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特許7396851制御装置、制御システム、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-04
(45)【発行日】2023-12-12
(54)【発明の名称】制御装置、制御システム、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/00 20140101AFI20231205BHJP
   G02B 26/08 20060101ALI20231205BHJP
   B23K 26/046 20140101ALI20231205BHJP
   B23K 26/082 20140101ALI20231205BHJP
【FI】
B23K26/00 M
G02B26/08 E
B23K26/00 P
B23K26/046
B23K26/00 N
B23K26/082
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019191130
(22)【出願日】2019-10-18
(65)【公開番号】P2021065897
(43)【公開日】2021-04-30
【審査請求日】2022-07-20
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】西村 竜太朗
【審査官】岩見 勤
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-047789(JP,A)
【文献】特開2008-216873(JP,A)
【文献】特開2012-192731(JP,A)
【文献】特開2019-147166(JP,A)
【文献】特開2016-068133(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00 - 26/70
G02B 26/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークへのレーザ光の照射角度を変更可能なレーザ加工装置の動作を制御する制御装置であって、
前記ワークへの前記レーザ光の照射による前記ワークの加工結果を加工情報として取得する加工情報取得部と、
前記加工結果の目標値を取得する目標値取得部と、
取得された前記目標値に基づいて前記レーザ加工装置の動作指令の指令値を基準指令値として算出する基準指令値算出部と、
取得された加工情報と、取得された目標値とに基づいて、前記レーザ光の補正量を決定する補正量決定部と、
算出された基準指令値と、決定された補正量とに基づいて、基準指令値を補正した補正指令値を決定する補正指令値決定部と、
決定された補正指令値に基づいて、前記レーザ加工装置の前記レーザ光の照射を実行させる実行制御部と、
を備え
前記基準指令値算出部は、前記基準指令値として、前記レーザ光の照射方向を変更するミラーの角度、及び前記レーザ光の焦点距離を変更する焦点レンズの位置の少なくともいずれかの情報を含む基準指令値を算出し
前記補正量決定部は、前記レーザ光の照射方向を変更するミラーの角度及び前記レーザ光の焦点距離を変更する焦点レンズの位置の少なくともいずれかを決定し、
前記補正指令値決定部は、前記レーザ光の照射方向を変更するミラーの角度及び前記レーザ光の焦点距離を変更する焦点レンズの位置の少なくともいずれかの補正指令値を決定する制御装置。
【請求項2】
前記加工情報取得部は、前記レーザ光の照射位置を含む加工領域における加工結果を数値化して出力するセンサから加工情報を取得する請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記基準指令値算出部は、前記基準指令値として、前記レーザ光の照射方向を変更するミラーの角度、前記レーザ光の焦点距離を変更する焦点レンズの位置、及び前記レーザ光のエネルギー密度の情報を含む基準指令値を算出し、
前記補正量決定部は、前記レーザ光の照射方向を変更するミラーの角度、前記レーザ光の焦点距離を変更する焦点レンズの位置、及び前記レーザ光のエネルギー密度を決定し、
前記補正指令値決定部は、前記レーザ光の照射方向を変更するミラーの角度、前記レーザ光の焦点距離を変更する焦点レンズの位置、及び前記レーザ光のエネルギー密度の補正指令値を決定する請求項1又は2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記レーザ加工装置は、三次元ガルバノスキャナである請求項1から3のいずれかに記載の制御装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の制御装置と、
