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  • 特許-噴霧用組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-04
(45)【発行日】2023-12-12
(54)【発明の名称】噴霧用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/69 20060101AFI20231205BHJP
   A61K 8/19 20060101ALI20231205BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20231205BHJP
   A61K 9/12 20060101ALI20231205BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20231205BHJP
   A61K 47/06 20060101ALI20231205BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20231205BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20231205BHJP
【FI】
A61K8/69
A61K8/19
A61K8/34
A61K9/12
A61K47/02
A61K47/06
A61K47/10
A61Q19/00
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019141468
(22)【出願日】2019-07-31
(65)【公開番号】P2021024786
(43)【公開日】2021-02-22
【審査請求日】2022-06-13
(73)【特許権者】
【識別番号】391021031
【氏名又は名称】株式会社ダイゾー
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】横木 亜矢子
【審査官】山田 陸翠
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-033121(JP,A)
【文献】特開2014-062208(JP,A)
【文献】特開2012-017464(JP,A)
【文献】特開2017-214136(JP,A)
【文献】特表2014-523928(JP,A)
【文献】特開2019-112507(JP,A)
【文献】特開2012-162497(JP,A)
【文献】特開2014-181405(JP,A)
【文献】国際公開第2019/031416(WO,A1)
【文献】特開2015-101545(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
A61K 9/00- 9/72
A61K 47/00-47/69
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
沸点5~40℃のハイドロフルオロオレフィンとアルコールとを含む原液と、圧縮ガスとからなり、
前記原液および圧縮ガスは、噴射製品の容器本体に充填されて使用され、
前記圧縮ガスは、炭酸ガスまたは亜酸化窒素のうち少なくともいずれか一方を含み、
前記沸点5~40℃のハイドロフルオロオレフィンは、トランス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンまたはシス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンのうち少なくともいずれか一方を含み、
噴射剤として、前記圧縮ガスのみを含み、
前記アルコールは、炭素数2~3の1価アルコールを含み、
前記沸点5~40℃のハイドロフルオロオレフィンの含有量は、原液中、30~85質量%であり、
前記アルコールの含有量は、原液中、5~55質量%であり、
前記容器本体に充填された状態において、25℃において平衡圧が0.5MPaとなる圧縮ガスの溶解量は、原液100mL中、0.3~10.0gである、噴霧用組成物。
【請求項2】
前記原液は、水を含む、請求項1記載の噴霧用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、噴霧用組成物に関する。より詳細には、本発明は、優れた冷感が持続して得られる、噴霧用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、頭皮や腕などの適用箇所に、冷感を付与するための噴霧用組成物が開発されている。特許文献1には、圧縮ガスとペンタンとを含む人体塗布用噴霧組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開昭62-33115号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の人体塗布用噴霧組成物は、得られる冷感が充分でない。また、ペンタンは可燃性であり、火気に対して危険性がある。また、特許文献1に記載の人体塗布用噴霧組成物は、冷感が持続しにくい。
