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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-04
(45)【発行日】2023-12-12
(54)【発明の名称】ガスセンサ
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/409 20060101AFI20231205BHJP
   G01N 27/41 20060101ALI20231205BHJP
   G01N 27/419 20060101ALI20231205BHJP
【FI】
G01N27/409 100
G01N27/41 325H
G01N27/419 327H
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019193930
(22)【出願日】2019-10-25
(65)【公開番号】P2021067581
(43)【公開日】2021-04-30
【審査請求日】2022-07-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【弁理士】
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【弁理士】
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【弁理士】
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 悠介
(72)【発明者】
【氏名】新妻 匠太郎
(72)【発明者】
【氏名】青田 隼実
(72)【発明者】
【氏名】平川 敏弘
【審査官】倉持 俊輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-116273(JP,A)
【文献】特開2018-105661(JP,A)
【文献】特開2015-145831(JP,A)
【文献】特開2001-141689(JP,A)
【文献】特開2004-093304(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0180570(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/406-27/419
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサ素子と、
前記センサ素子の後端部を保持し、前記センサ素子と電気的に接続する複数の接点部材と、を有するガスセンサであって
複数の前記接点部材は、前記センサ素子の表面から離間した位置に、それぞれ少なくとも1つの屈曲部を有し、
前記センサ素子の表面と前記接点部材との接点から前記屈曲部までがほぼ直線状であり、
前記センサ素子の表面から複数の前記屈曲部までの各距離は、ほぼ一定であり、
複数の前記接点部材のうち、左右両側の接点部材の後端部は、前記センサ素子への接点位置より、前記センサ素子の幅方向において離間しており、
前記センサ素子の一主面に対して、3本の前記接点部材が設置され、
前記センサ素子の他主面に対して、他の3本の前記接点部材が設置され、
前記左右両側の接点部材の前記屈曲部の、前記ガスセンサを軸方向から断面視した際の角度が10°~50°であり、
前記接点部材における屈曲部の後端側が挿通される孔を有した絶縁碍子を更に有し、
前記一主面に対して設置された前記3本の接点部材のうち、中央の接点部材が挿通される前記絶縁碍子の孔から左右の接点部材が挿通される前記絶縁碍子の孔までの距離が2.0~3.0mmである、ガスセンサ。
【請求項2】
請求項1に記載のガスセンサにおいて、
前記一主面に対して設置された前記3本の接点部材のうち、中央の接点部材と、左右の接点部材は、それぞれ前記センサ素子の長手方向にずれて配置されている、ガスセンサ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のガスセンサにおいて、
前記センサ素子の表面から前記接点部材の前記屈曲部までの厚み方向の距離をT1、前記センサ素子の厚みをT2としたとき、比T1/T2が1.5~3.0である、ガスセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1では、接点バネとしての端子金具に必要な強度を確保して、端子金具の小型化又は薄肉化を図ることができるセンサを提供することを課題としている。
【0003】
当該課題を解決するため、特許文献1では、特定接点バネ(3A)は、バネ接触部(31A)、バネ保持部(32A)、バネ屈曲部(33A)及びバネ接続部(34A)を有する。バネ接触部(31A)は、電極端子部(21)に対して、素子表面(22)に垂直な接触方向Vの外方から接触している。バネ保持部(32A)は、バネ接触部(31A)から折り返されるよう屈曲すると共に、バネ接触部(31A)に対して接触方向Vの外方から対向する状態で軸方向Xに伸びており、絶縁碍子に保持されている。バネ屈曲部(33A)は、バネ保持部(32A)から、接触方向Vに対して傾斜する状態で接触方向Vの内方に向けて屈曲しており、絶縁碍子に保持されている。バネ接続部(34A)は、バネ屈曲部(33A)から屈曲して軸方向Xに伸びている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-116273号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した従来の構造により、バネ自身の強度を確保することができたが、一方で、下記の問題点があった。
【0006】
(1) 想定以上の振動が発生した場合、素子の接点ずれが発生する。
(2) 接点部材に微小なずれが発生した場合(接点部材が接点に対して傾いた場合等)、接点部材の後端部はずれの影響を受けやすく短絡が発生し易い。
(3) 衝撃による過剰応力でセンサ素子の破損(接点部材との接点部の破損)が生じるおそれがある。
【0007】
