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特許7396864好ましくは色位置が調整可能または調整された照明装置、および照明装置の使用、ならびに照明装置の色位置を調整するための方法
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  • 特許-好ましくは色位置が調整可能または調整された照明装置、および照明装置の使用、ならびに照明装置の色位置を調整するための方法 図1
  • 特許-好ましくは色位置が調整可能または調整された照明装置、および照明装置の使用、ならびに照明装置の色位置を調整するための方法 図2
  • 特許-好ましくは色位置が調整可能または調整された照明装置、および照明装置の使用、ならびに照明装置の色位置を調整するための方法 図3
  • 特許-好ましくは色位置が調整可能または調整された照明装置、および照明装置の使用、ならびに照明装置の色位置を調整するための方法 図4
  • 特許-好ましくは色位置が調整可能または調整された照明装置、および照明装置の使用、ならびに照明装置の色位置を調整するための方法 図5
  • 特許-好ましくは色位置が調整可能または調整された照明装置、および照明装置の使用、ならびに照明装置の色位置を調整するための方法 図6
  • 特許-好ましくは色位置が調整可能または調整された照明装置、および照明装置の使用、ならびに照明装置の色位置を調整するための方法 図7
  • 特許-好ましくは色位置が調整可能または調整された照明装置、および照明装置の使用、ならびに照明装置の色位置を調整するための方法 図8
  • 特許-好ましくは色位置が調整可能または調整された照明装置、および照明装置の使用、ならびに照明装置の色位置を調整するための方法 図9
  • 特許-好ましくは色位置が調整可能または調整された照明装置、および照明装置の使用、ならびに照明装置の色位置を調整するための方法 図10
  • 特許-好ましくは色位置が調整可能または調整された照明装置、および照明装置の使用、ならびに照明装置の色位置を調整するための方法 図11
  • 特許-好ましくは色位置が調整可能または調整された照明装置、および照明装置の使用、ならびに照明装置の色位置を調整するための方法 図12
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-04
(45)【発行日】2023-12-12
(54)【発明の名称】好ましくは色位置が調整可能または調整された照明装置、および照明装置の使用、ならびに照明装置の色位置を調整するための方法
(51)【国際特許分類】
   F21V 9/32 20180101AFI20231205BHJP
   F21S 2/00 20160101ALI20231205BHJP
   F21S 41/16 20180101ALI20231205BHJP
   F21S 41/176 20180101ALI20231205BHJP
   F21V 9/08 20180101ALI20231205BHJP
   F21V 7/30 20180101ALI20231205BHJP
   G02B 5/20 20060101ALI20231205BHJP
   F21W 107/20 20180101ALN20231205BHJP
   F21W 107/30 20180101ALN20231205BHJP
   F21W 131/105 20060101ALN20231205BHJP
   F21W 131/406 20060101ALN20231205BHJP
   F21Y 115/30 20160101ALN20231205BHJP
   F21W 102/00 20180101ALN20231205BHJP
【FI】
F21V9/32
F21S2/00 311
F21S2/00 390
F21S2/00 621
F21S2/00 623
F21S2/00 660
F21S41/16
F21S41/176
F21V9/08 200
F21V7/30
G02B5/20
F21W107:20
F21W107:30
F21W131:105
F21W131:406
F21Y115:30
F21W102:00
【請求項の数】 18
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019201407
(22)【出願日】2019-11-06
(65)【公開番号】P2020077639
(43)【公開日】2020-05-21
【審査請求日】2022-08-03
(31)【優先権主張番号】10 2018 127 831.4
(32)【優先日】2018-11-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】504299782
【氏名又は名称】ショット アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】SCHOTT AG
【住所又は居所原語表記】Hattenbergstr. 10, 55122 Mainz, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】アルブレヒト ザイドル
(72)【発明者】
【氏名】フォルカー ハーゲマン
(72)【発明者】
【氏名】エトガー パヴロフスキ
(72)【発明者】
【氏名】フランク ギンデレ
【審査官】安食 泰秀
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/027373(WO,A1)
【文献】特開2013-235742(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21V 9/32
F21S 2/00
F21S 41/16
F21S 41/176
F21V 9/08
F21V 7/30
G02B 5/20
F21W 107/20
F21W 107/30
F21W 131/105
F21W 131/406
F21Y 115/30
F21W 102/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
好ましくは色位置または色温度が調整可能または調整された照明装置であって、
前記照明装置は、少なくとも1つのレーザ光源と、前記少なくとも1つのレーザ光源に対応付けられた光変換要素と、を含み、
前記少なくとも1つのレーザ光源は、光放射を出射するように構成されており、
前記光変換要素は、前記少なくとも1つのレーザ光源によって生成される少なくとも1つの光放射の光路上に配置されており、
これによって、好ましくは、前記少なくとも1つのレーザ光源と前記光変換要素との間に配置された少なくとも1つの光学要素および/または光学部品により、好ましくは所定のサイズを有するレーザ光スポットが、前記光変換要素のうちの入射光放射に向いた側において照明されるように、前記少なくとも1つのレーザ光源から放出された光放射の少なくとも一部が、前記光変換要素に向けられ、
前記光変換要素は、入射レーザ光の散乱、吸収および変換によってより長い波長の光を放出して散乱させる材料を含み、
前記光変換要素のうちの前記入射光放射に向いた側では、前記入射光放射の波長と同じ波長の光を有する、前記レーザ光スポットよりも大きい一次放出光スポットが生成されると共に、より長い波長の光を有する、前記一次放出光スポットよりも大きい二次放出光スポットが生成され、
前記照明装置のために使用される有用光スポットは、前記二次放出光スポットの一部のみを含む、
照明装置。
【請求項2】
前記入射光放射によって前記光変換要素上に照明される前記レーザ光スポットは、最小で5μm、最大で1000μmの間の直径、好ましくはFWHM直径のような寸法を有し、
前記レーザ光スポットよりも大きい一次放出光スポットが生成されると共に、より長い波長の光を有する、前記一次放出光スポットよりも大きい二次放出光スポットが生成され、
前記一次放出光スポットに対する前記二次放出光スポットの寸法、とりわけ直径、とりわけ好ましくはFWHM直径の比は、1.1~10の間、好ましくは1.5~5の間、特に好ましくは1.8~3の間である、
請求項1記載の照明装置。
【請求項3】
前記照明装置のために使用される前記有用光スポットの寸法、とりわけ直径、とりわけ好ましくはFWHM直径は、前記一次放出光スポットの寸法、とりわけ直径、とりわけ好ましくはFWHM直径よりも大きく、それと同時に、前記二次放出光スポットの寸法、とりわけ直径、とりわけ好ましくはFWHM直径よりも小さい、
請求項1または2記載の照明装置。
【請求項4】
有用光の色位置は、以下の点:
cx cy
0.310 0.348
0.310 0.382
0.443 0.382
0.500 0.440
0.500 0.440
0.443 0.348
0.310 0.332
によって囲まれた範囲内の座標cxおよびcyを有する、