前記レーザ加工装置による前記ワークの加工結果を加工情報として出力するセンサと、
を備える制御システム。
【請求項6】
ワークへのレーザ光の照射角度を変更可能なレーザ加工装置の動作を制御する制御装置としてコンピュータを機能させるプログラムであって、
前記コンピュータを、
前記ワークへの前記レーザ光の照射による前記ワークの加工結果を加工情報として取得する加工情報取得部、
前記加工結果の目標値を取得する目標値取得部、
取得された前記目標値に基づいて前記レーザ加工装置の動作指令の指令値を基準指令値として算出する基準指令値算出部、
取得された加工情報と、取得された目標値とに基づいて、前記レーザ光の補正量を決定する補正量決定部、
算出された基準指令値と、決定された補正量とに基づいて、基準指令値を補正した補正指令値を決定する補正指令値決定部、
決定された補正指令値に基づいて、前記レーザ加工装置の前記レーザ光の照射を実行させる実行制御部、
として機能させ
前記基準指令値算出部は、前記基準指令値として、前記レーザ光の照射方向を変更するミラーの角度、及び前記レーザ光の焦点距離を変更する焦点レンズの位置の少なくともいずれかの情報を含む基準指令値を算出し
前記補正量決定部は、前記レーザ光の照射方向を変更するミラーの角度及び前記レーザ光の焦点距離を変更する焦点レンズの位置の少なくともいずれかを決定し、
前記補正指令値決定部は、前記レーザ光の照射方向を変更するミラーの角度及び前記レーザ光の焦点距離を変更する焦点レンズの位置の少なくともいずれかの補正指令値を決定するプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、制御装置、制御システム、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ワークに対してレーザ光を照射することで、ワークを加工するレーザ加工装置が知られている。レーザ加工装置は、ワークに対して照射したレーザ光により照射位置のワークを溶融させることで、切断、溶接等の加工を実行することができる。
【0003】
レーザ加工装置には、レーザ光の光軸の照射角度を変更可能な装置がある。例えば、三次元ガルバノスキャナは、ミラーの角度を変更することで、光源から出射後、反射するレーザ光のワークへの照射位置(照射角度)を変更することができる。
【0004】
ところで、レーザ光の照射位置におけるビーム径は、レーザ加工装置の出射口に対向する位置からずれる程、真円形から歪む。例えば、ビーム径は、対向する位置からずれる程、楕円径に歪む。また、ビーム径は、直線形の断面を有するワークの加工時に比べ、曲線状の断面を有するワークの加工時程歪む。そのため、ワークを均一に加工することが難しい。そこで、レーザ光を照射する目標位置に基づいて、ガルバノスキャナの回転角を補正するレーザ光スキャニング装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2008-216873号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載のレーザ光スキャニング装置では、レーザ光を照射する目標位置を予め入力することで、補正位置の補正量が算出される。特許文献1に記載のレーザ光スキャニング装置では、レーザ光スポット径が指定される。そして、特許文献1に記載のレーザ光スキャニング装置では、補正位置の補正と、レーザ光スポット径とに基づいて、X軸ガルバノメータスキャナ、Y軸ガルバノメータスキャナ、及びZ軸ガルバノメータスキャナの回転角が求められる。これにより、特許文献1に記載のレーザ光スキャニング装置では、加工の最適化を容易にすることができる。
【0007】
一方、特許文献1では、実際の加工状況に応じて、レーザ光の照射条件を補正することはできない。より最適化するには、実際の加工状況を用いてレーザ光の照射条件を補正することができるのが好適である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本開示は、ワークへのレーザ光の照射角度を変更可能なレーザ加工装置の動作を制御する制御装置であって、前記ワークへの前記レーザ光の照射による前記ワークの加工結果を加工情報として取得する加工情報取得部と、前記加工結果の目標値を取得する目標値取得部と、取得された前記目標値に基づいて前記レーザ加工装置の動作指令の指令値を基準指令値として算出する基準指令値算出部と、取得された加工情報と、取得された目標値とに基づいて、前記レーザ光の補正量を決定する補正量決定部と、算出された基準指令値と、決定された補正量とに基づいて、基準指令値を補正した補正指令値を決定する補正指令値決定部と、決定された補正指令値に基づいて、前記レーザ加工装置の前記レーザ光の照射を実行させる実行制御部と、を備える制御装置に関する。