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものであり、上述した問題を解消することができ、長期使用でも破断や接点不良等の発生を防止することができるガスセンサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様によるガスセンサは、
センサ素子と、
前記センサ素子の後端部を保持し、前記センサ素子と電気的に接続する複数の接点部材と、を有し、
複数の前記接点部材は、前記センサ素子の表面から離間した位置に、それぞれ少なくとも1つの屈曲部を有し、
前記センサ素子の表面と前記接点部材との接点から前記屈曲部までがほぼ直線状であり、
前記センサ素子の表面から複数の前記屈曲部までの各距離は、ほぼ一定であり、
複数の前記接点部材のうち、左右両側の接点部材の後端部は、前記センサ素子への接点位置より、前記センサ素子の幅方向において離間している。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、長期使用でも破断や接点不良等の発生を防止することができる。特に、接点部材同士の短絡を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態に係るガスセンサを示す断面図である。
図2】センサ素子の構成の一例を概略的に示した断面模式図である。
図3図1におけるIII-III線上の断面図である。
図4】実施例1~8、比較例1~5の加熱振動試験の結果を示す表1である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係るガスセンサについて、好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照して以下に詳細に説明する。
【0012】
本実施形態に係るガスセンサ10は、図1に示すように、センサ素子12を備える。センサ素子12は長尺な直方体形状をしており、このセンサ素子12の長手方向(図2の左右方向)を前後方向とし、センサ素子12の厚み方向(図2の上下方向)を上下方向とする。また、センサ素子12の幅方向(前後方向及び上下方向に垂直な方向)を左右方向とする。
【0013】
このガスセンサ10は、図示するように、例えば車両の排ガス管等の配管26に取り付けられて、被測定ガスとしての排気ガスに含まれるNOxやO2等の特定ガスの濃度を測定するために用いられる。
【0014】
図1に示すように、ガスセンサ10は、センサ素子12と、センサ素子12の前端側を保護する保護カバー14と、セラミックハウジング16を含むセンサ組立体18とを備えている。セラミックハウジング16は、センサ素子12の後端部を保持し、センサ素子12と電気的に接続する接点部材20が装着されることで、コネクタ36として機能する。
【0015】
保護カバー14は、センサ素子12の前端を覆う有底筒状の内側保護カバー14aと、この内側保護カバー14aを覆う有底筒状の外側保護カバー14bとを備えている。内側保護カバー14a及び外側保護カバー14bには、被測定ガスを保護カバー14内に流通させるための複数の孔が形成されている。内側保護カバー14aで囲まれた空間としてセンサ素子室22が形成されており、センサ素子12の前端はこのセンサ素子室22内に配置されている。
【0016】
センサ組立体18は、センサ素子12を封入固定する素子封止体30と、素子封止体30に取り付けられたナット32と、外筒34と、センサ素子12の後端の表面(上下面)に形成された図示しない電極に接触してこれらと電気的に接続されたコネクタ36と、を備えている。
【0017】
素子封止体30は、筒状の主体金具40と、主体金具40と同軸に溶接固定された筒状の内筒42と、主体金具40及び内筒42の内側の貫通孔内に封入されたセラミックスサポータ44a~44c、圧粉体46a、46b、メタルリング48と、を備えている。センサ素子12は素子封止体30の中心軸上に位置しており、素子封止体30を前後方向に貫通している。内筒42には、圧粉体46bを内筒42の中心軸方向に押圧するための縮径部42aと、メタルリング48を介してセラミックスサポータ44a~44c、圧粉体46a、46bを前方に押圧するための縮径部42bとが形成されている。縮径部42a、42bからの押圧力により、圧粉体46a、46bが主体金具40及び内筒42とセンサ素子12との間で圧縮されることで、圧粉体46a、46bが保護カバー14内のセンサ素子室22と外筒34内の空間50との間を封止すると共に、センサ素子12を固定している。
【0018】
ナット32は、主体金具40と同軸に固定されており、外周面に雄ネジ部が形成されている。ナット32の雄ネジ部は、配管26に溶接され内周面に雌ネジ部が設けられた固定用部材52内に挿入されている。これにより、ガスセンサ10のうちセンサ素子12の前端や保護カバー14の部分が配管26内に突出した状態で、ガスセンサ10が配管26に固定されている。
【0019】
外筒34は、内筒42、センサ素子12、コネクタ36の周囲を覆っており、コネクタ36に接続された複数のリード線54が後端から外部に引き出されている。このリード線54は、コネクタ36を介してセンサ素子12の各電極(後述)と導通している。外筒34とリード線54との隙間はグロメット等で構成された弾性絶縁部材56によって封止されている。外筒34内の空間50は基準ガス(本実施形態では大気)で満たされている。センサ素子12の後端はこの空間50内に配置されている。
【0020】
一方、センサ素子12は、図2に示すように、それぞれがジルコニア(ZrO)等の酸素イオン伝導性固体電解質層からなる第1基板層60と、第2基板層62と、第3基板層64と、第1固体電解質層66と、スペーサ層68と、第2固体電解質層70の6つの層が、図面視で下側からこの順に積層された積層体を有する素子である。また、これら6つの層を形成する固体電解質は緻密な気密のものである。センサ素子12は、例えば、各層に対応するセラミックスグリーンシートに所定の加工及び回路パターンの印刷等を行った後にそれらを積層し、さらに、焼成して一体化させることによって製造される。