請求項1から3までのいずれか1項記載の照明装置。
【請求項5】
有用光の色温度は、1500Kと10000Kとの間、好ましくは3000Kと10000Kとの間、特に好ましくは3000Kと8000Kとの間である、
請求項1から4までのいずれか1項記載の照明装置。
【請求項6】
前記レーザ光源は、0.1ワットから10ワットの出力を有する1つのレーザダイオードであるか、
または
前記レーザ光源は、複数のレーザダイオードの配列を含み、前記複数のレーザダイオードのレーザ光は、光学装置によって全体的または部分的に束ねられ、
好ましくは、1つまたは複数の前記レーザダイオードの光は、光学装置によって複数のレーザ放射に分割され、前記複数のレーザ放射が、それぞれ異なる方向から前記光変換要素上に入射して、そこで一緒に前記レーザ光スポットを形成する、
請求項1から5までのいずれか1項記載の照明装置。
【請求項7】
前記レーザ光スポットにおいて前記変換要素上に入射する放射は、0.1ワットから1000Wの放射出力、好ましくは0.5ワットから500ワットの放射出力、特に好ましくは1ワットから100ワットの放射出力を有する、
請求項1から6までのいずれか1項記載の照明装置。
【請求項8】
前記レーザ光スポットにおいて前記変換要素上に入射する放射は、0.1W/mmから500W/mm、好ましくは0.5W/mmから250W/mm、特に好ましくは1W/mmから100W/mmの強度を有する、
請求項1から7までのいずれか1項記載の照明装置。
【請求項9】
前記光変換要素は、最小で10μm、最大で1000μm、好ましくは20μmから500μm、特に好ましくは50μmから250μmの厚さを有する、
請求項1から8までのいずれか1項記載の照明装置。
【請求項10】
少なくとも1つのレーザ光源は、最小で380nm、最大で470nmの範囲の波長を有する電磁放射、好ましくは400nmから470nm、特に好ましくは440nmから470nmの間の波長を有する放射を送出する、
請求項1から9までのいずれか1項記載の照明装置。
【請求項11】
前記光変換要素は、
前記レーザ光に対して少なくとも10cm-1、好ましくは少なくとも50cm-1の吸収係数aを有し、
5cm-1と500cm-1との間、好ましくは20cm-1と200cm-1との間に位置する、前記レーザ光に対する散乱係数sを有し、
好ましくは、10cm-1未満、好ましくは1cm-1未満の、前記光変換要素によって変換された光に対する吸収係数aを有し、
好ましくは、20cm-1超、好ましくは50cm-1超、特に好ましくは80cm-1超の、前記光変換要素によって変換された光に対する散乱係数sを有する、
請求項1から10までのいずれか1項記載の照明装置。
【請求項12】
前記光変換要素は、発光セラミック材料を含むか、または発光セラミック材料から形成されている、
請求項1から11までのいずれか1項記載の照明装置。
【請求項13】
前記光変換要素は、発光セラミック材料としてガーネット様材料を含むか、または
前記光変換要素は、主として、すなわち少なくとも50重量%、または実質的に、すなわち少なくとも90重量%、または完全に、ガーネット様材料から形成されており、
前記ガーネット様材料は、好ましくは以下の組成式、すなわち
12:RE
を有し、なお、
Aは、Yおよび/またはGdおよび/またはLuを含み、
Bは、Alおよび/またはGaを含み、
REは、希土類の群から選択されており、好ましくはCeおよび/またはPrを含む、
請求項12記載の照明装置。
【請求項14】
前記ガーネット様材料は、以下の組成式、すなわち
(Y1-xCeAl12、および/または
(Y1-x-yGdCeAl12、および/または
(Lu1-xCeAl12、および/または
(Y1-x-zLuCeAl12
を有し、なお、
xに関しては、それぞれ0.005<x<0.05が当てはまり、
yに関しては、0<y<0.2が当てはまり、
zに関しては、0<z<1が当てはまる、
請求項13記載の照明装置。
【請求項15】
前記光変換要素は、発光セラミック材料を含むか、または
前記光変換要素は、主として、すなわち少なくとも50重量%、または実質的に、すなわち少なくとも90重量%、または完全に、発光セラミック材料から形成されており、
前記光変換要素は、
・単相の中実なセラミックとして存在しており、かつ/または
・多相の中実なセラミックとして存在しており、かつ/または
・所定の気孔率を有する単相または多相のセラミックとして存在しており、かつ/または
・蛍光体-ガラス-複合材および/または蛍光体-シリコーン-複合材のような複合材料として存在している、
請求項1から14までのいずれか1項記載の照明装置。
【請求項16】
前記光変換要素は、多孔質焼結セラミックとして形成されており、
気孔率は、0.5%~10%の間、好ましくは4%~8%の間であり、
前記気孔率は、体積に基づいており、
好ましくは、平均孔径は、400μmと1200μmとの間、好ましくは600μmと1000μmとの間、特に好ましくは600μmと800μmとの間である、
請求項12から14までのいずれか1項記載の照明装置。
【請求項17】
照明装置の色位置または色温度を調整するための方法であって、
・前記方法は、照明装置を提供するステップを含み、前記照明装置は、好ましくは青色のレーザ放射のための少なくとも1つのレーザ光源と、前記少なくとも1つのレーザ光源に対応付けられた光変換要素と、を含むと共に、前記レーザ放射を前記光変換要素に向けて成形する光学系も含み、前記光変換要素は、前記少なくとも1つのレーザ光源によって生成された少なくとも1つのレーザ光放射の光路上に配置されており、
・前記方法は、前記少なくとも1つのレーザ光源から放出される少なくとも1つの光放射を生成するステップを含み、
・前記方法は、前記レーザ光源によって生成された少なくとも1つの光放射の少なくとも一部を、とりわけ、前記レーザ光源と前記光変換要素との間に配置された光学要素および/または光学部品によって、前記光変換要素に向けるステップを含み、これによって、
・前記光変換要素に向けられた、または向けられる、前記レーザ光源から放出された前記光放射の前記一部の結像としてのレーザ光スポットが、前記光変換要素のうちの入射光放射に向いた側において照明されており、または照明され、前記レーザ光スポットは、最小で5μm、最大で1000μmの直径、好ましくはFWHM直径のような寸法を有し、
・好ましくは、前記光変換要素は、入射レーザ光の散乱、吸収および変換によってより長い波長の光を放出して散乱させる材料を含み、
・前記入射レーザ光の一部は、前記光変換要素によって変換されることなく後方散乱され、これによって、前記光変換要素うちの前記入射光放射に向いた側では、前記レーザ光と同じ波長または色を有する、前記レーザ光スポットよりも大きい一次放出光スポットが生成され、
・前記光変換要素は、前記レーザ光源から放出された光を、部分的により長い波長の光に変換し、これによって、前記光変換要素うちの前記入射光放射に向いた側では、より長い波長を有する、前記一次放出光スポットよりも大きい二次放出光スポットが生成され、
・前記方法は、とりわけ、前記一次放出光スポットおよび前記二次放出光スポットから放出される放射の一部を、少なくとも1つの光学要素および/または光学部品に向けることにより、前記一次放出光スポットおよび前記二次放出光スポットによって光像を生成するステップを有し、
・このようにして選択された有用光スポットは、前記二次放出光スポットよりも小さく、
・前記方法は、例えば光学要素および/または光学部品によって生成される光像の選択された領域に関して、または好ましくは、前記照明装置から25mの距離を置いたところで生成されているか、または生成される光像の選択された光束の選択された領域に関して、統合された色位置または色温度を特定するステップを含み、
・前記方法は、前記色位置を調整するステップを含み、前記ステップは、
a.前記少なくとも1つのレーザ光源から放出される前記少なくとも1つの光放射の少なくとも一部によって生成される前記レーザ光スポットのサイズによって、前記光変換要素上に生成される放出光スポットの一次輝度分布および二次輝度分布を調整することによって実施され、かつ/または
b.前記変換要素の材料の吸収特性および散乱特性を適合することにより、前記光変換要素上に生成される放出光スポットの一次輝度分布および二次輝度分布を調整することによって実施され、かつ/または
c.下流の撮像光学系を適合させることにより、前記放出光スポットの結像される部分表面を調整することによって実施され、かつ/または
d.前記撮像光学系の後方で部分的に絞ることにより、観察される光束の被照明領域を選択することによって実施される、
方法。
【請求項18】
