、前記二次電池の状態が安定したか否かを判定し、(c)前記二次電池の状態が安定したと判定した場合、前記二次電池の充電前の開回路電圧である第1開回路電圧を計測し、(d)前記二次電池の充電開始を前記充電器に指示し、(e)前記二次電池の充電の終了を検知し、(f)前記二次電池の充電の終了を検知した場合、前記二次電池の状態が安定したか否かを判定し、(g)前記二次電池の状態が安定したと判定した場合、前記二次電池の充電後の開回路電圧である第2開回路電圧を計測し、(h)前記二次電池の充電の終了をユーザに通知する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、ユーザにストレスを掛けずに二次電池の開回路電圧を計測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示の開回路電圧計測装置の全体構成を示すブロック図である。
図2図1に示す電池パックの構成の一例を示すブロック図である。
図3】充電器の構成の一例を示すブロック図である。
図4】サーバの構成の一例を示すブロック図である。
図5】本開示の実施の形態に係る開回路電圧計測装置の動作の一例を示すフローチャートである。
図6図5に続くフローチャートである。
図7図6のOCV取得モードの可否の判定処理の一例を示すフローチャートである。
図8】ログデータベースのデータ構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(本開示に至る経緯)
本発明者は、二次電池の充電状態(SOC:state of charge)及び劣化状態(SOH;state of health)などを算出し、得られた値を正解データとする機械学習を行い、二次電池の各種状態を予測する機械学習モデルの開発を検討している。
【0010】
SOC及びSOHを実測するためには、二次電池の開回路電圧(OCV;open circuit voltage)を精度良く計測する必要がある。OCVは安定状態下での二次電池の開放端電圧であるため、放電直後及び充電直後には計測することができず、安定状態に達するまで放電及び充電をせずに停止させる必要がある。
【0011】
しかし、二次電池が安定状態に達するまでには長時間(例えば、2~3時間)を要するため、実使用下において二次電池のOCVを計測するのは容易ではない。例えば、電気自動は、晩の帰宅時に直ぐに充電が開始され、翌朝の充電終了後に直ぐに使用が開始されるケースが多い。
【0012】
したがって、電気自動車に搭載された二次電池のOCVを計測するためには、ユーザは、帰宅後、二次電池が安定状態に到達するのを待ってから電気自動車へ充電器を接続することが要求される。これでは、ユーザにストレスを掛けてしまう。一方、二次電池への充電終了直後に充電の終了をユーザに告げると、二次電池の状態が安定する前に二次電池がユーザによって使用される可能性が高くなる。これでは、充電終了後のOCVを正確に計測できなくなる。したがって、電気自動車において、二次電池のOCVは計測されていないのが実状である。
【0013】
このことは、ノートパソコンなどのモバイル機器においても同様である。例えば、モバイル機器では、外出先では電源ケーブルが取り外されているが、外出先において適宜使用されて二次電池が放電状態になるため、二次電池が安定状態になり難い。また、モバイル機器は外出先から戻ると直ぐに受電ケーブルに接続されるケースが多い。したがって、モバイル機器においても、事実上、OCVを計測することが困難である。
【0014】
上述の特許文献1では、判定対象の二次電池のOCVを学習済みのニューラルネットワークに入力することで、判定対象の二次電池の寿命が判定されている。しかし、特許文献1では、判定対象の二次電池のOCVをどういう状況下で計測するかについての詳細な開示はないため、実使用下において、ユーザにストレスを掛けることなく、判定対象の二次電池のOCVを計測することはできない。
【0015】
そこで、本発明者、上記課題を解決するために下記に示す各態様を想到するに至った。
【0016】
本開示の一態様は、二次電池の開回路電圧を計測する開回路電圧計測装置における開回路電圧計測方法であって、(a)前記二次電池と充電器との接続を検知し、(b)前記接続を検知した場合、前記二次電池の状態が安定したか否かを判定し、(c)前記二次電池の状態が安定したと判定した場合、前記二次電池の充電前の開回路電圧である第1開回路電圧を計測し、(d)前記二次電池の充電開始を前記充電器に指示し、(e)前記二次電池の充電の終了を検知し、(f)前記二次電池の充電の終了を検知した場合、前記二次電池の状態が安定したか否かを判定し、(g)前記二次電池の状態が安定したと判定した場合、前記二次電池の充電後の開回路電圧である第2開回路電圧を計測し、(h)前記二次電池の充電の終了をユーザに通知する。
【0017】
本構成によれば、充電器の接続が検知された場合において、直ぐに充電を開始させるのではなく、二次電池の状態が安定するまで待機した後に二次電池の充電を開始させる。これにより、本構成は、二次電池の状態が安定するまで、充電器の接続をユーザに待機させることなく、第1開回路電圧を正確に計測できる。
【0018】
さらに、本構成は、二次電池の充電が終了した場合、直ぐに二次電池の充電終了をユーザに通知するのではなく、二次電池の状態が安定してから二次電池の充電の終了をユーザに通知する。これにより、本構成は、充電終了後に二次電池の状態が安定する前にユーザが二次電池の使用を開始することを抑制でき、第2開回路電圧を正確に計測できる。以上により、本構成は、ユーザにストレスを掛けることなく開回路電圧を正確に計測できる。
【0019】
上記態様において、さらに、前記充電器と前記二次電池との接続を検知した場合、前記二次電池の残容量に基づいて、前記(g)に示す前記第2開回路電圧の計測が終了する第1時刻を予測し、さらに、前記二次電池に対するユーザの使用履歴を取得し、さらに、前記使用履歴に基づいて、前記充電器への接続を検知した後に前記ユーザが前記二次電池の使用を開始する第2時刻を予測し、さらに、前記第1時刻が前記第2時刻よりも前である場合、前記(b)、(c)、(f)、(g)、及び(h)の処理を実行してもよい。
