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特許7396831異常検知システム及び異常検知方法、それを用いた重合体製造システム及び重合体製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-04
(45)【発行日】2023-12-12
(54)【発明の名称】異常検知システム及び異常検知方法、それを用いた重合体製造システム及び重合体製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 73/10 20060101AFI20231205BHJP
   G01N 21/27 20060101ALI20231205BHJP
   G01N 23/223 20060101ALI20231205BHJP
【FI】
C08G73/10
G01N21/27 Z
G01N23/223
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019148475
(22)【出願日】2019-08-13
(65)【公開番号】P2021031502
(43)【公開日】2021-03-01
【審査請求日】2022-06-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(72)【発明者】
【氏名】竪山 瑛人
(72)【発明者】
【氏名】豊田 倶透
(72)【発明者】
【氏名】小野 耕司
【審査官】古妻 泰一
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-236262(JP,A)
【文献】特開昭62-236262(JP,A)
【文献】特開昭62-068852(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 73/10
G01N 21/27
G01N 23/223
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアミック酸の製造システム用異常検知システムであって、
重付加性の重合性化合物及び/又は重付加反応によって得られた重合体を含み、フィラーを含む第1原料溶液について、前記第1原料溶液を送液する管路及び/又は前記第1原料溶液を貯蔵する貯槽内に設けられ、前記フィラーの濃度を測定するための物理量に関する1又は2以上の第1測定情報を取得する第1測定部を有し、前記フィラーの濃度に関する異常を検知でき、
前記第1原料溶液は、テトラカルボン酸二無水物、ジアミン、ポリアミック酸のいずれか1以上を含む溶液であり、
前記第1測定部は、吸光光度計、赤外分光計、近赤外分光計、密度計、色差計、屈折率計、分光光度計、濁度計、及び蛍光X線分析装置からなる群より選択される1又は2以上を有して構成される、
ポリアミック酸の製造システム用異常検知システム。
【請求項2】
前記第1測定部は可視光線及び/又は赤外線を照射する発光部と、前記可視光線または前記赤外線を受光する受光部を有し、前記第1原料溶液の可視光線及び/又は赤外線の透過率を前記発光部及び前記受光部によって測定することで、前記第1原料溶液中の前記フィラーの濃度を測定する、請求項1に記載のポリアミック酸の製造システム用異常検知システム。
【請求項3】
前記第1測定部で得られた情報を元にフィラー濃度を調整する第1調整部を更に備えることを特徴とする請求項1または2に記載のポリアミック酸の製造システム用異常検知システム。
【請求項4】
前記フィラーのフィラー濃度は、ポリアミック酸溶液中の固形分に対して0.01~0.50重量%であることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のポリアミック酸の製造システム用異常検知システム。
【請求項5】
重付加性の第1重合性化合物が溶解した第1原料溶液と、前記第1重合性化合物と重付加する重付加性の第2重合性化合物が溶解した第2原料溶液とを原料とし、
前記第1原料溶液を供給する第1供給部と、
前記第2原料溶液を供給する第2供給部と、
前記第1原料溶液と前記第2原料溶液とを混合して第1混合溶液を生成する第1混合部と、
前記第1混合溶液を撹拌し、前記第1重合性化合物と前記第2重合性化合物との重合反応を進行させて、ポリアミック酸が溶解した1反応溶液を生成する第1反応部とを備え、
前記第1原料溶液を送液する管路及び/又は前記第1原料溶液を貯蔵する貯槽内に請求項1~のいずれか1項に記載の第1測定部を有する異常検知システムを組み込んだポリアミック酸の製造システム。
【請求項6】
製造されたポリアミック酸をイミド化するイミド化部を更に含む請求項5に記載の重合体製造システム。
【請求項7】
ポリアミック酸の製造方法用の異常検知方法であって、
重付加性の重合性化合物及び/又は重付加反応によって得られた重合体を含み、フィラーを含む第1原料溶液について、前記第1原料溶液を送液する管路及び/又は前記第1原料溶液を貯蔵する貯槽内に設けられ、前記フィラーの濃度を測定するための物理量に関する1又は2以上の第1測定情報を取得する第1測定部を有し、前記フィラーの濃度に関する異常を検知でき、
前記第1原料溶液は、テトラカルボン酸二無水物、ジアミン、ポリアミック酸のいずれか1以上を含む溶液であり、
前記第1測定部は、吸光光度計、赤外分光計、近赤外分光計、密度計、色差計、屈折率計、分光光度計、濁度計、及び蛍光X線分析装置からなる群より選択される1又は2以上を有して構成される、
異常検知システムを用いることを特徴とするポリアミック酸の製造方法用の異常検知方法。
【請求項8】
前記第1測定部は可視光線及び/又は赤外線を照射する発光部と、前記可視光線または前記赤外線を受光する受光部を有し、
前記第1原料溶液の可視光線及び/又は赤外線の透過率を前記発光部及び前記受光部によって測定することで、前記第1原料溶液中の前記フィラーの濃度を測定する、請求項7に記載のポリアミック酸の製造方法用の異常検知システムを用いることを特徴とするポリアミック酸の製造方法用の異常検知方法。
【請求項9】
前記第1測定部で得られた情報を元にフィラー濃度を調整する第1調整部を更に備えることを特徴とする請求項7または8に記載の異常検知システムを用いることを特徴とするポリアミック酸の製造方法用の異常検知方法。
【請求項10】
