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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-04
(45)【発行日】2023-12-12
(54)【発明の名称】カテーテル組立体
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/158 20060101AFI20231205BHJP
   A61M 25/06 20060101ALI20231205BHJP
【FI】
A61M5/158 500D
A61M25/06 500
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019173618
(22)【出願日】2019-09-25
(65)【公開番号】P2021049094
(43)【公開日】2021-04-01
【審査請求日】2022-06-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【弁理士】
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【弁理士】
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【弁理士】
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】水野 慎一
【審査官】川上 佳
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/025968(WO,A1)
【文献】特開平10-094601(JP,A)
【文献】国際公開第2017/051802(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0354066(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/158
A61M 25/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
管状の内針と、前記内針が挿通される管状のカテーテルシャフトと、を備えたカテーテル組立体であって、
前記内針の基端部に固定された針ハブと、
前記内針の内腔を挿通するとともに前記針ハブに固着された支持部と、を備え、
前記内針の先端部には、前記内針の軸線に対して傾斜した刃面が形成され、
前記刃面は、
前記内針の最先端に位置する刃先と、
前記刃面の軸線方向の基端に位置する刃元と、を有し、
前記カテーテル組立体は、前記刃面に形成された前記内針の先端開口の少なくとも前記刃元側を塞ぐ閉塞部を備え、
前記内針のうち前記刃元よりも先端側には、血液を前記内針の内腔に導くための導入孔が形成され、
前記内針の軸線方向において、前記導入孔の基端は、前記内針の先端開口の基端よりも先端側に位置し、
前記閉塞部は、前記支持部の先端部に設けられている、カテーテル組立体。
【請求項2】
請求項1記載のカテーテル組立体であって、
前記導入孔は、前記刃面の先端側に位置している、カテーテル組立体。
【請求項3】
請求項2記載のカテーテル組立体であって、
前記閉塞部は、前記内針の先端開口の先端部分を塞いでおらず、
前記導入孔は、前記内針の先端開口のうち前記閉塞部により塞がれていない部分によって形成されている、カテーテル組立体。
【請求項4】
請求項1記載のカテーテル組立体であって、
前記導入孔は、前記刃面に対して前記内針の周方向にずれて位置している、カテーテル組立体。
【請求項5】
請求項4記載のカテーテル組立体であって、
前記導入孔は、前記刃先と前記刃元とを結ぶ中心線に対して前記内針の周方向に180°ずれて位置している、カテーテル組立体。
【請求項6】
請求項4又は5に記載のカテーテル組立体であって、
前記内針の軸線方向において、前記導入孔の基端は、前記内針の先端開口の中央よりも先端側に位置している、カテーテル組立体。
【請求項7】
請求項4~6のいずれか1項に記載のカテーテル組立体であって、
前記閉塞部は、前記内針の先端開口を完全に閉塞している、カテーテル組立体。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載のカテーテル組立体であって、
前記導入孔は、1つ又は複数設けられている、カテーテル組立体。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載のカテーテル組立体であって、