【0005】
本発明は、このような従来の課題に鑑みてなされたものであり、火気に対して安全で、優れた冷感が持続して得られる噴霧用組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する本発明には、以下の構成が主に含まれる。
【0007】
(1)沸点5~40℃のハイドロフルオロオレフィンとアルコールとを含む原液と、圧縮ガスとからなり、前記圧縮ガスは、炭酸ガスまたは亜酸化窒素のうち少なくともいずれか一方を含む、噴霧用組成物。
【0008】
このような構成によれば、噴霧用組成物は、原液中に溶解する圧縮ガスの溶解量が多くなり、頭皮や腕などの適用箇所に噴霧されると、溶解していた圧縮ガスが放出されて、ハイドロフルオロオレフィンの気化を促進し、優れた冷感が得られる。また、噴霧用組成物は、火気に対して安全であり、かつ、適用箇所において冷感が持続しやすい。
【0009】
(2)前記原液は、水を含む、(1)記載の噴霧用組成物。
【0010】
このような構成によれば、噴霧用組成物は、優れた乾燥性が維持されつつ、より優れた冷感を付与しやすい。
【0011】
(3)前記ハイドロフルオロオレフィンの含有量は、30~90質量%である、(1)または(2)記載の噴霧用組成物。
【0012】
このような構成によれば、噴霧用組成物は、圧縮ガスの溶解量が多くなり、適用箇所に噴霧されると、適用箇所において、瞬時に気化することなく持続的に気化し、優れた冷感を長時間にわたって適用箇所に付与し続けることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、優れた冷感が持続して得られる噴霧用組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、実施例において調製した噴霧用組成物を噴射した際の噴射物の温度と経過時間との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<噴霧用組成物>
本発明の一実施形態の噴霧用組成物は、沸点5~40℃のハイドロフルオロオレフィンとアルコールとを含む原液と、圧縮ガスとからなる。圧縮ガスは、炭酸ガスまたは亜酸化窒素のうち少なくともいずれか一方を含む。本実施形態の噴霧用組成物は、火気に対して安全で、頭皮や腕などの適用箇所に噴霧されると、適用箇所に優れた冷感を付与することができる。また、冷感は、持続しやすい。以下、それぞれについて説明する。
【0016】
(原液)
原液は、沸点5~40℃のハイドロフルオロオレフィンとアルコールとを含む。また、原液は、水を含むことが好ましい。
【0017】
・沸点5~40℃のハイドロフルオロオレフィン
沸点5~40℃のハイドロフルオロオレフィンは、火気に対する安全性を高めるために配合される。また、沸点5~40℃のハイドロフルオロオレフィンは、圧縮ガスを多く溶解する溶媒として、頭皮や腕などの適用箇所に対して、適度な冷感を付与するために配合される。さらに、沸点5~40℃のハイドロフルオロオレフィンは、噴霧用組成物の乾燥性を調節する等のために配合される。
【0018】
沸点5~40℃のハイドロフルオロオレフィンは、たとえば、トランス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HFO-1233zd(E)、沸点19℃)、シス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HFO-1233zd(Z)、沸点39℃)等であることが好ましい。本実施形態の沸点5~40℃であるハイドロフルオロオレフィンは、他のハイドロフルオロオレフィン(たとえばトランス-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(沸点-19℃)、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(沸点-29℃)等)と比べて、沸点が高い。そのため、噴霧用組成物が噴射された場合、沸点5~40℃のハイドロフルオロオレフィンは、圧縮ガスの溶解量により、瞬間的に気化することなく気化速度を調整することができ、適用箇所において長時間、適度な冷感を付与することができる。また、噴霧用組成物は、適用箇所において、適度に乾燥しやすい。
【0019】
