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特許7396832ホースの残存寿命予測方法及びホースの残存寿命予測システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-04
(45)【発行日】2023-12-12
(54)【発明の名称】ホースの残存寿命予測方法及びホースの残存寿命予測システム
(51)【国際特許分類】
   G01N 17/00 20060101AFI20231205BHJP
   F16L 11/12 20060101ALI20231205BHJP
   G01M 13/00 20190101ALI20231205BHJP
【FI】
G01N17/00
F16L11/12 Z
G01M13/00
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2019149082
(22)【出願日】2019-08-15
(65)【公開番号】P2021001858
(43)【公開日】2021-01-07
【審査請求日】2022-08-09
(31)【優先権主張番号】P 2019113631
(32)【優先日】2019-06-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100186015
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 靖之
(74)【代理人】
【識別番号】100202636
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 麻菜美
(72)【発明者】
【氏名】黒田 泰介
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 裕児
【審査官】外川 敬之
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-119584(JP,A)
【文献】特開2018-072027(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 17/00
G01M 13/00
F16L 11/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内管ゴム層、該内管ゴム層よりも外周側に配置された補強層及び該補強層よりも外周側に配置された外皮層を少なくとも有する、使用中のホースの、残存寿命の予測を行う、ホースの残存寿命予測方法であって、
予め、前記使用中のホースと同種類のホースについて、前記内管ゴム層の、基準温度での使用時間と該内管ゴム層を構成するゴムの物性値との関係を求め、前記内管ゴム層の熱劣化モデルを作成する、熱劣化モデル作成工程と、
前記使用中のホースについて、前記内管ゴム層の、前記基準温度での前記予測時までの使用時間である基準温度使用時間を算定する、基準温度使用時間算定工程と、
前記基準温度使用時間算定工程で算定した前記基準温度使用時間と、前記熱劣化モデル作成工程で作成した前記熱劣化モデルと、の対比に基づいて、前記使用中のホースの残存寿命を予測する、残存寿命予測工程と、
を含み、
前記内管ゴム層を構成するゴムの物性値として、熱劣化する物性値を選択することを特徴とする、ホースの残存寿命予測方法。
【請求項2】
前記基準温度使用時間算定工程は、
前記使用中のホースについて、前記内管ゴム層の、前記予測時までの、各時間における使用温度のデータを取得する、データ取得工程と、
前記データ取得工程で取得した前記データにおける、前記各時間における使用温度での使用時間の累積を、前記基準温度使用時間に換算する、基準温度換算工程と、を含む、請求項1に記載のホースの残存寿命予測方法。
【請求項3】
前記内管ゴム層の使用限界として、前記内管ゴム層を構成するゴムの物性値の閾値を設定し、
前記残存寿命予測工程において、
前記熱劣化モデルにおける、前記基準温度使用時間経過時から前記物性値が前記閾値となる使用時間経過時に至るまでの時間を、残存寿命と予測する、請求項1又は2に記載のホースの残存寿命予測方法。
【請求項4】
前記閾値は、前記使用中のホースに対する物理入力の大きさに応じて決定される、請求項3に記載のホースの残存寿命予測方法。
【請求項5】
前記内管ゴム層を構成するゴムの物性値は、破断時伸び、破断時強力又は硬度である、請求項1~4のいずれか一項に記載のホースの残存寿命予測方法。
【請求項6】
内管ゴム層、該内管ゴム層よりも外周側に配置された補強層及び該補強層よりも外周側に配置された外皮層を少なくとも有する、使用中のホースの、残存寿命の予測を行う、ホースの残存寿命予測方法であって、
予め、前記使用中のホースと同種類のホースについて、前記内管ゴム層の、所定の劣化状態に至るまでに要する各温度での使用時間を求める、劣化状態到達使用時間算出工程と、
前記使用中のホースについて、前記内管ゴム層の、各温度での実際の使用時間を測定する、測定工程と、
前記測定工程で測定した前記各温度での実際の使用時間及び前記所定の劣化状態に至るまでに要する各温度での使用時間に基づいて、各温度における熱負荷量を算出する、熱負荷量算出工程と、
前記各温度での熱負荷量を積算した総熱負荷量が、所定の上限値になった時点を前記使用中のホースの寿命とし、前記所定の上限値と前記予測時での総熱負荷量との関係から残存寿命を予測する残存寿命予測工程と、
を含み、
前記所定の劣化状態は、前記内管ゴム層を構成するゴムの物性値により定め、
前記内管ゴム層を構成するゴムの物性値として、熱劣化する物性値を選択することを特徴とする、ホースの残存寿命予測方法。
【請求項7】
前記各温度における熱負荷量は、以下の式によって算出する、請求項6に記載のホースの残存寿命予測方法。
(式)
各温度での実際の使用時間/所定の劣化状態に至るまでに要する各温度での使用時間
【請求項8】
前記内管ゴム層を構成するゴムの物性値は、破断時伸び、破断時強力又は硬度である、請求項6又は7に記載のホースの残存寿命予測方法。
【請求項9】
内管ゴム層、該内管ゴム層よりも外周側に配置された補強層及び該補強層よりも外周側に配置された外皮層を少なくとも有する、使用中のホースの、残存寿命の予測を行う、ホースの残存寿命予測方法であって、
予め、前記使用中のホースと同種類のホースについて、前記内管ゴム層の、各温度での使用時間と前記内管ゴム層を構成するゴムの物性値との関係を求め、前記内管ゴム層の熱劣化モデルを作成する、熱劣化モデル作成工程と、
前記予測時までの、前記内管ゴム層の使用中の温度を測定し、該温度とともに該温度での使用時間を記録する、測定及び記録工程と、
前記熱劣化モデル作成工程で作成した前記熱劣化モデルと、前記測定及び記録工程で記録した前記温度及び前記使用時間と、に基づいて、前記内管ゴム層の、前記予測時での前記熱劣化モデルにおける熱劣化位置を求める、熱劣化位置特定工程と、
前記内管ゴム層の使用限界として前記内管ゴム層を構成するゴムの物性値の閾値を設定し、該閾値と、前記熱劣化位置特定工程で求めた前記熱劣化位置と、に基づいて、前記使用中のホースの残存寿命を予測する、残存寿命予測工程と、
を含み、
前記内管ゴム層を構成するゴムの物性値として、熱劣化する物性値を選択することを特徴とする、ホースの残存寿命予測方法。
【請求項10】
前記測定及び記録工程において、前記内管ゴム層の前記使用中の温度は、前記使用中のホース以外の場所で測定される、請求項9に記載のホースの残存寿命予測方法。
【請求項11】
前記測定及び記録工程において記録した前記温度及び前記使用時間についての情報は、無線通信によって通信可能であり、
前記測定及び記録工程において、少なくとも前記温度及び前記使用時間の記録は、前記使用中のホース以外の場所で行われる、請求項9又は10に記載のホースの残存寿命予測方法。
【請求項12】
内管ゴム層、該内管ゴム層よりも外周側に配置された補強層及び該補強層よりも外周側に配置された外皮層を少なくとも有する、使用中のホースの、残存寿命の予測を行う、ホースの残存寿命予測システムであって、
前記使用中のホースと同種類のホースについて、前記内管ゴム層の、基準温度での使用時間と該内管ゴム層を構成するゴムの物性値との関係を求め、前記内管ゴム層の熱劣化モデルを作成する、熱劣化モデル作成手段と、
前記使用中のホースについて、前記内管ゴム層の、前記基準温度での前記予測時までの使用時間である基準温度使用時間を算定する、基準温度使用時間算定手段と、
前記基準温度使用時間算定手段で算定した前記基準温度使用時間と、前記熱劣化モデル作成手段で作成した前記熱劣化モデルと、の対比に基づいて、前記使用中のホースの残存寿命を予測する、残存寿命予測手段と、
を含み、
前記内管ゴム層を構成するゴムの物性値として、熱劣化する物性値を選択することを特徴とする、ホースの残存寿命予測システム。
【請求項13】
前記基準温度使用時間算定手段は、
前記使用中のホースについて、前記内管ゴム層の、前記予測時までの、各時間における使用温度のデータを取得する、データ取得手段と、
前記データ取得手段で取得した前記データにおける、前記各時間における使用温度での使用時間の累積を、前記基準温度使用時間に換算する、基準温度換算手段と、を含む、請求項12に記載のホースの残存寿命予測システム。
【請求項14】
前記残存寿命予測手段は、
前記内管ゴム層の使用限界として、前記内管ゴム層を構成するゴムの物性値の閾値を設定することが可能に構成されており、
前記閾値が設定されたときに、前記熱劣化モデルにおける、前記基準温度使用時間経過時から前記物性値が前記閾値となる使用時間経過時に至るまでの時間を残存寿命と予測する、請求項12又は13に記載のホースの残存寿命予測システム。
【請求項15】
前記残存寿命予測手段は、前記使用中のホースに対する物理入力の大きさに応じて前記閾値が設定可能に構成されている、請求項14に記載のホースの残存寿命予測システム。
【請求項16】
前記内管ゴム層を構成するゴムの物性値は、破断時伸び、破断時強力又は硬度である、請求項12~15のいずれか一項に記載のホースの残存寿命予測システム。
【請求項17】
内管ゴム層、該内管ゴム層よりも外周側に配置された補強層及び該補強層よりも外周側に配置された外皮層を少なくとも有する、使用中のホースの、残存寿命の予測を行う、ホースの残存寿命予測システムであって、
