(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-04
(45)【発行日】2023-12-12
(54)【発明の名称】コネクタ用雌側端子片及び端子片対
(51)【国際特許分類】
H01R 13/115 20060101AFI20231205BHJP
H01R 13/05 20060101ALI20231205BHJP
H01R 13/10 20060101ALI20231205BHJP
【FI】
H01R13/115 C
H01R13/05 A
H01R13/10 B
(21)【出願番号】P 2019168043
(22)【出願日】2019-09-17
【審査請求日】2022-05-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000231822
【氏名又は名称】日本端子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】弁理士法人大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮川 洋一
(72)【発明者】
【氏名】川原 勇三
【審査官】高橋 裕一
(56)【参考文献】
【文献】実開昭56-013373(JP,U)
【文献】特開2018-092760(JP,A)
【文献】特開平08-138781(JP,A)
【文献】特開2017-098001(JP,A)
【文献】特開2016-149204(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R13/00-13/08
H01R13/10-13/14
H01R13/15-13/35
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コネクタ挿抜方向に直交する方向に互いに間隔をおいて対向する1対の雄側接触部を有するコネクタ用雄側端子片に接続されるコネクタ用雌側端子片であって、
導線を接続される導線接続部を含むハウジング部と、前記ハウジング部に結合された基端を含んで片持ち梁をなす帯状のばね片とを有し、
前記ばね片は、前記基端からコネクタ挿入方向に延在するアーム片部と、
前記アーム片部の遊端側にてフック形状に折曲形成され、前記コネクタ挿抜方向に直交する方向に互いに離反する方向を向く、前記
1対の雄側接触部に接触するべき1対の雌側接触部を形成する先端片部とを有し、
前記ハウジング部が、前記ばね片の両側方に位置する1対の側壁を含むコネクタ用雌側端子片。
【請求項2】
前記1対の側壁は前記先端片部の全体に対応すべく前記先端片部の両側方に延在する部分を含む請求項1に記載のコネクタ用雌側端子片。
【請求項3】
コネクタ挿抜方向に直交する方向に互いに間隔をおいて対向する1対の雄側接触部を有するコネクタ用雄側端子片に接続されるコネクタ用雌側端子片であって、
導線を接続される導線接続部を含むハウジング部と、前記ハウジング部に結合された基端を含んで片持ち梁をなす帯状のばね片とを有し、
前記ばね片は、前記基端からコネクタ挿入方向に延在するアーム片部と、
前記アーム片部の遊端側にてフック形状に折曲形成され、前記コネクタ挿抜方向に直交する方向に互いに離反する方向を向く、前記
1対の雄側接触部に接触するべき1対の雌側接触部を形成する先端片部とを有し、
前記ハウジング部が、前記先端片部に対して前記コネクタ挿入方向の前側に所定の間隔をおいて前記コネクタ挿抜方向に直交する方向に延在し、コネクタ挿入時に、前記
1対の雄側接触部間に受容されるべき前壁片部を有するコネクタ用雌側端子片。
【請求項4】
コネクタ挿抜方向に直交する方向に互いに間隔をおいて対向する1対の雄側接触部を有するコネクタ用雄側端子片に接続されるコネクタ用雌側端子片であって、
導線を接続される導線接続部を含むハウジング部と、前記ハウジング部に結合された基端を含んで片持ち梁をなす帯状のばね片とを有し、
前記ばね片は、前記基端からコネクタ挿入方向に延在するアーム片部と、
前記アーム片部の遊端側にてフック形状に折曲形成され、前記コネクタ挿抜方向に直交する方向に互いに離反する方向を向く、前記
1対の雄側接触部に接触するべき1対の雌側接触部を形成する先端片部とを有し、