【0009】
(2)また、本開示は、上記(1)の制御装置と、前記レーザ加工装置による前記ワークの加工結果を加工情報として出力するセンサと、を備える制御システムに関する。
【0010】
(3)また、本開示は、ワークへのレーザ光の照射角度を変更可能なレーザ加工装置の動作を制御する制御装置としてコンピュータを機能させるプログラムであって、前記コンピュータを、前記ワークへの前記レーザ光の照射による前記ワークの加工結果を加工情報として取得する加工情報取得部、前記加工結果の目標値を取得する目標値取得部、取得された前記目標値に基づいて前記レーザ加工装置の動作指令の指令値を基準指令値として算出する基準指令値算出部、取得された加工情報と、取得された目標値とに基づいて、前記レーザ光の補正量を決定する補正量決定部、算出された基準指令値と、決定された補正量とに基づいて、基準指令値を補正した補正指令値を決定する補正指令値決定部、決定された補正指令値に基づいて、前記レーザ加工装置の前記レーザ光の照射を実行させる実行制御部、として機能させるプログラムに関する。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、実際の加工状況を用いてレーザ光の照射条件を補正可能な制御装置、制御システム、及びプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本開示の一実施形態に係る制御システムによって制御される三次元ガルバノスキャナを示す概略構成図である。
図2】一実施形態の制御システムによって加工されるワークの加工結果を示す概略平面図である。
図3】一実施形態の制御システムを示す概略構成図である。
図4】一実施形態の制御装置を示すブロック図である。
図5】変形例におけるセンサの構成を示す概略構成図である。
図6】変形例におけるワークを加工した加工結果を示す概略断面図である。
図7】変形例における加工結果の測定値及び目標値の差を示すグラフである。
図8】変形例における加工結果ビード幅の関係を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示の一実施形態に係る制御装置1、制御システム100、及びプログラムについて、図1から図4を参照して説明する。
各実施形態の制御装置1、制御システム100、及びプログラムを説明するのに先立って、制御装置1、制御システム100、及びプログラムで制御されるレーザ加工装置2について説明する。
【0014】
レーザ加工装置2は、例えば、ガルバノスキャナである。レーザ加工装置2は、図1に示すように、レーザ光源Pからのレーザ光Lの焦点を調整可能な焦点レンズ20と、焦点レンズ20を通過したレーザ光Lを順次反射させる2つのミラー21、22と、ミラー21、22のそれぞれを各回転軸X1、X2まわりに回転駆動させる2つのモータ23、24と、レーザ光Lを集光して出射する集光レンズ25とを有する。これら焦点レンズ20、ミラー21、22、モータ23、24、及び集光レンズ25は、出射部200を構成する。
【0015】
焦点レンズ20は、レーザ光源P及びミラー21の間を移動可能に構成される。焦点レンズ20は、レーザ光源P及びミラー21の間を移動することで、焦点距離を変更することができる。焦点レンズ20は、焦点距離を変更することで、ワークWに照射されるレーザ光Lのビーム径を変更することができる。
【0016】
ミラー21、22は、互いに直交する2つの回転軸X1、X2まわりにそれぞれ回転可能に構成される。モータ23、24は、例えば、サーボモータで構成され、ミラー21、22を回転駆動することにより、レーザ光源Pから出射されるレーザ光Lを走査する。
【0017】
図1に示すように、レーザ光源Pからのレーザ光Lは、焦点レンズ20を通り、2つのミラー21、22で順次反射される。レーザ光Lは、集光レンズ25で集光され、ワークWに向けて照射される。このとき、モータ23、24により2つのミラー21、22をそれぞれ回転駆動させると、これらミラー21、22に入射するレーザ光Lの入射角が連続的に変化する。その結果、ミラー21、22で順次反射してワークWに到達するレーザ光Lが、ワークW上の所定の走査経路に沿って走査される。これにより、図2に示すように、ワークには、加工経路として、所定の切断幅及び深さを有する溝が形成される。
【0018】