前記フィラーのフィラー濃度は、ポリアミック酸溶液中の固形分に対して0.01~0.50重量%であることを特徴とする請求項7~9のいずれかに記載のポリアミック酸の製造方法用の異常検知方法。
【請求項11】
重付加性の第1重合性化合物が溶解した第1原料溶液と、前記第1重合性化合物と重付加する重付加性の第2重合性化合物が溶解した第2原料溶液とを原料とし、
前記第1原料溶液を供給する第1供給部と、
前記第2原料溶液を供給する第2供給部と、
前記第1原料溶液と前記第2原料溶液とを混合して第1混合溶液を生成する第1混合部と、
前記第1混合溶液を撹拌し、前記第1重合性化合物と前記第2重合性化合物との重合反応を進行させて、ポリアミック酸が溶解した1反応溶液を生成する第1反応部とを備え、
前記第1原料溶液を送液する管路及び/又は前記第1原料溶液を貯蔵する貯槽内に請求項1~4のいずれか1項に記載の第1測定部を有する異常検知システムを組み込んだポリアミック酸の製造システムを用いることを特徴とするポリアミック酸の製造方法。
【請求項12】
製造されたポリアミック酸をイミド化するイミド化部を更に含む請求項5に記載の重合体製造システムを用いることを特徴とするポリアミック酸の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異常検知システム及び異常検知方法、それを用いた重合体製造システム及び重合体製造方法に関する。詳細には、本発明は、重付加性の重合性化合物及び/又は重付加反応によって得られた重合体を含む溶液中の、フィラーの濃度を測定することによる異常検知システム及び異常検知方法と、それを用いた重合体製造システム及び重合体製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリイミドフィルムは、耐熱性、絶縁性に優れていることから、フレキシブルプリント基板などの各種プリント基板の基材フィルムとして使用されている。このポリイミドフィルムは、表面が平滑だと摩擦が大きく、ラミネートによって銅箔を接着する際に皺ができたりロールに巻きついたりすることがある。そこで、滑剤として少量の無機粒子が添加される場合が多い(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【0003】
この際、滑剤の量が少なすぎると、十分な表面滑性が得られない。一方、滑剤の量が多すぎると、粒子の凝集が起こりやすくなる。製造過程で滑剤の凝集体がフィルム中に混入すると、プリント基板として用いる際に欠陥となってしまう。従って、ポリイミドフィルムの製造プロセスにおいては、製膜する前のポリアミック酸溶液中に、適切な濃度の滑剤が分散されている必要がある。しかしながら、ポリアミック酸溶液の粘度が低い場合では、滑剤を一度分散させた後、静置状態で貯蔵する際に分散状態を長期間保持できない場合がある。
【0004】
ところで、ポリアミック酸溶液の合成において、従来のバッチプロセスでは所望の粘度に調整するのに手間がかかることから、連続プロセスによって容易に所望の粘度に調整されたポリアミック酸溶液を合成する方法が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【0005】
特許文献3では滑剤を添加する方法について言及されていないが、粘度が高いポリアミック酸溶液に滑剤を均一に分散させることは困難であるから、連続プロセスに供給する前の原料溶液に対して滑剤を分散させるのが好ましい。しかしながら、原料溶液は粘度が低いため、連続プロセスに供給する前の貯槽内で滑剤が沈降し、連続プロセスに供給する際には滑剤の濃度が適切な添加量とは異なっている可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平6-145378号公報
【文献】特開2011-1439号公報
【文献】特開昭62-214912号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような状況下、滑剤としてのフィラーを添加した後の溶液を貯蔵する際に、フィラーの分散状態が保持され、常に適切な濃度に保たれているかどうかを監視する方法が求められている。また、滑剤が溶液中で沈降するなどして濃度が不均一になった場合に、自動で再分散操作やフィラーの追加操作などができれば、スペックアウトの廃棄品の量を低減することができるとともに、製造オペレーションの少人化、無人化が可能となる。
【0008】
本発明は、重付加性の重合性化合物及び/又は重付加反応によって得られた重合体を含む溶液中に分散したフィラーの濃度を測定し、設定した濃度の範囲外になったときに検知できる異常検知システム及び異常検知方法を提供することを目的とする。また、本発明は、その異常検知システム及び異常検知方法を用いて、重合体を連続生産する重合体製造システム及び重合体製造方法により、安定したフィラー濃度の重合性化合物及び/又は重合体を含む溶液を提供することを他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための具体的な手段には、以下の実施態様が含まれる。
<1>重付加性の重合性化合物及び/又は重付加反応によって得られた重合体を含み、フィラーを含む第1溶液について、
前記第1溶液を送液する管路及び/又は前記第1溶液を貯蔵する貯槽内に設けられ、
前記フィラーの濃度を測定するための物理量に関する1又は2以上の第1測定情報を取得する第1測定部を有し、前記フィラーの濃度に関する異常を検知できる異常検知システム。
【0010】
<2>前記第1測定部は、吸光光度計、赤外分光計、近赤外分光計、密度計、色差計、屈折率計、分光光度計、濁度計、及び蛍光X線分析装置からなる群より選択される1又は2以上を有して構成される、<1>に記載の異常検知システム。
【0011】
<3>前記第1測定部は可視光線及び/又は赤外線を照射する発光部と、前記可視光線または前記赤外線を受光する受光部を有し、
前記第1溶液の可視光線及び/又は赤外線の透過率を前記発光部及び前記受光部によって測定することで、前記第1溶液中の前記フィラーの濃度を測定する、<1>に記載の異常検知システム。
【0012】
<4>前記第1測定部で得られた情報を元にフィラー濃度を調整する第1調整部を更に備えることを特徴とする<1>~<3>のいずれかに記載の異常検知システム。
【0013】