前記ハウジング部が前記先端片部に対して所定の間隔をおいて当該先端片部に外囲される切り起こし片を含むコネクタ用雌側端子片。
【請求項5】
前記ハウジング部が前記ばね片の両側方に位置する1対の側壁を含む請求項3又は4に記載のコネクタ用雌側端子片。
【請求項6】
前記アーム片部が前記コネクタ挿抜方向に対して傾斜して延在する傾斜部を含む請求項1から5の何れか一項に記載のコネクタ用雌側端子片。
【請求項7】
前記アーム片部が、前記傾斜部よりも前記基端側に、前記コネクタ挿抜方向に対して直交して延在する直交部を含む請求項
6に記載のコネクタ用雌側端子片。
【請求項8】
互いに挿抜可能なコネクタ用雄側端子片とコネクタ用雌側端子片との端子片対であって、
前記コネクタ用雄側端子片は、コネクタ挿抜方向に直交する方向に延在する基部と、前記基部に直交する方向に互いに間隔をおいて各々前記基部から
前記コネクタ挿抜方向に延出した1対の脚部とを有し、前記1対の脚部は互いに対向する1対の雄側接触部を含み、
前記コネクタ用雌側端子片は、請求項1から7の何れか一項に記載のコネクタ用雌側端子片である端子片対。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコネクタ用雌側端子片及び端子片対に関する。
【背景技術】
【0002】
コネクタ用の雌側端子として、コネクタ挿抜方向に直交する方向に互いに間隔をおいて対向する1対の雄側接触部を有するフォーク形状の雄側端子片(雌型コンタクト)の各雄側接触部に導通接触すべく互いに相反する向きの各外面に1対の雄雌接触部を含む雌側端子片(雄型コンタクト)が知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の雄側及び雌側端子片は、雄側端子片の弾性変形のみによって雄側接触部と雌側接触部との接触圧を確保しており、雄側端子片と雌側端子片とのコネクタ挿抜方向に直交する方向に相互の位置ずれがあると、1対の雄側接触部と1対の雌側接触部との片側のみが接触する接触不良が生じる虞がある。この位置ずれに対して融通性を持たせようとすると、雌側接触部と雄側接触部との接触圧が確保し難くなる傾向がある。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、雄側端子片と雌側端子片とのコネクタ挿抜方向に直交する方向に相互の位置ずれに対して高い融通性を有し、1対の雄側接触部と1対の雌側接触部との片側のみが接触する接触不良が生じ難くすると共に、雌側接触部と雄側接触部との必要な接触圧を確保することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一つの実施形態によるコネクタ用雌側端子片は、コネクタ挿抜方向に直交する方向に互いに間隔をおいて対向する1対の雄側接触部(70、72)を有するコネクタ用雄側端子片(60)に接続されるコネクタ用雌側端子片(10)であって、導線を接続される導線接続部(25)を含むハウジング部(12)と、前記ハウジング部に結合された基端(14)を含んで片持ち梁をなす帯状のばね片(16)とを有し、前記ばね片は、前記基端から前記コネクタ挿入方向に延在するアーム片部(26)と、前記アーム片部の遊端側にてフック形状に折曲形成され、前記コネクタ挿抜方向に直交する方向に互いに離反する方向を向く、前記雄側接触部に接触するべき1対の雌側接触部(30、32)を形成する先端片部(28)とを有する。
【0007】
この構成によれば、アーム片部の弾性変形によって雄側端子片と雌側端子片とのコネクタ挿抜方向に直交する方向に相互の位置ずれに対して高い融通性が得られ、1対の雄側接触部と1対の雌側接触部との片側のみが接触する接触不良が生じ難くなる。先端片部はフック形状によってアーム片部とは異なる高い剛性を設定でき、雌側接触部と雄側接触部との必要な接触圧を確保できる。
【0008】
上記コネクタ用雌側端子片において、好ましくは、前記アーム片部が前記コネクタ挿抜方向に対して傾斜して延在する傾斜部(26B)を含む。
【0009】
この構成によれば、コネクタ用雌側端子片が大型化することなく、アーム片部が長尺になる。
【0010】
上記コネクタ用雌側端子片において、好ましくは、前記アーム片部が、前記傾斜部よりも前記基端側に、前記コネクタ挿抜方向に対して直交して延在する直交部(26A)を含む。