【0020】
本構成によれば、ユーザによる二次電池の使用開始が予測される第2時刻までに、第2開回路電圧の計測が終了しない場合、(b)、(c)、(f)、(g)、及び(h)の処理が実行されない。これにより、開回路電圧の計測がライフサイクルに合わないようなユーザに対して開回路電圧を計測するための一連の処理が実行されることを防止できる。
【0021】
上記態様において、前記第1開回路電圧及び前記第2開回路電圧は、所定の機械学習モデルの学習に使用され、前記(b)、(c)、(f)、(g)、及び(h)の処理は、前記機械学習モデルの学習が終了するまで実行されてもよい。
【0022】
本構成によれば、所定の機械学習モデルの学習が終了すると、開回路電圧を計測するための一連の処理が実行されなくなるため、二次電池が充電器に接続されてから二次電池の充電が終了されるまでに要する時間を短縮できる。
【0023】
上記態様において、さらに、前記第1開回路電圧及び前記第2開回路電圧を出力してもよい。
【0024】
本構成によれば、第1開回路電圧及び第2開回路電圧が出力されるため、機械学習モデルを学習するうえで有用なデータを出力できる。
【0025】
上記態様において、前記(b)では、前記二次電池の放電の終了を検知してから第1所定時間が経過した場合、前記二次電池の状態が安定したと判定し、前記(f)では、前記二次電池の充電の終了を検知してから第2所定時間が経過した場合、前記二次電池の状態が安定したと判定してもよい。
【0026】
本構成によれば、充電器の接続が検知されてから所定時間が経過した場合、二次電池の状態が安定したと判定され、二次電池の充電の終了が検知されてから所定時間が経過した場合、二次電池の状態が安定したと判定される。そのため、二次電池の状態が安定したか否かの判定を簡便な処理で実現できる。
【0027】
上記態様において、前記(b)及び前記(f)では、前記二次電池の電圧変化が電圧閾値以下になった場合、前記二次電池の状態が安定したと判定してもよい。
【0028】
本構成によれば、二次電池の電圧変化が閾値以下になった場合、二次電池の状態が安定したと判定されるため、二次電池の状態が安定したか否かの判定を正確に行うことができる。
【0029】
上記態様において、前記(d)において前記充電開始の指示が行われた場合、前記充電器は前記二次電池に電力の供給を開始してもよい。
【0030】
本構成によれば、充電器の接続が検知されても充電開始が指示されるまで、二次電池が通電されないため、第1開回路電圧を正確に計測できる。
【0031】
上記態様において、前記二次電池は、電動自動車に搭載されてもよい。
【0032】
本構成によれば、従来、計測が困難であった電動自動車において第1開回路電圧及び第2開回路電圧を正確に計測できる。
【0033】
本開示は、このような開回路電圧計測方法に含まれる特徴的な各構成を実行する開回路電圧計測装置、及びこのような開回路電圧計測方法に含まれる特徴的な各構成をコンピュータに実行させるプログラムとして実現することもできる。また、このようなプログラムを、CD-ROM等のコンピュータ読取可能な非一時的な記録媒体あるいはインターネット等の通信ネットワークを介して流通させることができるのは、言うまでもない。
【0034】
なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも本開示の一具体例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、構成要素、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本開示を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。また全ての実施の形態において、各々の内容を組み合わせることもできる。
【0035】
(実施の形態)
図1は、本開示の開回路電圧計測装置の全体構成を示すブロック図である。開回路電圧計測装置は、電池パック10、充電器20、及びサーバ30を含む。電池パック10及び充電器20は、通信路50を経由して通信可能に接続されている。通信路50は、電池パック10及び充電器20が通信するための所定の通信規格にしたがった通信路である。通信路50は、例えば、充電ケーブル240(図3)に設けられた有線である。但し、これは一例であり、通信路50は、無線であってもよい。通信路50は、例えば、USBであってもよいし、ブルーツース(登録商標)であってもよいし、有線LANであってもよいし、無線LANであってもよい。
【0036】
充電器20及びサーバ30はネットワーク40を経由して通信可能に接続されている。ネットワーク40は、例えばインターネットである。
【0037】
電池パック10は、例えば車両に搭載されている。車両は、例えば、電動自動車である。但し、これは一例であり、車両は、例えばハイブリッド自動車であってもよい。電池パック10は、車両の動力源となる二次電池190(図2参照)を含む。電池パック10は、充電器20を経由して、サーバ30と通信する。但し、これは一例であり、電池パック10は、ネットワーク40に接続可能な通信装置を備えている場合、充電器20を経由せずに、直接サーバ30と通信してもよい。
【0038】
充電器20は、商用電力からの電力を電池パック10に供給することで、二次電池190を充電する。充電器20は、例えば、電池パック10が搭載された車両の所有者の自宅に設置されている。なお、車両が会社などの団体に所有されている場合、充電器20は団体の建物に設置されていてもよい。
【0039】
