(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-04
(45)【発行日】2023-12-12
(54)【発明の名称】ロボット装置の動作を動画にて撮像するカメラを備える監視装置
(51)【国際特許分類】
B25J 19/06 20060101AFI20231205BHJP
【FI】
B25J19/06
(21)【出願番号】P 2019115797
(22)【出願日】2019-06-21
【審査請求日】2022-03-17
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100112357
【氏名又は名称】廣瀬 繁樹
(74)【代理人】
【識別番号】100130133
【氏名又は名称】曽根 太樹
(72)【発明者】
【氏名】大場 雅文
【審査官】國武 史帆
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-171490(JP,A)
【文献】特開2005-103681(JP,A)
【文献】国際公開第2018/110337(WO,A1)
【文献】特開平09-311715(JP,A)
【文献】特開2011-212831(JP,A)
【文献】特開2006-120820(JP,A)
【文献】特開2015-168016(JP,A)
【文献】特開2011-000699(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00 - 21/02
G05B 19/18 - 19/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボット装置の動作を撮像するカメラにて撮像された動画およびロボット装置の運転状態を検出するための状態検出器の出力を取得する演算処理装置を備え、
前記演算処理装置は、記憶部に記憶される情報を操作する記憶制御部と、
前記記憶部に記憶された情報の一部を抽出する抽出部と、
ロボット装置の運転状態を判定する判定部とを含み、
前記記憶制御部は、
前記カメラにて撮像される動画に時刻または予め定められた基準時刻からの経過時間を付けて
前記記憶部に記憶する制御と、状態検出器の出力から取得される変数に前記時刻または前記経過時間を付けて
前記記憶部に記憶する制御とを実施し、
前記判定部は、ロボット装置の運転状態が予め定められた基準運転状態から逸脱しているか否かを判定し、
前記抽出部は、前記判定部がロボット装置の運転状態が前記基準運転状態から逸脱したと判定した場合に、前記基準運転状態から逸脱した時より前の期間を含む予め定められた期間の動画を
前記記憶部から抽出し、
前記変数は、ロボット装置の加速度および位置のうち少なくとも一方を含み、
前記記憶制御部は、ロボット装置の動作期間中に前記変数を取得し、前記変数を取得した時の前記時刻または前記経過時間を取得し、前記時刻または前記経過時間と前記変数とを監視情報ファイルに記録するように形成されて
おり、
前記判定部は、ロボットの加速度が警告の判定範囲内に到達した場合に、ロボット装置の運転状態が前記基準運転状態から逸脱したと判定し、
前記記憶制御部は、前記判定部がロボット装置の運転状態が前記基準運転状態から逸脱したと判定した場合に、前記警告の情報およびロボット装置の運転状態が前記基準運転状態から逸脱したと判定した前記時刻を前記監視情報ファイルに付加する、監視装置。
【請求項2】
前記カメラは、作業ツールがワークに対して作業を行う状態を撮像するように配置されている、請求項1に記載の監視装置。
【請求項3】
前記抽出部は、前記判定部がロボット装置の運転状態が前記基準運転状態から逸脱したと判定した場合に、前記基準運転状態から逸脱した時よりも後の期間の動画が含まれるように動画を抽出し、抽出した動画を
前記記憶部に記憶する、請求項1または2に記載の監視装置。
【請求項4】
前記演算処理装置は、予め定められた制御周期にてロボットの動作指令を送出する動作制御部を含み、
前記記憶制御部は、ロボットの制御周期と同一の時間間隔にて状態検出器の出力から取得される
前記変数を
前記記憶部に記憶する、請求項1から3のいずれか一項に記載の監視装置。
【請求項5】
状態検出器の出力から取得される
前記変数は、ロボットの加速度およびロボットの位置のうち少なくとも一方を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の監視装置。
【請求項6】
前記記憶制御部は、ロボット装置の運転に関する警告の情報、ロボット装置の動作に対応する動作プログラムの指令文の情報、および動作プログラムに記載された移動点同士の間に生成される補間点に関する情報のうち、少なくとも一つの情報を前記時刻または前記経過時間を付けて
前記記憶部に記憶する、請求項1から5のいずれか一項に記載の監視装置。
【請求項7】
前記演算処理装置は、ロボットの動作を予測する予測部を含み、
前記予測部は、
前記記憶部に記憶された状態検出器の出力から取得される
前記変数に基づいて、次の動作指令により駆動した後のロボットの位置を推定し、
前記判定部は、前記予測部にて推定されたロボットの位置にロボットが到達できるか否かを判定し、
前記動作制御部は、前記予測部にて推定されたロボットの位置にロボットが到達できない場合に、次の動作指令にてロボットが駆動する前にロボットを停止させる、請求項4に記載の監視装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボット装置の動作を動画にて撮像するカメラを備える監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ロボットを備えるロボット装置では、作業に応じた作業ツールをロボットに取り付けることにより所望の作業を行うことができる。例えば、作業ツールとしてワークを把持するハンドをロボットに取り付けることができる。ロボットが予め定められた位置および姿勢に到達した後に、ハンドにてワークを把持したり解放したりすることにより、ワークを搬送することができる。
【0003】
ロボットおよび作業ツールは、予め作成された動作プログラムに基づいて駆動される。しかしながら、ロボット装置の異常の発生またはロボット装置を駆動する時の周りの状態などにより、ロボット装置の作業が正常に行われない場合がある。ロボット装置が作業を行っている期間中に、ロボット装置の状態またはロボット装置の周りの状態を把握するために、ロボット装置にカメラを配置することができる。