【0021】
センサ素子12の一端(図2の左側)であって、第2固体電解質層70の下面と第1固体電解質層66の上面との間には、ガス導入口80と、第1拡散律速部82と、緩衝空間84と、第2拡散律速部86と、第1内部空所88と、第3拡散律速部90と、第2内部空所92と、第4拡散律速部94と、第3内部空所96とが、この順に連通する態様にて隣接形成されている。
【0022】
ガス導入口80と、緩衝空間84と、第1内部空所88と、第2内部空所92と、第3内部空所96とは、スペーサ層68をくり抜いた態様にて設けられた上部を第2固体電解質層70の下面で、下部を第1固体電解質層66の上面で、側部をスペーサ層68の側面で区画されたセンサ素子12内部の空間である。
【0023】
第1拡散律速部82と、第2拡散律速部86と、第3拡散律速部90とはいずれも、2本の横長の(図面に垂直な方向に開口が長手方向を有する)スリットとして設けられる。また、第4拡散律速部94は、第2固体電解質層70の下面との隙間として形成された1本の横長の(図面に垂直な方向に開口が長手方向を有する)スリットとして設けられる。なお、ガス導入口80から第3内部空所96に至る部位を被測定ガス流通部とも称する。
【0024】
また、被測定ガス流通部よりも一端側から遠い位置には、第3基板層64の上面と、スペーサ層68の下面との間であって、側部を第1固体電解質層66の側面で区画される位置に基準ガス導入空間98が設けられている。基準ガス導入空間98には、NOx濃度の測定を行う際の基準ガスとして、例えば大気(図1の空間50内の雰囲気)が導入される。
【0025】
大気導入層100は、多孔質アルミナ等のセラミックスからなり、基準ガス導入空間98に露出している層である。この大気導入層100には基準ガス導入空間98を通じて基準ガスが導入されるようになっている。また、大気導入層100は、基準電極102を被覆するように形成されている。この大気導入層100は、基準ガス導入空間98内の基準ガスに対して所定の拡散抵抗を付与しつつ、これを基準電極102に導入する。なお、大気導入層100は、基準電極102よりもセンサ素子12の後端側(図2の右側)でのみ基準ガス導入空間98に露出するように形成されている。換言すると、基準ガス導入空間98は、基準電極102の直上までは形成されていない。但し、基準電極102が基準ガス導入空間98の図2における真下に形成されていてもよい。
【0026】
基準電極102は、第3基板層64の上面と第1固体電解質層66とに挟まれる態様にて形成される電極であり、上述のように、その周囲には、基準ガス導入空間98につながる大気導入層100が設けられている。なお、基準電極102は、第3基板層64の上面に直に形成されており、第3基板層64の上面に接する部分以外が大気導入層100に覆われている。また、後述するように、基準電極102を用いて第1内部空所88内、第2内部空所92内、第3内部空所96内の酸素濃度(酸素分圧)を測定することが可能となっている。基準電極102は、多孔質サーメット電極(例えば、PtとZrOとのサーメット電極)として形成される。
【0027】
被測定ガス流通部において、ガス導入口80は、外部空間に対して開口してなる部位であり、該ガス導入口80を通じて外部空間からセンサ素子12内に被測定ガスが取り込まれるようになっている。第1拡散律速部82は、ガス導入口80から取り込まれた被測定ガスに対して、所定の拡散抵抗を付与する部位である。緩衝空間84は、第1拡散律速部82より導入された被測定ガスを第2拡散律速部86へと導くために設けられた空間である。
【0028】
第2拡散律速部86は、緩衝空間84から第1内部空所88に導入される被測定ガスに対して、所定の拡散抵抗を付与する部位である。被測定ガスが、センサ素子12の外部から第1内部空所88内まで導入されるにあたって、外部空間における被測定ガスの圧力変動(被測定ガスが自動車の排気ガスの場合であれば排気圧の脈動)によってガス導入口80からセンサ素子12内部に急激に取り込まれた被測定ガスは、直接第1内部空所88へ導入されるのではなく、第1拡散律速部82、緩衝空間84、第2拡散律速部86を通じて被測定ガスの濃度変動が打ち消された後、第1内部空所88へ導入されるようになっている。
【0029】
これによって、第1内部空所88へ導入される被測定ガスの濃度変動はほとんど無視できる程度のものとなる。第1内部空所88は、第2拡散律速部86を通じて導入された被測定ガス中の酸素分圧を調整するための空間として設けられている。係る酸素分圧は、後述する主ポンプセル110が作動することによって調整される。
【0030】
主ポンプセル110は、第1内部空所88の内面に設けられた内側ポンプ電極112と、第2固体電解質層70の上面のうち、内側ポンプ電極112と対応する領域に外部空間(図1のセンサ素子室22)に露出する態様にて設けられた外側ポンプ電極114と、これらの電極に挟まれた第2固体電解質層70とによって構成されてなる電気化学的ポンプセルである。
【0031】
内側ポンプ電極112は、第1内部空所88を区画する上下の固体電解質層(第2固体電解質層70及び第1固体電解質層66)、及び、側壁を与えるスペーサ層68にまたがって形成されている。具体的には、第1内部空所88の天井面を与える第2固体電解質層70の下面には内側ポンプ電極112の天井電極部112aが形成され、また、第1内部空所88の底面を与える第1固体電解質層66の上面には底部電極部112bが直に形成され、そして、これら天井電極部112aと底部電極部112bとを接続するように、側部電極部(図示省略)が第1内部空所88の両側壁部を構成するスペーサ層68の側壁面(内面)に形成されて、該側部電極部の配設部位においてトンネル形態とされた構造として配設されている。
【0032】
内側ポンプ電極112と外側ポンプ電極114とは、多孔質サーメット電極(例えば、Auを1%含むPtとZrOとのサーメット電極)として形成される。なお、被測定ガスに接触する内側ポンプ電極112は、被測定ガス中のNOx成分に対する還元能力を弱めた材料を用いて形成される。
【0033】