車両のヘッドライトとしての、または舞台照明のためのスポットライトとしての、または航空機のヘッドライトとしての、またはヘリコプターのヘッドライトとしての、または船のヘッドライトとしての、または信号灯としての、またはサーチライトとしての、またはスタジアム照明としての、またはプロジェクタのための、または建築照明のための、請求項1から16までのいずれか1項記載の照明装置の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、照明装置、好ましくは色位置が調整可能または調整された照明装置と、照明装置の使用と、照明装置の色位置を調整するための方法と、に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術では、種々の照明装置、例えばいわゆる放電ランプおよびハロゲンランプが知られている。しかしながら、種々の理由から、例えば、エネルギ効率の観点から、または所要スペースがわずかであると同時に、好ましくは輝度も高い照明装置を提供するという目的から、レーザ光源に基づいた照明装置に対する関心が高まっている。このような照明装置は、基本的に、例えばレーザダイオードのような少なくとも1つのレーザ光源と、光変換要素と、を含むように構成されている。光変換要素が必要であるのは、1つまたは複数のレーザ光源から出射された光は、所望の色位置、例えばカラーニュートラルな「白色」の色位置を有さないからである。光変換要素は、基本的には単色である(1つまたは複数の)レーザ光源の光が照射された後、この光を、部分的または完全に、1つまたは複数の他の波長に、または特定の波長スペクトルに変換することが可能であり、これによって、散乱光と被変換光との加法混色により、所望または特定の色位置を有する光像を生成することが可能である。光変換要素は、変換体、発光物質要素、または蛍光体(英語:Phosphor)とも呼ばれ、「蛍光体(英語:Phosphor)」という用語は、本明細書では、同じ名称の化学元素の意味で理解されるべきではなく、これらの物質の発光する特性に基づいている。したがって、本開示の意味では、「蛍光体」という用語は、別段の指示がない限り、同じ名前の化学元素ではなく常に発光物質のことであると理解されるべきである。
【0003】
レーザ光源に基づいたこのような照明装置は、特に重要である。というのも、とりわけ、このようにすると、高い輝度または輝き(英語:luminance)を実現することが可能となるからである。このことは、とりわけ、例えば自動車分野での用途のために特に重要である。ここでの目的は、高い輝度を実現するだけでなくエネルギ消費量もできるだけ少なく抑えるために、まさにレーザ出力がわずかな場合であっても、特に高い輝度を実現することである。このことは、小さな寸法、例えば小さな直径しか有しておらず、それでもなお、相応に高い輝度を有するような光スポットを生成することによって、達成することが可能である。
【0004】
本開示の文脈では、別段の指示がない限り、輝度および輝きという用語は同義的に使用される。
【0005】
独国特許出願公開第102012223854号明細書には、遠隔式蛍光体変換体装置が記載されており、遠隔式蛍光体変換体装置は、保持体と、保持体によって保持された変換体要素と、一次光放射要素と、を含み、一次光放射要素は、自身が放射した一次光を変換体要素に向けることができるように構成されている。
【0006】
米国特許出願公開第2017/0210277号明細書は、長手方向において輝度がわずかに減少する半導体LED装置を記載している。
【0007】
米国特許出願公開第2017/0210280号明細書は、種々異なる配光パターンを少ないエネルギ消費量で調整することができるように構成された、車両のためのヘッドライト装置を記載している。
【0008】
米国特許出願公開第2017/0198876号明細書には、湾曲された光変換要素が設けられている照明装置と、そのような照明装置を含む車両ヘッドライトとが記載されている。
【0009】
欧州特許出願公開第3184884号明細書には、自動車ヘッドライトを制御するための方法と、対応する自動車ヘッドライトとが開示されている。自動車ヘッドライトは、少なくとも1つのレーザダイオードと、レーザダイオードに対応付けられた光変換要素と、を含む。光変換要素のうちの、光像の複数の異なる領域に対応するそれぞれの領域を、レーザダイオードの光放射によってそれぞれ異なる強度で周期的に照明することが可能であり、したがって、光像の複数の異なる領域における照明強度を、相対的な照明時間によって調整可能であり、かつ/またはこれらの領域におけるレーザダイオードの光強度をそれぞれ異ならせることによって調整可能である。
【0010】
国際公開第2017/133809号は、照明光を放出するための照明装置を記載している。照明装置は、LED放射を放出するためのLEDと、レーザ放射を放出するためのレーザと、LED放射およびレーザ放射を少なくとも部分的に変換して被変換光にするための発光物質要素と、を含む。照明装置の動作中、発光物質要素上におけるLED光またはレーザ光が照明される領域同士は、少なくとも部分的に重なり合っている。
【0011】
欧州特許出願公開第3203140号明細書は、車両のための照明装置と、対応する動作方法と、を記載している。照明装置は、ピクセル光源と、ピクセル光源によって少なくとも部分的に所定の光分布で照明することができるアナモフィック要素と、を含む。
【0012】
中国特許出願公開第106939991号明細書は、蛍光光ファイバのレーザ励起に基づいた車両ヘッドライトを記載しており、この車両ヘッドライトは、レーザモジュールと、光ファイバと、蛍光光ファイバと、を含む。このようにして、コンパクトな構造を有する車両ヘッドライトが提供される。
【0013】
国際公開第2017/111405号は、蛍光体プレート装置と、光を送出するための装置と、これらの装置を含む車両ヘッドライトとを記載している。
【0014】
国際公開第2017/104167号は、照明装置と、車両ヘッドライトとを記載している。照明装置は、レーザ要素の光によって励起された光を放出する発光物質と、所定のルーチンに従って連続的に移動する移動可能なミラーとを有する光送出装置を含む。
【0015】
レーザ光を用いた照明デザインのための選択肢は、CareyおよびRudy著のLED professional 63,2017年、第66~70頁がさらに説明している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
このようにして、レーザ光源に基づいた照明装置を使用すると、従来技術の照明装置と比較して少ないエネルギ消費量で、照明装置によって生成される光スポットの高い輝度を実現することが可能であることが判明している。しかしながら、生成された光像の色位置に関しては、予測される期待すべき色位置からの顕著なずれが発生する場合がある。「青色」レーザ光源、すなわち青色光を生成するレーザ光源が使用される場合には、例えば、照明装置によって生成される光スポットの特に高い輝度を、レーザ放射の集束を特に強くすることによって実現すると、このように生成された光像において過剰な青色成分がもたされる可能性がある。例えば、このずれは、例えば自動車の分野ではヘッドライトの色位置に関して設けられているような色位置に関する標準化された法的要件が、特に高い輝度を有するそのようなレーザ光源に基づいた照明装置によって満たされなくなる、という結果をもたらす可能性がある。ここで重要なのは、いわゆるHV値であり、このHV値では、照明装置から25mの距離を置いたところで光像の色位置が決定される。このHV値は、できるだけ、該当するECE規制の「白色」の範囲内にあるべきである。しかしながら、上述したずれは、最終的に、レーザ光の変換、とりわけ青色レーザ光の変換に基づいた全ての照明装置に対して影響を与える。したがって、上述した従来技術の問題を少なくとも軽減する照明装置を提供することが課題である。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記の課題は、独立請求項に記載の対象によって驚くほど簡単に解決される。好ましいより具体的な実施形態は、従属請求項に記載されている。
【0018】
本開示は、照明装置、好ましくは、色位置または色温度が調整可能または調整された照明装置を含み、当該照明装置は、少なくとも1つのレーザ光源と、少なくとも1つまたは複数のレーザ光源に対応付けられた光変換要素と、を含む。1つまたは複数のレーザ光源は、光放射を生成するために適している。光変換要素は、少なくとも1つのレーザ光源によって生成される少なくとも1つの光放射の光路上に配置されている。
【0019】
本開示の文脈では、以下の定義が適用される:
【0020】
レーザ光源
本出願の文脈では、例えばレーザダイオード(半導体レーザとも呼ばれる)のようなレーザ光源は、狭い周波数範囲内でレーザ放射、すなわち電磁放射を生成する、例えば半導体部品のような電磁放射源であると理解される。本開示の文脈では、可視光の範囲の波長(約380nm~約780nmの波長)を有するレーザ放射を生成するレーザ光源が重要である。特に重要なのは、(約380nm~約465nmの波長の)青色光を生成するレーザ光源である。
【0021】
