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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-04
(45)【発行日】2023-12-12
(54)【発明の名称】直動機構
(51)【国際特許分類】
   B25J 18/02 20060101AFI20231205BHJP
【FI】
B25J18/02
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019197858
(22)【出願日】2019-10-30
(65)【公開番号】P2021070092
(43)【公開日】2021-05-06
【審査請求日】2022-07-20
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002103
【氏名又は名称】弁理士法人にじいろ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松本 邦保
【審査官】稲垣 浩司
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-9765(JP,A)
【文献】特開2001-205582(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00 - 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
相互に移動自在であって、多段入れ子構造に組まれた複数の筒状体と、
前記筒状体の内部に収容される複数のシャフトと、
前記複数のシャフトにそれぞれ移動自在に係合される複数のスライダと、を具備し、
前記複数の筒状体のうち隣り合う筒状体の一方に前記シャフトが固定され、
前記隣り合う筒状体の他方に前記スライダが固定され、
前記複数のシャフトは前記筒状体の内部であって、前記筒状体の円筒中心線からずれた位置にまとめて配置される、直動機構。
【請求項2】
前記筒状体の内部の、前記円筒中心線を挟んで前記円筒中心線からずれた位置の反対側には前記複数の筒状体の移動を駆動する駆動機構が収容される、請求項1記載の直動機構。
【請求項3】
前記複数の筒状体は、前記複数のシャフトと前記複数のスライダとにより水平方向に沿って移動自在であり、
前記複数のシャフトは、前記筒状体の内部の上半分の範囲内にまとめて配置される、
請求項1又は請求項2記載の直動機構。
【請求項4】
前記複数の筒状体のうち最後段の筒状体に固定される特定のシャフトは、他のシャフトよりも径が太く、且つ前記他のシャフトよりも上側に配置される、請求項3記載の直動機構。
【請求項5】
前記シャフトは前記スライダとともにボールスプライン機構を構成する請求項1乃至4のいずれか一項記載の直動機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直動機構に関する。
【背景技術】
【0002】
ロボット装置に伸縮性に富むテレスコピック構造のアームが採用されることがある。テレスコピック構造アームは、径の異なる複数の円筒部材が入れ子構造に組まれてなる。テレスコピック構造アームには小型、軽量、高剛性、防塵・防滴性が求められている。
【0003】
円筒部材が相対的に移動するテレスコピック構造アームでは、伸縮時の摺動抵抗を低く抑えるため、摺動部に隙間が必要とされる。この隙間は摺動性を確保するために不可欠である一方でアーム全体の剛性を低下させる。またテレスコピック構造アームは多段の直動レールと、この外周をカバーで覆う構造が一般的である。この構造で剛性を高めるためには直動レールを太くする必要があり、これに合わせて外周のカバー外径も大きくなり、従ってアーム全体が大きく、重くなる課題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ロボットアームなどに適用可能な直動機構において、剛性の向上を、機構の大型化を抑えながら実現することが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様に係る直動機構は、相互に移動自在に縦続される複数の直動要素と、複数の直動要素のうち隣り合う直動要素の一方に固定されるシャフトと、シャフトに対して移動自在に係合され、隣り合う直動要素の他方に固定されるスライダとを具備する。
【発明の効果】
【0006】
一態様によれば、ロボットアームなどに適用可能な直動機構において、剛性の向上を、機構の大型化を抑えながら実現され得る。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、一実施形態に係る収縮時の直動機構の斜視図である。
図2図2は、伸長時の直動機構の斜視図である。
図3図3は、図2の直動機構の正面図である。
図4図4は、図3のA-A´断面図である。
図5図5は、図4の直動機構の収縮時の状態を示す図である。
図6図6は、図3のB-B´断面図である。
図7図7は、図6の直動機構の収縮時の状態を示す図である。
図8図8は、図3のC-C´断面図である。
図9図9は、図8の直動機構の収縮時の状態を示す図である。
図10図10は、図1のアーム構造の変形例を示す斜視図である。
図11図11は、図10の直動機構の伸長時を示す斜視図である。
図12図12は、図11の直動機構の正面図である。
図13図13は、図12のD-D´断面図である。
図14図14は、図13の直動機構の収縮時の状態を示す図である。
図15図15は、図12のE-E´断面図である。
図16図16は、図15の直動機構の収縮時の状態を示す図である。
図17図17は、図12のF-F´断面図である。