前記閉塞部は、前記内針に対して接合されていない、カテーテル組立体。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載のカテーテル組立体であって、
前記閉塞部は、前記支持部に対して屈曲するように設けられている、カテーテル組立体。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載のカテーテル組立体であって、
前記内針の軸線方向から見て、前記内針の内腔に対する前記支持部の占有率は、40%以下である、カテーテル組立体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カテーテル組立体に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、針部材とカテーテル部材とを備えたカテーテル組立体(留置針)が開示されている。針部材は、先端に針先を有する内針と、内針の基端部に固定された中空状の針ハブとを有する。内針の先端部には、内針の先端に位置する刃先から刃元まで基端方向に延在した刃面が形成されている。刃面には、内針の先端開口が形成されている。カテーテル部材は、内針が挿通される管状のカテーテルシャフトと、内針が挿通され且つカテーテルシャフトの基端部に固定された中空状のカテーテルハブとを有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-233007号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、カテーテル組立体を用いた手技では、カテーテルシャフトの先端から内針を突出させた状態で内針及びカテーテルシャフトを血管に穿刺する。この際、ユーザは、内針の内腔を介した針ハブの内腔への血液の逆流(フラッシュバック)を目視することにより、内針の血管確保を確認する。
【0005】
一方、刃先が血管の後壁に突き刺さった場合、内針の先端開口が血管の後壁によって完全に塞がれることによって、内針の内腔への血液の逆流が停止する。これにより、ユーザは、内針が血管の後壁に突き刺さった状態であることを知ることができる。しかしながら、従来のカテーテル組立体では、刃先が血管の後壁に突き刺さった状態で内針の先端開口の刃元側が血管内に位置していた場合には、内針の内腔を介した針ハブの内腔への血管の逆流が認められる。そのため、ユーザは、血管の後壁への内針の突き刺さりを精度よく知ることができなかった。
【0006】
本発明は、このような課題を考慮してなされたものであり、内針の血管確保を確認することができるとともに血管の後壁への内針の突き刺さりを精度よく知ることができるカテーテル組立体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、管状の内針と、前記内針が挿通される管状のカテーテルシャフトと、を備えたカテーテル組立体であって、前記内針の基端部に固定された針ハブと、前記内針の内腔を挿通するとともに前記針ハブに固着された支持部と、を備え、前記内針の先端部には、前記内針の軸線に対して傾斜した刃面が形成され、前記刃面は、前記内針の最先端に位置する刃先と、前記刃面の軸線方向の基端に位置する刃元と、を有し、前記カテーテル組立体は、前記刃面に形成された前記内針の先端開口の少なくとも前記刃元側を塞ぐ閉塞部を備え、前記内針のうち前記刃元よりも先端側には、血液を前記内針の内腔に導くための導入孔が形成され、前記内針の軸線方向において、前記導入孔の基端は、前記内針の先端開口の基端よりも先端側に位置し、前記閉塞部は、前記支持部の先端部に設けられている、カテーテル組立体である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、カテーテル組立体の先端部を血管に穿刺して内針の導入孔が血管内に位置すると、血管内の血液が導入孔から内針の内腔に導かれる。そのため、内針の内腔を介した血液の逆流により、内針の血管確保を確認することができる。また、内針の先端開口の少なくとも刃元側を閉塞部で塞ぐとともに導入孔の基端が内針の先端開口の基端よりも先端側に位置している。そのため、刃先が血管の後壁に突き刺さった際に、導入孔が血管の後壁によって完全に塞がれた段階で内針の内腔への血液の逆流が停止する。つまり、導入孔が血液の後壁によって完全に塞がれた状態で内針の先端開口の刃元側が血管内に位置していた場合であっても、内針の内腔への血液の逆流が停止する。これにより、内針の内腔を介した血液の逆流の停止を確認することよって血管の後壁への針先の突き刺さりを精度よく知ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係るカテーテル組立体の斜視図である。