前記使用中のホースと同種類のホースについて、前記内管ゴム層の、所定の劣化状態に至るまでに要する各温度での使用時間を求める、劣化状態到達使用時間算出手段と、
前記使用中のホースについて、各温度での実際の使用時間を測定する、測定手段と、
前記測定手段で測定した前記各温度での実際の使用時間及び前記所定の劣化状態に至るまでに要する各温度での使用時間に基づいて、各温度における熱負荷量を算出する、熱負荷量算出手段と、
前記各温度での熱負荷量を積算した総熱負荷量が、所定の上限値になった時点を前記使用中のホースの寿命とし、前記所定の上限値と前記予測時での総熱負荷量との関係から残存寿命を予測する残存寿命予測手段と、
を含み、
前記各温度における熱負荷量は、前記内管ゴム層を構成するゴムの物性値により定める所定の寿命に基づいて算出し、
前記内管ゴム層を構成するゴムの物性値として、熱劣化する物性値を選択することを特徴とする、ホースの残存寿命予測システム。
【請求項18】
前記各温度における熱負荷量は、以下の式によって算出する、請求項17に記載のホースの残存寿命予測システム。
(式)
各温度での実際の使用時間/所定の寿命までに要する各温度での使用時間
【請求項19】
前記内管ゴム層を構成するゴムの物性値は、破断時伸び、破断時強力又は硬度である、請求項17又は18に記載のホースの残存寿命予測システム。
【請求項20】
内管ゴム層、該内管ゴム層よりも外周側に配置された補強層及び該補強層よりも外周側に配置された外皮層を少なくとも有する、使用中のホースの、残存寿命の予測を行う、ホースの残存寿命予測システムであって、
前記使用中のホースと同種類のホースについて、前記内管ゴム層の、各温度での使用時間と前記内管ゴム層を構成するゴムの物性値との関係を求め、前記内管ゴム層の熱劣化モデルを作成する、熱劣化モデル作成手段と、
前記予測時までの、前記内管ゴム層の使用中の温度を測定するセンサ手段と、該温度とともに該温度での使用時間を記録する、測定及び記録手段と、
前記熱劣化モデル作成手段で作成した前記熱劣化モデルと、前記記録手段によって記録された前記温度及び前記使用時間と、に基づいて、前記内管ゴム層の、前記予測時での前記熱劣化モデルにおける熱劣化位置を求める、熱劣化位置特定手段と、
前記内管ゴム層の使用限界として前記内管ゴム層を構成するゴムの物性値の閾値を設定し、前記閾値と、前記熱劣化位置特定手段で求めた前記熱劣化位置と、に基づいて、前記使用中のホースの残存寿命を予測する、残存寿命予測手段と、
を含み、
前記内管ゴム層を構成するゴムの物性値として、熱劣化する物性値を選択することを特徴とする、ホースの残存寿命予測システム。
【請求項21】
前記センサ手段は、前記使用中のホース以外の場所に配置されている、請求項20に記載のホースの残存寿命予測システム。
【請求項22】
前記センサ手段と前記記録手段とは、無線通信によって通信可能であり、
前記記録手段は、前記使用中のホース以外の場所に配置されている、請求項20又は21に記載のホースの残存寿命予測システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ホースの残存寿命予測方法及びホースの残存寿命予測システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、建設機械や工場設備等には、高温、高圧の流体(油等)を用いた圧力を伝達するために、内管ゴム層を有するホースが用いられることがある。このようなホースは、当該ホースの仕様により定められた範囲内での使用であっても、長期間にわたる使用によって、ゴム層が徐々に劣化する。そして、ゴム層が劣化して寿命を超えて使用されたホースは、例えばその内部に存在する流体が継手とホースとの間から漏れ出る等の不具合が生じることがある。特に、ホースが突然破損した場合には、流体が飛散する虞があり、さらに、建設機械や工場設備等の稼働停止期間が生じてしまうことがある。このような不具合を防止するため、使用中のホースを検査して、その残存する使用可能な期間を予測して、ホースの使用が寿命を超えないようにすることが提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、ホース内のピーク圧力の範囲と各ホース内のピーク圧力が生じるときの流体の温度をリアルタイムで測定し、ピーク圧力及び流体の温度によってホースに生じるダメージを計算し、計算されたダメージの累積によって、ホースの残存寿命を予測する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特表2012-507032号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の方法では、圧力及び温度の双方をモニタリングする必要があり、コストアップを招いたり、簡便性に欠けるという問題があった。
【0006】
このような問題に鑑みて、本発明は、ホースの残存寿命を簡便に予測できる、ホースの残存寿命予測方法及びホースの残存寿命予測システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の要旨は、以下のとおりである。
本発明のホースの残存寿命予測方法は、内管ゴム層、該内管ゴム層よりも外周側に配置された補強層及び該補強層よりも外周側に配置された外皮層を少なくとも有する、使用中のホースの、残存寿命の予測を行う、ホースの残存寿命予測方法であって、
予め、前記使用中のホースと同種類のホースについて、前記内管ゴム層の、基準温度での使用時間と該内管ゴム層を構成するゴムの物性値との関係を求め、前記内管ゴム層の熱劣化モデルを作成する、熱劣化モデル作成工程と、
前記使用中のホースについて、前記内管ゴム層の、前記基準温度での前記予測時までの使用時間である基準温度使用時間を算定する、基準温度使用時間算定工程と、
前記基準温度使用時間算定工程で算定した前記基準温度使用時間と、前記熱劣化モデル作成工程で作成した前記熱劣化モデルと、の対比に基づいて、前記使用中のホースの残存寿命を予測する、残存寿命予測工程と、
を含むことを特徴とする。
本発明のホースの残存寿命予測方法によれば、ホースの残存寿命を簡便に予測できる。
ここで、ゴムの物性値とは、ゴム全体が示す特性だけでなく、ゴムの構成材料の特性をも含むものとする。
【0008】
この発明のホースの残存寿命予測方法においては、前記基準温度使用時間算定工程は、
前記使用中のホースについて、前記内管ゴム層の、前記予測時までの、各時間における使用温度のデータを取得する、データ取得工程と、
前記データ取得工程で取得した前記データにおける、前記各時間における使用温度での使用時間の累積を、前記基準温度使用時間に換算する、基準温度換算工程と、を含むことが好ましい。
この構成によれば、ホースの残存寿命をより簡便に予測できる。
【0009】
この発明のホースの残存寿命予測方法においては、前記内管ゴム層の使用限界として、前記内管ゴム層を構成するゴムの物性値の閾値を設定し、
前記残存寿命予測工程において、
前記熱劣化モデルにおける、前記基準温度使用時間経過時から前記物性値が前記閾値となる使用時間経過時に至るまでの時間を、残存寿命と予測することができる。
この構成によれば、ホースの残存寿命をより簡便かつ正確に予測できる。
【0010】
この発明のホースの残存寿命予測方法においては、前記閾値は、前記使用中のホースに対する物理入力の大きさに応じて決定されることが好ましい。
この構成によれば、ホースの残存寿命をより正確に予測できる。
【0011】
この発明のホースの残存寿命予測方法においては、前記内管ゴム層を構成するゴムの物性値は、破断時伸び、破断時強力又は硬度であることが好ましい。
この構成によれば、ホースの残存寿命をより簡便かつより正確に予測できる。
【0012】
本発明のホースの残存寿命予測方法は、
内管ゴム層、該内管ゴム層よりも外周側に配置された補強層及び該補強層よりも外周側に配置された外皮層を少なくとも有する、使用中のホースの、残存寿命の予測を行う、ホースの残存寿命予測方法であって、
予め、前記使用中のホースと同種類のホースについて、前記内管ゴム層の、所定の劣化状態に至るまでに要する各温度での使用時間を求める、劣化状態到達使用時間算出工程と、
前記使用中のホースについて、前記内管ゴム層の、各温度での実際の使用時間を測定する、測定工程と、
前記測定工程で測定した前記各温度での実際の使用時間及び前記所定の劣化状態に至るまでに要する各温度での使用時間に基づいて、各温度における熱負荷量を算出する、熱負荷量算出工程と、
前記各温度での熱負荷量を足した総熱負荷量が、所定の上限値になった時点を前記使用中のホースの寿命とし、前記所定の上限値と前記予測時での総熱負荷量との関係から残存寿命を予測する残存寿命予測工程と、
を含むことを特徴とする。
本発明のホースの残存寿命予測方法によれば、ホースの残存寿命を簡便に予測できる。
【0013】
この発明のホースの残存寿命予測方法においては、
前記各温度における熱負荷量は、以下の式によって算出することが好ましい。
(式)
各温度での実際の使用時間/所定の劣化状態に至るまでに要する各温度での使用時間
この構成によれば、ホースの残存寿命をより簡便かつ正確に予測できる。
【0014】
この発明のホースの残存寿命予測方法においては、前記所定の劣化状態は、前記内管ゴム層を構成するゴムの物性値により定めることが好ましい。
この構成によれば、ホースの残存寿命をより簡便かつ正確に予測できる。
【0015】
本発明のホースの残存寿命予測方法は、内管ゴム層、該内管ゴム層よりも外周側に配置された補強層及び該補強層よりも外周側に配置された外皮層を少なくとも有する、使用中のホースの、残存寿命の予測を行う、ホースの残存寿命予測方法であって、
予め、前記使用中のホースと同種類のホースについて、前記内管ゴム層の、各温度での使用時間と前記内管ゴム層を構成するゴムの物性値との関係を求め、前記内管ゴム層の熱劣化モデルを作成する、熱劣化モデル作成工程と、
前記予測時までの、前記内管ゴム層の使用中の温度を測定し、該温度とともに該温度での使用時間を記録する、測定及び記録工程と、
前記熱劣化モデル作成工程で作成した前記熱劣化モデルと、前記測定及び記録工程で記録した前記温度及び前記使用時間と、に基づいて、前記内管ゴム層の、前記予測時での前記熱劣化モデルにおける熱劣化位置を求める、熱劣化位置特定工程と、