サーバ30は、例えば1以上のコンピュータで構成されている。サーバ30は、電池パック10から送信されたログデータを取得して、ログデータベース321(図4参照)を構築する。これによって、サーバ30は、電池パック10を管理する。サーバ30は、電池パック10に対して各種コマンドを送信し、電池パック10の制御が可能である。
【0040】
図1では、1つの電池パック10及び1つの充電器20が図示されているが、これは一例であり、開回路電圧計測装置は、複数の電池パック10及び複数の充電器20を含んでもよい。この場合、サーバ30は、ネットワーク40を介して、各電池パック10の識別子及び各充電器20の識別子を用いて、各電池パック10及び各充電器20を個別に管理する。
【0041】
図2は、図1に示す電池パック10の構成の一例を示すブロック図である。電池パック10は、プロセッサ110、メモリ120、スイッチ130、電流センサ140、温度センサ150、電圧センサ160、接続部170、一対の放電端子174、電力線180、及び二次電池190を含む。
【0042】
プロセッサ110は、例えば、CPU、ASIC、FPGAなどの電気回路である。プロセッサ110は、第1検知部111、第1判定部112、第1計測部113、指示部114、第2検知部115、第2判定部116、第2計測部117、及び出力部118を含む。第1検知部111~出力部118はそれぞれ、専用の電気回路で構成されてもよいし、CPUが所定のプログラムを実行することで実現されてもよい。
【0043】
第1検知部111は、充電器20の充電ケーブル240(図3)が電池パック10に接続されているか否かを検知することで、充電器20が二次電池190に接続されているか否かを検知する。具体的には、第1検知部111は、充電ケーブル240が接続されたことを示すセンシングデータを接続センサ173から取得した場合、充電器20が二次電池190に接続されたと判定し、充電ケーブル240が取り外されたことを示すセンシングデータを接続センサ173から取得した場合、充電器20が二次電池190から取り外されたと判定する。
【0044】
第1判定部112は、第1検知部111が充電器20が二次電池190に接続されたことを検知した場合、二次電池190の状態が安定したか否かを判定する。具体的には、第1判定部112は、二次電池190の放電の終了を検知してから第1所定時間が経過した場合、二次電池190の状態が安定したと判定すればよい。ここで、第1所定時間は、例えば、二次電池190の放電が終了してから二次電池190の状態が安定することが見込まれる時間であって、二次電池190の仕様などに基づいて予め定められた時間である。二次電池190の状態は例えば二次電池190の電圧の状態及び/又は電流の状態である。第1判定部112は、例えば電流センサ140が電力線180に流れる放電電流I1が所定の電流閾値(例えば0)以下になったことを検知した場合、二次電池190の放電が終了したと判定すればよい。
【0045】
或いは、第1判定部112は、二次電池190の電圧変化が所定の電圧閾値以下になった場合、二次電池190の状態が安定したと判定してもよい。ここで、電圧センサ160は、所定のサンプリング周期で二次電池190の電圧値を検知し、プロセッサ110に出力するものとする。この場合、第1判定部112は、放電の終了を検知してから電圧センサ160が検知する電圧値のサンプリング周期ごとの差分電圧を算出し、差分電圧が電圧閾値以下になったとき、二次電池190の状態が安定したと判定すればよい。
【0046】
第1計測部113は、第1判定部112が二次電池190の状態が安定したと判定した場合、二次電池190の充電前の開回路電圧(以下、OCVと呼ぶ。)である第1開回路電圧(以下、第1OCVと呼ぶ。)を計測する。この場合、第1計測部113は、第1判定部112が二次電池190の状態が安定したと判定したときに、電圧センサ160が検知した電圧値を電圧センサ160から取得することで、第1OCVを計測すればよい。
【0047】
OCVは、接続部170を構成する一対の充電端子171が開放状態にあるときの二次電池190の電圧であり、例えば、二次電池190が通電されていない状態における二次電池190の電圧である。OCVを精度良く計測するには、二次電池190の状態が安定していることが要求される。放電終了後、二次電池190が安定状態に到達するには、数時間(例えば、2~3時間)を要する。そこで、本実施の形態では、第1計測部113は、放電終了後、二次電池190の状態が安定するのを待ってから、第1OCVを計測する。
【0048】
指示部114は、二次電池190の充電開始を充電器20に指示する。この場合、指示部114は、通信端子172を経由して充電開始コマンドを充電器20に送信することで、充電器20に充電を開始させればよい。
【0049】
さらに、指示部114は、充電開始コマンドを送信時において、スイッチ130をオンする制御コマンドをスイッチ130に出力する。これにより、充電器20と二次電池190とが電気的に接続され、二次電池190の充電が開始される。
【0050】
第2検知部115は、二次電池190の充電の終了を検知する。本実施の形態では、二次電池190は、例えば、CCCV(Constant Current Constant Voltage)充電によって充電される。CCCV充電は、二次電池190の電圧が所定の設定電圧に達するまでは定電流充電(CC充電)で充電し、二次電池190の電圧が設定電圧に到達した後、定電圧充電(CV充電)で充電する充電方式である。CCCV充電では、二次電池190が満充電状態に近づくにつれて充電電流I2が低下していく。そこで、第2検知部115は、充電電流I2が所定の電流閾値以下になった場合、二次電池190の充電が終了したと判定すればよい。
【0051】
ここでは、二次電池190は、CCCV充電によって充電されるとして説明したが、これは一例であり、トリクル充電又はCC充電などの種々の充電方式が採用されてもよい。この場合、第1計測部113は、各種充電方式に応じた充電の終止条件を二次電池190の電流及び/又は電圧が満たせば、二次電池190の充電が終了したと判定すればよい。