ところで、レーザ光源Pからのレーザ光Lは、照射位置に応じて、集光レンズ25の光軸Sから照射角度θでワークに向けて照射される。照射角度θがより大きい場合、ワークに照射されるレーザ光Lのビーム径は、真円形から楕円形により近くなる。また、レーザ加工装置2では、出射口からワークWの照射面までの距離が比較的長い。また、レーザ加工装置2では、レーザ光Lの照射可能範囲にレーザ光Lを自由に照射可能である。そのため、レーザ加工装置2では、従来のギャップ制御のような比較的高精度な加工が難しい。そこで、本実施形態に係る制御装置1、制御システム100、及びプログラムは、実際の加工結果に応じて加工条件を補正することで、加工結果のばらつきを抑制することを図ったものである。
【0019】
次に、本実施形態に係る制御装置1、制御システム100、及びプログラムについて説明する。
制御システム100は、図3に示すように、レーザ加工装置2と、センサ3と、制御装置1と、を備える。
【0020】
レーザ加工装置2は、ワークWに対して、レーザ光Lを照射可能な装置である。レーザ加工装置2は、集光レンズ25の光軸Sから照射角度θでワークに対してレーザ光Lを照射する。三次元ガルバノスキャナは、例えば、ワークWの切断及び溶接をすることができる。本実施形態では、ワークWを切断するレーザ加工装置2が一例として説明される。
【0021】
センサ3は、例えば、測距センサである。センサ3は、レーザ光Lの照射位置を含む加工領域Rにおける加工結果を数値化して出力する。センサ3は、例えば、レーザ光の照射により溶融している領域(照射位置近傍)の測距結果を加工結果として数値化して出力する。センサ3は、例えば、図2に示す溝の切断幅の物理量を出力することができる。また、センサ3は、例えば、図2に示す溝の深さの物理量を出力することができる。なお、ここで、「照射位置近傍」とは、照射位置を含む、レーザ光Lの照射によって現に加工を実行しているワークWの位置をいう。
【0022】
制御装置1は、ワークWへのレーザ光Lの照射角度θを変更可能なレーザ加工装置2の動作を制御する。制御装置1は、図4に示すように、加工情報取得部11と、目標値格納部12と、目標値取得部13と、基準指令値算出部14と、補正量決定部15と、補正指令値決定部16と、実行制御部17と、を備える。
【0023】
加工情報取得部11は、例えば、CPUが動作することにより実現される。加工情報取得部11は、ワークWへのレーザ光Lの照射によるワークWの加工結果を加工情報として取得する。加工情報取得部11は、例えば、溝の切断幅及び溝の深さを加工情報として取得する。
【0024】
目標値格納部12は、例えば、ハードディスク等の二次記録媒体である。目標値格納部12は、加工結果の目標値を格納する。目標値格納部12は、例えば、目標値として、ワークWにおける切断位置、切断幅、切断量等の値を格納する。
【0025】
目標値取得部13は、例えば、CPUが動作することにより実現される。目標値取得部13は、加工結果の目標値を取得する。目標値取得部13は、例えば、目標値格納部12に格納されている目標値を読み出すことで、目標値を取得する。
【0026】
基準指令値算出部14は、例えば、CPUが動作することにより実現される。基準指令値算出部14は、取得された目標値に基づいてレーザ加工装置2の動作指令の指令値を基準指令値として算出する。基準指令値算出部14は、例えば、目標値を加工プログラムとして解析する。基準指令値算出部14は、加工プログラムに基づいて、レーザ光Lのエネルギー密度、モータ23,24の加減速、焦点距離等を基準指令値として算出する。
【0027】
補正量決定部15は、例えば、CPUが動作することにより実現される。補正量決定部15は、取得された加工情報と、取得された目標値とに基づいて、レーザ光Lの補正量を決定する。補正量決定部15は、例えば、加工情報と目標値との差分を算出する。補正量決定部15は、差分に応じて、レーザ光Lのエネルギー密度、モータ23,24の加減速、焦点距離(焦点レンズ20の移動量)等の補正量を決定する。また、補正量決定部15は、現在の位置に基づく補正方向(移動方向)Sz、変換係数(機械位置移動量)Cz、データ間の重付けWi、目標値ai、加工情報mi(例えば、切断幅)として、以下の数1の演算結果を補正量ΔZとして決定する。
【数1】
【0028】
補正指令値決定部16は、例えば、CPUが動作することにより実現される。補正指令値決定部16は、算出された基準指令値と、決定された補正量とに基づいて、基準指令値を補正した補正指令値を決定する。補正指令値決定部16は、例えば、基準指令値と、補正量との和を補正指令値として決定する。補正指令値決定部16は、補正方向SL、変換係数αとして、以下の数2の演算結果を補正指令値Δ(レーザ指令)として決定する。