【0011】
この構成によれば、アーム片部の基端側にクランク形状部が構成され、基端側を枢軸するアーム片部の弾性変形がし易くなる。
【0012】
上記コネクタ用雌側端子片において、好ましくは、前記ハウジング部が、前記ばね片の両側方に位置する1対の側壁(20、22)を含む。
【0013】
この構成によれば、ばね片が両側方から保護され、ばね片の耐久性が向上する。
【0014】
上記コネクタ用雌側端子片において、好ましくは、前記1対の側壁は前記先端片部の全体に対応すべく前記先端片部の両側方に延在する部分を含む。
【0015】
この構成によれば、ばね片の先端片部が両側方から確実に保護され、ばね片の耐久性が向上する。
【0016】
上記コネクタ用雌側端子片において、好ましくは、前記ハウジング部が、前記先端片部の、前記コネクタ挿入方向について前側に所定の間隔をおいて、前記コネクタ挿抜方向に直交する方向に延在し、コネクタ挿入時に、前記両雄側接触部間に受容されるべき前壁(36)を有する。
【0017】
この構成によれば、ばね片の前方から保護され、ばね片の耐久性が向上する。
【0018】
上記コネクタ用雌側端子片において、好ましくは、前記ハウジング部が前記先端片部により所定の間隔をおいて外囲される切り起こし片(38、39)を含む。
【0019】
この構成によれば、ばね片が過剰に弾性変形することが抑制され、ばね片の耐久性が向上する。
【0020】
本発明の一つの実施形態による端子片対は、互いに挿抜可能なコネクタ用雄側端子片(60)とコネクタ用雌側端子片(10)との端子片対であって、前記コネクタ用雄側端子片は、コネクタ挿抜方向に直交する方向に延在する基部(64)と、前記基部に直交する方向に互いに間隔をおいて各々前記基部からコネクタ挿抜方向に延出した1対の脚部(66、68)とを有し、前記1対の脚部は互いに対向する1対の雄側接触部(70、72)を含み、前記コネクタ用雌側端子片は上記コネクタ用雌側端子片である。
【0021】
この構成によれば、アーム片部の弾性変形によって雄側端子片と雌側端子片とのコネクタ挿抜方向に直交する方向に相互の位置ずれに対して高い融通性が得られ、1対の雄側接触部と1対の雌側接触部との片側のみが接触する接触不良が生じ難くなる。先端片部はフック形状によってアーム片部とは異なる高い剛性を設定でき、端子片接続時の脚部及び先端片部の弾性変形のもとに雌側接触部と雄側接触部との必要な接触圧を確保できる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によるコネクタ用雌側端子片によれば、コネクタ用雄側端子片とのコネクタ挿抜方向に直交する方向に相互の位置ずれに対して高い融通性が有り、1対の雄側接触部と1対の雌側接触部との片側のみが接触する接触不良が生じ難くなると共に雌側接触部と雄側接触部との必要な接触圧が確保される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明による端子片対を含む電気コネクタ装置の斜視図
【
図2】本発明による端子片対を含む雌側コネクタの部分断面斜視図
【
図3】本実施形態によるコネクタ用雌側端子片の斜視図
【
図4】本実施形態によるコネクタ用雌側端子片の部分断面斜視図
【
図5】本実施形態によるコネクタ用雌側端子片の縦断面図
【
図6】本実施形態による端子片対の接続過程を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、本発明による端子片対及びコネクタ用雌側端子片の一つの実施形態を、
図1~
図6を参照して説明する。尚、本実施形態では、コネクタ挿抜方向を上下方向とし、前後方向及び左右方向を図示の如く定義する。更に、コネクタ挿入方向が上方向、コネクタ抜出方向が上方向である。
【0025】
先ず、
図1及び
図2を参照して本実施形態によるコネクタ用雌側端子片10(以下、雌側端子片10と称する)が組み込まれる雌側コネクタ40及び雌側端子片10の相手側端子片であるコネクタ用雄側端子片60(以下、雄側端子片60と称する)が組み込まれる雄側コネクタ80について説明する。
【0026】
雌側コネクタ40は、ケーブル側のコネクタであり、樹脂成形品により構成された長方体状の雌側コネクタハウジング42を有する。雌側コネクタハウジング42は、前後2列に、且つ各列において左右方向に整列配置された10個の雌側端子片10を保持している。各雌側端子片10には絶縁被覆ケーブル50の端部が接続されている。