沸点5~40℃のハイドロフルオロオレフィンの含有量は特に限定されない。一例を挙げると、沸点5~40℃のハイドロフルオロオレフィンの含有量は、原液中、30質量%以上であることが好ましく、40質量%以上であることがより好ましい。また、沸点5~40℃のハイドロルオロオレフィンの含有量は、原液中、90質量%以下であることが好ましく、85質量%以下であることがより好ましい。沸点5~40℃のハイドロフルオロオレフィンの含有量が上記範囲内であることにより、噴霧用組成物は、圧縮ガスの溶解量が多くなり、適用箇所において長時間、適度な冷感を付与しやすい。
【0020】
・アルコール
アルコールは、乾燥性を調整して冷却温度や持続性などの冷感を調整するために配合される。
【0021】
アルコールは特に限定されない。一例を挙げると、アルコールは、エタノール、イソプロパノール等の炭素数が2~3個の1価アルコール等である。
【0022】
アルコールの含有量は特に限定されない。一例を挙げると、アルコールの含有量は、原液中、5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましい。また、アルコールの含有量は、原液中、55質量%以下であることが好ましく、50質量%以下であることがより好ましい。アルコールの含有量が上記範囲内であることにより、噴霧用組成物は、乾燥性を調整して冷却温度や持続性などの冷感をより調整しやすい。
【0023】
・任意成分
原液は、上記したハイドロフルオロオレフィン、アルコールのほかに、適宜、水、有効成分、界面活性剤、水溶性高分子、油剤、パウダー等の任意成分を含んでもよい。
【0024】
水は、噴霧用組成物の乾燥性を調節して、冷却温度を下げたり、冷却効果を持続させる等の目的で好適に配合される。
【0025】
水は特に限定されない。一例を挙げると、水は、精製水、イオン交換水、生理食塩水、海洋深層水等である。
【0026】
水が配合される場合、水の含有量は、特に限定されない。一例を挙げると、水の含有量は、原液中、0.1質量%以上であることが好ましく、0.3質量%以上であることがより好ましい。また、水の含有量は、原液中、30質量%以下であることが好ましく、25質量%以下であることがより好ましい。水の含有量が上記範囲内であることにより、噴霧用組成物は、均一相を形成しやすく、優れた乾燥性を維持しつつ、適用箇所に、より優れた冷感が持続しやすい。
【0027】
有効成分は、製品の用途や目的などに応じて適宜選択することができる。一例を挙げると、有効成分は、天然香料、合成香料などの各種香料;l-メントール、カンフル、ハッカ油などの清涼剤;レチノール、酢酸レチノール、パルミチン酸レチノール、パントテン酸カルシウム、アスコルビン酸リン酸マグネシウム、アスコルビン酸ナトリウム、dl-α-トコフェロール、酢酸トコフェロール、トコフェロール、ニコチン酸トコフェロール、ジベンゾイルチアミン、リボフラビンおよびこれらの混合物などのビタミン類;アスコルビン酸、α-トコフェロール、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソールなどの酸化防止剤;グリシン、アラニン、ロイシン、セリン、トリプトファン、システイン、メチオニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、アルギニンなどのアミノ酸;コラーゲン、ヒアルロン酸、カロニン酸、乳酸ナトリウム、dl-ピロリドンカルボン酸塩、ケラチン、カゼイン、レシチン、尿素などの保湿剤;パラオキシ安息香酸エステル、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸カリウム、フェノキシエタノール、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化クロルヘキシジン、パラクロルメタクレゾールなどの殺菌消毒剤;センブリエキス、ローヤルゼリーエキス、シャクヤクエキス、ヘチマエキス、バラエキス、レモンエキス、アロエエキス、ショウブ根エキス、ユーカリエキス、セージエキス、茶エキス、海藻エキス、プラセンタエキス、シルク抽出液などの抽出液;酸化亜鉛、アラントインヒドロキシアルミニウム、タンニン酸、クエン酸、乳酸などの収斂剤;アラントイン、グリチルレチン酸、グリチルリチン酸ジカリウム、アズレンなどの抗炎症剤;ラウリル酸メタクリレート、安息香酸メチル、フェニル酢酸メチル、ゲラニルクロトレート、ミリスチン酸アセトフェノン、酢酸ベンジル、プロピオン酸ベンジル、緑茶エキスなどの消臭剤;ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル、エチルヘキシルトリアゾン、オキシベンゾン、ヒドロキシベンゾフェノンスルホン酸、ジヒドロキシベンゾフェノンスルホン酸ナトリウム、ジヒドロキシベンゾフェノンなどの紫外線吸収剤;酸化亜鉛、酸化チタン、オクチルトリメトキシシラン被覆酸化チタンなどの紫