図2図1のカテーテル組立体の分解斜視図である。
図3図1のカテーテル組立体の縦断面図である。
図4図4Aは、内針の先端部の斜視図であり、図4Bは、カテーテル組立体の先端部の縦断面図である。
図5図5Aは、図1のカテーテル組立体の手技の第1説明図であり、図5Bは、図1のカテーテル組立体の手技の第2説明図である。
図6図6Aは、変形例に係る針部材を備えたカテーテル組立体の先端部の平面図であり、図6Bは、図6AのVIB-VIB線に沿った縦断面図である。
図7】他の変形例に係る針部材を備えたカテーテル組立体の一部省略縦断面図である。
図8図8Aは、図7のカテーテル組立体の先端部の縦断面図であり、図8Bは、図8AのVIIIB-VIIIB線に沿った横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係るカテーテル組立体について好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照しながら説明する。
【0011】
本発明の一実施形態に係るカテーテル組立体10は、患者(生体)の血管内に輸液(薬液)を投与するための留置針として構成されている。図1図3に示すように、カテーテル組立体10は、カテーテル部材12及び針部材14を有する。カテーテル部材12は、カテーテルシャフト16と、カテーテルシャフト16の基端部に固定されたカテーテルハブ18とを有する。
【0012】
カテーテルシャフト16は、可撓性を有し患者の血管内に持続的に挿入可能な管状部材である。カテーテルシャフト16は、その全長に亘って軸線方向に沿って延在した内腔16aを有する。カテーテルシャフト16の先端には、内腔16aに連通する先端開口16bが形成されている。
【0013】
カテーテルシャフト16の構成材料は、特に限定されるものではないが、透明性を有する樹脂材料、特に軟質樹脂材料が好適であり、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、エチレン・テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ぺルフルオロアルコキシフッ素樹脂(PFA)等のフッ素系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂又はこれらの混合物、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミド、ポリエーテルナイロン樹脂、オレフィン系樹脂とエチレン-酢酸ビニル共重合体との混合物等が挙げられる。
【0014】
カテーテルハブ18は、中空状(円筒状)に形成されている。図3に示すように、カテーテルハブ18の先端部には、カテーテルシャフト16の基端部が取り付けられる第1取付孔20が形成されている。第1取付孔20を形成する壁面には、カテーテルシャフト16の基端部の外周面が、かしめ、融着、接着等の適宜の固着手段によって固着される。
【0015】
カテーテルハブ18のうち第1取付孔20よりも基端側には、カテーテルシャフト16の内腔16aに連通する内腔18aが形成されている。カテーテルハブ18の内腔18aは、カテーテルハブ18の基端に開口している。カテーテルハブ18の内腔18aには、図示を省略するが、止血弁、シール部材及びプラグが配設される。カテーテルハブ18は、カテーテルハブ18の内腔18aに流入した血液をカテーテルハブ18の外側から視認可能なように透明性を有している。つまり、カテーテルハブ18は、透明又は半透明な材料で構成されている。
【0016】
カテーテルハブ18は、カテーテルシャフト16よりも硬い材料によって構成されることが好ましい。カテーテルハブ18の構成材料は、特に限定されるものではないが、例えば、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリサルホン、ポリアリレート、メタクリレート-ブチレン-スチレン共重合体、ポリウレタン、アクリル樹脂、ABS樹脂等の熱可塑性樹脂を好適に用いることができる。
【0017】