色位置および色温度
本体または光源の色位置、すなわち例えば、照明装置によって生成される光の色位置は、本体または光源によって引き起こされる色印象を表している。本明細書では、色位置は、CIE標準カラーチャート内の自身の位置によって、すなわちcx座標およびcy座標によって表される。
【0022】
光源の色温度は、その時々の色印象に最も近い色印象を有する、黒体放射器(またはプランク放射器)の温度である。
【0023】
本開示の文脈において、色位置が調整可能であるということが話題にされる場合には、照明装置によって生成される光を、観察者に引き起こされる色印象に関して、すなわち、上述したCIE標準カラーチャートのcx座標およびcy座標の変数に関して、変化させることが可能であると理解されるべきである。
【0024】
本開示の文脈において、色位置が調整されているということが話題にされるのは、照明装置の色位置が、規定された色位置に適合されている場合であり、すなわち例えば、照明装置の空間物理的な構成を適合することにより、照明装置の色位置が、例えば所定の色位置または色位置範囲に、例えば法的要件によって定義された色位置または色位置範囲に対応している場合である。このことは、例えば、そのような照明装置の構成部品の幾何学的な配置を適合させることによって実現可能であり、かつ/またはそのような照明装置の要素を適合させることによって実現可能であり、例えば、光変換要素を別の光変換要素に交換すること、すなわち、この交換される光変換要素に対して、例えば散乱係数に関して変化された特性を有する別の光変換要素に交換することによって実現可能である。
【0025】
光変換要素
本開示の意味では、光変換要素とは、発光物質を含む要素であり、すなわち、例えば発光物質から構成されている要素であるか、または発光物質を含有するまたは含む要素であるか、またはそのような発光物質によってコーティングされている要素であると理解される。本開示の意味では、発光物質または蛍光体とは、例えば可視光またはUV放射の形態の電磁波が照射された場合に、それらの電磁波をより長い波長を有する電磁放射に変換することができる物質であると理解される。例えばCeがドープされたいわゆるイットリウム-アルミニウム-ガーネットは、「黄色」発光物質として知られている。すなわち、(例えば、インジウム-窒化ガリウム-レーザによって生成される)青色光が照射されると、入射した放射の一部が、緑-黄色のスペクトル領域に重心を有するより長い波長の光に変換(コンバート)され、再放射される。
【0026】
「光変換要素」および「変換要素」という用語は、本開示の文脈では同義的に使用される。光変換要素に関して、変換体および変換体要素という用語も同様に使用される。
【0027】
光路上の配置
本開示の文脈において、光変換要素が光路上に配置されていると記載されている場合には、このことは、1つまたは複数のレーザ光源の光が変換要素に向けられることであると理解されるべきである。このことは、例えば古典的に、変換要素をレーザの光路上に配置することによって実施することができる。しかしながら、光放射を、例えば光学レンズ、ミラー、および/または光ファイバのような、1つまたは複数の光学要素および/または光学部品によって成形すること、および/または変換要素上に入射するように偏向させることも可能である。とりわけ、「(1つまたは複数の)レーザ光源の光路上に配置されている」とは、1つまたは複数のレーザ光源の光が、1つまたは複数の光ファイバを介して変換要素に向けられる場合であるとも理解される。光放射は、変換要素に垂直に入射することができるか、または所定の角度で入射することもできる。それぞれ異なる方向からの複数の光放射が、光変換要素の同一の場所に入射するようにすることも可能である。本開示の実施形態によれば、1つまたは複数のレーザ光源から出射された1つまたは複数の、例えば青色のレーザ放射が、光変換要素上に入射して、そこでレーザ光スポットを形成するということが重要である。
【0028】
レーザ光スポット(英語:illumination spot, laser spot)
所定のサイズを有するレーザ光スポットが、光変換要素上に照明されるように、1つまたは複数のレーザ光放射の少なくとも一部が、光変換要素に向けられる。1つの実施形態によれば、このことは、1つまたは複数のレーザ光源と光変換要素との間に配置された少なくとも1つの光学要素および/または光学部品により、実施される。これは、とりわけ1つまたは複数の光ファイバとすることができ、1つまたは複数の光ファイバの光出射側は、それぞれ光変換要素から所定の距離を置いたところに位置している。レーザ光スポットを、それぞれ異なる空間方向から複数のレーザ光放射を当てることによって形成することもできる。レーザ光スポットを、軸対称、楕円形、または任意に成形することができる。
【0029】
入射光放射によって光変換要素上に照明されるレーザ光スポットは、好ましくは、最小で5μm、最大で1000μmの間の直径、好ましくはFWHM直径のような寸法を有する。レーザ光スポットの半径方向の強度プロファイルは、任意とすることができ、例えば、「ガウス」または「シルクハット」のプロファイル、または適切なビーム成形によって生成される別のプロファイルとすることができる。より一般的には、レーザ光スポットは、その強度分布I(x,y)[W/m]によって表されている。
【0030】
一次放出光スポット(英語:primary emission spot)
一次放出光スポット(以下では、例えば1つの実施形態に関連して「青色の放出スポット」とも呼ばれる)は、入射レーザ光のうちの変換されず吸収もされない部分の拡散反射および後方散乱(以下では「反射(Remission)」とも呼ばれる)によって生成される。一次放出光スポットは、レーザ光スポットよりも常に若干大きい。なぜなら、(本明細書で検討されている実施形態では青色である)レーザ光は、光変換要素に進入し、そこで吸収または変換されるだけでなく、ある程度は散乱もされて、部分的に吸収または変換されることなく光変換要素の表面から再び出射するからである。この際、上述した散乱も放射状に実施され、これによって一次放出光スポットは、入射レーザ光スポットよりも若干大きくなる。本開示の文脈では、一次放出光スポットは、一次的な放出光スポットとも呼ばれる。
【0031】
この拡大効果は、本発明者らによって「光の拡散(light spreading)」と呼ばれており、レーザスポットの「広がり」と呼ばれることもある。
【0032】
二次放出光スポット(英語:secondary emission spot)
二次放出光スポット(以下では、例えば1つの実施形態に関して「黄色の放出スポット」とも呼ばれる)は、入射レーザ光のうちの反射されない部分の吸収および部分変換によって生成される。被変換光は、レーザ光よりも長い波長を有するか、または所定のスペクトルを有する可視光に変換される。二次放出光スポットは、一次放出光スポットよりもさらに大きくなる。なぜなら、比較的長い波長を有する被変換光は、非常に弱くしか吸収されず、光変換要素から再び出射する前に、横方向の散乱によって、光変換要素内で、(本明細書で検討されている実施形態では青色である)レーザ光よりもはるかに遠くまで伝播することができるからである。この拡大効果も、本発明者らによって「光の拡散(light spreading)」と呼ばれている。本開示の文脈では、二次放出光スポットは、二次的な放出光スポットとも呼ばれる。
【0033】
光の拡散
すなわち、上述した「光の拡散」は、光変換要素の吸収特性および散乱特性と、ひいては、検討されている光の波長とに依存している。光変換要素として、Ceがドープされたイットリウム-アルミニウム-ガーネットが使用される例示的なケースでは、黄色光は、さほど強く吸収されないので、青色光よりも強い「光の拡散」を示す。
【0034】
有用光スポット(used light spot)
放出光スポットのうちの照明装置によって利用される部分は、使用されている撮像光学系、絞りなどによって決定されている。縁部領域を絞ることによって、有用光スポットを、例えば放出光スポットよりも小さくすることができる。
【0035】
吸収特性および散乱特性
光変換要素の吸収特性および散乱特性は、(波長依存性の)吸収係数a[cm-1]と、(波長依存性の)散乱係数s[cm-1]とによって表される。ここおよび以下では、これら2つの変数は、以下のように定義されると理解されるべきであり、すなわち、aは、I=I*exp(-a*t)の関係式を介して、所定の厚さtを有する純粋に吸収性であり非散乱性である(仮想の)材料中における吸収による光放射の減衰を表し、sは、I=I*exp(-s*t)の関係式を介して、所定の厚さtを有する純粋に散乱性であり非吸収性である(仮想の)材料中における散乱による光放射の減衰を表す。IおよびIは、それぞれ一次光放射のピーク強度と、減衰された放射のピーク強度とである。したがって、aおよびsは、材料特性の変数である。実際には、光変換要素は、吸収特性および散乱特性の両方を有しており、したがって、光変換要素の吸収特性および散乱特性に関して、これら両方の変数を示すことによって表される。
