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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-04
(45)【発行日】2023-12-12
(54)【発明の名称】ショベル
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/00 20060101AFI20231205BHJP
   E02F 9/02 20060101ALI20231205BHJP
【FI】
E02F9/00 N
E02F9/00 Q
E02F9/02 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019132210
(22)【出願日】2019-07-17
(65)【公開番号】P2021017698
(43)【公開日】2021-02-15
【審査請求日】2022-05-18
(73)【特許権者】
【識別番号】502246528
【氏名又は名称】住友建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】小山 由人
(72)【発明者】
【氏名】冨田 晃一朗
【審査官】松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-135976(JP,A)
【文献】登録実用新案第3115059(JP,U)
【文献】特開2013-245517(JP,A)
【文献】国際公開第2019/117195(WO,A1)
【文献】特開2016-176292(JP,A)
【文献】特開2004-150029(JP,A)
【文献】実開昭61-089062(JP,U)
【文献】特開平09-032035(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/00
E02F 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部走行体と、
前記下部走行体に旋回可能に取り付けられる上部旋回体と、
前記上部旋回体に搭載されるタンクと、
前記上部旋回体における前記タンクの側方に設けられるサイドカバーと、
前記タンクの側面と前記サイドカバーの内面との間の隙間の上部に設けられて前記隙間内に工具またはボルトが落下することを阻止する落下防止部材と、
を備えるショベル。
【請求項2】
前記落下防止部材は、前記サイドカバー、燃料タンク、作動油タンクのいずれか一つに取り付けられる
請求項1に記載のショベル。
【請求項3】
前記タンク上に滑り止めを有する
請求項1または2に記載のショベル。
【請求項4】
前記タンク上に設けられたロールオーバーバルブと、
前記ロールオーバーバルブに連結され、前記タンクの側面に沿って下方に延在する大気導通用のホースと
を備え、
前記ホースは、前記落下防止部材によって前記タンクの側面に押し付けられる
請求項1から3のいずれか一項に記載のショベル。
【請求項5】
前記タンク上に起伏を有する
請求項3に記載のショベル。
【請求項6】
前記タンク上に、可倒式またはスライド式の手摺を有する
請求項1から5のいずれか一項に記載のショベル。
【請求項7】
互いに並べて設けられた燃料タンクおよび作動油タンクを備え、
前記サイドカバーは、前記上部旋回体における前記燃料タンクおよび前記作動油タンクの側方に設けられ、
前記落下防止部材は、前記燃料タンクおよび前記作動油タンクと前記サイドカバーとの間に設けられる
請求項1から6のいずれか一項に記載のショベル。
【請求項8】
前記タンクの側面に、前記落下防止部材を位置決めするための位置決め部を有する
請求項1から7のいずれか一項に記載のショベル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ショベルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ショベルの燃料タンク上では、作業者が給油、フィルタ交換等の各種作業を行ったり、当該タンク上を作業用通路として通行したりすることができるようになっている。このため、ショベルの燃料タンク上には、作業者の落下を防止するための手摺が設けられている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-135975号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、燃料タンクの側方にサイドカバーが設けられている場合、燃料タンクとサイドカバーとの間の隙間内に工具等が落下して、当該工具などを容易に取り出すことができなくなる虞がある。