主ポンプセル110においては、内側ポンプ電極112と外側ポンプ電極114との間に所望のポンプ電圧Vp0を印加して、内側ポンプ電極112と外側ポンプ電極114との間に正方向あるいは負方向にポンプ電流Ip0を流すことにより、第1内部空所88内の酸素を外部空間に汲み出し、あるいは、外部空間の酸素を第1内部空所88に汲み入れることが可能となっている。
【0034】
また、第1内部空所88における雰囲気中の酸素濃度(酸素分圧)を検出するために、内側ポンプ電極112と、第2固体電解質層70と、スペーサ層68と、第1固体電解質層66と、基準電極102によって、電気化学的なセンサセル、すなわち、主ポンプ制御用酸素分圧検出センサセル120が構成されている。
【0035】
主ポンプ制御用酸素分圧検出センサセル120における起電力V0を測定することで、第1内部空所88内の酸素濃度(酸素分圧)がわかるようになっている。さらに、起電力V0が一定となるように可変電源122のポンプ電圧Vp0をフィードバック制御することでポンプ電流Ip0が制御されている。これによって、第1内部空所88内の酸素濃度は所定の一定値に保つことができる。
【0036】
第3拡散律速部90は、第1内部空所88で主ポンプセル110の動作により酸素濃度(酸素分圧)が制御された被測定ガスに所定の拡散抵抗を付与して、該被測定ガスを第2内部空所92に導く部位である。
【0037】
第2内部空所92は、予め第1内部空所88において酸素濃度(酸素分圧)が調整された後、第3拡散律速部90を通じて導入された被測定ガスに対して、さらに補助ポンプセル124による酸素分圧の調整を行うための空間として設けられている。これにより、第2内部空所92内の酸素濃度を高精度に一定に保つことができるため、このガスセンサ10においては精度の高いNOx濃度測定が可能となる。
【0038】
上記補助ポンプセル124は、第2内部空所92の内面に設けられた補助ポンプ電極126と、外側ポンプ電極114(外側ポンプ電極114に限られるものではなく、センサ素子12の外側の適当な電極であれば足りる)と、第2固体電解質層70とによって構成される、補助的な電気化学的ポンプセルである。
【0039】
この補助ポンプ電極126は、上記第1内部空所88内に設けられた内側ポンプ電極112と同様なトンネル形態とされた構造において、第2内部空所92内に配設されている。つまり、第2内部空所92の天井面を与える第2固体電解質層70に対して天井電極部126aが形成され、また、第2内部空所92の底面を与える第1固体電解質層66の上面には、底部電極部126bが直に形成され、そして、それらの天井電極部126aと底部電極部126bとを連結する側部電極部(図示省略)が、第2内部空所92の側壁を与えるスペーサ層68の両壁面にそれぞれ形成されたトンネル形態の構造となっている。なお、補助ポンプ電極126についても、内側ポンプ電極112と同様に、被測定ガス中のNOx成分に対する還元能力を弱めた材料を用いて形成される。
【0040】
補助ポンプセル124においては、補助ポンプ電極126と外側ポンプ電極114との間に所望の電圧Vp1を印加することにより、第2内部空所92内の雰囲気中の酸素を外部空間に汲み出し、あるいは、外部空間から第2内部空所92内に汲み入れることが可能となっている。
【0041】
また、第2内部空所92内における雰囲気中の酸素分圧を制御するために、補助ポンプ電極126と、基準電極102と、第2固体電解質層70と、スペーサ層68と、第1固体電解質層66とによって電気化学的なセンサセル、すなわち、補助ポンプ制御用酸素分圧検出センサセル130が構成されている。
【0042】
なお、この補助ポンプ制御用酸素分圧検出センサセル130にて検出される起電力V1に基づいて電圧制御される可変電源132にて、補助ポンプセル124がポンピングを行う。これにより第2内部空所92内の雰囲気中の酸素分圧は、NOxの測定に実質的に影響がない低い分圧にまで制御されるようになっている。
【0043】
また、これと共に、そのポンプ電流Ip1が、主ポンプ制御用酸素分圧検出センサセル120の起電力V0の制御に用いられるようになっている。具体的には、ポンプ電流Ip1は、制御信号として主ポンプ制御用酸素分圧検出センサセル120に入力され、その起電力V0が制御されることにより、第3拡散律速部90から第2内部空所92内に導入される被測定ガス中の酸素分圧の勾配が常に一定となるように制御されている。NOxセンサとして使用する際は、主ポンプセル110と補助ポンプセル124との働きによって、第2内部空所92内での酸素濃度は約0.001ppm程度の一定の値に保たれる。
【0044】
第4拡散律速部94は、第2内部空所92で補助ポンプセル124の動作により酸素濃度(酸素分圧)が制御された被測定ガスに所定の拡散抵抗を付与して、該被測定ガスを第3内部空所96に導く部位である。第4拡散律速部94は、第3内部空所96に流入するNOxの量を制限する役割を担う。
【0045】
第3内部空所96は、予め第2内部空所92において酸素濃度(酸素分圧)が調整された後、第4拡散律速部94を通じて導入された被測定ガスに対して、被測定ガス中の窒素酸化物(NOx)濃度の測定に係る処理を行うための空間として設けられている。NOx濃度の測定は、主として、第3内部空所96において、測定用ポンプセル140の動作により行われる。
【0046】
測定用ポンプセル140は、第3内部空所96内において、被測定ガス中のNOx濃度の測定を行う。測定用ポンプセル140は、第3内部空所96に面する第1固体電解質層66の上面に直に設けられた測定電極134と、外側ポンプ電極114と、第2固体電解質層70と、スペーサ層68と、第1固体電解質層66とによって構成された電気化学的ポンプセルである。測定電極134は、多孔質サーメット電極である。測定電極134は、第3内部空所96内の雰囲気中に存在するNOxを還元するNOx還元触媒としても機能する。
【0047】
測定用ポンプセル140においては、測定電極134の周囲の雰囲気中における窒素酸化物の分解によって生じた酸素を汲み出して、その発生量をポンプ電流Ip2として検出することができる。
【0048】