【0052】
第2判定部116は、第2検知部115が二次電池190の充電の終了を検知した場合、二次電池190の状態が安定したか否かを判定する。第2判定部116は、第1判定部112と同様の手法を用いて、二次電池190の状態が安定したか否かを判定すればよい。具体的には、第2判定部116は、第2検知部115が二次電池190の充電の終了を検知してから第2所定時間が経過した場合、二次電池190の状態が安定したと判定すればよい。第2所定時間は、例えば二次電池190の充電が終了してから二次電池190の状態が安定することが見込まれる時間であって、二次電池190の仕様などに基づいて予め定められた時間である。第2所定時間は、第1所定時間と同じであってもよいし、第1所定時間と異なる時間であってもよい。
【0053】
或いは、第2判定部116は、第1判定部11と2同様、二次電池190の電圧変化が所定の電圧閾値以下になった場合、二次電池190の状態が安定したと判定してもよい。
【0054】
第2計測部117は、第2判定部116が二次電池190の状態が安定したと判定した場合、二次電池190の充電後のOCVである第2OCVを計測した後、二次電池190の充電の終了をユーザに通知する。第2計測部117が二次電池190の状態の安定の有無を判定する処理は、第1計測部113と同じであるため、詳細な説明は省く。第2計測部117は、通信端子172を経由して充電終了通知を充電器20に送信して、充電器20に充電終了のメッセージを出力させることで、充電の終了をユーザに通知すればよい。さらに、第2計測部117は、充電終了通知と合わせて充電終了コマンドを充電器20に送信することで、充電器20に充電を終了させればよい。
【0055】
出力部118は、第1OCV及び第2OCVを出力する。具体的には、出力部118は、第1OCVの計測時刻を示すタイムスタンプと、第1OCVの計測時における温度センサ150が検知した二次電池190の温度と、電池パック10の識別子とを対応付けたログデータを生成する。さらに、出力部118は、第2OCVの計測時刻を示すタイムスタンプと、第2OCVの計測時における温度センサ150が検知した二次電池190の温度と、電池パック10の識別子とを対応付けたログデータを生成する。そして、出力部118は、生成したログデータを通信端子172を経由して充電器20に送信し、生成したログデータを充電器20からサーバ30に送信させる。これにより、第1OCV及び第2OCVの出力が行われる。さらに、出力部118は、ログデータをメモリ120に記憶させてもよい。さらに、出力部118は、放電中及び充電中に定期的に計測された二次電池190の状態を示すログデータをメモリ120に記憶させる。
【0056】
メモリ120は、例えば、フラッシュメモリなどの不揮発性の半導体メモリで構成され、ログデータを記憶する。その他、メモリ120は、電池パック10を制御するプログラムを記憶していてもよい。メモリ120は、記憶するログデータのデータ量が所定量を超えると古いログデータの順でログデータを消去すればよい。
【0057】
スイッチ130は、例えば、半導体スイッチ又はリレースイッチなどである。スイッチ130は、電力線180上に設けられている。スイッチ130は、プロセッサ110の制御の下、オンオフされる。スイッチ130は、充電開始時にオンされ、充電終了時にオフされる。その他、スイッチ130は、通電中に二次電池190の異常などがプロセッサ110によって検知された場合、オフされる。
【0058】
電流センサ140は、電力線180上に設けられている。電流センサ140は、例えば、シャント抵抗を含む電流センサ、カレントトランス型の電流センサ、又はホール素子型の電流センサである。電流センサ140は、例えば所定のサンプリング周期で電力線180に流れる放電電流I1及び充電電流I2を計測し、プロセッサ110に出力する。なお、電流センサ140は放電電流I1を例えば正の値、充電電流I2を例えば負の値で検出する。よって、プロセッサ110は、電流センサ140が検出した電流値が正又は負であるかによって、放電電流I1及び充電電流I2を区別できる。
【0059】
温度センサ150は、二次電池190の近傍又は二次電池190に接触して配置され、二次電池190の温度を計測する。温度センサ150は、例えば所定のサンプリング周期で二次電池190の温度を計測し、プロセッサ110に出力する。
【0060】
電圧センサ160は、例えば、抵抗を含む電圧センサである。電圧センサ160は、二次電池190の正極191と負極192との間において二次電池190と並列に接続されている。電圧センサ160は、例えば所定のサンプリング周期で二次電池190の電圧を計測し、プロセッサ110に出力する。
【0061】
接続部170は、充電ケーブル240が接続される端子である。接続部170は、一対の充電端子171、通信端子172、及び接続センサ173を含む。一対の充電端子171は、充電ケーブル240が備える一対の充電端子241と接続される。一対の充電端子171は、充電器20から供給される充電電流I2を二次電池190に供給する。通信端子172は、充電ケーブル240の通信端子242と接続される。通信端子172は、充電器20に対して、充電開始コマンド、充電終了コマンド、及び充電終了通知などを送信する。
【0062】
接続センサ173は、例えば、スイッチを含み、充電ケーブル240が接続部170に接続さると、スイッチがオンすることによって、充電ケーブル240が接続されたことを示すセンシングデータをプロセッサ110に出力する。一方、接続センサ173は、充電ケーブル240が接続部170から取り外されると、スイッチがオフすることによって、充電ケーブル240が取り外されたことを示すセンシングデータをプロセッサ110に出力する。
【0063】