【0005】
本開示は、燃料タンク等のタンクとサイドカバーとの間の隙間内への工具等の落下を抑制できるショベルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態に係るショベルは、下部走行体と、前記下部走行体に旋回可能に取り付けられる上部旋回体と、前記上部旋回体に搭載されるタンクと、前記上部旋回体における前記タンクの側方に設けられるサイドカバーと、前記タンクの側面と前記サイドカバーの内面との間の隙間の上部に設けられて前記隙間内に工具またはボルトが落下することを阻止する落下防止部材と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
タンクとサイドカバーとの間の隙間内への工具等の落下を抑制できるショベルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態に係るショベルの側面図である。
図2】上部旋回体の平面図である。
図3】燃料タンクおよび作動油タンクの周辺を拡大して示す斜視図である。
図4】サイドカバーおよび落下防止部材の断面図である。
図5】手摺の上部が起立した状態を拡大して示す斜視図である。
図6】手摺の上部が折り畳まれた状態を拡大して示す斜視図である。
図7】上部旋回体の燃料タンク付近を拡大視した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら実施形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0010】
なお、以下の説明において、X方向、Y方向、Z方向は互いに垂直な方向であり、X方向およびY方向は水平方向、Z方向は鉛直方向である。X方向は、ショベル100の前後方向であり、前方側がX正方向であり、後方側がX負方向である。Y方向は、ショベル100の左右幅方向であり、左側がY正方向、右側がY負方向である。Z方向は、ショベル100の高さ方向であり、上側がZ正方向、下側がZ負方向である。
【0011】
(ショベル100の構成)
図1は、本発明の一実施形態に係るショベル100の側面図である。図1に示すように、ショベル100は下部走行体1、上部旋回体3、キャビン10、ブーム4、アーム5、及びバケット6を有する。
【0012】
上部旋回体3は、旋回機構(図示せず)を介して、下部走行体1に搭載される。上部旋回体3の左側前部には、内部に運転席が設けられたキャビン10が配置される。上部旋回体3の前部中央には、ブーム4の一端が回動可能に取り付けられる。アーム5は、ブーム4の先端部に回動可能に取り付けられる。バケット6は、エンドアタッチメントであり、アーム5の先端部に回動可能に取り付けられる。アーム5の先端部には、バケット6の代わりに、ブレーカや破砕機等の他のエンドアタッチメントを取り付け可能である。
【0013】
図1に示すショベル100においては、上部旋回体3に搭載された部品の点検・修理等を行う際に、作業者が上部旋回体3上に登る場合がある。そのため、上部旋回体3の右側部には、作業者が上部旋回体3上に登るための階段が形成されており、さらに、この階段の側方には、作業者によって把持されたり、作業者の落下を防止したりするための、手摺G2,G4が設けられている。
【0014】
図2は、上部旋回体3の平面図である。なお、図2では、便宜上、ブーム4が取り外された状態の上部旋回体3が示されている。
【0015】
図2に示すように、キャビン10の後方には、エアクリーナ室60が設けられている。エアクリーナ室60内には、エアクリーナ等が収容される。また、エアクリーナ室60の上部は天板60aで覆われている。天板60aの左側部には、手摺G1が設けられている。手摺G1は、天板60a上で作業する作業者の落下を防止する。本実施形態のショベル100では、手摺G1は、天板60aに対し、ボルト締めで固定されている。但し、これに限らず、手摺G1は、天板60aに対して溶接されてもよい。
【0016】
上部旋回体3の後部には、ポンプ室61およびラジエータ室62が設けられている。ポンプ室61内には油圧ポンプ14が収容されている。ラジエータ室62内には、バッテリ、ラジエータ等が収容されている。ラジエータ室62の後方には、カウンタウェイトが設けられている。
【0017】