【0036】
所定の厚さを有する吸収性および散乱性である(実際の)材料中における光放射の測定可能な減衰は、例えば、いわゆるクベルカ-ムンク理論(例えば、Yangら著,J. Opt. Soc. Am. A,Vol.21,2004年,第1942-1952頁を参照のこと)によって、近似的にのみ明示的に表すことができる。本明細書で説明される光変換要素の材料の吸収特性および散乱特性に関しては、吸収性であると同時に散乱性でもある媒体を貫通して放射される光放射の減衰を表した2004年のYangの以下の関係式:
【数1】
が使用され、ただし、
【数2】
および
b=(1-Rinf )/(2・Rinf
であり、なお、材料特性aおよびsとの関係性は、
K=2・a
および
S=s
によって与えられており、ここで、rおよびrは、表側および裏側の反射率を意味しており、Dは、サンプルの厚さである。同じ材料であるが厚さが異なっている複数のサンプルにおけるそれぞれの透過率を測定することにより、sおよびaを特定することが可能である。
【0037】
本開示の実施形態による光変換要素は、レーザ光(一次光)に対する吸収係数および散乱係数と、被変換光(二次光)に対する吸収係数および散乱係数とが異なることを特徴とする。一次光の場合には、直接的に反射される光、例えば直接的に反射される青色光が、多く望まれているか、または少なく望まれているかに応じて、およそa>10cm-1、好ましくはa>50cm-1と、5cm-1<s<500cm-1とが当てはまる。二次光の場合には、aをできるだけ小さくすべきであり、すなわち、a<10cm-1、好ましくはa<1cm-1にすべきであると共に、sを常にできるだけ大きくすべきであり、すなわちs>10cm-1、より好ましくはs>50cm-1にすべきである。
【0038】
光源の輝度分布および色位置分布
光源の放射は、そのスペクトル輝度によって完全に表される。ランバート放射器の場合には、輝度L[lm/sr m]が、放射角度に依存していない。本明細書で検討されている光変換要素の場合、ここでは例えば、ガリウム-窒化インジウムに基づいたレーザのためのCe:YAGに基づいた光変換要素の場合には、ランバート放射器の上記の仮定が、非常に十分に満たされている。したがって、上述した「光の拡散」によって、レーザ光スポットのサイズまたは強度分布I(x,y)と共に、一次放出光スポットおよび二次放出光スポットの輝度分布L(x,y)は、多かれ少なかれそれぞれ異なることとなる。両方の光スポットが重なり合っていることを考慮すると、色位置の位置依存性、つまり色位置分布が生成される。本明細書で検討されている実施形態の場合には、中央において青色成分が大きくなっており、縁部に向かって弱くなっている。したがって、結局のところ、所定の変換材料(例えば、Ce:YAG)に対する位置依存性の色位置は、レーザスポットの寸法、例えばFWHM直径と、光変換要素の吸収特性aおよび散乱特性sとに依存している。相応にして、有用光スポットの統合された色位置も、放出光スポットよりも小さい場合には、同一の特性および寸法に依存している。
【0039】
測定場所における輝度および色位置
所与の輝度および輝度分布を有する光源は、通常、照明光学系の光源として使用される。この光源は、例えば道路を照明するヘッドライトとすることができる。照明光学系は、自身の光コンダクタンスG[sr m]によって表されており、この光コンダクタンスG[sr m]は、光源の表面要素Aから、距離rを置いたところに位置する照明された表面要素Aまで、光がどのように輸送されるかを表したものである。AからAに輸送される光束Φ[lm]は、ランバート放射器の場合であって、かつ距離rが大きい場合には、Φ=L*Gによって与えられており、ここで、Lは、表面Aの平均輝度である。この場合、表面Aを、光変換要素上の光スポットの中央の小さな区分とすることができ、表面Aを、ヘッドライト試験装置のHV点における検出器の受光表面とすることができる。
【0040】
例えば検討されている実施形態による輝度分布L(x,y)は、青色光と黄色光では異なっており、すなわち一般には、それぞれ異なる波長を有する光同士では異なっており、材料パラメータaおよびs、またはレーザスポットの強度分布(x,y)によって影響され得るので、ここでは、例えばヘッドライト試験装置の試験位置における、黄色と青色の光束の比も、ひいては結果的に生じる色位置も、材料パラメータによって、または照射強度分布によって、またはヘッドライト光学系のアパーチャによって、調整することが可能である。
【0041】
さらなる例として、光変換要素の区分Aの光が入射する光ファイバの入力表面Aの照明を挙げておく。入射光学系を変更することにより、放出光スポットの捕捉される表面Aを変化させることができるか、またはレーザスポットの強度分布を変更することにより、表面Aの平均光色を変化させることができる。したがって、そのようにして、のちにファイバから出射することとなる光の色を適合することが可能である。
【0042】
したがって、本開示によれば、好ましくは色位置または色温度が調整可能または調整された照明装置であって、当該照明装置は、少なくとも1つのレーザ光源と、少なくとも1つのまたは複数のレーザ光源に対応付けられた光変換要素と、を含み、(1つまたは複数の)レーザ光源は、光放射を出射するように構成されており、光変換要素は、少なくとも1つのレーザ光源によって生成される少なくとも1つの光放射の光路上に配置されており、これによって、好ましくは、(1つまたは複数の)レーザ光源と光変換要素との間に配置された少なくとも1つの光学要素および/または光学部品により、好ましくは所定のサイズを有するレーザ光スポットが、光変換要素のうちの入射光放射に向いた側において照明されるように、(1つまたは複数の)レーザ光源から放出された光放射の少なくとも一部が、光変換要素に向けられ、光変換要素は、入射レーザ光の散乱、吸収、および変換によってより長い波長の光を変換して散乱させる材料を含み、光変換要素のうちの入射光放射に向いた側では、入射光放射の波長と同じ波長の光を有する、レーザ光スポットよりも大きい一次放出光スポットが生成されると共に、より長い波長の光を有する、一次放出光スポットよりも大きい二次放出光スポットが生成され、照明装置のために使用される有用光スポットは、二次放出光スポットの一部のみを含む、照明装置が提供される。
【0043】
照明装置の1つの実施形態によれば、入射光放射によって光変換要素上に照明されるレーザ光スポットは、最小で5μm、最大で1000μmの間の直径、好ましくはFWHM直径、または半径のような寸法を有し、レーザ光スポットよりも大きい一次放出光スポットが生成されると共に、より長い波長の光を有する、一次放出光スポットよりも大きい二次放出光スポットが生成され、一次放出光スポットに対する二次放出光スポットの寸法、例えば直径、とりわけFWHM直径の比は、1.1~10の間、好ましくは1.5~5の間、特に好ましくは1.8~3の間である。
【0044】
照明装置のさらなる実施形態によれば、有用光スポットの寸法、とりわけ有用光スポットの直径、とりわけ好ましくは有用光スポットのFWHM直径は、一次放出光スポットの寸法、とりわけ一次放出光スポットの直径、とりわけ好ましくは一次放出光スポットのFWHM直径よりも大きく、それと同時に、二次放出光スポットの寸法、とりわけ二次放出光スポットの直径、とりわけ好ましくは二次放出光スポットのFWHM直径よりも小さい。
【0045】
有用な放出スポットが、1000Cd/mm以上の特に高い(平均)輝度を有することが望まれる場合には、特に小さいレーザ光スポットが選択される。
【0046】
好ましくは、有用光の色位置は、以下の点:
cx cy
0.310 0.348
0.310 0.382
0.443 0.382
0.500 0.440
0.500 0.440
0.443 0.348
0.310 0.332
によって囲まれた範囲内の座標cxおよびcyを有する。
【0047】
したがって、既に上述したように、照明装置によって生成される光のCIE標準カラーチャートに準拠した色位置を表している色座標が、上記の制限内の値を有する場合には、特に有利である。なぜなら、このようにすると、照明装置の、例えば自動車分野における車両ヘッドライトの所定の用途に対する法的要件が遵守されるからである。しかしながら、照明装置によって引き起こされる放射の色位置に関してさほど厳密でないか、または別の要件が適用される他の用途分野では、別のcy座標および/またはcx座標、または別の色位置範囲を許容することも可能である。
【0048】
照明装置の1つの実施形態によれば、有用光の色温度は、1500K~10000Kの間、好ましくは3000K~10000Kの間、特に好ましくは3000K~8000Kの間である。
【0049】