前記内管ゴム層の使用限界として前記内管ゴム層を構成するゴムの物性値の閾値を設定し、該閾値と、前記熱劣化位置特定工程で求めた前記熱劣化位置と、に基づいて、前記使用中のホースの残存寿命を予測する、残存寿命予測工程と、
を含むことを特徴とする。
本発明のホースの残存寿命予測方法によれば、ホースの残存寿命を簡便に予測できる。
【0016】
この発明のホースの残存寿命予測方法においては、前記測定及び記録工程において、前記内管ゴム層の前記使用中の温度は、前記使用中のホース以外の場所で測定されることが好ましい。
この構成によれば、ホースの残存寿命をより簡便に予測できる。
【0017】
この発明のホースの残存寿命予測方法においては、前記測定及び記録工程において記録した前記温度及び前記使用時間についての情報は、無線通信によって通信可能であり、
前記測定及び記録工程において、少なくとも前記温度及び前記使用時間の記録は、前記使用中のホース以外の場所で行われることが好ましい。
この構成によれば、ホースの残存寿命をより簡便に予測できる。
【0018】
本発明のホースの残存寿命予測システムは、内管ゴム層、該内管ゴム層よりも外周側に配置された補強層及び該補強層よりも外周側に配置された外皮層を少なくとも有する、使用中のホースの、残存寿命の予測を行う、ホースの残存寿命予測システムであって、
前記使用中のホースと同種類のホースについて、前記内管ゴム層の、基準温度での使用時間と該内管ゴム層を構成するゴムの物性値との関係を求め、前記内管ゴム層の熱劣化モデルを作成する、熱劣化モデル作成手段と、
前記使用中のホースについて、前記内管ゴム層の、前記基準温度での前記予測時までの使用時間である基準温度使用時間を算定する、基準温度使用時間算定手段と、
前記基準温度使用時間算定手段で算定した前記基準温度使用時間と、前記熱劣化モデル作成手段で作成した前記熱劣化モデルと、の対比に基づいて、前記使用中のホースの残存寿命を予測する、残存寿命予測手段と、
を含むことを特徴とする。
本発明のホースの残存寿命予測システムによれば、ホースの残存寿命を簡便に予測できる。
ここで、ゴムの物性値とは、ゴム全体が示す特性だけでなく、ゴムの構成材料の特性をも含むものとする。
【0019】
この発明のホースの残存寿命予測システムにおいては、前記基準温度使用時間算定手段は、
前記使用中のホースについて、前記内管ゴム層の、前記予測時までの、各時間における使用温度のデータを取得する、データ取得手段と、
前記データ取得手段で取得した前記データにおける、前記各時間における使用温度での使用時間の累積を、前記基準温度使用時間に換算する、基準温度換算手段と、を含むことができる。
この構成によれば、ホースの残存寿命をより簡便に予測できる。
【0020】
この発明のホースの残存寿命予測システムにおいては、前記残存寿命予測手段は、
前記内管ゴム層の使用限界として、前記内管ゴム層を構成するゴムの物性値の閾値を設定することが可能に構成されており、
前記閾値が設定されたときに、前記熱劣化モデルにおける、前記基準温度使用時間経過時から前記物性値が前記閾値となる使用時間経過時に至るまでの時間を残存寿命と予測することが好ましい。
この構成によれば、ホースの残存寿命をより簡便かつ正確に予測できる。
【0021】
この発明のホースの残存寿命予測システムにおいては、前記残存寿命予測手段は、前記使用中のホースに対する物理入力の大きさに応じて前記閾値が設定可能に構成されていることが好ましい。
この構成によれば、ホースの残存寿命をより正確に予測できる。
【0022】
この発明のホースの残存寿命予測システムにおいては、前記内管ゴム層を構成するゴムの物性値は、破断時伸び、破断時強力又は硬度であることが好ましい。
この構成によれば、ホースの残存寿命をより簡便かつより正確に予測できる。
【0023】
本発明のホースの残存寿命予測システムは、内管ゴム層、該内管ゴム層よりも外周側に配置された補強層及び該補強層よりも外周側に配置された外皮層を少なくとも有する、使用中のホースの、残存寿命の予測を行う、ホースの残存寿命予測システムであって、
前記使用中のホースと同種類のホースについて、前記内管ゴム層の、所定の劣化状態に至るまでに要する各温度での使用時間を求める、劣化状態到達使用時間算出手段と、
前記使用中のホースについて、各温度での実際の使用時間を測定する、測定手段と、
前記測定手段で測定した前記各温度での実際の使用時間及び前記所定の劣化状態に至るまでに要する各温度での使用時間に基づいて、各温度における熱負荷量を算出する、熱負荷量算出手段と、
前記各温度での熱負荷量を足した総熱負荷量が、前記所定の劣化状態に至るまでに要する各温度での使用時間及び前記各温度での実際の使用時間に基づく所定の上限値になった時点を前記使用中のホースの寿命とし、前記所定の上限値と前記予測時での総熱負荷量との関係から残存寿命を予測する残存寿命予測手段と、
を含むことを特徴とする。
本発明のホースの残存寿命予測システムによれば、ホースの残存寿命を簡便に予測できる。
【0024】
この発明のホースの残存寿命予測システムにおいては、内管ゴム層、該内管ゴム層よりも外周側に配置された補強層及び該補強層よりも外周側に配置された外皮層を少なくとも有する、使用中のホースの、残存寿命の予測を行う、ホースの残存寿命予測システムであって、
前記使用中のホースと同種類のホースについて、前記内管ゴム層の、各温度での使用時間と前記内管ゴム層を構成するゴムの物性値との関係を求め、前記内管ゴム層の熱劣化モデルを作成する、熱劣化モデル作成手段と、
前記予測時までの、前記内管ゴム層の使用中の温度を測定するセンサ手段と、該温度とともに該温度での使用時間を記録する、測定及び記録手段と、
前記熱劣化モデル作成手段で作成した前記熱劣化モデルと、前記測定及び記録手段によって記録された前記温度及び前記使用時間と、に基づいて、前記内管ゴム層の、前記予測時での前記熱劣化モデルにおける熱劣化位置を求める、熱劣化位置特定手段と、
前記内管ゴム層の使用限界として前記内管ゴム層を構成するゴムの物性値の閾値を設定し、前記閾値と、前記熱劣化位置特定手段で求めた前記熱劣化位置と、に基づいて、前記使用中のホースの残存寿命を予測する、残存寿命予測手段と、
を含むことを特徴とする。
前記各温度における熱負荷量は、以下の式によって算出することが好ましい。
(式)
各温度での実際の使用時間/所定の寿命までに要する各温度での使用時間
この構成によれば、ホースの残存寿命をより簡便かつ正確に予測できる。
【0025】
この発明のホースの残存寿命予測システムにおいては、前記所定の寿命は、前記内管ゴム層を構成するゴムの物性値により定めることが好ましい。
この構成によれば、ホースの残存寿命をより簡便かつ正確に予測できる。
【0026】
本発明のホースの残存寿命予測システムは、内管ゴム層、該内管ゴム層よりも外周側に配置された補強層及び該補強層よりも外周側に配置された外皮層を少なくとも有する、使用中のホースの、残存寿命の予測を行う、ホースの残存寿命予測システムであって、
前記使用中のホースと同種類のホースについて、前記内管ゴム層の、各温度での使用時間と前記内管ゴム層を構成するゴムの物性値との関係を求め、前記内管ゴム層の熱劣化モデルを作成する、熱劣化モデル作成手段と、
前記予測時までの、前記内管ゴム層の使用中の温度を測定するセンサ手段と、該温度とともに該温度での使用時間を記録する、測定及び記録手段と、
前記熱劣化モデル作成手段で作成した前記熱劣化モデルと、前記測定及び記録手段によって記録された前記温度及び前記使用時間と、に基づいて、前記内管ゴム層の、前記予測時での前記熱劣化モデルにおける熱劣化位置を求める、熱劣化位置特定手段と、
前記内管ゴム層の使用限界として前記内管ゴム層を構成するゴムの物性値の閾値を設定し、前記閾値と、前記熱劣化位置特定手段で求めた前記熱劣化位置と、に基づいて、前記使用中のホースの残存寿命を予測する、残存寿命予測手段と、
を含むことを特徴とする。
本発明のホースの残存寿命予測システムによれば、ホースの残存寿命を簡便に予測できる。
【0027】
この発明のホースの残存寿命予測システムにおいては、前記センサ手段は、前記使用中のホース以外の場所に配置されていることが好ましい。
この構成によれば、ホースの残存寿命をより簡便に予測できる。
【0028】
この発明のホースの残存寿命予測システムにおいては、
前記センサ手段と前記記録手段とは、無線通信によって通信可能であり、
前記記録手段は、前記使用中のホース以外の場所に配置されていることが好ましい。
この構成によれば、ホースの残存寿命をより簡便に予測できる。
【0029】
本発明のホースの残存寿命予測システムは、内管ゴム層、該内管ゴム層よりも外周側に配置された補強層及び該補強層よりも外周側に配置された外皮層を少なくとも有する、使用中のホースの、残存寿命の予測を行う、ホースの残存寿命予測システムであって、
前記使用中のホースと同種類のホースについて、所定の寿命までに要する各温度での使用時間を求める、寿命到達使用時間算出手段と、
前記使用中のホースについて、各温度での実際の使用時間を測定する、測定手段と、
前記測定手段で測定した前記各温度での実際の使用時間及び前記所定の寿命までに要する各温度での使用時間に基づいて、各温度における熱負荷量を算出する、熱負荷量算出手段と、
前記各温度での熱負荷量を足した総熱負荷量が限界値になった時点を前記使用中のホースの寿命とし、現時点での総熱負荷量との関係から残存寿命を予測する残存寿命予測手段と、
を含むことを特徴とする。
本発明のホースの残存寿命予測システムによれば、ホースの残存寿命を簡便に予測できる。
【0030】
この発明のホースの残存寿命予測システムにおいては、前記各温度における熱負荷量は、以下の式によって算出することが好ましい。
(式)
各温度での実際の使用時間/前記所定の寿命までに要する各温度での使用時間
この構成によれば、ホースの残存寿命をより簡便に予測できる。
【0031】
この発明のホースの残存寿命予測システムにおいては、前記所定の寿命は、前記内管ゴム層を構成するゴムの物性値により定めることが好ましい。