また、測定電極134の周囲の酸素分圧を検出するために、第1固体電解質層66と、測定電極134と、基準電極102とによって電気化学的なセンサセル、すなわち、測定用ポンプ制御用酸素分圧検出センサセル142が構成されている。測定用ポンプ制御用酸素分圧検出センサセル142にて検出された起電力V2に基づいて可変電源144が制御される。
【0049】
第2内部空所92内に導かれた被測定ガスは、酸素分圧が制御された状況下で第4拡散律速部94を通じて第3内部空所96の測定電極134に到達することとなる。測定電極134の周囲の被測定ガス中の窒素酸化物は還元されて(2NO→N+O)酸素を発生する。そして、この発生した酸素は測定用ポンプセル140によってポンピングされることとなるが、その際、測定用ポンプ制御用酸素分圧検出センサセル142にて検出された起電力V2が一定となるように可変電源144の電圧Vp2が制御される。測定電極134の周囲において発生する酸素の量は、被測定ガス中の窒素酸化物の濃度に比例するものであるから、測定用ポンプセル140におけるポンプ電流Ip2を用いて被測定ガス中の窒素酸化物濃度が算出されることとなる。
【0050】
また、第2固体電解質層70と、スペーサ層68と、第1固体電解質層66と、第3基板層64と、外側ポンプ電極114と、基準電極102とから電気化学的なセンサセル146が構成されており、このセンサセル146によって得られる起電力Vrefによりセンサ外部の被測定ガス中の酸素分圧を検出可能となっている。
【0051】
さらに、第2固体電解質層70と、スペーサ層68と、第1固体電解質層66と、第3基板層64と、外側ポンプ電極114と、基準電極102とから電気化学的な基準ガス調整ポンプセル150が構成されている。この基準ガス調整ポンプセル150は、外側ポンプ電極114と基準電極102との間に接続された可変電源152が印加する電圧Vp3により制御電流Ip3が流れることで、ポンピングを行う。これにより、基準ガス調整ポンプセル150は、外側ポンプ電極114の周囲の空間(図1のセンサ素子室22)から基準電極102の周囲の空間(大気導入層100)に酸素の汲み入れを行う。可変電源152の電圧Vp3は、制御電流Ip3が所定の値(一定値の直流電流)となるような直流電圧として、予め定められている。
【0052】
このような構成を有するガスセンサ10においては、主ポンプセル110と補助ポンプセル124とを作動させることによって酸素分圧が常に一定の低い値(NOxの測定に実質的に影響がない値)に保たれた被測定ガスが測定用ポンプセル140に与えられる。従って、被測定ガス中のNOxの濃度に略比例して、NOxの還元によって発生する酸素が測定用ポンプセル140より汲み出されることによって流れるポンプ電流Ip2に基づいて、被測定ガス中のNOx濃度を知ることができるようになっている。
【0053】
さらに、センサ素子12は、固体電解質の酸素イオン伝導性を高めるために、センサ素子12を加熱して保温する温度調整の役割を担うヒータ部160を備えている。ヒータ部160は、ヒータコネクタ電極162と、ヒータ164と、スルーホール166と、ヒータ絶縁層168と、圧力放散孔170と、リード線172とを備えている。
【0054】
ヒータコネクタ電極162は、第1基板層60の下面に接する態様にて形成されてなる電極である。ヒータコネクタ電極162を外部電源と接続することによって、外部からヒータ部160へ給電することができるようになっている。
【0055】
ヒータ164は、第2基板層62と第3基板層64とに上下から挟まれた態様にて形成される電気抵抗体である。ヒータ164は、リード線172及びスルーホール166を介してヒータコネクタ電極162と接続されており、該ヒータコネクタ電極162を通して外部より給電されることにより発熱し、センサ素子12を形成する固体電解質の加熱と保温を行う。
【0056】
また、ヒータ164は、第1内部空所88から第3内部空所96の全域に渡って埋設されており、センサ素子12全体を上記固体電解質が活性化する温度に調整することが可能となっている。
【0057】
ヒータ絶縁層168は、ヒータ164の上下面に、アルミナ等の絶縁体によって形成された多孔質アルミナからなる絶縁層である。ヒータ絶縁層168は、第2基板層62とヒータ164との間の電気的絶縁性、及び、第3基板層64とヒータ164との間の電気的絶縁性を得る目的で形成されている。
【0058】
圧力放散孔170は、第3基板層64を貫通し、基準ガス導入空間98に連通するように設けられてなる部位であり、ヒータ絶縁層168内の温度上昇に伴う内圧上昇を緩和する目的で形成されてなる。
【0059】
なお、図2に示した可変電源122、132、144、152等は、実際にはセンサ素子12内に形成された図示しないリード線や図1のコネクタ36及びリード線54を介して、各電極と接続されている。
【0060】
そして、本実施形態は、上述したように、センサ素子12の後端部から露出する電極(図示せず)には、後方に延びる接点部材20が電気的に接続されている。セラミックハウジング16は、センサ素子12の後端部の周囲に設置され、上述した電極とセラミックハウジング16との間に接点部材20がはめ込まれることで、センサ素子12の電極と接点部材20とが圧着して電気的に接続される。すなわち、セラミックハウジング16は、センサ素子12と電気的に接続する接点部材20が装着され、センサ素子12の後端部を保持する。
【0061】
接点部材20は、例えば図3に示すように、センサ素子12の後端部の一主面12aに導出された複数の電極24(第1電極24a、第2電極24b及び第3電極24c)に、例えば圧着等によって、それぞれ電気的に接続された例えば3つの接点部材(第1接点部材20a、第2接点部材20b及び第3接点部材20c)を有する。また、接点部材20は、センサ素子12の後端部の他主面12bに導出された複数の電極(第4電極24d、第5電極24e及び第6電極24f)に、例えば圧着等によって、それぞれ電気的に接続された例えば3つの接点部材(第4接点部材20d、第5接点部材20e及び第6接点部材20f)を有する。
【0062】
各接点部材20の後部は、それぞれ弾性部材58(図1参照)を介して、対応するリード線54に電気的に接続される。弾性部材58は、例えば金属材料にて構成される。