【数2】
【0029】
実行制御部17は、例えば、CPUが動作することにより実現される。実行制御部17は、決定された補正値に基づいて、レーザ加工装置2のレーザ光の照射を実行させる。実行制御部17は、例えば、決定された補正指令値でレーザ加工装置2を動作させる。
【0030】
次に、制御システム100及び制御装置1の動作を説明する。
まず、目標値取得部13は、目標値格納部12から目標値を取得する。基準指令値算出部14は、目標値に基づいて基準指令値を算出する。この段階ではレーザ光Lがワークに照射されていないので、センサ3は、加工結果(加工情報)を出力しない。そのため、補正量決定部15は、補正量を0に決定する。したがって、補正指令値決定部16は、基準指令値のみを補正指令値に決定する。実行制御部17は、決定された補正指令値でレーザ加工装置2によるレーザ光Lの照射を実行させる。
【0031】
レーザ光Lの照射が実行されると、センサ3は、加工情報の出力を開始する。補正量決定部15は、加工情報と、目標値との差を算出する。補正量決定部15は、差分について、レーザ光Lのエネルギー密度、モータ23,24の加減速、焦点距離等に変換する。補正量決定部15は、変換された値を補正量に決定する。
【0032】
補正指令値決定部16は、基準指令値及び補正量のを補正指令値として決定する。補正指令値決定部16は、例えば、照射位置への入熱量を一定に近づけるように補正した、レーザ光Lのエネルギー密度、モータ23,24の加減速、焦点距離(焦点レンズ20の移動距離)を補正指令値として決定する。実行制御部17は、補正指令値に基づいてレーザ加工装置2によるレーザ照射の実行を制御する。
【0033】
次に、本実施形態に係るプログラムについて説明する。
制御装置1に含まれる各構成は、ハードウェア、ソフトウェア又はこれらの組み合わせによりそれぞれ実現することができる。ここで、ソフトウェアによって実現されるとは、コンピュータがプログラムを読み込んで実行することにより実現されることを意味する。
【0034】
プログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)を用いて格納され、コンピュータに供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体(tangible storage medium)を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(例えば、フレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(例えば、光磁気ディスク)、CD-ROM(Read Only Memory)、CD-R、CD-R/W、半導体メモリ(例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAM(random access memory))を含む。また、表示プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体(transitory computer readable medium)によってコンピュータに供給されてもよい。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線及び光ファイバ等の有線通信路、又は無線通信路を介して、プログラムをコンピュータに供給できる。
【0035】
以上、本実施形態に係る制御システム100、制御装置1、及びプログラムによれば、以下の効果を奏する。
(1) ワークWへのレーザ光Lの照射角度を変更可能なレーザ加工装置2の動作を制御する制御装置1であって、ワークへのレーザ光の照射によるワークの加工結果を加工情報として取得する加工情報取得部11と、加工結果の目標値を取得する目標値取得部13と、取得された目標値に基づいてレーザ加工装置2の動作指令の指令値を基準指令値として算出する基準指令値算出部14と、取得された加工情報と、取得された目標値とに基づいて、レーザ光の補正量を決定する補正量決定部15と、算出された基準指令値と、決定された補正量とに基づいて、基準指令値を補正した補正指令値を決定する補正指令値決定部16と、決定された補正指令値に基づいて、レーザ加工装置2のレーザ光の照射を実行させる実行制御部17と、を備える。これにより、実際の加工状況を用いてレーザ光Lの照射条件を補正することができる。したがって、照射位置の入熱量を一定により近くすることができ、加工状況を安定化することができる。
【0036】