【0004】
従来の技術においては、カメラにて撮像した動画または静止画によりロボットが駆動している状態を判定する装置が知られている(例えば、特開2017-13214号公報、特開2017-1114号公報、および特開2017-154221号公報を参照)。また、作業者とロボットとが協働して作業を行うロボット装置において、ロボットへの作業者の接近を検出するカメラを備えるロボット装置が知られている(例えば、国際公開第2018/131237号を参照)。更に、ロボット装置が作業をしている領域をカメラにて撮像して、この画像を表示装置に表示する装置が知られている(例えば、特開2018-202541号公報を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-13214号公報
【文献】特開2017-1114号公報
【文献】特開2017-154221号公報
【文献】国際公開第2018/131237号
【文献】特開2018-202541号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ロボット装置による作業が正常に行われない場合に、ロボット装置が停止する場合がある。例えば、自動搬送車にて搬送されるワークに所定の部品を取り付けたり、溶接を行ったりする場合がある。この場合に、地面に凹凸があったり工場内に空気の流れがあったりすると、搬送車に載置されたワークに振動が生じる場合がある。この結果、作業ツールがワークに接触した時にロボット装置が振動を検出して停止する場合がある。または、ロボット装置に含まれる装置が故障してロボットの振動が大きくなり、ロボット装置が停止する場合がある。
【0007】
ロボット装置に生じた異常の原因を調査するためには、異常が生じた時のロボット装置の状態を目視にて観察できることが好ましい。このために、ロボット装置による作業が正常に行われない場合に、作業者は、ロボット装置に同じ作業をもう一度実施させながら、カメラにて動画を撮像していた。このために、作業者は原因の解析のために多くの時間を費やしていた。
【0008】
また、作業者は、ロボット装置の運転に関する記録と動画とに基づいて異常が生じた原因を解析する。ところが、ロボット装置の運転の記録が動画のどの時点に対応するのかが分からないという問題があった。ロボット装置の運転の記録と動画における時刻とを対応づける情報が無いために、異常が発生したときのロボットの動画と運転の記録とを参照して、異常が生じた原因を解析することが難しいという問題があった。このように、従来の技術においては、異常が生じた原因を短時間で解析することは困難であり、ロボット装置の復旧までに時間がかかるという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一態様の監視装置は、ロボット装置の動作を撮像するカメラにて撮像された動画およびロボット装置の運転状態を検出するための状態検出器の出力を取得する演算処理装置を備える。演算処理装置は、記憶部に記憶される情報を操作する記憶制御部を含む。演算処理装置は、記憶部に記憶された情報の一部を抽出する抽出部と、ロボット装置の運転状態を判定する判定部とを含む。記憶制御部は、カメラにて撮像される動画に時刻または予め定められた基準時刻からの経過時間を付けて記憶部に記憶する制御と、状態検出器の出力から取得される変数に時刻または経過時間を付けて記憶部に記憶する制御とを実施する。判定部は、ロボット装置の運転状態が予め定められた基準運転状態から逸脱しているか否かを判定する。抽出部は、判定部がロボット装置の運転状態が基準運転状態から逸脱したと判定した場合に、基準運転状態から逸脱した時より前の期間を含む予め定められた期間の動画を記憶部から抽出する。変数は、ロボット装置の加速度および位置のうち少なくとも一方を含む。記憶制御部は、ロボット装置の動作期間中に変数を取得し、変数を取得した時の時刻または経過時間を取得し、時刻または経過時間と変数とを監視情報ファイルに記録するように形成されている。判定部は、ロボットの加速度が警告の判定範囲内に到達した場合に、ロボット装置の運転状態が基準運転状態から逸脱したと判定する。記憶制御部は、判定部がロボット装置の運転状態が基準運転状態から逸脱したと判定した場合に、警告の情報およびロボット装置の運転状態が基準運転状態から逸脱したと判定した時刻を監視情報ファイルに付加する。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、ロボット装置の動作が基準となる運転状態を逸脱した時に、ロボット装置の動作の状態を容易に確認できる監視装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施の形態における第1のロボット装置の概略図である。
【
図2】実施の形態における第1のロボット装置のブロック図である。
【
図3】実施の形態におけるカメラにて撮像される映像の例である。
【
図4】実施の形態の監視情報ファイルに含まれる項目を説明するブロック図である。
【
図5】動作プログラムに記載されている移動点同士の間の補間点を説明する概略図である。
【
図6】実施の形態における第2のロボット装置の概略図である。
【
図7】実施の形態における第3のロボット装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1から
図7を参照して、実施の形態におけるロボット装置の動作を監視する監視装置について説明する。本実施の形態では、製品を組み立てる作業を行うロボット装置を例に取り上げて説明する。
【0013】
図1は、本実施の形態における第1のロボット装置の概略図である。第1のロボット装置5は、作業ツール(エンドエフェクタ)としてのハンド2と、ハンド2を移動するロボット1とを備える。本実施の形態のロボット1は、複数の関節部を含む多関節ロボットである。
【0014】
ロボット1は、ベース部14と、ベース部14に支持された旋回ベース13とを含む。ベース部14は、設置面に固定されている。旋回ベース13は、ベース部14に対して回転するように形成されている。ロボット1は、上部アーム11および下部アーム12を含む。下部アーム12は、関節部を介して旋回ベース13に回動可能に支持されている。上部アーム11は、関節部を介して回動可能に下部アーム12に支持されている。また、上部アーム11は、上部アーム11の延びる方向に平行な回転軸の周りに回転する。