【0027】
雄側コネクタ80は、プリント配線基板(不図示)上に実装されるコネクタであり、樹脂成形品により構成された上方開口の箱状の雄側コネクタハウジング82を有する。雄側コネクタハウジング82は、雌側コネクタハウジング42における雌側端子片10と同じ配置をもって10個の雄側端子片60を保持している。
【0028】
各雄側端子片60は、金属製で、
図6に示されているように、コネクタ挿抜方向(上下方向)に直交する方向(前後方向)に延在し、プリント配線基板との導電接続部62を含む基部64と、基部64から前後方向に間隔をおいて上方(コネクタ挿抜方向)に延出した片持ち梁による1対の第1脚部66及び第2脚部68とを有する。
【0029】
第1脚部66及び第2脚部68が前後方向に互い対向する1対の平らな面は互いに対をなす第1雄側接触部70及び第2雄側接触部72を構成している。第1脚部66の先端の第1雄側接触部70側は大きい面取り状の傾斜面66Aになっている。
【0030】
次に、
図3~
図6を参照して本実施形態による雌側端子片10について説明する。
【0031】
各雌側端子片10は、金属板のプレス成形品であり、ハウジング部12と、ハウジング部12に結合された基端部14を含んで片持ち梁を構成する帯状のばね片16とを有する。
【0032】
ハウジング部12は、コネクタ挿抜方向に延在する帯状の基板部18と、基板部18のコネクタ挿入方向側(下側)の左右両側の各縁部から前側に立ち上がった左側壁片20及び右側壁片22と、基板部18のコネクタ抜出方向側(上側)の左右両側の各縁部から立ち上がった左右一対の被覆バレル片24及び芯線バレル片(導線接続部)25とを有する。
【0033】
被覆バレル片24は、かしめられて、絶縁被覆ケーブル50の絶縁被覆部52を基板部18に係止する(
図2参照)。芯線バレル片25は、かしめられて、絶縁被覆ケーブル50の芯線(導線)54を基板部18に係止する(
図2参照)。
【0034】
ばね片16の基端部14はハウジング部12の左側壁片20の先端縁から右側壁片22側に90度に折曲した片部により構成されてハウジング部12に結合されている。ばね片16は、基端部14からコネクタ挿入方向(下方向)に向けて延在するアーム片部26と、アーム片部26の遊端側にて前側に比較的小さいフック形状に折曲形成された先端片部28とを一体的に有する。
【0035】
アーム片部26は、基端部14側にコネクタ挿抜方向に対して略直交して基端部14側に延在する比較的短寸の直交部26A及び直交部26Aからコネクタ挿抜方向に対して基板部18側に向けて傾斜して延在する比較的長寸の傾斜部26Bを含む。換言すると、直交部26Aは、傾斜部26Bより基端部14側にあり、基端部14及び傾斜部26Bと協働してクランク形状をなす。傾斜部26Bは傾斜により雌側端子片10を大型化することなく長尺に設定される。
【0036】
先端片部28は、傾斜部26Bの遊端からコネクタ挿入方向に向けて延出した円弧状の湾曲部28A、湾曲部28Aの遊端からコネクタ挿抜方向に対して略直交して左側壁片20、右側壁片22の先端縁側に向けて延出した比較的短寸の直交部28B及び直交部28Bの遊端から湾曲してコネクタ抜出方向(上方向)に向けて延出した比較的短寸の遊端片部28Cを含み、アーム片部26に比して高い前後方向の耐圧縮性(剛性)を有する。
【0037】
湾曲部28Aの外面及び遊端片部28Cの外面にはコネクタ挿抜方向に直交する方向(前後方向)に互いに離反する方向を向いた第1雌側接触部30及び第2雌側接触部32が設けられている。第1雌側接触部30及び第2雌側接触部32は、コネクタ挿抜方向で見て略同じ位置にあり、各々エンボス加工によって外方に向けて突出している。第1雌側接触部30と第2雌側接触部32とのコネクタ挿入方向に直交する方向(前後方向)の突出端の寸法Aは第1雄側接触部70と第2雄側接触部72とのコネクタ挿入方向に直交する方向(前後方向)の寸法Bよりも大きい(
図6(A)参照)。
【0038】