<5>前記第1溶液は、テトラカルボン酸二無水物、ジアミン、ポリアミック酸のいずれか1以上を含む溶液である<1>~<4>のいずれか1項に記載の異常検知システム。
【0014】
<6>重付加性の第1重合性化合物が溶解した第1原料溶液と、前記第1重合性化合物と重付加する重付加性の第2重合性化合物が溶解した第2原料溶液とを原料とし、
前記第1原料溶液を供給する第1供給部と、
前記第2原料溶液を供給する第2供給部と、
前記第1原料溶液と前記第2原料溶液とを混合して第1混合溶液を生成する第1混合部と、
前記第1混合溶液を撹拌し、前記第1重合性化合物と前記第2重合性化合物との重合反応を進行させて、ポリアミック酸が溶解した前記第1反応溶液を生成する第1反応部とを備え、
前記第1溶液を送液する管路及び/又は前記第1溶液を貯蔵する貯槽内に<1>~<5>のいずれか1項に記載の第1測定部を有する異常検知システムを組み込んだポリアミック酸の製造システム。
【0015】
<7>製造されたポリアミック酸をイミド化するイミド化部を更に含む<6>に記載の重合体製造システム。
【0016】
<8>重付加性の重合性化合物及び/又は重付加反応によって得られた重合体を含み、フィラーを含む第1溶液について、
前記第1溶液を送液する管路及び/又は前記第1溶液を貯蔵する貯槽内に設けられ、
前記フィラーの濃度を測定するための物理量に関する1又は2以上の第1測定情報を取得する第1測定部を有し、前記フィラーの濃度に関する異常を検知できる異常検知システムを用いることを特徴とする異常検知方法。
【0017】
<9>前記第1測定部は、吸光光度計、赤外分光計、近赤外分光計、密度計、色差計、屈折率計、分光光度計、濁度計、及び蛍光X線分析装置からなる群より選択される1又は2以上を有して構成される、<8>に記載の異常検知システムを用いることを特徴とする異常検知方法。
【0018】
<10>前記第1測定部は可視光線及び/又は赤外線を照射する発光部と、前記可視光線または前記赤外線を受光する受光部を有し、
前記第1溶液の可視光線及び/又は赤外線の透過率を前記発光部及び前記受光部によって測定することで、前記第1溶液中の前記フィラーの濃度を測定する、<8>に記載の異常検知システムを用いることを特徴とする異常検知方法。
【0019】
<11>前記第1測定部で得られた情報を元にフィラー濃度を調整する第1調整部を更に備えることを特徴とする<8>~<10>のいずれかに記載の異常検知システムを用いることを特徴とする異常検知方法。
【0020】
<12>前記第1溶液は、テトラカルボン酸二無水物、ジアミン、ポリアミック酸のいずれか1以上を含む溶液である<8>~<11>のいずれか1項に記載の異常検知システムを用いることを特徴とする異常検知方法。
【0021】
<13>重付加性の第1重合性化合物が溶解した第1原料溶液と、前記第1重合性化合物と重付加する重付加性の第2重合性化合物が溶解した第2原料溶液とを原料とし、
前記第1原料溶液を供給する第1供給部と、
前記第2原料溶液を供給する第2供給部と、
前記第1原料溶液と前記第2原料溶液とを混合して第1混合溶液を生成する第1混合部と、
前記第1混合溶液を撹拌し、前記第1重合性化合物と前記第2重合性化合物との重合反応を進行させて、ポリアミック酸が溶解した前記第1反応溶液を生成する第1反応部とを備え、
前記第1溶液を送液する管路及び/又は前記第1溶液を貯蔵する貯槽内に<8>~<12>のいずれか1項に記載の第1測定部を有する異常検知システムを組み込んだポリアミック酸の製造システムを用いることを特徴とするポリアミック酸の製造方法。
【0022】
<14>製造されたポリアミック酸をイミド化するイミド化部を更に含む<13>に記載の重合体製造システムを用いることを特徴とするポリアミック酸の製造方法。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、重付加性の重合性化合物及び/又は重付加反応によって得られた重合体を含む溶液中に分散したフィラーの濃度を測定する濃度測定システム及び測定方法を提供することができる。また、本発明によれば、安定したフィラー濃度の重合性化合物及び/又は重合体を含む溶液を提供することができる。こうした効果により、品質不良を早い段階で検知し、廃棄品の量を最小限に抑えることができる。
【0024】
また、本発明によれば、安定したフィラー濃度の重合性化合物及び/又は重合体を含む溶液を連続生産することができる。連続プロセスではロットの定義がしにくいことから、品質管理がバッチプロセスよりも困難になる場合がある。これに対し、本発明によれば、生産ラインにおいて溶液中のフィラー濃度を常時監視、記録できることから、連続生産中の品質の均一性を保証することが可能となり、連続プロセスの品質管理体制の向上に貢献する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】第1実施形態における異常検知システムを示す図である。
図2】第1実施形態における異常検知システムのブロック図である。
図3】第1実施形態における異常検知システムの動作を説明するフロー図である。
図4】第2実施形態における重合体製造システムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
第1実施形態は、異常検知システムの例であって、管路及び/又は第1溶液を貯蔵する貯槽内に設けられた測定部からの測定情報に基づいて、滑剤の濃度や分散状態を調整可能なシステムの例である。
【0027】
<第1実施形態>
図1から図3により、第1実施形態における異常検知システムについて説明する。図1は、第1実施形態における異常検知システムを示す図である。図2は、第1実施形態における異常検知システムのブロック図である。図3は、第1実施形態における異常検知システムの動作を説明するフロー図である。
【0028】
まず、第1実施形態における異常検知システム1の概要について説明する。
異常検知システム1は、重付加性の重合性化合物及び/又は重付加反応によって得られた重合体を含み、フィラーが分散された第1溶液(第1原料溶液)A1のフィラー濃度の異常を検知する異常検知システムである。
【0029】
以下では一例として、テトラカルボン酸二無水物、ジアミン、ポリアミック酸からなる群より選択されるいずれか1以上を含む溶液中に、滑剤となる微粒子を分散させて第1タンク11に貯蔵する際、滑剤の濃度の異常を検知する場合について説明する。
【0030】