【0015】
ロボット1は、上部アーム11の端部に連結されているリスト15を含む。リスト15は、関節部を介して回動可能に上部アーム11に支持されている。リスト15は、回転可能に形成されているフランジ16を含む。ハンド2は、リスト15のフランジ16に固定されている。本実施の形態のロボット1は、6個の駆動軸を有するが、この形態に限られない。作業ツールを移動することができる任意のロボットを採用することができる。
【0016】
ハンド2は、ワーク81を把持したり解放したりする作業ツールである。ハンド2は、複数の爪部3を有する。ハンド2は爪部3が開いたり閉じたりするように形成されている。爪部3がワーク81を挟むことによりワーク81を把持する。本実施の形態のハンド2は、爪部3を有するが、この形態に限られない。ハンドは、ワークを把持できるように形成されている任意の構成を採用することができる。例えば、吸着または磁力によりワークを把持するハンドが採用されても構わない。
【0017】
本実施の形態におけるロボット装置5は、ロボット1に対してワーク82を搬送する搬送機としてのコンベヤ8を含む。搬送機は、ロボット1の周りに配置される。コンベヤ8は、ワーク82を予め定められた位置まで搬送するように形成されている。
【0018】
本実施の形態のロボット装置5は、ワーク82にワーク81を取り付ける作業を行う。ワーク81は、表面から突出するピン81aを有する。コンベヤ8にて搬送されるワーク82には、ピン81aの形状に対応する穴部82aが形成されている。ロボット装置5は、図示しない作業台の上に配置されたワーク81を把持する。次に、ロボット1は、位置および姿勢を変更することにより、矢印91に示すように、ワーク81をワーク82の上面に載置する。この時に、ロボット1は、ピン81aが穴部82aに嵌合するようにワーク81を移動する。
【0019】
本実施の形態では、コンベヤ8がワーク82の搬送を継続しながらロボット1がワーク81をワーク82に取り付ける。すなわち、ワーク81が載置される作業を行う期間中に、ワーク82はコンベヤ8により移動している。ロボット1は、ワーク82を追従するように位置および姿勢を変化させながらワーク81をワーク82に取り付ける。
【0020】
本実施の形態におけるロボット装置5は、ロボット装置5の動作を撮像するカメラ10を備える。カメラ10は、動画を撮像するビデオカメラである。カメラ10は、ハンド2がワーク81,82に対して作業を行う状態を撮像するように配置されている。本実施の形態のカメラ10は、ワーク82に対してワーク81が載置される領域を撮像するように配置されている。特に、カメラ10は、ピン81aが穴部82aに挿入される状態を撮像できるように配置されている。
【0021】
第1のロボット装置5では、カメラ10は、支持部材17によりハンド2に固定されている。カメラ10は、ハンド2と共に位置および姿勢が変化する。また、本実施の形態のカメラ10は、ハンド2から取り外すことができるように形成されている。例えば、支持部材17は、磁石またはねじ等の締結部材により、ハンド2に固定されることができる。
【0022】
本実施の形態のロボット装置5には、基準座標系56が設定されている。
図1に示す例では、ロボット1のベース部14に、基準座標系56の原点が配置されている。基準座標系56はワールド座標系とも称される。基準座標系56は、原点の位置が固定され、更に、座標軸の向きが固定されている座標系である。ロボット1の位置および姿勢が変化しても基準座標系56の位置および向きは変化しない。基準座標系56は、座標軸として、互いに直交するX軸、Y軸、およびZ軸を有する。また、X軸の周りの座標軸としてW軸が設定される。Y軸の周りの座標軸としてP軸が設定される。Z軸の周りの座標軸としてR軸が設定される。
【0023】
ロボット1の位置および姿勢は、基準座標系56にて表すことができる。例えば、ロボット1の位置は、ハンド2の先端に配置された工具先端点の位置にて表すことができる。また、工具先端点にハンド2と共に移動するツール座標系を設定することができる。ロボット1の姿勢は、基準座標系56に対するツール座標系の向きにて表すことができる。
【0024】
図2に、本実施の形態におけるロボット装置のブロック図を示す。
図1および
図2を参照して、ロボット1は、ロボット1の位置および姿勢を変化させるロボット駆動装置を含む。ロボット駆動装置は、アームおよびリスト等の構成部材を駆動するロボット駆動モーター22を含む。ロボット駆動モーター22が駆動することにより、それぞれの構成部材の向きが変化する。
【0025】
ハンド2は、ハンド2を駆動するハンド駆動装置を備える。ハンド駆動装置は、ハンド2の爪部3を駆動するハンド駆動モーター21を含む。ハンド駆動モーター21が駆動することによりハンド2の爪部3が開いたり閉じたりする。なお、爪部は、空気圧により作動するように形成されていても構わない。この場合には、ハンド駆動装置は、空気ポンプおよびシリンダなどの空気圧にて爪部を駆動する装置を含むことができる。
【0026】
ロボット装置5の制御装置は、ロボット制御装置4を備える。ロボット制御装置4は、プロセッサとしてのCPU(Central Processing Unit)を有する演算処理装置(コンピュータ)を含む。演算処理装置は、CPUにバスを介して接続されたRAM(Random Access Memory)およびROM(Read Only Memory)等を有する。ロボット制御装置4には、ロボット1、ハンド2、およびコンベヤ8の制御を行うために予め作成された動作プログラム41が入力される。ロボット1およびハンド2は、動作プログラム41に基づいてワーク81を搬送する。コンベヤ8は、動作プログラム41に基づいてワーク82を搬送する。
【0027】
ロボット制御装置4の演算処理装置は、予め定められた情報を記憶する記憶部42を含む。記憶部42は、ロボット1、ハンド2、およびコンベヤ8の制御に関する情報を記憶する。動作プログラム41は、記憶部42に記憶される。記憶部42は、揮発性メモリ、不揮発性メモリ、またはハードディスク等の情報を記憶可能な記憶媒体にて構成されることができる。
【0028】
演算処理装置は、動作指令を送出する動作制御部43を含む。動作制御部43は、動作プログラム41に従って駆動するプロセッサに相当する。動作制御部43は、記憶部42に記憶された情報を読み取り可能に形成されている。プロセッサは、動作プログラム41を読み込んで、動作プログラム41に定められた制御を実施することにより、動作制御部43として機能する。