図1図3において、針部材14は、内針22と、内針22の基端部に固定された針ハブ24と、内針22に設けられた閉塞部26とを備える。内針22は、患者の皮膚を穿刺可能な剛性を有する管状部材である。図3に示すように、内針22は、軸線方向に沿って延在した内腔22aを有する。内針22は、カテーテル組立体10の初期状態(組立状態)で、カテーテルシャフト16の内腔16a及びカテーテルハブ18の内腔18aに挿通される。
【0018】
内針22の構成材料としては、例えば、ステンレス鋼、アルミニウム、アルミニウム合金、チタン、チタン合金のような金属材料が挙げられる。内針22は、カテーテルシャフト16に比べて充分に長く形成され、カテーテル組立体10の初期状態においてカテーテルシャフト16の先端開口16bから突出している(図1及び図3参照)。
【0019】
図4A及び図4Bに示すように、内針22の先端部には、内針22の軸線に対して傾斜した刃面28が形成されている。刃面28は、内針22の最先端に位置する刃先28aと、刃面28の軸線方向の基端に位置する刃元28bとを有する。刃面28は、平坦状に延在している。ただし、刃面28は、凹状に湾曲するように延在してもよい。刃面28には、内針22の内腔22aに連通する楕円形状の先端開口22bが形成されている。内針22の先端開口22bは、刃面28の延在方向に沿って延在している。内針22の外面には、血液を内針22とカテーテルシャフト16との間を介してカテーテルハブ18の内腔18aに導くための図示しない血液導入溝が形成されてもよい。
【0020】
図3において、針ハブ24は、中空状(円筒状)に形成されている。針ハブ24の構成材料は、上述したカテーテルハブ18の構成材料と同様のものが挙げられる。針ハブ24は、その先端部を形成する内針支持部30と、内針支持部30から基端側に延出した針ハブ本体32とを有する。
【0021】
内針支持部30には、内針22の基端部が取り付けられる第2取付孔34が形成されている。第2取付孔34を形成する壁面には、内針22の基端部の外周面が、融着、接着、嵌合等の適宜の固定手段によって固定される。
【0022】
針ハブ本体32は、ユーザが把持し易い大きさ及び形状に形成されている。針ハブ24には、内針22の内腔22aに連通して内針22から導かれた血液が流入する内腔25が形成されている。針ハブ24の内腔25には、空気の流通を許可する一方で血液の流通を阻止するフィルタ部材36が設けられている。針ハブ24の少なくとも一部(例えば、針ハブ本体32)は、針ハブ24の内腔25に流入した血液を針ハブ24の外側から視認可能なように透明性を有している。つまり、針ハブ24は、透明又は半透明な材料で構成されている。
【0023】
図4A及び図4Bにおいて、閉塞部26は、内針22の刃面28に形成された先端開口22bの少なくとも刃元28b側を塞ぐように内針22に設けられている。閉塞部26は、内針22の先端開口22bの刃先28a側を閉塞していない。つまり、内針22の先端開口22bのうち閉塞部26によって閉塞されていない空間は、血液を内針22の内腔22aに導くための導入孔38として機能する。導入孔38は、1つである。ただし、導入孔38は、複数設けられてよい。また、導入孔38の形状及び大きさは、適宜変更可能である。
【0024】
閉塞部26は、板状に形成されている。閉塞部26は、内針22の先端開口22bに位置した状態で内針22に対して融着、接着、溶接等の適宜の接合手段により接合されている。閉塞部26の外周縁部は、内針22の先端開口22bを形成する壁面に液密に接触している。閉塞部26の先端方向を指向する外面26aは、刃面28と面一である。換言すれば、閉塞部26の外面26aは、刃面28に対して段差なく連なっている。ただし、閉塞部26の外面26aは、刃面28よりも基端側(内針22の内腔22aが位置する側)に位置してもよい。閉塞部26は、刃元28b側から刃先28a側に向かって薄肉に形成されている(図4B参照)。
【0025】
導入孔38は、刃元28bよりも先端側に設けられている。内針22の軸線方向において、導入孔38の基端P1(閉塞部26の孔形成部)は、内針22の先端開口22bの基端P2よりも先端側に位置している。内針22の軸線方向において、導入孔38の基端P1は、内針22の先端開口22bの中央P3よりも先端側に位置している。導入孔38は、刃面28の先端側に設けられている。換言すれば、導入孔38は、刃先28aの近傍に位置している。
【0026】
導入孔38の開口面積は、内針22の内腔22aのうち閉塞部26よりも基端側の流路断面積よりも小さい。具体的に、内針22の内腔22aのうち閉塞部26よりも基端側の流路断面積に対する導入孔38の開口面積の割合は、10%以上50%以下が好ましく、20%以上40%以下がより好ましく、30%程度がさらに好ましい。