テトラカルボン酸二無水物としては、特に制限されず、従来のポリイミド合成で用いられているものと同様のものを用いることができる。テトラカルボン酸二無水物の具体例としては、3,3',4,4'-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3',4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸二無水物、1,3-ビス(2,3-ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物、1,4-ビス(2,3-ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物、2,3,3',4'-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2',3,3'-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2',3,3'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2',6,6'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ナフタレン-1,2,4,5-テトラカルボン酸二無水物、アントラセン-2,3,6,7-テトラカルボン酸二無水物、フェナンスレン-1,8,9,10-テトラカルボン酸二無水物等の芳香族テトラカルボン酸二無水物;ブタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸二無水物等の脂肪族テトラカルボン酸二無水物;シクロブタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸二無水物等の脂環族テトラカルボン酸二無水物;チオフェン-2,3,4,5-テトラカルボン酸二無水物、ピリジン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物等の複素環族テトラカルボン酸二無水物;などが挙げられる。テトラカルボン酸二無水物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0031】
ジアミンとしては、特に制限されず、従来のポリイミド合成で用いられているものと同様のものを用いることができる。ジアミンの具体例としては、4,4'-ジアミノジフェニルメタン、4,4'-ジアミノジフェニルエーテル、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、4,4'-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、1,4'-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3'-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、o-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、3,4'-ジアミノジフェニルエーテル、4,4'-ジアミノジフェニルスルフォン、3,4’-ジアミノジフェニルスルフォン、3,3'-ジアミノジフェニルスルフォン、4,4'-メチレン-ビス(2-クロロアニリン)、3,3'-ジメチル-4,4'-ジアミノビフェニル、4,4'-ジアミノジフェニルスルフィド、2,6’-ジアミノトルエン、2,4-ジアミノクロロベンゼン、1,2-ジアミノアントラキノン、1,4-ジアミノアントラキノン、3,3'-ジアミノベンゾフェノン、3,4’-ジアミノベンゾフェノン、4,4'-ジアミノベンゾフェノン、4,4'-ジアミノビベンジル等の芳香族ジアミン;1,2-ジアミノエタン、1,4-ジアミノブタン、テトラメチレンジアミン、1,10-ジアミノドデカン等の脂肪族ジアミン;1,4-ジアミノシクロヘキサン、1,2-ジアミノシクロヘキサン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、4,4'-ジアミノジシクロヘキシルメタン等の脂環族ジアミン;3,4-ジアミノピリジン等の複素環族ジアミン;などが挙げられる。ジアミンは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0032】
ポリアミック酸としては、特に制限されず、従来のポリイミド合成において、イミド化させる前のポリアミック酸として用いられているものと同様のものを用いることができる。ポリアミック酸の具体例としては、上述したテトラカルボン酸二無水物のうちのいずれか1以上と、上述したジアミンのうちのいずれか1以上の反応によって得られるポリアミック酸が挙げられる。
【0033】
第1溶液(第1原料溶液)A1及び第2溶液(第2原料溶液)A2の溶媒としては、原料として用いる重付加性の重合性化合物を溶解できるものが用いられる。溶媒の具体例としては、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、2-プロパノン、3-ペンタノン、テトラヒドロピレン、エピクロロヒドリン、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、アセトアニリド、メタノール、エタノール、イソプロパノール、トルエン、キシレン等が挙げられる。溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合してもよい。
【0034】
第1溶液A1は、テトラカルボン酸二無水物の溶解性を高め、又はジアミンとの反応性を高めるため、トリメチルアミン、トリエチルアミン等の第3級アミンを少量含有していてもよい。
【0035】
滑剤として用いるフィラーとしては、本発明の第1溶液に粒子の状態で安定的に存在しうるものであれば、特に制限されず、無機粒子であっても有機粒子であってもよい。
無機粒子としては、酸化チタン、第二リン酸カルシウム無水物、ピロリン酸カルシウム、炭酸カルシウム、二酸化ケイ素、アルミナ、硫酸バリウム、ジルコニア、カオリン、タルク、クレー、マイカ、などを例示することができる。また、有機粒子としては、アクリル酸類、スチレン等を構成成分とする有機粒子等を例示することができる。