エンジン11の上部には、エンジンフード61aが設けられている。作業者は、ポンプ室61およびラジエータ室62の前方に設けられている上面カバー3b上において、エンジンフード61aの前部に設けられている把手61a3を引き上げることにより、エンジンフード61aの後部に設けられているヒンジ61a1、61a2を回動軸として、エンジンフード61aを開くことができる。
【0018】
ポンプ室61の前方には、作動油タンク19Sが設けられている。作動油タンク19Sは、油圧ポンプ14が吐出する作動油を貯蔵する。作動油タンク19Sの前方には、燃料タンク19Fが設けられている。燃料タンク19Fは、エンジン11に供給される燃料を貯蔵する。燃料タンク19F上には、天板61cが設けられている。天板61cは、作業者が上部旋回体3に登るときに使用する階段の一部を構成する。作業者は、作動油タンク19Sおよび燃料タンク19F上で、各種作業(例えば、給油作業、フィルタ交換作業等)を行うことができる。
【0019】
燃料タンク19Fの前方には、処理剤タンク19Rが設けられている。処理剤タンク19Rは、エンジン11の排ガスを処理するための処理剤(例えば、還元剤としての尿素水)が貯蔵される。処理剤タンク19R上には、開閉可能な処理剤タンクカバー40が設けられている。処理剤タンクカバー40は、作業者が上部旋回体3に登るときに使用する階段の一部を構成する。
【0020】
処理剤タンクカバー40の前方には、工具箱22が設けられている。工具箱22は、作業工具等を収容可能な収納スペースを有する。工具箱22の前方には、ステップ23が設けられている。ステップ23は、旋回フレーム3aに取り付けられている。工具箱22およびステップ23は、作業者が上部旋回体3に登るときに使用する階段の一部を構成する。
【0021】
上部旋回体3の後部かつ左側部(ラジエータ室62の左側方)には、ドア64Aおよびドア64Bが設けられている。ドア64Aは、後側の端部に設けられたヒンジ(図示省略)を回動軸として、上部旋回体3の左側方に開くことが可能である。ドア64Bは、ドア64Aの前側に設けられており、前側の端部に設けられたヒンジ(図示省略)を回動軸として、上部旋回体3の左側方に開くことが可能である。また、上部旋回体3の後部かつ右側部(ポンプ室61の右側方、且つ、サイドカバー21の後側)には、ドア64Cが設けられている。ドア64Cは、後側の端部に設けられたヒンジ(図示省略)を回動軸として、上部旋回体3の右側方に開くことが可能である。
【0022】
以上のように、本実施形態のショベル100では、天板61c、処理剤タンクカバー40、工具箱22、およびステップ23により、上部旋回体3の右側部(ブーム4を回動可能に支持するブーム支持ブラケット4aの右側)に、作業者が上部旋回体3上に登るための階段が形成されている。さらに、本実施形態のショベル100では、このように形成された階段の右側方に、手摺G2,G4が設けられている。
【0023】
手摺G2は、上部旋回体3上の右側部で作業する作業者の落下を防止する。本実施形態のショベル100では、手摺G2は、燃料タンク19Fの上面に溶接された座61fに対し、ボルト締めで固定される。
【0024】
また、本実施形態のショベル100では、手摺G2は、上部G21と下部G22とが上下に連結されており、且つ、上部G21を折り畳むことが可能な、可倒構造を有している。なお、手摺G2の詳細な構成は、図5および図6を用いて後述する。
【0025】
手摺G4は、作業者が階段を昇降する際に、作業者によって把持される。図1に示すように、手摺G4は、前側(低い側)の支柱部G41と、後側(高い側)の支柱部G42と、支柱部G41の上端部と支柱部G42の上端部とを連結し、上記した階段に沿って傾斜した部分を有する手摺部G43とを有して構成されている。本実施形態のショベル100では、手摺G4の前側の支柱部G41が、旋回フレーム3aの前端面に対し、ボルト締めで固定される。また、本実施形態のショベル100では、手摺G4の後側の支柱部G42が、燃料タンク19Fの上面に溶接された座61fに対し、ボルト締めで固定される。
【0026】
また、上部旋回体3上の前後方向(X軸方向)における中央部には、上記の階段から続く、上面カバー3bと、エアクリーナ室60上の天板60aとにより、左右方向(Y軸方向)に延在する作業用通路が形成されている。作業者は、作業用通路を足で踏んで通ることができ、この作業用通路と、作動油タンク19Sの上面と、燃料タンク19Fの上面(給油口19Faおよび手摺G2が取り付けられている箇所)とを含む作業エリア上で、点検等の作業を行うことができる。