【0029】
動作制御部43は、動作プログラム41に基づいてロボット1を駆動するための動作指令をロボット駆動部45に送出する。ロボット駆動部45は、ロボット駆動モーター22を駆動する電気回路を含む。ロボット駆動部45は、動作指令に基づいてロボット駆動モーター22に電気を供給する。また、動作制御部43は、動作プログラム41に基づいてハンド2を駆動する動作指令をハンド駆動部44に送出する。ハンド駆動部44は、ハンド駆動モーター21を駆動する電気回路を含む。ハンド駆動部44は、動作指令に基づいてハンド駆動モーター21に電気を供給する。更に、動作制御部43は、動作プログラム41に基づいて、カメラ10に動画を撮像する指令を送出する。
【0030】
ロボット制御装置4は、ロボット装置5に関する任意の情報を表示する表示器46を含む。表示器46は、例えば、液晶表示パネルを含む。
【0031】
ロボット装置5は、ロボット装置5の運転状態を検出する少なくとも一つの状態検出器を備える。状態検出器は、ロボット装置5を構成する部材に取り付けられる。ロボット1は、ロボット1の位置および姿勢を検出するための状態検出器としての位置検出器18を含む。位置検出器18は、アーム等の構成部材の駆動軸に対応するロボット駆動モーター22に取り付けられている。例えば、位置検出器18は、ロボット駆動モーター22が駆動するときの回転角を検出する。位置検出器18の出力に基づいて、ロボット1の位置および姿勢が検出される。
【0032】
また、本実施の形態の状態検出器は、ロボット1の加速度を検出するための加速度センサー19を含む。加速度センサー19は、ハンド2に取り付けられている。加速度センサー19の出力により、ロボット1が駆動するときの加速度およびロボット1に生じる振動を検出することができる。
【0033】
ロボット装置5の制御装置は、コンベヤ8の動作を制御するコンベヤ制御装置9を備える。コンベヤ制御装置9は、CPUおよびRAM等を含む演算処理装置(コンピュータ)を含む。コンベヤ制御装置9は、ロボット制御装置4と互いに通信することができるように形成されている。動作制御部43は、動作プログラム41に基づいて、コンベヤ8を駆動する動作指令をコンベヤ制御装置9に送出する。コンベヤ制御装置9は、ロボット制御装置4からの動作指令を受信して、コンベヤ8を駆動する。
【0034】
本実施の形態におけるロボット装置5は、ロボット装置5の動作を監視する監視装置を備える。監視装置は、カメラ10と、状態検出器としての位置検出器18および加速度センサー19とを備える。監視装置は、カメラ10にて撮像された動画および状態検出器の出力を取得する演算処理装置を備える。本実施の形態においては、ロボット制御装置4の演算処理装置が監視装置の演算処理装置として機能する。
【0035】
ロボット制御装置4の演算処理装置は、状態検出器およびカメラ10から出力される情報を処理する信号処理部31を含む。信号処理部31は、記憶部42に記憶される情報を操作する記憶制御部32を含む。信号処理部31は、記憶部42に記憶された情報の一部を抽出する抽出部34を含む。また、信号処理部31は、ロボット装置5の運転状態を判定する判定部33を含む。更に、本実施の形態における信号処理部31は、過去に取得されたロボット装置5の運転状態に基づいて、将来のロボット装置5の動作を予測する予測部35を含む。
【0036】
信号処理部31は、動作プログラム41に従って駆動するプロセッサに相当する。特に、記憶制御部32、判定部33、抽出部34、および予測部35のそれぞれのユニットは、動作プログラム41に従って駆動するプロセッサに相当する。プロセッサが動作プログラム41を読み込んで、動作プログラム41に定められた制御を実施することにより、それぞれのユニットとして機能する。
【0037】
本実施の形態のロボット装置5の制御装置は、ロボット1およびハンド2を制御するロボット制御装置4と、コンベヤ8を制御するコンベヤ制御装置9とを備えるが、この形態に限られない。ロボット装置5は、1つの制御装置にて、ロボット1、ハンド2、およびコンベヤ8を制御するように形成されていても構わない。また、ロボット制御装置4とは別に信号処理部31の機能を有する信号処理装置を配置しても構わない。信号処理装置は、記憶部およびCPUを含む演算処理装置(コンピュータ)にて構成することができる。そして、信号処理装置において、記憶部に記憶させる制御および記憶部に記憶された情報の一部を抽出する制御などを行っても構わない。または、信号処理装置における時間とロボット制御装置4における時間とを同期させて、検出器、センサー、およびカメラからの信号の処理を分担しても構わない。
【0038】
図1を参照して、本実施の形態におけるカメラ10は、ハンド2に把持されるワーク81から離れた位置に配置されている。カメラ10は、ワーク81をワーク82に取り付けるときに、ワーク81のピン81aとワーク82の穴部82aを撮像できるように配置されている。
【0039】
図3に、記憶部に記憶された映像の例を示す。
図2および
図3を参照して、記憶制御部32は、カメラ10にて撮像される動画を取得する。ロボット制御装置4は、時計の機能を有する。記憶制御部32は、現在の時刻を取得する。記憶制御部32は、カメラ10にて撮像される動画に時刻を付けて記憶部42に記憶する。すなわち、記憶制御部32は、動画に現在の時刻のタイムスタンプを付けて記憶部42に記憶する。
【0040】
映像71には、ワーク81のピン81aとコンベヤ8によって搬送されるワーク82の穴部82aとが嵌合する状態が記録されている。爪部3に把持されたワーク81は、矢印92に示す方向に移動して、ピン81aが穴部82aの内部に挿入される。カメラ10は、ロボット装置5がワーク81,82に対して行う作業の状態を撮像している。映像71の予め定められた位置には、時刻の映像72が付与されている。映像72には、動画を撮像したときの日付と時刻とが示されている。
図3に示す例においては、100分の1秒の位までの時刻が示されている。
【0041】
本実施の形態の記憶制御部32は、過去に記憶された古い動画を削除する制御を実施する。記憶制御部32は、現在の時刻から予め定められた期間よりも前の動画を記憶部42から削除する制御を実施する。動画を残す期間は、例えば1分以上60分以下に設定することができる。記憶部42に記憶される動画の記憶容量は、非常に大きくなる。本実施の形態においては、古い動画を削除することにより、動画の記憶容量が大きくなることを抑制できる。例えば、記憶制御部32は、カメラ10から取得された現在の時刻の動画を記憶部42に記憶するとともに、現在の時刻から30分前の時刻よりも前の動画を削除する制御を実施することができる。