【0036】
無機粒子の粒径は、平均粒子径が0.1~5.0μm、さらに好ましくは0.2~2.0μmであることが好ましい。平均粒子径がこの範囲を下回ると滑剤としての機能を果たさない場合があり、この範囲を上回ると一部の凝集粒子が粗大突起を形成しやすくなる場合がある。
【0037】
本発明の異常検知システムによれば、フィラー濃度を任意に調整することが可能であるが、滑剤として好ましいフィラー濃度は、製膜する前のポリアミック酸溶液中の固形分に対して0.01~0.50重量%、より好ましくは0.1~0.2重量%である。
【0038】
また、本発明の異常検知システムで濃度を測定する対象となるフィラーは、滑剤として用いる粒子に限定されない。例えば、フィルムの強度を向上させる目的や、熱伝導性を向上させる目的で添加する無機粒子や有機粒子であっても良い。
【0039】
図1に示すように、異常検知システム1は、フィラーを分散させた第1溶液A1を貯蔵する第1タンク11内部及び/又は第1タンク11から第1溶液A1を送液する第1送液ライン51内部にてフィラー濃度情報を得るための測定を行い、異常を検知するよう構成されている。
【0040】
続けて、異常検知システム1の具体的な構成について説明する。
図1に示すように、異常検知システム1は、第1タンク11と、第1供給ポンプ61(第1供給部)と、第1送液ライン51と、を備える。
【0041】
第1タンク11は、重付加性の重合性化合物及び/又は重付加反応によって得られた重合体を含み、フィラーが分散された第1溶液A1を収容する。本実施形態においては、第1タンク11は、ポリアミック酸を含み、滑剤が分散された第1溶液A1を収容する。
【0042】
第1溶液A1の粘度としては、特に制限されないが、粘度が低すぎるとフィラーが沈降しやすく、分散状態を保持しにくいことから、好ましくは0.1poise以上、より好ましくは1poise以上とするのが良い。
【0043】
第1タンク11は、第1タンク原料添加部を備えており、第1タンク11内にフィラー、フィラーを分散させたスラリー、粉体原料、溶媒、溶液などを添加することができる。第1タンク原料添加部の位置としては、特に制限されず、第1タンク11の上面、側面、底面のいずれに取り付けられていても良い。
【0044】
第1タンク11は、第1タンク撹拌部31を備えており、第1溶液A1を撹拌することによって、フィラーを均一に分散させることができる。
【0045】
第1供給ポンプ61(第1供給部)は、第1タンク11に収容されている第1溶液A1を、混合工程、反応工程、製膜工程、検査工程などの他の工程に送液する。
【0046】
第1タンク11及び/又は第1送液ラインにそれぞれ取りつけられた、第1タンク内濃度測定部41、第1送液ライン濃度測定部42は、第1溶液A1に分散されたフィラーの濃度を測定するために必要な物理量に関する情報を取得する。
【0047】
第1タンク内濃度測定部41、第1送液ライン濃度測定部42は、例えば、吸光光度計、赤外分光計、近赤外分光計、密度計、色差計、屈折率計、分光光度計、濁度計、及び蛍光X線分析装置からなる群より選択される1又は2以上を有して構成される。
【0048】
第1タンク内濃度測定部41は、第1タンク11のいずれの位置に設置しても良いが、第1タンク11内の第1溶液A1の液量が少ない場合にも測定できるように、第1タンク11の底面付近に設置するのが好ましい。また、第1タンク11内で第1溶液A1を静置して保管する場合、フィラーの沈降によって第1溶液A1の深さ方向に濃度分布が生じるため、高さの異なる2ヵ所以上に第1タンク内濃度測定部41を設置すれば、フィラーの濃度むらに関してより多くの情報を取得することができる。
【0049】
可視光線及び/又は赤外線の透過率によってフィラー濃度を測定する場合、前記第1測定部は、可視光線及び/又は赤外線を照射する発光部と、前記可視光線または前記赤外線を受光する受光部を有し、第1溶液A1が前記発光部と前記受光部の間に存在するような構成とする。この構成において、第1溶液中のフィラーの濃度によって可視光線及び/又は赤外線の散乱される割合が異なることから、受光部が受光した可視光線及び/又は赤外線の強度を、吸光光度計、赤外分光計、近赤外分光計、分光光度計などによって測定することで、フィラー濃度を測定することができる。この構成の実施については様々な形態が考えられ、例えば、第1溶液A1が流れる管路の両側にそれぞれ発光部と受光部を配しても良く、また、発光部と受光部を備えたプローブ状の測定器を貯槽や管路に差し込んでも良い。
【0050】
可視光線及び/又は赤外線の透過率によってフィラー濃度を測定するにあたり、溶液によって可視光線及び/又は赤外線が吸収される場合、十分な精度でフィラー濃度が測定できなくなる。従って、溶液が十分に透過する可視光線及び/又は赤外線の波長を選択することが好ましい。また、フィラー濃度が非常に低い場合には、フィラーによる可視光線及び/又は赤外線の散乱が起きにくく、フィラー濃度が非常に高い場合には、可視光線及び/又は赤外線が透過しにくくなることから、測定精度が低くなる場合がある。こうした場合には、十分な測定精度を得られるように、可視光線及び/又は赤外線の強度や第1溶液A1を通過する光路長を調整すると良い。
【0051】
第1溶液A1が気泡を含んでいる場合、第1溶液中のフィラーの濃度に関する物理量の測定に影響を及ぼす場合がある。従って、第1タンク内濃度測定部41、第1送液ライン濃度測定部42においては、気泡を含まない状態で第1溶液A1の測定をすることが好ましい。
【0052】
第1送液ライン濃度調整部71は第1送液ライン内の第1送液ライン濃度測定部の上流側及び/又は下流側に配置され、第1測定部の情報に基づいて第1溶液のフィラー濃度を調整する機構を備える。第1送液ライン濃度調整部71のフィラー濃度調整方法については、特に限定されず、例えば、濃度調整のためにフィラー、フィラーを分散させたスラリー、粉体原料、溶媒、溶液からなる群より選択されるいずれか1以上を添加しても良く、フィラーを再分散させるために撹拌しても良い。また、フィラー濃度が設定範囲から外れた溶液について、次の工程に送液せずに廃棄できるような流路を設けても良く、フィラー濃度を再調整してから再度送液するために、第1タンク11や、第1送液ライン51の上流側に戻すような流路を設けても良い。
【0053】