【0027】
また、図2に示すように、燃料タンク19F上には、滑り止め82および給油口19Faが配置されている。滑り止め82は、天板61cにおける上記作業用通路上に設けられている。すなわち、滑り止め82は、燃料タンク19F上の当該滑り止め82の設置領域が、作業用通路および作業エリアとなることを意味する。滑り止め82は、金属板と、当該金属板の表面から突出した複数のゴム製の起伏とを備えて構成されている。滑り止め82は、天板61cにおける上記作業用通路上において、作業者が足を滑らせて転倒することを防止する。給油口19Faは、滑り止め82よりも外側(Y軸負側)に設けられている。これにより、本実施形態のショベル100では、給油口19Faが、作業用通路を通行する作業者の邪魔にならないようになっている。
【0028】
(燃料タンク19Fおよび作動油タンク19Sの周辺の構成)
図3は、燃料タンク19Fおよび作動油タンク19Sの周辺を拡大して示す斜視図である。図4は、サイドカバー21および落下防止部材80の断面図(図3に示す断面線Lによる断面図)である。
【0029】
本実施形態のショベル100において、作動油タンク19S上および燃料タンク19F上は、作業者によって各種作業が行われる作業エリアとなる。例えば、作動油タンク19S上では、蓋61dに覆われたリターンフィルタおよび蓋61eに覆われたサクションフィルタの交換作業が定期的に行われる。また、例えば、燃料タンク19F上では、燃料タンク19Fへの給油作業、手摺G2の折り畳み作業等が行われる。
【0030】
上部旋回体3の右側部において、ドア64Cの前側、且つ、作動油タンク19Sおよび燃料タンク19Fの右側(Y軸負側)には、サイドカバー21が設けられている。サイドカバー21は、作動油タンク19Sおよび燃料タンク19Fの右側の外観を整えたり、作動油タンク19Sおよび燃料タンク19Fに対する外部からの衝撃を吸収したりすることができる。サイドカバー21と、作動油タンク19Sおよび燃料タンク19Fとの間には、隙間21aが形成されている。
【0031】
作動油タンク19S上でリターンフィルタの交換作業を行う際には、蓋61dを固定するボルト61d1を工具を使用して取り外す必要があるため、ボルト61d1および工具が隙間21a内に落下する可能性が高い。
【0032】
同様に、作動油タンク19S上でサクションフィルタの交換作業を行う際には、蓋61eを固定するボルト61e1を工具を使用して取り外す必要があるため、ボルト61e1および工具が隙間21a内に落下する可能性が高い。
【0033】
万が一、作業エリアから隙間21a内に工具やボルト等を落としてしまうと、作業者はサイドカバー21を取り外す必要があり、工具やボルト等を容易に拾い上げることができない。
【0034】
特に、サイドカバー21の後側に設けられたドア64Cが比較的容易に開閉可能であるのに対し、サイドカバー21は、当該サイドカバー21を外すとき以外は、図示を省略するボルトによって常時固定されている。すなわち、サイドカバー21は、取り外しに手間がかかるため、隙間21a内に落下した工具やボルト等を拾い上げることはより困難である。
【0035】
また、図4に示すように、サイドカバー21は、デザイン上等の理由から、複数回折り曲げられた屈曲形状を有している。このため、サイドカバー21は、作動油タンク19Sおよび燃料タンク19Fに密着した形状に加工することが困難であり、したがって、作動油タンク19Sおよび燃料タンク19Fとの間に、隙間21aを形成する。
【0036】
そこで、本実施形態のショベル100では、図3および図4に示すように、隙間21aの上部に、隙間21a内への工具やボルト等の落下を防止するための、落下防止部材80が配置されている。落下防止部材80は、隙間21a内において、当該隙間21aの上縁部に沿って、前後方向(X軸方向)に延在するように配置された、弾力性を有する棒状(本実施形態では、角棒状)の部材である。落下防止部材80は、隙間21aの上部を閉塞することにより、万が一、作業者が作業エリアから工具やボルト等を落とした場合であっても、当該工具やボルト等を受け止めて、当該工具やボルト等が隙間21a内に落下することを阻止することができる。作業者は、落下防止部材80によって受け止められた工具やボルト等を、容易に拾い上げることができる。
【0037】