電力線180は、二次電池190の正極191と一対の充電端子171の一方との間に接続され、二次電池190の負極192と一対の充電端子171の他方との間に接続される。さらに、電力線180は、一対の充電端子171の一方と正極191との間の分岐点P1において分岐し、一対の放電端子174の一方に接続されている。さらに、電力線は、一対の充電端子171の他方と負極192との間の分岐点P2において分岐し、一対の放電端子174の他方に接続されている。
【0064】
一対の放電端子174は、負荷が接続される。負荷は、例えば、インバータ及びモータなどである。
【0065】
二次電池190は、例えば、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池、鉛蓄電池などの充電可能な電池である。二次電池190は、充電時には充電器20から電力が供給され、放電時には負荷に電力を供給する。
【0066】
図3は、充電器20の構成の一例を示すブロック図である。充電器20は、制御部210、通信装置220、表示部230、充電ケーブル240、及び電源回路250を含む。制御部210は、例えば、CPU及びメモリを含むコンピュータであり、充電器20の全体制御を司る。制御部210は、電池パック10から送信された充電開始コマンドを受信すると、電源回路250の駆動を開始して電池パック10に充電電流I2を供給する。制御部210は、電池パック10から送信された充電終了コマンドを受信すると、電源回路250の駆動を停止して電池パック10への充電電流I2の供給を停止する。制御部210は、電池パック10から送信された充電終了通知を受信すると、表示部230に充電終了を告げるメッセージを表示する。一方、制御部210は、電池パック10において充電器20と二次電池190との接続が検知された場合、表示部230に充電開始を告げるメッセージを表示してもよい。
【0067】
なお、表示部230が充電中であることを告げる充電ランプを含んでいる場合、制御部210は、第1検知部111によって前記接続が検知された場合、充電ランプを点灯し、充電終了通知を受信した場合、充電ランプを消灯してもよい。さらに、充電器20がスピーカを備えている場合、制御部210は、第1検知部111によって前記接続が検知された場合、充電を開始する旨の音声メッセージをスピーカから出力してもよいし、充電終了通知を受信した場合、充電を終了する旨の音声メッセージをスピーカから出力してもよい。
【0068】
さらに、制御部210は、電池パック10から送信されたログデータを受信すると、そのログデータを通信装置220を用いてサーバ30に送信する。
【0069】
通信装置220は、例えばモデムなどの通信回路であり、充電器20とサーバ30とをネットワーク40を経由して通信可能に接続する。
【0070】
表示部230は、例えば、液晶パネルなどの表示装置であり、制御部210の制御の下、充電の終了を告げるメッセージ、充電の開始を告げるメッセージ、充電中である旨のメッセージを表示する。
【0071】
充電ケーブル240は、充電器20の本体部に接続される電源プラグと、電池パック10に接続される充電コネクターと、電源プラグ及び充電コネクター間を接続するケーブルとを含む。充電ケーブル240は、電池パック10と充電器20と電気的にを接続する。充電ケーブル240の充電コネクターは、一対の充電端子241、及び通信端子242を含む。一対の充電端子241は、充電ケーブル240が電池パック10の接続部170に接続されると、電池パック10の一対の充電端子171と接続され、充電ケーブル240が電池パック10の接続部170から取り外されると、電池パック10の一対の充電端子171から切り離される。通信端子242は、充電ケーブル240が電池パック10の接続部170に接続されると、電池パック10の通信端子172と接続され、充電ケーブル240が電池パック10の接続部170から取り外されると、電池パック10の一対の通信端子172から切り離される。
【0072】
電源回路250は、例えば、商用交流電力を二次電池190の充電に適した直流電力に変換するコンバータである。電源回路250は、制御部210の制御の下、電池パック10への電力供給を開始したり、電池パック10への電力供給を停止したりする。
【0073】
図4は、サーバ30の構成の一例を示すブロック図である。サーバ30は、プロセッサ310、メモリ320、及び通信装置330を含む。プロセッサ310は、例えばCPU、ASIC、FPGAなどの電気回路である。プロセッサ310は、データ管理部311、第1時刻予測部312、第2時刻予測部313、第1要否判定部314、第2要否判定部315、及び機械学習部316を含む。
【0074】
データ管理部311は、通信装置330が受信したログデータをログデータベース321に記憶することによって、ログデータベース321を管理する。ログデータベース321の詳細は図8を用いて後述する。
【0075】
第1時刻予測部312は、第1検知部111によって充電器20の接続が検知された場合、二次電池190の残容量に基づいて、第2OCVの計測が終了する第1時刻を予測する。第1時刻予測部312の処理の詳細の一例は、以下の通りである。
【0076】
まず、第1時刻予測部312は、ログデータベース321に記憶された対象となる電池パック10の放電終了時の電圧を取得し、電圧に応じた残容量を算出する所定の関数に、取得した電圧を入力することで、二次電池190の残容量を算出する。次に、第1時刻予測部312は、算出した残容量を、残容量に応じた必要充電時間を算出する所定の関数に入力することで必要充電時間を算出する。
【0077】
次に、第1時刻予測部312は、ログデータベース321から対象となる電池パック10の直近の放電終了時刻を取得する。次に、第1時刻予測部312は、取得した放電終了時刻に、放電終了後に二次電池190が安定状態に到達するのに要する上述した第1所定時間と、必要充電時間と、充電終了後に二次電池190が安定状態に到達するのに要する上述した第2所定時間とを加算し、得られた時刻を第1時刻として算出する。
【0078】