基板部18は、コネクタ挿入方向で見て傾斜部26Bの中間部に対応するコネクタ挿入方向の位置までしかなく、それよりコネクタ挿入方向の前側(下側)には存在しない。これにより、ばね片16の先端片部28は、コネクタ挿抜方向に直交する方向の両側(前後両側)において外方に露呈し、同両側に雄側端子片60の第1脚部66及び第2脚部68が進入することを許容する。
【0039】
ハウジング部12の左側壁片20及び右側壁片22は、ばね片16の左右両側方に左右方向の間隙をおいて位置して、ばね片16の左右両側方を遮蔽する1対の側壁をなす。より詳細には、左側壁片20及び右側壁片22は、ばね片16のうち、第1雌側接触部30及び第2雌側接触部32を含む先端片部28の全体に対応すべく先端片部28の両側方に延在する拡張部分20A、22Bを含む。
【0040】
左側壁片20及び右側壁片22は、基端部14との結合部を枢軸するばね片16の弾性変形を阻害することなく、ばね片16の左右方向の変形を制限すると共に、ばね片16を、他部品との接触等によってばね片16に外力が作用する外乱から保護する。
【0041】
これにより、ばね片16の耐久性が向上すると共に、第1雌側接触部30及び第2雌側接触部32と第1雄側接触部70及び第2雄側接触部72との接触状態がばね片16の変形によって変化することが抑制される。
【0042】
特に、左側壁片20及び右側壁片22は、拡張部分20A、22Bを含んでいることにより、他部品との接触等によってばね片16の先端片部28に外力が作用することが確実に抑制されると共に、第1雌側接触部30及び第2雌側接触部32に油膜等が付着する虞が減少する。
【0043】
右側壁片22は先端縁から延出した鉤形(横転L字形)の折曲片部34を含む。折曲片部34は基端部14の前方に間隙を対向する前片部34Aを有する。
【0044】
前片部34Aは基端部14の動きを阻害することなく、基端部14を、他部品との接触等によって基端部14に外力が作用する外乱から保護する。これにより、ばね片16の耐久性が向上すると共に、第1雌側接触部30及び第2雌側接触部32と第1雄側接触部70及び第2雄側接触部72との接触状態がばね片16の変形によって変化することが抑制される。
【0045】
ハウジング部12は右側壁片22のコネクタ挿入方向の前端(下端)から左側壁片20に向けて折曲した前壁片部36を有する。前壁片部36は、先端片部28のコネクタ挿入方向について前側に所定の間隔をおいてコネクタ挿抜方向に直交する方向に延在し、コネクタ挿入時に、第1雄側接触部70及び第2雄側接触部72間に受容されるべき前後方向の寸法に定められている。つまり、前壁片部36の前後方向の寸法Cが第1雄側接触部70と第2雄側接触部72とのコネクタ挿入方向に直交する方向の寸法Bよりも小さい(
図6(B)参照)。
【0046】
前壁片部36は、雄側端子片60に対する雌側端子片10の挿入及び基端部14との結合部を枢軸するばね片16の弾性変形を阻害することなくばね片16の先端片部28を、他部品との接触等によって基端部14に外力が作用する外乱から保護する。
【0047】
これにより、ばね片16の耐久性が向上すると共に、第1雌側接触部30及び第2雌側接触部32と第1雄側接触部70及び第2雄側接触部72との接触状態がばね片16の変形によって変化することが抑制される。
【0048】
前壁片部36の先端には突部36Aが形成されている。突部36Aは左側壁片20の先端に形成された凹部20Bに補形的に係合している。これにより、左側壁片20に対する前壁片部36の前後方向のずれ動きが抑制される。
【0049】
ハウジング部12は、左側壁片20及び右側壁片22の下端近傍において各々内方に向けて切り起こされ、先端片部28により所定の間隔をおいて外囲される切り起こし片38、39を含む。切り起こし片38、39は、先端片部28の前後両側及び前側に所定の間隔をおいて延在し、基端部14との結合部を枢軸するばね片16の変形及びばね片16の長手方向(アーム長方向)の変形を制限する。
【0050】
これにより、ばね片16が過剰に変形することが抑制され、ばね片16の耐久性が向上すると共に、第1雌側接触部30及び第2雌側接触部32と第1雄側接触部70及び第2雄側接触部72との接触状態がばね片16の変形によって変化することが抑制される。
【0051】
次に、端子片対の接続過程を、
図6(A)~(C)を参照して説明する。
【0052】