この構成によれば、ホースの残存寿命をより簡便かつ正確に予測できる。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、ホースの残存寿命を簡便に予測できる、ホースの残存寿命予測方法及びホースの残存寿命予測システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本発明の第1の実施形態に係るホースの残存寿命予測方法及び本発明の第1の実施形態に係るホースの残存寿命予測システムで予測対象とするホースの一例を、当該ホースが機械等に装着されている状態で例示する、全体斜視図である。
図2】(a)及び(b)は、図1に示すホースの内部の構成を例示する、一部分解斜視図である。
図3】本発明の第1の実施形態に係るホースの残存寿命予測方法を示す、フローチャートである。
図4】本実施形態における熱劣化モデルの一例を示す、概念図である。
図5】各時間における使用温度の累積を基準温度における使用時間に換算する過程の一例を説明するための、概念図である。
図6】ゴムの破断時伸びと基準温度使用時間との関係の一例を示す、概念図である。
図7】本発明の第2の実施形態に係るホースの残存寿命予測方法を示す、フローチャートである。
図8】同種類のホースについて、内管ゴム層の、所定の劣化状態に至るまでに要する各温度での使用時間を求める方法の一例について説明するための、概念図である。
図9】本発明の第1の実施形態に係るホース残存寿命予測システムを説明するための、図である。
図10】本発明の第1の実施形態におけるシステムの制御構成を示す、機能ブロック図である。
図11】本発明の第2の実施形態におけるシステムの制御構成を示す、機能ブロック図である。
図12】本発明の第3の実施形態におけるシステムの制御構成を示す、機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を例示説明する。
まず、図1を参照して、本発明の第1の実施形態に係るホースの残存寿命予測方法及び本発明の第1の実施形態に係るホースの残存寿命予測システムを適用し得る、ホースについて説明する。図1に示す、本発明のホースの残存寿命予測方法及びホースの残存寿命予測システムで残存寿命を予測するホース1は、例えば、機械等3(例えば、図示例のような建設機械や、工場設備等)に装着されて、例えば、高温、高圧の流体(油等)を用いた圧力を伝達するのに用いられる。また、図1に示すホース1の両端には、機械等3に接続するための継手2(図示せず)が、ホース1内に挿入されて加締められることによって取り付けられていてもよい。そして、ホース1は、当該継手2を介して機械等3に装着されることができる。
【0035】
本例では、ホース1は、図2に示すように、内管ゴム層11、内管ゴム層11よりも外周側に配置された補強層12及び該補強層12よりも外周側に配置された外皮層13を少なくとも有している。
内管ゴム層11は、最も内周側のゴム層であり、その内側を流動する流体に対して耐熱性その他の耐性を有する。また、補強層12は、1層又は複数層(図2(a)の例では1層、図2(b)の例では4層)設けられ、ホース1の耐圧性を確保する役割を有する。
補強層12は、繊維又は金属ワイヤ等の補強材が、スパイラル又は編み上げ等の形態(図2(a)の例では編み上げ形態、図2(b)の例ではスパイラル形態)で、内管ゴム層11の外周面又はそれより外周側に巻き付けられて形成されている。
外皮層13は、ホース1の最外層を形成するとともに、耐摩耗性や耐候性等を有し、ホース1を外部環境から保護可能な材質で形成されている。外皮層13の材質は特に限定されないが、例えば、ゴムによって形成することができる。
また、図2(b)に示すように、内管ゴム層11と外皮層13との間に、1層又は複数層(図2(b)の例では、3層)の中間ゴム層14を配置してもよい。中間ゴム層14は、図2(b)の例のように、補強層12を複数有する場合に補強層12どうしの間に位置して、各補強層12が相互にずれることを防ぐとともに、各補強層12が相互に接触して摩耗することを防いでいる。なお、中間ゴム層14は設けなくてもよい。また補強層12が内管ゴム層11に食い込む事を防ぐためにこれら両者の間に下編み層(図示せず)を挿入してもよい。
【0036】
ただし、図示は省略するが、ホース1は、外皮層13の外周側を、樹脂製又は金属製等の保護カバー(外装保護部品)により被覆して、ホース1の熱や外傷等からの保護を強化するようにしてもよい。この場合、保護カバーは外皮層13に対して接着されていなくてもよい。
【0037】
続いて、本発明のホースの残存寿命予測方法及び本発明のホースの残存寿命予測システムを得るに至った経緯について、まず説明する。
図1に示す上記のようなホース1では、当該ホース1の仕様に定められた範囲内での使用であっても、内管ゴム層11が徐々に劣化する。発明者らが、内管ゴム層11の劣化の要因について鋭意究明したところ、ホース1は、繰り返し曲げや揺動、圧力等の物理入力を受けて使用され、物理入力の大きさは装着される位置によって異なるが、仕様に定められた範囲内での物理入力によっては、内管ゴム層11の劣化は大きく促進されるものではなく、内管ゴム層11は、主に熱が要因で劣化することに想到した。そこで、発明者らは、使用中のホース1の内管ゴム層11が受けた熱を用いることによって、ホース1の残存寿命の予測が可能であると考えた。本発明は、このような考えに基づいてなされたものである。
【0038】
<第1の実施形態に係るホースの残存寿命予測方法>
まず、本発明の第1の実施形態に係るホースの残存寿命予測方法について、図3~6を参照して説明する。本発明の第1の実施形態に係るホースの残存寿命予測方法は、内管ゴム層11、該内管ゴム層11よりも外周側に配置された補強層12及び該補強層12よりも外周側に配置された外皮層13を少なくとも有する、使用中のホース1の、残存寿命の予測を行うものである。ここで、使用中のホースとは、機械等の稼動形態に応じて任意に定めることができるが、本実施形態では、ホースが装着された機械等が稼働中及び稼働後に熱が下がるまでの状態である、ホースを指している。
【0039】
図3に示すように、本発明の第1の実施形態に係るホースの残存寿命予測方法では、予め、使用中のホース1と同種類のホースについて、内管ゴム層の、基準温度での使用時間と該内管ゴム層を構成するゴムの物性値との関係を求め、内管ゴム層の熱劣化モデルを作成し(熱劣化モデル作成工程)、使用中のホースについて、内管ゴム層11の、基準温度での予測時までの使用時間である基準温度使用時間を算定し(基準温度使用時間算定工程)、基準温度使用時間算定工程で算定した基準温度使用時間と、熱劣化モデル作成工程で作成した熱劣化モデルと、の対比に基づいて、前記使用中のホースの残存寿命を予測する(残存寿命予測工程)ことによって、使用中のホース1の残存寿命の予測を行う。
【0040】
[熱劣化モデル作成工程]
熱劣化モデル作成工程では、予め、使用中のホース1と同種類のホースについて、内管ゴム層の、基準温度での使用時間と該内管ゴム層を構成するゴムの物性値との関係を求め、内管ゴム層の熱劣化モデルを作成する。ここで、使用中のホースと同種類のホース(以下、単に「同種類のホース」ともいう。)とは、使用中のホースと、内管ゴム層を構成するゴムが同種であるホースを指すものとする。なお、ゴムが同種であるとは、ゴムの配合が同一であることを指している。
【0041】
内管ゴム層の熱劣化モデルに用いる、内管ゴム層を構成するゴムの物性値は特に限定されず、例えば、破断時伸び、破断時強力及び硬度であることが好ましい。ゴムの物性値として一般に用いられる指標であり、正確に測定することができるためである。しかしながら、熱劣化モデルに用いるゴムの物性値は、これらの指標に限定されず、また、複数の指標を用いてもよい。本実施形態では、破断時伸びを用いた例によって説明する。
【0042】
図4は、本実施形態における熱劣化モデルの一例を示す図である。図4は、同種類のホースの基準温度での使用時間(h)と、内管ゴム層を構成するゴムの破断時伸び(%)との関係を示している。本例において、熱劣化モデルは、図4に示すような、基準温度での使用時間とゴムの物性値(本例では、ゴムの破断時伸び)との関係を示すグラフとされている。ここで、基準温度とは、ホースの残存寿命の予測のために便宜上定める、基準となる温度であり、任意に定めることができる。なお、基準温度は任意に定めることができるが、使用中のホース1の内管ゴム層11が実際に受ける熱と同程度の温度であることが好ましい。図示例では、基準温度を80°Cとしている。
【0043】
熱劣化モデルは、例えば、同種類のホースに80°Cの流体を循環させ続けて、複数の使用時間における、内管ゴム層を構成するゴムの破断時伸びを測定する試験を行い、得られた結果を基に、ゴムの破断時伸びの値の推移を示すグラフとすることができる。なお、ゴムの破断時伸びの測定は、例えば、JISK6251に基づく引張試験によることができる。また、ゴムの物性値として、ゴムの破断時強力を用いる場合の測定は、例えば、JISK6251に基づいて試験を行い、ゴム硬度を用いる場合の測定は、例えば、JISK6253に基づいて試験を行うことができる。
【0044】
ゴムの破断時伸びの測定は、連続的に測定することを含みうるが、時間間隔を空けて測定してもよい。また、同種類のホースに、例えば基準温度よりも高い又は低い温度の流体を循環させ続けて、複数の使用時間における内管ゴム層を構成するゴムの破断時伸びを測定する試験を行って基準温度に換算できるようにするために複数の温度での値を取る必要がある。これによって使用時のデータ取得時に基準温度への換算が容易になる。
【0045】
なお、ゴムの物性値として、破断時伸び、破断時強力及び硬度のうち、複数の指標を用いる場合には、それぞれの物性値について熱劣化モデルを作成する。
【0046】
[基準温度使用時間算定工程]
基準温度使用時間算定工程においては、使用中のホース1について、内管ゴム層11の、基準温度での予測時までの使用時間である、基準温度使用時間を算定する。
【0047】
基準温度は、上述のとおり、ホースの残存寿命の予測のために便宜上定める、基準となる温度であり、任意に定めることができる。
【0048】
基準温度使用時間算定工程は、例えば、使用中のホース1について、内管ゴム層11の、予測時までの、各時間における使用温度のデータを取得し(データ取得工程)、データ取得工程で取得したデータにおける、各時間における使用温度での使用時間の累積を、基準温度使用時間に換算する(基準温度換算工程)ことができる。
【0049】