【0063】
また、セラミックハウジング16は、図3に示すように、第1接点部材20a~第6接点部材20fにおける各屈曲部(21a~21f)の後端側が挿通される第1孔55a~第6孔55fを有した絶縁碍子17を備える。
【0064】
例えば図3に示すように、センサ素子12の後端部の一主面12aを水平面としたとき、上記一主面12aのうち、中央に導出された第1電極24aに電気的に接続された第1接点部材20aの後端部は、第1孔55aに挿通されて、対応するリード線に電気的に接続される。同様に、向かって左側に導出された第2電極24bに電気的に接続された第2接点部材20bの後端部は、第2孔55bに挿通されて、対応するリード線に電気的に接続される。さらに、向かって右側に導出された第3電極24cに電気的に接続された第3接点部材20cの後端部は、第3孔55cに挿通されて、対応するリード線に電気的に接続される。
【0065】
特に、第1接点部材20a~第3接点部材20cは、それぞれ屈曲部(21a~21c)を有し、センサ素子12の一主面12aとの接触部分から屈曲部(21a~21c)までの各立ち上がり部分(23a~23c)は、ほぼ直線状となっている。各立ち上がり部分(23a~23c)の長さT1はほぼ一定(例えば3.5mm)である。また、左右の接点部材20b、20cの後端部は、立ち上がり部分23b、23cから対応する第2孔55b、第3孔55cに向かって幅方向に離間した状態となっている。
【0066】
これは、センサ素子12の後端部の他主面12bにおいても同様で、他主面12bを水平面としたとき、上記他主面12bのうち、中央に導出された第4電極24dに電気的に接続された第4接点部材20dの後端部は、第4孔55dに挿通されて、対応するリード線に電気的に接続される。同様に、向かって左側に導出された第5電極24eに電気的に接続された第5接点部材20eの後端部は、第5孔55eに挿通されて、対応するリード線に電気的に接続される。さらに、向かって右側に導出された第6電極24fに電気的に接続された第6接点部材20fの後端部は、第6孔55fに挿通されて、対応するリード線に電気的に接続される。
【0067】
すなわち、第4接点部材20d~第6接点部材20fにおいても、それぞれ屈曲部(21d~21f)を有し、センサ素子12の他主面12bとの接触部分から屈曲部(21d~21f)までの各立ち上がり部分(23d~23f)は、ほぼ直線状となっている。各立ち上がり部分(23d~23f)の長さT1はほぼ一定(例えば3.5mm)である。また、左右の接点部材20e、20fの後端部は、立ち上がり部分23e、23fから第5孔55e、第6孔55fに向かって幅方向に離間した状態となっている。
【0068】
そして、ガスセンサ10を軸方向から断面視した際の第1接点部材20a、第2接点部材20b及び第3接点部材20cの各屈曲部21a、21b及び21cの角度θa(図示を省略)、θb及びθcは、10°~50°が好ましい。これは、第4接点部材20d、第5接点部材20e及び第6接点部材20fにおける各屈曲部21d、21e及び21fの角度θd(図示を省略)、θe及びθfについても同様である。
【0069】
また、第1接点部材20aの後端部と、第2接点部材20bの後端部との離間距離、特に、センサ素子12の幅方向に沿った離間距離Waは、2.00~3.00mmであることが好ましい。これは、第1接点部材20aの後端部と、第3接点部材20cの後端部との離間距離Wbについても同様である。
【0070】
また、第4接点部材20dの後端部と、第5接点部材20eの後端部との離間距離、特に、センサ素子12の幅方向に沿った離間距離Wcは、2.00~3.00mmであることが好ましい。これは、第4接点部材20dの後端部と、第6接点部材20fの後端部との離間距離Wdについても同様である。
【0071】
さらに、第1接点部材20a~第6接点部材20fにおける各立ち上がり部分23a~23fの各長さは、センサ素子12の厚みの1.5~3.0倍であることが好ましい。すなわち、センサ素子12の表面(一主面12a)から第1接点部材20a~第3接点部材20cの各屈曲部21a~21cまでの厚み方向の距離、並びにセンサ素子12の表面(他主面12b)から第4接点部材20d~第6接点部材20fの各屈曲部21d~21fまでの厚み方向の距離をT1とし、センサ素子12の厚みをT2としたとき、比T1/T2が1.5~3.0であることが好ましい。
【0072】
また、図3に示すように、第1接点部材20a~第3接点部材20cのうち、左右の第2接点部材20b及び第3接点部材20cと中央の第1接点部材20aは、それぞれセンサ素子12の長手方向にずれて配置されていることが好ましい。すなわち、中央の第1接点部材20aをセンサ素子12の先端寄りに配置し、左右の第2接点部材20b及び第3接点部材20cをセンサ素子12の後端寄りに配置することが好ましい。これは、第4接点部材20d~第6接点部材20fについても同様である。
【実施例
【0073】
ここで、1つの実験例を示す。この実験例は、実施例1~8に係るガスセンサと、比較例1~5に係るガスセンサを用意し、各ガスセンサについて、加熱振動試験でのシグナルモニタによる短絡の有無と、接点部品の異常の有無をチェックした。
【0074】
加熱振動試験は、振動試験機に設置したプロパンバーナーの排気管にガスセンサを取り付けた状態で、以下の条件にて行った。
ガス温度:900℃
振動条件:50Hz→100Hz→150Hz→250Hzを30分掃引
加速度:50G、40G、50G
試験時間:150時間
【0075】
[判定方法]
判定1:加熱振動試験中に接点不良を起因とした信号変化の有無を調査した。この場合、センサ信号の安定時から10%を超える乱れがあった場合に接点不良を起因としたセンサ信号の乱れありと判定した。
【0076】
そして、判定1での判定基準は以下の通りである。
A:加熱振動試験中に接点不良を起因としたセンサ信号(Ip2)の乱れがなかった。
B:加熱振動試験中に接点不良を起因としたセンサ信号(Ip2)の乱れがあった。
【0077】