第1送液ライン濃度調整部71で撹拌を行う場合、その方法は特に限定されず、例えば、スタティックミキサー、ノズル、オリフィス等の静止型混合器や、遠心ポンプ、渦巻きポンプ、撹拌羽を有するインラインミキサー等の駆動型混合器を含んで構成される。また、クッションタンクに収容して撹拌しても良い。
【0054】
次に、図2により、第1実施形態における異常検知システム1のブロック図について説明する。
図2に示すように、異常検知システム1は、1以上の第1測定部(第1測定部群)と、第1制御部200と、第1記憶部300と、制御対象である1以上の第1調整部(第1測定部群)を有する。
【0055】
第1測定部は、上述の通り、第1溶液に分散されたフィラー濃度を測定するための物理量に関する1以上の第1測定情報を取得する。ここで、第1測定情報は、物理量の測定値等の数値情報のほか、物理量に対応して変化する電気信号等を含む。
【0056】
第1制御部200は、第1測定部により取得された第1測定情報に基づいて、第1調整部群の動作を制御する。
第1制御部200は、判定部210と、選択部220と、指示部230と、を有する。
【0057】
判定部210は、第1測定部群からの第1測定情報に基づいて、測定値等が所定の許容範囲内であるか否かを判定する。判定部210は、後述する測定間隔情報記憶部310に記憶された測定間隔に基づいて第1測定部から第1反応情報を取得するとともに、後述する許容範囲情報記憶部320に記憶された許容範囲情報に基づいて、取得された第1反応情報が所定の許容範囲内であるか否かを判定する。
【0058】
選択部220は、判定部210による第1測定情報の判定結果について、許容範囲内であるものと許容範囲外であるものがあった場合、後述する優先度情報記憶部340からの優先度情報に基づいて、第1調整部群によるフィラー濃度調整を行うべきかを選択する。
また、選択部220は、判定部210が許容範囲外であると判定した第1反応情報が特定の情報である場合、例えば、当該第1反応情報が可視光線の透過率に関する情報である場合、後述する補完情報記憶部330からの補完情報に基づいて、制御内容を確定するために補完すべき他の第1反応情報を選択する。
【0059】
指示部230は、後述する制御情報記憶部350からの制御情報に基づいて、第1調整部群の動作を制御する。指示部230は、判定部210及び選択部220からの情報に基づいて制御情報記憶部350に記憶される制御内容である制御情報を取得する。そして、指示部230は、取得した制御情報に基づいて、第1調整部群の動作を制御する。
【0060】
続けて、第1記憶部300は、測定間隔情報記憶部310と、許容範囲情報記憶部320と、補完情報記憶部330と、優先度情報記憶部340と、制御情報記憶部350と、を有する。
【0061】
測定間隔情報記憶部310は、第1制御部200(判定部210)が第1測定部から第1測定情報を取得する間隔に関する測定間隔情報を記憶する。測定間隔は、第1測定部(第1測定情報)で測定する物理量の種類や、第1測定部が配置されている位置に応じて個別に設定される。
【0062】
許容範囲情報記憶部320は、各第1測定部により取得された第1測定情報ごとに、必要な品質等に対応したフィラー濃度の溶液を得るための許容範囲(例えば、測定値の範囲、信号の強弱等)の情報を記憶する。
【0063】
補完情報記憶部330は、各種第1測定情報(各種第1測定部)が特定の第1測定情報(特定の測定部)である場合、補完情報として選択されるべき第1測定情報を特定可能な情報を記憶する。補完情報記憶部330は、特定の第1測定情報と、補完すべき第1測定情報とを関連付けて記憶する。補完情報記憶部330は、例えば、可視光線の透過率に関する情報に対して所定の第1測定情報を補完する旨の情報を記憶する。
【0064】
優先度情報記憶部340は、判定部210による第1測定情報の判定結果について、許容範囲内であるものと許容範囲外であるものがあった場合、優先すべき第1測定情報に関する情報(例えば、優先順位の情報)を記憶する。
【0065】
制御情報記憶部350は、許容範囲外と判定された第1測定情報の内容に対応した制御内容に関する情報を記憶する。制御情報記憶部350は、例えば、第1調整部群によって撹拌による再分散操作をしたり、原料を添加したりする内容の制御情報を記憶する。
【0066】
第1調整部群としては、前述した異常検知システムの構成のうち、第1タンクに原料を追加で添加することができる第1タンク原料添加部21、第1タンク内の第1溶液A1を撹拌してフィラーを再分散させることができる第1タンク撹拌部31、第1送液ライン内の第1溶液A1のフィラー濃度を調整できる第1送液ライン濃度調整部71が含まれる。
【0067】
次に、図3により、第1実施形態における異常検知システム1の動作を説明する。図3に示すように、ステップST11において、判定部210は、第1測定部群によって、第1タンク11内及び/又は第1送液ライン内の第1溶液A1のフィラー濃度を測定するための物理量に関する情報(第1測定情報)を取得する。
【0068】
次いで、ステップST12において、判定部210は、許容範囲情報記憶部320に記憶される許容範囲情報に基づいて、取得した第1測定情報が所定の許容範囲内にあるか否かを判定する。そして、判定部210は、第1測定情報が全て所定範囲内にあると判定した場合、第1調整部群による濃度調整を行わない(ステップST15)。
また、判定部210は、第1測定情報のうち、所定範囲内にないものがあると判定した場合、処理をステップST13に進める。
【0069】
次いで、ステップST13において、選択部220は、補完情報記憶部330からフィラー濃度情報を補完する第1測定情報(種類)に関する情報である補完情報を取得する。
【0070】
次いで、ステップST14において、選択部220は、複数の第1測定情報について所定の許容範囲内にあるか否かの判定部210による判定が異なるものになった場合、優先度情報記憶部340から優先度情報を取得し、フィラー濃度の調整が必要か否かを判断する。フィラー濃度の調整が必要でないと判断した場合、第1調整部群による濃度調整を行わない(ステップST15)。また、第1調整部群による濃度調整を行うと判断した場合、処理をステップST16に進める。
【0071】
次いで、ステップST16において、指示部230は、第1測定情報の内容と、補完情報により特定された第1測定情報の内容とに基づいて、制御情報記憶部350から制御条件等の制御情報を取得する。