特に、本実施形態のショベル100では、使用時(上部G21が起立した状態)における手摺G2の高さ寸法が、フットガードの設置基準値(例えば、85cm)以下であるため、手摺G2にフットガードが設けられていない。このため、本実施形態では、フットガードが設けられている構成と比較して、工具やボルト等が隙間21a上に達し易くなっており、隙間21a内に落下防止部材80を設ける構成がより有用である。
【0038】
なお、フットガードとは、燃料タンク上の手摺の下部に取り付けられている壁状の部材であり、作業者の足が燃料タンク上から滑り落ちることを防止するための部材である。一般的に、フットガードは、燃料タンク上でのみ延在しており、作動油タンク上までは延在していない。
【0039】
さらに、本実施形態のショベル100では、燃料タンク19Fの側方の隙間21aのみならず、作動油タンク19Sの側方の隙間21aも、落下防止部材80で閉塞されている。このため、本実施形態のショベル100では、作業者が作動油タンク19S上の作業エリアから工具やボルト等を落とした場合であっても、当該工具やボルト等を落下防止部材80によって受け止めて、当該工具やボルト等が隙間21a内に落下することを阻止できる。
【0040】
本実施形態では、落下防止部材80は、緩衝材(例えば、ウレタン、EPDM等)で形成されている。そして、落下防止部材80の左右方向(Y軸方向)の幅は、隙間21a内に配置されていない状態において、隙間21aの左右方向(Y軸方向)の幅よりも大きくなっている。例えば、本実施形態では、隙間21aの左右方向(Y軸方向)の幅が50mm未満であり、これに応じて、落下防止部材80は、幅50mm×高さ50mmの断面形状が正方形である角棒状の、ウレタンまたはEPDMからなる緩衝材で形成されている。
【0041】
これにより、落下防止部材80は、隙間21a内に配置されたときに、サイドカバー21の内面と、作動油タンク19Sおよび燃料タンク19Fの各々の右側面との双方に密着することができ、よって、隙間21aをより確実に閉塞することができる。
【0042】
また、落下防止部材80は、左右方向(Y軸方向)に伸縮性を有することで、隙間21aの左右方向(Y軸方向)の幅の個体差や製造誤差を吸収して、隙間21aを確実に閉塞することができる。
【0043】
また、落下防止部材80は、緩衝材が用いられることで、工具やボルト等の落下の衝撃を吸収したり、作動油タンク19Sの後方にあるポンプ室からのエンジン音等を吸収したりすることもできる。
【0044】
また、落下防止部材80は、図4に示すように、サイドカバー21の上縁部よりも僅かに下側に配置されることで、当該落下防止部材80上に落下した工具やボルト等を、サイドカバー21の内面により、サイドカバー21の外側に落下しないように保持することができる。
【0045】
さらに、落下防止部材80は、サイドカバー21の上縁部よりも僅かに下側に配置される(すなわち、サイドカバー21の上縁部よりも上方に露出しない)ことで、直射日光、泥の付着等による劣化を抑制することができる。
【0046】
なお、落下防止部材80は、サイドカバー21が上部旋回体3に取り付けられる前に、作動油タンク19Sおよび燃料タンク19Fに対して、接着剤等によって接着されてもよく、サイドカバー21に対して、接着剤等によって接着されてもよい。
【0047】
また、落下防止部材80は、複数の構成部に分割された構成を有してもよい。例えば、落下防止部材80は、作動油タンク19Sの右側面に当たる第1の構成部と、燃料タンク19Fの右側面に当たる第2の構成部とを有して構成されてもよい。
【0048】
また、落下防止部材80は、ショベル100の機種毎に、予め定められた適切なサイズのものが取り付けられるようにしてもよい。
【0049】
(手摺G2の構成)
図5は、手摺G2の上部G21が起立した状態を拡大して示す斜視図である。図6は、手摺G2の上部G21が折り畳まれた状態を拡大して示す斜視図である。図5および図6に示すように、手摺G2は、燃料タンク19Fの上面に溶接された座61fに対し、ボルト締めで固定されている。手摺G2は、上部G21と下部G22とに分割された分割構造を有する。
【0050】
上部G21は、上下方向に延在する2本の支柱部G21A,G21Bと、2本の支柱部G21A,G21Bの上端部を互いに連結する手摺部G21Cと、2本の支柱部G21A,G21Bの下端部を互いに連結するプレートG21Dとを有する。プレートG21Dは、2本の支柱部G21A,G21Bの下端面に固定された水平部G21Daと、水平部G21Daの内側(Y軸正側)の縁部から上方に直角に折れ曲がった垂直部G21Dbとからなる、L字状の断面形状を有する。また、上部G21は、後側の支柱部G21Aから後方に拡張された拡張部G21Eを有する。拡張部G21Eは、作動油タンク19S上に位置し、作動油タンク19S上からの作業者の落下を防止できる。