図6(A)に示されているように、雄側端子片60に対する雌側端子片10の前後方向の概ねの位置合わせを行い、雌側端子片10を降下させる。この降下によって、図(B)に示されているように、第1雌側接触部30が雄側端子片60の第1脚部66の傾斜面66Aに当接し、これにより、更に雌側端子片10を降下させることにより、
図6(C)に示されているように、第1雌側接触部30が傾斜面66Aに案内されて第1雄側接触部70に接触する位置に到達すると共に、第2雌側接触部32が第2雄側接触部72に接触する。
【0053】
この状態では、第1雌側接触部30と第2雌側接触部32とのコネクタ挿入方向に直交する方向の突出端の寸法Aが第1雄側接触部70と第2雄側接触部72とのコネクタ挿入方向に直交する方向の寸法Bよりも大きいことにより、先端片部28が前後方向の外寸を減少すべく弾性変形すると共に、片持ち梁である第1脚部66及び第2脚部68が前後方向に互いは離れる方向にしなるように弾性変形する。
【0054】
アーム片部26よりも高い剛性を有する先端片部28の弾性変形及び第1脚部66、第2脚部68の弾性変形によって生じる反発力により、必要な第1雌側接触部30及び第2雌側接触部32と第1雄側接触部70及び第2雄側接触部72の接触圧が確保される。これにより、雌側端子片10と雄側端子片60との導通接続が高い信頼性をもって行われる。
【0055】
アーム片部26が比較的長い片持ち梁によるアームであることにより、更には、基端部14と直交部26Aと傾斜部26Bとによりクランク形状が構成されていることにより、基端部14側を枢軸(ヒンジ軸)とするばね片16の弾性変形、つまり、先端片部28が前後方向に変位するばね片16の弾性変形が、左右方向に延在する基端部14と直交部26Aとの折曲線及び左右方向に延在する直交部26Aと傾斜部26Bとの折曲線の双方をヒンジ軸とした弾性片形をもって、比較的小さい力によって行われる。
【0056】
この先端片部28の前後方向に変位により、雄側端子片60に対する雌側端子片10の前後方向の位置ずれが吸収され、この位置ずれに対して高い融通性が得られる。これにより、1対の雄側接触部30、32と1対の雌側接触部70、72との片側のみが接触する片当たりの接触不良が生じ難くなる。
【0057】
このように、第1雌側接触部30及び第2雌側接触部32がアーム片部26とは別の先端片部28に設けられていることにより、通常は相反する位置ずれ吸収のためのアーム片部26のしなやかさと接触圧の確保とが両立する。
【0058】
以上、本発明を、その好適な実施形態について説明したが、当業者であれば容易に理解できるように、本発明はこのような実施形態により限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0059】
本実施形態では、説明の便宜上、導線を接続される電源側を雌側端子片10、基板側を雄側端子片60と呼んでいるが、異なる観点から見て、雄雌逆に、雌側端子片を雄側端子片、雄側端子片を雌側端子片と呼んでもよい。雌側端子片10及び雄側端子片60の配列及び個数は上述した図示の実施形態のものに限られることはない。
【0060】
また、上記実施形態に示した構成要素は必ずしも全てが必須なものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて適宜取捨選択することが可能である。
【符号の説明】
【0061】
10 :コネクタ用雌側端子片
12 :ハウジング部
14 :基端部
16 :ばね片
18 :基板部
20 :左側壁片
20A :拡張部分
20B :凹部
22 :右側壁片
22B :拡張部分
24 :被覆バレル片
25 :芯線バレル片(導線接続部)
26 :アーム片部
26A :直交部
26B :傾斜部
28 :先端片部
28A :湾曲部
28B :直交部
28C :遊端片部
30 :第1雌側接触部
32 :第2雌側接触部
34 :折曲片部
34A :前片部
36 :前壁片部
36A :突部
38 :切り起こし片
39 :切り起こし片
40 :雌側コネクタ
42 :雌側コネクタハウジング
50 :絶縁被覆ケーブル
52 :絶縁被覆部
60 :コネクタ用雄側端子片
62 :導電接続部
64 :基部
66 :第1脚部
66A :傾斜面
68 :第2脚部
70 :第1雄側接触部
72 :第2雄側接触部
80 :雄側コネクタ
82 :雄側コネクタハウジング