そして、指示部230は、取得した制御情報に基づいて、第1調整部群の条件を制御し、フィラー濃度を調整する。
【0072】
次いで、第1制御部200は、待機状態となる(ステップST17)。ここで、第1制御部200は、測定間隔情報記憶部310に記憶された測定間隔情報に基づいて、所定間隔で第1測定部群からの第1測定情報を取得する。
【0073】
<第1実施形態における制御の具体例>
以下、異常検知システム1における制御の具体例について説明する。ただし、以下の具体例に限定されるものではない。
【0074】
(1)例1
第1タンク11内の下部に第1タンク濃度測定部41を設置した異常検知システム1において、第1タンク濃度測定部41における第1溶液A1のフィラー濃度が設定値に対して高い場合を想定する。このとき、フィラーの沈降によって第1タンク11内の第1溶液A1に濃度分布が生じているものと判断できるので、第1タンク撹拌部31によって、撹拌によるフィラー再分散操作を行えば良い。
【0075】
(2)例2
第1送液ライン濃度調整部71として、第1送液ライン51内の第1溶液A1を第1タンク11に戻せるような流路を設けた異常検知システム1において、第1送液ライン濃度測定部42における第1溶液A1のフィラー濃度が設定値に対して高い場合を想定する。このとき、フィラーの沈降によって第1タンク11内の底付近及び第1送液ライン51内の第1溶液A1のフィラー濃度が高くなっているものと判断できる。従って、第1送液ライン51内の第1溶液A1を第1タンク11に戻すように制御した上で、第1タンク撹拌部31によって、撹拌によるフィラー再分散操作を行えば良い。
【0076】
(2)例3
第1送液ライン濃度調整部71として、第1送液ライン51内の第1溶液A1が設定範囲外になったとき、次の工程に送液せずに廃棄できるような流路を設けた異常検知システム1において、第1送液ライン濃度測定部42における第1溶液A1のフィラー濃度が設定値に対して高い場合を想定する。このとき、フィラーの沈降によって第1タンク11内の底付近の第1溶液A1の濃度が高くなっているものと判断できる。従って、まず第1送液ライン51内の第1溶液A1を廃棄するように制御した上で、第1タンク撹拌部31によって撹拌によるフィラー再分散操作を行えば良い。このとき、第1タンク内の第1溶液A1は、フィラーが高濃度の部分が先に流出したために、設定値よりもフィラー濃度が低くなる可能性がある。この場合には、不足する分のフィラーを第1タンク原料添加部21から追加で添加した上で、撹拌によるフィラー再分散操作を行えば良い。
【0077】
<第2実施形態>
続いて、図4により、第2実施形態における重合体製造システムについて説明する。
【0078】
図4に示すように、重合体製造システム2は、原料である第1溶液A1及び第2溶液A2を第1混合部81において混合して第1混合溶液Bを生成し、第1反応部91において重合反応を進行させて第1反応溶液Cを生成することで、ポリアミック酸(第1重合体)を製造するよう構成されている。ここで、第2実施形態では、第1溶液A1を第1タンク11から第1混合部81に供給するまでの部分に、第1実施形態で述べた異常検知システム1が備わっている場合について述べる。
【0079】
続けて、重合体製造システム2の具体的な構成について説明する。
図4に示すように、重合体製造システム2は、第1タンク11と、第2タンク12と、第1供給ポンプ61(第1供給部)と、第2供給ポンプ62(第2供給部)と、第1混合部81と、第1反応部91と、送液ラインLと、を備える。
【0080】
第1タンク11は、重付加性の第1重合性化合物を含む第1溶液A1を収容する。本実施形態においては、第1タンク11は、テトラカルボン酸二無水物及び/又は末端が酸無水物であるポリアミック酸を含み、フィラーを分散させた第1溶液A1を収容する。
【0081】
第2タンク12は、第1重合性化合物と重付加する重付加性の第2重合性化合物を含む第2溶液A2を収容する。本実施形態においては、第2タンク12は、ジアミン及び/又は末端がアミンであるポリアミック酸を含む第2溶液A2を収容する。
【0082】
第1供給ポンプ61(第1供給部)は、第1タンク11に収容されている第1溶液A1を第1混合部81に供給する。第1供給ポンプ61は、第1溶液A1を所定の送液量で供給する。例えば、第1供給ポンプ61は、所望の性状のポリアミック酸(第1重合体)が得られる条件で第1溶液A1を供給するよう調整される。
【0083】
第2供給ポンプ62(第2供給部)は、第2タンク12に収容されている第2溶液A2を第1混合部81に供給する。第2供給ポンプ62は、第2溶液A2を所定の送液量で供給する。例えば、第2供給ポンプ62は、所望の性状のポリアミック酸(第1重合体)が得られる条件で第2溶液A2を供給するよう調整される。
【0084】
第1タンク内濃度測定部41は、第1タンク内の第1溶液A1のフィラー濃度を測定する。フィラー濃度が設定範囲外であれば、第1実施形態で述べた方法により、第1調整部によってフィラー濃度を調整しても良い。
【0085】
第1送液ライン濃度測定部42は、第1送液ライン内の第1溶液A1のフィラー濃度を測定する。フィラー濃度が設定範囲外であれば、第1実施形態で述べた方法により、第1調整部によってフィラー濃度を調整しても良い。
【0086】
第1混合部81は、第1溶液A1と第2溶液A2とを混合して第1混合溶液Bを生成する。第1混合部81は、第1供給ポンプ15及び第2供給ポンプ16の下流側に配置される。第1混合部81は、第1混合溶液B中への気泡の混入を防ぐため、気体に接触しない状態で混合することが好ましい。
【0087】
第1反応部91は、第1混合部81の下流側に連続して配置される。第1反応部91は、第1混合溶液Bに含まれる第1重合性化合物と第2重合性化合物との重合反応を進行させる部分である。第1反応部91において、第1混合溶液Bに含まれる第1重合性化合物と第2重合性化合物との重合反応が徐々に進行し、第1反応溶液Cが得られる。第1反応部91は、第1混合部81から送液された第1混合溶液Bの反応を進行させるため、溶液を撹拌する。第1反応部91は、第1反応溶液C中への気泡の混入を防ぐため、気体に接触しない状態で撹拌することが好ましい。
【0088】