データ取得工程では、使用中のホース1の残存寿命を予測する時までの、使用中のホース1の内管ゴム層11の、各時間における使用温度のデータを取得する。各時間における使用温度とは、連続的に測定することを含みうるが、時間間隔を空けて測定してもよい。基準温度への換算を容易にする観点からは、所定の時間間隔で定期的に測定することが好ましい。
【0050】
また、使用中のホース1の内管ゴム層11の使用温度は、内管ゴム層11の内周側の温度とすることができるし、例えば内管ゴム層11の内周側において、圧力を伝達するために用いられる流体のタンク内の流体温度とする事もできる。タンク内は比較的温度が一定な事が多いため、タンクの温度が測定できると好ましい。なお、流体のタンクの温度と内管ゴム層11との間に温度差が生じる場合は、温度差分を加算又は減算した値を、内管ゴム層11の温度としてもよい。あるいは、予め、内管ゴム層11の内周側に温度センサを設置することによって、内管ゴム層11の温度を測定するものとしてもよい。
【0051】
各時間における使用温度は、例えば、ある測定時における使用温度が90°Cであり、その次の1時間後の測定時における使用温度が60°Cであり、さらにその次の1時間後までホースが使用され続けた場合、90°Cが1時間継続的に与えられ、その後に60°Cが1時間継続的に与えられたものとすることができる。
【0052】
基準温度換算工程では、上記データ取得工程で取得したデータにおける、各時間における使用温度の累計を、基準温度使用時間に換算する。図5は、各時間における使用温度の累積を、基準温度(図示例では80°C)使用時間に換算する過程の一例を説明するためのイメージ図である。
【0053】
各時間における使用温度の累積を、基準温度使用時間に換算する方法は特に限定されないが、例えば、以下の方法によることができる。まず、ホース1の内管ゴム層11のゴムの物性値について、ホース1の使用限界として仮の限界値を設定する。次に、同種類のホースを複数用意して、それぞれのホースに異なる温度を有する流体を循環させ続けて、当該限界値まで到達するまでの使用時間を測定する試験を行う。これらの複数の同種類のホースに対する試験結果に基づいて、使用時間(h)と、温度の逆数(1/T)との関係から、任意の温度の限界値までの所要時間を算出する。例えば、使用時間の対数と温度の逆数との関係を示すグラフを作成することによって、任意の温度の限界値までの所要時間を算出することができる。なお、ゴムの物性値の仮の限界値とは、後の残存寿命予測工程において述べる閾値と基本的に同じである。
【0054】
基準温度使用時間算定工程において、データ取得工程及び基準温度換算工程を含むことによって、ホースの残存寿命をより簡便に測定することができる。
【0055】
[残存寿命予測工程]
残存寿命予測工程では、基準温度使用時間算定工程で算定した基準温度使用時間と、熱劣化モデル作成工程で作成した熱劣化モデルと、の対比に基づいて、使用中のホース1の残存寿命を予測する。
【0056】
より具体的には、例えば、図6に示すように、内管ゴム層11の使用限界として、内管ゴム層11を構成するゴムの物性値の閾値を設定し、熱劣化モデルにおける、基準温度使用時間経過時から、物性値が閾値となる使用時間経過時に至るまでの時間を、残存寿命と予測することによって、行うことができる。上記方法によれば、ホースの残存寿命をより簡便かつ正確に予測することができる。
【0057】
ここで、ゴムの物性値の閾値の設定方法は特に限定されないが、例えば、使用中のホースと同種類のホースの故障品の物性値を測定し、その値に基づいて設定することができる。
【0058】
内管ゴム層11の使用限界として、内管ゴム層11を構成するゴムの物性値の閾値は、使用中のホース1に対する物理入力の大きさに応じて決定されることができる。使用中のホース1に対する物理入力の大きさは、使用中のホース1が装着されている状態や環境によって、差異が生じることから、このような物理入力の大きさを加味することが好ましい。例えば、固定配管等の、物理入力が小さい環境で使用されるホースと、可動配管等の、物理入力が大きい環境で使用されるホースとでは、故障品における物性値が異なるのが一般的である。可動配管の場合、ホースの故障は物理入力の影響も出ることになるため、その分、熱による劣化の閾値も高く設定することが好適である。なお、物性値としてゴムの破断時伸びを用いる場合は、ホースのゴムの破断時伸びが小さい程、ゴムの特性が悪化していることになる。
【0059】
なお、ゴムの物性値の閾値を設定する際には、ホースの使用位置等に応じて適宜設定することができるが、ホースの加締め部からの液体の漏れやホースの破断等の故障が生じる前の段階でホースを交換できるように、実際の内管ゴム層11の使用限界に至る前の値にて設定することが好ましい。
【0060】
残存寿命予測工程では、例えば、図6に示すように、基準温度使用時間を、基準温度(図示例では80°C)の熱劣化モデルにプロットして、基準温度使用時間経過時(A)における、ホース1の内管ゴム層11を構成するゴムの破断時伸びを推定することができる。そして、基準温度使用時間経過時(A)から、物性値が閾値となる使用時間経過時(B)までの時間を、ホース1の残存寿命として予測することができる。なお、残存寿命を予測するには、基準温度使用時間経過時(A)においては、必ずしもその時点でのゴムの破断時伸びの値を推定することは必須ではなく、基準温度使用時間経過時(A)から、使用時間経過時(B)までの時間がわかればよい。
【0061】
なお、熱劣化モデル及び閾値の設定において、複数の指標の中で、物性値の劣化が最も早い指標を用いる事が好ましい。
【0062】
本実施形態のホースの残存寿命予測方法によれば、使用中のホースの圧力及び温度の双方をモニタリングする必要がなく、しかも、ホースを破壊することもないので、ホースの残存寿命を簡便に予測できる。
【0063】
<第2の実施形態に係るホースの残存寿命予測方法>
まず、本発明の第2の実施形態に係るホースの残存寿命予測方法について、図7及び図8を参照して説明する。本発明の第2の実施形態に係るホースの残存寿命予測方法は、第1のホースの残存寿命予測方法と同様に、内管ゴム層11、該内管ゴム層11よりも外周側に配置された補強層12及び該補強層12よりも外周側に配置された外皮層13を少なくとも有する、使用中のホース1の、残存寿命の予測を行うものである。
以下、第2のホースの残存寿命予測方法について、第1のホースの残存寿命予測方法と異なる点を中心に説明する。
【0064】
図7に示すように、本発明の第2の実施形態に係るホースの残存寿命予測方法では、予め、使用中のホース1と同種類のホースについて、内管ゴム層の、所定の劣化状態に至るまでに要する各温度での使用時間を求め(劣化状態到達使用時間算出工程)、使用中のホース1について、内管ゴム層11の、各温度での実際の使用時間を測定し(測定工程)、測定工程で測定した各温度での実際の使用時間及び所定の劣化状態に至るまでに要する各温度での使用時間に基づいて、各温度における熱負荷量を算出し(熱負荷量算出工程)、各温度での熱負荷量を積算した総熱負荷量が、所定の上限値になった時点を使用中のホースの寿命とし、所定の上限値と予測時での総熱負荷量との関係から残存寿命を予測する(残存寿命予測工程)ことによって、使用中のホース1の残存寿命の予測を行う。
【0065】
[劣化状態到達使用時間算出工程]
劣化状態到達使用時間算出工程では、予め、使用中のホース1と同種類のホースについて、内管ゴム層の、所定の劣化状態に至るまでに要する各温度での使用時間を求める。
【0066】
内管ゴム層が、所定の劣化状態に至るとは、例えば、内管ゴム層を構成するゴムの物性値が、設定した値に到達することを指す。ここで、内管ゴム層を構成するゴムの物性値は特に限定されないが、例えば、破断時伸び、破断時強力及び硬度であることが好ましい。ゴムの物性値として一般に用いられる指標であり、正確に測定することができるためである。しかしながら、内管ゴム層が所定の劣化状態に至ったことを判断するための指標は、これらの指標に限定されず、また、複数の指標を用いてもよい。本実施形態では、破断時伸びを用いた例によって説明する。
【0067】
また、各温度での使用時間とは、ある温度において、同種類のホースの内管ゴム層が、上記した所定の劣化状態に至るまでに要する時間を指す。
【0068】
同種類のホースについて、内管ゴム層の、所定の劣化状態に至るまでに要する各温度での使用時間を求める方法は特に限定されないが、例えば、以下の方法によることができる。図8は、同種類のホースについて、内管ゴム層の、所定の劣化状態に至るまでに要する各温度での使用時間を求める方法の一例について説明するための概念図である。
【0069】
まず、ホース1の内管ゴム層が所定の劣化状態に至ったものとする、ゴムの物性値の値を設定する。次に、同種類のホースを複数本用意して、それぞれのホースに異なる温度を有する流体を循環させ続けて、当該ホースの内管ゴム層を構成するゴムの物性値が、上記の設定した値に到達するまでの使用時間を測定する試験を行う。これらの複数の同種類のホースに対する試験結果に基づいて、各温度での所定の劣化状態に至るまでに要する使用時間(L)の対数と、温度の逆数(1/T)との関係を示すグラフを作成することによって、ある特定の温度における、内管ゴム層が、所定の劣化状態に至るまでに要する使用時間を求めることができる。
【0070】
なお、上記グラフの作成において、同種類のホースの本数は特に限定されないが、ホースの残存寿命をより正確に予測する観点からは、少なくとも4本以上のホースを用いることが好ましい。また、同種類のホースに循環させる流体の温度についても特に限定されないが、ホースの残存寿命をより正確に予測する観点からは、使用中のホース1の内管ゴム層11が実際に受ける熱と同程度の温度の流体を含むことが好ましい。
【0071】
[測定工程]
測定工程においては、使用中のホース1について、内管ゴム層11の、各温度での実際の使用時間を測定する。各温度での実際の使用時間の測定とは、使用中のホース1が使用されているときの内管ゴム層11の温度を測定し、それぞれの温度での実際の使用時間を測定することを指す。例えば、使用中のホース1の残存寿命を予測する時までの、使用中のホース1の内管ゴム層11の各温度における実際の使用時間を測定する。
【0072】