第2時刻予測部313は、ログデータベース321から対象となる電池パック10に対するユーザの使用履歴を取得し、取得した使用履歴に基づいて、二次電池190と充電器20との接続が検知された後にユーザが二次電池190の使用を開始する第2時刻を予測する。
【0079】
第2時刻予測部313の処理の詳細の一例は以下の通りである。図8を参照する。まず、第2時刻予測部313は、ログデータベース321から対象となる電池パック10の過去一定期間における状態「放電開始」のログデータであって、状態「充電終了」のログデータの直後のログデータを取得する。図8の例において、上から6行目の状態「放電開始」のログデータは、状態「充電終了」の直後の状態「放電開始」のログデータである。次に、第2時刻予測部313は、取得した状態「放電開始」のログデータのタイムスタンプに示す時刻の平均値を求める。次に、第2時刻予測部313は、求めた時刻の平均値を第2時刻として決定する。
【0080】
なお、第2時刻予測部313は、平日及び休日を考慮に入れて第2時刻を予測してもよい。例えば、第2時刻予測部313は、充電器20と二次電池190とが接続された時刻から次に二次電池190が使用される時刻の属する日が平日であると予測される場合は、ログデータベース321から平日の状態「放電開始」のログデータを用いて第2時刻を決定すればよい。一方、第2時刻予測部313は、充電器20と電池パック10とが接続された時刻から次に二次電池190が使用される時刻の属する日が休日であると予測される場合は、ログデータベース321から休日の状態「放電開始」のログデータを用いて第2時刻を決定すればよい。なお、第2時刻予測部313は、タイムスタンプに曜日が含まれていれば、その曜日を用いて平日及び休日を判定すればよいし、タイムスタンプが示す年月日からカレンダー情報を参照してタイムスタンプが示す年月日の曜日を特定し、その曜日を用いて平日及び休日を判定すればよい。
【0081】
図4を参照する。第1要否判定部314は、第1時刻が第2時刻よりも前である場合、すなわち、ユーザが車両を使用するまでに、第1OCV及び第2OCVを取得するための上述した一連の処理であるOCV取得モードが終了すると予測される場合、OCV取得モードの実行が可能であると判定する。一方、第1要否判定部314は、第1時刻が第2時刻よりも後である場合、すなわち、ユーザが車両を使用するまでに、OCV取得モードが終了できないと予測される場合、OCV取得モードの実行が不可能であると判定する。
【0082】
第2要否判定部315は、機械学習部316における機械学習モデル322の機械学習が終了し、これ以上第1OCV及び第2OCVを取得する必要がない場合、OCV取得モードの実行が不要であると判定する。一方、第2要否判定部315は、機械学習部316における機械学習モデル322の機械学習が終了しておらず、第1OCV及び第2OCVを取得する必要がある場合、OCV取得モードの実行が必要であると判定する。
【0083】
機械学習部316は、ログデータベース321から第1OCV及び第2OCVなどを含むログデータを取得し、取得したログデータからSOC及びSOHなどの学習データを生成し、生成した学習データを機械学習モデル322に与えることによって機械学習モデル322を機械学習させる。機械学習部316は、例えば教師あり学習を行う。機械学習部316は、機械学習モデル322の出力値と正解データとの誤差変動が所定値以下に収束した場合、機械学習が終了したと判定し、その旨を第2要否判定部315に入力する。これにより、第2要否判定部315は、機械学習モデル322の機械学習の終了の有無を判定できる。
【0084】
メモリ320は、例えば、フラッシュメモリ又はハードディスクドライブなどの不揮発性の記憶装置である。メモリ320は、ログデータベース321及び機械学習モデル322を記憶する。
【0085】
図8は、ログデータベース321のデータ構成の一例を示す図である。ログデータベース321は、「電池ID」、「タイムスタンプ」、「状態」、及び「値」の列を含む。ログデータベース321の1行は1つのログデータに対応する。
【0086】
「電池ID」は、サーバ30が管理対象とする電池パック10の識別子である。なお、「電池ID」は二次電池190の識別子であってもよい。「タイムスタンプ」は、ログデータの取得日時を示す。「状態」はログデータ取得時における二次電池190の状態である。ここでは、「状態」として、充電終了、第1OCV取得、充電開始、第2OCV取得などがある。充電終了は、二次電池190の充電終了時の状態を示す。第1OCV取得は、第1OCV計測時の二次電池190の状態を示す。充電開始は、二次電池190の充電開示時の状態を示す。第2OCV取得は、第2OCV計測時の二次電池190の状態を示す。その他、「状態」には、二次電池190に充電電流I2が通電されている状態を示す充電中、二次電池190から放電電流I1が供給されている状態を示す放電中などが含まれる。なお、図8では示されていないが、ログデータベース321は、充電中又は放電中に定期的に計測される二次電池190の状態を示すログデータを記憶する。なお、放電中及び充電中に定期的に計測される二次電池190の状態を示すログデータは、計測される都度、電池パック10からサーバ30に送信されてもよいし、所定のタイミングで纏めて電池パック10から充電器20を経由してサーバ30に送信されてもよい。所定のタイミングは、例えば、放電終了時、充電終了時、第1OCV計測時、及び第2OCV計測時などである。
【0087】
「値」は二次電池190の状態を示す値である。ここでは、「値」として、電圧、電流、及び温度がある。電圧は電圧センサ160で計測された二次電池190の電圧値である。電流は電流センサ140で計測された二次電池190の電流値である。温度は温度センサ150で計測された二次電池の温度である。
【0088】