第1反応部91は、例えば、スタティックミキサー、ノズル、オリフィス等の静止型混合器や、遠心ポンプ、渦巻きポンプ、撹拌羽を有するインラインミキサー等の駆動型混合器を含んで構成され、好ましくは静止型混合器を含んで構成され、より好ましくはスタティックミキサーを含んで構成される。なお、上述の通り、ツイストテープの内挿された管でもスタティックミキサーと同様に撹拌促進効果が得られるが、スタティックミキサーの方がより撹拌促進効果が得られるため好ましい。
【0089】
スタティックミキサーとしては、特に限定されず、例えば、Kenics mixer型、Sulzer SMV型、Sulzer SMX型、Tray Hi-mixer型、Komax mixer型、Lightnin mixer型、Ross ISG型、Bran&Lube mixer型等のスタティックミキサーが挙げられる。これらの中でも、Kenics mixer型のスタティックミキサーは、構造が単純であるためデッドスペースがなく、より好ましい。
【0090】
本実施形態における重合体製造システム1がポリイミドを製造する場合、重合体製造システム1は、ポリアミック酸をイミド化するイミド化部(イミド化工程)を更に備える。イミド化部(不図示)は、例えば、熱的に脱水閉環する熱的イミド化方法、脱水剤及びイミド化促進剤を用いる化学的イミド化方法等により、ポリアミック酸をイミド化する。
<変形例>
以上、2つの実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲内での変形、改良等は本発明に含まれる。
【0091】
例えば、上述の第2実施形態では、重合体製造システムが1つの反応部(処理部)を有して構成されるものとしたが、これに限定されず、2つ以上の反応部(処理部)を有して構成されていてもよい。すなわち、重合体製造システムは、1段の反応を行うものに限定されず、2段以上の反応を行うものであってもよい。例えば、重合体製造システムは、混合撹拌部を有する混合部と、反応撹拌部を有する反応部とのセットを2セット以上有するように構成されていてもよい。重合体製造システムは、各反応部(処理部)を経るごとに目標とする反応率や品質に近づくように多段的に供給量等を調整可能である。
【0092】
また、上述の第2実施形態では、第1溶液にフィラーを分散させ、第1溶液を供給する貯槽及び/又は管路に異常検知システム1を備えている場合について述べたが、第2溶液にフィラーを分散させ、第2溶液を供給する貯槽及び/又は管路に異常検知システム1を備えるようにしても良い。また、第1混合部81よりも下流側に第1測定部及び/又は第1調整部を設けることによって、第1混合溶液B及び/又は第1重合溶液Cのフィラー濃度測定やフィラー濃度調整を行えるようにしても良い。
【0093】
また、上述の実施形態では、予めフィラーを分散させた第1溶液についての異常検知方法について述べたが、管路内において、溶液にフィラーを連続的に混合、分散させるプロセスにおいても本発明を用いることができる。
【0094】
また、上述の実施形態では、ポリアミック酸又はポリイミドを製造する重合体製造システムについて説明したが、製造する重合体はこれらに限定されない。例えば、重合体製造システムは、ウレタンモノマー、エポキシモノマー等の重付加性モノマーを用いて重合体を製造するものであってもよい。
【実施例
【0095】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0096】
<実施例1>
実施例1では、第1溶液として、4,4’-ジアミノジフェニルエーテルとピロメリット酸二無水物との反応により得られた酸無水物基末端のポリアミック酸をN,N-ジメチルホルムアミド中に溶解し、平均粒子径1.1 μmの第二リン酸カルシウム無水物を分散させたものを用い、第二リン酸カルシウム無水物の濃度変動を可視光線の透過率の変動によって監視する方法を実施した。
【0097】
まず、第二リン酸カルシウム無水物を含まないポリアミック酸溶液について、光路長を1 cmとして、波長200~900 nmの可視光線透過率を測定した。その結果、波長200~500 nmでは、溶液が可視光線を吸収してほとんど透過しなかったが、500 nm~900 nmでは可視光線を透過した。そこで、このポリアミック酸溶液については波長500 nm~900 nmの可視光線の透過率を測定することによって、フィラーを分散させた際にその濃度を測定することができると判断した。
【0098】
続いて、このポリアミック酸溶液に第二リン酸カルシウム無水物を分散させた溶液の波長800 nmにおける透過率を測定した。第二リン酸カルシウム無水物の濃度を変えて測定したところ、濃度が濃くなるに従って透過率は減少し、透過率を濃度に換算する検量線を作成することができた。
【0099】
このポリアミック酸溶液に、第二リン酸カルシウム無水物を、溶液に対して0.036重量%で分散させた第1溶液A1について、第二リン酸カルシウム無水物の沈降による濃度変化が生じないかどうかを監視するため、溶液の透過率を経時的に測定した。第二リン酸カルシウム無水物を分散させた直後の透過率は25.5 %であった。第二リン酸カルシウム無水物の濃度について、0.034~0.038重量%の範囲を許容範囲としたところ、第二リン酸カルシウム無水物を分散させてから静置状態で47時間までは許容範囲の濃度に保持できていた。その後、濃度が許容範囲外となったため、撹拌による再分散操作を行ったところ、第二リン酸カルシウム無水物は再び均一に分散し、濃度は許容範囲内に収まった。
【符号の説明】
【0100】
1 異常検知システム
2 重合体製造システム
11 第1タンク
12 第2タンク
21 第1タンク原料添加部(第1調整部)
22 第2タンク原料添加部(第1調整部)
31 第1タンク撹拌部(第1調整部)
32 第2タンク撹拌部(第1調整部)
41 第1タンク内濃度測定部(第1測定部)
42 第1送液ライン濃度測定部(第1測定部)
43 第2タンク内濃度測定部(第1測定部)
44 第2送液ライン濃度測定部(第1測定部)
45 第1混合溶液濃度測定部(第1測定部)
46 第1反応溶液濃度測定部(第1測定部)
51 第1送液ライン
52 第2送液ライン
61 第1供給ポンプ(第1供給部)
62 第2供給ポンプ(第2供給部)
71 第1送液ライン濃度調整部(第1調整部)
72 第2送液ライン濃度調整部(第1調整部)
73 第1反応溶液濃度調整部(第1調整部)
81 第1混合部
91 第1反応部
A1 第1溶液(第1原料溶液)
A2 第2溶液(第2原料溶液)
B 第1混合溶液
C 第1反応溶液
図1
図2
図3
図4