ここで、使用中のホース1の内管ゴム層11の温度とは、内管ゴム層11の内周側の温度とすることができるし、又は、内管ゴム層11の内周側において、圧力を伝達するために用いられる流体のタンク内の流体温度とする事もできる。タンク内は比較的温度が一定な事が多いため、タンクの温度が測定できると好ましい。なお、流体のタンクの温度と内管ゴム層11との間に温度差が生じる場合は、温度差分を加算又は減算した値を、内管ゴム層11の温度としてもよい。あるいは、予め、内管ゴム層11の内周側に温度センサを設置することによって、内管ゴム層11の温度を測定するものとしてもよい。
【0073】
各温度における実際の使用時間の測定においては、使用中のホース1の温度を連続的に測定することを含みうるが、時間間隔を空けて測定してもよい。後述する、総熱負荷量の算出を容易にする観点からは、所定の時間間隔で定期的に測定することが好ましい。例えば、ある測定時における温度が90°Cであり、その次の1時間後の測定時における温度が60°Cであり、さらにその次の1時間後までホースが使用され続けた場合、90°Cが1時間継続的に与えられ、その後に60°Cが1時間継続的に与えられたものとすることができる。
【0074】
[熱負荷量算出工程]
熱負荷量算出工程においては、上記測定工程で測定した各温度での実際の使用時間及び所定の劣化状態に至るまでに要する各温度での使用時間に基づいて、各温度における熱負荷量を算出する。
【0075】
具体的には、例えば、上記劣化状態到達使用時間算出工程において作成されたグラフを用いて、上記測定工程で測定した各温度での実際の使用時間に基づいて、各温度における熱負荷量を算出することができる。各温度における熱負荷量を算出するには、例えば、以下の式を用いることができる。
(式)
各温度での実際の使用時間/所定の劣化状態に至るまでに要する各温度での使用時間
例えば、上記の測定工程における例のように、使用中のホース1に、90°Cが1時間継続的に与えられた場合は、1時間を、90°Cでの所定の劣化状態に至るまでに要する使用時間で、除することによって算出する。上記算出式を用いることによって、各温度における熱負荷量を簡便かつ正確に算出でき、ホースの残存寿命をより簡便かつ正確に予測できる。
【0076】
[残存寿命予測工程]
残存寿命予測工程においては、上記した、各温度における熱負荷量を積算した総熱負荷量が、所定の上限値になった時点を、使用中のホースの寿命とし、予測時での総熱負荷量との関係から、残存寿命を予測する。ここで、総熱負荷量とは、上記熱負荷量算出工程において算出した、予測時までの各温度における熱負荷量の値を全て足し合わせた、即ち、積算した値をいう。
【0077】
総熱負荷量の「所定の上限値」は、例えば、上記熱負荷量算出工程において算出された、各温度における熱負荷量の総計が「1」に達した場合等、任意の値を設定することができる。例えば、上記の熱負荷量算出工程で例示した、各温度における熱負荷量の算出式で算出される値は必ず1以下になるが、実際の使用時間を積算していけば、最後は所定の劣化状態に至るまでに要する使用時間となり、1となる。その時が所定の上限値となる。
【0078】
予測時での総熱負荷量は、上記の熱負荷量算出工程において算出された、予測時までの、各温度における熱負荷量を累積することによって、算出することができる。「所定の上限値」になった時点を、使用中のホースの寿命とすると、算出された、予測時での総熱負荷量が、「所定の上限値」に達するまでの期間を残存寿命と予測することができる。
【0079】
予測時での総熱負荷量と、所定の上限値との関係から、ホースの残存寿命を予測する具体的な方法については特に限定されないが、例えば、予測時後も、予測時までと同じように使用されると仮定するとき、以下の方法を用いることができる。
【0080】
まず、予測時での総熱負荷量を、使用中のホース1の取付けから予測時までの期間で除することによって、取付けから予測時までの平均熱負荷量を算出する。なお、取付けから予測時までの期間の単位は、1時間単位、1日単位、月単位等を用いることができるが、交換時期を適切に把握する観点からは、1日単位での平均熱負荷量を用いることが好ましい。次に、総熱負荷量の所定の上限値から、予測時での総熱負荷量を減算した値を、上記した平均熱負荷量で除することによって、ホースの残存寿命を予測することができる。
【0081】
本実施形態のホースの残存寿命予測方法によれば、使用中のホースの圧力及び温度の双方をモニタリングする必要がなく、しかも、ホースを破壊することもないので、ホースの残存寿命を簡便に予測できる。
【0082】
<第3の実施形態に係るホースの残存寿命予測方法>
本発明の第3の実施形態に係るホースの残存寿命予測方法は、本発明の第1及び第2の実施形態に係るホースの残存寿命予測方法と同様に、内管ゴム層11、該内管ゴム層11よりも外周側に配置された補強層12及び該補強層12よりも外周側に配置された外皮層13を少なくとも有する、使用中のホース1の、残存寿命の予測を行うものである。
【0083】
第3の実施形態に係るホースの残存寿命予測方法は、予め、使用中のホースと同種類のホースについて、内管ゴム層の、各温度での使用時間と内管ゴム層を構成するゴムの物性値との関係を求め、内管ゴム層の熱劣化モデルを作成し(熱劣化モデル作成工程)、予測時までの、内管ゴム層の使用中の温度を測定し、該温度とともに該温度での使用時間を記録し(測定及び記録工程)、熱劣化モデル作成工程で作成した熱劣化モデルと、測定及び記録工程で記録した温度及び使用時間と、に基づいて、内管ゴム層の、予測時での熱劣化モデルにおける熱劣化位置を求め(熱劣化位置特定工程)、内管ゴム層の使用限界として内管ゴム層を構成するゴムの物性値の閾値を設定し、該閾値と、熱劣化位置特定工程で求めた熱劣化位置と、に基づいて、使用中のホースの残存寿命を予測する(残存寿命予測工程)ことによって、使用中のホース1の残存寿命の予測を行う。
【0084】
本実施形態に係るホースの残存寿命予測方法において、熱劣化モデル作成工程では、例えば、第1の実施形態に係るホースの残存寿命予測方法における熱劣化モデル作成工程と同様の手法を用いることができる。
【0085】
また、測定及び記録工程では、使用中のホース1の内管ゴム層11の使用中の温度を測定し、該温度とともに該温度での使用時間を記録する。使用中のホース1の内管ゴム層の使用中の温度の測定手法は、特に限定されない。例えば、使用中のホース1の内管ゴム層11の内周側の温度が測定されてもよい。より具体的には、予め、内管ゴム層11の内周側に温度センサを設置することによって、内管ゴム層11の温度を測定するものとしてもよい。好適には、使用中のホース1の内管ゴム層の使用中の温度は、使用中のホース1以外の場所で測定される。使用中のホース1以外の場所とは、例えば、内管ゴム層11の内周側において圧力を伝達するために用いられる、流体のタンク内の流体温度とする事もできる。タンク内は比較的温度が一定な事が多いため、タンクの温度が測定できると好ましい。なお、流体のタンクの温度と内管ゴム層11との間に温度差が生じる場合は、温度差分を加算又は減算した値を、内管ゴム層11の温度としてもよい。この構成によれば、ホースの残存寿命をより簡便に予測できる。
【0086】
また、測定及び記録工程において記録した温度及び使用時間についての情報は、無線通信によって通信可能であることが好ましい。この構成によれば、ホースの残存寿命をより簡便に予測できる。
【0087】
測定及び記録工程において、温度及び使用時間の記録は、使用中のホース1以外の場所で行うことが好ましい。例えば、使用中のホース1が装着された機械等3において行われてもよく、機械等3の外部において行われてもよい。この構成によれば、ホースの残存寿命をより簡便に予測できる。
【0088】
熱劣化位置特定工程においては、熱劣化モデル作成工程で作成した熱劣化モデルと、測定及び記録工程で記録した温度及び使用時間と、に基づいて、使用中のホース1の内管ゴム層11の、予測時での熱劣化モデルにおける熱劣化位置を求める。ここで、熱劣化モデルにおける熱劣化位置とは、例えば、図6に示すグラフにおける、ゴムの物性値を用いた、熱劣化状態を示す位置を指すものとすることができる。
【0089】
残存寿命予測工程においては、内管ゴム層11の使用限界として内管ゴム層を構成するゴムの物性値の閾値を設定し、該閾値と、熱劣化位置特定工程で求めた熱劣化位置と、に基づいて、使用中のホース1の残存寿命を予測する。
【0090】
本実施形態のホースの残存寿命予測方法によれば、使用中のホースの圧力及び温度の双方をモニタリングする必要がなく、しかも、ホースを破壊することもないので、ホースの残存寿命を簡便に予測できる。
【0091】
<第1の実施形態に係るホースの残存寿命予測システム>
次に、本発明の第1の実施形態に係るホースの残存寿命予測システムについて例示説明する。
【0092】
[システム構成]
図9は、本発明の第1の実施形態に係るホースの残存寿命予測システムの構成図である。本実施形態に係る第1のホースの残存寿命予測システム100の説明において、「ユーザ」とは、端末を操作してホース1の残存寿命を確認する者をいい、例えば、ホース1が装着された機械等3(例えば、建設機械や工場設備等)の使用者、機械等3の販売者、ホース1の販売者等である。ホース1の残存寿命予測システム100は、ホース1が装着された機械等3(図示例では建設機械)と、サーバ40と、1台以上の端末50から構成され、サーバ40は、機械等3、端末50のそれぞれとネットワーク60を介して通信可能に接続されている。機械等3は、サーバ40に、後述する各時間における使用温度等のデータを送信する。機械等3とサーバ40とを接続するネットワーク60の例として、無線回線や衛星回線などがある。サーバ40は、機械等3から受信したデータ及びデータベースに格納されたデータに基づいて、ホース1の残存寿命を予測し、端末50に送信するサーバである。端末50の例として、PCやPDA、携帯電話等の様々な機器を使用することができる。また、サーバ40と端末50とは、異なるユーザに帰属させることもでき、あるいは、一体化させることもできる。なお、サーバ40と端末50との間のインターフェースは、例えば、サーバ40がWEBサーバを立ち上げ、端末50がWEBブラウザを備えて、HTTPやHTTPSによる通信で実現することができる。
【0093】
[機械等]