【0051】
下部G22は、上下方向に延在する2本の支柱部G22A,G22Bと、2本の支柱部G22A,G22Bの上端部を互いに連結するプレートG22Cとを有する。2本の支柱部G22A,G22Bは、燃料タンク19Fの上面に溶接された座61fに対し、ボルト締めで固定される。プレートG22Cは、2本の支柱部G22A,G22Bの上端面に固定された水平部G22Caと、水平部G22Caの内側(Y軸正側)の縁部から下方に直角に折れ曲がった垂直部G22Cbとからなる、L字状の断面形状を有する。
【0052】
そして、手摺G2では、上部G21に設けられたプレートG21Dと、下部G22に設けられたプレートG22Cとが、ヒンジG23によって互いに連結されている。これにより、手摺G2では、作業者は、ヒンジG23を回動軸として上部G21を回動させることにより、上部G21を、図5に示すように下部G22上で起立した状態と、図6に示すように下部G22と重なり合って折り畳まれた状態とで切り替えることができる。
【0053】
また、図5に示すように、手摺G2では、上部G21が起立した状態において、上部G21のプレートG21Dの水平部G21Daと、下部G22のプレートG22Cの水平部G22Caとが互いに重なり合うため、作業者は、両者を上下方向に貫通する固定ボルトG24で締結することにより、上部G21を起立した状態で固定することができる。
【0054】
また、図6に示すように、手摺G2では、上部G21が折り畳まれた状態において、上部のプレートG21Dの垂直部G21Dbと、下部G22のプレートG22Cの垂直部G22Cbとが互いに重なり合うため、作業者は、両者を左右方向に貫通する固定ボルトG24で締結することにより、上部G21を折り畳まれた状態で固定することができる。
【0055】
例えば、ショベル100の輸送時には、作業者は、上部G21を折り畳まれた状態で固定することにより、手摺G2の高さ寸法を比較的に小さな寸法(例えば、50cm以下)に抑制できる。また、ショベル100の使用時には、作業者は、上部G21を起立した状態で固定することにより、燃料タンク19F上および作動油タンク19S上からの作業者の落下を防止できる。
【0056】
このように、本実施形態のショベル100では、作業者は、手摺G2の上部G21を、起立した状態および折り畳まれた状態の各々で固定することができる。その際、作業者は、天板61c上において、工具を用いて固定ボルトG24の脱着作業を行う必要がある。そのため、落下防止部材80の無い構成では、燃料タンク19Fとサイドカバー21との間の隙間21a内に、工具または固定ボルトG24が落下する可能性がある。本実施形態のショベル100では、隙間21a内の上部に落下防止部材80が配置されている。これにより、本実施形態のショベル100は、万が一、作業者が燃料タンク19F上から工具または固定ボルトG24を落とした場合であっても、落下防止部材80により、工具または固定ボルトG24を受け止めて、工具または固定ボルトG24が隙間21a内に落下することを阻止できる。
【0057】
(変形例)
図7を参照してショベル100の変形例を説明する。図7は、本変形例のショベル100における、上部旋回体3の燃料タンク19F付近を拡大視した斜視図である。図7に示すように、本変形例のショベル100では、燃料タンク19Fの通気機能として、燃料タンク19Fにロールオーバーバルブ63が設けられている。
【0058】
ロールオーバーバルブ63は、燃料タンク19Fが正立しているとき、開弁することにより、燃料タンク19Fと外部との間を導通させることができる。一方、ロールオーバーバルブ63は、燃料タンク19Fが横転したとき、閉弁することにより、当該ロールオーバーバルブ63からの燃料漏れを防止できる。なお、ロールオーバーバルブ63は、カットバルブとも呼ばれる。
【0059】
本変形例のショベル100では、ロールオーバーバルブ63が、燃料タンク19Fの上面の右端部に設けられている。これにより、本変形例のショベル100は、ロールオーバーバルブ63が、作業用通路を通行する作業者の邪魔にならないようにすることができる。また、本変形例のショベル100は、作業者の靴に付着した土砂などの異物が、ロールオーバーバルブ63に付着することを抑制できる。
【0060】