1つの実施形態によれば、レーザ光源は、0.1W~10Wの出力を有する1つのレーザダイオードである。さらなる実施形態によれば、レーザ光源は、複数のレーザダイオードの配列を含み、複数のレーザダイオードのレーザ光は、適切な光学装置によって全体的または部分的に束ねられ、最大で1000Wの総出力を有する。さらなる実施形態によれば、1つまたは複数のレーザダイオードの光は、適切な光学装置によって複数のレーザ放射に分割され、複数のレーザ放射が、それぞれ異なる方向から光変換要素上に入射して、そこで一緒にレーザ光スポットを形成する。
【0050】
すなわち、照明装置の1つの実施形態によれば、レーザ光源は、0.1ワット~10ワットの出力を有する1つのレーザダイオードであるか、またはレーザ光源は、複数のレーザダイオードの配列を含み、複数のレーザダイオードのレーザ光は、光学装置によって全体的または部分的に束ねられ、好ましくは、1つまたは複数のレーザダイオードの光は、光学装置によって複数のレーザ放射に分割され、複数のレーザ放射が、それぞれ異なる方向から光変換要素上に入射して、そこで一緒にレーザ光スポットを形成する。
【0051】
照明装置のさらなる実施形態によれば、レーザ光スポットにおいて変換要素上に入射する放射は、0.1ワット~1000ワットの放射出力、好ましくは0.5ワット~500ワットの放射出力、特に好ましくは1ワット~100ワットの放射出力を有する。
【0052】
照明装置のさらに別の実施形態によれば、レーザ光スポットにおいて変換要素上に入射する放射は、0.1W/mm~500W/mm、好ましくは0.5W/mm~250W/mm、特に好ましくは1W/mm~100W/mmの強度を有する。
【0053】
ここで、レーザ出力と、光変換要素上で生成される光スポットのサイズとが互いに相関関係にあり、照明装置によって生成される光像の輝度と、色位置とを決定するということに留意すべきである。したがって、放出光スポットのサイズを一定にしてレーザ出力を増加させることにより、少なくとも1000cd/mmの高い輝度を生成することが可能であるか、またはレーザ出力を一定にして光変換要素への入射光放射によって生成されるレーザ光スポットを縮小することが可能である。しかしながら、後者は、一次放射および二次放射の上述した「光の拡散」に起因して、二次放出光スポットを任意に縮小することができず、とりわけ、レーザ放射の集束が増大するにつれて、二次放出光スポットが、一次放出光スポットのサイズに対して相対的にますます大きくなるという結果をもたらし、これにより、照明装置によって生成される光像の色位置は、より短い波長へとシフトすることとなり、他方で、レーザ出力の増加は、エネルギ消費量に対して悪影響を及ぼし、この理由から所定の制限内でしか実施することができない。さらに、「熱消光」効果に基づいて、変換要素は、レーザ放射の所定の強度までしか光を効果的に変換することができない。ただし、この効果については、ここではこれ以上検討しない。
【0054】
さらなる実施形態によれば、光変換要素は、最小で10μm~最大で1000μm、好ましくは20μm~500μm、特に好ましくは50μm~250μmの厚さを有する。
【0055】
好ましくは、レーザ光源は、最小で380nm~最大で470nmの範囲の波長を有する電磁放射、好ましくは400nm~470nm、特に好ましくは440nm~470nmの間の波長を有する放射を送出する。
【0056】
さらなる実施形態によれば、光変換要素は、レーザ光に対して少なくとも10cm-1、好ましくは少なくとも50cm-1の吸収係数aを有する。レーザ光に対する散乱係数sは、5cm-1~500cm-1の間、好ましくは20cm-1~100cm-1の間である。これに対して、光変換要素は、被変換光に対して10cm-1未満、より好ましくは1cm-1未満の吸収係数aを有する。被変換光に対する散乱係数sは、20cm-1超、好ましくは50cm-1超、特に好ましくは80cm-1超であるべきである。
【0057】
すなわち、照明装置の1つの実施形態によれば、光変換要素は、レーザ光に対して少なくとも10cm-1、好ましくは少なくとも50cm-1の吸収係数aを有し、5cm-1~500cm-1の間、好ましくは20cm-1~200cm-1の間に位置する、レーザ光に対する散乱係数sを有し、好ましくは、10cm-1未満、好ましくは1cm-1未満の、被変換光に対する吸収係数aを有し、好ましくは20cm-1超、好ましくは50cm-1超、特に好ましくは80cm-1超の、被変換光に対する散乱係数sを有する。
【0058】
好ましくは、光変換要素は、発光セラミック材料を含む。本開示の文脈では、このことは、光変換要素を、例えば主として、すなわち少なくとも50重量%、または実質的に、すなわち少なくとも90重量%、発光セラミック材料から形成することができるということを意味する。光変換要素を、完全に発光性のセラミック材料から形成することも可能である。すなわち、とりわけ、光変換要素は、発光セラミック材料を含むか、または発光セラミック材料から形成されている。光変換要素を、複合材料として、例えば蛍光体-ガラス-複合材として、または蛍光体-シリコーン-複合材として形成することもでき、この場合、好ましくは少なくとも10重量%、例えば10重量%~30重量%、とりわけ10重量%~20重量%の間の発光セラミック材料を含む。照明装置の1つの実施形態によれば、光変換要素は、発光セラミック材料としてガーネット様セラミック材料を含むか、または光変換要素は、主として、すなわち少なくとも50重量%、または実質的に、すなわち少なくとも90重量%、または完全に、ガーネット様セラミック材料から形成されており、ガーネット様セラミック材料は、好ましくは以下の組成式、すなわち
12:RE
を有し、なお、
Aは、Yおよび/またはGdおよび/またはLuを含み、
Bは、Alおよび/またはGaを含み、
REは、希土類の群から選択されており、好ましくはCeおよび/またはPrを含む、
【0059】
照明装置のさらに別の実施形態によれば、ガーネット様セラミック材料は、以下の組成式、すなわち
(Y1-xCeAl12、および/または
(Y1-x-yGdCeAl12、および/または
(Lu1-xCeAl12、および/または
(Y1-x-zLuCeAl12
を有し、なお、
xに関しては、それぞれ0.005<x<0.05が当てはまり、
yに関しては、0<y<0.2が当てはまり、
zに関しては、0<z<1が当てはまる。
【0060】
照明装置の1つの実施形態によれば、光変換要素は、発光セラミック材料を含むか、または光変換要素は、主として、すなわち少なくとも50重量%、または実質的に、すなわち少なくとも90重量%、または完全に、発光セラミック材料から形成されており、光変換要素は、
・単相の中実なセラミックとして存在しており、かつ/または
・多相の中実なセラミックとして存在しており、かつ/または
・所定の気孔率を有する単相または多相のセラミックとして存在しており、かつ/または
・蛍光体-ガラス-複合材(英語:phosphor in glass,PIG)および/または蛍光体-シリコーン-複合材(英語:phosphor in silicone,PIS)のような複合材料として存在している。
【0061】
さらなる実施形態によれば、セラミック材料は、とりわけ酸窒化アルミニウムおよび酸窒化ケイ素アルミニウムの群からの、他の酸化物化合物(ガーネット化合物を除く)および窒化化合物も含む。
【0062】
照明装置のさらなる実施形態によれば、光変換要素は、多孔質焼結セラミックとして形成されており、気孔率は、0.5%~10%の間、好ましくは4%~8%の間である。気孔率は、体積に基づいている。好ましくは、平均孔径は、400μm~1200μmの間、好ましくは600μm~1000μmの間、特に好ましくは600μm~800μmの間である。
【0063】
このことは、本開示のさらなる態様によれば、照明装置を構成しているコンポーネントを変更することなく、すなわち、とりわけ、同一のレーザ光源または少なくとも1つの同様のレーザ光源を使用して、かつ/または同一の光変換要素または少なくとも1つの同等の光変換要素を使用して、色位置が可変的に調整可能であり、かつ/または調整された照明像を生成することも可能であるということを意味する。このことは、変換要素上で生成される光スポットのサイズを変化させることにより、驚くほど簡単に実現される。
【0064】
本発明者らによって開発された、この驚くほど簡単な、照明装置の色位置を調整するための方法、とりわけ、照明装置の色位置を最適化するための、または顧客特有または用途特有に適合させるための方法は、光変換要素への照射時に光の拡散が生じるという認識に基づいている。
【0065】
したがって、例えば、窒化ガリウム-レーザおよび/またはインジウム-窒化ガリウム-レーザによって生成される青色レーザ光が、「黄色蛍光体」と呼ばれることも多い(通常は、Ceがドープされたイットリウム-アルミニウム-ガーネットである)光変換要素上に入射する場合には、青色光の放射輝度は、ガウス分布からわずかにしかずれないが、光変換要素によって生成される黄色放射に関しては、放射輝度のずれが格段により大きくなる。このことによって、光スポットの中央において青色の放射成分が支配的となり、全体として、照明装置によって生成される光は、過度に青みを帯びることとなる。