【0042】
図4に、本実施の形態における監視情報ファイルの説明図を示す。本実施の形態における記憶制御部32は、ロボット装置5の運転期間中に、ロボット装置5の運転状態を監視情報として監視情報ファイル73に記録する制御を実施する。監視情報ファイル73は、記憶部42に記憶される。記憶制御部32は、状態検出器の出力から取得される変数に時刻を付けて記憶部42に記憶する制御を実施する。ロボット1の運転状態は、例えば、ロボット1の加速度およびロボット1の位置である。監視情報ファイル73には、ロボット1の加速度およびロボット1の位置のうち少なくも一方を記録することができる。
【0043】
本実施の形態では、加速度センサー19の出力から取得される加速度をロボット1の加速度としている。記憶制御部32は、加速度センサー19から出力される基準座標系56のX軸方向の加速度、Y軸方向の加速度、およびZ軸方向の加速度を取得する。それぞれの加速度は、時刻を付けて監視情報ファイル73に記憶される。また、記憶制御部32は、ロボット駆動モーター22に取り付けられた位置検出器18の出力に基づいて算出されたロボット1の位置を取得する。監視情報ファイル73には、ロボット1の基準座標系56におけるX軸の座標値、Y軸の座標値、およびZ軸の座標値が記憶される。
【0044】
図4に示す例では、時刻t1におけるロボット1の加速度およびロボット1の位置が示されている。監視情報ファイル73には、予め定められた時間間隔ごとに状態検出器の出力から取得される変数が記憶される。すなわち、監視情報ファイル73には、複数の時刻に対応する変数が記憶されている。監視情報ファイル73には、状態検出器を用いて取得された実際の測定値にタイムスタンプが付与されて記録されている。変数は、時系列にて監視情報ファイル73に記録されることができる。
【0045】
本実施の形態において、記憶制御部32は、ロボット装置5が駆動されている期間中に取得した全ての時刻の加速度およびロボットの位置を記憶部42に記憶しているが、この形態に限られない。記憶制御部は、現在の時刻から予め定められた期間よりも前の変数を削除する制御を行っても構わない。
【0046】
図2を参照して、判定部33は、ロボット装置5を運転している期間中に、ロボット装置5の運転状態が予め定められた基準運転状態から逸脱しているか否かを判定する。基準運転状態は、正常な運転範囲内にてロボット装置5が運転している状態に相当する。第1のロボット装置5の判定部33は、ロボット1、ハンド2、およびコンベヤ8の運転状態が正常か否かを判定する。判定部33は、状態検出器の出力から取得される変数が、予め定められた判定範囲を逸脱しているか否かを判定する。状態検出器の出力から取得される変数が判定範囲を逸脱している場合に、ロボット装置5の運転状態は、基準運転状態から逸脱していると判定することができる。すなわち、ロボット装置5の運転状態は、異常であると判定することができる。
【0047】
例えば、ロボット1の加速度の判定範囲を予め定めることができる。判定部33は、加速度センサー19により取得された加速度が判定範囲を超えている場合に、ロボット装置5の運転状態が基準運転状態から逸脱していると判定することができる。または、ロボット1が到達できる位置の判定範囲を予め定めることができる。判定部33は、位置検出器18の出力から算出されたロボット1の位置が判定範囲を逸脱している場合に、ロボット装置5の運転状態が基準運転状態から逸脱していると判定することができる。
【0048】
なお、ロボット装置5の運転状態が基準運転状態から逸脱しているか否かを判定するための変数は、監視情報ファイル73に記録される変数と同じであっても異なっていても構わない。また、判定部は任意の制御により、ロボット装置の運転状態が基準運転状態から逸脱しているか否かを判定することができる。例えば、判定部は、動作制御部43から送出される指令値と位置検出器18の出力等から取得される実測値とが離れた場合に、ロボット装置5の運転状態が基準運転状態から逸脱していると判定しても構わない。
【0049】
判定部33がロボット装置5の運転状態が基準運転状態から逸脱したと判定した場合に、信号処理部31は、ロボット装置5の運転状態が基準運転状態から逸脱したことを、表示器46に表示する。作業者にロボット装置5の異常の発生を知らせることができる。また、信号処理部31は、動作制御部43に対してロボット装置5を停止する指令を送出しても構わない。動作制御部43は、この指令に基づいてロボット装置5を停止することができる。または、動作制御部43は、この指令に基づいてロボット1の位置が安全な位置になるようにロボット1を退避させることができる。
【0050】
一方で、抽出部34は、基準運転状態から逸脱した時刻を取得する。次に、抽出部34は、基準運転状態から逸脱した時より前の期間を含む予め定められた期間の動画を記憶部42から抽出する。抽出部34は、ロボット装置5に異常が生じた時よりも前の動画を含むように動画を抽出する。異常が生じた時よりも前の予め定められた期間としては、例えば、基準運転状態から逸脱した時から1分以上10分以下の期間を採用することができる。本実施の形態においては、抽出部34は、基準運転状態から逸脱した時を含む予め定められた期間の動画を抽出する。特に、本実施の形態の抽出部34は、基準運転状態から逸脱した時よりも後の予め定められた期間の動画が含まれるように記憶部42から動画を抽出する。異常が生じた時よりも後の予め定められた期間としては、例えば、基準運転状態から逸脱した時から1分以上10分以下の期間を採用することができる。このように、抽出部34は、ロボット装置5の運転状態が基準運転状態から逸脱した時刻の周辺の期間の動画を記憶部42から抽出する。
【0051】
なお、抽出部34は、基準運転状態から逸脱した時よりも後の動画は抽出しなくても構わない。しかしながら、基準運転状態から逸脱した時よりも後の動画も抽出することにより、作業者は、異常が生じた後の状態も映像にて確認することができる。例えば、作業者は、装置が破損する状況を確認することができる。
【0052】