図4を参照する。機械学習モデル322は、第1OCV及び第2OCVから得られるSOC及びSOHなどのデータを学習データとして機械学習される。機械学習モデル322は、例えば、ニューラルネットワーク、又はサポートベクターマシンなどで構成される。機械学習モデル322は、例えばSOC及びSOHなどに基づいて二次電池190の寿命などを予測する。
【0089】
次に、開回路電圧計測装置の動作について説明する。図5は、本開示の実施の形態に係る開回路電圧計測装置の動作の一例を示すフローチャートである。図6は、図5に続くフローチャートである。ステップS1において、電池パック10の第1検知部111は、接続センサ173のセンシングデータから充電器20が二次電池190に接続されたことを検知する。充電器20の接続が検知された場合(ステップS1でYES)、処理はステップS2に進み、充電器20の接続が検知されなかった場合(ステップS1でNO)、処理はステップS1に戻る。
【0090】
ステップS2において、第1検知部111は、充電終了フラグを0に設定する。充電終了フラグ「1」は二次電池190が充電状態でないことを示し、充電終了フラグ「0」は二次電池190が充電状態であることを示す。充電状態とは、二次電池190に対して実際に充電電流I2が供給されている狭義の充電状態を指すのではなく、充電器20の二次電池190への接続が検知されてから、第2OCVが計測されるまでの広義の充電状態を指す。
【0091】
ステップS3において、第1検知部111は、充電開始通知を通信端子172を経由して充電器20に送信する。充電開始通知を受信した充電器20は、表示部230に充電の開始を告げるメッセージを表示する。これにより、ユーザは二次電池190の充電が開始されたと判断する。
【0092】
ステップS4において、第1検知部111は、メモリ120からログデータを取得し、充電器20を経由してサーバ30に送信する。ここで、送信されるログデータは、例えば、放電中に定期的に計測された二次電池190の状態を示すログデータ及び放電終了時における二次電池190の状態を示すログデータなどである。送信されたログデータは、サーバ30によってログデータベース321に記憶される。
【0093】
ステップS5において、サーバ30の第2要否判定部315は、機械学習モデル322の機械学習が終了しているか否かを判定する。ここで、第2要否判定部315は、例えば、電池パック10から機械学習モデル322の学習が終了しているか否かをサーバ30に問い合わせる問い合わせ通知を受信したことをトリガーにステップS5の判定を実行する。
【0094】
機械学習モデル322の機械学習が終了したと判定された場合(ステップS5でYES)、処理はステップS10に進む。一方、機械学習モデル322の機械学習が終了していないと判定された場合(ステップS5でNO)、処理はステップSに進む。
【0095】
ステップS6において、サーバ30の第1要否判定部314は、OCV取得モードの実行の可否を判定するOCV取得モードの可否の判定処理を実行する。OCV取得モードの可否の判定処理の詳細は図7を用いて後述する。
【0096】
ステップS7において、第1要否判定部314は、ステップS6の処理結果がOCV取得モードの実行が可能であることを示す場合(ステップS7でYES)、処理をステップS8に進める。一方、第1要否判定部314は、ステップS6の処理結果がOCV取得モードの実行が不可能であることを示す場合(ステップS7でNO)、処理をステップS10に進める。なお、第1要否判定部314は、OCV取得モードの実行の可否の判定結果を充電器20を経由して電池パック10に送信する。
【0097】
ステップS8において、第1判定部112は、二次電池190が安定状態に到達したか否かを判定する。二次電池190が安定状態に到達している場合(ステップS8でYES)、第1計測部113は、第1OCVを計測する(ステップS9)。一方、二次電池190が安定状態に到達していない場合(ステップS8でNO)、処理はステップS8に戻る。
【0098】
ステップS10において、指示部114は、スイッチ130をオンする。図6に示すステップS11において、指示部114は、充電開始コマンドを充電器20に送信することで、充電開始を指示する。
【0099】
ステップS12において、第2検知部115は、二次電池190の充電の終了を検知する。
【0100】
ステップS13において、第2判定部116は、ステップS6の判定結果がOCV取得モードの実行が可能であることを示す場合(ステップS13でYES)、処理をステップS14に進める。一方、第2判定部116は、ステップS6の判定結果がOCV取得モードの実行が不可能であることを示す場合(ステップS13でNO)、処理をステップS18に進める。
【0101】
ステップS14において、第2判定部116は、二次電池190が安定状態に到達したか否かを判定する。二次電池190が安定状態に到達している場合(ステップS14でYES)、第2計測部117は、第2OCVを計測する(ステップS15)。一方、二次電池190が安定状態に到達していない場合(ステップS14でNO)、処理はステップS14に戻る。
【0102】
ステップS16において、出力部118はログデータをメモリ120から取得する。ここで取得されるログデータは、例えば、充電中に定期的に計測された二次電池190の状態を示すログデータである。
【0103】
ステップS17において、出力部118は、ステップS16で取得されたログデータと、第1OCVを含むログデータと、第2OCVを含むログデータとを充電器20を経由してサーバ30に送信する。
【0104】
ステップS18において、第1検知部111は、充電フラグを「1」に設定する。ステップS19において、第2計測部117は、充電終了を告げるメッセージを充電器20から出力させる。
【0105】
図7は、図6のOCV取得モードの可否の判定処理の一例を示すフローチャートである。ステップS101において、第1時刻予測部312は、二次電池190の残容量を取得する。なお、ステップS101は、第1時刻予測部312が第1要否判定部314から第1時刻の算出指示が入力されたことをトリガーに開始される。ステップS102において、第1時刻予測部312は、取得した残容量から二次電池190を満充電にするのに要する必要充電時間を算出する。