機械等3は、使用中のホース1について、内管ゴム層11の、予測時までの、各時間における使用温度を測定して、各時間における使用温度のデータを、サーバ40に無線で送信するように構成されている。図9及び図10に示すように、機械等3は、内管ゴム層11の各時間における使用温度を測定するセンサ及び記録計等からなる、各時間における使用温度測定手段31と、情報通信手段32とを備える。なお、これらの機器はあくまで例示であって、機械等3は、各時間における使用温度測定手段として、任意の機器を備えることができる。
【0094】
各時間における使用温度測定手段31において、センサは、内管ゴム層11の内周側の温度を、使用中のホース1の内管ゴム層11の使用温度として測定することができるし、あるいは、例えば内管ゴム層11の内周側において、圧力を伝達するために用いられる流体のタンク内の流体温度を、内管ゴム層11の使用温度として測定することもできる。なお、流体のタンクの温度と内管ゴム層11との間に温度差が生じる場合は、温度差分を加算又は減算した値を、内管ゴム層11の温度としてもよい。あるいは、センサは、内管ゴム層11の内周側に設置されてもよい。
【0095】
また、各時間における使用温度測定手段31において、各時間における使用温度とは、連続的に測定することを含みうるが、時間間隔を空けて測定してもよい。データ量を抑える観点からは、所定の時間間隔で定期的に測定することが好ましい。
【0096】
さらに、測定された各時間における使用温度は、記録計に記録され、連続的又は時間間隔を空けて、機械等3の情報通信手段32に無線で送信されることができ、情報通信手段32は、ネットワーク60を介して、サーバ40と通信を行うことができる。
【0097】
[サーバ]
図10に示すように、サーバ40は、データベース41と、熱劣化モデル作成手段42と、基準温度使用時間算定手段43と、残存寿命予測手段44と、情報通信手段45とを備えている。データベース41は、ホース1の残存寿命の予測に用いる各種情報を格納している。データベース41は、熱劣化モデル作成手段42から、情報を受信することができる。基準温度使用時間算定手段43は、使用中のホース1について、基準温度での予測時までの使用時間を算定する。基準温度使用時間算定手段43は、使用中のホース1について、内管ゴム層11の、予測時までの、各時間における使用温度のデータを取得する、データ取得手段(例えば、受信装置が付いている端末)と、データ取得手段で取得した、各時間における使用温度での使用時間の累積を、基準温度における使用時間に換算する、基準温度換算手段(例えば、計算式が組み込まれたプログラム等)とを含むことが好ましい。残存寿命予測手段44は、基準温度使用時間算定手段43で算定した、内管ゴム層11の基準温度での使用時間と、データベース41に格納された、熱劣化モデル作成手段42によって作成された、熱劣化モデルとの対比に基づいて、使用中のホース1の残存寿命を予測する。情報通信手段45は、端末50に、予測された使用中のホース1の残存寿命を送信する。なお、情報通信手段45は、サーバ40が、ネットワーク60を介して、機械等3及び端末50と通信を行う。なお、サーバ40の中身を機械等3に組み込む事もできる。また、端末50も機械等3に組み込む事もできる。
【0098】
[熱劣化モデル作成手段]
熱劣化モデル作成手段42は、ホース1の残存寿命の予測に用いる情報を作成し、データベース41に情報を送信することができる。熱劣化モデル作成手段42は、使用中のホース1と同種類のホースについて、内管ゴム層の、基準温度での使用時間と該内管ゴム層を構成するゴムの物性値との関係を求め、内管ゴム層の熱劣化モデルを作成する。
【0099】
内管ゴム層の熱劣化モデルに用いる、内管ゴム層を構成するゴムの物性値は特に限定されず、例えば、破断時伸び、破断時強力及び硬度であることが好ましい。ゴムの物性値として一般に用いられる指標であり、正確に測定することができるためである。しかしながら、熱劣化モデルに用いるゴムの物性値は、これらの指標に限定されず、また、複数の指標を用いてもよい。本実施形態では、破断時伸びを用いた例によって説明する。
【0100】
また、本例において、熱劣化モデルの一例は、上述の図4に示すような、基準温度での使用時間とゴムの物性値(本例では、ゴムの破断時伸び)との関係を示すグラフとすることができる。
【0101】
なお、ゴムの物性値として、破断時伸び、破断時強力及び硬度のうち、複数の指標を用いる場合には、それぞれの物性値について熱劣化モデルを作成する。
【0102】
[基準温度使用時間算定手段]
基準温度使用時間算定手段43は、使用中のホース1について、内管ゴム層11の、基準温度での予測時までの使用時間である、基準温度使用時間を算定する。
【0103】
基準温度使用時間算定手段43は、上述のとおり、例えば、使用中のホース1について、内管ゴム層11の、予測時までの、各時間における使用温度のデータを取得する、データ取得手段と、データ取得工程で取得したデータにおける、各時間における使用温度での使用時間の累積を、基準温度使用時間に換算する、基準温度換算手段とを含むことができる。
【0104】
データ取得手段は、機械等3から送信されたデータを、ネットワーク60を介して取得することが好ましい。
【0105】
基準温度換算手段における、各時間における使用温度での使用時間の累積を、基準温度使用時間に換算する手段は特に限定されないが、例えば、上述の第1の実施形態に係るホースの残存寿命予測方法における、基準温度換算工程と同様の手段を用いることができる。
【0106】
基準温度使用時間算定手段において、データ取得手段及び基準温度換算手段を含むことによって、ホースの残存寿命をより簡便に測定することができる。
【0107】
[残存寿命予測手段]
残存寿命予測手段44は、基準温度使用時間算定手段43で算定した、内管ゴム層11の基準温度での使用時間と、データベース41に格納された、熱劣化モデル作成手段42によって作成された、熱劣化モデルとの対比に基づいて、使用中のホース1の残存寿命を予測する。
【0108】
より具体的には、例えば、図6に示すように、内管ゴム層11の使用限界として、内管ゴム層11を構成するゴムの物性値の閾値を設定し、熱劣化モデルにおける、基準温度使用時間経過時から、物性値が閾値となる使用時間経過時に至るまでの時間を、残存寿命と予測することによって、行うことができる。上記手段によれば、ホースの残存寿命をより簡便かつ正確に予測することができる。
【0109】
なお、閾値の設定は、残存寿命予測手段44に予め設定されていてもよく、ユーザの手動等によって、入力又は変更されることができる。
【0110】
ここで、ゴムの物性値の閾値の設定方法は特に限定されないが、例えば、使用中のホース1と同種類のホースの故障品の物性値を測定し、その値に基づいて設定されることができる。
【0111】
残存寿命予測手段44は、例えば、使用中のホース1に対する物理入力の大きさの入力によって、閾値が設定可能に構成されることができる。上述のとおり、使用中のホース1に対する物理入力の大きさは、使用中のホース1が装着されている状態や環境によって、差異が生じることから、このような物理入力の大きさを加味することが好ましい。例えば、残存寿命予測手段44に、物理入力の大きさを入力すると、閾値が自動的に設定されるようにすることができる。
【0112】
なお、ゴムの物性値の閾値の設定は、ホースの使用位置等に応じて適宜設定されるように構成することができるが、ホースの加締め部からの液体の漏れやホースの破断等の故障が生じる前の段階でホースを交換できるように、実際の内管ゴム層11の使用限界に至る前の値にて設定されるように設定することが好ましい。
【0113】
残存寿命予測手段では、例えば、上述の残存寿命予測工程と同様に、図9に示すように、基準温度使用時間を、基準温度(図示例では80°C)の熱劣化モデルにプロットして、基準温度使用時間経過時(A)における、ホース1の内管ゴム層11を構成するゴムの破断時伸びを推定するように構成することができる。
【0114】
なお、熱劣化モデル及び閾値の設定において、複数の指標の中で、物性値の劣化が最も早い指標を用いる事が好ましい。
【0115】
[端末]
端末50は、残存寿命予測手段44によって予測された、ホース1の残存寿命を受信し、例えば、表示画面にホース1の残存寿命を表示することができる。
【0116】
本実施形態のホースの残存寿命予測システムによれば、使用中のホースの圧力及び温度の双方をモニタリングする必要がなく、しかも、ホースを破壊することもないので、ホースの残存寿命を簡便に予測できる。
【0117】
<第2の実施形態に係るホースの残存寿命予測システム>
次いで、本発明の第2の実施形態に係るホースの残存寿命予測システムについて、図9及び図11を参照して、例示説明する。以下、第2のホースの残存寿命予測システム102について、第1のホースの残存寿命予測システム100と異なる点を中心に説明する。
【0118】
[機械等]
機械等3は、使用中のホース1について、内管ゴム層11の、予測時までの、各温度における使用時間を測定して、各温度における使用時間のデータを、サーバ40に無線で送信するように構成されている。図9及び図11に示すように、機械等3は、内管ゴム層11の各温度における使用時間を測定するセンサ及び記録計等からなる、測定手段301と、情報通信手段302とを備える。なお、これらの機器はあくまで例示であって、機械等3は、測定手段として、任意の機器を備えることができる。
【0119】
測定手段301において、センサは、内管ゴム層11の内周側の温度を、使用中のホース1の内管ゴム層11の各温度として測定することができるし、あるいは、例えば内管ゴム層11の内周側において、圧力を伝達するために用いられる流体のタンク内の流体温度を、内管ゴム層11の各温度として測定することもできる。なお、流体のタンクの温度と内管ゴム層11との間に温度差が生じる場合は、温度差分を加算又は減算した値を、内管ゴム層11の各温度としてもよい。あるいは、センサは、内管ゴム層11の内周側に設置されてもよい。
【0120】
また、測定手段301において、各温度における使用時間とは、温度を連続的に測定することを含みうるが、時間間隔を空けて測定してもよい。データ量を抑える観点からは、所定の時間間隔で定期的に測定することが好ましい。
【0121】
さらに、測定された各温度における使用時間は、記録計に記録され、連続的又は時間間隔を空けて、機械等3の情報通信手段302に無線で送信されることができ、情報通信手段302は、ネットワーク60を介して、サーバ40と通信を行うことができる。