【0027】
次に、このようにして構成されたカテーテル組立体10を用いた手技について説明する。なお、カテーテル組立体10の初期状態で、刃面28は、カテーテルシャフト16の先端開口16bから先端方向に突出している。図5Aに示すように、ユーザは、カテーテル組立体10を初期状態のまま皮膚100を介して血管102に穿刺する。
【0028】
刃先28aが血管102の前壁103を貫通して導入孔38が血管102内に位置すると、血管102内の血液は、導入孔38から内針22の内腔22aを介して針ハブ24の内腔25に逆流する。そのため、ユーザは、針ハブ24の内腔25への血液の逆流(フラッシュバック)を針ハブ24の外側から視認することにより、血管102が確保されたことを知ることができる。
【0029】
穿刺操作において、図5Bに示すように、刃先28aが血管102の後壁104に突き刺さった場合、導入孔38が血管102の後壁104によって閉塞された段階で、導入孔38から内針22の内腔22aへの血液の逆流が停止される。このとき、内針22の先端開口22bの刃元28b側が血管102内に位置していた場合であっても先端開口22bの刃元28b側が閉塞部26によって閉塞されているため、血管102内の血液が内針22の内腔22aに流入することはない。
【0030】
そして、ユーザは、針ハブ24の内腔25への血液の逆流(フラッシュバック)の停止を針ハブ24の外側から視認することにより、内針22が血管102の後壁104に突き刺さった状態であることを知ることができる。この場合、ユーザは、針ハブ24の内腔25への血液の逆流が再度確認できるまでカテーテル組立体10を引き戻す(後退させる)。
【0031】
内針22による血管102の確保が確認された後、ユーザは、内針22をカテーテルシャフト16から抜去する。
【0032】
この場合、本実施形態は、以下の効果を奏する。
【0033】
カテーテル組立体10は、刃面28に形成された内針22の先端開口22bの少なくとも刃元28b側を塞ぐ閉塞部26を備えている。内針22のうち刃元28bよりも先端側には、血液を内針22の内腔22aに導くための導入孔38が形成され、内針22の軸線方向において、導入孔38の基端P1は、内針22の先端開口22bの基端P2よりも先端側に位置している。
【0034】
このような構成によれば、カテーテル組立体10の先端部を血管102に穿刺して内針22の導入孔38が血管102内に位置すると、血管102内の血液が導入孔38から内針22の内腔22aに導かれる。そのため、内針22の内腔22aを介した血液の逆流により、内針22の血管確保を確認することができる。
【0035】
また、内針22の先端開口22bの少なくとも刃元28b側を閉塞部26で塞ぐとともに導入孔38の基端P1が内針22の先端開口22bの基端P2よりも先端側に位置している。そのため、刃先28aが血管102の後壁104に突き刺さった際に、導入孔38が血管102の後壁104によって完全に塞がれた状態で内針22の先端開口22bの刃元28b側が血管102内に位置していた場合であっても、内針22の内腔22aへの血液の逆流が停止する。これにより、内針22の内腔22aを介した血液の逆流の停止を確認することによって血管102の後壁104への内針22の突き刺さりを精度よく知ることができる。
【0036】
導入孔38は、刃面28の先端側に位置している。
【0037】
このような構成によれば、血管102の後壁104への内針22の突き刺さりを一層精度よく知ることができる。
【0038】
閉塞部26は、内針22の先端開口22bの先端部分を塞いでおらず、導入孔38は、内針22の先端開口22bのうち閉塞部26により塞がれていない部分によって形成されている。
【0039】
このような構成によれば、導入孔38を簡単に形成することができる。
【0040】
閉塞部26は、内針22に対して接合されている。
【0041】
このような構成によれば、カテーテル組立体10の構成を簡素化することができる。
【0042】
次に、図6A及び図6Bに示す変形例に係る針部材14Aについて説明する。図6A及び図6Bに示すように、針部材14Aは、内針22及び閉塞部42を備える。内針22の基端部には、上述した針ハブ24(図3参照)が固定されている。
【0043】