判定2:加熱振動試験後の接点部品の異常を確認した。ガスセンサを解体して観察を実施した。観察は、接点部付近に欠け等の外観上の不良が発生しているか否かを確認した。判定2での判定基準は以下の通りである。
A:欠け発生なし。
B:欠け発生あり。
【0078】
判定3:加熱振動試験後の接点チェックを実施した。接点部材の後端部の接触による異常信号の発生の有無を確認した。判定3での判定基準は以下の通りである。
A:異常信号の発生なし(正常信号)。
B:異常信号の発生あり。
【0079】
[実施例1]
実施例1は、左右両側の第2接点部材20b及び第3接点部材20cの各屈曲部21b及び21cの角度θb及びθcが10°である。同様に、左右両側の第5接点部材20e及び第6接点部材20fの各屈曲部21e及び21fの角度θe及びθfが10°である。
【0080】
また、第1接点部材20aの後端部と第2接点部材20bの後端部との離間距離Wa、並びに、第1接点部材20aの後端部と第3接点部材20cの後端部との離間距離Wbが共に2.00mmである。
【0081】
同様に、第4接点部材20dの後端部と第5接点部材20eの後端部との離間距離Wc、並びに、第4接点部材20dの後端部と第6接点部材20fの後端部との離間距離Wdが共に2.00mmである。
【0082】
[実施例2]
実施例2は、上述した角度θb及びθcが10°であり、角度θe及びθfが10°である。また、上述した離間距離Wa及びWbが共に3.00mmであり、離間距離Wc及びWdが共に3.00mmである。
【0083】
[実施例3]
実施例3は、上述した角度θb及びθcが20°であり、角度θe及びθfが20°である。また、上述した離間距離Wa及びWbが共に2.00mmであり、離間距離Wc及びWdが共に2.00mmである。
【0084】
[実施例4]
実施例4は、上述した角度θb及びθcが20°であり、角度θe及びθfが20°である。また、上述した離間距離Wa及びWbが共に3.00mmであり、離間距離Wc及びWdが共に3.00mmである。
【0085】
[実施例5]
実施例5は、上述した角度θb及びθcが30°であり、角度θe及びθfが30°である。また、上述した離間距離Wa及びWbが共に2.00mmであり、離間距離Wc及びWdが共に2.00mmである。
【0086】
[実施例6]
実施例6は、上述した角度θb及びθcが30°であり、角度θe及びθfが30°である。また、上述した離間距離Wa及びWbが共に3.00mmであり、離間距離Wc及びWdが共に3.00mmである。
【0087】
[実施例7]
実施例7は、上述した角度θb及びθcが50°であり、角度θe及びθfが50°である。また、上述した離間距離Wa及びWbが共に2.00mmであり、離間距離Wc及びWdが共に2.00mmである。
【0088】
[実施例8]
実施例8は、上述した角度θb及びθcが50°であり、角度θe及びθfが50°である。また、上述した離間距離Wa及びWbが共に3.00mmであり、離間距離Wc及びWdが共に3.00mmである。
【0089】
[比較例1]
比較例1は、上述した角度θb及びθcが0°であり、角度θe及びθfが0°である。すなわち、屈曲部が存在せず、一直線上にリード線に接続した形態である。また、上述した離間距離Wa及びWbは共に1.50mmであり、離間距離Wc及びWdは共に1.50mmである。
【0090】
[比較例2]
比較例2は、上述した角度θb及びθcが5°であり、角度θe及びθfが5°である。また、上述した離間距離Wa及びWbが共に2.00mmであり、離間距離Wc及びWdが共に2.00mmである。
【0091】
[比較例3]
比較例3は、上述した角度θb及びθcが60°であり、角度θe及びθfが60°である。また、上述した離間距離Wa及びWbが共に2.00mmであり、離間距離Wc及びWdが共に2.00mmである。
【0092】
[比較例4]
比較例4は、上述した角度θb及びθcが50°であり、角度θe及びθfが50°である。また、上述した離間距離Wa及びWbが共に1.75mmであり、離間距離Wc及びWdが共に1.75mmである。
【0093】
[比較例5]
比較例5は、上述した角度θb及びθcが10°であり、角度θe及びθfが10°である。また、上述した離間距離Wa及びWbが共に1.75mmであり、離間距離Wc及びWdが共に1.75mmである。
【0094】
上述した実施例1~8並びに比較例1~5の判定結果を内訳と共に、図4の表1に示す。
【0095】
表1の結果から、左右両側の第2接点部材20b及び第3接点部材20cの各屈曲部21b及び21cの角度θb及びθcが10°~50°であることが好ましい。同様に、左右両側の第5接点部材20e及び第6接点部材20fの各屈曲部21e及び21fの角度θe及びθfが10°~50°であることが好ましい。
【0096】
また、第2接点部材20bと第2リード線54bとの接続部分と、第1接点部材20aと第1リード線54aとの接続部分との離間距離Wa、第3接点部材20cと第3リード線54cとの接続部分と、第1接点部材20aと第1リード線54aとの接続部分との離間距離Wbが共に2.0~3.0mmであることが好ましい。
【0097】
同様に、第5接点部材20eと第5リード線54eとの接続部分と、第4接点部材20dと第4リード線54dとの接続部分との離間距離Wc、第6接点部材20fと第6リード線54fとの接続部分と、第4接点部材20dと第4リード線54dとの接続部分との離間距離Wdが共に2.0~3.0mmであることが好ましい。
【0098】
[考察]
上述の実験例から、各接点部材の屈曲部に角度を持たせて、各接点部材の後端部を互いに一定距離だけ離間させることで、接点ずれの防止、過剰応力が発生したときのクラック発生の防止に寄与する。
【0099】
また、信号等に影響がない程度のずれ、例えば接点部材が傾く等のずれが発生した際に、接点部材が互いに接することによる短絡を防止することができる。ガスセンサの電極との接点部分は多少ずれても短絡等の問題はほとんど生じないが、ガスセンサの後端部では、位置ずれによって接点部材同士が接触するおそれがある。
【0100】