外線散乱剤;アルブチン、コウジ酸などの美白剤;N,N-ジエチル-m-トルアミド(ディート)、ジ-n-ブチルサクシネート、ヒドロキシアニソール、ロテノン、エチル-ブチルアセチルアミノプロピオネート、イカリジン(ピカリジン)、p-メンタン-3,8-ジオール、3-[アセチル(ブチル)アミノ]プロピオン酸エチル、2-(2-ヒドロキシエチル)ピペリジン-1-カルボン酸1-メチルプロピルなどの害虫忌避剤;クロロヒドロキシアルミニウム、イソプロピルメチルフェノールなどの制汗剤;サリチル酸メチル、インドメタシン、フェルビナク、ケトプロフェンなどの消炎鎮痛剤;ミノキシジルなどの育毛剤;(アクリレーツ/アクリル酸アルキル/メタクリル酸エチルアミンオキシド)コポリマーなどのアニオン性樹脂;ビニルピロリドン/N,N-ジメチルアミノエチルメタクリル酸共重合体ジエチル硫酸塩、塩化メチルビニルイミダゾリウム/ビニルピロリドン共重合体、メチルビニルイミダゾリウム/ビニルピロリドン共重合体メチル硫酸塩などのカチオン性樹脂;(アクリル酸オクチルアミド/アクリル酸ヒドロキシプロピル/メタクリル酸ブチルアミノエチル)コポリマーなどのアクリル酸系両性樹脂;ポリビニルピロリドン、酢酸ビニル/ビニルピロリドン共重合体、ポリビニルカプロラクタム、N-ビニルピロリドン/メタクリルアミド/N-ビニルイミダゾール共重合体、メタクリル酸、イタコン酸/少なくとも1種の炭素数1~3のアクリル酸エステル、メタアクリル酸エステル)コポリマー、(ジメチルアクリルアミド/アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリル酸メトキシエチル)コポリマーなどのノニオン性樹脂;アクリル酸アルキル共重合体エマルジョン、アクリル酸アルキル-スチレン共重合体エマルジョン、ビニルピロリドン-スチレン共重合体エマルジョン、アクリル酸-アクリル酸ヒドロキシエステル共重合体エマルジョンなどのエマルジョン系樹脂などのスタイリング剤等である。
【0028】
有効成分が配合される場合、有効成分の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、有効成分の含有量は、原液中、0.05質量%以上であることが好ましく、0.1質量%以上であることがより好ましい。また、有効成分の含有量は、原液中、20質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましい。有効成分の含有量が上記範囲内であることにより、有効成分を配合することによる効果が得られやすい。
【0029】
界面活性剤は、帯電防止効果、トリートメント効果を得るために好適に配合される。
【0030】
界面活性剤は特に限定されない。一例を挙げると、界面活性剤は、ミリスチン酸やステアリン酸などの脂肪酸とトリエタノールアミンやカリウムなどのアルカリのケン化物、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩、アルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、アルキルエーテルカルボン酸塩、スルホン酸塩などのアニオン性界面活性剤;N-アシルグルタミン酸塩、N-アシルグリシン塩、N-アシルアラニン塩;アシルアラニン塩などのアミノ酸型アニオン性界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、脂肪酸アルカノールアミド、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステルなどの非イオン性界面活性剤;ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体、ポリオキシプロピレン・メチルポリシロキサン共重合体、ポリ(オキシエチレン・オキシプロピレン)・メチルポリシロキサン共重合体などのシリコーン系界面活性剤;ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン(ラウリルベタイン)、ステアリルベタイン、ラウリン酸アミドプロピルベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン(コカミドプロピルベタイン)などの両性界面活性剤等である。界面活性剤は併用されてもよい。
【0031】
界面活性剤が配合される場合、界面活性剤の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、界面活性剤の含有量は、原液中、0.1質量%以上であることが好ましく、0.5質量%以上であることがより好ましい。また、界面活性剤の含有量は、10質量%以下であることが好ましく、8質量%以下であることがより好ましい。界面活性剤の含有量が上記範囲内であることにより、噴霧用組成物は、所望する効果が得られやすく、かつ、べたつきにくく使用感が良い。