図18図18は、図17の直動機構の収縮時の状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら本実施形態に係る直動機構を説明する。以下の説明において、略同一の機能及び構成を有する構成要素については、同一符号を付し、重複説明は必要な場合にのみ行う。本実施形態に係る直動機構は、それ単独で使用することができるし、ロボットアーム機構の直動伸縮関節のアーム部(可動部)としても使用することができるものである。
【0009】
図1図2に示すように、直動機構1は板状のベース部90とベース部90に支持される伸縮自在なアーム部10とを有する。アーム部10は、相互に移動自在に縦続される複数の直動要素からなる。本実施形態では直動要素として円筒体を例に説明する。アーム部10は、テレスコピック構造(多段入れ子構造)に強固に組まれた複数、ここでは4つの円筒体11,13,15,17により構成される。なお、アーム部10を構成する筒体は角筒形状であってもよい。
【0010】
図4乃至図9に示すように、ベース部90には、最後尾の円筒体11がその後端フランジにおいて固定される。最後尾の円筒体11には、その先端の内周面に設けられたすべり軸受21を介して円筒体13が移動自在に接続される。円筒体13には、その先端の内周面に設けられたすべり軸受23を介して円筒体15が移動自在に接続される。円筒体15には、その先端の内周面に設けられたすべり軸受25を介して先頭の円筒体17が接続される。隣接する2つの円筒体をすべり軸受を介して接続する構造を採用することにより、アーム部10の全体が太くなるのを抑制するとともに、アーム部10の防水、防塵機能を向上させる効果を奏する。
【0011】
上記のテレスコピック構造をなすアーム部10は、円筒中心線CL1に沿って前後に伸縮することができる。テレスコピック構造を採用しているため、アーム部10は、それ自体でもある程度の剛性を有する。しかしながら、例えば、長い伸縮長が要求される場合や、重量物をピッキングするロボットアーム機構に採用される場合など、アーム部10には、さらなる剛性向上が要求される。本実施形態では、テレスコピック構造をなすアーム部10の剛性をさらに向上させるための補強構造を備える。典型的には、補強構造はボールスプライン機構により構成される。ボールスプライン機構は、隣接する2つの円筒体の間に介在される。なお、本実施形態では、剛性確保の観点から、補強構造としてボールスプライン機構を採用したが、レールとレールに係合するスライダからなる直動機構など他の直動機構を採用することができる。
【0012】
具体的には、図4に示すように、第1ボールスプライン機構を構成する第1スプラインシャフト41は、円筒中心線CL1と平行な向きにその後端がベース部90に固定され、第1スプラインシャフト41に挿入される第1スプラインナット42は円筒体13の後端縁に連結された第1連結板33に固定される。それにより、円筒体11に対する円筒体13の移動に従動して、第1スプラインナット42は第1スプラインシャフト41に対して移動することができる。
【0013】
図6に示すように、第2ボールスプライン機構を構成する第2スプラインシャフト43は、円筒中心線CL1と平行な向きにその後端が第1連結板33に固定され、第2スプラインシャフト43に挿入される第2スプラインナット44は円筒体15の後端縁に連結された第2連結板35に固定される。それにより、円筒体13に対する円筒体15の移動に従動して、第2スプラインナット44は第2スプラインシャフト43に対して移動することができる。
【0014】
図8に示すように、第3ボールスプライン機構を構成する第3スプラインシャフト45は、円筒中心線CL1と平行な向きにその後端が第2連結板35に固定され、第3スプラインシャフト45に挿入される第3スプラインナット46は円筒体17の後端縁に連結された第3連結板37に固定される。それにより、円筒体15に対する円筒体17の移動に従動して、第3スプラインナット46は第3スプラインシャフト45に対して移動することができる。
【0015】
図5図7図9に示すように、アーム部10を収縮させたときに、第1ボールスプライン機構を第2連結板35、第3連結板37に衝突させないために、図4に示すように、第2連結板35と第3連結板37とには、開孔351、371がそれぞれあけられている。開孔351、371は、第1スプラインシャフト41の中心線上の位置に、第1ボールスプライン機構を通過させるために必要な大きさにそれぞれ形成される。アーム部10を収縮させたときに、第2ボールスプライン機構を第3連結板37に衝突させないために、図6に示すように、第3連結板37には他の開孔372があけられている。他の開孔372は、第2スプラインシャフト43の中心線上の位置に、第2ボールスプライン機構を通過させるために必要な大きさに形成される。
【0016】
なお、図に示すように、第1、第2、第3スプラインシャフト41,43,45は、円筒中心線CL1からずれた位置にまとめて配置されることが望ましい。それにより空いたスペースにアーム部10の伸縮動作を実現する駆動機構を収容することができ、アーム部10の大型化を抑えることができる。アーム部10の駆動機構としては、ブロック列の送り出し/引き戻し機構、ラックアンドピニオン機構、ボールネジ機構など任意の機構が採用される。
【0017】
なお、図4図6図8に示すように、アーム部10の根本側のベース部90に固定された第1スプラインシャフト41の径R1は、第2、第3スプラインシャフト43,45の径R2,R3よりも太く構成することが望ましい。アーム部10に対して最も負荷がかかるベース側の第1スプラインシャフト41を太くすることは、アーム部10の根本部分の剛性を向上させることに寄与する。同様に、アーム部10の先端側の第3スプラインシャフト45の径R3は、第1、第2スプラインシャフト41,43の径R1,R2よりも細く構成することが望ましい。アーム部10に対して最も負荷がかからない先端側の第3スプラインシャフト45を細くすることは、直動機構の軽量化に寄与する。
【0018】