すなわち、各屈曲部の角度が小さすぎると、接点部に衝撃が加わった際に、過剰圧力により、クラックが発生するおそれがある。各屈曲部の角度が大き過ぎると、左右の接点部材からセンサ素子の表面にかかる応力が小さくなり、接点ずれが起きやすくなる。
【0101】
[本実施形態から得られる発明]
上記実施形態から把握しうる発明について、以下に記載する。
【0102】
[1-1] 本実施形態に係るガスセンサ10は、センサ素子12と、センサ素子12の後端部を保持し、センサ素子12と電気的に接続する複数の接点部材(20a~20f)と、を有し、複数の接点部材(20a~20f)は、センサ素子12の表面から離間した位置に、それぞれ少なくとも1つの屈曲部(21a~21f)を有する。
【0103】
複数の接点部材(20a~20f)がそれぞれ屈曲部(21a~21f)を有することで、センサ素子12に加わる力を平均化することができ、局部的に力が加わることを回避することができる。これは、接点不良や接触不良等の不具合の発生を防止できることにつながる。特に、接点部材同士の短絡を防止することができる。
【0104】
[1-2] 本実施形態において、センサ素子12の表面と接点部材(20a~20f)との接点から屈曲部(21a~21f)までがほぼ直線状である。
【0105】
これにより、センサ素子12と接点部材(20a~20f)が一軸で接触していることで、安定な導通を確保することができ、接点部のずれを防止することができる。また、センサ素子12に対する複数の接点部材(20a~20f)からの力の付与が平均化され、しかも、同一方向からの荷重付与になることから、センサ素子12の傾きやずれ等を防止することができる。これは接点不良の防止にもつながる。
【0106】
[1-3] 本実施形態において、センサ素子12の表面から複数の屈曲部(21a~21f)までの各距離は、ほぼ一定である。これにより、複数の接点部材(20a~20f)によって、センサ素子12を安定に保持することができ、センサ素子12のずれや、外れ等の不具合を防止することができる。
【0107】
[1-4] 本実施形態において、複数の接点部材(20a~20f)のうち、左右両側の接点部材(20b、20c、20e、20f)の後端部は、センサ素子12への接点位置より、センサ素子12の幅方向において離間している。
【0108】
接点部材(20a~20f)の屈曲部(21a~21f)に角度を持たせることができ、しかも、接点部材(20a~20f)の後端部を互いに一定距離だけ離間させることができるため、接点ずれを防止することができ、過剰応力が発生したときのクラック発生を防止することができる。
【0109】
[2] 本実施形態において、センサ素子12の一主面12aに対して、3本の接点部材(20a~20c)が設置され、センサ素子12の他主面12bに対して、他の3本の接点部材(20d~20f)が設置されている。
【0110】
センサ素子12を一対の接点部材で挟み込む形態を左右方向に3組で実施することができ、安定な導通を確保することができ、接点部のずれを防止することができる。
【0111】
[3] 本実施形態において、左右両側の接点部材(20a~20f)の屈曲部(21a~21f)の角度(θa~θf)が10°~50°である。角度が小さすぎると、接点部に衝撃が加わった際の過剰圧力によって、センサ素子12にクラックが発生するおそれがある。反対に、角度が大きすぎると、左右の接点部材からセンサ素子12の表面にかかる応力が小さくなり、接点ずれが生じやすい。
【0112】
[4] 本実施形態において、ガスセンサ10は、接点部材(20a~20f)における屈曲部(21a~21f)の後端側が挿通される孔(55a~55f)を有した絶縁碍子(17)を備え、3本の前記接点部材(20a~20c(20d~20f))のうち、中央の接点部材(20a(20d))が挿通される絶縁碍子17の孔(55a(55d))から左右の接点部材(20b、20c(20e、20f))が挿通される絶縁碍子17の孔(55b、55c(55e、55f))までの距離が2.0~3.0mmである。
【0113】
距離が小さすぎると、接点部に衝撃が加わった際の過剰圧力によって、センサ素子12にクラックが発生するおそれがある。反対に、距離が大きすぎると、左右の接点部材からセンサ素子12の表面にかかる応力が小さくなり、接点ずれが生じやすい。
【0114】
[5] 本実施形態において、3本の接点部材(20a~20c(20d~20f))のうち、中央の接点部材(20a(20d))と、左右の接点部材(20b、20c(20e、20f))は、それぞれセンサ素子12の長手方向にずれて配置されている。これにより、接点ずれが生じた場合の短絡を防止することができる。
【0115】
[6] 本実施形態において、センサ素子12の表面から接点部材(20a~20f)の屈曲部(21a~21f)までの厚み方向の距離をT1、センサ素子12の厚みをT2としたとき、比T1/T2が1.5~3.0である。比T1/T2を上記の範囲とすることで、安定した接点強度を確保することができる。
【0116】
なお、センサ素子12と接点部材(20a~20f)の屈曲部(21a~21f)までの距離が短い場合(比T1/T2<1.5)、振動により応力が加わった際に、応力を緩和できる遊びの部分が無く、センサ素子12に過剰に応力がかかり、クラックが発生する場合がある。
【0117】
一方、センサ素子12と接点部材(20a~20f)の屈曲部(21a~21f)までの距離が長い場合(T1/T2>3.0)、接点強度が下がり、接点部(立ち上がり部分(23a~23f)と電極(24a~24f)との接点)のズレが発生しやすくなる。結果として、短絡が発生する場合がある。
【0118】
なお、本発明の実施に当たっては、本発明の思想を損なわない範囲で自動車用部品としての信頼性向上のための諸手段が付加されてもよい。
【符号の説明】
【0119】
10…ガスセンサ 12…センサ素子
12a…一主面 12b…他主面
16…セラミックハウジング 17…絶縁碍子
18…センサ組立体 20…接点部材
20a~20f…第1接点部材~第6接点部材
21a~21f…屈曲部 23a~23f…立ち上がり部分
24a~24f…第1電極~第6電極 55a~55f…第1孔~第6孔
図1
図2
図3
図4