次に、抽出部34は、抽出した動画を記憶部42に記憶する。更に、抽出部34は、監視情報ファイル73からロボット装置5の運転状態に異常が生じた時刻より前の予め定められた期間の情報を抽出して記憶部42に記憶しても構わない。
【0053】
このように、本実施の形態における監視装置は、ロボット装置5が作業を行っている期間中に、ワーク81,82の組み立てを行っている領域の動画を取得する。監視装置は、ロボット装置5の運転状態に異常が生じたときに、ロボット装置5の運転状態に異常が生じた時刻より前の期間の動画を含む所定の期間の動画を抽出して、記憶部42に記憶する。
【0054】
ロボット装置5が基準運転状態から逸脱した時刻の直前の動画および状態検出器の出力から取得される変数は記憶部42に記憶されている。このため、作業者は、再度、ロボット装置5を動かして、同一の運転状態を再現する必要はなく、異常が生じたときのロボット装置5の状態を直ぐに解析することができる。
【0055】
作業者は、抽出部34にて抽出された映像71により、ロボット装置5により製品を組み立てている状態を確認することができる。また、監視情報ファイル73に記録された加速度およびロボットの位置に基づいて異常が生じた時のロボット1の状態を確認することができる。映像71および監視情報ファイル73に含まれる変数には、時刻が付与されているために、映像71に含まれる時刻と、監視情報ファイル73に記憶されている時刻とを厳密に対応させることができる。このために、作業者は、異常が生じた原因の解析を容易に行うことができる。例えば、作業者は、加速度が判定範囲を逸脱した時刻を監視情報ファイル73から取得し、映像71にて加速度が判定範囲を逸脱した時刻の直前の状態を確認することができる。また、ロボット装置5に異常が生じた後に直ぐに映像と運転状態とを確認することができるために、短時間で異常が生じた原因の解析を行うことができる。
【0056】
上記の実施の形態においては、カメラ10にて撮像される映像71および状態検出器の出力から取得される変数には、時刻を付けて記憶されているが、この形態に限られない。時刻の代わりに、予め定められた基準時刻からの経過時間を映像および状態検出器の出力から取得される変数に付けても構わない。例えば、ロボット装置にて作業を開始した時刻を基準時刻として、この時刻からの経過時間を映像および変数に付けて記憶しても構わない。なお、映像71および監視情報ファイル73に含まれる変数に付与される時刻または経過時間は、装置に独自の時間の単位にて記録することができる。例えば、
図3に示すように100分の1秒までの時刻を採用したり、1mmsecを1の単位にする経過時間を採用したりしても構わない。
【0057】
第1のロボット装置5のカメラ10は、ハンド2から取り外すことができるように形成されている。この構成を採用することにより、任意の時期にカメラ10をロボット装置5に取り付けたり取り外したりすることができる。例えば、ロボット装置の動作が正常である期間中には、カメラは取り外すことができる。そして、ロボット装置の動作に異常が生じる虞が生じた時にカメラを取り付けても構わない。例えば、ロボット装置の動作に関する警告が発信された時に、ロボット装置の動作の状態を監視するためにカメラを取り付けても構わない。
【0058】
ところで、記憶制御部32が状態検出器の出力から取得される変数を記憶部42に記憶する時間間隔としては、動作制御部43がロボット1の動作指令を送出する制御周期と同一の時間間隔を採用することができる。記憶制御部32は、動作制御部43がロボット1の動作指令を送出する時期に合わせて状態検出器の出力を取得することができる。監視情報ファイル73には、制御周期ごとに新たな時刻の変数の情報が追加される。
【0059】
図5に、制御装置の動作制御部が発信する制御周期を説明する図を示す。
図5には、動作プログラム41に記載された移動点P1,P2,P3が示されている。ロボット1は、例えばツール先端点が移動点P1から移動点P2に向かうように制御される。さらに、ロボット1は、ツール先端点が移動点P2から移動点P3に移動するように制御される。動作プログラム41には、移動点P1,P2,P3の位置およびそれぞれの位置におけるロボット1の姿勢が定められている。
【0060】
動作制御部43は、予め定められた制御周期Δtにてロボット1に動作指令を送出する。制御周期Δtは、ロボット1の性能に応じて予め定められている。または、制御周期Δtは、作業者がロボット制御装置4に入力しても構わない。ロボット1の制御周期Δtは、例えば、1mmsec以上10mmsec以下の範囲内の時間である。
【0061】
動作制御部43は、動作プログラム41から移動点P1,P2,P3におけるロボット1の位置および姿勢を取得する。次に、動作制御部43は、それぞれの移動点P1,P2,P3同士の間に補間点IPを追加する。補間点IPは、ロボット1の制御周期Δtの時間間隔に基づいて生成される。また、補間点IPは、ロボット1の駆動する速度および直線移動等のロボット1の駆動方法(モーションプラン)に基づいて作成される。
【0062】
動作制御部43は、それぞれの補間点IPにおいて、ロボット1の位置および姿勢を算出する。また、動作制御部43は、それぞれの補間点IPにおいて、ロボット1の動作速度を算出する。そして、動作制御部43は、補間点IPごとに動作指令を送出する。ロボット1は、移動点P1,P2,P3および補間点IPを通るように位置および姿勢が制御される。または、ロボット1は、移動点P1,P2,P3の近傍および補間点IPの近傍を通るように制御される。
【0063】
記憶制御部32は、このようなロボット1の制御周期ごとに状態検出器の出力から取得される変数(実測値)を記憶部42に記憶することができる。更に、記憶制御部32は、ロボット1の制御周期ごとに動作制御部43から発信される指令値を記憶部42に記憶しても構わない。制御周期は、ロボット1を駆動するための最小の時間間隔である。このために、制御周期の時間間隔にて監視情報ファイル73に変数を記録することにより、ロボットの状態の記録が欠落することを抑制することができる。または、作業者は、補間点IPにおいて生じるロボット装置5の動作の異常を解析することができる。
【0064】
監視情報ファイル73には、ロボット装置5の運転状態を監視するための任意の監視情報を、時刻を付けて記録することができる。例えば、監視情報は、ロボット装置5を停止する必要はない警告の情報を含むことができる。例えば、加速度についてロボット1の動作が異常であると判定する判定値の他に、この判定値に近づいたことを知らせるための警告の判定範囲が予め定められている場合がある。判定部33がロボット1の加速度が警告の判定範囲内に到達したことを検出した場合に、記憶制御部32は、警告の情報に時刻を付けて、監視情報ファイル73に記録することができる。