閉塞部42は、内針22の先端開口22bを完全に閉塞している。閉塞部42は、内針22の先端開口22bに位置した状態で内針22に対して融着、接着、溶接等の適宜の接合手段により接合されている。閉塞部42は、板状に形成されており、その外周面は、全周に亘って内針22の先端開口22bを形成する壁面に液密に接触している。閉塞部42の外面42aは、刃面28と面一である。換言すれば、閉塞部42の外面42aは、刃面28に対して段差なく連なっている。ただし、閉塞部42の外面42aは、刃面28よりも基端側(内針22の内腔22aが位置する側)に位置してもよい。閉塞部42は、刃元28b側から刃先28a側に向かって薄肉に形成されている。
【0044】
内針22の刃先28aの近傍には、血液を内針22の内腔22aに導くための1つの導入孔44が形成されている。導入孔44は、複数設けられてもよい。導入孔44の大きさ及び形状は、適宜変更可能である。導入孔44は、刃面28に対して内針22の周方向にずれて位置している。具体的に、導入孔44は、刃先28aと刃元28bとを結ぶ中心線Lに対して内針22の周方向に180°ずれて位置している。内針22の軸線方向において、導入孔44の基端P4は、内針22の先端開口22bの基端P5よりも先端側に位置している。内針22の軸線方向において、導入孔44の軸線方向の基端P4は、内針22の先端開口22bの中央P6よりも先端側に位置している。
【0045】
針部材14Aを備えたカテーテル組立体10によれば、上述した針部材14と同様に、内針22の血管確保を確認することができるとともに血管102の後壁104への内針22の突き刺さりを精度よく知ることができる。
【0046】
また、針部材14Aを備えたカテーテル組立体10は、以下の効果を奏する。
【0047】
導入孔44は、刃面28に対して内針22の周方向にずれて位置している。
【0048】
このような構成によれば、導入孔44を簡単に形成することができる。
【0049】
導入孔44は、刃先28aと刃元28bとを結ぶ中心線Lに対して180°ずれて位置している。
【0050】
このような構成によれば、内針22の先端開口22bと導入孔44との間隔を比較的長くすることができるため、内針22の先端部の剛性の低下を抑えることができる。
【0051】
内針22の軸線方向において、導入孔44の基端P4は、内針22の先端開口22bの中央P6よりも先端側に位置している。
【0052】
このような構成によれば、血管102の後壁104への内針22の突き刺さりを一層精度よく知ることができる。
【0053】
閉塞部42は、内針22の先端開口22bを完全に閉塞している。
【0054】
このような構成によれば、内針22の先端開口22bから内針22の内腔22aへの血液の流入を阻止することができる。
【0055】
次に、図7図8Bに示す他の変形例に係る針部材14Bについて説明する。図7に示すように、針部材14Bは、内針22、針ハブ50、閉塞部26及び支持部56を備える。針ハブ50は、上述した内針支持部30及び針ハブ本体32と、針ハブ本体32の基端側の開口部に嵌合された環状の固定部材58とを含む。固定部材58の内腔には、上述したフィルタ部材36が配設されている。
【0056】
図8Aに示すように、閉塞部26は、内針22とは別体に設けられている。換言すれば、閉塞部26は、内針22に対して接合されていない。閉塞部26は、内針22に対して接合されていない点以外は、上述した閉塞部26と同様に形成されている。すなわち、内針22には、導入孔38が形成されている。
【0057】
図8A及び図8Bにおいて、支持部56は、線状に延在するとともに内針22の内腔22aに挿通されている。支持部56の先端部には、閉塞部26が一体的に設けられている。換言すれば、閉塞部26及び支持部56は、一体成形されている。ただし、閉塞部26は、支持部56に対して、かしめ、嵌合、接着等によって接合されてもよい。閉塞部26は、支持部56に対して屈曲するように設けられている。
【0058】
図8Bに示すように、内針22の軸線方向から見て、内針22の内腔22aに対する支持部56の占有率は、40%以下が好ましく、30%以下がより好ましく、20%程度がさらに好ましい。支持部56の横断面は、円形状に形成されている。ただし、支持部56の横断面は、多角形状(例えば、四角形状)又は環状(円環状、四角環状等)であってもよい。また、支持部56は、板状に形成されてもよい。支持部56の基端部は、固定部材58の内面に対して固着されている(図7参照)。
【0059】
針部材14Bを備えたカテーテル組立体10によれば、上述した針部材14と同様に、内針22の血管確保を確認することができるとともに血管102の後壁104への内針22の突き刺さりを精度よく知ることができる。