【0066】
光の拡散は、波長依存性であり、とりわけ、光変換要素自体の中における光の散乱に依存していると共に、-程度はより低いが-光変換要素による電磁放射の吸収にも依存している。したがって、本発明者らは、レーザ光源によって生成されて光変換要素に向けられた放射を変換することにより、光変換要素によって生成された光が、光変換要素内でより強く散乱されることを観察した。このことによって放射輝度分布は、結果的に、既に上述したように理想的なガウス分布からずれることとなる。この効果は、黄色の光成分の「希釈」としても明瞭に説明することができる。
【0067】
しかしながら、上述した効果は、いわゆる黄色蛍光体と組み合わせた青色レーザの使用に限定されているわけでは決してない。むしろ、上述した効果は、種々異なる材料および種々異なる波長において発生する。
【0068】
とりわけ、光の拡散は、蛍光体が、例えば蛍光体-ガラス-複合材(「Phosphor in glass」,PIGとも呼ばれる)として、かつ/または蛍光体-シリコーン-複合材(「Phosphor in silicone」,PISとも呼ばれる)として構成されている場合にも発生する。
【0069】
本開示の文脈では、上述した光の拡散は、「light spreading」または光拡散または光の広がりとも呼ばれる。
【0070】
しかしながら、この効果の強さは、(レーザ)光スポットのサイズに比例する。光スポットが小さければ小さいほど、光の拡散がより強く出現し、照明装置によって生成される光の色位置がより強く青色へとシフトする。したがって、光スポットのサイズを縮小することにより、より強い「青色」の色印象を有する光を生成することが可能である。相応にして、生成される光のより強い「黄色」の色位置は、大きな光スポットによって得られる。このようにすると、輝度の変化も達成される。なぜなら、とりわけ小さな光スポットは、比較的わずかなレーザ出力で特に高い輝度を達成することができるので、有利だからである。しかしながら、レーザ出力を変化させることも可能であり、これにより、とりわけコンポーネントを交換することなく、光スポットのサイズを変化させてレーザ出力を適合するだけで、複数の異なる照明装置の間における一致した色位置および輝度を、一貫して相互に調整することが簡単に可能となる。
【0071】
本発明は、照明装置の色位置または色温度を調整するための方法を含み、
・当該方法は、照明装置を提供するステップを含み、照明装置は、好ましくは青色のレーザ放射のための少なくとも1つのレーザ光源と、少なくとも1つのレーザ光源または複数のレーザ光源に対応付けられた光変換要素と、を含むと共に、レーザ放射を光変換要素に向けて成形する光学系も含み、光変換要素は、少なくとも1つのレーザ光源または複数のレーザ光源によって生成された光放射の光路上に配置されており、
・当該方法は、少なくとも1つのレーザ光源または複数のレーザ光源から放出される少なくとも1つの光放射を生成するステップを含み、
・当該方法は、1つまたは複数のレーザ光源によって生成された少なくとも1つの光放射の少なくとも一部を、とりわけ、1つまたは複数のレーザ光源と光変換要素との間に配置された光学要素および/または光学部品によって、光変換要素に向けるステップを含み、これによって、
・光変換要素に向けられた、1つまたは複数のレーザ光源から放出された光放射の一部の結像としてのレーザ光スポットが、光変換要素のうちの入射光放射に向いた側において照明されており、または照明され、レーザ光スポットは、最小で5μm、最大で1000μmの間の直径、好ましくはFWHM直径のような寸法を有し、
・好ましくは、光変換要素は、入射レーザ光の散乱、吸収、および変換によってより長い波長の光を放出して散乱させる材料を含み、
・入射レーザ光の一部は、光変換要素によって変換されることなく後方散乱され、これによって、光変換要素うちの入射光放射に向いた側では、レーザ光と同じ波長/色を有する一次放出光スポットが生成され、
・光変換要素は、1つまたは複数のレーザ光源から放出された光を部分的により長い波長の光に変換し、これによって、光変換要素うちの入射光放射に向いた側では、より長い波長を有する二次放出光スポットが生成され、
・当該方法は、例えば、一次放出光スポットおよび二次放出光スポットから放出される放射の少なくとも一部を、少なくとも1つの光学要素および/または光学部品に向けることにより、一次放出光スポットおよび二次放出光スポットによって光像を生成するステップを有し、
・当該方法は、例えば光学要素および/または光学部品によって生成される光像(光像全体であっても、一部、例えば中央であってもよい)の選択された領域に関して、または好ましくは、照明装置から25mの距離を置いたところで生成されているか、または生成される光像の選択された光束の選択された領域に関して、統合された色位置または色温度を特定するステップを含み、
・当該方法は、色位置または色温度を調整するステップを含み、当該ステップは、
a.少なくとも1つのレーザ光源から放出される少なくとも1つの光放射の少なくとも一部によって生成されるレーザ光スポットのサイズによって、光変換要素上に生成される放出光スポットの一次輝度分布および二次輝度分布を調整することによって実施され、かつ/または
b.変換要素の材料の吸収特性および散乱特性を適合することにより、光変換要素上に生成される放出光スポットの一次輝度分布および二次輝度分布を調整することによって実施され、かつ/または
c.下流の撮像光学系を適合させることにより、放出光スポットの結像される部分表面(すなわち有用光スポット)を調整することによって実施され、かつ/または
d.撮像光学系の後方で部分的に絞ることにより、観察される光束の被照明領域を選択することによって実施される。
【0072】
好ましくは、入射レーザ放射の出力は、0.5W~1000Wの間で調整される。
【0073】
さらに別の実施形態によれば、車両のヘッドライトとしての、または舞台照明のためのスポットライトとしての、または航空機のヘッドライトとしての、またはヘリコプターのヘッドライトとしての、または船のヘッドライトとしての、または信号灯としての、またはサーチライトとしての、またはスタジアム照明としての、またはプロジェクタのための、または建築照明のための、上記の実施形態による照明装置の使用が含まれている。
【0074】
図面の説明
本発明を、添付の図面に基づいて以下により詳細に説明する。同一の参照番号は、同じ要素または相互に対応する要素を示す。
【図面の簡単な説明】
【0075】
図1】光の拡散を示す概略図である。
図2】撮像光学系による結像に対する光の拡散の効果を示す概略図である。
図3】光変換要素に入射した後の、複数の異なる波長の光に対する強度およびビームプロファイルを示す図である。
図4】光の拡散を測定するための測定セットアップの概略図である。
図5】レーザ光スポットを示す図である。
図6】一次放出光スポットを示す図である。
図7】二次放出光スポットを示す図である。
図8】レーザ入射は同様であるが、それぞれの材料が散乱係数s(のみ)に関して異なっている場合の、二次放出光スポットの強度プロファイルを示す図である。
図9】488μmのFWHMを有するレーザ光スポットの輝度分布を示す図である。
図10図9のレーザ光スポットのケースでの、複数の異なる直径を有する有用光スポットの場合の、色位置cx,cyの依存性を示す図である。
図11】210μmのFWHMを有するレーザ光スポットの輝度分布を示す図である。
図12図11のレーザ光スポットのケースでの、複数の異なる直径を有する有用光スポットの場合の、色位置cx,cyの依存性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0076】
図1は、縮尺通りではない概略図において、実質的に点状の照明のための被照明面の例における光の拡散を示す。図示されているのは、光放射1によって照明された光変換要素4の断面である。
【0077】
しかしながら、一般に、レーザ光スポットは、本明細書において一例として想定されている円形の被照明面のケースに限定されているわけではなく、例えば所定のビーム成形によって生成される別の形状を有することもできる。
【0078】
図1において、入射光放射1によって光変換要素4上に照明されるレーザ光スポットは、最小で5μm、最大で1000μmの間の、例えば直径、好ましくはFWHM直径のような寸法Aを有する。本明細書における寸法という用語は、一般に、レーザ光スポットのサイズがAによって決定されるということであると理解されるべきである。基本的に、レーザ光スポットは、ほぼ点状または円形に形成されるということを前提とすることができる。しかしながら、本発明は、そのような点状または円形の照明に限定されているわけでは決してなく、他の形状のレーザ光スポット、例えば、むしろ正方形または長方形のような他の形状のレーザ光スポットも、もちろん可能である。