【0032】
水溶性高分子は、噴霧用組成物の粘度を調整して、ハイドロフルオロオレフィンや圧縮ガスの気化速度を調整し、冷却温度や持続性を調整する等のために配合される。
【0033】
水溶性高分子は特に限定されない。一例を挙げると、水溶性高分子は、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムなどのセルロース系高分子;キサンタンガム、カラギーナン、アラビアゴム、トラガントゴム、カチオン化グアガム、グアガム、ジェランガムなどのガム質;デキストラン、カルボキシメチルデキストランナトリウム、デキストリン、ペクチン、アルギン酸ナトリウム、ヒアルロン酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、カルボキシビニルポリマー等である。
【0034】
水溶性高分子が配合される場合、水溶性高分子の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、水溶性高分子の含有量は、原液中、0.01質量%以上であることが好ましく、0.05質量%以上であることがより好ましい。また、水溶性高分子の含有量は、原液中、5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましい。水溶性高分子の含有量が上記範囲内であることにより、水溶性高分子を配合することによる効果が得られやすく、かつ、原液の粘度が高くなり過ぎない。
【0035】
油剤は、保湿、ツヤ、すべりを良くするなど使用感を向上させる等のために配合される。
【0036】
油剤は特に限定されない。一例を挙げると、油剤は、ジメチコン、メチルポリシロキサン、シクロペンタシロキサン、シクロヘキサシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、メチルシクロポリシロキサン、テトラヒドロテトラメチルシクロテトラシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサンなどのシリコーンオイル;流動パラフィン、イソパラフィンなどの炭化水素油;ジネオペンタン酸メチルペンタンジオール、ジネオペンタン酸ジエチルペンタンジオール、ジ-2-エチルへキサン酸ネオペンチルグリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ジラウリン酸プロピレングリコール、ジステアリン酸エチレングリコール、ジラウリン酸ジエチレングリコール、ジステアリン酸ジエチレングリコール、ジイソステアリン酸ジエチレングリコール、ジオレイン酸ジエチレングリコール、ジラウリン酸トリエチレングリコール、ジステアリン酸トリエチレングリコール、ジイソステアリン酸トリエチレングリコール、ジオレイン酸トリエチレングリコール、モノステアリン酸プロピレングリコール、モノオレイン酸プロピレングリコール、モノステアリン酸エチレングリコール、トリ2-エチルへキサン酸グリセリル、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリン、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸イソトリデシル、コハク酸ジエトキシエチル、リンゴ酸ジイソステアリル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、イソオクタン酸セチル、ヒドロキシステアリン酸オクチル、ヒドロシキシステアリン酸エチルヘキシル、アジピン酸ジイソプロピルなどのエステル油;オリーブ油、ツバキ油、トウモロコシ油、ヒマシ油、サフラワー油、ホホバ油、ヤシ油などの油脂;イソステアリン酸、オレイン酸などの脂肪酸;オレイルアルコール、イソステアリルアルコールなどの高級アルコール等である。
【0037】
油剤が配合される場合、油剤の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、油剤の含有量は、原液中、0.1質量%以上であることが好ましく、0.2質量%以上であることがより好ましい。また、油剤の含有量は、原液中、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。油剤の含有量が上記範囲内であることにより、油剤を配合することによる効果が得られやすい。また、噴霧用組成物は、かつ、乾燥性が低下しにくく、べたつきが生じにくい。
【0038】
パウダーは、サラサラ感を付与するなど、使用感を向上させるために好適に配合される。
【0039】