【0060】
また、針部材14Bを備えたカテーテル組立体10は、以下の効果を奏する。
【0061】
針部材14Bは、内針22の基端部に固定された針ハブ50と、内針22の内腔22aを挿通するとともに針ハブ50に固着された支持部56と、を備え、閉塞部26は、支持部56の先端部に設けられている。
【0062】
このような構成によれば、針部材14Bの構成を簡素化することができる。
【0063】
閉塞部26は、内針22に対して接合されていない
【0064】
このような構成によれば、閉塞部26を内針22に接合する必要がなくなるため、針部材14Bの製造コストの低廉化を図ることができる。
【0065】
閉塞部26は、支持部56に対して屈曲するように設けられている。
【0066】
このような構成によれば、支持部56の横断面積を比較的小さくすることができる。
【0067】
内針22の軸線方向から見て、内針22の内腔22aに対する支持部56の占有率は、40%以下である。
【0068】
このような構成によれば、内針22の内腔22aに血液を円滑に流通させることができる。
【0069】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改変が可能である。
【0070】
針部材14Bにおいて、針部材14Bは、閉塞部26及び導入孔38に代えて閉塞部42及び導入孔44を有してもよい。
【0071】
以上の実施形態をまとめると、以下のようになる。
【0072】
上記実施形態は、管状の内針(22)と、前記内針が挿通される管状のカテーテルシャフト(16)と、を備えたカテーテル組立体(10)であって、前記内針の先端部には、前記内針の軸線に対して傾斜した刃面(28)が形成され、前記刃面は、前記内針の最先端に位置する刃先(28a)と、前記刃面の軸線方向の基端に位置する刃元(28b)と、を有し、前記カテーテル組立体は、前記刃面に形成された前記内針の先端開口(22b)の少なくとも前記刃元側を塞ぐ閉塞部(26、42)を備え、前記内針のうち前記刃元よりも先端側には、血液を前記内針の内腔(22a)に導くための導入孔(38、44)が形成され、前記内針の軸線方向において、前記導入孔の基端(P1、P4)は、前記内針の先端開口の基端(P2、P5)よりも先端側に位置している、カテーテル組立体を開示している。
【0073】
上記のカテーテル組立体において、前記導入孔は、前記刃面の先端側に位置してもよい。
【0074】
上記のカテーテル組立体において、前記閉塞部は、前記内針の先端開口の先端部分を塞いでおらず、前記導入孔は、前記内針の先端開口のうち前記閉塞部により塞がれていない部分によって形成されてもよい。
【0075】
上記のカテーテル組立体において、前記導入孔は、前記刃面に対して前記内針の周方向にずれて位置してもよい。
【0076】
上記のカテーテル組立体において、前記導入孔は、前記刃先と前記刃元とを結ぶ中心線(L)に対して前記内針の周方向に180°ずれて位置してもよい。
【0077】
上記のカテーテル組立体において、前記内針の軸線方向において、前記導入孔の基端は、前記内針の先端開口の中央(P3、P6)よりも先端側に位置してもよい。
【0078】
上記のカテーテル組立体において、前記閉塞部は、前記内針の先端開口を完全に閉塞してもよい。
【0079】
上記のカテーテル組立体において、前記導入孔は、1つ又は複数設けられてもよい。
【0080】
上記のカテーテル組立体において、前記閉塞部は、前記内針に対して接合されてもよい。
【0081】
上記のカテーテル組立体において、前記内針の基端部に固定された針ハブ(50)と、前記内針の内腔を挿通するとともに前記針ハブに固着された支持部(56)と、を備え、前記閉塞部は、前記支持部の先端部に設けられてもよい。
【0082】
上記のカテーテル組立体において、前記閉塞部は、前記内針に対して接合されていなくてもよい。
【0083】
上記のカテーテル組立体において、前記閉塞部は、前記支持部に対して屈曲するように設けられてもよい。
【0084】
上記のカテーテル組立体において、前記内針の軸線方向から見て、前記内針の内腔に対する前記支持部の占有率は、40%以下であってもよい。
【符号の説明】
【0085】
10…カテーテル組立体 16…カテーテルシャフト
22…内針 22b…先端開口
24、50…針ハブ 26、42…閉塞部
28…刃面 28a…刃先
28b…刃元 38、44…導入孔
56…支持部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8