【0122】
図11に示すように、サーバ40は、データベース401と、劣化状態到達使用時間算出手段402と、熱負荷量算出手段403と、残存寿命予測手段404と、情報通信手段405とを備えている。劣化状態到達使用時間算出手段402は、使用中のホース1と同種類のホースについて、内管ゴム層の、所定の劣化状態に至るまでに要する各温度での使用時間を求める。データベース401は、劣化状態到達使用時間算出手段402から、情報を受信することができる。熱負荷量算出手段403は、使用中のホース1について、測定手段301で測定した各温度での実際の使用時間及び劣化状態到達使用時間算出手段402によって得られた、所定の劣化状態に至るまでに要する各温度での使用時間に基づいて、予測時までの熱負荷量を算出する。残存寿命予測手段404は、各温度での熱負荷量を足した総熱負荷量が、所定の上限値になった時点を使用中のホース1の寿命とし、所定の上限値と予測時での総熱負荷量との関係から残存寿命を予測する。情報通信手段405は、端末50に、予測された使用中のホース1の残存寿命を送信する。なお、情報通信手段405は、サーバ40が、ネットワーク60を介して、機械等3及び端末50と通信を行う。なお、サーバ40の中身を機械等3に組み込む事もできる。また、端末50も機械等3に組み込む事もできる。
【0123】
[劣化状態到達使用時間算出手段]
劣化状態到達使用時間算出手段402は、ホース1の残存寿命の予測に用いる情報を作成し、データベース401に情報を送信することができる。劣化状態到達使用時間算出手段402は、使用中のホース1と同種類のホースについて、内管ゴム層の、所定の劣化状態に至るまでに要する各温度での使用時間を求める。
【0124】
所定の劣化状態及び各温度での使用時間の定義については、第2の実施形態に係るホースの残存寿命予測方法における説明を援用する。
【0125】
また、本例の劣化状態到達使用時間算出手段402において、内管ゴム層の、所定の劣化状態に至るまでに要する各温度での使用時間を求めるには、例えば、第2の実施形態に係るホースの残存寿命予測方法において説明したように、図8に示す概念図のグラフを用いた手段とすることができる。
【0126】
[熱負荷量算出手段]
熱負荷量算出手段403は、測定手段301で測定した各温度での実際の使用時間及び所定の劣化状態に至るまでに要する各温度での使用時間に基づいて、各温度における熱負荷量を算出する。
【0127】
熱負荷量算出手段403は、例えば、上記劣化状態到達使用時間算出手段402におけるグラフを利用して、上記測定手段で測定した、使用中のホース1の各温度での実際の使用時間に基づいて、各温度における熱負荷量を算出する手段とすることができる。
【0128】
測定手段で測定した各温度での実際の使用時間は、例えば、測定手段301から情報通信手段302及び情報通信手段405を介して取得することができる。
【0129】
熱負荷量算出手段403における、熱負荷量の算出手段は特に限定されないが、例えば、使用中のホース1の各温度での実際の使用時間に基づいて、上述の第2の実施形態に係るホースの残存寿命予測方法における、熱負荷量算出工程と同様の手段を用いることができる。
【0130】
本実施形態における熱負荷量算出手段によれば、各温度における熱負荷量を簡便かつ正確に算出でき、ホースの残存寿命をより簡便かつ正確に予測できる。
【0131】
[残存寿命予測手段]
残存寿命予測手段404は、熱負荷量算出手段403において算出した、各温度での熱負荷量を足した総熱負荷量が、所定の劣化状態に至るまでに要する各温度での使用時間及び各温度での実際の使用時間に基づく所定の上限値になった時点を、使用中のホース1の寿命とし、所定の上限値と予測時での総熱負荷量との関係から、使用中のホース1の残存寿命を予測する。
【0132】
なお、所定の上限値の定義については、上述の第2の実施形態に係るホースの残存寿命予測方法における説明を援用する。また、所定の上限値は、残存寿命予測手段404に予め設定されていてもよく、残存寿命予測手段404が備える所定の上限値を算定する手段によって算定されてもよく、ユーザの手動等によって、入力又は変更されてもよい。
【0133】
残存寿命予測手段404は、より具体的には、上述の第2の実施形態に係るホースの残存寿命予測方法における、残存寿命予測工程と同様の手段を用いることができる。
【0134】
本実施形態のホースの残存寿命予測システムによれば、使用中のホースの圧力及び温度の双方をモニタリングする必要がなく、しかも、ホースを破壊することもないので、ホースの残存寿命を簡便に予測できる。
【0135】
<第3の実施形態に係るホースの残存寿命予測システム>
本発明の第3の実施形態に係るホースの残存寿命予測システムは、本発明の第1及び第2の実施形態に係るホースの残存寿命予測システムと同様に、内管ゴム層11、該内管ゴム層11よりも外周側に配置された補強層12及び該補強層12よりも外周側に配置された外皮層13を少なくとも有する、使用中のホース1の、残存寿命の予測を行うものである。
【0136】
本発明の第3の実施形態に係るホースの残存寿命予測システムについて、図9及び図12を参照して、例示説明する。以下、第3のホースの残存寿命予測システム103について、第1のホースの残存寿命予測システムと異なる点を中心に説明する。
【0137】
図9及び図12に示すように、機械等3は、使用中のホース1について、予測時までの、内管ゴム層11の使用中の温度を測定するセンサ手段310と、情報通信手段320とを備える。
【0138】
また、第3のホースの残存寿命予測システム103は、センサ手段310において測定された温度とともに該温度での使用時間を記録する、記録手段702を備える。記録手段702は、使用中のホース1以外の場所に配置されていることが好ましい。この構成によれば、ホースの残存寿命をより簡便に予測できる。記録手段702は、例えば、使用中のホース1が装着された機械等3に配置されていてもよく、図12に示すように、機械等3の外部に配置されていてもよい。記録手段702が機械等3の外部に配置されている場合は、第3のホースの残存寿命予測システム103は、例えば、情報通信手段701及び記録手段702を備える外部装置等7を備えることができる。
【0139】
センサ手段310は、使用中のホース1の内管ゴム層11の内周側に温度センサとして配置されてもよく、又は、使用中のホース1以外の場所に配置されてもよい。好ましくは、使用中のホース1以外の場所に配置される。使用中のホース1以外の場所に配置されるとは、例えば、使用中のホース1が装着された機械等であってもよく、機械等の外部であってもよい。使用中のホース1が装着された機械等3に配置する場合、例えば、内管ゴム層11の内周側において圧力を伝達するために用いられる流体の、タンク内に配置することもできる。タンク内は比較的温度が一定な事が多いため、タンクの温度が測定できるよう、タンク内に配置されることがより好ましい。なお、流体のタンクの温度と内管ゴム層11との間に温度差が生じる場合は、温度差分を加算又は減算した値を、内管ゴム層11の温度としてもよい。この構成によれば、ホースの残存寿命をより簡便に予測できる。
【0140】
また、センサ手段310によって測定された温度及び該温度での使用時間は、記録手段702によって記録される。そして、センサ手段310と記録手段702とは、情報通信手段320及び情報通信手段701を介して、サーバ40と通信を行うことができ、無線通信によって通信可能であることが好ましい。この構成によれば、ホースの残存寿命をより簡便に予測できる。
【0141】
第3のホースの残存寿命予測システム103において、熱劣化位置特定手段430は、熱劣化モデル作成手段420で作成した熱劣化モデルと、記録手段702によって記録された温度及び使用時間と、に基づいて、内管ゴム層11の、予測時での熱劣化モデルにおける熱劣化位置を求める。ここで、熱劣化モデルにおける熱劣化位置とは、例えば、図6に示すグラフにおける、ゴムの物性値を用いた、熱劣化状態を示す位置を指すものとすることができる。
【0142】
残存寿命予測手段440は、内管ゴム層11の使用限界として内管ゴム層11を構成するゴムの物性値の閾値を設定し、閾値と、熱劣化位置特定手段430で求めた熱劣化位置と、に基づいて、使用中のホースの残存寿命を予測する。
【0143】
本実施形態のホースの残存寿命予測手段によれば、使用中のホースの圧力及び温度の双方をモニタリングする必要がなく、しかも、ホースを破壊することもないので、ホースの残存寿命を簡便に予測できる。
【産業上の利用可能性】
【0144】
本発明によるホースの残存寿命予測方法及びホースの残存寿命予測システムは、例えば建設機械や工場設備等に使用されるホースに適用できる。
【符号の説明】
【0145】
1:ホース、 2:継手、 3:機械等、 7:外部装置等、 11:内管ゴム層、 12:補強層、 13:外皮層、 14:中間ゴム層、 31:各時間における使用時間測定手段、 32:情報通信手段、 40:サーバ、 41:データベース、 42:熱劣化モデル作成手段、 43:基準温度使用時間算定手段、 44:残存寿命予測手段、 45:情報通信手段、 50:端末、 60:ネットワーク、 100:第1のホースの残存寿命予測システム、 102:第2のホースの残存寿命予測システム、 103:第3のホースの残存寿命予測システム、 301:測定手段、 302:情報通信手段、 310:センサ手段、 320:情報通信手段、 401:データベース、 402:劣化状態到達使用時間算出手段、 403:熱負荷量算出手段、 404:残存寿命予測手段、 405:情報通信手段、 410:データベース、 420:熱劣化モデル作成手段、 430:熱劣化位置特定手段、 440:残存寿命予測手段、 450:情報通信手段、 701:情報通信手段、 702:記録手段
図1
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図6
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図8
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図10
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