(2) 加工情報取得部11は、レーザ光の照射位置を含む加工領域における加工結果を数値化して出力するセンサ3から加工情報を取得する。これにより、実際の加工状況に基づいてレーザ光Lの照射条件をフィードバック制御できる。したがって、予期しない照射状況に対しても柔軟に対応することができる。例えば、ワークWの表面に予期しないばらつき(凹凸)があったとしても、柔軟に対応することができる。
【0037】
(3) 基準指令値算出部14は、レーザ光Lの照射方向を変更するミラー21,22の角度、レーザ光Lの焦点距離を変更する焦点レンズ20の位置、及びレーザ光Lのエネルギー密度の情報を含む基準指令値を算出し、補正量決定部15は、レーザ光の照射方向を変更するミラー21、22の角度、レーザ光Lの焦点距離を変更する焦点レンズ20の位置、及びレーザ光Lのエネルギー密度を決定し、補正指令値決定部16は、レーザ光Lの照射方向を変更するミラー21,22の角度、レーザ光Lの焦点距離を変更する焦点レンズ20の位置、及びレーザ光Lのエネルギー密度の補正指令値を決定する。これにより、照射位置への入熱量を柔軟に変更することができる。
【0038】
以上、本開示の制御システム、制御装置、及びプログラムの好ましい一実施形態につき説明したが、本開示は、上述の実施形態に制限されるものではなく、適宜変更が可能である。
例えば、上記実施形態において、センサ3は、レーザ加工装置2のレーザ光Lの同軸センサとして構成されてもよい。すなわち、センサ3は、ワークWの加工表面に照射する測距光LSについて、光源PSからの出射光をセンサ側ミラー31で反射させるとともに、レーザ加工装置2のミラー21,22で反射させて、ワークWの加工領域に照射してもよい。また、センサ3は、レーザ加工装置2のミラー21,22で反射された測距光LSをセンサ側ミラー31で反射させて、受光部32で受光してもよい。また、センサ側ミラー31は、レーザ加工装置2のミラー21,22に測距光LSを照射可能である限り、自由に角度を変更することが可能である。
【0039】
また、上記実施形態において、加工は、切断に限らず、溶接であってもよい。加工が溶接である場合、図6及び図7に示すように、センサ3は、溶接方向に対して加工前の表面高さR1と、溶接中(溶解中)のワークWの穴の高さR2とから、キーホール径(ピアシング穴径)の深さを測定する。補正量決定部15は、測定値と目標値との差がゼロに近づくように、補正値を決定する。また、センサ3は、図8に示すように、溶接によって形成される溶接ビードBの幅を用いて、溝の深さと同様に補正量を決定してもよい。
【0040】
また、上記実施形態において、レーザ加工装置2は、三次元ガルバノスキャナに限定されない。
また、上記実施形態において、センサは、測距センサに限定されない。センサは、例えば、測域センサ等であってもよい。また、センサは、レーザ光Lの加工位置を含む撮像画像を加工結果として出力してもよい。制御装置1は、例えば、出力された撮像画像に基づいて、溝の幅及び溝の高さを算出する加工結果算出部(図示せず)をさらに備えてもよい。
【0041】
また、上記実施形態において、補正量決定部15は、レーザ加工装置2によって実行される加工内容に応じて、重み付けされた加工情報と、目標値と、に基づいて、レーザ光Lの補正量を決定してもよい。例えば、レーザ加工装置2によって溶接が実行される場合、取得される加工情報に含まれる切断幅の数値は、補正量を決定する際に必要とされない。そこで、補正量決定部15は、加工情報に含まれる切断幅の重み付けを0(無効化)とするとともに、重み付けされた加工情報と、目標値と、に基づいて、レーザ光Lの補正量を決定してもよい。なお、補正量決定部15は、加工内容について、制御装置1に別途設けられる加工内容設定部(図示せず)から取得してもよい。また、目標値取得部13は、加工内容設定部によって設定される加工内容に基づいて、目標値格納部12から目標値を読み出してもよい。ここで、加工内容設定部は、例えば、キーボード等の入力装置であってもよい。また、加工内容設定部は、ワークWを加工する加工プログラムによって設定される加工内容を取得してもよい。また、加工内容設定部は、加工内容に応じて、加工情報に対して適用される重み付けのパラメータを設定してもよい。
【符号の説明】
【0042】
1 制御装置
2 レーザ加工装置
3 センサ
11 加工情報取得部
13 目標値取得部
14 基準指令値算出部
15 補正量決定部
16 補正指令値決定部
17 実行制御部
20 焦点レンズ
100 制御システム
L レーザ光
W ワーク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8