【0106】
ステップS103において、第1時刻予測部312は、メモリ320から上述した第1所定時間を取得する。ステップS104において、第1時刻予測部312は、メモリ320から上述した第2所定時間を取得する。ステップS105において、第1時刻予測部312は、ログデータベース321から対象となる二次電池190の直近の放電終了時刻を取得する。
【0107】
ステップS106において、第1時刻予測部312は、放電終了時刻に、必要充電時間、第1所定時間、及び第2所定時間を加算した時刻を、第2OCVの計測が終了する第1時刻として予測し、第1要否判定部314に入力する。ステップS107において、第2時刻予測部313は、上述した処理によって、ユーザが二次電池190の使用を開始する第2時刻を予測する。なお、ステップS107は、第2時刻予測部313が第1要否判定部314からの第2時刻の算出指示の入力をトリガーに開始される。
【0108】
ステップS108において、第1要否判定部314は、第1時刻が第2時刻より前か否かを判定する。第1時刻が第2時刻よりも前である場合(ステップS108でYES)、第1要否判定部314は、OCV取得モードの実行が可能と判定する(ステップS109)。一方、第1時刻が第2時刻よりも後である場合(ステップS108でNO)、第1要否判定部314は、OCV取得モードの実行が不可能と判定する(ステップS110)。
【0109】
このように、本実施の形態に係る開回路電圧計測装置は、充電器20の接続が検知された場合において、直ぐに充電を開始するのではなく、二次電池190の状態が安定するまで待機した後に(ステップS8)、二次電池190の充電を開始する(ステップS11)。これにより、本開回路電圧計測装置は、二次電池190の状態が安定するまで、充電器20の接続をユーザに待機させることなく、第1OCVを正確に計測できる。
【0110】
さらに、本開回路電圧計測装置は、二次電池190の充電が終了した場合、直ぐに二次電池190の充電終了をユーザに通知するのではなく、二次電池190の状態が安定してから(ステップS14)、二次電池190の充電の終了をユーザに通知する(ステップS19)。これにより、本開回路電圧計測装置は、充電終了後に二次電池190の状態が安定する前にユーザが二次電池190の使用を開始することを抑制でき、第2OCVを正確に計測できる。以上により、本構成は、ユーザにストレスを掛けることなく充電前後のOCVを正確に計測できる。
【0111】
さらに、本開回路電圧計測装置は、図5及び図6を参照して、OCV取得モードの実行が不可能と判定された場合(ステップS7でNO)、ステップS8,S9,S14,S15,S16,S17の処理がスキップされる。そのため、本開回路電圧計測装置は、第1OCV及び第2OCVを取得する必要がない場合、二次電池190の充電とを速やかに行うことができる。
【0112】
さらに、本開回路電圧計測装置は、図7において、第1時刻が第2時刻より前と予測された場合、OCV取得モードの実行が不可能と判定されるため、OCV取得モードの実行がユーザのライフサイクルに合わないようなユーザに対してOCV取得モードが実行されることを防止できる。
【0113】
さらに、本開回路電圧計測装置は、第1OCV及び第2OCVをサーバ30に送信するため、機械学習するうえで有用な学習データを機械学習モデル322に提供できる。
【0114】
なお、本開示は以下の変形例が採用できる。
【0115】
(1)上記実施の形態では、本開回路電圧計測装置の主要な構成要素は電池パック10とサーバ30とが備えていたが、本開示はこれに限定されず、主要な構成要素は全て電池パック10が備えていてもよい。例えば、図4に示すプロセッサ310が備える第1時刻予測部312~第2要否判定部315を電池パック10に設けてもよい。
【0116】
(2)本開回路電圧計測装置の主要な構成要素は全てサーバ30が備えていてもよい。例えば、図2に示す第1検知部111~出力部118はサーバ30が備えていてもよい。この場合、電池パック10は、接続センサ173のセンシングデータをサーバ30に送信する機能、二次電池190の電圧及び電流を逐次サーバ30に送信する機能、サーバ30からの指示にしたがって第1OCV及び第2OCVを計測してサーバ30に送信する機能を備えればよい。
【0117】
(3)電池パック10は車両に搭載されたが、本開示はこれに限定されず、スマートフォン、タブレット端末などのモバイル端末に適用されてもよい。この場合、充電器20は、モバイル端末の充電器が採用される。
【0118】
(4)図6では、ステップS17において第1OCVが出力されたが、これは一例であり、本開示は、ステップS9に示す第1OCVを計測したときに第1OCVを出力してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0119】
本開示は、ユーザにすとれすを掛けずに開回路電圧を計測できるため、電動自動車及びモバイル端末にとって有用である。
【符号の説明】
【0120】
10 :電池パック
20 :充電器
30 :サーバ
110 :プロセッサ
111 :第1検知部
112 :第1判定部
113 :第1計測部
114 :指示部
115 :第2検知部
116 :第2判定部
117 :第2計測部
118 :出力部
120 :メモリ
140 :電流センサ
150 :温度センサ
160 :電圧センサ
190 :二次電池
240 :充電プラグ
312 :第1時刻予測部
313 :第2時刻予測部
314 :第1要否判定部
315 :第2要否判定部
316 :機械学習部
321 :ログデータベース
322 :機械学習モデル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8