【0079】
光放射1を光変換要素4に向けることにより、反射光2からなる一次放出光スポットが生成される。一次放出光スポットは、レーザ光スポットよりも大きい。ここで、一次放出光スポットのサイズは、寸法Bによって表されており、この寸法Bは、例えば、一次放出光スポットの直径とすることができる。
【0080】
一般に、(図1からも分かるように)BはAよりも大きい。
【0081】
さらに、より長い波長の光、すなわち被変換光3を有する二次放出光スポットが生成される。二次放出光スポットは、一次放出光スポットよりも大きい。ここで、二次放出光スポットのサイズは、寸法Cによって表されており、この寸法Cは、例えば、二次放出光スポットの直径とすることができる。
【0082】
一般に、(図1からも分かるように)CはBよりも大きく、したがって相応にしてAよりも大きいということが当てはまる。
【0083】
図1には、光放射1によって光変換要素4を実質的に点状に照明するケースが示されている。ここで、寸法A、BおよびCは、それぞれ直径を表している。本発明の意味における点状とは、非常に小さな直径、例えば100μm未満、またはそれどころか10μm未満の直径を有する照明であると理解される。この場合、図1に示される点状の照明のケースでも、レーザ光スポットの寸法、ここではすなわち直径によって表されるサイズAは、反射光2の一次放出光スポットの寸法、ここではすなわち直径によって表されるサイズBよりも小さく、このサイズB自体は、被変換光3の二次放出光スポットの寸法(すなわち、具体的には直径)によって表されるサイズCよりも小さい。
【0084】
上述した拡大効果は、既に上述したように、Light Spreadingまたは光の拡散または光の広がりとも呼ばれる。
【0085】
この効果は、被照明面の境界において発生すると共に、実質的に点状の照明のためにも発生する(図1に図示)。
【0086】
とりわけ、光放射1の集束が増加するにつれて、すなわち、まさに高い輝度を実現すると同時に少ないエネルギ消費量をも実現するために、寸法が特に小さくされる場合には、二次放出光スポットは、一次放出光スポットの寸法に対して相対的にますます大きくなり、これにより、照明装置によって生成される光像の色位置が、より短い波長へとシフトする。すなわち、光の拡散現象は、光放射1の集束の増加によって実現させたいような、まさに特に高い輝度の場合に、非常に顕著になる。
【0087】
このことは、レーザ光源によって生成されて光変換要素に向けられた放射を光変換要素が変換することによって生成された光の、結果的に放出されることとなる放射が、全体として、色分布に関して不均一となり、とりわけ放射密度分布が、理想的なガウス分布から逸脱するということを意味する。
【0088】
このことは、放出された放射が全て捕捉されるのであれば無害であろう。しかしながら、殆どの用途では、放出された放射の一部しか使用されない。このことは、例えば、光路上にアパーチャが配置されていることに基づいて生じる。このようなケースでは、放出された放射の色の不均一性が重要性をもつ。
【0089】
図2に、例えばこのことが、ここでも実質的に点状の照明のケースに関して示されている。入射光1と反射光2と被変換光3と光変換要素4とに加えて、照明光学系に対して相対的な放射領域51と損失領域52とが示されている。
【0090】
図3は、光変換要素4に入射した後の、複数の異なる波長の光に関する強度およびビームプロファイルを示す。
【0091】
図3に示されたビームプロファイルは、例えば、図4による測定セットアップにおいて取得することができる。図4は、RGBカメラ10およびダイクロイックフィルタ9を有する概略的な測定セットアップを示す。光の拡散の程度は、ここでは例えばセラミック変換体として構成されている光変換要素4上において結果的に生じる放出光スポットを検査することにより、特定された。光放射1は、インジウム-窒化ガリウムに基づいたレーザ光源によって検査され、したがって、光放射1は、「青色光放射」であった。ここでも、ここではそれぞれの直径である寸法A、BおよびCと、反射光2と、被変換光3と、が示されている。例えば、ここでは80μmのレーザ光スポットの直径を有する、本明細書で検討されている「青色」入射光のケースでは、反射光2も同様にして「青色」光である。被変換光3は、ここでは例として「黄色」光であり、この「黄色」光は、例えばCeがドープされたYAGが含まれる対応する光変換要素4における青色光の変換から結果的に生じる。光変換要素4は、ここではミラープレート8上に配置されている。
【0092】
このケースでは、例えば、図3に示されるビームプロファイルが取得される。y軸上には、強度が任意単位でプロットされており、x軸上には、位置がμm単位でプロットされている。プロファイル6は、被変換光3に関して取得されたものであり、強度プロファイル7は、反射光2に関して取得されたものである。放射の縁部では、被変換光3、ここではすなわち「黄色」光の割合が支配的であることが明らかに見て取れる。要するに、この結果として以下のような放出光スポットが生じ、すなわち、光スポットの中央では反射光の割合が比較的高くなっており、これに対して光スポットの縁部では被変換光の割合が比較的高くなっているような、放出光スポットが生じる。
【0093】
したがって、まさに青色光によって実質的に点状に照明して黄色光に変換するという、本明細書で検討されているケースの場合には、中央では「青すぎる」が縁部では「黄色すぎる」放射が、結果的に生じる。
【0094】
図5は、一例として、図4のカメラ10によって観察されるようなレーザ光スポット11を示す。これに関して、変換されていない、強く散乱しているだけの表面が照明された。
【0095】
図6は、レーザ波長よりも長い波長が絞られていて、かつ図5と同じ形式で照明された場合に、図4のカメラ10によって観察されるような、変換要素上における一次放出光スポット12を一例として示す。
【0096】
図7は、放出波長よりも短い波長が絞られていて、かつ図5および6と同じ形式で照明された場合に、図4のカメラ10によって観察されるような、図6と同じ変換要素上における二次放出光スポット13を一例として示す。
【0097】
図5図6および図7のそれぞれの光スポットを比較すると明らかなように、とりわけ、二次放出光スポット13は、レーザ光スポット11および一次放出光スポット12よりも格段に大きい。
【0098】
また、一次放出光スポット12は、レーザ光スポット11よりも大きいが、図5および図6の図示のために使用される表面がそれぞれ異なっていて、光スポット11および12の寸法の差がわずかであることに基づき、このことを十分な解像度で図示することができていない。
【0099】
図8は、被変換光の強度プロファイル14および15(すなわち、それぞれの二次放出光スポットの強度)を一例として示す。強度プロファイル14は、強度プロファイル15に対応する材料と同一の吸収係数aを有するが、強度プロファイル15に対応する材料と比較して2倍の散乱係数sを有する材料によるものである。どちらのケースでも、YAG:Ceからなるセラミックである。
【0100】
図9は、レーザ波長が443nmであり、レーザ光出力が2.7Wである場合の、(Y,Gd)Al12:Ceからなるセラミック変換要素上における、488μmのFWHMを有するレーザ光スポットにわたる相対的な輝度分布を示す。
【0101】
図10は、レーザ光スポットの中央に位置する、それぞれ異なる直径を有する複数の有用光スポットに対して、当該照明時に生成され変換され放出される光の色座標cxおよびcyを示す。cxおよびcyは、有用光スポットの直径が小さくなるにつれてわずかに減少する。これに対して、図11に示されるような(図11:FWHM=210μm)、(同じ材料、同じ波長、同じ出力で)より小さなレーザ光スポットを有するレーザ光スポットの場合には、この効果が格段に顕著になる。図12のデータが示すように、cxおよびcyは、有用光の直径が小さくなるにつれて、黄緑色から青色へと顕著にシフトする。
【符号の説明】
【0102】
A レーザ光スポットの寸法
B 一次放出光スポットの寸法
C 二次放出光スポットの寸法
D 有用光スポットの寸法
1 光放射/入射光
2 反射光
3 被変換光
4 光変換要素
51 照明光学系に対して相対的な放射領域
52 損失領域
6 被変換光の強度プロファイル
7 反射光の強度プロファイル
8 ミラープレート
9 ダイクロイックフィルタ
10 RGBカメラ
11 レーザ光スポット
12 一次放出光スポット
13 二次放出光スポット
14 被変換光の強度プロファイルであり、材料は、15に対応する材料の2倍の散乱係数を有するが、15に対応する材料と同じ吸収係数を有する
15 被変換光の強度プロファイル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12