パウダーは特に限定されない。一例を挙げると、パウダーは、タルク、酸化亜鉛、酸化チタン、シリカ、ゼオライト、カオリン、雲母、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、ケイ酸亜鉛、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム等である。
【0040】
パウダーが配合される場合、パウダーの含有量は特に限定されない。一例を挙げると、パウダーの含有量は、原液中、0.1質量%以上であることが好ましく、0.3質量%以上であることがより好ましい。また、パウダーの含有量は、原液中、5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましい。パウダーの含有量が上記範囲内であることにより、パウダーを配合することによる効果が得られやすく、かつ、噴霧用組成物は、吐出される際に、吐出通路において詰まりを生じにくい。
【0041】
原液の調製方法は特に限定されない。原液は、従来公知の方法により調製することができる。たとえば、原液は、上記アルコール、水や有効成分などの任意成分を混合し、これにハイドロフルオロオレフィンを添加することにより調製され得る。
【0042】
(圧縮ガス)
圧縮ガスは、原液を加圧して微細な霧状に噴霧するための噴射剤として配合される。また、圧縮ガスは、原液に一部が溶解することにより、噴霧用組成物が外部に吐出された際に、溶解していた圧縮ガスが微細な気泡となり、ハイドロフルオロオレフィンの気化を促進し、気化熱により適度な冷感を付与する。また、圧縮ガスは、冷却温度や冷感の持続性を調整する。
【0043】
圧縮ガスは、炭酸ガス、または、亜酸化窒素のうち少なくともいずれか一方を含む。圧縮ガスは、ハイドロフルオロオレフィンへの溶解度が高く、噴霧時にハイドロフルオロオレフィンの気化を促進して、適用箇所に優れた冷感を付与することができる。
【0044】
また、冷感の調節のために、窒素、空気、酸素、水素など、ハイドロフルオロオレフィンへの溶解量の低い圧縮ガスが併用されてもよい。
【0045】
圧縮ガスは、25℃における容器内の圧力が0.2MPa以上となるよう充填されることが好ましく、0.3MPa以上となるよう充填されることがより好ましい。また、圧縮ガスは、25℃における容器内の圧力が0.8MPa以下となるよう充填されることが好ましく、0.7MPa以下となるよう充填されることがより好ましい。圧力が上記範囲内になるよう圧縮ガスが充填されることにより、圧縮ガスが原液に所定の濃度に溶解し、吐出された際にはハイドロフルオロオレフィンの気化を促進して、優れた冷感を得られ、冷感が持続する。なお、25℃において平衡圧が0.5MPaとなる圧縮ガスの溶解量は、原液100mL中0.3~10.0gであることが好ましい。
【0046】
噴霧用組成物全体の説明に戻り、噴霧用組成物の調製方法は特に限定されない。一例を挙げると、噴霧用組成物は、上記原液を容器本体内に充填し、容器本体にエアゾールバルブを取り付けて密封し、エアゾールバルブから圧縮ガスを充填し、圧縮ガスを原液に飽和溶解させることにより製造し得る。
【0047】
以上、本実施形態の噴霧用組成物は、沸点5~40℃のハイドロフルオロオレフィンとアルコールとを含んでいる。このような原液は、圧縮ガスによって噴霧されると、頭皮や腕などの適用箇所において、溶解している圧縮ガスによりハイドロフルオロオレフィンの気化が促進されて、適用箇所に優れた冷感を付与することができる。また、冷感は、持続しやすい。
【0048】
<噴射製品>
本発明の一実施形態の噴射製品は、上記した噴霧用組成物が充填され、圧縮ガスにより原液を加圧して吐出する、噴射製品である。なお、本実施形態の噴射製品は、圧縮ガスにより原液を加圧して噴射することのできる構成を備えていればよく、このような構成は特に限定されない。そこで、本実施形態では、一例として、噴霧用組成物と圧縮ガスとが充填された容器本体と、容器本体に取り付けられたバルブ機構とを主に備える噴射製品について説明する。
【0049】
(容器本体)
容器本体は、原液および圧縮ガスが充填される容器である。容器本体は、上部に開口を有する有底筒状の耐圧容器である。開口は、原液を充填するための充填口であり、後述するバルブ機構により閉止される。
【0050】
容器本体の材質は特に限定されない。一例を挙げると、容器本体の材質は、アルミニウム、ブリキ等の金属、各種合成樹脂、耐圧ガラス等である。
【0051】
(バルブ機構)