また、本変形例のショベル100では、ロールオーバーバルブ63に、大気導通用のホース66が連結されている。これにより、本変形例のショベル100は、土砂などの異物がロールオーバーバルブ63に付着することをさらに抑制できる。
【0061】
本変形例のショベル100では、図7に示すように、ホース66が、燃料タンク19Fの右側面に沿って、垂れ下がった状態で配置される。このため、本変形例のショベル100では、サイドカバー21が取り付けられる際に、ホース66の一部(ロールオーバーバルブ63近傍の部分であり、落下防止部材80と交差する部分)が、サイドカバー21の内面(燃料タンク19Fの右側面と対向する面)に貼り付けられた落下防止部材80によって、燃料タンク19Fの右側面に押し付けられる。これにより、本変形例のショベル100は、サイドカバー21と燃料タンク19Fの右側面との間の隙間21a内において、ホース66の一部を、燃料タンク19Fの右側面に固定できる。これにより、本変形例のショベル100は、例えば、ホース66の一部が隙間21a内で揺れ動くことで、ホース66とロールオーバーバルブ63との接続部分に高負荷がかかることを抑制できる。
【0062】
なお、本変形例のショベル100では、落下防止部材80にホース66よりも柔らかい素材を用いているため、落下防止部材80をホース66に押し当てた際に、落下防止部材80がホース66の外形状に合わせて凹むことで、ホース66が押潰されないようになっている。
【0063】
また、ホース66は、作動油タンク19Sとサイドカバー21との間の隙間21a内で垂れ下がった状態で配置されてもよく、この場合、ホース66は、落下防止部材80によって、作動油タンク19Sの右側面に押し付けられることによって固定されてもよい。
【0064】
以上、具体例を参照しつつ本実施形態について説明した。しかし、本開示はこれらの具体例に限定されるものではない。これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本開示の特徴を備えている限り、本開示の範囲に包含される。前述した各具体例が備える各要素およびその配置、条件、形状などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。前述した各具体例が備える各要素は、技術的な矛盾が生じない限り、適宜組み合わせを変えることができる。
【0065】
例えば、本実施形態では、手摺G2にフットガードが設けられていないが、これに限らず、手摺G2にフットガードが設けられていてもよい。この場合でも、落下防止部材80は、工具やボルト等がフットガードを越えて隙間21a内に落下することを阻止できる。
【0066】
また、本実施形態では、手摺G2として、折り畳み構造を有しているものを用いているが、これに限らず、例えば、上下方向へのスライド構造またはテレスコピック構造を有するものを用いてもよい。この場合、例えば、ショベル100の輸送時には、作業者は、手摺G2の上部G21を下方へスライドさせることにより、手摺G2の高さ寸法を、使用時よりも小さくすることができる。
【0067】
また、本実施形態では、落下防止部材80として緩衝材を用いているが、これに限らず、その他の素材(例えば、樹脂板、金属板、ネット等)を用いてもよい。
【0068】
また、本実施形態では、燃料タンク19Fおよび作動油タンク19Sとサイドカバー21との間の隙間内に落下防止部材80を配置しているが、これに限らず、サイドカバー21が燃料タンク19Fのみをカバーするものである場合(例えば、燃料タンク19Fよりも内側(Y軸正側)に作動油タンク19Sが設けられている小旋回機等の場合)、燃料タンク19Fとサイドカバー21との間の隙間内に落下防止部材80を配置してもよい。
【0069】
また、燃料タンク19Fおよび作動油タンク19Sの側面には、燃料タンク19Fおよび作動油タンク19Sに落下防止部材80を取り付ける際に、落下防止部材80を位置決めするための位置決め部を有する構成としてもよい。例えば、位置決め部としては、落下防止部材80の下端位置を位置決めすることが可能な、L字状の断面形状を有する金具等を用いることができる。
【符号の説明】
【0070】
100 ショベル
1 下部走行体
3 上部旋回体
19F 燃料タンク
19S 作動油タンク
21 サイドカバー
63 ロールオーバーバルブ
66 ホース
80 落下防止部材
82 滑り止め
G2,G4 手摺
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7