【0065】
また、監視情報には、ロボット装置5の動作に対応する動作プログラム41の指令文の情報を含めることができる。例えば、動作プログラム41を実行している指令文の行の情報を時刻と共に記録することができる。または、動作プログラム41を実行している指令文の行の情報を、加速度等の変数と共に記録することができる。
【0066】
動作プログラム41には、ロボット装置5を構成する装置に関するモーショングループが設定されている場合がある。ロボット1の駆動に関するモーショングループ、ハンド2の駆動に関するモーショングループ、およびコンベヤ8の駆動に関するモーショングループが動作プログラム41に定められている場合がある。監視情報には、モーショングループの情報を含めることができる。例えば、監視情報ファイル73には、ロボット1の駆動に関する第1のモーショングループであることを加速度等の変数と共に記録することができる。
【0067】
また、監視情報には、動作プログラムに記載された移動点同士の間に生成される補間点に関する情報を時刻と共に含めることができる。例えば、監視情報には、補間点同士の間の制御周期およびモーションプランの情報を含めることができる。また、監視情報には、補間点における位置、速度、加速度、および加加速度などの情報を含めることができる。この場合に、補間点における位置および速度等については、記憶制御部32が状態検出器の出力を制御周期と同一の時間間隔にて取得することにより算出することができる。また、補間点に関する情報は、動作制御部43から送出されるロボット1の位置の指令値を採用しても構わない。または、監視情報は、状態検出器の出力から算出される実測値および動作制御部43から送出される指令値の両方を含んでいても構わない。
【0068】
監視情報ファイル73に、警告の情報、動作プログラムの指令文の情報、および補間点の情報のうち少なくとも一つの情報を記録することにより、作業者は、ロボット装置5が基準運転状態から逸脱した原因をより詳細に解析することができる。
【0069】
図2を参照して、本実施の形態の信号処理部31は、将来のロボット1の動作を予測する予測部35を含む。予測部35は、記憶部42から過去のロボットの運転状態を記録した監視情報ファイル73を取得する。ここでの例では、監視情報ファイル73には、制御周期ごとの変数が記憶されている。予測部35は、状態検出器の出力から取得される変数に基づいて、制御周期ごとに発信される次の動作指令により駆動した後のロボット1の位置を推定する。例えば、予測部35は、ロボットの現在の位置および至近の過去の位置から、次の動作指令により駆動された後のロボットの位置を線形近似にて推定することができる。予測部35は、制御周期ごとに次のロボット1の動作にて到達するロボット1の位置を推定する制御を繰り返す。
【0070】
判定部33は、予測部35にて推定されたロボット1の位置にロボット1が到達できるか否かを判定する。例えば、推定されたロボット1の位置がロボット1の可動範囲を超えている場合がある。または、ロボット1の位置が定まると、各駆動軸におけるロボット駆動モーター22の回転角度が逆運動学に基づいて算出される。この時に、それぞれのロボット駆動モーター22の回転角を算出できない場合がある。このようなロボット1の移動点は、特異点と称される。上記の場合には、判定部33は、次の動作指令により駆動した場合のロボット1の位置は、ロボット1が到達できない位置であると判定する。
【0071】
予測部35にて推定されたロボット1の位置にロボット1が到達できない場合に、信号処理部31は、ロボット1が次の動作指令にて駆動する前にロボット1を停止する指令を動作制御部43に送出する。動作制御部43は、信号処理部31からの指令に基づいて次の動作指令を送出せずに、ロボット1を停止する制御を実施する。
【0072】
なお、視覚センサーを用いてロボットの位置および姿勢の補正を行う場合に、次の動作指令によりロボット1が到達しうる複数個の位置が存在する場合がある。この場合に、判定部33は、全ての位置に対して、可動範囲を超えるか否か、または特異点であるか否かを判定することができる。少なくとも一つの位置において可動範囲を超えたり特異点であったりする場合に、判定部33は、推定されたロボット1の位置にロボット1が到達できないと判定することができる。
【0073】
ロボット装置5において、コンベヤ等にて移動するワークをカメラなどの視覚センサにて撮像した動画または静止画に基づいて、ロボット1の位置および姿勢を修正するビジュアルフィードバック制御を行う場合がある。ビジュアルフィードバック制御では、ロボット1は、コンベヤ等で移動するワークに追従して位置および姿勢が変化する。
【0074】
例えば、移動するワークをカメラにて撮像した時に映像におけるワークの特徴点の位置が予め定められた基準位置になるようにロボット1の位置及び姿勢を調整することができる。ワークの特徴点が映像における基準位置に配置された時のワークに対するロボットの相対的な位置関係は予め求められている。このために、ロボット制御装置4は、映像においてワークの特徴点が基準位置に配置された時のロボット1の位置および姿勢に基づいて、作業を行うためのロボット1の位置および姿勢になるようにロボット1を制御することができる。
【0075】
または、コンベヤ等にて移動するワークをカメラにて撮像した映像に基づいて、基準座標系56におけるワークの位置および向きを算出することができる。例えば、パターンマッチングの方法により、ワークの位置および向きを算出することができる。ロボット制御装置4は、カメラにて撮像した時刻におけるワークの位置および向きに基づいて、作業を行うためのロボット1の位置および姿勢になるようにロボット1を制御することができる。
【0076】
ビジュアルフィードバック制御においては、ワークの位置および姿勢に対応するようにロボットの位置および姿勢が変化するために、将来のロボットの位置および姿勢を予め推定することは難しい。しかしながら、本実施の形態における予測部35は、過去の監視情報に基づいて、現在の時刻から近い時刻におけるロボットの位置を推定することができる。このために、ロボット1の動作に異常が生じる前に、ロボット1を停止することができる。特に、記憶制御部32が制御周期ごとに状態検出器の出力から得られる変数を記憶部42に記憶することにより、次の動作指令により駆動した後のロボットの位置を推定することができる。