以上説明した直動機構1によれば、アーム部10にかかる負荷をテレスコピック構造をなす複数の円筒体11,13,15,17と複数のボールスプライン機構との2種類の機構に分散させることができ、また、複数のボールスプライン機構はアーム部10の内部に収容することができるため、テレスコピック構造のアーム部10を大型化することなく剛性の向上を実現することができる。もちろん、アーム部10の補強として追加したボールスプライン機構はテレスコピック構造と同様に直動機構であるため、アーム部10の直動運動を阻害することはない。
【0019】
なお、直動機構のアーム部の構造はテレスコピック構造に限定されることはない。例えば、アーム部を構成する直動要素は円筒体ではなくリニアガイドとリニアガイドに沿って移動する移動体からなるものであってもよい。変形例では、リニアガイドとして円柱形状のポール、移動体として板状の移動板を例に説明する。
【0020】
図10図11に示すように、変形例に係る直動機構2は板状のベース部100とベース部100に支持される伸縮自在なアーム部50とを有する。アーム部50は、複数、ここでは4本のポール51,53,55,57と隣接する2つのポールを接続する複数の移動板73,75,77からなる。
【0021】
図13乃至図18に示すように、複数のポール51,53、55,57のうち、最後尾のポール51は、特定の軸(移動軸)CL2と平行な向きにその後端がベース部100に固定される。最後尾のポール51にはすべり軸受63を介して第1移動板73が移動自在に接続される。この第1移動板73には、ポール53の後端が移動軸CL2と平行な向きに固定される。ポール53にはすべり軸受65を介して第2移動板75が移動自在に接続される。この第2移動板75にはポール55の後端が移動軸CL2と平行な向きに固定される。ポール55にはすべり軸受67を介して第3移動板77が移動自在に接続される。この第3移動板77には先頭のポール57の後端が移動軸CL2と平行な向きに固定される。
【0022】
上記のように構成されたアーム部50は、移動軸CL2に沿って前後に伸縮することができる。ポールと移動板との間にはすべり軸受が介在されているため、アーム部50は、それ自体でもある程度の剛性を有する。直動機構2は、アーム部50の剛性をさらに向上させるための補強構造として複数のボールスプライン機構を備える。ボールスプライン機構は、隣接する2つの移動板の間に介在される。
【0023】
図13に示すように、第1ボールスプライン機構を構成する第1スプラインシャフト81は、移動軸CL2と平行な向きにその後端がベース部100に固定され、第1スプラインシャフト81に挿入される第1スプラインナット82は第1移動板73に固定される。図15に示すように、第2ボールスプライン機構を構成する第2スプラインシャフト83は、移動軸CL2と平行な向きにその後端が第1移動板73に固定され、第2スプラインシャフト83に挿入される第2スプラインナット84は第2移動板75に固定される。図17に示すように、第3ボールスプライン機構を構成する第3スプラインシャフト85は、移動軸CL2と平行な向きにその後端が第2移動板75に固定され、第3スプラインシャフト85に挿入される第3スプラインナット86は第3移動板77に固定される。
【0024】
図14図16図18に示すように、アーム部50を収縮させたときに、第1ボールスプライン機構とポール51とを第2移動板75、第3移動板77に衝突させないために、図13に示すように、第2移動板75には開孔751,752があけられ、第3移動板77には開孔771、772があけられている。開孔752、772は、第1スプラインシャフト81の中心線上の位置に、第1ボールスプライン機構を通過させるために必要な大きさにそれぞれ形成される。開孔751,771は、ポール51の中心線上の位置に、ポール51を通過させるために必要な大きさにそれぞれ形成される。アーム部50を収縮させたときに、第2ボールスプライン機構とポール53とを第3移動板77に衝突させないために、図15に示すように、第3移動板77には他の開孔773,774があけられている。開孔774は、第2スプラインシャフト83の中心線上の位置に、第2ボールスプライン機構を通過させるために必要な大きさに形成される。他の開孔773は、ポール53の中心線上の位置に、ポール53を通過させるために必要な大きさに形成される。
【0025】
なお、図12に示すように、第1、第2、第3スプラインシャフト818385は、移動軸CL2を中心とした円周上に等間隔に配置されている。それにより、アーム部50の重量バランスを取りながら、ねじり剛性を向上させることができる。また、図12に示すように、移動軸CL2に近接してポール及びボールスプライン機構を配置することで、アーム部50の大型化を抑えることができる。
【0026】
もちろん、アーム部50の剛性を向上させるためにアーム部50の根本に相当するベース部100に固定された第1スプラインシャフト81は第2、第3スプラインシャフト83,85よりも太く構成されることが望ましい。また、直動機構を軽量化するために、アーム部50の先端に相当する第3スプラインシャフト85は第1、第2スプラインシャフト81,83よりも細く構成されることが望ましい。
【0027】
以上説明した直動機構2によれば、アーム部50にかかる負荷を縦続される複数の直動要素(ポールと移動板)と複数のボールスプライン機構との2種類の機構に分散させることができ、また、複数のボールスプライン機構を移動軸CL2に近接して配置することができるため、アーム部50を大型化することなく剛性の向上を実現することができる。
【0028】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0029】
1…直動機構、10…アーム部、11,13,15,17…円筒体、41,43,45…スプラインシャフト、42,44,46…スプラインナット、90…ベース部、CL1…円筒中心線。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18