バルブ機構は、容器本体の開口を閉止して密封するための部材である。また、バルブ機構は、ハウジングと、容器本体の内外を連通するステム孔が形成されたステムと、ステム孔の周囲に取り付けられ、ステム孔を閉止するためのステムラバーとを主に備える。ハウジングは、ステムを収容する。ステムは、略円筒状の部位であり、吐出時にハウジング内に取り込まれた噴霧用組成物が通過するステム内通路が形成されている。ステム内通路の下端近傍には、ハウジング内の空間とステム内通路とを連通するステム孔が形成されている。ステムの上端には、噴霧用組成物を吐出するための噴射部材が取り付けられる。ステムラバーは、ステム孔の周囲に取り付けられ、ハウジングの内部空間と外部とを適宜遮断するための部材である。ステムラバーは、円盤状の部材であり、非吐出時において、内周面をステムのステム孔が形成された外周面と密着させて、ステム孔を閉止する。
【0052】
(噴射部材)
噴射部材は、噴霧用組成物を吐出するための部材であり、ステムの上端に取り付けられる。噴射部材は、噴射孔が形成されたノズル部と、使用者が指等により操作する操作部とを主に備える。吐出孔からは、噴霧用組成物が吐出される。吐出孔の数および形状は特に限定されない。吐出孔は、複数であってもよい。また、吐出孔の形状は、略円形状、略角形状等であってもよい。
【0053】
本実施形態の噴射製品は、噴射部材が押し下げられると、バルブ機構のステムが下方に押し下げられる。これにより、ステムラバーが下方に撓み、ステム孔が開放される。その結果、容器本体内と外部とが連通する。容器本体内と外部とが連通すると、容器本体の気相部分に主に存在する圧縮ガスの圧力によって、原液の液面が押圧される。これにより原液は、ハウジング内に取り込まれ、次いで、ステム孔、ステム内通路を通過し、噴射部材に送られ、その後、吐出孔から吐出される。
【実施例
【0054】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明する。本発明は、これら実施例に何ら限定されない。
【0055】
(実施例1)
以下の表1に記載の処方(単位:質量%)に従って、原液1を調製し、容器本体に充填した。容器本体の開口部にエアゾールバルブを取り付け、ステムから炭酸ガスを充填し、容器本体内の圧力を0.5MPa(25℃)に調整した。
【0056】
【表1】
【0057】
(実施例2~7、比較例1~2)
使用した原液および圧縮ガスの種類および配合比率を表1および表2に記載の処方に変更した以外は、実施例1と同様の方法により、原液を調製し、容器本体に充填した。
【0058】
【表2】
【0059】
実施例1~7および比較例1~2において調製した噴霧用組成物を用いて、以下の評価方法により、評価した。結果を表3に示す。
【0060】
<溶解量>
25℃において平衡圧が0.5MPaとなる時の圧縮ガスの充填量、原液充填容量、容器内の気相の容量から原液100mL中の溶解している圧縮ガス量を算出した。
【0061】
<温度>
25℃に調整した恒温水槽中に1時間浸漬した噴射製品を用いて、カップに10mL噴射し、所定時間経過したときの噴射物の温度を、デジタル温度計(CT-1200D、CUSTOM corporation社製)と熱電対センサー(LK-300、CUSTOM corporation社製)を用いて測定した。図1は噴射物の温度と経過時間との関係を示すグラフである。
【0062】
<冷感>
25℃に調整した恒温水槽中に1時間浸漬した噴射製品を用いて、噴霧用組成物を腕に噴霧し、以下の評価基準に従って評価した。
(評価基準)
○:心地よい冷感が得られ、持続した。
△:冷感が感じられたが、もの足りなかった。
×:ほとんど冷感が感じられなかった。
【0063】
【表3】
【0064】
表3に示されるように、実施例1~7の噴霧用組成物は、噴射5秒後における温度が0℃以下(-13.5~-2.3℃)であり、優れた冷感を付与することができた。また、実施例1~7の噴霧用組成物は、ゆっくりと温度上昇し、噴射100秒後における温度が5℃以下(-0.1~4.3℃)であり、冷却効果が長時間維持された。一方、比較例1の噴霧用組成物は、噴射5秒後における温度が1.5℃であり噴射100秒後における温度が7.0℃であり、冷却したものの、もの足りなかった。また、比較例2の噴霧用組成物は、噴射5秒後における温度が21.1℃であり冷却効果はほとんど無く、時間が経過しても温度変化しなかった。
【0065】
(製品例1、冷感ローション)
以下に記載の処方(単位:質量%)に従って、原液7を調製し、容器本体に充填した。容器本体の開口部にエアゾールバルブを取り付け、ステムから炭酸ガスを充填し、容器本体内の圧力を0.5MPa(25℃)に調整した。評価結果を表4に示す。
【0066】
(原液7)
アジピン酸ジイソプロピル 0.4
ヒドロキシプロピルセルロース 0.2
エタノール 19.6
メントール 0.2
水 1.1
ハイドロフルオロオレフィン 78.5
合計 100.0(質量%)
【0067】
【表4】
【0068】
表4に示されるように、製品例1の冷感ローションは、噴射5秒後における温度が0℃以下であり、優れた冷感を付与することができた。また、製品例1の冷感ローションは、噴射100秒後における温度が-0.7℃であり、冷却効果が長時間維持した。
図1