【0077】
上記の実施の形態においては、ロボット1の加速度を検出するために、ハンド2に、加速度センサー19が取り付けられているが、この形態に限られない。例えば、カメラ10には、映像の手振れを補正するために加速度センサーが含まれている場合がある。カメラ10が加速度センサーを含む場合には、カメラの加速度センサーの出力値をロボット1の加速度として採用することができる。または、ロボット1の加速度は、加速度センサーにて直接的に検出せずに、位置検出器18の出力を時間にて2回微分することにより算出しても構わない。例えば、位置検出器18の出力に基づいて、工具先端点等の予め定められた位置における加速度を算出しても構わない。
【0078】
図6に、本実施の形態における第2のロボット装置の概略図を示す。第1のロボット装置5においては、カメラ10はハンド2に取り付けられている。カメラ10は、ロボット1が駆動すると共に移動しているが、この形態に限られない。カメラ10は、ロボット1およびコンベヤ8から離れた位置に固定されていても構わない。
【0079】
第2のロボット装置6は、床面に固定された架台25を備える。カメラ10は、架台25に固定されている。カメラ10は、ハンド2がワーク81,82に対して作業を行う状態を撮像するように配置されている。カメラ10は、ワーク81のピン81aがワーク82の穴部82aに挿入される状態を撮像できるように配置されている。
【0080】
更に、第2のロボット装置6においては、ロボット装置5が作業を行う領域以外の領域を撮像しても構わない。この構成により、作業者は、作業ツールがワークに対して作業を行う領域以外の領域にて生じた現象を映像にて確認することができる。例えば、カメラ10は、ロボット1の全体が撮像可能なように配置されていても構わない。この構成により、カメラ10にて、ロボット1の全ての動作を撮像することができる。例えば、作業者は、ロボット1の旋回ベース13に作業者または他の装置が接触したことを映像により確認することができる。第2のロボット装置6のその他の構成、作用および効果については、第1のロボット装置5と同様である。
【0081】
図7に、本実施の形態における第3のロボット装置の概略図を示す。前述の第1のロボット装置5および第2のロボット装置6においては、ワーク82がコンベヤ8により搬送されているが、この形態に限られない。第3のロボット装置7は、ロボット1に対してワーク82を搬送する搬送機としての搬送車26を備える。搬送車26は、車輪28を含み、床面上を任意の方向に進行する。本実施の形態の搬送車26は、動作プログラム41に基づいて自動的にワーク82の搬送を行う無人搬送車である。
【0082】
第3のロボット装置7は、搬送車26を制御する搬送車制御装置を備える。搬送車制御装置は、CPUおよびRAM等を含む演算処理装置(コンピュータ)を含む。搬送車制御装置は、ロボット制御装置4と互いに通信することができるように形成されている。
【0083】
搬送車26の上面には、固定部材27を介してワーク82が固定されている。そして、搬送車26は、予め定められた経路に沿って移動する。ロボット1は、ワーク81のピン81aがワーク82の穴部82aに挿入されるように、位置および姿勢を変更する。第3のロボット装置7において、カメラ10は、搬送車26に支持部材29を介して固定されている。カメラ10は、搬送車26と共に移動する。
【0084】
第3のロボット装置7においても、第1のロボット装置5と同様の制御を実施することができる。または、搬送機として搬送車26を用いる場合であっても、第2のロボット装置6(
図6を参照)のように、搬送車26が配置される位置から離れた位置にカメラ10が固定されていても構わない。第3のロボット装置7のその他の構成、作用および効果については、第1のロボット装置5および第2のロボット装置6と同様である。
【0085】
本実施の形態のロボット制御装置4は、監視情報ファイル73および映像71を表示する表示器46を含むが、この形態に限られない。ロボット制御装置は、表示器を含んでいなくても構わない。監視情報ファイルおよび抽出部にて抽出された映像は、通信装置を介して別の装置に送信されても構わない。例えば、ロボット装置の異常を解析する部門の作業者にこれらの情報を送信することができる。
【0086】
上記の実施の形態においては、搬送機により移動するワーク82に対して作業を行うロボット装置を例示したが、この形態に限られない。停止しているワークに対して作業を行うロボット装置にも本実施の形態の監視装置を適用することができる。
【0087】
上記の実施の形態においては、状態検出器として位置検出器および加速度センサーを例示して説明したが、この形態に限られない。状態検出器は、ロボット装置の状態を検出可能な任意の検出器を採用することができる。例えば、状態検出器は、ロボット装置に取り付けられた温度検出器、トルクセンサー、速度センサー、または力覚センサー等を含むことができる。
【0088】
上記の実施の形態では、製品を組み立てる作業を行うロボット装置を取り上げているが、この形態に限られない。任意の作業を行うロボット装置に本実施の形態の監視装置を適用することができる。例えば、ワークを搬送するロボット装置、スポット溶接またはアーク溶接などの溶接を行うロボット装置、塗装を行うロボット装置、またはシール材を塗布するロボット装置などに本実施の形態の監視装置を適用することができる。
【0089】
上述のそれぞれの制御においては、機能および作用が変更されない範囲において適宜ステップの順序を変更することができる。
【0090】
上記の実施の形態は、適宜組み合わせることができる。上述のそれぞれの図において、同一または相等する部分には同一の符号を付している。なお、上記の実施の形態は例示であり発明を限定するものではない。また、実施の形態においては、特許請求の範囲に示される実施の形態の変更が含まれている。
【符号の説明】
【0091】
1 ロボット
2 ハンド
4 ロボット制御装置
5,6,7 ロボット装置
8 コンベヤ
9 コンベヤ制御装置
10 カメラ
18 位置検出器
19 加速度センサー
32 記憶制御部
33 判定部
34 抽出部
35 予測部
41 動作プログラム
42 記憶部
43 動作制御部
71,72 映像
73 監視情報ファイル
81,82 ワーク